JP2004232116A - ポリエステル系仮撚用原糸 - Google Patents

ポリエステル系仮撚用原糸 Download PDF

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Abstract

【課題】仮撚加工するポリエステル繊維に付着させる油剤で、糸に与える膨潤度と熱分解率を規制することにより、後加工性の良好なポリエステル系仮撚用原糸を提供する。
【解決手段】仮撚用ポリエステル系繊維において、下記の性能▲1▼、▲2▼を満足する油剤が0.3〜1.0質量%付着していることを特徴とするポリエステル系仮撚用原糸。
性能▲1▼:200℃で4時間熱処理した場合の熱分解率が15%以下
性能▲2▼:下記式(1)で表される膨潤度が10%以下
膨潤度(SW)=〔(F1−F2)/F1〕×100 ・・・・・・(1)
ただし、F1:無油剤未延伸糸の自然延伸域最低応力(cN/dtex)
F2:無油剤未延伸糸に油剤原液を純分で25質量%付着させ、5日間放置後の自然延伸域最低応力(cN/dtex)
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はポリエステル系の仮撚用原糸に関するものであり、さらに詳しくは、特定の油剤を付着させたものであって、仮撚加工時の糸切れや毛羽の発生等を減少させることができるポリエステル系仮撚用原糸に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル系フィラメントを仮撚し、嵩高糸にする方法は古くから行われている。仮撚方法としては、未延伸糸を延伸し、低速で仮撚する方法や、未延伸糸を高速で捲き取り、高配向未延伸糸とし、比較的高速で延伸同時仮撚する方法等がある。
【0003】
しかしながら、近年、染色性や物理的性質を変えるため、ポリエチレンテレフタレートに各種の第3成分を共重合したポリマーを用いたフィラメントを仮撚することが多くなり、さらにポリエチレンテレフタレートを用いた場合でも特殊な仮撚、例えば、単糸繊度が1dtex以下の極細糸の仮撚や、高速仮撚、高温仮撚等が行われることが多くなった。このため、従来の油剤が付与された原糸では、仮撚時の糸切れ、毛羽、ヒーター汚れの発生、さらには最終製品の品位不良等のトラブルが起こることが多くなった。
【0004】
ポリエステル系仮撚用原糸に付与する油剤としては、一般にプロピレンオキシドとエチレンオキシドの共重合物(以下、PO/EOポリエーテルと略す)を主成分とし、制電剤としてアニオン系界面活性剤、その他調整剤を添加したものが多く用いられている。この理由はPO/EOポリエーテルが仮撚時、ヒーター上に落ちても熱分解して飛散するため、ヒーター汚れが少ないことが挙げられる。しかしながら、PO/EOポリエーテルはポリエステルを膨潤させ、繊維内部の未反応物を析出させやすい性質を有しており、この性質はポリエチレンテレフタレートには大きな影響は与えないものの、第3成分を共重合したポリエステルはその分子構造がルーズなものとなるため、大きな影響を与え、繊維内部の未反応物を析出させやすい。これにより仮撚時の糸切れ、毛羽発生、最終製品の品位不良等のトラブルが発生する。
【0005】
また、油剤成分の大半は分解して飛散するが、分解せずヒーター上に残留したものは、固いタール状となり取れにくいため、毛羽の発生の原因となったり、ノット移行不良等のトラブルとなることが多い。
【0006】
これらの問題を解決するために各種の方法が提案されている。例えば特許文献1には、高速仮撚加工において、長期間の安定的な仮撚加工を可能とするものとして、高温での油剤の表面張力と加熱残査を規制した合成繊維用の紡糸油剤が提案されている。
【0007】
また、特許文献2には、特に細デニール糸を高速度で摩擦仮撚加工しても毛羽や断糸の発生がなく、しかも高温のヒーター上にスラッジ(油剤の残留成分)の蓄積もなく、安定した加工性が得られる延伸仮撚加工方法として、未延伸マルチフィラメント糸に、数種のPO/EOポリエーテルを用い、PO/EO比や配合比を特定のものとした油剤を付与する方法が提案されている。
【0008】
さらに、特許文献3には、非接触加熱方式の何れのタイプを用いる仮撚加工においてもタールやスカムの発生しない油剤として、パーフルオロアルキル基を有するモノマーを必須構成単位とし、表面張力と加熱残渣率を特定のものとした合成繊維用紡糸油剤が提案されている。
【0009】
しかしながら、これらのいずれにおいてもあらゆる繊度やポリマー種類のポリエステル糸、さらには種々の速度や方法の仮撚加工方法に対応できるものではなく、その効果は十分ではなかった。
【0010】
【特許文献1】
特開2001−348778号公報
【特許文献2】
特許第3086153号公報
【特許文献3】
特許第3032889号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記のような問題点を解決するものであって、あらゆる繊度やポリマー種類のポリエステル糸、さらには種々の速度や方法の仮撚加工方法に対応可能で、仮撚時の糸切れ、毛羽、ヒーター汚れの発生、さらには最終製品の品位不良等のトラブルを減少させることができるポリエステル系仮撚用原糸を提供することを課題とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために検討した結果、ポリエステルの仮撚加工時の糸切れや毛羽の発生等に影響する要因として、紡糸油剤が未延伸糸に与える膨潤度が影響することを見い出した。そして、本発明者らは、特開2000−248460号公報において、アルカリ減量用ポリエステルフィラメントにおいて、未延伸糸の強伸度曲線から算出する膨潤度が一定の値以下である油剤を付着させることを提案した。
【0013】
その後の研究で、油剤の膨潤度を一定の値以下にすることの重要性に加えて、ポリエステル系仮撚用原糸に付着させる油剤の熱分解挙動に注目し、熱分解速度を極力低くすることが重要であることを見い出し、本発明に到達した。
【0014】
すなわち、本発明は、仮撚用ポリエステル系繊維において、下記の性能▲1▼、▲2▼を満足する油剤が0.3〜1.0質量%付着していることを特徴とするポリエステル系仮撚用原糸を要旨とするものである。
性能▲1▼:200℃で4時間熱処理した場合の熱分解率が15%以下
性能▲2▼:下記式(1)で表される膨潤度が10%以下
膨潤度(SW)=〔(F1−F2)/F1〕×100 ・・・・・・(1)
ただし、F1:無油剤未延伸糸の自然延伸域最低応力(cN/dtex)
F2:無油剤未延伸糸に油剤原液を純分で25質量%付着させ、5日間放置後の自然延伸域最低応力(cN/dtex)
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明はポリエステル系仮撚用原糸に関するものであり、この原糸としては、一旦、未延伸糸として捲取、その後、延伸して延伸糸とした原糸、紡糸と延伸を連続して行った原糸(いわゆるスピンドロー糸とした原糸)、高速で捲取、高配向未延伸糸とし、延伸同時仮撚するための原糸、これらのいずれの原糸であってもよい。
【0016】
ポリエステル系原糸を構成するポリエステルポリマーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等を用いることができる。そして、ポリエステルポリマー中には本来の特性や製糸性を損なわない程度であれば、必要に応じて艶消し剤、撥水剤、制電剤、表面改質剤、難燃剤、顔料、着色剤等の添加剤、あるいは、共重合物質が含有されていてもよい。
【0017】
中でも、前記したように、第3成分を共重合したポリエステルはその分子構造がルーズなものとなるため、付着油剤による影響が大きく、トラブルの発生も多い。本発明においては、そのような第3成分を共重合したポリエステルにおいて効果が大きく、特に、1種以上の第3成分を1モル%以上共重合したポリエチレンテレフタレートにおいて好適である。なお、第3成分としては特に限定するものではないが、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸、ジエチレングリコール、7,4−シクロヘキサンジオール等の脂肪族、脂環式ジオール、P−ヒドロキシ安息香酸等が挙げられる。
【0018】
また、油剤を付着させる方法としては、ローラ式給油方式、スリットガイド式給油方式等いずれの方法で付与されたものでもよい。
さらに、仮撚方法としては、接触ヒーター方式、非接触ヒーター方式のいずれの場合にも有効である。
【0019】
本発明において繊維に付与する油剤は、性能▲1▼、▲2▼を有している必要がある。まず、性能▲1▼として、200℃で4時間加熱した場合の熱分解率が15%以下である。この熱分解率が15%を超えると、ヒーター汚れが激しくなり、糸切れ、毛羽も多くなり、ヒーター上での発煙が激しくなる。
【0020】
一般に熱分解率が高い油剤を用いる場合、ヒーター上に油剤が落ちた場合には、分解させて油剤を飛散させるのであるが、本発明者らは油剤の分解を極力抑え、ヒーター上に落ちた油剤が分解する前に走行する糸条で持ち去る方法が有利であるという見解を得た。また、熱によって油剤が分解しないため、最後まで糸条を油剤が保護し、ガイド等との接触による糸切れ、毛羽の発生も抑制できることを見い出したのである。
【0021】
なお、熱分解率の測定法であるが、油剤を純分で2g精秤し、これをシャーレに入れて、200℃に加熱したオーブン中に4時間入れる。その後、取り出し、冷却後、再度質量(g)を測定し(W1)、次式によって熱分解率を算出する。
熱分解率(%)=〔(2−W1)/2〕×100
【0022】
油剤は各種成分の混合物であり、油剤成分同志の相互作用により一概に決めることは難しいが、熱分解率が上記のような低い値を示す油剤としては、次のようなものがある。ノニオン系界面活性剤として、多価アルコールのエステル類、硫黄を含んだ脂肪酸エステル、さらにアニオン系界面活性剤として、脂肪酸のK塩、ホスフェート系化合物などが挙げられる。
【0023】
一方、PO/EOポリエーテルや鉱物油及び脂肪酸エステル等は熱分解しやすい傾向であり、これらの化合物を多量に含むと熱分解率は高くなる。従来使用されているPO/EOポリエーテルを主成分とした、一般の仮撚用油剤の熱分解率は80%以上のものがほとんどである。
【0024】
さらに、熱分解率を15%以下にする方法として、油剤中に含硫黄脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエステル、石鹸類等を添加することで熱分解速度を低くすることができる。
【0025】
次に、性能▲2▼として、下記式(1)で表される膨潤度が10%以下であることが必要である。
膨潤度(SW)=〔(F1−F2)/F1〕×100 ・・・・・・(1)
ただし、F1:無油剤未延伸糸の自然延伸域最低応力(cN/dtex)
F2:無油剤未延伸糸に油剤原液を純分で25質量%付着させ、5日間放置後 の自然延伸域最低応力(cN/dtex)
【0026】
膨潤度が10%を超えると、このような油剤を付着させたものは繊維が弱くなったり、熱処理工程や加撚工程で繊維中の未反応物や添加剤および中間生成物を析出する。これにより、糸切れや毛羽が発生したり、ヒーターやローラに析出した物質が付着して汚れが激しくなり、さらに硬化してヒーター上に堆積して、糸切れ、毛羽の発生、ノット移行不良等のトラブルの原因となる。
【0027】
なお、一般に、膨潤度は溶質が溶媒によって膨潤され膨らみ、その膨らみ度合いを調べる。しかしながら、膨らみ度合いの測定は難しく、誤差が大きい。本発明の膨潤度は特開2000−248460号で述べたように未延伸糸の強伸度を描き測定するものである。
【0028】
具体的には、無油剤または油剤付着量が0.05%以下の未延伸糸に、測定する油剤を油剤純分で糸条に対して25質量%付着させ(油剤原液中に浸漬させる)、その後、空気中に5日間放置する。この繊維の強伸度曲線を、オリエンティック社製テンシロンUTM−4−100型を用い、試料長100mm、引張速度 100mm/minの条件で測定して描く。同時に油剤を付与することなく同条件で空気中に5日間放置した無油剤糸の強伸度曲線も描き、各々、図1に示したように自然延伸域の最低応力(強度)を調べ、式(1)で膨潤度を算出する。なお、実線が無油剤糸、破線が油剤付着糸である。
【0029】
この膨潤度が繊維に悪影響を与えるパラメーターとなり、膨潤度が大きいほど、仮撚加工等でトラブルが起こりやすいのである。
この理由については明らかでないが、ポリエチレンテレフタレートや共重合ポリエステル繊維に水エマルジョン油剤を付着させ、長時間、放置すると繊維内部に油剤と水の混合物が浸透していく。この場合、水は蒸発でほとんどなくなるので浸透は少ないが、油剤は繊維内部に徐々に浸透していき、浸透した油剤は繊維外部に出ることはない。この糸条を延伸すると繊維内部の油剤が潤滑剤のような役割をはたし、延伸張力すなわち自然延伸域の張力を小さくするのである。従って、自然延伸域の応力(強度)が低ければ、油剤が繊維内部に多量に浸透しているということであり、自然延伸域の応力が高い方が膨潤度は低いのである。
【0030】
次に、膨潤度を低くすることができる油剤成分としては、HLB値の低いもの、すなわち親水親油バランスで親油性に優れたものが好ましい。例えば、主成分として用いられるものとして、オクチルパルミテート、トリメチロールプロパントリラウリレート、オレイルラウリルチオジプロピオネート等が挙げられる。
一方、膨潤性が高くなるものとしては、例えば、PO/EOポリエーテルやポリオキシエチレンを含んだノニオン系界面活性剤及びアニオン系界面活性剤を多く含んだ油剤は繊維をよく膨潤させる。
【0031】
まず、一般的に仮撚用油剤の主成分として用いられるPO/EOポリエーテルにおいては、分子量が小さいと繊維を膨潤させやすい。また、PO/EO比であるがEO成分が多いと繊維を膨潤させやすい。次に乳化剤として、よく用いられるポリオキシエチレンのアルキルエーテルやヒマシ油エーテルも繊維を膨潤させやすい。さらに制電剤として用いるアルキルスルホネートの金属塩、アルキルホスフェートの金属塩等のアニオン系界面活性剤も分子量が小さいと(アルキル基の炭素数が小さいと)繊維を膨潤させやすい。また、低分子量の脂肪酸エステルや低級アルコールも繊維を膨潤させやすい。さらに、さほど大きな影響はないが直鎖状の化合物は分岐したものに比べ、繊維を膨潤させやすい傾向にある。
【0032】
そして、本発明の繊維においては、上記したような油剤が0.3〜1.0質量%付着している。
これは油剤の純分としての付着量であり、通常、水エマルションとして付与する場合が多いが、水エマルションとする場合は5〜15質量%の濃度の油剤とし、油剤純分として0.3〜1.0質量%付着量となるように付着させることが必要である。
付着量が0.3質量%未満であると、繊維を保護する効果が少なくなり、毛羽や糸切れの発生が多くなる。一方、1.0質量%を超えると、過剰の油剤が付与されているため、繊維に付与された油剤がヒーター上に落ち、上述したこの油剤を用いても、ヒーター汚れが激しくなるので好ましくない。
【0033】
【実施例】
次に、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、例中の特性値は下記のように測定した。
1)油剤付着量
糸条2gを採取し、エタノールで油剤を抽出し、エタノールを蒸発乾固させて質量(W2)を測定し、次式によって算出した。
油剤付着量(%)=(W2/2)×100
2)膨潤度
前記の方法で測定、算出した。
3)熱分解率
前記の方法で測定、算出した。
4)ヒーター汚れ、ローラ汚れ
実施例、比較例における仮撚(連続20時間行い、これを2回繰り返す。ただし、1回目と2回目の間ではヒーター、ローラの清掃は行わず)を行った後、仮撚装置のヒーター汚れ、ローラ(延伸ローラ)汚れの状態を目視にて観察し、2回とも○を合格とした。
(判定方法)
a)ヒーター汚れ
○:ヒーター汚れなし
△:ヒーター汚れややあり
×:ヒーター汚れ激しい
b)ローラ汚れ(延伸ローラ)
○:ローラ汚れなし
△:ローラ汚れややあり
×:ローラ汚れ激しい
5)仮撚時の糸切れおよび仮撚チーズの毛羽
実施例、比較例における仮撚(連続20時間行い、これを2回繰り返す。)における糸切れ回数を調べた。また、仮撚チーズ(3Kg捲又は1Kg捲)の表面および端面を観察し、毛羽の個数を調べた。
6)ノット移行
ノット移行調査用として捲いた、1Kg捲又は0.51Kg捲の11スプールを用い、ノットつなぎをして仮撚を行い、ノット移行不良の数を調べた。
7)ヒーター上での発煙
仮撚時、ヒーター上での発煙を目視で判定し、○を合格とした。
○:発煙、ほとんどなし
△:発煙、ややあり
×:発煙、激しい
【0034】
実施例1〜2、比較例1〜5
酸化チタンを0.4質量%含んだポリエチレンテレフタレートを用い、36ホールの丸断面ノズルを用い、紡糸温度295℃、吐出量38g/min、紡糸速度3000m/minで溶融紡糸を行った。この時、ローラ給油方式で表1に示した油剤の水エマルションを付着させ、油剤付着量0.40質量%(油剤純分として)の高配向未延伸糸を得た。なお、膨潤度の測定は同条件で油剤付着量0.02質量%の未延伸糸を採取して測定し、表2に示した。捲き量は5Kg捲を2スプール、ノット移行調査用として1Kg捲を11スプールとした。得られた高配向未延伸糸は、繊度124dtex、強度2.6cN/dtex、伸度115%であった。
この高配向未延伸糸を用い、帝人製機(株)製仮撚機 SDS−8を用いて、連続20時間、仮撚試験を2回繰り返して行った。なお、仮撚条件は仮撚速度:500m/min、DR:1.48、D/Y:1.83、ヒーター温度:200℃とし、3Kg捲の仮撚糸を得た。この時のヒーターおよびローラの汚れ状況、発煙状況、糸切れ回数、毛羽個数、ノット移行不良回数を表2に示した。
【0035】
【表1】
Figure 2004232116
【0036】
【表2】
Figure 2004232116
【0037】
表2から明らかなように、実施例1〜2は熱分解率が15%以下で膨潤度が10%以下の油剤を付与したものであるので、仮撚時にヒーターおよびローラ汚れおよび発煙がほとんどなく、糸切れ、毛羽もほとんどなく、仮撚加工性が良好なものであった。
一方、比較例1は、主成分がPO/EOポリエーテルで構成されている一般的な仮撚用油剤であり、膨潤度及び熱分解率が高いものが付与されたものであったため、長時間仮撚するとヒーター汚れ、ローラ汚れが発生し、糸切れや毛羽が発生し、ノット移行不良が発生するようになった。比較例2、3は、一般的な織物用や編物用として用いられる油剤であって、膨潤度及び熱分解率が高いものが付与されたものであったため、主成分である鉱物油や脂肪酸エステルがヒーター上で揮発し、発煙が激しく、さらにヒーターやローラ汚れも発生し、糸切れ、毛羽、ノット移行不良も時間とともに多くなった。比較例4は、膨潤度が高い油剤を付与したものであったため、時間とともにヒーターやローラの汚れが発生し、糸切れ、毛羽、ノット移行不良が多くなった。さらに、比較例5は、熱分解率が29.5%の油剤を付与したものであったため、熱分解する部分と熱分解しない部分があり、ヒーター上に油剤が徐々にタール上となって蓄積し、糸切れ毛羽、ノット移行不良が徐々に多くなった。
【0038】
実施例3〜4、比較例6〜10
5−ナトリウムスルホイソフタル酸を酸成分に対し、2.0モル%共重合したポリエチレンテレフタレートを30ホールの丸断面ノズルを用い、紡糸温度295℃、吐出量82g/min、紡糸速度3200m/minで溶融紡糸を行った。このとき油剤の付着はローラ給油方式で表1に示した油剤の水エマルションを付着させ、油剤付着量(油剤純分での付着量)を表1に示す量とした。この糸を延伸速度750m/分、加熱ローラ温度85℃、延伸倍率1.55で延伸し、延伸糸を得た。なお、膨潤度の測定は同条件で油剤付着量0.02質量%の未延伸糸を採取して測定し、表3に示した。捲き量は3Kg捲を2スプール、ノット移行調査用として0.51Kg捲を11スプールとした。得られた延伸糸は、繊度165dtex、強度3.6cN/dtex、伸度32%であった。
この延伸糸を三菱LS−6仮撚機を用い、連続20時間、仮撚試験を2回繰り返して行った。なお、仮撚条件は、スピンドル回転数300000rpm、撚数3000回/m、ヒーター温度190℃、オーバーフィード率1.6%とし、1Kg捲の仮撚糸を得た。この時のヒーターおよびローラの汚れ状況、発煙状況、糸切れ回数、毛羽個数、ノット移行不良回数を表3に示した。
【0039】
【表3】
Figure 2004232116
【0040】
表3から明らかなように、実施例3〜4は熱分解率が15%以下で膨潤度が10%以下の油剤を付与したものであったので、仮撚時にヒーターおよびローラ汚れおよび発煙がほとんどなく、糸切れ、毛羽もほとんどなかった。
一方、比較例6は、油剤の付着量が多すぎたため、ヒーター汚れが発生し、ノット移行不良が多くなった。比較例7は、油剤付着量が少なすぎたため、糸切れや毛羽の発生が多くなった。比較例8、9、10は膨潤度及び熱分解率が高いものが付与されたものであったため、ヒーター汚れが生じ、糸切れ、毛羽、ノット移行不良の数も多く、さらに、比較例9、10では発煙も激しかった。
【0041】
【発明の効果】
本発明のポリエステル系仮撚用原糸によれば、仮撚加工するポリエステル繊維に付着させる油剤を特定の膨潤度と熱分解率を有するものにしているので、仮撚時の糸切れ、毛羽、ヒーター汚れの発生、さらには最終製品の品位不良等のトラブルを減少させることができる。そして、あらゆる繊度やポリマー種類のポリエステル糸、さらには種々の速度や方法の仮撚加工方法においても対応可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における膨潤度の測定方法を示す強伸度曲線であり、実線が無油剤糸、破線が油剤付着糸である。

Claims (2)

  1. 仮撚用ポリエステル系繊維において、下記の性能▲1▼、▲2▼を満足する油剤が0.3〜1.0質量%付着していることを特徴とするポリエステル系仮撚用原糸。
    性能▲1▼:200℃で4時間熱処理した場合の熱分解率が15%以下
    性能▲2▼:下記式(1)で表される膨潤度が10%以下
    膨潤度(SW)=〔(F1−F2)/F1〕×100 ・・・・・・(1)
    ただし、F1:無油剤未延伸糸の自然延伸域最低応力(cN/dtex)
    F2:無油剤未延伸糸に油剤原液を純分で25質量%付着させ、5日間放置後の自然延伸域最低応力(cN/dtex)
  2. 仮撚用ポリエステル系繊維が、1種以上の第3成分を1モル%以上共重合したポリエチレンテレフタレートである請求項1記載のポリエステル系仮撚用原糸。
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