JP2004121122A - 植物の葉形成関連タンパク質as2、及びそれをコードする遺伝子 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、植物における対称性で平坦な葉の発生、及び葉の葉脈を確立させるための手法を、詳細にはそのための遺伝子を確立することを目的としている。
【解決手段】本発明は、植物細胞の核における特定の遺伝子の転写、対称性で平坦な葉身の発生、及び葉の葉脈の確立を制御している植物の葉形成関連タンパク質AS2、より詳細には、システインに富むC‐モチーフからなるシステイン反復配列及びロイシンジッパー様モチーフを有することを特徴とする植物の葉形成関連タンパク質AS2、それをコードするDNA、及びそれを用いた植物の葉の形成を制御するための組成物に関する。
【選択図】 なし
【解決手段】本発明は、植物細胞の核における特定の遺伝子の転写、対称性で平坦な葉身の発生、及び葉の葉脈の確立を制御している植物の葉形成関連タンパク質AS2、より詳細には、システインに富むC‐モチーフからなるシステイン反復配列及びロイシンジッパー様モチーフを有することを特徴とする植物の葉形成関連タンパク質AS2、それをコードするDNA、及びそれを用いた植物の葉の形成を制御するための組成物に関する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、植物の葉形成関連タンパク質AS2、詳細には、植物細胞の核における特定の遺伝子の転写、対称性で平坦な葉身の発生、及び葉の葉脈の確立を制御している植物の葉形成関連タンパク質AS2、より詳細には、システインに富むC‐モチーフからなるシステイン反復配列及びロイシンジッパー様モチーフを有することを特徴とする植物の葉形成関連タンパク質AS2に関する。より具体的には、植物の葉形成関連タンパク質AS2が、配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列中のアミノ酸が置換、挿入、若しくは欠失してもよいアミノ酸配列からなる植物の葉の形成に関連するタンパク質AS2に関する。
また、本発明は、植物の葉形成関連タンパク質AS2をコードするDNA、植物の葉形成関連タンパク質AS2を用いた植物の葉の形成を制御するための組成物、植物の葉形成関連タンパク質AS2をコードするDNAからなる植物の葉の形成を制御するための遺伝子、及びそれを含有してなるベクターに関する。
【0002】
【従来の技術】
相対的に平坦な組織である被子植物の葉は、その形状及び複雑さという点で広範囲な多様性を持っているが、その基本構造は、一般に、近位−遠位、内側−外側、及び向軸性−背軸性という3つの軸に基づいて説明することができる(非特許文献1〜4参照)。従って、植物は、葉の発生において、3つの軸の確立に関与する一般的なメカニズムを利用していると考えられる。
葉は茎頂のメリステム(SAM)から外側器官として発生する。3つの軸のそれぞれに沿った形状の発達、向軸性−背軸性のアイデンティティ及び葉の全体的な形状に関連する葉の形態の変化と共に種々の突然変異体が単離されてきた。
【0003】
突然変異の表現型に関与する遺伝子の一部はクローニングされ、性状分析されている(非特許文献5〜12参照)。myb様遺伝子(PHAN)及びホメオボックスを含む転写因子(PHBとPHV)をコードしていると思われるキンギョソウのPHANTASTICA(PHAN)、シロイヌナズナのPHABULOSA(PHB)、及びシロイヌナズナのPHAVOLUTA(PHV)は、向軸性細胞の運命に関与している。さらに、FILAMENTOUS FLOWER(FIL)、YABBY3(YAB3)、CRABS CLAW(CRC)、及びKANADI(KAN)などが挙げられ、これらは葉身における背軸性細胞の運命の仕様に関与している。このような遺伝子における突然変異によって、平坦に広がる葉が、糸状で竿型の構造に変異する。これは、向軸性−背軸性のアイデンティティも歪められているためであり、従って、葉身の側方への発生は、向軸性−背軸性のアイデンティティの遺伝子による決定と一緒になっている可能性があると考えられている。
内側−外側の軸に沿った葉の形状に関しては、多数の植物の葉は一般に、軸としての葉軸に対して明瞭であり、およその左右対称性を示す(非特許文献13〜17参照)。しかし、この点についてはいくつかの例外も報告されている(非特許文献18〜20参照)。いずれにしても、このような対称性は葉の形状の複雑さ(例えば、単一又は複合)とは無関係である。
【0004】
対称性の葉の発生に関与するメカニズムを明らかにするために、本発明者らを含む数組のグループがシロイヌナズナのアシンメトリックリーブズ2(as2)及びアシンメトリックリーブズ1(as1)を検討している。そのような突然変異体の表現型は、葉身及び奇形の葉脈系の非対称性という点で極めてよく似ているが、異常は絶対的に同一というわけではない(非特許文献21〜24参照)。これらの遺伝子の異常は以下のように要約することができる。(1)as1変異体及びas2変異体の葉は、非対称性の裂片を持ち、両側性に非対称である下向きの巻きを示す。(2)肥厚し、且つ明瞭な主脈を生じることができず、2次葉脈のパターンも非対称性である(非特許文献23及び24参照)。(3)試験管内にてフィトクロムを含まない培地で培養した葉の切片は、野生型の葉の切片よりも高い頻度でシュートを再生する(非特許文献23参照)。(4)例えば、KNAT1、KNAT2、及びKNAT6のようなクラスIknox遺伝子の転写物が変異体の葉に蓄積する(非特許文献23参照)。(5)トウモロコシのROUGH SHEATH2(RS2)及びPHANの産物に関係するmyb様転写因子をコードするas1の転写物は、子葉原基及び葉原基における導管組織の周りに蓄積する(非特許文献21参照)。
【0005】
以上のように要約された所見は、as1及びas2が、葉身対称性の発生と同様に、葉の左右対称性の構造的な軸としての顕著な主脈を含む、葉脈システム全体の確立に関与する可能性があることを示唆している(非特許文献23参照)。それらはまた、おそらくクラスIknox遺伝子の発現を抑制することによって、発生上の決定的状況に葉細胞を維持する点で機能している可能性がある。葉脈システムの確立におけるこのような遺伝子の役割は、葉細胞の決定的状況を維持することと高く相関しているが、そのような相関の詳細は明らかにされていない。as1、as2及びas1とas2の二重変異植物の異常の類似性によってas1とas2は幾分遺伝的に相互作用しているという提案が導かれている(非特許文献23参照)。as1とas2が葉身形成を制御するメカニズムにおいてさらに見識を得るには、as2遺伝子及びas1遺伝子の両方の性状分析を行うことが極めて重要である。
【0006】
as2遺伝子座は、2つのシロイヌナズナのトランスジェニック株#14−22.4.4W3(T−1200)及び#14−68.1.4(T−1700)において、dAc−I−RSとして知られる転移因子の2つの誘導体の間に地図上の位置が決定されたことが、本発明者らにより報告されている(非特許文献25参照)。しかし、その詳細については報告されていなかった。
【0007】
【非特許文献1】
Steeves, T.A. and Sussex, I.M (1989) Cambridge University Press, Cambridge、
【非特許文献2】
Waites, R. et al. (1998) Cell 93:779−789、
【非特許文献3】
Hudson, A. (2000) Annu. Rev. Plant Physiol. Plant Mol. Biol. 7:581−587、
【非特許文献4】
Byrne, M., et al.(2001)Curr. Opin. Plant. Biol. 4:38−43
【非特許文献5】
Hake, S., et al. (1989) EMBO J. 8:15−22、
【非特許文献6】
Conway, L.J. and Poethig, R.S.(1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:10209−10214)、
【非特許文献7】
Hofer, J. et al., (1997) Curr. Biol. 7:581−587、
【非特許文献8】
Kim, G.T. et al. (1998) Genes Dev. 12:2381−2391、
【非特許文献9】
Berna, G., et al. (1999) Genetics, 152:729−742、
【非特許文献10】
Serrano−Cartagena, J., et al. (1999) Mol. Gen. Genet. 261:725−739、
【非特許文献11】
Timmermans, M.C., et al. (1999) Science 284 :151−153、
【非特許文献12】
Tsiantis, M., et al. (1999) Science 284 :154−156
【非特許文献13】
Ogura, Y. (1962) Plant Anatomy and Morphology. pp.102−134 Youkendo, Inc., Tokyo.、
【非特許文献14】
Hickey、L.J. (1973)Amer. J. bot. 60:17−33、
【非特許文献15】
Hickey, L.J. (1979)In Anatomy of the Dicotyledons. Edited by Metcalf, C.R. and Chalk, L. pp. 25−39. Oxford University Press, New York、
【非特許文献16】
Sinha、N.R. (1999) Annu. Rev. Plant Physiol. Plant Mo;. biol. 50:419−446、
【非特許文献17】
Semiarti, E., et al. (2001a)Development 128 :1771−1783
【非特許文献18】
Whaley, W.G. and Whaley, C.Y. (1942) Amer. J. bot. 29:105−194,
【非特許文献19】
Lieu, S.M. and Sattler, R. (1976) Can J. Bot. 54:2108−2121、
【非特許文献20】
Dengler, N.G. (1999) Int. J. Plant Sci. 160:S67−S80
【非特許文献21】
Byrne, M.E. et al. (2000) Nature 408:964−971、
【非特許文献22】
Ori, N. et al. (2000) Development 127 :5523−5532、
【非特許文献23】
Semiarti et al. (2001a)、
【非特許文献24】
Sun, Y. et al. (2002) Planta 214:694−702
【非特許文献25】
Machida, C. et al. (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:8675−8680
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、植物における対称性で平坦な葉の発生、及び葉の葉脈を確立させるための手法を、詳細にはそのための遺伝子を確立することを目的としている。より詳細には、本発明は、as2遺伝子を単離し、その性状分析を行うことにより、対称性で平坦な葉の発生及び葉の葉脈の確立を制御する方法を提供し、そのために有用な新たなタンパク質AS2、及びそれをコードする遺伝子as2を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、as2遺伝子を単離し、性状分析を行った。この遺伝子は、C‐モチーフと命名されたシステイン反復配列及びロイシンジッパー様モチーフを含む新規タンパク質をコードする。データベースの検索では、AS2は、本発明者らがAS2ファミリーと命名したタンパク質の大きなファミリーに属することが判った。as2遺伝子の転写物は主として、胚発生中に子葉原基の向軸性ドメインで検出された。AS2は明瞭な核への局在シグナルを含んではいないが、緑色蛍光タンパクを結合したAS2は植物の核に局在していた。as2cDNAの過剰発現は、トランスジェニック植物のシュートの形成効率に低下を生じた。as2cDNAを過剰発現したトランスジェニックシロイヌナズナは、上向きに巻いた葉を生じ、時には葉身の適当な広がりを持たない竿型の葉を生じた。従って、AS2は、核における特定の遺伝子の転写、対称性で平坦な葉身の発生、及び葉の葉脈の確立を制御している可能性があることを見出した。
【0010】
本発明は、植物の葉形成関連タンパク質AS2に関する。詳細には、植物細胞の核における特定の遺伝子の転写、対称性で平坦な葉身の発生、及び葉の葉脈の確立を制御している植物の葉形成関連タンパク質AS2、より詳細には、システインに富むC‐モチーフからなるシステイン反復配列及びロイシンジッパー様モチーフを有することを特徴とする植物の葉形成関連タンパク質AS2に関する。より具体的には、植物の葉形成関連タンパク質AS2が、配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列中のアミノ酸が置換、挿入、若しくは欠失してもよいアミノ酸配列からなる植物の葉の形成に関連するタンパク質AS2に関する。
また、本発明は、植物の葉形成関連タンパク質AS2をコードするDNA、より詳細にはDNAが、配列表の配列番号1に記載の塩基配列、又は当該塩基配列にストリージェントな条件下でハイブリダイズし得る塩基配列を有するものである植物の葉形成関連タンパク質AS2をコードするDNAに関する。
さらに、本発明は、植物の葉形成関連タンパク質AS2を用いた植物の葉の形成を制御するための組成物、植物の葉形成関連タンパク質AS2をコードするDNAからなる植物の葉の形成を制御するための遺伝子、及びそれを含有してなるベクターに関する。
【0011】
本発明者らは、2つのシロイヌナズナのトランスジェニック株#14−22.4.4W3(T−1200)及び#14−68.1.4(T−1700)において、as2遺伝子座が、dAc−I−RSとして知られる転移因子の2つの誘導体の間に地図上の位置存在していることを決定していた。これに基づいてas2遺伝子のクローニングを行った。遺伝子地図に基づいたクローニングにおいて、BACクローンF5I14におけるPCR−RFLPマーカー以外に、遺伝的且つ分子マーカーとしてこのような2つのdAc−I−RS因子に着目した。この因子はハイグロマイシン耐性遺伝子を含んでおり、as2遺伝子座は最終的には、BACクローンF5I14における2つのPCR−RFLPマーカー(マーカー1とマーカー4)の間の32kbpの領域であることがわかった。
【0012】
図1に、シロイヌナズナの第1染色体のゲノムの領域構造、及びゲノム断片による相補性解析の結果を示す(図1A)。図1AのT−1200及びT−1700は、ハイグロマイシン耐性(Hygr)遺伝子によるdAc−I−RS転移因子の位置を示す。図1Bは、第1染色体におけるas2遺伝子付近の各BACクローン(F5I14、F1E22、及びF12P19)を示す。BACクローンF5I14の上に4種のマーカーの位置を示し、マーカーの上の番号は、それぞれのマーカーとas2遺伝子座との間での組換え体の数を示す(ほとんどの場合で10,000を超える染色体を調べた。)。
本発明者らは、我々はT−1200及びT−1700のハイグロマイシン耐性(Hygr)遺伝子から染色体ウォーキングを開始し、本発明者らが解析のために作成したRFLPマーカーである、マーカー1、マーカー2、マーカー3及びマーカー4のうちの、as2遺伝子がマーカー1とマーカー4の間の32kbpの領域であることを決定した。
【0013】
次に、as2−1変異体のこの領域のDNAのPCR−RFLP解析を行い、 配列を決定した。BACクローンF5I14のオープンリーディングフレーム(ORF)15に相当するORFにおいて、13bpの欠失を見い出した。さらに、本発明者らは、as2−2、as2−4、及びas2−5のような利用可能なその他の対立遺伝子がすべてこのORFにおいて突然変異を持っていることを見い出した(詳細は、後述する図2Aなどを参照のこと。)。ORF15における突然変異がas2の表現型に関与しているかどうかを確定するために、本発明者らは、ORF15すべてを含んでいる野生型ゲノムのApaI−HpaI断片(断片I;6.16kb)を、as2−1遺伝子が変異している植物(as2−1植物)に導入した。また、ORF15の上流領域を欠く断片II、及びORF15の上流領域とORF15の真ん中から断片Iの3’末端までを欠く断片IIIで、as2−1植物を形質転換した。この結果、断片Iのみがas2の表現型を示した。
図1Bは、as2周辺の染色体領域の拡大図及び相補性解析の結果を示すものであり、as2のcDNAの構造をゲノム構造の下に示す。相補性解析に用いた制限断片の構造を、I、II、IIIと表記された水平の線で示す。右側の記号+及び−はそれぞれ、相当するDNA断片との相補性試験の正及び負の結果を示す。
ORF15は、3000Daを超えるタンパク質をコードすることができる断片Iにおける唯一のリーディングフレームである。従って、この結果は、ORF15がas2遺伝子に相当することを示している。断片IIがas2の表現型を補完できなかったことは、断片IのApaIとBsu36Iとの間の領域がas2の発現に必要であることを示していた。
【0014】
本発明者らは、ORF15に相当するcDNAクローンを単離した。この塩基配列を配列表の配列番号1に示す。またそのアミノ酸配列を配列番号2に示す。as2遺伝子のヌクレオチド配列をcDNAの配列と比較すると、mRNAは、5’非翻訳領域にイントロンを2つ含むが、コーディング領域にはイントロンを含まず(図1B)、さらに、AS2は、199のアミノ酸残基を持つ新規のタンパク質をコードしていた。図2に、AS2の予想アミノ酸配列を示す。Cモチーフにおけるシステインの位置及びロイシンジッパー様配列における疎水性残基の位置は、それぞれ星印(*)及び点(・)で示す。種々のas2対立遺伝子における突然変異したアミノ酸残基を野生型の配列の上にイタリック体で示す。
また、図3にas2のドメインの構成及び特有の特徴を示す。ボックスの下でブラケットで示す領域はas2ドメインである。灰色のボックスはCモチーフを示し、縞のあるボックスはロイシンジッパー様配列を表す。as2−1、as2−2、as2−4及びas2−5の突然変異の部位を示す。ボックスの下の数はアミノ酸残基の位置を示す。
【0015】
as2−1とas2−2の対立遺伝子は両方とも、ロイシンジッパー様配列をコードする配列の上流の同じ部位に13bpの欠失を有している。この欠失によって、AS2のカルボキシル末端(C−末端)側のほとんどを欠くが、追加の13アミノ酸残基を含む短いポリペプチドを生じるはずである(図2参照)。as2−4変異体では、AS2のC−末端側に相当するコーディング領域の真ん中に1bpの欠失があり、これによってAS2のC−末端48アミノ酸残基で新しい63残基による置き換えを生じるフレームシフト突然変異が起きていた(図2参照)。as2−5変異体では、タンパク質のアミノ末端(N−末端)側のコーディング領域で単一のグアニンヌクレオチドがアデニンヌクレオチドで置換されており、これによって、46位においてグルタミン酸残基によるグリシン残基の置換が生じていた(図2参照)。このグリシン残基は、以下に説明するように、AS2ファミリーのあらゆるメンバーで保存されている。従って、このグリシン残基はAS2の機能にとって必須である。
【0016】
次に、AS2及びその関連タンパク質の構造的な特徴を調べた。
予想されるAS2タンパク質は、81番目の残基から109番目の残基までのロイシンジッパー様配列を含んでおり、それには、6残基の間隔と共に、バリン、イソロイシン及びロイシンのような疎水性アミノ酸残基の5回の反復が含まれていた(図2参照)。データベース検索によれば、AS2のN−末端側は、シロイヌナズナ及びその他の植物種(Oryza sativa(イネ)、Glycine max(ダイズ)、Lycopersicon esculentum(トマト)など)の仮説遺伝子及びESTによってコードされる多数の推定上のN−末端側に、アミノ酸配列という点で類似していることが判った(図2B)。シロイヌナズナの配列に関する公的データベースには、AS2のN−末端側に関係するN−末端を持つタンパク質をコードしていると予想されるORFは少なくとも41あった。このようなタンパク質のうち、数個は、単にかすかにAS2に関係していると思われる(図4参照)。
図4に示すように、推定上のAS2様タンパク質の比較解析によって、Cx2Cx6Cx3C配列(この場合、xは保存的でない残基である;Cモチーフと命名した)は、データベース検索及びAS2(AS2の10位〜24位)で同定された41の予想タンパク質すべてのN−末端側において完全に保存されていることが判った。Cモチーフ以外にも、ロイシンジッパー様配列も41のタンパク質のほとんどで強く保存されていた。AS2を含む半分を超えるタンパク質が以下のような追加の保存的配列を持っていた:Cモチーフの中及び周りにおけるPCAACKFLRRKCxxxCVFAPYFP、Cモチーフとロイシンジッパー様配列との間におけるFAxVHKVFGASNVxKLL、及びロイシンジッパー様配列の周りにおけるRxxAVxSLxYEAxARxRDPVYGCVGxISxLQxQL(V又はI)xxLQxxLxxxxxxL(V又はI)(図4参照)。AS2のN−末端におけるアミノ酸配列の強い保存にもかかわらず、AS2のC−末端領域のアミノ酸配列は、その他のAS2様タンパク質及びデータベースにおけるその他のタンパク質の配列とは異なっていた(図3参照)。
【0017】
AS2では、N−末端配列は、Cモチーフとロイシンジッパー様配列を特徴としている。本発明者らは、この特徴的な領域をAS2ドメインと呼び、このドメインを含むタンパク質をAS2ファミリーのメンバーと呼ぶことにした。この命名法によれば、シロイヌナズナのゲノムは、AS2ファミリーに属するタンパク質をコードする可能性のあるORFを42含んでいることになる。図4に示すように、この遺伝子及びAS2に似た41のタンパク質の推定上の遺伝子に対してas2様遺伝子(ASL)という命名を付し、このような遺伝子にそれぞれ1〜41の番号を付けた。このような遺伝子のcDNAの一部のヌクレオチド配列はジェンバンク(GenBank)データベースに提出され、スアイ(Shuai B.)及びシュプリンガー(Springer、P.S)(2001年、表2参照)によってLOB及びLBDと命名された。
【0018】
図4に、AS2ファミリーメンバーにおけるAS2ドメインのアミノ酸配列の比較を示す。AS2ファミリーのメンバー(ASLと呼ぶ、)の相当する領域の配列と共に、AS2の8番目から109番目の残基を並べる。20を超えるメンバーで保存されているアミノ酸残基を黒色背景上の白色文字で示す。Cモチーフにおけるコンセンサス配列及びロイシンジッパー様配列における疎水性残基は、それぞれ星印(*)及び点(・)で示す。ファミリーのメンバーすべてで保存されており、as2−5対立遺伝子で突然変異していたグリシン残基は星印2つ(**)で示す。シロイヌナズナのAS2ファミリーのメンバーは2つのクラス(クラスI及びクラスII)に分割することができる。クラスIIの3を超えるメンバーで保存されていたアミノ酸残基を灰色で示す。多の植物における、O.s.はOryza sativa(イネ)を示し、G.m.はGlycine max(ダイズ)を示し、及びL.e.はLycopersicon esculentum(トマト)をそれぞれ示す。
【0019】
これらのAS2ファミリーのメンバーは少なくとも2つのクラス、クラスI及びクラスIIに分けることができる(図4参照)。クラスIは、AS2及び35のタンパク質(ASL1〜ASL35)から成り、Cモチーフ、ロイシンジッパー様配列及び上記で述べた主要な保存された残基のほとんどを含む。クラスIIは6つのタンパク質(ASL36〜ASL41)から成る。 このようなタンパク質は、Cモチーフ及び不完全なロイシンジッパー様配列を含み、その中では、4番目の疎水性残基が欠損しており、AS2ドメインにはさらに弱くしか保存されていない。その上、このクラスではクラスIIのあらゆるメンバーの間でほとんどのアミノ酸配列が保存されており、各タンパク質において僅かな残基が異なっているに過ぎない。
図5に、検索されたシロイヌナズナのAS2ファミリータンパク質の42メンバーに関する系統樹を示す。分枝上の数は、ProtMLプログラムで計算された、そこにおけるブーツストラップ値を表す。各水平の枝の長さは、概算された進化上の距離に比例するように作製されている。右側の区分は、AS2ファミリーのメンバーの分類を示す。
図5に示すように、クラスIIはクラスIからは離れて関係しているにすぎないことが系統樹により裏付けられ、クラスIのメンバーは、クラスIa及びクラスIbと命名されたサブクラスにさらに分割することができ、配列の保存性は弱いが、完全なロイシンジッパー様配列を持っていることが示された。
【0020】
次に、本発明者らは、野生型植物においてas2転写物の蓄積部位を調べた。12日令の植物の根、子葉、葉、及び茎頂、28日令の植物の花芽、35日令の植物のロゼット葉、茎上の葉、花の茎及び長角果からポリ(A)+RNAを精製し、次いで、RNA試料でプローブとしてas2のcDNAを用いたノーザンブロット解析を行った。結果を図6に図面に代わる写真で示す。図6はシロイヌナズナの種々の器官のポリ(A)+RNAのノーザンブロット解析の結果を示す。12日令植物の根(レーン1)、子葉(レーン2)、葉(レーン3)、及び茎頂(レーン4)、28日令植物の花芽(レーン5)、及び35日令植物のロゼット葉(レーン6)、茎上葉(レーン7)、花の茎(レーン8)及び長角果(レーン9)から等量の1.0μgのポリ(A)+RNAを調製した。同じブロットを対照としてΕφ−チューブリン(TUBA)をプローブとして調べた。右側の数はマーカーRNA分子の大きさを示す。
as2の転写物は、花の茎を除いて解析した試料のすべてで検出された(図6参照)。as2転写物のレベルは、小さな発生途上の葉が含まれる茎頂の試料で最も高かった。このようなデータは、as2突然変異は、子葉、ロゼット葉、茎上の葉、萼片及び花弁のようなあらゆる葉様の器官における変異体の表現型として明白であるが、茎にはないという以前の観察と一致している(非特許文献23参照)。しかしながら、as2転写物は根で検出されたが、as2植物の根は野生型の根と似ていた。
【0021】
本発明者らは、プローブとしてas2のcDNAを用いたインスート(in situ)ハイブリダイゼーション法によって胚発生過程におけるas2の発現部位についても調べた。結果を図7に図面に代わる写真で示す。図7は、インスート(in situ)ハイブリダイゼーション法によるas2転写物の検出(a〜d)結果を示す。アンチセンスプローブで得られたas2転写物の分布パターンである。図7の(a)は球状ステージ;(b)は三角ステージ;(c)はハート型ステージ;(d)は魚雷型ステージ;(e)は(a)〜(d)のセンス対照パネルを示す。種皮の真下の細胞層の赤味がかった茶色の着色(白色の星印で示す)は、両方のプローブで生じるのでas2のRNAに特異的ではない。図7の縮尺棒は20μmを示す。
球状ステージの胚では、as2の転写物はすべての細胞で検出された(図7参照)。三角の胚の上部にて膨らみが形成されるにつれて、as2の転写物は、胚の最上層領域に蓄積した(図7(b)参照)。ハート型ステージから魚雷型ステージまで、子葉原基の向軸性側での原表皮細胞でシグナルを検出した(図7(c)、(d)参照)。ウォーキング−スティックステージの後、as2転写物の蓄積は、特定の領域に明瞭に濃縮されることなく、子葉原基の至るところで検出された(データは示さず)。発芽の後、茎頂のメリステムの周り、葉の原基及び成熟した葉においてインスート(in situ)では特異的なハイブリッドの形成のシグナルは検出されなかった。しかしながら、as2転写物の蓄積は、ノーザンブロットで確認された(図6参照)。
【0022】
次に、AS2の核内への局在について調べた。予想されたAS2タンパク質は核内への明瞭な局在シグナル(NLS)を含んでいない(図2参照)。
本発明者らは、AS2が植物細胞の核に局在するかどうかを確定するために、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)の35Sプロモータ(35S::as2::GFP)の制御下での転写とともに、as2cDNAを緑色蛍光タンパク(GFP)のDNAに結合した融合コンストラクトを作製した。この融合コンストラクトを粒子衝撃法によってタマネギの上皮細胞に導入し、GFPによる蛍光をモニターした。結果を図8に図面に代わる写真で示す。図8は、タマネギの上皮細胞におけるas2::GFPの細胞小器官の局在をモニターした結果を示す。図8のA及びBは35S::as2::GFPの場合を示し、図8のC及びDは35S::NLS::GFPの場合を示し、図8のE及びFは35S::GFPの場合を示す。それぞれの遺伝子を衝撃によってタマネギの上皮細胞に導入し、導入した組織を28℃にて16時間培養した。蛍光顕微鏡下で蛍光をモニターした(左側のパネル(図8のA、C及びE)。また、1μg/mLのDAPIで染色した核を右側のパネル(図8のB、D及びF)に示す。図8の各縮尺棒は100μmを示す。
図8に示すように、as2−GFPによる蛍光シグナルは、SV40のNLSによって調製されたNLS−GFPによる類似のシグナル同様に主として核内にて検出された(図8A、C)。35S::GFPのコンストラクトをタマネギ細胞に導入した場合、GFPによるシグナルは核及び細胞質の双方で検出された(図8E)。このような結果は、AS2が核内タンパクであることを示している。
【0023】
次に、本発明者らは、AS2を過剰に生産するシロイヌナズナ植物の表現型を調べた。35Sプロモータにas2cDNAを結合させ(35S:as2)、as2を過剰に発現するトランスジェニックのシロイヌナズナ植物を作出した。結果を図9に図面に代わる写真で示す。図9のAは、空のベクターpSK1(a)及びpSK35S::as2(b)により形質転換したCol−0由来の根断片をインキュベートし、インキュベートを開始後21日目に写真撮影した結果を示す。図9Aの縮尺棒は10mmを示す。図9のBは、トランスジェニックしたシロイヌナズナ植物の表現型を示す。図9Bの(a)は空のベクターpSK1で形質転換した35日令の植物の場合を示し、(b)はpSK35S::as2で形質転換した35日令の植物の場合を示し、(c)はpSK35S::as2で形質転換した25日令の植物の場合を示し、(d)は(c)の植物をさらに15日間成長させた場合を示す。図9Bの縮尺棒は10mmを示す。図9Cは、トランスジェニック植物及び野生型植物(Col−0)におけるas2遺伝子の転写物のRT−PCR解析の結果を示す。RT−PCRのサイクル数をそれぞれのパネルの右側に示す。増幅したDNA断片をアガロースゲル上の電気泳動で分画し、臭化エチジウムで染色して視覚化した。レーン1は図9Bの(d)に示されるトランスジェニック植物の場合を示し、レーン2は野生型(Col−0)植物の場合を示す。as2転写物のオープンリーディングフレームの領域に特異的なプライマーで増幅した産物(a;ORF)、as2転写物の3’非翻訳領域に特異的なプライマーで増幅した産物(b;UTR)、及びα−チューブリンに対する遺伝子の転写産物に特異的なプライマーで増幅した産物(c;α−tubulin)を示す。図9Dは、それぞれの葉の表現型を示す。(a)は典型的な35日令の野生型Col−0植物の場合を示し、(b)はas2−1植物の5番目の葉を示す。軽い表現型の変化(c)及び厳しい表現型の変化(d)を示すトランスジェニック植物の典型的な葉を示す。後者の葉の位置は決定することができなかった。図9Dの縮尺棒は5mmを示す。
【0024】
この予備実験のデータは、形質転換したシュート(shoot)を作出するのは困難であることを明示していた(図9A)。従って、本発明者らは先ず、従来の根形質転換法により形質転換されたシュートのおよその作出効率を確定した。
形質転換について、用いた根の数当りの形質転換された緑色カルス、再生されたシュート(shoot)、及び花の茎を伴うシュート(shoot)の数を数えた。結果を次の表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
表1中のカッコ()内の数値は、根当たりの形質転換体の平均数を示す。
表1は、35S:as2を根組織に導入した場合の緑色カルスの形成効率は、空のベクタープラスミド、pSK1を形質転換に用いた場合よりも低いことを示している。トランスジェニックシュート及び花の茎を伴うシュートの再生効率は、5倍〜10倍低い(表1参照)。
このようなデータは、as2cDNAの過剰発現は、緑色組織における細胞増殖及び/又はシュートの再生に抑制効果を持つことを示した。
as2cDNAを過剰発現する2つのトランスジェニック株を得た。このcDNAに由来するas2転写物がさらに厳しい表現型を示すトランスジェニック株の1つに蓄積されていることを確認した(図9C参照)。トランスジェニック植物の1つの株は、軽い矮性の表現型を持ち、上向きに巻いた葉を生じた(図9Bの(b)参照)。トランスジェニック植物のもう1つの株は、さらに厳しい異常な表現型を伴っており、植物成長の早期ステージで極めて狭い葉身を持つ葉を生じた(図9Bの(c)、及び図9Dの(c)参照)。この葉身は広がることができず、竿状の葉を生じた(図9Bの(d)、及び図9Dの(d)参照)。
【0027】
以上のことから、AS2における機能的ドメインを考察した。
as2遺伝子は、そのN−末端側にCモチーフ(Cx2Cx6Cx3Cとして定義される)及びロイシンジッパー様配列を含み、そのC−末端側に明らかに独特な配列を含む199のアミノ酸残基の新規タンパク質をコードすると思われる(図2、図3参照)。ロイシンジッパー配列がタンパク質−タンパク質の相互作用に関与することは一般的に受け入れられており、as2のロイシンジッパー様配列は、AS2といくつかのそのほかのタンパク質との会合に役割を担っている可能性があると考えられる。そのような相互作用がAS2の作用に必須かも知れない。
Cモチーフは本発明で初めて同定されたが、それはむしろ、一般にCx2〜3CxnCx2〜3C(n>12)のコンセンサス配列を持ち、その他の巨大分子との相互作用で機能するジンクフィンガーに似ている(Pavletich, N.P. and Pabo, C.O. (1991) Science 252 :809−817、 Wang, J.H. et al. (1998) Immunity 9:543−553)。Cモチーフもまた、例えば、DNAやタンパク質、特にAS1のようなその他の巨大分子との会合に関与しているのはありそうなことである。AS2の機能を完全に解明するには、AS2が相互作用する分子の同定及び性状分析がさらに必要である。
【0028】
AS2のC−末端側の配列は、既知のモチーフを含む(図3参照)データベースのどのタンパク質の配列とも異なっている。as2−4対立遺伝子はこの領域にフレームシフト突然変異を持っていたが、この対立遺伝子による表現型は、他のas2対立遺伝子による表現型に似ているので、C−末端側は、新しく特徴付けられたAS2ドメインを含むN−末端側以外のAS2の機能に必須であると考えられる。
【0029】
as1及びas2の双方共、クラスIknoxホメオボックス遺伝子の発現を抑制するが、そのような抑制が直接的に又は間接的にas1及びas2に起因するのかどうかは明らかではない。本発明者らは本発明により、他の未だ同定されていない核内タンパク質との相互作用を介して核におけるクラスIのknox遺伝子の抑制に関与するタンパク質に対して予想されるように、as2:GFP融合タンパクが植物細胞の核に局在することを明らかにした(図8参照)。as1:GFP融合タンパクも核内に局在していた(未発表データ)。このような所見は、as1はas2が核において相互作用する分子の1つであるという仮説に矛盾しない。
as2cDNAの過剰発現によって上向きに巻いた葉及び子葉が誘導された(図9参照)。それに対して、as2の機能欠損突然変異では、下向きに巻いた葉及び子葉を生じた(非特許文献23参照)。従って、as2は、葉身における向軸性ドメインの成長の抑制又は背軸性ドメインの成長の刺激に関与している。形質転換(図9B参照)及び胚の子葉原基における向軸性ドメインでのas2の発現(図7参照)の際に、成長抑制効果が認められたことを考慮すれば、as2は向軸性ドメインの抑制に機能していると推測することができる。そのような抑制が、細胞の増殖又は伸長の阻害を介して成し遂げられるのかどうかを調べるのは興味深いであろう。
分子レベルでのAS2活性の詳細がどうであれ、過剰発現に関する本発明及びas2突然変異の葉に関する以前の研究は、AS2が葉の対称性と同様に平坦な葉身の拡張に関与していることを示している。葉のドメインの向軸性−背軸性の運命に関与する遺伝子における突然変異は、葉の運命の決定を妨害し、竿型の葉の形成を誘発することが多い。as2とこのような遺伝子の間に関係があるのかも知れない。このような背景で、as1の機能がPHANの機能に類似するかどうかを調べることが残されているものの、as1がPHANのシロイヌナズナにおけるホモログであることは注目に値する。
【0030】
次にASLタンパクの機能について考察してみる。
AS2様タンパク質のN−末端側におけるアミノ酸配列の保存性によって、結果として、このようなタンパク質が、AS2ファミリーと呼ばれる植物タンパクの新しいファミリーを形成していることを示した。as2の発現を伴うこのファミリーのメンバーであるシロイヌナズナのタンパク質をASL(AS2様)タンパクと命名した(図4参照)。アミノ酸配列における類似性及びASLのAS2ドメインの系統樹は、ASLタンパクが、サブクラス、クラスIaとクラスIbを持つクラスI及びクラスIIに分割できることを示した(図2、及び図5参照)。
as2の発現を伴うAS2ファミリーメンバーの機能を同定することが残されたままであるが、AS2は、対称で、平坦で丸い葉身の形成及び明瞭な主脈を含む葉脈パターンの確立に必要とされる多であることが判明した。さらに、as2はas1と共に作用して、クラスIknoxホメオボックス遺伝子の発現を抑制する能力を持つ。AS2ドメインにおける保存的なグリシン残基のグルタミン酸残基による置換は、変異体の表現型を生じるので(図2〜図4参照)、AS2ドメインと同様にこの残基がAS2の機能で重要な役割を担っていることは明らかである。クラスIaのメンバーの一部はAS2ドメインのアミノ酸配列に強い保存を示すが(例えば、ASL1とASL2)、AS2の機能には、N−末端側AS2ドメイン以外に独特であるC−末端領域が必要とされるので、それらは異なった機能を持つ可能性がある。このような密接に関係するASLの役割に関する明瞭な見識にはさらなる遺伝的及び分子的実験が必要であろう。
【0031】
最近、ASL4に対する遺伝子に相当するLOB遺伝子(受入番号AF447897)が、通常メリステムと器官原基との境界に発現されるが、as1では存在せず、as2でも激減することが提言されたているが、LOB遺伝子の発生上の役割が未だ確定されていない。
クラスIIを構成する6つのASLは、クラスIとは異なる特徴的な構造の特性を持っており(図4参照)、そのアミノ酸配列は互いに極めて類似している。 このような遺伝子の発現が報告された(表2参照)ということは、それらが機能的遺伝子であることを示唆している。従って、クラスIIのメンバーはシロイヌナズナの発生途上で異なった役割を担っている可能性があると考えられる。
【0032】
本発明で報告したヌクレオチド及びアミノ酸の配列に関するジーンバンクの受入番号は以下のとおりである。AS2(AB080802);及びBACsF5I14(AC001229)、F1E22(AC007234)、及びF12P19(AC009513)。シロイヌナズナのAS2ファミリータンパク質のメンバーに関する情報を次の表2に要約する。
【0033】
【表2】
【0034】
表2中のBACコード及び遺伝子コードはTAIRデータベースから得たものであり、EST IDはEMBLデータベースから得たものである。表2の中のいくつかのASLタンパク質は、LOBドメイン(LBD)タンパク質として既にジーンバンクに提出されたものである。
【0035】
本発明は、新規な植物の葉形成関連タンパク質AS2を提供するものである。本発明のタンパク質AS2は配列表の配列番号2に記載されたアミノ酸配列を有するタンパク質が好ましいがこれに限定されるものではない。本発明のタンパク質は、植物細胞の核における特定の遺伝子の転写、対称性で平坦な葉身の発生、及び葉の葉脈の確立を制御できる機能を有するものであり、タンパク質のアミノ酸配列としてはシステインに富むC‐モチーフからなるシステイン反復配列及びロイシンジッパー様モチーフを有することを特徴とするものである。本発明のタンパク質のC−モチーフとしては、好ましくはCx2Cx6Cx3C(Cはシステインを示し、xは任意のアミノ酸を示す。)のアミノ酸配列を有するもの、より具体的なアミノ酸配列としてはCモチーフの中及び周りにおけるPCAACKFLRRKCxxxCVFAPYFP(アルファベットはアミノ酸の1文字表記を示し、xは任意のアミノ酸を示す。)のアミノ酸配列が挙げられる。また、ロイシンジッパー様モチーフとしては、好ましくはRxxAVxSLxYEAxARxRDPVYGCVGxISxLQxQL(V又はI)xxLQxxLxxxxxxL(V又はI)(アルファベットはアミノ酸の1文字表記を示し、xは任意のアミノ酸を示す。)のアミノ酸配列を例示することができる。さらに、Cモチーフとロイシンジッパー様配列との間における好ましいアミノ酸配列としてはFAxVHKVFGASNVxKLL(アルファベットはアミノ酸の1文字表記を示し、xは任意のアミノ酸を示す。)が挙げられ、この中のG(グリシン)は必要な配列である。
したがって、例えば、配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質においては、C−モチーフやロイシンジッパー様モチーフなどやグリシン位置が保存され、植物の葉の形成に関連する機能を有するものである限りにおいては、当該アミノ酸配列中のアミノ酸の1個又は2個以上、好ましくは1〜50個のアミノ酸が任意に置換、挿入、若しくは欠失してもよいアミノ酸配列からなる植物の葉の形成に関連するタンパク質AS2を提供するものである。本発明の好ましいタンパク質としては前記で説明してきたようなAS2ファミリーに属するアミノ酸配列を有するタンパク質などが挙げられる。
【0036】
また、本発明は前記した本発明の植物の葉形成関連タンパク質のいずれかをコードするDNAを提供するものである。本発明のDNAは1本鎖であっても2本鎖のものであってもよく、細胞内において前記した本発明の植物の葉形成関連タンパク質AS2を産生できるものであれよい。また、本発明のDNAは必要によりRNAの形態であってもよい。本発明のDNAの例示として、配列表の配列番号1に記載の塩基配列、又は当該塩基配列にストリージェントな条件下でハイブリダイズし得る塩基配列を有するDNAなどが挙げられる。
本発明のDNAは、DNA単独であってもよいが、適当なプラスミドなどからなるベクターに組み込まれたものであってもよい。したがって、本発明は、前記した本発明のDNAを含有してなるベクターを提供するものである。
【0037】
本発明のタンパク質AS2は植物、好ましくはシロイロナズナの葉の形成に関連するものであり、正常な葉の形成を制御することができる。従って、本発明は前記した本発明のタンパク質AS2を含有してなる植物の葉の形成を制御するための組成物、又は制御剤を提供するものである。また、本発明のタンパク質の使用に代えて必要に応じて、前記した本発明のDNAを使用することができる。したがって、本発明は、前記した本発明のDNAからなる植物の葉の形成を制御するための遺伝子、または制御用の組成物、又は制御剤を提供するものである。
【0038】
【実施例】
次に実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例において、植物の分析については、種子を土壌に播いて、4℃にて暗所で2日後、22℃にて16時間3000ルクスの白色光照明の条件に植物を移した。植物の日齢は、播種後の日数という観点で提供した。
as2−5対立遺伝子は、リールシーズ(米国テキサス州、ラウンドロック)から購入したエチルメタンスルホネートで変異誘発したLer−0の種子のM2集団から単離した。トランスジェニック株、#14−22.4.4W3(T−1200)及び#14−68.1.4(T−1700)は、(I−RS/dAc−I−RS)#14株から単離した。それらは、ハイグロマイシン ホスホトランスフェラーゼに対する遺伝子を含む転移dAc−I−RS因子(受入番号AB055064)を持っていた。#14−22.4.4W3(T−1200)及び#14−68.1.4(T−1700)の背景は、両者共にLerエコタイプであった。
【0039】
実施例1 (as2遺伝子のクローニング)
減数分裂組換え休止点を作成し、as2−1突然変異と隣接するトランスポゾンマーカー#14−68.1.4(T−1700)及び#14−22.4.4W3(T−1200)との間の組換えをスクリーニングすることによって、as2遺伝子の近傍で同定した。ハイグロマイシン耐性を示し、as2−1の表現型を持つ、このような組換え体を用いて、as2遺伝子に関するPCR−RFLPマーカーの地図上の位置決めを行った。PCR−RFLPマーカーとして用いた配列に関する情報は、ペンシルベニア大学、TAIRウエブサイト(http://www.arabidopsis.org/)におけるシロイヌナズナゲノムセンターのウエブサイトから入手し、BACクローンF5I14(ジーンバンク受入番号AC001229)のPCR−RFLPマーカーのヌクレオチド配列は以下のとおりである:
マーカー1については、
5’−TGTAACTCTTCCGTCCGGTTTG−3’及び
5’−GCAAAGTCCATAGAGGAGCAAG−3’、
マーカー2については、
5’−TTGGGTTTGCACCGAAACTCAG−3’及び
5’−AGTGACAGACAGTGACCACAAG−3’、
マーカー3については、
5’−TGGTGGGATGAAACTTTGTGAG−3’及び
5’−CTCTCTCTTTCTCACTCTTCTC−3’、
マーカー4については、
5’−AGAAAACTGCTGTCTTCGGGAC−3’及び
5’−TCCAAAGCACTCTCTAGCTTGG−3’
である(図1参照)。
【0040】
実施例2 (相補性解析)
相補性実験に関する二成分プラスミドを構築するために、6.16kbpのApaI−HpaI断片(図1における断片I)、4.75kbpのBsu36I−HpaI断片(図1断片II)及び2.2kbpのBsu36I−BglII断片(図1の断片III)を、pBI101(Jefferson, R.A., et al. (1987)EMBO J. 6:3901−3907)に由来し、1’プロモータ::バー(Yoshioka, Y., et al. (2001) Gnese. Genet. Syst. 76:189−198)を含むpBI−BARプラスミドに別々に挿入した。新しく構築したプラスミドをアグロバクテリウム(Agrobacterium tumefaciens)株、GV3101に導入した。次いで、別に記載するように(Clough, S.J. and Bent, A.F. (1998) Plant J. 16:735−743、 Galbiati,M., et al. (2000) Funct. Integr. Genomics1:25−34)、吸引浸潤により植物全体を形質転換した。0.01%のバスタ(Basta)(ドイツ、フランクフルト、AgroEvo)を含む土壌にてトランスジェニック植物を選抜したが、それは、どの遺伝子型のトランスジェニック植物をサザンブロットで解析したかということである。
【0041】
実施例3 (cDNAのクローニング)
16日令の植物からポリ(A)+RNAを調製した。逆転写PCRのために、cDNAの第1の鎖は、浜田らの方法(Hamada, S., et al. (2000) Plant J. 24:91−101)に準じて作成した。次いで、プライマー、
ORF15SF(5’−GGGTCGACATGGCATCTTCTTCAACAAACTCAC−3’)及び
ORF15NR(5’−GGGCGGCCGCTCAAGACGGATCAACAGTACGGC−3’)
によりas2のcDNAを増幅した。次いで増幅した断片をpBluescriptSK(−)(米国カリフォルニア州、ラホヤのストラタジーン)のSalT/NotI部位に連結し、ヌクレオチドの配列決定によって同一性を確認した。cDNAの5’末端配列は、プライマー、ORF15MR(5’−TATCTGAAGCTGACGAAGCTGATG−3’)を伴った5’−RACE及びアダプタプライマーにより決定した。cDNAの3’末端配列は、プライマー、ORF15MF(5’−GATCTCAGCTGTGCTAAATCTGAGC−3’)を伴った3’−RACE及びアダプタプライマーにより決定した。突然変異対立遺伝子(as2−1、as2−2、as2−4及びas2−5)のヌクレオチド配列は、各変異体のゲノムDNAからas2遺伝子領域を増幅することによって決定した。各変異植物から単離されていたポリ(A)+RNAから得たas2のcDNAのヌクレオチド配列も決定した。
【0042】
実施例4 (系統樹解析)
TAIR BLASTの2.0バージョンのプログラムを用いて(http://arabidopsis.org/Blast/index.html)、TAIRでのAGIデータセット(AGI、全ゲノムからのタンパク質)からas2に類似したシロイヌナズナの遺伝子を入手した。ゲノムネットブラストT2プログラム(http://www.blast.genome.ad.jp/)を用いて、ゲノムネットにおけるデータセットからその他の植物種のas2様遺伝子を入手した。CLUSTAL Wのバージョン1.8(Thompson, J.D., et al. (1994) Nucl. Acid. Res. 22:4673−4680)を用いてシロイヌナズナのAS2ファミリーの42メンバーのAS2ドメインの配列を並べた。最尤(ML)系統樹の構築のために、部分的再構成検索のために出発系統樹として近隣連結(NJ)系統樹を用いた。MOLPHYのバージョン2.3b3パッケージにおけるNJdist及びprotMLプログラムを用いた(http://www.ism.ac.jp/software/ismlib/softother.htm#molphy;Adachi, J. and Hasegawa, M. (1996) Comput. Sci. Monogr. 28:1−150)。NJdistからNJ系統樹を得て、ProtMLからML系統樹を得た。
それぞれの分枝の部分的なブートストラップ確率は、ProtMLプログラムを用いて概算した(Himi, S., et al. (2001) J. Mol. Evol. 53:387−393、 Sakakibara, K., et al., (2001) Mol. Biol. Evol. 18:491−502)。
【0043】
実施例5 (RNAのゲルブロット解析)
Col−0野生型植物の解析のために、12日令の植物から採取した根、子葉、葉、及び茎頂、28日令植物から採取した花芽、及び35日令植物から採取したロゼット葉、茎上葉、花の茎及び長角果を用いた。等量の1.0mgのポリ(A)+RNAを単離し、ノーザンブロットを行った。as2に対する部分的cDNAをプローブとして用いた。
プライマー1(5’−GATCTCAGCTGTGCTAAATC−3’)及び
プライマー2(5’−TCAAGACGGATCAACAGTAC−3’)
を用いてPCRによりそれを増幅し、PBluescriptSK(−)のEcoRV部位にクローニングした。ヌクレオチドの配列決定によりその同一性を確認した。ORFのコドン151からコドン200を伸長したプラスミドpas2c300をEcoRIとClaIで切断することにより作成された、停止コドンを持つ300bpの断片をハイプライムDNAラベリングキット(ドイツ、マンハイムのベーリンガーマンハイム)を用いて、製造元の指示書に従って、[α−32P]dCTPで標識した。この標識した断片をプローブとして用いた。
【0044】
実施例6 (インスート(in situ)ハイブリダイゼーション法)
植物の固定、パラフィン包埋及びin situハイブリッド形成のために用いた方法の詳細は、http://www.genetics.wisc.edu/CATG/barton/index.htmlで見い出すことができ、中西らの方法(Nakashima, M.,et al(1998)Plant cell Physiol. 39:690−700)に準じて行った。ミクロトーム(日本の東京のエルマ社)を用いて切片(厚さ8μm)を作成した。ClaIでプラスミドpas2c300を線状化した後、T3 RNAポリメラーゼによりアンチセンスRNAプローブを作成した。センスRNAプローブは、EcoRIでpas2c300を線状化した後、T7 RNAポリメラーゼによって作成した。
【0045】
実施例7 (プラスミドの構築)
CaMV 35Sプロモータの下流の二成分ベクターpSK1(Kojima, S., et al.(1999) DNA Res. 6:407−410)のXbaI及びNotI部位にて開始コドンから停止コドンまで伸長したas2cDNA(600bp)の断片を挿入することによってプラスミドpSK35S::as2を構築した。pTH−2(Chiu, W.,et al. (1996) Curr. Biol. 6:325−330)のSalIとNcoI部位にて、開始コドンから199番目のアミノ酸コドンまで伸長したas2cDNA(597bp)断片及び3つのアラニンリンカー配列(5’GCAGCTGCC3’)を挿入することによりプラスミドp35S::as2::GFPを構築した。35S::NLS::GFP及び35S::GFPを含むプラスミドは西浜らの方法(Nishihama, R.,et al. (2001) Genes Dev. 15:352−363)に準じて調製した。
【0046】
実施例8 (シロイヌナズナの形質転換)
小野内らの方法(Onouchi, H., et al. (1995) Mol. Gen. Genet. 247:653−660)に準じて、アグロバクテリウムが介在するシロイヌナズナの根外植片の形質転換を行った。pSK35S::as2又はpSK1(Kojima et al. (1999))を入れたアグロバクテリウムLBA4404/pAL4404(Hoekema, A., et al.(1984) J. Bacteriol 158:383−385)細胞を根外植片と共に培養した。15mg/LのハイグロマイシンB(Onouchi et al. (1995))の存在下、シュート誘導培地で形質転換体を選抜した。プラスミドpSK35S::as2又はpSK1を用いてA. tumefaciens株GV3101を形質転換した。次いで、吸引浸潤により植物全体を形質転換した。15mg/LのハイグロマイシンB及び300mg/Lのカルベニシリンを含むMS培地でトランスジェニック植物を選抜した。
【0047】
実施例9 (as2::GFPタンパクの細胞小器官局在)
フォンアミムらの方法(von Amim, A.G. and Deng, X.W. (1994) Cell 79:1035−1045)に従って、タマネギ球根の上皮層における細胞をp35S::as2::GFP、p35S::NLS::GFP又はp35S::GFPで形質転換した。冷却CCDカメラシステム(アリゾナ州、トゥーソンのフォトメトリクス)を装備した蛍光顕微鏡(ドイツ製、アキシオプラン2)によって蛍光シグナルを記録した。画像の疑似着色及びGFPからのシグナル量と細胞の幅の測定は、IPラボソフトウエアプログラム(バージニア州フェアファックスのスキャナリティクス)により行った。同一の細胞を1μg/mLの4’6−ジアミジノ−2−フェニルインドールジヒドロクロリド(DAPI)で染色し、同様に蛍光を記録した。
【0048】
実施例10 (逆転写−ポリメラーゼ鎖反応(RT−PCR))
トランスジェニック植物及び野生型の花芽を採取し、直ちに液体窒素中で凍結し、−80℃に保存した。ポリ(A)+RNAを精製し、cDNAの第1鎖を合成した。α−チューブリンcDNA特異的なプライマーによるDNA断片の均等な増幅を行うために試料の体積を正規化した。次いで、セミアルチらの方法(非特許文献23参照)によりPCRを行った。内因性as2の転写物に特異的に由来するDNA断片を増幅するために、as2転写物の5’及び3’非翻訳領域においてプライマーセットの設計のための部位を選択したが、それらは両方共、トランスジェニック植物を作出するのに用いたcDNAには存在しない。プライマー対は以下のとおりである:
α−チューブリンについては、
pU51(5’−GGACAAGCTGGGATCCAGG−3’)及び
pU52(5’−CGTCTCCACCTTCAGCACC−3’)、
as2遺伝子のcDNAの非翻訳領域については、
pU73(5’−CCCCTCTGAGCAACAGAAAGC−3’)及び
pU74(5’−CCAAAACCCTAAAATCTCAAGACGG−3’)、
as2cDNAのオープンリーディングフレームの領域については
pU328(5’−GTGTTTGGAGCAAGTAACGT−3’)及び
pU315(5’−AAACCTAGGAGACGGATCAACAGTACGGCG−3’)
である。
【0049】
【発明の効果】
本発明は、核における特定の遺伝子の転写、対称性で平坦な葉身の発生、及び葉の葉脈の確立を制御している新規なタンパク質AS2、及びそのファミリーを提供するものである。
本発明の植物の葉形成関連タンパク質AS2は、アミノ酸配列としてシステインに富むC‐モチーフからなるシステイン反復配列、特定の位置でのグリシン、及びロイシンジッパー様モチーフを有することを特徴とするものであり、このような特徴的なアミノ酸配列を有する1群のタンパク質が植物、好ましくはシロイロナズナに存在し、これらのタンパク質が植物の葉形成に関連し、葉の形成を制御していることを本発明は明らかにするものである。したがって、本発明は、これらのタンパク質AS2からなる植物の葉の形成、成長、保存の制御剤を提供するものである。
【0050】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、シロイヌナズナの第1染色体のas2遺伝子座を含むゲノムの領域構造及びゲノム断片による相補性解析の結果を示すものである。図1Aはシロイヌナズナの第1染色体のゲノムの領域構造を示し、T−1200及びT−1700は、ハイグロマイシン耐性(Hygr)遺伝子によるdAc−I−RS転移因子の位置を示す。図1Bは、BACクローンF5I14、その中のマーカー位置を含むas2周辺の染色体領域の拡大図及び相補性解析の結果を示す。as2cDNAの構造をゲノム構造の下に示す。相補性解析に用いた制限断片は、I、II、IIIと表記された水平の線で示す。右側の記号+及び−はそれぞれ、相当するDNA断片との相補性試験の正及び負の結果を示す。
【図2】図2は、本発明のタンパク質AS2のアミノ酸配列の例を示す。Cモチーフにおけるシステインの位置及びロイシンジッパー様配列における疎水性残基の位置は、それぞれ星印(*)及び点(・)で示す。種々のas2対立遺伝子における突然変異したアミノ酸残基は、野生型配列の上にイタリック体で示す。
【図3】図3は、本発明のタンパク質AS2のドメインの構成及び特有の特徴を示す。ボックスの下でブラケットで示す領域はAS2ドメインである。灰色のボックス及び縞のあるボックスはそれぞれCモチーフ及びロイシンジッパー様配列を表す。as2−1、as2−2、as2−4及びas2−5の突然変異の部位を示す。ボックスの下の数はアミノ酸残基の位置を示す。
【図4】図4は、AS2ファミリーメンバーにおけるAS2ドメインのアミノ酸配列の比較を示す。AS2ファミリーのメンバーの相当する領域の配列と共に、AS2の8番目から109番目の残基を並べる。20を超えるメンバーで保存されているアミノ酸残基を黒色背景上の白色文字で示す。Cモチーフにおけるコンセンサス配列及びロイシンジッパー様配列における疎水性残基は、それぞれ星印(*)及び点(・)で示す。ファミリーのメンバーすべてで保存されており、as2−5対立遺伝子で突然変異していたグリシン残基は星印2つ(**)で示す。シロイヌナズナのAS2ファミリーのメンバーは2つのクラス(クラスI及びクラスII)に分割することができる。クラスIIの3を超えるメンバーで保存されていたアミノ酸残基を灰色で示している。その他の植物における、O.s.はOryza sativa(イネ)を示し、G.m.はGlycine max(ダイズ)を示し、L.e.はLycopersicon esculentum(トマト)を示す。
【図5】図5は、シロイヌナズナのAS2ファミリータンパク質の42メンバーに関する系統樹を示す。分枝上の数は、ProtMLプログラムで計算された、そこにおけるブーツストラップ値を表す。各水平の枝の長さは、概算された進化上の距離に比例するするように表示されている。右側の区分は、AS2ファミリーのメンバーの分類を示す。
【図6】図6は、シロイヌナズナの種々の器官におけるas2転写物のポリ(A)+RNAのノーザンブロット解析の結果を示す図面に代わる写真である。12日令植物の根(レーン1)、子葉(レーン2)、葉(レーン3)、及び茎頂(レーン4)、28日令植物の花芽(レーン5)、及び35日令植物のロゼット葉(レーン6)、茎上葉(レーン7)、花の茎(レーン8)及び長角果(レーン9)から等量の1.0μgのポリ(A)+RNAを調製した。同じブロットを対照としてΕφ−チューブリン(TUBA)をプローブとして調べた。右側の数はマーカーRNA分子の大きさを示す。
【図7】図7は、インスート(in situ)ハイブリダイゼーション法によるas2転写物の検出(a〜d)結果を示す図面に代わる写真である。アンチセンスプローブで得られたas2転写物の分布パターン。(a)球状ステージ;(b)三角ステージ;(c)ハート型ステージ;(d)魚雷型ステージ;(e)(a)〜(d)のセンス対照。種皮の真下の細胞層の赤味がかった茶色の着色(白色の星印で示す)は、両方のプローブで生じるのでas2のRNAに特異的ではない。縮尺棒は20μmを示す。
【図8】図8は、タマネギの上皮細胞におけるas2::GFPの細胞小器官局在化の結果を示す図面に代わる写真である。35S::as2::GFP(A、B)、35S::NLS::GFP(C、D)及び35S::GFP(E、F)を衝撃法によりタマネギの上皮細胞に導入し、導入した組織を28℃にて16時間培養した。蛍光顕微鏡下で蛍光をモニターした(左側のパネル)。1μg/mLのDAPIで染色した核を右側のパネルに示す。縮尺棒は100μmを示す。
【図9】図9は、as2のcDNAを過剰発現したトランスジェニックシロイヌナズナのカルス及び植物の表現型、及びas2遺伝子の転写物の蓄積の結果を示す図面に代わる写真である。図9Aは、空のベクターpSK1(a)及びpSK35S::as2(b)による、Col−0由来の根断片の形質転換の結果を示す。縮尺棒は10mmを示す。図9Bは、トランスジェニックシロイヌナズナ植物の表現型を示す。(a)は空のベクターpSK1で形質転換した35日令の植物の場合であり、(b)はpSK35S::as2で形質転換した35日令の植物であり、(c)はpSK35S::as2で形質転換した25日令の植物であり、(d)はパネルcの植物をさらに15日間成長させたものである。縮尺棒は10mmを示す。図9Cは、トランスジェニック植物及び野生型植物(Col−0)におけるas2遺伝子の転写物のRT−PCR解析の結果を示す。サイクル数をそれぞれパネルの右側に示す。レーン1、パネルB(d)に示されるトランスジェニック植物;レーン2、野生型(Col−0)植物であり、as2転写物のオープンリーディングフレームの領域に特異的なプライマーで増幅した産物(a;ORF)、as2転写物の3’非翻訳領域に特異的なプライマーで増幅した産物(b;UTR)、及びα−チューブリンに対する遺伝子の転写産物に特異的なプライマーで増幅した産物(c;α−tubulin)を示す。図9Dは、葉の表現型を示す。典型的な35日令の野生型Col−0植物(a)及びas2−1植物(b)の5番目の葉を示す。軽い表現型の変化(c)及び厳しい表現型の変化(d)を示すトランスジェニック植物の典型的な葉を示す。縮尺棒は5mmを示す。
【発明の属する技術分野】
本発明は、植物の葉形成関連タンパク質AS2、詳細には、植物細胞の核における特定の遺伝子の転写、対称性で平坦な葉身の発生、及び葉の葉脈の確立を制御している植物の葉形成関連タンパク質AS2、より詳細には、システインに富むC‐モチーフからなるシステイン反復配列及びロイシンジッパー様モチーフを有することを特徴とする植物の葉形成関連タンパク質AS2に関する。より具体的には、植物の葉形成関連タンパク質AS2が、配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列中のアミノ酸が置換、挿入、若しくは欠失してもよいアミノ酸配列からなる植物の葉の形成に関連するタンパク質AS2に関する。
また、本発明は、植物の葉形成関連タンパク質AS2をコードするDNA、植物の葉形成関連タンパク質AS2を用いた植物の葉の形成を制御するための組成物、植物の葉形成関連タンパク質AS2をコードするDNAからなる植物の葉の形成を制御するための遺伝子、及びそれを含有してなるベクターに関する。
【0002】
【従来の技術】
相対的に平坦な組織である被子植物の葉は、その形状及び複雑さという点で広範囲な多様性を持っているが、その基本構造は、一般に、近位−遠位、内側−外側、及び向軸性−背軸性という3つの軸に基づいて説明することができる(非特許文献1〜4参照)。従って、植物は、葉の発生において、3つの軸の確立に関与する一般的なメカニズムを利用していると考えられる。
葉は茎頂のメリステム(SAM)から外側器官として発生する。3つの軸のそれぞれに沿った形状の発達、向軸性−背軸性のアイデンティティ及び葉の全体的な形状に関連する葉の形態の変化と共に種々の突然変異体が単離されてきた。
【0003】
突然変異の表現型に関与する遺伝子の一部はクローニングされ、性状分析されている(非特許文献5〜12参照)。myb様遺伝子(PHAN)及びホメオボックスを含む転写因子(PHBとPHV)をコードしていると思われるキンギョソウのPHANTASTICA(PHAN)、シロイヌナズナのPHABULOSA(PHB)、及びシロイヌナズナのPHAVOLUTA(PHV)は、向軸性細胞の運命に関与している。さらに、FILAMENTOUS FLOWER(FIL)、YABBY3(YAB3)、CRABS CLAW(CRC)、及びKANADI(KAN)などが挙げられ、これらは葉身における背軸性細胞の運命の仕様に関与している。このような遺伝子における突然変異によって、平坦に広がる葉が、糸状で竿型の構造に変異する。これは、向軸性−背軸性のアイデンティティも歪められているためであり、従って、葉身の側方への発生は、向軸性−背軸性のアイデンティティの遺伝子による決定と一緒になっている可能性があると考えられている。
内側−外側の軸に沿った葉の形状に関しては、多数の植物の葉は一般に、軸としての葉軸に対して明瞭であり、およその左右対称性を示す(非特許文献13〜17参照)。しかし、この点についてはいくつかの例外も報告されている(非特許文献18〜20参照)。いずれにしても、このような対称性は葉の形状の複雑さ(例えば、単一又は複合)とは無関係である。
【0004】
対称性の葉の発生に関与するメカニズムを明らかにするために、本発明者らを含む数組のグループがシロイヌナズナのアシンメトリックリーブズ2(as2)及びアシンメトリックリーブズ1(as1)を検討している。そのような突然変異体の表現型は、葉身及び奇形の葉脈系の非対称性という点で極めてよく似ているが、異常は絶対的に同一というわけではない(非特許文献21〜24参照)。これらの遺伝子の異常は以下のように要約することができる。(1)as1変異体及びas2変異体の葉は、非対称性の裂片を持ち、両側性に非対称である下向きの巻きを示す。(2)肥厚し、且つ明瞭な主脈を生じることができず、2次葉脈のパターンも非対称性である(非特許文献23及び24参照)。(3)試験管内にてフィトクロムを含まない培地で培養した葉の切片は、野生型の葉の切片よりも高い頻度でシュートを再生する(非特許文献23参照)。(4)例えば、KNAT1、KNAT2、及びKNAT6のようなクラスIknox遺伝子の転写物が変異体の葉に蓄積する(非特許文献23参照)。(5)トウモロコシのROUGH SHEATH2(RS2)及びPHANの産物に関係するmyb様転写因子をコードするas1の転写物は、子葉原基及び葉原基における導管組織の周りに蓄積する(非特許文献21参照)。
【0005】
以上のように要約された所見は、as1及びas2が、葉身対称性の発生と同様に、葉の左右対称性の構造的な軸としての顕著な主脈を含む、葉脈システム全体の確立に関与する可能性があることを示唆している(非特許文献23参照)。それらはまた、おそらくクラスIknox遺伝子の発現を抑制することによって、発生上の決定的状況に葉細胞を維持する点で機能している可能性がある。葉脈システムの確立におけるこのような遺伝子の役割は、葉細胞の決定的状況を維持することと高く相関しているが、そのような相関の詳細は明らかにされていない。as1、as2及びas1とas2の二重変異植物の異常の類似性によってas1とas2は幾分遺伝的に相互作用しているという提案が導かれている(非特許文献23参照)。as1とas2が葉身形成を制御するメカニズムにおいてさらに見識を得るには、as2遺伝子及びas1遺伝子の両方の性状分析を行うことが極めて重要である。
【0006】
as2遺伝子座は、2つのシロイヌナズナのトランスジェニック株#14−22.4.4W3(T−1200)及び#14−68.1.4(T−1700)において、dAc−I−RSとして知られる転移因子の2つの誘導体の間に地図上の位置が決定されたことが、本発明者らにより報告されている(非特許文献25参照)。しかし、その詳細については報告されていなかった。
【0007】
【非特許文献1】
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【非特許文献4】
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【非特許文献5】
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【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、植物における対称性で平坦な葉の発生、及び葉の葉脈を確立させるための手法を、詳細にはそのための遺伝子を確立することを目的としている。より詳細には、本発明は、as2遺伝子を単離し、その性状分析を行うことにより、対称性で平坦な葉の発生及び葉の葉脈の確立を制御する方法を提供し、そのために有用な新たなタンパク質AS2、及びそれをコードする遺伝子as2を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、as2遺伝子を単離し、性状分析を行った。この遺伝子は、C‐モチーフと命名されたシステイン反復配列及びロイシンジッパー様モチーフを含む新規タンパク質をコードする。データベースの検索では、AS2は、本発明者らがAS2ファミリーと命名したタンパク質の大きなファミリーに属することが判った。as2遺伝子の転写物は主として、胚発生中に子葉原基の向軸性ドメインで検出された。AS2は明瞭な核への局在シグナルを含んではいないが、緑色蛍光タンパクを結合したAS2は植物の核に局在していた。as2cDNAの過剰発現は、トランスジェニック植物のシュートの形成効率に低下を生じた。as2cDNAを過剰発現したトランスジェニックシロイヌナズナは、上向きに巻いた葉を生じ、時には葉身の適当な広がりを持たない竿型の葉を生じた。従って、AS2は、核における特定の遺伝子の転写、対称性で平坦な葉身の発生、及び葉の葉脈の確立を制御している可能性があることを見出した。
【0010】
本発明は、植物の葉形成関連タンパク質AS2に関する。詳細には、植物細胞の核における特定の遺伝子の転写、対称性で平坦な葉身の発生、及び葉の葉脈の確立を制御している植物の葉形成関連タンパク質AS2、より詳細には、システインに富むC‐モチーフからなるシステイン反復配列及びロイシンジッパー様モチーフを有することを特徴とする植物の葉形成関連タンパク質AS2に関する。より具体的には、植物の葉形成関連タンパク質AS2が、配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列中のアミノ酸が置換、挿入、若しくは欠失してもよいアミノ酸配列からなる植物の葉の形成に関連するタンパク質AS2に関する。
また、本発明は、植物の葉形成関連タンパク質AS2をコードするDNA、より詳細にはDNAが、配列表の配列番号1に記載の塩基配列、又は当該塩基配列にストリージェントな条件下でハイブリダイズし得る塩基配列を有するものである植物の葉形成関連タンパク質AS2をコードするDNAに関する。
さらに、本発明は、植物の葉形成関連タンパク質AS2を用いた植物の葉の形成を制御するための組成物、植物の葉形成関連タンパク質AS2をコードするDNAからなる植物の葉の形成を制御するための遺伝子、及びそれを含有してなるベクターに関する。
【0011】
本発明者らは、2つのシロイヌナズナのトランスジェニック株#14−22.4.4W3(T−1200)及び#14−68.1.4(T−1700)において、as2遺伝子座が、dAc−I−RSとして知られる転移因子の2つの誘導体の間に地図上の位置存在していることを決定していた。これに基づいてas2遺伝子のクローニングを行った。遺伝子地図に基づいたクローニングにおいて、BACクローンF5I14におけるPCR−RFLPマーカー以外に、遺伝的且つ分子マーカーとしてこのような2つのdAc−I−RS因子に着目した。この因子はハイグロマイシン耐性遺伝子を含んでおり、as2遺伝子座は最終的には、BACクローンF5I14における2つのPCR−RFLPマーカー(マーカー1とマーカー4)の間の32kbpの領域であることがわかった。
【0012】
図1に、シロイヌナズナの第1染色体のゲノムの領域構造、及びゲノム断片による相補性解析の結果を示す(図1A)。図1AのT−1200及びT−1700は、ハイグロマイシン耐性(Hygr)遺伝子によるdAc−I−RS転移因子の位置を示す。図1Bは、第1染色体におけるas2遺伝子付近の各BACクローン(F5I14、F1E22、及びF12P19)を示す。BACクローンF5I14の上に4種のマーカーの位置を示し、マーカーの上の番号は、それぞれのマーカーとas2遺伝子座との間での組換え体の数を示す(ほとんどの場合で10,000を超える染色体を調べた。)。
本発明者らは、我々はT−1200及びT−1700のハイグロマイシン耐性(Hygr)遺伝子から染色体ウォーキングを開始し、本発明者らが解析のために作成したRFLPマーカーである、マーカー1、マーカー2、マーカー3及びマーカー4のうちの、as2遺伝子がマーカー1とマーカー4の間の32kbpの領域であることを決定した。
【0013】
次に、as2−1変異体のこの領域のDNAのPCR−RFLP解析を行い、 配列を決定した。BACクローンF5I14のオープンリーディングフレーム(ORF)15に相当するORFにおいて、13bpの欠失を見い出した。さらに、本発明者らは、as2−2、as2−4、及びas2−5のような利用可能なその他の対立遺伝子がすべてこのORFにおいて突然変異を持っていることを見い出した(詳細は、後述する図2Aなどを参照のこと。)。ORF15における突然変異がas2の表現型に関与しているかどうかを確定するために、本発明者らは、ORF15すべてを含んでいる野生型ゲノムのApaI−HpaI断片(断片I;6.16kb)を、as2−1遺伝子が変異している植物(as2−1植物)に導入した。また、ORF15の上流領域を欠く断片II、及びORF15の上流領域とORF15の真ん中から断片Iの3’末端までを欠く断片IIIで、as2−1植物を形質転換した。この結果、断片Iのみがas2の表現型を示した。
図1Bは、as2周辺の染色体領域の拡大図及び相補性解析の結果を示すものであり、as2のcDNAの構造をゲノム構造の下に示す。相補性解析に用いた制限断片の構造を、I、II、IIIと表記された水平の線で示す。右側の記号+及び−はそれぞれ、相当するDNA断片との相補性試験の正及び負の結果を示す。
ORF15は、3000Daを超えるタンパク質をコードすることができる断片Iにおける唯一のリーディングフレームである。従って、この結果は、ORF15がas2遺伝子に相当することを示している。断片IIがas2の表現型を補完できなかったことは、断片IのApaIとBsu36Iとの間の領域がas2の発現に必要であることを示していた。
【0014】
本発明者らは、ORF15に相当するcDNAクローンを単離した。この塩基配列を配列表の配列番号1に示す。またそのアミノ酸配列を配列番号2に示す。as2遺伝子のヌクレオチド配列をcDNAの配列と比較すると、mRNAは、5’非翻訳領域にイントロンを2つ含むが、コーディング領域にはイントロンを含まず(図1B)、さらに、AS2は、199のアミノ酸残基を持つ新規のタンパク質をコードしていた。図2に、AS2の予想アミノ酸配列を示す。Cモチーフにおけるシステインの位置及びロイシンジッパー様配列における疎水性残基の位置は、それぞれ星印(*)及び点(・)で示す。種々のas2対立遺伝子における突然変異したアミノ酸残基を野生型の配列の上にイタリック体で示す。
また、図3にas2のドメインの構成及び特有の特徴を示す。ボックスの下でブラケットで示す領域はas2ドメインである。灰色のボックスはCモチーフを示し、縞のあるボックスはロイシンジッパー様配列を表す。as2−1、as2−2、as2−4及びas2−5の突然変異の部位を示す。ボックスの下の数はアミノ酸残基の位置を示す。
【0015】
as2−1とas2−2の対立遺伝子は両方とも、ロイシンジッパー様配列をコードする配列の上流の同じ部位に13bpの欠失を有している。この欠失によって、AS2のカルボキシル末端(C−末端)側のほとんどを欠くが、追加の13アミノ酸残基を含む短いポリペプチドを生じるはずである(図2参照)。as2−4変異体では、AS2のC−末端側に相当するコーディング領域の真ん中に1bpの欠失があり、これによってAS2のC−末端48アミノ酸残基で新しい63残基による置き換えを生じるフレームシフト突然変異が起きていた(図2参照)。as2−5変異体では、タンパク質のアミノ末端(N−末端)側のコーディング領域で単一のグアニンヌクレオチドがアデニンヌクレオチドで置換されており、これによって、46位においてグルタミン酸残基によるグリシン残基の置換が生じていた(図2参照)。このグリシン残基は、以下に説明するように、AS2ファミリーのあらゆるメンバーで保存されている。従って、このグリシン残基はAS2の機能にとって必須である。
【0016】
次に、AS2及びその関連タンパク質の構造的な特徴を調べた。
予想されるAS2タンパク質は、81番目の残基から109番目の残基までのロイシンジッパー様配列を含んでおり、それには、6残基の間隔と共に、バリン、イソロイシン及びロイシンのような疎水性アミノ酸残基の5回の反復が含まれていた(図2参照)。データベース検索によれば、AS2のN−末端側は、シロイヌナズナ及びその他の植物種(Oryza sativa(イネ)、Glycine max(ダイズ)、Lycopersicon esculentum(トマト)など)の仮説遺伝子及びESTによってコードされる多数の推定上のN−末端側に、アミノ酸配列という点で類似していることが判った(図2B)。シロイヌナズナの配列に関する公的データベースには、AS2のN−末端側に関係するN−末端を持つタンパク質をコードしていると予想されるORFは少なくとも41あった。このようなタンパク質のうち、数個は、単にかすかにAS2に関係していると思われる(図4参照)。
図4に示すように、推定上のAS2様タンパク質の比較解析によって、Cx2Cx6Cx3C配列(この場合、xは保存的でない残基である;Cモチーフと命名した)は、データベース検索及びAS2(AS2の10位〜24位)で同定された41の予想タンパク質すべてのN−末端側において完全に保存されていることが判った。Cモチーフ以外にも、ロイシンジッパー様配列も41のタンパク質のほとんどで強く保存されていた。AS2を含む半分を超えるタンパク質が以下のような追加の保存的配列を持っていた:Cモチーフの中及び周りにおけるPCAACKFLRRKCxxxCVFAPYFP、Cモチーフとロイシンジッパー様配列との間におけるFAxVHKVFGASNVxKLL、及びロイシンジッパー様配列の周りにおけるRxxAVxSLxYEAxARxRDPVYGCVGxISxLQxQL(V又はI)xxLQxxLxxxxxxL(V又はI)(図4参照)。AS2のN−末端におけるアミノ酸配列の強い保存にもかかわらず、AS2のC−末端領域のアミノ酸配列は、その他のAS2様タンパク質及びデータベースにおけるその他のタンパク質の配列とは異なっていた(図3参照)。
【0017】
AS2では、N−末端配列は、Cモチーフとロイシンジッパー様配列を特徴としている。本発明者らは、この特徴的な領域をAS2ドメインと呼び、このドメインを含むタンパク質をAS2ファミリーのメンバーと呼ぶことにした。この命名法によれば、シロイヌナズナのゲノムは、AS2ファミリーに属するタンパク質をコードする可能性のあるORFを42含んでいることになる。図4に示すように、この遺伝子及びAS2に似た41のタンパク質の推定上の遺伝子に対してas2様遺伝子(ASL)という命名を付し、このような遺伝子にそれぞれ1〜41の番号を付けた。このような遺伝子のcDNAの一部のヌクレオチド配列はジェンバンク(GenBank)データベースに提出され、スアイ(Shuai B.)及びシュプリンガー(Springer、P.S)(2001年、表2参照)によってLOB及びLBDと命名された。
【0018】
図4に、AS2ファミリーメンバーにおけるAS2ドメインのアミノ酸配列の比較を示す。AS2ファミリーのメンバー(ASLと呼ぶ、)の相当する領域の配列と共に、AS2の8番目から109番目の残基を並べる。20を超えるメンバーで保存されているアミノ酸残基を黒色背景上の白色文字で示す。Cモチーフにおけるコンセンサス配列及びロイシンジッパー様配列における疎水性残基は、それぞれ星印(*)及び点(・)で示す。ファミリーのメンバーすべてで保存されており、as2−5対立遺伝子で突然変異していたグリシン残基は星印2つ(**)で示す。シロイヌナズナのAS2ファミリーのメンバーは2つのクラス(クラスI及びクラスII)に分割することができる。クラスIIの3を超えるメンバーで保存されていたアミノ酸残基を灰色で示す。多の植物における、O.s.はOryza sativa(イネ)を示し、G.m.はGlycine max(ダイズ)を示し、及びL.e.はLycopersicon esculentum(トマト)をそれぞれ示す。
【0019】
これらのAS2ファミリーのメンバーは少なくとも2つのクラス、クラスI及びクラスIIに分けることができる(図4参照)。クラスIは、AS2及び35のタンパク質(ASL1〜ASL35)から成り、Cモチーフ、ロイシンジッパー様配列及び上記で述べた主要な保存された残基のほとんどを含む。クラスIIは6つのタンパク質(ASL36〜ASL41)から成る。 このようなタンパク質は、Cモチーフ及び不完全なロイシンジッパー様配列を含み、その中では、4番目の疎水性残基が欠損しており、AS2ドメインにはさらに弱くしか保存されていない。その上、このクラスではクラスIIのあらゆるメンバーの間でほとんどのアミノ酸配列が保存されており、各タンパク質において僅かな残基が異なっているに過ぎない。
図5に、検索されたシロイヌナズナのAS2ファミリータンパク質の42メンバーに関する系統樹を示す。分枝上の数は、ProtMLプログラムで計算された、そこにおけるブーツストラップ値を表す。各水平の枝の長さは、概算された進化上の距離に比例するように作製されている。右側の区分は、AS2ファミリーのメンバーの分類を示す。
図5に示すように、クラスIIはクラスIからは離れて関係しているにすぎないことが系統樹により裏付けられ、クラスIのメンバーは、クラスIa及びクラスIbと命名されたサブクラスにさらに分割することができ、配列の保存性は弱いが、完全なロイシンジッパー様配列を持っていることが示された。
【0020】
次に、本発明者らは、野生型植物においてas2転写物の蓄積部位を調べた。12日令の植物の根、子葉、葉、及び茎頂、28日令の植物の花芽、35日令の植物のロゼット葉、茎上の葉、花の茎及び長角果からポリ(A)+RNAを精製し、次いで、RNA試料でプローブとしてas2のcDNAを用いたノーザンブロット解析を行った。結果を図6に図面に代わる写真で示す。図6はシロイヌナズナの種々の器官のポリ(A)+RNAのノーザンブロット解析の結果を示す。12日令植物の根(レーン1)、子葉(レーン2)、葉(レーン3)、及び茎頂(レーン4)、28日令植物の花芽(レーン5)、及び35日令植物のロゼット葉(レーン6)、茎上葉(レーン7)、花の茎(レーン8)及び長角果(レーン9)から等量の1.0μgのポリ(A)+RNAを調製した。同じブロットを対照としてΕφ−チューブリン(TUBA)をプローブとして調べた。右側の数はマーカーRNA分子の大きさを示す。
as2の転写物は、花の茎を除いて解析した試料のすべてで検出された(図6参照)。as2転写物のレベルは、小さな発生途上の葉が含まれる茎頂の試料で最も高かった。このようなデータは、as2突然変異は、子葉、ロゼット葉、茎上の葉、萼片及び花弁のようなあらゆる葉様の器官における変異体の表現型として明白であるが、茎にはないという以前の観察と一致している(非特許文献23参照)。しかしながら、as2転写物は根で検出されたが、as2植物の根は野生型の根と似ていた。
【0021】
本発明者らは、プローブとしてas2のcDNAを用いたインスート(in situ)ハイブリダイゼーション法によって胚発生過程におけるas2の発現部位についても調べた。結果を図7に図面に代わる写真で示す。図7は、インスート(in situ)ハイブリダイゼーション法によるas2転写物の検出(a〜d)結果を示す。アンチセンスプローブで得られたas2転写物の分布パターンである。図7の(a)は球状ステージ;(b)は三角ステージ;(c)はハート型ステージ;(d)は魚雷型ステージ;(e)は(a)〜(d)のセンス対照パネルを示す。種皮の真下の細胞層の赤味がかった茶色の着色(白色の星印で示す)は、両方のプローブで生じるのでas2のRNAに特異的ではない。図7の縮尺棒は20μmを示す。
球状ステージの胚では、as2の転写物はすべての細胞で検出された(図7参照)。三角の胚の上部にて膨らみが形成されるにつれて、as2の転写物は、胚の最上層領域に蓄積した(図7(b)参照)。ハート型ステージから魚雷型ステージまで、子葉原基の向軸性側での原表皮細胞でシグナルを検出した(図7(c)、(d)参照)。ウォーキング−スティックステージの後、as2転写物の蓄積は、特定の領域に明瞭に濃縮されることなく、子葉原基の至るところで検出された(データは示さず)。発芽の後、茎頂のメリステムの周り、葉の原基及び成熟した葉においてインスート(in situ)では特異的なハイブリッドの形成のシグナルは検出されなかった。しかしながら、as2転写物の蓄積は、ノーザンブロットで確認された(図6参照)。
【0022】
次に、AS2の核内への局在について調べた。予想されたAS2タンパク質は核内への明瞭な局在シグナル(NLS)を含んでいない(図2参照)。
本発明者らは、AS2が植物細胞の核に局在するかどうかを確定するために、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)の35Sプロモータ(35S::as2::GFP)の制御下での転写とともに、as2cDNAを緑色蛍光タンパク(GFP)のDNAに結合した融合コンストラクトを作製した。この融合コンストラクトを粒子衝撃法によってタマネギの上皮細胞に導入し、GFPによる蛍光をモニターした。結果を図8に図面に代わる写真で示す。図8は、タマネギの上皮細胞におけるas2::GFPの細胞小器官の局在をモニターした結果を示す。図8のA及びBは35S::as2::GFPの場合を示し、図8のC及びDは35S::NLS::GFPの場合を示し、図8のE及びFは35S::GFPの場合を示す。それぞれの遺伝子を衝撃によってタマネギの上皮細胞に導入し、導入した組織を28℃にて16時間培養した。蛍光顕微鏡下で蛍光をモニターした(左側のパネル(図8のA、C及びE)。また、1μg/mLのDAPIで染色した核を右側のパネル(図8のB、D及びF)に示す。図8の各縮尺棒は100μmを示す。
図8に示すように、as2−GFPによる蛍光シグナルは、SV40のNLSによって調製されたNLS−GFPによる類似のシグナル同様に主として核内にて検出された(図8A、C)。35S::GFPのコンストラクトをタマネギ細胞に導入した場合、GFPによるシグナルは核及び細胞質の双方で検出された(図8E)。このような結果は、AS2が核内タンパクであることを示している。
【0023】
次に、本発明者らは、AS2を過剰に生産するシロイヌナズナ植物の表現型を調べた。35Sプロモータにas2cDNAを結合させ(35S:as2)、as2を過剰に発現するトランスジェニックのシロイヌナズナ植物を作出した。結果を図9に図面に代わる写真で示す。図9のAは、空のベクターpSK1(a)及びpSK35S::as2(b)により形質転換したCol−0由来の根断片をインキュベートし、インキュベートを開始後21日目に写真撮影した結果を示す。図9Aの縮尺棒は10mmを示す。図9のBは、トランスジェニックしたシロイヌナズナ植物の表現型を示す。図9Bの(a)は空のベクターpSK1で形質転換した35日令の植物の場合を示し、(b)はpSK35S::as2で形質転換した35日令の植物の場合を示し、(c)はpSK35S::as2で形質転換した25日令の植物の場合を示し、(d)は(c)の植物をさらに15日間成長させた場合を示す。図9Bの縮尺棒は10mmを示す。図9Cは、トランスジェニック植物及び野生型植物(Col−0)におけるas2遺伝子の転写物のRT−PCR解析の結果を示す。RT−PCRのサイクル数をそれぞれのパネルの右側に示す。増幅したDNA断片をアガロースゲル上の電気泳動で分画し、臭化エチジウムで染色して視覚化した。レーン1は図9Bの(d)に示されるトランスジェニック植物の場合を示し、レーン2は野生型(Col−0)植物の場合を示す。as2転写物のオープンリーディングフレームの領域に特異的なプライマーで増幅した産物(a;ORF)、as2転写物の3’非翻訳領域に特異的なプライマーで増幅した産物(b;UTR)、及びα−チューブリンに対する遺伝子の転写産物に特異的なプライマーで増幅した産物(c;α−tubulin)を示す。図9Dは、それぞれの葉の表現型を示す。(a)は典型的な35日令の野生型Col−0植物の場合を示し、(b)はas2−1植物の5番目の葉を示す。軽い表現型の変化(c)及び厳しい表現型の変化(d)を示すトランスジェニック植物の典型的な葉を示す。後者の葉の位置は決定することができなかった。図9Dの縮尺棒は5mmを示す。
【0024】
この予備実験のデータは、形質転換したシュート(shoot)を作出するのは困難であることを明示していた(図9A)。従って、本発明者らは先ず、従来の根形質転換法により形質転換されたシュートのおよその作出効率を確定した。
形質転換について、用いた根の数当りの形質転換された緑色カルス、再生されたシュート(shoot)、及び花の茎を伴うシュート(shoot)の数を数えた。結果を次の表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
表1中のカッコ()内の数値は、根当たりの形質転換体の平均数を示す。
表1は、35S:as2を根組織に導入した場合の緑色カルスの形成効率は、空のベクタープラスミド、pSK1を形質転換に用いた場合よりも低いことを示している。トランスジェニックシュート及び花の茎を伴うシュートの再生効率は、5倍〜10倍低い(表1参照)。
このようなデータは、as2cDNAの過剰発現は、緑色組織における細胞増殖及び/又はシュートの再生に抑制効果を持つことを示した。
as2cDNAを過剰発現する2つのトランスジェニック株を得た。このcDNAに由来するas2転写物がさらに厳しい表現型を示すトランスジェニック株の1つに蓄積されていることを確認した(図9C参照)。トランスジェニック植物の1つの株は、軽い矮性の表現型を持ち、上向きに巻いた葉を生じた(図9Bの(b)参照)。トランスジェニック植物のもう1つの株は、さらに厳しい異常な表現型を伴っており、植物成長の早期ステージで極めて狭い葉身を持つ葉を生じた(図9Bの(c)、及び図9Dの(c)参照)。この葉身は広がることができず、竿状の葉を生じた(図9Bの(d)、及び図9Dの(d)参照)。
【0027】
以上のことから、AS2における機能的ドメインを考察した。
as2遺伝子は、そのN−末端側にCモチーフ(Cx2Cx6Cx3Cとして定義される)及びロイシンジッパー様配列を含み、そのC−末端側に明らかに独特な配列を含む199のアミノ酸残基の新規タンパク質をコードすると思われる(図2、図3参照)。ロイシンジッパー配列がタンパク質−タンパク質の相互作用に関与することは一般的に受け入れられており、as2のロイシンジッパー様配列は、AS2といくつかのそのほかのタンパク質との会合に役割を担っている可能性があると考えられる。そのような相互作用がAS2の作用に必須かも知れない。
Cモチーフは本発明で初めて同定されたが、それはむしろ、一般にCx2〜3CxnCx2〜3C(n>12)のコンセンサス配列を持ち、その他の巨大分子との相互作用で機能するジンクフィンガーに似ている(Pavletich, N.P. and Pabo, C.O. (1991) Science 252 :809−817、 Wang, J.H. et al. (1998) Immunity 9:543−553)。Cモチーフもまた、例えば、DNAやタンパク質、特にAS1のようなその他の巨大分子との会合に関与しているのはありそうなことである。AS2の機能を完全に解明するには、AS2が相互作用する分子の同定及び性状分析がさらに必要である。
【0028】
AS2のC−末端側の配列は、既知のモチーフを含む(図3参照)データベースのどのタンパク質の配列とも異なっている。as2−4対立遺伝子はこの領域にフレームシフト突然変異を持っていたが、この対立遺伝子による表現型は、他のas2対立遺伝子による表現型に似ているので、C−末端側は、新しく特徴付けられたAS2ドメインを含むN−末端側以外のAS2の機能に必須であると考えられる。
【0029】
as1及びas2の双方共、クラスIknoxホメオボックス遺伝子の発現を抑制するが、そのような抑制が直接的に又は間接的にas1及びas2に起因するのかどうかは明らかではない。本発明者らは本発明により、他の未だ同定されていない核内タンパク質との相互作用を介して核におけるクラスIのknox遺伝子の抑制に関与するタンパク質に対して予想されるように、as2:GFP融合タンパクが植物細胞の核に局在することを明らかにした(図8参照)。as1:GFP融合タンパクも核内に局在していた(未発表データ)。このような所見は、as1はas2が核において相互作用する分子の1つであるという仮説に矛盾しない。
as2cDNAの過剰発現によって上向きに巻いた葉及び子葉が誘導された(図9参照)。それに対して、as2の機能欠損突然変異では、下向きに巻いた葉及び子葉を生じた(非特許文献23参照)。従って、as2は、葉身における向軸性ドメインの成長の抑制又は背軸性ドメインの成長の刺激に関与している。形質転換(図9B参照)及び胚の子葉原基における向軸性ドメインでのas2の発現(図7参照)の際に、成長抑制効果が認められたことを考慮すれば、as2は向軸性ドメインの抑制に機能していると推測することができる。そのような抑制が、細胞の増殖又は伸長の阻害を介して成し遂げられるのかどうかを調べるのは興味深いであろう。
分子レベルでのAS2活性の詳細がどうであれ、過剰発現に関する本発明及びas2突然変異の葉に関する以前の研究は、AS2が葉の対称性と同様に平坦な葉身の拡張に関与していることを示している。葉のドメインの向軸性−背軸性の運命に関与する遺伝子における突然変異は、葉の運命の決定を妨害し、竿型の葉の形成を誘発することが多い。as2とこのような遺伝子の間に関係があるのかも知れない。このような背景で、as1の機能がPHANの機能に類似するかどうかを調べることが残されているものの、as1がPHANのシロイヌナズナにおけるホモログであることは注目に値する。
【0030】
次にASLタンパクの機能について考察してみる。
AS2様タンパク質のN−末端側におけるアミノ酸配列の保存性によって、結果として、このようなタンパク質が、AS2ファミリーと呼ばれる植物タンパクの新しいファミリーを形成していることを示した。as2の発現を伴うこのファミリーのメンバーであるシロイヌナズナのタンパク質をASL(AS2様)タンパクと命名した(図4参照)。アミノ酸配列における類似性及びASLのAS2ドメインの系統樹は、ASLタンパクが、サブクラス、クラスIaとクラスIbを持つクラスI及びクラスIIに分割できることを示した(図2、及び図5参照)。
as2の発現を伴うAS2ファミリーメンバーの機能を同定することが残されたままであるが、AS2は、対称で、平坦で丸い葉身の形成及び明瞭な主脈を含む葉脈パターンの確立に必要とされる多であることが判明した。さらに、as2はas1と共に作用して、クラスIknoxホメオボックス遺伝子の発現を抑制する能力を持つ。AS2ドメインにおける保存的なグリシン残基のグルタミン酸残基による置換は、変異体の表現型を生じるので(図2〜図4参照)、AS2ドメインと同様にこの残基がAS2の機能で重要な役割を担っていることは明らかである。クラスIaのメンバーの一部はAS2ドメインのアミノ酸配列に強い保存を示すが(例えば、ASL1とASL2)、AS2の機能には、N−末端側AS2ドメイン以外に独特であるC−末端領域が必要とされるので、それらは異なった機能を持つ可能性がある。このような密接に関係するASLの役割に関する明瞭な見識にはさらなる遺伝的及び分子的実験が必要であろう。
【0031】
最近、ASL4に対する遺伝子に相当するLOB遺伝子(受入番号AF447897)が、通常メリステムと器官原基との境界に発現されるが、as1では存在せず、as2でも激減することが提言されたているが、LOB遺伝子の発生上の役割が未だ確定されていない。
クラスIIを構成する6つのASLは、クラスIとは異なる特徴的な構造の特性を持っており(図4参照)、そのアミノ酸配列は互いに極めて類似している。 このような遺伝子の発現が報告された(表2参照)ということは、それらが機能的遺伝子であることを示唆している。従って、クラスIIのメンバーはシロイヌナズナの発生途上で異なった役割を担っている可能性があると考えられる。
【0032】
本発明で報告したヌクレオチド及びアミノ酸の配列に関するジーンバンクの受入番号は以下のとおりである。AS2(AB080802);及びBACsF5I14(AC001229)、F1E22(AC007234)、及びF12P19(AC009513)。シロイヌナズナのAS2ファミリータンパク質のメンバーに関する情報を次の表2に要約する。
【0033】
【表2】
【0034】
表2中のBACコード及び遺伝子コードはTAIRデータベースから得たものであり、EST IDはEMBLデータベースから得たものである。表2の中のいくつかのASLタンパク質は、LOBドメイン(LBD)タンパク質として既にジーンバンクに提出されたものである。
【0035】
本発明は、新規な植物の葉形成関連タンパク質AS2を提供するものである。本発明のタンパク質AS2は配列表の配列番号2に記載されたアミノ酸配列を有するタンパク質が好ましいがこれに限定されるものではない。本発明のタンパク質は、植物細胞の核における特定の遺伝子の転写、対称性で平坦な葉身の発生、及び葉の葉脈の確立を制御できる機能を有するものであり、タンパク質のアミノ酸配列としてはシステインに富むC‐モチーフからなるシステイン反復配列及びロイシンジッパー様モチーフを有することを特徴とするものである。本発明のタンパク質のC−モチーフとしては、好ましくはCx2Cx6Cx3C(Cはシステインを示し、xは任意のアミノ酸を示す。)のアミノ酸配列を有するもの、より具体的なアミノ酸配列としてはCモチーフの中及び周りにおけるPCAACKFLRRKCxxxCVFAPYFP(アルファベットはアミノ酸の1文字表記を示し、xは任意のアミノ酸を示す。)のアミノ酸配列が挙げられる。また、ロイシンジッパー様モチーフとしては、好ましくはRxxAVxSLxYEAxARxRDPVYGCVGxISxLQxQL(V又はI)xxLQxxLxxxxxxL(V又はI)(アルファベットはアミノ酸の1文字表記を示し、xは任意のアミノ酸を示す。)のアミノ酸配列を例示することができる。さらに、Cモチーフとロイシンジッパー様配列との間における好ましいアミノ酸配列としてはFAxVHKVFGASNVxKLL(アルファベットはアミノ酸の1文字表記を示し、xは任意のアミノ酸を示す。)が挙げられ、この中のG(グリシン)は必要な配列である。
したがって、例えば、配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質においては、C−モチーフやロイシンジッパー様モチーフなどやグリシン位置が保存され、植物の葉の形成に関連する機能を有するものである限りにおいては、当該アミノ酸配列中のアミノ酸の1個又は2個以上、好ましくは1〜50個のアミノ酸が任意に置換、挿入、若しくは欠失してもよいアミノ酸配列からなる植物の葉の形成に関連するタンパク質AS2を提供するものである。本発明の好ましいタンパク質としては前記で説明してきたようなAS2ファミリーに属するアミノ酸配列を有するタンパク質などが挙げられる。
【0036】
また、本発明は前記した本発明の植物の葉形成関連タンパク質のいずれかをコードするDNAを提供するものである。本発明のDNAは1本鎖であっても2本鎖のものであってもよく、細胞内において前記した本発明の植物の葉形成関連タンパク質AS2を産生できるものであれよい。また、本発明のDNAは必要によりRNAの形態であってもよい。本発明のDNAの例示として、配列表の配列番号1に記載の塩基配列、又は当該塩基配列にストリージェントな条件下でハイブリダイズし得る塩基配列を有するDNAなどが挙げられる。
本発明のDNAは、DNA単独であってもよいが、適当なプラスミドなどからなるベクターに組み込まれたものであってもよい。したがって、本発明は、前記した本発明のDNAを含有してなるベクターを提供するものである。
【0037】
本発明のタンパク質AS2は植物、好ましくはシロイロナズナの葉の形成に関連するものであり、正常な葉の形成を制御することができる。従って、本発明は前記した本発明のタンパク質AS2を含有してなる植物の葉の形成を制御するための組成物、又は制御剤を提供するものである。また、本発明のタンパク質の使用に代えて必要に応じて、前記した本発明のDNAを使用することができる。したがって、本発明は、前記した本発明のDNAからなる植物の葉の形成を制御するための遺伝子、または制御用の組成物、又は制御剤を提供するものである。
【0038】
【実施例】
次に実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例において、植物の分析については、種子を土壌に播いて、4℃にて暗所で2日後、22℃にて16時間3000ルクスの白色光照明の条件に植物を移した。植物の日齢は、播種後の日数という観点で提供した。
as2−5対立遺伝子は、リールシーズ(米国テキサス州、ラウンドロック)から購入したエチルメタンスルホネートで変異誘発したLer−0の種子のM2集団から単離した。トランスジェニック株、#14−22.4.4W3(T−1200)及び#14−68.1.4(T−1700)は、(I−RS/dAc−I−RS)#14株から単離した。それらは、ハイグロマイシン ホスホトランスフェラーゼに対する遺伝子を含む転移dAc−I−RS因子(受入番号AB055064)を持っていた。#14−22.4.4W3(T−1200)及び#14−68.1.4(T−1700)の背景は、両者共にLerエコタイプであった。
【0039】
実施例1 (as2遺伝子のクローニング)
減数分裂組換え休止点を作成し、as2−1突然変異と隣接するトランスポゾンマーカー#14−68.1.4(T−1700)及び#14−22.4.4W3(T−1200)との間の組換えをスクリーニングすることによって、as2遺伝子の近傍で同定した。ハイグロマイシン耐性を示し、as2−1の表現型を持つ、このような組換え体を用いて、as2遺伝子に関するPCR−RFLPマーカーの地図上の位置決めを行った。PCR−RFLPマーカーとして用いた配列に関する情報は、ペンシルベニア大学、TAIRウエブサイト(http://www.arabidopsis.org/)におけるシロイヌナズナゲノムセンターのウエブサイトから入手し、BACクローンF5I14(ジーンバンク受入番号AC001229)のPCR−RFLPマーカーのヌクレオチド配列は以下のとおりである:
マーカー1については、
5’−TGTAACTCTTCCGTCCGGTTTG−3’及び
5’−GCAAAGTCCATAGAGGAGCAAG−3’、
マーカー2については、
5’−TTGGGTTTGCACCGAAACTCAG−3’及び
5’−AGTGACAGACAGTGACCACAAG−3’、
マーカー3については、
5’−TGGTGGGATGAAACTTTGTGAG−3’及び
5’−CTCTCTCTTTCTCACTCTTCTC−3’、
マーカー4については、
5’−AGAAAACTGCTGTCTTCGGGAC−3’及び
5’−TCCAAAGCACTCTCTAGCTTGG−3’
である(図1参照)。
【0040】
実施例2 (相補性解析)
相補性実験に関する二成分プラスミドを構築するために、6.16kbpのApaI−HpaI断片(図1における断片I)、4.75kbpのBsu36I−HpaI断片(図1断片II)及び2.2kbpのBsu36I−BglII断片(図1の断片III)を、pBI101(Jefferson, R.A., et al. (1987)EMBO J. 6:3901−3907)に由来し、1’プロモータ::バー(Yoshioka, Y., et al. (2001) Gnese. Genet. Syst. 76:189−198)を含むpBI−BARプラスミドに別々に挿入した。新しく構築したプラスミドをアグロバクテリウム(Agrobacterium tumefaciens)株、GV3101に導入した。次いで、別に記載するように(Clough, S.J. and Bent, A.F. (1998) Plant J. 16:735−743、 Galbiati,M., et al. (2000) Funct. Integr. Genomics1:25−34)、吸引浸潤により植物全体を形質転換した。0.01%のバスタ(Basta)(ドイツ、フランクフルト、AgroEvo)を含む土壌にてトランスジェニック植物を選抜したが、それは、どの遺伝子型のトランスジェニック植物をサザンブロットで解析したかということである。
【0041】
実施例3 (cDNAのクローニング)
16日令の植物からポリ(A)+RNAを調製した。逆転写PCRのために、cDNAの第1の鎖は、浜田らの方法(Hamada, S., et al. (2000) Plant J. 24:91−101)に準じて作成した。次いで、プライマー、
ORF15SF(5’−GGGTCGACATGGCATCTTCTTCAACAAACTCAC−3’)及び
ORF15NR(5’−GGGCGGCCGCTCAAGACGGATCAACAGTACGGC−3’)
によりas2のcDNAを増幅した。次いで増幅した断片をpBluescriptSK(−)(米国カリフォルニア州、ラホヤのストラタジーン)のSalT/NotI部位に連結し、ヌクレオチドの配列決定によって同一性を確認した。cDNAの5’末端配列は、プライマー、ORF15MR(5’−TATCTGAAGCTGACGAAGCTGATG−3’)を伴った5’−RACE及びアダプタプライマーにより決定した。cDNAの3’末端配列は、プライマー、ORF15MF(5’−GATCTCAGCTGTGCTAAATCTGAGC−3’)を伴った3’−RACE及びアダプタプライマーにより決定した。突然変異対立遺伝子(as2−1、as2−2、as2−4及びas2−5)のヌクレオチド配列は、各変異体のゲノムDNAからas2遺伝子領域を増幅することによって決定した。各変異植物から単離されていたポリ(A)+RNAから得たas2のcDNAのヌクレオチド配列も決定した。
【0042】
実施例4 (系統樹解析)
TAIR BLASTの2.0バージョンのプログラムを用いて(http://arabidopsis.org/Blast/index.html)、TAIRでのAGIデータセット(AGI、全ゲノムからのタンパク質)からas2に類似したシロイヌナズナの遺伝子を入手した。ゲノムネットブラストT2プログラム(http://www.blast.genome.ad.jp/)を用いて、ゲノムネットにおけるデータセットからその他の植物種のas2様遺伝子を入手した。CLUSTAL Wのバージョン1.8(Thompson, J.D., et al. (1994) Nucl. Acid. Res. 22:4673−4680)を用いてシロイヌナズナのAS2ファミリーの42メンバーのAS2ドメインの配列を並べた。最尤(ML)系統樹の構築のために、部分的再構成検索のために出発系統樹として近隣連結(NJ)系統樹を用いた。MOLPHYのバージョン2.3b3パッケージにおけるNJdist及びprotMLプログラムを用いた(http://www.ism.ac.jp/software/ismlib/softother.htm#molphy;Adachi, J. and Hasegawa, M. (1996) Comput. Sci. Monogr. 28:1−150)。NJdistからNJ系統樹を得て、ProtMLからML系統樹を得た。
それぞれの分枝の部分的なブートストラップ確率は、ProtMLプログラムを用いて概算した(Himi, S., et al. (2001) J. Mol. Evol. 53:387−393、 Sakakibara, K., et al., (2001) Mol. Biol. Evol. 18:491−502)。
【0043】
実施例5 (RNAのゲルブロット解析)
Col−0野生型植物の解析のために、12日令の植物から採取した根、子葉、葉、及び茎頂、28日令植物から採取した花芽、及び35日令植物から採取したロゼット葉、茎上葉、花の茎及び長角果を用いた。等量の1.0mgのポリ(A)+RNAを単離し、ノーザンブロットを行った。as2に対する部分的cDNAをプローブとして用いた。
プライマー1(5’−GATCTCAGCTGTGCTAAATC−3’)及び
プライマー2(5’−TCAAGACGGATCAACAGTAC−3’)
を用いてPCRによりそれを増幅し、PBluescriptSK(−)のEcoRV部位にクローニングした。ヌクレオチドの配列決定によりその同一性を確認した。ORFのコドン151からコドン200を伸長したプラスミドpas2c300をEcoRIとClaIで切断することにより作成された、停止コドンを持つ300bpの断片をハイプライムDNAラベリングキット(ドイツ、マンハイムのベーリンガーマンハイム)を用いて、製造元の指示書に従って、[α−32P]dCTPで標識した。この標識した断片をプローブとして用いた。
【0044】
実施例6 (インスート(in situ)ハイブリダイゼーション法)
植物の固定、パラフィン包埋及びin situハイブリッド形成のために用いた方法の詳細は、http://www.genetics.wisc.edu/CATG/barton/index.htmlで見い出すことができ、中西らの方法(Nakashima, M.,et al(1998)Plant cell Physiol. 39:690−700)に準じて行った。ミクロトーム(日本の東京のエルマ社)を用いて切片(厚さ8μm)を作成した。ClaIでプラスミドpas2c300を線状化した後、T3 RNAポリメラーゼによりアンチセンスRNAプローブを作成した。センスRNAプローブは、EcoRIでpas2c300を線状化した後、T7 RNAポリメラーゼによって作成した。
【0045】
実施例7 (プラスミドの構築)
CaMV 35Sプロモータの下流の二成分ベクターpSK1(Kojima, S., et al.(1999) DNA Res. 6:407−410)のXbaI及びNotI部位にて開始コドンから停止コドンまで伸長したas2cDNA(600bp)の断片を挿入することによってプラスミドpSK35S::as2を構築した。pTH−2(Chiu, W.,et al. (1996) Curr. Biol. 6:325−330)のSalIとNcoI部位にて、開始コドンから199番目のアミノ酸コドンまで伸長したas2cDNA(597bp)断片及び3つのアラニンリンカー配列(5’GCAGCTGCC3’)を挿入することによりプラスミドp35S::as2::GFPを構築した。35S::NLS::GFP及び35S::GFPを含むプラスミドは西浜らの方法(Nishihama, R.,et al. (2001) Genes Dev. 15:352−363)に準じて調製した。
【0046】
実施例8 (シロイヌナズナの形質転換)
小野内らの方法(Onouchi, H., et al. (1995) Mol. Gen. Genet. 247:653−660)に準じて、アグロバクテリウムが介在するシロイヌナズナの根外植片の形質転換を行った。pSK35S::as2又はpSK1(Kojima et al. (1999))を入れたアグロバクテリウムLBA4404/pAL4404(Hoekema, A., et al.(1984) J. Bacteriol 158:383−385)細胞を根外植片と共に培養した。15mg/LのハイグロマイシンB(Onouchi et al. (1995))の存在下、シュート誘導培地で形質転換体を選抜した。プラスミドpSK35S::as2又はpSK1を用いてA. tumefaciens株GV3101を形質転換した。次いで、吸引浸潤により植物全体を形質転換した。15mg/LのハイグロマイシンB及び300mg/Lのカルベニシリンを含むMS培地でトランスジェニック植物を選抜した。
【0047】
実施例9 (as2::GFPタンパクの細胞小器官局在)
フォンアミムらの方法(von Amim, A.G. and Deng, X.W. (1994) Cell 79:1035−1045)に従って、タマネギ球根の上皮層における細胞をp35S::as2::GFP、p35S::NLS::GFP又はp35S::GFPで形質転換した。冷却CCDカメラシステム(アリゾナ州、トゥーソンのフォトメトリクス)を装備した蛍光顕微鏡(ドイツ製、アキシオプラン2)によって蛍光シグナルを記録した。画像の疑似着色及びGFPからのシグナル量と細胞の幅の測定は、IPラボソフトウエアプログラム(バージニア州フェアファックスのスキャナリティクス)により行った。同一の細胞を1μg/mLの4’6−ジアミジノ−2−フェニルインドールジヒドロクロリド(DAPI)で染色し、同様に蛍光を記録した。
【0048】
実施例10 (逆転写−ポリメラーゼ鎖反応(RT−PCR))
トランスジェニック植物及び野生型の花芽を採取し、直ちに液体窒素中で凍結し、−80℃に保存した。ポリ(A)+RNAを精製し、cDNAの第1鎖を合成した。α−チューブリンcDNA特異的なプライマーによるDNA断片の均等な増幅を行うために試料の体積を正規化した。次いで、セミアルチらの方法(非特許文献23参照)によりPCRを行った。内因性as2の転写物に特異的に由来するDNA断片を増幅するために、as2転写物の5’及び3’非翻訳領域においてプライマーセットの設計のための部位を選択したが、それらは両方共、トランスジェニック植物を作出するのに用いたcDNAには存在しない。プライマー対は以下のとおりである:
α−チューブリンについては、
pU51(5’−GGACAAGCTGGGATCCAGG−3’)及び
pU52(5’−CGTCTCCACCTTCAGCACC−3’)、
as2遺伝子のcDNAの非翻訳領域については、
pU73(5’−CCCCTCTGAGCAACAGAAAGC−3’)及び
pU74(5’−CCAAAACCCTAAAATCTCAAGACGG−3’)、
as2cDNAのオープンリーディングフレームの領域については
pU328(5’−GTGTTTGGAGCAAGTAACGT−3’)及び
pU315(5’−AAACCTAGGAGACGGATCAACAGTACGGCG−3’)
である。
【0049】
【発明の効果】
本発明は、核における特定の遺伝子の転写、対称性で平坦な葉身の発生、及び葉の葉脈の確立を制御している新規なタンパク質AS2、及びそのファミリーを提供するものである。
本発明の植物の葉形成関連タンパク質AS2は、アミノ酸配列としてシステインに富むC‐モチーフからなるシステイン反復配列、特定の位置でのグリシン、及びロイシンジッパー様モチーフを有することを特徴とするものであり、このような特徴的なアミノ酸配列を有する1群のタンパク質が植物、好ましくはシロイロナズナに存在し、これらのタンパク質が植物の葉形成に関連し、葉の形成を制御していることを本発明は明らかにするものである。したがって、本発明は、これらのタンパク質AS2からなる植物の葉の形成、成長、保存の制御剤を提供するものである。
【0050】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、シロイヌナズナの第1染色体のas2遺伝子座を含むゲノムの領域構造及びゲノム断片による相補性解析の結果を示すものである。図1Aはシロイヌナズナの第1染色体のゲノムの領域構造を示し、T−1200及びT−1700は、ハイグロマイシン耐性(Hygr)遺伝子によるdAc−I−RS転移因子の位置を示す。図1Bは、BACクローンF5I14、その中のマーカー位置を含むas2周辺の染色体領域の拡大図及び相補性解析の結果を示す。as2cDNAの構造をゲノム構造の下に示す。相補性解析に用いた制限断片は、I、II、IIIと表記された水平の線で示す。右側の記号+及び−はそれぞれ、相当するDNA断片との相補性試験の正及び負の結果を示す。
【図2】図2は、本発明のタンパク質AS2のアミノ酸配列の例を示す。Cモチーフにおけるシステインの位置及びロイシンジッパー様配列における疎水性残基の位置は、それぞれ星印(*)及び点(・)で示す。種々のas2対立遺伝子における突然変異したアミノ酸残基は、野生型配列の上にイタリック体で示す。
【図3】図3は、本発明のタンパク質AS2のドメインの構成及び特有の特徴を示す。ボックスの下でブラケットで示す領域はAS2ドメインである。灰色のボックス及び縞のあるボックスはそれぞれCモチーフ及びロイシンジッパー様配列を表す。as2−1、as2−2、as2−4及びas2−5の突然変異の部位を示す。ボックスの下の数はアミノ酸残基の位置を示す。
【図4】図4は、AS2ファミリーメンバーにおけるAS2ドメインのアミノ酸配列の比較を示す。AS2ファミリーのメンバーの相当する領域の配列と共に、AS2の8番目から109番目の残基を並べる。20を超えるメンバーで保存されているアミノ酸残基を黒色背景上の白色文字で示す。Cモチーフにおけるコンセンサス配列及びロイシンジッパー様配列における疎水性残基は、それぞれ星印(*)及び点(・)で示す。ファミリーのメンバーすべてで保存されており、as2−5対立遺伝子で突然変異していたグリシン残基は星印2つ(**)で示す。シロイヌナズナのAS2ファミリーのメンバーは2つのクラス(クラスI及びクラスII)に分割することができる。クラスIIの3を超えるメンバーで保存されていたアミノ酸残基を灰色で示している。その他の植物における、O.s.はOryza sativa(イネ)を示し、G.m.はGlycine max(ダイズ)を示し、L.e.はLycopersicon esculentum(トマト)を示す。
【図5】図5は、シロイヌナズナのAS2ファミリータンパク質の42メンバーに関する系統樹を示す。分枝上の数は、ProtMLプログラムで計算された、そこにおけるブーツストラップ値を表す。各水平の枝の長さは、概算された進化上の距離に比例するするように表示されている。右側の区分は、AS2ファミリーのメンバーの分類を示す。
【図6】図6は、シロイヌナズナの種々の器官におけるas2転写物のポリ(A)+RNAのノーザンブロット解析の結果を示す図面に代わる写真である。12日令植物の根(レーン1)、子葉(レーン2)、葉(レーン3)、及び茎頂(レーン4)、28日令植物の花芽(レーン5)、及び35日令植物のロゼット葉(レーン6)、茎上葉(レーン7)、花の茎(レーン8)及び長角果(レーン9)から等量の1.0μgのポリ(A)+RNAを調製した。同じブロットを対照としてΕφ−チューブリン(TUBA)をプローブとして調べた。右側の数はマーカーRNA分子の大きさを示す。
【図7】図7は、インスート(in situ)ハイブリダイゼーション法によるas2転写物の検出(a〜d)結果を示す図面に代わる写真である。アンチセンスプローブで得られたas2転写物の分布パターン。(a)球状ステージ;(b)三角ステージ;(c)ハート型ステージ;(d)魚雷型ステージ;(e)(a)〜(d)のセンス対照。種皮の真下の細胞層の赤味がかった茶色の着色(白色の星印で示す)は、両方のプローブで生じるのでas2のRNAに特異的ではない。縮尺棒は20μmを示す。
【図8】図8は、タマネギの上皮細胞におけるas2::GFPの細胞小器官局在化の結果を示す図面に代わる写真である。35S::as2::GFP(A、B)、35S::NLS::GFP(C、D)及び35S::GFP(E、F)を衝撃法によりタマネギの上皮細胞に導入し、導入した組織を28℃にて16時間培養した。蛍光顕微鏡下で蛍光をモニターした(左側のパネル)。1μg/mLのDAPIで染色した核を右側のパネルに示す。縮尺棒は100μmを示す。
【図9】図9は、as2のcDNAを過剰発現したトランスジェニックシロイヌナズナのカルス及び植物の表現型、及びas2遺伝子の転写物の蓄積の結果を示す図面に代わる写真である。図9Aは、空のベクターpSK1(a)及びpSK35S::as2(b)による、Col−0由来の根断片の形質転換の結果を示す。縮尺棒は10mmを示す。図9Bは、トランスジェニックシロイヌナズナ植物の表現型を示す。(a)は空のベクターpSK1で形質転換した35日令の植物の場合であり、(b)はpSK35S::as2で形質転換した35日令の植物であり、(c)はpSK35S::as2で形質転換した25日令の植物であり、(d)はパネルcの植物をさらに15日間成長させたものである。縮尺棒は10mmを示す。図9Cは、トランスジェニック植物及び野生型植物(Col−0)におけるas2遺伝子の転写物のRT−PCR解析の結果を示す。サイクル数をそれぞれパネルの右側に示す。レーン1、パネルB(d)に示されるトランスジェニック植物;レーン2、野生型(Col−0)植物であり、as2転写物のオープンリーディングフレームの領域に特異的なプライマーで増幅した産物(a;ORF)、as2転写物の3’非翻訳領域に特異的なプライマーで増幅した産物(b;UTR)、及びα−チューブリンに対する遺伝子の転写産物に特異的なプライマーで増幅した産物(c;α−tubulin)を示す。図9Dは、葉の表現型を示す。典型的な35日令の野生型Col−0植物(a)及びas2−1植物(b)の5番目の葉を示す。軽い表現型の変化(c)及び厳しい表現型の変化(d)を示すトランスジェニック植物の典型的な葉を示す。縮尺棒は5mmを示す。
Claims (9)
- 植物の葉形成関連タンパク質AS2。
- 植物細胞の核における特定の遺伝子の転写、対称性で平坦な葉身の発生、及び葉の葉脈の確立を制御している請求項1に記載の植物の葉形成関連タンパク質AS2。
- システインに富むC‐モチーフからなるシステイン反復配列及びロイシンジッパー様モチーフを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の植物の葉形成関連タンパク質AS2。
- 植物の葉形成関連タンパク質AS2が、配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列中のアミノ酸が置換、挿入、若しくは欠失してもよいアミノ酸配列からなる植物の葉の形成に関連する請求項1〜3のいずれかに記載のタンパク質AS2。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の植物の葉形成関連タンパク質AS2をコードするDNA。
- DNAが、配列表の配列番号1に記載の塩基配列、又は当該塩基配列にストリージェントな条件下でハイブリダイズし得る塩基配列を有するものである請求項5に記載のDNA。
- 請求項1〜4に記載のタンパク質AS2を含有してなる植物の葉の形成を制御するための組成物。
- 請求項5又は6に記載のDNAからなる植物の葉の形成を制御するための遺伝子。
- 請求項5又は6に記載DNAを含有してなるベクター。
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| JP2002291321A JP2004121122A (ja) | 2002-10-03 | 2002-10-03 | 植物の葉形成関連タンパク質as2、及びそれをコードする遺伝子 |
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| CN121628965A (zh) * | 2026-02-05 | 2026-03-10 | 海南大学 | 基因CcLBD36在调控辣椒叶片大小中的应用 |
-
2002
- 2002-10-03 JP JP2002291321A patent/JP2004121122A/ja active Pending
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