JP2004124329A - パルプの洗浄方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】紙パルプ製造工程において、パルプや製造装置へのピッチの付着を防止し、ピッチ付着および剥離による断紙などによる生産性の低下および成紙の汚れおよび欠点の発生による製品品質の低下等を抑制・防止するために、パルプ製造工程中のアルカリ性水系においてウェットパルプ中およびパルプスラリー中のピッチを除去するパルプの洗浄方法を提供する。
【解決手段】紙パルプ製造において、アルカリ性水系の蒸解工程後のパルプ洗浄および漂白工程の酸素漂白段、オゾン漂白段、過酸化水素漂白段、次亜塩素酸ナトリウム漂白段、アルカリ抽出段の各漂白処理後のパルプ洗浄において、炭素数3〜6の多価アルコールにエチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)をモル比でEO:PO=40:60〜90:10で付加させて得られる多価アルコールのポリオキシエチレンポリオキシプロピレン付加物(但し、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基の分子量:500〜10,000)の存在下、ウェットパルプおよびパルプスラリーを洗浄することを特徴として構成している。
【選択図】 なし
【解決手段】紙パルプ製造において、アルカリ性水系の蒸解工程後のパルプ洗浄および漂白工程の酸素漂白段、オゾン漂白段、過酸化水素漂白段、次亜塩素酸ナトリウム漂白段、アルカリ抽出段の各漂白処理後のパルプ洗浄において、炭素数3〜6の多価アルコールにエチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)をモル比でEO:PO=40:60〜90:10で付加させて得られる多価アルコールのポリオキシエチレンポリオキシプロピレン付加物(但し、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基の分子量:500〜10,000)の存在下、ウェットパルプおよびパルプスラリーを洗浄することを特徴として構成している。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ピッチトラブルを防止するためのパルプの洗浄方法、詳しくはパルプ製造工程のアルカリ性水系の蒸解工程後のパルプ洗浄方法および漂白工程内の各種漂白処理後のパルプ洗浄方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
紙は、一般に木材チップをアルカリ性の蒸解液で高温加熱処理してパルプを得る蒸解工程、得られたパルプを洗浄する洗浄工程、洗浄されたパルプを漂白する漂白工程、そして漂白されたパルプと種々の薬品を添加して紙料を調成する調成工程、調成された紙料を抄く抄紙工程、抄いた湿紙を乾燥させる乾燥工程等の各工程を経て得られる。この一連の紙パルプの製造工程において、リグニン、油脂類、脂肪酸類、樹脂類等の木材に由来する天然の疎水性夾雑物および/又は製紙工程に添加されるサイズ剤等の疎水性物質からなる疎水性粘着物のピッチにより、操業上の障害や紙製品の品質上の障害が生じる。
【0003】
一般に木材を強アルカリ性液の黒液で蒸解して得られたパルプには、木材由来のリグニン、油脂類、脂肪酸類、樹脂類等の疎水性夾雑物や炭酸カルシウム等の無機塩類を含むピッチが付随し、洗浄工程で洗浄、除去される。洗浄後のパルプを外販未晒パルプとする場合には、黒液および夾雑物を十分に除去しないと、木材由来の天然疎水性夾雑物を含むピッチが多く残り商品価値を損なう。また、そのまま自家消費する場合には、後工程のシックナー等で脱水フィルターやストレージタンクなどの装置類、搬送配管壁やパルプに木材由来の天然疎水性夾雑物を含むピッチが付着する。装置類等に付着したピッチが大きくなり、剥離するとパルプスラリーや工程水にピッチが含まれたまま、あるいはパルプにピッチが付着したまま、次工程の漂白工程や調成工程、抄紙工程へと流れ、種々のピッチトラブルを引き起こす。
【0004】
蒸解工程、洗浄工程後のパルプは、白色度を向上させるために漂白工程に送られる。漂白は、一般に塩素、次亜塩素酸塩、二酸化塩素、酸素、オゾン、過酸化水素などを使って行われ、この漂白処理により生じた分解物やパルプより遊離した油脂類、脂肪酸類、樹脂類などの疎水性物質が、パルプスラリーおよび工程水中に多く含まれるようになり、パルプ洗浄工程から持ち込まれたピッチ分とともに新たなピッチとなる。これらのピッチは、通常、微粒子あるいはコロイド状で存在するために各漂白処理段中に設けられた洗浄機で除去されるが、十分に除去できない場合、後工程の調成工程におけるミキシングチェスト、マシンチェスト及び搬送配管でのピッチ付着、さらには抄造工程でのストックインレットのスライスリップ、マシンワイヤー、ロール、フォイルへのピッチ付着による操業トラブルや工程水中の粘着性浮遊ピッチあるいは付着ピッチの剥離による成紙斑点の発生、断紙発生等のピッチトラブルを引き起こす。
【0005】
そこで、ピッチトラブルを防止するためにパルプ中のピッチを除去する種々の方法が提案されてきた。例えば、オクチルフェノール又はノニルフェノールのエチレンオキシド(EO)7〜10モル付加物、あるいは炭素数9〜22の2級アルコールのEO6〜15モル付加物と炭素数2〜8の1級アルコールのエチレンオキシド(EO)−プロピレンオキシド(PO)付加物(POが23%以上)からなる脱樹脂分散剤をパルプ製造工程で用いる脱樹脂方法(特許文献1、特許文献2参照)、パルプ製造工程のアルカリ処理時に炭素数10〜16の2級アルコールのEO付加物とEO−PO共重合体を併用したパルプの脱樹脂方法(特許文献3参照)、炭素数10〜22の1級アルキルアミンのEO付加物を用いるピッチ障害の抑制方法(特許文献4参照)、炭素数10〜19の高級脂肪酸と炭素数6以下のアルコールとの脂肪酸エステルを用いるピッチ障害の抑制方法(特許文献5参照)、蒸解工程、洗浄工程、漂白工程、抄造工程等でエチレンビスステアリルアミドと炭素数12〜18の1価の高級アルコールのEO付加物を併用するピッチ障害抑制方法(特許文献6参照)、パルプ漂白工程のアルカリ抽出段のパルプスラリーに水溶性アニオン性重合体を加えてピッチを除去する方法(特許文献7参照)等がある。しかし、いずれも十分に満足しうる効果を得るには至っていない。
【0006】
【特許文献1】
特公昭48−39763号公報(第2〜3頁)
【特許文献2】
特開昭50−101602号公報(第1〜2頁)
【特許文献3】
特開昭50−48201号公報(第1〜2頁)
【特許文献4】
特公昭63−23320号公報(第1〜3頁)
【特許文献5】
特公昭62−6039号公報(第1〜4頁)
【特許文献6】
特公平6−63188号公報(第3〜6頁)
【特許文献7】
特開平11−256490号公報(第3〜6頁)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、紙パルプ製造工程において、パルプや製造装置へのピッチの付着を防止し、ピッチの付着および剥離による断紙などによる生産性の低下および成紙汚れ及び欠点の発生による製品品質の低下等を抑制・防止するために、パルプ製造工程中のアルカリ性水系においてパルプ中のピッチを除去するパルプの洗浄方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、紙パルプ製造工程におけるパルプの洗浄方法に関して鋭意検討を行った結果、紙パルプ製造工程のアルカリ性水系のパルプ洗浄工程あるいは漂白工程においてパルプスラリーあるいは工程水に特定の多価アルコールのポリアルキレンオキシド付加物を含有させて洗浄することにより、当該工程のパルプ中のピッチ分や後工程の製造装置へのピッチの付着防止に有効であることを見出し、その知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、請求項1の発明は、紙パルプ製造において、アルカリ性水系の蒸解工程後のパルプ洗浄および漂白工程の酸素漂白段、オゾン漂白段、過酸化水素漂白段、次亜塩素酸ナトリウム漂白段、アルカリ抽出段の各漂白処理後のパルプ洗浄において、炭素数3〜6の多価アルコールにエチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)をモル比でEO:PO=40:60〜90:10で付加させて得られる多価アルコールのポリオキシエチレンポリオキシプロピレン付加物(但し、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基の分子量:500〜10,000)の存在下、該パルプを洗浄することを特徴とするパルプの洗浄方法。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1のパルプの洗浄方法であり、多価アルコールのポリオキシエチレンポリオキシプロピレン付加物が多価アルコールにEOとPOをモル比で50:50〜80:20で付加させたものであることを特徴としている。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2のパルプの洗浄方法であり、多価アルコールがグリセリン、ペンタエリスリトール及びソルビトールより選ばれた1種以上であることを特徴としている。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明を以下に詳細に説明する。
本発明は、紙パルプ製造のパルプ洗浄工程あるいは漂白工程の酸素漂白段、オゾン漂白段、過酸化水素漂白段、次亜塩素酸ナトリウム漂白段、アルカリ抽出段等のアルカリ性水系において、ウェットパルプあるいはパルプスラリーに、多価アルコールのエチレンオキシド及びプロピレンオキシド付加物(以下、「アルキルポリアルキレングリコール化合物」という)を有効成分として存在させて、パルプを洗浄することにより、該パルプ中のピッチを除去し,更には該工程内の設備へのピッチ付着の防止、抄紙工程のピッチ障害を防止するパルプの洗浄方法である。
【0013】
本発明におけるパルプ洗浄工程は、パルプ蒸解工程により得られた強アルカリ性のパルプスラリーを洗浄し、黒液や夾雑物を除去する工程であり、通常、交流三段ドラム洗浄機、ディフュージョンウォッシャー等を用いてパルプの洗浄を行う。
【0014】
漂白工程の酸素漂白段、オゾン漂白段、過酸化水素漂白段、次亜塩素酸ナトリウム漂白段は各々、漂白塔及びこれに付随するパルプ洗浄機、ろ液タンク、パルプスラリー貯蔵タンク、搬送配管等の周辺設備を含めた処理設備からなり、各々漂白処理液を用いてアルカリ性領域で運転される。
【0015】
また、アルカリ抽出段は、通常、漂白処理段の後に水酸化ナトリウムを用いたアルカリ性領域でパルプの洗浄を行う箇所で、抽出塔及びこれに付随するパルプ洗浄機、ろ液タンク、パルプスラリー貯蔵タンク、搬送配管等の周辺設備を含めた処理設備からなる。
【0016】
本発明の多価アルコールは、炭素数3〜6の2価〜6価のアルコールである。具体的には、2価のアルコールとしてはエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチルプロパン−1,3−ジオール等があり、3価のアルコールとしてはグリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等があり、4価のアルコールとしてはジグリセリン、ペンタエリスリトール等があり、5価アルコールとしてはアラビトール、キシリトール等があり、6価アルコールとしてはソルビトール、マンニトール等があり、これらの1種あるいは2種以上が用いられる。これらの中で好ましくは、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトールであり、より好ましくはグリセリン、ペンタエリスリトールである。
【0017】
多価アルコールへのエチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)の付加は、ランダム共重合あるいはブロック共重合の何れでもよく、多価アルコールの1個の水酸基に付加させてもよいし、全ての水酸基に付加してもよく、特に限定されるものではない。
【0018】
EOとPOの付加量比はモル比で40:60〜90:10であり、好ましくは50:50〜80:20、さらに好ましくは60:40〜70:30である。EOの割合が90モル%を超えると親水性が強くなり、疎水性のピッチとの親和性が小さくなり、好ましくない。また、EOの割合が40モル%未満では疎水性が強くなりすぎて水中への分散性が不足して十分なパルプとの親和性が得られず、パルプの十分な洗浄性が得られない。付加したポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基の分子量は500〜10,000であり、500未満では十分な本発明の効果を得ることができない場合があり、10,000を超えると本発明の効果の向上の割にアルキルポリアルキレングリコール化合物の粘性が高くなったりペースト状・固形状となり、取扱性が低下して好ましくない。
【0019】
本発明のアルキルポリアルキレングリコール化合物は、常法の製造方法で得られ、特に限定されるものではない。例えば、多価アルコール100部と水酸化カリウムあるいは水酸化ナトリウム等のアルカリ触媒1〜10部を混合し、撹拌下、常圧ないし加圧下、100〜150℃に加熱して、所定量のEOを導入して付加反応を行い,次いでPOを導入して本発明のアルキルポリアルキレングリコール化合物が得られる。EO、POの付加は、PO付加を先に行い,次いでEO付加を行っても良く、EO、POを交互に導入して付加反応を行っても良く、通常、反応時間を考慮して、EO付加の後、PO付加が行われる。
【0020】
本発明のアルキルポリアルキレングリコール化合物の添加量は、適用工程および工程水の状況、ピッチの発生状況などによって異なり一律に決められるものではないが、通常、パルプに対して0.01〜1重量%である。
【0021】
本発明のアルキルポリアルキレングリコール化合物の使用方法は、原液のままで使用する方法、あるいはアルキルポリアルキレングリコール化合物が溶解する希釈剤で適宜希釈して使用する方法のいずれでも良い。
【0022】
本発明のアルキルポリアルキレングリコール化合物の添加個所は、通常、蒸解後のパルプ洗浄工程においては、パルプ洗浄装置に入る手前でパルプスラリーに直接添加する方法、あるいはパルプ洗浄装置に入る手前でパルプスラリーの希釈水に添加する方法があり、いずれを用いても良い。また、向流式多段真空ドラム式洗浄機、例えば向流式三段真空ドラム式洗浄機では、二段目洗浄機手前のレパルパーに本発明のアルキルポリアルキレングリコール化合物を添加して洗浄すれば、第二段目の洗浄機で得られる濾液は前段の一段目洗浄機のレパルパー希釈水あるいは洗浄用シャワー水に使用され、アルキルポリアルキレングリコール化合物による洗浄促進効果は一段目洗浄機でも発揮される。
【0023】
漂白工程の酸素漂白段、オゾン漂白段、過酸化水素漂白段、次亜塩素酸ナトリウム漂白段、アルカリ抽出段においても同様に、各漂白処理塔の後に連なるパルプ洗浄装置の手前で漂白処理後のパルプスラリーに直接添加する方法、あるいはパルプ洗浄装置に入る手前でパルプスラリーの希釈水に添加する方法であり、いずれを用いても良い。
【0024】
本発明のアルキルポリアルキレングリコール化合物の添加方法は、特に限定されるものではなく、通常の薬品注入ポンプを使用して注入される。
【0025】
本発明方法におけるアルキルポリアルキレングリコール化合物の効果を損なわない範囲において、他の工程添加剤、例えば、消泡剤、スケールコントロール剤及び他のピッチコントロール剤等を配合・併用することに何ら制限を加えるものではない。
【0026】
【実施例】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0027】
[本発明のアルキルポリアルキレングリコール化合物:A−1の調製]
反応容器にグリセリン92部と水酸化カリウム5部を加えて窒素ガスで置換した。攪拌下、温度100〜150℃、ゲージ圧4kg/cm2以下でプロピレンオキシド(PO)1856部を少量ずつ投入し反応させた。投入終了後、ゲージ圧が一定になるまで更に攪拌し、次いで同条件下でエチレンオキシド(EO)2112部を少量ずつ投入し、反応させた。投入後、ゲージ圧が一定になるまで更に攪拌を継続した。ゲージ圧が一定になった後、80℃以下に冷却して酢酸を用いて中和し、グリセリンのEO/PO=48/32(モル比)のブロック付加物を得た。
【0028】
上記のアルキルポリアルキレングリコール化合物:A−1の調製例と同様にして、アルコールの種類とEOおよびPOの付加比を変えて、表1記載のアルキルポリアルキレングリコール化合物のA−2〜A−13ならびにB−1〜B−12の化合物を得た。
【0029】
[その他]
B−13:無水マレイン酸−ジイソブチレン共重合体(分子量5000)ナトリウム塩「ポリスターOM(25重量固形分%)」(商品名、日本油脂(株)製)
B−14:タルク「ミストロンベーパー」(商品名、日本ミストロン(株)製)
B−15:エチレンビスステアリルアミドの3重量%の流動パラフィン分散液(粘度650mPa・S−25℃)
【0030】
【表1】
【0031】
[パルプ洗浄試験1]
パルプを一部販売している紙パルプ製造工場では、蒸解後の向流式三段ドラム洗浄機でパルプの洗浄を行い、パルプを自家消費用と外部販売用に分け、外部販売用未晒パルプはカミールマシンで未晒パルプとして抄いていた。外部販売用パルプシートは、通常、1回/8時間の割合で定期的に1000平方メートル当たりの斑点数を目視測定し、所定の自社規格内のものを出荷し、規格外のものは自家消費用パルプとして使用していた。しかし、使用するチップ材種類により、外部販売用パルプシートの斑点数が増加し規格外となるだけでなく、自家消費用パルプの漂白工程での洗浄機フィルターへのピッチ付着量の増加、漂白後のパルプへのピッチ付着量の増加となった。斑点数の測定を行い、斑点数が一定レベル以下になるように2週間〜1ヶ月に1回の頻度で装置の苛性洗浄を行っていた。しかし、頻繁な洗浄は操業効率を悪くしていた。そこで、向流式三段ドラム洗浄機の3段目洗浄機手前のレパルパー内のパルプスラリーにポリアルキレングルリコール化合物あるいはアニオン性重合体または無機化合物を0.03重量%(対パルプ)を添加し、外部販売用パルプシートの斑点数の低減を行った。評価は、外部販売用パルプシート1000m2あたりの平均成紙斑点数を計測し、斑点数の少ないほど良い。結果を表2に示した。
【0032】
【表2】
【0033】
本発明のアルキルポリオキシアルキレングリコール化合物を添加することにより、外部販売用パルプシートの斑点の減少をもたらしたことが認められた。
【0034】
[パルプ洗浄試験2]
中質紙を生産している製紙工場のパルプ漂白工程は、塩素漂白段−アルカリ抽出段−次亜塩素酸塩漂白段−二酸化塩素漂白段のシーケンスからなり、各漂白塔およびアルカリ抽出塔の後に洗浄機が設置され、パルプの洗浄が行われていた。しかし、漂白工程後、パルプスラリー中にピッチ分が増加し、漂白工程内での洗浄機のフイルターにピッチが付着するだけでなく、調成工程・抄紙工程に持ち込まれて成紙斑点の原因となっていた。そこで、塩素漂白段、アルカリ抽出段、次亜塩素酸漂白段、二酸化塩素漂白段の各段の漂白塔出口にポリアルキレングルリコール化合物あるいはアニオン性重合体または無機化合物を薬注ポンプで500(mg/kg−パルプ)で連続添加し、ピッチの洗浄とピッチの除去を行った。評価は次の2つの方法によって実施した。
【0035】
▲1▼ 薬品添加8時間後の成紙1000m2あたりの平均成紙斑点数を計測した。斑点数の少ないほど良い。成紙斑点数が35個以上の薬品は効果が低いと判断し、薬品の添加を中止し,良好な薬品は5日間継続した。)
▲2▼ 漂白工程からのパルプを一時ストックする完成チェストに、径5cm、浸潰部100cm長、長さ2mのパイプを固定し、5日間にその表面に付着する粘着物付着量を測定した。
この結果を表3に示した。
【0036】
【表3】
【0037】
本発明の方法により、漂白工程のパルプスラリー中のピッチは減少し、ピッチ付着量も減少した。さらに成紙斑点数も減少し、製品品質の改善に寄与することが認められた。
【0038】
[パルプ洗浄試験3]
クラフトパルプ製造工場(広葉樹クラフトパルプ生産量500トン/日)において、蒸解後、酵素晒を経て、向流式真空ドラム二段ウォッシャー(No.2ウォッシャのシャワー水量1.4t/分〜1.7t/分、シャワー水温50℃)、次いでスクリーンからなるパルプ洗浄工程(図1参照)でパルプの洗浄を行っていた。該パルプ洗浄工程の状況は、真空回転ドラム式スクリーンのフィルターにピッチが付着し、数日で脱水効率が急速に低下するために、向流式回転ドラム二段ウォッシャーのNo.2ウォッシャー入口のレパルパーにタルクを300(mg/kg−パルプ)連続添加して、ピッチ対策を行い、以下のような状況になっていた。
【0039】
1)向流式回転ドラム二段ウォッシャーのNo.2ウォッシャーの出口パルプシートの絞り液電気伝導度は2300〜2600(μS/cm)
2)向流式真空ドラム二段ウォッシャーのNo.2ウォッシャーの出口パルプシート中のピッチ量(クロロホルム抽出分)は0.25〜0.27重量%(対絶乾パルプ)
3)1回/7日の割合で灯油を用いてフィルターを洗浄し、付着ピッチを除去
【0040】
そこで、ポリアルキレングリコール化合物、水溶性アニオン性重合体等を用いてパルプ洗浄の向上を図り、スクリーンへのピッチ付着防止を試みた。ポリアルキレングリコール化合物、水溶性アニオン性重合体等の添加は薬注ポンプを用い、向流式真空ドラム二段ウォッシャーのNo.2ウォッシャー入口のレパルパーに添加した。評価は、以下のように行った。
【0041】
1)向流式真空ドラム二段ウォッシャーのNo.2ウォッシャーの出口パルプシートの絞り液電気伝導度(電気伝導度が低いほど、洗浄が良くなったことを示し、好ましい。)
2)同パルプシートのピッチ量(5時間のクロロホルムによるソックスレー抽出)(ピッチ量が少ないほど、洗浄が良くなったことを示し、好ましい。)
3)14日間におけるスクリーン洗浄回数(少ないほど、好ましい。)
【0042】
薬品添加2時間後の出口パルプシートの絞り液電気伝導度が2300(μS/cm)以上あるいはピッチ量が0.25重量%(対絶乾パルプ)以上となった薬品は、その添加を中止し、良好なものについて14日間継続した。結果を表4に示す。
【0043】
【表4】
【0044】
【発明の効果】
本発明のパルプ洗浄方法により、パルプ中のピッチが除去され、製造装置へのピッチ付着やパルプの汚れ、紙の汚点・欠点、断紙、作業性の低下などを改善し、製品品質の向上、生産性・作業性の向上など、紙パルプ工業に益するところが大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】パルプを蒸解後の酸素晒およびパルプ洗浄の概要図である。
【符号の説明】
1:パルプスラリー
2:酸素晒塔
3:酸素晒後のパルプスラリー
4:No.1レパルパー
5:No.1レパルパー希釈水
6:No.1ウォッシャーのシャワー水
7:No.1ウォッシャーの濾液
8:No.1ウォッシャーの濾液タンク
9:No.1ウォッシャー後のパルプ(出口パルプシート)
10:No.2レパルパー
11:No.2レパルパー希釈水
12:No.2ウォッシャーのシャワー水
13:No.2ウォッシャーの濾液
14:No.2ウォッシャーの濾液タンク
15:No.2ウォッシャー後のパルプ(出口パルプシート)
【発明の属する技術分野】
本発明は、ピッチトラブルを防止するためのパルプの洗浄方法、詳しくはパルプ製造工程のアルカリ性水系の蒸解工程後のパルプ洗浄方法および漂白工程内の各種漂白処理後のパルプ洗浄方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
紙は、一般に木材チップをアルカリ性の蒸解液で高温加熱処理してパルプを得る蒸解工程、得られたパルプを洗浄する洗浄工程、洗浄されたパルプを漂白する漂白工程、そして漂白されたパルプと種々の薬品を添加して紙料を調成する調成工程、調成された紙料を抄く抄紙工程、抄いた湿紙を乾燥させる乾燥工程等の各工程を経て得られる。この一連の紙パルプの製造工程において、リグニン、油脂類、脂肪酸類、樹脂類等の木材に由来する天然の疎水性夾雑物および/又は製紙工程に添加されるサイズ剤等の疎水性物質からなる疎水性粘着物のピッチにより、操業上の障害や紙製品の品質上の障害が生じる。
【0003】
一般に木材を強アルカリ性液の黒液で蒸解して得られたパルプには、木材由来のリグニン、油脂類、脂肪酸類、樹脂類等の疎水性夾雑物や炭酸カルシウム等の無機塩類を含むピッチが付随し、洗浄工程で洗浄、除去される。洗浄後のパルプを外販未晒パルプとする場合には、黒液および夾雑物を十分に除去しないと、木材由来の天然疎水性夾雑物を含むピッチが多く残り商品価値を損なう。また、そのまま自家消費する場合には、後工程のシックナー等で脱水フィルターやストレージタンクなどの装置類、搬送配管壁やパルプに木材由来の天然疎水性夾雑物を含むピッチが付着する。装置類等に付着したピッチが大きくなり、剥離するとパルプスラリーや工程水にピッチが含まれたまま、あるいはパルプにピッチが付着したまま、次工程の漂白工程や調成工程、抄紙工程へと流れ、種々のピッチトラブルを引き起こす。
【0004】
蒸解工程、洗浄工程後のパルプは、白色度を向上させるために漂白工程に送られる。漂白は、一般に塩素、次亜塩素酸塩、二酸化塩素、酸素、オゾン、過酸化水素などを使って行われ、この漂白処理により生じた分解物やパルプより遊離した油脂類、脂肪酸類、樹脂類などの疎水性物質が、パルプスラリーおよび工程水中に多く含まれるようになり、パルプ洗浄工程から持ち込まれたピッチ分とともに新たなピッチとなる。これらのピッチは、通常、微粒子あるいはコロイド状で存在するために各漂白処理段中に設けられた洗浄機で除去されるが、十分に除去できない場合、後工程の調成工程におけるミキシングチェスト、マシンチェスト及び搬送配管でのピッチ付着、さらには抄造工程でのストックインレットのスライスリップ、マシンワイヤー、ロール、フォイルへのピッチ付着による操業トラブルや工程水中の粘着性浮遊ピッチあるいは付着ピッチの剥離による成紙斑点の発生、断紙発生等のピッチトラブルを引き起こす。
【0005】
そこで、ピッチトラブルを防止するためにパルプ中のピッチを除去する種々の方法が提案されてきた。例えば、オクチルフェノール又はノニルフェノールのエチレンオキシド(EO)7〜10モル付加物、あるいは炭素数9〜22の2級アルコールのEO6〜15モル付加物と炭素数2〜8の1級アルコールのエチレンオキシド(EO)−プロピレンオキシド(PO)付加物(POが23%以上)からなる脱樹脂分散剤をパルプ製造工程で用いる脱樹脂方法(特許文献1、特許文献2参照)、パルプ製造工程のアルカリ処理時に炭素数10〜16の2級アルコールのEO付加物とEO−PO共重合体を併用したパルプの脱樹脂方法(特許文献3参照)、炭素数10〜22の1級アルキルアミンのEO付加物を用いるピッチ障害の抑制方法(特許文献4参照)、炭素数10〜19の高級脂肪酸と炭素数6以下のアルコールとの脂肪酸エステルを用いるピッチ障害の抑制方法(特許文献5参照)、蒸解工程、洗浄工程、漂白工程、抄造工程等でエチレンビスステアリルアミドと炭素数12〜18の1価の高級アルコールのEO付加物を併用するピッチ障害抑制方法(特許文献6参照)、パルプ漂白工程のアルカリ抽出段のパルプスラリーに水溶性アニオン性重合体を加えてピッチを除去する方法(特許文献7参照)等がある。しかし、いずれも十分に満足しうる効果を得るには至っていない。
【0006】
【特許文献1】
特公昭48−39763号公報(第2〜3頁)
【特許文献2】
特開昭50−101602号公報(第1〜2頁)
【特許文献3】
特開昭50−48201号公報(第1〜2頁)
【特許文献4】
特公昭63−23320号公報(第1〜3頁)
【特許文献5】
特公昭62−6039号公報(第1〜4頁)
【特許文献6】
特公平6−63188号公報(第3〜6頁)
【特許文献7】
特開平11−256490号公報(第3〜6頁)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、紙パルプ製造工程において、パルプや製造装置へのピッチの付着を防止し、ピッチの付着および剥離による断紙などによる生産性の低下および成紙汚れ及び欠点の発生による製品品質の低下等を抑制・防止するために、パルプ製造工程中のアルカリ性水系においてパルプ中のピッチを除去するパルプの洗浄方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、紙パルプ製造工程におけるパルプの洗浄方法に関して鋭意検討を行った結果、紙パルプ製造工程のアルカリ性水系のパルプ洗浄工程あるいは漂白工程においてパルプスラリーあるいは工程水に特定の多価アルコールのポリアルキレンオキシド付加物を含有させて洗浄することにより、当該工程のパルプ中のピッチ分や後工程の製造装置へのピッチの付着防止に有効であることを見出し、その知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、請求項1の発明は、紙パルプ製造において、アルカリ性水系の蒸解工程後のパルプ洗浄および漂白工程の酸素漂白段、オゾン漂白段、過酸化水素漂白段、次亜塩素酸ナトリウム漂白段、アルカリ抽出段の各漂白処理後のパルプ洗浄において、炭素数3〜6の多価アルコールにエチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)をモル比でEO:PO=40:60〜90:10で付加させて得られる多価アルコールのポリオキシエチレンポリオキシプロピレン付加物(但し、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基の分子量:500〜10,000)の存在下、該パルプを洗浄することを特徴とするパルプの洗浄方法。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1のパルプの洗浄方法であり、多価アルコールのポリオキシエチレンポリオキシプロピレン付加物が多価アルコールにEOとPOをモル比で50:50〜80:20で付加させたものであることを特徴としている。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2のパルプの洗浄方法であり、多価アルコールがグリセリン、ペンタエリスリトール及びソルビトールより選ばれた1種以上であることを特徴としている。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明を以下に詳細に説明する。
本発明は、紙パルプ製造のパルプ洗浄工程あるいは漂白工程の酸素漂白段、オゾン漂白段、過酸化水素漂白段、次亜塩素酸ナトリウム漂白段、アルカリ抽出段等のアルカリ性水系において、ウェットパルプあるいはパルプスラリーに、多価アルコールのエチレンオキシド及びプロピレンオキシド付加物(以下、「アルキルポリアルキレングリコール化合物」という)を有効成分として存在させて、パルプを洗浄することにより、該パルプ中のピッチを除去し,更には該工程内の設備へのピッチ付着の防止、抄紙工程のピッチ障害を防止するパルプの洗浄方法である。
【0013】
本発明におけるパルプ洗浄工程は、パルプ蒸解工程により得られた強アルカリ性のパルプスラリーを洗浄し、黒液や夾雑物を除去する工程であり、通常、交流三段ドラム洗浄機、ディフュージョンウォッシャー等を用いてパルプの洗浄を行う。
【0014】
漂白工程の酸素漂白段、オゾン漂白段、過酸化水素漂白段、次亜塩素酸ナトリウム漂白段は各々、漂白塔及びこれに付随するパルプ洗浄機、ろ液タンク、パルプスラリー貯蔵タンク、搬送配管等の周辺設備を含めた処理設備からなり、各々漂白処理液を用いてアルカリ性領域で運転される。
【0015】
また、アルカリ抽出段は、通常、漂白処理段の後に水酸化ナトリウムを用いたアルカリ性領域でパルプの洗浄を行う箇所で、抽出塔及びこれに付随するパルプ洗浄機、ろ液タンク、パルプスラリー貯蔵タンク、搬送配管等の周辺設備を含めた処理設備からなる。
【0016】
本発明の多価アルコールは、炭素数3〜6の2価〜6価のアルコールである。具体的には、2価のアルコールとしてはエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチルプロパン−1,3−ジオール等があり、3価のアルコールとしてはグリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等があり、4価のアルコールとしてはジグリセリン、ペンタエリスリトール等があり、5価アルコールとしてはアラビトール、キシリトール等があり、6価アルコールとしてはソルビトール、マンニトール等があり、これらの1種あるいは2種以上が用いられる。これらの中で好ましくは、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトールであり、より好ましくはグリセリン、ペンタエリスリトールである。
【0017】
多価アルコールへのエチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)の付加は、ランダム共重合あるいはブロック共重合の何れでもよく、多価アルコールの1個の水酸基に付加させてもよいし、全ての水酸基に付加してもよく、特に限定されるものではない。
【0018】
EOとPOの付加量比はモル比で40:60〜90:10であり、好ましくは50:50〜80:20、さらに好ましくは60:40〜70:30である。EOの割合が90モル%を超えると親水性が強くなり、疎水性のピッチとの親和性が小さくなり、好ましくない。また、EOの割合が40モル%未満では疎水性が強くなりすぎて水中への分散性が不足して十分なパルプとの親和性が得られず、パルプの十分な洗浄性が得られない。付加したポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基の分子量は500〜10,000であり、500未満では十分な本発明の効果を得ることができない場合があり、10,000を超えると本発明の効果の向上の割にアルキルポリアルキレングリコール化合物の粘性が高くなったりペースト状・固形状となり、取扱性が低下して好ましくない。
【0019】
本発明のアルキルポリアルキレングリコール化合物は、常法の製造方法で得られ、特に限定されるものではない。例えば、多価アルコール100部と水酸化カリウムあるいは水酸化ナトリウム等のアルカリ触媒1〜10部を混合し、撹拌下、常圧ないし加圧下、100〜150℃に加熱して、所定量のEOを導入して付加反応を行い,次いでPOを導入して本発明のアルキルポリアルキレングリコール化合物が得られる。EO、POの付加は、PO付加を先に行い,次いでEO付加を行っても良く、EO、POを交互に導入して付加反応を行っても良く、通常、反応時間を考慮して、EO付加の後、PO付加が行われる。
【0020】
本発明のアルキルポリアルキレングリコール化合物の添加量は、適用工程および工程水の状況、ピッチの発生状況などによって異なり一律に決められるものではないが、通常、パルプに対して0.01〜1重量%である。
【0021】
本発明のアルキルポリアルキレングリコール化合物の使用方法は、原液のままで使用する方法、あるいはアルキルポリアルキレングリコール化合物が溶解する希釈剤で適宜希釈して使用する方法のいずれでも良い。
【0022】
本発明のアルキルポリアルキレングリコール化合物の添加個所は、通常、蒸解後のパルプ洗浄工程においては、パルプ洗浄装置に入る手前でパルプスラリーに直接添加する方法、あるいはパルプ洗浄装置に入る手前でパルプスラリーの希釈水に添加する方法があり、いずれを用いても良い。また、向流式多段真空ドラム式洗浄機、例えば向流式三段真空ドラム式洗浄機では、二段目洗浄機手前のレパルパーに本発明のアルキルポリアルキレングリコール化合物を添加して洗浄すれば、第二段目の洗浄機で得られる濾液は前段の一段目洗浄機のレパルパー希釈水あるいは洗浄用シャワー水に使用され、アルキルポリアルキレングリコール化合物による洗浄促進効果は一段目洗浄機でも発揮される。
【0023】
漂白工程の酸素漂白段、オゾン漂白段、過酸化水素漂白段、次亜塩素酸ナトリウム漂白段、アルカリ抽出段においても同様に、各漂白処理塔の後に連なるパルプ洗浄装置の手前で漂白処理後のパルプスラリーに直接添加する方法、あるいはパルプ洗浄装置に入る手前でパルプスラリーの希釈水に添加する方法であり、いずれを用いても良い。
【0024】
本発明のアルキルポリアルキレングリコール化合物の添加方法は、特に限定されるものではなく、通常の薬品注入ポンプを使用して注入される。
【0025】
本発明方法におけるアルキルポリアルキレングリコール化合物の効果を損なわない範囲において、他の工程添加剤、例えば、消泡剤、スケールコントロール剤及び他のピッチコントロール剤等を配合・併用することに何ら制限を加えるものではない。
【0026】
【実施例】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0027】
[本発明のアルキルポリアルキレングリコール化合物:A−1の調製]
反応容器にグリセリン92部と水酸化カリウム5部を加えて窒素ガスで置換した。攪拌下、温度100〜150℃、ゲージ圧4kg/cm2以下でプロピレンオキシド(PO)1856部を少量ずつ投入し反応させた。投入終了後、ゲージ圧が一定になるまで更に攪拌し、次いで同条件下でエチレンオキシド(EO)2112部を少量ずつ投入し、反応させた。投入後、ゲージ圧が一定になるまで更に攪拌を継続した。ゲージ圧が一定になった後、80℃以下に冷却して酢酸を用いて中和し、グリセリンのEO/PO=48/32(モル比)のブロック付加物を得た。
【0028】
上記のアルキルポリアルキレングリコール化合物:A−1の調製例と同様にして、アルコールの種類とEOおよびPOの付加比を変えて、表1記載のアルキルポリアルキレングリコール化合物のA−2〜A−13ならびにB−1〜B−12の化合物を得た。
【0029】
[その他]
B−13:無水マレイン酸−ジイソブチレン共重合体(分子量5000)ナトリウム塩「ポリスターOM(25重量固形分%)」(商品名、日本油脂(株)製)
B−14:タルク「ミストロンベーパー」(商品名、日本ミストロン(株)製)
B−15:エチレンビスステアリルアミドの3重量%の流動パラフィン分散液(粘度650mPa・S−25℃)
【0030】
【表1】
【0031】
[パルプ洗浄試験1]
パルプを一部販売している紙パルプ製造工場では、蒸解後の向流式三段ドラム洗浄機でパルプの洗浄を行い、パルプを自家消費用と外部販売用に分け、外部販売用未晒パルプはカミールマシンで未晒パルプとして抄いていた。外部販売用パルプシートは、通常、1回/8時間の割合で定期的に1000平方メートル当たりの斑点数を目視測定し、所定の自社規格内のものを出荷し、規格外のものは自家消費用パルプとして使用していた。しかし、使用するチップ材種類により、外部販売用パルプシートの斑点数が増加し規格外となるだけでなく、自家消費用パルプの漂白工程での洗浄機フィルターへのピッチ付着量の増加、漂白後のパルプへのピッチ付着量の増加となった。斑点数の測定を行い、斑点数が一定レベル以下になるように2週間〜1ヶ月に1回の頻度で装置の苛性洗浄を行っていた。しかし、頻繁な洗浄は操業効率を悪くしていた。そこで、向流式三段ドラム洗浄機の3段目洗浄機手前のレパルパー内のパルプスラリーにポリアルキレングルリコール化合物あるいはアニオン性重合体または無機化合物を0.03重量%(対パルプ)を添加し、外部販売用パルプシートの斑点数の低減を行った。評価は、外部販売用パルプシート1000m2あたりの平均成紙斑点数を計測し、斑点数の少ないほど良い。結果を表2に示した。
【0032】
【表2】
【0033】
本発明のアルキルポリオキシアルキレングリコール化合物を添加することにより、外部販売用パルプシートの斑点の減少をもたらしたことが認められた。
【0034】
[パルプ洗浄試験2]
中質紙を生産している製紙工場のパルプ漂白工程は、塩素漂白段−アルカリ抽出段−次亜塩素酸塩漂白段−二酸化塩素漂白段のシーケンスからなり、各漂白塔およびアルカリ抽出塔の後に洗浄機が設置され、パルプの洗浄が行われていた。しかし、漂白工程後、パルプスラリー中にピッチ分が増加し、漂白工程内での洗浄機のフイルターにピッチが付着するだけでなく、調成工程・抄紙工程に持ち込まれて成紙斑点の原因となっていた。そこで、塩素漂白段、アルカリ抽出段、次亜塩素酸漂白段、二酸化塩素漂白段の各段の漂白塔出口にポリアルキレングルリコール化合物あるいはアニオン性重合体または無機化合物を薬注ポンプで500(mg/kg−パルプ)で連続添加し、ピッチの洗浄とピッチの除去を行った。評価は次の2つの方法によって実施した。
【0035】
▲1▼ 薬品添加8時間後の成紙1000m2あたりの平均成紙斑点数を計測した。斑点数の少ないほど良い。成紙斑点数が35個以上の薬品は効果が低いと判断し、薬品の添加を中止し,良好な薬品は5日間継続した。)
▲2▼ 漂白工程からのパルプを一時ストックする完成チェストに、径5cm、浸潰部100cm長、長さ2mのパイプを固定し、5日間にその表面に付着する粘着物付着量を測定した。
この結果を表3に示した。
【0036】
【表3】
【0037】
本発明の方法により、漂白工程のパルプスラリー中のピッチは減少し、ピッチ付着量も減少した。さらに成紙斑点数も減少し、製品品質の改善に寄与することが認められた。
【0038】
[パルプ洗浄試験3]
クラフトパルプ製造工場(広葉樹クラフトパルプ生産量500トン/日)において、蒸解後、酵素晒を経て、向流式真空ドラム二段ウォッシャー(No.2ウォッシャのシャワー水量1.4t/分〜1.7t/分、シャワー水温50℃)、次いでスクリーンからなるパルプ洗浄工程(図1参照)でパルプの洗浄を行っていた。該パルプ洗浄工程の状況は、真空回転ドラム式スクリーンのフィルターにピッチが付着し、数日で脱水効率が急速に低下するために、向流式回転ドラム二段ウォッシャーのNo.2ウォッシャー入口のレパルパーにタルクを300(mg/kg−パルプ)連続添加して、ピッチ対策を行い、以下のような状況になっていた。
【0039】
1)向流式回転ドラム二段ウォッシャーのNo.2ウォッシャーの出口パルプシートの絞り液電気伝導度は2300〜2600(μS/cm)
2)向流式真空ドラム二段ウォッシャーのNo.2ウォッシャーの出口パルプシート中のピッチ量(クロロホルム抽出分)は0.25〜0.27重量%(対絶乾パルプ)
3)1回/7日の割合で灯油を用いてフィルターを洗浄し、付着ピッチを除去
【0040】
そこで、ポリアルキレングリコール化合物、水溶性アニオン性重合体等を用いてパルプ洗浄の向上を図り、スクリーンへのピッチ付着防止を試みた。ポリアルキレングリコール化合物、水溶性アニオン性重合体等の添加は薬注ポンプを用い、向流式真空ドラム二段ウォッシャーのNo.2ウォッシャー入口のレパルパーに添加した。評価は、以下のように行った。
【0041】
1)向流式真空ドラム二段ウォッシャーのNo.2ウォッシャーの出口パルプシートの絞り液電気伝導度(電気伝導度が低いほど、洗浄が良くなったことを示し、好ましい。)
2)同パルプシートのピッチ量(5時間のクロロホルムによるソックスレー抽出)(ピッチ量が少ないほど、洗浄が良くなったことを示し、好ましい。)
3)14日間におけるスクリーン洗浄回数(少ないほど、好ましい。)
【0042】
薬品添加2時間後の出口パルプシートの絞り液電気伝導度が2300(μS/cm)以上あるいはピッチ量が0.25重量%(対絶乾パルプ)以上となった薬品は、その添加を中止し、良好なものについて14日間継続した。結果を表4に示す。
【0043】
【表4】
【0044】
【発明の効果】
本発明のパルプ洗浄方法により、パルプ中のピッチが除去され、製造装置へのピッチ付着やパルプの汚れ、紙の汚点・欠点、断紙、作業性の低下などを改善し、製品品質の向上、生産性・作業性の向上など、紙パルプ工業に益するところが大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】パルプを蒸解後の酸素晒およびパルプ洗浄の概要図である。
【符号の説明】
1:パルプスラリー
2:酸素晒塔
3:酸素晒後のパルプスラリー
4:No.1レパルパー
5:No.1レパルパー希釈水
6:No.1ウォッシャーのシャワー水
7:No.1ウォッシャーの濾液
8:No.1ウォッシャーの濾液タンク
9:No.1ウォッシャー後のパルプ(出口パルプシート)
10:No.2レパルパー
11:No.2レパルパー希釈水
12:No.2ウォッシャーのシャワー水
13:No.2ウォッシャーの濾液
14:No.2ウォッシャーの濾液タンク
15:No.2ウォッシャー後のパルプ(出口パルプシート)
Claims (3)
- 紙パルプ製造において、アルカリ性水系の蒸解工程後のパルプ洗浄および漂白工程の酸素漂白段、オゾン漂白段、過酸化水素漂白段、次亜塩素酸ナトリウム漂白段、アルカリ抽出段の各漂白処理後のパルプ洗浄において、炭素数3〜6の多価アルコールにエチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)をモル比でEO:PO=40:60〜90:10で付加させて得られる多価アルコールのポリオキシエチレンポリオキシプロピレン付加物(但し、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基の分子量:500〜10,000)の存在下、該パルプを洗浄することを特徴とするパルプの洗浄方法。
- 多価アルコールのポリオキシエチレンポリオキシプロピレン付加物が多価アルコールにEOとPOをモル比で50:50〜80:20で付加させたものである請求項1記載のパルプの洗浄方法。
- 多価アルコールがグリセリン、、ペンタエリスリトール及びソルビトールより選ばれた1種以上である請求項1又は2記載のパルプの洗浄方法。
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