JP2004196680A - 新規fki−0929物質およびその製造法 - Google Patents
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Abstract
【課題】FKI−0929−B物質およびFKI−0929−C物質がラノステロール合成酵素に対して阻害活性を示すことにより、ヒトのコレステロール蓄積に起因する疾病の予防剤、治療剤や抗真菌剤として臨床できることが期待される。
【解決手段】糸状菌に属し、FKI−0929−B物質及び/又はFKI−0929−C物質を産生する能力を有する微生物を培地に培養して、その培養物中にFKI−0929−B物質及び/又はFKI−0929−C物質を蓄積せしめ、該培養物からFKI−0929−B物質及び/又はFKI−0929−C物質を採取する。
【選択図】 なし
【解決手段】糸状菌に属し、FKI−0929−B物質及び/又はFKI−0929−C物質を産生する能力を有する微生物を培地に培養して、その培養物中にFKI−0929−B物質及び/又はFKI−0929−C物質を蓄積せしめ、該培養物からFKI−0929−B物質及び/又はFKI−0929−C物質を採取する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は脂質代謝阻害活性を有し、ヒトのコレステロール蓄積に起因する疾病の予防剤または治療剤、あるいは抗真菌剤として有用な新規FKI−0929物質、該物質の組成物およびそれらの製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ステロールとしてヒトの場合はコレステロールが、また真菌の場合はエルゴステロールが生合成されるが、これらステロール生合成に関与する酵素群は、ヒトの高脂血症や動脈硬化症の予防、治療剤の開発や抗真菌剤の開発のターゲットとして認識されている(Tomoda,H.and Omura,S.:Enzyme Technology for Pharmaceutical andBiological Applications(編集、Kirst,A.ら)、第15章 pp.343〜378,Marcel Dekker,Inc.,NY,2001年)。
【0003】
実際、プラバスタチンを代表とするスタチン系化合物は、コレステロール生合成の律速酵素の一つであるヒドロキシメチルグルタリル−コエンザイム・エー(HMG−CoA)還元酵素を特異的に阻害し、血中コレステロールを低下させ動脈硬化症の予防、治療薬として臨床的に用いられている。しかしながら、現在使用されているスタチン系化合物の場合は、生体にとって必須の成分である非ステロール化合物群の生合成も阻害されることが懸念されることから、生合成中間体であるスクアレン以降の酵素がより優れた薬剤標的と期待されている。
【0004】
また、真菌感染症の治療に用いられている2,4−ジフルオロ−α,α−ビス−(1H,1,2,4−トリアゾル−1−イルメチル)ベンジルアルコール(一般名:フルコナゾール;アイシーエヌファーマスーティカルズ社製、米国)、或いは1−[2−(2,4−ジクロロベンジルオキシ)−2−(2,4−ジクロロフェニル)エチル]イミダゾール(一般名:ミコナゾール;シグマ社製、米国)などのアゾール系化合物はエルゴステロールのC−14脱メチル化反応を阻害する抗真菌剤として実用化されている。しかしながら、アゾール系抗真菌剤の長期間または反復投与による耐性菌の出現が問題となっており、安全性が高く、耐性菌の出現頻度の低い薬剤の開発が社会的急務とされていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
かかる実情において、ラノステロール合成酵素は2,3−オキシドスクアレンを基質として閉環反応によりラノステロールを生成する酵素であり、本酵素を阻害する医薬品は未だ実用化に至っていない。従って、本酵素を阻害する薬剤の発見は、上記の課題を解決し得ると考えられ、高脂血症や動脈硬化症によって惹起される心筋梗塞や脳卒中などの新しい予防剤または治療剤、あるいは新しい抗真菌剤として臨床できることが期待される。
本発明の目的は、ラノステロール合成酵素に対して阻害作用を有することにより、ヒトのコレステロール蓄積に起因する疾病の予防剤または治療剤や抗真菌剤として臨床できる新規FKI−0929物質、該物質の組成物およびそれらの製造法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、微生物の生産する代謝産物について種々研究を続けた結果、植物の表面より新たに分離されたFKI−0929菌株の培養物中に、ラノステロール合成酵素阻害活性を有する物質が産生されることを見いだした。次いで、該培養物中からラノステロール合成酵素を阻害する活性物質を分離、精製したところ、後記[I]および[II]で表される化学構造を有する物質を見いだした。これらの物質は従来まったく知られていないことから、各々本物質をFKI−0929−B物質およびFKI−0929−C物質(FKI−0929−B物質の立体異性体)と称することにし、その総称をFKI−0929物質と称することにした。
本発明はかかる知見に基づいて完成されたものであって、下記式[I]
【0007】
【化5】
で表されるFKI−0929−B物質を提供するものである。
本発明は更に、下記式[II]
【0008】
【化6】
で表される新規FKI−0929−C物質を提供するものである。
本発明は更に、特に下記式[I]
【0009】
【化7】
で表される新規FKI−0929−B物質及び特に下記式[II]
【0010】
【化8】
で表されるFKI−0929−C物質とからなる新規FKI−0929物質の組成物を提供するものである。
【0011】
本発明は更に、糸状菌に属し、FKI−0929−B物質を生産する能力を有する微生物を培地で培養し、培養液中にFKI−0929−B物質を蓄積せしめ、該培養物からFKI−0929−B物質を採取するFKI−0929−B物質の製造法を提供するものである。
【0012】
本発明は更に、糸状菌に属し、FKI−0929−C物質を生産する能力を有する微生物を培地で培養し、培養液中にFKI−0929−C物質を蓄積せしめ、該培養物からFKI−0929−C物質を採取するFKI−0929C物質の製造法を提供するものである。
【0013】
本発明は更に、糸状菌に属し、FKI−0929−B物質及び/又はFKI−0929−C物質を生産する能力を有する微生物を培地で培養し、培養液中にFKI−0929−B物質及び/又はFKI−0929−C物質を蓄積せしめ、該培養物からFKI−0929−B物質及び/又はFKI−0929−C物質を採取するFKI−0929物質の組成物の製造法を提供するものである。
【0014】
本発明は更に、糸状菌に属し、FKI−0929−B物質及び/又はFKI−0929−C物質を生産する能力を有する微生物が、Fungal strain FKI−0929(FERM P−19147)である化合物又は組成物を提供するものである。。
【0015】
本発明は更に、糸状菌に属し、FKI−0929−B物質及び/又はFKI−0929−C物質を生産する能力を有する微生物が、Fungal strain FKI−0929(FERM P−19147)である化合物又は組成物の製造法を提供するものである。
【0016】
本発明は更に、糸状菌に属し、FKI−0929−B物質及び/又はFKI−0929−C物質又はこれらの組成物を生産する能力を有する微生物が、糸状菌FKI−0929株である微生物を提供するものであり、該微生物がFungal strain FKI−0929(FERM P−19147)である微生物を提供するものである。
【0017】
本発明は更に、ラノステロール合成酵素阻害活性を有する化合物または組成物を提供するものであり、該化合物または組成物はヒトのコレステロール蓄積に起因する高脂血症および動脈硬化に基づく心筋梗塞または脳卒中の予防剤または治療剤、あるいは抗真菌剤として使用し得る薬剤を提供するものである。
【0018】
前記の式[I]で表されるFKI−0929−B物質および式[II]で表されるFKI−0929−C物質を生産する能力を有する微生物(以下、「FKI−0929物質生産菌」と称する)は、糸状菌に属するが、例えば本発明者らが沖縄県の植物の表面より分離した糸状菌FKI−0929株であるFungalstrain(ファンガル ストレイン)FKI−0929が最も有効に使用される菌株の一例である。本菌株の菌学的性状を示すと次のとおりである。
【0019】
1.形態的性質
本菌株は、バレイショ・ブドウ糖寒天培地、麦芽汁寒天培地、ジャガイモ・ニンジン寒天培地、オートミール寒天培地、三浦寒天培地などで良好に生育したが、最大4週間の培養で有性胞子、無性胞子、小菌核および菌核の形成は観察されなかった。また、自然光下における培養においても同様に有性胞子や無性胞子の形成は観察されなかった。
菌糸は無色から薄い茶色で、隔壁を有していた。
【0020】
2.各種培地上での培養性状
各種寒天培地上で、27℃、7日間培養した場合の各培地における肉眼的観察結果を下記に示す。
【0021】
【0022】
3.生理学的諸性質
1)最適生育条件
本菌株の最適生育条件はpH4〜7、温度16〜30℃である。
2)生育の範囲
本菌株の生育範囲はpH3〜10、温度10〜34℃である。
3)好気性、嫌気性の区別
好気性
【0023】
4.結論
以上、本菌株の形態的特徴、培養性状および生理的性状に基づき、既知菌種との比較を試みたが、菌学的性質を詳細に明らかにするまでに至っていない。したがって、本菌株をFungal strain(ファンガル ストレイン)FKI−0929と称することにした。本菌株はFungal strain FKI−0929(ファンガル ストレイン FKI−0929)として、茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)に所在の独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに平成14年12月9日に寄託され、受託番号としてFERM P−19147が付与された。
【0024】
本発明の好ましい菌株として、FKI−0929物質生産菌について説明したが、菌の一般的性状として菌学上の性状はきわめて変異し易く、一定したものではなく、自然的にあるいは通常行なわれる紫外線照射、X線照射または変異誘導体剤、例えばN−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン、エチルメタンスルホネートなどを用いる人工的変異手段により変異することは周知の事実であり、このような人工的変異株は勿論、自然変異株も含め、糸状菌に属し、FKI−0929物質を生産する能力を有する菌株は、すべて本発明に使用することができる。また、細胞融合、遺伝子操作などの細胞工学的に変異させた菌株もFKI−0929物質生産菌として包含される。
【0025】
本発明のFKI−0929−B物質およびFKI−0929−C物質又はこれらの組成物を製造するに当っては、先ず糸状菌に属するFKI−0929物質生産菌が適当な培地に培養される。本菌株の培養においては、通常の真菌の培養方法が一般に適用される。培地としては微生物が同化し得る炭素源、消化し得る窒素源、さらに必要に応じて無機塩などを含有させた栄養培地が適宜用いられる。
【0026】
上記の同化し得る炭素源としては、ブドウ糖、ショ糖、糖密、澱粉、デキストリン、セルロース、グリセリン、有機酸などが単独または組み合わせて用いられる。消化し得る窒素源としては、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、乾燥酵母、大豆粉、コーン・スティープ・リカー、綿実粕、カゼイン、大豆蛋白加水分解物、アミノ酸、尿素などの有機窒素源、硝酸塩、アンモニウム塩などの無機窒素化合物が単独あるいは組み合わせて用いられる。
【0027】
その他必要に応じてナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、リン酸塩などの無機塩、重金属塩類が添加される。さらに培地には、必要に応じて本菌の生育やFKI−0929物質の生産を促進する微量栄養素、発育促進物質、前駆物質を適当に添加してもよい。
【0028】
培養は通常静置、振とうまたは通気攪拌培養などの条件下で行うのがよい。工業的には深部通気攪拌培養が好ましい。培地のpHは中性付近で培養を行うのが好ましい。培養温度は20〜37℃の範囲でも行い得るが、通常は24〜30℃、好ましくは27℃付近に保つのがよい。培養時間は、静置培養の場合、通常10〜16日間培養を行うと、本発明のFKI−0929物質が生成蓄積されるので、好ましくは培養中の蓄積量が最大に達したときに培養を終了すればよい。
これらの培養組成、培地の液性、培養温度、攪拌速度、通気量などの培養条件は使用する菌株や外部の条件などに応じて好ましい結果が得られるように適宜調節、選択されることはいうまでもない。
【0029】
このようにして得られた培養物中に蓄積されたFKI−0929物質は、培養ろ液または培養菌体中に含まれているので、培養液を必要に応じてろ過補助剤、例えばセライト、ハイフロースパーセル等を加えてろ過するか、または遠心分離して培養ろ液と菌体とに分離し、培養ろ液と菌体との有機溶媒抽出物を濃縮したものの中からFKI−0929物質を採取するのが有利である。
【0030】
また、培養ろ液からFKI−0929物質を採取するには、先ず培養ろ液を酢酸エチル、酢酸ブチル、ベンゼンなどの非親水性有機溶媒で抽出し、抽出液を減圧濃縮して粗製の物質、FKI−0929物質が得られる。該粗製物質はさらに脂溶性物質の精製に通常用いられる公知の方法、例えばシリカゲル、アルミナなどの担体を用いるカラムクロマトグラフィーによりFKI−0929物質を分離、精製することができる。
【0031】
菌体からFKI−0929物質を採取するには、菌体を含水アセトン、含水メタノールなどの含水親水性有機溶媒で抽出し、得られた抽出液を減圧濃縮し、その濃縮物を酢酸エチル、酢酸ブチル、ベンゼンなどの非親水性有機溶媒で抽出し、得られた抽出液は、前記の培養液から得た抽出液と合わせて分離、精製するか、あるいは前記と同じ方法によってFKI−0929物質を分離、精製することができる。
【0032】
次に、本発明のFKI−0929−B物質およびFKI−0929−C物質の理化学的性状について述べる。
[I]FKI−0929−B物質
(1)分子式:C18H31O2 N(高分解能FABマススペクトルでm/z294.2460(M+H)が観察された)(計算値294.2433)。
(2)分子量:293(EIマススペクトルよりm/z293(M)+ が観察された)。
(3)比旋光度:[α]D 22+22°(c=0.14、メタノール)。
【0033】
(4)紫外部吸収スペクトル:メタノール中で測定した紫外部吸収スペクトルは図1に示すとおりであり、224nm(ε=9,300)に特徴的な吸収極大を示す。
(5)赤外部吸収スペクトル:臭化カリウム錠剤法で測定した赤外部吸収スペクトルは図2に示すとおりであり、λmaxKBr cm-1:3437、2956、2931、2872、1662、1633、1566、1458、1408、1267、1107、1024に特徴的な吸収帯を有する。
(6)溶剤に対する溶解性:メタノール、エタノール、アセトニトリル、酢酸エチル、クロロホルム、ジメチルスルホキシドに可溶、水に不溶。
【0034】
(7)塩基性、酸性、中性の区別:弱塩基性。
(8)物質の色、形状:無色油状物質。
(9)核磁気共鳴スペクトル:JEOL社製(日本国)、核磁気共鳴スペクトロメータを用いて測定したプロトン核磁気共鳴スペクトル(重クロロホルム中で測定、500MHz)は図3に、及びカーボン核磁気共鳴スペクトル(重クロロホルム中で測定、125.65MHz)は図4に示すとおりであり、水素および炭素の化学シフト(ppm)、多重度及び結合定数(Hz)は下記に示すとおりである
【0035】
【0036】
位置* :式[I]中の各位置に付設した番号に対応し、略号:sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、qはカルテット、mはマルチプレットを意味する。
以上、FKI−0929−B物質の各種理化学的性状やスペクトルデータを詳細に検討した結果、本FKI−0929−B物質は下記式[I]で表される化学構造であることが決定された。
【0037】
【化9】
【0038】
[II]FKI−0929−C物質。
(1)分子式:C18H31O2 N(高分解能FABマススペクトルでm/z294.2452(M+H)が観察された)(計算値294.2433)。
(2)分子量:293(EIマススペクトルよりm/z293(M)+ が観察された)。
(3)比旋光度:[α]D 22+25°(c=0.28、メタノール)。
【0039】
(4)紫外部吸収スペクトル:メタノール中で測定した紫外部吸収スペクトルは図5に示すとおりであり、224nm(ε=11,800)に特徴的な吸収極大を示す。
(5)赤外部吸収スペクトル:臭化カリウム錠剤法で測定した赤外部吸収スペクトルは図6に示すとおりであり、λmaxKBr cm-1:3431、2958、2873、2819、1666、1628、1574、1404、1335、1213、1028に特徴的な吸収帯を有する。
(6)溶媒に対する溶解性:メタノール、エタノール、アセトニトリル、酢酸エチル、クロロホルム、ジメチルスルホキシドに可溶、水に不溶。
【0040】
(7)塩基性、酸性、中性の区別:弱塩基性。
(8)物質の色、形状:無色油状物質。
(9)核磁気共鳴スペクトル:JEOL社製(日本国)、核磁気共鳴スペクトロメータを用いて測定したプロトン核磁気共鳴スペクトル(重クロロホルム中で測定、500MHz)は図7に、及びカーボン核磁気共鳴スペクトル(重クロロホルム中で測定、125.65MHz)は図8に示すとおりであり、水素および炭素の化学シフト(ppm)、多重度及び結合定数(Hz)は下記に示すとおりである。
【0041】
【0042】
位置* :式[II]中の各位置に付設した番号に対応し、略号:sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、qはカルテット、mはマルチプレットを意味する。
以上、FKI−0929−C物質の各種理化学的性状やスペクトルデータを詳細に検討した結果、本FKI−0929−C物質は下記式[II]で表される化学構造であることが決定された。
【0043】
【化10】
【0044】
上記したように、FKI−0929−B物質およびFKI−0929−C物質の各種理化学的性状について詳述したが、このような性質に一致する化合物はこれまでに全く報告されておらず、FKI−0929−B物質およびFKI−0929−C物質は新規物質であると決定した。
【0045】
次に、本発明のFKI−0929物質の生物学的性状について以下に述べる。
(1)ヒト由来ラノステロール合成酵素に対する阻害作用
ラノステロール合成酵素活性はKusanoらの方法(Chem.Pharm.Bull.39巻、239〜241頁、1991年)を一部改変して行った。
【0046】
酵素源としては、ヒト由来ラノステロール合成酵素cDNA(Sungら、Biol.Pharm.Bull.18巻、1459〜1461頁、1995年)を酵母由来グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼプロモーターによりラノステロール合成酵素欠損酵母GIL77(Kushiroら、Eur.J.Biochem.256巻、238〜241頁、1998年)において発現させることにより得られた形質転換酵母由来の無細胞抽出液を用いた。
【0047】
上記の形質転換酵母は、氷冷した緩衝液A(0.1Mカリウム−リン酸緩衝液(pH7.4)、0.45Mスクロース、1mM EDTA及び1mMジチオトレイトール)中で酸処理ガラスビーズの存在下、Waring Blender[(型式500ACD)、佐久間製作所製、日本国]でホモジナイズする。これを8600×gで遠心した上清を10mg/mlの蛋白質濃度となるように前記の緩衝液Aで調製し、無細胞抽出液とした。
【0048】
基質の[14C](3S)−2,3−オキシドスクアレンは、ラノステロール合成酵素欠損酵母GL7(Gollubら、J.Biol.Chem.252巻、2846〜2854頁、1977年)に[1−14C]酢酸ナトリウムを投与して放射活性を取り込ませることにより生合成的に調製した。
【0049】
ラノステロール合成酵素活性の測定は、緩衝液B(0.1Mカリウム−リン酸緩衝液(pH7.4)、0.1%トリトン X−100)中で[14C](3S)−2,3−オキシドスクアレン(最終濃度0.17〜0.42μM、4.5nCi)とFKI−0929物質を加え全量900μlとして、37℃で10分間プレインキュベート後、酵素源1mg蛋白量を加え全量1mlとして、37℃で60分間反応させた。
【0050】
次いでそこに、6%水酸化カリウム/エタノールを加えて反応を停止させ、37℃で10分間インキュベートすることによりけん化させ、2mlシクロヘキサンを加えてよく攪拌した。シクロヘキサン層1.6mlを乾固後、TLC[シリカゲルプレート(濃縮ゾーン付き)、メルク社製(米国)、厚さ0.25mm:Art.No.11798]にスポットし、ベンゼン/アセトン(19:1、v/v)の溶媒で展開した。次に未反応の[14C](3S)−2,3−オキシドスクアレン及び生成した[14C]ラノステロールの量をフォトイメージアナライザーBAS−1500(富士写真フィルム社製、日本国)で定量することにより、ラノステロールへの合成阻害率を以下の式により算出した。
【0051】
上記の算出結果より、FKI−0929物質のラノステロール合成酵素活性を50%阻害する濃度(IC50)は、FKI−0929−B物質で10μMと測定され、FKI−0929−C物質で6.0μMと測定された。
【0052】
以上詳しく述べたように、本発明のFKI−0929物質はラノステロール合成酵素に対して阻害を示すことから、ヒトのコレステロール蓄積に起因する高脂血症や動脈硬化症によって惹起される心筋梗塞や脳卒中などの新しい予防剤、治療剤として、また新しい抗真菌剤として臨床できることが期待される。
【0053】
【発明の実施の態様】
以下に本発明の実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれのみに限定されるものではない。
500ml容三角フラスコに、グルコース2.0%、酵母エキス0.2%、MgSO4 ・7H2 O 0.05%、ポリペプトン0.5%、KH2 PO4 0.1%およびアガー0.1%を含む培地(pH6.0に調整)100mlを仕込み、綿栓後、蒸気滅菌し、寒天培地上に生育させたFungal strain(ファンガル ストレイン)FKI−0929(FERM P−19147)の菌糸体を無菌的に植菌し、27℃で3日間振とう培養して種培養液を得た。
【0054】
1リットル容ルー瓶36本にルー瓶1本当たりイタリア米150g、微量金属(FeSO4 ・7H2 O 0.9mg、MnCl2 ・4H2 O 0.9mg、ZnSO4 ・7H2 O 0.9mg、CuSO4 ・5H2 O 0.9mg、CoCl2 ・6H2 O 0.9mg)と水90mlを仕込み、蒸気滅菌し、ルー瓶1本当たり上記の種培養液2mlを無菌的に移植した。これを27℃で14日間静置培養後、培養物をルー瓶1本当たり300mlの50%エタノール水で処理して36本合わせて減圧ろ過し、5リットルまで減圧濃縮した。これを5リットルのクロロホルムで処理して分液ロートで有機層と無機層に分離した。この無機層を再び5リットルのクロロホルムで処理して分液ロートで有機層と無機層に分離した。これら有機層を減圧濃縮して粗物質8.9gを得た。
【0055】
このようにして得られた粗物質の一部(4.0g)をシリカゲル[400g、ワコーゲル(登録商標)C−200、和光純薬工業社製、日本国]のカラムにチャージし、クロロホルム0.4リットル、クロロホルム−メタノール(20:1)の溶液1.0リットル、クロロホルム−メタノール(18:1)の溶液1.0リットル、クロロホルム−メタノール(16:1)の溶液1.0リットル、クロロホルム−メタノール(14:1)の溶液1.0リットル、クロロホルム−メタノール(12:1)の溶液1.0リットル、クロロホルム−メタノール(10:1)の溶液1.0リットル、クロロホルム−メタノール(8:1)の溶液1.0リットル、クロロホルム−メタノール(6:1)の溶液1.0リットル、クロロホルム−メタノール(4:1)の溶液1.0リットル、クロロホルム−メタノール(2:1)の溶液1.0リットル、クロロホルム−メタノール−水(20:10:1)の溶液1.0リットル、クロロホルム−メタノール−水(10:10:1)の溶液1.0リットルの順に段階的に溶出させた。
【0056】
次に、クロロホルム−メタノール−水(20:10:1)画分及びクロロホルム−メタノール−水(10:10:1)画分を集め、減圧乾固して粗物質482mgを得た。これをシリカゲル[50g、ワコーゲル(登録商標)C−200、和光純薬工業社製、日本国]のカラムにチャージし、クロロホルム−メタノール−酢酸(100:10:1)の溶液150ml、クロロホルム−メタノール−酢酸(80:10:1)の溶液150ml、クロロホルム−メタノール−酢酸(60:10:1)の溶液150ml、クロロホルム−メタノール−酢酸(40:10:1)の溶液150ml、クロロホルム:メタノール:酢酸(20:10:1)の溶液150ml、クロロホルム:メタノール:酢酸(10:10:1)の溶液150mlの順に段階的に溶出させた。
【0057】
FKI−0929−B成分、及びFKI−0929−C成分を含むクロロホルム−メタノール−酢酸(60:10:1)画分及びクロロホルム−メタノール−酢酸(40:10:1)画分を集め、減圧乾固して赤褐色の粗物質104mgを得た。そのうちの70mgを液体クロマトグラフィー[装置は東ソー社製(日本国)のCCPM、カラムはメルク社製(米国)のLobar column size B LiChroprep RP−18(サイズ25×310mm、粒子径40〜63μm、Art.No.10625)、検出はUV254nm、流速は4ml/分、溶出条件は100分までメタノール−水−酢酸(30:70:0.5)、100分から200分までメタノール−水−酢酸(40:60:0.5)、200分から300分までメタノール−水−酢酸(50:50:0.5)、その後400分まで100%メタノールで溶出)にチャージして、溶出時間125分から200分まで1画分(以下、画分Xと称する)、200分から275分まで1画分(以下、画分Yと称する)の計2画分を集め、それぞれ減圧濃縮して画分Xは約0.5mlのメタノール−水−酢酸(35:65:0.5)溶液、画分Yは約0.5mlのメタノール−水−酢酸(40:60:0.5)溶液とした。
【0058】
画分Xを、液体クロマトグラフィー[装置は東ソー社製(日本国)のCCPM、カラムはメルク社製(米国)のLobar column size B LiChroprep RP−18(サイズ25×310mm、粒子径40〜63μm、Art.No.10625)、検出はUV254nm、流速は4ml/分、溶出条件は100分までメタノール−水−酢酸(35:65:0.5)、100分から200分までメタノール−水−酢酸(40:60:0.5)、200分から300分までメタノール−水−酢酸(45:55:0.5)、300分から400分までメタノール−水−酢酸(50:50:0.5)、その後500分まで100%メタノールで溶出)にチャージして、溶出時間250分から275分まで1画分、275分から300分まで1画分、300分から350分まで1画分、350分か500分まで1画分の計4画分を集め、それぞれ減圧濃縮して約0.5mlのメタノール−水−酢酸(45:55:0.5)溶液とした。
【0059】
画分Yを、液体クロマトグラフィー[装置は東ソー社製(日本国)のCCPM、カラムはメルク社製(米国)のLobar column size B LiChroprep RP−18(サイズ25×310mm、粒子径40〜63μm、Art.No.10625)、検出はUV254nm、流速は4ml/分、溶出条件は100分までメタノール−水−酢酸(40:60:0.5)、100分から200分までメタノール−水−酢酸(45:55:0.5)、200分から300分までメタノール−水−酢酸(50:50:0.5)、その後400分まで100%メタノールで溶出)にチャージして、溶出時間150分から175分まで1画分、175分から200分まで1画分、200分から225分まで1画分、225分から275分まで1画分、275分から400分まで1画分の計5画分を集め、それぞれ減圧濃縮して約0.5mlのメタノール−水−酢酸(45:55:0.5)溶液とした。
【0060】
画分Xおよび画分Yより得られたそれら9画分を、さらに個々に高速液体クロマトグラフィー[装置は東ソー社製(日本国)のCCPE−II、カラムは東ソー社製(日本国)のTSKgel ODS−80TM (サイズ7.8×300mm、粒子径5μm)、検出はUV254nm、流速は1.5ml/分、溶出条件はメタノール−水−酢酸(45:55:0.5)、チャージ量は1インジェクション当たり50〜200μl)で繰り返し精製することにより、溶出時間15分のピークからFKI−0929−B物質を1.5mg、溶出時間17分のピークからFKI−0929−C物質を2.9mg得た。
【0061】
【発明の効果】
以上のとおり、糸状菌に属するFKI−0929−B物質およびFKI−0929−C物質又はこれらの物質からなる組成物を生産する能力を有する微生物を培地に培養して、その培養物中からFKI−0929−B物質およびFKI−0929−C物質又は該物質の組成物を採取することにより、ラノステロール合成酵素に対する阻害活性物質が得られ、該物質は高脂血症や動脈硬化症に基づく心筋梗塞や脳卒中などの成人病の予防、治療効果が期待され、また真菌感染症に対する抗真菌剤としての効果が期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるFKI−0929−B物質の紫外部吸収スペクトル(CH3 OH中)を示したものである。
【図2】本発明によるFKI−0929−B物質の赤外部吸収スペクトル(KBr法)を示したものである。
【図3】本発明によるFKI−0929−B物質のプロトン核磁気共鳴スペクトル(CDCl3 )を示したものである。
【図4】本発明によるFKI−0929−B物質のカーボン核磁気共鳴スペクトル(CDCl3 )を示したものである。
【図5】本発明によるFKI−0929−C物質の紫外部吸収スペクトル(CH3 OH中)を示したものである。
【図6】本発明によるFKI−0929−C物質の赤外部吸収スペクトル(KBr法)を示したものである。
【図7】本発明によるFKI−0929−C物質のプロトン核磁気共鳴スペクトル(CDCl3 )を示したものである。
【図8】本発明によるFKI−0929−C物質のカーボン核磁気共鳴スペクトル(CDCl3 )を示したものである。
【発明の属する技術分野】本発明は脂質代謝阻害活性を有し、ヒトのコレステロール蓄積に起因する疾病の予防剤または治療剤、あるいは抗真菌剤として有用な新規FKI−0929物質、該物質の組成物およびそれらの製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ステロールとしてヒトの場合はコレステロールが、また真菌の場合はエルゴステロールが生合成されるが、これらステロール生合成に関与する酵素群は、ヒトの高脂血症や動脈硬化症の予防、治療剤の開発や抗真菌剤の開発のターゲットとして認識されている(Tomoda,H.and Omura,S.:Enzyme Technology for Pharmaceutical andBiological Applications(編集、Kirst,A.ら)、第15章 pp.343〜378,Marcel Dekker,Inc.,NY,2001年)。
【0003】
実際、プラバスタチンを代表とするスタチン系化合物は、コレステロール生合成の律速酵素の一つであるヒドロキシメチルグルタリル−コエンザイム・エー(HMG−CoA)還元酵素を特異的に阻害し、血中コレステロールを低下させ動脈硬化症の予防、治療薬として臨床的に用いられている。しかしながら、現在使用されているスタチン系化合物の場合は、生体にとって必須の成分である非ステロール化合物群の生合成も阻害されることが懸念されることから、生合成中間体であるスクアレン以降の酵素がより優れた薬剤標的と期待されている。
【0004】
また、真菌感染症の治療に用いられている2,4−ジフルオロ−α,α−ビス−(1H,1,2,4−トリアゾル−1−イルメチル)ベンジルアルコール(一般名:フルコナゾール;アイシーエヌファーマスーティカルズ社製、米国)、或いは1−[2−(2,4−ジクロロベンジルオキシ)−2−(2,4−ジクロロフェニル)エチル]イミダゾール(一般名:ミコナゾール;シグマ社製、米国)などのアゾール系化合物はエルゴステロールのC−14脱メチル化反応を阻害する抗真菌剤として実用化されている。しかしながら、アゾール系抗真菌剤の長期間または反復投与による耐性菌の出現が問題となっており、安全性が高く、耐性菌の出現頻度の低い薬剤の開発が社会的急務とされていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
かかる実情において、ラノステロール合成酵素は2,3−オキシドスクアレンを基質として閉環反応によりラノステロールを生成する酵素であり、本酵素を阻害する医薬品は未だ実用化に至っていない。従って、本酵素を阻害する薬剤の発見は、上記の課題を解決し得ると考えられ、高脂血症や動脈硬化症によって惹起される心筋梗塞や脳卒中などの新しい予防剤または治療剤、あるいは新しい抗真菌剤として臨床できることが期待される。
本発明の目的は、ラノステロール合成酵素に対して阻害作用を有することにより、ヒトのコレステロール蓄積に起因する疾病の予防剤または治療剤や抗真菌剤として臨床できる新規FKI−0929物質、該物質の組成物およびそれらの製造法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、微生物の生産する代謝産物について種々研究を続けた結果、植物の表面より新たに分離されたFKI−0929菌株の培養物中に、ラノステロール合成酵素阻害活性を有する物質が産生されることを見いだした。次いで、該培養物中からラノステロール合成酵素を阻害する活性物質を分離、精製したところ、後記[I]および[II]で表される化学構造を有する物質を見いだした。これらの物質は従来まったく知られていないことから、各々本物質をFKI−0929−B物質およびFKI−0929−C物質(FKI−0929−B物質の立体異性体)と称することにし、その総称をFKI−0929物質と称することにした。
本発明はかかる知見に基づいて完成されたものであって、下記式[I]
【0007】
【化5】
で表されるFKI−0929−B物質を提供するものである。
本発明は更に、下記式[II]
【0008】
【化6】
で表される新規FKI−0929−C物質を提供するものである。
本発明は更に、特に下記式[I]
【0009】
【化7】
で表される新規FKI−0929−B物質及び特に下記式[II]
【0010】
【化8】
で表されるFKI−0929−C物質とからなる新規FKI−0929物質の組成物を提供するものである。
【0011】
本発明は更に、糸状菌に属し、FKI−0929−B物質を生産する能力を有する微生物を培地で培養し、培養液中にFKI−0929−B物質を蓄積せしめ、該培養物からFKI−0929−B物質を採取するFKI−0929−B物質の製造法を提供するものである。
【0012】
本発明は更に、糸状菌に属し、FKI−0929−C物質を生産する能力を有する微生物を培地で培養し、培養液中にFKI−0929−C物質を蓄積せしめ、該培養物からFKI−0929−C物質を採取するFKI−0929C物質の製造法を提供するものである。
【0013】
本発明は更に、糸状菌に属し、FKI−0929−B物質及び/又はFKI−0929−C物質を生産する能力を有する微生物を培地で培養し、培養液中にFKI−0929−B物質及び/又はFKI−0929−C物質を蓄積せしめ、該培養物からFKI−0929−B物質及び/又はFKI−0929−C物質を採取するFKI−0929物質の組成物の製造法を提供するものである。
【0014】
本発明は更に、糸状菌に属し、FKI−0929−B物質及び/又はFKI−0929−C物質を生産する能力を有する微生物が、Fungal strain FKI−0929(FERM P−19147)である化合物又は組成物を提供するものである。。
【0015】
本発明は更に、糸状菌に属し、FKI−0929−B物質及び/又はFKI−0929−C物質を生産する能力を有する微生物が、Fungal strain FKI−0929(FERM P−19147)である化合物又は組成物の製造法を提供するものである。
【0016】
本発明は更に、糸状菌に属し、FKI−0929−B物質及び/又はFKI−0929−C物質又はこれらの組成物を生産する能力を有する微生物が、糸状菌FKI−0929株である微生物を提供するものであり、該微生物がFungal strain FKI−0929(FERM P−19147)である微生物を提供するものである。
【0017】
本発明は更に、ラノステロール合成酵素阻害活性を有する化合物または組成物を提供するものであり、該化合物または組成物はヒトのコレステロール蓄積に起因する高脂血症および動脈硬化に基づく心筋梗塞または脳卒中の予防剤または治療剤、あるいは抗真菌剤として使用し得る薬剤を提供するものである。
【0018】
前記の式[I]で表されるFKI−0929−B物質および式[II]で表されるFKI−0929−C物質を生産する能力を有する微生物(以下、「FKI−0929物質生産菌」と称する)は、糸状菌に属するが、例えば本発明者らが沖縄県の植物の表面より分離した糸状菌FKI−0929株であるFungalstrain(ファンガル ストレイン)FKI−0929が最も有効に使用される菌株の一例である。本菌株の菌学的性状を示すと次のとおりである。
【0019】
1.形態的性質
本菌株は、バレイショ・ブドウ糖寒天培地、麦芽汁寒天培地、ジャガイモ・ニンジン寒天培地、オートミール寒天培地、三浦寒天培地などで良好に生育したが、最大4週間の培養で有性胞子、無性胞子、小菌核および菌核の形成は観察されなかった。また、自然光下における培養においても同様に有性胞子や無性胞子の形成は観察されなかった。
菌糸は無色から薄い茶色で、隔壁を有していた。
【0020】
2.各種培地上での培養性状
各種寒天培地上で、27℃、7日間培養した場合の各培地における肉眼的観察結果を下記に示す。
【0021】
【0022】
3.生理学的諸性質
1)最適生育条件
本菌株の最適生育条件はpH4〜7、温度16〜30℃である。
2)生育の範囲
本菌株の生育範囲はpH3〜10、温度10〜34℃である。
3)好気性、嫌気性の区別
好気性
【0023】
4.結論
以上、本菌株の形態的特徴、培養性状および生理的性状に基づき、既知菌種との比較を試みたが、菌学的性質を詳細に明らかにするまでに至っていない。したがって、本菌株をFungal strain(ファンガル ストレイン)FKI−0929と称することにした。本菌株はFungal strain FKI−0929(ファンガル ストレイン FKI−0929)として、茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)に所在の独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに平成14年12月9日に寄託され、受託番号としてFERM P−19147が付与された。
【0024】
本発明の好ましい菌株として、FKI−0929物質生産菌について説明したが、菌の一般的性状として菌学上の性状はきわめて変異し易く、一定したものではなく、自然的にあるいは通常行なわれる紫外線照射、X線照射または変異誘導体剤、例えばN−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン、エチルメタンスルホネートなどを用いる人工的変異手段により変異することは周知の事実であり、このような人工的変異株は勿論、自然変異株も含め、糸状菌に属し、FKI−0929物質を生産する能力を有する菌株は、すべて本発明に使用することができる。また、細胞融合、遺伝子操作などの細胞工学的に変異させた菌株もFKI−0929物質生産菌として包含される。
【0025】
本発明のFKI−0929−B物質およびFKI−0929−C物質又はこれらの組成物を製造するに当っては、先ず糸状菌に属するFKI−0929物質生産菌が適当な培地に培養される。本菌株の培養においては、通常の真菌の培養方法が一般に適用される。培地としては微生物が同化し得る炭素源、消化し得る窒素源、さらに必要に応じて無機塩などを含有させた栄養培地が適宜用いられる。
【0026】
上記の同化し得る炭素源としては、ブドウ糖、ショ糖、糖密、澱粉、デキストリン、セルロース、グリセリン、有機酸などが単独または組み合わせて用いられる。消化し得る窒素源としては、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、乾燥酵母、大豆粉、コーン・スティープ・リカー、綿実粕、カゼイン、大豆蛋白加水分解物、アミノ酸、尿素などの有機窒素源、硝酸塩、アンモニウム塩などの無機窒素化合物が単独あるいは組み合わせて用いられる。
【0027】
その他必要に応じてナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、リン酸塩などの無機塩、重金属塩類が添加される。さらに培地には、必要に応じて本菌の生育やFKI−0929物質の生産を促進する微量栄養素、発育促進物質、前駆物質を適当に添加してもよい。
【0028】
培養は通常静置、振とうまたは通気攪拌培養などの条件下で行うのがよい。工業的には深部通気攪拌培養が好ましい。培地のpHは中性付近で培養を行うのが好ましい。培養温度は20〜37℃の範囲でも行い得るが、通常は24〜30℃、好ましくは27℃付近に保つのがよい。培養時間は、静置培養の場合、通常10〜16日間培養を行うと、本発明のFKI−0929物質が生成蓄積されるので、好ましくは培養中の蓄積量が最大に達したときに培養を終了すればよい。
これらの培養組成、培地の液性、培養温度、攪拌速度、通気量などの培養条件は使用する菌株や外部の条件などに応じて好ましい結果が得られるように適宜調節、選択されることはいうまでもない。
【0029】
このようにして得られた培養物中に蓄積されたFKI−0929物質は、培養ろ液または培養菌体中に含まれているので、培養液を必要に応じてろ過補助剤、例えばセライト、ハイフロースパーセル等を加えてろ過するか、または遠心分離して培養ろ液と菌体とに分離し、培養ろ液と菌体との有機溶媒抽出物を濃縮したものの中からFKI−0929物質を採取するのが有利である。
【0030】
また、培養ろ液からFKI−0929物質を採取するには、先ず培養ろ液を酢酸エチル、酢酸ブチル、ベンゼンなどの非親水性有機溶媒で抽出し、抽出液を減圧濃縮して粗製の物質、FKI−0929物質が得られる。該粗製物質はさらに脂溶性物質の精製に通常用いられる公知の方法、例えばシリカゲル、アルミナなどの担体を用いるカラムクロマトグラフィーによりFKI−0929物質を分離、精製することができる。
【0031】
菌体からFKI−0929物質を採取するには、菌体を含水アセトン、含水メタノールなどの含水親水性有機溶媒で抽出し、得られた抽出液を減圧濃縮し、その濃縮物を酢酸エチル、酢酸ブチル、ベンゼンなどの非親水性有機溶媒で抽出し、得られた抽出液は、前記の培養液から得た抽出液と合わせて分離、精製するか、あるいは前記と同じ方法によってFKI−0929物質を分離、精製することができる。
【0032】
次に、本発明のFKI−0929−B物質およびFKI−0929−C物質の理化学的性状について述べる。
[I]FKI−0929−B物質
(1)分子式:C18H31O2 N(高分解能FABマススペクトルでm/z294.2460(M+H)が観察された)(計算値294.2433)。
(2)分子量:293(EIマススペクトルよりm/z293(M)+ が観察された)。
(3)比旋光度:[α]D 22+22°(c=0.14、メタノール)。
【0033】
(4)紫外部吸収スペクトル:メタノール中で測定した紫外部吸収スペクトルは図1に示すとおりであり、224nm(ε=9,300)に特徴的な吸収極大を示す。
(5)赤外部吸収スペクトル:臭化カリウム錠剤法で測定した赤外部吸収スペクトルは図2に示すとおりであり、λmaxKBr cm-1:3437、2956、2931、2872、1662、1633、1566、1458、1408、1267、1107、1024に特徴的な吸収帯を有する。
(6)溶剤に対する溶解性:メタノール、エタノール、アセトニトリル、酢酸エチル、クロロホルム、ジメチルスルホキシドに可溶、水に不溶。
【0034】
(7)塩基性、酸性、中性の区別:弱塩基性。
(8)物質の色、形状:無色油状物質。
(9)核磁気共鳴スペクトル:JEOL社製(日本国)、核磁気共鳴スペクトロメータを用いて測定したプロトン核磁気共鳴スペクトル(重クロロホルム中で測定、500MHz)は図3に、及びカーボン核磁気共鳴スペクトル(重クロロホルム中で測定、125.65MHz)は図4に示すとおりであり、水素および炭素の化学シフト(ppm)、多重度及び結合定数(Hz)は下記に示すとおりである
【0035】
【0036】
位置* :式[I]中の各位置に付設した番号に対応し、略号:sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、qはカルテット、mはマルチプレットを意味する。
以上、FKI−0929−B物質の各種理化学的性状やスペクトルデータを詳細に検討した結果、本FKI−0929−B物質は下記式[I]で表される化学構造であることが決定された。
【0037】
【化9】
【0038】
[II]FKI−0929−C物質。
(1)分子式:C18H31O2 N(高分解能FABマススペクトルでm/z294.2452(M+H)が観察された)(計算値294.2433)。
(2)分子量:293(EIマススペクトルよりm/z293(M)+ が観察された)。
(3)比旋光度:[α]D 22+25°(c=0.28、メタノール)。
【0039】
(4)紫外部吸収スペクトル:メタノール中で測定した紫外部吸収スペクトルは図5に示すとおりであり、224nm(ε=11,800)に特徴的な吸収極大を示す。
(5)赤外部吸収スペクトル:臭化カリウム錠剤法で測定した赤外部吸収スペクトルは図6に示すとおりであり、λmaxKBr cm-1:3431、2958、2873、2819、1666、1628、1574、1404、1335、1213、1028に特徴的な吸収帯を有する。
(6)溶媒に対する溶解性:メタノール、エタノール、アセトニトリル、酢酸エチル、クロロホルム、ジメチルスルホキシドに可溶、水に不溶。
【0040】
(7)塩基性、酸性、中性の区別:弱塩基性。
(8)物質の色、形状:無色油状物質。
(9)核磁気共鳴スペクトル:JEOL社製(日本国)、核磁気共鳴スペクトロメータを用いて測定したプロトン核磁気共鳴スペクトル(重クロロホルム中で測定、500MHz)は図7に、及びカーボン核磁気共鳴スペクトル(重クロロホルム中で測定、125.65MHz)は図8に示すとおりであり、水素および炭素の化学シフト(ppm)、多重度及び結合定数(Hz)は下記に示すとおりである。
【0041】
【0042】
位置* :式[II]中の各位置に付設した番号に対応し、略号:sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、qはカルテット、mはマルチプレットを意味する。
以上、FKI−0929−C物質の各種理化学的性状やスペクトルデータを詳細に検討した結果、本FKI−0929−C物質は下記式[II]で表される化学構造であることが決定された。
【0043】
【化10】
【0044】
上記したように、FKI−0929−B物質およびFKI−0929−C物質の各種理化学的性状について詳述したが、このような性質に一致する化合物はこれまでに全く報告されておらず、FKI−0929−B物質およびFKI−0929−C物質は新規物質であると決定した。
【0045】
次に、本発明のFKI−0929物質の生物学的性状について以下に述べる。
(1)ヒト由来ラノステロール合成酵素に対する阻害作用
ラノステロール合成酵素活性はKusanoらの方法(Chem.Pharm.Bull.39巻、239〜241頁、1991年)を一部改変して行った。
【0046】
酵素源としては、ヒト由来ラノステロール合成酵素cDNA(Sungら、Biol.Pharm.Bull.18巻、1459〜1461頁、1995年)を酵母由来グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼプロモーターによりラノステロール合成酵素欠損酵母GIL77(Kushiroら、Eur.J.Biochem.256巻、238〜241頁、1998年)において発現させることにより得られた形質転換酵母由来の無細胞抽出液を用いた。
【0047】
上記の形質転換酵母は、氷冷した緩衝液A(0.1Mカリウム−リン酸緩衝液(pH7.4)、0.45Mスクロース、1mM EDTA及び1mMジチオトレイトール)中で酸処理ガラスビーズの存在下、Waring Blender[(型式500ACD)、佐久間製作所製、日本国]でホモジナイズする。これを8600×gで遠心した上清を10mg/mlの蛋白質濃度となるように前記の緩衝液Aで調製し、無細胞抽出液とした。
【0048】
基質の[14C](3S)−2,3−オキシドスクアレンは、ラノステロール合成酵素欠損酵母GL7(Gollubら、J.Biol.Chem.252巻、2846〜2854頁、1977年)に[1−14C]酢酸ナトリウムを投与して放射活性を取り込ませることにより生合成的に調製した。
【0049】
ラノステロール合成酵素活性の測定は、緩衝液B(0.1Mカリウム−リン酸緩衝液(pH7.4)、0.1%トリトン X−100)中で[14C](3S)−2,3−オキシドスクアレン(最終濃度0.17〜0.42μM、4.5nCi)とFKI−0929物質を加え全量900μlとして、37℃で10分間プレインキュベート後、酵素源1mg蛋白量を加え全量1mlとして、37℃で60分間反応させた。
【0050】
次いでそこに、6%水酸化カリウム/エタノールを加えて反応を停止させ、37℃で10分間インキュベートすることによりけん化させ、2mlシクロヘキサンを加えてよく攪拌した。シクロヘキサン層1.6mlを乾固後、TLC[シリカゲルプレート(濃縮ゾーン付き)、メルク社製(米国)、厚さ0.25mm:Art.No.11798]にスポットし、ベンゼン/アセトン(19:1、v/v)の溶媒で展開した。次に未反応の[14C](3S)−2,3−オキシドスクアレン及び生成した[14C]ラノステロールの量をフォトイメージアナライザーBAS−1500(富士写真フィルム社製、日本国)で定量することにより、ラノステロールへの合成阻害率を以下の式により算出した。
【0051】
上記の算出結果より、FKI−0929物質のラノステロール合成酵素活性を50%阻害する濃度(IC50)は、FKI−0929−B物質で10μMと測定され、FKI−0929−C物質で6.0μMと測定された。
【0052】
以上詳しく述べたように、本発明のFKI−0929物質はラノステロール合成酵素に対して阻害を示すことから、ヒトのコレステロール蓄積に起因する高脂血症や動脈硬化症によって惹起される心筋梗塞や脳卒中などの新しい予防剤、治療剤として、また新しい抗真菌剤として臨床できることが期待される。
【0053】
【発明の実施の態様】
以下に本発明の実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれのみに限定されるものではない。
500ml容三角フラスコに、グルコース2.0%、酵母エキス0.2%、MgSO4 ・7H2 O 0.05%、ポリペプトン0.5%、KH2 PO4 0.1%およびアガー0.1%を含む培地(pH6.0に調整)100mlを仕込み、綿栓後、蒸気滅菌し、寒天培地上に生育させたFungal strain(ファンガル ストレイン)FKI−0929(FERM P−19147)の菌糸体を無菌的に植菌し、27℃で3日間振とう培養して種培養液を得た。
【0054】
1リットル容ルー瓶36本にルー瓶1本当たりイタリア米150g、微量金属(FeSO4 ・7H2 O 0.9mg、MnCl2 ・4H2 O 0.9mg、ZnSO4 ・7H2 O 0.9mg、CuSO4 ・5H2 O 0.9mg、CoCl2 ・6H2 O 0.9mg)と水90mlを仕込み、蒸気滅菌し、ルー瓶1本当たり上記の種培養液2mlを無菌的に移植した。これを27℃で14日間静置培養後、培養物をルー瓶1本当たり300mlの50%エタノール水で処理して36本合わせて減圧ろ過し、5リットルまで減圧濃縮した。これを5リットルのクロロホルムで処理して分液ロートで有機層と無機層に分離した。この無機層を再び5リットルのクロロホルムで処理して分液ロートで有機層と無機層に分離した。これら有機層を減圧濃縮して粗物質8.9gを得た。
【0055】
このようにして得られた粗物質の一部(4.0g)をシリカゲル[400g、ワコーゲル(登録商標)C−200、和光純薬工業社製、日本国]のカラムにチャージし、クロロホルム0.4リットル、クロロホルム−メタノール(20:1)の溶液1.0リットル、クロロホルム−メタノール(18:1)の溶液1.0リットル、クロロホルム−メタノール(16:1)の溶液1.0リットル、クロロホルム−メタノール(14:1)の溶液1.0リットル、クロロホルム−メタノール(12:1)の溶液1.0リットル、クロロホルム−メタノール(10:1)の溶液1.0リットル、クロロホルム−メタノール(8:1)の溶液1.0リットル、クロロホルム−メタノール(6:1)の溶液1.0リットル、クロロホルム−メタノール(4:1)の溶液1.0リットル、クロロホルム−メタノール(2:1)の溶液1.0リットル、クロロホルム−メタノール−水(20:10:1)の溶液1.0リットル、クロロホルム−メタノール−水(10:10:1)の溶液1.0リットルの順に段階的に溶出させた。
【0056】
次に、クロロホルム−メタノール−水(20:10:1)画分及びクロロホルム−メタノール−水(10:10:1)画分を集め、減圧乾固して粗物質482mgを得た。これをシリカゲル[50g、ワコーゲル(登録商標)C−200、和光純薬工業社製、日本国]のカラムにチャージし、クロロホルム−メタノール−酢酸(100:10:1)の溶液150ml、クロロホルム−メタノール−酢酸(80:10:1)の溶液150ml、クロロホルム−メタノール−酢酸(60:10:1)の溶液150ml、クロロホルム−メタノール−酢酸(40:10:1)の溶液150ml、クロロホルム:メタノール:酢酸(20:10:1)の溶液150ml、クロロホルム:メタノール:酢酸(10:10:1)の溶液150mlの順に段階的に溶出させた。
【0057】
FKI−0929−B成分、及びFKI−0929−C成分を含むクロロホルム−メタノール−酢酸(60:10:1)画分及びクロロホルム−メタノール−酢酸(40:10:1)画分を集め、減圧乾固して赤褐色の粗物質104mgを得た。そのうちの70mgを液体クロマトグラフィー[装置は東ソー社製(日本国)のCCPM、カラムはメルク社製(米国)のLobar column size B LiChroprep RP−18(サイズ25×310mm、粒子径40〜63μm、Art.No.10625)、検出はUV254nm、流速は4ml/分、溶出条件は100分までメタノール−水−酢酸(30:70:0.5)、100分から200分までメタノール−水−酢酸(40:60:0.5)、200分から300分までメタノール−水−酢酸(50:50:0.5)、その後400分まで100%メタノールで溶出)にチャージして、溶出時間125分から200分まで1画分(以下、画分Xと称する)、200分から275分まで1画分(以下、画分Yと称する)の計2画分を集め、それぞれ減圧濃縮して画分Xは約0.5mlのメタノール−水−酢酸(35:65:0.5)溶液、画分Yは約0.5mlのメタノール−水−酢酸(40:60:0.5)溶液とした。
【0058】
画分Xを、液体クロマトグラフィー[装置は東ソー社製(日本国)のCCPM、カラムはメルク社製(米国)のLobar column size B LiChroprep RP−18(サイズ25×310mm、粒子径40〜63μm、Art.No.10625)、検出はUV254nm、流速は4ml/分、溶出条件は100分までメタノール−水−酢酸(35:65:0.5)、100分から200分までメタノール−水−酢酸(40:60:0.5)、200分から300分までメタノール−水−酢酸(45:55:0.5)、300分から400分までメタノール−水−酢酸(50:50:0.5)、その後500分まで100%メタノールで溶出)にチャージして、溶出時間250分から275分まで1画分、275分から300分まで1画分、300分から350分まで1画分、350分か500分まで1画分の計4画分を集め、それぞれ減圧濃縮して約0.5mlのメタノール−水−酢酸(45:55:0.5)溶液とした。
【0059】
画分Yを、液体クロマトグラフィー[装置は東ソー社製(日本国)のCCPM、カラムはメルク社製(米国)のLobar column size B LiChroprep RP−18(サイズ25×310mm、粒子径40〜63μm、Art.No.10625)、検出はUV254nm、流速は4ml/分、溶出条件は100分までメタノール−水−酢酸(40:60:0.5)、100分から200分までメタノール−水−酢酸(45:55:0.5)、200分から300分までメタノール−水−酢酸(50:50:0.5)、その後400分まで100%メタノールで溶出)にチャージして、溶出時間150分から175分まで1画分、175分から200分まで1画分、200分から225分まで1画分、225分から275分まで1画分、275分から400分まで1画分の計5画分を集め、それぞれ減圧濃縮して約0.5mlのメタノール−水−酢酸(45:55:0.5)溶液とした。
【0060】
画分Xおよび画分Yより得られたそれら9画分を、さらに個々に高速液体クロマトグラフィー[装置は東ソー社製(日本国)のCCPE−II、カラムは東ソー社製(日本国)のTSKgel ODS−80TM (サイズ7.8×300mm、粒子径5μm)、検出はUV254nm、流速は1.5ml/分、溶出条件はメタノール−水−酢酸(45:55:0.5)、チャージ量は1インジェクション当たり50〜200μl)で繰り返し精製することにより、溶出時間15分のピークからFKI−0929−B物質を1.5mg、溶出時間17分のピークからFKI−0929−C物質を2.9mg得た。
【0061】
【発明の効果】
以上のとおり、糸状菌に属するFKI−0929−B物質およびFKI−0929−C物質又はこれらの物質からなる組成物を生産する能力を有する微生物を培地に培養して、その培養物中からFKI−0929−B物質およびFKI−0929−C物質又は該物質の組成物を採取することにより、ラノステロール合成酵素に対する阻害活性物質が得られ、該物質は高脂血症や動脈硬化症に基づく心筋梗塞や脳卒中などの成人病の予防、治療効果が期待され、また真菌感染症に対する抗真菌剤としての効果が期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるFKI−0929−B物質の紫外部吸収スペクトル(CH3 OH中)を示したものである。
【図2】本発明によるFKI−0929−B物質の赤外部吸収スペクトル(KBr法)を示したものである。
【図3】本発明によるFKI−0929−B物質のプロトン核磁気共鳴スペクトル(CDCl3 )を示したものである。
【図4】本発明によるFKI−0929−B物質のカーボン核磁気共鳴スペクトル(CDCl3 )を示したものである。
【図5】本発明によるFKI−0929−C物質の紫外部吸収スペクトル(CH3 OH中)を示したものである。
【図6】本発明によるFKI−0929−C物質の赤外部吸収スペクトル(KBr法)を示したものである。
【図7】本発明によるFKI−0929−C物質のプロトン核磁気共鳴スペクトル(CDCl3 )を示したものである。
【図8】本発明によるFKI−0929−C物質のカーボン核磁気共鳴スペクトル(CDCl3 )を示したものである。
Claims (12)
- 糸状菌に属し、FKI−0929−B物質を生産する能力を有する微生物を培地で培養し、培養液中にFKI−0929−B物質を蓄積せしめ、該培養物からFKI−0929−B物質を採取することを特徴とする請求項1記載のFKI−0929−B物質の製造法。
- 糸状菌に属し、FKI−0929−C物質を生産する能力を有する微生物を培地で培養し、培養液中にFKI−0929−C物質を蓄積せしめ、該培養物からFKI−0929−C物質を採取することを特徴とする請求項2記載のFKI−0929−C物質の製造法。
- 糸状菌に属し、FKI−0929−B物質及び/又はFKI−0929−C物質を生産する能力を有する微生物を培地で培養し、該培養液中にFKI−0929−B物質及び/又はFKI−0929−C物質を蓄積せしめ、該培養物からFKI−0929−B物質及び/又はFKI−0929−C物質とを採取することを特徴とする請求項3記載の新規FKI−0929物質の組成物の製造法。
- 糸状菌に属し、FKI−0929−B物質及び/又はFKI−0929−C物質を生産する能力を有する微生物が、Fungal strain FKI−0929(FERM P−19147)である請求項1ないし3記載の化合物又は組成物。
- 糸状菌に属し、FKI−0929−B物質及び/又はFKI−0929−C物質を生産する能力を有する微生物が、Fungal strain FKI−0929(FERM P−19147)である請求項4ないし6記載の化合物又は組成物の製造法。
- 糸状菌に属し、FKI−0929−B物質及び/又はFKI−0929−C物質又はこれらの組成物を生産する能力を有する微生物が、糸状菌FKI−0929株である微生物。
- 微生物がFungal strain FKI−0929(FERM P−19147)である請求項9記載の微生物。
- 請求項1ないし3のいずれかに記載の化合物また組成物がラノステロール合成酵素阻害活性を有する化合物または組成物。
- ヒトのコレステロール蓄積に起因する高脂血症および動脈硬化に基づく心筋梗塞または脳卒中の予防剤または治療剤、あるいは抗真菌剤として用いる請求項1ないし3記載の化合物または組成物。
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| JP2002364701A JP2004196680A (ja) | 2002-12-17 | 2002-12-17 | 新規fki−0929物質およびその製造法 |
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|---|---|---|---|---|
| JP2010520854A (ja) * | 2006-11-29 | 2010-06-17 | ミトス・ファーマシューティカルズ・インコーポレーテッド | 高コレステロール血症の治療又は予防において使用するためのニトロキシド |
-
2002
- 2002-12-17 JP JP2002364701A patent/JP2004196680A/ja active Pending
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