JP2004125545A - 分析方法及び装置 - Google Patents

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Yujiro Yamamoto
山本 裕二郎
Mariko Naka
仲 眞理子
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Abstract

【課題】被分析溶液中に分析対象成分が存在した場合は、反応により想定生成物が形成され、被分析溶液中に分析成分が存在しなかった場合は、想定生成物が形成されないことを、あらかじめ反応物を固定した分析媒体を用いて判断する分析技術分野において、分析媒体へ安定した液供給を実現する分析方法及び分析装置を提供すること。
【解決手段】被分析溶液中に分析対象成分が存在した場合には、それ反応して想定生成物を形成する反応物が固定されてなる分析媒体に、被分析溶液を分析媒体に輸送して両者を接触させ、分析媒体の変化により、前記の被分析溶液中の被分析対象成分を分析する方法であって、前記の被分析溶液を、液体浸透性を持たない溝状の通路より毛細管現象による流れにより前記反応媒体に搬送して反応媒体と接触させることからなる分析方法。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被分析溶液中に分析成分が存在するか否かを定性的又は定量的に分析するための分析方法及びそれに用いる分析装置に関する。本発明は、医療診断、健康診断、環境分析、食品分析等に好適に用いられる。
【0002】
【従来の技術】
本発明の一応用分野であるところの免疫学的分析分野では、患者から採取した体液中の抗原の存在を判定するための抗原の特異的結合対である抗体を、ニトロセルロース等の素材からなる微多孔質の膜に固定して分析媒体とし、ニトロセルロース膜の微多孔性を利用した体液の毛管現象流れにより、体液を前記抗体が固定された領域に輸送し、抗原抗体反応が生じた場合は、体液中に被分析物、すなわち、抗原があると判断し、抗原抗体反応が生じなかった場合は、体液中に被分析物、すなわち、抗原が存在しないと判断する、いわゆるイムノクロマトグラフィーの分析手段が商品として知られている。
イムノクロマトグラフィーに用いられる被分析溶液、すなわち、体液等を分析媒体に輸送する手段は、セルロース繊維、グラスファイバー、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、コットン繊維等の不織布又は濾紙状に加工した媒体を、分析媒体と重複部が発生するように積層することにより不織布又は濾紙状に加工した媒体の毛管現象を利用したものである。
【0003】
この場合、被分析溶液は、不織布又は濾紙状に加工した媒体から重複部を介してニトロセルロース等の素材からなる分析媒体に輸送され、更に分析媒体を形成する膜の微多孔性を利用した毛管現象流れにより、被分析溶液を抗体が固定された領域に輸送し分析が実行される。この方法は、被分析溶液の供給から分析実行まで、すべて素材の微多孔性による毛管現象流れを利用しているため、分析操作が可能となった技術である。しかし、毛管現象を利用しているが故に、不織布又は濾紙状に加工した媒体を分析媒体と重複部が発生するように積層する場合、重複部に接着剤、熱溶着等の接合手段が利用できず、生産性、信頼性及び再現性の面で問題の発生が懸念される。また、ここで用いられる不織布又は濾紙状に加工した媒体は、0.2〜3mmの厚みがあるものの、曲げ、ねじり等の機械的外力に対する強度が極めて低く、精度良く裁断すること、分析媒体と重複部が発生するように重ね合わせるときの正確な位置決めをすること等が困難である。さらに、素材の性質上、取り扱い時及び裁断時に毛羽が発生し、製品の汚染が発生する懸念があった。
【0004】
他方、この免疫学的分析分野では、LSIの製造等に用いられるシリコン基板上に、光学活性又は光学活性層が固定された分析対象成分が容易に固定されない非特異吸着面と、分析対象成分の特異的結合対である受容物質を持たせることにより、「分析対象成分が含まれている疑いのある被分析溶液」(以下、本明細書において、「」内を、被分析液、という)を基板上に供給し、基板上で分析対象成分と受容物質とを反応させ、特異的結合が発生した場合に光学活性支持体が入射光に応じて発色する、いわゆる、光学的免疫分析の技術が存在する。
【0005】
この場合、被分析溶液と、「被分析溶液中の分析対象成分と反応して、想定生成物を形成する反応物」(以下、本明細書において、「」内を、反応物、と略す)との反応は、前記のような被分析溶液の毛管現象流れの中で発生する動的反応ではなく、反応物上に固定して反応させる静的反応である。そのため、分析の感度は高いものであると考えられる。
前記のイムノクロマトグラフィーでは、抗原抗体反応の有無は一般に標識された発色材料による発色又は変色を、目視又は光学的な検出手段により判定する。実際にこの判定に寄与する領域は、イムノクロマトグラフィーで用いられるニトロセルロース等の微多孔質の膜が100〜200μmの厚みを持つものの、表面よりせいぜい10μm程度の深さ領域のみであって、それよりも厚み方向に深い、残りの90〜95%の領域は、反応に寄与するか否かにかかわらず、判定には全く寄与しないのが現実である。
【0006】
しかし、こういった微多孔質の膜に反応物を固定する場合は、その素材の持つ液体浸透性により、判定に必要な表面領域にだけ反応物を固定することは事実上不可能である。そのため、ニトロセルロース等の素材からなる微多孔質の膜の厚み方向全体にわたって固定せざるを得なかった。一般に、反応物は価格が高く、分析結果に反映しない領域にまで固定することはコスト面、極めて不利である。それに対し、前記光学的免疫分析の技術では、反応物は、分析媒体の全面又は分析媒体の活性面にスポット状に固定されており、固定された全体又はほぼ全体が反応に寄与するという利点がある。しかし、この光学的免疫分析の技術では、被分析溶液の供給、必要に応じて用いられるところの被分析溶液中の分析対象成分と反応して想定生成物を形成する反応物と分析対象成分の反応を補助する補助反応液の供給、また、必要に応じて用いられるところの想定生成物が形成されたことを検出するための検出試薬の供給には、分析媒体上へ滴下、又はポンプ、圧送等の動的輸送手段が用いられていた。
【0007】
この場合、分析媒体と液の供給口を正確に位置決めしておかないと、所望の量の液量が供給されないばかりか、液と分析媒体表面との親和性が低い場合は、液が球状の液滴となり、液と分析媒体の接触面積が著しく小さくなったり、必要な反応面積全体に液が供給されない場合がある。さらに、分析中に外部から振動が加わった場合に、液滴が分析媒体表面から転がり落ちて分析に失敗したり、誤った分析結果を与える懸念があった。逆に、液と分析媒体表面との親和性が高い場合は、液が分析媒体全面に広がり、液と分析媒体の接触面積は確保できるものの、液の拡散が大きく、分析媒体の活性範囲外にも液が展開し、反応部分に供給される液の有効体積が減少することにより、感度の低下、分析結果のバラツキ等が発生する懸念があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、被分析溶液中に分析対象成分が存在するか否かを、定性的又は定量的に判断するために、前記被分析溶液中に分析対象成分が存在した場合は、反応により想定生成物が形成され、逆に、前記被分析溶液中に分析成分が存在しなかった場合は、想定生成物が形成されないことを、反応物を固定した分析媒体を用いて判断する分析技術分野における、上記既存技術の問題点を解消し、分析媒体へ安定した液供給を実現する分析方法及び分析装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
(1) 分析対象成分が含まれている疑いのある被分析溶液中の分析対象成分と反応して、想定生成物を形成する反応物が固定されてなる分析媒体に、分析対象成分が含まれている疑いのある被分析溶液を分析媒体に輸送して両者を接触させ、分析媒体の変化により、前記の被分析溶液中の被分析対象成分を分析する方法であって、前記の被分析溶液を、液体浸透性を持たない溝状の通路より毛細管現象による流れにより前記反応媒体に搬送して反応媒体と接触させることからなる分析方法。
【0010】
(2) 分析対象成分が含まれている疑いのある被分析溶液中の分析対象成分と反応して、想定生成物を形成する反応物が固定されてなる分析媒体に、分析対象成分が含まれている疑いのある被分析溶液を分析媒体に輸送して両者を接触させ、分析媒体の変化により、前記の被分析溶液中の被分析対象成分を分析する方法であって、前記の被分析溶液を、液体浸透性を持たない溝状の通路より毛細管現象による流れにより、前記反応媒体に輸送して反応媒体と接触させ、接触させた後の被分析溶液を、液体浸透性を持たない溝状の通路より毛細管現象による流れにより液体を保持又は吸収する媒体に搬送して、前記媒体に保持又は吸収させることからなる分析方法。
【0011】
(3) 分析対象成分が含まれている疑いのある被分析溶液中の分析対象成分と反応して、想定生成物を形成する反応物が固定されてなる分析媒体、及び分析対象成分が含まれている疑いのある被分析溶液を分析媒体に輸送して両者を接触させる溝状の流路を備えた輸送手段からなり、前記溝状の流路は、液体浸透性を持たない材料により構成され、被分析溶液を毛細管現象により被分析溶液を搬送するものである分析装置。
【0012】
(4) 分析対象成分が含まれている疑いのある被分析溶液中の分析対象成分と反応して、想定生成物を形成する反応物が固定されてなる分析媒体、分析対象成分が含まれている疑いのある被分析溶液を分析媒体に輸送して両者を接触させる溝状の流路を備えた第一の輸送手段、分析を終了した前記の被分析溶液が分析装置外に漏洩しないように吸収または保持する媒体、分析媒体から前記の吸収または保持する媒体に対し、分析を終了した被分析溶液を輸送する溝状の流路を備えた第二の輸送手段からなり、第一及び第二の輸送手段に設けられた溝状の流路は、液体浸透性を持たない材料により構成され、被分析溶液を毛細管現象により被分析溶液を搬送するものである分析装置。
【0013】
本発明を図面により説明する。
図1は、本発明の反応装置10の一例を示す透過平面図、図2は、図1のA−A’における断面図である。図3は、図1のB−B’における断面図であり、被分析溶液を供給するための注入孔1の部分を示す。図4は、図1のC−C’における断面図であり、図中、点線で囲った楕円内の領域は、第一の輸送手段2の断面である。第一の輸送手段には、溝状の通路3が設けられている。注入孔1は、溝状の通路3を備えた第一の輸送手段2と連通している。
【0014】
図5は、図1のD−D’における断面図であり、反応物5が固定された反応媒体4が設置されている部分を示す。第一の輸送手段の溝状の通路3の他端の開口部は、反応媒体4の一辺に連通している。図6は、図1のE−E’における断面図であり、図中、点線で囲った楕円内の領域は、第二の輸送手段6の断面である。第二の輸送手段には、溝状の通路7が設けられている。溝状の通路3が開口している反応媒体4の対向する辺には、反応媒体と接触した後の被分析溶液を毛管現象により輸送するための溝状の通路7を備えた第二の輸送手段6が隣接し、溝状の通路7は、反応媒体4に開口している。
【0015】
図7は、図1のF−F’における断面図であり、被分析溶液を吸収又は保持する媒体8が設置されている部分を示す。第二の輸送手段の溝状の通路の他端は、反応媒体と接触した後の被分析溶液を吸収又は保持する媒体8と接続している。注入孔に被分析溶液を供給すると、被分析溶液は、毛細管現象により第一の輸送手段である溝状の通路を反応媒体側に進入し、溝状の通路の開口部から反応媒体と接触する。被分析液中に分析対象物が含まれている場合には、反応媒体上で分析対象物と反応物とが反応し、反応生成物が形成される。反応生成物が形成されることにより反応媒体の変化、例えば、色相の変化、沈殿形成による被膜の形成、導電率の変化、抵抗率の変化、磁気特性の変化等が生ずる。これを検出することによって、分析対象物の定性又は定量分析が行われる。
【0016】
被分析液中に分析対象物が含まれていない場合には、反応に基づく変化が起こらないから、被分析液中に分析対象物が含まれていない、ということが判明する。
反応媒体と接触した後の被分析溶液は、第二の輸送手段を、毛管現象により被分析溶液の保持又は吸収可能な媒体に送られる。これによって、分析を完了した被分析溶液は分析装置外に漏洩することはない。
【0017】
本発明において、被分析溶液としては、唾液、喀痰、鼻汁、鼻腔液、血液、血清、涙液、便、尿等の人体および動物から採取された体液、雨、河川、上下水、冷却水、排水等の環境から採取された液、飲料水、ジュース等の飲み物、調味料等の食品および食品を抽出した溶液、微生物、細菌、ウイルス、薬品、薬物、動植物の細胞、組織が溶け込んだ溶液等があげられる。
本発明における分析対象成分としては、抗原、抗体、タンパク質、酵素、核酸、DNA、RNA、微生物、細菌、ウイルス、薬品・薬物等の化合物等があげられるが、本発明では、これらの物質それぞれに対して特異的に結合しうる試薬を見いだしうるものが好ましい。
【0018】
本発明における反応物は、分析対象成分と特異的に結合しうる試薬が用いられる。
本発明において、溝状の流路を形成する液体浸透性を持たない材料としては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタアクリレート、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、ユリア樹脂等のプラスチック、ガラス、石英等の無機素材、鉄、アルミ、ステンレス等の金属素材等が挙げられる。中でも、成形加工のし易さ、軽量性、強度及びコスト面からプラスチックが好ましく、光学的に透明であるポリカーボネート及びポリメチルメタアクリレートがより好ましい。
【0019】
溝状の流路は、上記材料を金型や鋳型等を用いた成形したり、上記材料からなる平板を彫刻機を用いた削り出し加工、エッチングによって加工によって製造することができる。この際、材料としてプラスチックを用いた場合は、射出成形技術、プレス成形技術等が用いられ。特に、射出成形技術を用いた場合、安価に、再現性良く、大量に作成することが可能である。
第一および第二の輸送手段である溝状の流路が、分析媒体に対し、一箇所以上の流路を持つ、すなわち、実質的に第一および第二の輸送手段が複数本の溝からなることによって、分析媒体に対し、被分析溶液の供給、必要に応じて用いられる反応物と分析対象成分の反応を補助する補助反応液の供給、必要に応じて用いられる想定生成物が形成されたことを検出するための検出試薬の供給が均一に行われる。さらに、被分析溶液に含まれるゴミや異物等の夾雑物により一箇所の流路が目詰まりした場合も、他の流路により、被分析溶液、補助反応液、検出試薬等の液供給が確保可能である。
【0020】
第一及び第二の輸送手段を構成する溝状の通路は、被分析溶液を毛細管現象により輸送できる寸法を有していることが必要である。この寸法は、被分析溶液及び溝状の通路を形成する材料等により、一概に規定できないが、一般的には、開口部の幅は、一箇所につき50μm以上、500μm以下であることが好ましい。幅が一箇所につき50μm未満の場合、被分析溶液に含まれることが多いゴミや異物の詰まりが発生しやすくなることがあり、被分析溶液、補助反応液、検出試薬等の粘性によっては、安定した液輸送が得られない場合もある。また、彫刻機で溝を形成する場合、汎用的な彫刻機が使えない場合もある。開口部の幅が一箇所につき500μmを越える場合は、被分析溶液、補助反応液、検出試薬等と本発明の液体浸透性を持たない溝の材料との親和性が低い時に、安定した毛管現象が発生せず液輸送が実現できない場合が発生する。
【0021】
溝の開口部の深さは、一箇所につき50μm以上、500μm以下であることが好ましい。深さが一箇所につき50μm未満の場合、被分析溶液に含まれることが多いゴミや異物等の夾雑物の詰まりが発生しやすくなることがあり、被分析溶液、補助反応液、検出試薬等の粘性によっては、安定した液輸送が得られない場合がある。
開口部と、隣接する開口部とを隔離する壁の厚みは50μm以上、3mm以下であることが好ましい。壁の厚みが一箇所につき50μm未満の場合は、隔離壁の強度が弱く、組み立て、運搬等の衝撃により、割れ、欠けが発生したり、射出成形で溝を作成する場合、樹脂の充填不良が発生し、設計通りの成型品を得ることが困難な場合がある。壁の厚みが一箇所につき3mmを越える場合は、分析装置そのものが大きくなり、それに必要な分析媒体も大きいものが必要となる。
【0022】
分析媒体と接触させた後の被分析溶液は、分析装置外に漏洩しないように、第二の輸送手段により被分析溶液を吸収又は保持可能な媒体に輸送される。第二の輸送手段における溝も、第一の輸送手段の溝の説明で述べた理由と同じ理由により、開口部の幅は、一箇所につき50μm以上、500μm以下であることが好ましい。溝の開口部の深さは、一箇所につき50μm以上、500μm以下であることが好ましく、開口部と、隣接する開口部とを隔離する壁の厚みは50μm以上、3mm以下であることが好ましい。しかしながら、第一の輸送手段における溝と第二の輸送手段における溝は同じ形状である必要はなく、同じ開口部数である必要もない。
【0023】
更に、第一及び第二の輸送手段における溝状の流路の、被分析溶液の接触する表面が、分析対象成分が容易に固定されない媒体により保護されていることによって、供給されたほとんどの分析対象成分を損失無く分析媒体に輸送することが可能となり、結果的に分析の信頼性と感度が向上する。分析対象成分が容易に固定されない媒体としては、ドデシルスルフォン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール等の界面活性剤、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー、ゼラチン、カゼイン、牛血清アルブミン等のブロッキング試薬等が好ましい。
【0024】
第一及び第二の輸送手段の溝状の通路を構成する液体浸透性を持たない材料が、プラスチック材料の場合、溝状の流路の分析対象成分が含まれている疑いのある被分析溶液の接触する表面に対して、プラズマ処理、コロナ放電処理、アルカリ処理等の公知の表面親水化処理を施すことも有効である。
分析媒体上での反応の有無の検出は、被分析溶液中に分析対象成分が含まれていた場合、反応により想定生成物が形成されるため、反応の有無は想定生成物の有無により検出されることになる。
【0025】
具体例で説明すると、反応物として抗体を反応媒体上に固定しておき、被分析物をこの抗体と特異的に結合する抗原である場合、被分析溶液中に被分析物が存在した場合は、抗原と抗体の特異結合が発生し、抗原抗体対が生成する。これに対し、HRP (Horse raddish Peroxidase) やALP (Alkaline phosphatase) のような酵素で標識した抗体を更に加えると、抗原抗体対に対し標識抗体が特異的に結合し、酵素反応による発色、沈殿等が発生する。一方、被分析溶液中に被分析物が存在しない場合は特異結合が発生しないため、酵素反応による発色、沈殿等の形成もない。また、酵素による標識を利用せず、ポリマーラテックス粒子を用いた標識を利用した場合は、ラテックス粒子による凝集でも、発色、沈殿形成がなされる。これらの発色を目視観測、画像解析することによって反応の有無が検出される。沈殿形成厚みをエリプソメトリーの手法により測定することによって反応の有無が検出可能である。また、ラテックス粒子の代わりに磁性体粒子による標識を利用した場合は、反応媒体として磁気抵抗素子、ホール素子等を用いて磁界の変化を検出することによっても反応の検出は可能である。その他、酵素による電気化学反応を利用して電流を測定する手法も用いることができる。
【0026】
反応媒体と接触した後の被分析溶液を吸収又は保持する媒体としては、セルロース繊維、グラスファイバー、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、コットン繊維等の不織布もしくは濾紙状に加工した媒体の他、高分子吸収体もしくは高分子吸収体を担持した不織布もしくは濾紙状の物が用いられる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を実施例により、本発明を具体的に説明する。
【0028】
【実施例1】
毛細管現象による被分析溶液の輸送実験
(実験1)
図1及び2において、第一の輸送手段2として、開口部の幅が一箇所につき400μm、開口部の深さが一箇所につき400μm、開口部と隣接する開口部とを隔離する壁の厚みが一箇所につき400μmである溝状の通路3を6本有し、第二の輸送手段6として、開口部の幅が一箇所につき400μm、開口部の深さが一箇所につき400μm、開口部と隣接する開口部とを隔離する壁の厚みが一箇所につき400μmである溝状の通路7を6本有する分析装置10を、ポリメチルメタクリレートの彫刻加工により作成した。
窒化珪素で表面を被覆した、厚さ0.6mmの4インチシリコンウエハーに対し、分岐構造を持つアミノアルキルポリジメチルシロキサンを被覆したものを9×11mmに切り出し、反応媒体4に相当する疑似反応媒体とした。疑似反応媒体を装置の所定位置(反応媒体の設置位置)にポリエチレン発泡体を芯材とする両面テープで固定した。
注入孔1より青インクで着色した精製水を50uL 注入し、精製水の挙動を観察した。精製水は注入孔に続く第一の輸送手段2の溝部7を均一に通過し、疑似反応媒体の上を流れ方向に垂直、かつ、ほぼ直線状の先端線を保持して通過した。疑似反応媒体端に到達後、第二の輸送手段6の溝部7を均一に充填した後、コットン不織布(目付け440g/m、厚み1.8mm)からなる吸収媒体8に吸収されることが観察された。
【0029】
(実験例2)
図1及び2において、第一の輸送手段2として、開口部の幅が一箇所につき400μm、開口部の深さが一箇所につき200μm、開口部と隣接する開口部とを隔離する壁の厚みが一箇所につき400μmである溝状の通路3を6本有し、実験例1と同様の第二の輸送手段6を持つ分析装置10を、ポリメチルメタクリレートの彫刻加工により作成した。実験例1と同様に青インクで着色した精製水の流動挙動を観察したところ、実験例1と同様の流動挙動が観察された。
【0030】
(実験例3)
図1及び2において、第一の輸送手段2として、開口部の幅が一箇所につき400μm、開口部の深さが一箇所につき100μm、開口部と隣接する開口部とを隔離する壁の厚みが一箇所につき400μmである溝状の通路3を1本有し、実験例1と同様の第二の輸送手段6を持つ分析装置10を、ポリメチルメタクリレートの彫刻加工により作成した。実験例1と同様に、青インクで着色した精製水の流動挙動を観察したところ実施例1同様の流動挙動が観察された。
【0031】
(実験例4)
実験例1で用いた装置の溝部に対して、酸素分圧8Pa 下で、100W のプラズマを2分間照射した装置を用いて、実験例1と同様に青インクで着色した精製水の流動挙動を観察したところ実験例1と同様の流動挙動が観察された。
【0032】
(実験例5)
実験例1で用いた装置の溝部に対して5wt% のポリビニルアルコール水溶液を塗布後乾燥し、実験例1と同様に青インクで着色した精製水の流動挙動を観察したところ、実験例1と同様の流動挙動が観察された。
【0033】
(実験例6)
実験例1で用いた装置の溝部に対してTriton X100 を塗布後、乾燥し、実験例1と同様に青インクで着色した精製水の流動挙動を観察したところ、実験例1と同様の流動挙動が観察された。
【0034】
【実施例2】
(反応媒体の準備)
窒化珪素で表面を被覆した厚さ0.6mmの4インチのシリコンウエハーに対し、分岐構造を持つアミノアルキルポリジメチルシロキサンを被覆したものを6×11mmに切り出し、その表面に反応物5として20ug/mLのウサギ抗ヒトトランスフェリン抗体(ロックランド社、米国ギルバーツビル、PA)を含む0.1M HEPES緩衝液(pH8.0) を30 u L を滴下し、室温で静置した。次いで、水洗後、風乾して、反応物5が固定された反応媒体4を得た。
【0035】
(分析装置を用いた分析)
上記で得られた反応媒体4を図1に示すように実施例1(実験例1)で用いた分析装置10の所定位置(反応媒体の設置位置)にポリエチレン発泡体を芯材とする両面テープで固定した。
分析対象成分としてヒトトランスフェリン(OEM社、米国トムスリバー、NJ)100ng/mlを含むリン酸緩衝生理食塩水30ulを、10mMのジスレイトール及び0.5%のTritonX−100を含む抽出溶液に添加し、1分間放置して被分析溶液とした。被分析溶液を、注入孔1に30ml添加した。1.5分間放置後、さらに想定生成物が形成されたことを確認するための検出試薬として、5%の100−200Kデキストラン(シグマ社、米国セント・ルイス、MO)、1mg/ml抗ヒトトランスフェリン抗体HRPコンジュゲート(ICN社、米国オーロラ、OH)を含む0.1M MOPSO緩衝液(pH7.5)を注入孔1より30ul添加し、4.5分放置した。この後、100ulの洗浄液1(0.1% Tween20、0.1M TRIZMA pH 8.0)を注入項1より添加し、洗浄した。更に検出試薬として注入孔1にTMB膜用基質システム溶液(シグマ社、米国セント・ルイス、MO)30ulを添加し、5分間後、100ulの洗浄液2(0.05Mリン酸クエン酸緩衝液pH5.0)を注入洗浄した。この結果、反応媒体表面の反応物5であるウサギ抗ヒトトランスフェリン抗体を固定した領域に青色の発色が確認され、抗原抗体反応が成立していることが判断できた。
反応媒体を通過した被分析溶液、洗浄液、検出試薬は第二の輸送手段6によって吸収媒体8に輸送され吸収されたため分析装置10の外への漏出はなかった。
【0036】
【実施例3】
実施例2と同様に反応媒体4および分析装置10を準備した。
分析対象成分であるヒトトランスフェリンを含まないリン酸緩衝生理食塩水30ulを10mMのジスレイトール及び0.5%のTritonX−100を含む溶液に添加し、1分間放置して被分析溶液とした。
この被分析溶液を、実施例2で用いた分析装置10の注入孔1に30ml添加し、1.5分間放置した。さらに検出試薬として5%の100−200Kデキストラン(シグマ社、米国セント・ルイス、MO)、1mg/ml抗ヒトトランスフェリン抗体HRPコンジュゲート(ICN社、米国オーロラ、OH)を含む0.1M MOPSO緩衝液(pH7.5)を注入孔1より30ul添加し4.5分放置した。この後、100ulの洗浄液1(0.1% Tween20、0.1M TRIZMA pH 8.0)を注入し、洗浄した。注入孔1に検出試薬としてTMB膜用基質システム溶液(シグマ社、米国セント・ルイス、MO)30ulを添加し、5分間後、100ulの洗浄液2(0.05M リン酸クエン酸緩衝液pH5.0)を注入洗浄した。
【0037】
この結果、分析媒体表面には発色部は確認されず、ウサギ抗ヒトトランスフェリン抗体を固定したときとほぼ同じ状態の表面が確認された。このことから、本実施例で用いた被分析溶液には分析対象成分であるヒトトランスフェリンが含まれていないため被分析溶液中に分析対象成分が存在しないことが確認された。
反応媒体4を通過した被分析溶液、洗浄液、検出試薬は第二の輸送手段6によって吸収媒体8に輸送され吸収されたため分析装置10の外への漏出はなかった。
【0038】
【発明の効果】
本発明によると、被分析溶液中に分析対象成分が存在するか否かを、定性的又は定量的に判断するために、反応物を固定した分析媒体に被分析溶液中を供給する際に、安定した液供給を実現することができ、分析性の向上をはかることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の反応装置の一例の透過平面図。
【図2】図1のA−A’における断面図。
【図3】図1のB−B’における断面図。
【図4】図1のC−C’における断面図。
【図5】図1のD−D’における断面図。
【図6】図1のE−E’における断面図。
【図7】図1のF−F’における断面図。

Claims (14)

  1. 分析対象成分が含まれている疑いのある被分析溶液中の分析対象成分と反応して、想定生成物を形成する反応物が固定されてなる分析媒体に、分析対象成分が含まれている疑いのある被分析溶液を分析媒体に輸送して両者を接触させ、分析媒体の変化により、前記の被分析溶液中の被分析対象成分を分析する方法であって、前記の被分析溶液を、液体浸透性を持たない溝状の通路より毛細管現象による流れにより前記反応媒体に搬送して反応媒体と接触させることからなる分析方法。
  2. 分析対象成分が含まれている疑いのある被分析溶液中の分析対象成分と反応して、想定生成物を形成する反応物が固定されてなる分析媒体に、分析対象成分が含まれている疑いのある被分析溶液を分析媒体に輸送して両者を接触させ、分析媒体の変化により、前記の被分析溶液中の被分析対象成分を分析する方法であって、前記の被分析溶液を、液体浸透性を持たない溝状の通路より毛細管現象による流れにより前記反応媒体に輸送して反応媒体と接触させ、接触させた後の被分析溶液を、液体浸透性を持たない溝状の通路より毛細管現象による流れにより、液体を保持又は吸収する媒体に搬送して、前記媒体に保持又は吸収させることからなる分析方法。
  3. 分析対象成分が含まれている疑いのある被分析溶液中の分析対象成分と反応して、想定生成物を形成する反応物が固定されてなる分析媒体、及び分析対象成分が含まれている疑いのある被分析溶液を分析媒体に輸送して両者を接触させる溝状の流路を備えた輸送手段からなり、前記溝状の流路は、液体浸透性を持たない材料により構成され、被分析溶液を毛細管現象により被分析溶液を搬送するものである分析装置。
  4. 溝状の流路が、請求項3記載の想定生成物を形成する反応物が固定されてなる分析媒体に対し、一箇所以上の開口部を持つ請求項3記載の分析装置。
  5. 開口部の幅が、一箇所につき50μm以上、500μm以下である請求項4記載の分析装置。
  6. 開口部の深さが、一箇所につき50μm以上、500μm以下である請求項4又は5記載の分析装置。
  7. 開口部と隣接する開口部とを隔離する壁の厚みが一箇所につき50μm以上、3mm以下であることを特徴とする請求項4記載の分析装置。
  8. 溝状の流路において、分析対象成分が含まれている疑いのある被分析溶液の接触する表面は、分析対象成分が容易に固定されない媒体により保護されている請求項3記載の分析装置。
  9. 分析対象成分が含まれている疑いのある被分析溶液中の分析対象成分と反応して、想定生成物を形成する反応物が固定されてなる分析媒体、分析対象成分が含まれている疑いのある被分析溶液を分析媒体に輸送して両者を接触させる溝状の流路を備えた第一の輸送手段、分析を終了した前記の被分析溶液が分析装置外に漏洩しないように吸収または保持する媒体、分析媒体から前記の吸収または保持する媒体に対し、分析を終了した被分析溶液を輸送する溝状の流路を備えた第二の輸送手段からなり、第一及び第二の輸送手段に設けられた溝状の流路は、液体浸透性を持たない材料により構成され、被分析溶液を毛細管現象により被分析溶液を搬送するものである分析装置。
  10. 第一及び第二の輸送手段に設けられた溝状の流路が、想定生成物を形成する反応物が固定されてなる分析媒体に対し、それぞれ一箇所以上の開口部を持つ請求項9記載の分析装置。
  11. 開口部の幅が、一箇所につき50μm以上、500μm以下である請求項10記載の分析装置。
  12. 開口部の深さが、一箇所につき50μm以上、500μm以下である請求項10又は11記載の分析装置。
  13. 開口部と隣接する開口部とを隔離する壁の厚みが一箇所につき50μm以上、3mm以下であることを特徴とする請求項10記載の分析装置。
  14. 請求項9記載の液体浸透性を持たない材料により構成された溝状の流路の分析対象成分が含まれている疑いのある被分析溶液の接触する表面は、分析対象成分が容易に固定されない媒体により被覆されていることを特徴とする請求項9記載の分析装置。
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