JP2004189506A - 形状異方性セラミック粉末の製造方法 - Google Patents

形状異方性セラミック粉末の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】フラックスまたは酸を使用せず、塩化物、硫酸塩、硝酸、塩酸などを含む廃液を発生させずに、結晶異方性を有する化合物を主成分とする形状異方性セラミック粉末を得ること。
【解決手段】形状異方性セラミック粉末を得るためのセラミック前駆体を含むスラリーをシート状に成形し、得られたシート状成形体を焼成し、得られたシート状焼結体を粉砕して形状異方性セラミック粉末を得る方法であって、前記シート状成形体の厚みは、形状異方性セラミック粉末と組成および焼成温度を同じくするバルク状焼結体における結晶粒子の軸のうち最短となる軸長の平均値に対し15倍以下であることを特徴とする。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、形状異方性を有するセラミック粉末の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
圧電セラミック発振子や圧電セラミックフィルタなどに用いられる圧電セラミックとして、PbTiO、PbTiZr1−X、CaBiTi15、BiTi12などが広く知られている。上記のうち、CaBiTi15、BiTi12は層状ペロブスカイト型化合物であり、その結晶が強い異方性を有することを特徴とする。しかし、通常の製造方法でこれらの圧電セラミックを得た場合、各々の結晶はランダムに配向した状態で焼結されるため、高い圧電特性を得ることはできない。そこで、この圧電セラミックを構成する結晶を一軸配向させることによって、電気的、磁器的性質に優れた、配向セラミックを得るための様々な手段が開示されている。
【0003】
この配向セラミックを得る方法としては、例えば高い平均アスペクト比(長軸長/短軸長比)を有する形状異方性セラミック粉末を、有機バインダなどと混合してスラリーまたはスリップ状にして、テープ成形して得たセラミックシートを所望の厚さに重ね、圧着した後に焼成することが一般的である。
【0004】
この形状異方性セラミック粉末は、板状、棒状、針状などの形状異方性を有する粒子よりなる粉末であって、結晶異方性を有する化合物から作成することができる。これらの化合物の粒子は、通常のセラミックの作製方法を用いてブロック状の焼結体を作製した場合であっても、強い形状異方性を示す。しかし、このようなブロック状焼結体を粉砕した場合、その際に形状異方性粒子が破壊されてしまうため、高い平均アスペクト比を有する粉末を得ることはできない。
【0005】
そこで、この高い平均アスペクト比を有する形状異方性セラミック粉末の作成方法として、例えば塩化物や硫酸塩などのフラックスを用いる方法が知られている。(例えば、非特許文献1参照。)これは、フラックスと、所望のセラミックの通常仮焼粉または該セラミックを生成可能な原料との混合粉を熱処理し、フラックス融液中で形状異方性セラミック粒子の成長を促すものである。
【0006】
また、フラックスを用いずに、上記形状異方性セラミック粉末を作成する方法としては、例えばBiが5モル%以上過剰であるセラミック原料をBiの融点以上に加熱してセラミックを得る第一工程と、得られたセラミックを粉砕し、酸処理を行ってセラミック粉末を得る第二工程とからなる、ビスマスを含有する層状ペロブスカイト型結晶構造を有するセラミック粉末の製造方法などがある。(例えば、特許文献1参照。)
【0007】
【特許文献1】
特開平10−158087号公報
【非特許文献1】
CERAMIC INTERNATIONAL, Vol.9, n.1pp.13−17, 1983
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前者においては、塩化物や硫酸塩などを含む廃液が発生し、この廃液を処理するための設備、工程が必要となり、製造コストが増大するという問題点がある。また、後者においては、フラックスを使用しないものの、第二工程で酸処理を行うため、硝酸、塩酸などを含む廃液が発生し、フラックスを用いる場合と同様にコストが増大するという問題点がある。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するものであり、フラックスまたは酸を使用せず、塩化物、硫酸塩、硝酸、塩酸などを含む廃液を発生させずに、結晶異方性を有する化合物を主成分とする形状異方性セラミック粉末を得ることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1の発明である形状異方性セラミック粉末の製造方法は、形状異方性セラミック粉末を得るためのセラミック前駆体を含むスラリーを作成する工程と、前記スラリーをシート状に成形してシート状成形体を得る工程と、前記シート状成形体を焼成して焼結体を得る工程と、前記焼結体を粉砕する工程とを備え、前記シート状成形体の厚みが、前記形状異方性セラミック粉末と組成および焼成温度を同じくするバルク状焼結体における結晶粒子の軸のうち最短となる軸長の平均値に対し15倍以下であることを特徴とする。
【0011】
また、請求項2の発明である形状異方性セラミック粉末の製造方法は、請求項1において、前記結晶異方性を有する化合物の主成分が、層状ペロブスカイト構造を示すことを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明における実施の形態を詳しく説明する。
【0013】
本発明における結晶異方性を有する化合物とは、層状ペロブスカイト型構造、パイロクロア構造などの、異方性の強い結晶構造を持つものである。また、上記結晶異方性を有する化合物において、特に圧電材料として有用であると知られているものは、層状ペロブスカイト型構造を有する化合物である。これには、ビスマス層状化合物やルドルスデン・ポッパー型化合物等がある。
【0014】
本発明におけるセラミック前駆体とは、得ようとするセラミック粉末と組成を同じくする仮焼体を粉砕して得られた粉末、または得ようとするセラミック粉末を生成するための原料を指す。セラミック前駆体を含むスラリーをシート状に成形して焼成すると、各々の結晶粒子は、シートの主面に平行な向きに沿って配向する傾向が強くなる。例えば板状粒子であれば、その主面をシートの面内方向に揃える形で配向する。このようにして得られたシートを粉砕することで、形状異方性を有するセラミック粉末を比較的容易に取り出すことが可能である。その原理は明らかになっていないが、上記シートを粉砕する際に、板状粒子が端面同士で接触している粒界で破断が起こる場合が多いからであると推測される。よって、本発明において、粉末を構成する粒子の形状は板状であることが好ましい。
【0015】
ところで、本発明におけるシート状成形体の厚みの有効範囲を数値化するにあたり、シート状成形体の厚みと、シート状成形体から得られた結晶粒子と組成および焼成条件を同じくするバルク状焼結体における結晶粒子の平均最短軸長とを比較することとした。これは、たとえシート状成形体の厚みおよび焼成条件が同じであっても、化合物が異なれば、得られる結晶粒子の平均アスペクト比は異なる値を示すことが判明しており、シート状成形体の厚みのみを基準に本発明の有効範囲を決定することは不適当であるためである。なお、化合物の種類によって、結晶粒子の平均アスペクト比が異なるのは、化合物の種類によって結晶粒子の平均最短軸長がそれぞれ異なっているからであると推測される。よって、組成および焼成条件が同一であればこの結晶粒子と非常に近い平均最短軸長を示すバルク状焼結体における結晶粒子を、シート状成形体との比較対象とする。
【0016】
なお、形状異方性セラミック粉末の平均アスペクト比が3.0未満の場合は、配向セラミックとしての特性が得られない可能性があるため、本発明における形状異方性セラミック粉末の平均アスペクト比は、3.0以上であることを必要とする。
(実施形態1)
まず、バルク状焼結体の製造方法を説明する。原料として、セラミック粉末を生成するための原料と同様のもの、本例においては、CaCO、Bi、TiOを用意した。組成CaBiTi15となるように、CaCO、Bi、TiOをモル比1:2:4の割合で秤量し、ボールミルを用いて約16時間湿式混合して混合物を得た。なお、CaBiTi15は、圧電材料として有用であることが知られているビスマス層状化合物である。得られた混合物を乾燥した後、800℃〜1000℃で2〜10時間仮焼して、CaBiTi15セラミック仮焼粉末を得た。この仮焼粉末を粗粉砕した後、有機バインダを適量加えてボールミルを用いて16時間湿式粉砕し、40メッシュのふるいを通して粒度調整を行った。次にこれを1500Kgf/cmの圧力で直径12mm、厚さ1mmの円板に成形し、500℃で2時間熱処理して脱バインダを行った後、1000℃〜1350℃で2時間、大気中で焼成することで円板状の焼結体を得た。このようにして得られた焼結体を、本発明においてバルク状焼結体と呼ぶものとする。このバルク状焼結体のSEM写真から、結晶粒子の平均最短軸長を算出したところ、およそ1.0μmであった。
【0017】
次に、シート状成形体の製造方法について説明する。出発原料として、CaCO、Bi、TiOを使用した。組成CaBiTi15となるように、CaCO、Bi、TiOをモル比1:2:4の割合で秤量し、ボールミルを用いて約16時間湿式混合して混合物を得た。得られた混合物を乾燥した後、800℃〜1000℃で2〜10時間仮焼して、CaBiTi15セラミック仮焼粉末を得た。このセラミック仮焼粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図1に示す。これらの結晶粒子の形状には、異方性は認められないことがわかる。
【0018】
得られたセラミック仮焼粉末に適量の有機バインダ、分散剤、消泡剤、表面活性剤を混合して、セラミックスラリを得た。このセラミックスラリをドクターブレード法で、シートの厚みが3〜20μmの範囲になるようにシート成形して、シート状成形体を得た。また、同様に成形した厚み5μmのシート状成形体を2枚積層したもの、および4枚積層したものをそれぞれシート状成形体として用意した。
【0019】
これらのシート状成形体を、熱処理を簡便にするため約20mm×30mmの大きさに切断した。これらを、350℃で5時間、次いで500℃で2時間熱処理し、脱バインダを行った。その後、1000℃〜1350℃で2時間、焼成を行った。さらに、焼成したシート状成形体を、ボールミルを用いて約16時間湿式粉砕してCaBiTi15セラミック粉末を得た。得られたセラミック粉末のSEM写真から、結晶粒子の平均アスペクト比を求めた。
【0020】
以下に示す表1は、それぞれのシート状成形体から得られたセラミック粉末の平均アスペクト比、およびシート状成形体の厚みとバルク状焼結体における結晶粒子の平均最短軸長との関係をまとめたものである。
【0021】
【表1】
Figure 2004189506
【0022】
No.1ないしNo.5の試料は、シート状成形体単層の厚みを、バルク状焼結体における結晶粒子の平均最短軸長に対して3.0〜20.0倍に設定したものである。試料No.1〜4より、シート状成形体の厚みが、バルク状焼結体における結晶粒子の平均最短軸長に対して15.0倍以下のときは、セラミック粉末の平均アスペクト比が3.0以上であり、有効であることがわかった。また、試料No.5より、シート状成形体の厚みが、バルク状焼結体における結晶粒子の平均最短軸長に対して15.0倍より大きいときは、シート状成形体から得られた結晶粒子の平均アスペクト比が3.0より小さくなり、本発明の対象外であることがわかった。
【0023】
また、No.6ないしNo.7の試料は、複数枚のシートを積層して焼成した場合のものである。ここから、シート状成形体を複数枚積層して焼成した場合にも、積層後のシート状成形体の厚みがバルク状焼結体における結晶粒子の平均最短軸長に対して15.0倍以下であれば、本発明が有効であることが判明した。
【0024】
上記試料のうち、試料No.1のSEM写真を図2に、試料No.3のSEM写真を図3にそれぞれ示す。いずれの図においても、結晶粒子は板状を示しており、形状異方性が確認できる。
【0025】
以上の結果から、本発明において形状異方性セラミック粒子を製造するにあたり、シート状成形体の厚みが、得ようとするセラミック粉末と組成を同じくするセラミックのバルク状焼結体における結晶粒子の平均最短軸長に対して15倍以下である必要があることが判明した。
(実施形態2)
バルク状焼結体およびセラミック粉末を、組成がそれぞれBiTi12、SrTi、PbNbとなる原料を用いたこと以外は実施形態1と同様にして作製した。なお、BiTi12はビスマス層状化合物、SrTiはルドルスデン・ポッパー型化合物、PbNbはパイロクロア構造を示す化合物である。得られたバルク状焼結体における結晶粒子の平均最短軸長はそれぞれ、1.2μm、1.5μm、1.1μmであった。
【0026】
以下に示す表2は、それぞれのシート状成形体から得られたセラミック粉末の平均アスペクト比、およびシート状成形体の厚みとそれぞれのバルク状焼結体における結晶粒子の平均最短軸長との関係をまとめたものである。
【0027】
【表2】
Figure 2004189506
【0028】
いずれの試料においても、3.0以上の平均アスペクト比が得られており、シート状成形体の厚みがバルク状焼結体における結晶粒子の平均最短軸長に対して15.0倍以下であれば、組成が異なるものであっても本発明は有効であることが判明した。
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば、フラックスまたは酸を使用せず、塩化物、硫酸塩、硝酸、塩酸などを含む廃液を発生させずに、結晶異方性を有する化合物を主成分とする形状異方性セラミック粉末を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明におけるCaBiTi15仮焼粉末の図面代用写真。
【図2】本発明におけるCaBiTi15よりなる形状異方性セラミック粉末の図面代用写真。
【図3】本発明におけるCaBiTi15よりなる形状異方性セラミック粉末の図面代用写真。

Claims (2)

  1. 形状異方性セラミック粉末を得るためのセラミック前駆体を含むスラリーを作成する工程と、前記スラリーをシート状に成形してシート状成形体を得る工程と、前記シート状成形体を焼成して焼結体を得る工程と、前記焼結体を粉砕する工程とを備え、前記シート状成形体の厚みが、前記形状異方性セラミック粉末と組成および焼成温度を同じくするバルク状焼結体における結晶粒子の軸のうち最短となる軸長の平均値に対し15倍以下であることを特徴とする、形状異方性セラミック粉末の製造方法。
  2. 前記結晶異方性を有する化合物の主成分が、層状ペロブスカイト構造を示すことを特徴とする、請求項1に記載の形状異方性セラミック粉末の製造方法。
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