JP2004207231A - 燃料電池用電解質膜―電極接合体およびこれを用いた燃料電池の運転方法 - Google Patents

燃料電池用電解質膜―電極接合体およびこれを用いた燃料電池の運転方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 高分子電解質型燃料電池のガス拡散層基材として用いる炭素繊維不織布に関して、表面を平滑化し、さらに撥水層形成用塗料の不均一な染み込みが抑制されるように最適化することにより、高加湿運転に適した電解質膜−電極接合体を提供する。
【解決手段】 高分子電解質膜および前記高分子電解質膜を挟む一対の電極からなり、前記電極が前記高分子電解質膜に接する触媒層および前記触媒層に接する撥水層を有するガス拡散層からなる電解質膜−電極接合体において、前記ガス拡散層の基材に、電子伝導性炭素繊維からなる縦糸および横糸で織った布状炭素繊維織布を用い、前記縦糸および横糸の交点に開口を形成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、プロトン伝導性高分子電解質膜を用いる高分子電解質型燃料電池の電解質膜―電極接合体、およびこの電解質膜―電極接合体を用いた燃料電池の運転方法に関するものである。
一般的に高分子電解質型燃料電池(以下、PEFCで表す)の電解質膜―電極接合体(以下、MEAで表す)は、高分子電解質膜および高分子電解質膜を挟む一対の電極からなっている。これら電極は高分子電解質膜に接する触媒層、および触媒層に接する撥水層を有するガス拡散層からなっている。MEAをその外側の両面からガス流路を備えたセパレータ板により挟持し、ガスリークを防ぐためのシール材と共に一定の圧力により締結してPEFCの単電池が構成される。
セパレータ板には反応ガス(燃料ガスまたは酸化剤ガス)の供給口から排出口へかけて溝(ガス流路)が形成され、そのガス流路を反応ガスが流れる仕組みになっている。ガス拡散層に求められる機能は、ガス流路を通じて供給される反応ガスを拡散させて触媒層の全面に隈なく供給することである。さらにガス拡散層の機能としては、PEFC作動時の反応でカソード側触媒層に生成した水によって反応ガスの拡散性が阻害されないように、余剰水を排出させることが重要である。つまり、生成水をガス拡散層内の細孔に滞ることなく通過させ、セパレータ板のガス流路まで円滑に到達させることがガス拡散層の重要な機能である。そしてガス拡散層は、セパレータ板のガス流路の両側に形成されている凸部(リブ)と接してセパレータ板と電気的に導通しており、MEAで発生する電流をセパレータ板に導電する役割をもっている。
一般的に、触媒層と接する側のガス拡散層には撥水層が形成されており、撥水層の撥水材としてフッ素系樹脂が用いられている。撥水層には撥水材とともにカーボンなどの導電性材料が含まれている。従来の一般的な技術では、ガス拡散層の基材を多孔質構造とすることでガス拡散能力を確保し、撥水層をガス拡散層に形成することで、水の透過能力を制御し、さらに、炭素繊維、金属繊維などからなる電子導電性材料をガス拡散層の基材として用いることで電子導電性を確保している。一般的なガス拡散層の基材としては、カーボンペーパ、カーボンフェルトおよび炭素繊維織布などが用いられている。
カーボンペーパおよびカーボンフェルトには、目付け重量や厚みによるガス拡散性や水透過性などの特性の差はあるが、ランダムに配置された炭素繊維で構成されているため、繊維の配置の差による上記の特性の差は少ない。一方、炭素繊維織布は炭素繊維が規則正しく配置するように織られているため、目付け重量や厚み以外に、炭素繊維織布の織り方が上記特性の重要な支配因子となる。つまり、カーボンペーパおよびカーボンフェルトと異なり、炭素繊維織布は、織り方によってガス拡散層基材として最適な特性を有する材料が得られる可能性がある反面、織り方によってはその逆の結果に陥り易いという特異性を備えている。しかし、このような炭素繊維織布の特異性を活用すれば、ガス拡散層基材用として最適な特性にコントロールできる可能性がある。
通常のガス拡散層は、基材の片面に、例えばカーボンブラックとフッ素樹脂を水に分散させた撥水層形成用塗料を塗布して撥水性導電層(以下、撥水層で表す)を形成することにより作製される。この場合、前記塗料の性状およびこれを基材に塗布する方法以外に、基材表面の性状により撥水層の形成状態は大きく支配される。
この撥水層に必要な撥水性は燃料電池の運転条件によっても異なり、高加湿条件で運転されるときは触媒層に接するガス拡散層の最表面部の撥水性はあまり高くない方が好ましく、逆に、低加湿条件で運転されるときは上記の撥水性は高い方が好ましい。つまり、触媒層と接する側のガス拡散層の最表面部の撥水性が強い場合には、高分子電解質膜が十分加湿された状態においても、水を電極の内部に閉じ込める作用が強く働く。
外部から多量の水分を供給する高加湿運転時には、水を閉じ込める効果を余り必要としないため上記の撥水性は低くてよい。一方、外部から供給される水分が少ない低加湿運転では上記の撥水性を高めることが好ましい。特に高加湿条件で運転する場合には、上記の最表面部の撥水性の強弱をコントロールする以外に、ガス拡散層の触媒層に接する側の最表面部からセパレータ板に接する側にかけて、撥水性が連続的な傾斜をもって減衰するような撥水層(以下、均一な撥水層で表す)を形成することが重要である。これによって、運転時の電池反応により生成し続ける余剰の水をガス拡散層内の細孔に滞留させることなく、円滑にガス流路側に排出することができる。
撥水層の撥水性を変化させる方法としては、撥水層中のカーボンブラックとフッ素樹脂の重量比率を変化させる方法、および前記の重量比率は同じにして撥水層の厚みや撥水層形成用塗料の塗着量を変化させる方法が一般的に行われている。しかし、これらの場合に、炭素繊維織布に直接的に撥水層形成用塗料を塗布すると、基材の繊維密度が低い部位に優先的に塗料が染み込むため、均一に塗料を塗布することが困難である。
このような塗料の不均一な染み込みが発生すると、ガス拡散層の内部に撥水性が強い部位と弱い部位がランダムに散在する不均一な撥水層が形成される。撥水性が強い部位の間の隙間には水分が取り込まれ易く、取り込まれた水分は容易には排出されない。つまり、上記のような塗料の不均一な染み込みが発生すると、均一な撥水層が形成できず、余剰の水を効率良く排出することができなくなる。このように、基材への塗料の不均一な染み込みは、ガス拡散層の水分透過能力を著しく阻害するので、特に高加湿条件で運転する燃料電池では、これを抑制して均一な撥水層を形成することは重要な課題である。
その対策として、予め他のシートに塗料を塗布して形成した撥水層をカーボン製のガス拡散層基材に転写する方法が検討されている。しかし、この転写法は加工工数が増えるという難点がある。また、適度な高粘度に調製された撥水層形成用塗料を用いて前記の染み込みを抑制することも検討されているが、充分な抑制効果が得られない。
さらに、ガス拡散層基材として用いる従来の炭素繊維織布には、その表面に段差が大きい凹凸部が存在するため、触媒層とガス拡散層との接合部に多数の隙間が形成され、PEFCの運転時にその隙間に水が滞留して、水分の排出性が低下するという問題がある。以上のように、高加湿条件で運転するPEFCにおいて、炭素繊維織布をガス拡散層の基材として用いることにより、ガス拡散層基材用として最適な特性にコントロールできる可能性があるにも拘らず、その最適化が行われていないのが現状である。
本発明は、上記従来のPEFCにおける特にガス拡散層における問題を解決するために、ガス拡散層基材として用いる炭素繊維織布を、その表面を平滑化し、さらに撥水層形成用塗料の不均一な染み込みが抑制された均一な撥水層を形成できるように最適化し、これにより高加湿運転に適したMEAを提供することを目的とする。
本発明の燃料電池用電解質膜−電極接合体は、高分子電解質膜および前記高分子電解質膜を挟む一対の電極からなり、前記電極が前記高分子電解質膜に接する触媒層および前記触媒層に接する撥水層を有するガス拡散層からなり、前記ガス拡散層の基材が、電子伝導性炭素繊維からなる縦糸および横糸で織った布状炭素繊維織布であり、前記縦糸および横糸の交点の間またはその近傍に開口が形成されていることを特徴とする。
前記炭素繊維織布の縦糸密度をZ本/cm、横糸密度をW本/cm、縦糸の太さをXmm、および横糸の太さをYmmとした場合に、1/1500≦(10/W−Y)((10/Z−X)/XY≦1/5の関係を満たすのが好ましい。
炭素繊維織布の厚さは、0.05〜0.30mmの範囲にあることが好ましい。炭素繊維織布の密度は、0.32〜0.42g/ccの範囲にあることが好ましい。さらに、炭素繊維織布の縦糸密度および横糸密度のいずれか一方が16〜45本/cmの範囲にあり,かつ他方が12〜40本/cmの範囲にあることが好ましい。
本発明の燃料電池の運転方法は、上記本発明による燃料電池用電解質膜−電極接合体を具備し、かつ、加湿した燃料ガスをアノードに供給し、加湿した酸化剤ガスをカソードに供給して発電させる燃料電池の運転方法であって、燃料ガスの露点および酸化剤ガスの露点を、電解質膜−電極接合体の運転時の温度に対して同一温度あるいは5℃以内の範囲内で低い温度にコントロールして運転することを特徴とするものである。
本発明により、高加湿運転での耐フラッディング特性にすぐれ、かつ、高い作動電圧が得られる高分子電解質型燃料電池用電解質膜−電極接合体を提供することができる。
本発明は、PEFCのガス拡散層の基材として用いる炭素繊維織布の表面状態および炭素繊維織布に対する撥水層形成用塗料の塗布状態を最適化できるように、炭素繊維織布の織物組織を制御することにより、高加湿運転に適したMEAの提供を可能にしたものである。
本発明における前記ガス拡散層の基材は、電子伝導性炭素繊維からなる縦糸および横糸で織った布状炭素繊維織布であり、前記縦糸および横糸の交点に開口が形成されていることを特徴とする。そして、前記炭素繊維織布は、縦糸密度をZ本/cm、横糸密度をW本/cm、縦糸の太さをXmm、および横糸の太さをYmmとした場合に、1/1500≦(10/W−Y)(10/Z−X)/XY≦1/5の関係を満たすことを特徴とする。
上記の関係式において、XYmm2は縦糸と横糸が交わっている部分(以下、交錯部分で表す)の面積に相当し、(10/W−Y)(10/Z−X)mm2は縦糸と横糸のいずれもが存在しない開口(隙間)部分(以下、隙間部分で表す)の面積に相当する。即ち、本発明の炭素繊維織布は、縦糸と横糸との交点に開口を設け、交錯部分と隙間部分の面積比(10/W−Y)(10/Z−X)/XYが、1/1500以上で1/5以下であることを特徴とするものである。
本発明において、ガス拡散層の基材に用いる炭素繊維織布は炭素繊維の糸を構成材料としたもので、織物構造としては平織が最も一般的である。平織以外に、斜文織や朱子織の炭素繊維織布を用いることもできる。これらの炭素繊維織布においては、いずれも縦糸と横糸が規則的な幾何学的パターンで組み合わされている。つまり炭素繊維織布は、並行に配列された1群の炭素繊維糸(縦糸あるいは横糸)の方向に対して、これらの炭素繊維糸に直角の方向に第2群に属する炭素繊維糸(横糸あるいは縦糸)を所定の方式で順次組み合わせたものである。この際、第2群の炭素繊維糸も相互に並行関係を保つようにして布が構成される。
次に、平織の炭素繊維織布を例にとって、炭素繊維織布の織物組織を説明する。図1は平織の炭素繊維織布の平面図であり、等間隔で配列された縦糸1に直角方向に横糸2が等間隔で交錯している。炭素繊維織布の縦糸1および横糸2は、単独の糸からなる単糸である場合以外に、2本の糸からなる双糸など複数の糸からなる場合がある。従って、縦糸1あるいは横糸2の断面は必ずしも円形ではないので、本発明においては、縦糸の太さおよび横糸の太さは、便宜上、炭素繊維織布の平面図から見た縦糸の幅および横糸の幅を表すものとする。
本発明における炭素繊維織布では、縦糸1と横糸2が交わっている交錯部分3の面積に対して、縦糸1と横糸2のいずれもが存在しない隙間部分4の面積を1/1500〜1/5という比率で圧倒的に小さくすることにより、撥水層形成用塗料を炭素繊維織布に塗布した際に、隙間部分4からの優先的な塗料の染み込みが抑制され、均一な撥水層を形成できる。これにより、撥水能が触媒層に接する側の表面からガス流路側の表面にかけてなだらかな傾斜で減衰する特性を有するガス拡散層が得られる。このガス拡散層を備えたMEAを用いることにより、高加湿運転時においても、ガス拡散層中の細孔に水を取り込ませることなく、余剰水を円滑にガス流路に排出することができる。
従来からの問題点として、複数のMEAを積層し、これを締結してPEFCを構成する際、構成部材間の接触抵抗を低くするために締結圧力を高めると構成部材にたわみが生じる。そのため、ガスがリークしない範囲内で締結圧力を低く抑える必要がある。締結圧力が低いと、触媒層とガス拡散層の界面に基材の凹凸に沿った隙間が生じて水が滞留し易く、余剰水がMEAの外部に排出されない。
本発明により炭素繊維織布の交錯部分3の面積比率を多くすることで、表面の凸部と凹部の段差が少なくなり、表面が平滑化される。これにより上記の問題が解決される。即ち、本発明における炭素繊維織布は、厚みが大きい交錯部分3が厚みが小さい隙間部分4より5〜1500倍も多いために、表面の凹部と凸部の段差が小さくなっている。この炭素繊維織布を用いることで上記の触媒層とガス拡散層の界面での隙間の形成が抑止され、余剰水が滞留する問題が解消される。
以上のように、表面状態が平滑な炭素繊維織布に均一な撥水層が形成されたガス拡散層を備えた本発明によるMEAを用いたPEFCでは、特にガス拡散層の余剰水排出能力が必要となる高加湿運転において、高い性能を発揮することができる。
ガス拡散層基材としての炭素繊維織布において、交錯部分に対する隙間部分の面積比が1/5を超えると、表面の平滑性が不充分となり、さらに不均一な塗料の染み込みを充分に抑制することができなくなる。また、前記の面積比が1/1500未満の場合には、ガス拡散層内の空隙が不足して、ガス拡散能力および水分透過能力が不充分となる。
本発明のMEAに用いる炭素繊維織布は、その厚みが0.05〜0.30mmの範囲にあることが好ましく、0.05〜0.20mmの範囲にあることがさらに好ましい。炭素繊維織布の厚みを小さくすることにより、炭素繊維織布の表面の凹部と凸部の段差をより小さくし、平滑化することができる。これにより、ガス拡散層と触媒層との接合部の水の滞留を一層効果的に防止することができ、高加湿運転でのフラッディング現象の発生を一層効果的に阻止できるMEAを提供することが可能となる。
炭素繊維織布を薄くするほどガス拡散層中の空隙体積が小さくなり、ガス拡散層中の水の滞留量が少くなるので、これを容易に排出することができる。しかし、0.05mmよりも薄い炭素繊維織布は、取り扱いが困難であったり、原料の炭素繊維糸の引張強度が不十分なため織布できない場合が多い。一方、0.30mmよりも厚い炭素繊維織布は、表面の凹部と凸部の段差が大きくなることにより、ガス拡散層と触媒層との接合部に水が滞留するという弊害が生じやすい。
本発明のMEAに用いる炭素繊維織布は、その密度が0.32〜0.42g/ccの範囲にあることが好ましい。炭素繊維織布の繊維の密度を低く抑えることにより、燃料電池スタックを締結する時の圧力により炭素繊維織布が圧縮されて平滑化され易くなる。
このように、炭素繊維織布が圧縮されて平滑化されると、その表面の凹部と凸部の段差がより小さくなり、ガス拡散層と触媒層の接合部に水が滞留する隙間をなくすことができる。その結果、高加湿運転でのフラッディング現象の発生をより一層効果的に阻止できるMEAを提供することが可能となる。炭素繊維織布の密度は低いほど上記の効果は大きいが、炭素繊維織布の密度が0.32g/cc未満では炭素繊維織布の機械的強度が不十分なために、MEAを製造する際の取り扱いが困難となる。一方、炭素繊維織布の密度が0.42g/ccを超えると前記の締結時の圧力により炭素繊維織布が充分に平滑化されず、上記の効果を充分には得ることができない。
本発明のMEAに用いる炭素繊維織布は、その縦糸密度および横糸密度のいずれか一方が16〜45本/cmの範囲にあり、かつ、他方が12〜40本/cmの範囲にあることが好ましい。糸密度(単位長さあるいは幅当たりの炭素繊維織布の糸の本数)を高めることで、1本の糸あたりの太さが細くなるので、交錯部分の厚みを小さくすることが可能となり、炭素繊維織布の表面の凹部と凸部の段差を小さくできる。これにより、炭素繊維織布の表面が一層平滑になり、しかも均一な撥水層の形成が可能となる。
また、糸密度を高めることで、炭素繊維織布の隙間部分を多数存在させ、かつ個々の隙間部分の面積を小さくすることができる。これにより、余剰水をガス拡散層を通して円滑にMEA外部に排出させるため、あるいはガス拡散層内で反応ガスを拡散させるために適した微細な空間を多数形成することができる。これらの効果により、高加湿運転での余剰水の排出が円滑に行われ、フラッディング現象の発生をより一層効果的に阻止できるMEAを提供することができる。
炭素繊維織布の縦糸密度と横糸密度は高い方が上記の効果は顕著に得られるが、上記の好ましい密度を超える場合には、糸が細くなりすぎるため、炭素繊維織布の作製および炭素繊維織布の取り扱いが困難である。一方、糸密度が上記の好ましい密度より少ない場合には、糸が太くなりすぎるため、炭素繊維織布の表面の凹部と凸部の段差が大きくなる。この炭素繊維織布を用いてMEAを作製すると、触媒層とガス拡散層との接合部に水が滞留する隙間が生じやすい。
撥水層に含ませる撥水材としては、耐熱性、耐酸性、耐薬品性に優れていることから、ポリ4フッ化エチレン(PTFE)などのフッ素系樹脂が一般的に用いられるが、シリコーン系やその他の長期にわたる撥水性が確保できる撥水材を用いることもできる。撥水層は、集電体として機能するガス拡散層の片側に形成される層なので、導電性を有することが必要であるため、撥水層には導電性材料を含ませる必要がある。
導電性材料としては、耐酸性に優れていることから、カーボンが一般的に用いられ、その中でも撥水性が強いアセチレンブラックが主に用いられる。しかし、撥水性が強いカーボンは逆に塗料化が難しいため、撥水材との組合せによっては親水性カーボンであるケッチェンブラックなどが好ましい場合もある。その他の導電性材料として金属材料を用いることもできる。撥水層の一般的な形成方法は、上記の撥水材と導電性材料を水などの分散媒に分散させて調製した撥水層形成用塗料を直接に炭素繊維織布の片側に塗布する方法である。その塗布方法は、スプレー法、スピンコート、ドクターブレード、スクリーン印刷、コータ塗布、およびグラビア印刷などのいずれであってもよい。
セパレータ板に形成されるガス流路としては、入口から出口に向かって複数の直線パスが一方向に平行に施されたストレートタイプ、および、単数もしくは複数のパスが蛇腹状に施されたサーペンタインタイプなどがある。ガス流路の形態は、さらにアノード側とカソード側のガスの流れ方向の相違により、直交型、対向型および並行型に分けられる。本発明は、上記のいずれのガス流路を有するPEFCにも有効に適用することができる。
本発明の燃料電池の運転方法は、上記本発明によるMEAおよびその外側に接するガス流路を有する一対のセパレータ板を具備したPEFCの運転方法であって、燃料ガスの露点、酸化剤ガスの露点、およびMEAの運転時の温度を所定の温度範囲でコントロールして運転するものである。
本発明によるMEAは、前記のように表面が平滑な炭素繊維織布に撥水層形成用塗料の不均一な染み込みが無い均一な撥水層が形成されたガス拡散層を備えているので、PEFCの高加湿運転時に必要とされる余剰水の排出能力およびガス拡散能力を充分に備えている。従って、このMEAを備えたPEFCは、最も典型的な高加湿条件での運転、即ちアノードに供給する燃料ガスの露点温度、カソードに供給する酸化剤ガスの露点温度、およびMEAの運転時の温度が等しくなるようにコントロールされて運転される場合に、特に優れた性能を発揮することができる。その場合に燃料ガスの露点および酸化剤ガスの露点を、電解質膜−電極接合体の運転時の温度に対して5℃以内の範囲内で低い温度にコントロールして運転することにより、実質的には三者の温度を等しくした場合に準じた優れた性能を得ることができる。
次に、本発明を実施例により具体的に説明する。各実施例および各比較例においては、いずれも下記の方法で単電池を作製した。それらの単電池の代表図を図2に示す。各実施例および各比較例毎に定めた平織の炭素繊維織布の片面に撥水層形成用塗料をドクターブレードを用いて塗布した。撥水層形成用塗料は、アセチレンブラック(AB)と水を重量比1:4で混合し、これに界面活性剤を少量加えて混練した後、PTFE固形分とABの重量比が1:7になるようPTFEの分散液(ダイキン工業(株)製:D1)を添加して調製した。この塗料を片面に塗布した炭素繊維織布を約100℃で1時間乾燥し、さらに約270℃で1時間焼成して炭素繊維織布に撥水層が形成されたガス拡散層13を作製した。
一方では、パーフルオロスルホン酸樹脂からなる高分子電解質膜11(米国デュポン社製:Nafion112)の両面に、周縁部を残して触媒層12を転写法により接合した。次いで、それぞれの触媒層12の外側に撥水層側が接するように、ガス拡散層13をそれぞれの触媒層12に接合してMEA15を作製した。高分子電解質膜11に転写した触媒層12は、触媒用ペーストを樹脂シートに塗布し乾燥して形成した。MEAの触媒層12の面積は25cm2とした。触媒用ペーストは、炭素微粉末(ライオン(株)製:ケッチェンブラックEC)に白金触媒を1:1の重量比で担持させた触媒100重量部と、エタノールに分散させたパーフルオロスルホン酸樹脂80重量部を混合し、この混合物を水とエタノールの混合分散媒に投入し、攪拌して調製した。
次いで、このMEA15の周縁部の高分子電解質膜11の両面にガスケット18を配置し、これを100℃で5分間のホットプレスを行うことにより接合した。この接合体をその両面からカソード側およびアノード側のカーボン製セパレータ板17で挟み、セパレータ板17に形成されたリブ19に約7kgf/cm2の面圧力が加わるように締結し、PEFCの単電池を作製した。カソード側およびアノード側のセパレータ板17には、それぞれ断面積1.0cm2の3本の溝からなるサーペンタインタイプのガス流路16を備えている。
各実施例および各比較例において使用した炭素繊維織布の縦糸および横糸の太さは、15kVの加速電圧で撮った倍率100倍のSEM写真から計測した。1cm当たりの糸の本数(縦糸密度および横糸密度)は、25倍の顕微鏡写真から5cm当たりの糸の本数を計測し、その計測値から1cm当たりの平均値を算出した。目付け重量は炭素繊維織布を12cm×12cmに打ち抜き、その重量の測定値から算出し、密度は算出した目付け重量と炭素繊維織布の厚みから求めた。
《実施例1》
双糸からなる太さ0.480mmの縦糸と、双糸からなる太さ0.480mmの横糸により織布された炭素繊維織布をガス拡散層の基材として用いた単電池を作製した。この炭素繊維織布の縦糸密度は20.1本/cm、横糸密度は18.1本/cm、目付け重量は110g/m2、厚みは0.28mm、密度は0.393g/ccであった。
《実施例2》
双糸からなる太さ0.450mmの縦糸と、単糸からなる太さ0.450mmの横糸により織布された炭素繊維織布をガス拡散層の基材として用いた単電池を作製した。この炭素繊維織布の縦糸密度は17.7本/cm、横糸密度は15.4本/cm、目付け重量は105g/m2、厚みは0.29mm、密度は0.362g/ccであった。
《実施例3》
双糸からなる太さ0.445mmの縦糸と、双糸からなる太さ0.445mmの横糸により織布された炭素繊維織布をガス拡散層の基材として用いた単電池を作製した。この炭素繊維織布の縦糸密度は15.7本/cm、横糸密度は15.4本/cm、目付け重量は80g/m2、厚みは0.20mm、密度は0.400g/ccであった。
《実施例4》
双糸からなる太さ0.360mmの縦糸と、双糸からなる太さ0.360mmの横糸により織布された炭素繊維織布をガス拡散層の基材として用いた単電池を作製した。この炭素繊維織布の縦糸密度は23.6本/cm、横糸密度は22.0本/cm、目付け重量は115g/m2、厚みは0.29mm、密度は0.397g/ccであった。
《実施例5》
双糸からなる太さ0.465mmの縦糸と、双糸からなる太さ0.470mmの横糸により織布された炭素繊維織布をガス拡散層の基材として用いた単電池を作製した。この炭素繊維織布の縦糸密度は21.3本/cm、横糸密度は20.1本/cm、目付け重量は125g/m2、厚みは0.30mm、密度は0.417g/ccであった。
《比較例1》
双糸からなる太さ0.420mmの縦糸と、双糸からなる太さ0.420mmの横糸により織布された炭素繊維織布をガス拡散層の基材として用いた単電池を作製した。この炭素繊維織布の縦糸密度は15.7本/cm、横糸密度は15.7本/cm、目付け重量は114g/m2、厚みは0.30mm、密度は0.380g/ccであった。
《比較例2》
双糸からなる太さ0.470mmの縦糸と、双糸からなる太さ0.470mmの横糸により織布された炭素繊維織布をガス拡散層の基材として用いた単電池を作製した。この炭素繊維織布の縦糸密度は21.3本/cm、横糸密度は17.3本/cm、目付け重量は100g/m2、厚みは0.27mm、密度は0.370g/ccであった。
上記のように織り方を変えて作製した種々の炭素繊維織布を使用した実施例1〜5、比較例1および比較例2の各単電池を用いて下記の手順で各種の電池試験を行った。まず、アノードに露点が70℃となるように加温・加湿した燃料ガス(水素ガス)を、カソードに露点が70℃となるように加温・加湿した酸化剤ガス(空気)をそれぞれ供給し、MEAの運転時の温度70℃、水素ガス利用率70%、および空気利用率40%という条件下で電池試験1を実施した。次いで、空気利用率を40%から80%に変更し、電池試験2を実施した。
次いで、アノードに供給する水素ガスの露点67℃、カソードに供給する空気の露点70℃、MEAの運転時の温度70℃、燃料ガス利用率70%、および空気利用率40%という条件下で電池試験3を実施した。さらに、空気利用率を40%から80%に変更し、電池試験4を実施した。
次いで、アノードに供給する水素ガスの露点67℃、カソードに供給する空気の露点65℃、MEAの運転時の温度70℃、燃料ガス利用率70%、および空気利用率40%という条件下で電池試験5を実施した。さらに、空気利用率を40%から80%に変更し、電池試験6を実施した。
次いで、アノードに供給する水素ガスの露点65℃、カソードに供給する空気の露点65℃、MEAの運転時の温度70℃、燃料ガス利用率70%、および空気利用率40%という条件下で電池試験7を実施した。さらに、空気利用率を40%から80%に変更し、電池試験8を実施した。
次いで、アノードに供給する水素ガスの露点65℃、カソードに供給する空気の露点55℃、MEAの運転時の温度70℃、燃料ガス利用率70%、および空気利用率40%という条件下で電池試験9を実施した。さらに、空気利用率を40%から80%に変更し、電池試験10を実施した。運転時の電流密度は上記の電池試験1〜10のいずれにおいても0.3A/cm2とした。
表1に実施例1〜5、比較例1および比較例2で使用した炭素繊維織布の交錯部分と隙間部分の面積比(10/W−Y)(10/Z−X)/XYと電池試験1〜10でのそれぞれの作動電圧値を示す。表1においては、便宜上、前記の面積比を単に面積比で表す。
Figure 2004207231
反応ガスの加湿条件とMEAの運転時の温度を同一条件とし、空気の利用率を40%から80%に変更した場合の作動電圧の差(A−B,C−D、E−F、G−HおよびI−J)が正の値であることは、利用率40%での作動電圧が利用率80%での作動電圧よりも高いことであり、その値が小さいことは、カソードに供給する空気の利用率(流速)による電圧変動が小さく、運転時に安定した出力が得られることを示している。逆に前記の作動電圧の差が大きいことは、空気の流速により作動電圧が変動し易いことを示しており、同時に、空気の流速を下げればフラッディング気味の運転状態となり易いことを示している。また、前記の作動電圧の差が負の値であることは、流速を下げれば電圧値が上がることから、流速を上げた場合に若干乾燥気味の運転になることを示している。
表1から分かる通り、面積比(10/W−Y)(10/Z−X)/XYが1/1500から1/5の範囲にある炭素繊維織布を用いた実施例1〜5の単電池については、高加湿運転での余剰水の排出が円滑に行われるため、電池試験1〜8のいずれにおいても比較例1および2の単電池よりも高い作動電圧を示している。
一方、炭素繊維織布の面積比が上記の範囲外にある炭素繊維織布を用いた比較例1および比較例2の単電池は、電池試験1〜6のいずれにおいても実施例よりも作動電圧が低い上に、空気の利用率(流速)の差による作動電圧の差(A−B、C−DおよびE−F)も大きい。これは、カソードで生成される水が円滑に排出されず、フラッディングを引き起こしたことによるものと考えられる。
即ち、比較例1では、炭素繊維織布の隙間部分が多過ぎるため、均一な撥水層が形成されず、さらに表面の凹凸部の段差が大きいために、余剰水が円滑に排出されなかったものと考えられる。逆に、比較例2では、炭素繊維織布の隙間部分が少ないためにガス拡散層を余剰水が透過し難くかったために、余剰水が円滑に排出されなかったものと考えられる。
電池試験9および10では、実施例1〜5および比較例1のいずれにおいても、電池試験1〜8での作動電圧よりも低い作動電圧を示している。さらに、これらの単電池における作動電圧の差(I−J)が負の値ないしはゼロであることから、露点55℃という比較的低湿度の空気をカソードに供給した場合には、若干乾燥気味の運転になることが分かる。一方、比較例2では、ガス拡散層を水が透過し難くいために、電池試験9および10においても、乾燥気味の運転とはならず、作動電圧の差(I−J)は正の値を示している。
本発明に係る電解質膜−電極接合体は、高分子電解質型燃料電池に好適に用いることができる。
本発明における炭素繊維織布の平面図である。 本発明の実施例における電解質膜−電極接合体を備えた単電池の縦断面図でる。
符号の説明
1 縦糸
2 横糸
3 縦糸と横糸の交わっている部分(交錯部分)
4 縦糸と横糸のいずれも存在しない隙間部分(隙間部分)
11 高分子電解質膜
12 触媒層
13 ガス拡散層
15 MEA
16 ガス流路
17 セパレータ板
18 ガスケット
19 リブ

Claims (6)

  1. 高分子電解質膜および前記高分子電解質膜を挟む一対の電極からなり、前記電極が前記高分子電解質膜に接する触媒層および前記触媒層に接する撥水層を有するガス拡散層からなる電解質膜−電極接合体であって、
    前記ガス拡散層の基材が、電子伝導性炭素繊維からなる縦糸および横糸で織った炭素繊維織布であり、前記縦糸および横糸の交点間に開口が形成されていることを特徴とする燃料電池用電解質膜−電極接合体。
  2. 前記炭素繊維織布の縦糸密度をZ本/cm、横糸密度をW本/cm、縦糸の太さをXmm、および横糸の太さをYmmとした場合に、
    1/1500≦(10/W−Y)(10/Z−X)/XY≦1/5
    の関係を満たす請求項1記載の燃料電池用電解質膜−電極接合体。
  3. 前記炭素繊維織布の厚さが、0.05〜0.30mmの範囲にある請求項1または2記載の燃料電池用電解質膜−電極接合体。
  4. 前記炭素繊維織布の密度が、0.32〜0.42g/ccの範囲にある請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池用電解質膜−電極接合体。
  5. 前記炭素繊維織布の縦糸密度および横糸密度のいずれか一方が16〜45本/cmの範囲にあり,かつ他方が12〜40本/cmの範囲にある請求項1〜4のいずれかに記載の燃料電池用電解質膜−電極接合体。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の燃料電池用電解質膜−電極接合体を具備し、加湿した燃料ガスをアノードに供給し、加湿した酸化剤ガスをカソードに供給して発電させる燃料電池の運転方法であって、
    前記燃料ガスの露点および前記酸化剤ガスの露点を、前記電解質膜−電極接合体の運転時の温度に対して同一温度あるいは5℃以内の範囲内で低い温度にコントロールして運転することを特徴とする燃料電池の運転方法。
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