JP2004197232A - 皮革様シート状物およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来の皮革様シート状物では持ち得なかった伸び止め感が強いにもかかわらず、ソフトでかつ低反発である天然皮革の物性に類似した人工の皮革様シート状物を提供すること。
【解決手段】極細繊維と高分子弾性体からなり、高分子弾性体が一方の面から25μm以上の深さまで存在する含浸層と、高分子弾性体が存在しない未含浸層があり、含浸層内では極細繊維が繊維束状態で存在し、高分子弾性体が該繊維束の外周を包囲しているが、繊維束の内部には高分子弾性体が存在していない皮革様シート状物。
その製造方法は、溶剤溶解性の異なる成分からなる極細繊維形成性の海島繊維からなるシート上に、含浸層と未含浸層が発生するように高分子弾性体溶液を一方の表面から塗布し凝固させ、次いで海島繊維の海成分を除去する方法である。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、皮革様シート状物およびその製造方法に関するものである。さらに詳しくは伸び止め感が強いにもかかわらず、ソフトでかつ低反発である天然皮革の物性に類似した人工の皮革様シート状物およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
天然皮革の代替物として、繊維と高分子弾性体を用いたいわゆる人工皮革と呼ばれる皮革様シート状物が広く用いられている。だが、人工皮革は天然皮革に比べて物性面の優位性は比較的得られているものの、外観や風合面では高級な天然皮革のレベルに至っていないのが実情であった。そして外観においては、それを解決するために様々な仕上げ方法等が研究され、天然皮革に類似した物やさらには天然皮革では表すことが出来なかった外観が数多く提案されてきている。しかし風合い面においては様々な研究がなされ非常に柔らかな物も提案されてきてはいるものの、優れた天然皮革の持つ特性である低反発でくたくた感のある非常に柔らかな物は未だ得られていない。
【0003】
例えば特許第3155135号では、少なくとも2種類の高分子重合体からなる極細化可能な複合繊維からウェブを形成し、該ウェブの厚さ方向にニードルパンチングを施して、絡合繊維質基材を作成し、該絡合繊維質基材に高分子弾性体を含浸、凝固させ、その後、該絡合繊維質基材を構成する複合繊維を極細化する方法が開示されている。しかしこのような方法で得られた皮革様シート状物は柔らかな物ではあるものの、含浸された高分子弾性体の特性から反発感のあるゴムライクな風合いとなり、天然皮革が有する優れた風合いである、低反発でくたくた感のある非常に柔らかな風合いを持つシート状物は実現することができなかった。
【0004】
【特許文献1】
特許第3155135号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、これら従来の皮革様シート状物では持ち得なかった伸び止め感が強いにもかかわらず、ソフトでかつ低反発である天然皮革の物性に類似した人工の皮革様シート状物およびその製造方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の皮革様シート状物は、極細繊維と高分子弾性体からなるシート状物であって、高分子弾性体が一方の面から25μm以上の深さまで存在する含浸層と、高分子弾性体が存在しない未含浸層があり、含浸層内では極細繊維が繊維束状態で存在し、高分子弾性体が該繊維束の外周を包囲しているが、繊維束の内部には高分子弾性体が存在していないことを特徴とする。さらに含浸層の厚さが25〜300μmであることや、未含浸層部分の目付が30〜500g/m2であること、含浸層の高分子弾性体が、充実型または独立多孔型であること、折り曲げ回復率が、75%以下であることが好ましい。
【0007】
また、本発明の皮革様シート状物の製造方法の第一は、溶剤溶解性の異なる2つ以上の成分からなる極細繊維形成性の海島繊維からなるシート上に、含浸層と未含浸層が発生するように高分子弾性体溶液を一方の表面から塗布し凝固させ、次いで海島繊維の海成分を溶解する溶剤を用いて繊維の海成分を除去することを特徴とする。
【0008】
そして、もうひとつの本発明である、皮革様シート状物の製造方法の第二は、溶剤溶解性の異なる2つ以上の成分からなる極細繊維形成性の海島繊維からなるシート上に、中心部に未含浸層が発生するように高分子弾性体溶液を両方の表面からそれぞれ塗布し凝固させ含浸層とし、次いで海島繊維の海成分を溶解する溶剤を用いて繊維の海成分を除去し、その後未含浸層部分でスライスして2分割することを特徴とする。
【0009】
さらには、本発明の製造方法では、高分子弾性体溶液の塗布前に、海島繊維を構成する海成分の軟化温度以上、島成分の軟化温度未満で、あらかじめ海島繊維からなるシート表面をプレスすることや、高分子弾性体溶液の凝固方法が乾式法であることが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明は、極細繊維と高分子弾性体とからなるシート状物であって、高分子弾性体が存在する含浸層と存在しない未含浸層がある皮革様シート状物に関するものである。
【0011】
本発明における極細繊維とは、0.2dtex以下、好ましくは0.1dtex以下、特に好ましくは0.0001〜0.05dtexの繊度の極細繊維のことである。また、そのような極細繊維の例としては、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル繊維、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12などのポリアミド繊維を挙げることができる。さらに本発明ではこの極細繊維が束として集合している極細収束繊維が存在していることが必要である。例えばこのような極細集束繊維としては、溶剤溶解性の異なる2成分以上の重合体組成物から複合紡糸法、混合紡糸法などにより海島型繊維として紡糸して得た多成分繊維の少なくとも一成分を除去し極細化した繊維等が挙げられる。ただし該極細繊維は、束状になっている場合、一つの束に極細繊維が好ましくは、10本から5000本、更に好ましくは、100本から2000本含まれていることが好ましい。
【0012】
本発明のシート状物は極細繊維と高分子弾性体からなるものであるが、上記のような極細繊維を主とするシート状物であれば特に制限はなく、繊維全部が極細繊維ではなく一部に極細繊維を含むものでも良い。このような基体としては織編物であっても良いが、風合を向上させるためには不織布が主体であり、織編物は補強用として一部に含むか、全く含まないことが好ましい。
【0013】
さらに、本発明の皮革様シート状物で用いられる高分子弾性体としては、ポリウレタン樹脂エラストマー、ポリウレアエラストマー、ポリウレタン樹脂・ポリウレアエラストマー、ポリアクリル酸樹脂、アクリロニトリル・ブタジエンエラストマー、スチレン・ブタジエンエラストマー等が挙げられるが、なかでもポリウレタン樹脂エラストマー、ポリウレアエラストマー、ポリウレタン樹脂・ポリウレアエラストマー等のポリウレタン樹脂系高分子が好ましい。
【0014】
この含浸層に存在する高分子弾性体の100%伸長モジュラスは、200〜5000N/cm2であることが好ましく、更に好ましくは、300〜4000N/cm2であり、特に好ましくは、400〜3000N/cm2である。100%伸長モジュラスが、200N/cm2未満の場合には得られた基体は柔軟性に富むが、耐熱性、耐溶剤性等が減少する傾向にある。逆に5000N/cm2を越える場合には得られた基体の風合いが硬くなる傾向にある。高分子弾性体の100%伸長モジュラスを好ましい範囲に調整する方法としては、例えばポリウレタン樹脂エラストマーを用いる場合、ポリマー中の有機ジイソシアネート含有量と鎖伸長剤量を調整することによって容易に行うことができる。
【0015】
また、この含浸層の高分子弾性体は、充実型または独立多孔型であることが好ましい。湿式凝固法などによって得られる連続多孔質の場合には、得られた皮革様シート状物の伸び止め効果が減少する傾向にある。
【0016】
本発明の皮革様シート状物は、高分子弾性体が一方の面から25μm以上の深さまで存在する含浸層と、高分子弾性体が存在しない未含浸層の両方が存在するものであるが、さらにはこの含浸層の厚さは、25〜300μmであることが好ましく、さらには50〜250μm、もっとも好ましくは75〜200μmの厚さであることが好ましい。このとき高分子弾性体の存在する層が薄くなると得られるシート状物の強度が弱くなり、さらに加工中の伸び止め性も低下し、縦方向に伸びてしまう等の傾向にある。一方層が厚くなると強く腰のある風合いにはなるが、堅くなる傾向にある。特に伸び止め性に優れている含浸層の高分子弾性体が充実型や独立多孔型の場合には、連続多孔の高分子弾性体を用いている場合よりも堅くなる傾向にあるので、含浸層はより薄くする必要がある。
【0017】
また、この含浸層における繊維と高分子弾性体の比率は、5:95〜95:5の範囲であることが好ましく、更に好ましくは10:90〜50:50、特に好ましくは15:85〜40:60の範囲であることが好ましい。このとき高分子弾性体の比率が少ないと、得られるシート状物の強度が弱くなる傾向にある。一方含浸層における高分子弾性体の比率が多いと、得られるシート状物の風合いは堅くなる。特に高分子弾性体が充実型の場合には、その特性から反発性の強いシート状物となる傾向にある。
【0018】
本発明の皮革様シート状物は、繊維のみからなる高分子弾性体の存在しない未含浸層が存在することが必要である。本発明では、未含浸部が存在することによって、表裏の応力の分布に勾配ができ、バランスが良くなって低反発で非常に風合いの良い物が得られる。さらにはその未含浸部の繊維目付は30〜500g/m2の範囲にあることが好ましく、もっと好ましくは40〜400g/m2の範囲であり、特には、50〜300g/m2の範囲であることが好ましい。未含浸部の目付が低くなると、未含浸部の存在しない従来の皮革様シート状物とほぼ同様の特性となり、伸び止め性とソフト性を両立させることが困難な傾向にある。一方、未含浸部が多くなりすぎると未含浸の不織布と差が少なくなり伸び止め性が低下する傾向にある。
【0019】
本発明の皮革様シート状物は、上記のような含浸層と未含浸層からなるものであるが、本発明の最も特徴的な点は、含浸層内では極細繊維が繊維束状態で存在し、含浸層を構成する高分子弾性体が該繊維束の外周を包囲してはいるが、繊維束の内部には高分子弾性体が存在していないことである。
【0020】
本発明と異なり、含浸層内に極細繊維が繊維束ではなくそのまま極細単繊維の状態で侵入している場合には、極細単繊維が高分子弾性体間に密に存在し、極細単繊維に補強された高分子弾性体が硬く変形しにくいものとなりやすい。また、たとえ繊維と高分子弾性体を何らかの手段で非接合化したとしても、極細単繊維の状態で侵入している場合には、極細繊維と高分子弾性体の距離が短く繊維の自由度が低くなり、どうしても固い構造物である層が形成される傾向にある。それに比して極細繊維が繊維束で存在する場合には、繊維束内の繊維密度が高くなる分全体の繊維目付に比して繊維間空隙が大きくなり、高分子弾性体が大きな塊で存在し、弾性体としての性質が強く引き出され、変形しやすくなる。また、本発明では高分子弾性体は繊維束を包囲して、繊維束内部に高分子弾性体が存在しないので、極細繊維と高分子弾性体間の距離が大きく、繊維の自由度が大きくより柔軟な構造物となり、柔軟な風合を実現できるのである。
【0021】
本発明では、高分子弾性体が繊維束を包囲しているので、シート状物の小変形時には高分子弾性体のみが変形し小さな応力だけが発生するが、さらなる変形時には補強繊維である繊維束に変形が伝達され、大きな応力が発生する。このような現象が発生するためには、繊維束が高分子弾性体に充分に囲まれていることが必要であり、できればその断面がほぼ円形であることが好ましい。例えば繊維束の周辺の高分子弾性体に割れ目が存在していたり、その繊維束周囲の空間に、繊維束への応力が伝わりにくい部分、方向が存在すると、シート状物が大変形した時のみしか繊維と高分子弾性体の複合効果が発生しないので好ましくない。
【0022】
さらには繊維束を包囲している高分子弾性体の空隙空間を、極細繊維が体積にして20〜80%占めていることが好ましく、さらには30〜70%、最も好ましくは40〜60%を占めている状態が好ましい。繊維束周辺の空隙空間が大きすぎると繊維束への応力が伝わりにくく、伸び止め感の低いものとなる傾向にあり、逆に空隙空間が小さすぎると硬くなる傾向にある。高分子弾性体がこのような構造をとるためには、極細繊維と高分子弾性体からなる含浸層は、充実層であることや、または空隙が連続していない独立多孔構造をとることが好ましい。
【0023】
本発明の皮革様シート状物は、その構造から非常にソフトで低反発なものである。ここで、低反発感の代用特性である折り曲げ回復率は、75%以下であることが好ましく、さらには60%以下、もっとも好ましくは55%以下であることが望ましい。折り曲げ回復率は、幅1cmのサンプルを含浸層を下側にして置き、端1cmを180°折り曲げ、荷重9.8Nをかけた状態で1時間放置し、荷重を取り除いた後30秒後の回復率を、180°を100%として示したものであり、折れたままの状態の場合を0%とする。この折り曲げ回復率の値が小さいほど、反発感のないくたくたな柔らかさであることを示している。
【0024】
また、本発明の皮革様シート状物は、その表面が銀付調や立毛を有するスエード調やヌバック調であることも好ましい。ここで銀付調である皮革様シート状物とは、含浸層がシート状物の一方の側に偏在し、その偏在した側の表面が銀付調であるものであり、立毛を有する皮革様シート状物とは、含浸層がシート状物の一方の側に偏在し、その偏在した側の最表面が極細繊維立毛を有しているものである。
【0025】
このような本発明の皮革様シート状物は、別の本発明である皮革様シート状物の製造方法によって得ることができる。すなわち、溶剤溶解性の異なる2つ以上の成分からなる極細繊維形成性の海島繊維からなるシート上に、含浸層と未含浸層が発生するように高分子弾性体溶液を一方の表面から塗布し凝固させ、次いで海島繊維の海成分を溶解する溶剤を用いて繊維の海成分を除去する方法や、または溶剤溶解性の異なる2つ以上の成分からなる極細繊維形成性の海島繊維からなるシート上に、中心部に未含浸層が発生するように高分子弾性体溶液を両方の表面からそれぞれ塗布し凝固させ含浸層とし、次いで海島繊維の海成分を溶解する溶剤を用いて繊維の海成分を除去し、その後未含浸層部分でスライスして2分割する方法である。
【0026】
このようにすることにより、含浸層を構成する極細繊維が繊維束状態で存在し、含浸層を構成する高分子弾性体が該繊維束を包囲してはいるが、繊維束内部に高分子弾性体が存在していないソフトで低反発な皮革様シート状物を製造することができる。
【0027】
本発明の溶剤溶解性の異なる2つ以上の成分からなる極細繊維形成性の海島繊維としては、例えば具体的には、溶剤溶解性の異なる2成分以上の重合体組成物から複合紡糸法、混合紡糸法などにより紡糸し、海島型繊維としたものである。このとき島成分の繊度は特に規定する必要はないが、好ましくは、0.2dtex以下、さらに好ましくは、0.1dtex以下、特に好ましくは、0.0001〜0.05dtexの繊度であることが好ましい。
【0028】
また、そのような溶剤溶解性の異なる2成分以上の重合体組成物の好ましい組み合わせとしては、不溶解成分としてポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルを選定したときには易溶解成分としてポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどのポリオレフィン類が、不溶解成分としてナイロン6、ナイロン66、ナイロン12などのポリアミドを選定した時には易溶解成分としてポリエステル類、ポリオレフィン類が好ましく選定される。
【0029】
本発明で用いるこのような極細繊維形成性の海島繊維からなるシートとしては、シート状であれば特に制限されるものではなく、各種織編物や不織布のいずれでもよいが、風合面から不織布をベースとするものであることが好ましい。例えば繊維を不織布化するには、公知のカード、レーヤー、ニードルロッカー、流体絡合装置などを用いることができ、交絡繊維密度の高い緻密に3次元絡合した不織布を得ることができる。
【0030】
さらに、ここで得られた該絡合繊維質シートを高分子弾性体溶液の塗布前に、海島繊維を構成する海成分の軟化温度以上、島成分の軟化温度未満で、あらかじめ海島繊維からなるシート表面をプレスすることで厚みと表面を整える事が好ましい。ここで厚みを整えることで最終的に得られる製品の厚みをコントロールすることができる。さらに、表面を整える事で製品面の平滑性をコントロールすることもできる。加熱と加圧の条件を調整することにより、高分子弾性体溶液の浸透度合いを調整するのである。整えられた面が融着などで膜などを形成する場合、付与される高分子弾性体はほとんど浸透されず、一方融着などで膜などができず最表面の繊維密度も低い場合、高分子弾性体溶液はよく浸透される。
【0031】
本発明では、このようにして得られた極細繊維形成性の海島繊維を含む基材の一方の整えられた面から25〜300μmの範囲に、該海島繊維を空隙無く包囲する高分子弾性体を含む含浸層を形成することが必要である。例えば基材への高分子弾性体溶液の浸透度合いを調整するなどの方法で含浸層の厚さを調整する。
【0032】
また、ここで付与された高分子弾性体は、一部に気泡などの独立発泡が繊維の周辺に存在することは構わないが、基本的に海島繊維と高分子弾性体には空隙が無いことが好ましい。空隙があった場合には、最終的に高分子弾性体が極細繊維束の外周をうまく包囲することができない。さらには繊維と高分子弾性体間には空隙が無いことに加えて接着もしていないことが好ましい。
【0033】
このような含浸層を成形するためには、高分子弾性体溶液の凝固方法が乾式法であることが好ましく、例えば繊維質基材の一方の面から高分子弾性体の有機溶剤溶液または分散液(水性エマルジョンを含む)を塗布し、基材中に充分しみこませた後、加熱乾燥により凝固させることが好ましい。さらに含浸深さを調整するために塗布回数は1回ではなく、複数回、例えば2〜5回に分けて塗布、乾燥を繰り返し行うことにより、より表層に近い部分の高分子弾性体の含浸量を高くすることができ、風合いを向上させることができる。
【0034】
このとき塗布させる高分子弾性体液の固型分濃度は、5〜50%であることが好ましい。さらには、7〜30%であることがより好ましく、もっとも好ましくは10〜20%であることが望ましい。5%以下の濃度だと高分子弾性体溶液の粘度が低すぎて基材中へ浸透しすぎたり基材表面を流れてうまく均一に浸透させることができなかったりと加工上困難である上に、うまく付与できた場合もその含浸層は、基材の一方の面から25μm以下となることが多い。一方高濃度になるほど高分子弾性体溶液の粘度が高くなる傾向があり、基材への浸透度合いのバランスが崩れやすく、均一に高分子弾性体を付与することが困難となる傾向にある。特に固型分濃度が高すぎると付与される高分子弾性体量が多くなりすぎ反発感のある腰のある風合いとなりやすく、本発明の目標とするソフトで低反発な素材とは異なるものとなってしまう傾向にある。
【0035】
さらに、ここで付与される高分子弾性体溶液の粘度とその表面張力によってその基材への浸透度合いを調整することができる。高分子弾性体の粘度は、その濃度を調整するほかに一般的な増粘剤を用いることもできる。また、高分子弾性体溶液の表面張力をコントロールするにはその溶液中に種々の添加剤を用いることで調整することができる。
【0036】
さらに本発明では、その含浸層の偏在した側の表面に皮革様として適した外観とすることが好ましく、表皮層の形成方法としては、公知のいずれの方法を用いることもできる。
【0037】
本発明の製造方法では、次いで海島繊維の海成分を溶解する溶剤を用いて、その海成分を除去する。この溶剤は、極細繊維の島成分を溶解しないことが必要であり、含浸層に用いられている高分子弾性体を少量なら溶解しても良いが、できれば溶解しないことが好ましい。このように海島型繊維の海成分を除去することにより、含浸層において高分子弾性体が島成分の極細繊維とは非接合状態となる構造が形成される。より具体的には、例えば島成分にナイロンを、海成分にポリエチレンを用いた場合には、トルエンを用いることが好ましい。抽出効率を高めるために加熱した溶剤を用いるのも好ましい方法である。
【0038】
さらに、本発明の製造方法においては、溶剤溶解性の異なる2つ以上の成分からなる極細繊維形成性の海島繊維を含む基材に、該海島繊維を空隙無く包囲する該高分子弾性体からなる含浸層を基材の両方の面から25〜300μmの範囲に形成し、次いで海島繊維の海成分を溶解する溶剤を用いて海成分を除去した後、その厚みの中央部分でスライスする方法についても提案している。
【0039】
このようにすることにより、高い生産性が得られるとともに、薄地の加工において安定した高い加工性が得られる。本発明品の薄地の製造において片側のみ使用して作成する方法では海島繊維の海成分を溶解する溶剤を用いて海成分を除去する工程においてその基材の柔らかさから皺が発生したり、機械張力で伸びてしまったりと加工性に問題が生じ易い傾向があった。両面に樹脂を付与したものはしっかりしておりその加工は安定しており、とても容易なものとなる。さらに両面含浸では、工程途中のロール表面に接する未含浸部が存在しないために、それによる毛羽等の発生が少なく、工程安定性が高くなる傾向にある。
【0040】
ここで得られた皮革様シート状物の一つとして立毛タイプの外観を持つ物は、さらに、その含浸層の存在する表面に高分子弾性体をグラビア処理したり、バフィングを行うことにより起毛加工を施し、必要に応じて染色、柔軟剤付与、揉み加工することができる。
【0041】
一方、得られた皮革様シート状物のもう一つとして銀面タイプの外観を持つ物は、さらに、その含浸層の存在する表面に皮革様として適した外観をもった高分子弾性体の表皮層を付与することで作成できる。表皮層の形成方法としては、公知のいずれの方法を用いることもでき、例えば高分子弾性体からなる溶液や分散液を、基材上にラミネートあるいはコーティングすることにより銀付調である表皮層とすることができる。さらにこのようにして得られた銀付調の表面に必要に応じて高分子弾性体をグラビア処理したり、エンボス処理したりし、最表面をさらに整えることも好ましい。
【0042】
また、本発明の製造方法では、このようにして得られた基材に揉み加工を施すことも好ましい。揉み加工の方法としては、例えばシート状物をクランプに把持し、一方のクランプをシートに揉み変形が加わるように駆動させる方法、あるいは2つの組み合わさった突起を有するステーの間にシート状物を通しシート状物に突起を押し込みながら揉みほぐしを行う方法等が挙げられる。
【0043】
このようにして得られた本発明の皮革様シート状物は、従来の皮革様シート状物では持ち得なかった天然皮革の持つ特徴である伸び止め感の強さと低反発でくたくた感のある非常に柔らかな風合いを有する物となる。
【0044】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらにより制限されるものではない。実施例で特段断りのない限りパーセント(%)、比率は重量%、または重量比率を示す。実施例における測定値はそれぞれ以下の方法によったものである。
【0045】
(1)100%伸長応力
樹脂フィルム(厚さ約0.1mm)より採取したテストピースを、恒速伸長試験器で100%/minにて伸長試験し、100%伸長時点の荷重を読み取りN/cm2単位に換算する。テストピースはJIS−K−6301−2号型ダンベル法に準拠する。
【0046】
(2)含浸層深さ
基材の断面電顕写真より測定し、平均値を採用する。
【0047】
(3)厚さ
スプリング式ダイアルゲージ(荷重1.18N/cm2)にて測定する。
【0048】
(4)重量
10cm×10cmに切断した試験片を、精密天秤にて測定する。
【0049】
(5)σ5/σ20/引張強力/伸び
皮革様シート状物から採取したテストピースを、恒速伸長試験器で伸長試験し5%、20%伸長時と破断時の荷重の値で示す。また、破断時の伸びも測定する。テストピースはJIS−K−6550 5−2−1に準拠する。
【0050】
(6)引裂
皮革様シート状物から採取したテストピースに切り込みを入れ、恒速伸長試験器で伸長試験し引裂時の荷重の変化を平均値で示す。
【0051】
(7)剥離強力
幅2.5cm×長さ15cmのテストピースの銀面層側に、同じサイズの平織り布をはりあわせたPVCシートをウレタン系接着剤で接着する。このテストピースに2cm間隔で5区間の印をつけ、恒速引張試験器で50mm/minの速度で剥離試験を行う。この時の剥離強力を記録計に記し2cm間隔の5区間のそれぞれの部分の最小値を読み、その5点の平均値を幅1cmあたりに換算して表示する。
【0052】
(8)摩耗
テーバー摩耗試験器にて摩耗輪#280荷重9.8Nにて100回摩耗時の重量変化(mg)を測定する。
【0053】
(9)未含浸層部分の目付け
抽出前の含浸基材の全体の厚さaから(2)の含浸層深さbを引き、その値を全体の厚さaで除して、未含浸層部分の比率を計算し、それに抽出後の繊維目付け(抽出前の目付け×未抽出繊維の構成比)cを掛けて算出する。
(未含浸層部分の目付け)=((a−b)/a)×c
【0054】
(10)含浸層部分の繊維の目付け
抽出前の含浸基材の全体の厚さaで、(2)の含浸層深さbを除して、含浸層部分の比率を計算し、それに抽出後の繊維目付け(抽出前の目付け×未抽出繊維の構成比)cを掛けて、含浸層部分の繊維目付けを算出する。
(含浸層部分の繊維目付け)=(b/a)×c
【0055】
(11)含浸層部分の高分子弾性体の目付け
次に高分子弾性体の含浸溶液濃度に塗布した溶液目付けを掛けて、含浸層部分の高分子弾性体目付けを算出する。
【0056】
(12)外観
表中の「外観」は以下の評価をする。
◎:優れている 〇:良い △:普通 ×:悪い
【0057】
(13)挫屈感
表中の「挫屈感」は以下の評価をする。
◎:優れている 〇:良い △:普通 ×:大シワ
【0058】
(14)ソフト性
表中の「ソフト性」は以下の評価をする。
◎:優れている 〇:良い △:普通 ×:硬い
【0059】
(15)腰感
表中の「腰感」は5を普通とし、数が大きくなるほど腰があり、数が小さくなるほど腰がないとして、1から10の10段階評価とする。
【0060】
(16)折り曲げ回復率
幅1cm×長さ9cmのテストピースの表面下側し、測定台の端から1cmはみださせて置く、この後はみ出させた部分を上側に折り曲げ9.8Nの荷重を載せ放置する。荷重をかけてからちょうど一時間後に荷重を解放し、解放してからちょうど30秒後にその折れ目が水平の台からどの程度まで回復しているかを分度器で測定し、水平まで回復した場合(180度)を100%、折れたままで変化がない場合を0%としてその比率で計算し求める。
【0061】
[実施例1]
島成分であるナイロン−6と海成分である低密度ポリエチレンとを50/50で混合紡糸し、繊度9.0dtexの海島型の複合繊維を得た。得られた複合繊維を、カット長51mmにカットし原綿を得た。これをカードとクロスレイヤーを用いウェブとし、ニードルパンチングを1000本/cm2実施し、次いで、150℃の熱風チャンバーで加熱処理し、基材が冷える前に30℃のカレンダーロールでプレスし、目付け450g/m2、厚さ1.5mm、見かけ密度0.30g/cm3の不織布を得た。
【0062】
次に、高分子弾性体クリスボンTF50P(100%伸長応力が1080N/cm2のポリウレタン樹脂、大日本インキ化学工業(株)製、固形分濃度30重量%)をジメチルホルムアミドとメチルエチルケトンの混合溶液(混合比4:6)で希釈した含浸溶液(濃度15%)を、溶液目付け150g/m2となるように先に得た不織布の表面に塗布し、基材中に充分しみこませた後、120℃の熱風チャンバーで乾燥した。さらに、同じ含浸溶液を目付け150g/m2となるように先ほど塗布した面に再度塗布し、基材中に充分しみこませた後、140℃の熱風チャンバーで乾燥し、表面側のみポリウレタン樹脂の含浸された含浸基材を得た。このとき含浸付与された高分子弾性体であるポリウレタン樹脂は、充実した状態で表面側より平均120μmの深さまで分布していることを、電顕写真で確認した。基材厚さの8%である。
【0063】
その後、該含浸基材を80℃のトルエン中でディップとニップを繰り返してポリエチレン成分を溶解除去し、複合繊維の極細化を行った。その後、90℃の温水中で基材に含まれているトルエンを共沸除去し、120℃の熱風チャンバーで乾燥し、繊維が極細繊維化された皮革様シート状物を得た。
【0064】
さらに得られた皮革様シート状物の樹脂が含浸付与された面に200メッシュのグラビアロールで、含浸ポリウレタン樹脂の良溶媒であるジメチルホルムアミドを付与、乾燥し、その表面を粒度#320の研磨ペーパーで研磨し表面繊維を起毛加工して立毛を有するスエード調の皮革様シート状物を得た。
【0065】
該スエード調皮革様シート状物を含金染料を用いて、染色を行った後、揉み加工をして仕上げた。得られたシート状物の断面を電顕写真で観察したところ高分子弾性体であるポリウレタン樹脂が存在する含浸層は表面側より平均105μmの深さまで分布していることが確認できた。またその含浸層の繊維と高分子弾性体の比率は、29:71であり、さらにポリウレタン樹脂の存在しない未含浸部分の繊維目付が207g/m2であった。また、含浸層内では極細繊維が繊維束状態で存在し、繊維束内部には高分子弾性体は存在しておらず、極細繊維束を包囲している高分子弾性体の空隙空間では、極細繊維が空間体積の50%を占めていた。
【0066】
得られたシート状物はどの方向にも伸びにくく、カンチレバーの値がタテ6.2cmヨコ6.3cmとなり折り曲げ方向の柔らかな素材の特徴がみられた。σ20/σ5の値はタテ3.7ヨコ4.8と人工皮革として優れた値でありながら、折り曲げ回復率においてその値が5%とほとんど反発力が無い値となった。このような特徴を持ったここで得られた基材は、持った時に高級で柔らかな天然皮革に類似した非常に柔らかで低反発な素材であった。物性を表1に示す。
【0067】
[実施例2]
実施例1と同じ、ナイロン−6と低密度ポリエチレンとが50/50である繊度9.0dtexの海島型の複合繊維を用い、目付けを高くし、ニードルパンチングを1400本/cm2に変更した以外は同様にして、目付け570g/m2、厚さ2.3mm、見かけ密度0.25g/cm3の不織布を得た。
【0068】
次に、実施例1と同様の高分子弾性体の含浸溶液(濃度15%)を、溶液目付け340g/m2となるように先に得た不織布の表面に塗布し、基材中に充分しみこませた後、120℃の熱風チャンバーで乾燥し、表面側のみポリウレタン樹脂の含浸された含浸基材を得た。このとき含浸付与された高分子弾性体であるポリウレタン樹脂は、充実した形態で表面側より平均150μmの深さまで分布していることを、電顕写真で確認した。基材厚さの6.5%である。
【0069】
その後、該含浸基材から実施例1と同様にポリエチレン成分を溶解除去し、繊維が極細化された皮革様シート状物を得た。
【0070】
さらに得られた皮革様シート状物の表面を実施例1と同様に表面処理し、立毛、染色されたスエード調の皮革様シート状物を得た。得られたシート状物の断面を電顕写真で観察したところ高分子弾性体であるポリウレタン樹脂が存在する含浸層は表面側より平均128μmの深さまで分布していることが確認できた。またその含浸層の繊維と高分子弾性体の比率は、27:73であり、さらにポリウレタン樹脂の存在しない未含浸部分の繊維目付が266g/m2であった。また、含浸層内では極細繊維が繊維束状態で存在し、繊維束内部には高分子弾性体は存在しておらず、極細繊維束を包囲している高分子弾性体の空隙空間では、極細繊維が空間体積の50%を占めていた。
【0071】
得られたシート状物はその厚みに比して縦横斜めのどの方向にも伸びにくく、従来の皮革様シート状物では得ることができないレベルのものであった。しかも、カンチレバーの値がタテ6.2cmヨコ6.3cmとなり折り曲げ方向の柔らかな素材の特徴がみられた。また、σ20/σ5の値がタテ7.0ヨコ8.9と低応力で変形しやすいが、少し伸びると伸びの止まるソフトな天然皮革特有の特徴がみられた。さらに折り曲げ回復率が9%とほとんど反発力が無い値となった。このシート状物は、持った時に高級で柔らかな天然皮革に類似した非常に柔らかで低反発な素材であった。物性を表1に併せて示す。
【0072】
[実施例3]
実施例1と同じく、ナイロン−6と低密度ポリエチレンとが50/50である繊度9.0dtexの海島型の複合繊維を用い、目付けを高くし、ニードルパンチングを1400本/cm2に変更した以外は同様にして、目付け870g/m2、厚さ2.8mm、見かけ密度0.31/cm3の不織布を得た。
【0073】
次に、実施例1と同様の高分子弾性体の含浸溶液(濃度15%)を、溶液目付け320g/m2となるように先に得た不織布の表面に塗布し、基材中に充分しみこませた後、120℃の熱風チャンバーで乾燥し、ついで同じ含浸溶液を、先ほどと反対の面に、同じく目付け320g/m2となるように表面に塗布し、基材中に充分しみこませた後、120℃の熱風チャンバーで乾燥し、中心部以外の基材両表面側のみがポリウレタン樹脂を含浸した両面含浸基材を得た。このとき含浸付与された高分子弾性体であるポリウレタン樹脂は、充実した形態で基材両表面側よりそれぞれ平均150μmの深さまで分布していることを、電顕写真で確認した。含浸深さは片面4.5%である。
【0074】
その後、該含浸基材から実施例1と同様にポリエチレン成分を溶解除去し、繊維が極細化されたシート状物を得た。
【0075】
その後、シート状物の樹脂が含浸付与された両面を、それぞれ200メッシュのグラビアロールでジメチルホルムアミドを付与、乾燥し、ついでその両表面を粒度#320の研磨ペーパーで研磨し表面繊維を起毛加工した後、樹脂の未含浸部分である厚みの半分の部位でスライスを行い、スエード調の外観の皮革様シート状物を得た。
【0076】
さらに得られた皮革様シート状物を実施例1と同様に処理し、染色されたスエード調の皮革様シート状物を得た。得られたシート状物の断面を電顕写真で観察したところ高分子弾性体であるポリウレタン樹脂が存在する含浸層は表面側より平均125μmの深さまで分布していることが確認できた。またその含浸層の繊維と高分子弾性体の比率は、32:68であり、さらにポリウレタン樹脂の存在しない未含浸部分の繊維目付が195g/m2であった。また、含浸層内では極細繊維が繊維束状態で存在し、繊維束内部には高分子弾性体は存在しておらず、極細繊維束を包囲している高分子弾性体の空隙空間では、極細繊維が空間体積の50%を占めていた。
【0077】
得られたシート状物は縦横斜めのどの方向にも伸びにくく、折り曲げ方向の柔らかな素材の特徴がみられた。また、低応力で変形しやすいが、少し伸びると伸びの止まるソフトな天然皮革特有の特徴がみられた。さらに折り曲げ回復率が4%とほとんど反発力が無い値となった。このシート状物は、持った時に高級で柔らかな天然皮革に類似した非常に柔らかで低反発なシート状物であった。物性を表1に併せて示す。
【0078】
[実施例4]
実施例2と同様の加工を行い繊維が極細化された皮革様シート状物を得た。
【0079】
さらに得られた皮革様シート状物の表面を立毛化処理する替わりに、銀面調とするために、高分子弾性体層を表面に付与した。
【0080】
すなわち、高分子弾性体としてCu9430NL(100%伸長応力が600N/cm2のポリウレタン樹脂、大日精化工業(株)製、固形分濃度30重量%)をジメチルホルムアミドとメチルエチルケトンの混合溶液(混合比4:6)で希釈したフィルム層用溶液(固形分濃度15%)を離型紙(AR―74M、厚さ0.25mm、旭ロール(株)製)上に目付け130g/m2(wet)で塗布し、初めに100℃で3分間乾燥させた。次にこの得られたフィルム上に、高分子弾性体クリスボンTA265(100%伸長応力が245N/cm2の架橋型ポリウレタン樹脂、大日本インキ化学工業(株)製、固形分濃度65重量%)20部、高分子弾性体クリスボンTA290(100%伸長応力が245N/cm2の架橋型ポリウレタン樹脂、大日本インキ化学工業(株)製、固形分濃度45重量%)80部、コロネートL(イソシアネート系架橋剤、日本ポリウレタン(株)製)15部、クリスボンアクセルT(架橋促進剤、大日本インキ化学工業(株)製)3部、ジメチルホルムアミド10部で配合したバインダー用溶液を、目付け100g/m2(wet)で塗布し、その上に繊維が極細化処理された該皮革様シート状物の樹脂が含浸付与された面を貼り合わせ面として貼り合わせた後、100℃で30秒乾燥し、次いで70℃で48時間エージングを行った後、12時間放置冷却を行い、離型紙を分離し、表面に高分子弾性体の層を持った銀付調の皮革様シート状物を得た。
【0081】
さらにその後該シート状物の表皮層を有する表面に、100%伸長応力が350N/cm2のポリウレタン樹脂を200メッシュのグラビアロールで仕上げた後、柔軟剤を付与し、揉み加工を行った。
【0082】
得られた皮革様シート状物の断面を電顕写真で観察したところ高分子弾性体であるポリウレタン樹脂が存在する含浸層は表面側の接着層の下側よりさらに平均128μmの深さまで分布していることが確認できた。またその含浸層の繊維と高分子弾性体の比率は、27:73であり、さらにポリウレタン樹脂の存在しない未含浸部分の繊維目付が266g/m2であった。また、含浸層内では極細繊維が繊維束状態で存在し、繊維束内部には高分子弾性体は存在しておらず、極細繊維束を包囲している高分子弾性体の空隙空間では、極細繊維が空間体積の50%を占めていた。
【0083】
また、この皮革様シート状物は、挫屈感が良好であり、縦横斜めのどの方向にも伸びにくく、折り曲げ方向の柔らかな素材の特徴がみられた。また、低応力で変形しやすいが、少し伸びると伸びの止まるソフトな天然皮革特有の特徴がみられた。さらに折り曲げ回復率が51%と反発力の低い値となった。このような特徴を持ったここで得られた基材は、持った時に高級で柔らかな天然皮革に類似した非常に柔らかで低反発な素材であった。物性を表1に併せて示す。
【0084】
[比較例1]
実施例1と同じ、ナイロン−6と低密度ポリエチレンとが50/50である繊度8.0dtexの海島型の複合繊維を用い、目付けを高くし、ニードルパンチングを1400本/cm2に変更した以外は同様にして、目付け500g/m2、厚さ1.5mm、見かけ密度0.33g/cm3の不織布を得た。
【0085】
次に、実施例1で用いた高分子弾性体クリスボンTF50P(100%伸長応力が1080N/cm2のポリウレタン樹脂、大日本インキ化学工業(株)製)を、実施例1と異なりジメチルホルムアミドのみで溶解した含浸溶液(濃度15%)を、溶液目付け870g/m2となるように含浸させ、10%ジメチルホルムアミド水溶液中に浸漬して、湿式凝固させた。この後40℃の温水中で十分洗浄し、高分子弾性体含浸基材を得た。このとき含浸付与された高分子弾性体であるポリウレタン樹脂は、多孔化した形態で全層に分布していることを、電顕写真で確認した。
【0086】
その後、該含浸基材から実施例1と同様にポリエチレン成分を溶解除去し、繊維が極細化された皮革様シート状物を得た。
【0087】
さらに得られた皮革様シート状物の表面を実施例1と同様に表面処理し、立毛、染色されたスエード調の皮革様シート状物を得た。得られたシート状物の断面を電顕写真で観察したところ高分子弾性体であるポリウレタン樹脂はシート全層に存在していることが確認できた。またその繊維と高分子弾性体の比率は、66:34であり、さらにポリウレタン樹脂の存在しない未含浸部分は存在しなかった。
【0088】
得られたシート状物は、折り曲げ方向に柔らかく、低応力で変形しやすい特徴がみられたものの、折り曲げ回復率においては79%と反発の強い素材であり、従来からある柔らかな人工皮革の同じ風合いであった。物性を表1に併せて示す。
【0089】
[比較例2]
高分子弾性体をよりやわらかくするために、比較例1で用いた含浸溶液の替わりに、高分子弾性体クリスボンTF50P(100%伸長応力が1080N/cm2のポリウレタン樹脂、大日本インキ化学工業(株)製、固形分濃度30重量%)と高分子弾性体レザミンCu9430NL(100%伸長応力が600N/cm2のポリウレタン樹脂、大日精化工業(株)製、固形分濃度30重量%)を30:70となる比率で、ジメチルホルムアミド中に溶解した含浸溶液(濃度13%)を用い、含浸溶液目付けを776g/m2とする以外は比較例1と同様にして繊維が極細化された皮革様シート状物を作成した。
【0090】
さらに得られた皮革様シート状物の表面を今度は実施例3と同様に両面表面処理し、両面に立毛を有するスエード調の皮革様シート状物を得た。次いで厚みの半分でスライスを行う事によって表面がスエード調の外観の皮革様シート状物を得た。
【0091】
さらに得られた皮革様シート状物を実施例3と同様に処理し、染色されたスエード調の皮革様シート状物を得た。得られたシート状物の断面を電顕写真で観察したところ高分子弾性体であるポリウレタン樹脂は基材全層に存在していることが確認できた。またその繊維と高分子弾性体の比率は、71:29であり、さらにポリウレタン樹脂の存在しない未含浸部分は存在しなかった。またこのシート状物は折り曲げ方向に非常に柔らかいものの、伸び止め性が低いにもかかわらず、折り曲げ回復率が85%と反発の強い素材であった。物性を表1に併せて示す。
【0092】
[比較例3]
実施例1と同じ、ナイロン−6と低密度ポリエチレンとが50/50である繊度9.0dtexの海島型の複合繊維を用い、目付けを低くした以外は同様にして、目付け370g/m2、厚さ1.4mm、見かけ密度0.26g/cm3の不織布を得た。
【0093】
次いでこの不織布を、高分子弾性体クリスボンTF50P/クリスボンTF300TD(100%伸長応力が2750N/cm2のポリウレタン樹脂、大日本インキ化学工業(株)製、固形分濃度30重量%)=6/4のジメチルホルムアミド中に溶解した含浸溶液(固形分濃度15%)に浸漬・含浸し、含浸液の目付けが920g/m2になるよう余分な含浸液をスクイズし、引き続き高分子弾性体クリスボンTF50P/クリスボンTF700S(100%伸長応力が340N/cm2のポリウレタン樹脂、大日本インキ化学工業(株)製、固形分濃度30重量%)=9/1のジメチルホルムアミド中に溶解した湿式コート溶液(固形分濃度20%)を目付750g/m2となるように表面にコートした。次いでこの繊維と高分子弾性体とからなるシートを、12%のジメチルホルムアミド水溶液中に浸漬し湿式凝固させた後、40℃の温水中で十分洗浄し、135℃の熱風チャンバーで乾燥して、海島繊維と高分子弾性体からなる基材上に、高分子弾性体からなる表皮層を持った基材を得た。ここでの高分子弾性体はいずれも湿式凝固により連続多孔を有する多孔質となっており、また含浸付与された高分子弾性体であるポリウレタン樹脂は、多孔化した形態で全層に分布していることを、電顕写真で確認した。
【0094】
その後、得られた基材から、実施例1と同様にポリエチレン成分を溶解除去し、極細繊維と多孔高分子弾性体からなるシート状物を得た。さらに得られたシート状物の表皮層を有する面にエンボス加工しシボ柄を付与した後、100%伸長応力が350N/cm2のポリウレタン樹脂を200メッシュのグラビアロールで仕上げ塗布した後、柔軟剤を付与し、揉み加工を行った。
【0095】
得られた銀面を有するシート状物は、そのシート状物の断面を電顕写真で観察したところ高分子弾性体であるポリウレタン樹脂は断面全層に存在していることが確認できた。またその繊維と高分子弾性体の比率は、39:61であり、さらにポリウレタン樹脂の存在しない未含浸部分は存在しなかった。また、このシート状物は、折り曲げ方向にしっかり感のある硬めの素材で腰はあるものの、ソフト性に欠け、折り曲げ回復率が83%と反発の強い素材であり、また、表面の銀面層における挫屈感もあまり良くないものであった。また、その表面には含浸層の極細繊維に由来する毛羽が発生し、表面品位も低いものであった。物性を表1に併せて示す。
【0096】
[比較例4]
海島繊維からなる目付け370g/m2、厚さ1.4mm、見かけ密度0.26g/cm3の不織布を、比較例3と同様の方法で作成した。
【0097】
次に、比較例1で用いたものと同様の含浸溶液(固形分濃度15%)を用いて、含浸溶液目付けを920g/m2とする以外は比較例1と同様に含浸、抽出処理して繊維が極細化された皮革様シート状物を作成した。
【0098】
一方、実施例4と同様にして、銀面調とするための高分子弾性体層を、ラミネート法にて表面に付与し、さらに実施例4と同様に、表皮層を有する表面に、ポリウレタン樹脂を200メッシュのグラビアロールで仕上げた後、柔軟剤を付与し、揉み加工を行った。
【0099】
得られた銀付き調シート状物は、その断面を電顕写真で観察したところ高分子弾性体であるポリウレタン樹脂は基材全層に存在していることが確認できた。またその繊維と高分子弾性体の比率は、51:49であり、さらにポリウレタン樹脂の存在しない未含浸部分は存在しなかった。またこのシート状物は、折り曲げ方向にしっかり感のある硬めの素材であり、腰はあるもののソフト性に欠け、折り曲げ回復率が83%と反発の強い素材であり、また、表面の銀面層における挫屈感は良好であるものの、表面の突っ張り感があり堅い物となった。物性を表1に併せて示す。
【0100】
【表1】
Figure 2004197232
【0101】
[比較例5]
実施例1と同様の目付け450g/m2、厚さ1.5mm、見かけ密度0.30g/cm3の不織布の表面から、同じく実施例1で用いた高分子弾性体の含浸溶液(濃度15%)を、基材の裏側まで充分しみこむまで何度も塗布を繰り返し十分にしみこませた後、140℃の熱風チャンバーで乾燥し、基材の全層にポリウレタン樹脂の含浸された基材を得た。このとき含浸付与された高分子弾性体であるポリウレタン樹脂は、充実した形態で基材全層にわたって分布している事を、電顕写真で確認した。
【0102】
その後、該基材から、実施例1と同様にポリエチレン成分を溶解除去し、繊維が極細化されたシート状物を得た。得られたシート状物は非常にボリューム感のある反発の高いベースとなり本発明の目的であるソフトで低反発な素材とは異なるものとなった。
【0103】
【発明の効果】
本発明によれば、従来の皮革様シート状物では持ち得なかった伸び止め感が強いにもかかわらず、ソフトでかつ低反発である天然皮革の物性に類似した人工の皮革様シート状物およびその製造方法を提供することができる。

Claims (11)

  1. 極細繊維と高分子弾性体からなるシート状物であって、高分子弾性体が一方の面から25μm以上の深さまで存在する含浸層と、高分子弾性体が存在しない未含浸層があり、含浸層内では極細繊維が繊維束状態で存在し、高分子弾性体が該繊維束の外周を包囲しているが、繊維束の内部には高分子弾性体が存在していないことを特徴とする皮革様シート状物。
  2. 含浸層の厚さが25〜300μmである請求項1記載の皮革様シート状物。
  3. 含浸層の高分子弾性体が、充実型または独立多孔型である請求項1または2記載の皮革様シート状物。
  4. 未含浸層部分の目付が30〜500g/m2である請求項1〜3のいずれか1項記載の皮革様シート状物。
  5. 含浸層が存在する側の表面が極細繊維立毛を有している請求項1〜4のいずれか1項記載の皮革様シート状物。
  6. 含浸層が存在する側の表面が銀付調である請求項1〜4のいずれか1項記載の皮革様シート状物。
  7. 折り曲げ回復率が、75%以下である請求項1〜6のいずれか1項記載の皮革様シート状物。
  8. 溶剤溶解性の異なる2つ以上の成分からなる極細繊維形成性の海島繊維からなるシート上に、含浸層と未含浸層が発生するように高分子弾性体溶液を一方の表面から塗布し凝固させ、次いで海島繊維の海成分を溶解する溶剤を用いて繊維の海成分を除去することを特徴とする皮革様シート状物の製造方法。
  9. 溶剤溶解性の異なる2つ以上の成分からなる極細繊維形成性の海島繊維からなるシート上に、中心部に未含浸層が発生するように高分子弾性体溶液を両方の表面からそれぞれ塗布し凝固させ含浸層とし、次いで海島繊維の海成分を溶解する溶剤を用いて繊維の海成分を除去し、その後未含浸層部分でスライスして2分割することを特徴とする皮革様シート状物の製造方法。
  10. 高分子弾性体溶液の塗布前に、海島繊維を構成する海成分の軟化温度以上、島成分の軟化温度未満で、あらかじめ海島繊維からなるシート表面をプレスする請求項8または9記載の皮革様シート状物の製造方法。
  11. 高分子弾性体溶液の凝固方法が乾式法である請求項8〜10のいずれか1項記載の皮革様シート状物の製造方法。
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