JP2004232003A - 耐食性に優れたアルミニウム合金ブレージングシート - Google Patents
耐食性に優れたアルミニウム合金ブレージングシート Download PDFInfo
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Abstract
【課題】十分な犠牲防食効果を付与するとともに、また孔食の発生を抑止することができ、従って厳しい腐食環境下においても優れた耐食性を有する、特にコンデンサやエバポレータ、ラジエータ等の自動車用熱交換器に適するアルミニウム合金ブレージングシートを提供する。
【解決手段】Cu:0.4〜1.0%、Mn:0.5〜1.0%、Si:0.15%以下、Fe:0.05〜0.4%を含み、残部がAl及び不可避不純物からなり、1.0μm以上のサイズのFe系化合物粒子を1.0×104個/mm2以下に抑制した心材を用い、この心材の片面もしくは両面にろう材をクラッドしたアルミニウム合金ブレージングシート。
【選択図】 なし
【解決手段】Cu:0.4〜1.0%、Mn:0.5〜1.0%、Si:0.15%以下、Fe:0.05〜0.4%を含み、残部がAl及び不可避不純物からなり、1.0μm以上のサイズのFe系化合物粒子を1.0×104個/mm2以下に抑制した心材を用い、この心材の片面もしくは両面にろう材をクラッドしたアルミニウム合金ブレージングシート。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は耐食性に優れたアルミニウム合金ブレージングシートに関し、特にコンデンサやエバポレータ、ラジエータ等の自動車用熱交換器に適するブレージングシートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
コンデンサやエバポレータ、ラジエータ等のアルミニウム製自動車用熱交換器の製造においては、アルミニウムもしくはアルミニウム合金(以下、アルミニウム系合金)を心材として用い、その片面もしくは両面に心材より融点の低い合金をろう材としてクラッドした所謂ブレージングシートが用いられる。
近年、自動車熱交換器の軽量コンパクト化傾向に追従してブレージングシートの薄肉化検討が進められているが、薄肉化に伴い溶融ろう材の侵食(エロージョン)の影響が顕著になるなどの問題があり、耐食性や強度の改善が進められているものである。
【0003】
ブレージングシートの耐食性確保の為には、一般に心材合金にMn、Cu、Tiなど電位を貴にする元素を添加、ろう材にZn、Snなど電位を卑にする元素を添加し、心材の電位をろう材に対して十分貴になるような合金成分に設計される。(例えば、特許文献1 参照。)
また、ろう付加熱中のCuやZnの拡散による板厚方向の濃度勾配、即ち電位勾配を利用した耐食性向上も使われる。(例えば、特許文献2 参照。)
但し、本来の効果を十分に発揮する為には、ろう付製品におけるこれらの添加元素の固溶・析出状態の制御が必須で、例えば、粒界偏析したCuは粒界腐食を助長し耐食性を損なうし、また電位を貴にする目的で添加したMnも工程中で析出させてしまうとその効果は得られず、場合によっては加工性を低下させる。
この為に、鋳造から最終焼鈍(最終圧延)まで一連のブレージングシート製造工程と最終ろう付工程まで、一連の加工熱処理履歴の管理、制御が必要とされる。(例えば、特許文献4 参照。)
【0004】
ところで、Al−Mn基心材とAl−Si基ろう材の組合せでは、心材/ろう材界面に形成された拡散層の犠牲防食効果によっても耐食性能の向上を図ることができる。
ろう付加熱中、ろう材から拡散してきたSiは心材中のMnと結合しAl−Mn−Si系化合物を形成する。その領域(拡散層)ではMn固溶量が低下し、心材中心部に比べて電位が卑になる為、板厚方向への腐食進行は遅延される。(例えば、特許文献3 参照。)
【0005】
【特許文献1】
特開平6−41621号
【特許文献2】
特開平2−58333号
【特許文献3】
特開平1−284498号
【特許文献4】
米国特許第4586964号明細書
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このように耐食性の向上を目的として各種対策が取られているが、要求性能の高度化に伴い更なる性能改善が求められているのが現状である。
本発明は以上の事情を背景としてなされたもので、Fe添加量及びFe系化合物粒子のサイズ及び量を最適化することにより拡散層に十分な犠牲防食効果を付与することができ、アルミニウム合金ブレージングシートの耐食性を向上する事が出来ることを見出したものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明はCu:0.4〜1.0%、Mn:0.5〜1.0%、Si:0.15%以下、Fe:0.05〜0.4%を含み、残部がAl及び不可避不純物からなり、1.0μm以上のサイズのFe系化合物粒子を1.0×104個/mm2以下に抑制した心材を用い、この心材の片面もしくは両面にろう材をクラッドしたことを特徴とする耐食性に優れたアルミニウム合金ブレージングシートである。
【0008】
【発明の実施の形態】
まず、この発明における各合金成分元素の添加の意義、及び成分範囲の規制理由について説明する。
【0009】
Mn:0.5〜1.0%
Mnは電位を貴にする元素であり、拡散層形成とそれによる犠牲防食効果の付与に根本的役割を果たす元素として添加される。即ち、ろう付加熱中にろう材側から拡散してきたSiとの間にAl−Mn−Si−Fe系金属間化合物を形成し、心材/ろう材界面近傍の拡散層において固溶Mn濃度の低い層(=電位の低い層)を形成する。この拡散層が板厚方向の腐食進行に対する遅延効果をもたらし耐食性を向上させる。
また、Mnはろう付後の強度を高める効果も持つ。
ただしMn添加量が0.5%未満ではこれらの効果が十分に得られず、拡散層の効果を大きくする為にはMnを0.5%以上添加する必要がある。一方1.0%を超えて添加すると、粗大な金属間化合物の形成に伴う加工性の劣化や粒界腐食の恐れがある。従って、Mn添加量は0.5〜1.0%の範囲に限定した。
【0010】
Fe:0.05〜0.4%
Feは本発明において重要な働きをする元素である。
Feは通常のAlにおいて不可避的に含有される不純物であるが、鋳造時に形成された晶出物は熱間圧延、冷間圧延や焼鈍などの工程を通して最終板まで持ちこされ、孔食発生の起点となり耐食性を劣化させる事が知られている。
しかし、本発明はFeの添加により拡散層形成が助長され耐食性を向上させることを見出し、それを活用したものである。即ち、ろう付加熱中にろう材側からのSiの拡散により形成されるAl−Mn−Si−Fe系金属間化合物(α相)が、Fe量増加に伴い増加する。これに伴い、拡散層の固溶Mn量が減少する。他方、心材中心部ではFe量を増加してもこのようなFe系晶出物量の増加は少なく、心材中心での固溶Mn量はFe量によらず高く維持される。これにより、心材中心に対して拡散層でのMn固溶量をより減少させ、犠牲防食効果を強化できることを確認した。
Fe添加量が0.05%未満では上記のAl−Mn−Si−Fe系金属間化合物の生成が不充分となり、このため拡散層でのMn固溶量を減少させることで得られる犠牲防食効果が十分に得られない。また、0.4%を超えると1.0μm以上のサイズのFe系化合物粒子を1.0×104個/mm2以下に抑制する事が困難となり、かえって耐食性の劣化を引き起こすことから、Fe添加量は0.05〜0.4%の範囲に限定した。
【0011】
Cu:0.4〜1.0%
Cuは電位を貴にしてろう材による犠牲防食効果を発揮させると共に、ろう付後強度を高める為に添加される。
また同時に、板厚方向に対する電位勾配の付与を目的として添加されるものである。これは、ろう付加熱中にろう材側へCuが拡散し、心材中心から心材/ろう材界面に向かって濃度勾配を形成し、これが電位勾配となって拡散層の耐食性効果を向上させるものである。
ただしCu添加量0.4%未満では上記効果が十分に得られない。また1.0%を超えるとろう付後加熱処理が施される場合やろう付後の冷却速度が緩慢な場合などにおいて粒界腐食が問題となる恐れがあり、Cu添加量は0.4〜1.0%の範囲に限定した。
【0012】
Si:0.15%以下
心材に添加されたSiはMnの固溶度を著しく低下させ、拡散層の効果を阻害する。この為、Si添加量は0.15%以下として規制した。またSi量の規制は、エロージョンを低く抑え、ろう付後強度を高める効果もある。
【0013】
その他の添加元素として、Ti:0.2%以下、Zr:0.2%まで添加しても本発明の効果を損なうことはない。
Tiは圧延工程を通して板厚方向に層状に分布し、層状の腐食形態とし耐食性を向上させる働きがあり、またZrはろう付加熱後の強度を向上させる為、有効な元素である。
【0014】
次に、1.0μm以上のサイズのFe系化合物粒子を1.0×104個/mm2以下に規制した理由を説明する。なお、本発明においてサイズとは化合物粒子の円相当直径すなわち化合物粒子の面積と同じ面積の円の直径を意味する。
先述のように、鋳造時に形成されたFe系化合物のような晶出物は熱間圧延、冷間圧延や焼鈍などの工程を通して最終板まで持ち来されるが、これは孔食発生の起点として作用する為に耐食性を劣化させる。
そこで本発明では、耐食性及び加工性の劣化を抑えられる範囲として1.0μm以上のサイズのFe系化合物粒子量を上記のように規制した。
1.0μm以上のサイズのFe系化合物粒子が10000個/mm3を超えて存在すると、これを起点として発生する孔食が上述の拡散層による耐食性によっても抑止しきれない。
Fe系晶出物粒子サイズ及び量は、鋳造時の鋳造温度、冷却速度及び均質化処理時の処理温度、処理時間の制御により管理できる。
【0015】
以上のような成分組成を有する心材の片面もしくは両面に、ろう材をクラッドしてブレージングシートを得る。
ろう材には不活性雰囲気ろう付及び真空ろう付に用いられる一般的なAl−Si基合金或いはAl−Si−Mg基合金が使用できる。ここでSi、Mgの組成範囲はSi:7〜12%、Mg:1〜1.5%程度が好ましく、真空ろう付の場合はろう付性向上の為の微量Bi添加などなされても良い。
【0016】
製造工程としては一般的な、鋳造により心材スラブを作製し、均質化処理、熱間クラッド圧延、冷間圧延、焼鈍などを経て最終板を得る工程が用いられる。
ただし、本発明の実施に当っての留意点として、Fe系化合物粒子サイズ及び量の制御については、鋳造時に形成されるサイズや工程中での成長などトータルの履歴を管理する必要がある。
特に、鋳造時の冷却速度を大きくすることはFe系化合物粒子の微細化に有効である。
また、熱間圧延や焼鈍などの加熱を伴う工程では、高温長時間の保持を避け、Fe系化合物粒子の粗大化を抑える事が肝要である。
【0017】
【実施例】
以下に実施例に基づき、本発明の詳細を説明する。
【0018】
実施例1
心材には、Cu:0.6%、Mn:0.6%、Si:0.1%としてFe量を本発明での規制範囲内外で変化させた組成の各種アルミニウム合金を金型鋳造により作製し、600℃・10hの均質化処理を施した。表1には調査に用いた合金のFe量を示す。
ろう材には、Si:11.0%、Mg:1.4%、Fe:0.4%の組成の合金を同じく金型鋳造により作成した。
上記、各種心材の両面にクラッド率15%としてろう材を合わせて熱間クラッド圧延し、続けて冷間圧延により最終板厚0.5mmに仕上げ、焼鈍(350℃−2h)により最終板を得た。
上記ブレージングシートから幅80mm×長さ210mmサイズに切出した試験片を鉛直方向に吊るし、真空度10−5Pa、600℃・1minの条件で真空ろう付加熱した。ろう付加熱前後のブレージングシートを使って以下に示す各種試験を行った。
1)耐食性試験
耐食性試験として、SWAAT試験(ASTM G85:Standard Practice for Modified Salt Spray (Fog) Testing)を行った。ろう付加熱後サンプル下側のろう溜まり部を切断し幅80mm×長さ160mmに試験片を切出し、片面を透明のポリエステルテープでシールし、もう一方の面を腐食試験面とした。
試験片に貫通漏れが生じ、裏面のポリエステルテープにブリスターが発生した時間により評価し、貫通漏れ時間500h以下を不良、500〜1000hを良好、1000h以上を優良とした。
2)SEM観察
ろう付加熱前の板断面において、観察倍率1000倍で10視野観察(観察面積0.1mm2)し、粒子径(円相当直径)1μm以上の化合物の合計数を測定した。
【0019】
以上の試験の結果を表1に示す。
心材Fe量とFe系化合物数を本発明規制範囲に収めた材料(No1〜3)では拡散層でのAl−Mn−Si−Fe系金属間化合物の形成量が十分にあり、これに伴う犠牲防食効果が十分に機能するとともに、孔食の起点となる粗大なFe系化合物数も抑制してあることから良好な耐食性が確認された。
これに比べ、Fe量を本発明規制範囲より過少もしくは過多とした材料では、耐食性が不良であった。Fe量が過少な場合(No4)には拡散層での化合物の形成量が十分でなかった為、犠牲防食効果が十分に機能しなかったものと考えられる。また、Fe量が過多(No5)な場合には1μm以上の粗大な金属間化合物が多数存在しており、カソード反応の発生源が多かった為、腐食の進行が早かったものと解釈できる。
【0020】
【表1】
【0021】
実施例2
心材には、Cu:0.6%、Mn:0.6%、Si:0.1%、Fe:0.3%の組成のアルミニウム合金を各種冷却速度で金型鋳造し、600℃・10hの均質化処理を施した。尚、冷却速度は厚さ方向の金型サイズを変えることにより変化させた。
ろう材には、Si:11.0%、Mg:1.4%、Fe:0.4%の組成の合金を同じく金型鋳造により作成した。
上記、各種心材の両面にクラッド率15%としてろう材を合わせて熱間クラッド圧延し、続けて冷間圧延により最終板厚0.5mmに仕上げ、焼鈍(350℃・2h)により最終板を得た。
幅80mm×長さ210mmサイズに切出した上記ブレージングシートを鉛直方向に吊るし、真空度10−5Pa 、600℃・1minの条件で真空ろう付加熱した。ろう付加熱前後のブレージングシートを使って実施例1と同一の各種試験を行った。
結果を表2に示す。
【0022】
【表2】
【0023】
試験の結果、薄型及び中型サイズの金型を用いて鋳造した、冷却速度の速い材料(No11,No12)では、1μm以上の金属間化合物量が本発明規制範囲内に収まっており、優れた耐食性が得られた。
これに比べ、厚型サイズの金型を用いて鋳造した冷却速度の遅い材料(No13)では1μm以上の金属間化合物量が本発明規制範囲内より過剰に存在し、このため腐食の進行が早くなり耐食性が不良であったものと解釈できる。
【0024】
【発明の効果】
本発明によれば、Cu,Mnを適量添加するとともにSi量を規制し、さらにFe量を規制するとともに1.0μm以上のサイズのFe系化合物粒子を1.0×104個/mm2以下に抑制した心材を用い、その片面あるいは両面にろう材をクラッドすることで、心材とろう材の界面に形成される拡散層に十分な犠牲防食効果を付与することができるとともに、また孔食の発生を抑止することができ、従って厳しい腐食環境下においても優れた耐食性を有するアルミニウム合金ブレージングシートが提供できる。
【発明の属する技術分野】
本発明は耐食性に優れたアルミニウム合金ブレージングシートに関し、特にコンデンサやエバポレータ、ラジエータ等の自動車用熱交換器に適するブレージングシートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
コンデンサやエバポレータ、ラジエータ等のアルミニウム製自動車用熱交換器の製造においては、アルミニウムもしくはアルミニウム合金(以下、アルミニウム系合金)を心材として用い、その片面もしくは両面に心材より融点の低い合金をろう材としてクラッドした所謂ブレージングシートが用いられる。
近年、自動車熱交換器の軽量コンパクト化傾向に追従してブレージングシートの薄肉化検討が進められているが、薄肉化に伴い溶融ろう材の侵食(エロージョン)の影響が顕著になるなどの問題があり、耐食性や強度の改善が進められているものである。
【0003】
ブレージングシートの耐食性確保の為には、一般に心材合金にMn、Cu、Tiなど電位を貴にする元素を添加、ろう材にZn、Snなど電位を卑にする元素を添加し、心材の電位をろう材に対して十分貴になるような合金成分に設計される。(例えば、特許文献1 参照。)
また、ろう付加熱中のCuやZnの拡散による板厚方向の濃度勾配、即ち電位勾配を利用した耐食性向上も使われる。(例えば、特許文献2 参照。)
但し、本来の効果を十分に発揮する為には、ろう付製品におけるこれらの添加元素の固溶・析出状態の制御が必須で、例えば、粒界偏析したCuは粒界腐食を助長し耐食性を損なうし、また電位を貴にする目的で添加したMnも工程中で析出させてしまうとその効果は得られず、場合によっては加工性を低下させる。
この為に、鋳造から最終焼鈍(最終圧延)まで一連のブレージングシート製造工程と最終ろう付工程まで、一連の加工熱処理履歴の管理、制御が必要とされる。(例えば、特許文献4 参照。)
【0004】
ところで、Al−Mn基心材とAl−Si基ろう材の組合せでは、心材/ろう材界面に形成された拡散層の犠牲防食効果によっても耐食性能の向上を図ることができる。
ろう付加熱中、ろう材から拡散してきたSiは心材中のMnと結合しAl−Mn−Si系化合物を形成する。その領域(拡散層)ではMn固溶量が低下し、心材中心部に比べて電位が卑になる為、板厚方向への腐食進行は遅延される。(例えば、特許文献3 参照。)
【0005】
【特許文献1】
特開平6−41621号
【特許文献2】
特開平2−58333号
【特許文献3】
特開平1−284498号
【特許文献4】
米国特許第4586964号明細書
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このように耐食性の向上を目的として各種対策が取られているが、要求性能の高度化に伴い更なる性能改善が求められているのが現状である。
本発明は以上の事情を背景としてなされたもので、Fe添加量及びFe系化合物粒子のサイズ及び量を最適化することにより拡散層に十分な犠牲防食効果を付与することができ、アルミニウム合金ブレージングシートの耐食性を向上する事が出来ることを見出したものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明はCu:0.4〜1.0%、Mn:0.5〜1.0%、Si:0.15%以下、Fe:0.05〜0.4%を含み、残部がAl及び不可避不純物からなり、1.0μm以上のサイズのFe系化合物粒子を1.0×104個/mm2以下に抑制した心材を用い、この心材の片面もしくは両面にろう材をクラッドしたことを特徴とする耐食性に優れたアルミニウム合金ブレージングシートである。
【0008】
【発明の実施の形態】
まず、この発明における各合金成分元素の添加の意義、及び成分範囲の規制理由について説明する。
【0009】
Mn:0.5〜1.0%
Mnは電位を貴にする元素であり、拡散層形成とそれによる犠牲防食効果の付与に根本的役割を果たす元素として添加される。即ち、ろう付加熱中にろう材側から拡散してきたSiとの間にAl−Mn−Si−Fe系金属間化合物を形成し、心材/ろう材界面近傍の拡散層において固溶Mn濃度の低い層(=電位の低い層)を形成する。この拡散層が板厚方向の腐食進行に対する遅延効果をもたらし耐食性を向上させる。
また、Mnはろう付後の強度を高める効果も持つ。
ただしMn添加量が0.5%未満ではこれらの効果が十分に得られず、拡散層の効果を大きくする為にはMnを0.5%以上添加する必要がある。一方1.0%を超えて添加すると、粗大な金属間化合物の形成に伴う加工性の劣化や粒界腐食の恐れがある。従って、Mn添加量は0.5〜1.0%の範囲に限定した。
【0010】
Fe:0.05〜0.4%
Feは本発明において重要な働きをする元素である。
Feは通常のAlにおいて不可避的に含有される不純物であるが、鋳造時に形成された晶出物は熱間圧延、冷間圧延や焼鈍などの工程を通して最終板まで持ちこされ、孔食発生の起点となり耐食性を劣化させる事が知られている。
しかし、本発明はFeの添加により拡散層形成が助長され耐食性を向上させることを見出し、それを活用したものである。即ち、ろう付加熱中にろう材側からのSiの拡散により形成されるAl−Mn−Si−Fe系金属間化合物(α相)が、Fe量増加に伴い増加する。これに伴い、拡散層の固溶Mn量が減少する。他方、心材中心部ではFe量を増加してもこのようなFe系晶出物量の増加は少なく、心材中心での固溶Mn量はFe量によらず高く維持される。これにより、心材中心に対して拡散層でのMn固溶量をより減少させ、犠牲防食効果を強化できることを確認した。
Fe添加量が0.05%未満では上記のAl−Mn−Si−Fe系金属間化合物の生成が不充分となり、このため拡散層でのMn固溶量を減少させることで得られる犠牲防食効果が十分に得られない。また、0.4%を超えると1.0μm以上のサイズのFe系化合物粒子を1.0×104個/mm2以下に抑制する事が困難となり、かえって耐食性の劣化を引き起こすことから、Fe添加量は0.05〜0.4%の範囲に限定した。
【0011】
Cu:0.4〜1.0%
Cuは電位を貴にしてろう材による犠牲防食効果を発揮させると共に、ろう付後強度を高める為に添加される。
また同時に、板厚方向に対する電位勾配の付与を目的として添加されるものである。これは、ろう付加熱中にろう材側へCuが拡散し、心材中心から心材/ろう材界面に向かって濃度勾配を形成し、これが電位勾配となって拡散層の耐食性効果を向上させるものである。
ただしCu添加量0.4%未満では上記効果が十分に得られない。また1.0%を超えるとろう付後加熱処理が施される場合やろう付後の冷却速度が緩慢な場合などにおいて粒界腐食が問題となる恐れがあり、Cu添加量は0.4〜1.0%の範囲に限定した。
【0012】
Si:0.15%以下
心材に添加されたSiはMnの固溶度を著しく低下させ、拡散層の効果を阻害する。この為、Si添加量は0.15%以下として規制した。またSi量の規制は、エロージョンを低く抑え、ろう付後強度を高める効果もある。
【0013】
その他の添加元素として、Ti:0.2%以下、Zr:0.2%まで添加しても本発明の効果を損なうことはない。
Tiは圧延工程を通して板厚方向に層状に分布し、層状の腐食形態とし耐食性を向上させる働きがあり、またZrはろう付加熱後の強度を向上させる為、有効な元素である。
【0014】
次に、1.0μm以上のサイズのFe系化合物粒子を1.0×104個/mm2以下に規制した理由を説明する。なお、本発明においてサイズとは化合物粒子の円相当直径すなわち化合物粒子の面積と同じ面積の円の直径を意味する。
先述のように、鋳造時に形成されたFe系化合物のような晶出物は熱間圧延、冷間圧延や焼鈍などの工程を通して最終板まで持ち来されるが、これは孔食発生の起点として作用する為に耐食性を劣化させる。
そこで本発明では、耐食性及び加工性の劣化を抑えられる範囲として1.0μm以上のサイズのFe系化合物粒子量を上記のように規制した。
1.0μm以上のサイズのFe系化合物粒子が10000個/mm3を超えて存在すると、これを起点として発生する孔食が上述の拡散層による耐食性によっても抑止しきれない。
Fe系晶出物粒子サイズ及び量は、鋳造時の鋳造温度、冷却速度及び均質化処理時の処理温度、処理時間の制御により管理できる。
【0015】
以上のような成分組成を有する心材の片面もしくは両面に、ろう材をクラッドしてブレージングシートを得る。
ろう材には不活性雰囲気ろう付及び真空ろう付に用いられる一般的なAl−Si基合金或いはAl−Si−Mg基合金が使用できる。ここでSi、Mgの組成範囲はSi:7〜12%、Mg:1〜1.5%程度が好ましく、真空ろう付の場合はろう付性向上の為の微量Bi添加などなされても良い。
【0016】
製造工程としては一般的な、鋳造により心材スラブを作製し、均質化処理、熱間クラッド圧延、冷間圧延、焼鈍などを経て最終板を得る工程が用いられる。
ただし、本発明の実施に当っての留意点として、Fe系化合物粒子サイズ及び量の制御については、鋳造時に形成されるサイズや工程中での成長などトータルの履歴を管理する必要がある。
特に、鋳造時の冷却速度を大きくすることはFe系化合物粒子の微細化に有効である。
また、熱間圧延や焼鈍などの加熱を伴う工程では、高温長時間の保持を避け、Fe系化合物粒子の粗大化を抑える事が肝要である。
【0017】
【実施例】
以下に実施例に基づき、本発明の詳細を説明する。
【0018】
実施例1
心材には、Cu:0.6%、Mn:0.6%、Si:0.1%としてFe量を本発明での規制範囲内外で変化させた組成の各種アルミニウム合金を金型鋳造により作製し、600℃・10hの均質化処理を施した。表1には調査に用いた合金のFe量を示す。
ろう材には、Si:11.0%、Mg:1.4%、Fe:0.4%の組成の合金を同じく金型鋳造により作成した。
上記、各種心材の両面にクラッド率15%としてろう材を合わせて熱間クラッド圧延し、続けて冷間圧延により最終板厚0.5mmに仕上げ、焼鈍(350℃−2h)により最終板を得た。
上記ブレージングシートから幅80mm×長さ210mmサイズに切出した試験片を鉛直方向に吊るし、真空度10−5Pa、600℃・1minの条件で真空ろう付加熱した。ろう付加熱前後のブレージングシートを使って以下に示す各種試験を行った。
1)耐食性試験
耐食性試験として、SWAAT試験(ASTM G85:Standard Practice for Modified Salt Spray (Fog) Testing)を行った。ろう付加熱後サンプル下側のろう溜まり部を切断し幅80mm×長さ160mmに試験片を切出し、片面を透明のポリエステルテープでシールし、もう一方の面を腐食試験面とした。
試験片に貫通漏れが生じ、裏面のポリエステルテープにブリスターが発生した時間により評価し、貫通漏れ時間500h以下を不良、500〜1000hを良好、1000h以上を優良とした。
2)SEM観察
ろう付加熱前の板断面において、観察倍率1000倍で10視野観察(観察面積0.1mm2)し、粒子径(円相当直径)1μm以上の化合物の合計数を測定した。
【0019】
以上の試験の結果を表1に示す。
心材Fe量とFe系化合物数を本発明規制範囲に収めた材料(No1〜3)では拡散層でのAl−Mn−Si−Fe系金属間化合物の形成量が十分にあり、これに伴う犠牲防食効果が十分に機能するとともに、孔食の起点となる粗大なFe系化合物数も抑制してあることから良好な耐食性が確認された。
これに比べ、Fe量を本発明規制範囲より過少もしくは過多とした材料では、耐食性が不良であった。Fe量が過少な場合(No4)には拡散層での化合物の形成量が十分でなかった為、犠牲防食効果が十分に機能しなかったものと考えられる。また、Fe量が過多(No5)な場合には1μm以上の粗大な金属間化合物が多数存在しており、カソード反応の発生源が多かった為、腐食の進行が早かったものと解釈できる。
【0020】
【表1】
【0021】
実施例2
心材には、Cu:0.6%、Mn:0.6%、Si:0.1%、Fe:0.3%の組成のアルミニウム合金を各種冷却速度で金型鋳造し、600℃・10hの均質化処理を施した。尚、冷却速度は厚さ方向の金型サイズを変えることにより変化させた。
ろう材には、Si:11.0%、Mg:1.4%、Fe:0.4%の組成の合金を同じく金型鋳造により作成した。
上記、各種心材の両面にクラッド率15%としてろう材を合わせて熱間クラッド圧延し、続けて冷間圧延により最終板厚0.5mmに仕上げ、焼鈍(350℃・2h)により最終板を得た。
幅80mm×長さ210mmサイズに切出した上記ブレージングシートを鉛直方向に吊るし、真空度10−5Pa 、600℃・1minの条件で真空ろう付加熱した。ろう付加熱前後のブレージングシートを使って実施例1と同一の各種試験を行った。
結果を表2に示す。
【0022】
【表2】
【0023】
試験の結果、薄型及び中型サイズの金型を用いて鋳造した、冷却速度の速い材料(No11,No12)では、1μm以上の金属間化合物量が本発明規制範囲内に収まっており、優れた耐食性が得られた。
これに比べ、厚型サイズの金型を用いて鋳造した冷却速度の遅い材料(No13)では1μm以上の金属間化合物量が本発明規制範囲内より過剰に存在し、このため腐食の進行が早くなり耐食性が不良であったものと解釈できる。
【0024】
【発明の効果】
本発明によれば、Cu,Mnを適量添加するとともにSi量を規制し、さらにFe量を規制するとともに1.0μm以上のサイズのFe系化合物粒子を1.0×104個/mm2以下に抑制した心材を用い、その片面あるいは両面にろう材をクラッドすることで、心材とろう材の界面に形成される拡散層に十分な犠牲防食効果を付与することができるとともに、また孔食の発生を抑止することができ、従って厳しい腐食環境下においても優れた耐食性を有するアルミニウム合金ブレージングシートが提供できる。
Claims (1)
- Cu:0.4〜1.0%(質量%、以下同じ)、Mn:0.5〜1.0%、Si:0.15%以下、Fe:0.05〜0.4%を含み、残部がAl及び不可避不純物からなり、1.0μm以上のサイズのFe系化合物粒子を1.0×104個/mm2以下に抑制した心材を用い、この心材の片面もしくは両面にろう材をクラッドしたことを特徴とする耐食性に優れたアルミニウム合金ブレージングシート。
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| JP2003019657A JP2004232003A (ja) | 2003-01-29 | 2003-01-29 | 耐食性に優れたアルミニウム合金ブレージングシート |
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Cited By (3)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP2009197300A (ja) * | 2008-02-25 | 2009-09-03 | Furukawa-Sky Aluminum Corp | 真空ろう付用アルミニウム合金ブレージングシート |
| JP2013199660A (ja) * | 2012-03-23 | 2013-10-03 | Showa Denko Kk | 熱交換器用アルミニウムクラッド材およびその製造方法 |
| WO2016024696A1 (ko) * | 2014-08-13 | 2016-02-18 | 엘에스전선 주식회사 | 열교환기 배관용 고강도 고내식성 알루미늄 합금, 이로부터 제조된 열교환기 배관 및 열교환기 배관의 제조방법 |
-
2003
- 2003-01-29 JP JP2003019657A patent/JP2004232003A/ja active Pending
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