JP2004196742A - グリオキシル酸の製造法 - Google Patents

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Yutaka Yoshida
吉田  裕
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Abstract

【課題】効率的な高純度グリオキシル酸の製造方法を提供する。
【解決手段】i)気相反応でグリオキシル酸エステルを製造する反応工程、(ii)(i)の反応工程の出口反応ガスから凝縮成分を捕集する捕集工程、(iii)(ii)の捕集工程で捕集した捕集液を加水分解することによってグリオキシル酸を製造する加水分解工程、(iv)アルコールの回収工程、を有するグリオキシル酸の製造法であって、(ii)の捕集工程を2段階以上で行い、出口反応ガスに含まれるグリオキシル酸エステルのうち50%以上を捕集した前半の捕集液Aを(iii)の加水分解工程で使用し、後半の捕集液Bを(iv)の回収工程で使用する。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、気相反応で得られたグリオキシル酸エステルを加水分解することによるグリオキシル酸の製造方法に関する。グリオキシル酸は、例えば、医薬中間体、化粧品、香料、農薬等の各種製品の中間原料として、工業的に有用な化合物である。
【0002】
【従来の技術】
従来、気相反応でグリオキシル酸エステルを製造する方法はこれまで種々検討されている。グリオキサールとアルコールを酸素の存在下、反応させる方法(例えば、特許文献1参照)、グリコール酸エステルを酸素の存在下、脱水素する方法(例えば、特許文献2及び未公開特許文献1参照)、ジアルコキシエタナールを酸素の存在下、反応させる方法(例えば、特許文献3参照)等が知られている。
【0003】
またグリオキシル酸エステルを加水分解してグリオキシル酸を製造する方法は、グリオキシル酸エステルヘミアセタールをカスケード型反応器中で向流的に水蒸気で処理する方法(例えば、特許文献4参照)、グリオキシル酸エステルを水の共存下で反応蒸留する方法(例えば、特許文献5参照)等が知られている。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−118650号(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特開平8−34762号(特許請求の範囲)
【特許文献3】
特開2002−241346号(特許請求の範囲)
【特許文献4】
特開平3−20239号(特許請求の範囲)
【特許文献5】
特開平11−335320号(特許請求の範囲)
【未公開特許文献1】
特願平2002−64658号(特許請求の範囲)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、気相反応でグリオキシル酸エステルを製造し、さらにそれを加水分解することによってグリオキシル酸を製造するプロセスについては、これまで十分な検討がなされておらず、必ずしも効率的な製造方法が確立されているわけではない。また、気相反応で副生するカルボン酸エステル由来のカルボン酸が、グリオキシル酸に混入し、高純度化が困難であるという問題点がある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本願発明者等は、上記の目的を達成すべく鋭意検討した結果、気相反応で得られたグリオキシル酸エステルを含む出口反応ガスを捕集する際、多段階で捕集を行い、得られた捕集液中のグリオキシル酸エステルの捕集率に応じて、捕集後各工程と組み合わせることで、より効率的にグリオキシル酸を製造でき、かつグリオキシル酸を高純度化できることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0007】
即ち本発明は、(i)気相反応でグリオキシル酸エステルを製造する反応工程、(ii)(i)の反応工程の出口反応ガスから凝縮成分を捕集する捕集工程、(iii)(ii)の捕集工程で捕集した捕集液を加水分解することによってグリオキシル酸を製造する加水分解工程、(iv)アルコールの回収工程、を有するグリオキシル酸の製造法であって、(ii)の捕集工程を2段階以上で行い、出口反応ガスに含まれるグリオキシル酸エステルのうち50%以上を捕集した前半の捕集液Aを(iii)の加水分解工程で使用し、後半の捕集液Bを(iv)の回収工程で使用することを特徴とするグリオキシル酸の製造法に関する。
【0008】
また本発明は、グリオキシル酸エステルを製造する(i)の反応工程が、グリオキサールとアルコールを酸素の存在下反応させることを特徴としている。
【0009】
さらに本発明は、上記(iv)の回収工程が蒸留工程であり、蒸留塔の塔底液を(iii)の加水分解工程へリサイクルすることを特徴としている。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
(i)反応工程
反応工程は、気相反応でグリオキシル酸エステルを製造できる方法であれば特に限定されない。以下にその具体例を示す。
【0012】
(a)酸化的エステル化反応
酸化的エステル化反応では、触媒の存在下、グリオキサール、アルコール及び分子状酸素を原料に、グリオキシル酸エステルを合成する。
【0013】
アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、iso−ブタノール、tert−ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール等の工業的に入手可能な炭素数1〜18のアルキルアルコールが挙げられる。上記例示のうち、好ましくは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、iso−ブタノール、tert−ブタノール等の炭素数1〜4のアルキルアルコールである。
【0014】
生成するグリオキシル酸エステルは、用いるアルコールによってエステル基部分のアルキル基が異なる。具体的には、グリオキシル酸メチルエステル、グリオキシル酸エチルエステル、グリオキシル酸ノルマルプロピルエステル、グリオキシル酸イソプロピルエステル、グリオキシル酸ノルマルブチルエステル、グリオキシル酸ターシャリーブチルエステル等が挙げられる。
【0015】
グリオキシル酸エステルは、水と接触すると、容易にグリオキシル酸エステル水和物を形成し、安定に存在する。またアルコールと接触すると容易にグリオキシル酸エステルアルキルヘミアセタールを形成し、安定に存在する。これらの水和物化、アルキルヘミアセタール化は可逆反応であり、グリオキシル酸エステルとの共存物質によってはいずれの形態も取ることができ、また混合物として存在することもある。しかし、加水分解反応においては、グリオキシル酸エステル、グリオキシル酸エステル水和物、グリオキシル酸アルキルヘミアセタールは、同じような挙動を示し、同様に取り扱うことができる。
【0016】
従って本発明におけるグリオキシル酸エステルとは、遊離のグリオキシル酸エステル、グリオキシル酸エステル水和物及びグリオキシル酸エステルアルキルヘミアセタールの全てを包含する。
【0017】
反応に供される原料のグリオキサールとアルコールの比は、理論的には、グリオキサールに対して当量のアルコールがあればよい。また原料のグリオキサールと酸素との比は、特に限定されない。しかし、反応器に供給される好ましい原料ガス組成は、グリオキサール:酸素:アルコール=1〜10:1〜10:5〜50(容量%)の範囲である。この範囲よりアルコールの供給量が少ない場合には、グリオキシル酸エステルの収率が低下する。一方、この範囲より供給量を多くしても、グリオキシル酸エステルの収率は向上せず、未反応のアルコールが多くなる。このため、回収再使用するアルコールの量が多くなり好ましくない。
【0018】
反応温度は、用いる触媒等に応じて任意に選択することができるが、150〜500℃の広い範囲で実施可能であり、好ましくは180〜400℃である。また、空間速度(SV)も、用いる触媒等に応じて任意に選択することができるが、100〜10,000hr- 1 の広い範囲で実施可能であり、好ましくは500〜5,000hr- 1 である。
【0019】
本反応は触媒を用いてもよい。触媒としては、リン含有無機酸化物を含有する触媒が好ましい。上記リン含有無機酸化物としては、特に限定されるものではなく、種々のものが使用できるが、その中でも金属リン酸塩及びリン含有ヘテロポリ酸が好ましい。
【0020】
上記金属リン酸塩の金属としては、リン酸塩を形成するものであれば、特に限定されない。例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、B、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、Pd、Ag、Cd、Sn、Pb等が挙げられる。上記金属リン酸塩における金属とリンとの比は、オルトリン酸塩の量論比からずれていてもよく、具体的には、金属/リン=1/0.5〜1/2の範囲が好ましいが、オルトリン酸塩の量論比に近い方がより好ましい。金属リン酸塩の金属は、一種類だけでなく、二種類以上を組み合わせることもできる。つまり、二種類以上の金属を含有する金属リン酸塩を使用することもできる。また、金属リン酸塩は、互いに異なる金属を含有する金属リン酸塩を二種類以上混合してなる混合物であってもよい。
【0021】
すなわち、本発明における金属リン酸塩とは、一種類の金属を含有する金属リン酸塩;二種類以上の金属を含有する金属リン酸塩;互いに異なる金属を含有する金属リン酸塩を二種類以上混合してなる混合物;及びこれらを混合してなる混合物を示す。さらには、金属リン酸塩を触媒層として反応器に充填する際に、気体の導入側と気体の出口側とで異なる金属リン酸塩を用いることもできる。上記金属リン酸塩としては、市販の試薬等をそのまま用いてもよく、あるいは金属塩とリン酸源とを用いて、水溶液からの共沈法、若しくはスラリー状にしての混練法等により調製してもよい。上記の金属塩としては、金属の硝酸塩や炭酸塩、蓚酸塩、水酸化物、塩化物等が挙げられる。また、上記のリン酸源としては、オルトリン酸、リン酸アンモニウム、リン酸一水素アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム等のリン酸塩が挙げられる。これら、金属塩とリン酸源の組み合わせは、特に限定されるものではなく、種々の組み合わせ
が可能である。
【0022】
金属リン酸塩は、そのまま触媒として使用することが出来るが、100〜120℃で空気中で乾燥した後、空気中で焼成し、さらに、必要に応じて成型、又は粒径を揃えることが好ましい。焼成温度は、金属リン酸の種類で異なるが、300〜1000℃の範囲であり、より好ましくは400〜800℃の範囲である。また、金属リン酸塩は、それ自体で触媒として使用することができるが、無機酸化物を混合して混合物として用いる方が好ましい。ここで用いられる無機酸化物としては、シリカ、チタニア、ジルコニア、酸化ニオブ、ケイソウ土等が挙げられる。尚、チタニアについては、アナターゼ型であってもよく、ルチル型であってもよい。
【0023】
金属リン酸塩に混合される無機酸化物の量は、金属リン酸塩の種類によって異なるが、金属リン酸塩と無機酸化物との合計量に対して、1〜90重量%の範囲内が好ましく、10〜60重量%の範囲内がより好ましい。
【0024】
上記のリン含有ヘテロポリ酸としては、特に限定されるものではないが、その中でも、下記一般式
HaPM12O40・nH2O
(式中、Mはタングステン、モリブデン及びバナジウムからなる群より選ばれる一種以上の元素を表し、aはMにより定まる数値であり、nは0又は正数である)で表
されるケギン型ヘテロポリ酸が特に優れた触媒性能を有するので好ましい。
【0025】
また、ケギン型ヘテロポリ酸中のHの一部又は全部が、アルカリ金属やアルカリ土類金属、遷移金属等の金属で置換された化合物、すなわち下記一般式
H(a−b)M’bPM12O40・nH2O
(式中、Mはタングステン、モリブデン及びバナジウムからなる群より選ばれる一種以上の元素を表し、M′はアルカリ金属やアルカリ土類金属、遷移金属等の金属元
素を表し、aはMにより定まる数値であり、bは0<b≦aを満たす任意の数値であり、nは0又は正数である)で表されるヘテロポリ酸塩を用いることもできる。
【0026】
上述のヘテロポリ酸やヘテロポリ酸塩は、そのまま触媒として使用することができるが、担体に担持して使用する方が好ましい。この場合の担体としては、反応に悪影響を与えず、かつヘテロポリ酸やヘテロポリ酸塩に対して安定なものが好ましく、具体的には、シリカ、チタニア、ケイソウ土等が挙げられる。また、担持方法は、特に限定されるものではなく、いわゆる混練法や含浸担持法等を採用することができる。リン含有ヘテロポリ酸は、後段反応に供する前に乾燥、焼成等の前処理を行う必要はないが、反応温度よりも高い温度で前処理する方がより好ましい。
【0027】
また反応工程における、グリオキサールの気相反応器への供給方法としては、市販のグリオキサール水溶液を供給してもよいし、気相反応でグリオキサールを製造し、引き続き酸化的エステル化反応によってグリオキシル酸エステルを製造してもよい。
【0028】
気相反応でのグリオキサールの製造方法としては、エチレングリコールを分子状酸素の存在下、酸化反応を行うことで実施できる。反応は触媒の存在下に行うことが好ましく、例えば金属Ag、CuO−ZnO/α−Al2O3、Ag2O−SiO2−ZnO等が例示できる。特に、少量のリン含有成分の存在下で金属Agを触媒とすることが好ましい。
【0029】
この場合供給する酸素は、分子状の酸素を含有するガス、即ち、いわゆる分子状酸素含有ガスを用いて供給することができる。前段反応に用いる分子状酸素含有ガスとしては、酸素、空気、それらを窒素やヘリウム等の不活性ガスで希釈した混合ガス等の通常の分子状酸素含有ガスを使用することができるが、工業的には、空気、または、空気と不活性ガスとの混合ガスを使用するのが好ましい。原料ガスの組成は、エチレングリコール:酸素=4〜10:4〜10(容量%)が好ましい。
【0030】
また、必要に応じて、原料のエチレングリコールに、亜リン酸トリエチル、リン酸ジエチル等のリン含有成分を添加してもよい。上記リン含有成分は、エチレングリコールに対するリンの添加量(濃度)が20ppm以上となるように添加することが好ましく、40〜100ppmの範囲内がより好ましく、50〜70ppmの範囲内がさらに好ましい。
【0031】
また、反応の空間速度(SV)は10,000〜1,000,000hr- 1 とすればよい。さらに、前段反応の反応温度は、供されるガスの組成に応じて、400〜600℃の範囲で選択すればよい。
【0032】
従って、グリオキサールの合成とグリオキシル酸エステルの合成を、連続的に気相反応で行う場合は、例えばエチレングリコールを、金属銀等の触媒の存在下、分子状酸素含有ガスで気相酸化(酸化的脱水素)してガス状のグリオキサールを得て(前段反応)、引き続き、これに気化室でガス状にしたアルコールを加えて前段反応器に連結された後段反応器に導入し、後段反応器中でリン含有触媒等の存在下、分子状酸素含有ガスで気相酸化(酸化的エステル化)することによって、グリオキシル酸エステルを得る(後段反応)方法が挙げられる。生成した反応ガスは、冷却したり、溶剤に吸収させることで、酸化的エステル化反応液として取得することができる。
【0033】
(b)酸化的脱水素反応
またグリオキシル酸エステルは、酸素の存在下、グリコール酸エステルの酸化的脱水素反応によって製造することができる。用いる酸素は、分子状酸素、触媒中の格子酸素等の使用が挙げられるが、一般的には分子状酸素含有ガスを用いるのが好ましい。分子状酸素含有ガスとしては、空気や酸素、またそれらを窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスで希釈した混合ガスを使用することができるが、工業的には空気または空気と不活性ガスを使用するのが好ましい。
【0034】
また本反応は、触媒の存在下で行ってもよい。その場合に用いる触媒としては、グリコール酸エステルを酸化脱水素反応させることによりグリオキシル酸エステルが得られる限り特に限定されるものではないが、例えば、ヘテロポリ酸及び/またはヘテロポリ酸塩を含有する触媒や、リン酸銅が挙げられる。これらの中でも、ヘテロポリ酸及び/またはヘテロポリ酸塩が好ましい。
【0035】
ヘテロポリ酸としては例えば、モリブドリン酸、タングストリン酸、モリブドケイ酸、タングストケイ酸、モリブドバナドリン酸、モリブドバナドケイ酸、タングストバナドリン酸及びタングストバナドケイ酸が挙げられる。
【0036】
ヘテロポリ酸塩とは、上記ヘテロポリ酸の金属塩またはオニウム塩が挙げられ、金属塩としては、周期律表の1族、2族、4〜16族よりなる群から選ばれる金属との塩であり、オニウム塩は、アンモニウムやアミン類とのアンモニウム塩が挙げられる。
【0037】
ヘテロポリ酸及び/またはヘテロポリ酸塩はそのまま用いてもよいし、担体に担持して用いてもよい。
【0038】
気相反応を行う装置内に供給されるグリコール酸エステルの量は、濃度が通常0.1〜20容量%程度であり、好ましくは1.0〜15容量%である。分子状酸素の供給量は、通常0.03〜20容量%であり、好ましくは0.3〜15容量%である。またグリコール酸エステルに対する酸素のモル比(酸素/グリコール酸エステル)は通常0.3〜5、好ましくは0.5〜2である。
【0039】
反応温度は特に限定されないが、通常150〜400℃程度であり、好ましくは180〜350℃である。反応圧力に特に制限はなく、常圧、加圧、減圧のいずれの条件でも行うことができるが、通常0.1〜1MPa程度である。
【0040】
使用するグリコール酸エステルは、どのような製法で得られたものでも良いが、例えばグリコール酸とアルコールのエステル化で得られたもの、エチレングリコールとアルコールの酸化的エステル化反応で得られたもの、エチレングリコールを酸化してグリオキサールおよび/又はグリコールアルデヒドを経てアルコールと反応させ得られたもの、一酸化炭素とホルムアルデヒドから得られるポリグリコリドを加アルコール分解して得られたもの等が使用できる。
【0041】
上記方法で得られたグリコール酸エステルを含む反応液はそのまま粗製品として使用しても良いし、精製工程を経て精製したものでも良いが、経済的には安価な粗製品を用いる方が有利である。
【0042】
但し粗製のグリコール酸エステルを含む反応液は、副生物として水や、未反応原料のアルコール等が混在する。混在する水は本反応において生成物であるグリオキシル酸エステルの加水分解を促進するため、反応中にできるだけ共存しない方が好ましいが、精製のために脱水精製工程を入れることは経済的に好ましくない。
【0043】
この水の悪影響を防ぐための対応策として共存のアルコール濃度を高めたり、アセトニトリル、トルエン、シクロヘキサン等の反応に不活性な溶媒で希釈する対応が好ましい。
【0044】
アルコールや反応に不活性な溶媒を反応時に同伴することによりグリオキシル酸エステルの収率が向上する原因は明らかではないが、反応の結果、化学量論上グリオキシル酸エステル1モルに対し1モル生成する水により、生成したグリオキシル酸エステルが加水分解してグリオキシル酸となり、更には脱炭酸へと分解する反応を、同伴したアルコールや不活性な溶媒が抑制するためであると推察される。
【0045】
これらの溶媒の中でもグリオキシル酸エステルのエステル部に相当するアルコールを同伴すると、グリオキシル酸エステルの選択率を向上させることができるため好ましい。
【0046】
アルコールと水の好ましい量範囲は、反応器入口での水濃度が1容量%以上の時、アルコール量は水1モルに対し10モル以下が好ましく、5モル以下がより好ましく、3モル以下が更に好ましい。
【0047】
また、反応器入口の水濃度が1容量%未満の時、アルコールの濃度は供給するグリコール酸エステル1モルに対し5モル以下が好ましく、4モル以下がより好ましく、3モル以下が更に好ましい。
【0048】
(ii)捕集工程
上記気相反応で生成したグリオキシル酸エステルを含む出口反応ガスを、捕集して液化を行う。捕集の方法としては、出口反応ガスを冷却して凝縮成分を凝縮させる方法、反応ガスと溶剤を接触させて吸収捕集する方法等が挙げられる。
【0049】
本発明においては、捕集を多段階で行い、グリオキシル酸エステルの捕集率に応じて、捕集液の処理方法を変えることにより、より効率的に高純度のグリオキシル酸を製造することに特徴がある。
【0050】
捕集を多段階にするためには、例えば反応ガスを冷却する際に、ある温度で冷却し凝縮捕集した後のガスを、さらに低温に冷却して凝縮捕集してもよい。また異なる温度や組成の溶剤と反応ガスを、多段階で接触させてもよい。また、冷却し凝縮捕集した後のガスと溶剤を接触させるような、凝縮と吸収を組み合わせる捕集方法でもかまわない。
【0051】
捕集形式については、公知の形式を用いて実施できる。出口反応ガスを冷却し凝縮捕集する場合は、コイル式、二重管式、多管式等の熱交換器を用い、出口反応ガスよりも温度の低い冷媒を使用して、出口反応ガスを冷却することができる。また出口反応ガスと溶剤を接触させて、吸収捕集する場合は、気泡攪拌槽、気泡塔、棚段塔等のガス分散型吸収装置や、スプレー塔、濡れ壁塔、充填塔等の液分散型吸収装置を使用することができる。
【0052】
上記(i)の反応工程で得られた出口反応ガス中には、例えば(a)酸化的エステル化反応では、未反応の原料アルコールが含まれており、また(b)酸化的脱水素反応では、加水分解抑制のために供給したアルコールが含まれている。捕集工程を1段階で行った場合、捕集液中には目的生成物であるグリオキシル酸エステルの他に、軽沸点成分であるアルコールが大量に含まれることになる。この捕集液をそのまま加水分解工程で用いた場合、アルコールが多いため、平衡反応である加水分解反応のグリオキシル酸収率が低下する。また、収率を向上させるためには、大量の水を使用する必要があるが、その場合グリオキシル酸から水を除去するために多大な用役費が必要となる。
【0053】
一方、多段階で出口反応ガスを捕集した場合、前半に捕集された液にはグリオキシル酸エステルが高濃度で含まれるのに対しアルコールは低濃度である。逆に後半に捕集された液にはグリオキシル酸エステルが低濃度で含まれるのに対しアルコールは高濃度である。従って、前半に捕集された液を用いて加水分解反応を行うことで、使用する水の量が少なく、効率よくグリオキシル酸を製造することができる。
【0054】
この場合、例えば捕集を2段階で行った場合、1段目の捕集を前半の捕集、2段目の捕集を後半の捕集とする。また例えば捕集を3段階で行った場合、1段目の捕集を前半、2及び3段目の捕集を後半としてもよいし、1及び2段目の捕集を前半、3段目の捕集を後半としてもよい。4段階以上の捕集についても同様である。但し、本発明においては、前半の捕集で得られる捕集液中に、出口反応ガス中に含まれるグリオキシル酸エステルの50%以上が含まれることに特徴がある。
【0055】
また例えば、反応工程で酸化的エステル化反応を行った場合、グリオキシル酸エステルの他に、アルコールから誘導されるカルボン酸エステルが副生する。例えばアルコールがメタノールの場合はギ酸メチル、エタノールの場合は酢酸エチル等である。これらのカルボン酸エステルをグリオキシル酸エステルと共に捕集した場合、カルボン酸エステルも加水分解工程で加水分解を受け、ギ酸や酢酸といったカルボン酸が生成する。カルボン酸は沸点が高く、製品であるグリオキシル酸から除去することが困難であり、不純物として製品中に含まれてしまうことになる。
【0056】
カルボン酸エステルは、グリオキシル酸エステルよりも軽沸点成分であり、捕集の際に、多段階で捕集することで、前半のグリオキシル酸エステルを多く含む捕集液中の、カルボン酸エステルの濃度を低下させることができるため、製品のグリオキシル酸中のカルボン酸の量を低減でき、より高純度のグリオキシル酸を製造することができる。
【0057】
従って、捕集工程を多段階にした場合、前半に捕集した捕集液を捕集液A、引き続き後半に捕集された捕集液を捕集液Bとすると、捕集液Aにはグリオキシル酸エステルが高濃度で含まれるため、この液を加水分解工程で使用し、捕集液Bにはアルコールが高濃度で含まれるため、この液をアルコールの回収工程で使用することで、上記の効果を得ることができる。特に捕集液Aに含まれるグリオキシル酸エステルの量が、反応ガスに含まれるグリオキシル酸エステルの50%以上の場合に、上記効果は顕著であり、より好ましくは60%、一層好ましくは70%以上である。
【0058】
(iii)加水分解工程
本発明における加水分解反応は、グリオキシル酸エステルを加水分解してグリオキシル酸を生成できれば良く特に限定されない。加水分解反応は、酸触媒、塩基触媒のどちらでも反応が進行する。
【0059】
酸触媒を用いて加水分解する場合、水とグリオキシル酸エステルとの割合は、グリオキシル酸エステルの種類や反応条件によって異なるが、一般的には当モル〜200倍モルであり、好ましくは2倍モル〜100倍モルである。当モル以下では水が不足し、200倍モル以上では、反応終了後のグリオキシル酸の濃度が低く、濃縮するためにコストがかかる場合がある。
【0060】
反応温度は、30℃〜300℃が適当であり、好ましくは50℃〜250℃である。反応圧力は大気圧、加圧、減圧のいずれの条件でも実施できる。
【0061】
また加水分解反応の形態は、連続式、回分式、半回分式の何れであってもよく、特に限定されるものではない。
【0062】
酸性条件で加水分解を行う場合、反応は平衡反応であり、転化率は平衡に支配される。従って転化率を高めたい場合は、平衡を生成物側へ移動させる必要がある。転化率を向上させる手段としては、水の使用量を多くする、反応蒸留や抽出によって生成するアルコールやグリオキシル酸を系外へ抜き出しながら加水分解を行う等の方法がある。
【0063】
反応蒸留によって加水分解を行う場合、副生するアルコールを塔頂から抜き出しながら反応させればよい。アルコールがメタノールのように水よりも沸点が低い場合、蒸留によってメタノールを濃縮して留出させることができる。またアルコールがエタノール、プロパノール、ブタノール等、水と共沸するアルコールの場合、共沸組成で留出させることができるが、平衡を生成物側へ移動させるためには、塔底液中の水とアルコールの比を、共沸組成よりも水が多くなるように、原料組成を制御する必要がある。反応蒸留は回分式、半回分式、連続式のいずれの形態でも実施できる。
【0064】
また、酸性条件での加水分解において、反応液のpHを酸性に維持しながら、塩基性化合物を添加する方法で、平衡を生成物側へ移動させることができる。これは、グリオキシル酸が塩基性化合物との塩を形成するため、遊離のグリオキシル酸濃度が減少し、加水分解反応の平衡が移動するためである。
【0065】
酸性条件で加水分解工程を行う場合、触媒を使用しても使用しなくてもどちらでもかまわない。グリオキシル酸エステルの加水分解によって生成するグリオキシル酸は、酸触媒として機能するため、別途酸触媒を添加しなくても加水分解は進行する。
【0066】
しかし、反応速度を早めたいときや、反応条件を緩和したいときなどには、酸触媒を別途添加してもかまわない。酸触媒としては、例えば具体的には、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ヘテロポリ酸、p−トルエンスルホン酸、酢酸、グリオキシル酸、酸性イオン交換樹脂、ゼオライト、粘土等が挙げられる。
【0067】
また加水分解反応を塩基触媒を用いて行うこともできる。塩基触媒としては、例えばアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、アルコキサイドや塩基性イオン交換樹脂等が挙げられ、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、ナトリウムメトキサイド、カリウムメトキサイド等が挙げられる。
【0068】
しかし、塩基触媒を用いて加水分解を行う場合、反応液の塩基性が強くなりすぎると、グリオキシル酸エステルや、グリオキシル酸がカニッツァロ反応を起こし、グリコール酸エステル、シュウ酸エステル、グリコール酸、シュウ酸が生成して、選択率の低下を招くおそれがある。従って塩基性条件で加水分解反応を行う場合は、反応液のpHを11以下に維持しながら行うことが好ましい。
【0069】
塩基触媒を用いて加水分解する場合、水とグリオキシル酸エステルとの割合は、グリオキシル酸エステルの種類や反応条件によって異なるが、一般的には当モル〜200倍モルであり、好ましくは2倍モル〜100倍モルである。当モル以下では水が不足し、200倍モル以上では、反応終了後のグリオキシル酸の濃度が低く、濃縮するためにコストがかかる場合がある。
【0070】
反応温度は、10℃〜200℃が適当であり、好ましくは30℃〜150℃である。反応圧力は大気圧、加圧、減圧のいずれの条件でも実施できる。
【0071】
また加水分解反応の形態は、連続式、回分式、半回分式の何れであってもよく、特に限定されるものではない。
【0072】
塩基触媒を用いた加水分解の場合、生成物はグリオキシル酸の塩として得られる。グリオキシル酸塩は、塩酸や硫酸等の強酸と接触させることで、グリオキシル酸を遊離させることができる。
【0073】
上記のようにグリオキシル酸エステルを加水分解することでグリオキシル酸またはグリオキシル酸塩を製造することができる。本発明では、グリオキシル酸とは、遊離のグリオキシル酸及びグリオキシル酸塩を包含する。
【0074】
生成したグリオキシル酸は水と接触すると容易にグリオキシル酸水和物となる。またアルコールと接触すると容易にグリオキシル酸アルキルヘミアセタールとなる。
【0075】
この水和物化やアルキルヘミアセタール化は平衡反応であり、加水分解終了後に系中に水が存在する場合は、該組成物中のグリオキシル酸は、平衡に従って一部または全部がグリオキシル酸水和物として存在する。
【0076】
また、系にアルコールが存在する場合は、該組成物中のグリオキシル酸は、平衡に従って一部または全部がグリオキシル酸アルキルヘミアセタールとして存在する。
【0077】
従って、本発明のグリオキシル酸の製造方法におけるグリオキシル酸は、共存物の組成や濃度によっては、遊離のグリオキシル酸の他にグリオキシル酸水和物やグリオキシル酸アルキルヘミアセタールの形態をとる場合がある。
【0078】
上記のようにして得られたグリオキシル酸は、溶液のままでもよいし、濃縮して固体としてもよい。また、その後の貯蔵、移送方法や用途によって、必要であれば精製してもよい。精製は抽出や再結晶等の公知の方法で実施できる。
【0079】
(iv)回収工程
加水分解工程で副生したアルコールは、回収してリサイクル使用することができる。加水分解した反応液から、蒸留によってアルコールを含む留分を得ることができる。また加水分解を反応蒸留によって実施した場合は、反応蒸留塔の塔頂からアルコールを含む留分を得ることができる。これらの留分から、アルコールを回収してリサイクルすることで、アルコールの有効利用を図り、より安価にグリコール酸を製造することができる。
【0080】
これらの留分からアルコールを回収する方法は、蒸留、抽出等、公知の方法で実施できる。中でも蒸留が好ましい。この際に、(ii)の捕集工程で得られた捕集液Bを合わせて処理し、捕集液B中に含まれるアルコールを同時に回収することで効率的に回収工程を行うことができる。
【0081】
また、(ii)の捕集工程の捕集液B中にグリオキシル酸エステルが含まれているときには、グリオキシル酸エステルは蒸留塔の塔底から水と共に得られる。また蒸留中にグリオキシル酸エステルが一部加水分解してグリオキシル酸が生成する場合があり、この場合グリオキシル酸も塔底から得られる。この塔底液を(iii)の加水分解工程へリサイクルすることができる。塔底液に含まれるグリオキシル酸エステルを加水分解することで、(i)の反応工程で生成したグリオキシル酸エステルの大半を回収することができ、グリオキシル酸の収量向上を図ることができる。
【0082】
(v)他の工程
本発明においては、上記の(i)反応工程(ii)捕集工程(iii)加水分解工程(iv)回収工程の4工程が必須であるが、それ以外の工程を含んでいてもよい。
【0083】
例えば、酸化的エステル化反応により得られた反応液には、目的物であるグリオキシル酸エステルの他に、グリコール酸エステルやシュウ酸エステル、さらに重質な成分等の副生成物が含まれる。この反応液を用いてそのまま加水分解を行うと、得られるグリオキシル酸水溶液に着色が観察されることがある。これは、酸化的エステル化反応液中に含まれる着色を有する成分が濃縮されて着色する場合と、反応液に含まれる副生成物が加水分解工程によって着色成分へと変化する場合がある。
【0084】
着色成分及び加水分解工程によって着色を引き起こす成分は、グリオキシル酸エステルよりも重質な成分であり、これらを加水分解前に除去・低減することによって、製品であるグリオキシル酸水溶液の着色を著しく低減することができ、また経時的な着色を抑えることができる。
【0085】
着色を低減するために、捕集液を蒸留工程で処理し、グリオキシル酸エステルを含む留分を留出させることができる。蒸留方法としては、単蒸留、多段の蒸留塔を用いた精留、自然循環式蒸発、強制循環式蒸発、液膜式蒸発等が挙げられる。蒸留工程は、回分式、半回分式、連続式のいずれの形態でも実施できる。上記例示のうち、液膜式蒸発が、酸化的エステル化反応液の熱履歴を小さくできるため好ましい。液膜式蒸発には、上昇液膜型、流下液膜型、攪拌液膜型等の形式があるが、いずれも好適に実施できる。
【0086】
酸化的エステル化反応液の捕集液中には、グリオキシル酸エステルの他に、未反応原料であるアルコールと、副生成物である水が存在する。水が存在するとグリオキシル酸エステルは、グリオキシル酸とアルコールに加水分解する。
【0087】
蒸留工程でグリオキシル酸エステルが加水分解すると、生成するグリオキシル酸は蒸気圧が小さいため留出せず、重質分と共に抜き出されることになる。その場合、留分として得られるグリオキシル酸エステルが減少することになり好ましくない。そこで、蒸留工程は、できるだけグリオキシル酸エステルの加水分解を抑制できる条件で実施することが好ましい。
【0088】
蒸留条件としては、圧力は常圧、減圧、加圧のいずれでもかまわない。温度は200℃以下が好ましい。酸化的エステル化反応液の滞留時間は1時間以内が好ましく、20分以内がさらに好ましく、5分以内がより一層好ましい。
【0089】
以下、図1に従って、本発明の具体的な実施形態を説明する。例としてエチレングリコールを酸化してグリオキサールを合成し、引き続きメタノールと空気を供給して酸化的エステル化反応によりグリオキシル酸エステルを製造し、それを加水分解することによりグリオキシル酸を製造するプロセスを挙げる。
【0090】
(1)反応工程:前段の気相反応器に、エチレングリコールと空気を供給して、酸化反応によりグリオキサールを製造する。得られた反応ガスにメタノールと空気を加え、引き続く後段の気相反応器に供給し、酸化的エステル化反応によってグリオキシル酸メチルを製造する。(2)捕集工程:反応工程で得られた出口反応ガスを、捕集器Aにて冷却し凝縮捕集を行い(前半の捕集)、凝縮液Aを得る。捕集器Aを出た反応ガスを再度捕集器Bにて捕集器Aよりも低温で冷却し(後半の捕集)、凝縮液Bを得る。(3)蒸留工程:凝縮液Aを薄膜蒸発器にかけ、グリオキシル酸エステルを含む留分を取得し、重質成分を除去する。(4)加水分解工程:蒸留工程の留出液に水を加えて、メタノールを留去しながら反応蒸留による加水分解を行い、グリオキシル酸を得る。(5)回収工程:加水分解工程で得られた留分と凝縮液Bを合わせて蒸留を行い、メタノールを塔頂から回収し、塔底から水、グリオキシル酸エステル、グリオキシル酸を含む混合物を得る。(6)リサイクル工程:回収工程の留分を反応工程の後段反応器へリサイクルし、回収工程の塔底液を、加水分解工程へリサイクルする。
【0091】
また、グリオキシル酸エステルの加水分解を行わず、グリオキシル酸エステルを製品として取得する場合、上記の(3)蒸留工程、(4)加水分解工程は不要になるが、捕集液から蒸留等によって、グリオキシル酸エステルを得ることができる。その場合も、捕集工程を多段階にすることで、用役費や設備費の削減を図ることができる。
【0092】
【実施例】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0093】
実施例1
(反応工程)
前段反応用反応管(前段反応器)として内径1インチのSUS製パイプを用い、該反応管内に触媒として、反応管におけるガス入口側に粒子径が20メッシュ〜30メッシュの金属銀(横浜金属株式会社製の電解銀)48gを充填するとともに、反応管内におけるガス出口側に、粒子径が16メッシュ〜20メッシュの金属銀(横浜金属株式会社製の電解銀)40gを充填(積層)した。また、反応管のガス入口側には、該反応管に供給する供給ガスを所定温度に加熱するための予熱器を取り付けた。予熱器には該予熱器に供給するエチレングリコールを気化させるための蒸発器を取り付けた。さらに、反応管の外側に断熱材を巻き付けて該反応管を保温し、前段反応時における触媒層の温度(反応温度)が所定温度に維持されるようにした。つまり、反応管内部を保温して、断熱反応にほぼ等しい条件下で前段反応が進行するようにした。
【0094】
供給ガスにおけるエチレングリコール、酸素、アルコールとしてのメタノールの割合をこの順に4.0容量%、4.8容量%、3.0容量%(残りは窒素ガスであり、合計は100容量%である)とした。また、該供給ガスにリン含有化合物としての亜リン酸トリエチルを、エチレングリコールに対するリンの割合が60ppmとなるように添加した。そして、上記組成の供給ガスを、空間速度(SV)が45000hr- 1 となるようにして反応管に連続的に供給し、前段反応を行った。反応温度、すなわち、触媒層の温度は555℃に達した。その結果、エチレングリコールの転化率は100%であり、グリオキサール収率は84%であった。
【0095】
前段反応ガスの冷却は、前段触媒の直後に反応管径を10mmにしぼり、その外側に冷却用のジャケットを有する2重管構造からなる冷却層を設け、胴側に熱媒油を流すことで行った。後段反応へ導入される反応ガスの温度は、導入する熱媒油の温度と流量を変化させることで所定の温度に調節した。後段触媒としてのチタニア添加リン酸第二鉄を下記方法によって調製した。
【0096】
まず、金属リン酸塩としてのリン酸第二鉄(FePO4 ・4H2 O、片山工業株式会社製の試薬)と無機酸化物としてのアナターゼ型二酸化チタン(TiO2、和光純薬工業株式会社製の試薬)とを、乳鉢を用いて十分に混合するとともに、該混合物を水で調湿した。上記リン酸第二鉄における鉄とリンのモル比は1/1である。また、二酸化チタンの添加量は得られるチタニア添加リン酸第二鉄に占めるチタニアの割合が30重量%となるように設定した。次いで、得られた混合物を、いわゆる製錠版を用いて成形した後、120℃の空気中で乾燥した。そして、得られた外径5mm、長さ6mmの円柱状ペレットを、500℃の空気中で3時間焼成した。これにより、触媒としてのチタニア添加リン酸第二鉄を調製した。そして、後段反応器に上記チタニア添加リン酸第二鉄を所定量充填した。
【0097】
後段反応のアルコールとしてメタノールを用いた。そして、後段供給ガスにおけるグリオキサール、酸素、およびメタノールの割合を、この順に、2.8容量%、3.7容量%、および14.0容量%(残りは窒素ガスであり、合計は100容量%)とした。なお、酸素(空気)およびメタノールは、前段反応で得られた反応ガスに含まれる酸素およびメタノールを定量し、上記組成の供給ガスを形成できるように、その不足分を気化室に供給した。該気化室はメタノールを気化するとともに前段反応で得られた反応ガス、気化したメタノール、および空気の混合気体を形成した後段反応器に連続的に供給することができるように、該後段反応器のガス入口側に取り付けた。
【0098】
そして、上記組成の供給ガスを空間速度(SV)が800hr- 1 、後段入口ガス温度が190℃になるようにして、後段反応器に連続的に供給し、後段反応を行った。反応開始24時間後のグリオキサールの転化率は99.5%であり、グリオキシル酸メチルの選択率は75%であった。経時的に触媒の性能劣化が見られたため、冷却層に流す熱媒油の温度を上げ、後段入口ガス温度を上げることで活性劣化を補う運転を行った。反応開始100時間後の後段入口ガス温度は210℃であり、グリオキサールの転化率、グリオキシル酸メチルの選択率はそれぞれ99.6%、72%であった。
【0099】
(捕集工程)
上記出口反応ガスを、捕集器に導入して冷却し、凝縮成分を凝縮捕集した。捕集器は2基を直列につなぎ、1基目の捕集器Aには40℃の温水を流し、反応ガスを冷却して捕集液Aを得た。2基目の捕集器Bには15℃の水を流し、捕集器Aから出た反応ガスを通して冷却し、捕集液Bを得た。
【0100】
捕集液を、ガスクロマトグラフィー及びカールフィッシャー式水分計で分析したところ、捕集液Aには、グリオキシル酸メチル35質量%、メタノール38質量%、水22質量%およびグリコール酸メチル2質量%が含まれており、捕集液Bには、グリオキシル酸メチル4質量%、メタノール49質量%、水42質量%およびグリコール酸メチル1質量%が含まれていた。出口反応ガスに含まれるグリオキシル酸メチルのうち、捕集液Aに捕集された割合は95%であった。また捕集液Aと捕集液Bを合わせたグリオキシル酸メチルの捕集液は99.5%であった。
【0101】
(蒸留工程)
捕集工程で得られた捕集液Aを薄膜蒸発器(攪拌液膜型)を用いて蒸留操作を行った。圧力0.02MPa、熱媒温度170℃、回転数350rpm、フィード速度毎時300mlで操作を行い、メタノール、水及びグリオキシル酸メチルを含む留出液を得た。留出液中のグリオキシル酸メチルの濃度は34質量%であった。その時のグリオキシル酸メチルの留出率は95%であった。
【0102】
(加水分解工程)
蒸留工程で得られた留出液を用いて加水分解を行った。5段のガラス製オルダーショウ式蒸留塔を備えた1Lのフラスコに、上記留出液650gと水312gを仕込んだ。このときの水のグリオキシル酸メチルに対するモル比は10であった。フラスコを加熱し、還流比0.5で塔頂からメタノールと水の混合物を抜き出しながら、6時間反応蒸留を行った。反応後、塔底液を分析したところ、グリオキシル酸メチル基準のグリオキシル酸の収率は98モル%であり、塔底液中のグリオキシル酸の濃度は46質量%であった。またギ酸がグリオキシル酸に対して0.1モル%含まれていた。
【0103】
また出口反応ガス中に含まれていたグリオキシル酸メチル基準のグリオキシル酸収率は91モル%であった。
【0104】
(回収工程)
捕集工程で得られた捕集液B227gと、加水分解工程で留出した留出した液672gを、15段のガラス製オルダーショウ式蒸留塔を備えた1Lのフラスコに仕込み、蒸留を行った。常圧下、還流比1で蒸留を行い、塔頂からメタノールを留出させた。塔底液を分析したところ、グリオキシル酸メチル0.6質量%、グリオキシル酸2.4質量%、水92質量%が含まれていた。
【0105】
比較例
反応工程を実施例1と同様に行い、捕集工程を1基の捕集器を用い、15℃の水を使用して冷却し、1段での捕集液を得た。捕集液には、グリオキシル酸メチル26質量%、メタノール42質量%、水28質量%およびグリコール酸メチル2質量%が含まれていた。出口反応ガスに含まれるグリオキシル酸メチルのうち、捕集液に捕集された割合は99.5%であった。得られた捕集液を用いて蒸留工程を実施例1と同様に行った。その後、蒸留工程の留出液を用いて加水分解工程を行った。5段のガラス製オルダーショウ式蒸留塔を備えた1Lのフラスコに、蒸留工程の留出液780gと水173gを仕込んだ。このときの水のグリオキシル酸メチルに対するモル比は10であった。フラスコを加熱し、還流比0.5で塔頂からメタノールと水の混合物を抜き出しながら、6時間反応蒸留を行った。反応後、塔底液を分析したところ、グリオキシル酸メチル基準のグリオキシル酸の収率は95モル%であり、塔底液中のグリオキシル酸の濃度は41質量%であった。またギ酸がグリオキシル酸に対して3.1モル%含まれていた。従って、捕集工程を1段にすると、製品グリオキシル酸中の不純物であるカルボン酸の濃度が高くなることが分かる。
【0106】
実施例2
実施例1の回収工程で得られた塔底液を加水分解工程へリサイクルした。5段のガラス製オルダーショウ式蒸留塔を備えた1Lのフラスコに、実施例1の蒸留工程の留出液617g、実施例1の回収工程の塔底液332g及び水3gを仕込んだ。このときの水のグリオキシル酸メチルに対するモル比は10であった。フラスコを加熱し、還流比0.5で塔頂からメタノールと水の混合物を抜き出しながら、6時間反応蒸留を行った。反応後、塔底液を分析したところ、グリオキシル酸メチル基準のグリオキシル酸の収率は99モル%であり、塔底液中のグリオキシル酸の濃度は49質量%であった。またギ酸がグリオキシル酸に対して0.1モル%含まれていた。
【0107】
また出口反応ガス中に含まれていたグリオキシル酸メチル基準のグリオキシル酸収率は99モル%であった。従って、回収工程の塔底液をリサイクルすることで、プロセス全体でのグリオキシル酸の収率が向上することが分かる。
【0108】
【発明の効果】
本発明のグリオキシル酸の製造方法によって、加水分解工程で処理されるアルコールの量が減少するため、用役費や設備費を低減することができる。また気相反応にて副生するカルボン酸エステル由来のカルボン酸の製品への混入量を低減し、高純度のグリオキシル酸を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例におけるグリオキシル酸の製造法に好適に用いられる反応工程の概略の構成を示すブロック図である。

Claims (3)

  1. (i)気相反応でグリオキシル酸エステルを製造する反応工程、(ii)(i)の反応工程の出口反応ガスから凝縮成分を捕集する捕集工程、(iii)(ii)の捕集工程で捕集した捕集液を加水分解することによってグリオキシル酸を製造する加水分解工程、(iv)アルコールの回収工程、を有するグリオキシル酸の製造法であって、(ii)の捕集工程を2段階以上で行い、出口反応ガスに含まれるグリオキシル酸エステルのうち50%以上を捕集した前半の捕集液Aを(iii)の加水分解工程で使用し、後半の捕集液Bを(iv)の回収工程で使用することを特徴とするグリオキシル酸の製造法。
  2. グリオキシル酸エステルを製造する(i)の反応工程が、グリオキサールとアルコールを酸素の存在下反応させることを特徴とする請求項1記載のグリオキシル酸の製造法。
  3. (iv)の回収工程が蒸留工程であり、蒸留塔の塔底液を(iii)の加水分解工程へリサイクルすることを特徴とする請求項1又は2記載のグリオキシル酸の製造法。
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