JP2004197777A - 湿式多板クラッチ - Google Patents

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Abstract

【課題】クラッチハブの外壁面に沿って飛散する潤滑油を捕捉してクラッチハブ内に導き、各摩擦摺接部材の摺動面の潤滑効率を高める。
【解決手段】クラッチハブ12の外壁面12dの軸芯を中心とする2つの円周上に内周側切起し部25と外周側切起し部26とを所定間隔毎に形成し、各切起し部26,25の切り口26a,25aを軸芯方向へ指向させた状態で切り起すと共に、図2に示すように、隣接する内周側切起し部25間に、外周側切起し部26を臨ませ、且つ外周側切起し部26の切り口26aの両端を、互いに隣接する内周側切起し部25の切り口25aの端部にオーバラップさせる。その結果、外側面12dに沿って遠心力により拡散される潤滑油は、内周側切起し部25の切り口25aにて捕捉され、又隣接する内周側切起し部25間を抜けて拡散する潤滑油は外周側切起し部26の切り口26aにて捕捉されて、クラッチハブ12内に導かれる。
【選択図】図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、遠心力を利用して潤滑油を各摩擦摺接部材の摺動面へ効率よく供給することのできる湿式多板クラッチに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ブラネタリギヤユニットを用いた自動変速機においては、変速時にそのプラネタリギヤユニットにおける動力伝達系路を変えるため、各回転要素にはそれぞれ複数のクラッチプレート或いはブレーキ板等の湿式摩擦係合板が連設されており、この摩擦係合要素の係脱状態を車両の運転状態に応じて制御することで、車両の運転状態に応じた変速段が自動的に選択される。尚、自動変速機の変速段の切換えに際しては回転要素とミッションケースとを連結して、当該回転要素の回転を停止させる湿式多板ブレーキと、回転要素と他の回転要素とを連結する湿式多板クラッチとがあるが、両者は用途が相違するのみで機能は同一であり、従って、本発明においても、湿式多板ブレーキを湿式多板クラッチに含めた概念として説明する。
【0003】
この種の湿式多板クラッチの潤滑方式として、例えば特開2000−145820号公報には、湿式多板クラッチを支持する支持軸の軸芯に穿設されている潤滑油供給路に供給されている潤滑油を、この支持軸の軸周に穿設されている通油ポートから吐出させ、この吐出した潤滑油を、クラッチハブの内周面方向へ遠心力により飛散させて、クラッチハブに穿設されている通油孔から、クラッチハブとクラッチドラムとの間に配設されている複数の湿式クラッチプレートの摺動面に供給して、各湿式クラッチプレートを潤滑すると共に冷却する技術が開示されている。
【0004】
ところで、クラッチハブは略円筒状に形成されているため、クラッチハブの外壁面側で吐出されている潤滑油は、クラッチハブの外側に飛散されるため、クラッチプレートが設けられいる内部に取り込むことができず、この潤滑油を用いてクラッチプレートの摺動面を潤滑及び冷却することはできない。
【0005】
そのため、例えば特開2000−35056号公報では、クラッチハブの側壁面に通油窓を穿設し、この通油窓を通して、クラッチハブの外壁面に供給されている潤滑油をクラッチハブ内に取り込むようにした技術が提案されている。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−145820号公報
【0007】
【特許文献2】
特開2000−35056号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述した特開2000−35056号公報に開示されている技術では、クラッチハブの側壁面に単に通油窓を開口させたに過ぎないため、外壁面に沿って遠心力により径方向へ飛散する潤滑油を効率よく捕捉して、クラッチハブ内へ導くことができず、潤滑効率をより高める上では不十分である。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑み、クラッチハブの外壁面に沿って遠心力により飛散する潤滑油をクラッチハブ内に導き、この潤滑油を利用してクラッチプレート間の摺動面を効率よく潤滑することで、潤滑効率を高め、無駄のない潤滑及び冷却を行なうことのできる湿式多板クラッチを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明は、同軸上に配設されたクラッチハブとクラッチドラムとの間に、内周を上記クラッチハブに支持する一方の摩擦摺接部材と外周を上記クラッチドラムに支持する他方の摩擦摺接部材とが交互に配設され、上記クラッチハブの上記一方の摩擦摺接部材を支持する外周面に通油ポートが穿設されており、上記各摩擦摺接部材の摺動面に対し軸芯方向から上記通油ポートを経て潤滑油を供給する湿式多板クラッチにおいて、上記クラッチハブの側壁面の軸芯を中心とする円周上に沿って複数の切起し部を所定間隔毎に形成すると共に、該切起し部の切り口を上記外周面の延出方向と反対方向へ切り起すと共に軸芯方向へ向けて開口させたことを特徴とする。
【0011】
このような構成では、クラッチハブの側壁面の外面に沿って遠心力により軸芯側から径方向へ拡散される潤滑油が、側壁面に開口されている切起し部の切り口にて捕捉されてクラッチハブの内周面側へ導かれ、クラッチハブの外周面に穿設されている通油ポートを経て摩擦摺接部材と摩擦摺接部材との摺動面等の摩擦摺接部位に導かれ、これら摩擦摺接部位を潤滑すると共に冷却する。
【0012】
この場合、好ましくは、上記切起し部を軸芯を中心とする複数の円周上に沿って所定間隔毎に複数形成し、互いに隣接する円周上に形成されている切起し部の切り口の両端を軸芯方向から見て互いにオーバラップさせることで、内周側から外周方向へ拡散する潤滑油を効率よく捕捉することができる。この場合、上記切起し部を軸芯を中心とする2つの円周上に沿って所定間隔毎に複数形成するようにしても良い。
【0013】
更に、上記クラッチハブが板金製の場合は、上記各切り起し部を該クラッチハブを形成する際に一体成形することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の一実施の形態を説明する。図1は自動変速機に適用された湿式多板クラッチの要部断面図である。
【0015】
同図に示すように、第1の支持軸(入力部材)1に対して、第2の支持軸(出力部材)2が同軸上に相対回動自在に配設され、この第1,第2の支持軸1,2の軸芯に潤滑油供給路4が穿設されており、更に、第2の支持軸2の軸周に潤滑油供給路4に連通する通油ポート5が穿設されている。この潤滑油供給路4には、図示しないオイルポンプから吐出された潤滑油が供給されており、この潤滑油が通油ポート5を経て軸周方向へ吐出される。
【0016】
又、符号11は湿式多板クラッチで、この湿式多板クラッチ11のクラッチハブ12とクラッチドラム13とが同軸上に配設されている。
【0017】
クラッチハブ12は略円筒状に形成されており、外方へ突出形成されたボス部12aが第2の支持軸2にスプライン係合されている。又、クラッチドラム13も略円筒状に形成されており、内方へ突出形成されたボス部13aが第1の支持軸1に一体的に固着されており、固定部材3に軸受6を介して回動自在に支持されている。更に、クラッチハブ12の外周に形成されたスプライン部12bの径方向に、クラッチドラム13の内周に形成されたスプライン部13bが所定間隔を開けて対設されている。
【0018】
この両スプライン部12b,13b間に摩擦摺接部材が配設されている。この摩擦摺接部材は、その内周をクラッチハブ12側のスプライン部12bに係合する複数のインナクラッチプレート14と、この各インナクラッチプレート14間に介装されていると共に、その外周をクラッチドラム13側のスプライン部13bに係合するアウタクラッチプレート15と、クラッチドラム13の開口端側に配設されているインナクラッチプレート14の外壁面に対設すると共に、その外周をクラッチドラム13側のスプライン部13bに係合するリテーニングプレート16と、クラッチドラム13の内方に配設されているインナクラッチプレート14の外壁面に対設すると共に、その外周をクラッチドラム13側のスプライン部13bに係合するプレッシャプレート18との総称である。
【0019】
又、リテーニングプレート16は、第1のクラッチピストン19に掛止したスナップリング17aにてその背面が抜け止めされており、プレッシャプレート18を介して各クラッチプレート14,15に印加する押圧荷重がリテーニングプレート16によって支持される。
【0020】
上記クラッチドラム13には、スプライン部13bに係合して設けられているクラッチプレート15、リテーニングプレート16、プレッシャプレート18を貫通して図示しない他の湿式クラッチを動作させる第1のクラッチピストン19と、この第1のクラッチピストン19の内側に同芯状に配置され、軸方向へ進退自在に湿式多板クラッチ11を動作させる第2のクラッチピストン20とが設けられている。
【0021】
上記第1のクラッチピストン19とクラッチドラム13との間には、第1のクラッチピストン19を動作させる油圧室21が形成されており、更に、上記第1のクラッチピストン19と第2のクラッチピストン20との間には第2のクラッチピストン20を動作させる油圧室22が形成されている。
【0022】
一方、第2のクラッチピストン20の反油圧室側にピストンリテーナ23が配設されている。このピストンリテーナ23は略筒状に形成されており、その軸芯側がクラッチドラム13のボス部13aにスナップリング17bを介して抜け止めされ、一方その外周側が第2のクラッチピストン20の内周に摺接されている。更に、ピストンリテーナ23と第2のクラッチピストン20との間に、第2のクラッチピストン20をクラッチ開放方向へ常時付勢するリターンスプリング24が介装されている。
【0023】
上記油圧室22に油圧が供給されると、クラッチピストン20がリターンスプリング24の付勢力に抗して、図1の右方向へ移動し、クラッチプレート14,15がプレッシャプレート18とリテーニングプレート16とに押圧されて、クラッチが接続される。又、油圧室22に供給した油圧をドレーンすると、リターンスプリング24の付勢力によりクラッチピストン20が戻され、クラッチが解除される。
【0024】
又、インナクラッチプレート14をスプライン係合するクラッチハブ12に形成されているスプライン部12bの谷側に通油ポート12cが所定個数(本実施の形態では、1つの谷部に対して2カ所)穿設されている。一方、アウタクラッチプレート15をスプライン係合するクラッチドラム13に形成されているスプライン部13bの谷側にも通油ポート13cが所定個数(本実施の形態では、1つの谷部に対して2カ所)穿設されている。
【0025】
又、クラッチハブ12は、平板をプレス型により絞り成形した板金製であり、このクラッチハブ12の側壁面12dに、軸芯を中心とする2つの円周上に沿って複数の内周側切起し部25と外周側切起し部26とが各々形成されている。各切起し部25,26は、金型を用いてよろい戸状に切り起し成形されており、その切り口25a,26aが軸芯方向へ指向した状態で外方へ切り起されている。
【0026】
又、内周側切起し部25は、軸芯を中心として所定角度(本実施の形態では90°)毎に等間隔に形成され、外周側切起し部26も、同様に軸芯を中心として所定角度(本実施の形態では90°)毎に等間隔に形成されている。更に、外周側切起し部26が、軸芯から見て、内周側切起し部25間に臨まされる位置に形成されており、且つ、両切り口25a,26aの両端が互いにオーバラップされている。
【0027】
次に、このような構成による湿式多板クラッチの作用について説明する。エンジンが稼働し、第1の支持軸1が回転すると、この第1の支持軸1に一体に形成されている湿式多板クラッチ11のクラッチドラム13が第1の支持軸1と一体回転する。
【0028】
一方、エンジンの稼働によりオイルポンプが駆動し、このオイルポンプから吐出された潤滑油が、第1、第2の支持軸1,2に穿設されている潤滑油供給路4に供給されると、この潤滑油供給路4に供給された潤滑油は、第2の支持軸2の軸周に穿設されている通油ポート5から円周方向へ吐出される。
【0029】
そして、この通油ポート5から吐出された潤滑油の一部はクラッチハブ12の側壁面12dに沿って遠心力により径方向へ拡散する。この拡散された潤滑油は、この側壁面12dに形成されている内周側切起し部25の軸芯方向に指向した状態で開口されている切り口25aにて捕捉され、この切り口25aを経て、クラッチハブ12の内面側へ導かれる。
【0030】
又、この内周側切起し部25で捕捉することのできなかった潤滑油は、その外周方向に形成されている外周側切起し部26の軸芯方向に指向した状態で開口されている切り口26aにて捕捉される。図2に示すように、この外周側切起し部26は、軸芯から見て、内周側切起し部25間に臨まされており、しかも、内周側切起し部25に形成した切り口25aの両端が、内周側切起し部26に開口されている切り口26aの両端とオーバラップしているため、内周側切起し部26の間を通り、径方向へ拡散した潤滑油は、外周側切起し部26に開口されている切り口26aで捕捉され、この切り口26aを経て、クラッチハブ12の内面側に導かれる。
【0031】
そして、クラッチハブ12の内面側に導かれた潤滑油は、遠心力によりクラッチハブ12の外周に形成したスプライン部12bに達し、このスプライン部12bに穿設されている通油ポート12cを経てスプライン部12bの外周面へ吐出し、各クラッチプレート14,15の摺動面、更には、インナクラッチプレート14とリテーニングプレート16及びプレッシャプレート18との摺動面、すなわち、各摩擦摺接部位の摺動面に供給され、これら摩擦摺接部位を潤滑すると共に冷却した後、クラッチドラム13の外周に形成されているスプライン部13bに穿設されている通油ポート13cから円周方向へ吐出される。
【0032】
このように、本実施の形態では、クラッチハブ12の側壁面12dに、切り口25a,26aを軸芯方向に指向した状態で外方に切り起した切起し部25,26を形成したので、軸芯方向から遠心力により拡散する潤滑油を、この取り口25a,26aで捕捉して、クラッチハブ12の内面方向へ効率よく導くことができる。
【0033】
しかも、この外周側切起し部26が軸芯から見て、内周側切起し部25間に臨まされていると共に、内周側切起し部25に形成した切り口25aの両端が、内周側切起し部26に開口されている切り口26aの両端とオーバラップしているため、内周側切起し部26の切り口26aで捕捉しきれなかった潤滑は、外周側切起し部26の切り口26aで捕捉することができるため、潤滑油を効率よくクラッチハブ12内へ導くことができ、相対的に少ない潤滑油量で、各クラッチプレート14,15の摺動面を効率よく潤滑及び冷却することができる。その結果、オイルポンプの負担を軽減することができ、相対的にオイルポンプの小型化が可能となり、オイルポンプの容量を縮小することで、燃費を低減することができる。
【0034】
又、切起し部25,26は、板金製のクラッチハブ12を成形する際に一体形成することができるため、生産性が良く、コストの低減を図ることができる。
【0035】
尚、本発明は上述した実施の形態に限るものではなく、例えば、クラッチハブ12の側壁面12dに形成する切起し部は、軸芯を中心として径方向へ3列以上で、且つ各円周上に形成した切起し部が隣接する他の円周上に形成されている切起しに対して千鳥状に配列され、且つその両端が軸芯から見たとき互いにオーバラップするように形成したものであっても良い。
【0036】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明によれば、クラッチハブの外壁面に沿って遠心力により軸芯側から径方向へ飛散する潤滑油を、この外壁面に形成した切起し部の切り口で捕捉してクラッチハブ内に導くことで、各摩擦摺接部材の摺動面に対して潤滑油を効率よく供給することができ、この摩擦摺接部位の潤滑及び冷却を無駄なく行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図2のI-I断面相当の湿式多板クラッチの縦断面図
【図2】クラッチハブの側面図
【図3】図2のIII-III断面図
【図4】図2のIV-IV断面図
【符号の説明】
11 湿式多板クラッチ
12 クラッチハブ
12c 通油ポート
12d 側壁面
13 クラッチドラム
14 インナクラッチプレート(摩擦摺接部材)
15 アウタクラッチプレート(摩擦摺接部材)
16 リテーニングプレート(摩擦摺接部材)
18 プレッシャプレート(摩擦摺接部材)
25,26 切起し部
25a,26a 切り口

Claims (4)

  1. 同軸上に配設されたクラッチハブとクラッチドラムとの間に、内周を上記クラッチハブに支持する一方の摩擦摺接部材と外周を上記クラッチドラムに支持する他方の摩擦摺接部材とが交互に配設され、
    上記クラッチハブの上記一方の摩擦摺接部材を支持する外周面に通油ポートが穿設されており、
    上記各摩擦摺接部材の摺動面に対し軸芯方向から上記通油ポートを経て潤滑油を供給する湿式多板クラッチにおいて、
    上記クラッチハブの側壁面の軸芯を中心とする円周上に沿って複数の切起し部を所定間隔毎に形成すると共に、該切起し部の切り口を上記外周面の延出方向と反対方向へ切り起すと共に軸芯方向へ向けて開口させたことを特徴とする湿式多板クラッチ。
  2. 上記切起し部が軸芯を中心とする複数の円周上に沿って所定間隔毎に複数形成されており、
    互いに隣接する円周上に形成されている切起し部の切り口の両端が軸芯方向から見て互いにオーバラップされていることを特徴とする請求項1記載の湿式多板クラッチ。
  3. 上記切起し部が軸芯を中心とする2つの円周上に沿って所定間隔毎に複数形成されていることを特徴とする請求項2記載の湿式多板クラッチ。
  4. 上記クラッチハブが板金製であり、上記各切り起し部は該クラッチハブを形成する際に一体成形されることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の湿式多板クラッチ。
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