JP2004201629A - コーヒー香料の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】香料としてバランスのとれた成分構成を有するコーヒー香料の製造方法及びコーヒー飲料の製造方法などを提供する。
【解決手段】(1) 焙煎コーヒー豆を密閉された粉砕機で粉砕する工程、(2) (1) で放出したアロマ成分を含有するコーヒー粉砕ガスを不活性ガスにより搬送して粉砕ガスと溶媒とを接触させ、アロマ溶液を調製する工程、(3) (1) の粉砕コーヒー豆を大気圧下で抽出し、コーヒー抽出液と抽出残渣を得る工程、(4) (3) で得られた抽出残渣にアルカリ溶液を加え、pH8〜14(20℃)のコーヒー懸濁液を調製し、当該コーヒー懸濁液から水分を蒸散させ、香気成分を含んだ水分を凝縮させて残渣香気凝縮液を得る工程、及び(5)(2)のアロマ溶液と(4) の残渣香気凝縮液とを混合して、コーヒー香料を調合する工程を含むコーヒー香料の製造方法、前記コーヒー香料を用いるコーヒー飲料の製造方法並びに食品の風味を改善する方法。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コーヒー香料の製造方法に関する。詳しくは、風味のバランスのとれたコーヒー香料の製造方法およびその利用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
コーヒー抽出液に含まれる香気成分は、その揮発度により相対的に3つのパートに分類することができる。第1のパート、いわゆるトップノートは、低沸点の揮発性が高い物質で構成されており、広がりを持った最初の印象を決める香り成分である。第2のパートであるミドルノートは、蒸散速度が中程度で香り特長の中心的な役割をなすパートである。第3のパートであるラストノートは、香りの深みと味覚に関係し、揮発性が低く比較的高沸点の物質によって構成されている。これらの3つのパートが調和して全体的なバランスが取れていることが、新鮮で良好な品質を有するコーヒーのポイントとなる。
【0003】
例えば、焙煎豆を粉砕する時に発生する香気成分は、トップノートに優れ、コーヒーの甘い香り、フレッシュな酸味を感じさせる香りをイメージさせるが、コーヒーの苦味、ボディー等の深みを感じさせる香は少ない。一方、コーヒー抽出後の残渣には、ラストノートが強く、苦味、ボディー感等の香に深みを与え、味覚にも影響を与える香気成分が残存しているが、コーヒーの甘い香り、フレッシュな酸味を感じさせる香は不足する。
【0004】
粉砕コーヒー豆の香気成分を捕集するための技術が知られている。例えば、粉砕したコーヒー豆にキャリアガスを送り、香気成分をグリセリン、エタノール等で捕集する方法が知られているが、粉砕時に揮散する香気成分の捕集に関しては考慮されていない(例えば、特許文献1を参照)。また、エタノールを含む水溶液および不活性ガスを送給、接触させる方法が知られているが、この方法も粉砕時に揮散する香気成分の捕集に関しては考慮されていない(例えば、特許文献2を参照)。さらに、粉砕コーヒー豆を80〜120℃に加温するため、良質な風味のコーヒー抽出液を得るためには別途新しいコーヒー豆を必要とし、コスト高になる。また、コーヒー加工中に発生するガスを液体窒素により凝縮しアロマフロストを収集する方法も知られているが、この方法は設備装置が大掛かりになり、コスト高である(例えば、特許文献3を参照)。
【0005】
コーヒー抽出残渣に残存する有効成分の回収については、コーヒー抽出残渣の爆砕処理による可溶性成分の抽出方法(例えば、特許文献4を参照)およびコーヒー豆またはコーヒー抽出残渣の高温高圧処理により得られた生成物からなる食品の風味改善剤(例えば、特許文献5を参照)が知られている。また、コーヒー抽出残渣の香気成分の利用としては、抽出残渣の水蒸気抽出による香気成分の回収方法(例えば、特許文献6を参照)が知られている。
【0006】
【特許文献1】
特開平4−252153号公報
【特許文献2】
特開平6−276941号公報
【特許文献3】
特開平5−211840号公報
【特許文献4】
特開平5−168411号公報
【特許文献5】
特公昭59−30388号公報
【特許文献6】
特開2000−135059号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
これらの粉砕香溶液またはコーヒー残渣香気回収液単独では、ベースの抽出液の香り特性如何ではバランスの取れたコーヒーの風味を実現するには不完全である。
【0008】
前記従来技術により得られる香料は、粉砕香またはコーヒー残渣単独から回収されており、特定の成分の含有量は高いと思われるもののコーヒーの品質を上げるための香料としては満足のいくものとは言えなかった。そこで、本発明の目的は、香料としてバランスのとれた成分構成を有するコーヒー香料の製造方法およびコーヒー飲料の製造方法などを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、焙煎コーヒー豆からコーヒー抽出液を得る一連の工程から効率的にバランスのとれた香気成分を回収する方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明のコーヒー香料の製造方法は、下記工程:
(1)焙煎コーヒー豆を密閉された粉砕機で粉砕する工程、
(2)工程(1)で放出したアロマ成分を含有するコーヒー粉砕ガスを不活性ガスにより搬送して粉砕ガスと溶媒とを接触させ、アロマ溶液を調製する工程、
(3)工程(1)の粉砕コーヒー豆を大気圧下で抽出し、コーヒー抽出液と抽出残渣を得る工程、
(4)工程(3)で得られた抽出残渣にアルカリ溶液を加え、pH8〜14(20℃)のコーヒー懸濁液を調製し、当該コーヒー懸濁液から水分を蒸散させ、香気成分を含んだ水分を凝縮させて残渣香気凝縮液を得る工程、および
(5)工程(2)のアロマ溶液と工程(4)の残渣香気凝縮液とを混合して、コーヒー香料を調合する工程、
を含むことを特徴とする。
【0011】
前記工程(1)の溶媒は水、コーヒー液、甘味水、乳成分液または乳化液であることが好ましい。
【0012】
前記工程(1)の不活性ガスは炭酸ガスまたは窒素ガスであることが好ましい。
【0013】
前記工程(2)のコーヒー粉砕ガスと溶媒との接触は、ガス分散型の気泡塔もしくは泡鐘棟または液分散型のスクラバーもしくは多管式濡れ壁塔であることが好ましい。
【0014】
前記工程(2)の不活性ガスは、工程(1)の粉砕機に再度搬送して粉砕コーヒー豆と溶媒との間を循環させることが好ましい。
【0015】
前記工程(2)の溶媒の温度は1〜25℃であることが好ましい。
【0016】
前記工程(4)のアルカリ溶液は強塩基を含むことが好ましい。
【0017】
前記工程(4)のコーヒー懸濁液のpHは10〜13(20℃)であることが好ましい。
【0018】
前記工程(4)の蒸散が7〜55kPaの減圧条件下で行われ、前記凝縮が2〜10℃の冷却条件下で行われることが好ましい。
【0019】
本発明のコーヒー飲料の製造方法は、下記工程:
(1)焙煎コーヒー豆を密閉された粉砕機で粉砕する工程、
(2)工程(1)で放出したアロマ成分を含有するコーヒー粉砕ガスを不活性ガスにより搬送して粉砕ガスと溶媒とを接触させ、アロマ溶液を調製する工程、
(3)工程(1)の粉砕コーヒー豆を大気圧下で抽出し、コーヒー抽出液と抽出残渣を得る工程、
(4)工程(3)で得られた抽出残渣にアルカリ溶液を加え、pH8〜14(20℃)のコーヒー懸濁液を調製し、当該コーヒー懸濁液から水分を蒸散させた後に凝縮させ、香気成分を含んだ残渣香気凝縮液を得る工程、
(5)工程(2)のアロマ溶液と工程(4)の残渣香気凝縮液とを混合して、コーヒー香料を調合する工程、および
(6)工程(3)のコーヒー抽出液と工程(5)のコーヒー香料とを混合する工程
を含むことを特徴とする。
【0020】
また、本発明のコーヒー飲料の製造方法は、コーヒー抽出液、コーヒー濃縮液、粉末コーヒーまたはこれらの組合わせと前記コーヒー香料の製造方法により得られたコーヒー香料とを混合することを特徴とする。
【0021】
本発明の食品の風味を改善する方法は、食品に、前記コーヒー香料の製造方法により得られたコーヒー香料を添加することを特徴とする。
【0022】
[作用効果]
本発明のコーヒー香料の製造方法によると、焙煎コーヒー豆からコーヒー液を抽出する一連の工程から効率的かつ低コストで香気成分を回収することができるとともに、バランスのとれたコーヒー香料を提供することができる。本発明のコーヒー飲料の製造方法によると、粉砕時および粉砕直後に放出されるアロマ成分とコーヒー残渣に含まれる香気成分とを積極的に捕集して調合し、調合液をコーヒー抽出液に還元することにより、香りのバランスのとれたコーヒー飲料を製造することができる。本発明のコーヒー香料の製造方法により得られたコーヒー香料は、あらゆるコーヒー抽出液、コーヒー濃縮液または乾燥コーヒーと混合することにより、香りのバランスのとれたコーヒー飲料を提供することができる。また、前記コーヒー香料は、あらゆる食品に添加することにより、香りのバランスのとれたコーヒー風味の食品を提供することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図1を参照しながら説明する。
【0024】
図1は、本発明の工程(1)および(2)で使用される装置の一例を示す。密閉され外界と遮断された粉砕機1と、ガス捕集装置2と、送ガスポンプ3とからなり、その間はシリコン製、テフロン(登録商標)製またはステンレス製等の配管10で接続されている。粉砕機1にはガス入口4が設けてあり、三方コック5により不活性ガス6または送ガスポンプ3通過後の粉砕ガスを導入したり、循環させることができる。
【0025】
密閉された粉砕機としては、粉砕中に発生するガスが装置外に放出されない構造を有するものであれば特に制限されるものではない。たとえば、金属製またはプラスチック製の密封容器の胴体下部に回転式のステンレス製等のカッター9を備え、胴体横にガス入口4、上部にガス出口8を設けたもの(大型機としてはスカニマ社製、混合粉砕装置ターボミキサSRB-50)、あるいは通常のロール型の粉砕機(ビュラー社製SKV1250 )等を外界と遮断されたハウジング内(ハウジングにはガス入口とガス出口を設けている)に設置したもの等が挙げられる。
【0026】
粉砕機1にコーヒー豆7を充填し、所定の時間、所定の回転数で粉砕する(工程1)。
【0027】
粉砕時ならびに粉砕後に発生するコーヒー粉砕ガスを、ガス出口8からガス捕集装置2に導入し、ガス捕集装置2内の溶媒に導入された粉砕ガスは、溶媒との接触中にガスに含まれるアロマ成分が溶媒に捕集される(工程2)。
【0028】
このとき、粉砕と同時または粉砕後に粉砕機1内にガス入口4から不活性ガス6を導入し、発生したコーヒー粉砕ガスを搬送させる。
【0029】
粉砕機1のガス出口8は、ガス捕集装置2の配管10と接続しており、配管10は、ガス捕集装置2内の下方部で開口している。粉砕ガスは、ガス出口8から配管10を通って配管10の先端の開口部からガス捕集装置2内の溶媒中に導入される。
【0030】
ガス捕集装置2内の溶媒に導入された粉砕ガスは、溶媒との接触中にガスに含まれるアロマ成分が溶媒に捕集される。
【0031】
ガス捕集装置2は、ガラスまたはステンレス製の密封容器で、内部に溶媒を充填でき、溶媒充填後に埋没される位置に小孔径の開口部を有する配管10を配置する。必要に応じて、ガス捕集装置2は複数個連結することができる。
【0032】
アロマ成分が捕集された粉砕ガスは、溶媒を通過し、当該装置上部に設けられたガス捕集装置出口11から送ガスポンプ3により搬出され、三方コック12により装置外に排出されるか、または粉砕機のガス入口4に再度導入され、粉砕コーヒー豆を通過して再度溶媒に導入される。
【0033】
また、ガス捕集装置2は、所定の温度に設定された恒温槽13中に設置することにより、捕集溶媒の温度を一定範囲内に調節することができる。
【0034】
ここで得られた捕集溶媒は、本発明におけるアロマ溶液となる。
【0035】
次に、工程(1)〜(5)を含むコーヒー香料の製造方法について説明する。
【0036】
工程(1)について
コーヒー豆の粉砕サイズは、粉砕時に溶媒に吸収・捕集される香気成分の量とその後の抽出操作の容易性を考慮して、予め実験的に最適の範囲を決めるのが好ましい。例えば、粒度の細かい場合、単位時間当たりの水に対する香気成分の捕集量は多くなる。しかしながら、あまりに細かい粒度では通常のドリップ型、カラム型の抽出器を用いて抽出した場合、粉砕コーヒー豆が抽出液の通過を閉塞させて抽出品質に問題を発生させることがある。一般的な工業用ドリップ抽出機を用いた場合、粉砕コーヒー豆の粒度は、1.7mm(10mesh)以上が4〜60%、好ましくは5〜50%、より好ましくは5〜15%が適している。
【0037】
粉砕コーヒー豆の粒度は、標準ふるいを用いたふるい振盪器で粉砕コーヒー豆を分画し、分画した豆の重量を測定して、粒度分布を求める。
【0038】
粉砕時の温度は、アロマ成分を含むコーヒー粉砕ガスの発生量に影響を与える。一般的には、雰囲気温度の上昇により気体の拡散速度は増加するため、粉砕ガス発生量は増加し、短時間で捕集量を稼げるが、80℃以上の温度で行うと当該コーヒー豆から抽出されるコーヒー液の品質を劣化させる可能性があり、80℃未満の温度で最適な条件を決めることが好ましい。
【0039】
工程(2)について
コーヒー粉砕ガスを搬送する不活性ガスは特に制限されるものではないが、扱いやすさや費用の点から窒素ガスまたは炭酸ガスであることが好ましく、窒素ガスがより好ましい。
【0040】
放出されたコーヒー粉砕ガスは、不活性ガスにより搬送してガス捕集装置内の溶媒に導入・接触させる。溶媒の種類は特に制限されないが、直接コーヒー液や食品に混合・添加することができる水、コーヒー液、甘味水、乳成分液または乳化液が好ましい。溶媒の量は、少なすぎるとアロマ成分の捕集効率が低下し、多すぎるとコーヒー香料の濃度が低下するので、両者のバランスを考慮し、溶媒に応じて適宜設定することができる。水の場合、溶媒の量は、通常焙煎コーヒー豆の重量に対して2〜10倍程度である。
【0041】
アロマ成分と溶媒との接触は、ガス分散型の気泡塔もしくは泡鐘塔等または液分散型のスクラバーもしくは多管式濡れ壁塔等を用いることが好ましいが、効率的な接触を可能にする装置であれば、特に限定されるものではない。
【0042】
アロマ成分の溶媒に対する溶解量は、一般に溶媒を低温にすることにより増加するが、低温下での溶媒の物性と捕集されるアロマ成分の量と質を考慮し、1℃〜50℃、好ましくは1℃〜25℃、より好ましくは1℃〜5℃に調整する。
【0043】
粉砕コーヒー豆への不活性ガスの流速ならびに循環される粉砕ガスの流速は、コーヒー粒子の内部からのコーヒー表面へのアロマ成分の拡散速度を促す目的で適宜設定することができる。通常、粉砕コーヒー豆100g当たり0.1〜0.4L/分程度であれば、粉砕ガスの発生効率に影響を与えず、実際的な範囲である。
【0044】
また、粉砕コーヒー豆への不活性ガスおよび循環される粉砕ガスの流量または送風期間の増加は、粉砕コーヒー豆から新たな粉砕ガスの放散を増大させるが、一定の流量または送風期間を超えると次第に減少し、効果は低くなる。
【0045】
実際的には、粉砕コーヒー豆の粒子が1.70mm(10mesh)以上の粒径を12%〜60%程度含む場合、粉砕コーヒー豆100g当たり3.5〜30L送風することが好ましく、10〜25Lがより好ましい。
【0046】
前記不活性ガスは、コーヒー粉砕ガスを搬送して溶媒と接触させた後、接触後のコーヒー粉砕ガスを粉砕機に再度搬送し、粉砕コーヒー豆と溶媒との間を循環させることが好ましい。循環させることにより、粉砕ガスの溶媒に対する接触効率やアロマ成分の捕集効率を高めると同時に、溶媒に吸収されなかった粉砕ガス中のアロマ成分は、再度粉砕コーヒー豆に吸着されるため、その後に行う抽出において抽出液の品質の向上に効果的である。
【0047】
このようにして粉砕ガスを捕集した溶媒は、アロマ溶液となり、下記工程(5)で使用される。
【0048】
工程(3)について
粉砕ガスを捕集した後のコーヒー豆は、コーヒー抽出用に汎用されている抽出機に充填する。ここで、別途粉砕したコーヒー豆を前記コーヒー豆に補充してもよい。コーヒーの抽出は、大気圧下、常法により行う。
【0049】
抽出方法の一例として、コーヒー豆の乾燥重量1部に対して、90℃を超え100℃以下に加温された水を1〜18部ピストンフローで送液して抽出する。
【0050】
得られたコーヒー抽出液は、そのまま本発明のコーヒー飲料の製造方法で使用することができる。あるいは、前記コーヒー抽出液は、必要に応じて、減圧濃縮または凍結濃縮などによって濃縮コーヒー液に加工されたり、さらに噴霧乾燥機または凍結乾燥機によって乾燥コーヒーに加工され、同様に本発明のコーヒー飲料の製造方法で使用することができる。
【0051】
工程(4)について
工程(3)で得られた抽出残渣にアルカリ溶液を加え、pH8〜14(20℃)のコーヒー懸濁液を調製し、当該コーヒー懸濁液から水分を蒸散させた後に凝縮させ、香気成分を含んだ残渣香気凝縮液を得る。
【0052】
前記コーヒー抽出残渣は、全重量の約60〜75重量%程度の水分を含有しているが、本発明においては脱水や乾燥などの処理は特に必要ない。
【0053】
コーヒー抽出残渣に加えるアルカリ溶液は、コーヒー懸濁液のpHを8〜14に調節するためのものであり、食品に添加可能な成分を含むものであれば特に制限されるものではない。前記成分としては、強塩基、弱塩基等が挙げられる。pH調節が容易で添加量が少なくて済むことから、前記アルカリ溶液は、強塩基を含むことが好ましく、強塩基としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等が例示される。
【0054】
前記アルカリ溶液の添加量は、コーヒー抽出残渣の重量の1〜10倍程度であればよい。効率的な香気成分の捕集の観点から、2〜4倍の添加量が好ましい。
【0055】
前記コーヒー懸濁液は、アルカリ溶液の添加によってpHが8〜14に調節される。本発明におけるpHとは、特記しない限り、20℃でpHメーターにより測定した値である。コーヒー懸濁液のpHは、良好な香気成分の回収率を上げ、香気液のマスキング効果を高めるためには、pH10〜13が好ましく、pH11〜13がより好ましい。
【0056】
次に、前記コーヒー懸濁液を減圧条件下にて水分を蒸散させ、香気成分を含んだ水分を凝縮させて残渣香気凝縮液を得る工程を行う。
【0057】
前記蒸散は、大気圧未満の減圧条件下で行われるものであり、特に制限されるものではないが、蒸散効率と良好な香気成分の回収の観点から、7〜55kPaの減圧条件下で行われることが好ましく、25〜50kPaの減圧条件がより好ましい。蒸散時のコーヒー懸濁液は、香気成分の質を維持しつつ蒸散時間を短縮するために、95℃程度まで加温してもよい。コーヒー懸濁液からの水の蒸発温度は、35〜85℃程度である。
【0058】
前記凝縮は、香気成分を含む蒸散した水分を液体として回収するためのものであり、良好な香気成分を回収するためには2〜10℃の冷却条件下で行われることが好ましく、2〜5℃がより好ましい。
【0059】
前記凝縮は、公知の装置および方法を用いて行えばよい。
【0060】
凝縮させる量は、特に制限されるものではないが、添加するアルカリ溶液の2〜20重量%であることが好ましい。2重量%未満では香気成分の回収率が低く、20重量%を超えると回収される香気成分の品質が劣る傾向がある。
【0061】
工程(5)について
前記アロマ溶液と残渣香気凝縮液とを任意の割合で混合し、コーヒー香料を調合する。調合に際しては、添加対象となるコーヒー抽出液、濃縮コーヒー、乾燥コーヒー等に不足する香り特性を考慮して、前記2種類の香気液を任意の割合で混合することができる。通常、同程度のピーク強度を有する残渣香気凝縮液とアロマ溶液を5対20重量部〜5対100重量部で混合するのが好ましく、5対20重量部〜5対45重量部がより好ましい。コーヒー香料を食品に添加する場合も同様である。
【0062】
このようにして得られたコーヒー香料は、下記コーヒー飲料の製造方法および食品の風味を改善する方法に好適に用いられるものである。
【0063】
本発明のコーヒー飲料の製造方法は、前記工程(1)〜(5)および下記工程(6)を含むことを特徴とする。
【0064】
工程(6)について
工程(3)で調製されたコーヒー抽出液またはそれから得られた濃縮コーヒー液もしくは乾燥コーヒーは、調合用タンクに貯留、計量され、工程(5)で調合されたコーヒー香料を混合し、規定濃度に希釈され、コーヒー飲料が製造される。ここで、前記コーヒー香料以外に、乳成分、甘味料、pH調製剤その他の添加物等を混合してもよい。
【0065】
別の態様として、本発明のコーヒー飲料の製造方法は、あらゆる方法により製造されたあらゆる種類のコーヒー抽出液、コーヒー濃縮液、乾燥コーヒーまたはこれらの組合わせと本発明のコーヒー香料とを混合することができる。混合方法は、前記コーヒー飲料の製造方法と同様である。
【0066】
本発明の食品の風味を改善する方法は、本発明のコーヒー香料を食品に添加することを特徴とする。コーヒー香料の添加量は、所望のコーヒーの風味を有する程度に任意に調整することができる。
【0067】
【実施例】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明するが、本発明はこれらの実施例等により限定されるものではない。
【0068】
(試験例1)
一般的な市販の粉砕コーヒーまたは工業的に利用されている粉砕コーヒーを大気圧下の熱水で抽出し、得られたコーヒー抽出液の味覚特性とガスクロマトグラフィーによる香気量を評価した。
【0069】
(1)抽出液の調製
抽出液1:コーヒー抽出機(ラッキーコーヒーマシン(株) 製、コーヒーブルーワーNC-1105 )を用い、市販粉砕コーヒーA(L値= 22.0)100gに温水1800gを加えて抽出した。BX濃度1.81、pH5.13
抽出液2:コーヒー抽出機(ラッキーコーヒーマシン(株) 製、コーヒーブルーワーNC-1105 )を用い、市販粉砕コーヒーB(L値= 19.5)100gに温水1800gを加えて抽出した。BX濃度1.64、pH5.10
抽出液3:工業用抽出機を用い、工業用粉砕コーヒーC(L値= 18.5)700gに温水9800kgを加えて抽出し、純水を加えBX1.42に調整した。
【0070】
(2)ガスクロマトグラフィー
前記抽出液1〜3を、ガスクロマトグラフィーにより以下の条件で分析した。得られたクロマトグラムをコンピューターに入力処理し、各ピークの強度面積とカラムの温度別でのピーク面積合計を算出した。
【0071】
(a)測定試料の調整
各抽出液10gを22mlのバイアル瓶に採取し、密栓した。密栓したバイアル瓶を、Tekmar製ガスクロマトグラフィー用オートサンプラーにて80℃で20分間加温し、その気相をガスクロマトグラフィーに導入し、分析を行った。
【0072】
(b)測定条件
測定装置:日立製ガスクロマトグラフィー G−3000
カラム:ジーエルサイエンス(株)製TC−WAX 0.53mm×30m
キャリヤーガス:ヘリウム
キャリヤーガス流量:1ml/分
カラム温度40℃・5 分→220℃(5℃/分で昇温)
検出器:FID(検出器温度230℃)。
【0073】
(3)官能評価
前記抽出液1〜3は、65℃で官能評価を行った。評価方法は5名の専門パネラーにより、香りについて、5:非常に強い(香りのバランス、総合評価は良い)、3:普通、1:非常に弱い(香りのバランス、総合評価は悪い)とし、4は5と3の中間の評価、2は3と1との中間の評価の5段階で評価し、その平均値を算出して官能評価とした。
【0074】
【表1】試験例1の各抽出液の香気のガスクロマトグラフィー分析
Figure 2004201629
【表2】試験例1の各抽出液の官能評価
Figure 2004201629
表1に示すように、新鮮な粉砕コーヒーを大気圧下の熱水で抽出した場合、分析カラムの温度40℃で検出されるピーク面積が全体の香気面積の約72〜76%。分析カラムの温度41℃〜95℃で検出されるピーク面積が全体の香気面積の約5〜9%、分析カラムの温度96℃〜125℃で検出されるピーク面積が全体の香気成分面積の約7〜14%、分析カラムの温度126℃〜210℃で検出されるピーク面積が全体の香気成分面積の約7〜12%で構成されていた。
【0075】
すなわち、この構成比は新鮮な粉砕コーヒーを大気圧下の熱水で抽出した抽出液の香気バランスであり、表2の官能試験の結果から、過剰な加熱による不快な加熱風味は少なく、新鮮な甘い香りや酸味を感じさせる香りが強く、苦味とボディー感があり、明らかに全体的なバランスが取れた風味であることがわかる。
【0076】
(試験例2)
商業的に高収率を得るために焙煎コーヒー豆から120℃〜160℃程度の温水で抽出したコーヒー抽出液、一般的な大気圧下の熱水で抽出したコーヒー抽出液またはそれ以上の120℃〜160℃程度の温水でさらに抽出したコーヒー抽出液をBX濃度50%程度まで濃縮したコーヒー(工業用濃縮コーヒーA)を調製した。この濃縮コーヒーA(BX濃度50)10gを飲用濃度まで希釈して試験液を調製(BX濃度1.42)し、その味覚特性とガスクロマトグラフィーによる香気量を試験例1と同様の方法で評価した。結果を表3および4に示す。
【0077】
【表3】試験例2の試験液の香気のガスクロマトグラフィー分析
Figure 2004201629
【表4】試験例2の試験液の官能評価
Figure 2004201629
表3より、高温で抽出し、BX濃度50%程度まで濃縮した濃縮コーヒーの飲用濃度希釈液(試験液)は総香気量が少なくなり、ピークの構成面積比については、試験例1で測定した通常のコーヒー抽出液とも大きく異なることがわかる。表4より、前記試験液は、官能的には、通常のコーヒー抽出液に比べて香りが弱く、加熱風味が強く、良好な甘い香り、フレッシュな酸味を感じる香りに乏しく、良質な深みを感じさせる香りが少なかった。これらの香気特性を改善するためには、全体の香気量を増加させるとともに、香りバランスを通常の抽出液に近づけるように、香り成分を添加することが必要となる。
【0078】
(製造例1)
(1)アロマ溶液の調製
図1に示されるように、ポリスチレンの胴体の下部に回転式のステンレス製カッター9を備え、胴体横にガス入口4、上部にガス出口8を設けた1450ml容量の密閉型粉砕機1を使用した。粉砕機1には、工業用レギュラーコーヒー250gを充填した。
【0079】
ガス捕集装置2は、予め沸騰冷却した5℃の純水500gを充填したガラス製の1200ml容量捕集管を1本用い、5 ℃の冷水で満たした恒温槽13内に設置した。
【0080】
粉砕は、カッター9を15700rpmで90秒間回転させ、密閉状態で行った。
【0081】
粉砕と同時に、250ml/分の速度でガス入口4から窒素ガスを2分間送り、コーヒー粉砕ガスを窒素ガスで搬送し、ガス捕集装置2内の水に導入した。前記粉砕ガスは、小孔径の開口部を有する配管10から水中に導入され、水と接触した後、ガス捕集装置出口11から排出された。その後、三方コック5を切り替え、窒素ガスの送風を停止した。ガス捕集装置出口11から排出されたガスは、送ガスポンプ3により粉砕機1のガス入口4から再び粉砕機1に導入され、粉砕機とガス捕集装置との間の循環系で216分間循環し、アロマ成分を水に吸収・捕集させ、アロマ溶液500gを得た。得られたアロマ溶液をガスクロマトグラフィーで分析し、香気量を測定した。
【0082】
(2)コーヒーの抽出
前記(1)の粉砕コーヒー豆を抽出機に充填し、コーヒー豆に対して12倍重量の100℃の熱水を加えて、コーヒー豆固形分の約25重量%を抽出したコーヒー抽出液を得た。抽出残渣は、下記(3)に供した。
【0083】
(3)残渣香気凝縮液の調製
100℃の熱水で抽出した後のコーヒー残渣200g(約60重量%の水分を含む)に、1%w/vの水酸化カリウム溶液400gを加え、コーヒー懸濁液を調製した。コーヒー懸濁液のpHは、12.9(20℃)であった。前記懸濁液を95℃に加温して40kPaレベルまで減圧し、蒸発温度79℃にて蒸発する水分を5℃で冷却し、残渣香気凝縮液200gを得た。
【0084】
(4)ガスクロマトグラフィー
試験例1と同様の方法で実施した。
【0085】
【表5】製造例1のアロマ溶液と残渣香気疑縮液のガスクロマトグラフィー分析
Figure 2004201629
表5より、アロマ溶液と残渣香気凝縮液に含まれる香気成分の構成は、非常に異なっており、これらを単独で用いても表1に示したような香気成分の構成に近づけるのは困難である。これら2種類の溶液を調合して用いることが重要である。
【0086】
実施例1
試験例2で調製した工業用濃縮コーヒーAと、製造例1で調製したアロマ溶液および/または残渣香気凝縮液を用いて、下記試料1〜5を調製した。
【0087】
試料1:工業用濃縮コーヒーA(BX濃度50)10gに前記残渣香気凝縮液を加え、希釈してBX濃度1.42に調整した。
【0088】
試料2:工業用濃縮コーヒーA(BX濃度50)10gに前記アロマ溶液を加え、希釈してBX濃度1.42に調整した。
【0089】
試料3:工業用濃縮コーヒーA(BX濃度50)10gに前記アロマ溶液と残渣香気凝縮液を1対1で混合したコーヒー香料を加え、希釈してBX濃度1.42に調整した。
【0090】
試料4:工業用濃縮コーヒーA(BX濃度50)10gに前記アロマ溶液と残渣香気凝縮液を25対5で混合したコーヒー香料を加え、希釈してBX濃度1.42に調整した。
【0091】
試料5:工業用濃縮コーヒーA(BX濃度50)10gに前記アロマ溶液と残渣香気凝縮液を30対5で混合したコーヒー香料を加え、希釈してBX濃度1.42に調整した。
【0092】
前記試料1〜5について、試験例1と同様の方法でガスクロマトグラフィーおよび官能評価を行った。結果を表6および7に示す。
【0093】
【表6】
Figure 2004201629
【表7】
Figure 2004201629
表6より、アロマ溶液と残渣香気凝縮液とを混合して添加した試料3〜5は、表1に示すような新鮮な粉砕コーヒーを大気圧下で抽出したコーヒー液の香気バランスに近づいており、バランスのとれた風味を有するコーヒー飲料であることがわかる。
【0094】
表7の官能試験の結果は下記のように評価される。工業用濃縮コーヒーAに純水を加えBX濃度1.42に調整した調整液(対照)は、過剰加熱による加熱臭が強く、香りのバランスが悪い。試料1と3は加熱臭が残り、ボディー感、苦味が強すぎ全体の香りのバランスが悪い。試料2は甘い香り、酸味の香りは強いが、ボディー感、苦味が弱く、飲用時の香りのインパクトが弱く、薄いコーヒーに感じる。一方、試料4と5は加熱臭が抑えられ、最初に広がる甘い香り、酸味の香りと苦味の香り、ボディー感の感じさせ香りのバランスが取れている。特に試料5では抽出したての良好なコーヒーと遜色のない風味であった。
【0095】
よって、アロマ溶液と残渣香気凝縮液を任意に混合・調合することで、バランスの取れたコーヒーの風味を付与することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の工程(1)、(2)で使用される装置の一例
【符号の説明】
1 粉砕機
2 ガス捕集装置
3 送ガスポンプ
4 ガス入口
5 三方コック
6 不活性ガス
7 コーヒー豆
8 ガス出口
9 カッター
10 配管
11 ガス捕集装置出口
12 三方コック
13 恒温槽

Claims (12)

  1. 下記工程:
    (1)焙煎コーヒー豆を密閉された粉砕機で粉砕する工程、
    (2)工程(1)で放出したアロマ成分を含有するコーヒー粉砕ガスを不活性ガスにより搬送して粉砕ガスと溶媒とを接触させ、アロマ溶液を調製する工程、
    (3)工程(1)の粉砕コーヒー豆を大気圧下で抽出し、コーヒー抽出液と抽出残渣を得る工程、
    (4)工程(3)で得られた抽出残渣にアルカリ溶液を加え、pH8〜14(20℃)のコーヒー懸濁液を調製し、当該コーヒー懸濁液から水分を蒸散させ、香気成分を含んだ水分を凝縮させて残渣香気凝縮液を得る工程、および
    (5)工程(2)のアロマ溶液と工程(4)の残渣香気凝縮液とを混合して、コーヒー香料を調合する工程、
    を含むコーヒー香料の製造方法。
  2. 前記工程(1)の溶媒が水、コーヒー液、甘味水、乳成分液または乳化液である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記工程(1)の不活性ガスが炭酸ガスまたは窒素ガスである請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記工程(2)のコーヒー粉砕ガスと溶媒との接触がガス分散型の気泡塔もしくは泡鐘棟または液分散型のスクラバーもしくは多管式濡れ壁塔である、請求項1〜3いずれかに記載の製造方法。
  5. 前記工程(2)の不活性ガスを工程(1)の粉砕機に再度搬送して粉砕コーヒー豆と溶媒との間を循環させる、請求項1〜4いずれかに記載の製造方法。
  6. 前記工程(2)の溶媒の温度が1〜25℃である、請求項1〜5いずれかに記載の製造方法。
  7. 前記工程(4)のアルカリ溶液が強塩基を含む請求項1〜6いずれかに記載の製造方法。
  8. 前記工程(4)のコーヒー懸濁液のpHが10〜13(20℃)である請求項1〜7いずれかに記載の製造方法。
  9. 前記工程(4)の蒸散が7〜55kPaの減圧条件下で行われ、前記凝縮が2〜10℃の冷却条件下で行われる、請求項1〜8いずれかに記載の方法。
  10. 下記工程:
    (1)焙煎コーヒー豆を密閉された粉砕機で粉砕する工程、
    (2)工程(1)で放出したアロマ成分を含有するコーヒー粉砕ガスを不活性ガスにより搬送して粉砕ガスと溶媒とを接触させ、アロマ溶液を調製する工程、
    (3)工程(1)の粉砕コーヒー豆を大気圧下で抽出し、コーヒー抽出液と抽出残渣を得る工程、
    (4)工程(3)で得られた抽出残渣にアルカリ溶液を加え、pH8〜14(20℃)のコーヒー懸濁液を調製し、当該コーヒー懸濁液から水分を蒸散させた後に凝縮させ、香気成分を含んだ残渣香気凝縮液を得る工程、
    (5)工程(2)のアロマ溶液と工程(4)の残渣香気凝縮液とを混合して、コーヒー香料を調合する工程、および
    (6)工程(3)のコーヒー抽出液と工程(5)のコーヒー香料とを混合する工程
    を含むコーヒー飲料の製造方法。
  11. コーヒー抽出液、コーヒー濃縮液、粉末コーヒーまたはこれらの組合わせと請求項1〜9いずれかに記載の製造方法により得られたコーヒー香料とを混合することを特徴とするコーヒー飲料の製造方法。
  12. 食品に、請求項1〜9いずれかに記載の製造方法により得られたコーヒー香料を添加することを特徴とする食品の風味を改善する方法。
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