JP2004231601A - インドール骨格を有するアルカロイドを含有するアスコフラノンの抗原虫作用増強剤およびこれらを含む抗原虫作用を有する薬剤組成物 - Google Patents

インドール骨格を有するアルカロイドを含有するアスコフラノンの抗原虫作用増強剤およびこれらを含む抗原虫作用を有する薬剤組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】アスコフラノンの抗原虫作用を増強する薬剤およびそれらを含む新規な抗原虫作用を有する薬剤組成物を提供すること。
【解決手段】ニガキ科植物等に存在するインドール骨格を有するアルカロイドをアスコフラノンの抗原虫作用増強剤として用いる。また、原虫によって惹起されるヒトまたはヒト以外の動物における疾患の予防または治療のために、アスコフラノンおよびインドール骨格を有するアルカロイド、並びに薬剤学的に許容される担体を含む薬剤組成物を用いる。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インドール骨格を有するアルカロイドを含むことを特徴とするアスコフラノンの抗原虫作用増強剤、アスコフラノンおよびインドール骨格を有するアルカロイドを含む薬剤組成物、アスコフラノンを含む抗原虫剤の製造におけるインドール骨格を有するアルカロイドの使用、およびアスコフラノンおよびインドール骨格を有するアルカロイドを必要とするヒトまたはヒト以外の動物に投与することを含む、原虫によって惹起される疾患を予防または治療する方法、並びにアスコフラノンおよびインドール骨格を有するアルカロイドを含む、原虫によって惹起される疾患を予防または治療するためのキットに関する。
【0002】
【従来の技術】
アフリカトリパノソーマ症はヒトではアフリカ睡眠病、家畜ではナガナ病と呼ばれ、サハラ砂漠以南の北緯14度から南緯29度に分布し、ツエツエバエによって媒介される。アフリカ睡眠病はトリパノソーマ科原虫感染によって発症し、毎年20−30万人の新たな患者が発症しているといわれている。しかしアフリカ睡眠病の患者数は調査データの信頼性が低く確定できないのが現状である。少なくともWHOによれば1996年には15万人が死亡し、10万人以上に後遺症が残ったと言われている。さらに、ナガナ病と呼ばれる家畜類の被害はそれ以上に甚大であり、人々のタンパク源となるべきウシが年間数10万頭も死んでいる。また、アメリカ合衆国に匹敵する面積の約1000万平方キロのサバンナでトリパノソーマのために牧畜が不可能になっている。この様にアフリカ睡眠病はアフリカの人々の健康及び経済的発展を著しく妨げており、WHOは制圧すべき感染症の一つに掲げている。
【0003】
アフリカ睡眠病はツエツエバエによって媒介されるトリパノソーマによる原虫感染症であり、感染から10日前後で原虫が血流中に出現する。感染初期には原虫は血流中で増殖し、発熱、倦怠感、頭痛、筋肉や関節の痛み、掻痒感を与え進行する。慢性期に入ると中枢神経が侵されて、精神錯乱や全身の痙攣などの症状を呈し、最終的には嗜眠状態に陥って死に至る。
【0004】
アフリカ睡眠病の治療にはペンタミジン、メラルソプロールやエフロルニチン等が用いられ1960年代にはその撲滅も可能との感もあった。しかし、これらの薬剤は古く、有効性は徐々に低下している。特にヒ素剤であるメラルソプロールに対する耐性は大きな問題となっており、効果のみられない患者は死を待つのみと言う悲惨な状況となっている。
【0005】
トリパノソーマはヒト体内では主に血流中に生息している。この血流型のエネルギー代謝はグリコソームと呼ばれる原虫特有なオルガネラで行われる解糖系に依存しており、いわゆるミトコンドリアにおける酸化的リン酸化は機能していない。しかしこの解糖系を効率よく駆動するためには生成したNADHの再酸化が必要であり、これにはミトコンドリアのグリセロール−3リン酸酸化系が重要な役割を果たしている。この酸化系の末端酸化酵素は還元型のユビキノンを電子供与体とするキノール酸化酵素として機能し、宿主の持つ好気的な呼吸系のシトクロム酸化酵素とは大きく異なった性質を有している。特に注目すべき点は、この末端酸化酵素が宿主のシトクロム酸化酵素を速やかに阻害するシアンに非感受性という点である。そこで、これまでも欧米を中心に多くの研究者がこのシアン耐性酸化酵素を標的とした薬剤の開発を試みてきたが、選択毒性の高い有効なものは得られていなかった。
【0006】
このような状況の中で、本発明者等はイソプレノイド系生理活性物質アスコクロリン、アスコフラノン並びにそれらの誘導体、特にアスコフラノンがトリパノソーマのグリセロール−3リン酸酸化系をnMオーダーという極めて低い濃度で特異的に阻害する事を発見し、特許を出願した(特許文献1参照)。
【0007】
すなわち、ラット血流中で増殖させたTrypanosoma bruceibrucei 虫体をグラスビーズで機械的に破砕し、遠心分画法によって調製したミトコンドリア標品におけるグリセロール−3リン酸依存性の呼吸に対するアスコクロリン、アスコフラノン及びそれらの誘導体に対する阻害効果を検討した。50%阻害の絶対量はQサイクルの阻害剤として知られるアンチマイシンA3の48,600pmol/mg蛋白、ミキソチアゾールの21,500pmol/mg蛋白、スチグマテリン18,600pmol/mg蛋白に対して、アスコフラノンは25 pmol/mg蛋白と極めて低濃度で阻害効果を示した。なお、アスコフラノンは下記式で表されるイソプレノイド系抗生物質である。
【化6】
Figure 2004231601
アスコフラノンの具体的製法は、下記特許文献2に記載されており、その抗腫瘍活性はすでに下記特許文献3に記載されている。また、アスコフラノン誘導体の血糖低下作用、血中脂質低下作用、グリケイション阻害作用、抗酸化作用は、下記特許文献4に記載されている。
【0008】
トリパノソーマの呼吸系は、ミトコンドリアの呼吸が阻害されると嫌気的条件下と同様にグリセロールキナーゼの関与するグリセロール生成系によって解糖系の進行が維持される。従って、この経路を抑制するために最終生成物であるグリセロールを添加することによってアスコフラノンによる阻害効果が増大することが推測されたので以下の実験を行った。Trypanosoma bruceibruceiのin vitro培養系でグリセロールを0%、2%、5%、10%の濃度で添加し、アスコフラノンを0〜250,000nMの10段階に希釈して増殖阻害効果を検討した。その結果、グリセロール5%または10%添加によりアスコフラノンは15nMとグリセリン無添加に比較して1/17,000の低濃度で致死作用を示した。アスコフラノンはグリセリンの共存下において、極めて強力な増殖阻害効果を示すことを明らかにした(非特許文献1参照)。
【0009】
アフリカ睡眠病マウスモデルを用いてアスコフラノンの治療効果を検討した。動物実験は以下の方法で行った。マウス(C57BL/6、6週齢)にTrypanosoma brucei brucei を10/マウス腹腔内接種し、3日後マウス血中の原虫数が10/mL以上であることを確認した後、アスコフラノンの投与による治療を開始した。投与後の治療効果の評価は24時間毎にマウス尾静脈血をスライドグラスに取り顕微鏡にて400倍の倍率で検鏡し原虫の有無を確認し判定した。20視野に原虫0のとき(−)、20視野に原虫が1〜数匹では(+1)、1視野に原虫が1〜20では(+2)、一視野に原虫が21〜40では(+3)、1視野で原虫が41以上では(+4)とした。
【0010】
トリパノソーマ症マウスにアスコフラノン100mg/kgを単回、筋肉内投与して治療効果を検討した。アスコフラノン投与後4日目までは+4であったが、5日目には+2に減少し、6、7日目は血液中から原虫は完全に消失した。しかし8日目には+1、9日目には+3となり,10日目には死亡した。アスコフラノン単独投与に対してグリセロールとの併用投与の治療効果を検討した。トリパノソーマ症マウスにアスコフラノン100mg/kgとグリセロール3g/kgを同時に単回、筋肉内投与した。併用投与開始4日目までは血中の原虫は+4であったが5日目以降は消失した。しかし9日目には+1、10日目には+2となり、再び原虫は血中に出現した。すなわちトリパノソーマ治療にアスコフラノンとグリセロールの併用は、アスコフラノンの単独投与に比較してより有効であった(非特許文献2参照)。
【0011】
以上の成績から、アフリカトリパノソーマ症モデルマウスの治療においては、アスコフラノン単独投与では効果は弱くグリセロールとの併用が必須であった。
グリセロールは吸入または経口摂取すると、吐き気、嘔吐、下痢を起こすおそれがある。グリセロールの急性毒性とし、ヒトで中毒症状を呈する最小投与量は1428mg/kgであり、マウスにおける急性毒性は、腹腔内投与はLD50=8992mg/kg、静脈内投与はLD50=6199mg/kgである。本試験で使用した3000mg/kgはヒトや家畜には大量であることがアスコフラノンをアフリカトリパノソーマ症の治療薬として実用化するための障害となっていた。
【0012】
【特許文献1】
特開平9−165332号公報
【特許文献2】
特公昭56−25310号公報
【特許文献3】
特公昭63−61929号公報
【特許文献4】
特開平7−206838号公報
【非特許文献1】
モレキュラー アンド バイオケミカル パラシトロジー(Molecular and Biochemical Parasitology)81:127−136.1996
【非特許文献2】
パラシトロジー インターナショナル(Parasitology International) 47:131−137.1998
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、アスコフラノンをアフリカトリパノソーマ症等の原虫によって惹起される疾患の治療薬として実用化するために鋭意研究を重ねた結果、インドール骨格を有するアルカロイドをアスコフラノンとともに使用することにより、アスコフラノンの抗原虫作用を大幅に増強することを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成した。
【0014】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、インドール骨格を有するアルカロイドを含むことを特徴とするアスコフラノンの抗原虫作用増強剤を提供する。
また、本発明は、アスコフラノンおよびインドール骨格を有するアルカロイド、並びに薬剤学的に許容される担体を含む抗原虫作用を有する薬剤組成物を提供する。
さらに、本発明は、アスコフラノンを含む抗原虫剤の製造におけるインドール骨格を有するアルカロイドの使用を提供する。
加えて、本発明は、有効量のアスコフラノンおよびインドール骨格を有するアルカロイドを、投与を必要とするヒトまたはヒト以外の動物に投与することを含む、原虫によって惹起される疾患を予防または治療する方法を提供する。
さらに、本発明は、アスコフラノンおよびインドール骨格を有するアルカロイド、並びに使用説明書を含む、原虫によって惹起される疾患を予防または治療するためのキットを提供する。
本発明において使用されるインドール骨格を有するアルカロイドとしては、例えば、下記の化合物を例示することができる。
【化7】
Figure 2004231601
上記各化合物の化合物名を以下に記す。
TOA−1:1,2−dimethyl−3−ethyl−12H−pyrido[2,1−a] β−carbolin−5−ium
TOA−2:1−ethyl−2,3−dimethyl−12H−pyrido[2,1−a] β−carbolin−5−ium
TOA−5:1,2−dimethyl−11H−pyrrolo[2,1−a] β−carbolin−5−ium
TOA−6:11H−[1,2,4]−triazole[3,4−b]β−carboline
TOA−7:picrasiden G
TOA−10:1,2−dimethyl−3−propyl−12H−pyrido[2,1−a] β−carbolin−5−ium
TOA−11:1,3−dimethyl−2−propyl−12H−pyrido[2,1−a] β−carbolin−5−ium
TOA−12:1,2,3−trimethyl−3−ethyl−12H−pyrido[2,1−a] β−carbolin−5−ium
TOA−13:2,3−diethyl−12H−pyrido[2,1−a] β−carbolin−5−ium
TOB−3:1−formyl−β−carboline
TOB−7:benzalharman
TOB−8:n−propyl harman−3−carboxylate
TOB−9:methyl 1−(4−bromophenyl)−β−caroline−3−carboxylate
TOB−10:4−methoxy−1−vinyl−β−carboline
TOB−12:1−(3−hydroxyethyl)−1,2,3,4−tetrahydro−β−carboline
TOB−20:methyl 1−(4−chlorophenyl)−β−caroline−3−carboxylate
TOB−21:n−propyl−β−carboline−3−carboxylate
あるいは1−(4−bromophenyl)−β−caroline−3−carboxylic acid methyl ester
TOB−22:isopropyl−β−caroline−3−carboxylate
上記化合物は高い融点を有しており、例えば、TOA−1,2,6,10,11,12,13の融点 は、300度C以上、TOB−21の融点は187−188度C、TOB−22の融点は211−212度Cである。
上記化合物はいずれも公知であり、例えば、TOB−3,TOB−5,TOB−7,TOB−10については下記の文献に記載されている。
TOB−3:K. Koike and T. Ohmoto, Chem.Pharm.Bull., 32(9), 3579−3583 (1984).
TOA−5:H.Yoshino、K.Koike,T.Nikaido,Heterocycles,51(2),281−293(1999)
TOB−7:最初の合成報告はH.R.Synder et al., JACS, 70, 219 (1948).
TOB−7の原報:K. Koike and T. Ohmoto, Chem.Pharm.Bull., 35(8), 3305−3308, (1987).
TOB−10:T. Ohmoto and K. Koike, Chem.Pharm.Bull., 31(9), 3198−3204(1983).
なお、本発明で使用されるインドール骨格を有するアルカロイドは、天然物由来のものであっても、合成物であってもよい。
【0015】
【発明の実施の形態】
アスコフラノンの実用化を考えたとき、少量の投与でアスコフラノンと併用効果を示すグリセロールに代わる薬剤を見いだすことが必須であることが明らかになった。そこで、発明者等はグリセロールの標的であるグリセロールキナーゼの阻害剤を探索するためのスクリーニング系を確立した。確立した探索系は、グリセロール−3リン酸とADPからグリセロールキナーゼによってグリセロールが生成する時に生ずるATPをルシフェリン−ルシフェラーゼの系で測定し、ATPアナライザーとマイクロプレートを用いて迅速にスクリーニングを行うことが可能である。
【0016】
次に本発明者等は、開発した系を用いてグリセロールキナーゼ阻害剤を探索した。対照としたのはニガキ科植物に属し化学構造が明らかになっている天然物である。ニガキ科植物に含まれる主な成分は、β−carbolineあるいはcanthin−6−one骨格を有するアルカロイドと苦味の本体である変形トリテルペノイドのクアシノイドである。ニガキ科植物は、世界各地の伝承医学あるいは民間伝承の中で悪性腫瘍、マラリアをはじめとする感染症、発熱、胃腸疾患の治療に使われている。
【0017】
ニガキ科植物に存在することが明らかにされているアルカロイド73化合物のうち、インドール骨格を有する化合物単独のグリセロールキナーゼ阻害効果を段落番号[0011]に記載したスクリーニング系に各々終濃度25μM添加して残存活性を測定して検索した。またアスコフラノンとの併用効果は段落番号[0007]に記載したTrypanosoma brucei bruceiの培養系にアスコフラノン4nMに18化合物を500−0.24μMまでの2倍希釈系列を作成し24時間培養した後、原虫数を測定することで50%有効濃度ED50を求めた。その結果インドール骨格を有するアルカロイド、TOB−7、TOB−8、TOB−12、TOB−21、TOA−6、TOA−7を選択し、動物実験において効果が得られるかを検討した。
【0018】
トリパノソーマ症マウスモデル(Trypanosoma brucei brucei 接種 BALB/cマウス)にアスコフラノン100mg/kgと、段落番号[0012]で選択したの6化合物を3投与量(100mg/kg、50mg/kg、25mg/kg)にて、単回筋肉内に併用投与してマウスにおける治療効果を検討した。その結果、6化合物にはTOB−21を除いて血液中の原虫の減少または消失がみられた。以上の成績から、インドール骨格を持つアルカロイドはアスコフラノンとの併用によって、アフリカ睡眠病において延命または治療効果を奏することが明らかになった。
【0019】
本発明において使用されるアスコフラノンには、光学異性体が存在するが、それぞれの光学異性体、およびそれらの混合物は全て本発明に含まれる。本発明の薬剤組成物としてはいずれを用いてもよい。 アスコフラノンは遊離の形で用いてもよいが、塩基と塩を形成するので塩の形で用いることもできる。塩を形成する塩基としては、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、アンモニア、トリエチルアミンなどが挙げられる。インドール骨格を持つアルカロイドとしては特に限定されないが、例えば、上に挙げた18種類のアルカロイドから1種若しくは2種以上を用いることができる。また、インドール骨格を持つアルカロイドは天然物でも合成品でもよく天然物の場合、その由来はニガキ科植物に限定されない。これらのアルカロイドは遊離の形で用いてもよいが、酸との塩の形で用いることもできる。塩を形成する酸としては、たとえば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、燐酸などの無機酸、および酢酸、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸、トロフルオロ酢酸などの有機酸が挙げられる。かかる塩としては、例えば、上記インドールアルカロイドのブロマイドが挙げられる。
【0020】
インドール骨格を持つアルカロイドおよびアスコフラノンを含む本発明の薬剤組成物は、1種もしくはそれ以上の薬剤学的に許容し得る担体を含む薬剤組成物として、目的とする投与経路に応じ、適当な任意の形態にして投与することができる。投与経路は非経口的経路であっても経口的経路であってもよい。
本発明で使用する担体としては、医薬品製造の技術分野で周知である任意の添加剤を使用することができる。そのような担体として、賦形剤、希釈剤、湿潤剤、懸濁剤、乳化剤、分散剤、補助剤、甘味剤、着色剤、風味剤、緩衝剤、防腐剤、保存剤、緩衝剤、結合剤、安定化剤等が例示され、目的とする剤形に応じて周知慣用の担体から必要なものを選択することができる。例えば、インドール骨格を持つアルカロイドの酸との塩およびアスコフラノンの塩基との塩を水に溶解したり、懸濁剤、賦形剤および・またはその他の担体と混合して経口投与に適する剤形として製剤化することができる。なお、賦形剤または補助剤としては、例えば、乳糖、種々のデンプン(例えば、トウモロコシデンプン)、ブドウ糖、スクロース、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸塩、タルク、植物油(例えば、大豆油、ラッカセイ油。オリーブ油)、レシチン等が挙げられる。
なお、本発明の薬剤組成物は、グリセロールを含有してもよい。添加するグリセロールの量は、必要に応じて適宜調節することができる。
【0021】
本発明の薬剤組成物は、一般的に、経口で、例えば、錠剤、カプセル剤、液剤の形態で投与することができる。しかし、投与は直腸から、例えば、座薬として投与して投与してもよい。さらに、非経口で、例えば、注射剤として投与してもよい。インドール骨格を持つアルカロイドおよびアスコフラノンの投与は、これらの活性物質を、錠剤やカプセル剤などの単一の投与剤形中に混在して含有する製剤の形態または各成分が異なる層に存在する多層状の製剤の形態で行うことができる。あるいは、これらの活性物質を別々に、単位投与形態の組合せ製剤として、同時にまたは時間差をおいて投与することも可能である。
本発明化合物の投与量は、対象となる患者(ヒト)またはヒト以外の動物の体型、年齢、体調、疾患の度合い、発症後の経過時間等により、適宜選択することができる。例えば、ヒトに対する経口投与の場合の体重1kg当りの1日量は、アスコフラノンについては100〜500mg/kg/day、インドール骨格を持つアルカロイドについては、100〜500mg/kg/dayである(食後3回投与)。また、非経口投与(静注、筋注、皮下注)の場合には、アスコフラノンについては25〜100mg/kg/day、インドール骨格を持つアルカロイドについては、25〜100mg/kg/dayの用量で使用される。さらに、座薬の場合には、アスコフラノンについては1.0〜2.0mg/kg/day、インドール骨格を持つアルカロイドについては、0.05〜1.0mg/kg/dayの用量で使用される。
【0022】
【実施例】
以下に本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、これは本発明を何ら限定するものではない。
【0023】
【実施例1】
ADPとグリセロール−3リン酸に組み換えグリセロールキナーゼを加えて反応を開始し、生成したATPをルシフェラーゼ法で測定する系に、上記18種のインドール骨格を有するアルカロイド25μMを添加してグリセロールキナーゼ阻害作用を検討した。結果を表1に示す。
【0024】
【表1】
Figure 2004231601
【0025】
実施例1において用いた天然物の構造式は以下のとおりである。
【0026】
【化8】
Figure 2004231601
【0027】
表1に示すようにTOB−7、TOB−8、TOB−12、TOB−21、TOA−6、TOA−7に特に強いグリセロールキナーゼ阻害効果が認められた。
【0028】
【実施例2】
Trypanosoma brucei bruceiの培養系にアスコフラノン4nM と500〜0.24μMの濃度の18種類のアルカロイドとを併用添加した際における増殖阻害作用を検討した。結果を表2に示す。
【0029】
【表2】
Figure 2004231601
【0030】
TOB−9、TOB−21、TOA−2、TOA−5、TOA−11を除いていずれの化合物もED50は10μM以下であったが、細胞毒性(マウス白血病細胞株P−388における50%生育阻害濃度)の成績を考慮して、TOB−7、TOB−8、TOB−12、TOB−21、TOA−6、TOA−7の6化合物を選択して動物実験を行った。
【0031】
【実施例3】
トリパノソーマ症マウスに100mg/kgのアスコフラノンと50mg/kg、25mg/kgのTOB−12、TOB−7、TOB−21、TOB−8、TOB−6、TOB−7を各2匹に単回、筋肉内投与し10日間観察した。この間、毎日、尾静脈血をスライドグラスに取り光学顕微鏡400倍にて鏡検し、原虫の数が20視野で0の場合(−)、20視野に原虫1匹〜数匹場合(+1)、1視野に原虫が1〜20匹の場合(+2)、1視野に原虫21 〜40匹の場合(+3)、1視野に原虫41以上の場合(+4)とした。結果を表3に示す。
【0032】
【表3】
Figure 2004231601
【0033】
トリパノソーマ症マウスにおけるアスコフラノン100mg/kgとグリセロール3000mg/kgの併用投与により、原虫は5日目から8日目までは血中から消失したが、9日目には+1,10日目には+2と再び出現した。TOB−7投与では6日目から原虫は消失し、10日目まで出現しなかった。TOA−7投与では5日目または6日目から9日目までは原虫は消失したが10日目には+1と再び出現した。すなわちアスコフラノンにTOB−7(benzalharman)、またはTOA−7(picrasidine−G)併用投与によってグリセロールの1/30または1/60の投与量で同等またはそれ以上の効果が認められた。
【0034】
【実施例4】
トリパノソーマ症マウスに治療開始後1日と6日目にアスコフラノン単独並びにTOB−7(benzalharman)またはTOA−7(picrasidine−G)と併用、筋肉内投与し、薬物の複数回投与の効果を検討した。結果を表4に示す。
【0035】
【表4】
Figure 2004231601
【0036】
表4に示すようにアスコフラノン単独、2回投与では5日目までは+4であったが6−8日目まで原虫は血中から消失した。しかし9日目は+1、11日目は+4であった。TOB−7との併用では6日目以降11日目まで原虫は血中から消失した。またTOA−7でも6日目から9日目まで消失し、11日目でも+1であった。すなわちTOB−7、またはTOA−7との併用は複数回投与でより効果的であることが明らかになった.
【0037】
【実施例5】
トリパノソーマ症マウスにアスコフラノン単独またはアスコフラノンとTOA−7(benzalharman)、TOB−7(picrasidine−G)との併用、2日間、3日間連続筋肉内投与し薬物の連続投与の効果を検討した。結果を表5に示す。
【0038】
【表5】
Figure 2004231601
【0039】
アスコフラノン100 mg/kgとTOB−7(benzalharman)150mg/kgを、3日間連続投与することによって、治療開始5日目以降は原虫が長期にわたって血中から消失し治癒した。
【0040】
アスコフラノンは新規抗トリパノソーマ薬として研究してきたが、Trypanosoma brucei bruceiにおいてアスコフラノン1回の投与で感染マウスを治癒するには多量のグリセロールを併用する必要があった。今回、グリセロールの標的となる酵素であり、アスコフラノン投与時のエネルギー代謝において重要な役割を果たすグリセロールキナーゼ(GK)に注目した。より高い薬効と実用性を得るため、グリセロールに代わるGKの阻害剤の探索を行った結果、インドールアルカロイドであるTOB−7(benzalharman)、TOA−7(picrasidine−G)等を得た。GK阻害剤と併用することでアスコフラノンの効果が高まることが証明され、TOB−7(benzalharman)を三日間、アスコフラノンと併用投与することによって、100%治癒するという結果が得られた。これは、アスコフラノン単独で三日間投与した場合の33%の治癒率に比較して目覚ましい進歩である。
上述のように、インドール骨格を持つアルカロイドおよびアスコフラノンを含む本発明の薬剤組成物は、1種もしくはそれ以上の薬剤学的に許容し得る担体を含む薬剤組成物として、目的とする投与経路に応じ、適当な任意の形態にして投与することができる。投与経路は非経口的経路であっても経口的経路であってもよい。例えば、錠剤として使用する場合には、次のような処方例が挙げられる。
錠剤の処方例
アスコフラノン 10mg
TOB−7(benzalharman) 10mg
無水ラクトース 34mg
微結晶セルロース 25mg
ポリビニルピロリドン 20mg
ステアリン酸マグネシウム 1mg
アスコフラノン、TOB−7、無水ラクトース、微結晶セルロースおよびポリビニルピロリドンを混合し、篩にかけた。混合物を湿潤粒状化し、乾燥し、篩にかけた。篩にかけた顆粒をステアリン酸マグネシウムと混合し、プレスして卵形の錠剤核にした。
【0041】
【発明の効果】
上述のように、本発明によれば、これまで治癒率が低かったアフリカトリパノソーマ症等の原虫によって惹起される疾患をほぼ完全に予防または治療する薬剤を提供することが可能となった。

Claims (11)

  1. インドール骨格を有するアルカロイドを含むことを特徴とするアスコフラノンの抗原虫作用増強剤。
  2. インドール骨格を有するアルカロイドが下記式
    Figure 2004231601
    から選択される化合物およびその薬剤学的に許容し得る塩の1種または2種以上である、請求項1記載のアスコフラノンの抗原虫作用増強剤。
  3. アスコフラノンおよびインドール骨格を有するアルカロイド、並びに薬剤学的に許容される担体を含む抗原虫作用を有する薬剤組成物。
  4. インドール骨格を有するアルカロイドが下記式
    Figure 2004231601
    から選択される化合物およびその薬剤学的に許容し得る塩の1種または2種以上である、請求項3記載の薬剤組成物。
  5. アスコフラノンを含む抗原虫剤の製造におけるインドール骨格を有するアルカロイドの使用。
  6. インドール骨格を有するアルカロイドが下記式
    Figure 2004231601
    から選択される化合物およびその薬剤学的に許容し得る塩の1種または2種以上である、請求項5記載の使用。
  7. 有効量のアスコフラノンおよびインドール骨格を有するアルカロイドを、投与を必要とするヒトまたはヒト以外の動物に投与することを含む、原虫によって惹起される疾患を予防または治療する方法。
  8. インドール骨格を有するアルカロイドが下記式
    Figure 2004231601
    から選択される化合物およびその薬剤学的に許容し得る塩の1種または2種以上である、請求項7記載の方法。
  9. 疾患がアフリカトリパノソーマ症である、請求項7または8記載の方法。
  10. アスコフラノンおよびインドール骨格を有するアルカロイド、並びに使用説明書を含む、原虫によって惹起される疾患を予防または治療するためのキット。
  11. インドール骨格を有するアルカロイドが下記式
    Figure 2004231601
    から選択される化合物およびその薬剤学的に許容し得る塩の1種または2種以上である、請求項10記載のキット。
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