JP2004123774A - ポリイミド樹脂組成物、ポリイミドフィルム、及びポリイミド管状物 - Google Patents
ポリイミド樹脂組成物、ポリイミドフィルム、及びポリイミド管状物 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】低温低湿から高温高湿において安定な様々な中抵抗値を容易に調整でき、サンプル間、場所、添加量変化、電圧変化、環境変化による抵抗値の変動が少なく、表面性、機械特性に優れ、高い黒色性を有するポリイミド樹脂組成物、ポリイミドフィルム、ポリイミド管状物及び電子写真装置用管状物を得る。
【解決手段】ポリイミド樹脂100重量部に対し、半導電性フィラーを20〜200重量部、揮発量2.0%以上、かつpH5.0以下であるカーボンブラックを0.01〜20重量部含有し、体積抵抗値が1×106〜1×1015Ω・cmの範囲内にあり、黒濃度が1.0以上であることを特徴とするポリイミド樹脂組成物、ポリイミドフィルム、ポリイミド管状物。
【選択図】 なし
【解決手段】ポリイミド樹脂100重量部に対し、半導電性フィラーを20〜200重量部、揮発量2.0%以上、かつpH5.0以下であるカーボンブラックを0.01〜20重量部含有し、体積抵抗値が1×106〜1×1015Ω・cmの範囲内にあり、黒濃度が1.0以上であることを特徴とするポリイミド樹脂組成物、ポリイミドフィルム、ポリイミド管状物。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリイミド樹脂が本来有する機械特性、耐熱性等の優れた特性を損なうことのない、中間抵抗値に制御された黒濃度の高いポリイミド樹脂組成物、ポリイミドフィルム及びポリイミド管状物に関する。またこれらを用いた転写ベルト、中間転写ベルト、転写定着ベルトおよび定着ベルト等の電子写真装置用管状物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリイミド樹脂は、その優れた耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性などの特性を活かし、フィルム、チューブ、ベルト、成型体などの形状で幅広く利用されている。例えば、フィルム状としてフレキシブルプリント配線板(以下、FPC)やTAB(Tape Automated Bonding)のベース基材、あるいは電線などの絶縁被膜、またチューブ、ベルト形状として複写機等のOA機器のパーツ、成型体として複写機の分離爪やベアリング等、様々な用途に用いられている。また、近年は半導体周辺でもその特性を活かして接着剤、保護膜などに用いられつつある。
【0003】
しかしながら、ポリイミド樹脂は絶縁性が高すぎるために、FPCや半導体周辺の製造において、搬送や巻き取り工程で樹脂が帯電したり、近年の高密度回路においては静電気により配線間で絶縁破壊するといった問題が顕在化している。その一方で、導通が起こらない程度に抵抗は高く、優れた絶縁性を保持しなければならない。この場合、体積抵抗値は1010〜1015Ω・cm、さらに好ましくは1010〜1013Ω・cmが求められる。
【0004】
また、プリンター、複写機等の電子写真用途における転写ベルト・中間転写ベルト・定着ベルト等においては、トナーの転写、定着のための機能として、中間抵抗値を有することが重要な品質課題となる事が良く知られている。この場合、体積抵抗値は106〜1013Ω・cm、好ましくは107〜1013Ω・cm、更に好ましくは109〜1013Ω・cmが求められる。更に、あらゆる環境下において、抵抗値は一定であることが望まれる。具体的には低温低湿時と高温高湿時の抵抗値の比が100倍以下、さらには30倍以下であることが好ましい。また、画像の種類や環境に応じて、電圧や電流を制御する必要があり、電圧に応じて抵抗値に変動がある場合は制御が難しくなるため、抵抗値の電圧依存性は小さいほど好ましい。100Vと1000Vの抵抗値の比は100倍以下、さらに好ましくは30倍以下である。さらに、プリンターは光学機器を含み、光学処理及び光学色補整をする部分に使用される部品は過度に光を反射しないように有色、特に黒色であることが望まれる。
【0005】
このような要求に鑑み、ポリイミド樹脂に対し各種の導電性物質を添加して抵抗値を下げる試みが種々なされており、芳香族ポリイミド母体と微分割電気伝導性粒子材料とを含み、該粒子材料が均一に分散し、全体の10〜45重量%存在する製品が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、カーボンブラックを5〜20重量%含有し、表面抵抗値(Ω/□)が107≦Rs≦1015の範囲にある芳香族ポリアミドフィルム又は芳香族ポリイミドフィルムからなる電子写真記録装置用中間転写体が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。更に、芳香族ポリイミドと導電性を有する無機フィラーとを含有する組成物からなるフィルムであって、体積抵抗値が10−2〜1012Ω・cm、全光線透過率が20%以上であることを特徴とする透明導電性フィルムが開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0006】
しかし上記のように、ポリイミドにカーボンブラック、グラファイト、金属粒子、酸化インジウム等の導電性充填剤を有するフィラーを混合する方法は機械特性に劣ったものであることが多く、また、これらの方法で用いられている充填剤は、その体積抵抗値が非常に低い(1.0×103Ω・cm以下)ため、半導電性領域での抵抗制御、特に抵抗値を再現性良くかつ面内ばらつきを小さくすることは非常に困難であった。また、その抵抗値の測定電圧依存性、添加部数依存性が大きいものしか得られず、高温高湿下では導電材と樹脂の界面に水が浸透し、電気抵抗が大幅に低下するという問題があった。さらに、ベース樹脂が吸湿膨張すると、添加剤の分散状態が変化し、抵抗値が大幅に変動するという問題もあった。このように、カーボン、金属等の導電性充填剤を添加した場合は抵抗値の制御が難しく、添加量の最適化も難しかった。
【0007】
また、主導電性フィラーとして平均粒径1〜50μmで体積抵抗値が103〜109Ω・cmの大粒径高抵抗粒子と、補助導電フィラーとして平均粒径が0.1μmより小さく体積抵抗値が102Ω・cm以下の小粒径抵抗粒子とが分散されてなり、体積抵抗値が105〜109Ω・cmの範囲にある半導電性樹脂複合材料が開示されている(例えば、特許文献4参照。)。
【0008】
しかし上記のように、大粒径高抵抗粒子を添加すると、押出成型や射出成型により、フィルム、チューブ等に代表される厚みが100μm程度の薄い成型物を得る際に表面性が悪くなる場合があり、また上記配合によりゴム材料や汎用樹脂を用いて前記の薄い形状に成型する場合、絶縁性や機械強度が大幅に劣る場合があり、更に熱溶融による混錬や射出成型を行うと、大粒径高抵抗粒子が破損するため抵抗値がばらつき、機械強度も低下するという問題があった。また、前記特許文献4で使用される大粒径高抵抗粒子は、特定の抵抗値を有する無機物を使用しており、目的の抵抗値の樹脂複合材料を得る場合、それに応じて種々の抵抗値を有するフィラーを探索したのち、フィラーの抵抗に応じて適切な配合を行う必要があった。しかしこのような作業は非常に労力を必要とし、抵抗値によって、フィラーの種類を変更するため、機械特性が極端に異なる場合があり、またフィラーの色も各種有り、色の制御、特に黒色化は非常に困難であった。
【0009】
【特許文献1】
特開平2−110138号公報
【0010】
【特許文献2】
特開昭63−311263号公報
【0011】
【特許文献3】
特許第2783537号公報
【0012】
【特許文献4】
特開平4−133077号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
このような種々の試みにも関わらず、依然として高い絶縁性を保持したまま、ポリイミド樹脂組成物を中抵抗に制御しかつ高い黒濃度を実現することは非常に困難な課題である。
【0014】
特にカーボンブラックを添加してポリイミドの抵抗値を制御し黒濃化する場合、ポリイミド特有の成型法に由来する次のような課題がある。ポリイミドの成型は押出法、カレンダ成型といった熱溶融による単純な成型ではなく、前駆体のポリアミド酸溶液を加熱し、溶媒乾燥とイミド化反応を伴う非常に複雑なものである。この乾燥及び反応中、材料のモルフォロジー、極性、溶解性は大幅に変化する。特に、ケミカルキュアによりイミド化する方法においては変化はさらに劇的である。カーボンブラックは元来凝集し易い材料であるため、抵抗制御のために添加されたカーボンブラックは乾燥及び反応過程で凝集を起こし、わずかな成型条件の変化でも大幅な抵抗変化が生じ、成型条件の設定は非常に注意を要するものであった。また、前記ケミカルキュア法では凝集がおこりやすいため、カーボンブラックの着色効果も大幅に低下し、黒濃度の高いポリイミドフィルムを得ることは非常に困難な課題であった。
【0015】
また、ポリイミド樹脂、中でも全芳香族のポリイミド樹脂は体積抵抗値が1016Ω・cmと非常に高く、ポリアミドやポリ塩化ビニルのような体積抵抗値が低い樹脂に比べて、導電性フィラーを大量に添加する必要があり、大量であるがために、混錬・分散不足による体積抵抗値のばらつきが大きかった。
【0016】
また、カーボンブラックや導電性粒子を添加して抵抗値を制御する場合、これらの材料は抵抗値が低いため、添加量のわずかな違いや分散状態の違いによって抵抗値が大幅に変化したり、全く同じ配合であってもバッチ間で抵抗値が異なったりするという問題があった。さらに、ベルトのように成型体の厚みが薄いと、部分的なばらつきが大きくなり、顕著な絶縁信頼性の低下につながるため、抵抗制御はより困難なものとなっていた。
【0017】
また特に、カーボンブラック以外に他の無機導電材料を併用して抵抗制御した場合、ポリイミドの成型条件で物性変化せず、かつポリイミドの物性劣化を引き起こさない中抵抗制御用導電材料で、黒色、透明であるものはほとんどない。そのため、黒色化のために着色用カーボンブラックを併用したとしても、得られるポリイミドは灰色や緑色になり、黒濃度の高いフィルムを得るのは難しかった。
【0018】
当然、黒濃度を上げるためにカーボンブラックの配合量を増やすことが考えられるが、そうなると、中抵抗値制御が困難となり、絶縁性も大幅に悪化するため、カーボンブラックの添加は極力減らす必要があった。
【0019】
このように、無機導電材料及びカーボンブラックからなるポリイミド材料をケミカルキュアにより成型する場合、特に多量の無機導電材料を含む系において、少量のカーボンブラックの添加により、高い黒濃度を実現することは、非常に困難な課題であった。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、このような課題を解決すべく種々の無機フィラー、カーボンブラックの効果を比較検討した結果、無機フィラーおよびカーボンブラックからなるポリイミド樹脂組成物において、半導電性フィラーと特定のpH、揮発量、サイズを有するカーボンブラックを使用することで、黒濃度が高く、高絶縁性、中抵抗値を有し、添加部数、分散状態、サンプル間のばらつきが小さく、抵抗値の環境依存性、電圧依存性が少なく、機械特性に優れ、搬送による帯電防止性や電子写真装置での転写性・定着性に優れたポリイミド樹脂組成物を見出し、本発明を完成するに至った。
【0021】
すなわち本発明の第一は、ポリイミド樹脂100重量部に対し、半導電性フィラーを20〜200重量部、揮発量2.0%以上、かつpH5.0以下であるカーボンブラックを0.01〜20重量部含有し、体積抵抗値が1×106〜1×1015Ω・cmの範囲内にあり、黒濃度が1.0以上であることを特徴とするポリイミド樹脂組成物を内容とする。
【0022】
前記カーボンブラックの揮発量が3.0%以上、かつpHが4.0以下であり、一次粒径が20nm以下であり、配合量が0.1〜5重量部であるとよい。
【0023】
また、前記半導電性フィラーの配合量が40〜180重量部であるとよい。
【0024】
また、前記黒濃度は1.1以上であるとよい。
【0025】
また前記半導電性フィラーは、黒色導電性物質で被覆された半導電性フィラーであるとよい。
【0026】
また、前記半導電性フィラーは、インジウム−錫複合酸化物、アンチモンドープ酸化錫、ニオブドープ酸化錫、タンタルドープ酸化錫、フッ素化物ドープ酸化錫、あるいは酸化錫の酸化錫系物質で被覆されたフィラーであるとよい。
【0027】
また、前記半導電性フィラーが、酸化チタン、チタン酸金属塩、ホウ酸アルミニウム、酸化錫、あるいは炭化ケイ素であることを特徴とするポリイミド樹脂組成物であるとよい。
【0028】
また、前記半導電性フィラーの体積抵抗値は1×103〜1×1010Ω・cmであるとよい。
【0029】
また、前記ポリイミド樹脂はイミド化促進剤として酸無水物および/または三級アミンを添加後、加熱焼成して得られるとよい。
【0030】
本発明の第二は、前記のポリイミド樹脂組成物を用いて調製されるポリイミドフィルムに関する。
【0031】
本発明の第三は、前記のポリイミド樹脂組成物若しくはフィルムを用いて調製されるポリイミド管状物に関する。
【0032】
本発明のポリイミド管状物における実施態様の一つとして、電子写真装置の転写ベルト、中間転写ベルト、転写定着ベルトまたは定着ベルトのいずれかに使用されるポリイミド管状物が挙げられる。
【0033】
【発明の実施の形態】
本発明におけるポリイミド樹脂とは、その構造中にイミド結合を有する樹脂全般を意味し、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド、ポリアミドイミドなどの一般名称で呼ばれる樹脂はもちろん、他樹脂との共重合系やブレンド物も含むものである。なお、他樹脂との共重合系やブレンド物の場合は、全樹脂中にポリイミド樹脂成分が50重量%以上、好ましくは80重量%以上含まれていればよい。中でも、無機フィラーと強く結合し、無機フィラーをフィルムの面内に配向させやすい反応硬化型の直鎖状ポリイミド樹脂が好ましい。ここで、反応硬化型の直鎖状ポリイミド樹脂とは、前駆体である直鎖状ポリアミド酸を経由し、アミド酸部位が脱水閉環することで得られるポリイミド樹脂のことを指し、例えば、ピロメリット酸二無水物と4,4′−ジアミノジフェニルエーテルとの反応で得られる直鎖状のポリアミド酸を、加熱、触媒添加等し、イミド化して得られるポリイミド樹脂が代表例として挙げられる。反応硬化型の直鎖状ポリアミド酸は、カルボキシル基やアミノ基等の官能基を有し、これら官能基は無機フィラーと強く相互作用し、無機フィラーと強固な結合を形成することができる点から、好ましく用いられる。
【0034】
さらに、イミド化促進剤として酸無水物および/または三級アミンを使用すると、熱キュアの場合と比較して、成型中や成型後において引き裂き強度の高いポリイミド成型体が得られ、成型時間も大幅に短縮される点から好ましい。また、熱キュアに比べてイミド化が早く進むため、樹脂が早く硬直化し面内方向に配向しやすくなる結果、添加しているフィラーも面内方向に配向し、表面抵抗値と表面粗さが小さく、厚み方向の絶縁性に優れたポリイミド成型体を得ることができる。
【0035】
ここで言う酸無水物としては、例えば無水酢酸等の脂肪族酸無水物、フタル酸無水物や無水安息香酸等の芳香族酸無水物などが挙げられ、これらは単独又は2種以上組み合わせて用いられる。また三級アミンとしては、例えばトリエチルアミン等の脂肪族第三級アミン類、N,N−ジメチルアニリン等の芳香族第三級アミン類、ピリジン、ピコリン、イソキノリン、キノリン等の複素環式第三級アミン類などが挙げられ、これらは単独又は2種以上組み合わせて用いられる。
【0036】
一般的なポリイミドの原料として、ジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物をモノマーとして用いるのが通常である。ジアミン化合物としては、例として、
【0037】
【化1】
(式中、Xは同一または異なって、ハロゲン、−CH3、−OCH3、−O(CH2)nCH3、−(CH2)nCH3、−CF3、−OCF3からなる群から選ばれる少なくとも一種の基を表す。また、Aは同一または異なって、O、S、C=O、(CH2)n、SO2、N=Nからなる群から選ばれる少なくとも一種の基を表す。mは1以上の整数。nは1以上の整数。)に示す種々のモノマーを用いる事ができる。
【0038】
またテトラカルボン酸二無水物としては、
【0039】
【化2】
(式中、nは1以上の整数。)
に示す種々のモノマーを用いる事ができる。
【0040】
これらの組み合わせにより様々な特徴を出す事が可能であり、用途や加工法などの状況に応じて選択することができる。
【0041】
例えば、屈曲鎖を多く(好ましくは一分子中に2つ以上)含む、および/またはアミノ基をメタ位に有する芳香族ジアミンを用い、2環以上のテトラカルボン酸二無水物を用いる事で、熱可塑性のポリイミドとすることができ、加熱溶融成型が可能なポリイミド樹脂組成物を提供可能である。例えば、2、2´−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパンと、オキシジフタル酸二無水物の組み合わせや、ビス(2−(4−アミノフェノキシ)エトキシ)エタンと3,3´,4,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物の組み合わせ等を例示することができる。
【0042】
また、ポリイミドはイミド基の存在により通常高吸水率であるが、特定のモノマーとの組み合わせにより比較的低吸水率の樹脂組成物とすることもできる。例として、テトラカルボン酸二無水物として2以上のエステル結合で複数のベンゼン核が結合された構造を持つモノマーを使用するポリイミドが挙げられる。具体的には、
【0043】
【化3】
(式中、nは1以上の整数。)
【0044】
【化4】
【0045】
【化5】
に示されるような酸二無水物が挙げられる。
【0046】
この場合に用いられるジアミン化合物としては、イミド基含有率を下げるために比較的長鎖のモノマーを用いることが好ましい。例えば、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンやその結合位置異性体、2,2´−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン等を挙げることができる。
【0047】
ただし、酸二無水物についてもジアミンについても、長鎖でかつ屈曲鎖を多数有する構造は、同時に前述の熱可塑性発現の条件でもあり、十分な耐熱性を要求する場合には不適当である。特に耐熱性と低吸水率の両方が求められる場合は長鎖でありかつ直線的構造を全体的または部分的に有するモノマーが適当である。例えばテトラカルボン酸二無水物としては、
【0048】
【化6】
で示す構造のモノマー(以下、TMHQ)が例として挙げられる。このモノマーは、屈曲鎖を含むものの全体としては概ね直線的なコンフォメーションを取りうる構造であり、その結合数の多さのわりには比較的剛直なポリイミドを形成する。この原料を用いれば、線膨張係数15ppm以下、吸水率1.5%以下、吸湿膨張係数10ppm以下であり、加熱や吸湿による寸法変化が少ないポリイミド樹脂を得ることも可能である。またジアミンとしても例えばビフェニル構造やナフタレン構造をエーテル結合でつなぐような構造が、長鎖でありながら比較的剛直な構造として選択できる。例えば4,4´−ビスアミノフェノキシビフェニルなどがあげられる。
【0049】
これら酸二無水物とジアミンの組み合わせにより、比較的低吸水率であり、かつ顕著な熱軟化性を有さないポリイミドを得ることができる。またこれらモノマーのみでなく汎用のピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、パラフェニレンジアミン、4,4´−ジアミノジフェニルエーテル等を適宜共重合する事により、所望の特性のポリイミドを幅広く設計可能である。
【0050】
また、ポリイミドは、銅のような金属に比べて線膨張係数が大きい。しかし、モノマーの種類や組成比が同じでも、モノマーの繋がりの組み合わせを制御(シーケンスコントロール)することにより比較的小さな線膨張係数を有するポリイミド樹脂とすることができる。例えば、4,4´−ジアミノジフェニルエーテル、パラフェニレンジアミン、ピロメリット酸二無水物をランダム共重合する場合に比べて、4,4´−ジアミノジフェニルエーテルとピロメリット酸二無水物を予め反応させておき、その後パラフェニレンジアミンを添加する手順を取ると規則的なモノマー配列のポリアミド酸が得られ、これをイミド化する事により低線膨張係数のポリイミド樹脂を得ることができる。
【0051】
本発明では、ポリイミド樹脂に無機フィラーを配合するため、ポリイミド樹脂単体で用いる場合に比較して、ポリイミド樹脂に対し、より高い靭性が求められる。ポリイミド樹脂自身の靭性が十分でないと、無機フィラーの配合により必然的に靭性が低下するため、実用に供する事ができなくなる場合がある。その点から、ピロメリット酸二無水物と4,4´−ジアミノジフェニルエーテルから調製されるポリイミド樹脂であることが最も好ましい。本構造は、十分な耐熱性と高い靭性を兼ね備え、なおかつ広い範囲の加工条件でその特性を維持できるバランスの取れた構造である。
【0052】
本発明に用いられる上記ポリイミド樹脂に配合される半導電性フィラーの体積抵抗値は、低抵抗値から中抵抗値のいずれであっても良いが、カーボンブラック、黒鉛、金属片といった低抵抗導電材料よりも高い1×103〜1×1010Ω・cmが好ましく、より好ましくは1×103〜1×108Ω・cm、特に好ましくは1×103〜1×107である。一般に低抵抗値を有する導電材料は、樹脂に添加した場合、少量添加でも中間抵抗を実現できる。しかし、樹脂と導電材料では抵抗値の差が大きいため、添加部数のわずかなずれや分散の偏りにより、抵抗変動、又は電圧依存性が大きくなり、更に絶縁破壊電圧も低くなる。
【0053】
半導電性フィラーを用いて安定的に中抵抗値を制御でき、配合部数、分散状態、サンプル間で抵抗のばらつきを小さくできる理由については、概ね以下のように考えている。半導電性フィラーは単体で1×103〜1×1010Ω・cm程度の抵抗値を有しており、カーボンブラック、導電性金属、あるいは金属セラミックス(1×10−5〜1×103Ω・cm)とは異なり、その体積抵抗値が狙いの中抵抗値(1×106〜1×1013Ω・cm)に近い。その結果、過剰に添加したとしても、抵抗が低抵抗値まで下がりすぎることがなく、中抵抗値付近で飽和し、このため安定的に中抵抗値に制御することができると思われる。また、半導電性フィラーの添加された系は、カーボンブラックに見られるようなパーコレーションによる急激な抵抗の低下は見られず、抵抗は添加量に対してなだらかに変化する。その結果、半導電性フィラーを添加した系では、例えば、中抵抗領域に抵抗値を制御する添加部数に対して、添加量が5重量部程度変化したとしても抵抗値変化を3倍以下にすることもできる。また脱泡や分散過程でフィラーに凝集や偏りが生じたとしても抵抗値の大幅な変化は見られない。このような理由から、半導電性フィラーを用いた場合は、樹脂組成物中の添加量、分散状態がサンプル間でばらついたとしても、組成物の抵抗値の変化が少ないと思われる。一方、カーボンブラックを添加した系では、中抵抗領域に制御するために、樹脂100重量部に対して10〜20重量部程度を添加するが、このような少ない添加部数に対して、添加部数が5重量部程度変化すると、抵抗はたちまち10〜100倍以上変化する。その結果、配合部数、分散状態、又はロット間のわずかな違いが、抵抗値へ大幅に影響する。
【0054】
また、半導電性フィラーを用いることによって絶縁性が改善される理由は、概ね次のように考えている。ポリイミドと導電材からなるフィルムに電圧を印加すると、電圧はポリイミドと導電材に分圧され、電圧は導電材よりも高抵抗であるポリイミドの部分にかかると考えられる。特に、カーボンブラックや金属系材料のような低抵抗材料を添加した場合と、半導電性フィラーのような中抵抗材料を添加した場合とを比べると、ポリイミドにかかる電圧は中抵抗材料を添加したときのほうが小さいと考えられる。その結果、ポリイミドにおける絶縁破壊が低減されるものと考える。
【0055】
さらに、半導電性フィラーを用いることにより抵抗の電圧依存性、環境依存性が改善される理由については、概ね次のように考えている。一般に樹脂に高電圧(例えば、厚み100μmに対して1kV以上の電圧を印加)を印加した場合、樹脂は絶縁破壊に近づき、抵抗値の電圧依存性は急激に悪化する。つまり、破壊直前には大電流が流れる。このことから抵抗値の電圧依存性は、樹脂に高電圧がかかることで樹脂が破壊に近づくために生じる現象と考えられる。しかし、半導電性フィラーのような中抵抗材料を添加した系では、カーボンブラックのような低抵抗材料を添加した場合に比べて、樹脂部分に局所的に高電圧がかかることを防ぐことができ、抵抗値の電圧依存性を改善できると考える。また、半導電性フィラーの多くは、表面に部分的に水酸基や活性な酸素等を有しているため、表面処理を行わずともイミド化の際に樹脂と強い相互作用を生じ、強固な複合材料となる。そして、これら強固な複合材料は高温高湿時の抵抗値低下と絶縁性悪化を防ぐことにも役立っていると考えられる。
【0056】
以上の理由に基づくと考えられるが、半導電性フィラーを用いることで、次のような電気特性を実現することができる。まず、これらを適切に配合することで、ポリイミド樹脂組成物は、安定して体積抵抗値が1×106〜1×1015Ω・cm、好ましくは1×109〜1×1013Ω・cm、表面抵抗値が106〜1013Ω/□、好ましくは1×109〜1×1013Ω/□の範囲の中間的抵抗値を実現することができる。また、低温低湿時の抵抗値Rlと高温高湿時の体積抵抗値Rhとの比(Rl/Rh)を0.01〜100、さらに好ましくは0.3〜30の範囲内に制御でき、環境安定性の優れた材料を調製することができる。また、100V印加時の体積抵抗値R100Vと1000V印加時の体積抵抗値R1000Vとの比(R100V/R1000V)を0.01〜100、さらに好ましくは0.3〜30の範囲内に制御でき、電圧依存性の少ない材料を調製することができる。また前記抵抗値を実現する添加部数範囲内において、例えば、半導電性フィラーの添加部数が5重量部程度変化しても体積抵抗値の変動を3倍以下にすることも可能であり、添加部数依存性の少ない材料を調製することができる。また、例えば、サンプル間の抵抗値のバラツキを3倍以下に抑えることも可能であり、サンプル間バラツキの小さい材料を調製することができる。
【0057】
また、本発明に用いられる半導電性フィラーとしては導電性物質で表面が被覆された無機フィラーも挙げられ、具体的には、炭素、黒鉛等の黒色導電性物質、インジウム−錫複合酸化物(以下、ITOとも言う。)、アンチモンドープ酸化錫(以下、ATOとも言う。)、ニオブドープ酸化錫(以下、NTOとも言う。)、タンタルドープ酸化錫(以下、TTOとも言う。)、フッ素化物ドープ酸化錫(以下、FTOとも言う。)、酸化錫(以下、TOとも言う。)等の酸化錫系導電性物質で被覆された半導電性フィラーが挙げられる。これらのうち、黒色導電性物質や酸化錫系導電性物質で被覆された物質は、導電性物質の種類、量、形成方法によって様々な中抵抗へ調整することができるために好ましい。
【0058】
例えば、炭素や黒鉛等の黒色導電性物質で抵抗を制御した材料では、表面に付着する黒色導電性物質の被覆量を調整することで抵抗値を制御することができる。また、一旦抵抗値の低い材料が得られたとしても、空気中で、50〜750℃の温度で加熱すると、抵抗値が上がり、各種抵抗値を有する半導電性物質を容易に入手することができる。
【0059】
また、酸化錫やドーピングを施した酸化錫で抵抗値を制御した材料では、ドーピングの量を変更することで、低抵抗値から高抵抗値まで幅広く制御することができる。また、芯材の表面に酸化錫またはドーピングされた酸化錫層を形成した後、加熱雰囲気を酸化性又は非酸化性のどちらかに選択することや加熱温度を変更することでも、抵抗値を制御することができる。このようにして、類似の形状からなる各種抵抗値を有する半導電性物質を容易に入手することができる。また、酸化錫系の材料は熱に強く、ポリイミドの製膜工程のような300℃を越える過酷な成型においても物性劣化を引き起こすことがないために、使用の範囲も広くなる。また酸化錫系の材料は、無色に近く、芯材に無色のものを使用すると、無色の半導電性フィラーを得ることができる。その結果、黒色剤を併用することで、容易に黒色ポリイミド樹脂組成物を得ることができる。
【0060】
また、上記のように表面被覆方法を制御することで、抵抗値を制御できる利点として次のようなことがある。例えば、チタン酸カリウム、酸化錫、酸化亜鉛等といった材料は、特定の抵抗値しか有しておらず、これらを用いて様々な抵抗値へ制御する場合、異なる抵抗値を有する2種以上のフィラーを混合したり、配合部数を変更する必要があった。また、各フィラーに応じた分散性の制御や配合調整に大変な労力を要し、配合量の変更により機械特性が異なり、また色も単一の色しかなく、各種色付けする際に、色変更の自由度が少なかった。しかし、本発明の導電性物質で被覆された材料を用いれば、各種抵抗を有する材料を単一材料で容易に作成することが可能となり、機械特性や分散性を変えることなく導電性の制御が可能となるため、配合量が全く同じで異なる抵抗値を有するポリイミド樹脂を作成することができる。また、半導電性無機物の機械特性、分散性といった基本特性は同一であるため、種類変更による洗浄作業や切り替え作業も非常に容易になる。また、表面の導電処理方法により、無色から黒色まで自在に選択することができ、着色も容易となる。
【0061】
本発明に用いられる導電性物質で被覆された半導電性フィラーの芯材(無機材料)として、金属、金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物といったセラミック材料や金属塩といったものが挙げられる。例えば、亜鉛、酸化亜鉛、アルミニウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、カルシウム、炭酸カルシウム、銀、酸化クロム、ケイ素、ケイ酸塩、ケイ酸カルシウム、シリカ、ガラス、酸化チタン、チタン酸金属塩、ホウ酸アルミニウム、酸化錫、鉄、酸化鉄、銅、酸化銅、炭酸バリウム、硫酸バリウム、水酸化バリウム、マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭化ケイ素、炭化タングステン、炭化チタン、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ゲルマニウム、窒化タンタル、窒化チタン、窒化ホウ素、マイカ、タルク、ウォラストナイト、タルク、カオリン、粘土鉱物等が挙げられる。
【0062】
このうち、ホウ酸アルミニウム、酸化錫、炭酸カルシウム、ケイ酸塩、ケイ酸カルシウム、硫酸バリウム、マイカは、屈折率が低く樹脂の屈折率に近似しているので、樹脂に混入しても透明性を損なうことが少なく、また着色することもない点から好ましい。またアルミナ、シリカ、ガラス、ウォラストナイト、タルク、カオリンも比較的屈折率が低く、樹脂に添加しても透明性が損なわれにくい点から好ましい。屈折率としては2.0以下、好ましくは1.8以下、さらに好ましくは1.7以下である。これらに黒色導電性物質を被覆すると黒色化された半導電性無機物を得ることができ、ポリイミドに配合する場合、黒色のポリイミド樹脂組成物を得やすいために好ましい。また、酸化錫系物質を被覆した際には、透明性に優れた半導電性フィラーを得ることができる点から好ましく、このフィラーを添加したポリイミド樹脂は、透明性を有する。さらに、他の着色剤を添加することで任意の色調を得ることができる点からも好ましい。
【0063】
一方、芯材から遊離する金属成分は少ないほど良い。遊離金属成分量としては100ppm以下、好ましくは80ppm以下、さらに好ましくは50ppm以下であるとよい。上記範囲内では、遊離金属成分が少ないために、配合した樹脂の抵抗値の湿度依存性が小さくなるために好ましい。また、絶縁破壊電圧も小さくなるために好ましい。
【0064】
また、単体で半導電性を有するフィラーとしては、酸化チタン、チタン酸金属塩、ホウ酸アルミニウム、酸化錫、炭化ケイ素等が挙げられる。
【0065】
本発明においては、ポリイミド樹脂組成物に対して、前記半導電性フィラーの他に、導電性フィラーを加えることも可能である。導電性フィラーとしては、カーボンブラック、グラファイト、金属粉末、導電性セラミックス、導電処理された無機物、帯電防止剤等が挙げられる。
【0066】
カーボンブラックとしては、導電性を有するものであれば種々のものを用いることができ、例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック等があげられる。中でも、ファーネスブラックの1種であるが、特に比表面積が大きくケッチェンブラックと呼ばれるカーボンブラックを用いた場合、カーボンブラックの配合量が少なくても抵抗低減効果が高く、なおかつ他のカーボンブラックを使用した場合に比較して電圧依存性(電圧が変わると抵抗値が変わり、オームの法則に則った挙動を示さない性質)が少ないという利点を有する。この点から、ケッチェンブラックを用いることが特に好ましい。
【0067】
金属粉末としては、銅、鉄、アルミニウム、SUS等の粉末が挙げられ、導電性セラミックスとしてはドーピングされた酸化錫やITO等が挙げられる。
【0068】
導電化処理された無機物としては、酸化チタン、チタン酸金属塩、硫酸バリウム、マイカ等を黒色導電性物質、酸化錫系化合物等により、導電化処理した物が挙げられる。形成方法としては、前記に示した半導電性フィラーの導電性層の形成方法が利用できる。
【0069】
本発明においては、ポリイミド樹脂組成物に対して、前記の半導電性フィラーの他に、絶縁性フィラーを加えることも可能である。絶縁性の無機物としては、例えばアルミナ、シリカ等の小径粒状物質、雲母、粘土鉱物等の板状・鱗片状物質、炭酸カルシウム等の短繊維状もしくはウィスカー状物質など多様な物が用いられる。絶縁性フィラーは、例えば弾性率等の特性をコントロールするために添加する場合もあるし、また導電性粉体の分散を補助し、導電体の凝集等を防止して安定した抵抗値を実現できる場合もある。
【0070】
本発明に用いる半導電性フィラー、導電性フィラー、絶縁性フィラーの形状としては、粒状、針状、鱗片状等、特に限定されるものではないが、中でも針状が好ましい。針状フィラーを用いれば、絶縁性を保持したまま抵抗を低減でき、表面性に優れ、線膨張係数、吸湿膨張係数の小さい樹脂組成物を得ることができる。また、引き裂き等による断裂や張力による寸法変化を防ぎ、高耐久かつ高寸法安定性で長期の搬送特性が実現できる機械強度に優れたフィルムやベルトを得ることができる。
【0071】
フィラーが粒状である場合、その粒径は1μm以下、好ましくは0.3μm以下、さらに好ましくは0.1μm以下である。100μm以下といった厚みが薄い成形体においては、粒状フィラーが1μmよりも大きい場合、分散不良による局部の凝集によって絶縁破壊が生じ、表面性も悪化する傾向がある。一方、フィラーの粒径が1μm以下であれば、多少の凝集であっても絶縁性、或いは表面性を悪化させないため、好ましい。しかしながら、逆に上記粒径が小さすぎると、ポリアミド酸溶液が増粘したり、嵩張りすぎて配合作業に支障をきたすおそれがある。このためフィラーの粒径は0.005μm以上であることが好ましい。また、フィラーの体積抵抗値は、多少の凝集物が存在しても、厚み方向の絶縁破壊が発生しにくい点から、1×103Ω・cm以上であるのが好ましい。
【0072】
フィラーが針状や鱗片状である場合においても、上記と同様の理由により、その短軸径の上限は1μm、好ましくは0.3μm、さらに好ましくは0.1μmであり、その下限は0.005μmであることが好ましい。
【0073】
次にポリイミド樹脂に対する半導電性フィラーの配合量は、ポリイミド樹脂100重量部に対し20〜200重量部、好ましく40〜180重量部、さらに好ましくは50〜150重量部である。上記配合部数よりも多いと、フィルムが脆くて成型が困難となり、また、黒色材料を添加しても黒濃度が0.9以上の組成物が作成困難となるために好ましくない。また、上記配合部数よりも少ないと、抵抗値が目的の範囲内まで下がりにくいため、好ましくない。
【0074】
導電性フィラーを併用する場合においては、導電性フィラーは40重量部以下、好ましくは20重量部以下、さらに好ましくは10重量部以下の部数で併用可能である。半導電性フィラーに加えて、40重量部以上の導電性フィラーを添加すると抵抗値が低くなりすぎ、絶縁性も悪化する場合があるため好ましくない。
【0075】
絶縁性フィラーを併用する場合においては、半導電性フィラーと絶縁性フィラーの総量が20〜200重量部、好ましく40〜180重量部、さらに好ましくは50〜150重量部であるように併用可能である。上記配合部数よりも多いと、フィルムが脆くて成型が困難となり、また、黒色材料を添加しても黒濃度が0.9以上の組成物が作成困難となる場合があるために好ましくない。
【0076】
本発明に用いられる上記ポリイミド樹脂を黒色化するために配合される黒色剤としては、揮発量2.0%以上かつpH5.0以下のカーボンブラックであることが好ましく、更には揮発量3.0%以上かつpH4.0以下のカーボンブラックであることがより好ましい。ポリイミドの成型加工はモルフォロジー変化及び極性変化が激しいため、加工中に相分離するような形でカーボンブラックが凝集し、その結果としてポリイミドの黒濃度が低下する場合がある。しかし、上記特性のカーボンブラックを用いれば、加工中にカーボンブラックの凝集を抑制することができるため、特に、イミド化促進剤として酸無水物および/または三級アミンを用いてケミカルキュアする場合のようにモルフォロジーの変化が劇的に生じる場合でも、黒濃度の高いポリイミド樹脂組成物を得ることができる。さらに、本発明に用いられるカーボンブラックの一次粒径は、粒径が小さくなるほど、カーボンブラックの表面積が増え、光の吸収部分が増える点から、20μm以下であることが好ましい。
【0077】
なお、本発明において、黒濃度とはポリイミド表面の黒色度を意味し、マクベス反射濃度計(Macbeth RD914)を用いて測定する値のことを言う。マクベス反射濃度計にて測定される黒濃度は、以下の点から、1.0以上、好ましくは1.1以上あることが好ましい。例えば、プリンターは光学機器を含み、光学処理及び光学色補整をする部分に使用される部品は過度に光を反射しないように有色、特に黒色であることが望まれる。特に、電子写真装置においては、マシン起動時や印刷中に、ベルトにパッチ像を転写し、光を反射させて画質の調整をおこなっている。この際、ベルトの色が明るい(例えば黄色)と光の反射が大きなり、画質の調整が難しくなるが、黒濃度が高いとこのような問題は発生することがない。
【0078】
また本発明において、カーボンブラックのpHとは、JIS K 6220−1に従って測定する値、カーボンブラックの揮発量とは、JIS K 6220−1に従って測定する値、カーボンブラックの一次粒径とは、カーボンブラックをクロロホルムに投入し超音波を20分間照射して分散させ、分散試料を支持膜に固定した後、透過型電子顕微鏡で写真撮影し、写真上の直径と写真の拡大倍率により計算して求める値のことを言う。
【0079】
上記特性を有するカーボンブラックを用いることで黒濃度が高くなる理由については、概ね以下のように考えている。カーボンブラックは、揮発量が大きくなり、pHが小さくなると、表面にOH基やCOOH基のような酸性官能基を有するようになる。このようなカーボンブラックは、アミノ基、カルボン酸基、カルボニル基を有するポリアミド酸或いはその溶媒に対し、親和性、及び分散性が高くなる傾向がある。また、上記カーボンブラックの官能基は、ポリアミド酸と反応を起こす場合があるため、分散が促進されることも考えられる。特に、イミド化促進剤を用いるケミカルキュア法においては、イミド化促進剤とカーボンブラックとの間で酸塩基反応や結合形成反応が起こり、また、ポリアミド酸とカーボンブラックとの間でも反応が起こりやすくなる。その結果、ポリイミド樹脂中におけるカーボンブラックの分散性が高まり、最終的に得られるポリイミドは黒濃度の高いものになると考えられる。
【0080】
黒色用に添加するカーボンブラックの添加量としては、ポリイミド樹脂100重量部に対し、0.01〜20重量部、好ましくは0.05〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部、最も好ましくは0.5〜4重量部である。半導電性フィラーは無色から黒色まで幅広く選択することができるため、20重量部以下という少量でも十分に着色が可能となる。20重量部以上添加すると、機械特性、電気特性が悪化する場合がある。また、0.01重量部よりも少ないと着色できないために好ましくない。
【0081】
以上、半導電性フィラー単体及び半導電性フィラーと他のフィラーを適宜選択し、上記範囲内に調整することにより、高い絶縁性を保持して中抵抗値に制御でき、電圧依存性と環境依存性が少なく、添加部数、分散状態、サンプル間バラツキの小さい材料を調製することができる。また揮発量が多く、酸性度が高い、小粒径のカーボンブラックを添加することで、黒濃度の高いポリイミド樹脂組成物を得ることができる。
【0082】
また、表面に水酸基や活性酸素等の官能基を多く含む半導電性フィラーは、分散性に優れ、ポリイミドと強固な結合を有するため、フィラー未添加品の機械強度に対して50%以上の強度保持率を有するポリイミド樹脂組成物が得られやすく、特にピロメリット酸二無水物と4,4´−ジアミノジフェニルエーテルからなるポリイミド樹脂と組み合わせた場合には、引張り伸びは35%以上、引き裂き伝播強度は250g/mm以上のポリイミド樹脂組成物を得ることができるため好ましい。 また、半導電性フィラーを添加しても、例えば、吸水率を5%以下に保つように調整可能で、吸水率増加量はポリイミド元来の吸水率の2倍以下に抑えることもできる。
【0083】
以上の組み合わせに加えて、フィラーとポリイミドの強固な結合を作る等の目的に応じて、フィラーの表面処理を行ってもよい。表面処理剤としては、例えば、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、アミノ酸系カップリング剤等を用いることができる。樹脂が反応硬化型の直鎖状ポリイミド樹脂の場合には、表面処理をすることで結合はより強固なものとなるが、処理を行わずとも十分な強度を得ることができる。
【0084】
添加する半導電性フィラーや他のフィラー等をポリイミド樹脂に分散させるための方法としては、種々の方法がとられ得る。
【0085】
ポリイミド樹脂が溶剤可溶性である場合、溶剤に溶解したポリイミド樹脂溶液と、予めフィラーを溶媒に予備分散した分散液を調製し、両者を攪拌翼や3本ロールなどの混練機によって混合、分散を進める方法がとられ得る。また、逆にフィラーを溶媒に予備分散した分散液に対し、溶剤可溶性のポリイミドの粉体またはペレット等を加えて良く混合するという方法も使用可能である。前記予備分散の方法としては、例えば、フィラーを溶剤に加えて超音波分散するといった方法が有効である。特に針状フィラーは過剰な剪断力を受けると形状が破壊される可能性があるため、超音波分散による方法が好ましい。
【0086】
ポリイミド樹脂が溶剤不溶性の場合、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸の溶液に対し、前記の予備分散液を加えて、同様の方法で混合・混練等を行う方法も可能である。
【0087】
ポリアミド酸とフィラーを混合する場合、以下のような方法を用い得る。例えば、ポリアミド酸を重合する溶媒に予めフィラーを添加してフィラーの分散溶液を調製しておき、その後ポリアミド酸の原料であるジアミンと酸二無水物を添加してポリアミド酸を重合する方法があげられる。別の方法としては、予め重合して得たポリアミド酸にフィラーの分散溶液を添加し混合する方法である。どちらの方法を用いるにしても、通常はフィラーの分散溶液を調製する必要がある。一般的にフィラーは樹脂より比重が大きく重いため、溶媒にフィラーを添加するとたちまち沈降してしまう。このような状態で、ポリアミド酸と混合すると、フィラーの凝集物ができ、ポリイミド成型体の表面に凹凸ができたり、局所的に抵抗値が異なったりするおそれがある。これを防止するために、フィラーの分散溶液を作成するに際し、分散剤を配合すると好ましい結果が得られる。分散剤としては、金属塩や界面活性剤といったものが挙げられる。特に分散性、耐熱性の点から金属塩が好ましく、Li塩、Na塩、K塩、Rb塩、Cs塩、Be塩、Mg塩、Ca塩、Sr塩、Ba塩からなる群より選択される1種または2種以上の組み合わせが良く、特に Li塩、Na塩、K塩が好ましい。Li塩では格子エネルギーが1100kJmol−1以下のLi塩が好ましく、具体的には LiF、LiCl、LiBr、LiI、LiSCN、LiCF3SO3といったものが挙げられる。Na塩では格子エネルギーが800kJmol−1以下のNa塩が好ましく、具体的にはNaF、 NaCl、 NaBr、 NaI、 NaSCN、 NaCF3SO3といったものが挙げられる。K塩では格子エネルギーが800kJmol−1以下のK塩が好ましく、具体的にはKF、 KCl、 KBr、 KI、 KSCN、 KCF3SO3といったものが挙げられる。これらの金属塩は、常温でイオンが解離しやすく、フィラーと相互作用が強くなるために好ましい。ただし、格子エネルギーが小さすぎると、添加量の影響が大きくなりすぎる場合がある。これら金属塩は有機物を含まないために、成型中の高温乾燥でも樹脂が焼け付くようなことはない。分散剤はポリイミド樹脂100重量部に対して1重量部以下の所定量を配合すれば良く、0.01〜0.1重量部程度でも十分効果はある。一般に電線被覆の用途では、金属塩が添加されると絶縁性が悪化し、誘電率が4以上の材料に添加した場合にはイオン伝導性が高まり、あまり好ましくないが、ポリイミド樹脂との組み合わせにおいては、ポリイミド樹脂が絶縁性に優れ、誘電率が4以下であるため、絶縁性や抵抗の電圧依存性の悪化を低減できる。
【0088】
また、特に良好な分散性が得られる別の方法として、溶剤中に先にフィラーを加え、超音波分散機等により十分に分散させておき、これにポリイミド(ポリアミド酸)の原料であるジアミン化合物と酸二無水物化合物を加え重合反応を行うという方法がある。この方法によれば超音波分散などによりミクロなレベルでの分散が良好に保たれるのと同時に、初期のフィラー分散後から重合中にかけて常に攪拌がなされるために、マクロなレベルの分散性も非常に良好となる。
【0089】
本発明におけるポリイミド樹脂組成物は、種々の目的、用途に応じて成型され、様々な形状で用いられるが、絶縁性を保持しながら抵抗値を一定レベルに保持することが特に難しくなるのは、厚みが薄い場合である。その意味で、フィルム状、シート状、ベルト状、チューブ状等の広義でのフィルム状形態において、特に厚みが150μm以下、好ましくは、100μm以下の場合に、半導電性フィラー、その他導電性及び絶縁性フィラー、着色用カーボンブラックの混合による配合は特に有効となる。
【0090】
以下、ポリイミド樹脂組成物の代表的な成型方法について説明する。
【0091】
ポリイミド樹脂が溶剤可溶性の場合、ポリイミド樹脂溶液を調製し、これを任意の形状に加工した後、加熱、場合によっては減圧を併用することにより溶剤を揮発せしめ、ポリイミド成型体を得ることができる。
【0092】
同様の方法が、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸の段階においても適用でき、この方法はポリイミド樹脂が溶剤可溶性でなくても適用可能である。この場合、加熱に先立ち、イミド化促進のため、脱水剤として無水酢酸などの酸無水物や触媒として三級アミンを単独または併用して用いる事ができる。ただし酸無水物はイミド化反応の促進だけでなく、ポリアミド酸の分子鎖主鎖の切断も引き起こし得るため、ポリイミドの機械的特性のためには、酸無水物と三級アミンの併用または三級アミンのみの添加がより好ましく、熱キュアのみのイミド化に比べて高い引き裂き伝播強度を有する物が得られる。具体的には、引き裂き伝播強度が250g/mm以上、場合によっては500g/mm以上の物が得られる。また前記イミド化促進剤の添加は、加熱時間を減らすことができ、ポリイミド樹脂組成物の熱劣化を抑えることができるために非常に好ましい。特に、半導電性物質は、長時間の加熱によって導電性の変化を引き起こす場合があるため、加熱時間の短縮は非常に大切である。また、前記イミド化促進剤の添加による製法では、樹脂の面内方向への配向がより進みやすく、さらに針状や鱗片状の酸化錫を併用すると、フィラーは平面状に配向しやすくなる傾向がある。その結果、厚み方向に配向するフィラーが減り、電気絶縁性を改善でき、またフィラーの吸湿による厚み方向の電気特性劣化部分を減らすことができる。そして、抵抗の湿度依存性を減らすことができるために好ましい。また、成型時間が短くてすみ、生産性が飛躍的に向上し、製造中に強度が出やすく、製造中に脆くなることが防止できる。上記製法のこれらの利点は、厚みが100μm以下といった薄いポリイミド成型体の場合、特に顕著である。
【0093】
フィルムおよび管状物への具体的成型法の例として下記のような方法が挙げられる。フィラーを分散させたポリアミドまたはポリイミドの樹脂溶液をエンドレスベルト上に、Tダイ、コンマコーター、ドクターブレードなどを用いる事により厚み制御をした上で、塗布する。樹脂溶液を熱風などによって自己支持性が発現するまで加熱乾燥し、その後エンドレスベルトより引き剥がす。引き剥がした半乾燥のフィルムの幅両端をピンやクリップによって固定し、幅方向の長さを規制しながら順次高温の加熱炉内を通すことによって、フィルム状成型体を得ることができる。または金属などの連続したシート状の支持体上に同様の方法で塗布し、これを加熱炉内へ通過せしめることによってシート状に固定されたフィルムまたはシート形状のポリイミド成型体を得、その後これを支持体シートより引き剥がすかまたは支持体シートをエッチングなどの手段により除去する方法も取りうる。このようにして得たフィルムまたはシート状の成型体を所定の長さと幅に切り、つなぎ合わせてベルトまたはチューブ等の管状物を得る方法が最も容易である。つなぎ合わせには接着剤や接着テープ等を用いることができるが、この方法は不可避的につなぎ目で段差や切れ目が存在するため、用途によっては不都合が生じる場合がある。
【0094】
前記管状物を得る方法としては、円筒状金型の内面または外面にポリアミドまたはポリイミドの樹脂溶液を塗布し、加熱乾燥あるいは減圧乾燥などにより溶媒を揮発させ、これをこのまま最終焼成温度まで加熱するか、あるいは一旦引き剥がして、最終的に内径を規定するための別金型の外周にはめ込み、最終焼成温度まで加熱するといった方法をとりうる。円筒状金型への樹脂溶液の塗布にあたっては、樹脂溶液の垂れによる厚みばらつきを緩和するため、金型を回転させることも有効である。最終焼成温度はポリイミドの構造や添加するカーボンの耐熱性により適宜選択する事が必要であるが、非熱可塑性ポリイミドにおいてポリアミド酸状態から加熱・焼成する場合は概ね350℃〜450℃の間、熱可塑性ポリイミドの場合はポリイミドのガラス転位温度に対し−100℃〜−20℃の間が好適な範囲である。
【0095】
本発明のポリイミド成型体を電子写真装置の部材として用いる場合には、トナーの離型性や転写性、およびトナーのクリーニング性を改善するために、表面に導電性が制御されたフッ素樹脂最外層を形成するとよい。フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー(以下、PFA)といったものが挙げられる。導電性制御用の添加剤としては、ポリイミドの導電性制御用添加剤として前述したもの等が使用されうる。最外層の形成方法は、塗布やフィルムの貼り合わせ等が考えられるが、これらの材料をディスパージョンとしてスプレー塗布する方法が一般的である。
【0096】
本発明のポリイミド樹脂組成物を用いて調製されるポリイミドフィルム、ポリイミド管状物は、従来の半導電性のポリイミドフィルム、ポリイミド管状物に準じた各種の用途に用いうる。特に、機械特性や電気特性に優れることにより電子写真装置における像の転写及び中間転写用のベルト、その中間転写を兼ねた印刷シートの搬送用ベルト、定着用ベルトなどとして好ましく用いうる。ここで言う電子写真装置の種類としては、特に限定されず、複写機やレーザープリンタ、ビデオプリンタ、ファクシミリ、それらの複合機等の何れでもよい。また、その型式も、モノクロ画像、カラー画像、フルカラー画像など何れでもよく、トナーの種類、転写方式、記録媒体の種類なども特に限定されない。電子写真装置に用いられる場合、記録シートとしては紙やプラスチックシートなどの印刷用のシートを適宜用いることができる。また記録シートに像を形成する記録剤としても静電気を介し付着処理できるものを適宜用いうる。また、本発明のポリイミドフィルム及びポリイミド管状物は、体積抵抗値、表面抵抗値が中抵抗値に制御されており、ばらつきも非常に小さいため、カラー複写機の中間転写ベルトや転写搬送ベルトとして用いた場合、トナー像の変形や転写ムラがなく良好な画像を記録シートに転写でき、かつ搬送の記録シートを良好に分離できる性能を長期に持続することができる。また、定着ベルトとして用いた場合、半導電性を有するため、帯電を防止することができ、優れた定着性を実現することが可能となる。また、電子写真装置のような光学機器を含み、光学処理及び光学色補整をする部品に使用された場合、具体的には、マシン起動時や印刷中に、パッチ像を転写し、光を反射させて画質の調整をおこなっている転写または中間転写ベルトに用いられた場合、本発明のポリイミドフィルム及びポリイミド管状物は優れた黒色性を有するため、光の反射が一定と成り、画質の調整がしやすくなる。
【0097】
【実施例】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0098】
(物性評価方法)
次に、樹脂組成物の物性評価方法について説明する。なお、物性評価は管状物を成型した後、フィルム状のサンプルを切り出して行った。
【0099】
フィルム状サンプルの黒濃度は、マクベス反射濃度計(Macbeth RD914)を用いて測定を行った。
【0100】
フィルム状サンプル、及びフィラーの抵抗値の測定は、次のように実施した。サンプルを、▲1▼温度10℃・湿度15%Rhの環境(LL)、▲2▼温度23℃・湿度55%Rhの環境(NN)、▲3▼温度30℃・湿度80%Rhの環境(HH)に24時間放置し、該環境下にてアドバンテスト(株)製デジタル超高抵抗/微小電流計R8340と三菱化学(株)製HRプローブを用い100Vにおける体積抵抗値と表面抵抗値を測定した。フィルム状サンプルでは、1000Vでも測定を実施した。
【0101】
抵抗値の環境依存性とは、低温低湿時(LL)の体積抵抗値Rlと高温高湿時(HH)の体積抵抗値Rhとの比(Rl/Rh)の値を、抵抗値の電圧依存性とは、100V印加時の体積抵抗値R100Vと1000V印加時の体積抵抗値R1000Vとの比(R100V/R1000V)の値を意味する。これらの値が0.3〜30の範囲にある場合は依存性が少ない材料(小)、0.01〜0.3もしくは30〜100の範囲内にある場合は依存性が中程度ある材料(中)、0.01以下もしくは100以上の場合は依存性が悪い材料(大)とした。
【0102】
フィルム状サンプルの厚み方向の絶縁性測定は、次のように実施した。このフィルムを温度23℃・湿度55%Rhの環境(NN)に24時間放置し、該環境下にて安田精機製作所製のYSS式耐電破壊試験機における絶縁性を測定した。
【0103】
フィルム状サンプルの引張弾性率、引張伸びの測定は、ASTM D882に準拠して実施した。フィルム状サンプルの引裂伝播強度測定は、ASTM D1938に準拠して実施した。
【0104】
次に、実施例と比較例について説明する。
【0105】
(実施例1)
芳香族ジアミンとして4,4′−ジアミノジフェニルエーテルを、芳香族テトラカルボン酸二無水物としてピロメリット酸二無水物(以下、PMDA)を用いて得られたポリアミド酸のジメチルホルムアミド(以下、DMF)溶液(固形分濃度18.5%、溶液粘度3,000poise)を75g準備した。次に、半導電性フィラーとしてカーボン被覆チタン酸カリウム(デントールBK400HR:大塚化学(株):比重3.15g/cm3、体積抵抗値5.0×105Ω・cm、短軸径0.45μm、長軸径15μm、イオン溶出量500〜10000ppm)を8.42g、カーボンブラックとして揮発分8.0%、pH3.0、一次粒子径13nmのカーボンブラック(三菱化学(株):#2650)を0.67g採取し、これら添加剤の総重量に対し8倍量のDMFに分散させて添加剤分散溶液を調製した。
【0106】
前記のポリアミド酸溶液と添加剤分散液を添加し混練した。得られたドープを管状フィルム状にキャストする前に、無水酢酸/イソキノリン/DMFを9.03g/11.4g/15.6gからなる溶液と混合し、次いでアルミ箔上にキャストした。140℃/600秒、275℃/40秒、400℃/93秒熱処理して約75μmのポリイミドフィルムを得た。なお、管状物として得る場合には、アルミ箔の代わりに鏡面を有する金属筒の内面もしくは外面に塗布することによって作成した。該管状物中の半導電性フィラー、カーボンブラックの配合量はポリイミド固形分100重量部に対して、各々50重量部と4重量部である。特性値を表2に示す。管状物の電気特性、機械特性等の物性はフィルムの物性と同じと考えてよい。アルミ箔および金属筒からのポリイミドの剥離は、140℃の加熱の後におこなった。
【0107】
上記と同様の方法にて重合したポリイミドフィルム単体(フィラーを含まない)の物性値を評価した結果、線膨張係数21ppm、吸湿膨張係数16ppm、引張弾性率2.9GPa、伸び70%、引き裂き伝播強度450g/mm、吸水率2.5%であった。
【0108】
(実施例2〜8)
カーボン被覆チタン酸カリウムの代わりに表1に示した配合部数で半導電性フィラー、およびカーボンブラックを配合した以外は、実施例1と同様にしてポリイミドフィルムを得た。特性値を表2に示す。
【0109】
なお、表1に記載のフィラーの詳細は次の通りである。酸化錫系被覆ホウ酸アルミニウムは三井金属(株)製のパストラン−TYPEV−KK006、カーボン被覆雲母は大塚化学(株)製BK400M、酸化チタンは石原産業(株)製FTL300のことを指し、これらフィラーのイオン溶出量は、全て<50ppmであった。
【0110】
また、実施例1〜4、9および10に使用したカーボンブラックは三菱化学(株)製#2650、実施例5、6に使用したカーボンブラックは三菱化学(株)製#1000、実施例7、8に使用したカーボンブラックはデグッサジャパン(株)製FW200、比較例2〜4に使用したカーボンブラックは三菱化学(株)製#2600である。
【0111】
(実施例9)
実施例1記載のポリアミド酸のDMF溶液を、芳香族ジアミンとして4,4′−ジアミノジフェニルエーテル3当量をDMFに溶解し、次にPMDA4当量を加え、さらに、パラフェニレンジアミン1当量を加えて重合したポリアミド酸のDMF溶液(固形分濃度18.5%、溶液粘度3,000poise)に変更した以外は実施例1と同様にしてポリイミドフィルムを得た。特性値を表2に示す。
【0112】
このようにして重合したポリイミドフィルム単体の物性値を評価した結果、線膨張係数8ppm、吸湿膨張係数9ppm、引張弾性率4GPa、伸び70%、引き裂き伝播強度450g/mm、吸水率2.1%であった。
【0113】
(実施例10)
実施例1記載のポリアミド酸のDMF溶液を、芳香族ジアミンとして4,4′−ジアミノジフェニルエーテル1当量、パラフェニレンジアミン1当量をDMFに溶解し、次にTMHQ1当量を加え、さらにPMDA1当量を加えて重合したポリアミド酸のDMF溶液(固形分濃度18.5%、溶液粘度3,000poise)に変更した以外は実施例1と同様にしてポリイミドフィルムを得た。特性値を表2に示す。
【0114】
このようにして重合したポリイミドフィルム単体の物性値を評価した結果、線膨張係数9ppm、吸湿膨張係数5ppm、引張弾性率6GPa、伸び30%、引き裂き伝播強度450g/mm、吸水率1.2%であった。
【0115】
以上のようにして得られた実施例1〜10のポリイミドフィルムの黒濃度を測定した結果、全て1.0以上あり、非常に黒色度に優れていた。また、前記NN条件での体積抵抗値は何れも1×109〜1×1013Ω・cmと中抵抗領域に調整されており、絶縁性も全て15kV/mm以上と優れていた。
【0116】
また前記LLとHH条件における体積抵抗値の比は何れも0.3〜30の範囲にあり、体積抵抗値の環境依存性は小さかった。また、実施例3を除いた何れにおいても100Vと1000Vで測定した体積抵抗値の比は0.3〜30の範囲にあり、体積抵抗値の電圧依存性も小さかった。但し、実施例3においても100Vと1000Vで測定した体積抵抗値の比は0.1〜100の範囲にあり、体積抵抗値の電圧依存性は悪くなかった。また上記と同様の操作で作製した5点のサンプルについて、100Vにおける体積抵抗値を測定した結果、最大値と最小値の差は3倍以下であり、サンプル間のばらつきも非常に小さかった。また同一サンプル内のばらつきも3倍以下と非常に小さかった。
【0117】
実施例1〜10については、半導電性フィラーの添加部数の差(5重量部)による体積抵抗値の比は3倍以下であり、体積抵抗値の添加部数(配合)依存性は小さかった。
【0118】
フィルムの引張弾性率はフィラー未添加品に比べて優れており、伸びは何れも50%以上を保持し、引裂伝播強度も50%以上を保持していた。線膨張係数、吸湿膨張係数はフィラー未添加品よりも数ppm低下していた。この結果は、半導電性フィラーの形状が針状であるためと考える。
【0119】
実施例1、実施例9、実施例10の順に引張弾性率は増加していた。これは、ベース樹脂の引張弾性率がこの順に高くなっているためである。
【0120】
(比較例1)
カーボンブラックを使用せず、導電性酸化錫被覆針状酸化チタン(FT3000:石原産業(株):比重4.4g/cm3、体積抵抗値<103Ω・cm)2.78gを分散させて分散液を調製したこと以外は、実施例1と同様にしてポリイミド管状物を得た。該管状物中のフィラー量はポリイミド固形分100重量部に対して20重量部である。特性値を表2に示す。
【0121】
(比較例2)
カーボンブラック(#2600:三菱化学(株):揮発分1.8%、pH6.5、一次粒子径13nm)0.67g、導電性酸化錫被覆針状酸化チタン(FT3000:石原産業(株):比重4.4g/cm3、体積抵抗値<103Ω・cm)2.78gを分散させて分散液を調製した以外は、実施例1と同様にしてポリイミド管状物を得た。該管状物中のカーボンブラック、およびフィラーの配合量はポリイミド固形分100重量部に対して4重量部と30重量部である。特性値を表2に示す。
【0122】
(比較例3)
カーボンブラック(#2600:三菱化学(株):揮発分1.8%、pH6.5、一次粒子径13nm)0.67g、カーボン被覆チタン酸カリウム8.42gを分散させて分散液を調製した以外は、実施例1と同様にしてポリイミド管状物を得た。該管状物中のカーボンブラック、およびフィラーの配合量はポリイミド固形分100重量部に対して4重量部と50重量部である。特性値を表2に示す。
【0123】
(比較例4)
半導電性フィラーを使用せず、カーボンブラック(#2600:三菱化学(株):揮発分1.8%、pH6.5、一次粒子径13nm)4.17gを分散させて分散液を調製したこと以外は、実施例1と同様にしてポリイミド管状物を得た。該管状物中のカーボンブラックの配合量はポリイミド固形分100重量部に対して30重量部である。特性値を表2に示す。
【0124】
以上のようにして得られた比較例1〜3のポリイミド樹脂の黒濃度は1.0以下あり、実施例1〜10と比較すると黒濃度で非常に劣っていた。また、比較例3と実施例1ではカーボンブラックの種類が異なっているだけであるが、低揮発分、高pHのカーボンブラックに変更しただけで、黒濃度が0.3も大幅に低下した。
【0125】
比較例1、2、4のポリイミド樹脂におけるNNの体積抵抗値は狙い通りの中抵抗領域に調整されていたが、HHで非常に抵抗値が低かった。またフィラーの添加部数の差(5重量部)による体積抵抗値の比は3倍以上あり、体積抵抗値の添加部数依存性は大きかった。またLLとHHの体積抵抗値の比は1000倍以上であり、体積抵抗値の環境依存性は非常に大きかった。また、100Vと1000Vで測定した体積抵抗値の比は100倍以上であり、体積抵抗値の電圧依存性は大きかった。また上記と同様の操作で作製した5点のサンプルについて、500Vにおける体積抵抗値を測定した結果、最大値と最小値の差は3倍以上あり、サンプル間のばらつきも非常に大きかった。同一サンプル内のばらつきも3倍以上あり、非常に大きかった。
【0126】
また、本比較例と同じ配合処方で、ケミカルキュアではなく、熱キュア(150℃・30分、200℃・30分、300℃・30分、400℃・30分)で作成したフィルムは、ケミカルキュアで作成したものに比べて非常に長時間の成型時間が必要であり、フィラーを多量に含むものにおいては、成型途中及び成型後のいずれにおいても非常に脆かった。
【0127】
【表1】
【0128】
【表2】
【0129】
【発明の効果】
本発明のポリイミド樹脂組成物、ポリイミドフィルム、ポリイミド管状物においては、黒濃度が高く、高絶縁性、中抵抗値を有し、添加部数、分散状態、サンプル間に基づくばらつきが小さく、抵抗値の環境依存性、電圧依存性が少なく、機械特性に優れ、搬送による帯電防止性や電子写真機での転写性・定着性に優れる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリイミド樹脂が本来有する機械特性、耐熱性等の優れた特性を損なうことのない、中間抵抗値に制御された黒濃度の高いポリイミド樹脂組成物、ポリイミドフィルム及びポリイミド管状物に関する。またこれらを用いた転写ベルト、中間転写ベルト、転写定着ベルトおよび定着ベルト等の電子写真装置用管状物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリイミド樹脂は、その優れた耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性などの特性を活かし、フィルム、チューブ、ベルト、成型体などの形状で幅広く利用されている。例えば、フィルム状としてフレキシブルプリント配線板(以下、FPC)やTAB(Tape Automated Bonding)のベース基材、あるいは電線などの絶縁被膜、またチューブ、ベルト形状として複写機等のOA機器のパーツ、成型体として複写機の分離爪やベアリング等、様々な用途に用いられている。また、近年は半導体周辺でもその特性を活かして接着剤、保護膜などに用いられつつある。
【0003】
しかしながら、ポリイミド樹脂は絶縁性が高すぎるために、FPCや半導体周辺の製造において、搬送や巻き取り工程で樹脂が帯電したり、近年の高密度回路においては静電気により配線間で絶縁破壊するといった問題が顕在化している。その一方で、導通が起こらない程度に抵抗は高く、優れた絶縁性を保持しなければならない。この場合、体積抵抗値は1010〜1015Ω・cm、さらに好ましくは1010〜1013Ω・cmが求められる。
【0004】
また、プリンター、複写機等の電子写真用途における転写ベルト・中間転写ベルト・定着ベルト等においては、トナーの転写、定着のための機能として、中間抵抗値を有することが重要な品質課題となる事が良く知られている。この場合、体積抵抗値は106〜1013Ω・cm、好ましくは107〜1013Ω・cm、更に好ましくは109〜1013Ω・cmが求められる。更に、あらゆる環境下において、抵抗値は一定であることが望まれる。具体的には低温低湿時と高温高湿時の抵抗値の比が100倍以下、さらには30倍以下であることが好ましい。また、画像の種類や環境に応じて、電圧や電流を制御する必要があり、電圧に応じて抵抗値に変動がある場合は制御が難しくなるため、抵抗値の電圧依存性は小さいほど好ましい。100Vと1000Vの抵抗値の比は100倍以下、さらに好ましくは30倍以下である。さらに、プリンターは光学機器を含み、光学処理及び光学色補整をする部分に使用される部品は過度に光を反射しないように有色、特に黒色であることが望まれる。
【0005】
このような要求に鑑み、ポリイミド樹脂に対し各種の導電性物質を添加して抵抗値を下げる試みが種々なされており、芳香族ポリイミド母体と微分割電気伝導性粒子材料とを含み、該粒子材料が均一に分散し、全体の10〜45重量%存在する製品が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、カーボンブラックを5〜20重量%含有し、表面抵抗値(Ω/□)が107≦Rs≦1015の範囲にある芳香族ポリアミドフィルム又は芳香族ポリイミドフィルムからなる電子写真記録装置用中間転写体が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。更に、芳香族ポリイミドと導電性を有する無機フィラーとを含有する組成物からなるフィルムであって、体積抵抗値が10−2〜1012Ω・cm、全光線透過率が20%以上であることを特徴とする透明導電性フィルムが開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0006】
しかし上記のように、ポリイミドにカーボンブラック、グラファイト、金属粒子、酸化インジウム等の導電性充填剤を有するフィラーを混合する方法は機械特性に劣ったものであることが多く、また、これらの方法で用いられている充填剤は、その体積抵抗値が非常に低い(1.0×103Ω・cm以下)ため、半導電性領域での抵抗制御、特に抵抗値を再現性良くかつ面内ばらつきを小さくすることは非常に困難であった。また、その抵抗値の測定電圧依存性、添加部数依存性が大きいものしか得られず、高温高湿下では導電材と樹脂の界面に水が浸透し、電気抵抗が大幅に低下するという問題があった。さらに、ベース樹脂が吸湿膨張すると、添加剤の分散状態が変化し、抵抗値が大幅に変動するという問題もあった。このように、カーボン、金属等の導電性充填剤を添加した場合は抵抗値の制御が難しく、添加量の最適化も難しかった。
【0007】
また、主導電性フィラーとして平均粒径1〜50μmで体積抵抗値が103〜109Ω・cmの大粒径高抵抗粒子と、補助導電フィラーとして平均粒径が0.1μmより小さく体積抵抗値が102Ω・cm以下の小粒径抵抗粒子とが分散されてなり、体積抵抗値が105〜109Ω・cmの範囲にある半導電性樹脂複合材料が開示されている(例えば、特許文献4参照。)。
【0008】
しかし上記のように、大粒径高抵抗粒子を添加すると、押出成型や射出成型により、フィルム、チューブ等に代表される厚みが100μm程度の薄い成型物を得る際に表面性が悪くなる場合があり、また上記配合によりゴム材料や汎用樹脂を用いて前記の薄い形状に成型する場合、絶縁性や機械強度が大幅に劣る場合があり、更に熱溶融による混錬や射出成型を行うと、大粒径高抵抗粒子が破損するため抵抗値がばらつき、機械強度も低下するという問題があった。また、前記特許文献4で使用される大粒径高抵抗粒子は、特定の抵抗値を有する無機物を使用しており、目的の抵抗値の樹脂複合材料を得る場合、それに応じて種々の抵抗値を有するフィラーを探索したのち、フィラーの抵抗に応じて適切な配合を行う必要があった。しかしこのような作業は非常に労力を必要とし、抵抗値によって、フィラーの種類を変更するため、機械特性が極端に異なる場合があり、またフィラーの色も各種有り、色の制御、特に黒色化は非常に困難であった。
【0009】
【特許文献1】
特開平2−110138号公報
【0010】
【特許文献2】
特開昭63−311263号公報
【0011】
【特許文献3】
特許第2783537号公報
【0012】
【特許文献4】
特開平4−133077号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
このような種々の試みにも関わらず、依然として高い絶縁性を保持したまま、ポリイミド樹脂組成物を中抵抗に制御しかつ高い黒濃度を実現することは非常に困難な課題である。
【0014】
特にカーボンブラックを添加してポリイミドの抵抗値を制御し黒濃化する場合、ポリイミド特有の成型法に由来する次のような課題がある。ポリイミドの成型は押出法、カレンダ成型といった熱溶融による単純な成型ではなく、前駆体のポリアミド酸溶液を加熱し、溶媒乾燥とイミド化反応を伴う非常に複雑なものである。この乾燥及び反応中、材料のモルフォロジー、極性、溶解性は大幅に変化する。特に、ケミカルキュアによりイミド化する方法においては変化はさらに劇的である。カーボンブラックは元来凝集し易い材料であるため、抵抗制御のために添加されたカーボンブラックは乾燥及び反応過程で凝集を起こし、わずかな成型条件の変化でも大幅な抵抗変化が生じ、成型条件の設定は非常に注意を要するものであった。また、前記ケミカルキュア法では凝集がおこりやすいため、カーボンブラックの着色効果も大幅に低下し、黒濃度の高いポリイミドフィルムを得ることは非常に困難な課題であった。
【0015】
また、ポリイミド樹脂、中でも全芳香族のポリイミド樹脂は体積抵抗値が1016Ω・cmと非常に高く、ポリアミドやポリ塩化ビニルのような体積抵抗値が低い樹脂に比べて、導電性フィラーを大量に添加する必要があり、大量であるがために、混錬・分散不足による体積抵抗値のばらつきが大きかった。
【0016】
また、カーボンブラックや導電性粒子を添加して抵抗値を制御する場合、これらの材料は抵抗値が低いため、添加量のわずかな違いや分散状態の違いによって抵抗値が大幅に変化したり、全く同じ配合であってもバッチ間で抵抗値が異なったりするという問題があった。さらに、ベルトのように成型体の厚みが薄いと、部分的なばらつきが大きくなり、顕著な絶縁信頼性の低下につながるため、抵抗制御はより困難なものとなっていた。
【0017】
また特に、カーボンブラック以外に他の無機導電材料を併用して抵抗制御した場合、ポリイミドの成型条件で物性変化せず、かつポリイミドの物性劣化を引き起こさない中抵抗制御用導電材料で、黒色、透明であるものはほとんどない。そのため、黒色化のために着色用カーボンブラックを併用したとしても、得られるポリイミドは灰色や緑色になり、黒濃度の高いフィルムを得るのは難しかった。
【0018】
当然、黒濃度を上げるためにカーボンブラックの配合量を増やすことが考えられるが、そうなると、中抵抗値制御が困難となり、絶縁性も大幅に悪化するため、カーボンブラックの添加は極力減らす必要があった。
【0019】
このように、無機導電材料及びカーボンブラックからなるポリイミド材料をケミカルキュアにより成型する場合、特に多量の無機導電材料を含む系において、少量のカーボンブラックの添加により、高い黒濃度を実現することは、非常に困難な課題であった。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、このような課題を解決すべく種々の無機フィラー、カーボンブラックの効果を比較検討した結果、無機フィラーおよびカーボンブラックからなるポリイミド樹脂組成物において、半導電性フィラーと特定のpH、揮発量、サイズを有するカーボンブラックを使用することで、黒濃度が高く、高絶縁性、中抵抗値を有し、添加部数、分散状態、サンプル間のばらつきが小さく、抵抗値の環境依存性、電圧依存性が少なく、機械特性に優れ、搬送による帯電防止性や電子写真装置での転写性・定着性に優れたポリイミド樹脂組成物を見出し、本発明を完成するに至った。
【0021】
すなわち本発明の第一は、ポリイミド樹脂100重量部に対し、半導電性フィラーを20〜200重量部、揮発量2.0%以上、かつpH5.0以下であるカーボンブラックを0.01〜20重量部含有し、体積抵抗値が1×106〜1×1015Ω・cmの範囲内にあり、黒濃度が1.0以上であることを特徴とするポリイミド樹脂組成物を内容とする。
【0022】
前記カーボンブラックの揮発量が3.0%以上、かつpHが4.0以下であり、一次粒径が20nm以下であり、配合量が0.1〜5重量部であるとよい。
【0023】
また、前記半導電性フィラーの配合量が40〜180重量部であるとよい。
【0024】
また、前記黒濃度は1.1以上であるとよい。
【0025】
また前記半導電性フィラーは、黒色導電性物質で被覆された半導電性フィラーであるとよい。
【0026】
また、前記半導電性フィラーは、インジウム−錫複合酸化物、アンチモンドープ酸化錫、ニオブドープ酸化錫、タンタルドープ酸化錫、フッ素化物ドープ酸化錫、あるいは酸化錫の酸化錫系物質で被覆されたフィラーであるとよい。
【0027】
また、前記半導電性フィラーが、酸化チタン、チタン酸金属塩、ホウ酸アルミニウム、酸化錫、あるいは炭化ケイ素であることを特徴とするポリイミド樹脂組成物であるとよい。
【0028】
また、前記半導電性フィラーの体積抵抗値は1×103〜1×1010Ω・cmであるとよい。
【0029】
また、前記ポリイミド樹脂はイミド化促進剤として酸無水物および/または三級アミンを添加後、加熱焼成して得られるとよい。
【0030】
本発明の第二は、前記のポリイミド樹脂組成物を用いて調製されるポリイミドフィルムに関する。
【0031】
本発明の第三は、前記のポリイミド樹脂組成物若しくはフィルムを用いて調製されるポリイミド管状物に関する。
【0032】
本発明のポリイミド管状物における実施態様の一つとして、電子写真装置の転写ベルト、中間転写ベルト、転写定着ベルトまたは定着ベルトのいずれかに使用されるポリイミド管状物が挙げられる。
【0033】
【発明の実施の形態】
本発明におけるポリイミド樹脂とは、その構造中にイミド結合を有する樹脂全般を意味し、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド、ポリアミドイミドなどの一般名称で呼ばれる樹脂はもちろん、他樹脂との共重合系やブレンド物も含むものである。なお、他樹脂との共重合系やブレンド物の場合は、全樹脂中にポリイミド樹脂成分が50重量%以上、好ましくは80重量%以上含まれていればよい。中でも、無機フィラーと強く結合し、無機フィラーをフィルムの面内に配向させやすい反応硬化型の直鎖状ポリイミド樹脂が好ましい。ここで、反応硬化型の直鎖状ポリイミド樹脂とは、前駆体である直鎖状ポリアミド酸を経由し、アミド酸部位が脱水閉環することで得られるポリイミド樹脂のことを指し、例えば、ピロメリット酸二無水物と4,4′−ジアミノジフェニルエーテルとの反応で得られる直鎖状のポリアミド酸を、加熱、触媒添加等し、イミド化して得られるポリイミド樹脂が代表例として挙げられる。反応硬化型の直鎖状ポリアミド酸は、カルボキシル基やアミノ基等の官能基を有し、これら官能基は無機フィラーと強く相互作用し、無機フィラーと強固な結合を形成することができる点から、好ましく用いられる。
【0034】
さらに、イミド化促進剤として酸無水物および/または三級アミンを使用すると、熱キュアの場合と比較して、成型中や成型後において引き裂き強度の高いポリイミド成型体が得られ、成型時間も大幅に短縮される点から好ましい。また、熱キュアに比べてイミド化が早く進むため、樹脂が早く硬直化し面内方向に配向しやすくなる結果、添加しているフィラーも面内方向に配向し、表面抵抗値と表面粗さが小さく、厚み方向の絶縁性に優れたポリイミド成型体を得ることができる。
【0035】
ここで言う酸無水物としては、例えば無水酢酸等の脂肪族酸無水物、フタル酸無水物や無水安息香酸等の芳香族酸無水物などが挙げられ、これらは単独又は2種以上組み合わせて用いられる。また三級アミンとしては、例えばトリエチルアミン等の脂肪族第三級アミン類、N,N−ジメチルアニリン等の芳香族第三級アミン類、ピリジン、ピコリン、イソキノリン、キノリン等の複素環式第三級アミン類などが挙げられ、これらは単独又は2種以上組み合わせて用いられる。
【0036】
一般的なポリイミドの原料として、ジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物をモノマーとして用いるのが通常である。ジアミン化合物としては、例として、
【0037】
【化1】
(式中、Xは同一または異なって、ハロゲン、−CH3、−OCH3、−O(CH2)nCH3、−(CH2)nCH3、−CF3、−OCF3からなる群から選ばれる少なくとも一種の基を表す。また、Aは同一または異なって、O、S、C=O、(CH2)n、SO2、N=Nからなる群から選ばれる少なくとも一種の基を表す。mは1以上の整数。nは1以上の整数。)に示す種々のモノマーを用いる事ができる。
【0038】
またテトラカルボン酸二無水物としては、
【0039】
【化2】
(式中、nは1以上の整数。)
に示す種々のモノマーを用いる事ができる。
【0040】
これらの組み合わせにより様々な特徴を出す事が可能であり、用途や加工法などの状況に応じて選択することができる。
【0041】
例えば、屈曲鎖を多く(好ましくは一分子中に2つ以上)含む、および/またはアミノ基をメタ位に有する芳香族ジアミンを用い、2環以上のテトラカルボン酸二無水物を用いる事で、熱可塑性のポリイミドとすることができ、加熱溶融成型が可能なポリイミド樹脂組成物を提供可能である。例えば、2、2´−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパンと、オキシジフタル酸二無水物の組み合わせや、ビス(2−(4−アミノフェノキシ)エトキシ)エタンと3,3´,4,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物の組み合わせ等を例示することができる。
【0042】
また、ポリイミドはイミド基の存在により通常高吸水率であるが、特定のモノマーとの組み合わせにより比較的低吸水率の樹脂組成物とすることもできる。例として、テトラカルボン酸二無水物として2以上のエステル結合で複数のベンゼン核が結合された構造を持つモノマーを使用するポリイミドが挙げられる。具体的には、
【0043】
【化3】
(式中、nは1以上の整数。)
【0044】
【化4】
【0045】
【化5】
に示されるような酸二無水物が挙げられる。
【0046】
この場合に用いられるジアミン化合物としては、イミド基含有率を下げるために比較的長鎖のモノマーを用いることが好ましい。例えば、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンやその結合位置異性体、2,2´−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン等を挙げることができる。
【0047】
ただし、酸二無水物についてもジアミンについても、長鎖でかつ屈曲鎖を多数有する構造は、同時に前述の熱可塑性発現の条件でもあり、十分な耐熱性を要求する場合には不適当である。特に耐熱性と低吸水率の両方が求められる場合は長鎖でありかつ直線的構造を全体的または部分的に有するモノマーが適当である。例えばテトラカルボン酸二無水物としては、
【0048】
【化6】
で示す構造のモノマー(以下、TMHQ)が例として挙げられる。このモノマーは、屈曲鎖を含むものの全体としては概ね直線的なコンフォメーションを取りうる構造であり、その結合数の多さのわりには比較的剛直なポリイミドを形成する。この原料を用いれば、線膨張係数15ppm以下、吸水率1.5%以下、吸湿膨張係数10ppm以下であり、加熱や吸湿による寸法変化が少ないポリイミド樹脂を得ることも可能である。またジアミンとしても例えばビフェニル構造やナフタレン構造をエーテル結合でつなぐような構造が、長鎖でありながら比較的剛直な構造として選択できる。例えば4,4´−ビスアミノフェノキシビフェニルなどがあげられる。
【0049】
これら酸二無水物とジアミンの組み合わせにより、比較的低吸水率であり、かつ顕著な熱軟化性を有さないポリイミドを得ることができる。またこれらモノマーのみでなく汎用のピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、パラフェニレンジアミン、4,4´−ジアミノジフェニルエーテル等を適宜共重合する事により、所望の特性のポリイミドを幅広く設計可能である。
【0050】
また、ポリイミドは、銅のような金属に比べて線膨張係数が大きい。しかし、モノマーの種類や組成比が同じでも、モノマーの繋がりの組み合わせを制御(シーケンスコントロール)することにより比較的小さな線膨張係数を有するポリイミド樹脂とすることができる。例えば、4,4´−ジアミノジフェニルエーテル、パラフェニレンジアミン、ピロメリット酸二無水物をランダム共重合する場合に比べて、4,4´−ジアミノジフェニルエーテルとピロメリット酸二無水物を予め反応させておき、その後パラフェニレンジアミンを添加する手順を取ると規則的なモノマー配列のポリアミド酸が得られ、これをイミド化する事により低線膨張係数のポリイミド樹脂を得ることができる。
【0051】
本発明では、ポリイミド樹脂に無機フィラーを配合するため、ポリイミド樹脂単体で用いる場合に比較して、ポリイミド樹脂に対し、より高い靭性が求められる。ポリイミド樹脂自身の靭性が十分でないと、無機フィラーの配合により必然的に靭性が低下するため、実用に供する事ができなくなる場合がある。その点から、ピロメリット酸二無水物と4,4´−ジアミノジフェニルエーテルから調製されるポリイミド樹脂であることが最も好ましい。本構造は、十分な耐熱性と高い靭性を兼ね備え、なおかつ広い範囲の加工条件でその特性を維持できるバランスの取れた構造である。
【0052】
本発明に用いられる上記ポリイミド樹脂に配合される半導電性フィラーの体積抵抗値は、低抵抗値から中抵抗値のいずれであっても良いが、カーボンブラック、黒鉛、金属片といった低抵抗導電材料よりも高い1×103〜1×1010Ω・cmが好ましく、より好ましくは1×103〜1×108Ω・cm、特に好ましくは1×103〜1×107である。一般に低抵抗値を有する導電材料は、樹脂に添加した場合、少量添加でも中間抵抗を実現できる。しかし、樹脂と導電材料では抵抗値の差が大きいため、添加部数のわずかなずれや分散の偏りにより、抵抗変動、又は電圧依存性が大きくなり、更に絶縁破壊電圧も低くなる。
【0053】
半導電性フィラーを用いて安定的に中抵抗値を制御でき、配合部数、分散状態、サンプル間で抵抗のばらつきを小さくできる理由については、概ね以下のように考えている。半導電性フィラーは単体で1×103〜1×1010Ω・cm程度の抵抗値を有しており、カーボンブラック、導電性金属、あるいは金属セラミックス(1×10−5〜1×103Ω・cm)とは異なり、その体積抵抗値が狙いの中抵抗値(1×106〜1×1013Ω・cm)に近い。その結果、過剰に添加したとしても、抵抗が低抵抗値まで下がりすぎることがなく、中抵抗値付近で飽和し、このため安定的に中抵抗値に制御することができると思われる。また、半導電性フィラーの添加された系は、カーボンブラックに見られるようなパーコレーションによる急激な抵抗の低下は見られず、抵抗は添加量に対してなだらかに変化する。その結果、半導電性フィラーを添加した系では、例えば、中抵抗領域に抵抗値を制御する添加部数に対して、添加量が5重量部程度変化したとしても抵抗値変化を3倍以下にすることもできる。また脱泡や分散過程でフィラーに凝集や偏りが生じたとしても抵抗値の大幅な変化は見られない。このような理由から、半導電性フィラーを用いた場合は、樹脂組成物中の添加量、分散状態がサンプル間でばらついたとしても、組成物の抵抗値の変化が少ないと思われる。一方、カーボンブラックを添加した系では、中抵抗領域に制御するために、樹脂100重量部に対して10〜20重量部程度を添加するが、このような少ない添加部数に対して、添加部数が5重量部程度変化すると、抵抗はたちまち10〜100倍以上変化する。その結果、配合部数、分散状態、又はロット間のわずかな違いが、抵抗値へ大幅に影響する。
【0054】
また、半導電性フィラーを用いることによって絶縁性が改善される理由は、概ね次のように考えている。ポリイミドと導電材からなるフィルムに電圧を印加すると、電圧はポリイミドと導電材に分圧され、電圧は導電材よりも高抵抗であるポリイミドの部分にかかると考えられる。特に、カーボンブラックや金属系材料のような低抵抗材料を添加した場合と、半導電性フィラーのような中抵抗材料を添加した場合とを比べると、ポリイミドにかかる電圧は中抵抗材料を添加したときのほうが小さいと考えられる。その結果、ポリイミドにおける絶縁破壊が低減されるものと考える。
【0055】
さらに、半導電性フィラーを用いることにより抵抗の電圧依存性、環境依存性が改善される理由については、概ね次のように考えている。一般に樹脂に高電圧(例えば、厚み100μmに対して1kV以上の電圧を印加)を印加した場合、樹脂は絶縁破壊に近づき、抵抗値の電圧依存性は急激に悪化する。つまり、破壊直前には大電流が流れる。このことから抵抗値の電圧依存性は、樹脂に高電圧がかかることで樹脂が破壊に近づくために生じる現象と考えられる。しかし、半導電性フィラーのような中抵抗材料を添加した系では、カーボンブラックのような低抵抗材料を添加した場合に比べて、樹脂部分に局所的に高電圧がかかることを防ぐことができ、抵抗値の電圧依存性を改善できると考える。また、半導電性フィラーの多くは、表面に部分的に水酸基や活性な酸素等を有しているため、表面処理を行わずともイミド化の際に樹脂と強い相互作用を生じ、強固な複合材料となる。そして、これら強固な複合材料は高温高湿時の抵抗値低下と絶縁性悪化を防ぐことにも役立っていると考えられる。
【0056】
以上の理由に基づくと考えられるが、半導電性フィラーを用いることで、次のような電気特性を実現することができる。まず、これらを適切に配合することで、ポリイミド樹脂組成物は、安定して体積抵抗値が1×106〜1×1015Ω・cm、好ましくは1×109〜1×1013Ω・cm、表面抵抗値が106〜1013Ω/□、好ましくは1×109〜1×1013Ω/□の範囲の中間的抵抗値を実現することができる。また、低温低湿時の抵抗値Rlと高温高湿時の体積抵抗値Rhとの比(Rl/Rh)を0.01〜100、さらに好ましくは0.3〜30の範囲内に制御でき、環境安定性の優れた材料を調製することができる。また、100V印加時の体積抵抗値R100Vと1000V印加時の体積抵抗値R1000Vとの比(R100V/R1000V)を0.01〜100、さらに好ましくは0.3〜30の範囲内に制御でき、電圧依存性の少ない材料を調製することができる。また前記抵抗値を実現する添加部数範囲内において、例えば、半導電性フィラーの添加部数が5重量部程度変化しても体積抵抗値の変動を3倍以下にすることも可能であり、添加部数依存性の少ない材料を調製することができる。また、例えば、サンプル間の抵抗値のバラツキを3倍以下に抑えることも可能であり、サンプル間バラツキの小さい材料を調製することができる。
【0057】
また、本発明に用いられる半導電性フィラーとしては導電性物質で表面が被覆された無機フィラーも挙げられ、具体的には、炭素、黒鉛等の黒色導電性物質、インジウム−錫複合酸化物(以下、ITOとも言う。)、アンチモンドープ酸化錫(以下、ATOとも言う。)、ニオブドープ酸化錫(以下、NTOとも言う。)、タンタルドープ酸化錫(以下、TTOとも言う。)、フッ素化物ドープ酸化錫(以下、FTOとも言う。)、酸化錫(以下、TOとも言う。)等の酸化錫系導電性物質で被覆された半導電性フィラーが挙げられる。これらのうち、黒色導電性物質や酸化錫系導電性物質で被覆された物質は、導電性物質の種類、量、形成方法によって様々な中抵抗へ調整することができるために好ましい。
【0058】
例えば、炭素や黒鉛等の黒色導電性物質で抵抗を制御した材料では、表面に付着する黒色導電性物質の被覆量を調整することで抵抗値を制御することができる。また、一旦抵抗値の低い材料が得られたとしても、空気中で、50〜750℃の温度で加熱すると、抵抗値が上がり、各種抵抗値を有する半導電性物質を容易に入手することができる。
【0059】
また、酸化錫やドーピングを施した酸化錫で抵抗値を制御した材料では、ドーピングの量を変更することで、低抵抗値から高抵抗値まで幅広く制御することができる。また、芯材の表面に酸化錫またはドーピングされた酸化錫層を形成した後、加熱雰囲気を酸化性又は非酸化性のどちらかに選択することや加熱温度を変更することでも、抵抗値を制御することができる。このようにして、類似の形状からなる各種抵抗値を有する半導電性物質を容易に入手することができる。また、酸化錫系の材料は熱に強く、ポリイミドの製膜工程のような300℃を越える過酷な成型においても物性劣化を引き起こすことがないために、使用の範囲も広くなる。また酸化錫系の材料は、無色に近く、芯材に無色のものを使用すると、無色の半導電性フィラーを得ることができる。その結果、黒色剤を併用することで、容易に黒色ポリイミド樹脂組成物を得ることができる。
【0060】
また、上記のように表面被覆方法を制御することで、抵抗値を制御できる利点として次のようなことがある。例えば、チタン酸カリウム、酸化錫、酸化亜鉛等といった材料は、特定の抵抗値しか有しておらず、これらを用いて様々な抵抗値へ制御する場合、異なる抵抗値を有する2種以上のフィラーを混合したり、配合部数を変更する必要があった。また、各フィラーに応じた分散性の制御や配合調整に大変な労力を要し、配合量の変更により機械特性が異なり、また色も単一の色しかなく、各種色付けする際に、色変更の自由度が少なかった。しかし、本発明の導電性物質で被覆された材料を用いれば、各種抵抗を有する材料を単一材料で容易に作成することが可能となり、機械特性や分散性を変えることなく導電性の制御が可能となるため、配合量が全く同じで異なる抵抗値を有するポリイミド樹脂を作成することができる。また、半導電性無機物の機械特性、分散性といった基本特性は同一であるため、種類変更による洗浄作業や切り替え作業も非常に容易になる。また、表面の導電処理方法により、無色から黒色まで自在に選択することができ、着色も容易となる。
【0061】
本発明に用いられる導電性物質で被覆された半導電性フィラーの芯材(無機材料)として、金属、金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物といったセラミック材料や金属塩といったものが挙げられる。例えば、亜鉛、酸化亜鉛、アルミニウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、カルシウム、炭酸カルシウム、銀、酸化クロム、ケイ素、ケイ酸塩、ケイ酸カルシウム、シリカ、ガラス、酸化チタン、チタン酸金属塩、ホウ酸アルミニウム、酸化錫、鉄、酸化鉄、銅、酸化銅、炭酸バリウム、硫酸バリウム、水酸化バリウム、マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭化ケイ素、炭化タングステン、炭化チタン、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ゲルマニウム、窒化タンタル、窒化チタン、窒化ホウ素、マイカ、タルク、ウォラストナイト、タルク、カオリン、粘土鉱物等が挙げられる。
【0062】
このうち、ホウ酸アルミニウム、酸化錫、炭酸カルシウム、ケイ酸塩、ケイ酸カルシウム、硫酸バリウム、マイカは、屈折率が低く樹脂の屈折率に近似しているので、樹脂に混入しても透明性を損なうことが少なく、また着色することもない点から好ましい。またアルミナ、シリカ、ガラス、ウォラストナイト、タルク、カオリンも比較的屈折率が低く、樹脂に添加しても透明性が損なわれにくい点から好ましい。屈折率としては2.0以下、好ましくは1.8以下、さらに好ましくは1.7以下である。これらに黒色導電性物質を被覆すると黒色化された半導電性無機物を得ることができ、ポリイミドに配合する場合、黒色のポリイミド樹脂組成物を得やすいために好ましい。また、酸化錫系物質を被覆した際には、透明性に優れた半導電性フィラーを得ることができる点から好ましく、このフィラーを添加したポリイミド樹脂は、透明性を有する。さらに、他の着色剤を添加することで任意の色調を得ることができる点からも好ましい。
【0063】
一方、芯材から遊離する金属成分は少ないほど良い。遊離金属成分量としては100ppm以下、好ましくは80ppm以下、さらに好ましくは50ppm以下であるとよい。上記範囲内では、遊離金属成分が少ないために、配合した樹脂の抵抗値の湿度依存性が小さくなるために好ましい。また、絶縁破壊電圧も小さくなるために好ましい。
【0064】
また、単体で半導電性を有するフィラーとしては、酸化チタン、チタン酸金属塩、ホウ酸アルミニウム、酸化錫、炭化ケイ素等が挙げられる。
【0065】
本発明においては、ポリイミド樹脂組成物に対して、前記半導電性フィラーの他に、導電性フィラーを加えることも可能である。導電性フィラーとしては、カーボンブラック、グラファイト、金属粉末、導電性セラミックス、導電処理された無機物、帯電防止剤等が挙げられる。
【0066】
カーボンブラックとしては、導電性を有するものであれば種々のものを用いることができ、例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック等があげられる。中でも、ファーネスブラックの1種であるが、特に比表面積が大きくケッチェンブラックと呼ばれるカーボンブラックを用いた場合、カーボンブラックの配合量が少なくても抵抗低減効果が高く、なおかつ他のカーボンブラックを使用した場合に比較して電圧依存性(電圧が変わると抵抗値が変わり、オームの法則に則った挙動を示さない性質)が少ないという利点を有する。この点から、ケッチェンブラックを用いることが特に好ましい。
【0067】
金属粉末としては、銅、鉄、アルミニウム、SUS等の粉末が挙げられ、導電性セラミックスとしてはドーピングされた酸化錫やITO等が挙げられる。
【0068】
導電化処理された無機物としては、酸化チタン、チタン酸金属塩、硫酸バリウム、マイカ等を黒色導電性物質、酸化錫系化合物等により、導電化処理した物が挙げられる。形成方法としては、前記に示した半導電性フィラーの導電性層の形成方法が利用できる。
【0069】
本発明においては、ポリイミド樹脂組成物に対して、前記の半導電性フィラーの他に、絶縁性フィラーを加えることも可能である。絶縁性の無機物としては、例えばアルミナ、シリカ等の小径粒状物質、雲母、粘土鉱物等の板状・鱗片状物質、炭酸カルシウム等の短繊維状もしくはウィスカー状物質など多様な物が用いられる。絶縁性フィラーは、例えば弾性率等の特性をコントロールするために添加する場合もあるし、また導電性粉体の分散を補助し、導電体の凝集等を防止して安定した抵抗値を実現できる場合もある。
【0070】
本発明に用いる半導電性フィラー、導電性フィラー、絶縁性フィラーの形状としては、粒状、針状、鱗片状等、特に限定されるものではないが、中でも針状が好ましい。針状フィラーを用いれば、絶縁性を保持したまま抵抗を低減でき、表面性に優れ、線膨張係数、吸湿膨張係数の小さい樹脂組成物を得ることができる。また、引き裂き等による断裂や張力による寸法変化を防ぎ、高耐久かつ高寸法安定性で長期の搬送特性が実現できる機械強度に優れたフィルムやベルトを得ることができる。
【0071】
フィラーが粒状である場合、その粒径は1μm以下、好ましくは0.3μm以下、さらに好ましくは0.1μm以下である。100μm以下といった厚みが薄い成形体においては、粒状フィラーが1μmよりも大きい場合、分散不良による局部の凝集によって絶縁破壊が生じ、表面性も悪化する傾向がある。一方、フィラーの粒径が1μm以下であれば、多少の凝集であっても絶縁性、或いは表面性を悪化させないため、好ましい。しかしながら、逆に上記粒径が小さすぎると、ポリアミド酸溶液が増粘したり、嵩張りすぎて配合作業に支障をきたすおそれがある。このためフィラーの粒径は0.005μm以上であることが好ましい。また、フィラーの体積抵抗値は、多少の凝集物が存在しても、厚み方向の絶縁破壊が発生しにくい点から、1×103Ω・cm以上であるのが好ましい。
【0072】
フィラーが針状や鱗片状である場合においても、上記と同様の理由により、その短軸径の上限は1μm、好ましくは0.3μm、さらに好ましくは0.1μmであり、その下限は0.005μmであることが好ましい。
【0073】
次にポリイミド樹脂に対する半導電性フィラーの配合量は、ポリイミド樹脂100重量部に対し20〜200重量部、好ましく40〜180重量部、さらに好ましくは50〜150重量部である。上記配合部数よりも多いと、フィルムが脆くて成型が困難となり、また、黒色材料を添加しても黒濃度が0.9以上の組成物が作成困難となるために好ましくない。また、上記配合部数よりも少ないと、抵抗値が目的の範囲内まで下がりにくいため、好ましくない。
【0074】
導電性フィラーを併用する場合においては、導電性フィラーは40重量部以下、好ましくは20重量部以下、さらに好ましくは10重量部以下の部数で併用可能である。半導電性フィラーに加えて、40重量部以上の導電性フィラーを添加すると抵抗値が低くなりすぎ、絶縁性も悪化する場合があるため好ましくない。
【0075】
絶縁性フィラーを併用する場合においては、半導電性フィラーと絶縁性フィラーの総量が20〜200重量部、好ましく40〜180重量部、さらに好ましくは50〜150重量部であるように併用可能である。上記配合部数よりも多いと、フィルムが脆くて成型が困難となり、また、黒色材料を添加しても黒濃度が0.9以上の組成物が作成困難となる場合があるために好ましくない。
【0076】
本発明に用いられる上記ポリイミド樹脂を黒色化するために配合される黒色剤としては、揮発量2.0%以上かつpH5.0以下のカーボンブラックであることが好ましく、更には揮発量3.0%以上かつpH4.0以下のカーボンブラックであることがより好ましい。ポリイミドの成型加工はモルフォロジー変化及び極性変化が激しいため、加工中に相分離するような形でカーボンブラックが凝集し、その結果としてポリイミドの黒濃度が低下する場合がある。しかし、上記特性のカーボンブラックを用いれば、加工中にカーボンブラックの凝集を抑制することができるため、特に、イミド化促進剤として酸無水物および/または三級アミンを用いてケミカルキュアする場合のようにモルフォロジーの変化が劇的に生じる場合でも、黒濃度の高いポリイミド樹脂組成物を得ることができる。さらに、本発明に用いられるカーボンブラックの一次粒径は、粒径が小さくなるほど、カーボンブラックの表面積が増え、光の吸収部分が増える点から、20μm以下であることが好ましい。
【0077】
なお、本発明において、黒濃度とはポリイミド表面の黒色度を意味し、マクベス反射濃度計(Macbeth RD914)を用いて測定する値のことを言う。マクベス反射濃度計にて測定される黒濃度は、以下の点から、1.0以上、好ましくは1.1以上あることが好ましい。例えば、プリンターは光学機器を含み、光学処理及び光学色補整をする部分に使用される部品は過度に光を反射しないように有色、特に黒色であることが望まれる。特に、電子写真装置においては、マシン起動時や印刷中に、ベルトにパッチ像を転写し、光を反射させて画質の調整をおこなっている。この際、ベルトの色が明るい(例えば黄色)と光の反射が大きなり、画質の調整が難しくなるが、黒濃度が高いとこのような問題は発生することがない。
【0078】
また本発明において、カーボンブラックのpHとは、JIS K 6220−1に従って測定する値、カーボンブラックの揮発量とは、JIS K 6220−1に従って測定する値、カーボンブラックの一次粒径とは、カーボンブラックをクロロホルムに投入し超音波を20分間照射して分散させ、分散試料を支持膜に固定した後、透過型電子顕微鏡で写真撮影し、写真上の直径と写真の拡大倍率により計算して求める値のことを言う。
【0079】
上記特性を有するカーボンブラックを用いることで黒濃度が高くなる理由については、概ね以下のように考えている。カーボンブラックは、揮発量が大きくなり、pHが小さくなると、表面にOH基やCOOH基のような酸性官能基を有するようになる。このようなカーボンブラックは、アミノ基、カルボン酸基、カルボニル基を有するポリアミド酸或いはその溶媒に対し、親和性、及び分散性が高くなる傾向がある。また、上記カーボンブラックの官能基は、ポリアミド酸と反応を起こす場合があるため、分散が促進されることも考えられる。特に、イミド化促進剤を用いるケミカルキュア法においては、イミド化促進剤とカーボンブラックとの間で酸塩基反応や結合形成反応が起こり、また、ポリアミド酸とカーボンブラックとの間でも反応が起こりやすくなる。その結果、ポリイミド樹脂中におけるカーボンブラックの分散性が高まり、最終的に得られるポリイミドは黒濃度の高いものになると考えられる。
【0080】
黒色用に添加するカーボンブラックの添加量としては、ポリイミド樹脂100重量部に対し、0.01〜20重量部、好ましくは0.05〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部、最も好ましくは0.5〜4重量部である。半導電性フィラーは無色から黒色まで幅広く選択することができるため、20重量部以下という少量でも十分に着色が可能となる。20重量部以上添加すると、機械特性、電気特性が悪化する場合がある。また、0.01重量部よりも少ないと着色できないために好ましくない。
【0081】
以上、半導電性フィラー単体及び半導電性フィラーと他のフィラーを適宜選択し、上記範囲内に調整することにより、高い絶縁性を保持して中抵抗値に制御でき、電圧依存性と環境依存性が少なく、添加部数、分散状態、サンプル間バラツキの小さい材料を調製することができる。また揮発量が多く、酸性度が高い、小粒径のカーボンブラックを添加することで、黒濃度の高いポリイミド樹脂組成物を得ることができる。
【0082】
また、表面に水酸基や活性酸素等の官能基を多く含む半導電性フィラーは、分散性に優れ、ポリイミドと強固な結合を有するため、フィラー未添加品の機械強度に対して50%以上の強度保持率を有するポリイミド樹脂組成物が得られやすく、特にピロメリット酸二無水物と4,4´−ジアミノジフェニルエーテルからなるポリイミド樹脂と組み合わせた場合には、引張り伸びは35%以上、引き裂き伝播強度は250g/mm以上のポリイミド樹脂組成物を得ることができるため好ましい。 また、半導電性フィラーを添加しても、例えば、吸水率を5%以下に保つように調整可能で、吸水率増加量はポリイミド元来の吸水率の2倍以下に抑えることもできる。
【0083】
以上の組み合わせに加えて、フィラーとポリイミドの強固な結合を作る等の目的に応じて、フィラーの表面処理を行ってもよい。表面処理剤としては、例えば、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、アミノ酸系カップリング剤等を用いることができる。樹脂が反応硬化型の直鎖状ポリイミド樹脂の場合には、表面処理をすることで結合はより強固なものとなるが、処理を行わずとも十分な強度を得ることができる。
【0084】
添加する半導電性フィラーや他のフィラー等をポリイミド樹脂に分散させるための方法としては、種々の方法がとられ得る。
【0085】
ポリイミド樹脂が溶剤可溶性である場合、溶剤に溶解したポリイミド樹脂溶液と、予めフィラーを溶媒に予備分散した分散液を調製し、両者を攪拌翼や3本ロールなどの混練機によって混合、分散を進める方法がとられ得る。また、逆にフィラーを溶媒に予備分散した分散液に対し、溶剤可溶性のポリイミドの粉体またはペレット等を加えて良く混合するという方法も使用可能である。前記予備分散の方法としては、例えば、フィラーを溶剤に加えて超音波分散するといった方法が有効である。特に針状フィラーは過剰な剪断力を受けると形状が破壊される可能性があるため、超音波分散による方法が好ましい。
【0086】
ポリイミド樹脂が溶剤不溶性の場合、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸の溶液に対し、前記の予備分散液を加えて、同様の方法で混合・混練等を行う方法も可能である。
【0087】
ポリアミド酸とフィラーを混合する場合、以下のような方法を用い得る。例えば、ポリアミド酸を重合する溶媒に予めフィラーを添加してフィラーの分散溶液を調製しておき、その後ポリアミド酸の原料であるジアミンと酸二無水物を添加してポリアミド酸を重合する方法があげられる。別の方法としては、予め重合して得たポリアミド酸にフィラーの分散溶液を添加し混合する方法である。どちらの方法を用いるにしても、通常はフィラーの分散溶液を調製する必要がある。一般的にフィラーは樹脂より比重が大きく重いため、溶媒にフィラーを添加するとたちまち沈降してしまう。このような状態で、ポリアミド酸と混合すると、フィラーの凝集物ができ、ポリイミド成型体の表面に凹凸ができたり、局所的に抵抗値が異なったりするおそれがある。これを防止するために、フィラーの分散溶液を作成するに際し、分散剤を配合すると好ましい結果が得られる。分散剤としては、金属塩や界面活性剤といったものが挙げられる。特に分散性、耐熱性の点から金属塩が好ましく、Li塩、Na塩、K塩、Rb塩、Cs塩、Be塩、Mg塩、Ca塩、Sr塩、Ba塩からなる群より選択される1種または2種以上の組み合わせが良く、特に Li塩、Na塩、K塩が好ましい。Li塩では格子エネルギーが1100kJmol−1以下のLi塩が好ましく、具体的には LiF、LiCl、LiBr、LiI、LiSCN、LiCF3SO3といったものが挙げられる。Na塩では格子エネルギーが800kJmol−1以下のNa塩が好ましく、具体的にはNaF、 NaCl、 NaBr、 NaI、 NaSCN、 NaCF3SO3といったものが挙げられる。K塩では格子エネルギーが800kJmol−1以下のK塩が好ましく、具体的にはKF、 KCl、 KBr、 KI、 KSCN、 KCF3SO3といったものが挙げられる。これらの金属塩は、常温でイオンが解離しやすく、フィラーと相互作用が強くなるために好ましい。ただし、格子エネルギーが小さすぎると、添加量の影響が大きくなりすぎる場合がある。これら金属塩は有機物を含まないために、成型中の高温乾燥でも樹脂が焼け付くようなことはない。分散剤はポリイミド樹脂100重量部に対して1重量部以下の所定量を配合すれば良く、0.01〜0.1重量部程度でも十分効果はある。一般に電線被覆の用途では、金属塩が添加されると絶縁性が悪化し、誘電率が4以上の材料に添加した場合にはイオン伝導性が高まり、あまり好ましくないが、ポリイミド樹脂との組み合わせにおいては、ポリイミド樹脂が絶縁性に優れ、誘電率が4以下であるため、絶縁性や抵抗の電圧依存性の悪化を低減できる。
【0088】
また、特に良好な分散性が得られる別の方法として、溶剤中に先にフィラーを加え、超音波分散機等により十分に分散させておき、これにポリイミド(ポリアミド酸)の原料であるジアミン化合物と酸二無水物化合物を加え重合反応を行うという方法がある。この方法によれば超音波分散などによりミクロなレベルでの分散が良好に保たれるのと同時に、初期のフィラー分散後から重合中にかけて常に攪拌がなされるために、マクロなレベルの分散性も非常に良好となる。
【0089】
本発明におけるポリイミド樹脂組成物は、種々の目的、用途に応じて成型され、様々な形状で用いられるが、絶縁性を保持しながら抵抗値を一定レベルに保持することが特に難しくなるのは、厚みが薄い場合である。その意味で、フィルム状、シート状、ベルト状、チューブ状等の広義でのフィルム状形態において、特に厚みが150μm以下、好ましくは、100μm以下の場合に、半導電性フィラー、その他導電性及び絶縁性フィラー、着色用カーボンブラックの混合による配合は特に有効となる。
【0090】
以下、ポリイミド樹脂組成物の代表的な成型方法について説明する。
【0091】
ポリイミド樹脂が溶剤可溶性の場合、ポリイミド樹脂溶液を調製し、これを任意の形状に加工した後、加熱、場合によっては減圧を併用することにより溶剤を揮発せしめ、ポリイミド成型体を得ることができる。
【0092】
同様の方法が、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸の段階においても適用でき、この方法はポリイミド樹脂が溶剤可溶性でなくても適用可能である。この場合、加熱に先立ち、イミド化促進のため、脱水剤として無水酢酸などの酸無水物や触媒として三級アミンを単独または併用して用いる事ができる。ただし酸無水物はイミド化反応の促進だけでなく、ポリアミド酸の分子鎖主鎖の切断も引き起こし得るため、ポリイミドの機械的特性のためには、酸無水物と三級アミンの併用または三級アミンのみの添加がより好ましく、熱キュアのみのイミド化に比べて高い引き裂き伝播強度を有する物が得られる。具体的には、引き裂き伝播強度が250g/mm以上、場合によっては500g/mm以上の物が得られる。また前記イミド化促進剤の添加は、加熱時間を減らすことができ、ポリイミド樹脂組成物の熱劣化を抑えることができるために非常に好ましい。特に、半導電性物質は、長時間の加熱によって導電性の変化を引き起こす場合があるため、加熱時間の短縮は非常に大切である。また、前記イミド化促進剤の添加による製法では、樹脂の面内方向への配向がより進みやすく、さらに針状や鱗片状の酸化錫を併用すると、フィラーは平面状に配向しやすくなる傾向がある。その結果、厚み方向に配向するフィラーが減り、電気絶縁性を改善でき、またフィラーの吸湿による厚み方向の電気特性劣化部分を減らすことができる。そして、抵抗の湿度依存性を減らすことができるために好ましい。また、成型時間が短くてすみ、生産性が飛躍的に向上し、製造中に強度が出やすく、製造中に脆くなることが防止できる。上記製法のこれらの利点は、厚みが100μm以下といった薄いポリイミド成型体の場合、特に顕著である。
【0093】
フィルムおよび管状物への具体的成型法の例として下記のような方法が挙げられる。フィラーを分散させたポリアミドまたはポリイミドの樹脂溶液をエンドレスベルト上に、Tダイ、コンマコーター、ドクターブレードなどを用いる事により厚み制御をした上で、塗布する。樹脂溶液を熱風などによって自己支持性が発現するまで加熱乾燥し、その後エンドレスベルトより引き剥がす。引き剥がした半乾燥のフィルムの幅両端をピンやクリップによって固定し、幅方向の長さを規制しながら順次高温の加熱炉内を通すことによって、フィルム状成型体を得ることができる。または金属などの連続したシート状の支持体上に同様の方法で塗布し、これを加熱炉内へ通過せしめることによってシート状に固定されたフィルムまたはシート形状のポリイミド成型体を得、その後これを支持体シートより引き剥がすかまたは支持体シートをエッチングなどの手段により除去する方法も取りうる。このようにして得たフィルムまたはシート状の成型体を所定の長さと幅に切り、つなぎ合わせてベルトまたはチューブ等の管状物を得る方法が最も容易である。つなぎ合わせには接着剤や接着テープ等を用いることができるが、この方法は不可避的につなぎ目で段差や切れ目が存在するため、用途によっては不都合が生じる場合がある。
【0094】
前記管状物を得る方法としては、円筒状金型の内面または外面にポリアミドまたはポリイミドの樹脂溶液を塗布し、加熱乾燥あるいは減圧乾燥などにより溶媒を揮発させ、これをこのまま最終焼成温度まで加熱するか、あるいは一旦引き剥がして、最終的に内径を規定するための別金型の外周にはめ込み、最終焼成温度まで加熱するといった方法をとりうる。円筒状金型への樹脂溶液の塗布にあたっては、樹脂溶液の垂れによる厚みばらつきを緩和するため、金型を回転させることも有効である。最終焼成温度はポリイミドの構造や添加するカーボンの耐熱性により適宜選択する事が必要であるが、非熱可塑性ポリイミドにおいてポリアミド酸状態から加熱・焼成する場合は概ね350℃〜450℃の間、熱可塑性ポリイミドの場合はポリイミドのガラス転位温度に対し−100℃〜−20℃の間が好適な範囲である。
【0095】
本発明のポリイミド成型体を電子写真装置の部材として用いる場合には、トナーの離型性や転写性、およびトナーのクリーニング性を改善するために、表面に導電性が制御されたフッ素樹脂最外層を形成するとよい。フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー(以下、PFA)といったものが挙げられる。導電性制御用の添加剤としては、ポリイミドの導電性制御用添加剤として前述したもの等が使用されうる。最外層の形成方法は、塗布やフィルムの貼り合わせ等が考えられるが、これらの材料をディスパージョンとしてスプレー塗布する方法が一般的である。
【0096】
本発明のポリイミド樹脂組成物を用いて調製されるポリイミドフィルム、ポリイミド管状物は、従来の半導電性のポリイミドフィルム、ポリイミド管状物に準じた各種の用途に用いうる。特に、機械特性や電気特性に優れることにより電子写真装置における像の転写及び中間転写用のベルト、その中間転写を兼ねた印刷シートの搬送用ベルト、定着用ベルトなどとして好ましく用いうる。ここで言う電子写真装置の種類としては、特に限定されず、複写機やレーザープリンタ、ビデオプリンタ、ファクシミリ、それらの複合機等の何れでもよい。また、その型式も、モノクロ画像、カラー画像、フルカラー画像など何れでもよく、トナーの種類、転写方式、記録媒体の種類なども特に限定されない。電子写真装置に用いられる場合、記録シートとしては紙やプラスチックシートなどの印刷用のシートを適宜用いることができる。また記録シートに像を形成する記録剤としても静電気を介し付着処理できるものを適宜用いうる。また、本発明のポリイミドフィルム及びポリイミド管状物は、体積抵抗値、表面抵抗値が中抵抗値に制御されており、ばらつきも非常に小さいため、カラー複写機の中間転写ベルトや転写搬送ベルトとして用いた場合、トナー像の変形や転写ムラがなく良好な画像を記録シートに転写でき、かつ搬送の記録シートを良好に分離できる性能を長期に持続することができる。また、定着ベルトとして用いた場合、半導電性を有するため、帯電を防止することができ、優れた定着性を実現することが可能となる。また、電子写真装置のような光学機器を含み、光学処理及び光学色補整をする部品に使用された場合、具体的には、マシン起動時や印刷中に、パッチ像を転写し、光を反射させて画質の調整をおこなっている転写または中間転写ベルトに用いられた場合、本発明のポリイミドフィルム及びポリイミド管状物は優れた黒色性を有するため、光の反射が一定と成り、画質の調整がしやすくなる。
【0097】
【実施例】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0098】
(物性評価方法)
次に、樹脂組成物の物性評価方法について説明する。なお、物性評価は管状物を成型した後、フィルム状のサンプルを切り出して行った。
【0099】
フィルム状サンプルの黒濃度は、マクベス反射濃度計(Macbeth RD914)を用いて測定を行った。
【0100】
フィルム状サンプル、及びフィラーの抵抗値の測定は、次のように実施した。サンプルを、▲1▼温度10℃・湿度15%Rhの環境(LL)、▲2▼温度23℃・湿度55%Rhの環境(NN)、▲3▼温度30℃・湿度80%Rhの環境(HH)に24時間放置し、該環境下にてアドバンテスト(株)製デジタル超高抵抗/微小電流計R8340と三菱化学(株)製HRプローブを用い100Vにおける体積抵抗値と表面抵抗値を測定した。フィルム状サンプルでは、1000Vでも測定を実施した。
【0101】
抵抗値の環境依存性とは、低温低湿時(LL)の体積抵抗値Rlと高温高湿時(HH)の体積抵抗値Rhとの比(Rl/Rh)の値を、抵抗値の電圧依存性とは、100V印加時の体積抵抗値R100Vと1000V印加時の体積抵抗値R1000Vとの比(R100V/R1000V)の値を意味する。これらの値が0.3〜30の範囲にある場合は依存性が少ない材料(小)、0.01〜0.3もしくは30〜100の範囲内にある場合は依存性が中程度ある材料(中)、0.01以下もしくは100以上の場合は依存性が悪い材料(大)とした。
【0102】
フィルム状サンプルの厚み方向の絶縁性測定は、次のように実施した。このフィルムを温度23℃・湿度55%Rhの環境(NN)に24時間放置し、該環境下にて安田精機製作所製のYSS式耐電破壊試験機における絶縁性を測定した。
【0103】
フィルム状サンプルの引張弾性率、引張伸びの測定は、ASTM D882に準拠して実施した。フィルム状サンプルの引裂伝播強度測定は、ASTM D1938に準拠して実施した。
【0104】
次に、実施例と比較例について説明する。
【0105】
(実施例1)
芳香族ジアミンとして4,4′−ジアミノジフェニルエーテルを、芳香族テトラカルボン酸二無水物としてピロメリット酸二無水物(以下、PMDA)を用いて得られたポリアミド酸のジメチルホルムアミド(以下、DMF)溶液(固形分濃度18.5%、溶液粘度3,000poise)を75g準備した。次に、半導電性フィラーとしてカーボン被覆チタン酸カリウム(デントールBK400HR:大塚化学(株):比重3.15g/cm3、体積抵抗値5.0×105Ω・cm、短軸径0.45μm、長軸径15μm、イオン溶出量500〜10000ppm)を8.42g、カーボンブラックとして揮発分8.0%、pH3.0、一次粒子径13nmのカーボンブラック(三菱化学(株):#2650)を0.67g採取し、これら添加剤の総重量に対し8倍量のDMFに分散させて添加剤分散溶液を調製した。
【0106】
前記のポリアミド酸溶液と添加剤分散液を添加し混練した。得られたドープを管状フィルム状にキャストする前に、無水酢酸/イソキノリン/DMFを9.03g/11.4g/15.6gからなる溶液と混合し、次いでアルミ箔上にキャストした。140℃/600秒、275℃/40秒、400℃/93秒熱処理して約75μmのポリイミドフィルムを得た。なお、管状物として得る場合には、アルミ箔の代わりに鏡面を有する金属筒の内面もしくは外面に塗布することによって作成した。該管状物中の半導電性フィラー、カーボンブラックの配合量はポリイミド固形分100重量部に対して、各々50重量部と4重量部である。特性値を表2に示す。管状物の電気特性、機械特性等の物性はフィルムの物性と同じと考えてよい。アルミ箔および金属筒からのポリイミドの剥離は、140℃の加熱の後におこなった。
【0107】
上記と同様の方法にて重合したポリイミドフィルム単体(フィラーを含まない)の物性値を評価した結果、線膨張係数21ppm、吸湿膨張係数16ppm、引張弾性率2.9GPa、伸び70%、引き裂き伝播強度450g/mm、吸水率2.5%であった。
【0108】
(実施例2〜8)
カーボン被覆チタン酸カリウムの代わりに表1に示した配合部数で半導電性フィラー、およびカーボンブラックを配合した以外は、実施例1と同様にしてポリイミドフィルムを得た。特性値を表2に示す。
【0109】
なお、表1に記載のフィラーの詳細は次の通りである。酸化錫系被覆ホウ酸アルミニウムは三井金属(株)製のパストラン−TYPEV−KK006、カーボン被覆雲母は大塚化学(株)製BK400M、酸化チタンは石原産業(株)製FTL300のことを指し、これらフィラーのイオン溶出量は、全て<50ppmであった。
【0110】
また、実施例1〜4、9および10に使用したカーボンブラックは三菱化学(株)製#2650、実施例5、6に使用したカーボンブラックは三菱化学(株)製#1000、実施例7、8に使用したカーボンブラックはデグッサジャパン(株)製FW200、比較例2〜4に使用したカーボンブラックは三菱化学(株)製#2600である。
【0111】
(実施例9)
実施例1記載のポリアミド酸のDMF溶液を、芳香族ジアミンとして4,4′−ジアミノジフェニルエーテル3当量をDMFに溶解し、次にPMDA4当量を加え、さらに、パラフェニレンジアミン1当量を加えて重合したポリアミド酸のDMF溶液(固形分濃度18.5%、溶液粘度3,000poise)に変更した以外は実施例1と同様にしてポリイミドフィルムを得た。特性値を表2に示す。
【0112】
このようにして重合したポリイミドフィルム単体の物性値を評価した結果、線膨張係数8ppm、吸湿膨張係数9ppm、引張弾性率4GPa、伸び70%、引き裂き伝播強度450g/mm、吸水率2.1%であった。
【0113】
(実施例10)
実施例1記載のポリアミド酸のDMF溶液を、芳香族ジアミンとして4,4′−ジアミノジフェニルエーテル1当量、パラフェニレンジアミン1当量をDMFに溶解し、次にTMHQ1当量を加え、さらにPMDA1当量を加えて重合したポリアミド酸のDMF溶液(固形分濃度18.5%、溶液粘度3,000poise)に変更した以外は実施例1と同様にしてポリイミドフィルムを得た。特性値を表2に示す。
【0114】
このようにして重合したポリイミドフィルム単体の物性値を評価した結果、線膨張係数9ppm、吸湿膨張係数5ppm、引張弾性率6GPa、伸び30%、引き裂き伝播強度450g/mm、吸水率1.2%であった。
【0115】
以上のようにして得られた実施例1〜10のポリイミドフィルムの黒濃度を測定した結果、全て1.0以上あり、非常に黒色度に優れていた。また、前記NN条件での体積抵抗値は何れも1×109〜1×1013Ω・cmと中抵抗領域に調整されており、絶縁性も全て15kV/mm以上と優れていた。
【0116】
また前記LLとHH条件における体積抵抗値の比は何れも0.3〜30の範囲にあり、体積抵抗値の環境依存性は小さかった。また、実施例3を除いた何れにおいても100Vと1000Vで測定した体積抵抗値の比は0.3〜30の範囲にあり、体積抵抗値の電圧依存性も小さかった。但し、実施例3においても100Vと1000Vで測定した体積抵抗値の比は0.1〜100の範囲にあり、体積抵抗値の電圧依存性は悪くなかった。また上記と同様の操作で作製した5点のサンプルについて、100Vにおける体積抵抗値を測定した結果、最大値と最小値の差は3倍以下であり、サンプル間のばらつきも非常に小さかった。また同一サンプル内のばらつきも3倍以下と非常に小さかった。
【0117】
実施例1〜10については、半導電性フィラーの添加部数の差(5重量部)による体積抵抗値の比は3倍以下であり、体積抵抗値の添加部数(配合)依存性は小さかった。
【0118】
フィルムの引張弾性率はフィラー未添加品に比べて優れており、伸びは何れも50%以上を保持し、引裂伝播強度も50%以上を保持していた。線膨張係数、吸湿膨張係数はフィラー未添加品よりも数ppm低下していた。この結果は、半導電性フィラーの形状が針状であるためと考える。
【0119】
実施例1、実施例9、実施例10の順に引張弾性率は増加していた。これは、ベース樹脂の引張弾性率がこの順に高くなっているためである。
【0120】
(比較例1)
カーボンブラックを使用せず、導電性酸化錫被覆針状酸化チタン(FT3000:石原産業(株):比重4.4g/cm3、体積抵抗値<103Ω・cm)2.78gを分散させて分散液を調製したこと以外は、実施例1と同様にしてポリイミド管状物を得た。該管状物中のフィラー量はポリイミド固形分100重量部に対して20重量部である。特性値を表2に示す。
【0121】
(比較例2)
カーボンブラック(#2600:三菱化学(株):揮発分1.8%、pH6.5、一次粒子径13nm)0.67g、導電性酸化錫被覆針状酸化チタン(FT3000:石原産業(株):比重4.4g/cm3、体積抵抗値<103Ω・cm)2.78gを分散させて分散液を調製した以外は、実施例1と同様にしてポリイミド管状物を得た。該管状物中のカーボンブラック、およびフィラーの配合量はポリイミド固形分100重量部に対して4重量部と30重量部である。特性値を表2に示す。
【0122】
(比較例3)
カーボンブラック(#2600:三菱化学(株):揮発分1.8%、pH6.5、一次粒子径13nm)0.67g、カーボン被覆チタン酸カリウム8.42gを分散させて分散液を調製した以外は、実施例1と同様にしてポリイミド管状物を得た。該管状物中のカーボンブラック、およびフィラーの配合量はポリイミド固形分100重量部に対して4重量部と50重量部である。特性値を表2に示す。
【0123】
(比較例4)
半導電性フィラーを使用せず、カーボンブラック(#2600:三菱化学(株):揮発分1.8%、pH6.5、一次粒子径13nm)4.17gを分散させて分散液を調製したこと以外は、実施例1と同様にしてポリイミド管状物を得た。該管状物中のカーボンブラックの配合量はポリイミド固形分100重量部に対して30重量部である。特性値を表2に示す。
【0124】
以上のようにして得られた比較例1〜3のポリイミド樹脂の黒濃度は1.0以下あり、実施例1〜10と比較すると黒濃度で非常に劣っていた。また、比較例3と実施例1ではカーボンブラックの種類が異なっているだけであるが、低揮発分、高pHのカーボンブラックに変更しただけで、黒濃度が0.3も大幅に低下した。
【0125】
比較例1、2、4のポリイミド樹脂におけるNNの体積抵抗値は狙い通りの中抵抗領域に調整されていたが、HHで非常に抵抗値が低かった。またフィラーの添加部数の差(5重量部)による体積抵抗値の比は3倍以上あり、体積抵抗値の添加部数依存性は大きかった。またLLとHHの体積抵抗値の比は1000倍以上であり、体積抵抗値の環境依存性は非常に大きかった。また、100Vと1000Vで測定した体積抵抗値の比は100倍以上であり、体積抵抗値の電圧依存性は大きかった。また上記と同様の操作で作製した5点のサンプルについて、500Vにおける体積抵抗値を測定した結果、最大値と最小値の差は3倍以上あり、サンプル間のばらつきも非常に大きかった。同一サンプル内のばらつきも3倍以上あり、非常に大きかった。
【0126】
また、本比較例と同じ配合処方で、ケミカルキュアではなく、熱キュア(150℃・30分、200℃・30分、300℃・30分、400℃・30分)で作成したフィルムは、ケミカルキュアで作成したものに比べて非常に長時間の成型時間が必要であり、フィラーを多量に含むものにおいては、成型途中及び成型後のいずれにおいても非常に脆かった。
【0127】
【表1】
【0128】
【表2】
【0129】
【発明の効果】
本発明のポリイミド樹脂組成物、ポリイミドフィルム、ポリイミド管状物においては、黒濃度が高く、高絶縁性、中抵抗値を有し、添加部数、分散状態、サンプル間に基づくばらつきが小さく、抵抗値の環境依存性、電圧依存性が少なく、機械特性に優れ、搬送による帯電防止性や電子写真機での転写性・定着性に優れる。
Claims (14)
- ポリイミド樹脂100重量部に対し、半導電性フィラーを20〜200重量部、揮発量2.0%以上、かつpH5.0以下であるカーボンブラックを0.01〜20重量部含有し、体積抵抗値が1×106〜1×1015Ω・cmの範囲内にあり、黒濃度が1.0以上であることを特徴とするポリイミド樹脂組成物。
- 前記カーボンブラックが揮発量3.0%以上、かつpH4.0以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリイミド樹脂組成物。
- 前記カーボンブラックが、一次粒径20nm以下であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のポリイミド樹脂組成物。
- 前記カーボンブラックの添加量が、0.1〜5重量部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリイミド樹脂組成物。
- 前記半導電性フィラーの添加量が、40〜180重量部であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリイミド樹脂組成物。
- 前記黒濃度が1.1以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリイミド樹脂組成物。
- 前記半導電性フィラーが、黒色導電性物質で被覆された半導電性フィラーであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリイミド樹脂組成物。
- 前記半導電性フィラーが、インジウム−錫複合酸化物、アンチモンドープ酸化錫、ニオブドープ酸化錫、タンタルドープ酸化錫、フッ素化物ドープ酸化錫、あるいは酸化錫の酸化錫系物質で被覆された半導電性フィラーであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリイミド樹脂組成物。
- 前記半導電性フィラーが、酸化チタン、チタン酸金属塩、ホウ酸アルミニウム、酸化錫、あるいは炭化ケイ素であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリイミド樹脂組成物。
- 前記半導電性フィラーの体積抵抗値が1×103〜1×1010Ω・cmであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のポリイミド樹脂組成物。
- イミド化促進剤として酸無水物および/または三級アミンを添加後、加熱焼成して得られることを特徴とする請求項1〜10に記載のポリイミド樹脂組成物。
- 請求項1〜11のいずれかに記載のポリイミド樹脂組成物を用いて調製されるポリイミドフィルム。
- 請求項1〜12のいずれかに記載のポリイミド樹脂組成物若しくはフィルムを用いて調製されるポリイミド管状物。
- 請求項13に記載のポリイミド管状物であって、電子写真装置の転写ベルト、中間転写ベルト、転写定着ベルトまたは定着ベルトのいずれかに使用されるポリイミド管状物。
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