JP2004161945A - 水性塗工材およびそれからなる皮膜形成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】特定のカルボキシル基を含有する自己乳化性水性ポリウレタン樹脂と、特定の多官能ポリカルボジイミド化合物の水分散体からなる、可塑剤、有機溶剤を含有しないことを特徴とした水性塗工材を用いる。
【効果】本発明に係わる水性塗工材により得られた架橋皮膜は、従来の水性塗工材から得られる皮膜では困難であった、可塑剤および有機溶剤を系内に含有すること無しに、皮膜の耐溶剤性、風合いと機械物性(引っ張り強度、伸び、永久伸び)の何れの物性にも優れ、かつ塗工材の貯蔵安定性、皮膜の経時安定性についても優れた性能を発揮する。
【選択図】なし
Description
【産業上の利用分野】
本発明は自己乳化性水性ポリウレタン樹脂を用いた水性塗工材に関する。更に詳しくは、耐溶剤性、引張り強度、伸び、および風合いに優れた皮膜形成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、水性樹脂を用いた水性塗工材の検討が活発に行われている。繊維、皮革材料等の処理を行う分野においても例外ではなく、塗工材の従来の要求性能であった、基体材料の保護、美観向上および皮膜の伸び、強度、風合いの付与以外にも、基体材料処理の作業における、引火性、臭気等の環境の改善、樹脂粘度の低下による作業性向上、廃溶剤等産業廃棄物の低減等の改善が求められている。上記の問題を解決する手段として、水性塗工材の使用は有望であると言える。
【0003】
上記の問題を解決する材料として、天然ゴム、ニトリルゴム、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、アクリル樹脂およびエチレン・酢酸ビニル樹脂等の水分散体等が挙げられるが、天然ゴムはカブレの問題から、脱蛋白等の複雑でコストのかかる工程をとる必要がある問題、天然物であるが故、市場の価格変動が起き易いといった問題があった。
【0004】
ニトリルゴムは皮膜の永久伸びが高く、風合いに劣り、さらには加熱時、長期保存時における樹脂の黄変性に難点があった。
【0005】
塩化ビニル、ビニリデン樹脂は、エンドクリン対象物質である可塑剤を多量に使用しなければ風合いを出すことが困難な点や、焼却時のダイオキシン発生の面で問題があった。
【0006】
アクリル樹脂、およびエチレン・酢酸ビニル樹脂、エチレン・プロピレン樹脂、エチレン・ブテン樹脂に代表されるポリオレフィン樹脂は、上記のこれらの問題は少ない反面、皮膜の伸びと強度、風合を両立させることが困難な点、および永久伸びが高く、天然ゴムのように伸縮性が高く要求されるような用途に用いるには問題があった。
【0007】
更には、上記に代表される従来の樹脂からなる皮膜は、所望の引っ張り物性を発現すべく、加硫剤、可塑剤等を添加させるが、例えば食品、人体、特に臓器、粘膜に接触するような用途には安全性の面から、使用が制限される、あるいは皮膜に特別な処理をして使用する必要があった。
【0008】
これらの材料に対し、水性ポリウレタン樹脂から形成された皮膜は、取扱い時の引火爆発性が低く、生体適合性が高く、風合いに優れた材料として知られている。しかしながら、従来の水性ポリウレタン樹脂は、油溶性のポリウレタン樹脂に界面活性剤と水の存在下、高せん断攪拌条件の下で強制乳化したものが大半で、粒子径がミクロンオーダーで大きく、得られた皮膜は融着粒子間の隙間面積が大きいために不均一であり、引張り強度、伸びが溶剤可溶型のそれと比較した場合劣っていた。
【0009】
これに対し、分子中にイオン解離性の原子団を導入し、水中に分散安定化させた自己乳化性水性ポリウレタン樹脂は、上記強制乳化品と比較してサブミクロンオーダーーの微粒子を得ることが可能な点で、均一性の高い皮膜が得られ、高い引っ張り強度、伸度の物性を発現することが可能な点、皮膜表面に経時で界面活性剤等がブリードし、耐水性に影響することがない点、等多くの長所を有することが知られている。
【0010】
ところが従来の自己乳化性水性ポリウレタン樹脂は、皮膜が有機溶剤、特にエステル系、ケトン系、芳香族系、アルコール系溶剤等の比較的溶解能力の高い溶剤と接触した際に、皮膜の溶出、膨潤現象が起こり、当初の物性を保持することが困難であった。また、これらの問題を解決する手段として、自己乳化性水性ポリウレタン樹脂中に含有する官能基と、架橋剤との反応による2液硬化により皮膜を形成する方法、および分子末端にイソシアネート基を有するポリマーを、熱解離性化合物で保護したブロックイソシアネートポリマーを基体に塗工、乾燥工程中でブロック剤を解離させ、架橋皮膜を形成させることにより、耐溶剤性を向上させる技術、更には粒子内相互浸入網目構造、粒子内架橋構造をとらせる技術が従来から公知となっているが、耐溶剤性はある程度改良される反面、皮膜の弾性率、永久伸びも著しく向上するので、風合いおよび伸縮性が要求される用途に用いることが困難であった。
【0011】
また従来の2液硬化タイプは、100℃・30分以下の低温短時間硬化条件で上記の物性を満足するような架橋剤を用いた場合、塗工材の貯蔵安定性が悪く、一方、貯蔵安定性の良好な架橋剤を使用した場合、低温短時間硬化下で所望の物性を発現させることが困難であった。ブロックイソシアネートポリマータイプのものについても同様に、上記のような乾燥条件で熱解離するブロック剤は、塗工材の安定性に問題があった。
【0012】
架橋皮膜の風合いを改善すべく、樹脂、および塗工材中に有機溶剤および/または可塑剤を配合し、風合いを出すことが用いられているが、経時でこれらの添加物が揮発するために起こる、皮膜引張り物性変化、および風合いが悪化する欠点があった。
【0013】
特開平6−10203は、油中水型ポリウレタン樹脂エマルション樹脂を用い、作業用手袋を製造する方法に関する記載であるが、得られた手袋は透湿性、風合い、耐薬品性などに優れるものの、手袋製造時に多量の有機溶剤を含有した樹脂を使用するため、廃溶剤、および溶剤蒸気の処理設備を必要とする点に問題があった。
【0014】
特開平8−283522は、不飽和ニトリルと共役ジエンとの共重合体ラテックスと、ソープフリータイプのポリウレタン樹脂エマルションとを含んでなる浸漬成型用組成物に関する記載であるが、得られた皮膜の耐溶剤性がまだ不十分な点、および皮膜強度が低いといった問題があった。
【0015】
特開平9−235508は、分子中にカルボキシル基を有する樹脂と、ポリカルボジイミド化合物を配合してなる水性プレコートメタル用塗料に関する記載であるが、電気部品、建材等に塗装し皮膜を形成させる用途の為、得られた皮膜は耐薬品性、耐水性等に優れるものの、硬度、弾性率および永久伸びが高く、皮膜の伸び、風合い、伸縮性が要求される様な用途に使用することは困難であった。
【0016】
特開平2001−11151は、親水性変成ポリカルボジイミド化合物とカルボキシル基含有水性樹脂組成物とを含む熱硬化性水性塗料組成物に関する記載であるが、本発明においても、得られた塗膜の耐水性および密着性には優れるものの、自動車用車体、部品などを想定した塗料組成物、皮膜であるので、この場合においても伸び、風合い、伸縮性が要求されるような用途に使用することは困難であった。
【特許文献1】
特開平6−10203号公報
【特許文献2】
特開平8−283522号公報
【特許文献3】
特開平9−235508号公報
【特許文献4】
特開平2001−11151号公報
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
上記した従来技術の問題点に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、皮膜の耐溶剤性、風合い、機械物性(伸び、強度、永久伸び等)および貯蔵安定性に優れた水性塗工材を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記問題に対し鋭意検討した結果、特定の、カルボキシル基を含有する自己乳化性水性ポリウレタン樹脂と、特定の多官能ポリカルボジイミド化合物の水分散体からなる、可塑剤、有機溶剤を含まない水性塗工材を用い、形成させた皮膜が、上記の問題を解決することが可能であるという知見を得て本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の[1]〜[10]に記載した事項により特定される。
【0019】
[1] 基体上に塗布し、皮膜を形成し得る水性塗工材であって、該塗工材は、カルボキシル基含有の、1分子中にカルボジイミド基を2個以上有する多官能カルボジイミド化合物の水分散体からなり、可塑剤、有機溶剤を含有しないことを特徴とする水性塗工材。
【0020】
[2] 自己乳化性水性ポリウレタン樹脂中に含まれるカルボキシル基は、沸点が150℃以下のアミン化合物で中和されていることを特徴とする、[1]記載の水性塗工材。
【0021】
[3] 前記自己乳化性水性ポリウレタン樹脂が、
▲1▼ 4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネートおよびその水素添加物、p−フェニレンジイソシアネートおよびその水素添加物、p−テトラメチルキシリレンジイソシアネートおよびその水素添加物、ヘキサメチレンジイソシアネート、トランス,トランス−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シス,シス−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート およびこれらの化合物のカルボジイミド変成化合物からなる群から選択される、多官能イソシアネート化合物を、全ポリソシアネート化合物100重量部に対し90重量部以上
▲2▼ 数平均分子量500〜3000、融点40℃以下の直鎖構造の活性水素化合物
▲3▼ 数平均分子量が500未満で、かつ、分子中にカルボキシル基を有さない平均官能基数が2個である活性水素化合物
▲4▼ 数平均分子量が500未満の、分子中にカルボキシル基を1個以上有する活性水素化合物
との反応により得たイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを、鎖伸長剤で高分子量化、水分散体としたものであり、かつウレタンプレポリマー中の▲2▼と▲3▼の重量比が、90/10〜99/1であることを特徴とする、[1]または[2]記載の水性塗工材。
[4] [1]〜[3]のいずれかに記載の水性塗工材から形成された皮膜のフィルム物性が、
破断時伸び率 :300〜700%
破断時強度 :20〜50MPa
100%モジュラス :2〜6MPa
永久伸び :1〜11%
の全ての物性を同時に満足することを特徴とする、水性塗工材。
[5] 水性塗工材を塗布する基体が、繊維、合成繊維、皮革、合成皮革、人工皮革、合成樹脂、紙、不織布からなる群から選択された少なくとも1種である、[1]〜[4]のいずれかに記載の水性塗工材。
[6] [1]〜[5]のいずれかに記載の水性塗工材を基体に塗布、乾燥し皮膜を形成する方法。
[7] [1]〜[5]のいずれかに記載した水性塗工材を基体に塗布し、得られた物。
[8] [1]〜[5]のいずれかに記載した水性塗工材を基体に塗布、乾燥し得られた物の上に、繊維、合成繊維、皮革、合成皮革、人工皮革、合成樹脂、紙、不織布、金属からなる群から選択される、少なくとも1種の基材と接着する方法。
[9] [8]記載の方法で得られた物。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明において、「水性」とは、水中に樹脂が分散している状態を指し、「溶解」状態とは本質的に異なる。
本発明において、「自己乳化性」とは樹脂中に含まれる官能基が水中でイオン解離することにより分散状態で安定化する形態を指し、界面活性剤等を用いて強制乳化した形態とは本質的に内容を異にする。官能基をイオン解離させる為に必要に応じ、逆イオン性化合物を中和剤として用いることが出来る。
本発明において、「機械物性」とは、皮膜の引っ張り強度、伸度、永久伸びの項目を指す。
【0023】
本発明の水性塗工材に用いられる、自己乳化性水性ポリウレタン樹脂の形態としては、水系媒体中に分散した状態であれば特に制限されるものではないが、分子側鎖にカルボキシル基を有したもので、後述するアミン化合物で中和され水中に分散、安定化されていることが必須である。また、ポリエチレンオキサイド基に代表されるノニオン性官能基および/または3級アミノ基に代表される様なカチオン性官能基のような基を、一部分子内に導入することも可能である。
【0024】
本発明に使用される自己乳化性水性ポリウレタン樹脂を構成する成分である、多官能イソシアネート化合物としては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネートおよびその水素添加物、p−フェニレンジイソシアネートおよびその水素添加物、p−テトラメチルキシリレンジイソシアネートおよびその水素添加物、ヘキサメチレンジイソシアネート、トランス,トランス−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シス,シス−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート およびこれらの化合物のカルボジイミド変成化合物が挙げられ、これらの多官能イソシアネート化合物は、全多官能イソシアネート化合物100重量部に対し90重量部以上使用することが必要である。また、上記多官能イソシアネート化合物をそれぞれ併用して用いることも可能である。
【0025】
好ましくは4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネートおよびその水素添加物、p−テトラメチルキシリレンジイソシアネートおよびその水素添加物、ヘキサメチレンジイソシアネート、トランス,トランス−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シス,シス−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートが挙げられ、皮膜の経時黄変が無い点で、非芳香族系の化合物、さらにヘキサメチレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネートの水素添加物、トランス,トランス−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートがより好ましい。
【0026】
主要多官能イソシアネート化合物は、直鎖対称骨格の化合物を用いることで皮膜の風合いと引っ張り強度、伸度の両立を図ることが可能となる。非直鎖対象骨格化合物において、脂肪族系のものは、皮膜風合い、伸度は良好なものの強度が低く、脂環族および芳香族系化合物は、強度に優れるものの伸度、風合いが低下する傾向がある。
【0027】
更に、上記多官能イソシアネート化合物と併用可能なものとして、例えば、
オクタメチレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、2,2−ジメチルペンタンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ブテンジイソシアネート、1,3−ブタジエン−1,4−ジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカトリイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアナト−5−イソシアナトメチルオクタン、ビス(イソシアナトエチル)カーボネート、ビス(イソシアナトエチル)エーテル、1,4−ブチレングリコールジプロピルエーテル−ω,ω’−ジイソシアネート、リジンジイソシアナトメチルエステル、リジントリイソシアネート、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート、2−イソシアナトプロピル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート、キシリレンジイソシアナート、ビス(イソシアナトエチル)ベンゼン、ビス(イソシアナトプロピル)ベンゼン、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアナート、ビス(イソシアナトブチル)ベンゼン、ビス(イソシアナトメチル)ナフタレン、ビス(イソシアナトメチル)ジフェニルエーテル、ビス(イソシアナトエチル)フタレート、メシチレントリイソシアネート、2,6−ジ(イソシアナトメチル)フラン等の脂肪族ポリソシアネート、
【0028】
イソホロンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、2,2−ジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナト−n−ブチリデン)ペンタエリスリトール、ダイマ酸ジイソシアネート、2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−5−イソシアナトメチル−ビシクロ[2,2,1]−ヘプタン、2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−6−イソシアナトメチル−ビシクロ[2,2,1]−ヘプタン、2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−5−イソシアナトメチル−ビシクロ[2,2,1]−ヘプタン、2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−6−イソシアナトメチル−ビシクロ[2,2,1]−ヘプタン、2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−6−(2−イソシアナトエチル)−ビシクロ[2,2,1]−ヘプタン、2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−6−(2−イソシアナトエチル)−ビシクロ[2,1,1]−ヘプタン、2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−5−(2−イソシアナトエチル)−ビシクロ[2,1,1]−ヘプタン、2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−6−(2−イソシアナトエチル)−ビシクロ[2,2,1]−ヘプタン、2,5−ビスイソシアナートメチルノルボルナン、2,6−ビスイソシアナートメチルノルボルナン等の脂環族ポリソシアネート、
【0029】
トリレンジイソシアネート、エチルフェニレンジイソシアネート、イソプロピレンフェニレンジイソシアネート、ジメチルフェニレンジイソシアネート、ジエチルフェニレンジイソシアネート、ジイソプロピルフェニレンジイソシアネート、トリメチルベンゼントリイソシアネート、ベンゼントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、メチルナフタレンジイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ビベンジル−4,4’−ジイソシアネート、ビス(イソシアナトフェニル)エチレン、3,3’−ジメトキシビフェニル−4−4’−ジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメリックMDI、ナフタレントリイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4,4’−トリイソシアネート、3−メチルジフェニルメタン−4,6,4’−トリイソシアネート、4−メチル−ジフェニルメタン−3,5,2’,4’,6’−ペンタイソシアネート、フェニルイソシアナトメチルイソシアネート、フェニルイソシアナトエチルエチルイソシアネート、テトラヒドロナフチレンジイソシアネート、ヘキサヒドロベンゼンジイソシアネート、ヘキサヒドロジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、エチレングリコールジフェニルエーテルジイソシアネート、1,3−プロピレングリコールジフェニルエーテルジイソシアネート、ベンゾフェノンジイソシアネート、ジエチレングリコールジフェニルエーテルジイソシアネート、ジベンゾフランジイソシアネート、カルバゾールジイソシアネート、エチルカルバゾールジイソシアネート、ジクロロカルバゾールジイソシアネート等の芳香族ポリソシアネート、
【0030】
チオジエチルジイソシアネート、チオプロピルジイソシアネート、チオジヘキシルジイソシアネート、ジメチルスルフォンジイソシアネート、ジチオジメチルジイソシアネート、ジチオジエチルジイソシアネート、ジチオプロピルジイソシアネート、ジシクロヘキシルスルフィド−4,4’−ジイソシアネート等の含硫脂肪族イソシアネート、
【0031】
ジフェニルスルフィド−2,4’−ジイソシアネート、ジフェニルスルフィド−4,4’−ジイソシアネート、3,3’4,4’−ジイソシアナトジベンジルチオエーテル、ビス(4−イソシアナトメチルベンゼン)スルフィド、4,4’−メトキシベンゼンチオエチレングリコール−3,3’−ジイソシアネート等の芳香族スルフィド系イソシアネート、
【0032】
ジフェニルジスルフィド−4,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジメチルジフェニルジスルフィド−5,5’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルジスルフィド−5,5’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルジスルフィド−6,6’−ジイソシアネート、4,4’−ジメチルジフェニルジスルフィド−5,5’−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシジフェニルジスルフィド−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジメトキシジフェニルジスルフィド−3,3’−ジイソシアネート等の脂肪族ジスルフィド系イソシアネート、
【0033】
ジフェニルスルホン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルスルホン−3,3’−ジイソシアネート、ベンジディンスルホン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタンスルホン−4,4’−ジイソシアネート、4−メチルジフェニルメタンスルホン−2,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジメトキシジフェニルスルホン−3,3’−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジイソシアネートジベンジルスルホン、4,4’−ジメチルジフェニルスルホン−3,3’−ジイソシアネート、4,4’−ジ−tert−ブチルジフェニルスルホン−3,3’−ジイソシアネート、4,4’−メトキシベンゼンエチレンジスルホン−3,3’−ジイソシアネート、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン−3,3’−ジイソシアネート等の芳香族スルホン系イソシアネート、
【0034】
4−メチル−3−イソシアナトベンゼンスルホニル−4’−イソシアナトフェノールエステル、4−メトキシ−3−イソシアナトベンゼンスルホニル−4’−イソシアナトフェノールエステル等のスルホン酸エステル系イソシアネート、
【0035】
4,4’−ジメチルベンゼンスルホニル−エチレンジアミン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジメトキシベンゼンスルホニル−エチレンジアミン−3,3’−ジイソシアネート、4−メチル−3−イソシアナトベンゼンスルホニルアニリド−4−メチル−3’−イソシアネート等の芳香族スルホン酸アミド系イソシアネート、
【0036】
チオフェン−2,5−ジイソシアネート、チオフェン−2,5−ジイソシアナトメチル、1,4−ジチアン−2,5−ジイソシアネート、1,4−ジチアン−2,5−ジイソシアナトメチル等の含硫複素環化合物等が挙げられるが、これらの化合物の使用は最小量に留めるべきである。
【0037】
またこれらのアルキル置換体、アルコキシ置換体、ニトロ置換体や、多価アルコールとのプレポリマー型変性体、カルボジイミド変性体、ウレア変性体、ビュレット変性体、ダイマー化あるいはトリマー化反応生成物等も使用できるが、上記化合物以外の多官能イソシアネート化合物を使用してもかまわない。また、これらの多官能イソシアネート化合物は、1種または2種以上の混合物で使用することもできる。
【0038】
上記の多官能イソシアネート化合物のうち、1分子中に有するイソシアネート基の平均個数は1.5〜2.5個であることが好ましい。1.5個未満であると、皮膜の伸度、強度が劣る傾向になり、2.5個を超えると風合いが悪化する傾向にある。
【0039】
上記多官能イソシアネート化合物と反応し得る、数平均分子量が500未満で、かつ、分子中にカルボキシル基を有さない平均官能基数が2個である活性水素化合物としては、例えば、
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,3−ブタンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ポリオール、
【0040】
シクロブタンジオール、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘプタンジオール、シクロオクタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキシプロピルシクロヘキサノール、ジシクロヘキサンジオール等の脂環族ポリオール、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゼン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、キシリレングリコール、ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、テトラブロムビスフェノールA、テトラブロムビスフェノールA−ビス−(2−ヒドロキシエチルエーテル)、ビスフェノールS等の芳香族ポリオール、
【0041】
ジブロモネオペンチルグリコール等のハロゲン化ポリオールのようなポリオール化合物、
【0042】
2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、1−ヒドロキシ−4−メルカプトシクロヘキサン、2,4−ジメルカプトフェノール、2−メルカプトハイドロキノン、4−メルカプトフェノール、1,3−ジメルカプト−2−プロパノール、2,3−ジメルカプト−1,3−ブタンジオール、1−ヒドロキシエチルチオ−3−メルカプトエチルチオベンゼン、4−ヒドロキシ−4’−メルカプトジフェニルスルフォン、2−(2−メルカプトエチルチオ)エタノール、ジヒドロキシエチルスルフィドモノ(3−メルカプトプロピオネート)、ジメルカプトエタンモノ(サルチレート)等、含硫化合物、
【0043】
エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、シクロヘキシレンジアミン、ピペラジン、2ーメチルピペラジン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、α,α’−メチレンビス(2ークロルアニリン)−3,3’−ジクロル−α,α’−ビフェニルアミン、m−キシレンジアミン、イソフォロンジアミン、N−メチル−3,3’−ジアミノプロピルアミン、ノルボルネンジアミン等のポリアミノ化合物
が挙げられ、これらのものは単独、あるいは2種以上混合して使用できる。
【0044】
上記の中で、皮膜の耐黄変性および機械物性と耐溶剤性のバランスを良好にするため、ポリオール化合物の使用が好ましく、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ポリオールがより好ましく、更に好ましくはエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオールが挙げられる。これらの直鎖状脂肪族系ポリオール化合物の使用によって、上記の特性をより向上させることが可能となる。
【0045】
上記化合物において、分子中の平均官能基数が2個を超えると、得られた皮膜の弾性率が向上し、風合、伸度が低下する傾向にある。また上記化合物からなる群において、脂環族系および/または芳香族系化合物を使用した場合、脂肪族系化合物単独と比較して、皮膜の風合が低下する傾向がある。
【0046】
数平均分子量500〜3000、融点(Tm)40℃以下の直鎖構造の活性水素化合物としては、例えばシュウ酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、オクタデカン二酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の多価有機酸と前記ポリオール化合物との縮合反応生成物(ポリエステルポリオール)、前記ポリオール化合物とエチレンオキシド等アルキレンオキシドとの付加反応生成物、アルキレンポリアミンおよび/またはアルキレンポリオールとアルキレンオキシドとの付加反応生成物(ポリエーテルポリオール)、前記ポリオール化合物とホスゲンとの反応により得られるポリカーボネートポリオール、前記ポリオール化合物とε−カプロラクトンとの開環重合反応により得られる、ポリカプロラクトンポリオールおよびこれらの共重合体、混合物等が挙げられ、これらは単独で、あるいは2種以上混合して使用することが出来る。皮膜の伸度と耐溶剤性をより向上させる観点で、これらの化合物の数平均分子量は500〜2000の範囲が好ましく、融点が10〜30℃、かつ数平均分子量が500〜2000の化合物が最も良好な風合い、永久伸びの皮膜を得ることが可能となる。
【0047】
融点が40℃を越えると、または数平均分子量が500未満であると、皮膜の風合および永久伸びが悪化する傾向にある。また、数平均分子量が3000を超えると、皮膜の耐溶剤性が劣る傾向にある。上記化合物の内、数平均分子量500〜2000のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール化合物が好ましく、更にはアジピン酸とエチレングリコールおよびまたはブタンジオールとの重縮合物、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールが好ましい。
【0048】
上記の数平均分子量が500〜3000の活性水素化合物と、500未満の活性水素化合物との重量比は90/10〜99/1、更に90/10〜95/5の範囲が好ましい。数平均分子量が500未満の化合物の量が増大するに従い、皮膜の強度、耐溶剤性が向上し、風合い、伸度、永久伸びが低下する傾向にある。数平均分子量が500〜3000の活性水素化合物の量が増大するに従い、皮膜の伸度、風合いが向上し、強度、耐溶剤性が低下する傾向にある。
【0049】
本発明に用いられる、カルボキシル基含有自己乳化性水性ポリウレタン樹脂は、数平均分子量が500未満の分子中にカルボキシル基を1個以上有し、これとは別にイソシアネート基と反応する活性水素基を有する化合物が必須で、好ましくは2,2−ジメチロール乳酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール吉草酸等の化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの化合物中に含まれるカルボキシル基は、水中で分散状態を安定化する機能、および多官能カルボジイミド化合物と架橋、硬化反応を行なう機能を有する。又、水分散体の更なる安定性向上のために、必要に応じオキシエチレン基に代表される、ノニオン性の原子団を上記カルボキシル基含有化合物と併用して用いることも可能である。
【0050】
上記のカルボキシル基含有化合物を用いる際の好ましい量は、自己乳化性水性ポリウレタン樹脂の固形分換算における酸価が3〜30KOHmg/g、より好ましくは5〜20KOHmg/gの範囲内である。上記酸価の範囲未満であると、樹脂の機械的安定性、他成分との混和安定性、および皮膜の耐溶剤性が劣る傾向がある。また、酸価が30KOHmg/gを超えると得られた水分散体の粘度が高く、低固形分となる他、皮膜の風合いが低下する傾向がある。ここで、酸価の測定方法は例えば日本工業規格JIS K5400等に開示されている。
【0051】
本発明に用いられる、自己乳化性水性ポリウレタン樹脂中のカルボキシル基を中和する化合物としては、沸点が150℃以下のアミン化合物が好ましく、例えばN,N−ジメチルエタノールアミンようなアルカノールアミン類、アンモニアのような無機塩基、トリメチルアミン、トリエチルアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドのような有機塩基が挙げられる。水酸化ナトリウム等、不揮発性中和剤または沸点が150℃を超える中和剤の使用は、前述のカルボキシル基と後述する多官能カルボジイミド化合物との硬化反応の速度が低下し、例えば100℃・30分のような低温・短時間硬化条件下では未反応の官能基が多量に残存、得られた皮膜の耐溶剤性が悪化する傾向にある。
【0052】
自己乳化性水性ポリウレタン樹脂中のカルボキシル基に対する、上記中和剤の使用量は特に制限されるものではないが、カルボキシル基1個に対し上記中和剤が0.5〜1.5個、好ましくは0.7〜1.0個の範囲である。0.5個未満であると、塗工材の貯蔵安定性が悪化し、1.5個を超えると硬化速度が低下する傾向がある。
【0053】
本発明に用いられる鎖伸長剤としては、例えば、水、ヒドラジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、シクロヘキシレンジアミン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、α,α’−メチレンビス(2−クロルアニリン)、3,3’−ジクロル−α,α’−ビフェニルアミン、m−キシレンジアミン、イソホロンジアミン、NBDA(商品名、三井化学株式会社製)、N−メチル−3,3’−ジアミノプロピルアミン、およびジエチレントリアミンとアクリレートとのアダクトまたはその加水分解生成物等のポリアミン類が挙げられ、特に制限されるものではないが、水、ヒドラジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、シクロヘキシレンジアミン、フェニレンジアミンが好ましく、より好ましくは水、ヒドラジン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンである。上記鎖伸長剤の好ましい量としては、上記ウレタンプレポリマー中のイソシアネート基1個に対し、0〜0.9個、より好ましくは0〜0.6個である。上記範囲を超えると、得られた皮膜の風合、および耐溶剤性が悪化する傾向にある。
【0054】
本発明における自己乳化性水性ポリウレタン樹脂の製造方法は、特に制限されるものではないが、例えば以下のような方法が例として挙げられる。
▲1▼ 多官能イソシアネート化合物、前記化合物中における、イソシアネート基と反応し得る活性水素基を有した化合物、および前記化合物中のイソシアネート基と反応し得る活性水素基を有し、且つ分子中にカルボキシル基を有する化合物を、イソシアネート基が過剰になるような当量比で、沸点が100℃以下である有機溶剤の存在下または非存在下に反応させ、分子末端にイソシアネート基を有したウレタンプレポリマーを製造する。その後中和剤により、上記プレポリマー中のカルボキシル基を中和する。ついで、この中和プレポリマーを、鎖伸長剤含有水溶液中に投入して乳化、鎖伸長反応させた後、系内に有機溶剤を含有する場合はそれを除去し、得る方法。
▲2▼ 上記の方法で得た未中和のウレタンプレポリマーを、中和剤、かつ鎖伸長剤を含有した水溶液中に投入して乳化、鎖伸長反応させて得る方法。
▲3▼ 前記▲1▼の方法で得た中和済みのウレタンプレポリマー中に、鎖伸長剤を含有した水溶液を加え、乳化、鎖伸長反応させて得る方法。
▲4▼ 前記▲1▼の方法で得た未中和のウレタンプレポリマー中に、中和剤、鎖伸長剤を含有した水溶液を加え、乳化、鎖伸長反応させて水分散液を得る方法。
▲5▼ 前記▲1▼の方法で得た中和済みのウレタンプレポリマーを水中に投入、乳化後、鎖伸長剤を添加して得る方法。
▲6▼ 前記▲1▼の方法で得た未中和のウレタンプレポリマーを、中和剤含有水溶液中に投入し、その後鎖伸長剤を添加して得る方法。
▲7▼ 前記▲1▼の方法で得た中和済みのウレタンプレポリマー中に、水を加えた後、鎖伸長剤を添加して得る方法。
▲8▼ 前記▲1▼の方法で得た未中和のウレタンプレポリマー中に、中和剤を含有した水溶液を加え、その後鎖伸長剤を添加させて得る方法。
【0055】
本発明におけるウレタンプレポリマーは、1分子中の平均イソシアネート基が1.5〜2.5個であることが必須である。2.5個を超えると、水分散体(粒子)形成後の分子が3次元構造になり易く、皮膜の風合が低下する傾向にある。1.5個未満であると、鎖伸長反応後の分子量が低くなり、機械物性が低下する傾向にある。
【0056】
前述の各活性水素化合物中の活性水素基に対する、イソシアネート基の過剰量は(ウレタンプレポリマー固形分あたりのNCO重量%)、1〜4重量%の範囲が好ましい。1重量%未満であると、プレポリマーの粘度が非常に高く、樹脂製造時の作業性、および得られた皮膜の強度、耐溶剤性が低下する傾向にある。4%を超えると、皮膜の風合い、永久伸びが低下する傾向にある。
【0057】
ウレタンプレポリマー製造時は反応温度90℃以下で重合することが必須である。90℃を超えると、アロファネート反応などに代表されるような副反応が起こり易くなり、3次元構造を取り易くなる。
【0058】
上記自己乳化性水性ポリウレタン樹脂を得る際に、必要に応じて有機溶剤を使用することが可能である。溶剤としては、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、アセトニトリル、テトラヒドロフラン等が挙げられ、沸点が100℃以下のもので、単独で、または2種類以上の混合状態で用いることが出来る。溶剤の沸点が100℃を超える、すなわち水の沸点を超える溶剤の使用は、溶剤のみを完全に留去することが困難になり、最終樹脂液中、およびそれから得られた皮膜中へ残存し易くなるので、皮膜物性が経時で変化し好ましくない。上記溶剤を使用した場合は、減圧脱溶剤等の処理を行うことによって除去することが可能である。また、これらの溶剤を使用する際は、樹脂(モノマー)と溶剤の合計100重量部に対し、45重量部以下で使用する必要がある。
【0059】
上記自己乳化性水性ポリウレタン樹脂はチャック間距離20mm、引っ張り速度50mm/分、温度23℃、湿度50%の条件下で機械物性を測定した場合、破断時伸び率 :500〜1000%
破断時強度 :20〜80MPa
100%モジュラス :1〜6MPa
の性能のいずれをも満足するものは、後述の多官能カルボジイミド化合物と架橋させた皮膜の機械物性と風合いの両立が達成しやすくなる。特に100%モジュラスに関し、上記物性値の範囲外であると、多官能ポリカルボジイミド化合物と架橋させた後の皮膜の風合いが劣る。一般に、強度、伸度は皮膜形成した基体の加工性等に影響し、100%モジュラスは風合いに影響する。
【0060】
本発明の水性塗工材中に含有される、多官能ポリカルボジイミド化合物は水中で乳化、分散状態にあることが必須である。油溶性で水中に分散状態とならない化合物は、塗工材の経時安定性が悪い。一方、水溶性の化合物は塗工材の経時安定性に優れるものの、自己乳化性水性ポリウレタン樹脂と硬化した後の皮膜の風合いに劣る。
【0061】
上記多官能ポリカルボジイミド化合物のカルボジイミド基当量は、400〜800g/当量であることが好ましい。400g/当量未満であると得られた皮膜の風合い、伸度が低下し、800g/当量を超えると耐溶剤性、永久伸びが低下する傾向にある。
【0062】
また、多官能ポリカルボジイミド化合物中のカルボジイミド基は、自己乳化性水性ポリウレタン樹脂中のカルボキシル基1個に対し、0.2〜0.6個であることが好ましい。0.2個未満であると、得られた皮膜の耐溶剤性、永久伸びが低下し、0.6個を超えると風合い、伸度が低下する傾向がある。
【0063】
上記多官能ポリカルボジイミド化合物の組成、製造方法等に関しては特に制限されるものではなく、公知の製造方法で得ること、またその化合物を用いることが可能であるが、皮膜物性の経時変化を抑える観点で可塑剤、有機溶剤を使用しないことが必要である。具体的には特開平10−316930、特開平10−60272に記載されている化合物、製造方法等が挙げられるが、得られた皮膜の着色度合いが低い点で、カルボジイミド基の直近の原子団が脂肪族系および/または脂環族系である化合物を用いることが好ましい。
【0064】
上記からなる水性塗工材を用いて形成させた皮膜を、チャック間距離20mm、引っ張り速度50mm/分、温度23℃、湿度50%の条件下で機械物性を測定した場合、
破断時伸び率 :300〜700%
破断時強度 :20〜50MPa
100%モジュラス :2〜6MPa
また、皮膜を100%伸長させた状態で10分間保持後応力を開放し、1分後の永久伸びを測定した値が
永久伸び(%):1〜11%
の物性を満たすことによって、風合いが非常に良好であると同時に、強度、伸度が高く伸縮性に富み、かつ耐溶剤性に優れた皮膜を得ることが可能となる。
【0065】
本発明で言う耐溶剤性とは、皮膜を溶剤中に24時間浸漬させ、浸漬前後の皮膜面積を測定、面積膨潤倍率を算出した値を指す。皮膜が溶解またはゼリー状に軟化せず、かつ膨潤倍率が低いほど耐溶剤性が良好な皮膜と評価される。
【0066】
本発明の水性塗工材を塗布する基体としては特に制限されるものではないが、例えば木綿、ウールなどに代表される天然繊維、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン等の素材に代表されるような不織布、合成繊維、皮革、合成皮革、人工皮革、紙、合成樹脂、フィルム、シート等が挙げられるが、この他にも例えば特定の型に塗工材を塗布、あるいは流し込み、乾燥して皮膜形成物を形成し、その後脱着して目的物を得る用途に用いることも可能である。また塗工材を塗布・乾燥後、基体から脱着し、皮膜単独として使用することも可能である。
【0067】
本発明に用いられる水性塗工材は、必要に応じ、顔料、染料、補助バインダー、増粘剤、レベリング剤、チクソトロピー付与剤、濡れ剤、消泡剤、充填剤、発泡剤、沈降防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、減粘剤、その他の慣用成分を含有しても良い。
【0068】
また、本発明で用いられる水性塗工材中に他の樹脂成分を混合し使用することも可能である。具体的には、アクリル樹脂、NBR、SBR、EVA、ポリオレフィン樹脂、PVA等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0069】
本発明の水性塗工材を塗工する方法としては、特に制限されるものではないが、例えば浸せき塗工、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロッドコーター、ハイドロバーコーター、トランスファロールコーター、リバースコーター、グラビアコーター、ダイコーター、カーテンコーター、スプレコーター、ロールコーター、スクリーンコーターなどが挙げられ、基体の一部、もしくは全面に塗工することが出来る。
【0070】
また本発明の水性塗工材を塗布、皮膜形成させた物の上に、天然繊維、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン等の素材に代表されるような不織布、合成繊維、皮革、合成皮革、人工皮革、紙、金属、木材、合成樹脂、フィルム、シート等の基材と接着させることが可能であり、線圧をかけて圧着するする方法、熱あるいは高周波接着し得る方法、他の皮膜、材料と複層皮膜を形成させることも可能である。更に、基体に本塗工材を塗布し、風合い、滑り止め効果付与剤として使用することも可能である。また、本発明により得られた皮膜は、例えばインクジェット方式、熱転写方式、静電記録方式、捺染印刷、オフセット印刷方式等に代表されるような記録方式の受理層として使用することも可能である。
【0071】
これらの材料を上記の方法で形成させた皮膜は、例えば接着剤、塗工紙、手袋、垂れ幕、幟、養生ネット、パッキン、圧着再剥離材料、衣服、芯地、繊維集束材、家具、不織布バインダー、トラック等の幌、テント、旗、履き物、鞄、カテーテル、輸液バッグ、コンドーム、オムツ、ナプキン、セラミクスバインダーー、シーツ、手術着、透湿シート、カーペット、自動車インパネ、エアフィルター、シート、湿布、絆創膏、包帯等を構成する際に使用することが出来、柔軟で風合いが良く、強度、伸度、伸縮性、耐溶剤性が要求されるような材料、用途での使用が特に好適である。
【0072】
【実施例】
以下本発明を更に具体的に説明するため、実施例、比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0073】
自己乳化性水性ポリウレタン樹脂−1の製造
温度計、撹拌機、窒素導入管、冷却管を備えた5000mlの4つ口フラスコに、数平均分子量1000のポリテトラメチレンエーテルグリコールを634.2g、2,2−ジメチロールブタン酸35.7g、1,4−ブタンジオール21.0g、ヘキサメチレンジイソシアネート210.6g、およびメチルエチルケトンを623.2gを仕込み、窒素ガス雰囲気下80℃で6時間反応させた。その後、60℃迄冷却し、トリエチルアミン22.7gを添加し、この温度下で30分混合させた。得られたプレポリマーと脱イオン水2077.4gと混合し1時間撹拌後、メチルエチルケトンを40℃で減圧脱溶剤することにより、自己乳化性水性ポリウレタン樹脂−1を得た。
【0074】
自己乳化性水性ポリウレタン樹脂−2〜10の製造
上記製造方法と同様の操作で、自己乳化性水性ポリウレタン樹脂−2〜10を得た。各樹脂の組成を表−1(1)、(2)([表1]〜[表2])に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
表−1註
DMBA:2,2−ジメチロールブタン酸、PTG:ポリテトラメチレンエーテルグリコール(融点25℃)、PES:アジピン酸とエチレングリコールおよび1,4ブタンジオールとの重縮合物(室温で液状)、PCD:ポリヘキサメチレンカーボネートジオール(融点42℃)、BG:ブタンジオール、TMP:トリメチロールプロパン、HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート、IPDI:イソホロンジイソシアネート、IPDI:イソホロンジイソシアネート、TEA:トリエチルアミン、MEK:メチルエチルケトン
分子量;数平均分子量
高分子/低分子比:数平均分子量が500以上の活性水素化合物と、数平均分子量500未満の、分子中にカルボキシル基を有さない活性水素化合物の重量比
プレポリマーNCO%:固形分あたりの理論終点NCO重量%
酸価:自己乳化性水性ポリウレタン樹脂中の固形分あたりの理論酸価(KOHmg/g)
樹脂11:中和剤として、トリエチルアミンの代わりに水酸化ナトリウムを使用。
樹脂13:プレポリマー製造時の溶剤として、N−メチル−2−ピロリドン(沸点202℃)を使用。
【0078】
水性塗工材の製造−1〜19
上記の方法で得た自己乳化性水性ポリウレタン樹脂−1〜19と、多官能カルボジイミド化合物とを、表−2[表3]で示す比率で配合し、その後粘度が100mPa・sとなるように、水およびポリアクリル酸アンモニウム(増粘剤)を徐々に添加して、水性塗工材−を得た。
【0079】
【表3】
【0080】
表−2註
多官能カルボジイミド化合物
E−02:カルボジライトE−02
(日清紡株式会社製;水分散タイプ、450g/当量)
V−02:カルボジライトV−02
(日清紡株式会社製;水溶性タイプ、598g/当量)
V−02−L2:カルボジライトV−02−L2
(日清紡株式会社製;水溶性タイプ、382g/当量)
主剤/硬化剤当量比
自己乳化性水性ポリウレタン樹脂中のカルボキシル基の個数に対する、多官能カルボジイミド化合物中のカルボジイミド基の個数の比
【0081】
評価用皮膜の形成
上記の方法で得た水性塗工材−1〜19を、離型紙上に乾燥後の膜厚が100μになるようにアプリケーターで塗工し、室温下で1時間セッティング後、100℃で20分間乾燥させ、評価用皮膜を得た。
上記の方法で得た皮膜のの評価内容、試験条件およびその結果を以下に示す。1)皮膜伸度、強度
引張り試験機を用い、皮膜の破断強度、破断伸び率、100%モジュラスの値を測定した。測定条件としては、チャック間距離20mm、引張り速度50mm/分、温度23℃、湿度50%で行った。
2)皮膜永久伸び
上記試験と同様の皮膜に10mmの標線をつけて、引張り試験機を用いて100%伸長させ、その状態で10分間保持した後応力を開放し、1分後の標線間距離を測定した。
永久伸び(%)=(試験後の標線間距離−試験前の標線間距離)/試験前の標線間距離×100
3)風合評価
各皮膜を、30mm×40mmの大きさに切り出し、指触による風合の評価を行った。風合が良好で、かつベタツキがない皮膜から順に◎、○、△、×の4段階で評価した。
4)耐溶剤性試験−1
各皮膜を30mm×40mmの大きさに切り出し、溶剤が満たされたガラスシャーレ中に24時間浸漬させた。浸漬後の皮膜の面積を測定し、面積膨潤倍率を算出した。膨潤倍率の算出は以下の方法で行った。
面積膨潤倍率=浸漬後の皮膜の面積/浸漬前の皮膜の面積(1200mm2)
溶剤として、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン、メタノールを使用した。
膨潤倍率が2.0倍以下の物は耐溶剤性が良好な皮膜で、1.8倍以下の物は特に優れている。
5)耐溶剤性試験−2
各皮膜の表面を、キシレンを含浸指せたガーゼでラビング試験を往復100回行った。皮膜が溶出した時の往復ラビング回数を測定した。
6)硬度
各皮膜の表面を、JIS−K5400に記載の方法に基づき測定した。
7)貯蔵安定性
各水性塗工材を40℃下、1ヶ月貯蔵した後の状態を観察した。初期と比較して、粘度変化および沈殿物等が無いものを○、何れかに異常が見られるものを△、全て異常が確認されたものを×とした。
8)皮膜経時安定性
水性塗工材−1と−19を用いて得られた皮膜を、60℃の水浴中2時間に浸漬させた後、100℃で加熱処理を行ない、機械物性を測定した。浸漬前後の物性に変化が見られないものは良好であると判定できる。
【0082】
各皮膜の評価結果を表−3[表4]、表−4(1)、(2)([表5]〜[表6])、表−5[表7]に示す。
【0083】
【表4】
【0084】
【表5】
【0085】
【表6】
【表7】
【0086】
【発明の効果】
本発明に係わる水性塗工材により得られた架橋皮膜は、従来の水性塗工材から得られる皮膜では困難であった、可塑剤および有機溶剤を系内に含有すること無しに、皮膜の耐溶剤性、風合いと機械物性(引っ張り強度、伸び、永久伸び)の何れの物性にも優れ、かつ塗工材の貯蔵安定性、皮膜の経時安定性についても優れた性能を発揮することが可能となった。
Claims (9)
- 基体上に塗布し、皮膜を形成し得る水性塗工材であって、該塗工材は、カルボキシル基含有の自己乳化性水性ポリウレタン樹脂と、1分子中にカルボジイミド基を2個以上有する多官能カルボジイミド化合物の水分散体からなり、可塑剤、有機溶剤を含まないことを特徴とする水性塗工材。
- 自己乳化性水性ポリウレタン樹脂中に含まれるカルボキシル基は、沸点が150℃以下のアミン化合物で中和されていることを特徴とする、請求項1記載の水性塗工材。
- 前記自己乳化性水性ポリウレタン樹脂が、
▲1▼ 4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネートおよびその水素添加物、p−フェニレンジイソシアネートおよびその水素添加物、p−テトラメチルキシリレンジイソシアネートおよびその水素添加物、ヘキサメチレンジイソシアネート、トランス,トランス−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シス,シス−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート およびこれらの化合物のカルボジイミド変成化合物からなる群から選択される、多官能イソシアネート化合物を、全ポリソシアネート化合物100重量部に対し90重量部以上
▲2▼ 数平均分子量500〜3000、融点40℃以下の直鎖構造の活性水素化合物
▲3▼ 数平均分子量が500未満で、かつ、分子中にカルボキシル基を有さない平均官能基数が2個である活性水素化合物
▲4▼ 数平均分子量が500未満の、分子中にカルボキシル基を1個以上有する活性水素化合物
との反応により得たイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを、鎖伸長剤で高分子量化、水分散体としたものであり、かつウレタンプレポリマー中の▲2▼と▲3▼の重量比が、90/10〜99/1であることを特徴とする、請求項1または2に記載の水性塗工材。 - 請求項1〜3のいずれかに記載の水性塗工材から形成された皮膜のフィルム物性が、
破断時伸び率 :300〜700%
破断時強度 :20〜50MPa
100%モジュラス :2〜6MPa
永久伸び :1〜11%
の全ての物性を同時に満足することを特徴とする、水性塗工材。 - 水性塗工材を塗布する基体が、繊維、合成繊維、皮革、合成皮革、人工皮革、合成樹脂、紙、不織布からなる群から選択された少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれかに記載の水性塗工材。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の水性塗工材を基体に塗布、乾燥し皮膜を形成する方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載した水性塗工材を基体に塗布し、得られた物。
- 請求項1〜5のいずれかに記載した水性塗工材を基体に塗布、乾燥し得られた物の上に、繊維、合成繊維、皮革、合成皮革、人工皮革、合成樹脂、紙、不織布、金属からなる群から選択される、少なくとも1種の基材と接着する方法。
- 請求項8記載の方法で得られた物。
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