JP2004196638A - 水素の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】水素化芳香族化合物からそれに含まれる水素を効率よく脱離させて水素を製造する方法を提供する。
【解決手段】(1)水素化芳香族化合物からそれに含まれている水素を脱水素触媒の存在下で脱離させて水素を製造する方法であって、該脱水素触媒として、表面積150m2/g以上、細孔容積0.55cm3/g以上、平均細孔径90〜200Åの細孔が全細孔容積の60%以上を占めるγ−アルミナ担体に酸化亜鉛を担持した担体を600℃以上の温度で10時間以上焼成して結晶構造の大半がスピネル構造となった複合酸化物からなる複合担体に、(i)白金、(ii)スズおよび(iii)周期律表第1A族および第2A族からなる郡から選ばれる少なくとも1つのアルカリ性金属が担持された触媒を用いることを特徴とする水素の製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】(1)水素化芳香族化合物からそれに含まれている水素を脱水素触媒の存在下で脱離させて水素を製造する方法であって、該脱水素触媒として、表面積150m2/g以上、細孔容積0.55cm3/g以上、平均細孔径90〜200Åの細孔が全細孔容積の60%以上を占めるγ−アルミナ担体に酸化亜鉛を担持した担体を600℃以上の温度で10時間以上焼成して結晶構造の大半がスピネル構造となった複合酸化物からなる複合担体に、(i)白金、(ii)スズおよび(iii)周期律表第1A族および第2A族からなる郡から選ばれる少なくとも1つのアルカリ性金属が担持された触媒を用いることを特徴とする水素の製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
水素はクリーンな燃料であり、2次エネルギーとして貯蔵が可能であるなどの観点から、燃料電池の普及などにともなって次世代の重要なエネルギー利用の形態として注目されている。水素の貯蔵・輸送の方法に関しては、液体水素をそのまま使用する方法、水素吸蔵合金を利用する方法などとともに、水素化・脱水素反応対であるシクロヘキサンやデカリンなどの水素化芳香族化合物を水素の貯蔵・輸送に利用する考え方も提案されている。この水素化芳香族化合物を利用する方法に関しては、すでにユーロケベック水素エネルギー計画のなかでメチルシクロヘキサン/トルエン系が検討されており、現在も研究が続けられている(G.W.H.Scherer,E.Newson,A.Wokaun,Int.I.Hydrogen Energy,24,1157(1999)(非特許文献1)。この概念を利用した水素の輸送・貯蔵システムの研究はその後、水素媒体をデカリン/ナフタレン系やシクロヘキサン/ベンゼン系などを中心に検討がなされており、これらの実現のためには水素媒体の脱水素反応によって効率的に水素をとりだす触媒と反応器の開発が不可欠である。従来脱水素触媒としては白金などの貴金属類やニッケルなどの遷移金属類が活性成分として用いられ、触媒担体としてはアルミナやシリカおよび活性炭などの多孔質材料が用いられている。特開2002−274802号公報(特許文献1)は、脱水素反応部の触媒として白金を活性炭に担持した触媒を用いた実施例を開示している。また、特開2001−198469号公報(特許文献2)はバイメタル化した貴金属を活性炭に担持した触媒を開示している。これらの脱水素触媒は水素発生速度の観点から未だ十分な性能ではなく、より性能の高い脱水素触媒が望まれている。
【0002】
【特許文献1】
特開2002−274802号公報
【特許文献2】
特開2001−198469号公報
【非特許文献1】
G.W.H.Scherer,E.Newson,A.Wokaun,Int.I.Hydrogen Energy,24,1157(1999)
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、水素化芳香族化合物からそれに含まれる水素を効率よく脱離させて水素を製造する方法を提供することをその課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明によれば、以下に示す水素の製造方法が提供される。
(1)水素化芳香族化合物からそれに含まれている水素を脱水素触媒の存在下で脱離させて水素を製造する方法であって、該脱水素触媒として、表面積150m2/g以上、細孔容積0.55cm3/g以上、平均細孔径90〜200Åの細孔が全細孔容積の60%以上を占めるγ−アルミナ担体に酸化亜鉛を担持した担体を600℃以上の温度で10時間以上焼成して結晶構造の大半がスピネル構造となった複合酸化物からなる複合担体に、(i)白金、(ii)スズおよび(iii)周期律表第1A族および第2A族からなる郡から選ばれる少なくとも1つのアルカリ性金属が担持された触媒を用いることを特徴とする水素の製造方法。
(2)前記複合担体における酸化亜鉛の担持量が、5〜50重量%である前記(1)記載の方法。
(3)前記複合担体上の白金の担持量が、0.05〜1.5重量%である前記(1)又は(2)記載の方法。
(4)前記複合担体上のスズの担持量が、0.5〜10重量%である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5)前記複合担体上のアルカリ性金属の担持量が、0.01〜10重量%である前記(1)〜(4)のいずれか記載の方法。
(6)前記アルカリ性金属が、カリウムである前記(1)〜(5)のいずれか記載の方法。
(7)前記複合担体上へのアルカリ性金属の担持が、該スズの担持よりも先に行われている前記(1)〜(6)のいずれかに記載の方法。
(8)前記水素化芳香族化合物が、単環芳香族化合物の水素化物及び多環芳香族化合物の水素化物の中から選ばれる少なくとも1種である前記(1)〜(7)のいずれかに記載の方法。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明による水素製造方法で用いる原料は、水素化芳香族化合物である。この水素化芳香族化合物において、その分子量は250以下、好ましくは140以下である。
水素化芳香族化合物としては、従来公知の各種のものを用いることができる。このようなものには、水素化単環芳香族化合物及び水素化多環芳香族化合物が包含される。
水素化単環芳香族化合物には、ベンゼン及びその核置換体の水素化物が包含される。このようなものとしては、ベンゼン、トルエン、キシレン等のベンゼン系化合物の水素化合物(シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン等)が挙げられる。
【0006】
水素化多環芳香族化合物には、水素化鎖状多環芳香族化合物及び水素化縮合多環芳香族化合物が包含される。
水素化鎖状多環芳香族化合物としては、ビフェニルの水素化物、ターフェニルの水素化物等が挙げられる。
水素化縮合多環芳香族化合物としては、ベンゼン環を2〜4個有する化合物の水素化物、例えば、(i)デカリン、テトラリン及びそれらの核置換体等の2環構造の芳香族化合物の水素化物(ナフタレン系化合物の水素化物)、(ii)テトラヒドロアントラセン、テトラヒドロフェナントレン、テトラヒドロメチルアントラセン、テトラヒドロメチルフェナントレン等の3環構造の芳香族化合物の水素化物、(iii)クリセン、ナフタセン等の4環構造の芳香族化合物の水素化物等が挙げられる。
【0007】
本発明においては、前記原料を触媒の存在下で脱水素するが、この場合の触媒としては、表面積150m2/g以上、細孔容積0.55cm3/g以上、平均細孔径90〜200オングストロームであり、かつ細孔径90〜200オングストロームの細孔が全細孔容積の60%以上を占めるγ−アルミナ担体に酸化亜鉛を担持したものを、600℃以上の高温で10時間以上焼成して結晶構造の大半がスピネル構造となった複合酸化物からなる複合担体に、白金、スズおよび周期律表の第1A族および第2A族からなる群から選ばれる少なくとも1つのアルカリ性金属が担持され、該アルカリ性金属の担持が該スズの担持よりも先に行われていることを特徴とする脱水素触媒を用いる。
【0008】
ここでスピネル型構造とは、AB2O4型(AおよびBはいずれも金属元素)の組成を有する複酸化物に見られる代表的結晶構造の1つである。この構造をもつものとして最初に構造決定がされた鉱物であるスピネル(マグネシウムとアルミニウムの複酸化物;MgAl2O4)に因み、その名をもって呼ばれる。スピネル型構造をもつ化合物は正八面体の外形を有する結晶をつくるが、この結晶は立方格子(単位格子中に8AB2O4に化学単位を含む)に属し、酸素原子がほぼ立方最密パッキングに詰まる。
【0009】
上記特定の多孔性γ−アルミナ担体は、表面積が150m2/g以上、細孔容積が0.55cm3/g以上、平均細孔径が90〜200オングストロームであり、かつ細孔径90〜200オングストロームの細孔が全細孔容積の60%以上を占めるものである。
【0010】
上記特定の多孔性γ−アルミナ担体には、酸化亜鉛[ZnO]を好ましくは5〜50重量%担持させる。この酸化亜鉛はアルミナ表面にアルミナとの複合体を形成し、好ましい表面特性を与える役割を果たすと思われる。担持量が5重量%以下ではγ−アルミナ担体表面をアルミナと酸化亜鉛の複合体が均一に覆うことができないため十分な効果が得られず、一方、担持量が50重量%を超えるとアルミナと酸化亜鉛との複合体の表面特性が変化するとともに表面積の減少が著しいものとなる。γ−アルミナ担体上に酸化亜鉛を担持させるには、硝酸亜鉛などの水溶液を担体に含浸させた後、乾燥して焼成すればよい。乾燥には、風乾による方法や、空気乾燥器(恒温槽)を用いる方法、エバポレータを用いる減圧乾燥法などを、適宜用いることができる。焼成は、電気炉等による通常の加熱焼成装置を用いて行うことができ、400℃以上、好ましくは600℃以上の高温で行う。焼成の際の雰囲気は空気でよく、含浸塩化合物の分解物を効率よく除去するために空気を流通させてもよい。焼成時間は3時間以上、好ましくは10時間以上とする。この焼成時間は、焼成温度が高い場合は比較的短時間でよく、焼成温度が低い場合はより長時間とする。このようにして、上記のスピネル型構造をもつ亜鉛とアルミニウムの複合酸化物担体を得ることができる。
【0011】
上記スピネル型複合担体上には白金を好ましくは0.05〜1.5重量%担持させる。ここで用いる白金化合物としては、塩化白金酸、白金酸アンモニウム塩、臭化白金酸、二塩化白金、四塩化白金水和物、二塩化カルボニル白金二塩化物、ジニトロジアミン白金酸塩等が挙げられる。白金の担持は、当該複合担体に塩化白金酸等の白金化合物の水溶液を含浸させ、次いでこれを焼成した後、水素ガス中にて高温で還元する方法が通常用いられるが、本発明では必ずしも水素還元ではなく他の還元方法を用いても良い。
【0012】
上記スピネル型複合担体上には白金とともにスズ及び周期律表の第1A族及び第2A族からなる群から選ばれる少なくとも1つのアルカリ性金属を担持させる。その場合において、アルカリ性金属をスズより先に担持させる。アルカリ性金属の担持量は0.01〜10重量%が好ましい。本明細書において「アルカリ性金属」とは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムを包含する周期律表の第1A族及び第2A族の金属元素をいう。担持させるのに用いるアルカリ性金属の化合物としては、水溶性のもの及び/又はアセトン等の有機溶媒に可溶のものが好ましい。そのような化合物の例としては、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、硝酸カリウム、硫酸カリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、塩化ルビジウム、臭化ルビジウム、ヨウ化ルビジウム、硝酸ルビジウム、硫酸ルビジウム、酢酸ルビジウム、プロピオン酸ルビジウム、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウム、酢酸リチウム、プロピオン酸リチウム、塩化セシウム、臭化セシウム、ヨウ化セシウム、硝酸セシウム、硫酸セシウム、酢酸セシウム、プロピオン酸セシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、プロピオン酸マグネシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム等がある。アルカリ性金属の担持は、上記複合担体にアルカリ性金属化合物の水溶液及び/又は有機溶媒溶液を含浸させて水または有機溶媒を乾燥除去した後、高温処理する方法が通常用いられる。なお、アルカリ性金属の担持は、スズの担持の前であれば、白金担持の前でも後でもよい。
【0013】
アルカリ性金属を担持させた後、上記複合担体上にスズを担持させる。スズの担持量は0.5〜10重量%が好ましい。ここで用いるスズ化合物としては、水溶性のもの及び/又はアセトン等の有機溶媒に可溶のものが好ましい。このようなスズ化合物としては、臭化第一スズ、酢酸スズ、塩化第一スズ、塩化第二スズ及びそれらの水和物や、塩化第二スズアセチルアセトナート錯体、テトラメチルスズ、テトラエチルスズ、テトラブチルスズ、テトラフェニルスズ等が挙げられる。スズの担持は、上記複合担体にスズ化合物の水溶液及び/又は有機溶媒溶液等を含浸させて水又は有機溶媒を乾燥除去した後、水素ガス中にて高温で還元する方法が通常用いられるが、本発明では必ずしも水素還元でなく他の還元方法を用いてもよい。
【0014】
上記のようにして得られた触媒組成物は、最終的に還元性ガスの存在下で高温還元処理すると高温での劣化がより緩和される。ここで用いる還元性ガスとしては水素または水素を含む混合ガスが好ましく、水素ガスを単独で用いるのがより好ましい。通常、高温還元処理は400〜700℃、好ましくは400〜600℃の温度で、1〜20時間程度行う。なお、この高温還元処理は、必ずしも触媒を反応管に充填する前に予め行う必要はなく、触媒を反応管に充填した後、原料の水素化芳香族化合物を導入して脱水素反応を行う前に、水素ガスを反応管に流通させて処理すればよい。
【0015】
本発明により水素を製造するには、反応容器に触媒を充填して触媒層を形成し、この触媒層に水素化芳香族化合物を接触させる。この場合、その反応温度は100〜500℃、好ましくは200〜350℃である。水素化芳香族化合物は、通常、気相で触媒と接触させるが、液相で接触させてもよい。反応圧力は、0.01〜1MPa、好ましくは0.05〜0.5MPaである。
【0016】
反応は、流通式又はバッチ式で実施されるが、好ましくは流通式で実施される。
【0017】
前記の反応により、水素化芳香族化合物中の水素が脱水素され、水素が製造される。
【0018】
【実施例】
次に本発明を実施例によりさらに詳述する。
【0019】
参考例1
(触媒Aの調製)
γ−アルミナ担体27.5gをとり、これにZnO/Al2O3比が35/65になるように30%硝酸亜鉛[Zn(NO3)2]水溶液を含浸させ、水分除去後、800℃で170時間焼成して複合担体を調製した。
この複合担体はZnAl2O4のスピネル構造をもつ。この複合担体にPt担持量が0.3%になるように2.0%塩化白金酸[H2PtCl6]水溶液を含浸させ、乾燥後400℃で3時間焼成した。次いで、K担持量が1.0%になるように1.5%硝酸カリウム[KNO3]水溶液を含浸させ、風乾後に水素気流中400℃で3時間還元した。次いで、この還元後のカリウム−白金担持複合担体にSn担持量が0.7%になるように0.4%塩化第一スズ[SnCl2]メタノール溶液を含浸させ、乾燥後に400℃で30分間水素還元を行って白金/カリウム/スズ担持触媒Aを得た。
【0020】
実施例1(シクロヘキサンの脱水素)
触媒A5gを常圧流通式反応試験装置のガラス製反応管に充填し、3つの独立したブロックからなる管状電気炉の中心に触媒層の中心が位置するよう設置し、触媒層の中心温度が300℃になるように加熱した。原料のシクロヘキサンは常温の液状でHPLCポンプを用いてGHSV=500h−1に相当する4cc/minの液流量で、反応管の全部に設けられた予熱管に供給し、反応管には300℃の気化したシクロヘキサンが供給されるようにした。脱水素反応の開始とともに吸熱によって触媒層の温度が低下するため、反応中は電気炉の各ブロックの温度を調節して反応中の触媒層の中心温度が300℃になるようコントロールした。反応管の留出ガスは冷却して液状として回収し、ガスクロマトグラフによって分析を行なった。また冷却後の流出ガスは液状物を回収した後にガスメーターによって流量を測定するとともにガスクロマトグラフによって分析した。
上記の実験の結果、反応開始1時間後のシクロヘキサンの転化率は64.5%であり、生成物はベンゼンのみであった。発生した水素量は4.8リットル/hであった。
【0021】
実施例2(メチルシクロヘキサンの脱水素)
原料にメチルシクロヘキサンを用いた以外は実施例1と同様に300℃、GHSV=500h−1の条件で反応試験を行なった結果、転化率67.2%で水素発生量は4.2リットル/hであった。
【0022】
実施例3(デカリンの脱水素)
原料にデカリンを用いた以外は実施例1と同様に300℃、GHSV=500−1の条件で反応試験を行なった結果、転化率70%で水素発生量は5.25リットル/hであった。
【0023】
【発明の効果】
本発明によれば、水素化芳香族化合物を原料とし、これから効率よく水素を製造することができる。
【発明の属する技術分野】
水素はクリーンな燃料であり、2次エネルギーとして貯蔵が可能であるなどの観点から、燃料電池の普及などにともなって次世代の重要なエネルギー利用の形態として注目されている。水素の貯蔵・輸送の方法に関しては、液体水素をそのまま使用する方法、水素吸蔵合金を利用する方法などとともに、水素化・脱水素反応対であるシクロヘキサンやデカリンなどの水素化芳香族化合物を水素の貯蔵・輸送に利用する考え方も提案されている。この水素化芳香族化合物を利用する方法に関しては、すでにユーロケベック水素エネルギー計画のなかでメチルシクロヘキサン/トルエン系が検討されており、現在も研究が続けられている(G.W.H.Scherer,E.Newson,A.Wokaun,Int.I.Hydrogen Energy,24,1157(1999)(非特許文献1)。この概念を利用した水素の輸送・貯蔵システムの研究はその後、水素媒体をデカリン/ナフタレン系やシクロヘキサン/ベンゼン系などを中心に検討がなされており、これらの実現のためには水素媒体の脱水素反応によって効率的に水素をとりだす触媒と反応器の開発が不可欠である。従来脱水素触媒としては白金などの貴金属類やニッケルなどの遷移金属類が活性成分として用いられ、触媒担体としてはアルミナやシリカおよび活性炭などの多孔質材料が用いられている。特開2002−274802号公報(特許文献1)は、脱水素反応部の触媒として白金を活性炭に担持した触媒を用いた実施例を開示している。また、特開2001−198469号公報(特許文献2)はバイメタル化した貴金属を活性炭に担持した触媒を開示している。これらの脱水素触媒は水素発生速度の観点から未だ十分な性能ではなく、より性能の高い脱水素触媒が望まれている。
【0002】
【特許文献1】
特開2002−274802号公報
【特許文献2】
特開2001−198469号公報
【非特許文献1】
G.W.H.Scherer,E.Newson,A.Wokaun,Int.I.Hydrogen Energy,24,1157(1999)
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、水素化芳香族化合物からそれに含まれる水素を効率よく脱離させて水素を製造する方法を提供することをその課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明によれば、以下に示す水素の製造方法が提供される。
(1)水素化芳香族化合物からそれに含まれている水素を脱水素触媒の存在下で脱離させて水素を製造する方法であって、該脱水素触媒として、表面積150m2/g以上、細孔容積0.55cm3/g以上、平均細孔径90〜200Åの細孔が全細孔容積の60%以上を占めるγ−アルミナ担体に酸化亜鉛を担持した担体を600℃以上の温度で10時間以上焼成して結晶構造の大半がスピネル構造となった複合酸化物からなる複合担体に、(i)白金、(ii)スズおよび(iii)周期律表第1A族および第2A族からなる郡から選ばれる少なくとも1つのアルカリ性金属が担持された触媒を用いることを特徴とする水素の製造方法。
(2)前記複合担体における酸化亜鉛の担持量が、5〜50重量%である前記(1)記載の方法。
(3)前記複合担体上の白金の担持量が、0.05〜1.5重量%である前記(1)又は(2)記載の方法。
(4)前記複合担体上のスズの担持量が、0.5〜10重量%である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5)前記複合担体上のアルカリ性金属の担持量が、0.01〜10重量%である前記(1)〜(4)のいずれか記載の方法。
(6)前記アルカリ性金属が、カリウムである前記(1)〜(5)のいずれか記載の方法。
(7)前記複合担体上へのアルカリ性金属の担持が、該スズの担持よりも先に行われている前記(1)〜(6)のいずれかに記載の方法。
(8)前記水素化芳香族化合物が、単環芳香族化合物の水素化物及び多環芳香族化合物の水素化物の中から選ばれる少なくとも1種である前記(1)〜(7)のいずれかに記載の方法。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明による水素製造方法で用いる原料は、水素化芳香族化合物である。この水素化芳香族化合物において、その分子量は250以下、好ましくは140以下である。
水素化芳香族化合物としては、従来公知の各種のものを用いることができる。このようなものには、水素化単環芳香族化合物及び水素化多環芳香族化合物が包含される。
水素化単環芳香族化合物には、ベンゼン及びその核置換体の水素化物が包含される。このようなものとしては、ベンゼン、トルエン、キシレン等のベンゼン系化合物の水素化合物(シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン等)が挙げられる。
【0006】
水素化多環芳香族化合物には、水素化鎖状多環芳香族化合物及び水素化縮合多環芳香族化合物が包含される。
水素化鎖状多環芳香族化合物としては、ビフェニルの水素化物、ターフェニルの水素化物等が挙げられる。
水素化縮合多環芳香族化合物としては、ベンゼン環を2〜4個有する化合物の水素化物、例えば、(i)デカリン、テトラリン及びそれらの核置換体等の2環構造の芳香族化合物の水素化物(ナフタレン系化合物の水素化物)、(ii)テトラヒドロアントラセン、テトラヒドロフェナントレン、テトラヒドロメチルアントラセン、テトラヒドロメチルフェナントレン等の3環構造の芳香族化合物の水素化物、(iii)クリセン、ナフタセン等の4環構造の芳香族化合物の水素化物等が挙げられる。
【0007】
本発明においては、前記原料を触媒の存在下で脱水素するが、この場合の触媒としては、表面積150m2/g以上、細孔容積0.55cm3/g以上、平均細孔径90〜200オングストロームであり、かつ細孔径90〜200オングストロームの細孔が全細孔容積の60%以上を占めるγ−アルミナ担体に酸化亜鉛を担持したものを、600℃以上の高温で10時間以上焼成して結晶構造の大半がスピネル構造となった複合酸化物からなる複合担体に、白金、スズおよび周期律表の第1A族および第2A族からなる群から選ばれる少なくとも1つのアルカリ性金属が担持され、該アルカリ性金属の担持が該スズの担持よりも先に行われていることを特徴とする脱水素触媒を用いる。
【0008】
ここでスピネル型構造とは、AB2O4型(AおよびBはいずれも金属元素)の組成を有する複酸化物に見られる代表的結晶構造の1つである。この構造をもつものとして最初に構造決定がされた鉱物であるスピネル(マグネシウムとアルミニウムの複酸化物;MgAl2O4)に因み、その名をもって呼ばれる。スピネル型構造をもつ化合物は正八面体の外形を有する結晶をつくるが、この結晶は立方格子(単位格子中に8AB2O4に化学単位を含む)に属し、酸素原子がほぼ立方最密パッキングに詰まる。
【0009】
上記特定の多孔性γ−アルミナ担体は、表面積が150m2/g以上、細孔容積が0.55cm3/g以上、平均細孔径が90〜200オングストロームであり、かつ細孔径90〜200オングストロームの細孔が全細孔容積の60%以上を占めるものである。
【0010】
上記特定の多孔性γ−アルミナ担体には、酸化亜鉛[ZnO]を好ましくは5〜50重量%担持させる。この酸化亜鉛はアルミナ表面にアルミナとの複合体を形成し、好ましい表面特性を与える役割を果たすと思われる。担持量が5重量%以下ではγ−アルミナ担体表面をアルミナと酸化亜鉛の複合体が均一に覆うことができないため十分な効果が得られず、一方、担持量が50重量%を超えるとアルミナと酸化亜鉛との複合体の表面特性が変化するとともに表面積の減少が著しいものとなる。γ−アルミナ担体上に酸化亜鉛を担持させるには、硝酸亜鉛などの水溶液を担体に含浸させた後、乾燥して焼成すればよい。乾燥には、風乾による方法や、空気乾燥器(恒温槽)を用いる方法、エバポレータを用いる減圧乾燥法などを、適宜用いることができる。焼成は、電気炉等による通常の加熱焼成装置を用いて行うことができ、400℃以上、好ましくは600℃以上の高温で行う。焼成の際の雰囲気は空気でよく、含浸塩化合物の分解物を効率よく除去するために空気を流通させてもよい。焼成時間は3時間以上、好ましくは10時間以上とする。この焼成時間は、焼成温度が高い場合は比較的短時間でよく、焼成温度が低い場合はより長時間とする。このようにして、上記のスピネル型構造をもつ亜鉛とアルミニウムの複合酸化物担体を得ることができる。
【0011】
上記スピネル型複合担体上には白金を好ましくは0.05〜1.5重量%担持させる。ここで用いる白金化合物としては、塩化白金酸、白金酸アンモニウム塩、臭化白金酸、二塩化白金、四塩化白金水和物、二塩化カルボニル白金二塩化物、ジニトロジアミン白金酸塩等が挙げられる。白金の担持は、当該複合担体に塩化白金酸等の白金化合物の水溶液を含浸させ、次いでこれを焼成した後、水素ガス中にて高温で還元する方法が通常用いられるが、本発明では必ずしも水素還元ではなく他の還元方法を用いても良い。
【0012】
上記スピネル型複合担体上には白金とともにスズ及び周期律表の第1A族及び第2A族からなる群から選ばれる少なくとも1つのアルカリ性金属を担持させる。その場合において、アルカリ性金属をスズより先に担持させる。アルカリ性金属の担持量は0.01〜10重量%が好ましい。本明細書において「アルカリ性金属」とは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムを包含する周期律表の第1A族及び第2A族の金属元素をいう。担持させるのに用いるアルカリ性金属の化合物としては、水溶性のもの及び/又はアセトン等の有機溶媒に可溶のものが好ましい。そのような化合物の例としては、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、硝酸カリウム、硫酸カリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、塩化ルビジウム、臭化ルビジウム、ヨウ化ルビジウム、硝酸ルビジウム、硫酸ルビジウム、酢酸ルビジウム、プロピオン酸ルビジウム、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウム、酢酸リチウム、プロピオン酸リチウム、塩化セシウム、臭化セシウム、ヨウ化セシウム、硝酸セシウム、硫酸セシウム、酢酸セシウム、プロピオン酸セシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、プロピオン酸マグネシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム等がある。アルカリ性金属の担持は、上記複合担体にアルカリ性金属化合物の水溶液及び/又は有機溶媒溶液を含浸させて水または有機溶媒を乾燥除去した後、高温処理する方法が通常用いられる。なお、アルカリ性金属の担持は、スズの担持の前であれば、白金担持の前でも後でもよい。
【0013】
アルカリ性金属を担持させた後、上記複合担体上にスズを担持させる。スズの担持量は0.5〜10重量%が好ましい。ここで用いるスズ化合物としては、水溶性のもの及び/又はアセトン等の有機溶媒に可溶のものが好ましい。このようなスズ化合物としては、臭化第一スズ、酢酸スズ、塩化第一スズ、塩化第二スズ及びそれらの水和物や、塩化第二スズアセチルアセトナート錯体、テトラメチルスズ、テトラエチルスズ、テトラブチルスズ、テトラフェニルスズ等が挙げられる。スズの担持は、上記複合担体にスズ化合物の水溶液及び/又は有機溶媒溶液等を含浸させて水又は有機溶媒を乾燥除去した後、水素ガス中にて高温で還元する方法が通常用いられるが、本発明では必ずしも水素還元でなく他の還元方法を用いてもよい。
【0014】
上記のようにして得られた触媒組成物は、最終的に還元性ガスの存在下で高温還元処理すると高温での劣化がより緩和される。ここで用いる還元性ガスとしては水素または水素を含む混合ガスが好ましく、水素ガスを単独で用いるのがより好ましい。通常、高温還元処理は400〜700℃、好ましくは400〜600℃の温度で、1〜20時間程度行う。なお、この高温還元処理は、必ずしも触媒を反応管に充填する前に予め行う必要はなく、触媒を反応管に充填した後、原料の水素化芳香族化合物を導入して脱水素反応を行う前に、水素ガスを反応管に流通させて処理すればよい。
【0015】
本発明により水素を製造するには、反応容器に触媒を充填して触媒層を形成し、この触媒層に水素化芳香族化合物を接触させる。この場合、その反応温度は100〜500℃、好ましくは200〜350℃である。水素化芳香族化合物は、通常、気相で触媒と接触させるが、液相で接触させてもよい。反応圧力は、0.01〜1MPa、好ましくは0.05〜0.5MPaである。
【0016】
反応は、流通式又はバッチ式で実施されるが、好ましくは流通式で実施される。
【0017】
前記の反応により、水素化芳香族化合物中の水素が脱水素され、水素が製造される。
【0018】
【実施例】
次に本発明を実施例によりさらに詳述する。
【0019】
参考例1
(触媒Aの調製)
γ−アルミナ担体27.5gをとり、これにZnO/Al2O3比が35/65になるように30%硝酸亜鉛[Zn(NO3)2]水溶液を含浸させ、水分除去後、800℃で170時間焼成して複合担体を調製した。
この複合担体はZnAl2O4のスピネル構造をもつ。この複合担体にPt担持量が0.3%になるように2.0%塩化白金酸[H2PtCl6]水溶液を含浸させ、乾燥後400℃で3時間焼成した。次いで、K担持量が1.0%になるように1.5%硝酸カリウム[KNO3]水溶液を含浸させ、風乾後に水素気流中400℃で3時間還元した。次いで、この還元後のカリウム−白金担持複合担体にSn担持量が0.7%になるように0.4%塩化第一スズ[SnCl2]メタノール溶液を含浸させ、乾燥後に400℃で30分間水素還元を行って白金/カリウム/スズ担持触媒Aを得た。
【0020】
実施例1(シクロヘキサンの脱水素)
触媒A5gを常圧流通式反応試験装置のガラス製反応管に充填し、3つの独立したブロックからなる管状電気炉の中心に触媒層の中心が位置するよう設置し、触媒層の中心温度が300℃になるように加熱した。原料のシクロヘキサンは常温の液状でHPLCポンプを用いてGHSV=500h−1に相当する4cc/minの液流量で、反応管の全部に設けられた予熱管に供給し、反応管には300℃の気化したシクロヘキサンが供給されるようにした。脱水素反応の開始とともに吸熱によって触媒層の温度が低下するため、反応中は電気炉の各ブロックの温度を調節して反応中の触媒層の中心温度が300℃になるようコントロールした。反応管の留出ガスは冷却して液状として回収し、ガスクロマトグラフによって分析を行なった。また冷却後の流出ガスは液状物を回収した後にガスメーターによって流量を測定するとともにガスクロマトグラフによって分析した。
上記の実験の結果、反応開始1時間後のシクロヘキサンの転化率は64.5%であり、生成物はベンゼンのみであった。発生した水素量は4.8リットル/hであった。
【0021】
実施例2(メチルシクロヘキサンの脱水素)
原料にメチルシクロヘキサンを用いた以外は実施例1と同様に300℃、GHSV=500h−1の条件で反応試験を行なった結果、転化率67.2%で水素発生量は4.2リットル/hであった。
【0022】
実施例3(デカリンの脱水素)
原料にデカリンを用いた以外は実施例1と同様に300℃、GHSV=500−1の条件で反応試験を行なった結果、転化率70%で水素発生量は5.25リットル/hであった。
【0023】
【発明の効果】
本発明によれば、水素化芳香族化合物を原料とし、これから効率よく水素を製造することができる。
Claims (8)
- 水素化芳香族化合物からそれに含まれている水素を脱水素触媒の存在下で脱離させて水素を製造する方法であって、該脱水素触媒として、表面積150m2/g以上、細孔容積0.55cm3/g以上、平均細孔径90〜200Åの細孔が全細孔容積の60%以上を占めるγ−アルミナ担体に酸化亜鉛を担持した担体を600℃以上の温度で10時間以上焼成して結晶構造の大半がスピネル構造となった複合酸化物からなる複合担体に、(i)白金、(ii)スズおよび(iii)周期律表第1A族および第2A族の中から選ばれる少なくとも1種のアルカリ性金属が担持された触媒を用いることを特徴とする水素の製造方法。
- 前記複合担体における酸化亜鉛の担持量が、5〜50重量%である請求項1記載の方法。
- 前記複合担体上の白金の担持量が、0.05〜1.5重量%である請求項1又は2記載の方法。
- 前記複合担体上のスズの担持量が、0.5〜10重量%である請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
- 前記複合担体上のアルカリ性金属の担持量が、0.01〜10重量%である請求項1〜4のいずれか記載の方法。
- 前記アルカリ性金属が、カリウムである請求項1〜5のいずれか記載の方法。
- 前記複合担体上へのアルカリ性金属の担持が、該スズの担持よりも先に行われている請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
- 前記水素化芳香族化合物が、単環芳香族化合物の水素化物及び多環芳香族化合物の水素化物の中から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
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