JP2004201605A - レジオネラ属菌リボソームl7/l12タンパク質をコードするdna - Google Patents
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Abstract
【課題】Legionella pneumophila由来の新規なリボソームL7/L12タンパク質、並びにそれをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【解決手段】以下の何れかのタンパク質をコードするポリヌクレオチド。(a)Legionella pneumophila由来の特定なアミノ酸配列を有するタンパク質;又は(b)Legionella pneumophila由来の特定なアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有し、Legionella pneumophilaに特異的な抗原性を有するタンパク質。
【選択図】 なし
【解決手段】以下の何れかのタンパク質をコードするポリヌクレオチド。(a)Legionella pneumophila由来の特定なアミノ酸配列を有するタンパク質;又は(b)Legionella pneumophila由来の特定なアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有し、Legionella pneumophilaに特異的な抗原性を有するタンパク質。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、Legionella pneumophila由来の新規なリボソームL7/L12タンパク質をコードする遺伝子、およびその応用に関する。さらに詳しくは、本発明は、該タンパク質あるいはそのホモログ、該タンパク質をコードするポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドの取得方法、該ポリヌクレオチドを含有する組み換えベクター、該組み換えベクターを含有する形質転換体、該タンパク質の製造方法、該タンパク質に対する抗体に関する。さらに本発明は、Legionella pneumophilaの検出やLegionella pneumophilaが関与する疾患の診断、治療または予防を行う際の本発明のタンパク質、ポリヌクレオチドまたは抗体の使用に関する。
【0002】
【従来の技術】
レジオネラ属菌群は土壌や河川など自然環境に広く分布するブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌で、細菌や藻類などの代謝産物を栄養源にしたり、アメーバーなどの原生動物の体内に寄生することにより増殖することが確認されているが、人への感染例は稀であるとされてきた。しかし、近年レジオネラ属菌による院内感染や循環風呂汚染での感染がもとで、レジオネラ症と呼ばれる肺炎等を引き起こすことが報告され、特に高齢者では死亡例も数多く報告されるに至っている。レジオネラ属細菌感染症にはβラクタム剤などの通常の一次選択抗生剤が無効であり、有効な治療がほどこされない場合には容易に重症化しやすいことが知られている。このようにレジオネラ属菌の感染は社会的にも問題視されており、臨床サンプルのみならず環境水を対象とした簡便かつ迅速なレジオネラ属菌の早期検出方法の確立が望まれている。
【0003】
従来レジオネラ属菌の検出は分離培養法が用いられてきたが、レジオネラ属菌は日常の検査で使用される培地では生育せず、特殊培地が必要であること、さらにレジオネラ属菌は増殖が遅いためこの方法では検査に数日を要するという欠点がある。
【0004】
そこで近年では、レジオネラ菌に対する抗体を用いた免疫学的な手法による検出が試みられている。米国特許第4,851,333号公報にはレジオネラ・ニューモフィラ由来の蛋白質特異抗原およびその抗体を用いることで、レジオネラ・ニューモフィラの全てのセロタイプと反応しかつ他のレジオネラ属細菌とは反応しない特異的な免疫法検出が可能であることが示されている。国際公開WO87/06469号公報にはレジオネラ感染症の診断に利用可能なレジオネラ・ニューモフィラ種特異的あるいはレジオネラ属特異的な新規なモノクローナル抗体が示されている。また、国際公開WO87/05609号公報にはレジオネラ症の診断のためのレジオネラ属特異的な検出に利用可能なレジオネラ属細菌に特異的な外膜蛋白質に対するモノクローナル抗体が示されている。ドイツ公開特許番号3537272号公報にはレジオネラ・ニューモフィラ細菌の内特に血清型1の細菌にのみ特異的に反応しその検出、診断に有用な新規なモノクローナル抗体が開示されている。
【0005】
また、レジオネラ属菌の遺伝子情報を基づいた検出方法についても開発が試みられている。例えば、米国特許第5,935,782号公報にはレジオネラ・ニューモフィラの特異的なDNA検出に利用可能なfrgA(iron-repressed-gene)遺伝子およびそのフラグメントの遺伝子配列が開示されている。ドイツ公開特許番号4419294号公報にはレジオネラ感染症診断に利用可能なレジオネラ・ニューモフィラ細菌に特異的な分子量29kdの外膜蛋白質をコードするDNA配列が開示されている。国際公開WO94/28174号公報にはレジオネラ属の23Sあるいは16SのリボゾーマルRNA、あるいはリボゾーマルDNAとハイブリダイズ可能な遺伝子配列情報が開示されている。さらに、レジオネラ菌の遺伝子配列に基づき、PCR(polymerase chain reaction)法、さらにはLAMP(Loop-Mediated IsothermalAmplification)法により種々の遺伝子を増幅させることで検出することも試みられている。
【0006】
しかしながら、レジオネラ・ニューモフィラのリボゾーム蛋白質、特にリボソームL7/L12タンパク質を抗原とする特異的な抗体あるいはそのDNA配列の特異性を利用した診断等に関する従来技術はこれまでのところ全く知られていなかった。
【0007】
【特許文献1】
米国特許第4,851,333号公報
【特許文献2】
国際公開WO87/06469号公報
【特許文献3】
国際公開WO87/05609号公報
【特許文献4】
ドイツ公開特許番号3537272号公報
【特許文献5】
米国特許第5,935,782号公報
【特許文献6】
ドイツ公開特許番号4419294号公報
【特許文献7】
国際公開WO94/28174号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、Legionella pneumophila由来の新規なリボソームL7/L12タンパク質、並びにそれをコードするポリヌクレオチドを提供することを目的とする。すなわち本発明は、Legionella pneumophila由来の新規なリボソームL7/L12タンパク質あるいはそのホモログ、さらには該タンパク質の一部のアミノ酸配列からなる部分ペプチド、これらのタンパク質あるいは部分ペプチドをコードするポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドの取得方法、該ポリヌクレオチドを含有する組み換えベクター、該組み換えベクターを含有する形質転換体、該タンパク質の調製方法、並びに該タンパク質と特異的に反応する抗体に関する。また、本発明は、上記したポリヌクレオチドまたは抗体を用いるLegionella pneumophilaの検出方法およびLegionella pneumophilaが関与する疾患の診断、治療又は予防方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
リボソームL7/L12タンパク質は、タンパク質合成に必須なリボソームを構成するタンパク質の一種で、全ての微生物に存在している。分子量は約13キロダルトンで、エシュリヒア・コリ(Escherichia coli)を始め、ヘモフィラスイン・フルエンザ(Haemophilus influenzae)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、ストレプトコッカス・ニューモニア(Streptococcus pneeumoniae)、ナイセリア・メニンギチヂス(Neisseria meningitidis)など多くの微生物でアミノ酸配列やそれをコードする遺伝子の塩基配列が解明されている。各微生物のリボソームL7/L12タンパク質のアミノ酸配列の相同性は50%〜65%程度であり、必ずしも高くなく、特にN末端領域の配列の相同性は低く、個々の微生物に特異的な配列を有している。このような特徴に着目して、たとえば、国際公開WO00/06603号公報「微生物検出用抗体」に記載のごとく、微生物のリボソームL7/L12タンパク質に対する抗体を作製し、免疫的手法によってその微生物を特異的に検知し同定できることが知られている。
【0010】
一方、Legionella pneumophilaのゲノム配列は、Columbia Genome CenterのLegionella Genome Project等で解析が進められ、すでにその塩基配列の一部が公開されているが、リボソームL7/L12タンパク質の遺伝子配列についてはいまだ同定されていない。本発明者らは、種々の細菌で保存されているリボソームL7/L12タンパク質のC末端領域のアミノ酸配列を基に、公開されているLegionella pneumophilaゲノム配列を検索した。その結果、目的とするアミノ酸配列をコードすると推定される塩基配列を有する領域を見出した。しかし、この領域をタンパク質に翻訳すると、N末端領域のアミノ酸配列は、公知リボソームL7/L12タンパク質とは全く異なることが判明した。
【0011】
そこで本発明者らは、C末端領域のアミノ酸配列をコードする塩基配列を基に種々のPCRプライマーを設計し、Legionella pneumophilaのゲノムDNAの増幅を検討した。その結果、714塩基対からなるDNA断片の増幅に成功し、その塩基配列からリボソーム結合部位と推定される塩基配列領域を介して、125アミノ酸残基からなる新規なタンパク質をコードする領域を明らかにできた。このタンパク質は、種々の細菌リボソームL7/L12タンパク質とC末端領域で高度に相同性を有しており、目的のLegionella pneumophilaリボソームL7/L12タンパク質であることが示された。
【0012】
さらに本発明者らは、このDNA断片のリボソームL7/L12タンパク質コード領域を大腸菌発現用プラスミドに挿入し、大腸菌組み換え体を作製してその発現を検討した。その結果、目的タンパク質を融合タンパクとして発現させることに成功し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、本発明は以下に関するものである。
(1) 以下の何れかのタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質;又は
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有し、Legionella pneumophilaに特異的な抗原性を有するタンパク質。
【0014】
(2) 以下の何れかのポリヌクレオチド。
(a)配列番号1に記載の塩基配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号1に記載の塩基配列において1若しくは複数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を有し、Legionella pneumophilaに特異的な抗原性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号1に記載の塩基配列又はその相補配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、Legionella pneumophilaに特異的な抗原性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【0015】
(3) Legionella pneumophila由来のポリヌクレオチドである、(1)または(2)記載のポリヌクレオチド。
(4) (1)から(3)の何れかに記載のポリヌクレオチドの塩基配列のうち連続する15塩基以上の長さを有する塩基配列またはその相補配列を有するポリヌクレオチド。
(5) (1)から(4)の何れかに記載のポリヌクレオチドを用いる、Legionella pneumophilaの検出方法。
(6) (1)から(4)の何れかに記載のポリヌクレオチドを含む、Legionella pneumophila検出用試薬キット。
【0016】
(7) 以下の何れかのタンパク質。
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有し、Legionella pneumophilaに特異的な抗原性を有するタンパク質;又は
(c)上記(a)又は(b)記載のタンパク質とその全長にわたり95%以上のアミノ酸配列の同一性を有するタンパク質であり、Legionella pneumophilaに特異的な抗原性を有するタンパク質。
【0017】
(8) 以下の何れかのアミノ酸配列中の連続する少なくとも5つのアミノ酸を有する部分ペプチド。
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有し、Legionella pneumophilaに特異的な抗原性を有するアミノ酸配列;又は
(c)上記(a)又は(b)記載のアミノ酸配列とその全長にわたり95%以上のアミノ酸配列の同一性を有するアミノ酸配列であり、Legionella pneumophilaに特異的な抗原性を有するアミノ酸配列。
【0018】
(9) (1)から(4)のいずれかに記載のポリヌクレオチドを発現することにより得られるタンパク質もしくは部分ペプチド。
(10) (1)から(4)のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含有する組み換えベクター。
(11) (1)から(4)のいずれかに記載のポリヌクレオチドまたは(10)に記載の組換えベクターを有する形質転換体。
(12) (a)(11)記載の形質転換体を培養し、(b)発現された組み換えタンパク質もしくはペプチドを回収することを含む、タンパク質もしくは部分ペプチドの製造方法。
【0019】
(13) (7)から(9)の何れかに記載のタンパク質もしくは部分ペプチドに対する抗体。
(14) (13)記載の抗体を用いるLegionella pneumophilaの検出方法。
(15) (14)記載の抗体を含む、Legionella pneumophila検出用試薬キット。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明においてポリヌクレオチドとは、Legionella pneumophilaのリボソームL7/L12タンパク質に相同性のあるタンパク質あるいは部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドであれば、特に限定されない。また、本発明のタンパク質とは、Legionella pneumophilaのリボソームL7/L12タンパク質に相同性のあるタンパク質あるいは部分ペプチドであれば、特に限定されない。
【0021】
本発明は、配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質を提供し、これに関連してさらに以下のタンパク質を提供する。
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有し、Legionella pneumophilaに特異的な抗原性を有するタンパク質;
(c)上記(a)又は(b)記載のタンパク質とその全長にわたり95%以上のアミノ酸配列の同一性を有するタンパク質であり、Legionella pneumophilaに特異的な抗原性を有するタンパク質;及び、
(d)上記(a)から(c)の何れかのアミノ酸配列中に連続する少なくとも5つのアミノ酸を有する部分ペプチド。
【0022】
“同一性”とは、当該技術で知られているとおり、配列を比較することにより決定される、3以上のタンパク質あるいは9以上のポリヌクレオチドの間の関係である。当該技術で“同一性”とは、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間の適合によって、あるいは場合によっては、一続きのそのような配列間の適合によって決定されるような、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間の配列相関性の程度を意味する。“同一性”は、既知の方法により容易に決定できる。同一性を決定する好ましい方法は、試験する配列間で最も長く適合するように設計される。同一性を決定するための方法は、公に利用可能なプログラムにコードされている。相同性決定には、AltschulらによるBLAST (Basic Local AlignmentSearch Tool) プログラム(たとえば、Altschul SF, Gish W, Miller W, MyersEW, Lipman DJ., J. Mol. Biol., 215: p403-410 (1990), Altschyl SF, Madden TL, Schaffer AA, Zhang J, Miller W, Lipman DJ., Nucleic Acids Res. 25:p3389-3402 (1997))を利用し決定することができる。BLASTのようなソフトウェアを用いる場合、デフォルト値を用いるのが好ましい。BLAST検索に一般的に用いられる主な初期条件は、以下の通りであるが、これに限定されない。
【0023】
アミノ酸置換行列とは20種類のアミノ酸の各々のペアの類縁性を数値化した行列であり、通常BLOSUM62のデフォルトマトリックスが用いられる。このアミノ酸置換行列の理論についてはAltschul S.F., J.Mol.Biol.,219:555-565(1991)に、DNA配列の比較への適用についてはStates D.J., Gish W., Altschul S.F.,Methods, 3:66-70(1991)に示されている。その際の最適なギャップコストは経験的に決定されており、BLOSUM62の場合は好ましくは、Existence 11、Extension 1のパラメーターが用いられる。期待値(EXPECT)とは、データベース配列に対してマッチする際の統計的有意性に関する閾値であり、デフォルト値は10である。
【0024】
一例として、配列番号2のアミノ酸配列に対して例えば95%以上の同一性を有するタンパク質は、そのアミノ酸配列が配列番号2のアミノ酸配列のアミノ酸100個あたり5個までのアミノ酸の変化を含んでよいことを意味する。言い換えれば、対照アミノ酸配列に対して95%以上のアミノ酸配列の同一性を有するタンパク質は、対照配列中の全アミノ酸の5%までの数のアミノ酸が欠失または他のアミノ酸と置換していてもよく、あるいは、対照配列中の全アミノ酸配列のうち5%までの数のアミノ酸が対照配列中に挿入されたものであってもよい。対照配列におけるこれらの変化は、対照アミノ酸配列のアミノ末端またはカルボキシ末端位置に存在していてもよく、あるいはそれらの末端間のいずれかの位置に存在していてもよく、あるいは対照配列内で1個またはそれ以上の一連の群をなしていてもよい。
【0025】
また本発明は、配列番号1の塩基配列からなるポリヌクレオチドを提供し、これに関してさらに以下のポリヌクレオチドを提供する。
(a)配列番号1に記載の塩基配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号1に記載の塩基配列において1若しくは複数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を有し、Legionella pneumophilaに特異的な抗原性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号1に記載の塩基配列又はその相補配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、Legionella pneumophilaに特異的な抗原性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;又は
(d)上記(a)から(c)の何れかに記載のポリヌクレオチドの塩基配列のうち連続する15塩基以上の長さを有する塩基配列またはその相補配列を有するポリヌクレオチド。
【0026】
上記ポリヌクレオチド配列に含まれる塩基配列に同一または実質的に同一なポリヌクレオチドは、本発明のタンパク質をコードする全長cDNA及びゲノムクローンまたは上記配列に対応する相同性の高い他の遺伝子のcDNAまたはゲノムクローンを単離するためのハイブリダイゼーションプローブとして、または核酸増幅反応のためのプライマーとして使用してもよい。代表的には、これらのヌクレオチド配列は、上記配列に70%同一であり、好ましくは80%同一であり、より好ましくは90%同一であり、最も好ましくは95%同一である。プローブまたはプライマーは、一般的には少なくとも15ヌクレオチドを含有し、好ましくは30ヌクレオチドを含有し、50ヌクレオチドを含有してもよい。特に好ましいプローブは、30〜50ヌクレオチドを有する。特に好ましいプライマーは、20〜25ヌクレオチドを有する。
【0027】
本発明のポリヌクレオチドは、DNAの形態(たとえば、cDNAおよびクローニングによって得られるか、あるいは合成的に生成されるゲノムDNAを含む)であってもよく、RNA(たとえばmRNA)の形態であってもよい。該ポリヌクレオチドは、二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。二本鎖の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNAまたはDNA:RNAのハイブリッドであってもよい。一本鎖の場合は、センス鎖(コード鎖としても知られる)であっても、アンチセンス鎖(非コード鎖としても知られる)であってもよい。
【0028】
当業者であれば、公知の方法を用いてこのタンパク質中のアミノ酸の置換などを適宜行ない、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質と同様に、Legionella pneumophilaに特異的な抗原性を有するタンパク質もしくは部分ペプチドを作製することが可能である。一つの方法としては、該タンパク質をコードするDNAに対して、慣用の突然変異誘発法を使用する方法がある。別の方法としてはたとえば部位特異的変異法(たとえば宝酒造株式会社のMutan-Super Express Km キット)が挙げられる。また、タンパク質のアミノ酸の変異は自然界においても生じうる。このようにアミノ酸の欠失、置換、付加により配列番号2のタンパク質に対してアミノ酸配列が変異した変異体であって、Legionella pneumophilaに対する抗体を調製するに適当な抗原性を有するタンパク質及び該タンパク質をコードするDNAも本発明に含まれる。変異の数は、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、最も好ましくは3以下が好ましい。
【0029】
アミノ酸置換の例としては、保存的置換が好ましく、具体的には以下のグループ内での置換が挙げられる。(グリシン、アラニン)(バリン、イソロイシン、ロイシン)(アスパラギン酸、グルタミン酸)(アスパラギン、グルタミン)(セリン、トレオニン)(リジン、アルギニン)(フェニルアラニン、チロシン)。
当業者であれば、ハイブリダイゼーション技術などを用いて配列番号1の塩基配列からなるDNAまたはその一部を基に、これと類似性の高いDNAを単離して、該DNAから配列番号1に類似の塩基配列を有するDNAを得ることも容易に行うことができる。このように配列番号1で表される塩基配列のDNAと高い同一性を有するDNAであって、上記配列番号2のアミノ酸配列を含み、Legionella pneumophilaに対する抗体を調製するに適当な抗原性を有するタンパク質あるいは部分ペプチドを得ることは可能である。
【0030】
本発明のタンパク質あるいは部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドは、ゲノムDNAの他、化学合成DNAも含まれる。このようなDNAは、公知の方法により化学合成することができる。
【0031】
本発明のポリヌクレオチドは、配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、Legionella pneumophilaに特異的な抗原性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドも含まれる。ストリンジェントな条件とは、当業者には十分理解できることであり、たとえば、T.Maniatisらの実験操作書(Molecular Cloning A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory 1982、1989)などに従えば容易に実施できる。
【0032】
すなわち、ストリンジェントな条件とは、30%ホルムアミドを含むハイブリダイゼーション溶液中(5×SSC(0.75MのNaCl、75mMのクエン酸三ナトリウム)、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、100μg/mlの変性せん断サケ精子DNA)で37℃のインキュベーションを一晩行い、その後2×SSC、0.1%SDS中、室温で10分の洗浄を3回行い、次いで1×SSC、0.1%SDS中、37℃で10分の洗浄を2回行う条件である(低ストリンジエンシー)。より好ましい条件は、40%ホルムアミドを含むハイブリダイゼーション溶液中で42℃のインキュベーションを一晩行い、その後2×SSC、0.1%SDS中、室温で10分の洗浄を3回行い、次いで0.2×SSC、1%SDS中、42℃で10分の洗浄を2回行う条件である(中ストリンジエンシー)。最も好ましい条件は、50%ホルムアミドを含むハイブリダイゼーション溶液中で42℃のインキュベーションを一晩行い、その後2×SSC、0.1%SDS中、室温で10分の洗浄を3回行い、次いで0.2×SSC、0.1%SDS中、50℃で10分の洗浄を2回行う条件である(高ストリンジエンシー)。
【0033】
本発明のポリヌクレオチドは、前述のタンパク質を、組換えDNA技術を用いて製造するのに用いることができる。本発明のポリヌクレオチド及びペプチドは、概略以下のようにして得ることができる。
(A)本発明のタンパク質をコードするDNAをクローニングする。
(B)タンパク質の全コード領域あるいはその一部をコードするDNAを発現用ベクターに組み込んで、組換えベクターを構築する。
(C)構築した組換えベクターにより、宿主細胞を形質転換する。
(D)得られた細胞を培養し、該タンパク質、またはその類縁体を発現させ、カラムクロマトグラフィーなどにより精製する。
【0034】
上記の工程中でDNA、組換え体宿主としての大腸菌等の取り扱いに必要な一般的な操作は、当業者間で通常行われているものであり、たとえば、上記T.Maniatisらの実験操作書に従えば容易に実施できる。使用する酵素、試薬類も全て市販の製品を用いることができ、特に断らない限り、製品で指定されている使用条件に従えば、完全にそれの目的を達成することができる。以下に上記(A)〜(D)の工程について更に詳しく説明する。
【0035】
上記工程(A)における本発明のタンパク質をコードするDNAのクローニングの手段としては、本願明細書実施例に記載した方法の他に、本発明のヌクレオチド配列(たとえば配列番号1の一部を有する合成DNAをプライマーとしたPCR法によって増幅する方法、あるいは、適当なベクターに組み込んだDNAを本発明のタンパク質の一部あるいは全領域をコードするDNA断片もしくは合成DNAを標識したものとのハイブリダイゼーションによって選別すること、などが挙げられる。
【0036】
本発明は、上記のDNAを含有する組換えベクターを提供する。本発明のタンパク質の発現ベクターは、たとえば、本発明のタンパク質をコードするDNAから目的とするDNA断片を切り出し、該DNA断片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより製造することができる。用いる発現ベクターとしては、複製可能であれば、大腸菌をはじめとする原核生物由来、酵母由来、真菌由来、などの微生物由来のベクター、さらには昆虫ウイルス由来、脊椎動物ウイルス由来、いずれのベクターでも良いが、宿主として使用する微生物または細胞に適したものを選択する必要がある。また、発現物に応じて、宿主細胞―発現ベクター系としては、適切な組み合わせが選択される。
【0037】
微生物を宿主として使用する場合、これら微生物に適したプラスミドベクターが組換え体DNAの複製可能な発現ベクターとして一般に用いられる。たとえば、大腸菌を形質転換するためのプラスミドベクターとしては、プラスミドpBR322やpBR327などを用いることができる。プラスミドベクターは通常複製起源、プロモーター、及び組換え体DNAで形質転換した細胞を選別するのに有用な表現型を組換え体DNAに与えるマーカー遺伝子等を含んでいる。プロモーターの例としては、β−ラクタマーゼプロモータ、ラクトースプロモーター、トリプトファンプロモーター等が挙げられる。マーカー遺伝子の例としては、アンピシリン耐性遺伝子やテトラサイクリン遺伝子などが挙げられる。適した発現ベクターの例としては、プラスミドpBR322、pBR327の他に、pUC18、pUC19等が挙げられる。
【0038】
酵母で本発明のDNAを発現するためには、複製可能なベクターとして、たとえばYEp24を用いることができる。プラスミドYEp24はURA3遺伝子を含有しており、このURA3遺伝子をマーカー遺伝子として利用することができる。酵母細胞用の発現ベクターのプロモーターの例としては、3−ホスホグリセレートキナーゼ、グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼなどの遺伝子のプロモーター等が挙げられる。
【0039】
真菌で本発明のDNAを発現するための発現ベクターに用いられるプロモーター及びターミネーターの例としては、ホスホグリセレートキナーゼ(PGK)、グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ(GAPD)、アクチン等の遺伝子プロモーター及びターミネーターが挙げられる。適した発現ベクターの例としては、プラスミドpPGACY2、pBSFAHY83等が挙げられる。
【0040】
上記工程(C)において用いる宿主としては、大腸菌をはじめとする原核生物、酵母、真菌等の微生物、及び昆虫や動物等の細胞のいずれでもよいが、用いる発現ベクターに適したものを選択する必要がある。微生物の例としては、エシュリヒア コリ(Escherichia coli)の菌株、たとえばE.coliK12株294(ATCC 31446)、E.coli X1776(ATCC 31537)、E.coli C600、E.coli JM109、E.coli B株、あるいはバチラス・サブチリス(Bacillus subtilis)の如きBacillus属の菌株、あるいはサルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)またはセラチア・マーゼサンス(Serratia marcesans)等の大腸菌以外の腸内菌、あるいはシュードモナス(Pseudomonas)属の種々の菌株が挙げられる。
【0041】
酵母としては、たとえば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)などが用いられる。真菌としては、たとえば、アスペルギルス・ニドランス(Aspergillus nidulans)、アクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)(ATCC 11550)等が挙げられる。
【0042】
上記の形質転換された細胞を本発明のタンパク質をコードするポリヌクレオチドが発現可能な条件下で培養し、本発明のタンパク質を生成、蓄積せしめることによって、本発明のタンパク質を製造することができる。すなわち、本発明は、上記した本発明のポリヌクレオチドを含む形質転換された細胞を、該ポリヌクレオチドによりコードされているタンパク質を発現させる条件下培養し、次いで培養物から該タンパク質を回収することを含む該タンパク質の製造方法を提供する。
【0043】
上記培養物から本発明のタンパク質を分離精製するには、自体公知の分離・精製法を適切に組み合わせて行なうことができる。これらの公知の分離、精製法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法などが用いられる。たとえば、本発明のタンパク質は、硫安またはエタノール沈殿、酸抽出、アニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィー、ホスフォセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーを含む既知の方法により組換え細胞培養物から回収し、精製することができる。最も好ましくは、高性能液体クロマトグラフィーが精製に使用される。
【0044】
本発明のタンパク質あるいは部分ペプチドを、他のタンパク質との融合タンパク質として製造することができる。これらも、本発明に含まれる。この融合タンパク質を発現する際に用いられるベクターとしては、該タンパク質をコードするDNAを組み込むことができ、かつ該融合タンパク質を発現することができるベクターであれば、いかなるベクターでも用いることができる。本発明のペプチドに融合できるタンパク質としては、たとえばグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、ヒスチジン残基の6個の連続配列(6×His)等が挙げられる。本発明のタンパク質を他のタンパク質と融合したタンパク質として発現させた場合には、融合したタンパク質に親和性をもつ物質を用いたアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製することができ、有利である。例えば、GSTとの融合タンパク質として生産した場合は、グルタチオンをリガンドとするアフィニティークロマトグラフィーにより精製することができる。
【0045】
本発明は、前記の本発明のタンパク質あるいはその部分ペプチドに特異的に結合する抗体ならびにそのような抗体の製造方法に関する。抗体を作成するためのペプチドの長さは特に限定されないがリボソームL7/L12タンパク質蛋白質に対する抗体の場合、この蛋白質を特徴づけられる長さがあれば良く、好ましくは5アミノ酸以上、特に好ましくは8アミノ酸以上のペプチドを用いればよい。抗体は、本発明のタンパク質を認識し得る抗体であれば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ならびにこれらの抗体のフラグメント、一本鎖抗体、ヒト化抗体の何れであってもよい。抗体フラグメントは、公知の技術によって作製することができる。たとえば、該抗体フラグメントには、限定されるものではないが、F(ab’)2フラグメント、Fab’フラグメント、Fabフラグメント及びFvフラグメントが含まれる。たとえば、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体は、上記した本発明のタンパク質またはその部分ペプチドを抗原またはエピトープ含有フラグメントとして非ヒト動物に投与することにより得られる。本発明のタンパク質に対する抗体は、本発明のタンパク質あるいはその部分ペプチドを抗原として用い、自体公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。たとえば実験医学別冊 新遺伝子工学ハンドブック 改訂第3版に記載の方法が挙げられる。
【0046】
ポリクローナル抗体の場合であれば、たとえば、ウサギなどの動物に本発明のタンパク質あるいは部分ペプチドを注射することにより該タンパク質あるいはペプチドに対する抗体を産生させ、次いで血液を採取し、これを、たとえば硫安沈殿、イオン交換クロマトグラフィー、あるいは該タンパク質を固定化したアフィニティーカラム等によって精製することで調製することができる。
【0047】
モノクローナル抗体の場合は、たとえば、本発明のタンパク質あるいは部分ペプチドをマウスなどの動物に免疫し、同マウスから脾臓を抽出し、これをすりつぶして細胞にし、マウスミエローマ細胞とポリエチレングリコールなどの試薬により融合させ、これによりできた融合細胞(ハイブリドーマ)の中から、本発明のタンパク質に対する抗体を産生するクローンを選択する。次いで、得られたハイブリドーマをマウス腹腔内に移植し、同マウス内より腹水を回収し、得られたモノクローナル抗体を、たとえば硫安沈殿、イオン交換クロマトグラフィー、あるいは該タンパク質を固定化したアフィニティーカラム等によって精製することで調製することができる。
【0048】
本発明における抗体を用いるLegionella pneumophila検出方法とは、例えばポリスチレンラテックス粒子上に該抗体を吸着させた凝集反応、マイクロタイタープレート中で行う公知技術であるELISA法、既存のイムノクロマト法、着色粒子もしくは発色能を有する粒子、または酵素もしくは蛍光体でラベルされた該抗体とともにキャプチャー抗体で被覆した磁気微粒子などを用いるサンドイッチアッセイなどの既知の免疫測定手法を利用する検出方法に相当する。
【0049】
また、特に抗体を用いるLegionella pneumophila検出方法として、特表平7-509565号公報に記載されているシリコン、窒化珪素などにより形成された光学薄膜上で抗体反応をおこない光干渉原理等により検出するいわゆるオプティカルイムノアッセイ(OIA,Optical Immunoassay)などが高感度な検出方法として有用である。
【0050】
また該検出方法において必要となる微生物からの細胞内マーカー抗原の抽出方法としては、トリトンX−100(Triton X-100)、ツイーン−20(Tween-20)をはじめとする種々の界面活性剤を用いた抽出試薬による処理法、適当なプロテアーゼなどの酵素を用いる酵素処理法、物理的方法による微生物細胞の破砕をはじめ既知の細胞構造の破砕手法が用いられうるが、界面活性剤等の組み合わせにより微生物ごとに試薬による最適な抽出条件を設定することが望ましい。
また、本発明における、抗体を用いるLegionella pneumophila検出用試薬キットとは、当該検出方法を用いた検出用試薬キットに相当する。
【0051】
更に本発明の配列番号1で示される塩基配列またはその一部を含むポリヌクレオチドは、Legionella pneumophilaの土壌や河川など自然環境における環境水汚染、さらには院内感染や循環風呂汚染を調べるために応用できる。
(a)配列番号1で示される塩基配列を含むポリヌクレオチドをプローブとしたLegionella pneumophilaの検出。
(b)上記塩基配列中に連続する少なくとも15塩基からなるポリヌクレオチドをプライマーとするPCR法やLAMP法等遺伝子増幅によるLegionella pneumophilaの検出。
【0052】
培養菌体に対しては、本発明のポリヌクレオチドをプローブとして用いれば、上記T.Maniatisらの実験操作書に記載のコロニーハイブリダイゼーション法やサザン法に従えば容易に実施できる。使用する酵素、試薬類も全て市販の製品を用いることができ、特に断らない限り、製品で指定されている使用条件に従えば、完全にそれの目的を達成することができる。
【0053】
循環水や環境水を被験サンプルとする場合には、菌体を濃縮もしくはトラップして、DNAを抽出することが必要である。そのための簡便な方法として、EP0389063記載のシリカを用いる方法、WO00/21973号記載のフィルターを用いる方法、特表平11−501504号記載の磁性粒子を用いる方法などが挙げられ、これらを適宜組み合わせることも可能である。これらの方法によって抽出されたDNAをテンプレートとして、本発明のDNAの塩基配列に基づくプライマーを用いて遺伝子を増幅することにより、Legionella pneumophilaが検出できる。
以下に、実施例を挙げて本発明を詳しく説明するが、本発明は、これらの例に何ら限定されるものではない。当業者には種々の変更、修飾が可能であり、これも本発明に含まれる。
【0054】
【実施例】
実施例1
リボソームL7/L12タンパク質のアミノ酸配列は、すでに数多くの微生物で明らかにされており、公開されている。そこで、Columbia Genome CenterのLegionella Genome Projectのサイトから、これらに類似するアミノ酸配列をコードするゲノム領域の検索を行った。その結果、745塩基配列からなるゲノム領域、LP.wg.165.61.07180 bin Contig78(以下、LP1領域と呼ぶ)に、N末端よりIEGAPSTVKEGVSKDEAASIKKELEEAGATVEVK で示される34個のアミノ酸(配列番号3)からなる配列がコードされていることを見出した。このアミノ酸配列は、公知のリボソームL7/L12タンパク質のC末側1/4の領域にホモロジーが高いことから、LP1領域にはLegionellaのリボソームL7/L12タンパク質をコードされていると推定された。しかし、LP1領域の塩基配列にコードされているタンパク質は、前述したC末側領域はホモロジーが高いものの、その上流部分は全く違う配列になっていることが判明した。
【0055】
そこでリボソームL7/L12タンパク質のコーディング領域を特異的に増幅するため、LP1領域の塩基配列情報を基に、上流側のセンスプライマーとしてNP86(5'-CCTGGACGTCGACTCTTAAA-3')(配列番号4)、および下流側のアンチセンスプライマーとしてNP89r(5'-AATGCAGCATGCAATCCCG-3')(配列番号5) を設計した。PCRのテンプレートとするLegionella pneumophilaのゲノムDNAは、ATCC( American Type Culture Collection )などから購入可能である。具体的にはATCC 33152D ( genomic DNA from Legionella pneumophila subsp. pneumophila )を用いた。
【0056】
これらのプライマーセットを用いて、このLegionella pneumophila ゲノム DNAをテンプレートとしてPCR反応を行った。具体的には、Legionella pneumophila 10ngをに対して、上記プライマー各 50 pmol を加えて、Taqポリメラーゼ(宝酒造社製)および酵素に添付のバッファーを5μl、酵素に添付のdNTP mixture 4μlを加え、最終容量50μlとした。
【0057】
この混合物を、TaKaRa PCR Thermal Cycler 480を用いて、95℃ 30秒、55℃30秒、72℃1分間の反応を30サイクル行った。このPCR産物の一部を1%アガロースゲル中で電気泳動を行い、エチジウムブロマイド(日本ジーン社製)にて染色後、紫外線下で観察した結果、約700塩基対からなるDNA断片が増幅された。
【0058】
このDNA断片を、Zero Blunt TOPO PCR Cloning Kit(Invitrogen)を用いてTOPOベクターに連結し、E.coli DH5αに形質転換した。
得られた12個の形質転換株を培養し、ウィザードミニプレップ(Promega社製)を用いて添付の説明書に従って各プラスミドDNAを分離した。このプラスミドDNAを制限酵素EcoRIにて消化して、該PCR産物が組み込まれていることを確認した。
【0059】
これらのプラスミドDNAを、Applied Biosystems社製の蛍光シークエンサーを用いて塩基配列を解読した。その結果、驚くべきことに、本DNA断片は、用いたプライマーセットのうちNP89rのみをプライマーとして増幅された、配列番号1で示される塩基配列からなる714塩基対であることが判明した。
【0060】
すなわち、LP1領域の配列を基に設計されたプライマーセットのうち、実際は上流側プライマーNP86が働かず、その代わり、下流側のプライマーNP89rと非常に似た配列が上流部分に存在したため上流側のプライマーとして働き、PCR反応によって増幅されたと推定された。
【0061】
この714塩基からなる配列を解析すると、メチオニンで始まる配列番号2で示される124アミノ酸からなるオープンリーディングフレームが組めること、さらにその上流にribosome binding siteと推定される塩基配列AGGAも見出されることから、タンパク質をコードする遺伝子領域であると推定された。またそのアミノ酸配列は、他の微生物のリボソームL7/L12タンパク質に、非常にホモロジーが高いことから、目的とするLegionella リボソームL7/L12タンパク質の遺伝子であると断定された。
【0062】
実施例2
Legionella リボソームL7/L12タンパク質を大腸菌で発現させる目的で、上記DNAを含有するプラスミドDNA、Leg16.L7/L12に対して、リボソームL7/L12タンパク質コーディング領域のN末に制限酵素BamHIサイトを付加したセンスプライマーNP94(5'-GGGATCCGCTGTATCAAAAAACGAAATATTA-3')(配列番号6)、C末にXhoIサイト(CTを付加したアンチセンスプライマーNP95r(5'-GCTCGAGCGGTATCGGCATTATATCTGT-3')(配列番号7)を作製し、PCR反応にて増幅した。増幅されたDNA断片をQIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN社製)で精製後、制限酵素BamHIおよびXhoIで切断した。一方、発現用ベクターとして用いるpGEX−4T−1(Pharmacia社製)を同じ制限酵素で切断し、両者を1%アガロースゲルで電気泳動後、目的とするDNA断片をゲルから抽出し、QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)によって精製した。これらの断片を、Ligation-High (TOYOBO社製)を用いて16℃で1時間連結し、大腸菌DH5αに形質転換させた。
【0063】
得られた形質転換株12個を培養して、各プラスミドDNAを抽出し、制限酵素BamHIおよびXhoI切断により目的DNAが構築されていることを確認した。さらにこれらのプラスミドDNAの塩基配列を決定し、目的の塩基配列、すなわちGSTと同じ読み枠でLegionella リボソームL7/L12タンパク質のコーディング領域が連結されていることを確認し、うち1つをpGEX−Leg16.L7/L12とした。
【0064】
本プラスミドDNAを含有する大腸菌DH5α形質転換株をLB培地に接種し、37℃で1晩培養した。培養液200μlを10mlのLB培地に移植し、37℃にて1時間培養した後に終濃度2mMとなるようにイソプロピルβ−D(−)−チオガラクトピラノシド(IPTG)を添加し、さらに4時間培養した。培養菌体を遠心分離にて回収し、Fast Protein Red Kit(BIO101社製)に添付のYeast Breakage Buffer 500μlに懸濁し、ガラスビーズ入りチューブに移して、10分間ボルテックスミキサーで撹拌して溶菌させた。得られた溶菌液の一部をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供し、タンパク質をクマシー染色した。その結果、Legionella リボソームL7/L12タンパク質が分子量15キロダルトンのGST分子の下流に結合した、分子量45キロダルトンの目的とする融合タンパク質のバンドが確認された。
【0065】
実施例3:大量発現
プラスミドDNApGEX−Leg16.L7/L12を含有する大腸菌DH5α形質転換株を、2倍濃度のYT培地50ml中で37℃にて1晩培養した。37℃で1時間温めておいた2倍濃度のYT培地450mlに1晩培養した大腸菌培養液50mlを移植し、37℃1時間培養後、500mMのIPTGを100μl入れ、さらに25℃にて4時間培養した。該培養液250mlずつを5000rpm、20分遠心し菌体を回収し、50mM Tris−HCl(pH7.4)、25% Sucroseを含む溶菌バッファー25mlずつに懸濁した。これに10% NP−40を 1.25ml、1M MgCl2を125μl加えて、菌体を超音波破砕し、12000rpm、15分間遠心後、上澄みを回収した。
【0066】
次にPBSでコンディショニングしたグルタチオンセファロース(Pharmacia社製)カラムに前記の上澄み液を吸着させた。次にPBSでカラムを3ベットボリューム分洗浄した。その後10mMのグルタチオンを含む50mM Tris−HCl(pH8.0)で溶出し、分画したフラクション中の蛋白質含有量を色素結合法(ブラッドフォード法;BioRad社)で検出し、メインフラクションを取得した。メインフラクションをPBS3Lに対して3回透析を行った。
【0067】
得られたGST融合Legionella リボソームL7/L12タンパク質の1mg/ml溶液10mlに500mM Tris−HCl(pH7.0)、1.5M NaCl、10mM EDTA、10mM DTTを含むCleavageバッファー1mlを加え、さらに2U/μlのPreScission Protease(Pharmacia社製)を100μl添加して4℃で反応させることによりGST部分をLegionella リボソームL7/L12タンパク質部分から切り離した。
【0068】
次にPBSでコンディショニングしたグルタチオンセファロースカラムに反応液を通し、通過液を回収し、さらにPBSを1ベッドボリューム流し、これも回収した。取得した精製Legionella リボソームL7/L12タンパク質の純度は電気泳動法により確認したところ約90%であり免疫源として充分な純度を確保できた。
【0069】
実施例4:抗体の作製
まずマウスの免疫についてはLegionella リボソームL7/L12タンパク質100μgを200μlのPBSに溶解後、フロイントのコンプリートアジュバントを200μl加え混合、エマルジョン化した後200μlを腹腔内に注射した。さらに2週間後、4週間後、6週間後に同様のエマルジョン抗原を腹腔内に注射し、さらに10週間後、14週間後に2倍濃度の抗原エマルジョン液を腹腔内注射し最終免疫から3日後に脾臓を取り出し、細胞融合に供した。
【0070】
無菌的に取り出したマウスの脾細胞108個に対し骨髄腫細胞2×107個をガラスチューブに取り良く混合した後1500rpmで5分間遠心し上澄みを棄て、その後細胞をよく混合した。
【0071】
細胞融合に使用した骨髄腫細胞はNS−1系の細胞株を用い10%FCSを含むRPMI1640培地で培養し、細胞融合の2週間前から0.13mMのアザグアニン、0.5μg/mlのMC−210、10%FCSを含むRPMI1640培地で1週間培養後、さらに10%FCSを含むRPMI1640培地で1週間培養したものを用いた。混合した細胞サンプルに37℃に保温した50mlのRPMI1640培地を30ml加え1500rpmで遠心、上澄み除去後37℃に保温した50%ポリエチレングリコールを1ml加え激しく攪拌しながら2分間処理後、37℃に保温した10mlのRPMI1640培地を加え液を滅菌ピペットで吸引、排出しながら約5分間激しく攪拌混合した。
【0072】
1000rpmで5分間遠心、上澄み除去後さらに30mlのHAT培地を加え細胞濃度が5×106個/mlになるように調整し攪拌均一化後、96穴プレート型培養プレートに0.1mlずつ分注し7%CO2条件下、37℃で培養し、1日目、1週間目、2週間目にHAT培地を0.1mlずつ加えた。次に目的の抗体を生産している細胞をスクリーニングするためにELISA法による評価を実施した。0.05%のアジ化ソーダ含むPBS中に溶解したLegionella リボソームL7/L12タンパク質を10μg/ml濃度に希釈した液を100μlずつ96穴プレートの別々に分注し4℃で1晩吸着させた。上澄み除去後、1%牛血清アルブミン溶液(PBS中)200μl添加し室温で1時間反応しブロッキングする。上澄み除去後洗浄液(Tween20 0.02%、PBS)で洗浄し、その上に融合細胞の培養液100μlを加え室温で2時間反応後上澄みを除去しさらに洗浄液で洗浄後、50ng/mlのペルオキシダーゼ標識ヤギ抗マウスIgG抗体液を100μl加え室温、1時間反応を実施し、上澄みを除去しさらに洗浄液で洗浄した後TMB溶液(KPL社)を100μlずつ加え室温で20分反応、発色後1Nの硫酸を100μl添加して反応を停止し、450nmの吸光を測定した。
【0073】
この結果Legionella リボソームL7/L12タンパク質に反応する陽性ウェルが見いだされLegionella リボソームL7/L12タンパク質に対する抗体が含まれていることが判明した。
【0074】
そこで陽性ウェル中の細胞をそれぞれ回収し24穴プラスティックプレート中、HAT培地で培養した。培養した融合培地を細胞数が約20個/mlになるようにHAT培地で希釈し50μlを、HAT培地に懸濁した6週齢のマウス胸腺細胞106個と96穴培養プレート中で混合後、7%CO2条件下、37℃で2週間培養した。培養上澄み中の抗体活性を前述のELISA法にて同様に検定し、Legionella リボソームL7/L12タンパク質との反応陽性の細胞を回収した。
さらに同様の希釈検定、クローニング操作を繰り返し、ハイブリドーマLPAM−1〜4の計4クローンを取得した。
【0075】
【発明の効果】
本発明により、Legionella pneumophila由来の新規なリボソームL7/L12タンパク質、該タンパク質に対する抗体、並びに該タンパク質をコードするポリヌクレオチドが提供される。本発明のタンパク質、抗体およびポリヌクレオチドは、Legionella pneumophilaの検出や、Legionella pneumophilaが関与する疾患の診断、治療または予防のために有用である。
【0076】
【配列表】
【発明の属する技術分野】
本発明は、Legionella pneumophila由来の新規なリボソームL7/L12タンパク質をコードする遺伝子、およびその応用に関する。さらに詳しくは、本発明は、該タンパク質あるいはそのホモログ、該タンパク質をコードするポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドの取得方法、該ポリヌクレオチドを含有する組み換えベクター、該組み換えベクターを含有する形質転換体、該タンパク質の製造方法、該タンパク質に対する抗体に関する。さらに本発明は、Legionella pneumophilaの検出やLegionella pneumophilaが関与する疾患の診断、治療または予防を行う際の本発明のタンパク質、ポリヌクレオチドまたは抗体の使用に関する。
【0002】
【従来の技術】
レジオネラ属菌群は土壌や河川など自然環境に広く分布するブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌で、細菌や藻類などの代謝産物を栄養源にしたり、アメーバーなどの原生動物の体内に寄生することにより増殖することが確認されているが、人への感染例は稀であるとされてきた。しかし、近年レジオネラ属菌による院内感染や循環風呂汚染での感染がもとで、レジオネラ症と呼ばれる肺炎等を引き起こすことが報告され、特に高齢者では死亡例も数多く報告されるに至っている。レジオネラ属細菌感染症にはβラクタム剤などの通常の一次選択抗生剤が無効であり、有効な治療がほどこされない場合には容易に重症化しやすいことが知られている。このようにレジオネラ属菌の感染は社会的にも問題視されており、臨床サンプルのみならず環境水を対象とした簡便かつ迅速なレジオネラ属菌の早期検出方法の確立が望まれている。
【0003】
従来レジオネラ属菌の検出は分離培養法が用いられてきたが、レジオネラ属菌は日常の検査で使用される培地では生育せず、特殊培地が必要であること、さらにレジオネラ属菌は増殖が遅いためこの方法では検査に数日を要するという欠点がある。
【0004】
そこで近年では、レジオネラ菌に対する抗体を用いた免疫学的な手法による検出が試みられている。米国特許第4,851,333号公報にはレジオネラ・ニューモフィラ由来の蛋白質特異抗原およびその抗体を用いることで、レジオネラ・ニューモフィラの全てのセロタイプと反応しかつ他のレジオネラ属細菌とは反応しない特異的な免疫法検出が可能であることが示されている。国際公開WO87/06469号公報にはレジオネラ感染症の診断に利用可能なレジオネラ・ニューモフィラ種特異的あるいはレジオネラ属特異的な新規なモノクローナル抗体が示されている。また、国際公開WO87/05609号公報にはレジオネラ症の診断のためのレジオネラ属特異的な検出に利用可能なレジオネラ属細菌に特異的な外膜蛋白質に対するモノクローナル抗体が示されている。ドイツ公開特許番号3537272号公報にはレジオネラ・ニューモフィラ細菌の内特に血清型1の細菌にのみ特異的に反応しその検出、診断に有用な新規なモノクローナル抗体が開示されている。
【0005】
また、レジオネラ属菌の遺伝子情報を基づいた検出方法についても開発が試みられている。例えば、米国特許第5,935,782号公報にはレジオネラ・ニューモフィラの特異的なDNA検出に利用可能なfrgA(iron-repressed-gene)遺伝子およびそのフラグメントの遺伝子配列が開示されている。ドイツ公開特許番号4419294号公報にはレジオネラ感染症診断に利用可能なレジオネラ・ニューモフィラ細菌に特異的な分子量29kdの外膜蛋白質をコードするDNA配列が開示されている。国際公開WO94/28174号公報にはレジオネラ属の23Sあるいは16SのリボゾーマルRNA、あるいはリボゾーマルDNAとハイブリダイズ可能な遺伝子配列情報が開示されている。さらに、レジオネラ菌の遺伝子配列に基づき、PCR(polymerase chain reaction)法、さらにはLAMP(Loop-Mediated IsothermalAmplification)法により種々の遺伝子を増幅させることで検出することも試みられている。
【0006】
しかしながら、レジオネラ・ニューモフィラのリボゾーム蛋白質、特にリボソームL7/L12タンパク質を抗原とする特異的な抗体あるいはそのDNA配列の特異性を利用した診断等に関する従来技術はこれまでのところ全く知られていなかった。
【0007】
【特許文献1】
米国特許第4,851,333号公報
【特許文献2】
国際公開WO87/06469号公報
【特許文献3】
国際公開WO87/05609号公報
【特許文献4】
ドイツ公開特許番号3537272号公報
【特許文献5】
米国特許第5,935,782号公報
【特許文献6】
ドイツ公開特許番号4419294号公報
【特許文献7】
国際公開WO94/28174号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、Legionella pneumophila由来の新規なリボソームL7/L12タンパク質、並びにそれをコードするポリヌクレオチドを提供することを目的とする。すなわち本発明は、Legionella pneumophila由来の新規なリボソームL7/L12タンパク質あるいはそのホモログ、さらには該タンパク質の一部のアミノ酸配列からなる部分ペプチド、これらのタンパク質あるいは部分ペプチドをコードするポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドの取得方法、該ポリヌクレオチドを含有する組み換えベクター、該組み換えベクターを含有する形質転換体、該タンパク質の調製方法、並びに該タンパク質と特異的に反応する抗体に関する。また、本発明は、上記したポリヌクレオチドまたは抗体を用いるLegionella pneumophilaの検出方法およびLegionella pneumophilaが関与する疾患の診断、治療又は予防方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
リボソームL7/L12タンパク質は、タンパク質合成に必須なリボソームを構成するタンパク質の一種で、全ての微生物に存在している。分子量は約13キロダルトンで、エシュリヒア・コリ(Escherichia coli)を始め、ヘモフィラスイン・フルエンザ(Haemophilus influenzae)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、ストレプトコッカス・ニューモニア(Streptococcus pneeumoniae)、ナイセリア・メニンギチヂス(Neisseria meningitidis)など多くの微生物でアミノ酸配列やそれをコードする遺伝子の塩基配列が解明されている。各微生物のリボソームL7/L12タンパク質のアミノ酸配列の相同性は50%〜65%程度であり、必ずしも高くなく、特にN末端領域の配列の相同性は低く、個々の微生物に特異的な配列を有している。このような特徴に着目して、たとえば、国際公開WO00/06603号公報「微生物検出用抗体」に記載のごとく、微生物のリボソームL7/L12タンパク質に対する抗体を作製し、免疫的手法によってその微生物を特異的に検知し同定できることが知られている。
【0010】
一方、Legionella pneumophilaのゲノム配列は、Columbia Genome CenterのLegionella Genome Project等で解析が進められ、すでにその塩基配列の一部が公開されているが、リボソームL7/L12タンパク質の遺伝子配列についてはいまだ同定されていない。本発明者らは、種々の細菌で保存されているリボソームL7/L12タンパク質のC末端領域のアミノ酸配列を基に、公開されているLegionella pneumophilaゲノム配列を検索した。その結果、目的とするアミノ酸配列をコードすると推定される塩基配列を有する領域を見出した。しかし、この領域をタンパク質に翻訳すると、N末端領域のアミノ酸配列は、公知リボソームL7/L12タンパク質とは全く異なることが判明した。
【0011】
そこで本発明者らは、C末端領域のアミノ酸配列をコードする塩基配列を基に種々のPCRプライマーを設計し、Legionella pneumophilaのゲノムDNAの増幅を検討した。その結果、714塩基対からなるDNA断片の増幅に成功し、その塩基配列からリボソーム結合部位と推定される塩基配列領域を介して、125アミノ酸残基からなる新規なタンパク質をコードする領域を明らかにできた。このタンパク質は、種々の細菌リボソームL7/L12タンパク質とC末端領域で高度に相同性を有しており、目的のLegionella pneumophilaリボソームL7/L12タンパク質であることが示された。
【0012】
さらに本発明者らは、このDNA断片のリボソームL7/L12タンパク質コード領域を大腸菌発現用プラスミドに挿入し、大腸菌組み換え体を作製してその発現を検討した。その結果、目的タンパク質を融合タンパクとして発現させることに成功し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、本発明は以下に関するものである。
(1) 以下の何れかのタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質;又は
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有し、Legionella pneumophilaに特異的な抗原性を有するタンパク質。
【0014】
(2) 以下の何れかのポリヌクレオチド。
(a)配列番号1に記載の塩基配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号1に記載の塩基配列において1若しくは複数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を有し、Legionella pneumophilaに特異的な抗原性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号1に記載の塩基配列又はその相補配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、Legionella pneumophilaに特異的な抗原性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【0015】
(3) Legionella pneumophila由来のポリヌクレオチドである、(1)または(2)記載のポリヌクレオチド。
(4) (1)から(3)の何れかに記載のポリヌクレオチドの塩基配列のうち連続する15塩基以上の長さを有する塩基配列またはその相補配列を有するポリヌクレオチド。
(5) (1)から(4)の何れかに記載のポリヌクレオチドを用いる、Legionella pneumophilaの検出方法。
(6) (1)から(4)の何れかに記載のポリヌクレオチドを含む、Legionella pneumophila検出用試薬キット。
【0016】
(7) 以下の何れかのタンパク質。
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有し、Legionella pneumophilaに特異的な抗原性を有するタンパク質;又は
(c)上記(a)又は(b)記載のタンパク質とその全長にわたり95%以上のアミノ酸配列の同一性を有するタンパク質であり、Legionella pneumophilaに特異的な抗原性を有するタンパク質。
【0017】
(8) 以下の何れかのアミノ酸配列中の連続する少なくとも5つのアミノ酸を有する部分ペプチド。
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有し、Legionella pneumophilaに特異的な抗原性を有するアミノ酸配列;又は
(c)上記(a)又は(b)記載のアミノ酸配列とその全長にわたり95%以上のアミノ酸配列の同一性を有するアミノ酸配列であり、Legionella pneumophilaに特異的な抗原性を有するアミノ酸配列。
【0018】
(9) (1)から(4)のいずれかに記載のポリヌクレオチドを発現することにより得られるタンパク質もしくは部分ペプチド。
(10) (1)から(4)のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含有する組み換えベクター。
(11) (1)から(4)のいずれかに記載のポリヌクレオチドまたは(10)に記載の組換えベクターを有する形質転換体。
(12) (a)(11)記載の形質転換体を培養し、(b)発現された組み換えタンパク質もしくはペプチドを回収することを含む、タンパク質もしくは部分ペプチドの製造方法。
【0019】
(13) (7)から(9)の何れかに記載のタンパク質もしくは部分ペプチドに対する抗体。
(14) (13)記載の抗体を用いるLegionella pneumophilaの検出方法。
(15) (14)記載の抗体を含む、Legionella pneumophila検出用試薬キット。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明においてポリヌクレオチドとは、Legionella pneumophilaのリボソームL7/L12タンパク質に相同性のあるタンパク質あるいは部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドであれば、特に限定されない。また、本発明のタンパク質とは、Legionella pneumophilaのリボソームL7/L12タンパク質に相同性のあるタンパク質あるいは部分ペプチドであれば、特に限定されない。
【0021】
本発明は、配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質を提供し、これに関連してさらに以下のタンパク質を提供する。
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有し、Legionella pneumophilaに特異的な抗原性を有するタンパク質;
(c)上記(a)又は(b)記載のタンパク質とその全長にわたり95%以上のアミノ酸配列の同一性を有するタンパク質であり、Legionella pneumophilaに特異的な抗原性を有するタンパク質;及び、
(d)上記(a)から(c)の何れかのアミノ酸配列中に連続する少なくとも5つのアミノ酸を有する部分ペプチド。
【0022】
“同一性”とは、当該技術で知られているとおり、配列を比較することにより決定される、3以上のタンパク質あるいは9以上のポリヌクレオチドの間の関係である。当該技術で“同一性”とは、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間の適合によって、あるいは場合によっては、一続きのそのような配列間の適合によって決定されるような、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間の配列相関性の程度を意味する。“同一性”は、既知の方法により容易に決定できる。同一性を決定する好ましい方法は、試験する配列間で最も長く適合するように設計される。同一性を決定するための方法は、公に利用可能なプログラムにコードされている。相同性決定には、AltschulらによるBLAST (Basic Local AlignmentSearch Tool) プログラム(たとえば、Altschul SF, Gish W, Miller W, MyersEW, Lipman DJ., J. Mol. Biol., 215: p403-410 (1990), Altschyl SF, Madden TL, Schaffer AA, Zhang J, Miller W, Lipman DJ., Nucleic Acids Res. 25:p3389-3402 (1997))を利用し決定することができる。BLASTのようなソフトウェアを用いる場合、デフォルト値を用いるのが好ましい。BLAST検索に一般的に用いられる主な初期条件は、以下の通りであるが、これに限定されない。
【0023】
アミノ酸置換行列とは20種類のアミノ酸の各々のペアの類縁性を数値化した行列であり、通常BLOSUM62のデフォルトマトリックスが用いられる。このアミノ酸置換行列の理論についてはAltschul S.F., J.Mol.Biol.,219:555-565(1991)に、DNA配列の比較への適用についてはStates D.J., Gish W., Altschul S.F.,Methods, 3:66-70(1991)に示されている。その際の最適なギャップコストは経験的に決定されており、BLOSUM62の場合は好ましくは、Existence 11、Extension 1のパラメーターが用いられる。期待値(EXPECT)とは、データベース配列に対してマッチする際の統計的有意性に関する閾値であり、デフォルト値は10である。
【0024】
一例として、配列番号2のアミノ酸配列に対して例えば95%以上の同一性を有するタンパク質は、そのアミノ酸配列が配列番号2のアミノ酸配列のアミノ酸100個あたり5個までのアミノ酸の変化を含んでよいことを意味する。言い換えれば、対照アミノ酸配列に対して95%以上のアミノ酸配列の同一性を有するタンパク質は、対照配列中の全アミノ酸の5%までの数のアミノ酸が欠失または他のアミノ酸と置換していてもよく、あるいは、対照配列中の全アミノ酸配列のうち5%までの数のアミノ酸が対照配列中に挿入されたものであってもよい。対照配列におけるこれらの変化は、対照アミノ酸配列のアミノ末端またはカルボキシ末端位置に存在していてもよく、あるいはそれらの末端間のいずれかの位置に存在していてもよく、あるいは対照配列内で1個またはそれ以上の一連の群をなしていてもよい。
【0025】
また本発明は、配列番号1の塩基配列からなるポリヌクレオチドを提供し、これに関してさらに以下のポリヌクレオチドを提供する。
(a)配列番号1に記載の塩基配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号1に記載の塩基配列において1若しくは複数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を有し、Legionella pneumophilaに特異的な抗原性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号1に記載の塩基配列又はその相補配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、Legionella pneumophilaに特異的な抗原性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;又は
(d)上記(a)から(c)の何れかに記載のポリヌクレオチドの塩基配列のうち連続する15塩基以上の長さを有する塩基配列またはその相補配列を有するポリヌクレオチド。
【0026】
上記ポリヌクレオチド配列に含まれる塩基配列に同一または実質的に同一なポリヌクレオチドは、本発明のタンパク質をコードする全長cDNA及びゲノムクローンまたは上記配列に対応する相同性の高い他の遺伝子のcDNAまたはゲノムクローンを単離するためのハイブリダイゼーションプローブとして、または核酸増幅反応のためのプライマーとして使用してもよい。代表的には、これらのヌクレオチド配列は、上記配列に70%同一であり、好ましくは80%同一であり、より好ましくは90%同一であり、最も好ましくは95%同一である。プローブまたはプライマーは、一般的には少なくとも15ヌクレオチドを含有し、好ましくは30ヌクレオチドを含有し、50ヌクレオチドを含有してもよい。特に好ましいプローブは、30〜50ヌクレオチドを有する。特に好ましいプライマーは、20〜25ヌクレオチドを有する。
【0027】
本発明のポリヌクレオチドは、DNAの形態(たとえば、cDNAおよびクローニングによって得られるか、あるいは合成的に生成されるゲノムDNAを含む)であってもよく、RNA(たとえばmRNA)の形態であってもよい。該ポリヌクレオチドは、二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。二本鎖の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNAまたはDNA:RNAのハイブリッドであってもよい。一本鎖の場合は、センス鎖(コード鎖としても知られる)であっても、アンチセンス鎖(非コード鎖としても知られる)であってもよい。
【0028】
当業者であれば、公知の方法を用いてこのタンパク質中のアミノ酸の置換などを適宜行ない、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質と同様に、Legionella pneumophilaに特異的な抗原性を有するタンパク質もしくは部分ペプチドを作製することが可能である。一つの方法としては、該タンパク質をコードするDNAに対して、慣用の突然変異誘発法を使用する方法がある。別の方法としてはたとえば部位特異的変異法(たとえば宝酒造株式会社のMutan-Super Express Km キット)が挙げられる。また、タンパク質のアミノ酸の変異は自然界においても生じうる。このようにアミノ酸の欠失、置換、付加により配列番号2のタンパク質に対してアミノ酸配列が変異した変異体であって、Legionella pneumophilaに対する抗体を調製するに適当な抗原性を有するタンパク質及び該タンパク質をコードするDNAも本発明に含まれる。変異の数は、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、最も好ましくは3以下が好ましい。
【0029】
アミノ酸置換の例としては、保存的置換が好ましく、具体的には以下のグループ内での置換が挙げられる。(グリシン、アラニン)(バリン、イソロイシン、ロイシン)(アスパラギン酸、グルタミン酸)(アスパラギン、グルタミン)(セリン、トレオニン)(リジン、アルギニン)(フェニルアラニン、チロシン)。
当業者であれば、ハイブリダイゼーション技術などを用いて配列番号1の塩基配列からなるDNAまたはその一部を基に、これと類似性の高いDNAを単離して、該DNAから配列番号1に類似の塩基配列を有するDNAを得ることも容易に行うことができる。このように配列番号1で表される塩基配列のDNAと高い同一性を有するDNAであって、上記配列番号2のアミノ酸配列を含み、Legionella pneumophilaに対する抗体を調製するに適当な抗原性を有するタンパク質あるいは部分ペプチドを得ることは可能である。
【0030】
本発明のタンパク質あるいは部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドは、ゲノムDNAの他、化学合成DNAも含まれる。このようなDNAは、公知の方法により化学合成することができる。
【0031】
本発明のポリヌクレオチドは、配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、Legionella pneumophilaに特異的な抗原性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドも含まれる。ストリンジェントな条件とは、当業者には十分理解できることであり、たとえば、T.Maniatisらの実験操作書(Molecular Cloning A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory 1982、1989)などに従えば容易に実施できる。
【0032】
すなわち、ストリンジェントな条件とは、30%ホルムアミドを含むハイブリダイゼーション溶液中(5×SSC(0.75MのNaCl、75mMのクエン酸三ナトリウム)、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、100μg/mlの変性せん断サケ精子DNA)で37℃のインキュベーションを一晩行い、その後2×SSC、0.1%SDS中、室温で10分の洗浄を3回行い、次いで1×SSC、0.1%SDS中、37℃で10分の洗浄を2回行う条件である(低ストリンジエンシー)。より好ましい条件は、40%ホルムアミドを含むハイブリダイゼーション溶液中で42℃のインキュベーションを一晩行い、その後2×SSC、0.1%SDS中、室温で10分の洗浄を3回行い、次いで0.2×SSC、1%SDS中、42℃で10分の洗浄を2回行う条件である(中ストリンジエンシー)。最も好ましい条件は、50%ホルムアミドを含むハイブリダイゼーション溶液中で42℃のインキュベーションを一晩行い、その後2×SSC、0.1%SDS中、室温で10分の洗浄を3回行い、次いで0.2×SSC、0.1%SDS中、50℃で10分の洗浄を2回行う条件である(高ストリンジエンシー)。
【0033】
本発明のポリヌクレオチドは、前述のタンパク質を、組換えDNA技術を用いて製造するのに用いることができる。本発明のポリヌクレオチド及びペプチドは、概略以下のようにして得ることができる。
(A)本発明のタンパク質をコードするDNAをクローニングする。
(B)タンパク質の全コード領域あるいはその一部をコードするDNAを発現用ベクターに組み込んで、組換えベクターを構築する。
(C)構築した組換えベクターにより、宿主細胞を形質転換する。
(D)得られた細胞を培養し、該タンパク質、またはその類縁体を発現させ、カラムクロマトグラフィーなどにより精製する。
【0034】
上記の工程中でDNA、組換え体宿主としての大腸菌等の取り扱いに必要な一般的な操作は、当業者間で通常行われているものであり、たとえば、上記T.Maniatisらの実験操作書に従えば容易に実施できる。使用する酵素、試薬類も全て市販の製品を用いることができ、特に断らない限り、製品で指定されている使用条件に従えば、完全にそれの目的を達成することができる。以下に上記(A)〜(D)の工程について更に詳しく説明する。
【0035】
上記工程(A)における本発明のタンパク質をコードするDNAのクローニングの手段としては、本願明細書実施例に記載した方法の他に、本発明のヌクレオチド配列(たとえば配列番号1の一部を有する合成DNAをプライマーとしたPCR法によって増幅する方法、あるいは、適当なベクターに組み込んだDNAを本発明のタンパク質の一部あるいは全領域をコードするDNA断片もしくは合成DNAを標識したものとのハイブリダイゼーションによって選別すること、などが挙げられる。
【0036】
本発明は、上記のDNAを含有する組換えベクターを提供する。本発明のタンパク質の発現ベクターは、たとえば、本発明のタンパク質をコードするDNAから目的とするDNA断片を切り出し、該DNA断片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより製造することができる。用いる発現ベクターとしては、複製可能であれば、大腸菌をはじめとする原核生物由来、酵母由来、真菌由来、などの微生物由来のベクター、さらには昆虫ウイルス由来、脊椎動物ウイルス由来、いずれのベクターでも良いが、宿主として使用する微生物または細胞に適したものを選択する必要がある。また、発現物に応じて、宿主細胞―発現ベクター系としては、適切な組み合わせが選択される。
【0037】
微生物を宿主として使用する場合、これら微生物に適したプラスミドベクターが組換え体DNAの複製可能な発現ベクターとして一般に用いられる。たとえば、大腸菌を形質転換するためのプラスミドベクターとしては、プラスミドpBR322やpBR327などを用いることができる。プラスミドベクターは通常複製起源、プロモーター、及び組換え体DNAで形質転換した細胞を選別するのに有用な表現型を組換え体DNAに与えるマーカー遺伝子等を含んでいる。プロモーターの例としては、β−ラクタマーゼプロモータ、ラクトースプロモーター、トリプトファンプロモーター等が挙げられる。マーカー遺伝子の例としては、アンピシリン耐性遺伝子やテトラサイクリン遺伝子などが挙げられる。適した発現ベクターの例としては、プラスミドpBR322、pBR327の他に、pUC18、pUC19等が挙げられる。
【0038】
酵母で本発明のDNAを発現するためには、複製可能なベクターとして、たとえばYEp24を用いることができる。プラスミドYEp24はURA3遺伝子を含有しており、このURA3遺伝子をマーカー遺伝子として利用することができる。酵母細胞用の発現ベクターのプロモーターの例としては、3−ホスホグリセレートキナーゼ、グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼなどの遺伝子のプロモーター等が挙げられる。
【0039】
真菌で本発明のDNAを発現するための発現ベクターに用いられるプロモーター及びターミネーターの例としては、ホスホグリセレートキナーゼ(PGK)、グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ(GAPD)、アクチン等の遺伝子プロモーター及びターミネーターが挙げられる。適した発現ベクターの例としては、プラスミドpPGACY2、pBSFAHY83等が挙げられる。
【0040】
上記工程(C)において用いる宿主としては、大腸菌をはじめとする原核生物、酵母、真菌等の微生物、及び昆虫や動物等の細胞のいずれでもよいが、用いる発現ベクターに適したものを選択する必要がある。微生物の例としては、エシュリヒア コリ(Escherichia coli)の菌株、たとえばE.coliK12株294(ATCC 31446)、E.coli X1776(ATCC 31537)、E.coli C600、E.coli JM109、E.coli B株、あるいはバチラス・サブチリス(Bacillus subtilis)の如きBacillus属の菌株、あるいはサルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)またはセラチア・マーゼサンス(Serratia marcesans)等の大腸菌以外の腸内菌、あるいはシュードモナス(Pseudomonas)属の種々の菌株が挙げられる。
【0041】
酵母としては、たとえば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)などが用いられる。真菌としては、たとえば、アスペルギルス・ニドランス(Aspergillus nidulans)、アクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)(ATCC 11550)等が挙げられる。
【0042】
上記の形質転換された細胞を本発明のタンパク質をコードするポリヌクレオチドが発現可能な条件下で培養し、本発明のタンパク質を生成、蓄積せしめることによって、本発明のタンパク質を製造することができる。すなわち、本発明は、上記した本発明のポリヌクレオチドを含む形質転換された細胞を、該ポリヌクレオチドによりコードされているタンパク質を発現させる条件下培養し、次いで培養物から該タンパク質を回収することを含む該タンパク質の製造方法を提供する。
【0043】
上記培養物から本発明のタンパク質を分離精製するには、自体公知の分離・精製法を適切に組み合わせて行なうことができる。これらの公知の分離、精製法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法などが用いられる。たとえば、本発明のタンパク質は、硫安またはエタノール沈殿、酸抽出、アニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィー、ホスフォセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーを含む既知の方法により組換え細胞培養物から回収し、精製することができる。最も好ましくは、高性能液体クロマトグラフィーが精製に使用される。
【0044】
本発明のタンパク質あるいは部分ペプチドを、他のタンパク質との融合タンパク質として製造することができる。これらも、本発明に含まれる。この融合タンパク質を発現する際に用いられるベクターとしては、該タンパク質をコードするDNAを組み込むことができ、かつ該融合タンパク質を発現することができるベクターであれば、いかなるベクターでも用いることができる。本発明のペプチドに融合できるタンパク質としては、たとえばグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、ヒスチジン残基の6個の連続配列(6×His)等が挙げられる。本発明のタンパク質を他のタンパク質と融合したタンパク質として発現させた場合には、融合したタンパク質に親和性をもつ物質を用いたアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製することができ、有利である。例えば、GSTとの融合タンパク質として生産した場合は、グルタチオンをリガンドとするアフィニティークロマトグラフィーにより精製することができる。
【0045】
本発明は、前記の本発明のタンパク質あるいはその部分ペプチドに特異的に結合する抗体ならびにそのような抗体の製造方法に関する。抗体を作成するためのペプチドの長さは特に限定されないがリボソームL7/L12タンパク質蛋白質に対する抗体の場合、この蛋白質を特徴づけられる長さがあれば良く、好ましくは5アミノ酸以上、特に好ましくは8アミノ酸以上のペプチドを用いればよい。抗体は、本発明のタンパク質を認識し得る抗体であれば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ならびにこれらの抗体のフラグメント、一本鎖抗体、ヒト化抗体の何れであってもよい。抗体フラグメントは、公知の技術によって作製することができる。たとえば、該抗体フラグメントには、限定されるものではないが、F(ab’)2フラグメント、Fab’フラグメント、Fabフラグメント及びFvフラグメントが含まれる。たとえば、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体は、上記した本発明のタンパク質またはその部分ペプチドを抗原またはエピトープ含有フラグメントとして非ヒト動物に投与することにより得られる。本発明のタンパク質に対する抗体は、本発明のタンパク質あるいはその部分ペプチドを抗原として用い、自体公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。たとえば実験医学別冊 新遺伝子工学ハンドブック 改訂第3版に記載の方法が挙げられる。
【0046】
ポリクローナル抗体の場合であれば、たとえば、ウサギなどの動物に本発明のタンパク質あるいは部分ペプチドを注射することにより該タンパク質あるいはペプチドに対する抗体を産生させ、次いで血液を採取し、これを、たとえば硫安沈殿、イオン交換クロマトグラフィー、あるいは該タンパク質を固定化したアフィニティーカラム等によって精製することで調製することができる。
【0047】
モノクローナル抗体の場合は、たとえば、本発明のタンパク質あるいは部分ペプチドをマウスなどの動物に免疫し、同マウスから脾臓を抽出し、これをすりつぶして細胞にし、マウスミエローマ細胞とポリエチレングリコールなどの試薬により融合させ、これによりできた融合細胞(ハイブリドーマ)の中から、本発明のタンパク質に対する抗体を産生するクローンを選択する。次いで、得られたハイブリドーマをマウス腹腔内に移植し、同マウス内より腹水を回収し、得られたモノクローナル抗体を、たとえば硫安沈殿、イオン交換クロマトグラフィー、あるいは該タンパク質を固定化したアフィニティーカラム等によって精製することで調製することができる。
【0048】
本発明における抗体を用いるLegionella pneumophila検出方法とは、例えばポリスチレンラテックス粒子上に該抗体を吸着させた凝集反応、マイクロタイタープレート中で行う公知技術であるELISA法、既存のイムノクロマト法、着色粒子もしくは発色能を有する粒子、または酵素もしくは蛍光体でラベルされた該抗体とともにキャプチャー抗体で被覆した磁気微粒子などを用いるサンドイッチアッセイなどの既知の免疫測定手法を利用する検出方法に相当する。
【0049】
また、特に抗体を用いるLegionella pneumophila検出方法として、特表平7-509565号公報に記載されているシリコン、窒化珪素などにより形成された光学薄膜上で抗体反応をおこない光干渉原理等により検出するいわゆるオプティカルイムノアッセイ(OIA,Optical Immunoassay)などが高感度な検出方法として有用である。
【0050】
また該検出方法において必要となる微生物からの細胞内マーカー抗原の抽出方法としては、トリトンX−100(Triton X-100)、ツイーン−20(Tween-20)をはじめとする種々の界面活性剤を用いた抽出試薬による処理法、適当なプロテアーゼなどの酵素を用いる酵素処理法、物理的方法による微生物細胞の破砕をはじめ既知の細胞構造の破砕手法が用いられうるが、界面活性剤等の組み合わせにより微生物ごとに試薬による最適な抽出条件を設定することが望ましい。
また、本発明における、抗体を用いるLegionella pneumophila検出用試薬キットとは、当該検出方法を用いた検出用試薬キットに相当する。
【0051】
更に本発明の配列番号1で示される塩基配列またはその一部を含むポリヌクレオチドは、Legionella pneumophilaの土壌や河川など自然環境における環境水汚染、さらには院内感染や循環風呂汚染を調べるために応用できる。
(a)配列番号1で示される塩基配列を含むポリヌクレオチドをプローブとしたLegionella pneumophilaの検出。
(b)上記塩基配列中に連続する少なくとも15塩基からなるポリヌクレオチドをプライマーとするPCR法やLAMP法等遺伝子増幅によるLegionella pneumophilaの検出。
【0052】
培養菌体に対しては、本発明のポリヌクレオチドをプローブとして用いれば、上記T.Maniatisらの実験操作書に記載のコロニーハイブリダイゼーション法やサザン法に従えば容易に実施できる。使用する酵素、試薬類も全て市販の製品を用いることができ、特に断らない限り、製品で指定されている使用条件に従えば、完全にそれの目的を達成することができる。
【0053】
循環水や環境水を被験サンプルとする場合には、菌体を濃縮もしくはトラップして、DNAを抽出することが必要である。そのための簡便な方法として、EP0389063記載のシリカを用いる方法、WO00/21973号記載のフィルターを用いる方法、特表平11−501504号記載の磁性粒子を用いる方法などが挙げられ、これらを適宜組み合わせることも可能である。これらの方法によって抽出されたDNAをテンプレートとして、本発明のDNAの塩基配列に基づくプライマーを用いて遺伝子を増幅することにより、Legionella pneumophilaが検出できる。
以下に、実施例を挙げて本発明を詳しく説明するが、本発明は、これらの例に何ら限定されるものではない。当業者には種々の変更、修飾が可能であり、これも本発明に含まれる。
【0054】
【実施例】
実施例1
リボソームL7/L12タンパク質のアミノ酸配列は、すでに数多くの微生物で明らかにされており、公開されている。そこで、Columbia Genome CenterのLegionella Genome Projectのサイトから、これらに類似するアミノ酸配列をコードするゲノム領域の検索を行った。その結果、745塩基配列からなるゲノム領域、LP.wg.165.61.07180 bin Contig78(以下、LP1領域と呼ぶ)に、N末端よりIEGAPSTVKEGVSKDEAASIKKELEEAGATVEVK で示される34個のアミノ酸(配列番号3)からなる配列がコードされていることを見出した。このアミノ酸配列は、公知のリボソームL7/L12タンパク質のC末側1/4の領域にホモロジーが高いことから、LP1領域にはLegionellaのリボソームL7/L12タンパク質をコードされていると推定された。しかし、LP1領域の塩基配列にコードされているタンパク質は、前述したC末側領域はホモロジーが高いものの、その上流部分は全く違う配列になっていることが判明した。
【0055】
そこでリボソームL7/L12タンパク質のコーディング領域を特異的に増幅するため、LP1領域の塩基配列情報を基に、上流側のセンスプライマーとしてNP86(5'-CCTGGACGTCGACTCTTAAA-3')(配列番号4)、および下流側のアンチセンスプライマーとしてNP89r(5'-AATGCAGCATGCAATCCCG-3')(配列番号5) を設計した。PCRのテンプレートとするLegionella pneumophilaのゲノムDNAは、ATCC( American Type Culture Collection )などから購入可能である。具体的にはATCC 33152D ( genomic DNA from Legionella pneumophila subsp. pneumophila )を用いた。
【0056】
これらのプライマーセットを用いて、このLegionella pneumophila ゲノム DNAをテンプレートとしてPCR反応を行った。具体的には、Legionella pneumophila 10ngをに対して、上記プライマー各 50 pmol を加えて、Taqポリメラーゼ(宝酒造社製)および酵素に添付のバッファーを5μl、酵素に添付のdNTP mixture 4μlを加え、最終容量50μlとした。
【0057】
この混合物を、TaKaRa PCR Thermal Cycler 480を用いて、95℃ 30秒、55℃30秒、72℃1分間の反応を30サイクル行った。このPCR産物の一部を1%アガロースゲル中で電気泳動を行い、エチジウムブロマイド(日本ジーン社製)にて染色後、紫外線下で観察した結果、約700塩基対からなるDNA断片が増幅された。
【0058】
このDNA断片を、Zero Blunt TOPO PCR Cloning Kit(Invitrogen)を用いてTOPOベクターに連結し、E.coli DH5αに形質転換した。
得られた12個の形質転換株を培養し、ウィザードミニプレップ(Promega社製)を用いて添付の説明書に従って各プラスミドDNAを分離した。このプラスミドDNAを制限酵素EcoRIにて消化して、該PCR産物が組み込まれていることを確認した。
【0059】
これらのプラスミドDNAを、Applied Biosystems社製の蛍光シークエンサーを用いて塩基配列を解読した。その結果、驚くべきことに、本DNA断片は、用いたプライマーセットのうちNP89rのみをプライマーとして増幅された、配列番号1で示される塩基配列からなる714塩基対であることが判明した。
【0060】
すなわち、LP1領域の配列を基に設計されたプライマーセットのうち、実際は上流側プライマーNP86が働かず、その代わり、下流側のプライマーNP89rと非常に似た配列が上流部分に存在したため上流側のプライマーとして働き、PCR反応によって増幅されたと推定された。
【0061】
この714塩基からなる配列を解析すると、メチオニンで始まる配列番号2で示される124アミノ酸からなるオープンリーディングフレームが組めること、さらにその上流にribosome binding siteと推定される塩基配列AGGAも見出されることから、タンパク質をコードする遺伝子領域であると推定された。またそのアミノ酸配列は、他の微生物のリボソームL7/L12タンパク質に、非常にホモロジーが高いことから、目的とするLegionella リボソームL7/L12タンパク質の遺伝子であると断定された。
【0062】
実施例2
Legionella リボソームL7/L12タンパク質を大腸菌で発現させる目的で、上記DNAを含有するプラスミドDNA、Leg16.L7/L12に対して、リボソームL7/L12タンパク質コーディング領域のN末に制限酵素BamHIサイトを付加したセンスプライマーNP94(5'-GGGATCCGCTGTATCAAAAAACGAAATATTA-3')(配列番号6)、C末にXhoIサイト(CTを付加したアンチセンスプライマーNP95r(5'-GCTCGAGCGGTATCGGCATTATATCTGT-3')(配列番号7)を作製し、PCR反応にて増幅した。増幅されたDNA断片をQIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN社製)で精製後、制限酵素BamHIおよびXhoIで切断した。一方、発現用ベクターとして用いるpGEX−4T−1(Pharmacia社製)を同じ制限酵素で切断し、両者を1%アガロースゲルで電気泳動後、目的とするDNA断片をゲルから抽出し、QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)によって精製した。これらの断片を、Ligation-High (TOYOBO社製)を用いて16℃で1時間連結し、大腸菌DH5αに形質転換させた。
【0063】
得られた形質転換株12個を培養して、各プラスミドDNAを抽出し、制限酵素BamHIおよびXhoI切断により目的DNAが構築されていることを確認した。さらにこれらのプラスミドDNAの塩基配列を決定し、目的の塩基配列、すなわちGSTと同じ読み枠でLegionella リボソームL7/L12タンパク質のコーディング領域が連結されていることを確認し、うち1つをpGEX−Leg16.L7/L12とした。
【0064】
本プラスミドDNAを含有する大腸菌DH5α形質転換株をLB培地に接種し、37℃で1晩培養した。培養液200μlを10mlのLB培地に移植し、37℃にて1時間培養した後に終濃度2mMとなるようにイソプロピルβ−D(−)−チオガラクトピラノシド(IPTG)を添加し、さらに4時間培養した。培養菌体を遠心分離にて回収し、Fast Protein Red Kit(BIO101社製)に添付のYeast Breakage Buffer 500μlに懸濁し、ガラスビーズ入りチューブに移して、10分間ボルテックスミキサーで撹拌して溶菌させた。得られた溶菌液の一部をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供し、タンパク質をクマシー染色した。その結果、Legionella リボソームL7/L12タンパク質が分子量15キロダルトンのGST分子の下流に結合した、分子量45キロダルトンの目的とする融合タンパク質のバンドが確認された。
【0065】
実施例3:大量発現
プラスミドDNApGEX−Leg16.L7/L12を含有する大腸菌DH5α形質転換株を、2倍濃度のYT培地50ml中で37℃にて1晩培養した。37℃で1時間温めておいた2倍濃度のYT培地450mlに1晩培養した大腸菌培養液50mlを移植し、37℃1時間培養後、500mMのIPTGを100μl入れ、さらに25℃にて4時間培養した。該培養液250mlずつを5000rpm、20分遠心し菌体を回収し、50mM Tris−HCl(pH7.4)、25% Sucroseを含む溶菌バッファー25mlずつに懸濁した。これに10% NP−40を 1.25ml、1M MgCl2を125μl加えて、菌体を超音波破砕し、12000rpm、15分間遠心後、上澄みを回収した。
【0066】
次にPBSでコンディショニングしたグルタチオンセファロース(Pharmacia社製)カラムに前記の上澄み液を吸着させた。次にPBSでカラムを3ベットボリューム分洗浄した。その後10mMのグルタチオンを含む50mM Tris−HCl(pH8.0)で溶出し、分画したフラクション中の蛋白質含有量を色素結合法(ブラッドフォード法;BioRad社)で検出し、メインフラクションを取得した。メインフラクションをPBS3Lに対して3回透析を行った。
【0067】
得られたGST融合Legionella リボソームL7/L12タンパク質の1mg/ml溶液10mlに500mM Tris−HCl(pH7.0)、1.5M NaCl、10mM EDTA、10mM DTTを含むCleavageバッファー1mlを加え、さらに2U/μlのPreScission Protease(Pharmacia社製)を100μl添加して4℃で反応させることによりGST部分をLegionella リボソームL7/L12タンパク質部分から切り離した。
【0068】
次にPBSでコンディショニングしたグルタチオンセファロースカラムに反応液を通し、通過液を回収し、さらにPBSを1ベッドボリューム流し、これも回収した。取得した精製Legionella リボソームL7/L12タンパク質の純度は電気泳動法により確認したところ約90%であり免疫源として充分な純度を確保できた。
【0069】
実施例4:抗体の作製
まずマウスの免疫についてはLegionella リボソームL7/L12タンパク質100μgを200μlのPBSに溶解後、フロイントのコンプリートアジュバントを200μl加え混合、エマルジョン化した後200μlを腹腔内に注射した。さらに2週間後、4週間後、6週間後に同様のエマルジョン抗原を腹腔内に注射し、さらに10週間後、14週間後に2倍濃度の抗原エマルジョン液を腹腔内注射し最終免疫から3日後に脾臓を取り出し、細胞融合に供した。
【0070】
無菌的に取り出したマウスの脾細胞108個に対し骨髄腫細胞2×107個をガラスチューブに取り良く混合した後1500rpmで5分間遠心し上澄みを棄て、その後細胞をよく混合した。
【0071】
細胞融合に使用した骨髄腫細胞はNS−1系の細胞株を用い10%FCSを含むRPMI1640培地で培養し、細胞融合の2週間前から0.13mMのアザグアニン、0.5μg/mlのMC−210、10%FCSを含むRPMI1640培地で1週間培養後、さらに10%FCSを含むRPMI1640培地で1週間培養したものを用いた。混合した細胞サンプルに37℃に保温した50mlのRPMI1640培地を30ml加え1500rpmで遠心、上澄み除去後37℃に保温した50%ポリエチレングリコールを1ml加え激しく攪拌しながら2分間処理後、37℃に保温した10mlのRPMI1640培地を加え液を滅菌ピペットで吸引、排出しながら約5分間激しく攪拌混合した。
【0072】
1000rpmで5分間遠心、上澄み除去後さらに30mlのHAT培地を加え細胞濃度が5×106個/mlになるように調整し攪拌均一化後、96穴プレート型培養プレートに0.1mlずつ分注し7%CO2条件下、37℃で培養し、1日目、1週間目、2週間目にHAT培地を0.1mlずつ加えた。次に目的の抗体を生産している細胞をスクリーニングするためにELISA法による評価を実施した。0.05%のアジ化ソーダ含むPBS中に溶解したLegionella リボソームL7/L12タンパク質を10μg/ml濃度に希釈した液を100μlずつ96穴プレートの別々に分注し4℃で1晩吸着させた。上澄み除去後、1%牛血清アルブミン溶液(PBS中)200μl添加し室温で1時間反応しブロッキングする。上澄み除去後洗浄液(Tween20 0.02%、PBS)で洗浄し、その上に融合細胞の培養液100μlを加え室温で2時間反応後上澄みを除去しさらに洗浄液で洗浄後、50ng/mlのペルオキシダーゼ標識ヤギ抗マウスIgG抗体液を100μl加え室温、1時間反応を実施し、上澄みを除去しさらに洗浄液で洗浄した後TMB溶液(KPL社)を100μlずつ加え室温で20分反応、発色後1Nの硫酸を100μl添加して反応を停止し、450nmの吸光を測定した。
【0073】
この結果Legionella リボソームL7/L12タンパク質に反応する陽性ウェルが見いだされLegionella リボソームL7/L12タンパク質に対する抗体が含まれていることが判明した。
【0074】
そこで陽性ウェル中の細胞をそれぞれ回収し24穴プラスティックプレート中、HAT培地で培養した。培養した融合培地を細胞数が約20個/mlになるようにHAT培地で希釈し50μlを、HAT培地に懸濁した6週齢のマウス胸腺細胞106個と96穴培養プレート中で混合後、7%CO2条件下、37℃で2週間培養した。培養上澄み中の抗体活性を前述のELISA法にて同様に検定し、Legionella リボソームL7/L12タンパク質との反応陽性の細胞を回収した。
さらに同様の希釈検定、クローニング操作を繰り返し、ハイブリドーマLPAM−1〜4の計4クローンを取得した。
【0075】
【発明の効果】
本発明により、Legionella pneumophila由来の新規なリボソームL7/L12タンパク質、該タンパク質に対する抗体、並びに該タンパク質をコードするポリヌクレオチドが提供される。本発明のタンパク質、抗体およびポリヌクレオチドは、Legionella pneumophilaの検出や、Legionella pneumophilaが関与する疾患の診断、治療または予防のために有用である。
【0076】
【配列表】
Claims (15)
- 以下の何れかのタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質;又は
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有し、Legionella pneumophilaに特異的な抗原性を有するタンパク質。 - 以下の何れかのポリヌクレオチド。
(a)配列番号1に記載の塩基配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号1に記載の塩基配列において1若しくは複数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を有し、Legionella pneumophilaに特異的な抗原性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号1に記載の塩基配列又はその相補配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、Legionella pneumophilaに特異的な抗原性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。 - Legionella pneumophila由来のポリヌクレオチドである、請求項1または2記載のポリヌクレオチド。
- 請求項1から3の何れかに記載のポリヌクレオチドの塩基配列のうち連続する15塩基以上の長さを有する塩基配列またはその相補配列を有するポリヌクレオチド。
- 請求項1から4の何れかに記載のポリヌクレオチドを用いる、Legionella pneumophilaの検出方法。
- 請求項1から4の何れかに記載のポリヌクレオチドを含む、Legionella pneumophila検出用試薬キット。
- 以下の何れかのタンパク質。
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有し、Legionella pneumophilaに特異的な抗原性を有するタンパク質;又は
(c)上記(a)又は(b)記載のタンパク質とその全長にわたり95%以上のアミノ酸配列の同一性を有するタンパク質であり、Legionella pneumophilaに特異的な抗原性を有するタンパク質。 - 以下の何れかのアミノ酸配列中の連続する少なくとも5つのアミノ酸を有する部分ペプチド。
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有し、Legionella pneumophilaに特異的な抗原性を有するアミノ酸配列;又は
(c)上記(a)又は(b)記載のアミノ酸配列とその全長にわたり95%以上のアミノ酸配列の同一性を有するアミノ酸配列であり、Legionella pneumophilaに特異的な抗原性を有するアミノ酸配列。 - 請求項1から4のいずれかに記載のポリヌクレオチドを発現することにより得られるタンパク質もしくは部分ペプチド。
- 請求項1から4のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含有する組み換えベクター。
- 請求項1から4のいずれかに記載のポリヌクレオチドまたは請求項10に記載の組換えベクターを有する形質転換体。
- (a)請求項11記載の形質転換体を培養し、(b)発現された組み換えタンパク質もしくはペプチドを回収することを含む、タンパク質もしくは部分ペプチドの製造方法。
- 請求項7から9の何れかに記載のタンパク質もしくは部分ペプチドに対する抗体。
- 請求項13記載の抗体を用いるLegionella pneumophilaの検出方法。
- 請求項14記載の抗体を含む、Legionella pneumophila検出用試薬キット。
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