JP2004124130A - 溶射用粉末及びその製造方法並びに該溶射用粉末を用いた溶射方法 - Google Patents

溶射用粉末及びその製造方法並びに該溶射用粉末を用いた溶射方法 Download PDF

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Abstract

【課題】溶射過程での二硫化モリブデンの熱分解防止を図ることができ、二硫化モリブデンを含有する溶射皮膜の形成を可能とする溶射用粉末及びその製造方法並びに該溶射用粉末を用いた溶射方法を提供する。
【解決手段】溶射用粉末は、二硫化モリブデンの熱分解温度よりも低い温度で軟化又は溶融する金属(例えば銅)からなる被覆層が表面に設けられた二硫化モリブデン粒子よりなる。二硫化モリブデン粒子の表面に被覆層を形成する方法は、無電解メッキ法が好ましい。また、溶射用粉末を溶射するにあたっては、所定の構成を有する高速フレーム溶射機11を用いることが好ましい。
【選択図】   図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、二硫化モリブデンを含有する溶射皮膜を形成するための溶射用粉末及びその製造方法並びに該溶射用粉末を用いた溶射方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
摺動特性に優れた二硫化モリブデンは、固体潤滑材料として広く利用されている。二硫化モリブデンを含有する皮膜を形成するための手段として、従来、二硫化モリブデンを適当な分散媒に分散させたスラリーを塗布する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。ところが、こうして得られる皮膜は薄膜であるため寿命が短く、再塗布など頻繁なメンテナンスを必要とする。その点、溶射は、比較的厚い皮膜を形成することができるので、耐久性の高い二硫化モリブデン含有皮膜を形成するための手段として有望と考えられる。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−121576号公報(段落[0006]、段落[0017])
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、二硫化モリブデンは比較的低温で熱分解するため、二硫化モリブデンを含有する溶射皮膜を形成しようとする場合には、溶射の過程で二硫化モリブデンが熱分解しないように何らかの手段を講じる必要がある。
【0005】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、溶射過程での二硫化モリブデンの熱分解防止を図ることができ、二硫化モリブデンを含有する溶射皮膜の形成を可能とする溶射用粉末及びその製造方法並びに該溶射用粉末を用いた溶射方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、二硫化モリブデンの熱分解温度よりも低い温度で軟化又は溶融する金属からなる被覆層が表面に設けられた二硫化モリブデン粒子よりなる溶射用粉末であることを要旨とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の溶射用粉末において、前記被覆層が銅からなることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の溶射用粉末の製造方法であって、二硫化モリブデン粒子の表面に、二硫化モリブデンの熱分解温度よりも低い温度で軟化又は溶融する金属からなる被覆層を無電解メッキ法により設けることを要旨とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の溶射用粉末の製造方法であって、二硫化モリブデン粒子の表面に、銅からなる被覆層を無電解メッキ法により設けることを要旨とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、燃焼室で発生し外部に向けて吐出される燃焼炎に対し、前記燃焼室よりも前記燃焼炎の流通方向下流位置に設けられた溶射用粉末供給部で溶射用粉末を供給することによって、前記溶射用粉末を前記燃焼炎により軟化又は溶融して射出するとともに、前記燃焼室と前記溶射用粉末供給部の間に、前記燃焼炎の流通方向下流に向けて筒状の気流を噴射する噴射口が設けられることによって、前記筒状の気流の内側において前記溶射用粉末を前記燃焼炎により軟化又は溶融して射出するように構成された高速フレーム溶射機を用いて、前記溶射用粉末として請求項1又は請求項2に記載の溶射用粉末を溶射することを要旨とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した実施形態について説明する。
本実施形態の溶射用粉末は、銅からなる被覆層が表面に設けられた二硫化モリブデン粒子よりなる。
【0011】
溶射用粉末は、溶射時に使用する溶射機の種類や溶射条件に応じて、例えば5〜75μm、10〜45μm、15〜45μm、20〜63μm、25〜75μm等、適宜の粒度分布に調製されるが、この粒度分布の下限の値は5μm以上であることが好ましく、上限の値は75μm以下であることが好ましい。
【0012】
なお、粒度分布の下限の値は、レーザ回折式粒度測定機(例えば堀場製作所社製の「LA−300」)を用いて求められる値であって、その値以下の粒度を有する粒子の割合が5%以下となる値である。また、粒度分布の上限の値は、ロータップ法(JIS R6002)で求められる値であって、その値以上の粒度を有する粒子の割合が5%以下となる値である。すなわち粒度分布が5〜75μmであれば、レーザ回折式粒度測定機を用いて求められる5μm以下の粒子の割合が5%以下であり、ロータップ法で求められる75μm以上の粒子の割合が5%以下であることを示す。
【0013】
溶射用粉末を構成する各粒子に含まれる二硫化モリブデンの量は、求められる溶射皮膜の特性により異なるが、好ましくは30〜90重量%であり、より好ましくは40〜80重量%である。
【0014】
溶射用粉末を構成する各粒子に含まれる銅の量は、求められる溶射皮膜の特性により異なるが、好ましくは10〜70重量%であり、より好ましくは20〜60重量%である。
【0015】
二硫化モリブデン粒子の表面に被覆層を形成する方法は、無電解メッキ法が好ましい。
本実施形態の溶射用粉末を溶射するにあたっては、以下に説明するような高速フレーム溶射機を用いることが好ましい。好適な高速フレーム溶射機としては、例えば、ウィティコジャパン社製の高速フレーム溶射機である製品名「θ−Gun」が挙げられる。
【0016】
図1は、本実施形態の溶射用粉末を溶射するのに好適な高速フレーム溶射機11を示す。高速フレーム溶射機11は、燃料と酸素(あるいは空気)の燃焼炎により溶射用粉末を軟化又は溶融して射出するものである。図1に示すように、高速フレーム溶射機11は、燃料と酸素(あるいは空気)の燃焼の場となる燃焼室12を備えている。その燃焼室12に連通し、高速フレーム溶射機11の後端(図1では左側)で外部に開口する第1の空孔13は、燃焼室12内に燃料及び酸素(あるいは空気)を導入するための流路となる。また、同じく燃焼室12に連通し、高速フレーム溶射機11の前端(図1では右側)の吐出口14aで外部に開口する第2の空孔14は、燃焼室12内で燃料及び酸素(あるいは空気)が燃焼することにより発生する燃焼炎を吐出口14aから外部に吐出するための流路となる。
【0017】
第2の空孔14の中途には、前向きの(第2の空孔14における燃焼炎の流通方向下流方向を向いた)段差面15が形成されている。段差面15には、燃焼炎の流通方向下流に向けて筒状の気流16を噴射する噴射口17が形成されている。そのため、第2の空孔14を吐出口14aに向かって流通する燃焼炎は、噴射口17から噴射される筒状の気流16の内側を通過する。
【0018】
第2の空孔14の中途にあって前記噴射口17よりも燃焼炎の流通方向下流位置には、二つの溶射用粉末供給部18が設けられている。これら溶射用粉末供給部18は、前記筒状の気流16の内側を吐出口14aに向かって流通する燃焼炎に対して溶射用粉末を供給するためのものである。そのため、溶射用粉末供給部18から供給される溶射用粉末は、筒状の気流16の内側において燃焼炎により軟化又は溶融されて射出される。なお、溶射用粉末供給部18は、図示しない溶射用粉末供給機から延び高速フレーム溶射機11の前端に接続された連結配管19の先端開口により構成されている。
【0019】
本実施形態によって得られる効果について、以下に記載する。
・ 本実施形態の溶射用粉末の被覆層を構成している銅は、二硫化モリブデンの熱分解温度(およそ750℃)よりも低い温度で軟化する。従って、本実施形態の溶射用粉末は、二硫化モリブデンの熱分解を防止するべく溶射時の溶射用粉末の温度を二硫化モリブデンの熱分解温度未満となるようにしたとしても、その温度が銅の軟化温度以上でさえあれば、何ら問題なく溶射皮膜を形成することができる。溶射時の溶射用粉末の温度が二硫化モリブデンの熱分解温度未満であれば、得られる溶射皮膜には二硫化モリブデンが熱分解されることなく含有されることになるので、その溶射皮膜は、二硫化モリブデンの優れた摺動特性に基づいて良好な摺動特性を発揮することができる。
【0020】
・ 溶射によれば、比較的厚い皮膜を容易に形成することができる。従って、本実施形態の溶射用粉末を厚く溶射してやれば、良好な摺動性を長く発揮することができる二硫化モリブデン含有皮膜を得ることができる。
【0021】
・ 溶射用粉末の粒度分布の下限の値を5μm以上とすれば、粒度が過剰に小さい粒子が溶射用粉末に多く含まれていることに起因する不具合、例えば、燃焼炎中に溶射用粉末を確実に供給することが困難になることによって起こる付着効率の低下、を防止することができる。
【0022】
・ 溶射用粉末の粒度分布の上限の値を75μm以下とすれば、粒度が過剰に大きい粒子が溶射用粉末に多く含まれていることに起因する不具合、例えば、溶射用粉末が燃焼炎により軟化又は溶融されにくくなるために起こる付着効率の低下、を防止することができる。
【0023】
・ 溶射用粉末を構成する各粒子に含まれる二硫化モリブデンの量を30重量%以上、銅の量を70重量%以下とすれば、十分な固体潤滑性を有する溶射皮膜を形成可能な溶射用粉末を提供することができる。
【0024】
・ 溶射用粉末を構成する各粒子に含まれる二硫化モリブデンの量を90重量%以下、銅の量を10重量%以上とすれば、基材との密着性及び靭性に優れた溶射皮膜を形成可能な溶射用粉末を提供することができる。
【0025】
・ 二硫化モリブデン粒子の表面に被覆層を形成する方法が無電解メッキ法であれば、被覆層の形成時に二硫化モリブデン粒子がその熱分解温度以上にまで加熱されにくいので、被覆層の形成時に二硫化モリブデンが熱分解するおそれを回避することができる。それに対し、セラミックと金属を複合化する際に従来用いられている造粒−焼結法、焼結−粉砕法又は溶融−焼結法で二硫化モリブデンを銅と複合化しようとしたときには、焼結又は溶融の段階で二硫化モリブデンが熱分解し、さらに銅と反応してモリブデンと硫黄と銅の複合化合物が形成されてしまうおそれがある。
【0026】
・ 図1に示す高速フレーム溶射機11は、一般の高速フレーム溶射機が通常備えている噴射ノズルを筒状の気流16で代替したものであって、噴射ノズルを備えていない。そのため、一般の高速フレーム溶射機よりも、溶射用粉末供給部(粉末投入位置)から基材(被溶射体)までの距離を短くして、溶射用粉末の燃焼炎中の滞留時間を小さくすることができる。すなわち、本実施形態の溶射用粉末を、高速フレーム溶射機11を用いて溶射すれば、溶射用粉末の過熱による二硫化モリブデンの熱分解防止をより確実に図ることができるので、摺動特性に優れた溶射皮膜をより確実に得ることができる。
【0027】
なお、前記実施形態を次のように変更して構成することもできる。
・ 前記実施形態では被覆層を銅から形成するようにしたが、二硫化モリブデンの熱分解温度よりも低い温度で軟化又は溶融する金属であれば、必ずしも銅でなくてもよい。このような金属としては、例えば、亜鉛、アルミニウム、ニッケル及びそれらの合金並びに銅合金が挙げられる。
【0028】
・ 前記実施形態では被覆層を無電解メッキ法により設けるようにしたが、必ずしも無電解メッキ法でなくてもよい。
・ 被覆層は、二硫化モリブデン粒子の表面全体に設けても、二硫化モリブデン粒子の表面の一部のみに設けてもよい。
【0029】
【実施例】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
<実施例1> 二硫化モリブデン粒子の表面に、銅からなる被覆層を無電解メッキ法で設けることにより、銅からなる被覆層が表面に設けられた二硫化モリブデン粒子よりなる粉末を調製した。
【0030】
<比較例1> 溶融−粉砕法により二硫化モリブデンと銅を複合化するべく、二硫化モリブデンと銅を混合して加熱溶融し、冷却して得られた固化物を機械的に粉砕して粉末を調製した。
【0031】
<比較例2> 焼結−粉砕法により二硫化モリブデンと銅を複合化するべく、二硫化モリブデン粉末と銅粉末を混合して焼結し、得られた焼結体を機械的に粉砕して粉末を調製した。
【0032】
<比較例3> 造粒−焼結法により二硫化モリブデンと銅を複合化するべく、二硫化モリブデン粉末と銅粉末を適当な分散媒に分散させたスラリーを噴霧造粒法により造粒し、それを焼結した後に解砕して粉末を調製した。
【0033】
実施例1で得られた粉末を、ウィティコジャパン社製の高速フレーム溶射機である製品名「θ−Gun」を用いて溶射したところ、銅からなる結合相に二硫化モリブデン粒子が分散した溶射皮膜が得られた。
【0034】
それに対し、実施例1で得られた粉末を、PRAXAIR/TAFA社製の高速フレーム溶射機である製品名「JP−5000」を用いて溶射した場合には、銅の酸化物と若干のモリブデンと硫黄と銅の複合化合物からなる溶射皮膜が得られ、溶射皮膜中に二硫化モリブデンは非常に僅かしか認められなかった。これは、溶射の過程で銅が酸化したことと、同じく溶射の過程で二硫化モリブデンが熱分解し、さらに銅と反応したことが理由と考えられる。
【0035】
一方、比較例1〜3で得られた粉末を「θ−Gun」を用いて溶射した場合には、銅の酸化物とモリブデンと硫黄と銅の複合化合物からなる溶射皮膜が得られ、溶射皮膜中に二硫化モリブデンは認められなかった。比較例1〜3で得られた粉末を調べたところ、粉末を構成する各粒子はモリブデンと硫黄と銅の複合化合物からなり、二硫化モリブデンを含有していなかったことから、粉末の調製の過程で二硫化モリブデンが熱分解し、さらに銅と反応したと考えられる。
【0036】
なお、「θ−Gun」を用いたときの溶射条件は次の通りである。酸素流量:1900scfh(893l/min)、灯油流量:5.1gph(0.32l/min)、溶射距離(溶射用粉末供給部から基材までの距離):350mm、溶射用粉末供給量:30g/min。「JP−5000」を用いたときの溶射条件は次の通りである。酸素流量:1900scfh(893l/min)、灯油流量:5.1gph(0.32l/min)、溶射距離(ノズル先端から基材までの距離):380mm、ノズル長さ:4インチ(約100mm)、溶射用粉末供給量:30g/min。溶射皮膜の評価には、株式会社リガク製のX線回折装置「RINT−2000」を使用した。
【0037】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、溶射過程での二硫化モリブデンの熱分解防止を図ることができ、二硫化モリブデンを含有する溶射皮膜の形成を可能とする溶射用粉末及びその製造方法並びに該溶射用粉末を用いた溶射方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】好適な高速フレーム溶射機を示す断面図。
【符号の説明】
11…高速フレーム溶射機、12…燃焼室、16…筒状の気流、17…噴射口、18…溶射用粉末供給部。

Claims (5)

  1. 二硫化モリブデンの熱分解温度よりも低い温度で軟化又は溶融する金属からなる被覆層が表面に設けられた二硫化モリブデン粒子よりなることを特徴とする溶射用粉末。
  2. 前記被覆層が銅からなることを特徴とする請求項1に記載の溶射用粉末。
  3. 請求項1に記載の溶射用粉末の製造方法であって、二硫化モリブデン粒子の表面に、二硫化モリブデンの熱分解温度よりも低い温度で軟化又は溶融する金属からなる被覆層を無電解メッキ法により設けることを特徴とする溶射用粉末の製造方法。
  4. 請求項2に記載の溶射用粉末の製造方法であって、二硫化モリブデン粒子の表面に、銅からなる被覆層を無電解メッキ法により設けることを特徴とする溶射用粉末の製造方法。
  5. 燃焼室で発生し外部に向けて吐出される燃焼炎に対し、前記燃焼室よりも前記燃焼炎の流通方向下流位置に設けられた溶射用粉末供給部で溶射用粉末を供給することによって、前記溶射用粉末を前記燃焼炎により軟化又は溶融して射出するとともに、前記燃焼室と前記溶射用粉末供給部の間に、前記燃焼炎の流通方向下流に向けて筒状の気流を噴射する噴射口が設けられることによって、前記筒状の気流の内側において前記溶射用粉末を前記燃焼炎により軟化又は溶融して射出するように構成された高速フレーム溶射機を用いて、前記溶射用粉末として請求項1又は請求項2に記載の溶射用粉末を溶射することを特徴とする溶射方法。
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