JP2004122244A - 表面被覆サーメット合金製切削工具 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】硬質相のチタンは、窒化物、炭化物および炭窒化物の少なくとも1種の形態でサーメット合金中に含まれている。チタンの窒化物、炭化物および炭窒化物の合計の質量割合はサーメット合金の質量に対して35質量%以上85質量%以下である。タングステン、タンタル、ニオブ、モリブデンおよびクロムは炭化物の形態でサーメット合金中に含まれている。タングステン、タンタル、ニオブ、モリブデンおよびクロムの炭化物の質量割合はサーメット合金の質量に対して10質量%以上60質量%以下である。サーメット合金の飽和磁気量(Gauss・cm3/g)が((20×コバルトの質量%)+(6.8×ニッケルの質量%))で算出される値の0.4倍以上、0.95倍以下である。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、表面被覆サーメット合金製切削工具に関し、特に、炭素鋼や低合金鋼などの切削加工において、膜の剥離による寿命低下や、切れ刃のチッピングがなく、優れた切削性能を発揮する表面被覆サーメット合金製切削工具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、物理蒸着装置の1つであるアークイオンプレーティング装置を用いて表面に被膜が形成された切削工具が製造されている。このような装置では、装置内を所定の温度に加熱した状態で、アノード電極と所定の組成を有するTiAl合金がセットされたカソード電極(蒸発源)との間でアーク放電を発生させ、装置内に反応ガス、たとえば窒素ガスやアセチレンガスを導入し、WC系超硬合金やTiCN系サーメット合金にTiAlN層が被覆される。
【0003】
たとえば、特許第2580330号公報には、TiCxN1−x(ただし0≦x≦0.6)で示される化学組成からなり、膜厚が0.3から6μmの被覆層が基材表面に形成されるとともに、(AlyTi1−y)(NzC1−z)(ただし0.26≦y≦0.70、0.6≦z≦1)で示されるB1構造の化合物からなり、膜厚が0.6から8μmの被覆層がカソードを蒸発源とするアーク放電方式によって最上層に形成され、少なくとも2層からなる耐摩耗性被膜が開示されている。
【0004】
また、特開平1−252304号公報には、WC系超硬合金やTiCN系サーメット合金基材表面に平均膜厚が0.5から1μmのTiN、TiC、TiCNの単層または2層以上の複層からなる密着層を介して、平均膜厚0.5から5μmの(TiAl)N、(TiAl)C、(TiAl)CNの単層または2種以上の複層を被覆した切削工具が提案されている。
【0005】
さらに、特開平4−201002号公報には、TiCN系サーメット基体の表面に平均膜厚で0.1から1μmのTiNからなる密着性物理蒸着被覆層を介して、平均膜厚で0.5から5μmのTiとAlの複合窒化物からなる表面被覆サーメット製切削工具が提案されている。
【0006】
表面被覆サーメット製切削工具の被覆層は従来Tiの窒化物、炭化物、炭窒化物が主流であったが、上述のように耐摩耗性に優れるTiとAlの窒化物、炭化物、炭窒化物に代わってきている。ただし、TiとAlの窒化物、炭化物、炭窒化物で構成される膜種そのものがサーメット合金との密着性が悪いことから、サーメット合金基体とTiとAlの窒化物、炭化物、炭窒化物で構成される膜の間にTiN、TiCまたはTiCNなどの中間層が必須とされている。
【0007】
【特許文献1】
特許第2580330号公報
【0008】
【特許文献2】
特開平1−252304号公報
【0009】
【特許文献3】
特開平4−201002号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
TiとAlの窒化物、炭化物、炭窒化物は非常に硬度が高いために、優れた耐摩耗性を発揮する。しかし、鋼との親和性が強く、ステンレス鋼や軟鋼を切削する場合には、被削材の切り屑が溶着し、これが原因で被覆層が剥離してしまい十分な耐摩耗性が発揮できないという問題点があった。
【0011】
また、この剥離が原因で、切れ刃に凹凸が生じ、この凹凸が被削材に転写されて所望の被削材仕上げ面粗さが得られないという問題があった。サーメット合金製切削工具は一般に、仕上げ加工用工具として使用されるため、被削材の仕上げ面粗さが比較的短時間で悪くなることには大きな問題がある。
【0012】
また、高炭素鋼などを高速で切削した際に、切り屑が工具すくい面を擦過して工具すくい面にクレータ損傷が生じるが、上述のようにTiとAlの窒化物、炭化物、炭窒化物層は鋼との親和性が強いために鋼と化学反応を起こして異常クレータ摩耗を生じ、場合によっては欠損する場合があった。
【0013】
TiとAlの窒化物、炭化物および炭窒化物層のこれらの欠点は、切削工具寿命を不安定にさせる要因であり、切削加工の自動化が進んできた近年、切削工具の安定寿命が求められている。
【0014】
そこで、この発明は上述のような問題点を解決するためになされたものであり、優れた切削性能を発揮することが可能な表面被覆サーメット合金製切削工具を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
この発明に従った表面被覆サーメット合金製切削工具は、75質量%以上95質量%以下の硬質相と、結合相と、不可避的不純物とからなるサーメット合金の基体と、基体上に接触するように形成された第1の被膜とを備える。硬質相は、タングステン、タンタル、ニオブ、モリブデンおよびクロムからなる群より選ばれた少なくとも1種と、チタンと、窒素および/または炭素とを含む炭化物、窒化物および炭窒化物の少なくとも1種からなる。結合相は、コバルトおよびニッケルを含む。チタンは、窒化物、炭化物および炭窒化物の少なくとも1種の形態でサーメット合金中に含まれている。チタンの窒化物、炭化物および炭窒化物の合計の質量割合は、サーメット合金の質量に対して35質量%以上85質量%以下である。タングステン、タンタル、ニオブ、モリブデンおよびクロムは炭化物の形態でサーメット合金中に含まれている。タングステン、タンタル、ニオブ、モリブデンおよびクロムの炭化物の合計の質量割合は、サーメット合金の質量に対して10質量%以上60質量%以下である。サーメット合金の飽和磁気量(Gauss・cm3/g)が((20×コバルトの質量%)+(6.8×ニッケルの質量%))で算出される値の0.4倍以上0.95倍以下である。第1の被膜の組成は(TixAl1−x)N(ただし、原子比でxは0.35以上0.75以下)で表わされ、第1の被膜の平均膜厚が0.5μm以上5μm以下である。
【0016】
好ましくは、表面被覆サーメット合金製切削工具は、第1の被膜上に設けられた第2の被膜をさらに備える。第2の被膜の組成はTi(CyN1−y)(ただし、原子比でyは0.1以上0.7以下)で表わされ、第2の被膜の平均膜厚が0.5μm以上5μm以下である。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明者は、高炭素鋼はもちろんのこと、溶着しやすいステンレス鋼や軟鋼でも優れた切削性能を発揮する表面被覆サーメット合金製切削工具の開発を行なった。
【0018】
その結果、以下の構成により、切削性能に優れた表面被覆サーメット合金製切削工具を得ることに成功した。
【0019】
表面被覆サーメット合金製切削工具は、75質量%以上95質量%以下の硬質相と、結合相と、不可避的不純物とからなるサーメット合金の基体と、基体上に接触するように形成された第1の被膜とを備える。
【0020】
硬質相は、タングステン(W)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)およびクロム(Cr)からなる群より選ばれた少なくとも1種と、チタン(Ti)と、窒素(N)および/または炭素(C)とを含む炭化物、窒化物および炭窒化物の少なくとも1種からなる。結合相は、コバルト(Co)およびニッケル(Ni)を含む。チタンは、窒化物、炭化物および炭窒化物の少なくとも1種の形態でサーメット合金中に含まれている。チタンの窒化物、炭化物および炭窒化物の合計の質量割合はサーメット合金の質量に対して35質量%以上85質量%以下である。タングステン、タンタル、ニオブ、モリブデンおよびクロムは炭化物の形態でサーメット合金中に含まれている。タングステン、タンタル、ニオブ、モリブデンおよびクロムの炭化物の合計の質量割合は、サーメット合金の質量に対して10質量%以上60質量%以下である。サーメット合金の飽和磁気量(Gauss・cm3/g)が((20×コバルトの質量%)+(6.8×ニッケルの質量%))で算出される値の0.4倍以上0.95倍以下である。
【0021】
第1の被膜の組成は(TixAl1−x)N(ただし、原子比でxは0.35以上0.75以下)で表わされ、第1の被膜の平均膜厚が0.5μm以上5μm以下である。
【0022】
このように構成された表面被覆サーメット合金製切削工具は、あらゆる被削材に対して、耐摩耗性はもちろんのこと、耐剥離性に優れ、工具寿命を安定的に大きく延ばせるという研究結果が得られた。
【0023】
さらに好ましくは、表面被覆サーメット合金製切削工具は、第1の被膜上に設けられた第2の被膜をさらに備える。第2の被膜の組成は、Ti(CyN1−y)(ただし、原子比でyは0.1以上0.7以下)で表わされ、第2の被膜の平均膜厚が0.5μm以上5μm以下である。このように構成された表面被覆サーメット合金製切削工具では、耐摩耗性、耐剥離性はもちろんのこと、耐クレータ性に優れ、工具寿命を安定的に大きく伸ばせるという研究結果が得られた。
【0024】
本発明者は、従来技術によって製造されたTiとAlの窒化物、炭化物、炭窒化物層を主体とする表面被覆サーメット合金製切削工具でステンレスおよび軟鋼を加工した後の工具の損傷形態を詳細に調査したところ、被覆層の剥離の起点がTiN、TiC、TiCNなどの中間層とTiとAlの窒化物、炭化物および炭窒化物層の界面であることを見出した。
【0025】
そこで、本発明者は中間層そのものをなくし、直接基体にTiとAlの窒化物、炭化物または炭窒化物層を成膜し、密着力を高めることに取組んだ。まず、サーメット合金基体の組成として、硬質相の割合をサーメット合金の質量に対して75質量%以上95質量%以下としているのは、硬質相の割合が75質量%未満であると、結合相が多くなりすぎてサーメット合金基体としての硬度が保てず、汎用的切削条件でも塑性変形を起こす可能性があるからである。また、硬質相の割合が95質量%を超えると、逆に結合相が少なく、耐欠損性に劣るからである。
【0026】
次に、チタンの窒化物、炭化物および炭窒化物の合計の質量割合をサーメット合金の質量に対して35質量%以上85質量%以下としているのは、この割合が35質量%未満であれば、基体としての耐摩耗性が劣り、85質量%を超えると基体として脆くない耐欠損性が低下するからである。
【0027】
タングステン、タンタル、ニオブ、モリブデンおよびクロムの炭化物の合計の質量割合をサーメット合金の質量に対して10質量%以上60質量%以下としているのは、この割合が10質量%未満であれば硬質相と結合相の濡れ性が悪くなり、サーメット合金基体にポアが生じるためである。サーメット合金基体にポアが存在すると耐欠損性は著しく低下する。また割合が60質量%を超えると相対的にTi系硬質相が減少することから、サーメット合金基体としての耐摩耗性が低下する。
【0028】
次に、サーメット合金の飽和磁気量(Gauss・cm3/g)が、((20×コバルトの質量%)+(6.8×ニッケルの質量%))で算出される値の0.4倍以上0.95倍以下という規定は、本発明の大きな目的の1つである、直接サーメット合金基体にTiとAlの窒化物、炭化物、炭窒化物層を成膜し、密着力を高める点に関して非常に重要である。飽和磁気量は、サーメット合金基体の結合相量が増加すれば多くなる。同一の結合相の量でもサーメット合金基体のカーボン量や窒素量によっても飽和磁気量は変化し、カーボン量や窒素量を増加していけば飽和磁気量は大きくなり、サーメット合金基体にフリーカーボンが存在する値でその値は飽和する。
【0029】
つまり、カーボン量や窒素量を増加させることは、結合相に固溶していた硬質相を形成する金属原子、たとえばTiがTiCやTiNの硬質相として析出し、結合相がより純粋な状態になることを意味する。
【0030】
TiとAlの窒化物、炭化物および炭窒化物を直接サーメット合金基体に成膜し、密着度を測定した。その結果、サーメット合金の飽和磁気量が((20×コバルトの質量%)+(6.8×ニッケルの質量%))で算出される値の0.4倍以上であれば、高い密着力が得られることがわかった。TiとAlの窒化物、炭化物および炭窒化物層のAl原子がサーメット合金基体の結合相中に溶け込んで密着性を高めているものと推定される。つまり、飽和磁気量が((20×コバルトの質量%)+(6.8×ニッケルの質量%))で算出される値の0.4倍未満であると、CoおよびNiからなる金属結合相中には硬質相を形成する金属原子が多く固溶しており、もはやAlの固溶する余地がないために密着度が劣ると推定される。
【0031】
((20×Coの質量%)+(6.8×Niの質量%))で算出される値の0.95倍をサーメット合金の飽和磁気量が超えると、サーメット合金基体の組成中にフリーカーボンが生じ、耐欠損性が劣るために好ましくない。
【0032】
上記サーメット合金基体の表面に直接に、組成が(TixAl1−x)N(ただし、原子比でxは0.35以上0.75以下)を満足するTiとAlの複合窒化物からなる、平均膜厚0.5μm以上5μm以下の第1の被膜をアークイオンプレーティング法で被覆すると、優れた切削性能を発揮することが研究の結果判明した。
【0033】
まず、基体表面に組成式が(TixAl1−x)N(ただし、原子比でxは0.35以上0.75以下)を満足するTiとAlの複合窒化物層を窒化物に限定しているのは、サーメット合金基体への密着力が優れているからである。TiとAlの複合炭窒化物であると、成膜時にメタンガスやアセチレンガスを炉内に導入するが、基材上に未反応のカーボンが発生し、サーメット合金基体に対して第1の被膜の高い密着力を得ることができないからである。
【0034】
また、組成式(TixAl1−x)N(ただし、原子比でxは0.35以上0.75以下)と規定しているのは、Tiが原子比で0.35未満となると、相対的にAlの原子比率が多くなり、切削する際に被削材に対して溶着しやすくなるからである。また、Tiの割合が0.75を超えると相対的にAlの原子比が低下し、本発明の重要な点であるサーメット合金基体へのAlの固溶が十分でなくなり、結果的に密着力の低下を引起こすからである。また、平均膜厚を0.5μm以上5μm以下と規定しているのは、平均膜厚が0.5μm未満であると十分な耐摩耗性が得られず、また、平均膜厚が5μmを超えると欠損しやすくなるからである。
【0035】
TiとAlの複合窒化物層の直上に組成式がTi(CyN1−y)(ただし、原子比でyは0.1以上0.7以下)のTiの炭窒化物からなる平均膜厚0.5μm以上5μm以下の第2の被膜(硬質層)を設けることは、耐クレータ性を強化する点で非常に好ましい。
【0036】
TiとAlの複合窒化物層に比べてTiの炭窒化物は鋼との親和性が低いために溶着しにくく、結果的に耐クレータ性は向上する。組成式Ti(CyN1−y)(ただし、原子比でyは0.1以上0.7以下)でかつ平均膜厚を0.5μm以上5μm以下と規定しているのは、カーボンの原子比率が0.7を超えると膜の硬度が大きくなりすぎて欠損しやすくなり、0.1未満であれば耐クレータ性が十分発揮できないからである。また、平均膜厚が0.5μm未満であれば耐クレータ性の効果が発揮できず、また、平均膜厚が5μmを超えるとTiの炭窒化物層の耐摩耗性が支配的になり、下層のTiとAlの複合窒化物層の耐摩耗性が発揮されないうちに、摩耗寿命を迎えるので好ましくない。
【0037】
上述の第1および第2の被膜を形成するに当たり、カソードを蒸発源とするアーク放電によって金属成分をイオン化するアークイオンプレーティング法を用いることが望ましい。本手法は、窒素やメタン雰囲気もしくはこれらの混合雰囲気でイオン化した金属成分と反応させて窒化物や炭窒化物を成膜するものである。Ti(CyN1−y)膜を成膜するときはカソードにTiのターゲットを配置し、CN比率は窒素ガスとメタンガスの流量比でコントロールすることが可能である。(TixAl1−x)N膜を成膜するときは、カソードに目的組成の(TixAl1−x)のターゲットを配置し、窒素雰囲気で成膜すればよい。
【0038】
以下、この発明の内容を実施例により説明するが、本発明の範囲は以下の実施例に限定されるものではない。たとえば、切削工具の商品価値を高めるために、最表面に厚みが0.5μm未満のTiN層(金色)の色付け層を設定する場合などは、本発明の本質的性能に影響を及ぼさない範囲で適宜設計を変更することも可能である。このような変更は、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0039】
【実施例】
【0040】
【表1】
表1で示すTiCN、WCなどの粉末を表1で示す質量割合で配合した後、湿式アトライタで12時間混合した。その後、上記混合粉末をプレス圧98MPa(1t/cm2)でプレス成形して、ISO型番CNMG120408のチップ形状にした。その後、圧力1.33kPa(10Torr)の窒素雰囲気で、プレス成形されたサンプルを温度1400℃で1時間焼成することにより、切削工具用サーメット合金基体を作製した。これらの飽和磁気量を表2に示す。
【0041】
【表2】
これらのサンプルに対し、アークイオンプレーティング法で表3の条件でコーティングを行なった。
【0042】
【表3】
コーティング条件AからCでは、基材上に直接第1層をコーティングした。コーティング条件DからGでは、基材上に直接第1層をコーティングした後、その上にさらに第2層をコーティングした。コーティング条件Hでは、基材上に直接第1層をコーティングした後、その上にさらに第2および第3層をコーティングした。
【0043】
コーティングは(TixAl1−x)(ただし、原子比でxは0.35以上0.75以下)組成のカソード電極と、Tiカソード電極を用い、アーク方式のイオンプレーティング装置の基板ホルダに表2で示すサンプルを取付けた。
【0044】
成膜時には、基材温度を450℃に設定し、過熱保持したまま基材に−50Vのバイアス電圧を印加した。(TixAl1−x)N膜をコーティングする場合には、装置内に高純度のN2ガスを導入して、装置内の圧力を6.00×10−2Pa(4.5×10−5Torr)として、(TixAl1−x)カソード電極を放電させた。
【0045】
Ti(CyN1−y)膜をコーティングする場合には、装置内に高純度のN2ガスとアセチレンガスの混合ガスを導入して、圧力を6.00×10−2Pa(4.5×10−5Torr)とした。この時、アセチレンガスとN2ガスの流量比率がy:1−yとなるように設定し、Tiカソード電極を放電させた。膜厚は放電時間を適宜設定することで平均膜厚を調整し、表3に示すAからHの膜構造のコーティングがされた、表4で示す各種サンプルを得た。
【0046】
【表4】
表4において、たとえばサンプルNo.3Aとは、表2におけるサーメット基体のサンプルNo.3に、表3のコーティング条件Aのコーティングを施したものをいう。これらの各種サンプルでの切削性能の評価を表4に示す。
【0047】
耐摩耗性は、JIS呼称SCM415(ブリネル硬さHBS180)の丸材を被削材として、切削速度:300m/min、切込み:1.5mm、送り:0.25mm/revで切削し、VB摩耗量を測定することにより評価した。
【0048】
また、耐欠損性は、JIS呼称SCM435(ブリネル硬さHBS260)からなり4本の溝が入った入丸材を被削材として、切削速度:150m/min、切込み:1.5mm、送り:0.3mm/revで欠損するまでの時間を測定することにより評価した。
【0049】
表4の結果より、サーメット合金基材の飽和磁気量が((20×コバルトの質量%)+(6.8×ニッケルの質量%))で算出される値の0.4倍以上であれば、直接(TixAl1−x)N膜を被覆すると著しく耐剥離性が向上することがわかった。
【0050】
【発明の効果】
上述のような本発明に従えば、切削性能に優れた表面被覆サーメット合金製切削工具を得ることができる。
Claims (2)
- 75質量%以上95質量%以下の硬質相と、結合相と、不可避的不純物とからなるサーメット合金の基体と、
前記基体上に接触するように形成された第1の被膜とを備えた表面被覆サーメット合金製切削工具であって、
前記硬質相は、タングステン、タンタル、ニオブ、モリブデンおよびクロムからなる群より選ばれた少なくとも1種と、チタンと、窒素および/または炭素とを含む炭化物、窒化物および炭窒化物の少なくとも1種からなり、
前記結合相は、コバルトおよびニッケルを含み、
前記チタンは、窒化物、炭化物および炭窒化物の少なくとも1種の形態で前記サーメット合金中に含まれており、前記チタンの窒化物、炭化物および炭窒化物の合計の質量割合は、前記サーメット合金の質量に対して35質量%以上85質量%以下であり、
前記タングステン、タンタル、ニオブ、モリブデンおよびクロムは炭化物の形態で前記サーメット合金中に含まれており、前記タングステン、タンタル、ニオブ、モリブデンおよびクロムの炭化物の合計の質量割合は、前記サーメット合金の質量に対して10質量%以上60質量%以下であり、
前記サーメット合金の飽和磁気量(Gauss・cm3/g)が((20×コバルトの質量%)+(6.8×ニッケルの質量%))で算出される値の0.4倍以上0.95倍以下であり、
前記第1の被膜の組成は(TixAl1−x)N(ただし、原子比でxは0.35以上0.75以下)で表わされ、前記第1の被膜の平均膜厚が0.5μm以上5μm以下である、表面被覆サーメット合金製切削工具。 - 前記第1の被膜上に設けられた第2の被膜をさらに備え、
前記第2の被膜の組成は、Ti(CyN1−y)(ただし、原子比でyは0.1以上0.7以下)で表わされ、前記第2の被膜の平均膜厚が0.5μm以上5μm以下である、請求項1に記載の表面被覆サーメット合金製切削工具。
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