JP2004196662A - 新規な機能性ペプチド核酸およびその製法 - Google Patents
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Abstract
【課題】コストパフォーマンスに優れ、かつあらゆる機能性分子を超高速に導入することができる、機能性PNAの新規合成方法およびそれに用いる化合物、ならびに新規機能性PNAの提供。
【解決手段】機能性PNAオリゴマーを製造するための方法であって、チミンまたは保護基によって保護されたアデニン、グアニンもしくはシトシン、Cbz基を有するPNAオリゴマーの前記Cbz基を、PNAオリゴマーを担体レジンから切り出した後に機能性分子によって置換し、前記保護基の脱保護を行う工程を含む、前記方法および該方法によって機能性PNAオリゴマー。
【選択図】 図2
【解決手段】機能性PNAオリゴマーを製造するための方法であって、チミンまたは保護基によって保護されたアデニン、グアニンもしくはシトシン、Cbz基を有するPNAオリゴマーの前記Cbz基を、PNAオリゴマーを担体レジンから切り出した後に機能性分子によって置換し、前記保護基の脱保護を行う工程を含む、前記方法および該方法によって機能性PNAオリゴマー。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、機能性ペプチド核酸モノマーの新規な製造方法、該製造方法によって製造された機能性ペプチド核酸オリゴマーおよびその中間体に関する。より詳細には、前駆体的PNAモノマーユニットをPNAオリゴマーに導入した後に1種または2種以上の機能性分子をポスト合成的に導入した後および/または機能性分子を導入した前駆体的PNAモノマーユニットをPNAオリゴマーに導入した後に、さらに1種または2種以上の機能性分子をポスト合成的に導入することを特徴とする、前記製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
核酸は生物の遺伝情報を司るDNAおよびRNAである。これに対して、ペプチド核酸(PNA)とは、核酸の糖リン酸骨格をN−(2−アミノエチル)グリシン骨格に変換した修飾核酸である(図1)。DNA/RNAの糖リン酸骨格は中性条件で負電荷を帯びていて相補鎖間の静電的な反発があるが、PNAの背骨構造はもともと電荷を持たないので静電的な反発がない。そのためPNAは従来の核酸と比較して、高い二重鎖形成能をもち、高い塩基配列認識能を持つ。さらにPNAは生体内ヌクレアーゼ・プロテアーゼに対し非常に安定で分解されないので、アンチセンス分子として遺伝子治療に応用することが検討されている。
【0003】
従来のDNAを媒体にしていた技術をPNA化することにより、これまで克服できなかったDNAの欠点を補うことが可能となった。例えば、遺伝情報の体系的な解析を高速に且つ大量に行うための「DNAマイクロアレイ技術」および塩基配列を特異的に認識したことを蛍光発光により検出できるプローブとして最近開発された「モレキュラービーコン」に応用することが可能である。これらはいずれも酵素耐性に乏しいDNAを媒体とするため、これらの技術を用いるに際しては厳密なサンプリングが要求される。この要求を満たすことが、前記の技術を高度化する上での鍵となっている。
【0004】
一方PNAは酵素に対し完全な耐性を持つので、DNAマイクロアレイ技術およびモレキュラービーコンにおいてPNAをDNAに代用することによって、前記技術の欠点が克服され、さらに長所が引き出されるものと期待されている。
DNAマイクロアレイ技術およびモレキュラービーコン以外にもPNA化することにより発展が期待される分野は数多いが、それらにおいてはPNAの効率的な機能化、すなわちPNAモノマーへの機能性分子の効率的な導入による新規なPNAモノマーの設計が必要である。
【0005】
PNAオリゴマーの合成方法には通常の固相ペプチド合成法を用いるので、PNAモノマーユニットをPNAの背骨構造によって分類すると、Fmoc型PNAモノマーユニットとtBoc型PNAモノマーユニットの2種類が含まれる(図2)。
Fmoc型PNAモノマーユニットの合成方法は既に確立されており、しかもそのオリゴマーの合成は一般的なDNA自動合成機によって可能であるため、下記のルート
【化5】
によって、少量スケールでの合成が可能となっている。
【0006】
当初PNAには下記のようなtBoc型PNAモノマーユニット
【化6】
が採用され、その後より効率のよい合成方法
【化7】
が確立された。しかし、前述したように取り扱いが容易なFmoc型が開発されたため、tBoc型の使用頻度は減少している。
しかし、グアニン・チミン・シトシン・アデニン4種類の核酸塩基以外の機能性分子を導入する際、例えば光放出性分子を導入する際には、導入する機能性分子がアルカリ条件に不安定な場合が多いので、アルカリ条件を使用しないtBoc型PNA背骨構造の有用性は高い。「t−ブトキシカルボニルアミノエチルアミンおよびアミノ酸誘導体の製造方法」に関しては、本発明者らが特願2000−268638として既に特許出願中である。
【0007】
これ以外にも、光放出性オリゴPNAのモノマーユニットの合成例は過去に5例が知られている。これら全てが上記ルートを用いているが、その収率については記載がないか、または極めて低いものでしかない(例えば特許文献1〜2および非特許文献1〜3参照)。また、用いられる化合物の構造がアルカリ性条件に比較的安定であることが特徴的であるため、アルカリ性条件に不安定な発色団が付くと、前記従来法と類似の方法、すなわち下記ルートA
【化8】
【化9】
では効率良く合成できないと予想された。
【0008】
したがって、一般に光放出性分子等の機能性分子は高価な場合が多いため、より合理的な機能性PNAの合成方法、すなわち、▲1▼機能性PNAモノマーユニットの設計における、機能性分子のPNA背骨構造への効率的な導入、▲2▼コストパフォーマンスを考えた合成ルート、および▲3▼遺伝子診断薬としての応用へ適応させるための、これらの機能性分子を超高速に導入する方法が探求された。
【0009】
上記課題に鑑み、本発明者らは、機能性PNAモノマーの新規製造方法として、下記ルートB
【化10】
に示すように、PNA背骨構造にt−ブトキシカルボニルアミノエチルアミン誘導体6を用いて1のペンタフルオロフェニル基を含む活性エステル体5と縮合してほぼ定量的に機能性PNAモノマー4を合成する方法を見出した。
【0010】
また、本発明者らは、機能性PNAモノマーを合成する別法として、PNA背骨構造に上記t−ブトキシカルボニルアミノエチルアミン誘導体6の代わりにベンジルオキシカルボニル−ω−アミノ酸誘導体を用いる方法(ルートC)を見出した。これらの方法については、既に特許出願がなされている。
【0011】
したがって、最終的に機能性PNAを合成するための方法として、上記ルートBおよびルートCのいずれかを用いる方法によって機能性PNAモノマーを合成した後に、それらを重合する方法が工業的にも確立されつつある。すなわち、現在までの機能性PNAの合成法によってPNAプローブとして用いられる機能性PNAを工業的に大量合成することは可能になりつつある。
【0012】
一方、コストパフォーマンスの向上および機能性分子を超高速に導入することを目的とした、機能性PNAを合成方法の改良もなされている。例えば、前記機能性PNAモノマーユニットを用いる方法とは異なるアプローチとして、下記の前駆体的PNAモノマーユニットを利用することによって、ポスト合成的に機能性分子をPNAオリゴマーに導入する方法が報告されている(非特許文献4参照.)。
【化11】
【0013】
当該方法は、前記前駆体的PNAモノマーユニットをPNAオリゴマーに導入した後、さらに機能性分子を導入することによって機能性PNAを合成するものである。
しかし、当該方法においては、導入できる機能性分子の種類が限定される等の欠点がある。
【0014】
例えば、下図に示すように、市販されている光放出性分子のsuccinimideエステルを導入することはできず、導入するためにはFmoc−Gly等のリンカーをまず導入する必要があるが、結果として上記化合物は使用しにくいものになっている。
【化12】
【0015】
また、細胞中に導入するためのに蛍光プローブとして、これまでDNAオリゴマー・RNAオリゴマー・PNAオリゴマーが利用されているが、これらを細胞中に導入するためには、当然ながら細胞膜を通過させなければならない。しかし、細胞膜は膜表面が負電荷を帯びているため、元々負に帯電しているDNA/RNAオリゴマーを導入するのは非常に困難である。
【0016】
一方PNAオリゴマーは電気的に中性であるが、膜透過しにくいという結果が得られている。したがって、PNAオリゴマーを細胞内に導入するに際しては、膜表面を前処理してその導入をしやすくしたり、あるいはトランスフェクション試薬を用いて導入せざるを得ないのが現状である。
【0017】
しかし、そのような処理を施してPNAオリゴマーを導入した場合においてプローブの機能が発揮されたとしても、本来生体が示す挙動を正確に表現していることは必ずしも保証されない。しかも、これは細胞1個の場合であり、多細胞(個体)での利用に至っては到底不可能である。
このような現状および観点から、膜透過性機能を有する蛍光PNAプローブの開発が有用であると考えられている。
【0018】
なお、膜透過性機能を有する蛍光PNAプローブは既に存在する。例えば、▲1▼膜透過性機能を有するオリゴペプチドをPNAに結合させたもの、▲2▼膜透過性機能を有するリン脂質をPNAに結合させたものが挙げられる。しかしながら、これらは膜透過した後細胞内においてプロテアーゼ等の酵素によりPNA以外の部分が分解され、細胞内に滞留してしまうことが予想される。このことは、ターゲットを捕捉出来なかった過剰なPNAプローブが膜透過性機能を失い、その後の洗浄過程で細胞外に出にくくなることにつながるため、本来細胞が持っている遺伝子発現系を正確に表現できないことを意味する。
【0019】
上記背景の下、1個または2個以上の機能性分子を超高速に導入することができる、機能性PNAオリゴマーの合成方法およびそれに用いる化合物に関して、既に特許出願がなされている(特願2002−121667)。
この機能性PNAオリゴマーを製造する方法は、チミンまたは保護基によって保護されたアデニン、グアニンもしくはシトシンを有するPNAモノマーユニットを、Fmoc−ω−アミノ酸−BocPNA−OHと反応させてPNAオリゴマーを合成した後、該PNAオリゴマーに遊離カルボン酸を有する機能性分子をポスト合成的に導入し、さらに前記保護基の脱保護を行うことによって目的物を得ることを特徴とする。
【0020】
しかしながら、Fmoc−ω−アミノ酸−BocPNA−OHを用いる上記公知の製造方法においては、機能性分子のPNAオリゴマーへの結合が弱い場合には、保護基の脱保護の際に機能性分子も脱離してしまうため、十分な収率が得られない。
したがって、特に、PNAオリゴマーへの結合が弱い機能性分子をより効率的に導入する方法に対する要求は依然として大きいものである。
【0021】
【特許文献1】
ピーター・イー・ニールセンら(Peter E. Nielsen et al.) 国際公開第98/5295 A1 号パンフレット。
【特許文献2】
ハンス−ゲオルゲ・バッツら(Hans−georg Batz et al.) 国際公開第98/37232 A2号公報。
【非特許文献1】
ティー・エイ・トランら(T. A. Tran et al.)「ペプチド研究ジャーナル」(”J. Pept. Res.”)、1999年、第53巻、p.134−145。
【非特許文献2】
ジェスパー・ローゼら(Jesper Lohse et al.)「バイオコンジュゲート化学」(”Bioconjugate Chem.”)、1997年、第8巻、p.503−509。
【非特許文献3】
ブルース・アルミタージら(Bruce Armitage et al.) 「核酸研究」(”Nucleic Acid Res.”)、1998年、第26巻、p.715−720。
【非特許文献4】
オリバー・ザイツ(Oliver Seitz)「テトラヘドロン・レターズ」(”Tetrahedron Letters”) 1999年 第40巻、p.4161−4164。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明は、コストパフォーマンスに優れ、かつあらゆる機能性分子を超高速に導入することができる、機能性PNAの新規合成方法およびそれに用いる化合物、ならびに新規機能性PNAを提供することを目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】
上記課題に鑑み研究を重ねた結果、本発明者らは、新たな前駆体的PNAモノマーユニットを用いることによって、驚くべきことに、従来法における前記課題が克服され、かつより広範にわたる機能性PNAを合成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0024】
すなわち、本発明は、機能性PNAオリゴマーを製造するための方法であって、チミンまたは保護基によって保護されたアデニン、グアニンもしくはシトシン、Cbz基を有するPNAオリゴマーの前記Cbz基を、PNAオリゴマーを担体レジンから切り出した後に機能性分子によって置換し、前記保護基の脱保護を行う工程を含む、前記方法に関する。
また、本発明は、PNAオリゴマーが、さらなる機能性分子を有する、前記方法に関する。
【0025】
さらに、本発明は、Fmoc−ω−アミノ酸−BocPNA−OHとCbz−ω−アミノ酸−BocPNA−OHとを反応させた後に、Fmoc基を機能性分子によって置換して、さらなる機能性分子を有するPNAオリゴマーを得る工程を含む、前記方法に関する。
また、本発明は、Q−ω−アミノ酸−BocPNA−OH(Qは機能性分子を表す)をPNAオリゴマーに導入することによって、さらなる機能性分子を有するPNAオリゴマーを得る工程を含む、前記方法に関する。
【0026】
さらに、本発明は、Cbz−ω−アミノ酸−BocPNA−OHが、Cbz−ω−アミノ酸ペンタフルオロフェニルエステルとBocPNA−OHとの反応によって製造されたものである、前記方法に関する。
また、本発明は、Cbz−ω−アミノ酸ペンタフルオロフェニルエステルが、Cbz−ω−アミノ酸とペンタフルオロフェノールとの反応によって製造されたものである、前記方法に関する。
【0027】
さらにまた、本発明は、機能性分子が、光放出性分子、光消失性分子、膜透過性機能性分子、臓器選択性機能性分子、殺菌性機能性分子、分子認識性機能性分子、光架橋機能性分子、光増感機能性分子、DNA結合性分子およびDNA切断機能性分子から選択された1種または2種以上である、前記方法に関する。
またさらに、本発明は、機能性分子が、光放出性分子および光消失性分子を含む、前記方法に関する
また、本発明は、光放出性分子が、FITC、Naphthalimide、Flavin、FAM、Rhodamine、TAMRA、ROX、PyreneおよびCoumarineであり、光消失性分子がDabcyl、HABA、NDIまたはAzoである、前記方法に関する。
【0028】
そして、本発明は、機能性分子が、光放出性分子および膜透過性機能性分子を含む、前記方法に関する
そしてまた、本発明は、光放出性分子が、FITC、Naphthalimide、Flavin、FAM、Rhodamine、TAMRA、ROX、PyreneおよびCoumarineであり、膜透過性機能性分子が水溶性アミノ酸である、前記方法に関する。
そしてさらに、本発明は、アデニン、グアニンまたはシトシンを保護する保護基が、Cbz基である、前記方法に関する。
また、本発明は、PNAオリゴマーの合成が、tBoc法用固相担体を用いたPNA鎖における縮合・伸長を含む、前記方法に関する。
さらに、本発明は、tBoc法用固相担体がMBHAである、前記方法に関する。
【0029】
また、本発明は、Cbz基の機能性分子による置換が、縮合剤HATU、HBTU、DCCまたは機能性分子のペンタフルオロフェニルエステル誘導体やN−ヒドロキシスクシンイミドエステル誘導体との縮合によって行われる、前記方法に関する。
さらに、本発明は、Fmoc基の機能性分子による置換が、Fmoc基をピペリジン処理によって選択的に脱保護して得られた1級アミノ基との脱水縮合によって行われる、前記方法に関する。
【0030】
またさらに、本発明は、Fmoc−ω−アミノ酸−BocPNA−OHが、下記一般式(I)
【化13】
(式中、nは1〜15までの整数を表す)で表される化合物である、前記方法に関する。
【0031】
さらにまた、本発明は、Cbz−ω−アミノ酸−BocPNA−OHが、下記一般式(I’)
【化14】
(式中、nは1〜15までの整数を表す)で表される化合物である、前記方法に関する。
【0032】
そして、本発明は、Q−ω−アミノ酸−BocPNA−OHが、下記一般式(I’’)
【化15】
(式中、Qは機能性分子を表し、nは1〜15までの整数を表す)で表される化合物である、前記方法に関する。
【0033】
また、本発明は、下記一般式(II)
【化16】
(式中、Bは、互いに独立し、同一または異なって、アデニン、グアニン、シトシンまたはチミンであり、Rは、互いに独立し、同一または異なって、Fmoc基、機能性カルボン酸誘導体または水素原子であり、R1は、水素原子、水酸基または機能性カルボン酸誘導体であり、a〜kは0〜10の整数であり、X1〜X7、Y1〜Y4およびZ1〜Z3はいずれも0以上の整数であり、X1+X2+X3+X4+X5+X6+X7>0であり、Y1+Y2+Y3+Y4>0であり、Z1+Z2+Z3>0である。ただし、X6+Z3+X7+Y4≠0であり、R1が水酸基の場合、R1に結合している−NH−は−CO−である。)
で表される化合物に関する。
【0034】
また、本発明は、aが0〜3の整数であり、bが0〜5の整数であり、h、lおよびkの少なくとも1つが4である、前記化合物に関する。
さらに、本発明は、X1=1であり、X2=0または1であり、X3=X4=0である、前記化合物に関する。
また、本発明は、Y1、Y2およびY4が0または1であり、Y3=0である、前記化合物に関する。
【0035】
さらに、本発明は、機能性分子が、光放出性分子、光消失性分子、膜透過性機能性分子、臓器選択性機能性分子、殺菌性機能性分子、分子認識性機能性分子、光架橋機能性分子、光増感機能性分子、DNA結合性分子およびDNA切断機能性分子から選択された1種または2種以上である、前記化合物に関する。
また、本発明は、機能性分子が、光放出性分子および光消失性分子を含む、前記化合物に関する。
また、本発明は、光放出性分子が、FITC、Naphthalimide、Flavin、FAM、Rhodamine、TAMRA、ROX、PyreneおよびCoumarineであり、光消失性分子がDabcyl、HABA、NDIまたはAzoである、前記化合物に関する。
さらに、本発明は、機能性分子が、光放出性分子および膜透過性機能性分子を含む、前記化合物に関する。
またさらに、本発明は、R1が水酸基である、前記化合物に関する。
そして、本発明は、R1が機能性カルボン酸誘導体である、前記化合物に関する
【0036】
本発明は、PNA背骨構造にCbz−ω−アミノ酸を導入した前駆体的PNAモノマーユニット、すなわちCbz−ω−アミノ酸−BocPNA−OHをPNAオリゴマーに導入した後、機能性分子をポスト合成的に導入することにより、ほぼ定量的に機能性分子を有する機能性PNAオリゴマーを合成することに成功したものである。
本発明の製造方法においては、少なくとも1個の機能性分子は、PNAオリゴマー上のCbz基(N−ベンジルオキシカルボニル基)を該機能性分子で置換することによって、PNAオリゴマーのレジンからの切り出しの後に導入される。また、さらなる機能性分子を、PNA背骨構造に導入した、他の前駆体的PNAモノマーユニット由来のFmoc基を他の機能性分子によって置換する工程またはPNA背骨構造の一部を、機能性分子を有するPNAモノマーによって構築し、プレ合成的に導入する工程によって導入することができる。
【0037】
上記特徴により、本発明の製造方法においては、導入する機能性分子として市販のsuccinimideエステル等を使用でき、カルボン酸を有する化合物であれば問題なく利用でき且つ定量的に導入できる。しかも、機能性分子を導入したCbz基を有するPNAオリゴマーを担体レジンから切り出した後に、Cbz基の置換によって機能性分子を導入することができるため、本発明の製造方法においては、前記切り出しの条件に耐性を有しない機能性分子を導入することができる。したがって、本発明による製造方法においては、1個または2個以上の機能性分子を有するあらゆる機能性PNAオリゴマーを高収率で得ることができるため、コストパフォーマンスに極めて優れている。
【0038】
また、前記前駆体的PNAモノマーユニットを機能性PNAオリゴマーに導入した後にレジンを分割することにより、それぞれのレジンに異なった機能性分子を導入することもできる。したがって、本発明による製造方法によれば、極めて高速な機能性PNAオリゴマーの合成手法を開発することが可能となる。
【0039】
本発明の方法によって効率的な合成が可能になる機能性PNAオリゴマーの例として、下記一般式(II)
【化17】
(式中、Bは、互いに独立し、同一または異なって、アデニン、グアニン、シトシンまたはチミンであり、Rは、互いに独立し、同一または異なって、Fmoc基、機能性カルボン酸誘導体または水素原子であり、R1は、水素原子、水酸基または機能性カルボン酸誘導体であり、a〜kは0〜10の整数であり、X1〜X7、Y1〜Y4およびZ1〜Z3はいずれも0以上の整数であり、X1+X2+X3+X4+X5+X6+X7>0であり、Y1+Y2+Y3+Y4>0であり、Z1+Z2+Z3>0である。ただし、X6+Z3+X7+Y4≠0であり、R1が水酸基の場合、R1に結合している−NH−は−CO−である。)
で表される化合物において、X1+X2+X3+X4+X5+X6+X7=0であり、R1が水素原子である化合物を挙げることができる。
一般式(II)で表される化合物において、少なくとも1つのRがFmoc基である化合物は、その前記Fmoc基を機能性分子によって置換することによって、少なくとも1つの機能性分子が導入された機能性PNAオリゴマーになる。したがって、前記少なくとも1つのRがFmoc基である化合物は、機能性PNAオリゴマーの前駆体的な化合物である。
【0040】
本発明によれば、前記一般式(II)で表される化合物において同一または異なるあらゆる機能性分子を、任意の複数の位置に導入することも可能となる。すなわち、前記前駆体的PNAモノマーユニットを用いてPNAオリゴマーを導入した後、ピペリジン処理と機能性分子のポスト合成的導入を一括して行うことによるものである。これはPNAオリゴマーの細胞膜透過性機能を向上させるアンテナペディアを高速に設計する上で欠かせないものである。また、本発明の製造方法によれば、光放出性分子と光消失性分子とを有するPNAオリゴマーであるモレキュラービーコンの合成も容易に行うことができる。この点においても、本発明による方法は極めて優れたものである。
【0041】
このように製造される化合物の例として、前記一般式(II)において、X1+X2+X3+X4+X5+X6+X7>0であり、Rが細胞膜透過性分子誘導体であり、R1が機能性カルボン酸誘導体であるものが挙げられる。
【0042】
このプローブは大きく蛍光標識領域・細胞膜透過性機能領域・分子認識領域の3つに分けることができ、それぞれをリンカー部位(X1〜X7の添字付きで表される部分)を介して結合させた形をしている。
蛍光標識化合物は市販のものも、既に本発明者らがPCT出願を行った新規蛍光標識化PNAモノマーユニットも用いることができる。
【0043】
分子認識部位は市販のPNAユニットを用いて合成する。この化合物の特徴は、既に国内特許出願を行っている一般式(I)で表される新規PNAユニットおよび/または一般式(I’’)で表される新規PNAユニットを膜透過性機能領域部に用いていることである。該一般式(I)で表される新規PNAユニットは機能性分子をポスト合成的に導入するために開発された前駆体ユニットであり、これを複数個並べて導入した後、前記したように同一機能性分子を一括導入できることを特徴としている。
【0044】
したがって、本発明によれば、光機能性分子に限定されることない、多種多様な機能性分子を、PNA中に容易かつ極めて効率的に導入することができるようになる。
このような機能性分子として、FITC型、Naphthalimide型、Flavin型、FAM型、Rhodamine型、TAMRA型、ROX型、Pyrene型およびCoumarine型等の光放出性分子、Dabcyl型、HABA型、DNI型およびAzo型等の光消失性分子、水溶性アミノ酸等の膜透過機能性分子、ラクトースやトリスエックス等の臓器選択機能性分子、タナチンやセクロピン等の殺菌機能性分子、Biotin型およびビオローゲン等の分子認識機能性分子、ソラレン等の光架橋機能性分子、ルシフェリン等の光増感機能性分子、ディスタマイシン、ヘキスト33258およびエチジウムブロミド等のDNA結合性分子、ならびにブレオマイシン等のDNA切断機能性分子の各モノマーユニットが挙げられる。
【0045】
すなわち、本発明における「機能性」の語は、光放出性、光消失性、膜透過機能性、臓器選択性機能性、殺菌性機能性、分子認識性機能性、光架橋機能性、光増感機能性、DNA結合性、およびDNA切断機能性から選択された1種または2種以上である等を含む、ある特定の修飾を行うことによって化合物に新たに付与される種々の機能の全てを意味するものである。
そして、本発明の化合物は、特に、式(II)において、
a)aが0〜3の整数であり、bが0〜5の整数であり、h、lおよびkの少なくとも1つが4である化合物、
b)X1=1であり、X2=0または1であり、X3=X4=0である化合物、c)Y1、Y2およびY4が0または1であり、Y3=0である化合物、
である、合成が比較的容易であり、かつ有用性が高いものである。
式(II)の化合物の、遺伝子診断薬およびアンチセンス分子等の機能性素材としての使用は有用である。また、PNAは前記の通り酵素耐性が高いため、アンチセンスの1種であるRNAインターフェレンス(RNAi)の代替物としての使用(PNAi)も有用である。特に、RおよびR1の少なくとも1個が機能性カルボン酸誘導体である化合物の使用は有用である。また、RおよびR1の少なくとも1個が、光放出性分子であり、RおよびR1の少なくとも1個が、光消失性分子である化合物はモレキュラービーコンとして有用である。
さらに、式(II)において、R1が水酸基である化合物は、チップ化が容易に行えるため有用である。
【0046】
【発明の実施の形態】
ここで、本発明による方法の特徴を更に詳細に説明する。
【0047】
本発明による方法は、典型的には下図
【化18】
に示すとおりである(第II法)。
【0048】
必要に応じて、Cbz−ω−アミノ酸とペンタフルオロフェノール(PfpOH)とを反応させて得られるCbz−ω−アミノ酸ペンタフルオロフェニルエステル(Cbz−ω−アミノ酸−OPfp)とBocPNA−OHとから、Cbz−ω−アミノ酸−BocPNA−OHを予め合成する。
以後の工程において用いる該Cbz−ω−アミノ酸−OPfpの溶液を得るには、DMFなどの有機溶媒、またはアセトン等と水とを含む水溶性溶媒したものいずれも好適に用いることができる。前記水溶性溶媒を用いた場合には、精製等の後処理の面におけるメリットを有するものである。
【0049】
Cbz−ω−アミノ酸−BocPNA−OHの例としては、下記一般式(I’)
【化19】
で表される化合物が挙げられる。
【0050】
Cbz−ω−アミノ酸−BocPNA−OHおよび後述するFmoc−ω−アミノ酸−BocPNAは、PNAモノマーユニットの前駆体として機能するため、いずれも前駆体的PNAモノマーユニットと呼ぶことができる。
式(I’)において、nとしては1〜15までの整数を適宜選択できるが、nの値が大きい方が、ハイブリッド形成時の立体的反発(あるいは障害)を軽減する点において好ましい。
次に、前駆体的PNAモノマーユニットである前記Cbz−ω−アミノ酸−BocPNA−OHを用いて、オリゴマーIIaを合成する。具体的には、チミンまたはCbz基(N−ベンジルオキシカルボニル基)等で保護されたアデニン、グアニンもしくはシトシンを有するPNAモノマーユニットを、前駆体的PNAモノマーユニットであるCbz−ω−アミノ酸−BocPNA−OHと反応させ、tBoc法用固相担体を用いてPNA鎖を逐次縮合・伸長せしめる。
【0051】
PNA鎖の縮合においては、予めtBoc基を脱離しておく必要があるが、その方法に制限はなく、一般的な方法が用いられる。それに続く縮合には、HATU、HBTUおよびBOP等の一般的な縮合剤が用いられる。
また、固相担体に関しては、tBoc法用のものであれば特に制限はないが、特にMBHAが好適に用いられる。
【0052】
次に、化合物IIaを担体レジンから切り出し、Cbz基を脱保護してアミノ基とし、化合物IIbを得る。
切り出しおよび脱保護は同時に行ってもよい。この場合、切り出しおよび脱保護の条件に特に制限はない。例えば、TFA/TFMSA/p−cresol/Thioanisole=60/25/10/10のような一般的な条件において好適に行われる。
【0053】
続いて、前記IIbの前記アミノ基に、カルボン酸基を有する機能性分子の活性エステルを脱水縮合してIIcを得る。活性エステルとしては、市販のsuccinimideエステルまたはペンタフルオロフェニルエステルを用いることができる。
前記カルボン酸として特に制限はないが、反応性の点においては脂肪族カルボン酸が芳香族カルボン酸を上回るため、脂肪族カルボン酸を用いると製造の効率が高く好ましい。
【0054】
最後に各塩基の保護基であるCbz基の脱保護を行うことによって、機能性分子基としてRを有する、目的物である機能性PNAオリゴマーIIdを得る。
【0055】
上記のように、本発明による方法においては、従来の機能性モノマー合成に用いる活性エステル化の合成を要する方法とは異なり、機能性分子をそのまま利用できる。また一旦IIaを合成した後に、固相からの切り出しに耐性を有しないものを含む種々の機能性分子が導入可能であるため、従来導入が困難であった機能性分子も、効率的にPNAプローブに導入することが可能である。
さらに、以下のさらなる前駆体的PNAモノマーユニットを用いた本発明の方法によって、従来困難であった高速かつ多様な並列PNAプローブ合成も併せて可能になる。
【0056】
また、Fmoc−ω−アミノ酸−BocPNA−OHを用いる場合の本発明によるオリゴPNAを合成するルートは、典型的には、下図
【化20】
に示すとおりである(第III法)。
【0057】
まず、必要に応じて、下図
【化21】
に示すように、Fmoc−ω−アミノ酸とペンタフルオロフェノール(PfpOH)とを反応させて得られるFmoc−ω−アミノ酸ペンタフルオロフェニルエステル(Fmoc−ω−アミノ酸−OPfp)とBocPNA−OHとから、Fmoc−ω−アミノ酸−BocPNA−OHを合成する。
以後の工程において用いる該Fmoc−ω−アミノ酸−OPfpの溶液を得るには、DMFなどの有機溶媒、またはアセトン等と水とを含む水溶性溶媒したものいずれも好適に用いることができる。前記水溶性溶媒を用いた場合には、精製等の後処理の面におけるメリットを有するものである。
【0058】
前記Fmoc−ω−アミノ酸−OPfpは、Fmoc−ω−アミノ酸とPfpOHをDMF溶液中にてDCCを加えて反応させることによって、例えば下記式
【化22】
(式中、nは1〜15の整数を表す)
で表されるものが得られる。
【0059】
次いで、これにBocPNA−OHのDMF溶液にジイソプロピルエチルアミンとともに添加し、Fmoc−ω−アミノ酸−BocPNA−OHを得る。
【0060】
Fmoc−ω−アミノ酸−BocPNA−OHは、PNAモノマーユニットの前駆体として機能するため、Cbz−ω−アミノ酸−BocPNA−OHと同様に前駆体的PNAモノマーユニットと呼ぶことができる。
式(I)において、nとしては1〜15までの整数を適宜選択できるが、nの値が大きい方が、ハイブリッド形成時の立体的反発(あるいは障害)を軽減する点において好ましい。
次に、下図
【化23】
に示すように、前駆体的PNAモノマーユニットを用いて、オリゴマーIIIaを合成する。具体的には、チミンまたはCbz基(N−ベンジルオキシカルボニル基)等で保護されたアデニン、グアニンもしくはシトシンを有するPNAモノマーユニットを、前駆体的PNAモノマーユニットと反応させ、tBoc法用固相担体を用いてPNA鎖を逐次縮合・伸長せしめる。なお、前駆体的PNAモノマーユニットの導入の順番に制限はない。
【0061】
PNA鎖の縮合においては、予めtBoc基を脱離しておく必要があるが、その方法に制限はなく、一般的な方法が用いられる。それに続く縮合には、HATU、HBTUおよびBOP等の一般的な縮合剤が用いられる。
また、固相担体に関しては、tBoc法用のものであれば特に制限はないが、特にMBHAが好適に用いられる。
【0062】
次に、下図
【化24】
に示すように、ピペリジン処理によってFmoc基を選択的に脱保護してアミノ基とし、IIIbを得て、さらに、下図
【化25】
に示すように、該IIIbの前記アミノ基にカルボン酸基を有する機能性分子の活性エステルを脱水縮合してIIIcを得る。
前記カルボン酸として特に制限はないが、反応性の点においては脂肪族カルボン酸が芳香族カルボン酸を上回るため、脂肪族カルボン酸を用いると製造の効率が高く好ましい。
【0063】
また、ピペリジン処理によるFmoc基の脱保護は、ある程度の時間をかけることによって好適に行われる。特に、20〜40分が好適であり、最も好適には30分であった。
縮合剤の種類に特に制限はなく、前記PNA鎖の縮合と同様に、HATU、HBTUおよびBOP等の一般的な縮合剤が用いられる。
【0064】
なお、機能性分子の導入は、Fmoc−ω−アミノ酸−BocPNA−OHを縮合した後、直ちに行ってもよく(第1法)、あるいは、Fmoc−ω−アミノ酸−BocPNA−OHを含む全てのPNAモノマーユニットを逐次縮合した後に行ってもよい(第2法)。
【0065】
次に、下図
【化26】
に示すように、担体レジンからの切り出しとCbz基の脱保護を行うことによって、機能性分子基としてRおよびR’を有する、機能性分子を有する化合物IIIdを経て目的物であるIIIeを得る。
切り出しおよび脱保護は同時に行ってもよい。この場合、Fmoc基の脱保護の後に行われる限りにおいてはその条件に特に制限はない。例えば、TFA/TFMSA/p−cresol/Thioanisole=60/25/10/10のような一般的な条件において好適に行われる。
【0066】
次に、本発明の製造方法においては、上記のFmoc基を機能性分子による置換することによって機能性分子の導入を行う以外に、PNA背骨構造の一部を、機能性分子を有するPNAモノマー、すなわちさらなる別異の前駆体的PNAモノマーユニットによって構築し、プレ合成的に機能性分子を導入することもできる(第V法)。
この場合の典型的な合成経路は以下に示すとおりである:
【化27】
【0067】
すなわち、前記Fmoc−ω−アミノ酸−BocPNA−OHを用いる方法と比べると、IIIaおよびIIIbに相当する化合物を経ずに、機能性PNAオリゴマーを製造することができる。なお、各PNAモノマーユニットを導入する順番に制限はない。
機能性分子を有するPNAモノマーは、例えば(液相法)によって製造することができる。該PNAモノマーとして、式(I’’):
【化28】
(式中、Qは機能性分子を表し、nは1〜15までの整数を表す)
の化合物が例として挙げられる。
また、式Vaの化合物を得るためには、従来の固相法を用いる。その後の工程は、前記Fmoc−ω−アミノ酸−BocPNA−OHを用いる場合と同様に行うことによって、目的物Vcを得ることができる。
【0068】
さらに下図に示すように、式(I)の化合物、式(I’)の化合物および式(I”)の化合物を用いて、機能性PNAオリゴマーを合成することができる(第VI法)。
【化29】
この場合も各PNAモノマーユニットを導入する順番に制限はない。
また、前記Fmoc−ω−アミノ酸−BocPNA−OHのみを用いる方法(第I法)および前記Fmoc−ω−アミノ酸−BocPNA−OHと前記Q−ω−アミノ酸−BocPNA−OHとを用いる方法(第IV法)については、既に特許出願済みである(特願2002−121667)。
【0069】
本発明による方法によれば、下記一般式(II)
【化30】
(式中、Bは、互いに独立し、同一または異なって、アデニン、グアニン、シトシンまたはチミンであり、Rは、互いに独立し、同一または異なって、Fmoc基、機能性カルボン酸誘導体または水素原子であり、R1は、水素原子、水酸基または機能性カルボン酸誘導体であり、a〜kは0〜10の整数であり、X1〜X7、Y1〜Y4およびZ1〜Z3はいずれも0以上の整数であり、X1+X2+X3+X4+X5+X6+X7>0であり、Y1+Y2+Y3+Y4>0であり、Z1+Z2+Z3>0である。ただし、X6+Z3+X7+Y4≠0であり、R1が水酸基の場合、R1に結合している−NH−は−CO−である。)
で表される化合物等が好適に合成される。
【0070】
本発明の方法によって、式(II)で表される化合物として、例えば、RおよびR1の少なくとも1個が、光機能性分子であり、RおよびR1の少なくとも1個が、光消失性分子である化合物、R1が水酸基である化合物またはR1が機能性カルボン酸誘導体、特にR1が光機能性カルボン酸誘導体である化合物等が好適に合成される。
また、R1がaが0〜3の整数であり、bが0〜5の整数であり、h、lおよびkの少なくとも1つが4である化合物、X1=1であり、X2=0または1であり、X3=X4=0である化合物、Y1、Y2およびY4が0または1であり、Y3=0である、化合物等も好適に合成される。
なお、一般式(II)で表される化合物において、少なくとも1つのRがFmoc基である化合物も、上記製造方法によって合成される、機能性PNAオリゴマーの前駆体的な化合物である。
【0071】
また、前記一般式(II)で表される化合物において、複数の機能性分子が導入されたものとして、例えば、RまたはR1が細胞膜透過性機能性分子誘導体であるものが好適に合成される。このような化合物は、典型的には、Rが細胞膜透過性機能性分子誘導体等であり、R1が光機能性分子等の機能性カルボン酸誘導体等であるもの、すなわち、末端部を含む複数部位に機能性分子が導入され、それらによって複数の機能が付与された化合物である。このような化合物は、例えば下記のように模式化することができる。
【化31】
【0072】
このような化合物は、例えば前記一般式(II)において、X1=X2=Y1=1であり、かつZ1≧2である化合物である。このような化合物は合成のしやすさおよび合成コストの面等において好適である。
【0073】
リンカー部位を導入することによって、個々の機能性部位および塩基配列認識領域の干渉を防ぎ、分子の機能をより確実なものにすることができる。本明細書におけるPNA、PNAモノマーおよびPNAオリゴマーの語には、リンカー部位をその末端および/または内部に含むものも包含される。
これらの部位または領域間の相互干渉を防ぐための部位としては、前記リンカー部位のみならず、一般式(II)におけるf〜hを、所望に応じて選択することによっても可能である。
リンカー部位を構成する基としては、直鎖状または分枝状の炭化水素およびそれらのエーテル体等が挙げられるが、直鎖状炭化水素基は導入の容易さおよびコストなどの面から好適であり、特に炭素数1〜6の直鎖状炭化水素基が好適である。また、エーテル体は、その汎用性において好適である。
【0074】
前記複数の機能性分子が導入された化合物は、例えばKoch, T.; Hansen, H.F.; Andersen, P.; Larsen, T.; Batz, H.G.; Otteson, K.; Orum, H. J. PeptideRes. 1997, 49, 80−88.を利用して好適に合成される。
塩基配列認識部位は、市販の各種PNAモノマーを用いて固相合成によりオリゴマー化することができる。リンカー部位には、市販のBoc−7−アミノヘプタン酸、Boc−6−アミノカプロン酸等を用いることができる。
【0075】
1の機能性分子として光機能性分子を導入すれば、蛍光標識することが可能であり、かつ他の機能も有する化合物を合成することができる。このような蛍光標識部位として、市販のFITC、FAM、ROX、TAMRAまたはPyrene等の市販の活性エステル型蛍光標識化合物を用いて、多様な蛍光発光波長を選択することが可能であるが、導入される蛍光標識化合物はこれらに限定されるものではない。
【0076】
本発明の化合物に導入し得る他の機能性の例としては、膜透過性機能が挙げられる。このような膜透過性機能部位は、前記一般式(I)で表される化合物を用いることにより、同様に導入することができる。膜透過性を向上させることができる機能性分子としてアルギニンが挙げられるが、リシンおよびセリン等の他の水溶性アミノ酸も好適に用いることができる。
【0077】
また、Cbzアミノ酸ユニットとFmocアミノ酸ユニットおよび/または機能性分子を有するアミノ酸ユニットを用いることによって、複数個のアミノ酸を導入することも可能である。しかしながら、上記2化合物は本発明による膜透過性機能を有する蛍光PNAプローブのモデル化合物であり、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0078】
これらのプローブの特徴は、「全てPNA型になっているので、完全な酵素耐性を有すること」である。すなわち、これまでの膜透過性機能を有するプローブは、PNAと膜透過性機能を有するペプチド鎖あるいはリン脂質を共有結合させたものが主流であったが、これらの既知のプローブは優れた膜透過性機能を有するものの、一旦細胞内に入ると酵素群によりペプチド鎖あるいはリン脂質が分解されることが予想される。したがって、これらは、ターゲットを認識していない分解を受けたプローブを洗浄過程で完全に取り除くことができないという欠点を有する。
【0079】
これに対して、今回設計したプローブは、細胞内においても酵素分解を受けないため、ターゲットを認識していないプローブは洗浄過程で完全に取り除かれるため、正確な遺伝子発現量の定量を可能とするものである。
なお、これらの機能性を有する化合物以外にも、ラクトースやトリスエックス等の臓器選択性機能性分子、タナチンやセクロピン等の殺菌性機能性分子およびビオローゲン等の分子認識性機能性分子等も、本発明によれば制限なく導入することが可能であり、そのような化合物を、大量に低コストで実用に供することが可能になる。
【0080】
さらに、本発明によるプローブには、光放出性分子および光消失性分子とを併せて有するモレキュラービーコンも包含される。モレキュラービーコンとは塩基配列を特異的に認識したことを蛍光発光により検出するプローブであって、遺伝子工学において重要な化合物である。
従来のモレキュラービーコンは、DNAを用いていたため、酵素耐性が低く保存に適さなかったが、本発明によるプローブはPNAバックボーンを用いているため、より安定性が高いものである。
前記光放出性分子としては、FITC、Naphthalimide、Flavin、FAM、Rhodamine、TAMRA、ROX、PyreneおよびCoumarine等を挙げることができ、光消失性分子としてDabcyl、HABA、NDIおよびAzo等を挙げることができる。
【0081】
【実施例】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲はこれに限られるものではない。
(実施例1)第III法に関する例(1)
【化32】
【0082】
(1)前駆体的PNAモノマーユニットの固相担体への導入
まず、固相担体MBHA(50 mg)にCbz−C4−BocPNA−OH(9.0 mg、20 mmol)、縮合剤HBTU(7.6 mg、20 mmol)とDIEA(7.0 mL、20 mmol)を用いて伸長反応を行った。縮合反応が定量的にいっているか否かを調べるために、ニンヒドリン反応を利用した。
(2)PNAオリゴマーの伸長反応
次いで、グアニンPNAモノマーユニット(10.8 mg、20 mmol)、縮合剤HBTU(7.6 mg、20 mmol)とDIEA(7.0 mL、20 mmol)を用いて逐次伸長反応を行った。他のPNAモノマーユニットも同様にして縮合し、伸長反応を行った。
(3)前駆体的PNAモノマーユニットの導入)
さらに、Fmoc−C5−BocPNA−OH(22.2 mg、20 mmol)を、縮合剤HBTU(7.6 mg、20 mmol)とDIEA(7.0 mL、20 mmol)を用いて縮合させた。
(機能性分子の固相合成時ポスト合成的導入)全てのユニットを逐次縮合した後、ピペリジン処理(20% piperidine in DMF、室温3分)してFmoc基を脱保護した。次いで、機能性カルボン酸誘導体としてFITC(15.6 mg、40 mmol)をTEA(5.6 mL、40 mmol)を用いて縮合し、ポスト合成的に機能性分子を導入した。
(4)固相担体からの切り出し
切り出し試薬(TFA/TFMSA/p−cresol/thioanisol=60/25/10/10)により固相担体からの切り出しとCbz基の脱保護を同時に行い、後処理して下記化合物を得た。
【化33】
【0083】
(5)固相担体から切り出した後の機能性分子のポスト合成的導入
精製した上記化合物に、機能性カルボン酸誘導体としてDabcyl−OSu(14.6 mg、40 mmol)をTEA(13.9 mL、40 mmol)を用いて縮合し、ポスト合成的に機能性分子を導入した。反応後、HPLCによる精製を行い、目的とする下記化合物を得た。
【化34】
【0084】
(実施例2) 第III法に関する例(2)
(1)前駆体的PNAモノマーユニットの固相担体への導入
まず、固相担体MBHA(50 mg)にFmoc−C5−BocPNA−OH(22.2 mg、20 mmol)を、縮合剤HBTU(7.6 mg、20 mmol)とDIEA(7.0 mL、20 mmol)を用いて縮合させた。縮合反応が定量的にいっているか否かを調べるために、ニンヒドリン反応を利用した。
(2)PNAオリゴマーの伸長反応)
次いで、グアニンPNAモノマーユニット(10.8 mg、20 mmol)、縮合剤HBTU(7.6 mg、20 mmol)とDIEA(7.0 mL、20 mmol)を用いて逐次伸長反応を行った。他のPNAモノマーユニットも同様にして縮合し、伸長反応を行った。
(3)前駆体的PNAモノマーユニットの導入)さらに、Cbz−C5−BocPNA−OH(9.0mg、20 mmol)、縮合剤HBTU(7.6 mg、20 mmol)とDIEA(7.0 mL、20 mmol)を用いて伸長反応を行った。この過程を2回繰り返した。
(4)機能性分子の固相合成時ポスト合成的導入
全てのユニットを逐次縮合した後、ピペリジン処理(20% piperidine in DMF、室温3分)してFmoc基を脱保護した。次いで、機能性カルボン酸誘導体としてFAM−OSu(15.6 mg、40 mmol)をTEA(5.6 mL、40 mmol)を用いて縮合し、ポスト合成的に機能性分子を導入した。
(5)固相担体からの切り出し
切り出し試薬(TFA/TFMSA/p−cresol/thioanisol=60/25/10/10)により固相担体からの切り出しとCbz基の脱保護を同時に行い、後処理して機能性分子を導入する前の化合物を得た。
(6)固相担体から切り出した後の機能性分子のポスト合成的導入
機能性カルボン酸誘導体としてDabcyl−OSu(14.6 mg、40 mmol)をTEA(13.9 mL、40 mmol)を用いて縮合し、ポスト合成的に機能性分子を導入した。反応後、HPLCによる精製を行い、目的とする下記化合物を得た。
【0085】
【化35】
【0086】
(実施例3) 第VI法に関する例
【化36】
【0087】
(1)前駆体的PNAモノマーユニットの固相担体への導入
まず、固相担体MBHA(50 mg)にFmoc−C5−BocPNA−OH(22.2 mg、20 mmol)、縮合剤HBTU(7.6 mg、20 mmol)とDIEA(7.0 mL、20 mmol)を用いて伸長反応を行った。縮合反応が定量的にいっているか否かを調べるために、ニンヒドリン反応を利用した。
(2)PNAオリゴマーの伸長反応
次いで、チミンPNAモノマーユニット(7.7 mg、20 mmol)、Cbz−Gly−BocPNA−OH(8.2 mg、20 mmol)、あるいはシトシンPNAモノマーユニット(10.1 mg、20 mmol)を、縮合剤HBTU(7.6 mg、20 mmol)とDIEA(7.0 mL、20 mmol)を用いて逐次縮合し、PNAオリゴマーの伸長反応を行った。
(3)機能性分子の固相合成時ポスト合成的導入
ピペリジン処理(20% piperidine in DMF、室温3分)してFmoc基を脱保護した。次いで、機能性カルボン酸誘導体としてAzo−OSu(13.8 mg、40 mmol)をTEA(13.9 mL、40 mmol)を用いて縮合し、ポスト合成的に機能性分子を導入した。(PNAオリゴマーの伸長反応)さらに、Fluorescein−C3−BocPNA−OH(13.9 mg、20mmol)を、縮合剤HBTU(7.6 mg、20 mmol)とDIEA(7.0 mL、20 mmol)を用いて再度縮合し、PNAオリゴマーの伸長反応を行った。
(固相担体からの切り出し)切り出し試薬(TFA/TFMSA/p−cresol/thioanisol=60/25/10/10)により固相担体からの切り出しとCbz基の脱保護を同時に行い、後処理して下記化合物を得た。
【0088】
【化37】
【0089】
【発明の効果】
本発明によれば、光機能性分子に限定されることない多種多様な機能性分子を、PNA中に容易に導入することができ、多種多様な機能性分子をPNA中に容易かつ効率的に導入することができ、遺伝子治療などに用いられる種々のPNAの構築が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】DNAとPNAの構造および荷電の状況の違いを表す図である。
【図2】2種類のPNAモノマーユニットの構造を表す図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、機能性ペプチド核酸モノマーの新規な製造方法、該製造方法によって製造された機能性ペプチド核酸オリゴマーおよびその中間体に関する。より詳細には、前駆体的PNAモノマーユニットをPNAオリゴマーに導入した後に1種または2種以上の機能性分子をポスト合成的に導入した後および/または機能性分子を導入した前駆体的PNAモノマーユニットをPNAオリゴマーに導入した後に、さらに1種または2種以上の機能性分子をポスト合成的に導入することを特徴とする、前記製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
核酸は生物の遺伝情報を司るDNAおよびRNAである。これに対して、ペプチド核酸(PNA)とは、核酸の糖リン酸骨格をN−(2−アミノエチル)グリシン骨格に変換した修飾核酸である(図1)。DNA/RNAの糖リン酸骨格は中性条件で負電荷を帯びていて相補鎖間の静電的な反発があるが、PNAの背骨構造はもともと電荷を持たないので静電的な反発がない。そのためPNAは従来の核酸と比較して、高い二重鎖形成能をもち、高い塩基配列認識能を持つ。さらにPNAは生体内ヌクレアーゼ・プロテアーゼに対し非常に安定で分解されないので、アンチセンス分子として遺伝子治療に応用することが検討されている。
【0003】
従来のDNAを媒体にしていた技術をPNA化することにより、これまで克服できなかったDNAの欠点を補うことが可能となった。例えば、遺伝情報の体系的な解析を高速に且つ大量に行うための「DNAマイクロアレイ技術」および塩基配列を特異的に認識したことを蛍光発光により検出できるプローブとして最近開発された「モレキュラービーコン」に応用することが可能である。これらはいずれも酵素耐性に乏しいDNAを媒体とするため、これらの技術を用いるに際しては厳密なサンプリングが要求される。この要求を満たすことが、前記の技術を高度化する上での鍵となっている。
【0004】
一方PNAは酵素に対し完全な耐性を持つので、DNAマイクロアレイ技術およびモレキュラービーコンにおいてPNAをDNAに代用することによって、前記技術の欠点が克服され、さらに長所が引き出されるものと期待されている。
DNAマイクロアレイ技術およびモレキュラービーコン以外にもPNA化することにより発展が期待される分野は数多いが、それらにおいてはPNAの効率的な機能化、すなわちPNAモノマーへの機能性分子の効率的な導入による新規なPNAモノマーの設計が必要である。
【0005】
PNAオリゴマーの合成方法には通常の固相ペプチド合成法を用いるので、PNAモノマーユニットをPNAの背骨構造によって分類すると、Fmoc型PNAモノマーユニットとtBoc型PNAモノマーユニットの2種類が含まれる(図2)。
Fmoc型PNAモノマーユニットの合成方法は既に確立されており、しかもそのオリゴマーの合成は一般的なDNA自動合成機によって可能であるため、下記のルート
【化5】
によって、少量スケールでの合成が可能となっている。
【0006】
当初PNAには下記のようなtBoc型PNAモノマーユニット
【化6】
が採用され、その後より効率のよい合成方法
【化7】
が確立された。しかし、前述したように取り扱いが容易なFmoc型が開発されたため、tBoc型の使用頻度は減少している。
しかし、グアニン・チミン・シトシン・アデニン4種類の核酸塩基以外の機能性分子を導入する際、例えば光放出性分子を導入する際には、導入する機能性分子がアルカリ条件に不安定な場合が多いので、アルカリ条件を使用しないtBoc型PNA背骨構造の有用性は高い。「t−ブトキシカルボニルアミノエチルアミンおよびアミノ酸誘導体の製造方法」に関しては、本発明者らが特願2000−268638として既に特許出願中である。
【0007】
これ以外にも、光放出性オリゴPNAのモノマーユニットの合成例は過去に5例が知られている。これら全てが上記ルートを用いているが、その収率については記載がないか、または極めて低いものでしかない(例えば特許文献1〜2および非特許文献1〜3参照)。また、用いられる化合物の構造がアルカリ性条件に比較的安定であることが特徴的であるため、アルカリ性条件に不安定な発色団が付くと、前記従来法と類似の方法、すなわち下記ルートA
【化8】
【化9】
では効率良く合成できないと予想された。
【0008】
したがって、一般に光放出性分子等の機能性分子は高価な場合が多いため、より合理的な機能性PNAの合成方法、すなわち、▲1▼機能性PNAモノマーユニットの設計における、機能性分子のPNA背骨構造への効率的な導入、▲2▼コストパフォーマンスを考えた合成ルート、および▲3▼遺伝子診断薬としての応用へ適応させるための、これらの機能性分子を超高速に導入する方法が探求された。
【0009】
上記課題に鑑み、本発明者らは、機能性PNAモノマーの新規製造方法として、下記ルートB
【化10】
に示すように、PNA背骨構造にt−ブトキシカルボニルアミノエチルアミン誘導体6を用いて1のペンタフルオロフェニル基を含む活性エステル体5と縮合してほぼ定量的に機能性PNAモノマー4を合成する方法を見出した。
【0010】
また、本発明者らは、機能性PNAモノマーを合成する別法として、PNA背骨構造に上記t−ブトキシカルボニルアミノエチルアミン誘導体6の代わりにベンジルオキシカルボニル−ω−アミノ酸誘導体を用いる方法(ルートC)を見出した。これらの方法については、既に特許出願がなされている。
【0011】
したがって、最終的に機能性PNAを合成するための方法として、上記ルートBおよびルートCのいずれかを用いる方法によって機能性PNAモノマーを合成した後に、それらを重合する方法が工業的にも確立されつつある。すなわち、現在までの機能性PNAの合成法によってPNAプローブとして用いられる機能性PNAを工業的に大量合成することは可能になりつつある。
【0012】
一方、コストパフォーマンスの向上および機能性分子を超高速に導入することを目的とした、機能性PNAを合成方法の改良もなされている。例えば、前記機能性PNAモノマーユニットを用いる方法とは異なるアプローチとして、下記の前駆体的PNAモノマーユニットを利用することによって、ポスト合成的に機能性分子をPNAオリゴマーに導入する方法が報告されている(非特許文献4参照.)。
【化11】
【0013】
当該方法は、前記前駆体的PNAモノマーユニットをPNAオリゴマーに導入した後、さらに機能性分子を導入することによって機能性PNAを合成するものである。
しかし、当該方法においては、導入できる機能性分子の種類が限定される等の欠点がある。
【0014】
例えば、下図に示すように、市販されている光放出性分子のsuccinimideエステルを導入することはできず、導入するためにはFmoc−Gly等のリンカーをまず導入する必要があるが、結果として上記化合物は使用しにくいものになっている。
【化12】
【0015】
また、細胞中に導入するためのに蛍光プローブとして、これまでDNAオリゴマー・RNAオリゴマー・PNAオリゴマーが利用されているが、これらを細胞中に導入するためには、当然ながら細胞膜を通過させなければならない。しかし、細胞膜は膜表面が負電荷を帯びているため、元々負に帯電しているDNA/RNAオリゴマーを導入するのは非常に困難である。
【0016】
一方PNAオリゴマーは電気的に中性であるが、膜透過しにくいという結果が得られている。したがって、PNAオリゴマーを細胞内に導入するに際しては、膜表面を前処理してその導入をしやすくしたり、あるいはトランスフェクション試薬を用いて導入せざるを得ないのが現状である。
【0017】
しかし、そのような処理を施してPNAオリゴマーを導入した場合においてプローブの機能が発揮されたとしても、本来生体が示す挙動を正確に表現していることは必ずしも保証されない。しかも、これは細胞1個の場合であり、多細胞(個体)での利用に至っては到底不可能である。
このような現状および観点から、膜透過性機能を有する蛍光PNAプローブの開発が有用であると考えられている。
【0018】
なお、膜透過性機能を有する蛍光PNAプローブは既に存在する。例えば、▲1▼膜透過性機能を有するオリゴペプチドをPNAに結合させたもの、▲2▼膜透過性機能を有するリン脂質をPNAに結合させたものが挙げられる。しかしながら、これらは膜透過した後細胞内においてプロテアーゼ等の酵素によりPNA以外の部分が分解され、細胞内に滞留してしまうことが予想される。このことは、ターゲットを捕捉出来なかった過剰なPNAプローブが膜透過性機能を失い、その後の洗浄過程で細胞外に出にくくなることにつながるため、本来細胞が持っている遺伝子発現系を正確に表現できないことを意味する。
【0019】
上記背景の下、1個または2個以上の機能性分子を超高速に導入することができる、機能性PNAオリゴマーの合成方法およびそれに用いる化合物に関して、既に特許出願がなされている(特願2002−121667)。
この機能性PNAオリゴマーを製造する方法は、チミンまたは保護基によって保護されたアデニン、グアニンもしくはシトシンを有するPNAモノマーユニットを、Fmoc−ω−アミノ酸−BocPNA−OHと反応させてPNAオリゴマーを合成した後、該PNAオリゴマーに遊離カルボン酸を有する機能性分子をポスト合成的に導入し、さらに前記保護基の脱保護を行うことによって目的物を得ることを特徴とする。
【0020】
しかしながら、Fmoc−ω−アミノ酸−BocPNA−OHを用いる上記公知の製造方法においては、機能性分子のPNAオリゴマーへの結合が弱い場合には、保護基の脱保護の際に機能性分子も脱離してしまうため、十分な収率が得られない。
したがって、特に、PNAオリゴマーへの結合が弱い機能性分子をより効率的に導入する方法に対する要求は依然として大きいものである。
【0021】
【特許文献1】
ピーター・イー・ニールセンら(Peter E. Nielsen et al.) 国際公開第98/5295 A1 号パンフレット。
【特許文献2】
ハンス−ゲオルゲ・バッツら(Hans−georg Batz et al.) 国際公開第98/37232 A2号公報。
【非特許文献1】
ティー・エイ・トランら(T. A. Tran et al.)「ペプチド研究ジャーナル」(”J. Pept. Res.”)、1999年、第53巻、p.134−145。
【非特許文献2】
ジェスパー・ローゼら(Jesper Lohse et al.)「バイオコンジュゲート化学」(”Bioconjugate Chem.”)、1997年、第8巻、p.503−509。
【非特許文献3】
ブルース・アルミタージら(Bruce Armitage et al.) 「核酸研究」(”Nucleic Acid Res.”)、1998年、第26巻、p.715−720。
【非特許文献4】
オリバー・ザイツ(Oliver Seitz)「テトラヘドロン・レターズ」(”Tetrahedron Letters”) 1999年 第40巻、p.4161−4164。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明は、コストパフォーマンスに優れ、かつあらゆる機能性分子を超高速に導入することができる、機能性PNAの新規合成方法およびそれに用いる化合物、ならびに新規機能性PNAを提供することを目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】
上記課題に鑑み研究を重ねた結果、本発明者らは、新たな前駆体的PNAモノマーユニットを用いることによって、驚くべきことに、従来法における前記課題が克服され、かつより広範にわたる機能性PNAを合成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0024】
すなわち、本発明は、機能性PNAオリゴマーを製造するための方法であって、チミンまたは保護基によって保護されたアデニン、グアニンもしくはシトシン、Cbz基を有するPNAオリゴマーの前記Cbz基を、PNAオリゴマーを担体レジンから切り出した後に機能性分子によって置換し、前記保護基の脱保護を行う工程を含む、前記方法に関する。
また、本発明は、PNAオリゴマーが、さらなる機能性分子を有する、前記方法に関する。
【0025】
さらに、本発明は、Fmoc−ω−アミノ酸−BocPNA−OHとCbz−ω−アミノ酸−BocPNA−OHとを反応させた後に、Fmoc基を機能性分子によって置換して、さらなる機能性分子を有するPNAオリゴマーを得る工程を含む、前記方法に関する。
また、本発明は、Q−ω−アミノ酸−BocPNA−OH(Qは機能性分子を表す)をPNAオリゴマーに導入することによって、さらなる機能性分子を有するPNAオリゴマーを得る工程を含む、前記方法に関する。
【0026】
さらに、本発明は、Cbz−ω−アミノ酸−BocPNA−OHが、Cbz−ω−アミノ酸ペンタフルオロフェニルエステルとBocPNA−OHとの反応によって製造されたものである、前記方法に関する。
また、本発明は、Cbz−ω−アミノ酸ペンタフルオロフェニルエステルが、Cbz−ω−アミノ酸とペンタフルオロフェノールとの反応によって製造されたものである、前記方法に関する。
【0027】
さらにまた、本発明は、機能性分子が、光放出性分子、光消失性分子、膜透過性機能性分子、臓器選択性機能性分子、殺菌性機能性分子、分子認識性機能性分子、光架橋機能性分子、光増感機能性分子、DNA結合性分子およびDNA切断機能性分子から選択された1種または2種以上である、前記方法に関する。
またさらに、本発明は、機能性分子が、光放出性分子および光消失性分子を含む、前記方法に関する
また、本発明は、光放出性分子が、FITC、Naphthalimide、Flavin、FAM、Rhodamine、TAMRA、ROX、PyreneおよびCoumarineであり、光消失性分子がDabcyl、HABA、NDIまたはAzoである、前記方法に関する。
【0028】
そして、本発明は、機能性分子が、光放出性分子および膜透過性機能性分子を含む、前記方法に関する
そしてまた、本発明は、光放出性分子が、FITC、Naphthalimide、Flavin、FAM、Rhodamine、TAMRA、ROX、PyreneおよびCoumarineであり、膜透過性機能性分子が水溶性アミノ酸である、前記方法に関する。
そしてさらに、本発明は、アデニン、グアニンまたはシトシンを保護する保護基が、Cbz基である、前記方法に関する。
また、本発明は、PNAオリゴマーの合成が、tBoc法用固相担体を用いたPNA鎖における縮合・伸長を含む、前記方法に関する。
さらに、本発明は、tBoc法用固相担体がMBHAである、前記方法に関する。
【0029】
また、本発明は、Cbz基の機能性分子による置換が、縮合剤HATU、HBTU、DCCまたは機能性分子のペンタフルオロフェニルエステル誘導体やN−ヒドロキシスクシンイミドエステル誘導体との縮合によって行われる、前記方法に関する。
さらに、本発明は、Fmoc基の機能性分子による置換が、Fmoc基をピペリジン処理によって選択的に脱保護して得られた1級アミノ基との脱水縮合によって行われる、前記方法に関する。
【0030】
またさらに、本発明は、Fmoc−ω−アミノ酸−BocPNA−OHが、下記一般式(I)
【化13】
(式中、nは1〜15までの整数を表す)で表される化合物である、前記方法に関する。
【0031】
さらにまた、本発明は、Cbz−ω−アミノ酸−BocPNA−OHが、下記一般式(I’)
【化14】
(式中、nは1〜15までの整数を表す)で表される化合物である、前記方法に関する。
【0032】
そして、本発明は、Q−ω−アミノ酸−BocPNA−OHが、下記一般式(I’’)
【化15】
(式中、Qは機能性分子を表し、nは1〜15までの整数を表す)で表される化合物である、前記方法に関する。
【0033】
また、本発明は、下記一般式(II)
【化16】
(式中、Bは、互いに独立し、同一または異なって、アデニン、グアニン、シトシンまたはチミンであり、Rは、互いに独立し、同一または異なって、Fmoc基、機能性カルボン酸誘導体または水素原子であり、R1は、水素原子、水酸基または機能性カルボン酸誘導体であり、a〜kは0〜10の整数であり、X1〜X7、Y1〜Y4およびZ1〜Z3はいずれも0以上の整数であり、X1+X2+X3+X4+X5+X6+X7>0であり、Y1+Y2+Y3+Y4>0であり、Z1+Z2+Z3>0である。ただし、X6+Z3+X7+Y4≠0であり、R1が水酸基の場合、R1に結合している−NH−は−CO−である。)
で表される化合物に関する。
【0034】
また、本発明は、aが0〜3の整数であり、bが0〜5の整数であり、h、lおよびkの少なくとも1つが4である、前記化合物に関する。
さらに、本発明は、X1=1であり、X2=0または1であり、X3=X4=0である、前記化合物に関する。
また、本発明は、Y1、Y2およびY4が0または1であり、Y3=0である、前記化合物に関する。
【0035】
さらに、本発明は、機能性分子が、光放出性分子、光消失性分子、膜透過性機能性分子、臓器選択性機能性分子、殺菌性機能性分子、分子認識性機能性分子、光架橋機能性分子、光増感機能性分子、DNA結合性分子およびDNA切断機能性分子から選択された1種または2種以上である、前記化合物に関する。
また、本発明は、機能性分子が、光放出性分子および光消失性分子を含む、前記化合物に関する。
また、本発明は、光放出性分子が、FITC、Naphthalimide、Flavin、FAM、Rhodamine、TAMRA、ROX、PyreneおよびCoumarineであり、光消失性分子がDabcyl、HABA、NDIまたはAzoである、前記化合物に関する。
さらに、本発明は、機能性分子が、光放出性分子および膜透過性機能性分子を含む、前記化合物に関する。
またさらに、本発明は、R1が水酸基である、前記化合物に関する。
そして、本発明は、R1が機能性カルボン酸誘導体である、前記化合物に関する
【0036】
本発明は、PNA背骨構造にCbz−ω−アミノ酸を導入した前駆体的PNAモノマーユニット、すなわちCbz−ω−アミノ酸−BocPNA−OHをPNAオリゴマーに導入した後、機能性分子をポスト合成的に導入することにより、ほぼ定量的に機能性分子を有する機能性PNAオリゴマーを合成することに成功したものである。
本発明の製造方法においては、少なくとも1個の機能性分子は、PNAオリゴマー上のCbz基(N−ベンジルオキシカルボニル基)を該機能性分子で置換することによって、PNAオリゴマーのレジンからの切り出しの後に導入される。また、さらなる機能性分子を、PNA背骨構造に導入した、他の前駆体的PNAモノマーユニット由来のFmoc基を他の機能性分子によって置換する工程またはPNA背骨構造の一部を、機能性分子を有するPNAモノマーによって構築し、プレ合成的に導入する工程によって導入することができる。
【0037】
上記特徴により、本発明の製造方法においては、導入する機能性分子として市販のsuccinimideエステル等を使用でき、カルボン酸を有する化合物であれば問題なく利用でき且つ定量的に導入できる。しかも、機能性分子を導入したCbz基を有するPNAオリゴマーを担体レジンから切り出した後に、Cbz基の置換によって機能性分子を導入することができるため、本発明の製造方法においては、前記切り出しの条件に耐性を有しない機能性分子を導入することができる。したがって、本発明による製造方法においては、1個または2個以上の機能性分子を有するあらゆる機能性PNAオリゴマーを高収率で得ることができるため、コストパフォーマンスに極めて優れている。
【0038】
また、前記前駆体的PNAモノマーユニットを機能性PNAオリゴマーに導入した後にレジンを分割することにより、それぞれのレジンに異なった機能性分子を導入することもできる。したがって、本発明による製造方法によれば、極めて高速な機能性PNAオリゴマーの合成手法を開発することが可能となる。
【0039】
本発明の方法によって効率的な合成が可能になる機能性PNAオリゴマーの例として、下記一般式(II)
【化17】
(式中、Bは、互いに独立し、同一または異なって、アデニン、グアニン、シトシンまたはチミンであり、Rは、互いに独立し、同一または異なって、Fmoc基、機能性カルボン酸誘導体または水素原子であり、R1は、水素原子、水酸基または機能性カルボン酸誘導体であり、a〜kは0〜10の整数であり、X1〜X7、Y1〜Y4およびZ1〜Z3はいずれも0以上の整数であり、X1+X2+X3+X4+X5+X6+X7>0であり、Y1+Y2+Y3+Y4>0であり、Z1+Z2+Z3>0である。ただし、X6+Z3+X7+Y4≠0であり、R1が水酸基の場合、R1に結合している−NH−は−CO−である。)
で表される化合物において、X1+X2+X3+X4+X5+X6+X7=0であり、R1が水素原子である化合物を挙げることができる。
一般式(II)で表される化合物において、少なくとも1つのRがFmoc基である化合物は、その前記Fmoc基を機能性分子によって置換することによって、少なくとも1つの機能性分子が導入された機能性PNAオリゴマーになる。したがって、前記少なくとも1つのRがFmoc基である化合物は、機能性PNAオリゴマーの前駆体的な化合物である。
【0040】
本発明によれば、前記一般式(II)で表される化合物において同一または異なるあらゆる機能性分子を、任意の複数の位置に導入することも可能となる。すなわち、前記前駆体的PNAモノマーユニットを用いてPNAオリゴマーを導入した後、ピペリジン処理と機能性分子のポスト合成的導入を一括して行うことによるものである。これはPNAオリゴマーの細胞膜透過性機能を向上させるアンテナペディアを高速に設計する上で欠かせないものである。また、本発明の製造方法によれば、光放出性分子と光消失性分子とを有するPNAオリゴマーであるモレキュラービーコンの合成も容易に行うことができる。この点においても、本発明による方法は極めて優れたものである。
【0041】
このように製造される化合物の例として、前記一般式(II)において、X1+X2+X3+X4+X5+X6+X7>0であり、Rが細胞膜透過性分子誘導体であり、R1が機能性カルボン酸誘導体であるものが挙げられる。
【0042】
このプローブは大きく蛍光標識領域・細胞膜透過性機能領域・分子認識領域の3つに分けることができ、それぞれをリンカー部位(X1〜X7の添字付きで表される部分)を介して結合させた形をしている。
蛍光標識化合物は市販のものも、既に本発明者らがPCT出願を行った新規蛍光標識化PNAモノマーユニットも用いることができる。
【0043】
分子認識部位は市販のPNAユニットを用いて合成する。この化合物の特徴は、既に国内特許出願を行っている一般式(I)で表される新規PNAユニットおよび/または一般式(I’’)で表される新規PNAユニットを膜透過性機能領域部に用いていることである。該一般式(I)で表される新規PNAユニットは機能性分子をポスト合成的に導入するために開発された前駆体ユニットであり、これを複数個並べて導入した後、前記したように同一機能性分子を一括導入できることを特徴としている。
【0044】
したがって、本発明によれば、光機能性分子に限定されることない、多種多様な機能性分子を、PNA中に容易かつ極めて効率的に導入することができるようになる。
このような機能性分子として、FITC型、Naphthalimide型、Flavin型、FAM型、Rhodamine型、TAMRA型、ROX型、Pyrene型およびCoumarine型等の光放出性分子、Dabcyl型、HABA型、DNI型およびAzo型等の光消失性分子、水溶性アミノ酸等の膜透過機能性分子、ラクトースやトリスエックス等の臓器選択機能性分子、タナチンやセクロピン等の殺菌機能性分子、Biotin型およびビオローゲン等の分子認識機能性分子、ソラレン等の光架橋機能性分子、ルシフェリン等の光増感機能性分子、ディスタマイシン、ヘキスト33258およびエチジウムブロミド等のDNA結合性分子、ならびにブレオマイシン等のDNA切断機能性分子の各モノマーユニットが挙げられる。
【0045】
すなわち、本発明における「機能性」の語は、光放出性、光消失性、膜透過機能性、臓器選択性機能性、殺菌性機能性、分子認識性機能性、光架橋機能性、光増感機能性、DNA結合性、およびDNA切断機能性から選択された1種または2種以上である等を含む、ある特定の修飾を行うことによって化合物に新たに付与される種々の機能の全てを意味するものである。
そして、本発明の化合物は、特に、式(II)において、
a)aが0〜3の整数であり、bが0〜5の整数であり、h、lおよびkの少なくとも1つが4である化合物、
b)X1=1であり、X2=0または1であり、X3=X4=0である化合物、c)Y1、Y2およびY4が0または1であり、Y3=0である化合物、
である、合成が比較的容易であり、かつ有用性が高いものである。
式(II)の化合物の、遺伝子診断薬およびアンチセンス分子等の機能性素材としての使用は有用である。また、PNAは前記の通り酵素耐性が高いため、アンチセンスの1種であるRNAインターフェレンス(RNAi)の代替物としての使用(PNAi)も有用である。特に、RおよびR1の少なくとも1個が機能性カルボン酸誘導体である化合物の使用は有用である。また、RおよびR1の少なくとも1個が、光放出性分子であり、RおよびR1の少なくとも1個が、光消失性分子である化合物はモレキュラービーコンとして有用である。
さらに、式(II)において、R1が水酸基である化合物は、チップ化が容易に行えるため有用である。
【0046】
【発明の実施の形態】
ここで、本発明による方法の特徴を更に詳細に説明する。
【0047】
本発明による方法は、典型的には下図
【化18】
に示すとおりである(第II法)。
【0048】
必要に応じて、Cbz−ω−アミノ酸とペンタフルオロフェノール(PfpOH)とを反応させて得られるCbz−ω−アミノ酸ペンタフルオロフェニルエステル(Cbz−ω−アミノ酸−OPfp)とBocPNA−OHとから、Cbz−ω−アミノ酸−BocPNA−OHを予め合成する。
以後の工程において用いる該Cbz−ω−アミノ酸−OPfpの溶液を得るには、DMFなどの有機溶媒、またはアセトン等と水とを含む水溶性溶媒したものいずれも好適に用いることができる。前記水溶性溶媒を用いた場合には、精製等の後処理の面におけるメリットを有するものである。
【0049】
Cbz−ω−アミノ酸−BocPNA−OHの例としては、下記一般式(I’)
【化19】
で表される化合物が挙げられる。
【0050】
Cbz−ω−アミノ酸−BocPNA−OHおよび後述するFmoc−ω−アミノ酸−BocPNAは、PNAモノマーユニットの前駆体として機能するため、いずれも前駆体的PNAモノマーユニットと呼ぶことができる。
式(I’)において、nとしては1〜15までの整数を適宜選択できるが、nの値が大きい方が、ハイブリッド形成時の立体的反発(あるいは障害)を軽減する点において好ましい。
次に、前駆体的PNAモノマーユニットである前記Cbz−ω−アミノ酸−BocPNA−OHを用いて、オリゴマーIIaを合成する。具体的には、チミンまたはCbz基(N−ベンジルオキシカルボニル基)等で保護されたアデニン、グアニンもしくはシトシンを有するPNAモノマーユニットを、前駆体的PNAモノマーユニットであるCbz−ω−アミノ酸−BocPNA−OHと反応させ、tBoc法用固相担体を用いてPNA鎖を逐次縮合・伸長せしめる。
【0051】
PNA鎖の縮合においては、予めtBoc基を脱離しておく必要があるが、その方法に制限はなく、一般的な方法が用いられる。それに続く縮合には、HATU、HBTUおよびBOP等の一般的な縮合剤が用いられる。
また、固相担体に関しては、tBoc法用のものであれば特に制限はないが、特にMBHAが好適に用いられる。
【0052】
次に、化合物IIaを担体レジンから切り出し、Cbz基を脱保護してアミノ基とし、化合物IIbを得る。
切り出しおよび脱保護は同時に行ってもよい。この場合、切り出しおよび脱保護の条件に特に制限はない。例えば、TFA/TFMSA/p−cresol/Thioanisole=60/25/10/10のような一般的な条件において好適に行われる。
【0053】
続いて、前記IIbの前記アミノ基に、カルボン酸基を有する機能性分子の活性エステルを脱水縮合してIIcを得る。活性エステルとしては、市販のsuccinimideエステルまたはペンタフルオロフェニルエステルを用いることができる。
前記カルボン酸として特に制限はないが、反応性の点においては脂肪族カルボン酸が芳香族カルボン酸を上回るため、脂肪族カルボン酸を用いると製造の効率が高く好ましい。
【0054】
最後に各塩基の保護基であるCbz基の脱保護を行うことによって、機能性分子基としてRを有する、目的物である機能性PNAオリゴマーIIdを得る。
【0055】
上記のように、本発明による方法においては、従来の機能性モノマー合成に用いる活性エステル化の合成を要する方法とは異なり、機能性分子をそのまま利用できる。また一旦IIaを合成した後に、固相からの切り出しに耐性を有しないものを含む種々の機能性分子が導入可能であるため、従来導入が困難であった機能性分子も、効率的にPNAプローブに導入することが可能である。
さらに、以下のさらなる前駆体的PNAモノマーユニットを用いた本発明の方法によって、従来困難であった高速かつ多様な並列PNAプローブ合成も併せて可能になる。
【0056】
また、Fmoc−ω−アミノ酸−BocPNA−OHを用いる場合の本発明によるオリゴPNAを合成するルートは、典型的には、下図
【化20】
に示すとおりである(第III法)。
【0057】
まず、必要に応じて、下図
【化21】
に示すように、Fmoc−ω−アミノ酸とペンタフルオロフェノール(PfpOH)とを反応させて得られるFmoc−ω−アミノ酸ペンタフルオロフェニルエステル(Fmoc−ω−アミノ酸−OPfp)とBocPNA−OHとから、Fmoc−ω−アミノ酸−BocPNA−OHを合成する。
以後の工程において用いる該Fmoc−ω−アミノ酸−OPfpの溶液を得るには、DMFなどの有機溶媒、またはアセトン等と水とを含む水溶性溶媒したものいずれも好適に用いることができる。前記水溶性溶媒を用いた場合には、精製等の後処理の面におけるメリットを有するものである。
【0058】
前記Fmoc−ω−アミノ酸−OPfpは、Fmoc−ω−アミノ酸とPfpOHをDMF溶液中にてDCCを加えて反応させることによって、例えば下記式
【化22】
(式中、nは1〜15の整数を表す)
で表されるものが得られる。
【0059】
次いで、これにBocPNA−OHのDMF溶液にジイソプロピルエチルアミンとともに添加し、Fmoc−ω−アミノ酸−BocPNA−OHを得る。
【0060】
Fmoc−ω−アミノ酸−BocPNA−OHは、PNAモノマーユニットの前駆体として機能するため、Cbz−ω−アミノ酸−BocPNA−OHと同様に前駆体的PNAモノマーユニットと呼ぶことができる。
式(I)において、nとしては1〜15までの整数を適宜選択できるが、nの値が大きい方が、ハイブリッド形成時の立体的反発(あるいは障害)を軽減する点において好ましい。
次に、下図
【化23】
に示すように、前駆体的PNAモノマーユニットを用いて、オリゴマーIIIaを合成する。具体的には、チミンまたはCbz基(N−ベンジルオキシカルボニル基)等で保護されたアデニン、グアニンもしくはシトシンを有するPNAモノマーユニットを、前駆体的PNAモノマーユニットと反応させ、tBoc法用固相担体を用いてPNA鎖を逐次縮合・伸長せしめる。なお、前駆体的PNAモノマーユニットの導入の順番に制限はない。
【0061】
PNA鎖の縮合においては、予めtBoc基を脱離しておく必要があるが、その方法に制限はなく、一般的な方法が用いられる。それに続く縮合には、HATU、HBTUおよびBOP等の一般的な縮合剤が用いられる。
また、固相担体に関しては、tBoc法用のものであれば特に制限はないが、特にMBHAが好適に用いられる。
【0062】
次に、下図
【化24】
に示すように、ピペリジン処理によってFmoc基を選択的に脱保護してアミノ基とし、IIIbを得て、さらに、下図
【化25】
に示すように、該IIIbの前記アミノ基にカルボン酸基を有する機能性分子の活性エステルを脱水縮合してIIIcを得る。
前記カルボン酸として特に制限はないが、反応性の点においては脂肪族カルボン酸が芳香族カルボン酸を上回るため、脂肪族カルボン酸を用いると製造の効率が高く好ましい。
【0063】
また、ピペリジン処理によるFmoc基の脱保護は、ある程度の時間をかけることによって好適に行われる。特に、20〜40分が好適であり、最も好適には30分であった。
縮合剤の種類に特に制限はなく、前記PNA鎖の縮合と同様に、HATU、HBTUおよびBOP等の一般的な縮合剤が用いられる。
【0064】
なお、機能性分子の導入は、Fmoc−ω−アミノ酸−BocPNA−OHを縮合した後、直ちに行ってもよく(第1法)、あるいは、Fmoc−ω−アミノ酸−BocPNA−OHを含む全てのPNAモノマーユニットを逐次縮合した後に行ってもよい(第2法)。
【0065】
次に、下図
【化26】
に示すように、担体レジンからの切り出しとCbz基の脱保護を行うことによって、機能性分子基としてRおよびR’を有する、機能性分子を有する化合物IIIdを経て目的物であるIIIeを得る。
切り出しおよび脱保護は同時に行ってもよい。この場合、Fmoc基の脱保護の後に行われる限りにおいてはその条件に特に制限はない。例えば、TFA/TFMSA/p−cresol/Thioanisole=60/25/10/10のような一般的な条件において好適に行われる。
【0066】
次に、本発明の製造方法においては、上記のFmoc基を機能性分子による置換することによって機能性分子の導入を行う以外に、PNA背骨構造の一部を、機能性分子を有するPNAモノマー、すなわちさらなる別異の前駆体的PNAモノマーユニットによって構築し、プレ合成的に機能性分子を導入することもできる(第V法)。
この場合の典型的な合成経路は以下に示すとおりである:
【化27】
【0067】
すなわち、前記Fmoc−ω−アミノ酸−BocPNA−OHを用いる方法と比べると、IIIaおよびIIIbに相当する化合物を経ずに、機能性PNAオリゴマーを製造することができる。なお、各PNAモノマーユニットを導入する順番に制限はない。
機能性分子を有するPNAモノマーは、例えば(液相法)によって製造することができる。該PNAモノマーとして、式(I’’):
【化28】
(式中、Qは機能性分子を表し、nは1〜15までの整数を表す)
の化合物が例として挙げられる。
また、式Vaの化合物を得るためには、従来の固相法を用いる。その後の工程は、前記Fmoc−ω−アミノ酸−BocPNA−OHを用いる場合と同様に行うことによって、目的物Vcを得ることができる。
【0068】
さらに下図に示すように、式(I)の化合物、式(I’)の化合物および式(I”)の化合物を用いて、機能性PNAオリゴマーを合成することができる(第VI法)。
【化29】
この場合も各PNAモノマーユニットを導入する順番に制限はない。
また、前記Fmoc−ω−アミノ酸−BocPNA−OHのみを用いる方法(第I法)および前記Fmoc−ω−アミノ酸−BocPNA−OHと前記Q−ω−アミノ酸−BocPNA−OHとを用いる方法(第IV法)については、既に特許出願済みである(特願2002−121667)。
【0069】
本発明による方法によれば、下記一般式(II)
【化30】
(式中、Bは、互いに独立し、同一または異なって、アデニン、グアニン、シトシンまたはチミンであり、Rは、互いに独立し、同一または異なって、Fmoc基、機能性カルボン酸誘導体または水素原子であり、R1は、水素原子、水酸基または機能性カルボン酸誘導体であり、a〜kは0〜10の整数であり、X1〜X7、Y1〜Y4およびZ1〜Z3はいずれも0以上の整数であり、X1+X2+X3+X4+X5+X6+X7>0であり、Y1+Y2+Y3+Y4>0であり、Z1+Z2+Z3>0である。ただし、X6+Z3+X7+Y4≠0であり、R1が水酸基の場合、R1に結合している−NH−は−CO−である。)
で表される化合物等が好適に合成される。
【0070】
本発明の方法によって、式(II)で表される化合物として、例えば、RおよびR1の少なくとも1個が、光機能性分子であり、RおよびR1の少なくとも1個が、光消失性分子である化合物、R1が水酸基である化合物またはR1が機能性カルボン酸誘導体、特にR1が光機能性カルボン酸誘導体である化合物等が好適に合成される。
また、R1がaが0〜3の整数であり、bが0〜5の整数であり、h、lおよびkの少なくとも1つが4である化合物、X1=1であり、X2=0または1であり、X3=X4=0である化合物、Y1、Y2およびY4が0または1であり、Y3=0である、化合物等も好適に合成される。
なお、一般式(II)で表される化合物において、少なくとも1つのRがFmoc基である化合物も、上記製造方法によって合成される、機能性PNAオリゴマーの前駆体的な化合物である。
【0071】
また、前記一般式(II)で表される化合物において、複数の機能性分子が導入されたものとして、例えば、RまたはR1が細胞膜透過性機能性分子誘導体であるものが好適に合成される。このような化合物は、典型的には、Rが細胞膜透過性機能性分子誘導体等であり、R1が光機能性分子等の機能性カルボン酸誘導体等であるもの、すなわち、末端部を含む複数部位に機能性分子が導入され、それらによって複数の機能が付与された化合物である。このような化合物は、例えば下記のように模式化することができる。
【化31】
【0072】
このような化合物は、例えば前記一般式(II)において、X1=X2=Y1=1であり、かつZ1≧2である化合物である。このような化合物は合成のしやすさおよび合成コストの面等において好適である。
【0073】
リンカー部位を導入することによって、個々の機能性部位および塩基配列認識領域の干渉を防ぎ、分子の機能をより確実なものにすることができる。本明細書におけるPNA、PNAモノマーおよびPNAオリゴマーの語には、リンカー部位をその末端および/または内部に含むものも包含される。
これらの部位または領域間の相互干渉を防ぐための部位としては、前記リンカー部位のみならず、一般式(II)におけるf〜hを、所望に応じて選択することによっても可能である。
リンカー部位を構成する基としては、直鎖状または分枝状の炭化水素およびそれらのエーテル体等が挙げられるが、直鎖状炭化水素基は導入の容易さおよびコストなどの面から好適であり、特に炭素数1〜6の直鎖状炭化水素基が好適である。また、エーテル体は、その汎用性において好適である。
【0074】
前記複数の機能性分子が導入された化合物は、例えばKoch, T.; Hansen, H.F.; Andersen, P.; Larsen, T.; Batz, H.G.; Otteson, K.; Orum, H. J. PeptideRes. 1997, 49, 80−88.を利用して好適に合成される。
塩基配列認識部位は、市販の各種PNAモノマーを用いて固相合成によりオリゴマー化することができる。リンカー部位には、市販のBoc−7−アミノヘプタン酸、Boc−6−アミノカプロン酸等を用いることができる。
【0075】
1の機能性分子として光機能性分子を導入すれば、蛍光標識することが可能であり、かつ他の機能も有する化合物を合成することができる。このような蛍光標識部位として、市販のFITC、FAM、ROX、TAMRAまたはPyrene等の市販の活性エステル型蛍光標識化合物を用いて、多様な蛍光発光波長を選択することが可能であるが、導入される蛍光標識化合物はこれらに限定されるものではない。
【0076】
本発明の化合物に導入し得る他の機能性の例としては、膜透過性機能が挙げられる。このような膜透過性機能部位は、前記一般式(I)で表される化合物を用いることにより、同様に導入することができる。膜透過性を向上させることができる機能性分子としてアルギニンが挙げられるが、リシンおよびセリン等の他の水溶性アミノ酸も好適に用いることができる。
【0077】
また、Cbzアミノ酸ユニットとFmocアミノ酸ユニットおよび/または機能性分子を有するアミノ酸ユニットを用いることによって、複数個のアミノ酸を導入することも可能である。しかしながら、上記2化合物は本発明による膜透過性機能を有する蛍光PNAプローブのモデル化合物であり、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0078】
これらのプローブの特徴は、「全てPNA型になっているので、完全な酵素耐性を有すること」である。すなわち、これまでの膜透過性機能を有するプローブは、PNAと膜透過性機能を有するペプチド鎖あるいはリン脂質を共有結合させたものが主流であったが、これらの既知のプローブは優れた膜透過性機能を有するものの、一旦細胞内に入ると酵素群によりペプチド鎖あるいはリン脂質が分解されることが予想される。したがって、これらは、ターゲットを認識していない分解を受けたプローブを洗浄過程で完全に取り除くことができないという欠点を有する。
【0079】
これに対して、今回設計したプローブは、細胞内においても酵素分解を受けないため、ターゲットを認識していないプローブは洗浄過程で完全に取り除かれるため、正確な遺伝子発現量の定量を可能とするものである。
なお、これらの機能性を有する化合物以外にも、ラクトースやトリスエックス等の臓器選択性機能性分子、タナチンやセクロピン等の殺菌性機能性分子およびビオローゲン等の分子認識性機能性分子等も、本発明によれば制限なく導入することが可能であり、そのような化合物を、大量に低コストで実用に供することが可能になる。
【0080】
さらに、本発明によるプローブには、光放出性分子および光消失性分子とを併せて有するモレキュラービーコンも包含される。モレキュラービーコンとは塩基配列を特異的に認識したことを蛍光発光により検出するプローブであって、遺伝子工学において重要な化合物である。
従来のモレキュラービーコンは、DNAを用いていたため、酵素耐性が低く保存に適さなかったが、本発明によるプローブはPNAバックボーンを用いているため、より安定性が高いものである。
前記光放出性分子としては、FITC、Naphthalimide、Flavin、FAM、Rhodamine、TAMRA、ROX、PyreneおよびCoumarine等を挙げることができ、光消失性分子としてDabcyl、HABA、NDIおよびAzo等を挙げることができる。
【0081】
【実施例】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲はこれに限られるものではない。
(実施例1)第III法に関する例(1)
【化32】
【0082】
(1)前駆体的PNAモノマーユニットの固相担体への導入
まず、固相担体MBHA(50 mg)にCbz−C4−BocPNA−OH(9.0 mg、20 mmol)、縮合剤HBTU(7.6 mg、20 mmol)とDIEA(7.0 mL、20 mmol)を用いて伸長反応を行った。縮合反応が定量的にいっているか否かを調べるために、ニンヒドリン反応を利用した。
(2)PNAオリゴマーの伸長反応
次いで、グアニンPNAモノマーユニット(10.8 mg、20 mmol)、縮合剤HBTU(7.6 mg、20 mmol)とDIEA(7.0 mL、20 mmol)を用いて逐次伸長反応を行った。他のPNAモノマーユニットも同様にして縮合し、伸長反応を行った。
(3)前駆体的PNAモノマーユニットの導入)
さらに、Fmoc−C5−BocPNA−OH(22.2 mg、20 mmol)を、縮合剤HBTU(7.6 mg、20 mmol)とDIEA(7.0 mL、20 mmol)を用いて縮合させた。
(機能性分子の固相合成時ポスト合成的導入)全てのユニットを逐次縮合した後、ピペリジン処理(20% piperidine in DMF、室温3分)してFmoc基を脱保護した。次いで、機能性カルボン酸誘導体としてFITC(15.6 mg、40 mmol)をTEA(5.6 mL、40 mmol)を用いて縮合し、ポスト合成的に機能性分子を導入した。
(4)固相担体からの切り出し
切り出し試薬(TFA/TFMSA/p−cresol/thioanisol=60/25/10/10)により固相担体からの切り出しとCbz基の脱保護を同時に行い、後処理して下記化合物を得た。
【化33】
【0083】
(5)固相担体から切り出した後の機能性分子のポスト合成的導入
精製した上記化合物に、機能性カルボン酸誘導体としてDabcyl−OSu(14.6 mg、40 mmol)をTEA(13.9 mL、40 mmol)を用いて縮合し、ポスト合成的に機能性分子を導入した。反応後、HPLCによる精製を行い、目的とする下記化合物を得た。
【化34】
【0084】
(実施例2) 第III法に関する例(2)
(1)前駆体的PNAモノマーユニットの固相担体への導入
まず、固相担体MBHA(50 mg)にFmoc−C5−BocPNA−OH(22.2 mg、20 mmol)を、縮合剤HBTU(7.6 mg、20 mmol)とDIEA(7.0 mL、20 mmol)を用いて縮合させた。縮合反応が定量的にいっているか否かを調べるために、ニンヒドリン反応を利用した。
(2)PNAオリゴマーの伸長反応)
次いで、グアニンPNAモノマーユニット(10.8 mg、20 mmol)、縮合剤HBTU(7.6 mg、20 mmol)とDIEA(7.0 mL、20 mmol)を用いて逐次伸長反応を行った。他のPNAモノマーユニットも同様にして縮合し、伸長反応を行った。
(3)前駆体的PNAモノマーユニットの導入)さらに、Cbz−C5−BocPNA−OH(9.0mg、20 mmol)、縮合剤HBTU(7.6 mg、20 mmol)とDIEA(7.0 mL、20 mmol)を用いて伸長反応を行った。この過程を2回繰り返した。
(4)機能性分子の固相合成時ポスト合成的導入
全てのユニットを逐次縮合した後、ピペリジン処理(20% piperidine in DMF、室温3分)してFmoc基を脱保護した。次いで、機能性カルボン酸誘導体としてFAM−OSu(15.6 mg、40 mmol)をTEA(5.6 mL、40 mmol)を用いて縮合し、ポスト合成的に機能性分子を導入した。
(5)固相担体からの切り出し
切り出し試薬(TFA/TFMSA/p−cresol/thioanisol=60/25/10/10)により固相担体からの切り出しとCbz基の脱保護を同時に行い、後処理して機能性分子を導入する前の化合物を得た。
(6)固相担体から切り出した後の機能性分子のポスト合成的導入
機能性カルボン酸誘導体としてDabcyl−OSu(14.6 mg、40 mmol)をTEA(13.9 mL、40 mmol)を用いて縮合し、ポスト合成的に機能性分子を導入した。反応後、HPLCによる精製を行い、目的とする下記化合物を得た。
【0085】
【化35】
【0086】
(実施例3) 第VI法に関する例
【化36】
【0087】
(1)前駆体的PNAモノマーユニットの固相担体への導入
まず、固相担体MBHA(50 mg)にFmoc−C5−BocPNA−OH(22.2 mg、20 mmol)、縮合剤HBTU(7.6 mg、20 mmol)とDIEA(7.0 mL、20 mmol)を用いて伸長反応を行った。縮合反応が定量的にいっているか否かを調べるために、ニンヒドリン反応を利用した。
(2)PNAオリゴマーの伸長反応
次いで、チミンPNAモノマーユニット(7.7 mg、20 mmol)、Cbz−Gly−BocPNA−OH(8.2 mg、20 mmol)、あるいはシトシンPNAモノマーユニット(10.1 mg、20 mmol)を、縮合剤HBTU(7.6 mg、20 mmol)とDIEA(7.0 mL、20 mmol)を用いて逐次縮合し、PNAオリゴマーの伸長反応を行った。
(3)機能性分子の固相合成時ポスト合成的導入
ピペリジン処理(20% piperidine in DMF、室温3分)してFmoc基を脱保護した。次いで、機能性カルボン酸誘導体としてAzo−OSu(13.8 mg、40 mmol)をTEA(13.9 mL、40 mmol)を用いて縮合し、ポスト合成的に機能性分子を導入した。(PNAオリゴマーの伸長反応)さらに、Fluorescein−C3−BocPNA−OH(13.9 mg、20mmol)を、縮合剤HBTU(7.6 mg、20 mmol)とDIEA(7.0 mL、20 mmol)を用いて再度縮合し、PNAオリゴマーの伸長反応を行った。
(固相担体からの切り出し)切り出し試薬(TFA/TFMSA/p−cresol/thioanisol=60/25/10/10)により固相担体からの切り出しとCbz基の脱保護を同時に行い、後処理して下記化合物を得た。
【0088】
【化37】
【0089】
【発明の効果】
本発明によれば、光機能性分子に限定されることない多種多様な機能性分子を、PNA中に容易に導入することができ、多種多様な機能性分子をPNA中に容易かつ効率的に導入することができ、遺伝子治療などに用いられる種々のPNAの構築が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】DNAとPNAの構造および荷電の状況の違いを表す図である。
【図2】2種類のPNAモノマーユニットの構造を表す図である。
Claims (29)
- 機能性PNAオリゴマーを製造するための方法であって、チミンまたは保護基によって保護されたアデニン、グアニンもしくはシトシン、Cbz基を有するPNAオリゴマーの前記Cbz基を、PNAオリゴマーを担体レジンから切り出した後に機能性分子によって置換し、前記保護基の脱保護を行う工程を含む、前記方法。
- PNAオリゴマーが、さらなる機能性分子を有する、請求項1に記載の方法。
- Fmoc−ω−アミノ酸−BocPNA−OHとCbz−ω−アミノ酸−BocPNA−OHとを反応させた後に、Fmoc基を機能性分子によって置換して、さらなる機能性分子を有するPNAオリゴマーを得る工程を含む、請求項2に記載の方法。
- Q−ω−アミノ酸−BocPNA−OH(Qは機能性分子を表す)をPNAオリゴマーに導入することによって、さらなる機能性分子を有するPNAオリゴマーを得る工程を含む、請求項2に記載の方法。
- Cbz−ω−アミノ酸−BocPNA−OHが、Cbz−ω−アミノ酸ペンタフルオロフェニルエステルとBocPNA−OHとの反応によって製造されたものである、請求項3または4に記載の方法。
- Cbz−ω−アミノ酸ペンタフルオロフェニルエステルが、Cbz−ω−アミノ酸とペンタフルオロフェノールとの反応によって製造されたものである、請求項5に記載の方法。
- 機能性分子が、光放出性分子、光消失性分子、膜透過性機能性分子、臓器選択性機能性分子、殺菌性機能性分子、分子認識性機能性分子、光架橋機能性分子、光増感機能性分子、DNA結合性分子およびDNA切断機能性分子から選択された1種または2種以上である、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
- 機能性分子が、光放出性分子および光消失性分子を含む、請求項7に記載の方法。
- 光放出性分子が、FITC、Naphthalimide、Flavin、FAM、Rhodamine、TAMRA、ROX、PyreneおよびCoumarineであり、光消失性分子がDabcyl、HABA、NDIまたはAzoである、請求項7または8に記載の方法。
- 機能性分子が、光放出性分子および膜透過性機能性分子を含む、請求項7に記載の方法。
- 光放出性分子が、FITC、Naphthalimide、Flavin、FAM、Rhodamine、TAMRA、ROX、PyreneおよびCoumarineであり、膜透過性機能性分子が水溶性アミノ酸である、請求項10に記載の方法。
- アデニン、グアニンまたはシトシンを保護する保護基が、Cbz基である、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
- PNAオリゴマーの合成が、tBoc法用固相担体を用いたPNA鎖における縮合・伸長を含む、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
- tBoc法用固相担体がMBHAである、請求項13に記載の方法。
- Cbz基の機能性分子による置換が、縮合剤HATU、HBTU、DCCまたは機能性分子のペンタフルオロフェニルエステル誘導体やN−ヒドロキシスクシンイミドエステル誘導体との縮合によって行われる、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
- Fmoc基の機能性分子による置換が、Fmoc基をピペリジン処理によって選択的に脱保護して得られた1級アミノ基との脱水縮合によって行われる、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
- 下記一般式(II)
(式中、Bは、互いに独立し、同一または異なって、アデニン、グアニン、シトシンまたはチミンであり、Rは、互いに独立し、同一または異なって、Fmoc基、機能性カルボン酸誘導体または水素原子であり、R1は、水素原子、水酸基または機能性カルボン酸誘導体であり、a〜kは0〜10の整数であり、X1〜X7、Y1〜Y4およびZ1〜Z3はいずれも0以上の整数であり、X1+X2+X3+X4+X5+X6+X7>0であり、Y1+Y2+Y3+Y4>0であり、Z1+Z2+Z3>0である。ただし、X6+Z3+X7+Y4≠0であり、R1が水酸基の場合、R1に結合している−NH−は−CO−である。)
で表される化合物。 - aが0〜3の整数であり、bが0〜5の整数であり、h、lおよびkの少なくとも1つが4である、請求項20に記載の化合物。
- X1=1であり、X2=0または1であり、X3=X4=0である、請求項20または21に記載の化合物。
- Y1、Y2およびY4が0または1であり、Y3=0である、請求項20〜22のいずれかに記載の化合物。
- 機能性分子が、光放出性分子、光消失性分子、膜透過性機能性分子、臓器選択性機能性分子、殺菌性機能性分子、分子認識性機能性分子、光架橋機能性分子、光増感機能性分子、DNA結合性分子およびDNA切断機能性分子から選択された1種または2種以上である、請求項20〜23のいずれかに記載の化合物。
- 機能性分子が、光放出性分子および光消失性分子を含む、請求項24に記載の化合物。
- 光放出性分子が、FITC、Naphthalimide、Flavin、FAM、Rhodamine、TAMRA、ROX、PyreneおよびCoumarineであり、光消失性分子がDabcyl、HABA、NDIまたはAzoである、請求項25に記載の化合物。
- 機能性分子が、光放出性分子および膜透過性機能性分子を含む、請求項24に記載の化合物。
- R1が水酸基である、請求項20〜27のいずれかに記載の化合物。
- RおよびR1の少なくとも1個が機能性カルボン酸誘導体である、請求項20〜28のいずれかに記載の化合物。
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