JP2004149829A - 鉄粉の製造方法および土壌浄化剤 - Google Patents

鉄粉の製造方法および土壌浄化剤 Download PDF

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弘 中西
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幸夫 三島
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正明 清水
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裕泰 吉川
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Abstract

【課題】大規模な製造設備を必要とせず且つ高生産性で製造することが可能である上に、土壌浄化剤として使用した場合には、有機塩素系化合物の分解効率に優れると共に新たに環境を汚染することがない鉄粉を極めて安価に製造する。
【解決手段】製鋼用転炉から精錬中に発生する排ガスを集塵して、当該排ガス中から製鋼ダスト22を回収し、回収した製鋼ダストを磁選工程23により選別して磁着物24と非磁着物25とに分離し、次いで、磁着物を水により洗浄26して付着物を除去することにより、製鋼ダストから鉄粉27を製造する。この場合、製鋼ダストは、湿式集塵機により回収されるスラリー状集塵水から、シックナーの上流側に設置された粗粒分離機を用いて回収した粗粒ダスト19であること、鉄粉の金属鉄分を70質量%以上とすること、あるいは、得られた鉄粉27を水中で保管することが好ましい。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、鉄粉の製造方法および土壌浄化剤、特に、有機塩素系化合物や6価クロム等により汚染された土壌の浄化剤に好適な鉄粉を製造する方法およびこの鉄粉を原料とする土壌浄化剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、鉄粉を工業的に製造する方法としては、固体状態の鉄鉱石をHガスやCOガス等の還元ガスで還元する方法(還元法)、低級な鉄粉や鉄スクラップとCOガスとを反応させて鉄カルボニルを造り、液化した鉄カルボニルを噴霧・分解して鉄粉を製造する方法(カルボニル法)、水や不活性ガス等のジェットにより溶鉄を機械的に粉化する方法(アトマイズ法)、回転する皿上の溶鉄を遠心力によって飛散させて粉化する方法(遠心噴霧法)、固体状態の鉄を数段の破砕機によって機械的に粉砕して粉化する方法(粉砕法)、および、陰極析出物が脆い板状となる条件で電解し、これを機械的手段によって粉化する方法(電解法)が一般的に行われている。(例えば、非特許文献1参照)
【0003】
これらの方法によって製造された鉄粉は、鉄分の純度が高く、粉末冶金や試薬等の種々の用途に支障なく利用することができるが、一方、大規模な製造設備が必要である上に製造工程が多岐に亘るため、製造コストが高いと云う問題点があった。
【0004】
ところで、トリクロロエチレン等の有機塩素系化合物は、優れた溶解力を持つ脱脂溶剤として工業的洗浄工程に広く使用されてきたが、使用後に排出されたあるいは投棄された有機塩素系化合物に起因する土壌あるいは地下水の汚染が深刻な社会的問題となっている。また、このような自然環境の汚染は、メッキ工場等の工場跡に残された6価クロムによっても同様に起こっていることは、広く知られている。
【0005】
このような状況下において、有機塩素系化合物や6価クロムに汚染された土壌あるいは地下水を、鉄粉を用いて浄化する方法が種々提案されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、有機塩素系化合物や6価クロム等の有害物質で汚染された土壌内にボーリング孔を穿孔した後、ボーリング孔に圧縮空気および鉄粉を吹き込んで地下にフラクチャーを発生させ、鉄粉を含有する鉄粉分散層を形成し、この鉄粉分散層により土壌中および地下水中の有害物質を無害化する方法が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、有機塩素系化合物で汚染された土壌に鉄粉を添加・混合することにより、前記有機塩素化合物を分解して土壌を浄化する土壌の無害化処理方法が開示されている。
【0008】
さらに、特許文献3には、10μm未満の平均粒径を有する球状の鉄微粒子が水中に分散されている鉄微粒子スラリーを含む土壌浄化剤を、汚染された土壌に浸透させることによって、土壌の浄化を行う方法が開示されている。
【0009】
【非特許文献1】
金属便覧、日本金属学会編、改訂4版、p1356−1365
【特許文献1】
特開平10−71386号公報
【特許文献2】
特開平11−235577号公報
【特許文献3】
特開2001−198567号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1および2に記載された方法において用いられる鉄粉は、前述した還元法やアトマイズ法あるいは粉砕法等によって製造された鉄粉(以下、これらの鉄粉を「製造鉄粉」と称す)であり、鉄粉の製造コストが高く、土壌浄化コストの上昇が余儀なくされていた。
【0011】
これに対して特許文献3には、鉄粉として、転炉を用いた鉄精錬の際の副産物である製鋼ダストを利用することにより、鉄粉のコスト削減を図れる旨が記載されている。しかし、特許文献3に記載された方法で用いられる鉄粉は、平均粒径が10μm未満の鉄微粒子であり、転炉精錬の際に回収された製鋼ダストを粗粒分別した後、シックナーで濃縮化し、最終的にフィルタープレスにより微粒子のみを選別することによって当該鉄微粒子を得ているため、上記製造鉄粉と比較して経済的なメリットが少ない。
【0012】
また、10μm未満の微細な鉄粉は、表面が酸化され易く、鉄粉の表面が酸化されると有機塩素系化合物の分解効率が低下するため、鉄粉の酸化を防止するためにスラリー化した状態で保管、運搬する必要があり、保管および輸送のコストが嵩むと云う問題がある。
【0013】
さらに、製鋼ダストには、造滓剤として転炉内に添加した生石灰や蛍石に起因するCaOやFも含まれており、特許文献3に開示された微粒子は、製鋼ダスト中の微粒子を集めただけで、精製・洗浄されていないため、製鋼ダスト中の酸化鉄粉やF等が微粒子中に含有される。F等の溶出量は土壌環境基準があり、洗浄されていない製鋼ダストをそのまま土壌に浸透させた場合には、新たな環境汚染を招く恐れがある。しかも、精製されていないため、金属鉄分の含有量が低く、土壌浄化能力が高いとは云い難く、土壌浄化剤として大量の製鋼ダストを使用する必要がある。
【0014】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、大規模な製造設備を必要とせず且つ高生産性で製造することが可能である上に、土壌浄化剤として使用した場合には、有機塩素系化合物の分解効率に優れると共に新たに環境を汚染することがない、土壌浄化剤に最適な鉄粉を極めて安価に製造する方法、および、製造した鉄粉を原料とする土壌浄化剤を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための第1の発明に係る鉄粉の製造方法は、製鋼用転炉から精錬中に発生する排ガスを集塵して、当該排ガス中から製鋼ダストを回収し、回収した製鋼ダストを磁着物と非磁着物とに分離し、次いで、当該磁着物の付着物を除去することにより、製鋼ダストから鉄粉を回収することに特徴を有するものである。
【0016】
第2の発明に係る鉄粉の製造方法は、第1の発明において、前記製鋼ダストは、湿式集塵機により回収されるスラリー状集塵水から、シックナーの上流側に設置された粗粒分離機を用いて回収した粗粒ダストであることに特徴を有するものである。
【0017】
第3の発明に係る鉄粉の製造方法は、第1または第2の発明において、前記鉄粉は、金属鉄分を70質量%以上含有することに特徴を有するものである。
【0018】
第4の発明に係る鉄粉の製造方法は、第1から第3の発明の何れかにおいて、製鋼ダストから回収した鉄粉を水中で保管することに特徴を有するものである。
【0019】
第5の発明に係る土壌浄化剤は、汚染された土壌を浄化するための土壌浄化剤であって、第1から第4の発明の何れかに記載の方法によって製造された鉄粉からなる、若しくは、当該鉄粉を主原料とすることに特徴を有するものである。
【0020】
この発明においては、主に土壌浄化剤として用いられる鉄粉を、転炉排ガスから回収される製鋼ダストから製造する。そのため、鉄粉を製造するための設備、例えば、粉砕設備やアトマイズ設備等が不要となるので、極めて安価に鉄粉を製造することができる。
【0021】
そして、鉄粉を製鋼ダストから製造する際に、製鋼ダストを磁着物、すなわち、鉄粉と非磁着物とに分離した上で、さらに、鉄粉を洗浄して鉄粉の付着物を洗浄・除去するので、非磁性の酸化鉄粉や造滓剤として転炉内に添加したCaO分およびF分等の含有量の少ない鉄粉を得ることができる。その結果、土壌浄化剤として使用した場合には、金属鉄分濃度が高いため、有機塩素系化合物の分解効率に優れ、また、F分等の含有量が極めて少ないため、新たに土壌を汚染することがない。
【0022】
また、この発明においては、製鋼ダストから製造した鉄粉を水に浸して、空気と触れないように水中で保管するので、鉄粉の酸化を長期間に亘って容易に防止することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の鉄粉の製造方法および土壌浄化剤の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1は、製鋼ダストを回収するための湿式集塵機を備えた製鋼用転炉設備の一例を示す概略図、図2は、図1に示す転炉設備を用いて転炉排ガスから製鋼ダストを回収し、回収した製鋼ダストから鉄粉を製造するこの発明方法を示す概略工程図である。
【0025】
図1において、溶銑2を収容した転炉1の内部には、上方から上吹きランス4が挿入され、この上吹きランス4から酸素ガスが溶銑2に吹き付けられて、溶銑2の脱炭吹錬や溶銑2の脱燐処理が行われる。溶銑2の脱炭吹錬および脱燐処理により、炉内からCOガスを主体とする排ガスが発生する。この排ガス中には、溶銑2のスプラッシュや溶銑2が脱炭精錬された溶鋼のスプラッシュ、炉内のスラグ3のスプラッシュ、さらには、場合により熱補償のために添加した炭材(コークスや石炭等)がダストとなって混入する。
【0026】
転炉1の上方には、排ガスの流路となる煙道5が設置され、煙道5の後段には、排ガス中のダストを除塵するための一次集塵機7および二次集塵機8からなる湿式集塵機17が配置されている。この場合、集塵用用水は、ポンプ15を介して貯水池14から二次集塵機8に供給され、次いで、二次集塵機8で回収された集塵水がポンプ16を介して一次集塵機7に供給されるようになっている。一次集塵機7から排出される集塵水は、粗粒分離機12を経由してシックナー13に至り、シックナー13で浄化された後に貯水池14に循環している。
【0027】
これらの集塵機の後段には、電動機(図示せず)により駆動される誘引送風機11が配置されており、誘引送風機11によって転炉1内の発生ガスが吸引される。吸引された排ガスは、誘引送風機11の後段に配置される煙突(図示せず)から放散されるか若しくはガスホルダー(図示せず)内に回収される。
【0028】
図中、9は、二次集塵機8として設置したPAベンチュリーのPAダンパー、10は、排ガス流量を調整するための吸引ファンダンパーである。また、煙道5には、造滓剤としての生石灰および蛍石や、合金源としてのマンガン鉱石等の副原料を転炉1内に投入添加するための副原料投入装置6が設置されている。
【0029】
このような転炉設備を用い、図2に示す工程に基づいて、溶銑2の精錬中に転炉1から発生する排ガス中から製鋼ダストを回収する。すなわち、図2に示すように、一次集塵機7および二次集塵機8からなる湿式集塵機17から排出された集塵水18を粗粒分離機12に導き、集塵水18中の粗粒ダスト19、例えば、直径が0.02mm以上のダストを回収する。粗粒ダスト19の粒径を0.02mm以上とした場合には、粗粒ダスト19中の金属鉄分を80質量%以上に確保することができる。
【0030】
次いで、粗粒ダスト19が回収された後の残液20をシックナー13に送り、シックナー13内で微粒ダスト21を沈殿させ、微粒ダスト21を回収する。微粒ダスト21中の金属鉄分は20〜30質量%程度であり、微粒ダスト21は、酸化物が主体である。この発明では、粗粒ダスト19および微粒ダスト21をまとめて製鋼ダスト22と称する。
【0031】
このようにして回収した製鋼ダスト22を磁選工程23により選別して、磁着物24と非磁着物25とに分別する。この磁選工程23に好適な装置の構成を図3に示す。図3において、攪拌槽32とホッパー37とはシュート38により連結されており、攪拌槽32には、その外周に電磁石33が配置され、その内部には電動機35で回転する攪拌翼36が配置され、その底部には排出弁34が設置されている。
【0032】
ホッパー37内の製鋼ダスト22を、シュート38を介して攪拌槽32内に供給し、所定量の工業用水等の洗浄用水を攪拌槽32内に供給すると共に電磁石33に通電し、攪拌翼36を回転させて攪拌槽32内を攪拌する。この攪拌によって、製鋼ダスト22中の鉄粉等の強磁性体は、電磁石33に付着し、一方、スラグ3に起因する非磁性の酸化物成分および炭材に起因する黒鉛等の炭素質成分は、洗浄用水中に懸濁する。所定時間攪拌した後に排出弁34を開き、洗浄用水を排出させる。製鋼ダスト22中の磁着物24は、電磁石33に付着して攪拌槽32内に残留し、一方、製鋼ダスト22中の非磁着物25は、攪拌槽32から排出される。このようにして、製鋼ダスト22を磁着物24と非磁着物25とに磁力選別する。
【0033】
次いで、磁着物24を洗浄工程26により洗浄する。この洗浄工程26も図3に示す攪拌槽32で行うことができる。すなわち、攪拌槽32から非磁着物25が含まれる洗浄用水を排出した後、排出弁34を閉じ、再度、洗浄用水を攪拌槽32内に供給し、所定量の洗浄用水を攪拌槽32内に貯める。そして、電磁石33への通電を断ち切って攪拌翼36を回転させ、攪拌して洗浄する。
【0034】
図4は、洗浄効果を確認するために、回収したままの製鋼ダスト22を攪拌槽32内に装入して洗浄した際に測定した、洗浄用水の電導度およびpHの経時変化を示す図である。図4からも明らかなように、洗浄時間を3分間以上とすることで、電導度およびpHは略一定となっており、3分間以上洗浄することにより、製鋼ダスト22に付着していた付着物の大部分は除去されることが分かる。電導度およびpHが上昇するのは、製鋼ダスト22に付着していたCaO等が洗浄用水中に溶け出すためである。
【0035】
従って、3分間以上の所定時間の期間、攪拌しつつ洗浄し、次いで、電磁石33に通電し、洗浄された磁着物24を電磁石33に再度付着させた後、排出弁34を開き、洗浄用水を排出させる。洗浄用水が排出した後、排出弁34の直下に保管用容器(図示せず)を設置し、次いで、電磁石33への通電を断ち切る。電磁石33への通電を断ち切ることにより、電磁石33に付着していた磁着物24、すなわち、鉄粉27は、攪拌槽32内から自由落下して保管用容器内に収容される。このようにして、鉄粉27を製鋼ダスト22から回収し、製造することができる。
【0036】
表1および図5には、製鋼ダスト22として粗粒ダスト19のみを使用してこの発明方法を実施した際の、磁選工程23を実施する前の粗粒ダスト19中に混入していた非磁着物の混入量と、洗浄工程26を実施した後の粗粒ダスト中、すなわち、鉄粉27中に混入していた非磁着物の混入量とを比較して示す。なお、表1および図5では、粗粒ダストの粒度別に非磁着物の混入量を示しており、粗粒ダストでは粒径が125μm〜250μmの範囲のダストが多いため、この範囲の混入量が相対的に多くなっている。
【0037】
【表1】
Figure 2004149829
【0038】
表1および図5からも明らかなように、粗粒分離機12で分離されたときには、合計で8.7質量%も混入していた非磁着物が、磁選工程23および洗浄工程26を経ることにより、合計で1.3質量%まで減少していることが分かる。すなわち、磁選工程23および洗浄工程26を経ることにより、非磁着物の混入量の極めて少ない鉄粉27が、製造可能であることが分かる。
【0039】
表2は、磁選工程前の粗粒ダスト19、および、洗浄工程後の粗粒ダスト、すなわち、鉄粉27を化学分析して、両者の付着物の詳細を調査した結果である。表2からも明らかなように、粗粒分離機12で分離されたままの粗粒ダスト19では、転炉1内のスラグ3および炭材に起因する不純物が多く含まれていることが分かる。特に、環境上問題となるF分が345mg/Lとかなり多く含まれることが分かった。これに対して、磁選工程23および洗浄工程26を経た粗粒ダスト、すなわち、鉄粉27では、これらの付着物は大幅に低減し、特に、F分は2mg/L以下まで低下した。また、磁選工程23および洗浄工程26を施すことにより金属鉄分は90質量%を確保可能であることが分かった。
【0040】
【表2】
Figure 2004149829
【0041】
なお、前述したように、微粒ダスト21中の金属鉄分は、20〜30質量%程度であり、製鋼ダスト22から鉄分27を製造する場合、金属鉄分の少ない微粉ダスト21を用いずに、粗粒ダスト19のみから製造することが好ましい。粗粒ダスト19中の金属鉄分は多く、効率良く鉄粉27を回収することができる。
【0042】
このようにして得られた鉄粉27を保管する際には、保管用容器内で鉄粉27を水に浸した状態で保管することが好ましい。図6は、保管用容器内に鉄粉27を収容し、容器内の水分量を変化させて鉄粉27の酸化状況を160日間に亘って調査した結果を示す図である。保管当初の鉄粉27中の金属鉄分は、89質量%に調整している。この場合、保管用容器内の水分量が8質量%以上の場合には、鉄粉27は、全量水中に埋没した状態であり、一方、水分量が6質量%以下の場合には、表面側の鉄粉27は、空気と水とが共存する状態であった。
【0043】
図6に示すように、保管用容器内の水分量が8質量%以上の場合には、鉄粉27をほとんど酸化させずに160日間の長期に亘って保管することができた。一方、水分が6質量%以下の場合には、鉄粉27は酸化され、160日間で金属鉄分は最大で15質量%も減少していた。これは、水分量が8質量%以上の場合には、保持容器内の鉄粉27は水に浸されており、すなわち、鉄粉27と鉄粉27との間隙が水で満たされ、この間隙から空気が完全に排出され、鉄粉27が空気と触れることがないため、酸化が抑制されたためである。
【0044】
製鋼ダスト22からこのようにして製造した鉄粉27は、有機塩素系化合物や6価クロム等により汚染された土壌および地下水の浄化剤として好適である。但し、サイズが大きなものは、比表面積が小さく土壌浄化剤としての効果が少ないので、例えば、2mm程度以下に整粒することが好ましい。2mmを超えるものが少ない場合には整粒する必要はない。
【0045】
鉄粉27によって有機塩素系化合物が分解されるメカニズムは、以下の通りである。
【0046】
水分の存在下で金属鉄(零価の鉄)粒子の表面では、アノードとカソードとの分極が生じ、アノードでは、Fe→Fe2+、カソードでは、RCl+HO→RH+Cl +OH のような酸化還元反応的な脱塩素反応が生じる。ここで、RClは、有機塩素系化合物、RHは、炭化水素である。例えば、有機塩素系化合物がトリクロロエチレン(「TriCE」とも記す)の場合には、下記の(1)式のような脱塩素反応が系全体で生じる。6価クロムも同様に、鉄の還元作用(Cr6++3Fe2+→Cr3++3Fe3+)により3価クロムに還元される。
【0047】
HCl+3Fe+3HO→C+3Fe2++3Cl+3OH−−−(1)
【0048】
図7は、金属鉄分を59質量%から99質量%の範囲で変化させた鉄粉を土壌浄化剤として用いて、トリクロロエチレンの分解速度を調査した結果を示す図である。図7からも明らかなように、鉄粉中の金属鉄分が70質量%未満ではトリクロロエチレンの分解速度は遅いが、鉄粉中の金属鉄分が70質量%以上になると、トリクロロエチレンの分解速度は高位に安定する。
【0049】
この発明により得られる鉄粉27は、磁選工程23および洗浄工程26が施されているため、鉄粉27中の金属鉄分は、90質量%にも達し、従って、極めて効果の高い土壌浄化剤として用いることができる。そして、製鋼精錬工程で発生するダストから製造しているので、製造鉄粉に比べて極めて安価であると云う利点を有している。さらに、洗浄工程26により付着物を除去しているので、土壌浄化剤として使用しても新たな環境汚染を生じることがない。因みに、表3に、表2に示した2種類の粗粒ダストの溶出試験結果を示す。
【0050】
表3からも明らかなように、磁選工程23および洗浄工程26を施したこの発明の鉄粉27を用いた場合には、Fの土壌環境基準(0.8mg/L以下)を満足することが分かる。
【0051】
【表3】
Figure 2004149829
【0052】
図8は、この発明により得られた、金属鉄分が88質量%の鉄粉27を用いてトリクロロエチレンおよびテトラクロロエチレン(「TeCE」とも記す)の分解試験を行ったときの、経過時間と分解率との関係を調査した結果の一例を示す図である。図8から明らかなように、この発明により得られた鉄粉27によって、336時間でほぼ全量のトリクロロエチレンおよびテトラクロロエチレンを分解できることが分かった。
【0053】
一方、磁選工程23で分離された非磁着物25中には、非磁性の酸化鉄が含有されている。この場合の酸化鉄の組成は、Fe(密度:5.24g/cm )であり、その他の非磁着物がスラグ3から持ち来された物質や添加した炭材を起源とすることから、微量元素を除くと、非磁着物25中では酸化鉄の密度が最も大きくなる。従って、比重差を利用した比重選別工程28により、非磁着物25から酸化鉄を高比重物29として回収することができる。
【0054】
高比重物29として回収した酸化鉄を、洗浄工程30で洗浄して付着物を除去する。この洗浄工程30は、前述した図3と同様の装置を用いて行うことができる。洗浄後、洗浄水を除去すれば、付着物の少ない酸化鉄粉31を得ることができる。
【0055】
なお、この発明は、上記説明の範囲に限定されるものではなく、種々変更することが可能である。例えば、製鋼ダスト22を湿式集塵機で回収しているが、湿式集塵機に代わって乾式集塵機を用いて回収してもよい。要は、溶銑の転炉精錬中に発生するダストを回収すればよく、回収するための装置はどのようであってもよい。同様に、磁選工程23や比重選別工程28で用いる装置も、所定の目的を達成することが可能であるならば、どのようであってもよい。
【0056】
【発明の効果】
この発明によれば、土壌浄化剤として好適な鉄粉を、大規模な製造設備を必要とせず且つ高生産性で極めて安価に製鋼ダストから製造することができる。そして、得られた鉄粉を土壌浄化剤として使用した場合には、有機塩素系化合物の分解効率に優れると共に新たに環境を汚染することがなく、自然環境上並びに工業上極めて有益な効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】製鋼ダストを回収するための湿式集塵機を備えた製鋼用転炉設備の一例を示す概略図である。
【図2】転炉排ガスから製鋼ダストを回収し、回収した製鋼ダストから鉄粉を製造するこの発明方法を示す概略工程図である。
【図3】この発明の磁選工程に好適な装置の構成を示す図である。
【図4】洗浄用水の電導度およびpHの経時変化を示す図である。
【図5】磁選を実施する前の粗粒ダスト中の非磁着物混入量と、洗浄した後の粗粒ダスト中の非磁着物混入量とを比較して示す図である。
【図6】容器内の水分量を変化させて収容した鉄粉の酸化状況を160日間に亘って調査した結果を示す図である。
【図7】金属鉄分を変化させた鉄粉を土壌浄化剤として用いて、トリクロロエチレンの分解速度を調査した結果を示す図である。
【図8】この発明により得られた鉄粉を用いてトリクロロエチレンおよびテトラクロロエチレンの分解試験を行ったときの試験結果を示す図である。
【符号の説明】
1 転炉
2 溶銑
3 スラグ
4 上吹きランス
5 煙道
6 副原料投入装置
7 一次集塵機
8 二次集塵機
9 PAダンパー
10 吸引ファンダンパー
11 誘引送風機
12 粗粒分離機
13 シックナー
14 貯水池
15 ポンプ
16 ポンプ
17 湿式集塵機
18 集塵水
19 粗粒ダスト
20 残液
21 微粒ダスト
22 製鋼ダスト
23 磁選工程
24 磁着物
25 非磁着物
26 洗浄工程
27 鉄粉
28 比重選別工程
29 高比重物
30 洗浄工程
31 酸化鉄粉
32 攪拌槽
33 電磁石
34 排出弁
35 電動機
36 攪拌翼
37 ホッパー
38 シュート

Claims (5)

  1. 製鋼用転炉から精錬中に発生する排ガスを集塵して、当該排ガス中から製鋼ダストを回収し、回収した製鋼ダストを磁着物と非磁着物とに分離し、次いで、当該磁着物の付着物を除去することにより、製鋼ダストから鉄粉を回収することを特徴とする、鉄粉の製造方法。
  2. 前記製鋼ダストは、湿式集塵機により回収されるスラリー状集塵水から、シックナーの上流側に設置された粗粒分離機を用いて回収した粗粒ダストであることを特徴とする、請求項1に記載の鉄粉の製造方法。
  3. 前記鉄粉は、金属鉄分を70質量%以上含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の鉄粉の製造方法。
  4. 製鋼ダストから回収した鉄粉を水中で保管することを特徴とする、請求項1から3の何れか1つに記載の鉄粉の製造方法。
  5. 汚染された土壌を浄化するための土壌浄化剤であって、請求項1から4の何れか1つに記載の方法によって製造された鉄粉からなる、若しくは、当該鉄粉を主原料とすることを特徴とする土壌浄化剤。
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