JP2004204406A - ポリ乳酸短繊維およびそれからなる繊維構造体 - Google Patents
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Abstract
【課題】この発明は、滑り性に優れたポリ乳酸短繊維とそのポリ乳酸短繊維を用いてなる紡績糸等各種の繊維構造体を提供する。
【解決手段】ポリ乳酸からなる短繊維であって、脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミドを繊維全体に対して0.1〜5wt%含有することを特徴とするポリ乳酸短繊維である。このポリ乳酸短繊維は、それ自体バインダー繊維として使用することができ、また、そのポリ乳酸短繊維を用いて、紡績糸、不織布あるいは中入れ綿等の繊維構造体を構成することができる。
【選択図】 なし
【解決手段】ポリ乳酸からなる短繊維であって、脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミドを繊維全体に対して0.1〜5wt%含有することを特徴とするポリ乳酸短繊維である。このポリ乳酸短繊維は、それ自体バインダー繊維として使用することができ、また、そのポリ乳酸短繊維を用いて、紡績糸、不織布あるいは中入れ綿等の繊維構造体を構成することができる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、滑り性に優れたポリ乳酸短繊維およびそれからなる繊維構造体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近、地球規模での環境に対する意識が高まる中で、石油資源の大量消費によって生じる地球温暖化や、大量消費に伴う石油資源の枯渇が懸念されている。このような背景から、植物由来原料(バイオマス)からなり、使用後は自然環境中で最終的に水と二酸化炭素まで分解する、自然循環型の環境対応素材が切望されている。
【0003】
しかしながら、これまで、このようなバイオマス利用の生分解性ポリマーは、製造コストが高く、また力学特性や耐熱性が低いという課題があり、汎用プラスチックに利用されることはなかった。これらを解決できるバイオマス利用の生分解性ポリマーとして、現在、最も注目されているのは脂肪族ポリエステルの一種であるポリ乳酸である。ポリ乳酸は、植物から抽出したでんぷんを発酵することにより得られる乳酸を原料としたポリマーであり、バイオマス利用の生分解性ポリマーの中では、力学特性、耐熱性およびコストのバランスが最も優れている。そして、これを利用した樹脂製品、繊維、フィルムおよびシート等の開発が急ピッチで行われている。
【0004】
ポリ乳酸繊維の開発としては、生分解性を活かした農業資材や土木資材等が先行しているが、それに続く大型の用途として衣料用途や衛生用途、寝装用途および資材用途への応用も期待されている。
【0005】
しかしながら、これらの用途では、得られる繊維製品の風合い、あるいはその形態の性質上、短繊維を用いることが必要となる場合が多くあるが、ポリ乳酸の短繊維の場合には、繊維自体の滑り性が極めて悪いために製造過程あるいは製品使用時において種々の問題が発生し、これらの用途へは展開は思うように進んでいないのが実状である。
【0006】
従来、ポリ乳酸の短繊維を常法に従って製造する公知例は存在するが(特許文献1参照。)、発明者らがその公知例に基づいて追試を行った結果、捲縮斑が多発することがわかった。また、各工程においてローラーやガイド部で繊維が摩耗し、毛羽や繊維の削れカスが発生する等、品位の高い短繊維が得られないことがわかった。また、このようにして得られたポリ乳酸短繊維を紡績糸とした場合には、太さ斑や物性のバラツキが大きく、また、それらに起因して染色斑が顕著に現れた。また、このようにして得られたポリ乳酸短繊維を不織布に用いた場合には、短繊維の分散性が極端に悪く、均一な繊維密度の不織布が得られなかった。加えて、このようにして得られたポリ乳酸短繊維を布団の中入れ綿として利用した場合にも、均一な分散が困難であり、結果的に得られた布団は綿の粗密が明確に現れた劣悪なものとなった。さらには、バインダー繊維として利用した場合には、分散性不良によってバインダー繊維に偏りが生じ、接着力が著しく低下し、極めて製品物性の低いものしか得られなかった。
【0007】
これらの原因として、ポリ乳酸短繊維の表面摩擦係数が他の汎用合成繊維に比べて高いことが考えられる。そこで、発明者らは、繊維の摩擦係数を下げ、滑り性を向上させる一般的な手法として、捲縮加工の前にシリコーン系等の摩擦係数をより低減できる油剤を付与したり、或いは油剤の付着量を多くすること試みた。しかしながら、この場合、確かに繊維の滑り性はある程度向上し、工程通過性や短繊維自体の捲縮斑や毛羽等の品位は改善方向にあるものの、依然として不十分なレベルであり、またこれを用いた紡績糸や不織布、中入れ綿およびFRP(繊維補強プラスチック)等の繊維製品の品位や物性も依然として満足いくものではないことがわかった。また、油剤の付着量を多くした場合には、新たな問題として、工程通過過程でカードや粗紡、精紡工程で、脱落した油剤がローラーに多量に付着し繊維が巻き付いたり、或いは脱落した油剤が凝集して繊維表面で白粉を生じる等の問題が発生した。
【0008】
ところで、樹脂製品、フィルムあるいはシート等の分野では、その製造工程において、チップや溶融ポリマーのアンチブロキング性、あるいは金型やローラーからの成形体の剥離性を向上させるためにポリマーに滑剤を添加する場合がある。しかしながら、繊維の分野においては、滑剤のブレンド斑、熱分解あるいはブリードアウト等により繊維の物性斑や染色斑等による製品品質の低下が発生しやすいため、これまでこのような添加剤を用いることは避けられる傾向にあった。
【0009】
滑剤を添加した繊維についての公知例は存在するが(特許文献2参照)、これは、ポリ乳酸繊維に一般式RCONH2(ただし、Rはアルキル基)で表される脂肪酸モノアミドを添加し、撥水性を与えることによって加水分解速度を抑制することを目的とするものであり、本発明の目的である滑り性の向上については全く記載が無い。ちなみに、本発明者らは脂肪酸モノアミドを添加したポリ乳酸繊維について追試を行ったが、ポリ乳酸繊維の滑り性を向上させることはできなかった(比較例6参照。)。これは、脂肪酸モノアミドが、そのアミド基の反応性が高いために、溶融時にポリ乳酸と反応してしまい、結果的に滑剤として機能し得る脂肪酸モノアミドの繊維中に占める割合が少なくなることが原因であると推定される。また、脂肪酸モノアミドがポリ乳酸と反応すると、結果的にポリ乳酸の分子鎖が切断されるため、分子量が減少してしまい、繊維物性が低下する場合もあった。さらに、脂肪酸モノアミドは昇華性が大きい、あるいは耐熱性に劣るために、発煙による作業環境の悪化や、ブリードアウトによるガイド類やローラーの汚れ、また、操業性の低下を引き起こすこともあった。さらに、ブリードアウトした脂肪酸モノアミドが繊維表面で凝集することによって、繊維の物性斑や染色斑を招く場合もあった。
【0010】
以上のように、ポリ乳酸の短繊維を常法に基づいて製造した場合には、工程通過性が悪く、また高品位の短繊維が得られないという問題があり、これらの問題を抜本的に解決する手法は未だに見出されていないのが実状であった。
【0011】
【特許文献1】
特開平6−212511号公報(第2−4頁)
【0012】
【特許文献2】
特開平8−183898号公報(第2−4頁)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の問題点を克服し、滑り性に優れたポリ乳酸短繊維およびそれからなる繊維構造体を提供することを課題とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記課題は、ポリ乳酸からなる短繊維であって、脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミドを繊維全体に対して0.1〜5wt%含有することを特徴とするポリ乳酸短繊維により達成される。本発明のポリ乳酸短繊維は、捲縮数6山/25mm以上、捲縮率10%以上であることが好ましい。
【0015】
また、本発明のポリ乳酸短繊維は、これを用いて紡績糸等の各種の繊維構造体を製造することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のポリ乳酸短繊維と繊維構造物について詳細に説明する。
【0017】
本発明でいうポリ乳酸とは、乳酸やラクチド等の乳酸のオリゴマーを重合したものを言い、L体あるいはD体の光学純度は90%以上であると、融点が高く好ましい。L体あるいはD体の光学純度は、より好ましくは97%以上である。また、L体の光学純度90%以上のポリ乳酸とD体の光学純度90%以上のポリ乳酸を70/30〜30/70の比率でブレンドしたものは融点がさらに向上するため好ましい態様である。また、ポリ乳酸の性質を損なわない範囲で、乳酸以外の成分を共重合していても、ポリ乳酸以外のポリマーや粒子、難燃剤、帯電防止剤、艶消し剤、消臭剤、抗菌剤、抗酸化剤あるいは着色顔料等の添加物を含有していても良い。また、染色用途等の熱水処理でのポリ乳酸の加水分解抑制や製品の経時による物性低下抑制を目的として、カルボジイミド化合物等の末端封鎖剤を含有していても良い。ポリ乳酸ポリマーの分子量は、重量平均分子量で5万〜50万であると、力学特性と成形性のバランスが良く好ましい。ポリ乳酸ポリマーの分子量は、より好ましくは重量平均分子量で10万〜35万である。
【0018】
本発明で用いられるポリ乳酸の製造方法は、特に限定されない。具体的には、特開平6−65360号に開示されている製造方法が挙げられる。すなわち、乳酸を有機溶媒及び触媒の存在下、そのまま脱水縮合する直接脱水縮合法である。また、特開平7−173266号に開示されている少なくとも2種類のホモポリマーを重合触媒の存在下、共重合並びにエステル交換反応させる方法がある。さらには、米国特許第2,703,316号明細書に開示されている方法がある。すなわち、乳酸を一旦脱水し、環状二量体とした後に、開環重合する間接重合法である。
【0019】
本発明では、ポリ乳酸短繊維に、脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミドを滑剤として含有させる。
【0020】
本発明で用いられる脂肪酸ビスアミドとは、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミドおよび芳香族系脂肪酸ビスアミド等のように1分子中にアミド結合を2つ有する化合物を指し、例えば、メチレンビスカプリル酸アミド、メチレンビスカプリン酸アミド、メチレンビスラウリン酸アミド、メチレンビスミリスチン酸アミド、メチレンビスパルミチン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスイソステアリン酸アミド、メチレンビスベヘニン酸アミド、メチレンビスオレイン酸アミド、メチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスカプリル酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスミリスチン酸アミド、エチレンビスパルミチン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスイソステアリン酸アミド、エチレンビスベヘニン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ブチレンビスステアリン酸アミド、ブチレンビスベヘニン酸アミド、ブチレンビスオレイン酸アミド、ブチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘニン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスエルカ酸アミド、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、m−キシリレンビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミド、p−キシリレンビスステアリン酸アミド、p−フェニレンビスステアリン酸アミド、p−フェニレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’−ジステアリルセバシン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミド、N,N’−ジステアリルテレフタル酸アミド、メチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、ブチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド等が挙げられる。
【0021】
また、本発明で用いられるアルキル置換型の脂肪酸モノアミドとは、飽和脂肪酸モノアミドや不飽和脂肪酸モノアミド等のアミド水素をアルキル基で置き換えた構造の化合物を指し、例えば、N−ラウリルラウリン酸アミド、N−パルミチルパルミチン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ベヘニルベヘニン酸アミド、N−オレイルオレイン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、N−オレイルパルミチン酸アミド等が挙げられる。ここでアルキル基は、その構造中にヒドロキシル基等の置換基が導入されていても良く、例えば、メチロールステアリン酸アミド、メチロールベヘニン酸アミド、N−ステアリル−12−ヒドロキシステアリン酸アミドおよびN−オレイル12ヒドロキシステアリン酸アミド等も本発明のアルキル置換型の脂肪酸モノアミドに含むものとする。
【0022】
本発明では、脂肪酸ビスアミドやアルキル置換型の脂肪酸モノアミドを用いるが、これらの化合物は、従来用いられていた脂肪酸モノアミドに比べてアミドの反応性が低く、溶融成形時においてポリ乳酸との反応が起こりにくい。また、高分子量のものが多いため、一般に耐熱性が良く、昇華しにくいという特徴がある。特に、脂肪酸ビスアミドは、アミドの反応性がさらに低いためポリ乳酸と反応しにくく、また、高分子量であるため耐熱性が良く、昇華しにくいことから、より好ましい滑剤として用いることができる。このような滑剤として、例えば、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスイソステアリン酸アミド、エチレンビスベヘニン酸アミド、ブチレンビスステアリン酸アミド、ブチレンビスベヘニン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘニン酸アミドおよびm−キシリレンビスステアリン酸アミドが好ましく用いられる。
【0023】
本発明のポリ乳酸短繊維では、滑剤として脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミドを繊維全体に対して0.1〜5wt%含有することが重要である。脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミドの含有量を0.1wt%以上とすることで、繊維の表面摩擦係数が低減し、つまり滑り性が向上することによって、工程通過性や短繊維自体の捲縮および品位を向上させるとともに、短繊維の開繊性や繊維構造体中での短繊維の分散性を向上させることができる。また、脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミド含有量を5wt%以下とすることで、脂肪酸アミドを微分散させることができ、繊維の物性斑や染色斑が発生することを防ぐことができる。脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミドの含有量は、好ましくは0.5〜3wt%である。本発明では、脂肪酸ビスアミドとアルキル置換型の脂肪酸モノアミドがそれぞれ単一でも良いし、また複数の成分が混合されていても良く、混合されている場合には、その混合物が繊維全体に対して0.1〜5wt%含有していれば良い。
【0024】
本発明のポリ乳短酸繊維は、平滑剤を含有する紡糸油剤が付与されていることが好ましい。平滑剤としては、例えば、脂肪酸エステル、多価アルコールエステル、エーテルエステル、ポリエーテル、シリコーンおよび鉱物油等が挙げられる。また、これらの平滑剤は単一成分で用いても良いし、複数の成分を混合して用いても良い。ポリ乳酸短繊維に上記のような平滑剤を含有させた油剤を付与することによって、ポリ乳酸短繊維の滑り性はさらに向上し、紡糸や延伸をはじめ、カードや紡績での工程通過性、および得られる短繊維自体の捲縮斑や毛羽等の品位を向上させるとともに、短繊維の開繊性や繊維構造体中での短繊維の分散性をさらに向上させることができる。
【0025】
本発明では、油剤を構成する成分は平滑剤に加えて、油剤を水に乳化させ、低粘度化して糸条への付着や浸透性を向上させる乳化剤、また必要に応じて帯電防止剤、イオン性界面活性剤、集束剤、防錆剤、防腐剤あるいは酸化防止剤を適宜配合したものを使用することができる。
【0026】
本発明のポリ乳酸短繊維は、染色が前提となるような衣料用途等の色調が重要視される用途でも幅広く使用するために、黄味の色調の指標であるb*値が−1〜5であることが好ましく、b*値はより好ましくは−1〜3である。なお、従来技術である脂肪酸モノアミドを含有したポリ乳酸繊維は、このb*値が高く、黄味が強い傾向になる場合がある。これは、耐熱性に劣る脂肪酸モノアミドの熱劣化に加えて、脂肪酸モノアミドが溶融成形時にポリ乳酸ポリマーのカルボニル基と反応し、ジアセトアミド基が形成されるためと考えられる。これに対して、本発明で用いられる脂肪酸ビスアミドやアルキル置換型の脂肪酸モノアミドは、耐熱性に優れており、またアミド基の反応性が低いため、繊維の着色は発生しにくい。
【0027】
本発明のポリ乳酸短繊維は、捲縮数が6山/25mm以上であり、そして捲縮率が10%以上であると、嵩高で軽量感のある良好な風合いを達成することができる。また、捲縮数が多すぎたり、捲縮率が大きすぎると、嵩高性が逆に低下してしまうことがあるため、捲縮数、捲縮率はそれぞれ20山/25mm以下、50%以下であることが好ましい。捲縮数は8〜15山/25mmがより好ましく、捲縮率は15〜30%がより好ましい。
【0028】
また、本発明のポリ乳酸短繊維では、工程通過性や製品の力学的強度を十分高く保つためには、強度は2.0cN/dtex以上であることが好ましい。また、本発明のポリ乳酸短繊維の伸度は10〜80%であると、繊維製品にする際の工程通過性が向上する。さらに本発明のポリ乳酸短繊維では、沸収が0〜30%であれば繊維および繊維製品の寸法安定性が良好である。
【0029】
本発明のポリ乳酸短繊維の単繊維繊度は、好ましくは0.1〜100dtexであり、より好ましくは0.3〜50dtexである。一般にポリ乳酸繊維の摩耗による品位の低下は単繊維繊度が小さい程顕著に現れるが、本発明のポリ乳酸短繊維では、繊維表面の滑り性に優れるため、単糸繊度が小さくても十分な耐摩耗性を有し、高品位の短繊維が得られる。また、本発明のポリ乳酸短繊維の繊維長は、好ましくは3〜100mmの範囲であり、後述するのように用途に応じて適宜選択される。
【0030】
また、本発明のポリ乳酸短繊維の断面形状は、丸断面、中空断面または三葉断面等の多葉断面、およびその他の異形断面についても自由に選択することが可能である。特に、中入れ綿等の軽量性やソフト性、保温性が重要視されるような用途では、中空断面形状のポリ乳酸短繊維が好ましい。この場合の中空率は、15〜45%であることが好ましい。中空率を15%以上とすることで軽量性、ソフト性および保温性が達成され、また、中空率を45%以下とすることで捲縮加工時に中空が潰れたり、繊維にクラックが入ることが抑制され、繊維の物性や品位を保つことができる。ここで言う中空率とは、繊維断面の外形から求めた面積に対する中空部分の面積比を百分率で表したものである。
【0031】
また、本発明のポリ乳酸短繊維は、少なくともポリ乳酸を成分に含んだ芯鞘型、偏心芯鞘型、サイドバイサイド型または割繊維分割型など、あるいは海島型などの1成分を溶出するタイプの複合繊維であっても良い。
【0032】
本発明のポリ乳酸短繊維の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、次のような方法が挙げられる。
【0033】
本発明のポリ乳酸短繊維は、基本的には、溶融紡糸、延伸、捲縮付与およびカットの各工程からなる溶融紡糸法によって製造することができる。
【0034】
ポリ乳酸短繊維に、脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミドを含有させる方法は、例えば、以下のように、混練と溶融紡糸を別々の工程で行う方法が挙げられる。まず混練工程では、ポリ乳酸と該アミド化合物を乾燥した後、窒素シールされた押し出し混練機に供給して混練チップを作成する。次に、この混練チップを紡糸機に供することによって溶融紡糸を行う。混練工程では、該アミド化合物を高比率で含有した混練チップを作成し(マスターチップ化)、これを紡糸機に供する際に該アミド化合物が所望の含有量になるように通常のポリ乳酸チップをブレンドして希釈する方法も好適に用いられる。また、溶融紡糸工程では、紡糸パック内に静止混練器を設置することにより、ポリ乳酸と該アミド化合物をさらに微細に混練させることも可能である。該アミド化合物の凝集や繊維表面へのブリードアウトは、ガイド類やローラーの汚れによる操業性の低下を引き起こしたり、繊維製品の物性斑や染色斑を引き起こすため、混練工程や溶融紡糸工程では、該アミド化合物をポリ乳酸に微分散させることが好ましい。
【0035】
また、混練と溶融紡糸を同一工程で行っても良い。この場合、乾燥したポリ乳酸と該アミド化合物を別々に溶融し、それぞれの融液を紡糸機に供して紡糸パック内で混練しても良いし、混練機によりポリ乳酸と該アミド化合物を混練し、この混練ポリマー融液を紡糸機に供しても良い。
【0036】
また、該アミド化合物は、ポリ乳酸の重合時に添加し、重合と同時にマスターチップ化を行っても良い。また、マスターチップとせず、該アミド化合物を予め所望の含有量となるように重合時に添加し、得られたチップを希釈せずにそのまま紡糸機に供しても何ら差し支えない。
【0037】
該アミド化合物は、ブレンドポリマーの全量に対して0.1〜5wt%含有させれば良い。該アミド化合物の含有量を0.1wt%以上とすることで、繊維の表面摩擦係数が低減し、工程通過性を向上できる。また、該アミド化合物の含有量を5wt%以下とすることで、混練や紡糸の際に、過剰の該アミド化合物が溶融ポリマーからブリードアウトし、これが昇華或いは分解して発煙を引き起こすといった作業環境の悪化や、過剰の該アミド化合物の昇華物あるいは分解物によって押し出し混練機や溶融紡糸機が汚れる等の操業性の低下を防ぐことができる。
【0038】
紡糸温度は、用いるポリ乳酸の共重合比率や分子量によって異なるが、1800〜280℃とすることが望ましい。紡糸温度が180℃未満では溶融押し出しが困難であり、280℃を超えるとポリ乳酸の分解が顕著となり、捲縮特性に優れた高強度のポリ乳酸短繊維を得ることが困難となる。
【0039】
溶融紡糸された糸条には、冷却、油剤付与、引き取りの後、引き揃え、延伸、熱固定が施される。油剤は、口金から紡出した糸条を冷却した後に付与することができる。また、引き取り速度を400〜2,000m/分、延伸倍率を1.5〜6倍とすると、ポリ乳酸短繊維を繊維構造体として用いた場合に適切な強度を備えたポリ乳酸短繊維が得られる。引き揃えは、巻き取った糸を複数本合糸することによって行い、最終的に総繊度が5〜100万dtexのトウとなるように行えば良い。また、トウを均一に延伸するためには、60〜100℃の温水を用いた液浴延伸を行うことが好ましい。
【0040】
次いで、延伸糸に捲縮を付与し、所望の繊維長にカットする。捲縮付与方法は、特に限定されないが、例えばスタッフィングボックス法、押し込み加熱ギア法、高速エアー噴射押し込み法等が挙げられる。また、必要に応じて、油剤を仕上げ剤として延伸後や捲縮付与後に付与することも好適に用いられる。
【0041】
本発明でいうポリ乳酸短繊維からなる繊維構造体としては、ポリ乳酸短繊維を少なくともその一部に用いていれば特に限定されず、例えば、紡績糸、不織布、中入れ綿およびバインダー繊維等が挙げられる。また、これらは、ポリ乳酸短繊維以外の繊維、例えば、ポリグリコール酸やポリヒドロキシブチレート、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクトン等の生分解性繊維や、綿、絹、麻、羊毛等の天然繊維、レーヨンやアセテート等の再生繊維、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、アクリル、ビニロン、ポリオレフィンあるいはポリウレタン等の合成繊維との混用品等でも良い。
【0042】
本発明のポリ乳酸短繊維は滑り性に優れるため、練篠、粗紡および精紡等の紡績工程においては、工程通過性が良く、また、太さ斑や撚り斑、毛羽および物性のバラツキ等が小さい高品位な紡績糸が得られる。また、それらに起因して染色斑が抑制され、高品位な染色製品が得られる。
【0043】
本発明のポリ乳酸短繊維を少なくとも一部に用いてなる紡績糸は、ポリ乳酸短繊維のみからなる紡績糸でも良いし、ポリ乳酸短繊維とポリ乳酸長繊維との紡績糸であっても良い。また、ポリ乳酸以外の短繊維または長繊維との混紡糸でも良い。
【0044】
例えば、本発明において、紡績糸に使用するポリ乳酸短繊維は、ポリ乳酸短繊維を単独で用いる場合には、単繊維繊度が0.5〜10.0dtexの範囲で、繊維長が3〜100mmの範囲であれば、紡績の工程通過性が良く好ましい。また、ポリ乳酸短繊維を綿と混紡する場合は、単繊維繊度を1.0〜1.5dtexの範囲、繊維長を30〜50mmとし、また、羊毛との梳毛紡績の場合は、単繊維繊度を1.0〜3.0dtexの範囲、繊維長を70〜90mmとし、また、羊毛との紡毛紡績の場合は、単繊維繊度を3.0〜7.0dtexとし、繊維長を30〜50mmとすると、混紡糸の均斉度が良くなり好ましい。また、異形断面のポリ乳酸短繊維を少なくとも一部に使用すれば、風合いや膨らみ感がより向上する。
【0045】
紡績糸の繊度は、好ましくは10〜500dtexであり、各種用途へ幅広く適用できる。また、紡績糸の製造工程において適宜撚りを施すことによって、紡績糸の風合いや意匠性、強度を向上させることが可能となる。
【0046】
本発明のポリ乳酸短繊維を少なくとも一部に用いてなる紡績糸は、例えば、コート、ジャンパー、ブルゾン、スーツ、ブレザー、ジャケット、ドレス、セーター、カーディガン、ズボン、スカート、シャツ、ブラウス、トレーナー、Tシャツ、スポーツウェア、ユニフォーム、インナーウェア、靴下、タイツ、帽子、マフラー、手袋および腹巻き等の衣料用途や、縫い糸、ファスナーおよび裏地等の衣料資材用途、ハンカチ、タオルおよびさらし等の資材用途としても好適に用いられる。
【0047】
本発明のポリ乳酸短繊維は滑り性に優れており、開繊機やカード機での開繊性が極めて良好であるため、均一なウエブを製造することができる。よって、これを熱接着加工して得られる不織布は、繊維の密度斑が少なく、高品位な製品となる。本発明のポリ乳酸短繊維を少なくとも一部に用いてなる不織布は、ポリ乳酸短繊維のみで構成されていても良く、また、ポリ乳酸短繊維以外の繊維を含んでいても良い。ポリ乳酸短繊維以外の繊維を混用する場合には、ポリ乳酸短繊維の滑り性によって異種の短繊維が均一混合されたウエブが製造可能となる。また、ポリ乳酸短繊維を熱接着繊維として使用する場合には、光学純度が低く、より低融点のポリ乳酸短繊維を使用しても良い。
【0048】
また、本発明において、不織布を構成するポリ乳酸短繊維は、単繊維繊度が0.3〜100dtexの範囲で、繊維長が10〜100mmの範囲であれば、種々の用途への適用が可能となり好ましい。また、不織布の目付は、好ましくは10〜5000g/m2の範囲であり、種々の用途への適用が可能である。本発明のポリ乳酸短繊維を少なくとも一部に用いてなる不織布は、おむつ、生理用品等の衛生用途、クッション材、ワイピングクロス、テーブルクロス、フィルター、ティーバッグ、水切りごみ袋、靴地および鞄地等の資材用途、袋や包装用途等にも好適に用いられる。
【0049】
本発明のポリ乳酸短繊維は滑り性に優れるため、短繊維が非常に解れやすいという特徴を有している。よってこれを中入れ綿に利用した場合には、短繊維が均一に分散され、綿の粗密斑が極めて少ない、高品位な繊維製品を製造することが可能である。本発明のポリ乳酸短繊維を少なくとも一部に用いてなる中入れ綿は、嵩高性が50cm3/g以上であることが好ましい。嵩高性が50cm3/g未満の場合は、例えば、布団に用いた場合には空隙率が低く、布団としての保温性が低くなり布団として満足できるものとはならない。布団としての保温性の面から嵩高性は好ましくは60cm3/g以上、特に好ましくは100cm3/g以上である。嵩高性は高ければ高い程、軽量性と保温性が優れたものとなる。
【0050】
繊維の捲縮形態については機械捲縮でもスパイラル捲縮でも良いが、嵩高性をより高めるためにはスパイラル捲縮の方が好ましい。スパイラル捲縮を付与する手段は多くあるが、例えば、繊維を断面方向に非対称性を持たせ、延伸時の配向差によるスパイラル捲縮を発現させる方法、および延伸後のリラックス熱処理時に生じる収縮率差によってスパイラル捲縮を発現させる方法等がある。
【0051】
また、本発明のポリ乳酸短繊維を少なくとも一部に用いてなる中入れ綿は、その圧縮率が45%以上であることが好ましい。ここで圧縮率とは、中入れ綿の圧縮時の嵩高性を表す指標である。圧縮率が低い場合には、小さな圧縮荷重でも嵩高特性が低下し、前述した保温性が低下してしまうことがある。この観点からより好ましい圧縮率は50%以上、特に好ましい圧縮率は60%以上である。また、逆に、圧縮率が高すぎると、中入れ綿の弾力が不足し、硬い触感になる場合があるため、圧縮率は90%以下が好ましい。
【0052】
中入れ綿が圧縮に耐えるため、単繊維繊度について好ましい範囲が存在する。圧縮特性を向上させる目的から好ましい単繊維繊度は3dtex以上、特に好ましくは5dtex以上である。但し、繊度が大きすぎると粗硬感が強くなり好ましくない。本発明のポリ乳酸短繊維を少なくとも一部に用いてなる中入れ綿において、好ましい単繊維繊度は50dtex以下、特に好ましくは20dtex以下である。
【0053】
また、本発明のポリ乳酸短繊維を少なくとも一部に用いてなる中入れ綿は、その回復率が70%以上であると、弾力のある触感が得られるため好ましい。回復率は好ましくは85%以上であり、大きいほど好ましい。回復率とは、中入れ綿に荷重を乗せて圧縮した後、その荷重を取り除いたときの嵩高の回復度合いを表す指標である。本発明のポリ乳酸短繊維は、滑剤として脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミドを含有しているため、滑り性に優れている。よって、圧縮時に短繊維間でのからまりやひっかかりが少なくなるため、回復率が高い値となる。これによって、弾力のある中入れ綿が可能となるのである。
【0054】
また、本発明のポリ乳酸短繊維を少なくとも一部に用いてなる中入れ綿は、繊維自体がソフト性を有しているのでポリ乳酸短繊維をそのまま使用することができるが、繊維表面にシリコーン等を付与して、更なるソフト性を付与することが大変有効である。この場合、シリコーン等の付与率は、繊維に対して0.3〜1.0重量%程度が好ましい。
【0055】
本発明のポリ乳酸短繊維を少なくとも一部に用いてなる中入れ綿は、布団や枕等の寝装用途をはじめとして、クッション材やぬいぐるみ等の中入れ綿としても好適に用いられる。
【0056】
本発明のポリ乳酸短繊維は滑り性に優れており、バインダー繊維として利用した場合には、バインダー繊維としての優れた分散性により、接着力が大幅に向上し、製品物性が高く、また非常に耐久性の優れた製品が得られる。バインダー繊維は、各種繊維の接着に好適に用いられる。主体となる被接着繊維としては、特に限定されるものではないが、例えば、ガラス繊維や炭素繊維をはじめ、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、アクリルおよびポリオレフィン等の合成繊維、また、植物繊維等が挙げられる。バインダー繊維を構成するポリ乳酸は、低温熱処理でも十分なバインド力が得られるように、低融点側に制御した共重合ポリ乳酸としても良い。また、その場合、主体となる被接着繊維としては共重合率のより低いポリ乳酸繊維を用いることもできる。
【0057】
本発明のポリ乳酸短繊維をバインダー繊維として用いた繊維構造体は、紙、不織布、クッション材、熱圧成形ボードおよび紡績糸等が好適であり、農林水産資材、土木建築資材、寝装資材、生活資材、自動車用資材および衣料資材等として用いることができる。
【0058】
【実施例】
以下、本発明のポリ乳酸短繊維とそれからなる繊維構造体について、実施例を用いて詳細に説明する。なお、実施例中における特性の測定方法としては、以下の方法を用いた。
【0059】
A.重量平均分子量
島津製作所社製のゲルパーミエーションクロマトグラフィー「島津LC−10AD」を用いて、ポリスチレンを標準として測定した。
【0060】
B.強度、伸度、沸収、捲縮数および捲縮率
JIS L 1015に準拠した。
【0061】
C.繊維の色調(b*値)
カットする前の繊維サンプルを透明プレートに、下地の色がほぼ無視できる程度まで密に積層して巻き付け、ミノルタ社製「スペクトロフォトメーターCM−3700d」を用いて測定した。このとき、光源としてはD65(色温度6504K)を用い、10°視野で測定を行った。
【0062】
D.嵩高性、圧縮率および回復率
JIS L 1097に準拠した。
【0063】
E.滑り性
原綿を手で解した時の解れ易さを次の指標で評価した。
◎:極めて容易に解れる
○:容易に解れる
△:やや解れにくい。
×:かなり解れにくい。
【0064】
F.紡績糸の実測U%
計算機工業社製「KET80B」を用いて、コットンモードで測定した。
【0065】
G.紡績糸の理論U%
下記式よって算出した。
理論U%=80/(n)1/2(ただし、n:構成繊維本数(=総繊度/単糸繊度))
H.紡績糸のI係数
下記式によって算出した。
I係数=実測U%/理論U%。
【0066】
I.紡績糸の強度
JIS L 1095に準拠した。
【0067】
J.紡績糸の品位
撚り斑、毛羽の状態から次の指標で目視評価した。
○:撚り斑、毛羽が少なく、良好な品位
△:撚り斑、毛羽が少しあり、まずまずの品位
×:より斑、毛羽が多くあり、品位が悪い
K.不織布の引張強力
JIS L 1096に準拠し、また、経方向と緯方向の平均値とした。
【0068】
L.曲げ強さ
JIS K 7062に準拠した。
【0069】
[製造例1](ポリ乳酸の製造)
光学純度99.5%のL乳酸から製造したラクチドを、ビス(2−エチルヘキサノエート)スズ触媒(ラクチド対触媒モル比=10000:1)存在下にチッソ雰囲気下180℃で140分間重合を行い、ポリ乳酸P1を得た。得られたポリ乳酸の重量平均分子量は13.5万であった。
【0070】
[製造例2](EBAを4wt%含有したポリ乳酸の製造)
ポリ乳酸P1とエチレンビスステアリン酸アミド(EBA)[日本油脂社製商品名「アルフローH−50S」]を乾燥した後、P1:EBA=96:4(重量比)となるように加熱溶融したEBAを計量して連続的にP1に添加しながら、シリンダー温度220℃の2軸混練押し出し機に供することで、EBAを4wt%含有したポリ乳酸P2を得た。
【0071】
[製造例3](SSを4wt%含有したポリ乳酸の製造)
製造例2のEBAを、アルキル置換型モノアミドのN−ステアリルステアリン酸アミド(SS)[日本化成社製商品名「ニッカアマイドS」]に変えたこと以外は、製造例2と同様にして、SSを4wt%含有したポリ乳酸P3を得た。
【0072】
[製造例4](SAを4wt%含有したポリ乳酸の製造)
製造例2のEBAを、モノアミドのステアリン酸アミド(SA)[日本油脂社製商品名「アルフローS−10」]に変えたこと以外は、製造例2と同様にして、SAを4wt%含有したポリ乳酸P4を得た。
【0073】
[製造例5](EBAを7wt%含有したポリ乳酸の製造)
ポリ乳酸P1とエチレンビスステアリン酸アミド(EBA)[日本油脂社製商品名「アルフローH−50S」]を乾燥した後、P1:EBA=93:7(重量比)となるように加熱溶融したEBAを計量して連続的にP1に添加しながら、シリンダー温度220℃の2軸混練押し出し機に供することで、EBAを7wt%含有したポリ乳酸P5を得た。
【0074】
(実施例1)
重量比でポリ乳酸P1:ポリ乳酸P2=75:25となるようにチップブレンド(EBAは1wt%)し紡糸機ホッパーに仕込み、エクストルーダー型紡糸機で220℃にて溶融し、360ホールを有する口金から吐出量173g/分で紡出し、紡糸速度1000m/分で引き取った。同様に紡糸した複数の糸条を合糸し、キャンに受けた。そして、この未延伸糸をさらに合糸して70万dtexのトウとし、70℃の水槽中で3.2倍に延伸した後、スタッファーボックスで機械捲縮(ニップ圧1.2kg/cm2、押し込み圧0.7kg/cm2)を付与した。次いで、140℃でリラックス熱処理を行い、油剤を付与した後カットし、単繊維繊度1.5dtex、繊維長38mmのポリ乳酸短繊維SF1を得た。このポリ乳酸短繊維の特性は表1に示すとおり、強度3.9cN/dtex、伸度38%、沸収8%、b*値1.2と良好な糸物性を示し、また、捲縮数10山/25mm、捲縮率25%と良好な捲縮特性を示した。この短繊維には、ポリ乳酸特有のキシミ感がなく、それとは逆にヌメリ感が存在し、原綿を手で数回揉むと容易に解れるような優れた滑り性を有していた。
【0075】
(実施例2)
EBAの重量比が2wt%となるようにポリ乳酸P1とポリ乳酸P2のブレンド比を変更し、繊維の断面形状を中空(中空率25%)に、また口金を185ホールに、吐出量を355g/分に変更し、カット長を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリ乳酸短繊維SF2を得た。得られたポリ乳酸短繊維は表1のとおり、良好な糸物性と捲縮特性を示した。また、この原綿は滑り性と軽量感の両方を満たすものであった。
【0076】
(実施例3,4)
EBAの重量比が4,0.3wt%となるようにポリ乳酸P1とポリ乳酸P2のブレンド比を変更し、また、実施例3では、吐出量を346g/分、カット長を51mmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリ乳酸短繊維SF3とポリ乳酸短繊維SF4を得た。得られた短繊維は表1の通り、いずれも良好な糸物性と捲縮特性を示した。滑り性は、ポリ乳酸短繊維SF3は極めて良好であり、ポリ乳酸短繊維SF4はSF1に比べると少し不足するものであった。
【0077】
(実施例5)
ポリ乳酸P2の代わりにポリ乳酸P3を用いたこと(SSは1wt%)以外は、実施例1と同様にして、ポリ乳酸短繊維SF5を得た。得られたポリ乳酸短繊維は表1のとおり、良好な糸物性と捲縮特性を示した。また、滑り性も良好であった。
【0078】
(比較例1)
ポリ乳酸P1(ポリ乳酸のみからなる)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ポリ乳酸短繊維SF6を得た。得られたポリ乳酸短繊維は表1のとおり、良好な糸物性と捲縮特性を示したが、捲縮斑が多く、またポリ乳酸独特のキシミ感が強く、滑り性に劣るものであった。
【0079】
(比較例2)
ポリ乳酸P1(ポリ乳酸のみからなる)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、ポリ乳酸短繊維SF7を得た。得られたポリ乳酸短繊維は表1のとおり、良好な糸物性と捲縮特性を示したが、捲縮斑が多く、またポリ乳酸独特のキシミ感が強く、滑り性に劣るものであった。
【0080】
(比較例3)
ポリ乳酸P1(ポリ乳酸のみからなる)を用いたこと以外は、実施例3と同様にして、ポリ乳酸短繊維SF8を得た。得られたポリ乳酸短繊維は表1のとおり、良好な糸物性を示したが、良好な糸物性と捲縮特性を示したが、捲縮斑が多く、またポリ乳酸独特のキシミ感が強く、滑り性に劣るものであった。
【0081】
(比較例4)
EBAの重量比が0.05wt%となるようにポリ乳酸P1とポリ乳酸P2のブレンド比を変更したこと以外は実施例1と同様にして、ポリ乳酸短繊維SF9を得た。得られたポリ乳酸短繊維は表1のとおりであり、滑り性が不十分なものであった。
【0082】
(比較例5)
ポリ乳酸P5のみ(EBAは7w%)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、短繊維SF10を得た。得られた短繊維は表1のとおりであり、b*値が高く、黄ばんだような色相であった。
【0083】
(比較例6)
ポリ乳酸P2の代わりにポリ乳酸P4を用いたこと(SAは1wt%)以外は、実施例1と同様にして、ポリ乳酸短繊維SF11を得た。得られたポリ乳酸短繊維は表1のとおりであり、強度が不十分であり、またポリ乳酸独特のキシミ感が強く、滑り性に劣るものであった。また、b*値が高く、黄ばんだような色相であった。脂肪酸モノアミドであるSAは、滑り性の効果が少ない上に、強度低下と黄色着色を引き起こすことがわかった。
【0084】
【表1】
【0085】
(実施例6)
ポリ乳酸短繊維SF1のみからなるスライバーを練篠機に供給し、さらに粗紡機にてダブリングとドラフトを施して撚り数0.8回/2.54cmの粗糸を得た。次いで、この粗糸を精紡機に供給し、ドラフト率35倍と撚り数25回/2.54cmを施して、40番手(英国式綿番手)の紡績糸を得た。この紡績糸は表2に示すとおり、I係数が1.1と太さ斑が非常に少なく、強度も2.1cN/dtexと高いものであった。また、撚り斑や毛羽なども少なく、加工斑がなく良好な品位の紡績糸であった。さらに、この紡績糸を用いて、常法に従い、製編(丸編み)、染色加工(分散染料使用)および縫製を施し、シャツを作製した。得られたシャツは、染色斑やいらつき感がなく、良好な外観を示すとともに、1か月間の着用による耐久テストにおいても、毛羽立ちや白化、テカリが無く、優れた製品耐久性を示した。
【0086】
(実施例7)
ポリ乳酸短繊維SF1のみからなるスライバーと、ポリ乳酸短繊維SF1と単位長さ当たり同重量の綿繊維のみからなるスライバーを、同時に同一練篠機に供給し、スライバー混合したこと以外は、実施例6と同様にして、綿繊維の含有率50wt%の紡績糸を得た。この紡績糸は、表2に示すとおり、太さ斑、強度および品位いずれも良好であった。さらに、この紡績糸を用いて、常法に従い、製編(丸編み)、染色加工(同一色相の分散染料と反応染料を使用)および縫製を施し、シャツを作製した。得られたシャツは、いらつき感はなく、混紡糸特有の自然感のある染色斑が存在し、良好な外観を示すとともに、1か月間の着用による耐久テストにおいても、毛羽立ちや白化、テカリが無く、優れた製品耐久性を示した。
【0087】
(比較例7)
ポリ乳酸短繊維SF1の代わりにポリ乳酸短繊維SF6を用いたこと以外は、実施例6と同様にして、紡績糸を得た。この紡績糸は、表2に示すとおり、太さ斑、強度、品位いずれも物足りないものであった。さらに、この紡績糸を用いたシャツは、染色斑が多く、また、いらつき感が存在するものであった。また、1か月間の着用による耐久テストでは、毛羽立ちや白化、テカリが発生し、製品耐久性に劣るものであった。
【0088】
(比較例8)
ポリ乳酸短繊維SF1の代わりにポリ乳酸短繊維SF11を用いたこと以外は、実施例6と同様にして、紡績糸を得た。この紡績糸は、表2に示すとおり、太さ斑、強度および品位いずれも物足りないものであった。さらに、この紡績糸を用いたシャツは、染色斑が多く、また、いらつき感が存在するものであった。また、1か月間の着用による耐久テストでは、毛羽立ちや白化、テカリが発生し、製品耐久性に劣るものであった。
【0089】
【表2】
【0090】
(実施例8)
ポリ乳酸短繊維SF3を原綿として用い、開繊機、パラレルカード機を通して目付50g/m2のウエブを作製した。次いで、このウエブを熱風循環型連続式乾燥機の中に通して、170℃、60秒の条件で熱処理して不織布を得た。得られた不織布は、引張強度が14.2kg/5cmと良好な不織布物性を示すとともに、繊維の密度斑が極めて少なく、良好な製品品位を示すものであった。
【0091】
(比較例9)
ポリ乳酸短繊維SF3の代わりにポリ乳酸短繊維SF8を用いたこと以外は、実施例8と同様にして、不織布を得た。この不織布は、引張強度が11.3kg/5cmと実施例8に比べて劣り、また、繊維の密度斑が大きく、製品品位に劣るものであった。工程サンプルであるウエブを観察すると、原綿が解れていない部分が多く存在することから、不織布の引張強度の弱さと密度斑は、この原綿の開繊性不良によるものと示唆された。
【0092】
(実施例9)
ポリ乳酸短繊維SF2を中入れ綿として布団を作製した。この中入れ綿は、軽量感が存在するとともに、嵩高性85cm3/g、圧縮率55%、回復率93%と非常に嵩高性に優れるものであった。また、布団カバー内での短繊維の分散性が良く、綿の粗密斑が極めて少ない、高品位な製品特性を示すものであった。
【0093】
(比較例10)
中入れ綿として、ポリ乳酸短繊維SF2の代わりにポリ乳酸短繊維SF7を用いたこと以外は実施例9と同様にして布団を作製した。この中入れ綿は、軽量感は存在するが、嵩高性47cm3/g、圧縮率63%、回復率68%と嵩高性に劣るものであった。また、この中入れ綿は、実施例9の中入れ綿に比べて弾力感がなく、硬い触感であった。さらに、この中入れ綿は、布団カバー内での短繊維の分散性が悪く、綿の粗密斑が発生し、品位に劣ったものであった。
【0094】
(実施例10)
バインダー繊維としてポリ乳酸短繊維SF3を50wt%、主体繊維として平均繊維長51mmにカットした麻繊維50wt%を混綿機にて混合した後、加熱溶融し圧縮成形することによりボードを作製した。このボードの曲げ強さは115J/mと良好な物性を示した。
【0095】
(比較例11)
バインダー繊維として、ポリ乳酸短繊維SF3の代わりにポリ乳酸短繊維SF8を用いたこと以外は、実施例10と同様にしてボードを作製した。このボードの曲げ強さは78J/mと実施例10のボードに比べて物足りない物性であった。
【0096】
【発明の効果】
本発明によれば、、滑り性に優れたポリ乳酸短繊維およびそれからなる繊維構造体を提供することができ、ポリ乳酸繊維の用途展開幅を大きく拡大することができる。繊維構造体としては、紡績糸、不織布および中入れ綿等が好適である。また、本発明のポリ乳酸短繊維は滑り性に優れているため、これを他素材のバインダー繊維として用いた場合、分散性がよく均等な接着性を得ることができ接着性が向上する。
【発明の属する技術分野】
本発明は、滑り性に優れたポリ乳酸短繊維およびそれからなる繊維構造体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近、地球規模での環境に対する意識が高まる中で、石油資源の大量消費によって生じる地球温暖化や、大量消費に伴う石油資源の枯渇が懸念されている。このような背景から、植物由来原料(バイオマス)からなり、使用後は自然環境中で最終的に水と二酸化炭素まで分解する、自然循環型の環境対応素材が切望されている。
【0003】
しかしながら、これまで、このようなバイオマス利用の生分解性ポリマーは、製造コストが高く、また力学特性や耐熱性が低いという課題があり、汎用プラスチックに利用されることはなかった。これらを解決できるバイオマス利用の生分解性ポリマーとして、現在、最も注目されているのは脂肪族ポリエステルの一種であるポリ乳酸である。ポリ乳酸は、植物から抽出したでんぷんを発酵することにより得られる乳酸を原料としたポリマーであり、バイオマス利用の生分解性ポリマーの中では、力学特性、耐熱性およびコストのバランスが最も優れている。そして、これを利用した樹脂製品、繊維、フィルムおよびシート等の開発が急ピッチで行われている。
【0004】
ポリ乳酸繊維の開発としては、生分解性を活かした農業資材や土木資材等が先行しているが、それに続く大型の用途として衣料用途や衛生用途、寝装用途および資材用途への応用も期待されている。
【0005】
しかしながら、これらの用途では、得られる繊維製品の風合い、あるいはその形態の性質上、短繊維を用いることが必要となる場合が多くあるが、ポリ乳酸の短繊維の場合には、繊維自体の滑り性が極めて悪いために製造過程あるいは製品使用時において種々の問題が発生し、これらの用途へは展開は思うように進んでいないのが実状である。
【0006】
従来、ポリ乳酸の短繊維を常法に従って製造する公知例は存在するが(特許文献1参照。)、発明者らがその公知例に基づいて追試を行った結果、捲縮斑が多発することがわかった。また、各工程においてローラーやガイド部で繊維が摩耗し、毛羽や繊維の削れカスが発生する等、品位の高い短繊維が得られないことがわかった。また、このようにして得られたポリ乳酸短繊維を紡績糸とした場合には、太さ斑や物性のバラツキが大きく、また、それらに起因して染色斑が顕著に現れた。また、このようにして得られたポリ乳酸短繊維を不織布に用いた場合には、短繊維の分散性が極端に悪く、均一な繊維密度の不織布が得られなかった。加えて、このようにして得られたポリ乳酸短繊維を布団の中入れ綿として利用した場合にも、均一な分散が困難であり、結果的に得られた布団は綿の粗密が明確に現れた劣悪なものとなった。さらには、バインダー繊維として利用した場合には、分散性不良によってバインダー繊維に偏りが生じ、接着力が著しく低下し、極めて製品物性の低いものしか得られなかった。
【0007】
これらの原因として、ポリ乳酸短繊維の表面摩擦係数が他の汎用合成繊維に比べて高いことが考えられる。そこで、発明者らは、繊維の摩擦係数を下げ、滑り性を向上させる一般的な手法として、捲縮加工の前にシリコーン系等の摩擦係数をより低減できる油剤を付与したり、或いは油剤の付着量を多くすること試みた。しかしながら、この場合、確かに繊維の滑り性はある程度向上し、工程通過性や短繊維自体の捲縮斑や毛羽等の品位は改善方向にあるものの、依然として不十分なレベルであり、またこれを用いた紡績糸や不織布、中入れ綿およびFRP(繊維補強プラスチック)等の繊維製品の品位や物性も依然として満足いくものではないことがわかった。また、油剤の付着量を多くした場合には、新たな問題として、工程通過過程でカードや粗紡、精紡工程で、脱落した油剤がローラーに多量に付着し繊維が巻き付いたり、或いは脱落した油剤が凝集して繊維表面で白粉を生じる等の問題が発生した。
【0008】
ところで、樹脂製品、フィルムあるいはシート等の分野では、その製造工程において、チップや溶融ポリマーのアンチブロキング性、あるいは金型やローラーからの成形体の剥離性を向上させるためにポリマーに滑剤を添加する場合がある。しかしながら、繊維の分野においては、滑剤のブレンド斑、熱分解あるいはブリードアウト等により繊維の物性斑や染色斑等による製品品質の低下が発生しやすいため、これまでこのような添加剤を用いることは避けられる傾向にあった。
【0009】
滑剤を添加した繊維についての公知例は存在するが(特許文献2参照)、これは、ポリ乳酸繊維に一般式RCONH2(ただし、Rはアルキル基)で表される脂肪酸モノアミドを添加し、撥水性を与えることによって加水分解速度を抑制することを目的とするものであり、本発明の目的である滑り性の向上については全く記載が無い。ちなみに、本発明者らは脂肪酸モノアミドを添加したポリ乳酸繊維について追試を行ったが、ポリ乳酸繊維の滑り性を向上させることはできなかった(比較例6参照。)。これは、脂肪酸モノアミドが、そのアミド基の反応性が高いために、溶融時にポリ乳酸と反応してしまい、結果的に滑剤として機能し得る脂肪酸モノアミドの繊維中に占める割合が少なくなることが原因であると推定される。また、脂肪酸モノアミドがポリ乳酸と反応すると、結果的にポリ乳酸の分子鎖が切断されるため、分子量が減少してしまい、繊維物性が低下する場合もあった。さらに、脂肪酸モノアミドは昇華性が大きい、あるいは耐熱性に劣るために、発煙による作業環境の悪化や、ブリードアウトによるガイド類やローラーの汚れ、また、操業性の低下を引き起こすこともあった。さらに、ブリードアウトした脂肪酸モノアミドが繊維表面で凝集することによって、繊維の物性斑や染色斑を招く場合もあった。
【0010】
以上のように、ポリ乳酸の短繊維を常法に基づいて製造した場合には、工程通過性が悪く、また高品位の短繊維が得られないという問題があり、これらの問題を抜本的に解決する手法は未だに見出されていないのが実状であった。
【0011】
【特許文献1】
特開平6−212511号公報(第2−4頁)
【0012】
【特許文献2】
特開平8−183898号公報(第2−4頁)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の問題点を克服し、滑り性に優れたポリ乳酸短繊維およびそれからなる繊維構造体を提供することを課題とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記課題は、ポリ乳酸からなる短繊維であって、脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミドを繊維全体に対して0.1〜5wt%含有することを特徴とするポリ乳酸短繊維により達成される。本発明のポリ乳酸短繊維は、捲縮数6山/25mm以上、捲縮率10%以上であることが好ましい。
【0015】
また、本発明のポリ乳酸短繊維は、これを用いて紡績糸等の各種の繊維構造体を製造することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のポリ乳酸短繊維と繊維構造物について詳細に説明する。
【0017】
本発明でいうポリ乳酸とは、乳酸やラクチド等の乳酸のオリゴマーを重合したものを言い、L体あるいはD体の光学純度は90%以上であると、融点が高く好ましい。L体あるいはD体の光学純度は、より好ましくは97%以上である。また、L体の光学純度90%以上のポリ乳酸とD体の光学純度90%以上のポリ乳酸を70/30〜30/70の比率でブレンドしたものは融点がさらに向上するため好ましい態様である。また、ポリ乳酸の性質を損なわない範囲で、乳酸以外の成分を共重合していても、ポリ乳酸以外のポリマーや粒子、難燃剤、帯電防止剤、艶消し剤、消臭剤、抗菌剤、抗酸化剤あるいは着色顔料等の添加物を含有していても良い。また、染色用途等の熱水処理でのポリ乳酸の加水分解抑制や製品の経時による物性低下抑制を目的として、カルボジイミド化合物等の末端封鎖剤を含有していても良い。ポリ乳酸ポリマーの分子量は、重量平均分子量で5万〜50万であると、力学特性と成形性のバランスが良く好ましい。ポリ乳酸ポリマーの分子量は、より好ましくは重量平均分子量で10万〜35万である。
【0018】
本発明で用いられるポリ乳酸の製造方法は、特に限定されない。具体的には、特開平6−65360号に開示されている製造方法が挙げられる。すなわち、乳酸を有機溶媒及び触媒の存在下、そのまま脱水縮合する直接脱水縮合法である。また、特開平7−173266号に開示されている少なくとも2種類のホモポリマーを重合触媒の存在下、共重合並びにエステル交換反応させる方法がある。さらには、米国特許第2,703,316号明細書に開示されている方法がある。すなわち、乳酸を一旦脱水し、環状二量体とした後に、開環重合する間接重合法である。
【0019】
本発明では、ポリ乳酸短繊維に、脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミドを滑剤として含有させる。
【0020】
本発明で用いられる脂肪酸ビスアミドとは、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミドおよび芳香族系脂肪酸ビスアミド等のように1分子中にアミド結合を2つ有する化合物を指し、例えば、メチレンビスカプリル酸アミド、メチレンビスカプリン酸アミド、メチレンビスラウリン酸アミド、メチレンビスミリスチン酸アミド、メチレンビスパルミチン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスイソステアリン酸アミド、メチレンビスベヘニン酸アミド、メチレンビスオレイン酸アミド、メチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスカプリル酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスミリスチン酸アミド、エチレンビスパルミチン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスイソステアリン酸アミド、エチレンビスベヘニン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ブチレンビスステアリン酸アミド、ブチレンビスベヘニン酸アミド、ブチレンビスオレイン酸アミド、ブチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘニン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスエルカ酸アミド、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、m−キシリレンビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミド、p−キシリレンビスステアリン酸アミド、p−フェニレンビスステアリン酸アミド、p−フェニレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’−ジステアリルセバシン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミド、N,N’−ジステアリルテレフタル酸アミド、メチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、ブチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド等が挙げられる。
【0021】
また、本発明で用いられるアルキル置換型の脂肪酸モノアミドとは、飽和脂肪酸モノアミドや不飽和脂肪酸モノアミド等のアミド水素をアルキル基で置き換えた構造の化合物を指し、例えば、N−ラウリルラウリン酸アミド、N−パルミチルパルミチン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ベヘニルベヘニン酸アミド、N−オレイルオレイン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、N−オレイルパルミチン酸アミド等が挙げられる。ここでアルキル基は、その構造中にヒドロキシル基等の置換基が導入されていても良く、例えば、メチロールステアリン酸アミド、メチロールベヘニン酸アミド、N−ステアリル−12−ヒドロキシステアリン酸アミドおよびN−オレイル12ヒドロキシステアリン酸アミド等も本発明のアルキル置換型の脂肪酸モノアミドに含むものとする。
【0022】
本発明では、脂肪酸ビスアミドやアルキル置換型の脂肪酸モノアミドを用いるが、これらの化合物は、従来用いられていた脂肪酸モノアミドに比べてアミドの反応性が低く、溶融成形時においてポリ乳酸との反応が起こりにくい。また、高分子量のものが多いため、一般に耐熱性が良く、昇華しにくいという特徴がある。特に、脂肪酸ビスアミドは、アミドの反応性がさらに低いためポリ乳酸と反応しにくく、また、高分子量であるため耐熱性が良く、昇華しにくいことから、より好ましい滑剤として用いることができる。このような滑剤として、例えば、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスイソステアリン酸アミド、エチレンビスベヘニン酸アミド、ブチレンビスステアリン酸アミド、ブチレンビスベヘニン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘニン酸アミドおよびm−キシリレンビスステアリン酸アミドが好ましく用いられる。
【0023】
本発明のポリ乳酸短繊維では、滑剤として脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミドを繊維全体に対して0.1〜5wt%含有することが重要である。脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミドの含有量を0.1wt%以上とすることで、繊維の表面摩擦係数が低減し、つまり滑り性が向上することによって、工程通過性や短繊維自体の捲縮および品位を向上させるとともに、短繊維の開繊性や繊維構造体中での短繊維の分散性を向上させることができる。また、脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミド含有量を5wt%以下とすることで、脂肪酸アミドを微分散させることができ、繊維の物性斑や染色斑が発生することを防ぐことができる。脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミドの含有量は、好ましくは0.5〜3wt%である。本発明では、脂肪酸ビスアミドとアルキル置換型の脂肪酸モノアミドがそれぞれ単一でも良いし、また複数の成分が混合されていても良く、混合されている場合には、その混合物が繊維全体に対して0.1〜5wt%含有していれば良い。
【0024】
本発明のポリ乳短酸繊維は、平滑剤を含有する紡糸油剤が付与されていることが好ましい。平滑剤としては、例えば、脂肪酸エステル、多価アルコールエステル、エーテルエステル、ポリエーテル、シリコーンおよび鉱物油等が挙げられる。また、これらの平滑剤は単一成分で用いても良いし、複数の成分を混合して用いても良い。ポリ乳酸短繊維に上記のような平滑剤を含有させた油剤を付与することによって、ポリ乳酸短繊維の滑り性はさらに向上し、紡糸や延伸をはじめ、カードや紡績での工程通過性、および得られる短繊維自体の捲縮斑や毛羽等の品位を向上させるとともに、短繊維の開繊性や繊維構造体中での短繊維の分散性をさらに向上させることができる。
【0025】
本発明では、油剤を構成する成分は平滑剤に加えて、油剤を水に乳化させ、低粘度化して糸条への付着や浸透性を向上させる乳化剤、また必要に応じて帯電防止剤、イオン性界面活性剤、集束剤、防錆剤、防腐剤あるいは酸化防止剤を適宜配合したものを使用することができる。
【0026】
本発明のポリ乳酸短繊維は、染色が前提となるような衣料用途等の色調が重要視される用途でも幅広く使用するために、黄味の色調の指標であるb*値が−1〜5であることが好ましく、b*値はより好ましくは−1〜3である。なお、従来技術である脂肪酸モノアミドを含有したポリ乳酸繊維は、このb*値が高く、黄味が強い傾向になる場合がある。これは、耐熱性に劣る脂肪酸モノアミドの熱劣化に加えて、脂肪酸モノアミドが溶融成形時にポリ乳酸ポリマーのカルボニル基と反応し、ジアセトアミド基が形成されるためと考えられる。これに対して、本発明で用いられる脂肪酸ビスアミドやアルキル置換型の脂肪酸モノアミドは、耐熱性に優れており、またアミド基の反応性が低いため、繊維の着色は発生しにくい。
【0027】
本発明のポリ乳酸短繊維は、捲縮数が6山/25mm以上であり、そして捲縮率が10%以上であると、嵩高で軽量感のある良好な風合いを達成することができる。また、捲縮数が多すぎたり、捲縮率が大きすぎると、嵩高性が逆に低下してしまうことがあるため、捲縮数、捲縮率はそれぞれ20山/25mm以下、50%以下であることが好ましい。捲縮数は8〜15山/25mmがより好ましく、捲縮率は15〜30%がより好ましい。
【0028】
また、本発明のポリ乳酸短繊維では、工程通過性や製品の力学的強度を十分高く保つためには、強度は2.0cN/dtex以上であることが好ましい。また、本発明のポリ乳酸短繊維の伸度は10〜80%であると、繊維製品にする際の工程通過性が向上する。さらに本発明のポリ乳酸短繊維では、沸収が0〜30%であれば繊維および繊維製品の寸法安定性が良好である。
【0029】
本発明のポリ乳酸短繊維の単繊維繊度は、好ましくは0.1〜100dtexであり、より好ましくは0.3〜50dtexである。一般にポリ乳酸繊維の摩耗による品位の低下は単繊維繊度が小さい程顕著に現れるが、本発明のポリ乳酸短繊維では、繊維表面の滑り性に優れるため、単糸繊度が小さくても十分な耐摩耗性を有し、高品位の短繊維が得られる。また、本発明のポリ乳酸短繊維の繊維長は、好ましくは3〜100mmの範囲であり、後述するのように用途に応じて適宜選択される。
【0030】
また、本発明のポリ乳酸短繊維の断面形状は、丸断面、中空断面または三葉断面等の多葉断面、およびその他の異形断面についても自由に選択することが可能である。特に、中入れ綿等の軽量性やソフト性、保温性が重要視されるような用途では、中空断面形状のポリ乳酸短繊維が好ましい。この場合の中空率は、15〜45%であることが好ましい。中空率を15%以上とすることで軽量性、ソフト性および保温性が達成され、また、中空率を45%以下とすることで捲縮加工時に中空が潰れたり、繊維にクラックが入ることが抑制され、繊維の物性や品位を保つことができる。ここで言う中空率とは、繊維断面の外形から求めた面積に対する中空部分の面積比を百分率で表したものである。
【0031】
また、本発明のポリ乳酸短繊維は、少なくともポリ乳酸を成分に含んだ芯鞘型、偏心芯鞘型、サイドバイサイド型または割繊維分割型など、あるいは海島型などの1成分を溶出するタイプの複合繊維であっても良い。
【0032】
本発明のポリ乳酸短繊維の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、次のような方法が挙げられる。
【0033】
本発明のポリ乳酸短繊維は、基本的には、溶融紡糸、延伸、捲縮付与およびカットの各工程からなる溶融紡糸法によって製造することができる。
【0034】
ポリ乳酸短繊維に、脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミドを含有させる方法は、例えば、以下のように、混練と溶融紡糸を別々の工程で行う方法が挙げられる。まず混練工程では、ポリ乳酸と該アミド化合物を乾燥した後、窒素シールされた押し出し混練機に供給して混練チップを作成する。次に、この混練チップを紡糸機に供することによって溶融紡糸を行う。混練工程では、該アミド化合物を高比率で含有した混練チップを作成し(マスターチップ化)、これを紡糸機に供する際に該アミド化合物が所望の含有量になるように通常のポリ乳酸チップをブレンドして希釈する方法も好適に用いられる。また、溶融紡糸工程では、紡糸パック内に静止混練器を設置することにより、ポリ乳酸と該アミド化合物をさらに微細に混練させることも可能である。該アミド化合物の凝集や繊維表面へのブリードアウトは、ガイド類やローラーの汚れによる操業性の低下を引き起こしたり、繊維製品の物性斑や染色斑を引き起こすため、混練工程や溶融紡糸工程では、該アミド化合物をポリ乳酸に微分散させることが好ましい。
【0035】
また、混練と溶融紡糸を同一工程で行っても良い。この場合、乾燥したポリ乳酸と該アミド化合物を別々に溶融し、それぞれの融液を紡糸機に供して紡糸パック内で混練しても良いし、混練機によりポリ乳酸と該アミド化合物を混練し、この混練ポリマー融液を紡糸機に供しても良い。
【0036】
また、該アミド化合物は、ポリ乳酸の重合時に添加し、重合と同時にマスターチップ化を行っても良い。また、マスターチップとせず、該アミド化合物を予め所望の含有量となるように重合時に添加し、得られたチップを希釈せずにそのまま紡糸機に供しても何ら差し支えない。
【0037】
該アミド化合物は、ブレンドポリマーの全量に対して0.1〜5wt%含有させれば良い。該アミド化合物の含有量を0.1wt%以上とすることで、繊維の表面摩擦係数が低減し、工程通過性を向上できる。また、該アミド化合物の含有量を5wt%以下とすることで、混練や紡糸の際に、過剰の該アミド化合物が溶融ポリマーからブリードアウトし、これが昇華或いは分解して発煙を引き起こすといった作業環境の悪化や、過剰の該アミド化合物の昇華物あるいは分解物によって押し出し混練機や溶融紡糸機が汚れる等の操業性の低下を防ぐことができる。
【0038】
紡糸温度は、用いるポリ乳酸の共重合比率や分子量によって異なるが、1800〜280℃とすることが望ましい。紡糸温度が180℃未満では溶融押し出しが困難であり、280℃を超えるとポリ乳酸の分解が顕著となり、捲縮特性に優れた高強度のポリ乳酸短繊維を得ることが困難となる。
【0039】
溶融紡糸された糸条には、冷却、油剤付与、引き取りの後、引き揃え、延伸、熱固定が施される。油剤は、口金から紡出した糸条を冷却した後に付与することができる。また、引き取り速度を400〜2,000m/分、延伸倍率を1.5〜6倍とすると、ポリ乳酸短繊維を繊維構造体として用いた場合に適切な強度を備えたポリ乳酸短繊維が得られる。引き揃えは、巻き取った糸を複数本合糸することによって行い、最終的に総繊度が5〜100万dtexのトウとなるように行えば良い。また、トウを均一に延伸するためには、60〜100℃の温水を用いた液浴延伸を行うことが好ましい。
【0040】
次いで、延伸糸に捲縮を付与し、所望の繊維長にカットする。捲縮付与方法は、特に限定されないが、例えばスタッフィングボックス法、押し込み加熱ギア法、高速エアー噴射押し込み法等が挙げられる。また、必要に応じて、油剤を仕上げ剤として延伸後や捲縮付与後に付与することも好適に用いられる。
【0041】
本発明でいうポリ乳酸短繊維からなる繊維構造体としては、ポリ乳酸短繊維を少なくともその一部に用いていれば特に限定されず、例えば、紡績糸、不織布、中入れ綿およびバインダー繊維等が挙げられる。また、これらは、ポリ乳酸短繊維以外の繊維、例えば、ポリグリコール酸やポリヒドロキシブチレート、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクトン等の生分解性繊維や、綿、絹、麻、羊毛等の天然繊維、レーヨンやアセテート等の再生繊維、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、アクリル、ビニロン、ポリオレフィンあるいはポリウレタン等の合成繊維との混用品等でも良い。
【0042】
本発明のポリ乳酸短繊維は滑り性に優れるため、練篠、粗紡および精紡等の紡績工程においては、工程通過性が良く、また、太さ斑や撚り斑、毛羽および物性のバラツキ等が小さい高品位な紡績糸が得られる。また、それらに起因して染色斑が抑制され、高品位な染色製品が得られる。
【0043】
本発明のポリ乳酸短繊維を少なくとも一部に用いてなる紡績糸は、ポリ乳酸短繊維のみからなる紡績糸でも良いし、ポリ乳酸短繊維とポリ乳酸長繊維との紡績糸であっても良い。また、ポリ乳酸以外の短繊維または長繊維との混紡糸でも良い。
【0044】
例えば、本発明において、紡績糸に使用するポリ乳酸短繊維は、ポリ乳酸短繊維を単独で用いる場合には、単繊維繊度が0.5〜10.0dtexの範囲で、繊維長が3〜100mmの範囲であれば、紡績の工程通過性が良く好ましい。また、ポリ乳酸短繊維を綿と混紡する場合は、単繊維繊度を1.0〜1.5dtexの範囲、繊維長を30〜50mmとし、また、羊毛との梳毛紡績の場合は、単繊維繊度を1.0〜3.0dtexの範囲、繊維長を70〜90mmとし、また、羊毛との紡毛紡績の場合は、単繊維繊度を3.0〜7.0dtexとし、繊維長を30〜50mmとすると、混紡糸の均斉度が良くなり好ましい。また、異形断面のポリ乳酸短繊維を少なくとも一部に使用すれば、風合いや膨らみ感がより向上する。
【0045】
紡績糸の繊度は、好ましくは10〜500dtexであり、各種用途へ幅広く適用できる。また、紡績糸の製造工程において適宜撚りを施すことによって、紡績糸の風合いや意匠性、強度を向上させることが可能となる。
【0046】
本発明のポリ乳酸短繊維を少なくとも一部に用いてなる紡績糸は、例えば、コート、ジャンパー、ブルゾン、スーツ、ブレザー、ジャケット、ドレス、セーター、カーディガン、ズボン、スカート、シャツ、ブラウス、トレーナー、Tシャツ、スポーツウェア、ユニフォーム、インナーウェア、靴下、タイツ、帽子、マフラー、手袋および腹巻き等の衣料用途や、縫い糸、ファスナーおよび裏地等の衣料資材用途、ハンカチ、タオルおよびさらし等の資材用途としても好適に用いられる。
【0047】
本発明のポリ乳酸短繊維は滑り性に優れており、開繊機やカード機での開繊性が極めて良好であるため、均一なウエブを製造することができる。よって、これを熱接着加工して得られる不織布は、繊維の密度斑が少なく、高品位な製品となる。本発明のポリ乳酸短繊維を少なくとも一部に用いてなる不織布は、ポリ乳酸短繊維のみで構成されていても良く、また、ポリ乳酸短繊維以外の繊維を含んでいても良い。ポリ乳酸短繊維以外の繊維を混用する場合には、ポリ乳酸短繊維の滑り性によって異種の短繊維が均一混合されたウエブが製造可能となる。また、ポリ乳酸短繊維を熱接着繊維として使用する場合には、光学純度が低く、より低融点のポリ乳酸短繊維を使用しても良い。
【0048】
また、本発明において、不織布を構成するポリ乳酸短繊維は、単繊維繊度が0.3〜100dtexの範囲で、繊維長が10〜100mmの範囲であれば、種々の用途への適用が可能となり好ましい。また、不織布の目付は、好ましくは10〜5000g/m2の範囲であり、種々の用途への適用が可能である。本発明のポリ乳酸短繊維を少なくとも一部に用いてなる不織布は、おむつ、生理用品等の衛生用途、クッション材、ワイピングクロス、テーブルクロス、フィルター、ティーバッグ、水切りごみ袋、靴地および鞄地等の資材用途、袋や包装用途等にも好適に用いられる。
【0049】
本発明のポリ乳酸短繊維は滑り性に優れるため、短繊維が非常に解れやすいという特徴を有している。よってこれを中入れ綿に利用した場合には、短繊維が均一に分散され、綿の粗密斑が極めて少ない、高品位な繊維製品を製造することが可能である。本発明のポリ乳酸短繊維を少なくとも一部に用いてなる中入れ綿は、嵩高性が50cm3/g以上であることが好ましい。嵩高性が50cm3/g未満の場合は、例えば、布団に用いた場合には空隙率が低く、布団としての保温性が低くなり布団として満足できるものとはならない。布団としての保温性の面から嵩高性は好ましくは60cm3/g以上、特に好ましくは100cm3/g以上である。嵩高性は高ければ高い程、軽量性と保温性が優れたものとなる。
【0050】
繊維の捲縮形態については機械捲縮でもスパイラル捲縮でも良いが、嵩高性をより高めるためにはスパイラル捲縮の方が好ましい。スパイラル捲縮を付与する手段は多くあるが、例えば、繊維を断面方向に非対称性を持たせ、延伸時の配向差によるスパイラル捲縮を発現させる方法、および延伸後のリラックス熱処理時に生じる収縮率差によってスパイラル捲縮を発現させる方法等がある。
【0051】
また、本発明のポリ乳酸短繊維を少なくとも一部に用いてなる中入れ綿は、その圧縮率が45%以上であることが好ましい。ここで圧縮率とは、中入れ綿の圧縮時の嵩高性を表す指標である。圧縮率が低い場合には、小さな圧縮荷重でも嵩高特性が低下し、前述した保温性が低下してしまうことがある。この観点からより好ましい圧縮率は50%以上、特に好ましい圧縮率は60%以上である。また、逆に、圧縮率が高すぎると、中入れ綿の弾力が不足し、硬い触感になる場合があるため、圧縮率は90%以下が好ましい。
【0052】
中入れ綿が圧縮に耐えるため、単繊維繊度について好ましい範囲が存在する。圧縮特性を向上させる目的から好ましい単繊維繊度は3dtex以上、特に好ましくは5dtex以上である。但し、繊度が大きすぎると粗硬感が強くなり好ましくない。本発明のポリ乳酸短繊維を少なくとも一部に用いてなる中入れ綿において、好ましい単繊維繊度は50dtex以下、特に好ましくは20dtex以下である。
【0053】
また、本発明のポリ乳酸短繊維を少なくとも一部に用いてなる中入れ綿は、その回復率が70%以上であると、弾力のある触感が得られるため好ましい。回復率は好ましくは85%以上であり、大きいほど好ましい。回復率とは、中入れ綿に荷重を乗せて圧縮した後、その荷重を取り除いたときの嵩高の回復度合いを表す指標である。本発明のポリ乳酸短繊維は、滑剤として脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミドを含有しているため、滑り性に優れている。よって、圧縮時に短繊維間でのからまりやひっかかりが少なくなるため、回復率が高い値となる。これによって、弾力のある中入れ綿が可能となるのである。
【0054】
また、本発明のポリ乳酸短繊維を少なくとも一部に用いてなる中入れ綿は、繊維自体がソフト性を有しているのでポリ乳酸短繊維をそのまま使用することができるが、繊維表面にシリコーン等を付与して、更なるソフト性を付与することが大変有効である。この場合、シリコーン等の付与率は、繊維に対して0.3〜1.0重量%程度が好ましい。
【0055】
本発明のポリ乳酸短繊維を少なくとも一部に用いてなる中入れ綿は、布団や枕等の寝装用途をはじめとして、クッション材やぬいぐるみ等の中入れ綿としても好適に用いられる。
【0056】
本発明のポリ乳酸短繊維は滑り性に優れており、バインダー繊維として利用した場合には、バインダー繊維としての優れた分散性により、接着力が大幅に向上し、製品物性が高く、また非常に耐久性の優れた製品が得られる。バインダー繊維は、各種繊維の接着に好適に用いられる。主体となる被接着繊維としては、特に限定されるものではないが、例えば、ガラス繊維や炭素繊維をはじめ、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、アクリルおよびポリオレフィン等の合成繊維、また、植物繊維等が挙げられる。バインダー繊維を構成するポリ乳酸は、低温熱処理でも十分なバインド力が得られるように、低融点側に制御した共重合ポリ乳酸としても良い。また、その場合、主体となる被接着繊維としては共重合率のより低いポリ乳酸繊維を用いることもできる。
【0057】
本発明のポリ乳酸短繊維をバインダー繊維として用いた繊維構造体は、紙、不織布、クッション材、熱圧成形ボードおよび紡績糸等が好適であり、農林水産資材、土木建築資材、寝装資材、生活資材、自動車用資材および衣料資材等として用いることができる。
【0058】
【実施例】
以下、本発明のポリ乳酸短繊維とそれからなる繊維構造体について、実施例を用いて詳細に説明する。なお、実施例中における特性の測定方法としては、以下の方法を用いた。
【0059】
A.重量平均分子量
島津製作所社製のゲルパーミエーションクロマトグラフィー「島津LC−10AD」を用いて、ポリスチレンを標準として測定した。
【0060】
B.強度、伸度、沸収、捲縮数および捲縮率
JIS L 1015に準拠した。
【0061】
C.繊維の色調(b*値)
カットする前の繊維サンプルを透明プレートに、下地の色がほぼ無視できる程度まで密に積層して巻き付け、ミノルタ社製「スペクトロフォトメーターCM−3700d」を用いて測定した。このとき、光源としてはD65(色温度6504K)を用い、10°視野で測定を行った。
【0062】
D.嵩高性、圧縮率および回復率
JIS L 1097に準拠した。
【0063】
E.滑り性
原綿を手で解した時の解れ易さを次の指標で評価した。
◎:極めて容易に解れる
○:容易に解れる
△:やや解れにくい。
×:かなり解れにくい。
【0064】
F.紡績糸の実測U%
計算機工業社製「KET80B」を用いて、コットンモードで測定した。
【0065】
G.紡績糸の理論U%
下記式よって算出した。
理論U%=80/(n)1/2(ただし、n:構成繊維本数(=総繊度/単糸繊度))
H.紡績糸のI係数
下記式によって算出した。
I係数=実測U%/理論U%。
【0066】
I.紡績糸の強度
JIS L 1095に準拠した。
【0067】
J.紡績糸の品位
撚り斑、毛羽の状態から次の指標で目視評価した。
○:撚り斑、毛羽が少なく、良好な品位
△:撚り斑、毛羽が少しあり、まずまずの品位
×:より斑、毛羽が多くあり、品位が悪い
K.不織布の引張強力
JIS L 1096に準拠し、また、経方向と緯方向の平均値とした。
【0068】
L.曲げ強さ
JIS K 7062に準拠した。
【0069】
[製造例1](ポリ乳酸の製造)
光学純度99.5%のL乳酸から製造したラクチドを、ビス(2−エチルヘキサノエート)スズ触媒(ラクチド対触媒モル比=10000:1)存在下にチッソ雰囲気下180℃で140分間重合を行い、ポリ乳酸P1を得た。得られたポリ乳酸の重量平均分子量は13.5万であった。
【0070】
[製造例2](EBAを4wt%含有したポリ乳酸の製造)
ポリ乳酸P1とエチレンビスステアリン酸アミド(EBA)[日本油脂社製商品名「アルフローH−50S」]を乾燥した後、P1:EBA=96:4(重量比)となるように加熱溶融したEBAを計量して連続的にP1に添加しながら、シリンダー温度220℃の2軸混練押し出し機に供することで、EBAを4wt%含有したポリ乳酸P2を得た。
【0071】
[製造例3](SSを4wt%含有したポリ乳酸の製造)
製造例2のEBAを、アルキル置換型モノアミドのN−ステアリルステアリン酸アミド(SS)[日本化成社製商品名「ニッカアマイドS」]に変えたこと以外は、製造例2と同様にして、SSを4wt%含有したポリ乳酸P3を得た。
【0072】
[製造例4](SAを4wt%含有したポリ乳酸の製造)
製造例2のEBAを、モノアミドのステアリン酸アミド(SA)[日本油脂社製商品名「アルフローS−10」]に変えたこと以外は、製造例2と同様にして、SAを4wt%含有したポリ乳酸P4を得た。
【0073】
[製造例5](EBAを7wt%含有したポリ乳酸の製造)
ポリ乳酸P1とエチレンビスステアリン酸アミド(EBA)[日本油脂社製商品名「アルフローH−50S」]を乾燥した後、P1:EBA=93:7(重量比)となるように加熱溶融したEBAを計量して連続的にP1に添加しながら、シリンダー温度220℃の2軸混練押し出し機に供することで、EBAを7wt%含有したポリ乳酸P5を得た。
【0074】
(実施例1)
重量比でポリ乳酸P1:ポリ乳酸P2=75:25となるようにチップブレンド(EBAは1wt%)し紡糸機ホッパーに仕込み、エクストルーダー型紡糸機で220℃にて溶融し、360ホールを有する口金から吐出量173g/分で紡出し、紡糸速度1000m/分で引き取った。同様に紡糸した複数の糸条を合糸し、キャンに受けた。そして、この未延伸糸をさらに合糸して70万dtexのトウとし、70℃の水槽中で3.2倍に延伸した後、スタッファーボックスで機械捲縮(ニップ圧1.2kg/cm2、押し込み圧0.7kg/cm2)を付与した。次いで、140℃でリラックス熱処理を行い、油剤を付与した後カットし、単繊維繊度1.5dtex、繊維長38mmのポリ乳酸短繊維SF1を得た。このポリ乳酸短繊維の特性は表1に示すとおり、強度3.9cN/dtex、伸度38%、沸収8%、b*値1.2と良好な糸物性を示し、また、捲縮数10山/25mm、捲縮率25%と良好な捲縮特性を示した。この短繊維には、ポリ乳酸特有のキシミ感がなく、それとは逆にヌメリ感が存在し、原綿を手で数回揉むと容易に解れるような優れた滑り性を有していた。
【0075】
(実施例2)
EBAの重量比が2wt%となるようにポリ乳酸P1とポリ乳酸P2のブレンド比を変更し、繊維の断面形状を中空(中空率25%)に、また口金を185ホールに、吐出量を355g/分に変更し、カット長を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリ乳酸短繊維SF2を得た。得られたポリ乳酸短繊維は表1のとおり、良好な糸物性と捲縮特性を示した。また、この原綿は滑り性と軽量感の両方を満たすものであった。
【0076】
(実施例3,4)
EBAの重量比が4,0.3wt%となるようにポリ乳酸P1とポリ乳酸P2のブレンド比を変更し、また、実施例3では、吐出量を346g/分、カット長を51mmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリ乳酸短繊維SF3とポリ乳酸短繊維SF4を得た。得られた短繊維は表1の通り、いずれも良好な糸物性と捲縮特性を示した。滑り性は、ポリ乳酸短繊維SF3は極めて良好であり、ポリ乳酸短繊維SF4はSF1に比べると少し不足するものであった。
【0077】
(実施例5)
ポリ乳酸P2の代わりにポリ乳酸P3を用いたこと(SSは1wt%)以外は、実施例1と同様にして、ポリ乳酸短繊維SF5を得た。得られたポリ乳酸短繊維は表1のとおり、良好な糸物性と捲縮特性を示した。また、滑り性も良好であった。
【0078】
(比較例1)
ポリ乳酸P1(ポリ乳酸のみからなる)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ポリ乳酸短繊維SF6を得た。得られたポリ乳酸短繊維は表1のとおり、良好な糸物性と捲縮特性を示したが、捲縮斑が多く、またポリ乳酸独特のキシミ感が強く、滑り性に劣るものであった。
【0079】
(比較例2)
ポリ乳酸P1(ポリ乳酸のみからなる)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、ポリ乳酸短繊維SF7を得た。得られたポリ乳酸短繊維は表1のとおり、良好な糸物性と捲縮特性を示したが、捲縮斑が多く、またポリ乳酸独特のキシミ感が強く、滑り性に劣るものであった。
【0080】
(比較例3)
ポリ乳酸P1(ポリ乳酸のみからなる)を用いたこと以外は、実施例3と同様にして、ポリ乳酸短繊維SF8を得た。得られたポリ乳酸短繊維は表1のとおり、良好な糸物性を示したが、良好な糸物性と捲縮特性を示したが、捲縮斑が多く、またポリ乳酸独特のキシミ感が強く、滑り性に劣るものであった。
【0081】
(比較例4)
EBAの重量比が0.05wt%となるようにポリ乳酸P1とポリ乳酸P2のブレンド比を変更したこと以外は実施例1と同様にして、ポリ乳酸短繊維SF9を得た。得られたポリ乳酸短繊維は表1のとおりであり、滑り性が不十分なものであった。
【0082】
(比較例5)
ポリ乳酸P5のみ(EBAは7w%)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、短繊維SF10を得た。得られた短繊維は表1のとおりであり、b*値が高く、黄ばんだような色相であった。
【0083】
(比較例6)
ポリ乳酸P2の代わりにポリ乳酸P4を用いたこと(SAは1wt%)以外は、実施例1と同様にして、ポリ乳酸短繊維SF11を得た。得られたポリ乳酸短繊維は表1のとおりであり、強度が不十分であり、またポリ乳酸独特のキシミ感が強く、滑り性に劣るものであった。また、b*値が高く、黄ばんだような色相であった。脂肪酸モノアミドであるSAは、滑り性の効果が少ない上に、強度低下と黄色着色を引き起こすことがわかった。
【0084】
【表1】
【0085】
(実施例6)
ポリ乳酸短繊維SF1のみからなるスライバーを練篠機に供給し、さらに粗紡機にてダブリングとドラフトを施して撚り数0.8回/2.54cmの粗糸を得た。次いで、この粗糸を精紡機に供給し、ドラフト率35倍と撚り数25回/2.54cmを施して、40番手(英国式綿番手)の紡績糸を得た。この紡績糸は表2に示すとおり、I係数が1.1と太さ斑が非常に少なく、強度も2.1cN/dtexと高いものであった。また、撚り斑や毛羽なども少なく、加工斑がなく良好な品位の紡績糸であった。さらに、この紡績糸を用いて、常法に従い、製編(丸編み)、染色加工(分散染料使用)および縫製を施し、シャツを作製した。得られたシャツは、染色斑やいらつき感がなく、良好な外観を示すとともに、1か月間の着用による耐久テストにおいても、毛羽立ちや白化、テカリが無く、優れた製品耐久性を示した。
【0086】
(実施例7)
ポリ乳酸短繊維SF1のみからなるスライバーと、ポリ乳酸短繊維SF1と単位長さ当たり同重量の綿繊維のみからなるスライバーを、同時に同一練篠機に供給し、スライバー混合したこと以外は、実施例6と同様にして、綿繊維の含有率50wt%の紡績糸を得た。この紡績糸は、表2に示すとおり、太さ斑、強度および品位いずれも良好であった。さらに、この紡績糸を用いて、常法に従い、製編(丸編み)、染色加工(同一色相の分散染料と反応染料を使用)および縫製を施し、シャツを作製した。得られたシャツは、いらつき感はなく、混紡糸特有の自然感のある染色斑が存在し、良好な外観を示すとともに、1か月間の着用による耐久テストにおいても、毛羽立ちや白化、テカリが無く、優れた製品耐久性を示した。
【0087】
(比較例7)
ポリ乳酸短繊維SF1の代わりにポリ乳酸短繊維SF6を用いたこと以外は、実施例6と同様にして、紡績糸を得た。この紡績糸は、表2に示すとおり、太さ斑、強度、品位いずれも物足りないものであった。さらに、この紡績糸を用いたシャツは、染色斑が多く、また、いらつき感が存在するものであった。また、1か月間の着用による耐久テストでは、毛羽立ちや白化、テカリが発生し、製品耐久性に劣るものであった。
【0088】
(比較例8)
ポリ乳酸短繊維SF1の代わりにポリ乳酸短繊維SF11を用いたこと以外は、実施例6と同様にして、紡績糸を得た。この紡績糸は、表2に示すとおり、太さ斑、強度および品位いずれも物足りないものであった。さらに、この紡績糸を用いたシャツは、染色斑が多く、また、いらつき感が存在するものであった。また、1か月間の着用による耐久テストでは、毛羽立ちや白化、テカリが発生し、製品耐久性に劣るものであった。
【0089】
【表2】
【0090】
(実施例8)
ポリ乳酸短繊維SF3を原綿として用い、開繊機、パラレルカード機を通して目付50g/m2のウエブを作製した。次いで、このウエブを熱風循環型連続式乾燥機の中に通して、170℃、60秒の条件で熱処理して不織布を得た。得られた不織布は、引張強度が14.2kg/5cmと良好な不織布物性を示すとともに、繊維の密度斑が極めて少なく、良好な製品品位を示すものであった。
【0091】
(比較例9)
ポリ乳酸短繊維SF3の代わりにポリ乳酸短繊維SF8を用いたこと以外は、実施例8と同様にして、不織布を得た。この不織布は、引張強度が11.3kg/5cmと実施例8に比べて劣り、また、繊維の密度斑が大きく、製品品位に劣るものであった。工程サンプルであるウエブを観察すると、原綿が解れていない部分が多く存在することから、不織布の引張強度の弱さと密度斑は、この原綿の開繊性不良によるものと示唆された。
【0092】
(実施例9)
ポリ乳酸短繊維SF2を中入れ綿として布団を作製した。この中入れ綿は、軽量感が存在するとともに、嵩高性85cm3/g、圧縮率55%、回復率93%と非常に嵩高性に優れるものであった。また、布団カバー内での短繊維の分散性が良く、綿の粗密斑が極めて少ない、高品位な製品特性を示すものであった。
【0093】
(比較例10)
中入れ綿として、ポリ乳酸短繊維SF2の代わりにポリ乳酸短繊維SF7を用いたこと以外は実施例9と同様にして布団を作製した。この中入れ綿は、軽量感は存在するが、嵩高性47cm3/g、圧縮率63%、回復率68%と嵩高性に劣るものであった。また、この中入れ綿は、実施例9の中入れ綿に比べて弾力感がなく、硬い触感であった。さらに、この中入れ綿は、布団カバー内での短繊維の分散性が悪く、綿の粗密斑が発生し、品位に劣ったものであった。
【0094】
(実施例10)
バインダー繊維としてポリ乳酸短繊維SF3を50wt%、主体繊維として平均繊維長51mmにカットした麻繊維50wt%を混綿機にて混合した後、加熱溶融し圧縮成形することによりボードを作製した。このボードの曲げ強さは115J/mと良好な物性を示した。
【0095】
(比較例11)
バインダー繊維として、ポリ乳酸短繊維SF3の代わりにポリ乳酸短繊維SF8を用いたこと以外は、実施例10と同様にしてボードを作製した。このボードの曲げ強さは78J/mと実施例10のボードに比べて物足りない物性であった。
【0096】
【発明の効果】
本発明によれば、、滑り性に優れたポリ乳酸短繊維およびそれからなる繊維構造体を提供することができ、ポリ乳酸繊維の用途展開幅を大きく拡大することができる。繊維構造体としては、紡績糸、不織布および中入れ綿等が好適である。また、本発明のポリ乳酸短繊維は滑り性に優れているため、これを他素材のバインダー繊維として用いた場合、分散性がよく均等な接着性を得ることができ接着性が向上する。
Claims (7)
- ポリ乳酸からなる短繊維であって、脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミドを繊維全体に対して0.1〜5wt%含有することを特徴とするポリ乳酸短繊維。
- 捲縮数6山/25mm以上、捲縮率10%以上であることを特徴とする請求項1記載のポリ乳酸短繊維。
- 請求項1または2記載のポリ乳酸短繊維を少なくとも一部に用いてなる繊維構造体。
- 紡績糸として用いることを特徴とする請求項3記載の繊維構造体。
- 不織布として用いることを特徴とする請求項3記載の繊維構造体。
- 中入れ綿として用いることを特徴とする請求項3記載の繊維構造体。
- 請求項1または2記載のポリ乳酸短繊維をバインダー繊維として用いることを特徴とする繊維構造体。
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2002
- 2002-12-26 JP JP2002377242A patent/JP2004204406A/ja not_active Withdrawn
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