JP2004166576A - 遺伝子が置換または欠損した微生物の製造法 - Google Patents
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Abstract
【課題】染色体DNA上に、10kb以上の置換または欠損領域を1以上有する微生物の製造法を提供する。
【解決手段】本発明によれば、薬剤耐性遺伝子を有する直鎖DNAであり、かつ置換または欠損の導入対象である染色体DNA上の領域の両端の外側に位置するDNAとそれぞれ相同性を有するDNAを、その両端に有する直鎖DNA用いて微生物を形質転換することを特徴とする、染色体DNA上の10kb以上の領域が置換または欠損した微生物の製造法を提供することができる。
【選択図】 なし
【解決手段】本発明によれば、薬剤耐性遺伝子を有する直鎖DNAであり、かつ置換または欠損の導入対象である染色体DNA上の領域の両端の外側に位置するDNAとそれぞれ相同性を有するDNAを、その両端に有する直鎖DNA用いて微生物を形質転換することを特徴とする、染色体DNA上の10kb以上の領域が置換または欠損した微生物の製造法を提供することができる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、染色体DNA上の10kb以上の領域が置換または欠損した微生物の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
PCR技術の発展に従い、目的とする塩基配列を有する直鎖DNAを効率よく作製することが可能となった。枯草菌等の一部の微生物では、上記PCR増幅DNA断片等を用いて染色体DNA上の任意の遺伝子が欠損または置換した形質転換体の作製が行われている。
【0003】
一方、大腸菌野生株は、直鎖DNAによる形質転換頻度は低く、recBCおよびsbcBC等のヌクレアーゼ活性が低下した変異株でのみ低い頻度で直鎖DNAによる染色体DNA上の遺伝子置換等が可能であった(非特許文献1参照)。
λファージ由来の組換えタンパク質群(Red組換え系)を大腸菌内で発現させると、直鎖DNAを用いた染色体上の形質転換効率が10倍以上上昇することが報告されている(非特許文献2)。また、PCRにより作製した直鎖DNAとλRed組換え系を組み合わせた、大腸菌の染色体DNA上の任意の遺伝子を置換または欠損させる方法も報告されている(非特許文献3および4参照)。
【0004】
上記λRed組換え系を用いて単一の遺伝子破壊を行う際に、形質転換株の選択に使用するマーカー遺伝子である薬剤耐性遺伝子が染色体DNA上に残らないようにする方法も非特許文献3および4に記載されている。しかしながら、上記λRed組換え系を用いた染色体DNA上の異なる位置に存在する2以上の遺伝子が置換または欠損したEscherichia coliの作製法、10kbp以上の長いDNA領域が置換または欠損したEscherichiacoliの作製法は知られていなかった。
【0005】
大腸菌染色体DNA上の長い領域に欠損を多重に導入する方法として、制限酵素SceIを用いる方法が報告されている(非特許文献5参照)。しかしながらこの方法は、多段階の工程からなる複雑な方法であり、また効率が低い方法である。また、同様に長い領域に欠損を導入する方法としては、Cre組換え酵素を利用する方法が知られていた(非特許文献6参照)が、この方法では最終的にCreの認識配列であるloxP配列が染色体上に残存するため、多重に欠損を導入する方法としては好ましい方法ではない。非特許文献6には、認識配列が異なる二つの組換え酵素CreとFLPを利用して、4つまでの欠失を同時に一菌株に導入することが記載されているが、この方法も染色体DNAに欠損を導入するたびに、染色体DNA上にCre認識配列であるloxP配列やFLP認識配列であるFRT配列が蓄積する方法であり、多重に欠損を導入する方法としては好ましい方法ではない。
【0006】
【非特許文献1】
J. Bacteriol.(ジャーナル オブ バクテリオロジー), 159, 783−786 (1984)
【0007】
【非特許文献2】
J. Bacteriol.(ジャーナル オブ バクテリオロジー), 180, 2063−2071 (1998)
【0008】
【非特許文献3】
Gene(ジーン), 246, 321−320 (2000)
【0009】
【非特許文献4】
Proc. Nat. Acad. Sci.(プロシーディング オブ ナショナル アカデミーサイエンス), 97, 6640−6645 (2000)
【0010】
【非特許文献5】
Genome Research(ゲノム リサーチ), 12, 640−647 (2002)
【0011】
【非特許文献6】
Nature Biotechnology(ネイチャー バイオテクノロジー), 20, 1018−1023 (2002)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、染色体DNA上の10kbp以上の領域が置換または欠損した微生物の製造法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は下記(1)〜(8)に関する。
(1) 薬剤耐性遺伝子を有する直鎖DNAであり、かつ置換または欠損を導入したい染色体DNA上の領域の両端の外側に位置するDNAとそれぞれ相同性を有するDNAを、その両端に有する直鎖DNAを用いて微生物を形質転換することを特徴とする、染色体DNA上の10kb以上の領域が置換または欠損した微生物の製造法。
【0014】
(2) 上記(1)の製造法で得られた染色体DNA上の10kb以上の領域が置換または欠損した微生物に、上記(1)で用いた置換または欠損を導入したい染色体DNA上の領域の両端の外側に位置するDNAとそれぞれ相同性を有するDNAをその両端に有する直鎖DNAを導入することにより、染色体DNA上に挿入された薬剤耐性遺伝子を削除することを特徴とする、染色体DNA上の10kb以上の領域が置換または欠損した微生物の製造法。
【0015】
(3) 以下の[1]〜[3]の工程、
[1]薬剤耐性遺伝子、ネガティブセレクションに用いることができる遺伝子を有する直鎖DNAであり、かつ置換または欠損の導入対象である染色体DNA上の領域の両端の外側に位置するDNAとそれぞれ相同性を有するDNAをその両端に有する直鎖DNA用いて微生物を形質転換する工程
[2]上記[1]で用いた置換または欠損の導入対象である染色体DNA上の領域の両端の外側に位置するDNAとそれぞれ相同性を有するDNAをその両端に有する直鎖DNAを該形質転換体に導入する工程
[3]染色体DNA上から、[1]で用いた薬剤耐性遺伝子およびネガティブセレクションに用いることができる遺伝子が削除された形質転換体を選択する工程
を含む、染色体DNA上の10kb以上の領域が置換または欠損した微生物の製造法。
【0016】
(4) 上記(3)の[1]〜[3]の工程を繰り返すことを特徴とする染色体DNA上の異なる位置に存在する2以上の10kbp以上の領域が置換または欠損した微生物の製造法。
(5) 置換または欠損の導入導入対象である染色体DNA上の領域の両端の外側に位置するDNAと相同性を有するDNAが、各々500bp〜5kbpの長さを有するDNAである上記(1)〜(4)の製造法。
【0017】
(6) 微生物が、Escherichia属に属する微生物である上記(1)〜(5)の製造法。
(7) 薬剤耐性遺伝子が、カナマイシン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子、ゲンタマイシン耐性遺伝子、スペクチノマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子およびアンピシリン耐性遺伝子からなる群より選ばれる遺伝子である上記(1)〜(6)の製造法。
【0018】
(8) ネガティブセレクションに用いることができる遺伝子が、Bacillus属に属する微生物由来のsacB遺伝子またはEscherichia属に属する微生物由来のrpsL遺伝子である上記(3)〜(7)の製造法。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
【発明の実施の形態】
本願発明の製造法に用いられる宿主微生物としては、直鎖DNAをその細胞内に取り込み、染色体DNAと導入した直鎖DNAとの間で相同組換えが起こる微生物であれば、いずれの微生物であってもよいが、好ましくはEscherichia属に属する微生物、より好ましくはEscherichia coli、さらに好ましくはλファージ由来の組換えタンパク質群(Red組換え系)を発現しているEscherichiacoliをあげることができる。
【0020】
λRed組換え系を発現しているEscherichia coliとしては、Escherichiacoli KM22株〔J. Bacteriol., 180, 2063(1998)〕およびKM22株が保有するλRed組換え系に関与する遺伝子で形質転換または形質導入されたEscherichiacoliなどをあげることができ、具体的にEscherichia coli W3110red株をあげることができる。
【0021】
本発明の製造法に用いられるDNAとしては、
(1)薬剤耐性遺伝子を有する直鎖DNAであり、かつ置換または欠損の導入対象である染色体DNA上の領域の両外側に存在するDNAをその両端に有する直鎖DNA、
(2)置換または欠損の導入対象である染色体DNA上の領域の両外側に存在するDNAをその両端に有する直鎖DNA、
(3)薬剤耐性遺伝子およびネガティブセレクションに用いることができる遺伝子を有する直鎖DNAであり、かつ置換または欠損の導入対象である染色体DNA上の領域の両外側に存在するDNAをその両端に有する直鎖DNA
をあげることができる。
【0022】
薬剤耐性遺伝子としては、宿主微生物が感受性を示す薬剤に対し、薬剤耐性を付与する薬剤耐性遺伝子であれば、いずれの薬剤耐性遺伝子も使用することができる。宿主微生物にEscherichia coliを用いた場合は、薬剤耐性遺伝子としては、例えば、カナマイシン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子、ゲンタマイシン耐性遺伝子、スペクチノマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子およびアンピシリン耐性遺伝子等をあげることができる。
【0023】
ネガティブセレクションに用いることができる遺伝子とは、宿主微生物で該遺伝子を発現させたとき、一定培養条件下においては、該微生物に致死的である遺伝子のことをいい、該遺伝子としては例えば、Bacillus属に属する微生物由来のsacB遺伝子〔Appl. Environ. Microbiol., 59, 1361−1366(1993)〕 、およびEscherichia属に属する微生物由来のrpsL遺伝子〔Genomics, 72, 99−104(2001)〕等をあげることができる。
【0024】
本発明の製造法で用いられる直鎖DNAの両末端に存在する、染色体DNA上の置換または欠損の導入対象となる領域の両端の外側に位置するDNAと相同性を有するDNAは、直鎖DNAにおいて、染色体DNA上の方向と同じ方向に配置され、その長さは500bp〜5kbp程度が好ましく、500bp〜2kbp程度がより好ましく、1kbp程度がさらに好ましい。
【0025】
相同性を有するとは、上記直鎖DNAが、染色体DNA上の目的とする領域において、相同組換えが起こる程度の相同性を有することであり、具体的な相同性としては、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは100%の相同性をあげることができる。
上記塩基配列の相同性は、Karlin and AltschulによるアルゴリズムBLAST[Pro. Natl. Acad. Sci. USA, 90, 5873(1993)]やFASTA[Methods Enzymol., 183, 63(1990)]を用いて決定することができる。このアルゴリズムBLASTに基づいて、BLASTNやBLASTXとよばれるプログラムが開発されている[J. Mol. Biol., 215, 403(1990)]。BLASTに基づいてBLASTNによって塩基配列を解析する場合には、パラメーターは例えばScore=100、wordlength=12とする。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合には、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。これらの解析方法の具体的な手法は公知である(http://www.ncbi.nlm.nih. gov.)。
【0026】
上記直鎖DNA断片は、PCRにより作製することができる。また上記直鎖DNAを含むDNAをプラスミド上にて構築した後、制限酵素処理にて目的の直鎖DNAを得ることもできる。
本発明の製造法において用いられる、微生物の染色体DNA上の10kbp以上の領域を置換または欠損させる方法としては、以下の方法1〜3があげられる。
方法1:上記(1)の直鎖DNAを宿主微生物に導入し、薬剤耐性を指標に該直鎖DNAが染色体DNA上に相同組換えにより挿入された形質転換株を選択する方法。
方法2:上記方法1により取得された形質転換株に、上記(2)の直鎖DNAを導入し、該方法により染色体DNA上に挿入された薬剤遺伝子を削除することにより、微生物の染色体DNA上の10kbp以上の領域を置換または欠損させる方法。
方法3
[1]上記(3)の直鎖DNAを宿主微生物に導入し、薬剤耐性を指標に該直鎖DNAが染色体DNA上に相同組換えにより挿入された形質転換株を選択する、
[2]染色体DNA上の置換または欠損の対象となる領域の両端の外側に位置するDNAと相同性を有するDNAを、染色体DNA上における方向と同一の方向で連結したDNAを合成し、上記[1]で得られた形質転換株に導入する、
[3]ネガティブセレクションに用いることができる遺伝子が発現する条件下において、上記[2]の操作を行った形質転換株を培養し、該培養において生育可能な株を、薬剤耐性遺伝子およびネガティブセレクションに用いることができる遺伝子が染色体DNA上から削除された株として選択する方法。
【0027】
上記方法で用いられる、直鎖DNAを宿主微生物に導入する方法としては、該微生物へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、カルシウムイオンを用いる方法〔Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 69, 2110 (1972)〕、プロトプラスト法(特開昭63−2483942)、エレクトロポレーション法〔Nucleic Acids Res., 16, 6127 (1988)〕等をあげることができる。
【0028】
方法2または方法3[2]で用いられる直鎖DNAにおいて、該DNAの中央部付近に、染色体DNA上に挿入したい任意の遺伝子を組み込こんだ直鎖DNAを用いることにより、薬剤耐性遺伝子等を削除するのと同時に、任意の遺伝子を染色体DNA上に挿入することができる。
上記方法2および3では、最終的に得られる形質転換株の染色体DNA上には薬剤耐性遺伝子およびネガティブセレクションに用いることができる遺伝子等の外来遺伝子を残さない方法であるため、該方法を用いる本発明の製造法では、同一の薬剤耐性遺伝子およびネガティブセレクションに用いることができる遺伝子を用いて、方法1および2、または方法3[1]〜[3]の操作を繰り返すことにより、容易に染色体DNA上の位置の異なる2以上の領域に10kbp以上の欠損を有する微生物を製造することができる。
【0029】
【実施例】
実施例1:λRed組換え系を有するEscherichia coliの作製
Escherichia coli KM22株[Δ(recC ptrrecB recD)::Plac−red kan](米国マサチューセッツ医科大学のKenen C. Murphy博士より入手可能)よりP1ファージを以下の方法により調製した。
【0030】
20mg/lのカナマイシンを含む10mlのLB培地〔10g/l バクトトリプトン(Difco社製)、5g/l バクトイーストエキストラクト(Difco社製)、10g/l 塩化ナトリウム、1ml/l 1mol/l 水酸化ナトリウム〕を用いて30℃にて16時間培養したKM22株の培養液 0.5mlと、1.4mlの新しいLB培地および100μlの0.1mmol/l 塩化カルシウム溶液とを混合した。30℃にて5〜6時間振とう培養した後、400μlの培養液を滅菌チューブに移した。該チューブに2μlのP1ファージストック(東京大学分子細胞生物学研究所より入手可能)を添加し、37℃にて10分間保温した。次に50℃に保温した3mlのソフトアガー溶液(10g/l バクトトリプトン(Difco社製)、5g/l バクトイーストエキストラクト(Difco社製)、5mmol/l 塩化カルシウム、1ml/lの1mol/l 水酸化ナトリウム、3g/l 寒天)を添加し、よく攪拌した後に、Ca−LB寒天培地プレート(10g/l バクトトリプトン(Difco社製)、5g/l バクトイーストエキストラクト(Difco社製)、5mmol/l 塩化カルシウム、1ml/lの1mol/l 水酸化ナトリウム、15g/l 寒天、プレートの直径は15cm)上にまいた。該プレートを37℃で7時間培養した後、スプレッダーでソフトアガー部分を細かく砕いて回収した。回収したソフトアガーを1500g、4℃にて10分間遠心分離した。得られた上清1.5mlに対し100μlのクロロホルムを添加し、4℃にて一晩保存した後、15000gにて2分間遠心分離し、その上清をファージストックとして4℃で保存した。
【0031】
次に上記で取得したファージを用いてW3110株を形質転換した。5mlのCa−LB液体培地を用いて30℃、4時間培養したW3110株培養液から200μl分取し、ファージストックを1μl添加した。37℃で10分間保温した後、5mlのLB液体培地と200μlの1mol/l クエン酸ナトリウム溶液を添加し、攪拌した。1500g、25℃にて10分間遠心分離した後、上清を捨て、得られた細胞に1mlのLB液体培地と10μlの1mol/l クエン酸ナトリウム溶液を加え30℃にて2時間保温した。該溶液100μlを20mg/lのカナマイシンを含むアンチバイオティックメディウム3寒天培地(Difco社製)に塗布し、30℃で一晩培養した。翌日出現したコロニー24個をそれぞれ、20mg/lのカナマイシンを含むアンチバイオティックメディウム3寒天培地に塗布し、カナマイシン耐性株を選抜することにより、Δ(recCptr recB recD)::Plac−red kan)領域が形質導入されたEscherichiacoli W3110red株を取得した。
【0032】
実施例2:染色体DNA上の10kbp以上の領域を欠損したEscherichia coliの製造
実施例1で取得したλRed遺伝子群を導入したEscherichia coli W3110red株〔W3110、Δ(recC ptr recBrecD)::Plac−red kan〕を宿主微生物に用い、以下の方法により、W3110red株の染色体DNA上の10kbp以上の領域が欠損した形質転換株を作製した。
【0033】
W3110red株を、1mmol/lのIPTG(Isopropyl−Thio−β−D−Galactopyranoside)を添加した100mlのLB液体培地〔10g/l バクトトリプトン(Difco社製)、5g/l バクトイーストエキストラクト(Difco社製)、10g/l 塩化ナトリウム、1ml/lの1mol/l 水酸化ナトリウム〕を用いて、30℃で培養した。OD660nmが0.1に達した時点で培養を終了した。なお、以下の操作は低温および氷冷した溶液を用いて行った。次に遠心分離により集菌した菌体を50mlの20%グリセロール溶液に懸濁し、同様の遠心分離により集菌する操作を3回以上繰り返すことで菌体を洗浄した後、培養液の50μlの10%グリセロール溶液に懸濁した。該溶液をエレクトロポレーション用のコンピテントセル溶液として使用した。
【0034】
Escherichia coli K−12株の染色体DNA配列(Genbank accession no. U00096)において、4487709〜4533599bpまでの領域約46kbpを欠失させるための直鎖DNAを以下の方法で作製した。
配列番号1で表される塩基配列を有するプライマーDNA1 (Escherichia co li染色体DNA上の4486709〜4486734bpに相当する塩基配列を有するDNA)、配列番号2で表される塩基配列を有するプライマーDNA2 (Escherichia coli染色体DNA上の4487708〜4487685bpに相当する塩基配列に25merのリンカー配列を付加したDNA)、配列番号3で表される塩基配列を有するプライマーDNA3 (Escherichia coli染色体DNA上の4534599〜4534575bpに相当する塩基配列からなるDNA)、配列番号4で表される塩基配列を有するプライマーDNA4 (Escherichia coli染色体DNA上の4533600〜4533620bpに相当する塩基配列に25merのリンカー配列を付加したDNA)を合成した。
【0035】
Escherichia coli W3110株の染色体DNAを鋳型に用い、上記プライマーDNA1と2、またはプライマーDNA3と4の組合せをプライマーセットとしてそれぞれPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で1.5分間のサイクルを30回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては精製した染色体DNA100ngまたは爪楊枝の先で拾った少量の菌体を用いた。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0036】
上記PCRにて、欠損対象領域の両端に位置する染色体DNA配列とそれぞれ相同な1kbの領域(アーム)を取得した。以下、プライマーDNA1と2をプライマーセットに用いて増幅されたDNAを上流アーム、プライマーDNA3と4をプライマーセットに用いて増幅されたDNAを下流アームと呼ぶ。
次に、配列番号5で表される塩基配列を有するプライマーDNA5、および配列番号6で表される塩基配列を有するプライマーDNA6を合成した。該DNAをプライマーセットとして用い、pHSG399プラスミドDNA(宝酒造社より購入可能)を鋳型にしてPCRを行った。PCRは上記と同様の条件で行った。鋳型DNAとしては精製したプラスミドDNA40ngを用いた。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0037】
上記PCRにて、クロラムフェニコール耐性遺伝子(cat遺伝子)を含むDNA断片を取得した。
次に、上記で取得した上流アーム、下流アーム、およびcat遺伝子を含むDNA断片を混合したDNAを鋳型として、プライマーDNA1と3をプライマーセットに用いたPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で7分間のサイクルを35回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては精製した上流アームDNA溶液1μl、精製した下流アームDNA溶液1μl、精製したcat遺伝子断片1.5μlを用いた。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0038】
上記PCRにて、cat遺伝子の一端に上流アーム、他の一端に下流アームが付加したDNA断片を作製した。該DNA断片をアガロースゲル電気泳動法(Molecular Cloning 3rd edition、Cold Spring Harbor Laboratory Press)により分離し、該DNA断片をゲルから切り出して、QIA quick Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)を用いて精製した。
【0039】
精製したDNA断片0.1μgを、上記で作製したコンピテントセル溶液50μlに添加し、0.1cmのキュベット(BioRad社製)中で、1.8KV、25μFにてエレクトロポレーションを行った。1mlのSOC液体培地(20g/lバクトトリプトン(Difco社製)、5g/l バクトイーストエキストラクト(Difco社製)、0.5g/l 塩化ナトリウム、0.2ml/lの5mol/l 水酸化ナトリウム、20ml/l 1mol/l グルコース、10ml/lの1mol/l 水酸化マグネシウム、10ml/lの1mol/l 硫酸マグネシウム)を用いて37℃で2時間培養した後、遠心分離により集菌した全量を、15μg/ml クロラムフェニコールを含むLB寒天プレート(LB液体培地に寒天を1.5%含むもの。以下、LBcm寒天培地プレートと略す)上に塗布し、37℃で一晩培養することにより、クロラムフェニコール耐性株を取得した。
【0040】
取得したクロラムフェニコール耐性株の染色体DNA上に目的とする欠損(4487709〜4533599bpの領域がcat遺伝子で置き換わっている)が導入されていることを確認することを目的に以下の実験を行った。
上記で用いたアーム配列末端からさらに染色体DNA上において上流または下流にそれぞれ1kb離れた領域に相当するプライマーDNAである、配列番号7で表される塩基配列を有するプライマーDNA7 (Escherichia coli染色体DNA上の4485709〜4485729bpに相当する塩基配列からなるDNA)および配列番号8で表される塩基配列を有するプライマーDNA8 (Escherichia coli染色体DNA上の4535599〜4535575bpに相当する塩基配列からなるDNA)を合成した。プライマーDNA7および8をプライマーセットとして用い、クロラムフェニコール耐性株のコロニーを直接鋳型としたPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で7分間のサイクルを35回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては爪楊枝の先で拾った少量の菌体をPCR反応液に懸濁して鋳型とした。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0041】
その結果、約4.6kbの増幅DNA断片が得られた。プライマーDNA7および8をプライマーセットに用い、目的とする欠損が導入されたクロラムフェニコール耐性株の染色体DNAを鋳型にしたPCRによって取得される増幅DNA断片は、cat遺伝子(0.6kb)の両端にそれぞれ約2kbのDNAが付加されたDNA断片(約4.6kb)であることから、目的とする形質転換株が得られたことを確認し、該形質転換株をΔe_cat株(欠失領域4487709〜4533599bp)と命名した。
【0042】
上記Δe_cat株の製造法と同様の方法により、Escherichia coli染色体DNA上の262892〜297016bpの領域が欠損した株(Δf_cat)、564017〜584879bpの領域が欠損した株(Δc_cat)、1196089〜1223131bpの領域が欠損した株(Δg_cat)、1417345〜1432282bpの領域が欠損した株(Δh_cat)、1506837〜1517125bpの領域が欠損した株(Δb_cat)、1805403〜1811733bpの領域が欠損した株(Δa_cat)、2318062〜2332423bpの領域が欠損した株(Δk_cat)、2754159〜2788004bpの領域が欠損した株(Δd_cat)、3108606〜3132839bpの領域が欠損した株(Δl_cat)、3451144〜3467491bpの領域が欠損した株(Δm_cat)、4569934〜4586334bpの領域が欠損した株(Δo_cat)、256206〜363992bpの領域が欠損した株(ΔCGSC1_cat)を取得することができた。
【0043】
実施例3 ネガティブセレクションに用いることができる遺伝子を用いた染色体DNA上の10kbp以上の領域を欠損したEscherichia coliの製造
実施例1で取得したλRed遺伝子群を導入した株W3110red株〔W3110、Δ(recC ptr recB recD)::Plac−red kan〕を宿主微生物に用い、薬剤耐性遺伝子およびネガティブセレクションに用いることができる遺伝子としてBacillus subtilis由来のlevansucrase遺伝子(sacB遺伝子、GenBank accession no.BG10388)を有する直鎖DNAを用いて、以下の方法によりW3110red株の染色体DNA上の10kbp以上の領域が欠損した形質転換株を作製した。
【0044】
W3110red株のコンピテントセルは実施例2と同様の方法により作製した。
Escherichia coliK−12株の染色体配列(Genbank accession no. U00096)で4487709〜4533599bpまでの領域約46kbpを欠失させるための直鎖DNAを以下の方法で作製した。
【0045】
配列番号9で表される塩基配列を有するプライマーDNA9 (Escherichia coli染色体DNA上の4485709〜4485729bpに相当する塩基配列からなるDNA)、配列番号10で表される塩基配列を有するプライマーDNA10 (Escherichia coli染色体DNA上の4487708〜4487685bpに相当する塩基配列に25merのリンカー配列を付加した塩基配列からなるDNA)、配列番号11で表される塩基配列を有するプライマーDNA11 (Escherichia coli染色体DNA上の4535599〜4535575bpに相当する塩基配列からなるDNA)、配列番号12で表される塩基配列を有するプライマーDNA12 (Escherichia coli染色体DNA上の4533600〜4533620bpに相当する塩基配列に22merのリンカー配列を付加した塩基配列からなるDNA)を合成した。
【0046】
W3110red株のゲノムDNAを鋳型に、プライマーDNA9と10、またはプライマーDNA11と12をプライマーセットとしてそれぞれPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で1.5分間のサイクルを30回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては精製染色体DNA100ngまたは爪楊枝の先で拾った少量の菌体を用いた。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0047】
上記PCRにて、欠失対象領域の両端に位置する染色体DNA配列とそれぞれ相同な2kbの領域(アーム)を取得した。以下、プライマーDNA9と10をプライマーセットとして増幅されたDNA断片を上流アーム、プライマーDNA11と12をプライマーセットとして増幅されたDNA断片を下流アームと呼ぶ。
【0048】
sacB遺伝子(Genbank accession no. X02730)を、コーディング領域の上流400bp、下流200bpまでの領域としてPCR法にて取得した。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で1.5分間のサイクルを30回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしてはBacillussubtil is 168株(ATCC等の各種機関より入手可能)精製染色体DNA100ngを用いた。プライマーDNAには、配列番号45で表される塩基配列からなるプライマーDNA45と配列番号46で表される塩基配列からなるプライマーDNA46を各々20pmol反応液に添加した。
【0049】
上記PCRにて取得した断片を、PCR purification Kit(QIAGEN社製)を用いて精製し、最終的に各々50μlのDNA溶液を得た。
またpHSG399プラスミド由来のクロラムフェニコール耐性遺伝子(cat)断片を実施例2で取得したときと同様のPCR法にて増幅し、精製DNAを取得した。ただしプライマーセットとして配列番号47で表される塩基配列からなるプライマーDNA47と配列番号48で表される塩基配列からなるプライマーDNA48を用いた。
【0050】
上記PCRで取得したsacB断片とcat断片を鋳型として、プライマーDNA45とプライマーDNA48をプライマーセットとしてPCRを行い、二つの遺伝子の向きが同一方向に連結したDNA断片を取得した。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で3分間のサイクルを30回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては精製したsacB断片1μlとcat断片1μlを用いた。各プライマーは各々20pmol反応液に添加した。
【0051】
上記PCRにて取得した断片を、電気泳動後ゲルから切り出し、gel extraction Kit(QIAGEN社製)を用いて精製し、最終的に各々50μlのDNA溶液を得た。
該DNAをInvitrogen社製のTA Cloning Kitにて、プラスミドpCR2.1中ににクローニングすることで、プラスミドpCR2.1_sacB_200_catを作製した(クローニングの方法はキットに付属の指示書に従った)。pCR2.1_sacB_200_cat のsacB遺伝子とcat遺伝子を連結させた部分の構造を図1に示した。
【0052】
次に配列番号13で表される塩基配列からなるプライマーDNA13、配列番号14で表される塩基配列からなるプライマーDNA14をプライマーセットとして用い、pCR2.1_sacB_200_catプラスミドを鋳型にしてPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で1.5分間のサイクルを30回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては精製プラスミドDNA40ngを用いた。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0053】
上記PCRにて、sacB遺伝子、cat遺伝子を含むDNA断片(sacB + cat断片)を取得した。該DNA断片をアガロースゲル電気泳動法(Molecular Cloning 3rd edition、Cold Spring Harbor Laboratory Press)により分離し、該DNA断片をゲルから切り出して、QIA quick Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)を用いて精製し、最終的に50μlのDNA溶液を得た。
【0054】
次に、上流アーム、下流アーム断片およびsacB + cat断片の3つのDNA断片を混合したものを鋳型として、配列番号15で表される塩基配列からなるプライマーDNA (Escherichia coli染色体DNA上の4486709〜4486734bpに相当する塩基配列からなるDNA)、配列番号16で表される塩基配列からなるプライマー16 (Escherichia coli染色体DNA上の4534599〜4534575bpに相当塩基配列からなるDNA)をプライマーセットに用いたPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で7分間のサイクルを35回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては精製上流アームDNA溶液1μl、精製下流アームDNA溶液1μl、精製sacB + cat遺伝子断片1.5μlを用いた。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0055】
上記PCRにて、sacB遺伝子とcat遺伝子が結合したDNAの両端に、欠失対象領域の両端および上流アーム、下流アームが付加したDNA断片を増幅DNA断片として取得した。該DNA断片は上記と同様の方法によりアガロースゲル電気泳動法により分離し、該DNA断片を含む部分をゲルから切り出し、精製した。
【0056】
精製したDNA断片を、コンビテントセル溶液に添加し、実施例2と同様の方法でエレクトロポレーションによりW3110red株に導入し、LBcmプレート上で形質転換株を選択した。選択された形質転換株のコロニーをSuLB寒天培地〔10g/l バクトトリプトン(Difco社製)、5g/l バクトイーストエキストラクト(Difco社製)、10% シュークロース、20mg/l カナマイシン、15mg/l クロラムフェニコール、1ml/lの1mol/l 水酸化ナトリウム)プレートにレプリカし、シュークロース感受性を示す株を選択した。
【0057】
選択された株の染色体DNA上において欠損対象領域である4487709〜4533599bpがsacB遺伝子とcat遺伝子との結合DNAと置換していることを確認するため、以下の実験を行った。
形質転換に用いた直鎖DNAのアーム配列末端からさらに上流および下流にそれぞれ1kb離れた領域に相同な塩基配列を有する配列番号9で表される塩基配列からなるプライマー9および配列番号11で表される塩基配列からなるプライマー11をプライマーセットに用いて、選択された株のコロニーを直接鋳型としたPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で7分間のサイクルを35回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては爪楊枝の先で拾った少量の菌体をPCR反応液に懸濁して鋳型とした。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0058】
その結果、約6.7kbの増幅断片が得られた。プライマーDNA9および11をプライマーセットに用い、目的とする欠損が導入されたクロラムフェニコール耐性、シュークロース感受性株の染色体DNAを鋳型にしたPCRによって取得される増幅DNA断片は、sacB 遺伝子とcat遺伝子の結合体(2.7kb)の両端にそれぞれ約2kbのDNAが付加されたDNA断片(約6.6kb)であることから、目的とする形質転換株が得られたことを確認し、該形質転換株をΔE_suc株(欠損領域4487709〜4533599bp)と命名した。
【0059】
ΔE_suc株の製造法と同様の方法により、Escherichia coli染色体DNA上の262892〜297016bpの領域が欠損した株(ΔA_suc株)、564017〜584879bpの領域が欠損した株(ΔC_suc)、1196089〜1223131bpの領域が欠損した株(ΔD_suc)、1417345〜1432282bpの領域が欠損した株(ΔF_suc)、1506837〜1517125の領域が欠損した株(ΔG_suc)、1805403〜1811733bpの領域が欠損した株(ΔH_suc)、2318062〜2332423bpの領域が欠損した株(ΔK_suc)、2754159〜2788004bpの領域が欠損した株(ΔL_suc)、3108606〜3132839bp(ΔM_suc)、3451144〜3467491bpの領域が欠損した株(ΔCGSC_suc)を取得することができる。
【0060】
実施例4 ストレプトマイシン耐性でλRed系を有する株の作製
Escherichia coli MG1655rpsL株(東京都立大学加藤潤一教授より入手可能)を親株として、λRed組換え系を導入した。
Escherichia coli KM22株[Δ(recC ptrrecB recD)::Plac −red kan](米国マサチューセッツ医科大学のKenen C. Murphy博士より入手可能)よりP1ファージを以下の方法により調製した。
【0061】
20mg/lのカナマイシンを含む10mlのLB培地〔10g/l バクトトリプトン(Difco社製)、5g/l バクトイーストエキストラクト(Difco社製)、10g/l 塩化ナトリウム、1ml/lの1mol/l 水酸化ナトリウム〕を用いて30℃にて16時間培養したKM22株の培養液 0.5mlと、1.4mlの新しいLB培地および100μlの0.1mmol/l 塩化カルシウム溶液とを混合した。30℃にて5〜6時間振とう培養した後、400μlの培養液を滅菌チューブに移した。該チューブに2μlのP1ファージストック(東京大学分子細胞生物学研究所より入手可能)を添加し、37℃にて10分間保温した。次に50℃に保温した3mlのソフトアガー溶液(10g/l バクトトリプトン(Difco社製)、5g/l バクトイーストエキストラクト(Difco社製)、5mmol/l 塩化カルシウム、1ml/lの1mol/l 水酸化ナトリウム、3g/l 寒天)を添加し、よく攪拌した後に、Ca−LB寒天培地プレート(10g/l バクトトリプトン(Difco社製)、5g/l バクトイーストエキストラクト(Difco社製)、5mmol/l 塩化カルシウム、1ml/l 1mol/lの水酸化ナトリウム、15g/l 寒天、プレートの直径は15cm)上にまいた。該プレートを37℃で7時間培養した後、スプレッダーでソフトアガー部分を細かく砕いて回収した。回収したソフトアガーを1500g、4℃にて10分間遠心分離した。得られた上清1.5mlに対し100μlのクロロホルムを添加し、4℃にて一晩保存した後、15000gにて2分間遠心分離し、その上清をファージストックとして4℃で保存した。
【0062】
次に上記で取得したファージを用いてMG1655rpsL株を形質転換した。5mlのCa−LB液体培地を用いて30℃、4時間培養したW3110株培養液から200μl分取し、ファージストックを1μl添加した。37℃で10分間保温した後、5mlのLB液体培地と200μlの1mol/l クエン酸ナトリウム溶液を添加し、攪拌した。1500g、25℃にて10分間遠心分離した後、上清を捨て、得られた細胞に1mlのLB液体培地と10μlの1mol/l クエン酸ナトリウム溶液を加え30℃にて2時間保温した。該溶液100μlを20mg/lのカナマイシンを含むアンチバイオティックメディウム3寒天培地(Difco社製)に塗布し、30℃で一晩培養した。翌日出現したコロニー24個をそれぞれ、20mg/lのカナマイシンを含むアンチバイオティックメディウム3寒天培地に塗布し、カナマイシン耐性株を選抜することにより、Δ(recCptr recB recD)::Plac −red kan)領域が形質導入されたEscherichiacoli MG1655rsh株〔MG1655、rpsL、Δ(recC ptr recBrecD)::Plac −red kanを取得した。
【0063】
実施例5 ネガティブセレクションに用いることができる遺伝子を二つ用いた染色体DNA上の10kbp以上の領域を欠損したEscherichia coliの製造
実施例4で取得したλRed遺伝子群を導入したMG1655rsh株を宿主微生物に用い、薬剤耐性遺伝子およびネガティブセレクションに用いることができる遺伝子としてBacillus subtilis由来のsacB遺伝子とEscherichia coli由来のストレプトマイシン感受性リボソーマルタンパク遺伝子(rpsL、GenBank accession no. J01688)を有する直鎖DNAを用いて、以下の方法によりMG1655rsh株の染色体DNA上の10kb以上の領域が欠損した形質転換株を作製した。
【0064】
染色体上の形質転換が可能なコンピテントセルは実施例2と同様の方法により作製した。
Escherichia coliK−12株の染色体配列(Genbank U00096)で498306〜552387bpまでの領域約54kbpを欠損させるための直鎖DNA断片を、以下のようにして作製した。
【0065】
配列番号17で表される塩基配列からなるプライマーDNA17(Escherichia coli染色体DNA上の496804〜496828bpに相当する塩基配列を有するDNA)、配列番号18で表される塩基配列からなるプライマーDNA18(Escherichiacoli染色体DNA上の498305〜498280bpに相当する塩基配列に27merのリンカー配列を付加した塩基配列からなるDNA)、配列番号19で表される塩基配列からなるプライマーDNA19 (Escherichia coli染色体DNA上の553888〜553863bpに相当する塩基配列からなるDNA)、配列番号20で表される塩基配列からなるプライマーDNA20(Escherichia coli染色体DNA上の552388〜552412bpに相当する塩基配列に29merのリンカー配列を付加したDNA)を合成した。MG1655rsh株の染色体DNAを鋳型して、プライマーDNA17と18、またはプライマーDNA19と20をプライマーセットとしてそれぞれPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で1.5分間のサイクルを30回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては精製した染色体DNA100ngまたは爪楊枝の先で拾った少量の菌体を用いた。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0066】
上記PCRにて、欠損対象領域の両端に位置する染色体DNA配列とそれぞれ相同な1.5kbの領域(アーム)を取得した。以下、プライマーDNA17と18をプライマーセットとして増幅されたDNA断片を上流アーム、プライマーDNA19と20をプライマーセットとして増幅されたDNA断片を下流アームと呼ぶ。
【0067】
次にsacB遺伝子、rpsL遺伝子およびcat遺伝子を含む断片を、以下の方法により取得した。東京都立大学理学部加藤潤一教授より入手することができるsacB遺伝子、rpsL遺伝子、cat遺伝子の順に配列されたDNA断片を有するminiF_SacI_1_10プラスミドを鋳型として、配列番号21で表される塩基配列からなるプライマーDNA21および配列番号22で表される塩基配列からなるプライマーDNA22をプライマーセットとしてPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で1.5分間のサイクルを30回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては精製プラスミドDNA40ngを用いた。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0068】
上記PCRにて、sacB遺伝子、rpsL遺伝子およびcat遺伝子を含むDNA断片(以下、マーカーユニット断片という)を増幅DNA断片として取得した。該増幅DNA断片の構造を図2に示した。
次に、上記で取得した上流アーム、下流アームと、マーカーユニット断片を混合したものを鋳型として、配列番号23で表される塩基配列からなるプライマーDNA23(Escherichia coli染色体DNA上の497328〜497352bpに相当する塩基配列からなるDNA)、配列番号24で表される塩基配列からなるプライマーDNA24 (Escherichia coli染色体DNA上の553388〜553364bpに相当する塩基配列を有するDNA)をプライマーセットとして用いたPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で7分間のサイクルを35回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては精製上流アームDNA溶液1μl、精製下流アームDNA溶液1μl、精製マーカーユニット断片1.5μlを用いた。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0069】
上記PCRにて、マーカーユニット断片の両端にそれぞれ1.5kbの上流アームおよび下流アームが付加した増幅DNA断片を取得した。該増幅DNA断片を上記と同様の方法によりアガロースゲル電気泳動法により分離し、目的とするDNA断片をゲルから切り出し、精製した。
精製したDNA断片を、先に作製したMG1655rsh株のコンピテントセル溶液に添加し、実施例2と同様の方法でエレクトロポレーションによりDNA断片をMG1655rsh株に導入し、LBcmプレート上で形質転換株を選択した。取得した形質転換株のコロニーをSuLB寒天培地ならびにStLB寒天培地(10g/l バクトトリプトン(Difco社製)、5g/l バクトイーストエキストラクト(Difco社製)、10g/l 塩化ナトリウム、50mg/l ストレプトマイシン、20mg/l カナマイシン、15mg/l クロラムフェニコール、1ml/lの1mol/l 水酸化ナトリウム)プレートにそれぞれレプリカし、シュークロースおよびストレプトマイシン感受性を示す株を選択した。
【0070】
選択された株の染色体DNA上において欠損対象領域である498306〜552387bpがマーカーユニット断片と置換していることを確認するため、以下の実験を行った。
配列番号17で表される塩基配列を有するプライマーDNA17と配列番号19で表される塩基配列を有するプライマーDNA19をプライマーセットに用い、選択された形質転換株のコロニーを直接鋳型としてPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で7分間のサイクルを35回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては爪楊枝の先で拾った少量の菌体をPCR反応液に懸濁して鋳型とした。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0071】
その結果、約8.0kbの増幅断片が得られた。プライマーDNA17および18をプライマーセットに用い、目的とする欠損が導入されたクロラムフェニコール耐性、シュークロース感受性、ストレプトマイシン感受性株の染色体DNAを鋳型にしたPCRによって取得される増幅DNA断片は、sacB 遺伝子、cat遺伝子、およびrpsL遺伝子を含むマーカーユニット(5.0kb)の両端にそれぞれ約1.5kbのDNAが付加されたDNA断片(約8.0kb)であることから、目的とする形質転換株が得られたことを確認し、該形質転換株をΔ28−1_ss株(欠失領域498306〜552387bp)と命名した。
【0072】
Δ28−1_ss株の製造法と同様の方法により、Escherichia coli染色体DNA上の2194444〜2240962bpの領域が欠損した株(Δ16−2_ss)、4273337〜4359000bpの領域が欠損した株(Δ4−1_ss)、1042178〜1120467bpの領域が欠損した株(Δ17−1_ss)、564277〜643371bpの領域が欠損した株(Δ12−1_ss)、564277〜608454bpの領域が欠損した株(Δ12−C_ss)、564277〜601049bpの領域が欠損した株(Δ12−D_ss)、4273265〜4350450bpの領域が欠損した株(Δ04−B_ss)、4273265〜4327813bpの領域が欠損した株(Δ04−D_ss)、3214420〜3267669bpの領域が欠損した株(Δ5−1_ss)、3723219〜3769371bpの領域が欠損した株(Δ2−2_ss)、2821911〜2864551bpの領域が欠損した株(Δ21−1_ss)、236844〜387924bpの領域が欠損した株(Δ9−1_ss)、2346552〜2420667bpの領域が欠損した株(Δ13−1_ss)、2447166〜2517234bpの領域が欠損した株(Δ11−1_ss)、2964170〜3031653bpの領域が欠損した株(Δ8−1_ss)、3616619〜3715942bpの領域が欠損した株(Δ2−1_ss)、1195720〜1257001bpの領域が欠損した株(Δ18−1_ss)、1384691〜1588751bpの領域が欠損した株(Δ20−1_ss)、2042756〜2083065bpの領域が欠損した株(Δ16−1−1_ss)、2083063〜2192177bpの領域が欠損した株(Δ16−1−2_ss)、2284391〜2334770bpの領域が欠損した株(Δ14−1_ss)、2555349〜2616046bpの領域が欠損した株(Δ10−1_ss)、2751589〜2812235bpの領域が欠損した株(Δ22_ss)、2821911〜2864550bpの領域が欠損した株(Δ21_ss)、3092021〜3160703bpの領域が欠損した株(Δ7−1_ss)、4486040〜4597775bpの領域が欠損した株(Δ1−1_ss)を製造することができた。
【0073】
実施例6 薬剤耐性遺伝子およびネガティブセレクションに用いることができる遺伝子が削除された染色体DNA上の10kbp以上の領域を欠損したEscherichia coliの製造
実施例3で取得されたΔE_suc株からcat遺伝子およびsucB遺伝子が削除されたEscherichia coliを、以下の方法により製造した。
【0074】
配列番号25で表される塩基配列からなるプライマーDNA25 (Escherichia coli染色体DNA上の4533620〜4533600bpと4487708〜4487685に相当する塩基配列を結合した塩基配列からなるDNA)、配列番号26で表される塩基配列からなるプライマーDNA26 (Escherichia coli染色体DNA上の4487685〜448770 bpと4533600〜4533620に相当する塩基配列を結合した塩基配列からなるDNA)を合成した。
【0075】
次に、Escherichia coli K−12株の染色体DNAを鋳型に、プライマーDNA9とプライマーDNA25、またはプライマーDNA11とプライマーDNA26のプライマーセットを用いてそれぞれPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で1.5分間のサイクルを30回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては精製染色体DNA100ngまたは爪楊枝の先で拾った少量の菌体を用いた。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0076】
上記PCRにて、欠損対象領域の両端に位置する染色体DNA配列とそれぞれ相同な配列を有する1kbのDNA断片(アーム)を取得した。以下、プライマーDNA9と25をプライマーセットとして増幅されたDNA断片を上流アーム、プライマーDNA11と26をプライマーセットとして増幅されたDNA断片を下流アームと呼ぶ。得られたDNA断片は、それぞれQIAquick PCR purification kit(キアゲン社製)を用いて精製し、次にそれらを混合したものを鋳型として、プライマーDNA15と16プライマーセットとして用いたPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で1.5分間のサイクルを30回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては精製上流アームDNA溶液1μl、精製下流アームDNA溶液1μlを用いた。
【0077】
上記PCRにて、上記アーム同士が結合した2kbの断片を増幅DNA断片として取得し、QIA quick Gel Extraction Kitを用いて精製した。
実施例2と同様の方法で、ΔE_suc株を培養してコンピテントセル溶液を作製し、精製したDNA断片を添加し、エレクトロポレーションにより該DNA断片をΔE_suc株に導入した。選択培地には、SuLB寒天培地を用いた。選択された形質転換株のコロニーをLBcm寒天プレートにレプリカし、クロラムフェニコール感受性を示す株を選択した。
【0078】
プライマーDNA15および16をプライマーセットに用い、選択されたシュークロース耐性、クロラムフェニコール感受性コロニーを直接鋳型としたPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で7分間のサイクルを35回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては爪楊枝の先で拾った少量の菌体をPCR反応液に懸濁して鋳型とした。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0079】
その結果、約4.0kbの増幅断片が得られた。プライマーDNA15および16をプライマーセットに用い、目的とする置換が導入され、sucB遺伝子およびcat遺伝子が削除されたシュークロース耐性、クロラムフェニコール感受性株の染色体DNAを鋳型にしたPCRによって取得される増幅DNA断片は、アームの両外側の1kbと両アーム領域の1kbが増幅されることから約4kbのバンドが増幅するので、上記方法によりマーカー遺伝子が残らない染色体DNA上の10kb以上の領域が欠損した染色体DNA部分欠失株(ΔE株)が製造できたことが確認された。
【0080】
ΔE株の製造法と同様の方法により、Escherichia coliの染色体DNA上の262892〜297016bpの領域が欠損した株(ΔA株)、564017〜584879bpの領域が欠損した株(ΔC株)、1196089〜1223131bpの領域が欠損した株(ΔD株)、1417345〜1432282bpの領域が欠損した株(ΔF株)、1506837〜1517125bpの領域が欠損した株(ΔG株)、2318062〜2332423bpの領域が欠損した株(ΔK株)、2754159〜2788004bpの領域が欠損した株(ΔL株)、3108606〜3132839bpの領域が欠損した株(ΔM株)、3451144〜3467491bpの領域が欠損した株(ΔCGSC)を製造することができた。
【0081】
次に、実施例5で作製したΔ28_ss株からsacB遺伝子、rpsL遺伝子およびcat遺伝子を削除した株を、以下の方法により製造した。
配列番号27で表される塩基配列からなるプライマーDNA27(Escherichiacoli染色体DNA上の552412〜552388bpと498306〜498280bpに相当する塩基配列を結合した塩基配列からなるDNA)、配列番号28で表される塩基配列からなるプライマーDNA28 (Escherichia coli染色体DNA上の498280〜498304bpと552388〜552412bpに相当する塩基配列を結合した塩基配列からなるDNA)を合成した。
【0082】
Escherichia coliゲノムを鋳型に、プライマーDNA17とプライマーDNA27、またはプライマーDNA19とプライマーDNA28のプライマーセットを用いてそれぞれPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で1.5分間のサイクルを30回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては精製染色体DNA100ngまたは爪楊枝の先で拾った少量の菌体を用いた。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0083】
上記PCRにて、欠損対象領域の両端に位置する染色体DNAの塩基配列とそれぞれ相同な配列を有する1kbの増幅DNA断片(アーム)を取得した。以下、プライマーDNA17と27をプライマーセットとして増幅されたDNA断片を上流アーム、プライマーDNA19と28をプライマーセットとして増幅されたDNA断片を下流アームと呼ぶ。該DNA断片はそれぞれQIAquick PCR purification kit(キアゲン社製)で精製し、それらを混合したものを鋳型として、プライマーDNA23と24を用いたPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で1.5分間のサイクルを30回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては精製上流アームDNA溶液1μl、精製下流アームDNA溶液1μlを用いた。
【0084】
上記PCRにて、上記アーム同士が結合した2kbの断片を取得し、QIA quick Gel Extraction Kit(キアゲン)を用いて精製した。
実施例2と同様の方法で、Δ28_ss株を培養してコンピテントセル溶液を作製し、精製したDNA断片を添加し、エレクトロポレーションにより該DNA断片をΔ28_ss株に導入した。選択培地には、SuStLB寒天培地 (10g/l バクトトリプトン(Difco社製)、5g/l バクトイーストエキストラクト(Difco社製)、10% シュークロース、20mg/l カナマイシン、50mg/l ストレプトマイシン、1ml/lの1mol/l 水酸化ナトリウム)を用いた。選択された形質転換株のコロニーをLBcm寒天培地プレート上にレプリカし、クロラムフェニコール感受性を示す株を選択した。
【0085】
プライマーDNA17および19をプライマーセットとして用い、選択されたシュークロース耐性、ストレプトマイシン耐性、クロラムフェニコール感受性コロニーを直接鋳型としたPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で7分間のサイクルを35回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては爪楊枝の先で拾った少量の菌体をPCR反応液に懸濁して鋳型とした。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0086】
その結果、約3kbの増幅DNA断片が取得された。プライマーDNA17および19をプライマーセットに用いた、目的とする置換が導入され、sucB遺伝子、rpsL遺伝子およびcat遺伝子が削除されたシュークロース耐性、ストレプトマイシン耐性、クロラムフェニコール感受性株の染色体DNAを鋳型にしたPCRによって取得される増幅DNA断片は、アームの両外側の0.5kbと両アーム領域の1kbが増幅されることから約3kbのバンドが増幅するので、上記方法によりマーカー遺伝子が残らない染色体DNA上の10kb以上の領域が欠損した染色体DNA部分欠損株(Δ28株)が製造できたことが確認された。
【0087】
Δ28株の製造法と同様の方法により、Escherichia coliの染色体DNA上の2194444〜2240962bpの領域が欠損した株(Δ16−2)、4273337〜4359000bpの領域が欠損した株(Δ4−1)、1042178〜1120467bpの領域が欠損した株(Δ17−1)、564277〜643371bpの領域が欠損した株(Δ12−1)、3214420〜3267669bpの領域が欠損した株(Δ5−1)、3723219〜3769371bpの領域が欠損した株(Δ2−2)、236844〜387924bpの領域が欠損した株(Δ9−1)、2346552〜2420667bpの領域が欠損した株(Δ13−1)、2447166〜2517234bpの領域が欠損した株(Δ11−1)、2964170〜3031653bpの領域が欠損した株(Δ8−1)、3616619〜3715942bpの領域が欠損した株(Δ2−1)、2083063〜2192177bpの領域が欠損した株(Δ16−1−2)、2284391〜2334770bpの領域が欠損した株(Δ14−1)、2555349〜2616046bpの領域が欠損した株(Δ10−1)、2751589〜2812235bpの領域が欠損した株(Δ22)、2821911〜2864550bpの領域が欠損した株(Δ21)、4486040〜4597775bpの領域が欠損した株(Δ1−1)を製造することができた。
【0088】
実施例7 多重欠損体の製造法1(λredを利用した段階的な欠損導入)
染色体DNAの多重欠損株を、実施例3または実施例5で記載したネガティブセレクションに用いることができる遺伝子を利用した染色体DNAの置換または欠損株の製造法と、実施例6に記載した薬剤耐性遺伝子およびネガティブセレクションに用いることができる遺伝子が削除された染色体DNAの部分欠損株の製造法を交互に行うことにより製造した。
【0089】
MG1655rsh株のコンピテントセルは実施例2と同様の方法により作製した。
Escherichia coliK−12株の染色体DNA配列(Genbank U00096)で564277〜643371bpまでの領域約79kbpを欠損させるための直鎖DNA断片を以下のように作製した。
【0090】
配列番号29で表される塩基配列からなるプライマーDNA29 (Escherichia coli染色体DNA上の562788 〜 562812bpに相当する塩基配列からなるDNA)、配列番号30で表される塩基配列からなるプライマーDNA30 (Escherichia coli染色体DNA上の564276〜564252bpに相当する塩基配列に27merのリンカー配列を付加した塩基配列からなるDNA)、配列番号31で表される塩基配列からなるプライマーDNA31 (Escherichia coli染色体DNA上の644868〜644844bpに相当する塩基配列からなるDNA)、配列番号32で表される塩基配列からなるプライマーDNA32 (Escherichia coli染色体DNA上の643372〜643396bpに相当する塩基配列に29merのリンカー配列を付加した塩基配列からなるDNA)を合成した。
【0091】
Escherichia coliK−12株の染色体DNAを鋳型に、プライマーDNA29と30、またはプライマーDNA31と32のプライマーセットを用いてそれぞれPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で1.5分間のサイクルを30回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては精製染色体DNA100ngまたは爪楊枝の先で拾った少量の菌体を用いた。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0092】
上記PCRにて、欠損対象領域の両端に位置する染色体DNA配列とそれぞれ相同な塩基配列を有する1kbのDNA断片(アーム)を取得した。以下、プライマーDNA29と30のプライマーセットで増幅したDNA断片を上流アーム、プライマーDNA31と32のプライマーセットで増幅したDNA断片を下流アームと呼ぶ。
【0093】
次にプライマーDNA21およびプライマーDNA22を用い、miniFプラスミドminiF_SacI_1_10を鋳型としたPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で1.5分間のサイクルを30回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては精製プラスミドDNA40ngを用いた。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0094】
上記PCRにて、実施例4と同様にsacB遺伝子、rpsL遺伝子、cat遺伝子を含むDNA断片(マーカーユニット断片)を取得した。
次に、上記で取得した上流アーム、下流アーム断片、およびマーカーユニット断片の3つのDNA断片を混合したものを鋳型として、配列番号33で表される塩基配列からなるDNA (Escherichia coli染色体DNA上の563276〜563310bpに相当する塩基配列からなるDNA)、配列番号34で表される塩基配列からなるDNAプライマー34 (Escherichia coli染色体DNA上の644366〜644342bpに相当する塩基配列からなるDNA)をプライマーセットとして用いたPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で7分間のサイクルを35回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては精製上流アームDNA溶液1μl、精製下流アームDNA溶液1μl、精製マーカーユニット断片1.5μlを用いた。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0095】
上記PCRにて、マーカーユニットの両端にそれぞれ上流アーム(1kb)および下流アーム(1kb)が付加した増幅DNA断片を取得した。該DNA断片をアガロースゲル電気泳動法により分離し、目的の断片をゲルから切り出して、精製した。
実施例2と同様の方法により、精製したDNA断片を、MG1655rsh株のコンピテントセル溶液に添加し、エレクトロポレーションによりMG1655rsh株に導入し、選択培地に、LBcm寒天培地を用いて形質転換株を選択した。選択された形質転換株のコロニーをLBcm寒天培地プレート上にレプリカし、クロラムフェニコール耐性を示す株を選択した。選択されたコロニーをSuLB寒天培地ならびにStLB寒天培地プレートにそれぞれレプリカし、シュークロースおよびストレプトマイシン感受性を示す株を選択した。
【0096】
プライマーDNA29と31をプライマーセットに用い、選択されたクロラムフェニコール耐性、シュークロース感受性、ストレプトマイシン感受性コロニーを直接鋳型としたPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で7分間のサイクルを35回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては爪楊枝の先で拾った少量の菌体をPCR反応液に懸濁して鋳型とした。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0097】
その結果、約8kbpの増幅断片が得られた。プライマーDNA29および31をプライマーセットに用いた、目的とする置換が導入され、sucB遺伝子、rpsL遺伝子およびcat遺伝子が挿入されたシュークロース感受性、ストレプトマイシン感受性、クロラムフェニコール耐性株の染色体DNAを鋳型にしたPCRによって取得される増幅DNA断片は、アームの両外側の0.5kb、両アーム領域の1kbおよびsacB遺伝子、rpsL遺伝子、cat遺伝子ユニットの5kbが増幅されることから、約8kbのバンドが増幅するので、上記方法により目的の染色体DNA部分欠損株(Δ12−1_ss株)が取得できたことを確認した。
【0098】
配列番号35で表される塩基配列からなるプライマーDNA35 (Escherichia coli染色体DNA上の643396〜643370と564276〜564252に相当する塩基配列を結合した塩基配列からなるDNA)、配列番号36で表される塩基配列からなるプライマーDNA36 (Escherichia coli染色体DNA上の564252〜564276と643370〜643396に相当する塩基配列を結合した塩基配列からなるDNA)を合成した。
【0099】
Escherichia coli K−12株の染色体DNAを鋳型に、プライマーDNA29と35、またはプライマーDNA30と36のプライマーセットを用いて、それぞれPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で1.5分間のサイクルを30回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては精製した染色体DNA100ngまたは爪楊枝の先で拾った少量の菌体を用いた。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0100】
上記PCRにて、欠損対象領域の両端に位置する染色体DNA配列とそれぞれ相同な塩基配列を有する1kbのDNA断片(アーム)を取得した。以下、プライマーDNA29と35をプライマーセットとして増幅されたDNA断片を上流アーム、プライマーDNA30と36をプライマーセットとして増幅されたDNA断片を下流アームと呼ぶ。取得したDNA断片をそれぞれQIAquick PCR purification kit(キアゲン)で精製し、それらを混合したものを鋳型として、プライマーDNA33と34をプライマーセットとして用いたPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で1.5分間のサイクルを30回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては精製上流アームDNA溶液1μl、精製下流アームDNA溶液1μlを用いた。
【0101】
上記PCRにて、2つのアーム同士が結合した2kbの断片を取得し、QIA quickGel Extraction Kit(キアゲン)を用いて精製した。
実施例2と同様の方法により、精製したDNA断片を、Δ12−1_ss株のコンピテントセル溶液に添加し、エレクトロポレーションによりΔ12−1_ss株に導入し、選択培地にSuStLB寒天培地を用いて形質転換株を選択した。
【0102】
選択した形質転換株のコロニーをLBcm寒天培地プレート上にレプリカし、クロラムフェニコール感受性を示す株を選択した。
プライマーDNA29と31をプライマーセットに用い、取得したシュークロース耐性、ストレプトマイシン耐性、クロラムフェニコール感受性コロニーを直接鋳型としたPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で7分間のサイクルを35回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては爪楊枝の先で拾った少量の菌体をPCR反応液に懸濁して鋳型とした。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0103】
その結果、約3kbpの増幅断片が得られた。プライマーDNA29および31をプライマーセットに用いた、目的とする置換が導入され、sucB遺伝子、rpsL遺伝子およびcat遺伝子が削除されたシュークロース耐性、ストレプトマイシン耐性、クロラムフェニコール感受性株の染色体DNAを鋳型にしたPCRによって取得される増幅DNA断片は、アームの両外側の0.5kb、両アーム領域の1kbが増幅されることから、約3kbのバンドが増幅するので、上記方法により目的のマーカー遺伝子が削除された染色体部分欠損株(Δ12−1株)が取得できたことを確認した。
【0104】
次に、Δ12−1株の染色体DNA配列で3214420〜3267669bp(Genbank accessionno. U00096での位置)までの領域約53kbpを欠失させるための直鎖DNA断片を以下のように作製した。
配列番号37で表される塩基配列からなるプライマーDNA37 (Escherichia coli染色体上の3212920〜3212944bpに相当する塩基配列からなるDNA)、配列番号38で表される塩基配列からなるプライマーDNA38 (Escherichia coli染色体DNA上の3214419〜3214395 bpに相当する塩基配列に27merのリンカー配列を付加した塩基配列からなるDNA)、配列番号39で表される塩基配列からなるプライマーDNA39 (Escherichia coli染色体DNA上の3269169〜3269145bpに相当する塩基配列からなるDNA) 、配列番号40で表される塩基配列からなるプライマーDNA40 (Escherichia coli染色体DNA上の3267670〜3267694bpに相当する塩基配列に29merのリンカー配列を付加した塩基配列からなるDNA)を合成した。
【0105】
Escherichia coli K−12株の染色体DNAを鋳型に、プライマーDNA37と38、またはプライマーDNA39と40のプライマーセットを用いて、それぞれPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で1.5分間のサイクルを30回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては精製した染色体DNA100ngまたは爪楊枝の先で拾った少量の菌体を用いた。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0106】
上記PCRにて、欠損対象領域の両端に位置する染色体DNA配列とそれぞれ相同な塩基配列を有する1kbのDNA断片(アーム)を取得した。以下、プライマーDNA37と38のプライマーセットで増幅したDNA断片を上流アーム、プライマーDNA39と40のプライマーセットで増幅したDNA断片を下流アームと呼ぶ。
【0107】
次にプライマーDNA21と22をプライマーセットに用い、miniFプラスミドminiF_SacI_1_10を鋳型としたPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で1.5分間のサイクルを30回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては精製プラスミドDNA40ngを用いた。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0108】
上記PCRにて、実施例5と同様にsacB遺伝子、rpsL遺伝子、cat遺伝子を含む断片(マーカーユニット断片)を取得した。
次に、上記で取得した上流アーム、下流アーム、マーカーユニット断片を混合したものを鋳型として、配列番号41で表される塩基配列からなるプライマーDNA41 (Escherichia coli染色体DNA上の3213420〜3213444bpに相当する塩基配列からなるDNA)、配列番号42で表される塩基配列からなるプライマーDNA42 (Escherichia coli染色体DNA上の3268645〜3268621bpに相当する塩基配列からなるDNA)をプライマーセットに用いたPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で7分間のサイクルを35回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては精製上流アームDNA溶液1μl、精製下流アームDNA溶液1μl、精製マーカーユニット断片1.5μlを用いた。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0109】
上記PCRにて、マーカーユニットの両端にそれぞれ上流アーム(1kb)および下流アーム(1kb)が付加した増幅DNA断片を取得した。該断片をアガロースゲル電気泳動法により分離し、目的とする断片をゲルから切り出して、精製した。
精製したDNA断片を、Δ12−1株のコンピテントセル溶液に添加し、実施例2と同様の方法でエレクトロポレーションによりΔ12−1株に導入し、選択培地にLBcm寒天培地を用いて形質転換体を選択した。選択した形質転換株のコロニーをSuLB寒天培地ならびにStLB寒天培地プレート上にレプリカし、シュークロースおよびストレプトマイシン感受性を示す株を選択した。
【0110】
プライマーDNA37と39をプライマーセットとして用い、取得したクロラムフェニコール耐性、シュークロース感受性、ストレプトマイシン感受性コロニーを直接鋳型としたPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で7分間のサイクルを35回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては爪楊枝の先で拾った少量の菌体をPCR反応液に懸濁して鋳型とした。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0111】
その結果、約8kbの増幅断片が得られた。プライマーDNA37および39をプライマーセットに用いた、目的とする置換が導入され、sucB遺伝子、rpsL遺伝子およびcat遺伝子が挿入されたシュークロース感受性、ストレプトマイシン感受性、クロラムフェニコール耐性株の染色体DNAを鋳型にしたPCRによって取得される増幅DNA断片は、アームの両外側の0.5kb、両アーム領域の1kbおよびsucB遺伝子、rpsL遺伝子およびcat遺伝子からなるマーカーユニットの5kbが増幅されることから、約8kbのバンドが増幅するので、上記方法により目的のマーカー遺伝子が挿入された染色体部分欠損株(Δ12−1Δ5−1_ss株)が取得できたことを確認した。
【0112】
次に、配列番号43で表される塩基配列からなるプライマーDNA43 (Escherichia coli染色体DNA上の3267694〜3267670bpおよび 3214419〜3214395bpに相当する塩基配列を結合した塩基配列からなるDNA)、配列番号44で表される塩基配列からなるプライマーDNA44 (Escherichia coli染色体DNA上の3214395〜 3214419bpおよび3267670〜3267694bpに相当する塩基配列を結合した塩基配列からなるDNA)を合成した。
【0113】
Escherichia coli K−12株の染色体DNAを鋳型に、プライマーDNA37と43、またはプライマーDNA39と44のプライマーセットを用いてそれぞれPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で1.5分間のサイクルを30回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては精製した染色体DNA100ngまたは爪楊枝の先で拾った少量の菌体を用いた。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0114】
上記PCRにて、欠損対象領域の両端に位置する染色体DNA配列とそれぞれ相同な塩基配列を有する1kbのDNA断片(アーム)を取得した。取得したDNA断片は、それぞれQIAquick PCR purification kit(キアゲン)で精製し、それらを混合したものを鋳型として、プライマーDNA41と42を用いたPCRを行い、アーム断片同士を結合した2kbのDNA断片を取得し、QIA quick Gel Extraction Kit(キアゲン)を用いて精製した。
【0115】
精製したDNA断片を、Δ12−1Δ5−1_ss株のコンピテントセル溶液に添加し、実施例2と同様の方法でエレクトロポレーションによりΔ12−1Δ5−1_ss株に導入し、選択培地にSuStLB寒天培地を用いて形質転換株を選択した。選択した形質転換株のコロニーをLBcm寒天培地プレート上にレプリカし、クロラムフェニコール感受性を示す株を選択した。
【0116】
プライマーDNA37と39をプライマーセットとして用い、選択したシュークロース耐性、ストレプトマイシン耐性、クロラムフェニコール感受性コロニーを直接鋳型としたPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で7分間のサイクルを35回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては爪楊枝の先で拾った少量の菌体をPCR反応液に懸濁して鋳型とした。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0117】
その結果、約3kbpの増幅断片が得られた。プライマーDNA37および39をプライマーセットに用いた、目的とする置換が導入され、sucB遺伝子、rpsL遺伝子およびcat遺伝子が削除されたシュークロース耐性、ストレプトマイシン耐性、クロラムフェニコール感受性株の染色体DNAを鋳型にしたPCRによって取得される増幅DNA断片は、アームの両外側の0.5kb、両アーム領域の1kbが増幅されることから、約3kbのバンドが増幅するので、上記方法により目的のマーカー遺伝子が削除された染色体部分欠損株(Δ12−1Δ5−1株)が取得できたことを確認した。
【0118】
上記したように、実施例6に記載した、マーカー遺伝子を削除した染色体DNAへの欠損の導入を、順次別の染色体部位に対して行うことにより、複数の欠損を一つの菌株に多重に導入することが可能となった。
【0119】
実施例8 多重欠損株の製造法2(P1ファージを利用した段階的な欠損導入)上記で取得した各染色体部分欠損株より、実施例1記載の方法に従いP1ファージを調製し、宿主株として選択した株の染色体DNA上に、以下の方法により多重に欠損を導入した。
【0120】
実施例5で取得したΔ2−1_ss株よりP1ファージを以下の方法により取得した。
Δ2−1_ss株を15mg/lのクロラムフェニコールを含む10mlのLB液体培地を用いて、30℃にて16時間培養し、該培養液から0.5ml分取し、1.4mlの新しいLB培地および100μlの0.1mol/lの塩化カルシウム溶液と混合した。30℃にて5から6時間振とう培養した後、400μlを滅菌チューブに移し、2μlのP1ファージストック(東京大学分子細胞生物学研究所より入手可能)を添加し、37℃にて10分間保温した。該チューブに50℃に保温した3mlのソフトアガー溶液を添加し、よく攪拌した後、Ca−LB寒天培地プレート上にまいた。該プレートを37℃で7時間培養した後、スプレッダーでソフトアガー部分を細かく砕いて回収し、1500g、4℃にて10分間遠心分離した。得られた上清1.5mlに対し100μlのクロロホルムを添加し、4℃にて一晩保存した後、15000gにて2分間遠心分離し、得られた上清をファージストックとして4℃で保存した。
【0121】
上記で取得したファージを用いてMG1655rpsL株に以下の方法により形質導入した。MG1655rpsL株を5mlのCa−LB液体培地を用いて、30℃で4時間培養した培養液を200μl分取し、上記で取得したファージストックを1μl添加した。37℃で10分間保温した後、5mlのLB培地と200μlの1mol/lのクエン酸ナトリウム溶液を添加し、攪拌した。1500g、25℃にて10分間遠心分離した後、上清を捨て、得られた沈殿した細胞に1mlのLB培地と10μlの1mol/lのクエン酸ナトリウム溶液を加え30℃にて2時間保温した。該溶液100μlを15mg/lのクロラムフェニコールを含むアンチバイオティックメディウム3寒天培地に塗布し、30℃で一晩培養した。得られたコロニー24個をそれぞれ、15mg/lのクロラムフェニコールを含むアンチバイオティックメディウム3寒天培地、15mg/lのクロラムフェニコールと10%シュークロースを添加した塩化ナトリウムを含まないLB寒天培地、および15mg/lのクロラムフェニコールと50mg/lのストレプトマイシンを添加した塩化ナトリウムを含まないLB寒天培地に塗布し、クロラムフェニコール耐性でかつシュークロース感受性かつストレプトマイシン感受性の株を選択することにより、Δ2−1_ss領域が形質導入されたMG1655rpsLΔ2−1_ss株を取得した。
【0122】
次に実施例6で得られたΔ2−1株よりファージストックを上記と同様の方法にて調製した。該ファージストックを用いて上記と同様の方法にてMG1655rpsLΔ2−1_ss株に形質導入し、シュークロース耐性、ストレプトマイシン耐性、かつクロラムフェニコール感受性の株を選択することにより、Δ2−1_ss領域中のマーカー遺伝子挿入領域が、Δ2−1株由来のマーカー遺伝子削除領域に置換されたMG1655rpsLΔ2−1株を取得した。
【0123】
次に実施例5で得られたΔ4−1_ss株よりファージストックを上記と同様の方法にて調製した。該ファージストックを用いて上記と同様の方法にてMG1655rpsLΔ2−1に形質導入し、クロラムフェニコール耐性、シュークロース感受性かつストレプトマイシン感受性の株を選択することにより、Δ4−1_ss領域が形質導入されたMG1655rpsLΔ2−1Δ4−1_ss株を取得した。
【0124】
次に実施例6で得られたΔ4−1株よりファージストックを上記と同様の方法にて調製した。該ファージストックを用いてMG1655rpsLΔ2−1Δ4−1_ss株に形質導入し、シュークロース耐性、ストレプトマイシン耐性かつクロラムフェニコール感受性の株を選択することにより、Δ4−1_ss領域中のマーカー遺伝子領域がΔ4−1株由来のマーカー遺伝子削除領域に置換されたMG1655rpsLΔ2−1Δ4−1株を得た。
【0125】
上記の方法を用いることにより、マーカー遺伝子挿入型欠損株由来のP1ファージとマーカー遺伝子領域削除型欠損株由来のP1ファージとを交互に用いて形質導入を繰り返すことにより、複数のマーカー遺伝子削除型欠損を一つの菌株の染色体DNA上に多重に導入することができる。
【0126】
【発明の効果】
本発明によれば、染色体DNA上に、10kb以上の欠損を有する微生物を容易に製造することができ、さらに該製造法に、染色体DNA上に薬剤耐性遺伝子等のマーカー遺伝子を削除する工程を付加することにより、10kb以上の欠損を染色体DNA上に多重に有する微生物を製造することができる。
【0127】
【配列表フリーテキスト】
配列番号1−人工配列の説明:合成DNA
配列番号2−人工配列の説明:合成DNA
配列番号3−人工配列の説明:合成DNA
配列番号4−人工配列の説明:合成DNA
配列番号5−人工配列の説明:合成DNA
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【0128】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1はプラスミドpCR2.1_sacB_200_cat 中のsacB遺伝子とcat遺伝子の連部分の構造を示す図である。
【図2】図2はsacB遺伝子、rpsL遺伝子およびcat遺伝子を連結したマーカーユニット断片の構造を示す図である。
【符号の説明】
sacB:Bacillus subtilis由来のレバンシュークラーゼ遺伝子
cat:プラスミドpHSG399由来のクロラムフェニコール耐性遺伝子
rpsL:Escherichia coli由来のストレプトマイシン感受性リボソーマルタンパク質遺伝子
【発明の属する技術分野】
本発明は、染色体DNA上の10kb以上の領域が置換または欠損した微生物の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
PCR技術の発展に従い、目的とする塩基配列を有する直鎖DNAを効率よく作製することが可能となった。枯草菌等の一部の微生物では、上記PCR増幅DNA断片等を用いて染色体DNA上の任意の遺伝子が欠損または置換した形質転換体の作製が行われている。
【0003】
一方、大腸菌野生株は、直鎖DNAによる形質転換頻度は低く、recBCおよびsbcBC等のヌクレアーゼ活性が低下した変異株でのみ低い頻度で直鎖DNAによる染色体DNA上の遺伝子置換等が可能であった(非特許文献1参照)。
λファージ由来の組換えタンパク質群(Red組換え系)を大腸菌内で発現させると、直鎖DNAを用いた染色体上の形質転換効率が10倍以上上昇することが報告されている(非特許文献2)。また、PCRにより作製した直鎖DNAとλRed組換え系を組み合わせた、大腸菌の染色体DNA上の任意の遺伝子を置換または欠損させる方法も報告されている(非特許文献3および4参照)。
【0004】
上記λRed組換え系を用いて単一の遺伝子破壊を行う際に、形質転換株の選択に使用するマーカー遺伝子である薬剤耐性遺伝子が染色体DNA上に残らないようにする方法も非特許文献3および4に記載されている。しかしながら、上記λRed組換え系を用いた染色体DNA上の異なる位置に存在する2以上の遺伝子が置換または欠損したEscherichia coliの作製法、10kbp以上の長いDNA領域が置換または欠損したEscherichiacoliの作製法は知られていなかった。
【0005】
大腸菌染色体DNA上の長い領域に欠損を多重に導入する方法として、制限酵素SceIを用いる方法が報告されている(非特許文献5参照)。しかしながらこの方法は、多段階の工程からなる複雑な方法であり、また効率が低い方法である。また、同様に長い領域に欠損を導入する方法としては、Cre組換え酵素を利用する方法が知られていた(非特許文献6参照)が、この方法では最終的にCreの認識配列であるloxP配列が染色体上に残存するため、多重に欠損を導入する方法としては好ましい方法ではない。非特許文献6には、認識配列が異なる二つの組換え酵素CreとFLPを利用して、4つまでの欠失を同時に一菌株に導入することが記載されているが、この方法も染色体DNAに欠損を導入するたびに、染色体DNA上にCre認識配列であるloxP配列やFLP認識配列であるFRT配列が蓄積する方法であり、多重に欠損を導入する方法としては好ましい方法ではない。
【0006】
【非特許文献1】
J. Bacteriol.(ジャーナル オブ バクテリオロジー), 159, 783−786 (1984)
【0007】
【非特許文献2】
J. Bacteriol.(ジャーナル オブ バクテリオロジー), 180, 2063−2071 (1998)
【0008】
【非特許文献3】
Gene(ジーン), 246, 321−320 (2000)
【0009】
【非特許文献4】
Proc. Nat. Acad. Sci.(プロシーディング オブ ナショナル アカデミーサイエンス), 97, 6640−6645 (2000)
【0010】
【非特許文献5】
Genome Research(ゲノム リサーチ), 12, 640−647 (2002)
【0011】
【非特許文献6】
Nature Biotechnology(ネイチャー バイオテクノロジー), 20, 1018−1023 (2002)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、染色体DNA上の10kbp以上の領域が置換または欠損した微生物の製造法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は下記(1)〜(8)に関する。
(1) 薬剤耐性遺伝子を有する直鎖DNAであり、かつ置換または欠損を導入したい染色体DNA上の領域の両端の外側に位置するDNAとそれぞれ相同性を有するDNAを、その両端に有する直鎖DNAを用いて微生物を形質転換することを特徴とする、染色体DNA上の10kb以上の領域が置換または欠損した微生物の製造法。
【0014】
(2) 上記(1)の製造法で得られた染色体DNA上の10kb以上の領域が置換または欠損した微生物に、上記(1)で用いた置換または欠損を導入したい染色体DNA上の領域の両端の外側に位置するDNAとそれぞれ相同性を有するDNAをその両端に有する直鎖DNAを導入することにより、染色体DNA上に挿入された薬剤耐性遺伝子を削除することを特徴とする、染色体DNA上の10kb以上の領域が置換または欠損した微生物の製造法。
【0015】
(3) 以下の[1]〜[3]の工程、
[1]薬剤耐性遺伝子、ネガティブセレクションに用いることができる遺伝子を有する直鎖DNAであり、かつ置換または欠損の導入対象である染色体DNA上の領域の両端の外側に位置するDNAとそれぞれ相同性を有するDNAをその両端に有する直鎖DNA用いて微生物を形質転換する工程
[2]上記[1]で用いた置換または欠損の導入対象である染色体DNA上の領域の両端の外側に位置するDNAとそれぞれ相同性を有するDNAをその両端に有する直鎖DNAを該形質転換体に導入する工程
[3]染色体DNA上から、[1]で用いた薬剤耐性遺伝子およびネガティブセレクションに用いることができる遺伝子が削除された形質転換体を選択する工程
を含む、染色体DNA上の10kb以上の領域が置換または欠損した微生物の製造法。
【0016】
(4) 上記(3)の[1]〜[3]の工程を繰り返すことを特徴とする染色体DNA上の異なる位置に存在する2以上の10kbp以上の領域が置換または欠損した微生物の製造法。
(5) 置換または欠損の導入導入対象である染色体DNA上の領域の両端の外側に位置するDNAと相同性を有するDNAが、各々500bp〜5kbpの長さを有するDNAである上記(1)〜(4)の製造法。
【0017】
(6) 微生物が、Escherichia属に属する微生物である上記(1)〜(5)の製造法。
(7) 薬剤耐性遺伝子が、カナマイシン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子、ゲンタマイシン耐性遺伝子、スペクチノマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子およびアンピシリン耐性遺伝子からなる群より選ばれる遺伝子である上記(1)〜(6)の製造法。
【0018】
(8) ネガティブセレクションに用いることができる遺伝子が、Bacillus属に属する微生物由来のsacB遺伝子またはEscherichia属に属する微生物由来のrpsL遺伝子である上記(3)〜(7)の製造法。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
【発明の実施の形態】
本願発明の製造法に用いられる宿主微生物としては、直鎖DNAをその細胞内に取り込み、染色体DNAと導入した直鎖DNAとの間で相同組換えが起こる微生物であれば、いずれの微生物であってもよいが、好ましくはEscherichia属に属する微生物、より好ましくはEscherichia coli、さらに好ましくはλファージ由来の組換えタンパク質群(Red組換え系)を発現しているEscherichiacoliをあげることができる。
【0020】
λRed組換え系を発現しているEscherichia coliとしては、Escherichiacoli KM22株〔J. Bacteriol., 180, 2063(1998)〕およびKM22株が保有するλRed組換え系に関与する遺伝子で形質転換または形質導入されたEscherichiacoliなどをあげることができ、具体的にEscherichia coli W3110red株をあげることができる。
【0021】
本発明の製造法に用いられるDNAとしては、
(1)薬剤耐性遺伝子を有する直鎖DNAであり、かつ置換または欠損の導入対象である染色体DNA上の領域の両外側に存在するDNAをその両端に有する直鎖DNA、
(2)置換または欠損の導入対象である染色体DNA上の領域の両外側に存在するDNAをその両端に有する直鎖DNA、
(3)薬剤耐性遺伝子およびネガティブセレクションに用いることができる遺伝子を有する直鎖DNAであり、かつ置換または欠損の導入対象である染色体DNA上の領域の両外側に存在するDNAをその両端に有する直鎖DNA
をあげることができる。
【0022】
薬剤耐性遺伝子としては、宿主微生物が感受性を示す薬剤に対し、薬剤耐性を付与する薬剤耐性遺伝子であれば、いずれの薬剤耐性遺伝子も使用することができる。宿主微生物にEscherichia coliを用いた場合は、薬剤耐性遺伝子としては、例えば、カナマイシン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子、ゲンタマイシン耐性遺伝子、スペクチノマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子およびアンピシリン耐性遺伝子等をあげることができる。
【0023】
ネガティブセレクションに用いることができる遺伝子とは、宿主微生物で該遺伝子を発現させたとき、一定培養条件下においては、該微生物に致死的である遺伝子のことをいい、該遺伝子としては例えば、Bacillus属に属する微生物由来のsacB遺伝子〔Appl. Environ. Microbiol., 59, 1361−1366(1993)〕 、およびEscherichia属に属する微生物由来のrpsL遺伝子〔Genomics, 72, 99−104(2001)〕等をあげることができる。
【0024】
本発明の製造法で用いられる直鎖DNAの両末端に存在する、染色体DNA上の置換または欠損の導入対象となる領域の両端の外側に位置するDNAと相同性を有するDNAは、直鎖DNAにおいて、染色体DNA上の方向と同じ方向に配置され、その長さは500bp〜5kbp程度が好ましく、500bp〜2kbp程度がより好ましく、1kbp程度がさらに好ましい。
【0025】
相同性を有するとは、上記直鎖DNAが、染色体DNA上の目的とする領域において、相同組換えが起こる程度の相同性を有することであり、具体的な相同性としては、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは100%の相同性をあげることができる。
上記塩基配列の相同性は、Karlin and AltschulによるアルゴリズムBLAST[Pro. Natl. Acad. Sci. USA, 90, 5873(1993)]やFASTA[Methods Enzymol., 183, 63(1990)]を用いて決定することができる。このアルゴリズムBLASTに基づいて、BLASTNやBLASTXとよばれるプログラムが開発されている[J. Mol. Biol., 215, 403(1990)]。BLASTに基づいてBLASTNによって塩基配列を解析する場合には、パラメーターは例えばScore=100、wordlength=12とする。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合には、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。これらの解析方法の具体的な手法は公知である(http://www.ncbi.nlm.nih. gov.)。
【0026】
上記直鎖DNA断片は、PCRにより作製することができる。また上記直鎖DNAを含むDNAをプラスミド上にて構築した後、制限酵素処理にて目的の直鎖DNAを得ることもできる。
本発明の製造法において用いられる、微生物の染色体DNA上の10kbp以上の領域を置換または欠損させる方法としては、以下の方法1〜3があげられる。
方法1:上記(1)の直鎖DNAを宿主微生物に導入し、薬剤耐性を指標に該直鎖DNAが染色体DNA上に相同組換えにより挿入された形質転換株を選択する方法。
方法2:上記方法1により取得された形質転換株に、上記(2)の直鎖DNAを導入し、該方法により染色体DNA上に挿入された薬剤遺伝子を削除することにより、微生物の染色体DNA上の10kbp以上の領域を置換または欠損させる方法。
方法3
[1]上記(3)の直鎖DNAを宿主微生物に導入し、薬剤耐性を指標に該直鎖DNAが染色体DNA上に相同組換えにより挿入された形質転換株を選択する、
[2]染色体DNA上の置換または欠損の対象となる領域の両端の外側に位置するDNAと相同性を有するDNAを、染色体DNA上における方向と同一の方向で連結したDNAを合成し、上記[1]で得られた形質転換株に導入する、
[3]ネガティブセレクションに用いることができる遺伝子が発現する条件下において、上記[2]の操作を行った形質転換株を培養し、該培養において生育可能な株を、薬剤耐性遺伝子およびネガティブセレクションに用いることができる遺伝子が染色体DNA上から削除された株として選択する方法。
【0027】
上記方法で用いられる、直鎖DNAを宿主微生物に導入する方法としては、該微生物へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、カルシウムイオンを用いる方法〔Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 69, 2110 (1972)〕、プロトプラスト法(特開昭63−2483942)、エレクトロポレーション法〔Nucleic Acids Res., 16, 6127 (1988)〕等をあげることができる。
【0028】
方法2または方法3[2]で用いられる直鎖DNAにおいて、該DNAの中央部付近に、染色体DNA上に挿入したい任意の遺伝子を組み込こんだ直鎖DNAを用いることにより、薬剤耐性遺伝子等を削除するのと同時に、任意の遺伝子を染色体DNA上に挿入することができる。
上記方法2および3では、最終的に得られる形質転換株の染色体DNA上には薬剤耐性遺伝子およびネガティブセレクションに用いることができる遺伝子等の外来遺伝子を残さない方法であるため、該方法を用いる本発明の製造法では、同一の薬剤耐性遺伝子およびネガティブセレクションに用いることができる遺伝子を用いて、方法1および2、または方法3[1]〜[3]の操作を繰り返すことにより、容易に染色体DNA上の位置の異なる2以上の領域に10kbp以上の欠損を有する微生物を製造することができる。
【0029】
【実施例】
実施例1:λRed組換え系を有するEscherichia coliの作製
Escherichia coli KM22株[Δ(recC ptrrecB recD)::Plac−red kan](米国マサチューセッツ医科大学のKenen C. Murphy博士より入手可能)よりP1ファージを以下の方法により調製した。
【0030】
20mg/lのカナマイシンを含む10mlのLB培地〔10g/l バクトトリプトン(Difco社製)、5g/l バクトイーストエキストラクト(Difco社製)、10g/l 塩化ナトリウム、1ml/l 1mol/l 水酸化ナトリウム〕を用いて30℃にて16時間培養したKM22株の培養液 0.5mlと、1.4mlの新しいLB培地および100μlの0.1mmol/l 塩化カルシウム溶液とを混合した。30℃にて5〜6時間振とう培養した後、400μlの培養液を滅菌チューブに移した。該チューブに2μlのP1ファージストック(東京大学分子細胞生物学研究所より入手可能)を添加し、37℃にて10分間保温した。次に50℃に保温した3mlのソフトアガー溶液(10g/l バクトトリプトン(Difco社製)、5g/l バクトイーストエキストラクト(Difco社製)、5mmol/l 塩化カルシウム、1ml/lの1mol/l 水酸化ナトリウム、3g/l 寒天)を添加し、よく攪拌した後に、Ca−LB寒天培地プレート(10g/l バクトトリプトン(Difco社製)、5g/l バクトイーストエキストラクト(Difco社製)、5mmol/l 塩化カルシウム、1ml/lの1mol/l 水酸化ナトリウム、15g/l 寒天、プレートの直径は15cm)上にまいた。該プレートを37℃で7時間培養した後、スプレッダーでソフトアガー部分を細かく砕いて回収した。回収したソフトアガーを1500g、4℃にて10分間遠心分離した。得られた上清1.5mlに対し100μlのクロロホルムを添加し、4℃にて一晩保存した後、15000gにて2分間遠心分離し、その上清をファージストックとして4℃で保存した。
【0031】
次に上記で取得したファージを用いてW3110株を形質転換した。5mlのCa−LB液体培地を用いて30℃、4時間培養したW3110株培養液から200μl分取し、ファージストックを1μl添加した。37℃で10分間保温した後、5mlのLB液体培地と200μlの1mol/l クエン酸ナトリウム溶液を添加し、攪拌した。1500g、25℃にて10分間遠心分離した後、上清を捨て、得られた細胞に1mlのLB液体培地と10μlの1mol/l クエン酸ナトリウム溶液を加え30℃にて2時間保温した。該溶液100μlを20mg/lのカナマイシンを含むアンチバイオティックメディウム3寒天培地(Difco社製)に塗布し、30℃で一晩培養した。翌日出現したコロニー24個をそれぞれ、20mg/lのカナマイシンを含むアンチバイオティックメディウム3寒天培地に塗布し、カナマイシン耐性株を選抜することにより、Δ(recCptr recB recD)::Plac−red kan)領域が形質導入されたEscherichiacoli W3110red株を取得した。
【0032】
実施例2:染色体DNA上の10kbp以上の領域を欠損したEscherichia coliの製造
実施例1で取得したλRed遺伝子群を導入したEscherichia coli W3110red株〔W3110、Δ(recC ptr recBrecD)::Plac−red kan〕を宿主微生物に用い、以下の方法により、W3110red株の染色体DNA上の10kbp以上の領域が欠損した形質転換株を作製した。
【0033】
W3110red株を、1mmol/lのIPTG(Isopropyl−Thio−β−D−Galactopyranoside)を添加した100mlのLB液体培地〔10g/l バクトトリプトン(Difco社製)、5g/l バクトイーストエキストラクト(Difco社製)、10g/l 塩化ナトリウム、1ml/lの1mol/l 水酸化ナトリウム〕を用いて、30℃で培養した。OD660nmが0.1に達した時点で培養を終了した。なお、以下の操作は低温および氷冷した溶液を用いて行った。次に遠心分離により集菌した菌体を50mlの20%グリセロール溶液に懸濁し、同様の遠心分離により集菌する操作を3回以上繰り返すことで菌体を洗浄した後、培養液の50μlの10%グリセロール溶液に懸濁した。該溶液をエレクトロポレーション用のコンピテントセル溶液として使用した。
【0034】
Escherichia coli K−12株の染色体DNA配列(Genbank accession no. U00096)において、4487709〜4533599bpまでの領域約46kbpを欠失させるための直鎖DNAを以下の方法で作製した。
配列番号1で表される塩基配列を有するプライマーDNA1 (Escherichia co li染色体DNA上の4486709〜4486734bpに相当する塩基配列を有するDNA)、配列番号2で表される塩基配列を有するプライマーDNA2 (Escherichia coli染色体DNA上の4487708〜4487685bpに相当する塩基配列に25merのリンカー配列を付加したDNA)、配列番号3で表される塩基配列を有するプライマーDNA3 (Escherichia coli染色体DNA上の4534599〜4534575bpに相当する塩基配列からなるDNA)、配列番号4で表される塩基配列を有するプライマーDNA4 (Escherichia coli染色体DNA上の4533600〜4533620bpに相当する塩基配列に25merのリンカー配列を付加したDNA)を合成した。
【0035】
Escherichia coli W3110株の染色体DNAを鋳型に用い、上記プライマーDNA1と2、またはプライマーDNA3と4の組合せをプライマーセットとしてそれぞれPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で1.5分間のサイクルを30回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては精製した染色体DNA100ngまたは爪楊枝の先で拾った少量の菌体を用いた。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0036】
上記PCRにて、欠損対象領域の両端に位置する染色体DNA配列とそれぞれ相同な1kbの領域(アーム)を取得した。以下、プライマーDNA1と2をプライマーセットに用いて増幅されたDNAを上流アーム、プライマーDNA3と4をプライマーセットに用いて増幅されたDNAを下流アームと呼ぶ。
次に、配列番号5で表される塩基配列を有するプライマーDNA5、および配列番号6で表される塩基配列を有するプライマーDNA6を合成した。該DNAをプライマーセットとして用い、pHSG399プラスミドDNA(宝酒造社より購入可能)を鋳型にしてPCRを行った。PCRは上記と同様の条件で行った。鋳型DNAとしては精製したプラスミドDNA40ngを用いた。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0037】
上記PCRにて、クロラムフェニコール耐性遺伝子(cat遺伝子)を含むDNA断片を取得した。
次に、上記で取得した上流アーム、下流アーム、およびcat遺伝子を含むDNA断片を混合したDNAを鋳型として、プライマーDNA1と3をプライマーセットに用いたPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で7分間のサイクルを35回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては精製した上流アームDNA溶液1μl、精製した下流アームDNA溶液1μl、精製したcat遺伝子断片1.5μlを用いた。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0038】
上記PCRにて、cat遺伝子の一端に上流アーム、他の一端に下流アームが付加したDNA断片を作製した。該DNA断片をアガロースゲル電気泳動法(Molecular Cloning 3rd edition、Cold Spring Harbor Laboratory Press)により分離し、該DNA断片をゲルから切り出して、QIA quick Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)を用いて精製した。
【0039】
精製したDNA断片0.1μgを、上記で作製したコンピテントセル溶液50μlに添加し、0.1cmのキュベット(BioRad社製)中で、1.8KV、25μFにてエレクトロポレーションを行った。1mlのSOC液体培地(20g/lバクトトリプトン(Difco社製)、5g/l バクトイーストエキストラクト(Difco社製)、0.5g/l 塩化ナトリウム、0.2ml/lの5mol/l 水酸化ナトリウム、20ml/l 1mol/l グルコース、10ml/lの1mol/l 水酸化マグネシウム、10ml/lの1mol/l 硫酸マグネシウム)を用いて37℃で2時間培養した後、遠心分離により集菌した全量を、15μg/ml クロラムフェニコールを含むLB寒天プレート(LB液体培地に寒天を1.5%含むもの。以下、LBcm寒天培地プレートと略す)上に塗布し、37℃で一晩培養することにより、クロラムフェニコール耐性株を取得した。
【0040】
取得したクロラムフェニコール耐性株の染色体DNA上に目的とする欠損(4487709〜4533599bpの領域がcat遺伝子で置き換わっている)が導入されていることを確認することを目的に以下の実験を行った。
上記で用いたアーム配列末端からさらに染色体DNA上において上流または下流にそれぞれ1kb離れた領域に相当するプライマーDNAである、配列番号7で表される塩基配列を有するプライマーDNA7 (Escherichia coli染色体DNA上の4485709〜4485729bpに相当する塩基配列からなるDNA)および配列番号8で表される塩基配列を有するプライマーDNA8 (Escherichia coli染色体DNA上の4535599〜4535575bpに相当する塩基配列からなるDNA)を合成した。プライマーDNA7および8をプライマーセットとして用い、クロラムフェニコール耐性株のコロニーを直接鋳型としたPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で7分間のサイクルを35回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては爪楊枝の先で拾った少量の菌体をPCR反応液に懸濁して鋳型とした。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0041】
その結果、約4.6kbの増幅DNA断片が得られた。プライマーDNA7および8をプライマーセットに用い、目的とする欠損が導入されたクロラムフェニコール耐性株の染色体DNAを鋳型にしたPCRによって取得される増幅DNA断片は、cat遺伝子(0.6kb)の両端にそれぞれ約2kbのDNAが付加されたDNA断片(約4.6kb)であることから、目的とする形質転換株が得られたことを確認し、該形質転換株をΔe_cat株(欠失領域4487709〜4533599bp)と命名した。
【0042】
上記Δe_cat株の製造法と同様の方法により、Escherichia coli染色体DNA上の262892〜297016bpの領域が欠損した株(Δf_cat)、564017〜584879bpの領域が欠損した株(Δc_cat)、1196089〜1223131bpの領域が欠損した株(Δg_cat)、1417345〜1432282bpの領域が欠損した株(Δh_cat)、1506837〜1517125bpの領域が欠損した株(Δb_cat)、1805403〜1811733bpの領域が欠損した株(Δa_cat)、2318062〜2332423bpの領域が欠損した株(Δk_cat)、2754159〜2788004bpの領域が欠損した株(Δd_cat)、3108606〜3132839bpの領域が欠損した株(Δl_cat)、3451144〜3467491bpの領域が欠損した株(Δm_cat)、4569934〜4586334bpの領域が欠損した株(Δo_cat)、256206〜363992bpの領域が欠損した株(ΔCGSC1_cat)を取得することができた。
【0043】
実施例3 ネガティブセレクションに用いることができる遺伝子を用いた染色体DNA上の10kbp以上の領域を欠損したEscherichia coliの製造
実施例1で取得したλRed遺伝子群を導入した株W3110red株〔W3110、Δ(recC ptr recB recD)::Plac−red kan〕を宿主微生物に用い、薬剤耐性遺伝子およびネガティブセレクションに用いることができる遺伝子としてBacillus subtilis由来のlevansucrase遺伝子(sacB遺伝子、GenBank accession no.BG10388)を有する直鎖DNAを用いて、以下の方法によりW3110red株の染色体DNA上の10kbp以上の領域が欠損した形質転換株を作製した。
【0044】
W3110red株のコンピテントセルは実施例2と同様の方法により作製した。
Escherichia coliK−12株の染色体配列(Genbank accession no. U00096)で4487709〜4533599bpまでの領域約46kbpを欠失させるための直鎖DNAを以下の方法で作製した。
【0045】
配列番号9で表される塩基配列を有するプライマーDNA9 (Escherichia coli染色体DNA上の4485709〜4485729bpに相当する塩基配列からなるDNA)、配列番号10で表される塩基配列を有するプライマーDNA10 (Escherichia coli染色体DNA上の4487708〜4487685bpに相当する塩基配列に25merのリンカー配列を付加した塩基配列からなるDNA)、配列番号11で表される塩基配列を有するプライマーDNA11 (Escherichia coli染色体DNA上の4535599〜4535575bpに相当する塩基配列からなるDNA)、配列番号12で表される塩基配列を有するプライマーDNA12 (Escherichia coli染色体DNA上の4533600〜4533620bpに相当する塩基配列に22merのリンカー配列を付加した塩基配列からなるDNA)を合成した。
【0046】
W3110red株のゲノムDNAを鋳型に、プライマーDNA9と10、またはプライマーDNA11と12をプライマーセットとしてそれぞれPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で1.5分間のサイクルを30回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては精製染色体DNA100ngまたは爪楊枝の先で拾った少量の菌体を用いた。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0047】
上記PCRにて、欠失対象領域の両端に位置する染色体DNA配列とそれぞれ相同な2kbの領域(アーム)を取得した。以下、プライマーDNA9と10をプライマーセットとして増幅されたDNA断片を上流アーム、プライマーDNA11と12をプライマーセットとして増幅されたDNA断片を下流アームと呼ぶ。
【0048】
sacB遺伝子(Genbank accession no. X02730)を、コーディング領域の上流400bp、下流200bpまでの領域としてPCR法にて取得した。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で1.5分間のサイクルを30回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしてはBacillussubtil is 168株(ATCC等の各種機関より入手可能)精製染色体DNA100ngを用いた。プライマーDNAには、配列番号45で表される塩基配列からなるプライマーDNA45と配列番号46で表される塩基配列からなるプライマーDNA46を各々20pmol反応液に添加した。
【0049】
上記PCRにて取得した断片を、PCR purification Kit(QIAGEN社製)を用いて精製し、最終的に各々50μlのDNA溶液を得た。
またpHSG399プラスミド由来のクロラムフェニコール耐性遺伝子(cat)断片を実施例2で取得したときと同様のPCR法にて増幅し、精製DNAを取得した。ただしプライマーセットとして配列番号47で表される塩基配列からなるプライマーDNA47と配列番号48で表される塩基配列からなるプライマーDNA48を用いた。
【0050】
上記PCRで取得したsacB断片とcat断片を鋳型として、プライマーDNA45とプライマーDNA48をプライマーセットとしてPCRを行い、二つの遺伝子の向きが同一方向に連結したDNA断片を取得した。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で3分間のサイクルを30回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては精製したsacB断片1μlとcat断片1μlを用いた。各プライマーは各々20pmol反応液に添加した。
【0051】
上記PCRにて取得した断片を、電気泳動後ゲルから切り出し、gel extraction Kit(QIAGEN社製)を用いて精製し、最終的に各々50μlのDNA溶液を得た。
該DNAをInvitrogen社製のTA Cloning Kitにて、プラスミドpCR2.1中ににクローニングすることで、プラスミドpCR2.1_sacB_200_catを作製した(クローニングの方法はキットに付属の指示書に従った)。pCR2.1_sacB_200_cat のsacB遺伝子とcat遺伝子を連結させた部分の構造を図1に示した。
【0052】
次に配列番号13で表される塩基配列からなるプライマーDNA13、配列番号14で表される塩基配列からなるプライマーDNA14をプライマーセットとして用い、pCR2.1_sacB_200_catプラスミドを鋳型にしてPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で1.5分間のサイクルを30回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては精製プラスミドDNA40ngを用いた。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0053】
上記PCRにて、sacB遺伝子、cat遺伝子を含むDNA断片(sacB + cat断片)を取得した。該DNA断片をアガロースゲル電気泳動法(Molecular Cloning 3rd edition、Cold Spring Harbor Laboratory Press)により分離し、該DNA断片をゲルから切り出して、QIA quick Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)を用いて精製し、最終的に50μlのDNA溶液を得た。
【0054】
次に、上流アーム、下流アーム断片およびsacB + cat断片の3つのDNA断片を混合したものを鋳型として、配列番号15で表される塩基配列からなるプライマーDNA (Escherichia coli染色体DNA上の4486709〜4486734bpに相当する塩基配列からなるDNA)、配列番号16で表される塩基配列からなるプライマー16 (Escherichia coli染色体DNA上の4534599〜4534575bpに相当塩基配列からなるDNA)をプライマーセットに用いたPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で7分間のサイクルを35回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては精製上流アームDNA溶液1μl、精製下流アームDNA溶液1μl、精製sacB + cat遺伝子断片1.5μlを用いた。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0055】
上記PCRにて、sacB遺伝子とcat遺伝子が結合したDNAの両端に、欠失対象領域の両端および上流アーム、下流アームが付加したDNA断片を増幅DNA断片として取得した。該DNA断片は上記と同様の方法によりアガロースゲル電気泳動法により分離し、該DNA断片を含む部分をゲルから切り出し、精製した。
【0056】
精製したDNA断片を、コンビテントセル溶液に添加し、実施例2と同様の方法でエレクトロポレーションによりW3110red株に導入し、LBcmプレート上で形質転換株を選択した。選択された形質転換株のコロニーをSuLB寒天培地〔10g/l バクトトリプトン(Difco社製)、5g/l バクトイーストエキストラクト(Difco社製)、10% シュークロース、20mg/l カナマイシン、15mg/l クロラムフェニコール、1ml/lの1mol/l 水酸化ナトリウム)プレートにレプリカし、シュークロース感受性を示す株を選択した。
【0057】
選択された株の染色体DNA上において欠損対象領域である4487709〜4533599bpがsacB遺伝子とcat遺伝子との結合DNAと置換していることを確認するため、以下の実験を行った。
形質転換に用いた直鎖DNAのアーム配列末端からさらに上流および下流にそれぞれ1kb離れた領域に相同な塩基配列を有する配列番号9で表される塩基配列からなるプライマー9および配列番号11で表される塩基配列からなるプライマー11をプライマーセットに用いて、選択された株のコロニーを直接鋳型としたPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で7分間のサイクルを35回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては爪楊枝の先で拾った少量の菌体をPCR反応液に懸濁して鋳型とした。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0058】
その結果、約6.7kbの増幅断片が得られた。プライマーDNA9および11をプライマーセットに用い、目的とする欠損が導入されたクロラムフェニコール耐性、シュークロース感受性株の染色体DNAを鋳型にしたPCRによって取得される増幅DNA断片は、sacB 遺伝子とcat遺伝子の結合体(2.7kb)の両端にそれぞれ約2kbのDNAが付加されたDNA断片(約6.6kb)であることから、目的とする形質転換株が得られたことを確認し、該形質転換株をΔE_suc株(欠損領域4487709〜4533599bp)と命名した。
【0059】
ΔE_suc株の製造法と同様の方法により、Escherichia coli染色体DNA上の262892〜297016bpの領域が欠損した株(ΔA_suc株)、564017〜584879bpの領域が欠損した株(ΔC_suc)、1196089〜1223131bpの領域が欠損した株(ΔD_suc)、1417345〜1432282bpの領域が欠損した株(ΔF_suc)、1506837〜1517125の領域が欠損した株(ΔG_suc)、1805403〜1811733bpの領域が欠損した株(ΔH_suc)、2318062〜2332423bpの領域が欠損した株(ΔK_suc)、2754159〜2788004bpの領域が欠損した株(ΔL_suc)、3108606〜3132839bp(ΔM_suc)、3451144〜3467491bpの領域が欠損した株(ΔCGSC_suc)を取得することができる。
【0060】
実施例4 ストレプトマイシン耐性でλRed系を有する株の作製
Escherichia coli MG1655rpsL株(東京都立大学加藤潤一教授より入手可能)を親株として、λRed組換え系を導入した。
Escherichia coli KM22株[Δ(recC ptrrecB recD)::Plac −red kan](米国マサチューセッツ医科大学のKenen C. Murphy博士より入手可能)よりP1ファージを以下の方法により調製した。
【0061】
20mg/lのカナマイシンを含む10mlのLB培地〔10g/l バクトトリプトン(Difco社製)、5g/l バクトイーストエキストラクト(Difco社製)、10g/l 塩化ナトリウム、1ml/lの1mol/l 水酸化ナトリウム〕を用いて30℃にて16時間培養したKM22株の培養液 0.5mlと、1.4mlの新しいLB培地および100μlの0.1mmol/l 塩化カルシウム溶液とを混合した。30℃にて5〜6時間振とう培養した後、400μlの培養液を滅菌チューブに移した。該チューブに2μlのP1ファージストック(東京大学分子細胞生物学研究所より入手可能)を添加し、37℃にて10分間保温した。次に50℃に保温した3mlのソフトアガー溶液(10g/l バクトトリプトン(Difco社製)、5g/l バクトイーストエキストラクト(Difco社製)、5mmol/l 塩化カルシウム、1ml/lの1mol/l 水酸化ナトリウム、3g/l 寒天)を添加し、よく攪拌した後に、Ca−LB寒天培地プレート(10g/l バクトトリプトン(Difco社製)、5g/l バクトイーストエキストラクト(Difco社製)、5mmol/l 塩化カルシウム、1ml/l 1mol/lの水酸化ナトリウム、15g/l 寒天、プレートの直径は15cm)上にまいた。該プレートを37℃で7時間培養した後、スプレッダーでソフトアガー部分を細かく砕いて回収した。回収したソフトアガーを1500g、4℃にて10分間遠心分離した。得られた上清1.5mlに対し100μlのクロロホルムを添加し、4℃にて一晩保存した後、15000gにて2分間遠心分離し、その上清をファージストックとして4℃で保存した。
【0062】
次に上記で取得したファージを用いてMG1655rpsL株を形質転換した。5mlのCa−LB液体培地を用いて30℃、4時間培養したW3110株培養液から200μl分取し、ファージストックを1μl添加した。37℃で10分間保温した後、5mlのLB液体培地と200μlの1mol/l クエン酸ナトリウム溶液を添加し、攪拌した。1500g、25℃にて10分間遠心分離した後、上清を捨て、得られた細胞に1mlのLB液体培地と10μlの1mol/l クエン酸ナトリウム溶液を加え30℃にて2時間保温した。該溶液100μlを20mg/lのカナマイシンを含むアンチバイオティックメディウム3寒天培地(Difco社製)に塗布し、30℃で一晩培養した。翌日出現したコロニー24個をそれぞれ、20mg/lのカナマイシンを含むアンチバイオティックメディウム3寒天培地に塗布し、カナマイシン耐性株を選抜することにより、Δ(recCptr recB recD)::Plac −red kan)領域が形質導入されたEscherichiacoli MG1655rsh株〔MG1655、rpsL、Δ(recC ptr recBrecD)::Plac −red kanを取得した。
【0063】
実施例5 ネガティブセレクションに用いることができる遺伝子を二つ用いた染色体DNA上の10kbp以上の領域を欠損したEscherichia coliの製造
実施例4で取得したλRed遺伝子群を導入したMG1655rsh株を宿主微生物に用い、薬剤耐性遺伝子およびネガティブセレクションに用いることができる遺伝子としてBacillus subtilis由来のsacB遺伝子とEscherichia coli由来のストレプトマイシン感受性リボソーマルタンパク遺伝子(rpsL、GenBank accession no. J01688)を有する直鎖DNAを用いて、以下の方法によりMG1655rsh株の染色体DNA上の10kb以上の領域が欠損した形質転換株を作製した。
【0064】
染色体上の形質転換が可能なコンピテントセルは実施例2と同様の方法により作製した。
Escherichia coliK−12株の染色体配列(Genbank U00096)で498306〜552387bpまでの領域約54kbpを欠損させるための直鎖DNA断片を、以下のようにして作製した。
【0065】
配列番号17で表される塩基配列からなるプライマーDNA17(Escherichia coli染色体DNA上の496804〜496828bpに相当する塩基配列を有するDNA)、配列番号18で表される塩基配列からなるプライマーDNA18(Escherichiacoli染色体DNA上の498305〜498280bpに相当する塩基配列に27merのリンカー配列を付加した塩基配列からなるDNA)、配列番号19で表される塩基配列からなるプライマーDNA19 (Escherichia coli染色体DNA上の553888〜553863bpに相当する塩基配列からなるDNA)、配列番号20で表される塩基配列からなるプライマーDNA20(Escherichia coli染色体DNA上の552388〜552412bpに相当する塩基配列に29merのリンカー配列を付加したDNA)を合成した。MG1655rsh株の染色体DNAを鋳型して、プライマーDNA17と18、またはプライマーDNA19と20をプライマーセットとしてそれぞれPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で1.5分間のサイクルを30回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては精製した染色体DNA100ngまたは爪楊枝の先で拾った少量の菌体を用いた。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0066】
上記PCRにて、欠損対象領域の両端に位置する染色体DNA配列とそれぞれ相同な1.5kbの領域(アーム)を取得した。以下、プライマーDNA17と18をプライマーセットとして増幅されたDNA断片を上流アーム、プライマーDNA19と20をプライマーセットとして増幅されたDNA断片を下流アームと呼ぶ。
【0067】
次にsacB遺伝子、rpsL遺伝子およびcat遺伝子を含む断片を、以下の方法により取得した。東京都立大学理学部加藤潤一教授より入手することができるsacB遺伝子、rpsL遺伝子、cat遺伝子の順に配列されたDNA断片を有するminiF_SacI_1_10プラスミドを鋳型として、配列番号21で表される塩基配列からなるプライマーDNA21および配列番号22で表される塩基配列からなるプライマーDNA22をプライマーセットとしてPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で1.5分間のサイクルを30回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては精製プラスミドDNA40ngを用いた。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0068】
上記PCRにて、sacB遺伝子、rpsL遺伝子およびcat遺伝子を含むDNA断片(以下、マーカーユニット断片という)を増幅DNA断片として取得した。該増幅DNA断片の構造を図2に示した。
次に、上記で取得した上流アーム、下流アームと、マーカーユニット断片を混合したものを鋳型として、配列番号23で表される塩基配列からなるプライマーDNA23(Escherichia coli染色体DNA上の497328〜497352bpに相当する塩基配列からなるDNA)、配列番号24で表される塩基配列からなるプライマーDNA24 (Escherichia coli染色体DNA上の553388〜553364bpに相当する塩基配列を有するDNA)をプライマーセットとして用いたPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で7分間のサイクルを35回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては精製上流アームDNA溶液1μl、精製下流アームDNA溶液1μl、精製マーカーユニット断片1.5μlを用いた。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0069】
上記PCRにて、マーカーユニット断片の両端にそれぞれ1.5kbの上流アームおよび下流アームが付加した増幅DNA断片を取得した。該増幅DNA断片を上記と同様の方法によりアガロースゲル電気泳動法により分離し、目的とするDNA断片をゲルから切り出し、精製した。
精製したDNA断片を、先に作製したMG1655rsh株のコンピテントセル溶液に添加し、実施例2と同様の方法でエレクトロポレーションによりDNA断片をMG1655rsh株に導入し、LBcmプレート上で形質転換株を選択した。取得した形質転換株のコロニーをSuLB寒天培地ならびにStLB寒天培地(10g/l バクトトリプトン(Difco社製)、5g/l バクトイーストエキストラクト(Difco社製)、10g/l 塩化ナトリウム、50mg/l ストレプトマイシン、20mg/l カナマイシン、15mg/l クロラムフェニコール、1ml/lの1mol/l 水酸化ナトリウム)プレートにそれぞれレプリカし、シュークロースおよびストレプトマイシン感受性を示す株を選択した。
【0070】
選択された株の染色体DNA上において欠損対象領域である498306〜552387bpがマーカーユニット断片と置換していることを確認するため、以下の実験を行った。
配列番号17で表される塩基配列を有するプライマーDNA17と配列番号19で表される塩基配列を有するプライマーDNA19をプライマーセットに用い、選択された形質転換株のコロニーを直接鋳型としてPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で7分間のサイクルを35回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては爪楊枝の先で拾った少量の菌体をPCR反応液に懸濁して鋳型とした。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0071】
その結果、約8.0kbの増幅断片が得られた。プライマーDNA17および18をプライマーセットに用い、目的とする欠損が導入されたクロラムフェニコール耐性、シュークロース感受性、ストレプトマイシン感受性株の染色体DNAを鋳型にしたPCRによって取得される増幅DNA断片は、sacB 遺伝子、cat遺伝子、およびrpsL遺伝子を含むマーカーユニット(5.0kb)の両端にそれぞれ約1.5kbのDNAが付加されたDNA断片(約8.0kb)であることから、目的とする形質転換株が得られたことを確認し、該形質転換株をΔ28−1_ss株(欠失領域498306〜552387bp)と命名した。
【0072】
Δ28−1_ss株の製造法と同様の方法により、Escherichia coli染色体DNA上の2194444〜2240962bpの領域が欠損した株(Δ16−2_ss)、4273337〜4359000bpの領域が欠損した株(Δ4−1_ss)、1042178〜1120467bpの領域が欠損した株(Δ17−1_ss)、564277〜643371bpの領域が欠損した株(Δ12−1_ss)、564277〜608454bpの領域が欠損した株(Δ12−C_ss)、564277〜601049bpの領域が欠損した株(Δ12−D_ss)、4273265〜4350450bpの領域が欠損した株(Δ04−B_ss)、4273265〜4327813bpの領域が欠損した株(Δ04−D_ss)、3214420〜3267669bpの領域が欠損した株(Δ5−1_ss)、3723219〜3769371bpの領域が欠損した株(Δ2−2_ss)、2821911〜2864551bpの領域が欠損した株(Δ21−1_ss)、236844〜387924bpの領域が欠損した株(Δ9−1_ss)、2346552〜2420667bpの領域が欠損した株(Δ13−1_ss)、2447166〜2517234bpの領域が欠損した株(Δ11−1_ss)、2964170〜3031653bpの領域が欠損した株(Δ8−1_ss)、3616619〜3715942bpの領域が欠損した株(Δ2−1_ss)、1195720〜1257001bpの領域が欠損した株(Δ18−1_ss)、1384691〜1588751bpの領域が欠損した株(Δ20−1_ss)、2042756〜2083065bpの領域が欠損した株(Δ16−1−1_ss)、2083063〜2192177bpの領域が欠損した株(Δ16−1−2_ss)、2284391〜2334770bpの領域が欠損した株(Δ14−1_ss)、2555349〜2616046bpの領域が欠損した株(Δ10−1_ss)、2751589〜2812235bpの領域が欠損した株(Δ22_ss)、2821911〜2864550bpの領域が欠損した株(Δ21_ss)、3092021〜3160703bpの領域が欠損した株(Δ7−1_ss)、4486040〜4597775bpの領域が欠損した株(Δ1−1_ss)を製造することができた。
【0073】
実施例6 薬剤耐性遺伝子およびネガティブセレクションに用いることができる遺伝子が削除された染色体DNA上の10kbp以上の領域を欠損したEscherichia coliの製造
実施例3で取得されたΔE_suc株からcat遺伝子およびsucB遺伝子が削除されたEscherichia coliを、以下の方法により製造した。
【0074】
配列番号25で表される塩基配列からなるプライマーDNA25 (Escherichia coli染色体DNA上の4533620〜4533600bpと4487708〜4487685に相当する塩基配列を結合した塩基配列からなるDNA)、配列番号26で表される塩基配列からなるプライマーDNA26 (Escherichia coli染色体DNA上の4487685〜448770 bpと4533600〜4533620に相当する塩基配列を結合した塩基配列からなるDNA)を合成した。
【0075】
次に、Escherichia coli K−12株の染色体DNAを鋳型に、プライマーDNA9とプライマーDNA25、またはプライマーDNA11とプライマーDNA26のプライマーセットを用いてそれぞれPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で1.5分間のサイクルを30回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては精製染色体DNA100ngまたは爪楊枝の先で拾った少量の菌体を用いた。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0076】
上記PCRにて、欠損対象領域の両端に位置する染色体DNA配列とそれぞれ相同な配列を有する1kbのDNA断片(アーム)を取得した。以下、プライマーDNA9と25をプライマーセットとして増幅されたDNA断片を上流アーム、プライマーDNA11と26をプライマーセットとして増幅されたDNA断片を下流アームと呼ぶ。得られたDNA断片は、それぞれQIAquick PCR purification kit(キアゲン社製)を用いて精製し、次にそれらを混合したものを鋳型として、プライマーDNA15と16プライマーセットとして用いたPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で1.5分間のサイクルを30回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては精製上流アームDNA溶液1μl、精製下流アームDNA溶液1μlを用いた。
【0077】
上記PCRにて、上記アーム同士が結合した2kbの断片を増幅DNA断片として取得し、QIA quick Gel Extraction Kitを用いて精製した。
実施例2と同様の方法で、ΔE_suc株を培養してコンピテントセル溶液を作製し、精製したDNA断片を添加し、エレクトロポレーションにより該DNA断片をΔE_suc株に導入した。選択培地には、SuLB寒天培地を用いた。選択された形質転換株のコロニーをLBcm寒天プレートにレプリカし、クロラムフェニコール感受性を示す株を選択した。
【0078】
プライマーDNA15および16をプライマーセットに用い、選択されたシュークロース耐性、クロラムフェニコール感受性コロニーを直接鋳型としたPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で7分間のサイクルを35回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては爪楊枝の先で拾った少量の菌体をPCR反応液に懸濁して鋳型とした。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0079】
その結果、約4.0kbの増幅断片が得られた。プライマーDNA15および16をプライマーセットに用い、目的とする置換が導入され、sucB遺伝子およびcat遺伝子が削除されたシュークロース耐性、クロラムフェニコール感受性株の染色体DNAを鋳型にしたPCRによって取得される増幅DNA断片は、アームの両外側の1kbと両アーム領域の1kbが増幅されることから約4kbのバンドが増幅するので、上記方法によりマーカー遺伝子が残らない染色体DNA上の10kb以上の領域が欠損した染色体DNA部分欠失株(ΔE株)が製造できたことが確認された。
【0080】
ΔE株の製造法と同様の方法により、Escherichia coliの染色体DNA上の262892〜297016bpの領域が欠損した株(ΔA株)、564017〜584879bpの領域が欠損した株(ΔC株)、1196089〜1223131bpの領域が欠損した株(ΔD株)、1417345〜1432282bpの領域が欠損した株(ΔF株)、1506837〜1517125bpの領域が欠損した株(ΔG株)、2318062〜2332423bpの領域が欠損した株(ΔK株)、2754159〜2788004bpの領域が欠損した株(ΔL株)、3108606〜3132839bpの領域が欠損した株(ΔM株)、3451144〜3467491bpの領域が欠損した株(ΔCGSC)を製造することができた。
【0081】
次に、実施例5で作製したΔ28_ss株からsacB遺伝子、rpsL遺伝子およびcat遺伝子を削除した株を、以下の方法により製造した。
配列番号27で表される塩基配列からなるプライマーDNA27(Escherichiacoli染色体DNA上の552412〜552388bpと498306〜498280bpに相当する塩基配列を結合した塩基配列からなるDNA)、配列番号28で表される塩基配列からなるプライマーDNA28 (Escherichia coli染色体DNA上の498280〜498304bpと552388〜552412bpに相当する塩基配列を結合した塩基配列からなるDNA)を合成した。
【0082】
Escherichia coliゲノムを鋳型に、プライマーDNA17とプライマーDNA27、またはプライマーDNA19とプライマーDNA28のプライマーセットを用いてそれぞれPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で1.5分間のサイクルを30回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては精製染色体DNA100ngまたは爪楊枝の先で拾った少量の菌体を用いた。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0083】
上記PCRにて、欠損対象領域の両端に位置する染色体DNAの塩基配列とそれぞれ相同な配列を有する1kbの増幅DNA断片(アーム)を取得した。以下、プライマーDNA17と27をプライマーセットとして増幅されたDNA断片を上流アーム、プライマーDNA19と28をプライマーセットとして増幅されたDNA断片を下流アームと呼ぶ。該DNA断片はそれぞれQIAquick PCR purification kit(キアゲン社製)で精製し、それらを混合したものを鋳型として、プライマーDNA23と24を用いたPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で1.5分間のサイクルを30回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては精製上流アームDNA溶液1μl、精製下流アームDNA溶液1μlを用いた。
【0084】
上記PCRにて、上記アーム同士が結合した2kbの断片を取得し、QIA quick Gel Extraction Kit(キアゲン)を用いて精製した。
実施例2と同様の方法で、Δ28_ss株を培養してコンピテントセル溶液を作製し、精製したDNA断片を添加し、エレクトロポレーションにより該DNA断片をΔ28_ss株に導入した。選択培地には、SuStLB寒天培地 (10g/l バクトトリプトン(Difco社製)、5g/l バクトイーストエキストラクト(Difco社製)、10% シュークロース、20mg/l カナマイシン、50mg/l ストレプトマイシン、1ml/lの1mol/l 水酸化ナトリウム)を用いた。選択された形質転換株のコロニーをLBcm寒天培地プレート上にレプリカし、クロラムフェニコール感受性を示す株を選択した。
【0085】
プライマーDNA17および19をプライマーセットとして用い、選択されたシュークロース耐性、ストレプトマイシン耐性、クロラムフェニコール感受性コロニーを直接鋳型としたPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で7分間のサイクルを35回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては爪楊枝の先で拾った少量の菌体をPCR反応液に懸濁して鋳型とした。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0086】
その結果、約3kbの増幅DNA断片が取得された。プライマーDNA17および19をプライマーセットに用いた、目的とする置換が導入され、sucB遺伝子、rpsL遺伝子およびcat遺伝子が削除されたシュークロース耐性、ストレプトマイシン耐性、クロラムフェニコール感受性株の染色体DNAを鋳型にしたPCRによって取得される増幅DNA断片は、アームの両外側の0.5kbと両アーム領域の1kbが増幅されることから約3kbのバンドが増幅するので、上記方法によりマーカー遺伝子が残らない染色体DNA上の10kb以上の領域が欠損した染色体DNA部分欠損株(Δ28株)が製造できたことが確認された。
【0087】
Δ28株の製造法と同様の方法により、Escherichia coliの染色体DNA上の2194444〜2240962bpの領域が欠損した株(Δ16−2)、4273337〜4359000bpの領域が欠損した株(Δ4−1)、1042178〜1120467bpの領域が欠損した株(Δ17−1)、564277〜643371bpの領域が欠損した株(Δ12−1)、3214420〜3267669bpの領域が欠損した株(Δ5−1)、3723219〜3769371bpの領域が欠損した株(Δ2−2)、236844〜387924bpの領域が欠損した株(Δ9−1)、2346552〜2420667bpの領域が欠損した株(Δ13−1)、2447166〜2517234bpの領域が欠損した株(Δ11−1)、2964170〜3031653bpの領域が欠損した株(Δ8−1)、3616619〜3715942bpの領域が欠損した株(Δ2−1)、2083063〜2192177bpの領域が欠損した株(Δ16−1−2)、2284391〜2334770bpの領域が欠損した株(Δ14−1)、2555349〜2616046bpの領域が欠損した株(Δ10−1)、2751589〜2812235bpの領域が欠損した株(Δ22)、2821911〜2864550bpの領域が欠損した株(Δ21)、4486040〜4597775bpの領域が欠損した株(Δ1−1)を製造することができた。
【0088】
実施例7 多重欠損体の製造法1(λredを利用した段階的な欠損導入)
染色体DNAの多重欠損株を、実施例3または実施例5で記載したネガティブセレクションに用いることができる遺伝子を利用した染色体DNAの置換または欠損株の製造法と、実施例6に記載した薬剤耐性遺伝子およびネガティブセレクションに用いることができる遺伝子が削除された染色体DNAの部分欠損株の製造法を交互に行うことにより製造した。
【0089】
MG1655rsh株のコンピテントセルは実施例2と同様の方法により作製した。
Escherichia coliK−12株の染色体DNA配列(Genbank U00096)で564277〜643371bpまでの領域約79kbpを欠損させるための直鎖DNA断片を以下のように作製した。
【0090】
配列番号29で表される塩基配列からなるプライマーDNA29 (Escherichia coli染色体DNA上の562788 〜 562812bpに相当する塩基配列からなるDNA)、配列番号30で表される塩基配列からなるプライマーDNA30 (Escherichia coli染色体DNA上の564276〜564252bpに相当する塩基配列に27merのリンカー配列を付加した塩基配列からなるDNA)、配列番号31で表される塩基配列からなるプライマーDNA31 (Escherichia coli染色体DNA上の644868〜644844bpに相当する塩基配列からなるDNA)、配列番号32で表される塩基配列からなるプライマーDNA32 (Escherichia coli染色体DNA上の643372〜643396bpに相当する塩基配列に29merのリンカー配列を付加した塩基配列からなるDNA)を合成した。
【0091】
Escherichia coliK−12株の染色体DNAを鋳型に、プライマーDNA29と30、またはプライマーDNA31と32のプライマーセットを用いてそれぞれPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で1.5分間のサイクルを30回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては精製染色体DNA100ngまたは爪楊枝の先で拾った少量の菌体を用いた。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0092】
上記PCRにて、欠損対象領域の両端に位置する染色体DNA配列とそれぞれ相同な塩基配列を有する1kbのDNA断片(アーム)を取得した。以下、プライマーDNA29と30のプライマーセットで増幅したDNA断片を上流アーム、プライマーDNA31と32のプライマーセットで増幅したDNA断片を下流アームと呼ぶ。
【0093】
次にプライマーDNA21およびプライマーDNA22を用い、miniFプラスミドminiF_SacI_1_10を鋳型としたPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で1.5分間のサイクルを30回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては精製プラスミドDNA40ngを用いた。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0094】
上記PCRにて、実施例4と同様にsacB遺伝子、rpsL遺伝子、cat遺伝子を含むDNA断片(マーカーユニット断片)を取得した。
次に、上記で取得した上流アーム、下流アーム断片、およびマーカーユニット断片の3つのDNA断片を混合したものを鋳型として、配列番号33で表される塩基配列からなるDNA (Escherichia coli染色体DNA上の563276〜563310bpに相当する塩基配列からなるDNA)、配列番号34で表される塩基配列からなるDNAプライマー34 (Escherichia coli染色体DNA上の644366〜644342bpに相当する塩基配列からなるDNA)をプライマーセットとして用いたPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で7分間のサイクルを35回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては精製上流アームDNA溶液1μl、精製下流アームDNA溶液1μl、精製マーカーユニット断片1.5μlを用いた。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0095】
上記PCRにて、マーカーユニットの両端にそれぞれ上流アーム(1kb)および下流アーム(1kb)が付加した増幅DNA断片を取得した。該DNA断片をアガロースゲル電気泳動法により分離し、目的の断片をゲルから切り出して、精製した。
実施例2と同様の方法により、精製したDNA断片を、MG1655rsh株のコンピテントセル溶液に添加し、エレクトロポレーションによりMG1655rsh株に導入し、選択培地に、LBcm寒天培地を用いて形質転換株を選択した。選択された形質転換株のコロニーをLBcm寒天培地プレート上にレプリカし、クロラムフェニコール耐性を示す株を選択した。選択されたコロニーをSuLB寒天培地ならびにStLB寒天培地プレートにそれぞれレプリカし、シュークロースおよびストレプトマイシン感受性を示す株を選択した。
【0096】
プライマーDNA29と31をプライマーセットに用い、選択されたクロラムフェニコール耐性、シュークロース感受性、ストレプトマイシン感受性コロニーを直接鋳型としたPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で7分間のサイクルを35回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては爪楊枝の先で拾った少量の菌体をPCR反応液に懸濁して鋳型とした。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0097】
その結果、約8kbpの増幅断片が得られた。プライマーDNA29および31をプライマーセットに用いた、目的とする置換が導入され、sucB遺伝子、rpsL遺伝子およびcat遺伝子が挿入されたシュークロース感受性、ストレプトマイシン感受性、クロラムフェニコール耐性株の染色体DNAを鋳型にしたPCRによって取得される増幅DNA断片は、アームの両外側の0.5kb、両アーム領域の1kbおよびsacB遺伝子、rpsL遺伝子、cat遺伝子ユニットの5kbが増幅されることから、約8kbのバンドが増幅するので、上記方法により目的の染色体DNA部分欠損株(Δ12−1_ss株)が取得できたことを確認した。
【0098】
配列番号35で表される塩基配列からなるプライマーDNA35 (Escherichia coli染色体DNA上の643396〜643370と564276〜564252に相当する塩基配列を結合した塩基配列からなるDNA)、配列番号36で表される塩基配列からなるプライマーDNA36 (Escherichia coli染色体DNA上の564252〜564276と643370〜643396に相当する塩基配列を結合した塩基配列からなるDNA)を合成した。
【0099】
Escherichia coli K−12株の染色体DNAを鋳型に、プライマーDNA29と35、またはプライマーDNA30と36のプライマーセットを用いて、それぞれPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で1.5分間のサイクルを30回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては精製した染色体DNA100ngまたは爪楊枝の先で拾った少量の菌体を用いた。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0100】
上記PCRにて、欠損対象領域の両端に位置する染色体DNA配列とそれぞれ相同な塩基配列を有する1kbのDNA断片(アーム)を取得した。以下、プライマーDNA29と35をプライマーセットとして増幅されたDNA断片を上流アーム、プライマーDNA30と36をプライマーセットとして増幅されたDNA断片を下流アームと呼ぶ。取得したDNA断片をそれぞれQIAquick PCR purification kit(キアゲン)で精製し、それらを混合したものを鋳型として、プライマーDNA33と34をプライマーセットとして用いたPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で1.5分間のサイクルを30回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては精製上流アームDNA溶液1μl、精製下流アームDNA溶液1μlを用いた。
【0101】
上記PCRにて、2つのアーム同士が結合した2kbの断片を取得し、QIA quickGel Extraction Kit(キアゲン)を用いて精製した。
実施例2と同様の方法により、精製したDNA断片を、Δ12−1_ss株のコンピテントセル溶液に添加し、エレクトロポレーションによりΔ12−1_ss株に導入し、選択培地にSuStLB寒天培地を用いて形質転換株を選択した。
【0102】
選択した形質転換株のコロニーをLBcm寒天培地プレート上にレプリカし、クロラムフェニコール感受性を示す株を選択した。
プライマーDNA29と31をプライマーセットに用い、取得したシュークロース耐性、ストレプトマイシン耐性、クロラムフェニコール感受性コロニーを直接鋳型としたPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で7分間のサイクルを35回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては爪楊枝の先で拾った少量の菌体をPCR反応液に懸濁して鋳型とした。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0103】
その結果、約3kbpの増幅断片が得られた。プライマーDNA29および31をプライマーセットに用いた、目的とする置換が導入され、sucB遺伝子、rpsL遺伝子およびcat遺伝子が削除されたシュークロース耐性、ストレプトマイシン耐性、クロラムフェニコール感受性株の染色体DNAを鋳型にしたPCRによって取得される増幅DNA断片は、アームの両外側の0.5kb、両アーム領域の1kbが増幅されることから、約3kbのバンドが増幅するので、上記方法により目的のマーカー遺伝子が削除された染色体部分欠損株(Δ12−1株)が取得できたことを確認した。
【0104】
次に、Δ12−1株の染色体DNA配列で3214420〜3267669bp(Genbank accessionno. U00096での位置)までの領域約53kbpを欠失させるための直鎖DNA断片を以下のように作製した。
配列番号37で表される塩基配列からなるプライマーDNA37 (Escherichia coli染色体上の3212920〜3212944bpに相当する塩基配列からなるDNA)、配列番号38で表される塩基配列からなるプライマーDNA38 (Escherichia coli染色体DNA上の3214419〜3214395 bpに相当する塩基配列に27merのリンカー配列を付加した塩基配列からなるDNA)、配列番号39で表される塩基配列からなるプライマーDNA39 (Escherichia coli染色体DNA上の3269169〜3269145bpに相当する塩基配列からなるDNA) 、配列番号40で表される塩基配列からなるプライマーDNA40 (Escherichia coli染色体DNA上の3267670〜3267694bpに相当する塩基配列に29merのリンカー配列を付加した塩基配列からなるDNA)を合成した。
【0105】
Escherichia coli K−12株の染色体DNAを鋳型に、プライマーDNA37と38、またはプライマーDNA39と40のプライマーセットを用いて、それぞれPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で1.5分間のサイクルを30回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては精製した染色体DNA100ngまたは爪楊枝の先で拾った少量の菌体を用いた。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0106】
上記PCRにて、欠損対象領域の両端に位置する染色体DNA配列とそれぞれ相同な塩基配列を有する1kbのDNA断片(アーム)を取得した。以下、プライマーDNA37と38のプライマーセットで増幅したDNA断片を上流アーム、プライマーDNA39と40のプライマーセットで増幅したDNA断片を下流アームと呼ぶ。
【0107】
次にプライマーDNA21と22をプライマーセットに用い、miniFプラスミドminiF_SacI_1_10を鋳型としたPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で1.5分間のサイクルを30回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては精製プラスミドDNA40ngを用いた。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0108】
上記PCRにて、実施例5と同様にsacB遺伝子、rpsL遺伝子、cat遺伝子を含む断片(マーカーユニット断片)を取得した。
次に、上記で取得した上流アーム、下流アーム、マーカーユニット断片を混合したものを鋳型として、配列番号41で表される塩基配列からなるプライマーDNA41 (Escherichia coli染色体DNA上の3213420〜3213444bpに相当する塩基配列からなるDNA)、配列番号42で表される塩基配列からなるプライマーDNA42 (Escherichia coli染色体DNA上の3268645〜3268621bpに相当する塩基配列からなるDNA)をプライマーセットに用いたPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で7分間のサイクルを35回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては精製上流アームDNA溶液1μl、精製下流アームDNA溶液1μl、精製マーカーユニット断片1.5μlを用いた。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0109】
上記PCRにて、マーカーユニットの両端にそれぞれ上流アーム(1kb)および下流アーム(1kb)が付加した増幅DNA断片を取得した。該断片をアガロースゲル電気泳動法により分離し、目的とする断片をゲルから切り出して、精製した。
精製したDNA断片を、Δ12−1株のコンピテントセル溶液に添加し、実施例2と同様の方法でエレクトロポレーションによりΔ12−1株に導入し、選択培地にLBcm寒天培地を用いて形質転換体を選択した。選択した形質転換株のコロニーをSuLB寒天培地ならびにStLB寒天培地プレート上にレプリカし、シュークロースおよびストレプトマイシン感受性を示す株を選択した。
【0110】
プライマーDNA37と39をプライマーセットとして用い、取得したクロラムフェニコール耐性、シュークロース感受性、ストレプトマイシン感受性コロニーを直接鋳型としたPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で7分間のサイクルを35回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては爪楊枝の先で拾った少量の菌体をPCR反応液に懸濁して鋳型とした。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0111】
その結果、約8kbの増幅断片が得られた。プライマーDNA37および39をプライマーセットに用いた、目的とする置換が導入され、sucB遺伝子、rpsL遺伝子およびcat遺伝子が挿入されたシュークロース感受性、ストレプトマイシン感受性、クロラムフェニコール耐性株の染色体DNAを鋳型にしたPCRによって取得される増幅DNA断片は、アームの両外側の0.5kb、両アーム領域の1kbおよびsucB遺伝子、rpsL遺伝子およびcat遺伝子からなるマーカーユニットの5kbが増幅されることから、約8kbのバンドが増幅するので、上記方法により目的のマーカー遺伝子が挿入された染色体部分欠損株(Δ12−1Δ5−1_ss株)が取得できたことを確認した。
【0112】
次に、配列番号43で表される塩基配列からなるプライマーDNA43 (Escherichia coli染色体DNA上の3267694〜3267670bpおよび 3214419〜3214395bpに相当する塩基配列を結合した塩基配列からなるDNA)、配列番号44で表される塩基配列からなるプライマーDNA44 (Escherichia coli染色体DNA上の3214395〜 3214419bpおよび3267670〜3267694bpに相当する塩基配列を結合した塩基配列からなるDNA)を合成した。
【0113】
Escherichia coli K−12株の染色体DNAを鋳型に、プライマーDNA37と43、またはプライマーDNA39と44のプライマーセットを用いてそれぞれPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で1.5分間のサイクルを30回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては精製した染色体DNA100ngまたは爪楊枝の先で拾った少量の菌体を用いた。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0114】
上記PCRにて、欠損対象領域の両端に位置する染色体DNA配列とそれぞれ相同な塩基配列を有する1kbのDNA断片(アーム)を取得した。取得したDNA断片は、それぞれQIAquick PCR purification kit(キアゲン)で精製し、それらを混合したものを鋳型として、プライマーDNA41と42を用いたPCRを行い、アーム断片同士を結合した2kbのDNA断片を取得し、QIA quick Gel Extraction Kit(キアゲン)を用いて精製した。
【0115】
精製したDNA断片を、Δ12−1Δ5−1_ss株のコンピテントセル溶液に添加し、実施例2と同様の方法でエレクトロポレーションによりΔ12−1Δ5−1_ss株に導入し、選択培地にSuStLB寒天培地を用いて形質転換株を選択した。選択した形質転換株のコロニーをLBcm寒天培地プレート上にレプリカし、クロラムフェニコール感受性を示す株を選択した。
【0116】
プライマーDNA37と39をプライマーセットとして用い、選択したシュークロース耐性、ストレプトマイシン耐性、クロラムフェニコール感受性コロニーを直接鋳型としたPCRを行った。PCRには宝酒造社製のLA−Taqを用い、添付の指示書に従い、添付の反応成分を用い反応液を作製した。反応液量は25μlで、94℃で3分間保温した後、94℃で15秒間、55℃で20秒間、68℃で7分間のサイクルを35回行い、72℃で10分間保温する反応条件でPCRを行った。鋳型DNAとしては爪楊枝の先で拾った少量の菌体をPCR反応液に懸濁して鋳型とした。プライマーは各々20pmolを反応液に添加した。
【0117】
その結果、約3kbpの増幅断片が得られた。プライマーDNA37および39をプライマーセットに用いた、目的とする置換が導入され、sucB遺伝子、rpsL遺伝子およびcat遺伝子が削除されたシュークロース耐性、ストレプトマイシン耐性、クロラムフェニコール感受性株の染色体DNAを鋳型にしたPCRによって取得される増幅DNA断片は、アームの両外側の0.5kb、両アーム領域の1kbが増幅されることから、約3kbのバンドが増幅するので、上記方法により目的のマーカー遺伝子が削除された染色体部分欠損株(Δ12−1Δ5−1株)が取得できたことを確認した。
【0118】
上記したように、実施例6に記載した、マーカー遺伝子を削除した染色体DNAへの欠損の導入を、順次別の染色体部位に対して行うことにより、複数の欠損を一つの菌株に多重に導入することが可能となった。
【0119】
実施例8 多重欠損株の製造法2(P1ファージを利用した段階的な欠損導入)上記で取得した各染色体部分欠損株より、実施例1記載の方法に従いP1ファージを調製し、宿主株として選択した株の染色体DNA上に、以下の方法により多重に欠損を導入した。
【0120】
実施例5で取得したΔ2−1_ss株よりP1ファージを以下の方法により取得した。
Δ2−1_ss株を15mg/lのクロラムフェニコールを含む10mlのLB液体培地を用いて、30℃にて16時間培養し、該培養液から0.5ml分取し、1.4mlの新しいLB培地および100μlの0.1mol/lの塩化カルシウム溶液と混合した。30℃にて5から6時間振とう培養した後、400μlを滅菌チューブに移し、2μlのP1ファージストック(東京大学分子細胞生物学研究所より入手可能)を添加し、37℃にて10分間保温した。該チューブに50℃に保温した3mlのソフトアガー溶液を添加し、よく攪拌した後、Ca−LB寒天培地プレート上にまいた。該プレートを37℃で7時間培養した後、スプレッダーでソフトアガー部分を細かく砕いて回収し、1500g、4℃にて10分間遠心分離した。得られた上清1.5mlに対し100μlのクロロホルムを添加し、4℃にて一晩保存した後、15000gにて2分間遠心分離し、得られた上清をファージストックとして4℃で保存した。
【0121】
上記で取得したファージを用いてMG1655rpsL株に以下の方法により形質導入した。MG1655rpsL株を5mlのCa−LB液体培地を用いて、30℃で4時間培養した培養液を200μl分取し、上記で取得したファージストックを1μl添加した。37℃で10分間保温した後、5mlのLB培地と200μlの1mol/lのクエン酸ナトリウム溶液を添加し、攪拌した。1500g、25℃にて10分間遠心分離した後、上清を捨て、得られた沈殿した細胞に1mlのLB培地と10μlの1mol/lのクエン酸ナトリウム溶液を加え30℃にて2時間保温した。該溶液100μlを15mg/lのクロラムフェニコールを含むアンチバイオティックメディウム3寒天培地に塗布し、30℃で一晩培養した。得られたコロニー24個をそれぞれ、15mg/lのクロラムフェニコールを含むアンチバイオティックメディウム3寒天培地、15mg/lのクロラムフェニコールと10%シュークロースを添加した塩化ナトリウムを含まないLB寒天培地、および15mg/lのクロラムフェニコールと50mg/lのストレプトマイシンを添加した塩化ナトリウムを含まないLB寒天培地に塗布し、クロラムフェニコール耐性でかつシュークロース感受性かつストレプトマイシン感受性の株を選択することにより、Δ2−1_ss領域が形質導入されたMG1655rpsLΔ2−1_ss株を取得した。
【0122】
次に実施例6で得られたΔ2−1株よりファージストックを上記と同様の方法にて調製した。該ファージストックを用いて上記と同様の方法にてMG1655rpsLΔ2−1_ss株に形質導入し、シュークロース耐性、ストレプトマイシン耐性、かつクロラムフェニコール感受性の株を選択することにより、Δ2−1_ss領域中のマーカー遺伝子挿入領域が、Δ2−1株由来のマーカー遺伝子削除領域に置換されたMG1655rpsLΔ2−1株を取得した。
【0123】
次に実施例5で得られたΔ4−1_ss株よりファージストックを上記と同様の方法にて調製した。該ファージストックを用いて上記と同様の方法にてMG1655rpsLΔ2−1に形質導入し、クロラムフェニコール耐性、シュークロース感受性かつストレプトマイシン感受性の株を選択することにより、Δ4−1_ss領域が形質導入されたMG1655rpsLΔ2−1Δ4−1_ss株を取得した。
【0124】
次に実施例6で得られたΔ4−1株よりファージストックを上記と同様の方法にて調製した。該ファージストックを用いてMG1655rpsLΔ2−1Δ4−1_ss株に形質導入し、シュークロース耐性、ストレプトマイシン耐性かつクロラムフェニコール感受性の株を選択することにより、Δ4−1_ss領域中のマーカー遺伝子領域がΔ4−1株由来のマーカー遺伝子削除領域に置換されたMG1655rpsLΔ2−1Δ4−1株を得た。
【0125】
上記の方法を用いることにより、マーカー遺伝子挿入型欠損株由来のP1ファージとマーカー遺伝子領域削除型欠損株由来のP1ファージとを交互に用いて形質導入を繰り返すことにより、複数のマーカー遺伝子削除型欠損を一つの菌株の染色体DNA上に多重に導入することができる。
【0126】
【発明の効果】
本発明によれば、染色体DNA上に、10kb以上の欠損を有する微生物を容易に製造することができ、さらに該製造法に、染色体DNA上に薬剤耐性遺伝子等のマーカー遺伝子を削除する工程を付加することにより、10kb以上の欠損を染色体DNA上に多重に有する微生物を製造することができる。
【0127】
【配列表フリーテキスト】
配列番号1−人工配列の説明:合成DNA
配列番号2−人工配列の説明:合成DNA
配列番号3−人工配列の説明:合成DNA
配列番号4−人工配列の説明:合成DNA
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配列番号48−人工配列の説明:合成DNA
【0128】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1はプラスミドpCR2.1_sacB_200_cat 中のsacB遺伝子とcat遺伝子の連部分の構造を示す図である。
【図2】図2はsacB遺伝子、rpsL遺伝子およびcat遺伝子を連結したマーカーユニット断片の構造を示す図である。
【符号の説明】
sacB:Bacillus subtilis由来のレバンシュークラーゼ遺伝子
cat:プラスミドpHSG399由来のクロラムフェニコール耐性遺伝子
rpsL:Escherichia coli由来のストレプトマイシン感受性リボソーマルタンパク質遺伝子
Claims (8)
- 薬剤耐性遺伝子を有する直鎖DNAであり、かつ置換または欠損の導入対象である染色体DNA上の領域の両端の外側に位置するDNAとそれぞれ相同性を有するDNAを、その両端に有する直鎖DNAを用いて微生物を形質転換することを特徴とする、染色体DNA上の10kb以上の領域が置換または欠損した微生物の製造法。
- 請求項1記載の製造法で得られた染色体DNA上の10kb以上の領域が置換または欠損した微生物に、請求項1で用いられる置換または欠損の導入対象である染色体DNA上の領域の両端の外側に位置するDNAとそれぞれ相同性を有するDNAをその両端に有する直鎖DNAを導入することにより、染色体DNA上に挿入された薬剤耐性遺伝子を削除することを特徴とする、染色体DNA上の10kb以上の領域が置換または欠損した微生物の製造法。
- 以下の[1]〜[3]の工程、
[1]薬剤耐性遺伝子およびネガティブセレクションに用いることができる遺伝子を有する直鎖DNAであり、かつ置換または欠損を導入したい染色体DNA上の領域の両端の外側に位置するDNAとそれぞれ相同性を有するDNAをその両端に有する直鎖DNA用いて微生物を形質転換する工程
[2]上記[1]で用いた置換または欠損を導入したい染色体DNA上の領域の両端の外側に位置するDNAとそれぞれ相同性を有するDNAをその両端に有する直鎖DNAを該形質転換体に導入する工程
[3]染色体DNA上から、[1]で用いた薬剤耐性遺伝子およびネガティブセレクションに用いることができる遺伝子が削除された形質転換体を選択する工程
を含む、染色体DNA上の10kb以上の領域が置換または欠損した微生物の製造法。 - 請求項3の[1]〜[3]の工程を繰り返すことを特徴とする染色体DNA上の異なる位置に存在する2以上の10kbp以上の領域が置換または欠損した微生物の製造法。
- 置換または欠損の導入対象である染色体DNA上の領域の両端の外側に位置するDNAと相同性を有するDNAが、各々500bp〜5kbpの長さを有するDNAである請求項1〜4記載の製造法。
- 微生物が、Escherichia属に属する微生物である請求項1〜5記載の製造法。
- 薬剤耐性遺伝子が、カナマイシン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子、ゲンタマイシン耐性遺伝子、スペクチノマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子およびアンピシリン耐性遺伝子からなる群より選ばれる遺伝子である請求項1〜6記載の製造法。
- ネガティブセレクションに用いることができる遺伝子が、Bacillus属に属する微生物由来のsacB遺伝子またはEscherichia属に属する微生物由来のrpsL遺伝子である請求項3〜7記載の製造法。
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| WO2009116566A1 (ja) | 2008-03-18 | 2009-09-24 | 協和発酵キリン株式会社 | 工業的に有用な微生物 |
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