JP2004196459A - 糸条の巻取方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】各錘単独のトラバース駆動装置において、解舒性の向上を目的とする。
【解決手段】トラバース幅を脈動的に変化させながら糸条を巻取る方法において、巻き始めから巻き終わりまで、トラバースの反転位置を規則性なく乱数で決めた位置で変化させ、所望の巻上げ形状に糸条を巻き上げ、トラバース幅に対応させてトラバース速度を変化させ、巻き始めから巻き上がりまでの過程の少なくとも一部において、左右の少なくとも一方のトラバース反転位置を、ストローク毎にジグザグ状に変化させ、巻上げ形状が左右非対称形状となるように、左右のトラバース反転位置がそれぞれ独立して設定されている。
【選択図】 図4
【解決手段】トラバース幅を脈動的に変化させながら糸条を巻取る方法において、巻き始めから巻き終わりまで、トラバースの反転位置を規則性なく乱数で決めた位置で変化させ、所望の巻上げ形状に糸条を巻き上げ、トラバース幅に対応させてトラバース速度を変化させ、巻き始めから巻き上がりまでの過程の少なくとも一部において、左右の少なくとも一方のトラバース反転位置を、ストローク毎にジグザグ状に変化させ、巻上げ形状が左右非対称形状となるように、左右のトラバース反転位置がそれぞれ独立して設定されている。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、糸条の巻取方法に関するもので、例えば、延伸仮撚機などにおける糸条の巻取装置や紡糸機における巻取装置に適用可能な巻取方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
延伸仮撚加工機、紡糸巻取機などにおいて、糸条は一定速度で供給され、この糸条は一般にはストレートチーズ、バイコニカルチーズの形態で巻き取られる。通常この巻取りにおいて、トラバース駆動はカムトラバースを採用し、パッケージの耳高防止やリボン巻きを防止する目的でトラバース幅やトラバースの速度を規則的に変化させて対応している。従来技術としては、特許文献1に示す通りである。
また、1990年代には各錘単独のトラバース駆動装置が提案され、トラバース幅、速度を任意に制御することが可能となった。提案された特許は、特許文献2、特許文献3などである。
【0003】
【特許文献1】
特開昭58−17066号公報
【特許文献2】
欧州特許出願公開第453622号明細書
【特許文献3】
特表2001−516319号公報
【特許文献4】
米国特許第6186435号明細書
【特許文献5】
米国特許第6283401号明細書
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
各錘単独のトラバース駆動装置の巻取方法に関し、パッケージの耳高防止やリボン巻きを防止した上で、解舒性の向上を目的として提案された特許として、特許文献4、特許文献5などがある。特許文献4に示される技術は、トラバース幅を一定として、ストロークの位置をずらしていくことを提案するものである。また、特許文献5に示される技術は、トラバース反転位置を円周方向にずらすよう予測制御をすることを提案するものである。
本発明は、各錘単独のトラバース駆動装置において、従来の巻取方法により巻き取られたパッケージの解舒性を向上することを目的として、従来の巻取方法とは異なる巻取方法を提案する。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次に該課題を解決するための手段を説明する。
即ち、請求項1においては、トラバース幅を脈動的に変化させながら糸条を巻取る方法において、巻き始めから巻き終わりまで、トラバースの反転位置を規則性なく乱数で決めた位置で変化させ、所望の巻上げ形状に糸条を巻き上げるものである。
【0006】
請求項2においては、巻き始めから巻き上がりまでの過程の少なくとも一部において、左右の少なくとも一方のトラバース反転位置を、ストローク毎にジグザグ状に変化させるものである。
【0007】
請求項3においては、トラバース幅に対応させてトラバース速度を変化させるものである。
【0008】
請求項4においては、巻上げ形状が左右非対称になるように、左右のトラバース反転位置がそれぞれ独立して設定されているものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の糸条の巻取方法を適用する一実施の形態として、トラバース装置1について、図面を用いて説明する。
図1に示すように、トラバース装置1は、図示しない給糸パッケージから解舒された糸条Yを、ボビン軸方向にトラバースしながら巻取りパッケージ3に巻き返す、巻取装置に用いられている。
巻取りパッケージ3は、ボビン31に糸条Yを巻き取ることで形成され、クレードル32により回転自在に支持されている。
尚、図1では、巻取りパッケージ3として、巻太りに伴って次第にトラバース幅(巻き幅)を狭くして形成したテーパーエンドパッケージが図示されているが、パッケージ形状は、このようなテーパーエンド形状に限定されるものではない。
巻取りパッケージ3の外周面には、巻取用モータにより回転駆動される巻取りローラ2が当接しており、該巻取りローラ2により巻取りパッケージ3を回転駆動している。
【0010】
トラバース装置1は、例えばステッピングモータに構成されるトラバースモータ11と、該トラバースモータ11により正逆回転切換可能に回転駆動される駆動プーリ12と、トラバース範囲の両側方に配置される従動プーリ13・13と、該駆動プーリ12及び従動プーリ13・13に巻回される駆動ベルト14と、該駆動ベルト14に固設され糸条Yをガイドするトラバースガイド15とを備えている。
ここで、トラバースガイド15のトラバース位置と、トラバースモータ11のロータの回転角度位置とは、駆動プーリ12、従動プーリ13・13および駆動ベルト14によって対応付けられている。従って、トラバースモータ11のロータの回転角度位置が決まれば、トラバースガイド15のトラバース位置も決定されるようになっている。
なお、トラバースガイド15よりも糸条Yの逆行方向上流側には、糸条Yのトラバース運動の支点となるトラバース支点ガイドが設けられている。
また、駆動ベルト14としては、タイミングベルト等の各種ベルトや金属製ワイヤをはじめ、その他同様の機能を有する可撓性のエンドレス体を使用することができる。
トラバースガイド15は、駆動プーリ12の正逆回転に伴って、ボビン31の軸方向における一端側から他端側、又は他端側から一端側へ往復移動し、これにより、巻取りパッケージ3に巻き取られる糸条Yをトラバースするように構成している。
また、トラバース装置1はトラバース制御装置5を備えており、トラバースモータ11の駆動を制御して、トラバースガイド15の位置及び駆動速度を制御している。
このように、トラバースモータ11の正逆駆動を制御することにより、糸条Yが係合したトラバースガイド15を所定のトラバース幅で往復動させることができる。
【0011】
以上の如く構成されるトラバース装置1は、単一の巻取りパッケージ3に対して個別にトラバースモータ11を設け、マイクロコンピュータを有するトラバース制御装置5により、トラバースガイド15の位置及び速度を制御するようにしている。
そして、トラバース制御装置5は、後述するモーションコントローラ52及びモータドライバ51により構成されている。モーションコントローラ52は、トラバースモータ11に対する位置指令に相当するモーションパルスを出力し、モータドライバ51は、モーションパルス数に応じた回転量となるようにトラバースモータ11を制御する。
【0012】
次に、トラバース制御装置5による、トラバースモータ11の制御について説明する。
トラバース制御装置5は、トラバースモータ11を介してトラバースガイド15の位置制御を行うものであり、上述したように、トラバースモータ11に所定の駆動動作を行わせるための指令信号(位置指令)を生成するモーションコントローラ52と、生成した指令信号に従ってトラバースモータ11を駆動するモータドライバ51とを備えている。
モーションコントローラ52及びモータドライバ51の主な機能は、共通のマイクロコンピュータ(図示略)により実現されている。
このマイクロコンピュータは、モーションコントロール機能及びモータドライバ機能を実行する手段の主構成となる、単一の中央処理装置(CPU)と、トラバースの制御プログラム(モーションプログラム)等を格納するROMと、演算データ等を一時的に格納するRAMとを備えている。中央処理装置は、ROMに格納された制御プログラムを実行することにより、後述するようなトラバースモータ11の制御(トラバース制御)を行う。尚、モーションコントローラ52とモータドライバ51とに対してそれぞれ個別にマイクロコンピュータ(中央処理装置)を設け、各機能を別個のマイクロコンピュータにより実現するようにしてもよい。
また、トラバース制御装置5には、トラバースモータ11のロータ回転位置およびロータ回転速度を検出するためのモータ回転検出器(ロータリエンコーダ)53、及び巻取りパッケージ3の回転速度を検出するためのパッケージ回転検出器54が接続されており、それぞれの検出値がトラバース制御装置5に入力されている。
【0013】
トラバース制御装置5のモーションコントローラ52内にはパッケージ径算出手段52aが設けられており、巻取中はパッケージ回転検出器54の検出値に基づいて常時パッケージ径が算出される。
また、モーションコントローラ52内に設けられる指令信号生成手段52bが、予め設定された駆動パターン及び算出されたパッケージ径に基づいて、トラバースモータ11を駆動制御するための指令信号(モーションパルス)を生成する。
尚、パッケージ径算出方法としては、巻取りローラ2の中心に対する巻取りパッケージ3の中心の相対位置(クレードル32の移動角度)を検出する等、他の方法を使用することもできる。
【0014】
モータドライバ51は、複数のスイッチング素子を有する駆動回路(図示略)を含み、モーションコントローラ52により生成されたモーションパルスに従い、トラバースモータ11に対してモータ駆動信号を出力する。
モータ駆動信号が入力されたトラバースモータ11は、モーションパルスの周波数に応じた速度で、モーションパルス数に応じた角度だけ回転駆動される。即ち、モータドライバ51は、トラバースモータ11のロータ回転位置をロータリエンコーダ等の回転検出器53により検出し、その検出されたロータ回転位置と位置指令値(モーションパルス数)との偏差をマイクロコンピュータにより求めて、この偏差がゼロになるように、即ちロータ検出位置がロータ位置指令に追従するようにトラバースモータ11のロータ位置制御を行う。
具体的には、モータドライバ51は、モータ電流を検出する電流検出手段を備え、モーションパルス数に応じたロータ位置指令と回転検出器53により検出したロータ現在位置とに基づいて速度指令値を算出し、該速度指令値と回転検出器53により検出した現在速度とに基づいて電流指令値を算出し、該電流指令値と電流検出値とに基づいてトラバースモータ11の励磁を制御する。
【0015】
以上の如くトラバースモータ11の駆動制御を行うトラバース制御装置5では、往復動するトラバースガイド15が、トラバース範囲の一端から他端までのトラバースストローク内における中央部に位置しているときには、該トラバースガイド15が高速の定速度で移動するようにトラバースモータ11が駆動され、トラバースガイド15がトラバースストローク内における両端部に位置しているときには、中央部での速度よりも低速度にて速度を変化させながら移動するようにトラバースモータ11が駆動されている。
【0016】
具体的には、図2に示すように、トラバースガイド15のトラバースストロークRは、中央部の定速領域Rcと、両端部の端部領域Reとに分割されており、定速領域Rcにおいては、トラバースガイド15は、所定のガイド速度Sgにて略定速で移動している。また、端部領域Reにおいては、トラバースガイド15がターンするストローク端でトラバース速度はゼロとなり、ストローク端から中央側へ移動するに従ってトラバース速度が上昇し、端部領域Reと定速領域Rcとの境界でガイド速度Sgに達する。
【0017】
ここで、図2に示すようにトラバースガイド15の速度制御を行うと、トラバース幅の両端部でトラバース速度が中央部に比べて低下する。両端部でトラバース速度が低下するのに対し、巻取りローラ2の速度は一定であり低下しないので、糸条Yの巻き姿が両端部において耳高となり、解舒性が悪化する原因となる。
【0018】
前記耳高の発生を防止するために、トラバース幅を変化させて糸条Yの巻取りを行うことが有効である。
即ち、図3に示すように、ダブルストローク毎(トラバースガイド15が両端間を往復移動する間)にトラバース幅を変化させながら巻き取ることで、巻取りパッケージ3に耳高が発生することを防止できる。
ここで、トラバース幅は、第一には、糸層が端部で崩れること(綾落ち)を防止するため、巻取りパッケージ3の径長さに応じて短くされる。
図3に示すように、巻取りパッケージ3の径方向外側に向かうにつれ(巻取りパッケージ3が大径になるにつれ)、トラバース幅が短くなるように設定されている。第二には、各パッケージ径におけるトラバース幅(以下、これを最大トラバース幅とする)の範囲内で、耳高防止のために、トラバース幅の変化が行われる。このトラバース幅の変化は、最大トラバース幅の両端から内側に向けて設定される設定耳崩し量Dの範囲内で行われるものである。なお、耳高の発生防止のために変化させるトラバース幅の変化量を、耳崩し量と呼んでいる。
したがって、トラバース幅の最大値は最大トラバース幅であり、最小値は最大トラバース幅より設定耳崩し量Dの二倍(両端のため)を除いた幅である。
トラバース装置1においては、トラバース幅の変化は、トラバースガイド15の反転位置を変化させることで行っており、トラバースガイド15の反転位置の変化は、トラバースモータ11の正逆回転の切換え制御により行っている。
【0019】
一方、このようにして耳高を防止したとしても、トラバースガイド15が周期的に往復動するため、いわゆる鬼綾、又はリボン巻き(既に巻き取られた糸条Yの真上に次の糸条Yが重なって巻き取られて巻き表面に凹凸を生じること)と呼ばれる現象が発生する。
これらの現象の発生を防止するために、トラバース速度を変化させて、糸条Yを巻き取ることが有効である。
トラバース装置1においては、トラバース速度の変化は、トラバースモータ11の回転速度制御により行っている。
【0020】
ここで、トラバース速度の変化と、前記トラバース幅の変化とを対応させないで行うと、糸条Yの張力変動が大きなものとなってしまい、糸品質の悪化(染色異常)を招いてしまう。
ここで、トラバース幅と巻取張力との関係は、トラバース幅が最小のとき巻取張力が最小となり、トラバース幅が最大のとき巻取張力が最大となる。一方、トラバース速度と巻取張力との関係は、トラバース速度が最大のとき巻取張力が最大となり、トラバース速度が最小のとき張力が巻取最小となる。
しかし、トラバース速度の変化とトラバース幅の変化とのタイミングが一致しないと、両変化による張力変化の影響が重複して、張力変動が大きなものとなってしまう。
そこで、トラバース幅の変化に対応して、トラバース速度を変化させるものとする。具体的には、トラバース幅が大きくなるのに応じてトラバース速度を低下させ、トラバース幅が小さくなるのに応じてトラバース速度を上昇させる。そして、両変化の影響を互いに打ち消しあうようにしている。
【0021】
これより、本発明の糸条の巻取方法について説明する。
本発明の巻取方法においても、前述した巻取方法を前提として行うものとしている。すなわち、設定耳崩し量Dの範囲内でトラバース反転位置を脈動的に変化させ、このトラバース反転位置により決定されるトラバース幅に対応させて、トラバース速度を変化させながら糸条を巻取るものである。
【0022】
このため、巻取パッケージに発生する耳高を防止することができると共に、巻取張力の変動を抑制して、糸品質の悪化(染色異常)を防止することができる。
【0023】
図4(a)に示すように、本巻取方法においては、トラバース制御装置5は、トラバース幅Wをストローク毎に変化させている。また、最大幅となるトラバース幅Wを最大トラバース幅WMとする。
なお、トラバース反転位置は、トラバースストロークの両端に位置する。ここで、この二箇所の反転位置を、最大トラバース幅の中心軸方向Mに対する左右として、右反転位置および左反転位置とする。そして、左右のトラバース反転位置はそれぞれ、最大耳崩し量Dの範囲内で、変化が許容されている。図4(a)中で、トラバース反転位置を、丸印で示すものとしている。
また、図4(b)に示すように、本巻取方法においても、トラバース幅Wの変化に応じて、トラバース速度が変化する。図示するように、トラバース幅Wが大きくなるにつれトラバース速度が小さくなり、トラバース速度が小さくなるに連れてトラバース速度が大きくなっている。
【0024】
ここで、所望の巻上げ形状の巻取りパッケージ3を製造するには、巻き始めから巻き終わりまでのトラバース反転位置の分布を、適切に設定する必要がある。図5に示すトラバース反転位置の分布の一例では、左右それぞれで、反転位置の分布が、二次関数的な分布となっている。なお、図5は、縦軸がトラバース反転位置を示し、横軸が、巻き始めから巻き終わりまでにおける各トラバース反転位置での反転回数を示している。また、図5では分布の様子を曲線状としているが、階段状のグラフを簡略化したものである。
言い換えると、トラバース反転位置の分布の設定を変化させることにより、巻取りパッケージ3における糸状Yの巻上げ形状が変化するものである。
【0025】
また、本発明にかかる巻取方法では、トラバース反転位置を、乱数を利用してランダムに変化させて行うものとしている。従来の巻取方法におけるトラバース反転位置の変化は、周期的変化として、一定のパターンで繰り返し変化が行われるものであるが、本発明は、ランダム変化させる点で相違している。
【0026】
トラバース反転位置の変化をランダムに行う場合において、反転位置とその回数との分布は、巻取りパッケージ3への巻取りが終了した時点で、所望の巻上げ形状となる適切な分布(例えば図5に示す分布)と一致していればよい。
具体的には、制御装置5のROMに、トラバース反転の分布データと、乱数式とが記憶されていて、制御装置5は、これらに基づいて、トラバース毎の反転位置を決定する。
そして、トラバース反転位置が、前記乱数式に基づくランダム変化により、決定されるようにしている。
【0027】
本実施例では、トラバース反転位置を、巻取りの終了時点において、適切な反転位置分布となるようにランダム変化させる方法として、次の方法を採用している。
まず、適切な巻取り形状を実現するトラバース反転の分布データと、乱数式とに基づいて、巻取りの終了時点に適切な反転位置分布を与えるようなトラバース反転位置のマッピングデータを、コンピュータ装置により作成する。そして、作成されたトラバース反転位置のマッピングデータを、予め、トラバース制御装置5のROMに記憶させておく。なお、該マッピングデータは、各ストロークとトラバース反転位置とを対応させたものである。
そして、トラバース制御装置5のROMに記憶しておいたマッピングデータに基づいて、トラバース反転位置を制御させる。
また、トラバース制御装置5に記憶させておくマッピングデータは、一つの巻取パッケージ3の巻取開始から終了までの間の所定範囲分のみを記憶しておき、この所定範囲分のマッピングデータに基づく制御を繰り返し行うようにしてもよい。
【0028】
ここで、図6(a)・(b)を用いて、トラバース反転位置をランダム変化させた場合と、従来のように規則的変化させた場合とを、比較する。なお、図6(a)・(b)において、縦方向はトラバースガイド15の移動するトラバース方向を示し、横方向は巻取りパッケージ3の径方向を示す。
トラバース反転位置を規則的に変化させる従来の巻取方法では、巻取りパッケージ3の巻径の大きさによって、リボン巻きが発生する。また、リボン巻きが発生する近傍の巻径では、並行綾が発生する。図6(b)には、並行綾の発生した状態を示している。
そして、リボン巻きや並行綾が発生すると、解舒断糸が発生しやすくなる。
これに対し、トラバース反転位置をランダム変化させる場合は、図6(a)に示すように、このようなリボン巻きや並行綾の発生を防止することができる。したがって、解舒断糸が減少する。
【0029】
以上のように、本発明にかかる巻取方法では、トラバース幅を脈動的に変化させながら糸条を巻取る方法において、巻き始めから巻き終わりまで、トラバースの反転位置を規則性なく乱数で決めた位置で変化させ、所望の巻上げ形状に糸条を巻き上げるようにしている。
このため、耳高が防止されると共に、リボン巻きや並行綾の発生を防止することができる。したがって、解舒性の良好な巻取パッケージを得ることができる。
【0030】
また、トラバース反転位置をストローク毎に変化させて、左右の少なくとも一方のトラバース反転位置がジグザグ状に変化するようにすることも可能である。図4(a)に示すトラバース反転位置変化の一例では、左側のトラバース反転位置が、ストローク毎にジグザグ状に変化するように制御されている。ジグザグ状に変化するとは、より詳細に説明すると、左側のトラバース反転位置を結ぶ折れ線において、各トラバース反転位置が極大と極小となる位置を交互に繰り返す状態を意味している。
なお、トラバース反転位置をランダムかつジグザグ状となるように変化させるために、前記ROMに記憶させる乱数式もしくはマッピングデータは、ジグザグ状となる限定が加えられたものとなる。
【0031】
このように変化させることで、トラバース幅を大きく変化させることができ、より一層リボン巻きや並行綾の発生を、防止することができ、解舒性の向上を図ることができる。
なお、一つの巻取パッケージ3の巻き始めから巻き上がりまでの一部(全体に占める一定の割合毎)について、ジグザグ状になるように変化させても良い。
【0032】
また、トラバース制御装置5において、トラバース幅の中心軸に対する左右のトラバース反転位置を、左右それぞれで独立に設定して行うことも可能である。前述では、所望の巻上げ形状としては、巻取りパッケージ3の両端部において、耳高が発生しないようにするものとしていた。同時に、リボン巻きや並行綾の発生の防止も意図している。
図5に示すトラバース反転位置の分布では、左右で反転位置の分布が対称となっている。そして、前述では、該分布と一致するように乱数を出力する乱数式を用いて、トラバース反転位置のランダム変化を行うものとしている。
ここで、所望の巻上げ形状として、巻取りパッケージの左右(トラバース幅中心軸方向Mに対する左右)で、異なる形状が望まれる場合がある。
【0033】
図7において、左側はテール側(巻取パッケージ3の巻き始め糸端を有する側)で、右側は解舒側であり、糸条Yは右側に向かって解舒される。
巻取りパッケージ30は、右側と左側とが、非対称となるように製造されており、右側では耳高となっており、左側では耳が低い形状となっている。
巻取りパッケージ30の左側は、解舒時糸条Yの転がりにより断糸が発生する可能性があるので、耳が低い形状とすることで、これを防止している。
一方、巻取りパッケージ30の右側は、解舒断糸に影響を与えることがないので、綾落ち防止に有利な耳高の形状としている。
【0034】
巻取りパッケージの左右で、異なる形状となるようにするには、図5に示すようなトラバース反転位置の分布を非対称とし、その非対称の分布にしたがう乱数式に基づいて、トラバース反転位置をランダム変化させればよい。
したがって、このような乱数式もしくは該乱数式をデータ化したマッピングデータをトラバース制御装置5に記憶させて、乱数式もしくはマッピングデータにしたがって、左右のトラバース反転位置がランダム変化するように制御することで、左右で異なる形状となる巻取りパッケージの製造を実施可能である。
【0035】
以上のように、巻取パッケージ3の左右で巻上げ形状が左右非対称となるように、左右のトラバース反転位置をそれぞれ独立して設定することで、巻取パッケージ3の左右で異なる耳形状とすることが可能である。したがって、例えば、テール側(反解舒側)の端部は糸の転がりを防ぐように耳が低い形状とし、解舒側の端部は綾落ちの防止に有利な耳高の形状とすることも可能である。
【0036】
なお、トラバース幅の中心軸に対する左右のトラバース反転位置を、左右それぞれで独立に設定しての巻取りは、トラバース反転位置をランダム変化させる巻取りに限定されるものではない。トラバース反転位置を規則的に変化させる場合においても、左右のトラバース反転位置を、左右それぞれで独立に設定して、左右で異なる巻上げ形状の巻取りパッケージを製造することが可能である。
【0037】
【発明の効果】
請求項1記載の如く、トラバース幅を脈動的に変化させながら糸条を巻取る方法において、巻き始めから巻き終わりまで、トラバースの反転位置を規則性なく乱数で決めた位置で変化させ、所望の巻上げ形状に糸条を巻き上げるので、
耳高が防止されると共に、リボン巻きや並行綾の発生を防止することができる。したがって、解舒性の良好な巻取パッケージを得ることができる。
【0038】
請求項2記載の如く、巻き始めから巻き上がりまでの過程の少なくとも一部において、左右のトラバース反転位置を、それぞれストローク毎にジグザグ状に変化させるので、
トラバース幅を大きく変化させることができ、より一層リボン巻きや並行綾の発生を、防止することができる。
【0039】
請求項3記載の如く、トラバース幅に対応させてトラバース速度を変化させるので、
このため、巻取張力の変動を抑制して、糸品質の悪化(染色異常)を防止することができる。
【0040】
請求項4記載の如く、巻上げ形状が左右非対称になるように、左右のトラバース反転位置がそれぞれ独立して設定されているので、
巻取パッケージの左右で異なる耳形状とすることが可能である。したがって、例えば、テール側(反解舒側)の端部は糸の転がりを防ぐように耳が低い形状とし、解舒側の端部は綾落ちの防止に有利な耳高の形状とすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】トラバース装置1の全体構成を示す図である。
【図2】トラバースストローク内における各トラバース位置でのトラバース速度を示す図である。
【図3】巻取りパッケージ3の半断面正面図である。
【図4】ストローク毎のトラバース反転位置の変化(a図)とトラバース速度の変化(b図)を示す図である。
【図5】巻き上がった状態の巻取りパッケージ3におけるトラバース反転位置とその回数との分布を示す図である。
【図6】巻き取られた糸条Yの様子を示す図であり、(a)図は本発明の図、(b)図は従来図である。
【図7】軸方向両端部で巻上げ形状を異なるものとした巻取りパッケージ30の側面図である。
【符号の説明】
1 トラバース装置
5 トラバース制御装置
D 設定耳崩し量
W トラバース幅
Y 糸条
【発明の属する技術分野】
本発明は、糸条の巻取方法に関するもので、例えば、延伸仮撚機などにおける糸条の巻取装置や紡糸機における巻取装置に適用可能な巻取方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
延伸仮撚加工機、紡糸巻取機などにおいて、糸条は一定速度で供給され、この糸条は一般にはストレートチーズ、バイコニカルチーズの形態で巻き取られる。通常この巻取りにおいて、トラバース駆動はカムトラバースを採用し、パッケージの耳高防止やリボン巻きを防止する目的でトラバース幅やトラバースの速度を規則的に変化させて対応している。従来技術としては、特許文献1に示す通りである。
また、1990年代には各錘単独のトラバース駆動装置が提案され、トラバース幅、速度を任意に制御することが可能となった。提案された特許は、特許文献2、特許文献3などである。
【0003】
【特許文献1】
特開昭58−17066号公報
【特許文献2】
欧州特許出願公開第453622号明細書
【特許文献3】
特表2001−516319号公報
【特許文献4】
米国特許第6186435号明細書
【特許文献5】
米国特許第6283401号明細書
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
各錘単独のトラバース駆動装置の巻取方法に関し、パッケージの耳高防止やリボン巻きを防止した上で、解舒性の向上を目的として提案された特許として、特許文献4、特許文献5などがある。特許文献4に示される技術は、トラバース幅を一定として、ストロークの位置をずらしていくことを提案するものである。また、特許文献5に示される技術は、トラバース反転位置を円周方向にずらすよう予測制御をすることを提案するものである。
本発明は、各錘単独のトラバース駆動装置において、従来の巻取方法により巻き取られたパッケージの解舒性を向上することを目的として、従来の巻取方法とは異なる巻取方法を提案する。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次に該課題を解決するための手段を説明する。
即ち、請求項1においては、トラバース幅を脈動的に変化させながら糸条を巻取る方法において、巻き始めから巻き終わりまで、トラバースの反転位置を規則性なく乱数で決めた位置で変化させ、所望の巻上げ形状に糸条を巻き上げるものである。
【0006】
請求項2においては、巻き始めから巻き上がりまでの過程の少なくとも一部において、左右の少なくとも一方のトラバース反転位置を、ストローク毎にジグザグ状に変化させるものである。
【0007】
請求項3においては、トラバース幅に対応させてトラバース速度を変化させるものである。
【0008】
請求項4においては、巻上げ形状が左右非対称になるように、左右のトラバース反転位置がそれぞれ独立して設定されているものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の糸条の巻取方法を適用する一実施の形態として、トラバース装置1について、図面を用いて説明する。
図1に示すように、トラバース装置1は、図示しない給糸パッケージから解舒された糸条Yを、ボビン軸方向にトラバースしながら巻取りパッケージ3に巻き返す、巻取装置に用いられている。
巻取りパッケージ3は、ボビン31に糸条Yを巻き取ることで形成され、クレードル32により回転自在に支持されている。
尚、図1では、巻取りパッケージ3として、巻太りに伴って次第にトラバース幅(巻き幅)を狭くして形成したテーパーエンドパッケージが図示されているが、パッケージ形状は、このようなテーパーエンド形状に限定されるものではない。
巻取りパッケージ3の外周面には、巻取用モータにより回転駆動される巻取りローラ2が当接しており、該巻取りローラ2により巻取りパッケージ3を回転駆動している。
【0010】
トラバース装置1は、例えばステッピングモータに構成されるトラバースモータ11と、該トラバースモータ11により正逆回転切換可能に回転駆動される駆動プーリ12と、トラバース範囲の両側方に配置される従動プーリ13・13と、該駆動プーリ12及び従動プーリ13・13に巻回される駆動ベルト14と、該駆動ベルト14に固設され糸条Yをガイドするトラバースガイド15とを備えている。
ここで、トラバースガイド15のトラバース位置と、トラバースモータ11のロータの回転角度位置とは、駆動プーリ12、従動プーリ13・13および駆動ベルト14によって対応付けられている。従って、トラバースモータ11のロータの回転角度位置が決まれば、トラバースガイド15のトラバース位置も決定されるようになっている。
なお、トラバースガイド15よりも糸条Yの逆行方向上流側には、糸条Yのトラバース運動の支点となるトラバース支点ガイドが設けられている。
また、駆動ベルト14としては、タイミングベルト等の各種ベルトや金属製ワイヤをはじめ、その他同様の機能を有する可撓性のエンドレス体を使用することができる。
トラバースガイド15は、駆動プーリ12の正逆回転に伴って、ボビン31の軸方向における一端側から他端側、又は他端側から一端側へ往復移動し、これにより、巻取りパッケージ3に巻き取られる糸条Yをトラバースするように構成している。
また、トラバース装置1はトラバース制御装置5を備えており、トラバースモータ11の駆動を制御して、トラバースガイド15の位置及び駆動速度を制御している。
このように、トラバースモータ11の正逆駆動を制御することにより、糸条Yが係合したトラバースガイド15を所定のトラバース幅で往復動させることができる。
【0011】
以上の如く構成されるトラバース装置1は、単一の巻取りパッケージ3に対して個別にトラバースモータ11を設け、マイクロコンピュータを有するトラバース制御装置5により、トラバースガイド15の位置及び速度を制御するようにしている。
そして、トラバース制御装置5は、後述するモーションコントローラ52及びモータドライバ51により構成されている。モーションコントローラ52は、トラバースモータ11に対する位置指令に相当するモーションパルスを出力し、モータドライバ51は、モーションパルス数に応じた回転量となるようにトラバースモータ11を制御する。
【0012】
次に、トラバース制御装置5による、トラバースモータ11の制御について説明する。
トラバース制御装置5は、トラバースモータ11を介してトラバースガイド15の位置制御を行うものであり、上述したように、トラバースモータ11に所定の駆動動作を行わせるための指令信号(位置指令)を生成するモーションコントローラ52と、生成した指令信号に従ってトラバースモータ11を駆動するモータドライバ51とを備えている。
モーションコントローラ52及びモータドライバ51の主な機能は、共通のマイクロコンピュータ(図示略)により実現されている。
このマイクロコンピュータは、モーションコントロール機能及びモータドライバ機能を実行する手段の主構成となる、単一の中央処理装置(CPU)と、トラバースの制御プログラム(モーションプログラム)等を格納するROMと、演算データ等を一時的に格納するRAMとを備えている。中央処理装置は、ROMに格納された制御プログラムを実行することにより、後述するようなトラバースモータ11の制御(トラバース制御)を行う。尚、モーションコントローラ52とモータドライバ51とに対してそれぞれ個別にマイクロコンピュータ(中央処理装置)を設け、各機能を別個のマイクロコンピュータにより実現するようにしてもよい。
また、トラバース制御装置5には、トラバースモータ11のロータ回転位置およびロータ回転速度を検出するためのモータ回転検出器(ロータリエンコーダ)53、及び巻取りパッケージ3の回転速度を検出するためのパッケージ回転検出器54が接続されており、それぞれの検出値がトラバース制御装置5に入力されている。
【0013】
トラバース制御装置5のモーションコントローラ52内にはパッケージ径算出手段52aが設けられており、巻取中はパッケージ回転検出器54の検出値に基づいて常時パッケージ径が算出される。
また、モーションコントローラ52内に設けられる指令信号生成手段52bが、予め設定された駆動パターン及び算出されたパッケージ径に基づいて、トラバースモータ11を駆動制御するための指令信号(モーションパルス)を生成する。
尚、パッケージ径算出方法としては、巻取りローラ2の中心に対する巻取りパッケージ3の中心の相対位置(クレードル32の移動角度)を検出する等、他の方法を使用することもできる。
【0014】
モータドライバ51は、複数のスイッチング素子を有する駆動回路(図示略)を含み、モーションコントローラ52により生成されたモーションパルスに従い、トラバースモータ11に対してモータ駆動信号を出力する。
モータ駆動信号が入力されたトラバースモータ11は、モーションパルスの周波数に応じた速度で、モーションパルス数に応じた角度だけ回転駆動される。即ち、モータドライバ51は、トラバースモータ11のロータ回転位置をロータリエンコーダ等の回転検出器53により検出し、その検出されたロータ回転位置と位置指令値(モーションパルス数)との偏差をマイクロコンピュータにより求めて、この偏差がゼロになるように、即ちロータ検出位置がロータ位置指令に追従するようにトラバースモータ11のロータ位置制御を行う。
具体的には、モータドライバ51は、モータ電流を検出する電流検出手段を備え、モーションパルス数に応じたロータ位置指令と回転検出器53により検出したロータ現在位置とに基づいて速度指令値を算出し、該速度指令値と回転検出器53により検出した現在速度とに基づいて電流指令値を算出し、該電流指令値と電流検出値とに基づいてトラバースモータ11の励磁を制御する。
【0015】
以上の如くトラバースモータ11の駆動制御を行うトラバース制御装置5では、往復動するトラバースガイド15が、トラバース範囲の一端から他端までのトラバースストローク内における中央部に位置しているときには、該トラバースガイド15が高速の定速度で移動するようにトラバースモータ11が駆動され、トラバースガイド15がトラバースストローク内における両端部に位置しているときには、中央部での速度よりも低速度にて速度を変化させながら移動するようにトラバースモータ11が駆動されている。
【0016】
具体的には、図2に示すように、トラバースガイド15のトラバースストロークRは、中央部の定速領域Rcと、両端部の端部領域Reとに分割されており、定速領域Rcにおいては、トラバースガイド15は、所定のガイド速度Sgにて略定速で移動している。また、端部領域Reにおいては、トラバースガイド15がターンするストローク端でトラバース速度はゼロとなり、ストローク端から中央側へ移動するに従ってトラバース速度が上昇し、端部領域Reと定速領域Rcとの境界でガイド速度Sgに達する。
【0017】
ここで、図2に示すようにトラバースガイド15の速度制御を行うと、トラバース幅の両端部でトラバース速度が中央部に比べて低下する。両端部でトラバース速度が低下するのに対し、巻取りローラ2の速度は一定であり低下しないので、糸条Yの巻き姿が両端部において耳高となり、解舒性が悪化する原因となる。
【0018】
前記耳高の発生を防止するために、トラバース幅を変化させて糸条Yの巻取りを行うことが有効である。
即ち、図3に示すように、ダブルストローク毎(トラバースガイド15が両端間を往復移動する間)にトラバース幅を変化させながら巻き取ることで、巻取りパッケージ3に耳高が発生することを防止できる。
ここで、トラバース幅は、第一には、糸層が端部で崩れること(綾落ち)を防止するため、巻取りパッケージ3の径長さに応じて短くされる。
図3に示すように、巻取りパッケージ3の径方向外側に向かうにつれ(巻取りパッケージ3が大径になるにつれ)、トラバース幅が短くなるように設定されている。第二には、各パッケージ径におけるトラバース幅(以下、これを最大トラバース幅とする)の範囲内で、耳高防止のために、トラバース幅の変化が行われる。このトラバース幅の変化は、最大トラバース幅の両端から内側に向けて設定される設定耳崩し量Dの範囲内で行われるものである。なお、耳高の発生防止のために変化させるトラバース幅の変化量を、耳崩し量と呼んでいる。
したがって、トラバース幅の最大値は最大トラバース幅であり、最小値は最大トラバース幅より設定耳崩し量Dの二倍(両端のため)を除いた幅である。
トラバース装置1においては、トラバース幅の変化は、トラバースガイド15の反転位置を変化させることで行っており、トラバースガイド15の反転位置の変化は、トラバースモータ11の正逆回転の切換え制御により行っている。
【0019】
一方、このようにして耳高を防止したとしても、トラバースガイド15が周期的に往復動するため、いわゆる鬼綾、又はリボン巻き(既に巻き取られた糸条Yの真上に次の糸条Yが重なって巻き取られて巻き表面に凹凸を生じること)と呼ばれる現象が発生する。
これらの現象の発生を防止するために、トラバース速度を変化させて、糸条Yを巻き取ることが有効である。
トラバース装置1においては、トラバース速度の変化は、トラバースモータ11の回転速度制御により行っている。
【0020】
ここで、トラバース速度の変化と、前記トラバース幅の変化とを対応させないで行うと、糸条Yの張力変動が大きなものとなってしまい、糸品質の悪化(染色異常)を招いてしまう。
ここで、トラバース幅と巻取張力との関係は、トラバース幅が最小のとき巻取張力が最小となり、トラバース幅が最大のとき巻取張力が最大となる。一方、トラバース速度と巻取張力との関係は、トラバース速度が最大のとき巻取張力が最大となり、トラバース速度が最小のとき張力が巻取最小となる。
しかし、トラバース速度の変化とトラバース幅の変化とのタイミングが一致しないと、両変化による張力変化の影響が重複して、張力変動が大きなものとなってしまう。
そこで、トラバース幅の変化に対応して、トラバース速度を変化させるものとする。具体的には、トラバース幅が大きくなるのに応じてトラバース速度を低下させ、トラバース幅が小さくなるのに応じてトラバース速度を上昇させる。そして、両変化の影響を互いに打ち消しあうようにしている。
【0021】
これより、本発明の糸条の巻取方法について説明する。
本発明の巻取方法においても、前述した巻取方法を前提として行うものとしている。すなわち、設定耳崩し量Dの範囲内でトラバース反転位置を脈動的に変化させ、このトラバース反転位置により決定されるトラバース幅に対応させて、トラバース速度を変化させながら糸条を巻取るものである。
【0022】
このため、巻取パッケージに発生する耳高を防止することができると共に、巻取張力の変動を抑制して、糸品質の悪化(染色異常)を防止することができる。
【0023】
図4(a)に示すように、本巻取方法においては、トラバース制御装置5は、トラバース幅Wをストローク毎に変化させている。また、最大幅となるトラバース幅Wを最大トラバース幅WMとする。
なお、トラバース反転位置は、トラバースストロークの両端に位置する。ここで、この二箇所の反転位置を、最大トラバース幅の中心軸方向Mに対する左右として、右反転位置および左反転位置とする。そして、左右のトラバース反転位置はそれぞれ、最大耳崩し量Dの範囲内で、変化が許容されている。図4(a)中で、トラバース反転位置を、丸印で示すものとしている。
また、図4(b)に示すように、本巻取方法においても、トラバース幅Wの変化に応じて、トラバース速度が変化する。図示するように、トラバース幅Wが大きくなるにつれトラバース速度が小さくなり、トラバース速度が小さくなるに連れてトラバース速度が大きくなっている。
【0024】
ここで、所望の巻上げ形状の巻取りパッケージ3を製造するには、巻き始めから巻き終わりまでのトラバース反転位置の分布を、適切に設定する必要がある。図5に示すトラバース反転位置の分布の一例では、左右それぞれで、反転位置の分布が、二次関数的な分布となっている。なお、図5は、縦軸がトラバース反転位置を示し、横軸が、巻き始めから巻き終わりまでにおける各トラバース反転位置での反転回数を示している。また、図5では分布の様子を曲線状としているが、階段状のグラフを簡略化したものである。
言い換えると、トラバース反転位置の分布の設定を変化させることにより、巻取りパッケージ3における糸状Yの巻上げ形状が変化するものである。
【0025】
また、本発明にかかる巻取方法では、トラバース反転位置を、乱数を利用してランダムに変化させて行うものとしている。従来の巻取方法におけるトラバース反転位置の変化は、周期的変化として、一定のパターンで繰り返し変化が行われるものであるが、本発明は、ランダム変化させる点で相違している。
【0026】
トラバース反転位置の変化をランダムに行う場合において、反転位置とその回数との分布は、巻取りパッケージ3への巻取りが終了した時点で、所望の巻上げ形状となる適切な分布(例えば図5に示す分布)と一致していればよい。
具体的には、制御装置5のROMに、トラバース反転の分布データと、乱数式とが記憶されていて、制御装置5は、これらに基づいて、トラバース毎の反転位置を決定する。
そして、トラバース反転位置が、前記乱数式に基づくランダム変化により、決定されるようにしている。
【0027】
本実施例では、トラバース反転位置を、巻取りの終了時点において、適切な反転位置分布となるようにランダム変化させる方法として、次の方法を採用している。
まず、適切な巻取り形状を実現するトラバース反転の分布データと、乱数式とに基づいて、巻取りの終了時点に適切な反転位置分布を与えるようなトラバース反転位置のマッピングデータを、コンピュータ装置により作成する。そして、作成されたトラバース反転位置のマッピングデータを、予め、トラバース制御装置5のROMに記憶させておく。なお、該マッピングデータは、各ストロークとトラバース反転位置とを対応させたものである。
そして、トラバース制御装置5のROMに記憶しておいたマッピングデータに基づいて、トラバース反転位置を制御させる。
また、トラバース制御装置5に記憶させておくマッピングデータは、一つの巻取パッケージ3の巻取開始から終了までの間の所定範囲分のみを記憶しておき、この所定範囲分のマッピングデータに基づく制御を繰り返し行うようにしてもよい。
【0028】
ここで、図6(a)・(b)を用いて、トラバース反転位置をランダム変化させた場合と、従来のように規則的変化させた場合とを、比較する。なお、図6(a)・(b)において、縦方向はトラバースガイド15の移動するトラバース方向を示し、横方向は巻取りパッケージ3の径方向を示す。
トラバース反転位置を規則的に変化させる従来の巻取方法では、巻取りパッケージ3の巻径の大きさによって、リボン巻きが発生する。また、リボン巻きが発生する近傍の巻径では、並行綾が発生する。図6(b)には、並行綾の発生した状態を示している。
そして、リボン巻きや並行綾が発生すると、解舒断糸が発生しやすくなる。
これに対し、トラバース反転位置をランダム変化させる場合は、図6(a)に示すように、このようなリボン巻きや並行綾の発生を防止することができる。したがって、解舒断糸が減少する。
【0029】
以上のように、本発明にかかる巻取方法では、トラバース幅を脈動的に変化させながら糸条を巻取る方法において、巻き始めから巻き終わりまで、トラバースの反転位置を規則性なく乱数で決めた位置で変化させ、所望の巻上げ形状に糸条を巻き上げるようにしている。
このため、耳高が防止されると共に、リボン巻きや並行綾の発生を防止することができる。したがって、解舒性の良好な巻取パッケージを得ることができる。
【0030】
また、トラバース反転位置をストローク毎に変化させて、左右の少なくとも一方のトラバース反転位置がジグザグ状に変化するようにすることも可能である。図4(a)に示すトラバース反転位置変化の一例では、左側のトラバース反転位置が、ストローク毎にジグザグ状に変化するように制御されている。ジグザグ状に変化するとは、より詳細に説明すると、左側のトラバース反転位置を結ぶ折れ線において、各トラバース反転位置が極大と極小となる位置を交互に繰り返す状態を意味している。
なお、トラバース反転位置をランダムかつジグザグ状となるように変化させるために、前記ROMに記憶させる乱数式もしくはマッピングデータは、ジグザグ状となる限定が加えられたものとなる。
【0031】
このように変化させることで、トラバース幅を大きく変化させることができ、より一層リボン巻きや並行綾の発生を、防止することができ、解舒性の向上を図ることができる。
なお、一つの巻取パッケージ3の巻き始めから巻き上がりまでの一部(全体に占める一定の割合毎)について、ジグザグ状になるように変化させても良い。
【0032】
また、トラバース制御装置5において、トラバース幅の中心軸に対する左右のトラバース反転位置を、左右それぞれで独立に設定して行うことも可能である。前述では、所望の巻上げ形状としては、巻取りパッケージ3の両端部において、耳高が発生しないようにするものとしていた。同時に、リボン巻きや並行綾の発生の防止も意図している。
図5に示すトラバース反転位置の分布では、左右で反転位置の分布が対称となっている。そして、前述では、該分布と一致するように乱数を出力する乱数式を用いて、トラバース反転位置のランダム変化を行うものとしている。
ここで、所望の巻上げ形状として、巻取りパッケージの左右(トラバース幅中心軸方向Mに対する左右)で、異なる形状が望まれる場合がある。
【0033】
図7において、左側はテール側(巻取パッケージ3の巻き始め糸端を有する側)で、右側は解舒側であり、糸条Yは右側に向かって解舒される。
巻取りパッケージ30は、右側と左側とが、非対称となるように製造されており、右側では耳高となっており、左側では耳が低い形状となっている。
巻取りパッケージ30の左側は、解舒時糸条Yの転がりにより断糸が発生する可能性があるので、耳が低い形状とすることで、これを防止している。
一方、巻取りパッケージ30の右側は、解舒断糸に影響を与えることがないので、綾落ち防止に有利な耳高の形状としている。
【0034】
巻取りパッケージの左右で、異なる形状となるようにするには、図5に示すようなトラバース反転位置の分布を非対称とし、その非対称の分布にしたがう乱数式に基づいて、トラバース反転位置をランダム変化させればよい。
したがって、このような乱数式もしくは該乱数式をデータ化したマッピングデータをトラバース制御装置5に記憶させて、乱数式もしくはマッピングデータにしたがって、左右のトラバース反転位置がランダム変化するように制御することで、左右で異なる形状となる巻取りパッケージの製造を実施可能である。
【0035】
以上のように、巻取パッケージ3の左右で巻上げ形状が左右非対称となるように、左右のトラバース反転位置をそれぞれ独立して設定することで、巻取パッケージ3の左右で異なる耳形状とすることが可能である。したがって、例えば、テール側(反解舒側)の端部は糸の転がりを防ぐように耳が低い形状とし、解舒側の端部は綾落ちの防止に有利な耳高の形状とすることも可能である。
【0036】
なお、トラバース幅の中心軸に対する左右のトラバース反転位置を、左右それぞれで独立に設定しての巻取りは、トラバース反転位置をランダム変化させる巻取りに限定されるものではない。トラバース反転位置を規則的に変化させる場合においても、左右のトラバース反転位置を、左右それぞれで独立に設定して、左右で異なる巻上げ形状の巻取りパッケージを製造することが可能である。
【0037】
【発明の効果】
請求項1記載の如く、トラバース幅を脈動的に変化させながら糸条を巻取る方法において、巻き始めから巻き終わりまで、トラバースの反転位置を規則性なく乱数で決めた位置で変化させ、所望の巻上げ形状に糸条を巻き上げるので、
耳高が防止されると共に、リボン巻きや並行綾の発生を防止することができる。したがって、解舒性の良好な巻取パッケージを得ることができる。
【0038】
請求項2記載の如く、巻き始めから巻き上がりまでの過程の少なくとも一部において、左右のトラバース反転位置を、それぞれストローク毎にジグザグ状に変化させるので、
トラバース幅を大きく変化させることができ、より一層リボン巻きや並行綾の発生を、防止することができる。
【0039】
請求項3記載の如く、トラバース幅に対応させてトラバース速度を変化させるので、
このため、巻取張力の変動を抑制して、糸品質の悪化(染色異常)を防止することができる。
【0040】
請求項4記載の如く、巻上げ形状が左右非対称になるように、左右のトラバース反転位置がそれぞれ独立して設定されているので、
巻取パッケージの左右で異なる耳形状とすることが可能である。したがって、例えば、テール側(反解舒側)の端部は糸の転がりを防ぐように耳が低い形状とし、解舒側の端部は綾落ちの防止に有利な耳高の形状とすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】トラバース装置1の全体構成を示す図である。
【図2】トラバースストローク内における各トラバース位置でのトラバース速度を示す図である。
【図3】巻取りパッケージ3の半断面正面図である。
【図4】ストローク毎のトラバース反転位置の変化(a図)とトラバース速度の変化(b図)を示す図である。
【図5】巻き上がった状態の巻取りパッケージ3におけるトラバース反転位置とその回数との分布を示す図である。
【図6】巻き取られた糸条Yの様子を示す図であり、(a)図は本発明の図、(b)図は従来図である。
【図7】軸方向両端部で巻上げ形状を異なるものとした巻取りパッケージ30の側面図である。
【符号の説明】
1 トラバース装置
5 トラバース制御装置
D 設定耳崩し量
W トラバース幅
Y 糸条
Claims (4)
- トラバース幅を脈動的に変化させながら糸条を巻取る方法において、巻き始めから巻き終わりまで、トラバースの反転位置を規則性なく乱数で決めた位置で変化させ、所望の巻上げ形状に糸条を巻き上げることを特徴とする糸条の巻取方法。
- 巻き始めから巻き上がりまでの過程の少なくとも一部において、左右の少なくとも一方のトラバース反転位置を、ストローク毎にジグザグ状に変化させることを特徴とする請求項1に記載の糸条の巻取方法。
- トラバース幅に対応させてトラバース速度を変化させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の糸条の巻取方法。
- 巻上げ形状が左右非対称になるように、左右のトラバース反転位置がそれぞれ独立して設定されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の糸条の巻取方法。
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