JP2004189908A - セルロースエステルフィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】液晶表示素子すなわち偏光板の高生産性化(生産量増大)に伴い、偏光板用保護フィルムに用いられるセルロースエステルフィルムのいわゆる巻品質を改善し、特にフィルムの巻取り時における貼り付き故障及び凸状押され故障の発生防止を改善して、偏光板用保護フィルムの高生産性化を可能とするセルロースエステルフィルムを提供する。
【解決手段】セルロースエステルフィルムは、製造後に未処理状態(基準状態)で、温度23℃、関係湿度80%RHの環境条件下で24時間放置した後の透湿度が150〜270g/m であり、かつ製造後に所定の大きさに裁断した枚葉フィルムを温度80℃、関係湿度90%RHの高温高湿の環境条件下で50時間調湿した後(高温高湿環境条件下での調温調湿処理後)、さらに塩化カルシウム−カップ法に基づく温度23℃、関係湿度80%RHの環境条件下で24時間放置した後の透湿度が150〜290g/m である。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、偏光板用保護フィルム、さらに詳しくは、表面物理特性が改良されかつロール状に巻き取った時の物理特性が改良されており、さらに、偏光板に加工した後の偏光板の物理特性が改良される偏光板用保護フィルムに用いられるセルロースエステルフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、液晶表示装置(LCD)は種々のところに使用されるに伴って、LCDに使用される液晶表示素子すなわち偏光板についても高生産性化(生産量増大)が求められている。
【0003】
ところで、現在、LCDの偏光板用の保護フィルムとしては、主にセルローストリアセテート(TAC)フィルムが用いられているが、偏光板の高生産性化に伴い、このようなLCD用TACフィルムの高生産性化が進むと、TACフィルムの巻取り品質での負荷が増大し、特に巻き取り状態でのフィルムの貼り付き故障や凸状押され故障が発生し、高生産性化が容易ではなかった。
【0004】
なおここで、「フィルムの貼り付き故障」とは、製造時にフィルムをロール状に巻き取った際に、フィルム同士がくっつくなどのブロッキングに起因する「貼り付き」を意味する。また「凸状押され故障」とは、フィルム製造時の巻き取り時にフィルム間に入り込んだ空気が抜けずに残ったり、異物が入り込んで発生した際の「浮き」を意味する。
【0005】
そこで、従来は、TACフィルムの製膜時に、フィルムの巻き取り環境条件、保管条件の設定などにより対応していたが、それにも限界があり、フィルムそのものの性状を変える必要性あった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来の既存のセルロースエステルフィルムでは、液晶表示素子すなわち偏光板についての高生産性化に伴い、偏光板用保護フィルムが高生産性化された場合において、フィルムの表面物理特性が充分でなく、特にフィルムをロール状に巻き取った時に、貼り付き故障や凸状押され故障が発生するという問題があった。
【0007】
本発明者は、上記の点に鑑み鋭意研究を重ねた結果、高温高湿環境条件下での調温調湿処理後のセルロースエステルフィルムの透湿度と、未処理状態(基準状態)のフィルムの透湿度との変化の度合いが少ない場合に、セルロースエステルフィルムの巻品質の改善効果が大きいことを見い出した。
【0008】
さらに、フィルム構成材料の種類及び組み合わせ(配合)において、例えば可塑剤の種類と配合量、TACの分子量分布等の構成材料自体や配合に関わる特性値を、特定の範囲内に規定することで、フィルムの貼り付き故障等の発生防止の改善に効果が大きいことを見い出した。
【0009】
ところで、従来の偏光板用保護フィルムに用いられるセルロースエステルフィルムにおいて、セルローストリアセテート(TAC)フィルムの表面物理特性の改良に関わる先行特許文献には、つぎのようなものがある。
【0010】
【特許文献1】
特開2001−163994号公報
本出願人は、先に、樹脂フィルムとりわけセルロースエステルフィルム上に、帯電防止層を設けることにより、フィルム裏面とのブロッキングがなく、偏光子との接着性が十分な、生産性の高い、偏光板保護フィルムとして用いることのできる樹脂フィルムの発明を提案した。
【0011】
【特許文献2】
特開2002−194106号公報
また本出願人は、先に、液晶表示素子の薄膜化に伴い、偏光板保護フィルムを薄膜化した場合においても、フィルム製膜工程ならびに、偏光板作成工程において、取り扱い性の優れたセルロースエステルフィルムの発明を提案した。この先提案のセルロースエステルフィルムの発明では、マット剤である微粒子の含有量及び粒径などを規定していた。
【0012】
また、従来の偏光板用保護フィルムに用いられるセルロースエステルフィルムにおいて、セルローストリアセテート(TAC)フィルムの分子量分布に関わる先行特許文献には、つぎのようなものがある。
【0013】
【特許文献3】
特開平9−40792号公報
また従来、高濃度で調製してもドープ粘度が高くならず、成形性のよいセルロースアセテートを用いたフィルムの製造方法の発明が提案されている。この先提案のセルロースエステルフィルムの製造方法の発明では、酢化度、ドープ濃度、ドープ粘度などが規定されており、TACフィルムの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比は、Mw/Mn=1.0〜1.7が開示されている。
【0014】
【特許文献4】
特開2000−314811号公報
また本出願人は、先に、液晶ディスプレイなどの偏光板の保護フィルムとして適したセルロースエステルフィルムを含む光学フィルムの発明を提案した。この先提案の光学フィルムの発明では、特にフィルムの面品質及び光学的等方性の問題を改良すること、フィルムの加工性の改善、具体的には、製造時にフィルムを所望の形に打ち抜く際のカッティング特性を改善することを目的としていた。そして、この先提案の光学フィルムの発明では、TACフィルムの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比は、Mw/Mn=3.0〜5.0が開示されている。
【0015】
【特許文献5】
特開2002−40244号公報
さらに本出願人は、先に、光学特性に優れ、かつ平面性がよくカールの少ない、取り扱い性に優れたセルロースエステルを含有する光学フィルムの発明を提案した。この先提案の光学フィルムの発明では、セルロースエステルの数平均分子量(Mn)が50000〜130000、重量平均分子量(Mw)が130000〜290000であった。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1記載の発明では、セルロースエステルフィルム上に帯電防止層が設けられているだけで、フィルム自体での物性の改良はなされていない。また、上記特許文献2記載の発明は、フィルム自体での表面物性の改良に関するものであるが、効果が不充分であり、しかもフィルム表面そのものの物性値は規定されていない。さらに、特許文献3〜5記載の発明は、いずれもフィルムの表面物性に関する発明ではなく、従って、既存のセルロースエステルフィルムでは、LCDの液晶表示素子すなわち偏光板の高生産性化に対処するには不充分であるという問題があった。
【0017】
このように、従来は、フィルムの光学特性と、フィルムの物理特性とを直接関連づけた技術は見当たらない。
【0018】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、液晶表示素子すなわち偏光板の高生産性化(生産量増大)に伴い、偏光板用保護フィルムに用いられるセルロースエステルフィルムのいわゆる巻品質を改善することができて、特にフィルムの巻取り時における貼り付き故障及び凸状押され故障の発生防止を改善し、偏光板用保護フィルムの高生産性化を可能とする、セルロースエステルフィルムを提供しようとすることにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1記載の発明は、偏光板用保護フィルム等に用いられるセルロースエステルフィルムであって、製造後に未処理状態(基準状態)で、塩化カルシウム−カップ法に基づく温度23℃、湿度80%RHの環境条件下で24時間放置した後の透湿度が150〜270g/m であり、かつ製造後に所定の大きさに裁断した枚葉フィルムを温度80℃、湿度90%RHの高温高湿の環境条件下で50時間調温調湿した後(高温高湿環境条件下での調温調湿処理後)、さらに塩化カルシウム−カップ法に基づく温度23℃、湿度80%RHの環境条件下で24時間放置した後の透湿度が150〜290g/m であることを特徴としている。
【0020】
また、本発明の請求項2記載の発明は、上記請求項1記載のセルロースエステルフィルムにおいて、セルロースエステルフィルムが、リン酸エステル系化合物及びフタル酸エステル系化合物よりなる群の中から選ばれた少なくとも1種の化合物を含有しており、該フィルムに対する上記化合物の含有量が12重量%以下であり、かつセルロースエステルは実質的にセルローストリアセテートであり、セルローストリアセテートの重量平均分子量をMwと数平均分子量をMnとするとき、1.7≦Mw/Mn≦3.0であることを特徴としている。
【0021】
そして、上記請求項2記載のセルロースエステルフィルムにおいて、Mw/Mn≦2.5であることが望ましい。
【0022】
また、上記請求項2記載のセルロースエステルフィルムにおいて、リン酸エステル系化合物がトリフェニルホスフェート、ビフェニルジフェニルホスフェートであることが好ましい。
【0023】
さらに、上記セルロースエステルフィルムにおいては、セルロースエステルフィルムの膜厚が、50μm以下、好ましくは50〜10μmであることが好ましい。その理由は、厚さ50〜10μmであるセルロースエステルフィルムは、例えば偏光板用保護フィルムとして用いられる際に、より品質に対して厳しい性能が求められるためである。
【0024】
本発明の上記セルロースエステルフィルムによれば、フィルムのいわゆる巻品質を改善することができて、特にフィルムの巻取り時における貼り付き故障及び凸状押され故障の発生防止を改善することができる。さらには、上記の本発明の手段をとることにより、予期しなかったことではあるが、セルロースエステルフィルム中の可塑剤のブリードアウトの防止、偏光板用保護フィルムとして用いた場合のフィルム及び偏光板の寸法安定性、並びに偏光子の安定性をも改善することができ、偏光板用保護フィルムの高生産性化(生産量増大)が可能である。
【0025】
すなわち、本発明では、セルロースエステルが偏光板用保護フィルムとして使用されて高生産性化された場合において、該セルロースエステルフィルムの特性を確認するうえで、フィルム内のセルロースエステル及び可塑剤などの材料の存在状態や配向状態の安定性の指標として、セルロースエステルフィルムの透湿性に着目し、未処理状態(基準状態)での透湿性と、高温高湿環境条件下での調温調湿処理後の透湿性の変化を物性値として規定しているものである。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、具体的に説明する。
【0027】
本発明のセルロースエステルフィルムの主成分であるセルロースエステルとしては、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートなどが挙げられる。セルローストリアセテートの場合は、特に重合度250〜400、結合酢酸量が54〜62.5%のセルローストリアセテートが好ましく、結合酢酸量が58〜62.5%のベース強度が強くより好ましい。セルローストリアセテートは綿花リンターから合成されたセルローストリアセテートと木材パルプから合成されたセルローストリアセテートのどちらかを単独あるいは混合して用いることができる。
【0028】
セルロースエステルの溶剤としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコールなどの低級アルコール類、シクロヘキサン、ジオキサン類、メチレンクロライドのような低級脂肪族塩化炭化水素類などを用いることができる。
【0029】
溶剤比率としては、例えばメチレンクロライド70〜95重量%、その他の溶剤は5〜30重量%が好ましい。またセルロースエステルの濃度は10〜50重量%が好ましい。溶剤を添加しての加熱温度は、使用溶剤の沸点以上で、かつ該溶剤が沸騰しない範囲の温度が好ましく例えば60℃以上、80〜110℃の範囲に設定するのが好適である。また、圧力は設定温度において、溶剤が沸騰しないように定められる。
【0030】
溶解後は冷却しながら容器から取り出すか、または容器からポンプ等で抜き出して熱交換器などで冷却し、これを製膜に供する。
【0031】
セルロースエステルと溶剤のほかに必要な可塑剤、紫外線吸収剤等の添加剤は、予め溶剤と混合し、溶解または分散してからセルロースエステル溶解前の溶剤に投入しても、セルロースエステル溶解後のドープへ投入しても良い。
【0032】
本発明で用いることのできる可塑剤としては特に限定しないが、リン酸エステル系では、トリフェニルホスフェート(TPP)、ビフェニルジフェニルホスフェート(BDP)、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等、グリコール酸エステル系では、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート(EPEG)、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等を単独あるいは併用するのが好ましい。上記の可塑剤は必要に応じて、2種類以上を併用して用いてもよい。これらの可塑剤を含有することにより、寸法安定性、耐水性に優れたフィルムが得られるため、特に好ましい。
【0033】
本発明において、吸水率ならびに水分率を特定の範囲内にするために、好ましい可塑剤の添加量としては、セルロースエステルに対する重量%で、12重量%以下である。可塑剤を2種類以上併用して用いる場合には、これらの可塑剤の合計量が12重量%以下であれば、良い。
【0034】
本発明のセルロースエステルフィルムには、紫外線吸収剤を用いることが好ましく、紫外線吸収剤としては、液晶の劣化防止の点より波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の点より波長400nm以上の可視光の吸収が可及的に少ないものが好ましく用いられる。
【0035】
一般に用いられるものとしては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などがあげられるが、これらに限定されない。
【0036】
また本発明のフィルムに滑り性の向上、巻取り後のブロッキング防止等の目的でマット剤として加える微粒子は、主ドープに添加してもよいが、添加液に加えるのが生産性の上からは好ましい。添加液に添加し、フィルムに含有せしめる。また、主ドープに含有せしめてもよいが、微粒子としてはいかなるものも用いることができる。
【0037】
本発明に使用される微粒子としては無機化合物の例として、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。その中でも、微粒子はケイ素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化ケイ素が好ましい。これらの例としては、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されているものがあり、使用することができる。さらに、二酸化ケイ素微粒子の1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見掛比重が70g/リットル以上の二酸化ケイ素微粒子であることが好ましい。これらを満足する二酸化ケイ素の微粒子としては、例えば、アエロジル200V、アエロジルR972Vがあり、フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きいため特に好ましい。
【0038】
本発明において、上記微粒子はセルロースエステルに対して、0.04〜0.4重量%添加して使用される。好ましくは、0.05〜0.3重量%、さらに好ましくは0.05〜0.2重量%である。
【0039】
本発明においては、セルロースエステルを溶解して得られるドープを支持体上に流延(キャスト工程)した後、加熱して溶剤の一部を除去(支持体上乾燥工程)した後、支持体から剥離し、剥離したフィルムを乾燥(フィルム乾燥工程)して、セルロースエステルフィルムを得る。
【0040】
キャスト工程における支持体はベルト状もしくはドラム状のステンレスを鏡面仕上げした支持体が使用される。キャスト工程の支持体の温度は一般的な温度範囲0℃から溶剤の沸点未満の温度で、流延することができるが、5〜30℃の支持体上に流延する方が、ドープをゲル化させ剥離限界時間をあげられるため、好ましく、5〜15℃の支持体上に流延することがさらに好ましい。
【0041】
支持体上乾燥工程ではドープを流延し、一旦ゲル化させた後、流延から剥離するまでの時間を100%としたとき、流延から30%以内にドープ温度を40℃〜70℃にすることで、溶剤の蒸発を促進し、それだけ早く支持体上から剥離することができ、さらに剥離強度が増すため好ましく、30%以内にドープ温度を55℃〜70℃にすることがより好ましい。この温度を20%以上維持することが好ましく、40%以上がさらに好ましい。
【0042】
支持体上での乾燥は残留溶媒量60%〜150%で支持体から剥離することが、支持体からの剥離強度が小さくなるため好ましく、80〜120%がより好ましい。剥離するときのドープの温度は0℃〜30℃にすることが剥離時のベース強度をあげることができ、剥離時のベース破断を防止できるため好ましく、5℃〜20℃がより好ましい。
【0043】
フィルム乾燥工程においては支持体より剥離したフィルムをさらに乾燥し、残留溶媒量を3重量%以下、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下であることが、寸法安定性が良好なフィルムを得る上で好ましい。フィルム乾燥工程では一般にロール懸垂方式か、ピンテンター方式または、クリップテンター方式でフィルムを搬送しながら乾燥する方式が採られる。液晶表示用部材用としては、テンター方式で幅を保持しながら乾燥させることが、寸法安定性を向上させるために好ましい。
【0044】
フィルムを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行なう。簡便さの点で熱風で行なうのが好ましい。乾燥温度は40℃〜150℃の範囲で3〜5段階の温度に分けて、段々高くしていくことが好ましく、80℃〜140℃の範囲で行なうことが寸法安定性を良くするためさらに好ましい。これら流延から後乾燥までの工程は、空気雰囲気下でもよいし窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下でもよい。
【0045】
本発明のセルロースエステルフィルムの製造に係わる巻き取り機は、一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法などの巻き取り方法で巻き取ることができる。
【0046】
本発明によるセルロースエステルフィルムの厚さは、特に限定されないが、LCDに使用される液晶表示素子すなわち偏光板用の保護フィルムに用いられることから、通常、100μm以下であることが好ましく、中でも、厚さ50μm以下のセルロースエステルフィルムが好ましい。その理由は、厚さ50μm以下のセルロースエステルフィルムは、例えば偏光板用保護フィルムとして用いられる際に、より品質に対して厳しい性能が求められるためである。
【0047】
本発明の請求項1記載の発明セルロースエステルフィルムは、塩化カルシウム−カップ法に基づく温度23℃、湿度80%RHの環境条件下で24時間後の透湿度が150〜270g/m であり、かつ製造後に所定の大きさに裁断した枚葉フィルムを温度80℃、湿度90%RHの高温高湿の環境条件下で50時間調温調湿した後(高温高湿環境条件下での調温調湿処理後)、さらに塩化カルシウム−カップ法に基づく温度23℃、湿度80%RHの環境条件下で24時間放置した後の透湿度が150〜290g/m である。
【0048】
ここで、透湿度は、セルロースエステルフィルムの重要な特性の1つであり、JIS Z 0208に規定される塩化カルシウム−カップ法に基づく方法に従って測定し、面積1m あたり24時間で透過する水分量(g)として算出したものである。
【0049】
本発明によるセルロースエステルフィルムは、偏光板用保護フィルムに用いられるセルロースエステルフィルムであって、製造後に未処理状態(基準状態)で、塩化カルシウム−カップ法に基づく温度23℃、湿度80%RHの環境条件下で24時間後の透湿度が、150〜270g/m の範囲にある。その理由は、該セルロースエステルフィルムを用いて製作した偏光板の偏光子の吸湿性と安定性を保持するためである。
【0050】
かつ、本発明によるセルロースエステルフィルムは、製造後に所定の大きさに裁断した枚葉フィルムを温度80℃、湿度90%RHの高温高湿の環境条件下で50時間調温調湿した後(高温高湿環境条件下での調温調湿処理後)、さらに塩化カルシウム−カップ法に基づく温度23℃、湿度80%RHの環境条件下で24時間放置した後の透湿度が150〜290g/m の範囲にあるが、その理由は、該セルロースエステルフィルムを用いて製作した偏光板の偏光子の吸湿性と安定性を保持するためである。また、温度80℃、湿度90%RHの高温高湿の環境条件下で50時間調温調湿した後(高温高湿環境条件下での調温調湿処理後)の透湿度は、未処理状態(基準状態)の透湿度に対して変化が少ないことが好ましい。
【0051】
また、本発明の請求項2記載の発明では、セルロースエステルフィルムに、リン酸エステル系化合物及びフタル酸エステル系化合物よりなる群の中から選ばれた少なくとも1種の化合物を含有し、該フィルムに対する上記化合物の含有量が12重量%以下である。
【0052】
セルロースエステルは、実質的にセルローストリアセテートであるのが、好ましく、セルローストリアセテートの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比が、1.7≦Mw/Mn≦3.0であり、好ましくは、1.7≦Mw/Mn≦2.5である。
【0053】
セルローストリアセテートの平均分子量については、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定できるので、これを用いて数平均分子量(Mn)、及び重量平均分子量(Mw)を算出することができる。
【0054】
平均分子量の測定条件は、以下の通りである。
【0055】
下記に示す装置、材料を用いて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法セルローストリアセテートの重量平均分子量(Mw)および平均分子量(Mn)を測定し、分子量分布Mw/Mnを算出した。
【0056】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー
溶媒(溶離液):ジクロロメタン
カラム名:昭和電工製 GPCk806−GPCk805−GPCk803 (3本)
試料濃度:0.1(重量%)
流量:1.0(ml/分)
試料注入量:100(μl)
標準試料:ポリスチレン(Mw:5,000,000〜6,700,000)
温度:25℃
検出:RI(示唆屈折率計)
上記セルローストリアセテートの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.7未満であれば、フィルムの引き裂き強度が低下するので、好ましくない。
【0057】
また、上記の比(Mw/Mn)が3.0を超えると、フィルムの寸法安定性、滑り性が劣化するので、好ましくない。
【0058】
また、リン酸エステル系化合物は、トリフェニルホスフェート及び/又はビフェニルジフェニルホスフェートであるのが、好ましい。
【0059】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0060】
実施例1
(ドープ液の調製)
セルローストリアセテートのドープ液を、以下のように調製した。
【0061】
セルローストリアセテート(TAC):100kg
チヌビン326(チバスペシャルティケミカルズ社製):0.3kg
チヌビン171(チバスペシャルティケミカルズ社製):0.5kg
チヌビン109(チバスペシャルティケミカルズ社製):0.5kg
エチルフタリルエチルグリコレート(EPEG):2.8kg
トリフェニルホスフェート(TPP):9.7kg
アエロジル200V(日本アエロジル社製):0.09kg
メチレンクロライド:320kg
エタノール:20kg
これらを密閉容器に投入し、加圧下で80℃に保温・攪拌しながら完全に溶解させた。
【0062】
(フィルム試料の作製)
上記のドープ液を濾過した後、図示しないベルト流延装置を用い、ドープ温度33℃にてダイスより、ステンレスバンド支持体上に流延した。支持体上で60秒間保持した後にステンレスベルト上から剥離し、多数のロールで搬送させながら乾燥させた。この際、クリップテンターを用いて、フィルムを幅手方向に1.07倍に延伸しながら乾燥を行なった。乾燥後、ロール状に巻き取ることで膜厚41μmのセルローストリアセテート(TAC)フィルムを得た。
【0063】
実施例2〜4
上記実施例1の場合と同様にしてセルローストリアセテート(TAC)フィルムを製造するが、トリフェニルホスフェート(TPP)、ビフェニルジフェニルホスフェート(BDP)、及びエチルフタリルエチルグリコレート(EPEG)の含有量、並びにセルローストリアセテート(TAC)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)を、表1に示すように変更した以外は、実施例1の場合と同様にしてセルローストリアセテートフィルムを得た。
【0064】
表1に、各実施例における可塑剤の含有量、及びTAC−Mw/Mnの値を、まとめて示した。なお、ここで、トリフェニルホスフェート(TPP)、ビフェニルジフェニルホスフェート(BDP)、及びエチルフタリルエチルグリコレート(EPEG)の含有量は、セルローストリアセテート(TAC)に対する重量%を表わす。
【0065】
また、Mw/Mn(TAC)は、セルローストリアセテート(TAC)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比を意味する。
【0066】
なお、セルローストリアセテート(TAC)の平均分子量については、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定し、これを用いて数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を算出するとともに、セルローストリアセテートの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)を算出した。
【0067】
【表1】
Figure 2004189908
つぎに、本発明による実施例1〜4の各セルローストリアセテートフィルムについて、製造後に未処理状態(基準状態)で、塩化カルシウム−カップ法に基づく温度23℃、湿度80%RHの環境条件下で24時間後の透湿度と、製造後に所定の大きさに裁断した枚葉フィルムを温度80℃、湿度90%RHの高温高湿の環境条件下で50時間調温調湿した後(高温高湿環境条件下での調温調湿処理後)、さらに塩化カルシウム−カップ法に基づく温度23℃、湿度80%RHの環境条件下で24時間放置した後の透湿度を測定し、得られた結果を、下記の表2に示した。
【0068】
【表2】
Figure 2004189908
比較例1及び2
比較のために、可塑剤の含有量、並びにセルローストリアセテートの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が、上記表1に示すように、本発明の範囲外であるセルローストリアセテートを用い、その他の点は上記実施例の場合と同様にして、セルローストリアセテートフィルムを作成した。また、各セルローストリアセテートフィルムについて、製造後に未処理状態(基準状態)で、塩化カルシウム−カップ法に基づく温度23℃、湿度80%RHの環境条件下で24時間後の透湿度と、製造後に所定の大きさに裁断した枚葉フィルムを温度80℃、湿度90%RHの高温高湿の環境条件下で50時間調温調湿した後(高温高湿環境条件下での調温調湿処理後)、さらに塩化カルシウム−カップ法に基づく温度23℃、湿度80%RHの環境条件下で24時間放置した後の透湿度を、上記実施例の場合と同様に、測定し、得られた結果を表2にあわせて示した。
【0069】
つぎに、本発明による上記実施例1〜4、及び比較例1及び2の各セルローストリアセテートフィルムについて、フィルムの巻品質としての凸状押され故障の発生個数、貼り付き故障のグレード、さらには、ブリードアウト、セルローストリアセテートフィルム自体についての寸法変化率と、偏光板に加工した状態での寸法変化率、セルローストリアセテートフィルムの偏光特性を評価した。
【0070】
ここで、セルローストリアセテートフィルムの凸状押され故障の発生個数の測定方法は、つぎの通りである。すなわち、厚み41μm、及び幅1330mmのセルローストリアセテートを、巻き取り室の環境温度24℃、湿度40%RHの条件下で、3000m巻き取った時、巻き上がった状態のロール状フィルムの外観を観察し、フィルム表面が凸状態に盛り上がっている箇所(凸状押され故障)の数を計測した。また、環境温度20〜30℃、湿度40〜70%RHの条件下で、6ヶ月間保存した後、フィルムを長さ方向に1m切り出し、各フィルムの凸状押され故障の発生個数を測定し、得られた結果を表3に示した。
【0071】
なお、本発明において、凸状押され故障とは、フィルム製造時の巻き取り時にフィルム間に入り込んだ空気が抜けずに残ったり、異物が入り込んで発生した際の「凸状(浮き)」をいい、無いことが好ましい。
【0072】
【表3】
Figure 2004189908
表3の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜4のセルローストリアセテートフィルムによれば、凸状押され故障の発生個数が減少し、故障耐性が改善されていることが判る。
【0073】
これに対し、比較例1及び2では、凸状押され故障の発生個数が、本発明の実施例1〜4の場合に比べて、非常に多いことが判る。
【0074】
つぎに、本発明による実施例1〜4、及び比較例1及び2の各セルローストリアセテートフィルムについて、貼り付きグレードを測定し、得られた結果を上記の表3にあわせて示した。
【0075】
ここで、貼り付きグレードの測定方法は、つぎの通りである。すなわち、上記のようにして巻き取ったセルローストリアセテートフィルムを繰り出して、フィルム同士が貼り付いていないか、どうかを検査した。また、環境温度20及び20℃、湿度40〜70%RHの条件下で、6ヶ月間保持し、6ヶ月経過後の各フィルムの貼り付きグレードを測定した。
【0076】
ここで、フィルムの貼り付きの状態により、以下のグレード付けを行なった。
【0077】
○:全く貼り付いていない
△:若干貼り付いているが、容易に剥離できる
×:貼り付いているが、容易に剥離できる
表3の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜4のセルローストリアセテートフィルムによれば、貼り付き故障が起きず、故障耐性が改善されていることが判る。
【0078】
これに対し、比較例1及び2では、貼り付き故障の発生数が、本発明の実施例1〜4の場合に比べて多く、フィルムの貼り付きグレードが低いことが判る。
【0079】
つぎに、本発明による上記実施例1〜4、及び比較例1及び2の各セルローストリアセテートフィルムについて、ブリードアウトの評価試験を、つぎのようにして行ない、得られた結果を表3にあわせて示した。
【0080】
ここで、ブリードアウトの評価方法として、ブリードアウトは、巻き取ったフィルムを長さ1mに裁断し、黒色の検査台上で、蛍光灯の白色光のもとで、目視により観察した。その発生度数により、○、△、×のグレード付けを行なった。
【0081】
表3の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜4のセルローストリアセテートフィルムによれば、ブリードアウトが発生せず、フィルムの接着機能や光学特性が改善されていることが判る。
【0082】
これに対し、比較例1及び2では、ブリードアウトの発生数が、本発明の実施例1〜4の場合に比べて多く、LCDの偏光板用の保護フィルムとしての機能が低いことが判る。
【0083】
また、本発明による上記実施例1〜4、及び比較例1及び2の各セルローストリアセテートフィルムについて、セルローストリアセテートフィルム自体の寸法変化率を測定し、得られた結果を表3にあわせて示した。
【0084】
ここで、寸法変化率は、つぎのようにして測定した。すなわち、各セルローストリアセテートフィルムの試料表面の2箇所(MD方向またはTD方向)に十文字型の印を付し、熱処理条件:80℃,90%RH,48時間を施した後、印間の距離を測定し、各セルローストリアセテートフィルム自体の寸法変化率を評価した。なお、ここで、フィルムのMD方向とは、セルローストリアセテート樹脂ドープを支持体上に流延し、乾燥してフィルムを形成する際の、流延方向すなわちフィルムの長手方向をいい、TD方向とは、これと直角の方向すなわちフィルムの幅手方向をいう。
【0085】
また、各セルローストリアセテートフィルムを偏光板に加工した状態での寸法変化率を、同様に測定し、セルローストリアセテートフィルムを偏光板に加工した状態での寸法変化率を評価した。
【0086】
表3の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜4のセルローストリアセテートフィルムによれば、セルローストリアセテートフィルム自体の寸法変化率、及びセルローストリアセテートフィルムを偏光板に加工した状態での寸法変化率が、いずれも小さく、寸法安定性が良好であることが判る。これに対し、比較例1及び2では、寸法安定性が劣化していることが判る。
【0087】
つぎに、本発明による上記実施例1〜4、及び比較例1及び2の各セルローストリアセテートフィルムについて、フィルムの偏光特性をつぎのようにして評価し、得られた結果を表3にあわせて示した。
【0088】
ここで、偏光特性の評価方法として、本発明による上記実施例1〜4、及び比較例1及び2の各セルローストリアセテートフィルムを偏光板用保護フィルムとして用い、該フィルムから常法に従って偏光板を作成し、さらにそれを、液晶表示ディスプレイに用いた。液晶表示ディスプレイで得られる画像を、目視により観察し、画像の視認性により、○、△、×のグレード付けを行なった。
【0089】
表3の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜4のセルローストリアセテートフィルムによれば、液晶表示ディスプレイで得られる画像の視認性が良好であり、フィルムの偏光特性が改善されていることが判る。
【0090】
実施例5〜8
流延の際のドープ流量を調整することで、厚さ80μmのセルローストリアセテート(TAC)フィルムを得る以外は、上記実施例1〜4の場合と同様にしてセルローストリアセテートフィルムを製造した。
【0091】
表4に、実施例5〜8における可塑剤の含有量、及びTAC−Mw/Mnの値を、まとめて示した。
【0092】
【表4】
Figure 2004189908
つぎに、本発明による実施例5〜8の各セルローストリアセテートフィルムについて、製造後に未処理状態(基準状態)で、塩化カルシウム−カップ法に基づく温度23℃、湿度80%RHの環境条件下で24時間後の透湿度と、製造後に所定の大きさに裁断した枚葉フィルムを温度80℃、湿度90%RHの高温高湿の環境条件下で50時間調温調湿した後(高温高湿環境条件下での調温調湿処理後)、さらに塩化カルシウム−カップ法に基づく温度23℃、湿度80%RHの環境条件下で24時間放置した後の透湿度を測定し、得られた結果を、下記の表5に示した。
【0093】
【表5】
Figure 2004189908
比較例3及び4
比較のために、可塑剤の含有量、並びにセルローストリアセテートの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が、上記表4に示すように、本発明の範囲外であるセルローストリアセテートを用い、その他の点は上記実施例の場合と同様にして、セルローストリアセテートフィルムを作成した。また、各セルローストリアセテートフィルムについて、製造後に未処理状態(基準状態)で、塩化カルシウム−カップ法に基づく温度23℃、湿度80%RHの環境条件下で24時間後の透湿度と、製造後に所定の大きさに裁断した枚葉フィルムを温度80℃、湿度90%RHの高温高湿の環境条件下で50時間調温調湿した後(高温高湿環境条件下での調温調湿処理後)、さらに塩化カルシウム−カップ法に基づく温度23℃、湿度80%RHの環境条件下で24時間放置した後の透湿度を測定し、得られた結果を、下記の表5にあわせて示した。
【0094】
つぎに、本発明による上記実施例5〜8、及び比較例3及び4の各セルローストリアセテートフィルムについて、フィルムの巻品質としての凸状押され故障の発生個数を、上記実施例1〜4の場合と同様にして測定し、得られた結果を表6に示した。
【0095】
【表6】
Figure 2004189908
表6の結果から明らかなように、本発明の実施例5〜8のセルローストリアセテートフィルムによれば、凸状押され故障の発生個数が減少し、故障耐性が改善されていることが判る。
【0096】
これに対し、比較例3及び4では、凸状押され故障の発生個数が、本発明の実施例1〜4の場合に比べて、非常に多いことが判る。
【0097】
つぎに、本発明による実施例5〜8、及び比較例3及び4の各セルローストリアセテートフィルムについて、貼り付きグレードを、上記実施例1〜4の場合と同様にして測定し、得られた結果を上記の表6にあわせて示した。
【0098】
表6の結果から明らかなように、本発明の実施例5〜8のセルローストリアセテートフィルムによれば、貼り付き故障が起きず、故障耐性が改善されていることが判る。
【0099】
これに対し、比較例3及び4では、貼り付き故障の発生数が、本発明の実施例1〜4の場合に比べて多く、フィルムの貼り付きグレードが低いことが判る。
【0100】
つぎに、本発明による上記実施例5〜8、及び比較例3及び4の各セルローストリアセテートフィルムについて、ブリードアウトの評価試験を、上記実施例1〜4の場合と同様にして行ない、得られた結果を表6にあわせて示した。
【0101】
表6の結果から明らかなように、本発明の実施例5〜8のセルローストリアセテートフィルムによれば、ブリードアウトが発生せず、フィルムの接着機能や光学特性が改善されていることが判る。
【0102】
これに対し、比較例3及び4では、ブリードアウトの発生数が、本発明の実施例5〜8の場合に比べて多く、LCDの偏光板用の保護フィルムとしての機能が低いことが判る。
【0103】
また、本発明による上記実施例5〜8、及び比較例3及び4の各セルローストリアセテートフィルムについて、セルローストリアセテートフィルム自体の寸法変化率と、偏光板に加工した状態での寸法変化率を、上記実施例1〜4の場合と同様にして測定し、得られた結果を表6にあわせて示した。
【0104】
表6の結果から明らかなように、本発明の実施例5〜8のセルローストリアセテートフィルムによれば、セルローストリアセテートフィルム自体の寸法変化率、及びセルローストリアセテートフィルムを偏光板に加工した状態での寸法変化率が、いずれも小さく、寸法安定性が良好であることが判る。これに対し、比較例3及び4では、寸法安定性が劣化していることが判る。
【0105】
つぎに、本発明による上記実施例5〜8、及び比較例3及び4の各セルローストリアセテートフィルムについて、フィルムの偏光特性を上記実施例1〜4の場合と同様にして評価し、得られた結果を表6にあわせて示した。
【0106】
表6の結果から明らかなように、本発明の実施例5〜8のセルローストリアセテートフィルムによれば、液晶表示ディスプレイで得られる画像の視認性が良好であり、フィルムの偏光特性が改善されていることが判る。
【0107】
【発明の効果】
本発明によるセルロースエステルフィルムは、上述のように、偏光板用保護フィルム等に用いられるセルロースエステルフィルムであって、製造後に未処理状態(基準状態)で、塩化カルシウム−カップ法に基づく温度23℃、湿度80%RHの環境条件下で24時間放置した後の透湿度が150〜270g/m であり、かつ製造後に所定の大きさに裁断した枚葉フィルムを温度80℃、湿度90%RHの高温高湿の環境条件下で50時間調温調湿した後(高温高湿環境条件下での調温調湿処理後)、さらに塩化カルシウム−カップ法に基づく温度23℃、湿度80%RHの環境条件下で24時間放置した後の透湿度が150〜290g/m であることを特徴とするもので、本発明によれば、液晶表示素子すなわち偏光板の高生産性化(生産量増大)に伴い、偏光板用保護フィルムに用いられるセルロースエステルフィルムのいわゆる巻品質を改善することができて、特にフィルムの巻取り時における貼り付き故障及び凸状押され故障の発生防止を改善することができ、さらには、予期しなかったことではあるが、セルロースエステルフィルム中の可塑剤のブリードアウトの防止、偏光板用保護フィルムとして用いた場合のフィルム及び偏光板の寸法安定性、並びに偏光子の安定性をも改善することができて、偏光板用保護フィルムの高生産性化(生産量増大)が可能であるという効果を奏する。

Claims (4)

  1. 偏光板用保護フィルム等に用いられるセルロースエステルフィルムであって、製造後に未処理状態(基準状態)で、塩化カルシウム−カップ法に基づく温度23℃、湿度80%RHの環境条件下で24時間放置した後の透湿度が150〜270g/m であり、かつ製造後に所定の大きさに裁断した枚葉フィルムを温度80℃、湿度90%RHの高温高湿の環境条件下で50時間調温調湿した後(高温高湿環境条件下での調温調湿処理後)、さらに塩化カルシウム−カップ法に基づく温度23℃、湿度80%RHの環境条件下で24時間放置した後の透湿度が150〜290g/m であることを特徴とするセルロースエステルフィルム。
  2. セルロースエステルフィルムが、リン酸エステル系化合物及びフタル酸エステル系化合物よりなる群の中から選ばれた少なくとも1種の化合物を含有しており、該フィルムに対する上記化合物の含有量が12重量%以下であり、かつセルロースエステルは実質的にセルローストリアセテートであり、セルローストリアセテートの重量平均分子量をMwと数平均分子量をMnとするとき、1.7≦Mw/Mn≦3.0であることを特徴とする請求項1記載のセルロースエステルフィルム。
  3. Mw/Mn≦2.5であることを特徴とする請求項2記載のセルロースエステルフィルム。
  4. リン酸エステル系化合物が、トリフェニルホスフェート及び/又はビフェニルジフェニルホスフェートであることを特徴とする請求項2記載のセルロースエステルフィルム。
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