JP2004232172A - 難燃性ポリエステル繊維 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】エステル結合可能な官能基を有するリン化合物をリン原子換算として500〜50,000ppm共重合したポリエステルであって、重縮合触媒として置換基が特定の官能基からなる群より選ばれるチタン化合物をチタン原子換算で0.5〜150ppm含有することを特徴とする難燃性ポリエステル繊維。
【選択図】なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、難燃性ポリエステル繊維に関するものである。さらに詳しくは
ろ圧上昇がなく、製糸性が良好であり、優れた難燃性を有すると共に、従来品
に比べて強度、タフネスに優れ、かつ、チタン触媒使いであっても色調が著しく改良された難燃性ポリエステル繊維に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステルはその機能性の有用さから多目的に用いられており、例えば、衣料用、資材用、医療用に用いられている。その中でも、汎用性、実用性の点でポリエチレンテレフタレートが優れ、好適に使用されているが、火災予防等の観点から、種々のポリエステル成形品に難燃性を付与することが要望されている。特にポリエステル繊維は、衣料、寝具、カーテン、カーペット等に多く用いられているものの、難燃性の面では不十分であることから、この点の改良について様々な努力が払われてきた。
【0003】
従来、ポリエステルに難燃性を付与する方法としては、(1)難燃剤を成形品の表面に付着、又は内部までしみ込ませる方法(後加工法)、(2)難燃剤をポリエステルの製造時、又は成形時に練り込む方法(ブレンド法)、(3)燃燃剤をポリエステルの製造時に添加し、共重合する方法(共重合法)等の方法が提案されている。
【0004】
これらの方法の中で、後加工法は、風合いが粗雑になったり、洗濯、摩擦により難燃剤が脱落して性能が低下したりする欠点がある。また、ブレンド法では成形物の製造工程において難燃剤のしみ出しが起こり、トラブルを引き起こす原因となる。それに対してポリマー製造時に難燃剤を共重合させる方法は、上述したような欠点を克服できることから、最も工業的価値が高く、好適に用いられる方法である。共重合法において使用できる難燃剤としては、エステル形成性官能基を有するハロゲン化合物やリン化合物が知られているが、着色が少なく、耐光性に優れた成型品が得られること、および燃焼時に有毒ガスは発生しないことから、リン化合物が優れている。
【0005】
このリン化合物として、リン酸エステルを用いる方法(特許文献1)があるが、この方法では添加量を多くすると3次元化によってポリエステルのゲル化が生じるためにリン化合物を多量に共重合できないという問題がある。また、ホスホン酸化合物を用いる方法(特許文献2)もあるが、ポリマー製造時にリン化合物の飛散が多く、また、重合反応性が低いためにリン化合物を多量に共重合できないという問題がある。こうした問題点を解決する方法として、カルボキシホスフィン酸を共重合する方法(特許文献3)や特定の化学構造を有する有機リン化合物を共重合する方法(特許文献4)が開示されている。
【0006】
これらカルボキシホスフィン酸や特定の化学構造を有する有機リン化合物はいずれも重合反応性は良好であり、上記したような3次元化や飛散といった問題もないことから、難燃性ポリエステルの原料として有用である。
【0007】
一方、これらのリン化合物を共重合する場合、重縮合触媒としては一般的に三酸化アンチモンが用いられているが、上記リン化合物を用いた場合にもアンチモン触媒の還元を促進し、ポリマー中に不溶性な異物(アンチモン触媒残渣)の生成によってポリマーの透明性が低下したり、黒んだ灰色の色調になるという欠点がある。さらに、連続運転を行う場合には不溶性の異物が重合時に缶壁に付着し、次第に蓄積して伝熱不良等を引き起こす原因となる。また、アンチモン触媒残渣は比較的大きな粒子状となりやすいために成形加工時のフィルター詰まりによるろ圧上昇、紡糸の際の糸切れ等の原因になるなどの好ましくない特性を有しており、操業性を低下させる一因となっている。また、得られるポリエステル繊維の強度やタフネスが低下するだけでなく、白度の低下や染色鮮明性に欠ける等の品質低下となる。
【0008】
上記のような背景からアンチモン化合物以外の重縮合触媒として、アンチモン系化合物以外の化合物に求める場合、ゲルマニウム化合物が知られているが、ゲルマニウム化合物は非常に高価であり汎用的に用いることは難しい。一方、テトラエチルチタネート、テトラブチルチタネートのようなチタン化合物を用いることも提案されている(特許文献5)。しかしながら、このようなチタン化合物を使用した場合には、上記のような不溶性異物の生成に起因するような問題は解決できるものの、得られたポリエステルは黄味が強く、また、溶融時の耐熱性が不良であることから紡糸時の粘度(IV)低下が大きいために強度やタフネスが低下したり、得られたポリエステル繊維も黄味が強い等、品質面でも問題となっていた。このような状況から、さらなる改善が求められている。
【0009】
【特許文献1】
特公昭38−7244号公報
【0010】
【特許文献2】
特公昭36−20771号公報
【0011】
【特許文献3】
特開昭50−56488号公報
【0012】
【特許文献4】
特公昭55−41610号公報
【0013】
【特許文献5】
特開平6−287414号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は上記従来の問題を解消し、ポリエステル繊維の製造時においてろ圧上昇がなく、製糸性が良好であり、優れた難燃性を有すると共に、従来品に比べて強度、タフネスに優れ、かつ、チタン触媒使いであっても色調が著しく改良された難燃性ポリエステル繊維を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本発明のポリエステル繊維は、主として次の構成を有する。すなわち、エステル結合可能な官能基を有するリン化合物をリン原子換算として500〜50,000ppm共重合したポリエステルであって、重縮合触媒として置換基が下記式1〜式3で表される官能基からなる群より選ばれる少なくとも1種であるチタン化合物を、チタン原子換算で0.5〜150ppm含有することを特徴とする難燃性ポリエステル繊維である。
【0016】
【化7】
【0017】
【化8】
【0018】
【化9】
【0019】
(ここで、式1〜式3のR1 〜R3はそれぞれ独立に水素または炭素数1〜30の炭化水素基を表す。)
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明のポリエステルは、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体及びジオールまたはそのエステル形成性誘導体から合成される。ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体として、具体的には、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、、アジピン酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等のジカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体などをあげることができる。これらの2種以上を併用してもよいが、テレフタル酸およびそのエステル形成性誘導体を得られるポリエステルにおける全ジカルボン酸成分に対して80モル%以上を用いることが耐熱性の点から好ましい。また、ジオールおよびそのエステル形成性誘導体として、具体的には、エチレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等のジオキシ化合物などをあげることができる。これらの2種以上を併用してもよいが、エチレングリコールを得られるポリエステルにおける全ジカルボン酸成分に対して80モル%以上を用いることが耐熱性の点から好ましい。
【0021】
本発明において難燃剤として用いられるリン化合物としては、エステル結合可能な官能基を有するリン化合物であれば限定されないが、例えば下記式4〜式6で表されるリン化合物が好ましく用いられる。
【0022】
【化10】
【0023】
【化11】
【0024】
(ここで、R4 は炭素数が1〜18の1価の有機基を表し、R5、R7は炭素数が1〜18の1価の有機基、又は水素原子を表し、R6は炭素数1〜18の2価の炭化水素基を表す。)
【0025】
【化12】
【0026】
(ここで、R8は1価のエステル形成性官能基であり、R9、R10はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10個の炭化水素基、R8より選ばれ、さらにAは2価もしくは3価の有機残基を表す。また、n8は1又は2であり、n9、n10はそれぞれ0〜4の整数を表す。)
式4のリン化合物として、具体的には、メチル(2−カルボキシエチル)ホスフィン酸(以下MCEPAという)、メチル(4−カルボキシブチル)ホスフィン酸、フェニル(2−カルボキシエチル)ホスフィン酸(以下PCEPAという)、フェニル(4−カルボキシブチル)ホスフィン酸、フェニル{2−(β−ヒドロキシエトキシカルボニル)エチル}ホスフィン酸、フェニル{2−(メトキシカルボニル)エチル}ホスフィン酸、フェニル{2−(β−ヒドロキシエトキシカルボニル)エチル}ホスフィン酸メチル、フェニル{2−(β−ヒドロキシエトキシカルボニル)エチル}ホスフィン酸フェニル、フェニル{2−(β−ヒドロキシエトキシカルボニル)エチル}ホスフィン酸(2−ヒドロキシエチル)等を挙げることができ、これらの2種以上からなってもよい。
【0027】
なお、これら式4で示されるホスフィン酸化合物におけるR1は炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基であり、R2は、2−ヒドロキシエチル基又は水素原子であることが好ましい。
【0028】
また、式5のリン化合物として、具体的には次の式7〜式11の化合物が挙げられる。
【0029】
【化13】
【0030】
【化14】
【0031】
【化15】
【0032】
【化16】
【0033】
【化17】
【0034】
さらに、式6のリン化合物として、具体的には式12〜式34の化合物が挙げられる。
【0035】
【化18】
【0036】
【化19】
【0037】
【化20】
【0038】
【化21】
【0039】
【化22】
【0040】
【化23】
【0041】
【化24】
【0042】
【化25】
【0043】
【化26】
【0044】
【化27】
【0045】
【化28】
【0046】
【化29】
【0047】
【化30】
【0048】
【化31】
【0049】
【化32】
【0050】
【化33】
【0051】
【化34】
【0052】
【化35】
【0053】
【化36】
【0054】
【化37】
【0055】
【化38】
【0056】
【化39】
【0057】
【化40】
【0058】
本発明において用いられるリン化合物は、得られるポリエステルに対しリン原子換算として500〜50,000ppm、好ましくは1,000〜30,000ppm含有するよう添加される。500ppm以上とすることにより十分な難燃性能が発現する。また、50,000ppm以下であるとポリエステル本来の物理的性質の低下がなく、また、ポリエステル繊維を製造する際の操業性低下もなく好ましい。
【0059】
さらに、本発明において用いられる式4〜式6で示されるリン化合物以外のリン化合物を併用して、ポリエステルの反応系に添加してもよい。本発明におけるリン化合物の反応系への添次時期は、任意でよく、添加したリン化合物の反応系への飛散が比較的少ないこと、および重合時間が比較的短くなることから、エステル交換反応又はエステル化反応開始から重合反応が進行して反応物の極限粘度が0.3に達するまでの間に添加することが好ましい。リン化合物は、グリコールなどの液体に分散させたスラリーや溶液などの形態で反応系へ添加してもよい。
【0060】
本発明においては、重縮合触媒として置換基が下記式1〜式3で表される群より選ばれる少なくとも1種である官能基からなるチタン化合物を用いる必要がある。
【0061】
【化41】
【0062】
【化42】
【0063】
【化43】
【0064】
(ここで、式1〜式3のR1 〜R3はそれぞれ独立に水素または炭素数1〜30の炭化水素基を表す。)
すなわち、難燃剤としてのリン化合物を添加したポリエステルの重縮合触媒として前記のチタン化合物を使用することによって、重合反応時の遅延や、不溶性異物の生成に起因するような問題がないためにポリエステル繊維の製造時において、ろ圧上昇がなく、製糸性が良好である。また、優れた難燃性を有すると共に、従来品に比べて強度、タフネスに優れ、かつ、チタン触媒使いであっても色調が著しく改良されたポリエステル繊維を得ることが可能となる。
【0065】
本発明における重縮合触媒として前記のチタン化合物は、化1としてはエトキシド、プロポキシド、イソプロポキシド、ブトキシド、2−エチルヘキソキシド等のアルコキシド基、乳酸、リンゴ酸、クエン酸等のヒドロキシ多価カルボン酸系化合物からなる官能基が挙げられる。
【0066】
また、式2としては、アセチルアセトン等のβ−ジケトン系化合物、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のケトエステル系化合物からなる官能基が挙げられる。さらに式3としては、フェノキシ、クレシレイト、サリチル酸等からなる官能基が挙げられる。
【0067】
なかでも式1が含まれていることがポリマーの熱安定性および色調の観点から好ましい。
【0068】
本発明におけるチタン化合物は得られるポリマーに対してチタン原子換算で0.5〜150ppm含有されていることが必要である。1〜100ppmであるとポリマーの熱安定性や色調がより良好となり好ましく、更に好ましくは3〜50ppmである。
【0069】
なお、本発明の触媒とは、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体及びジオールまたはそのエステル形成性誘導体から合成されるポリマーにおいて、以下の(1)〜(3)の反応全てまたは一部の素反応の反応促進に実質的に寄与する化合物を指す。
(1)ジカルボン酸成分とジオール成分との反応であるエステル化反応
(2)ジカルボン酸のエステル形成性誘導体成分とジオール成分との反応であるエステル交換反応
(3)実質的にエステル反応またはエステル交換反応が終了し、得られたポリエチレンテレフタレート低重合体を脱ジオール反応にて高重合度化せしめる重縮合反応
本発明で用いるチタン化合物は、ポリエステルの反応系にそのまま添加してもよいが、予め該化合物をエチレングリコール等のポリエステルを形成するジオール成分を含む溶媒と混合し、溶液またはスラリーとし、必要に応じて該チタン化合物合成時に用いたアルコール等の低沸点成分を除去した後、反応系に添加すると、ポリマー中での異物生成がより抑制されるため好ましい。添加時期はエステル化反応触媒やエステル交換反応触媒として、原料添加直後に触媒を添加する方法や、原料と同伴させて触媒を添加する方法がある。また、重縮合反応触媒として添加する場合は、実質的に重縮合反応開始前であればよく、エステル化反応やエステル交換反応の前、あるいは該反応終了後、重縮合反応触媒が開始される前に添加してもよい。
【0070】
また、本発明においてチタン化合物を予めリン化合物と反応させたものを触媒として用いることもできる。この場合には、(1)チタン化合物を溶媒に混合してその一部または全部を溶媒中に溶解し、この混合溶液にリン化合物を原液または溶媒に溶解希釈させ滴下する。(2)前記チタン化合物の配位子を用いる場合は、チタン化合物または配位子化合物を溶媒に混合してその一部または全部を溶媒中に溶解し、この混合溶液に配位子化合物またはチタン化合物を原液または溶媒に溶解希釈させ滴下する。また、この混合溶液にさらにリン化合物を原液または溶媒に溶解希釈させ滴下すると、熱安定性及び色調改善の観点から好ましい。上記の反応条件は0〜200℃の温度で1分以上、好ましくは20〜100℃の温度で2〜100分間加熱することによって行われる。この際の反応圧力には特に制限はなく、常圧でも良い。また、ここで用いる溶媒としては、チタン化合物、リン化合物及びカルボニル基含有化合物の一部または全部を溶解し得るものから選択することができるが、好ましくは、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ベンゼン、キシレンから選ばれる。
【0071】
また、本発明のポリエステルの重合時、任意の時点でさらにコバルト化合物を添加すると得られるポリマーの色調が良好となり好ましい。本発明のコバルト化合物としては特に限定はないが、具体的には、例えば、塩化コバルト、硝酸コバルト、炭酸コバルト、コバルトアセチルアセトネート、ナフテン酸コバルト、酢酸コバルト四水塩等が挙げられる。
【0072】
さらに、酸化チタン、酸化ケイ素、炭酸カルシウム、チッ化ケイ素、クレー、タルク、カオリン、カーボンブラック等の顔料のほか、従来公知の着色防止剤、安定剤、抗酸化剤等の添加剤を含有しても差支えない。
【0073】
本発明の難燃性ポリエステル繊維は、IV0.70以上とするのが強度およびタフネスの点で好ましく、0.75以上がより好ましい。なお、製糸性など操業性における安定性から、IVは1.2以下が好ましい。
【0074】
また、カルボキシル末端基量(以下、COOH量という)は、45eq/トン以下とするのが、紡糸時におけるIV低下の抑制、さらには染色工程等の高次加工における糸強度の低下抑制等の点から好ましく、35以下がさらに好ましい。
【0075】
本発明の難燃性ポリエステル繊維は、以下の方法によって得られる。具体例としてポリエチレンテレフタレートの例を記載するがこれに限定されるものではない。
【0076】
先ず、ポリエチレンテレフタレートは通常、次のいずれかのプロセスで製造される。すなわち、(1)テレフタル酸とエチレングリコールを原料とし、直接エステル化反応によって低重合体を得、さらにその後の重縮合反応によって高分子量ポリマーを得るプロセス、(2)ジメチルテレフタレートとエチレングリコールを原料とし、エステル交換反応によって低重合体を得、さらにその後の重縮合反応によってポリマーを得るプロセスである。ここでエステル化反応は無触媒でも反応は進行するが、前述のチタン化合物を触媒として添加してもよい。また、エステル交換反応においては、マンガン、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、リチウム等の化合物や前述のチタン化合物を触媒として用いて進行させる。
【0077】
本発明において用いる式4〜式6で示されるリン化合物は、前記(1)または(2)の一連の反応の任意の段階で添加される。
【0078】
また、(1)または(2)の一連の反応の任意の段階、好ましくは(1)または(2)の一連の反応の前半で得られた低重合体に、重縮合触媒として前述のチタン化合物を添加し重縮合反応を行う。なお、重縮合に際しては仕込量、重合時間、重合温度を適宜選択することによって、IV0.65以上、COOH45eq/ton以下のリン共重合ポリエステルチップを得ることができる。
【0079】
なお、得られたポリエステルの重合度をさらに高めるために、融点以下の温度で真空下又は不活性ガス流通下に保持することなどによって固相重合を行う方法もあるが、特に限定されるものではない。また、上記の反応は回分式、半回分式あるいは連続式等の形式に適応し得る。
【0080】
さらに、本発明のポリエステルを用いて難燃性ポリエステル繊維を製造する方法としては、従来公知の方法を採用することができる。紡糸速度は一般的に用いられる700〜2,000m/分、あるいはPOY領域といわれる2,000〜4,000m/分でもよい。用途によっては仮撚、捲縮を施してもよく、繊維の断面形状も丸、三角、中空などを採用することもできる。
【0081】
【実施例】
以下実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例中の物性値は以下に述べる方法で測定した。
(1)極限粘度IV
オルソクロロフェノールを溶媒として25℃で測定した。
(2)ポリエステル中のチタン元素、リン元素含有量
蛍光X線元素分析装置(堀場製作所社製、MESA−500W型)またはICP発光分析装置(セイコーインスツルメンツ社製、SPS1700)により求めた。
(3)不溶性異物の有無
重合操作終了後のポリマー5gをガラス試験管に採取し、リメルトした後の溶融ポリマーを観察して、不溶性異物の有無を判定した。
(4)カルボキシル末端基量(COOH量)
o−クレゾールに溶解し、完全溶解後、冷却してからクロロホルムを加え、NaOHのメタノール溶液にて電位差滴定を行い求めた。
(5)色調
スガ試験機(株)社製の色差計(SMカラーコンピューター型式SM−3)を用いて、ハンター値として測定した。L値は白度を表し、b値が増す程、黄味が強くなる。
(6)延伸糸の強度、伸度、およびタフネス
東洋ボードウイン社製テンシロン引張試験機を用いて、試料長25cm、引張速度30cm/分でS−S曲線を求め、強伸度を算出した。タフネスは破断時の強度T(cN/dtex)と伸度E(%)からT・E1/2により求めた。
(7)繊維の難燃性能
糸を筒編み地として、その1gを長さ10mmの針金コイル中に挿入し、45度の角度に保持して下端から点火し、火源を遠ざけて消火した場合は再び点火を繰り返すことにより、全試料を燃焼し尽くすのに要する点火回数を求め、5個の試料について測定した平均点火回数で表した。接炎回数3回以上を合格とする。
【0082】
接炎回数:5回以上 ◎
3以上〜5回未満 ◯
3回未満 ×
【0083】
【参考例】
以下に触媒の合成方法を記す。
触媒A.クエン酸キレートチタン化合物の合成方法
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた3Lのフラスコ中に温水(371g)にクエン酸・一水和物(532g、2.52モル)を溶解させた。この撹拌されている溶液に滴下漏斗からチタンテトライソプロポキシド(288g、1.00モル)をゆっくり加えた。この混合物を1時間加熱、還流させて曇った溶液を生成させ、これよりイソプロパノール/水混合物を真空下で蒸留した。その生成物を70℃より低い温度まで冷却し、そしてその撹拌されている溶液にNaOH(380g、3.04モル)の32重量/重量%水溶液を滴下漏斗によりゆっくり加えた。得られた生成物をろ過し、次いでエチレングリコール(504g、80モル)と混合し、そして真空下で加熱してイソプロパノール/水を除去し、わずかに曇った淡黄色の生成物(Ti含有量3.85重量%)を得た。
【0084】
触媒B.クエン酸キレートチタン化合物(フェニルホスホン酸混合)の合成方法
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた3Lのフラスコ中に温水(371g)にクエン酸・一水和物(532g、2.52モル)を溶解させた。この撹拌されている溶液に滴下漏斗からチタンテトライソプロポキシド(288g、1.00モル)をゆっくり加えた。この混合物を1時間加熱、還流させて曇った溶液を生成させ、これよりイソプロパノール/水混合物を真空下で蒸留した。その生成物を70℃より低い温度まで冷却し、そしてその撹拌されている溶液にNaOH(380g、3.04モル)の32重量/重量%水溶液を滴下漏斗によりゆっくり加えた。得られた生成物をろ過し、次いでエチレングリコール(504g、80モル)と混合し、そして真空下で加熱してイソプロパノール/水を除去し、わずかに曇った淡黄色の生成物(Ti含有量3.85重量%)を得た。この混合溶液に対し、フェニルホスホン酸(158g、1.00モル)を加えることで、リン化合物を含有するチタン化合物を得た(P含有量2.49重量%)。なお、重縮合反応の開始時点ではリン化合物を追加添加しなかった。
【0085】
触媒C.クエン酸キレートチタン化合物(フェニルホスホン酸、リン酸混合)の合成方法
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた3Lのフラスコ中に温水(371g)にクエン酸・一水和物(532g、2.52モル)を溶解させた。この撹拌されている溶液に滴下漏斗からチタンテトライソプロポキシド(288g、1.00モル)をゆっくり加えた。この混合物を1時間加熱、還流させて曇った溶液を生成させ、これよりイソプロパノール/水混合物を真空下で蒸留した。その生成物を70℃より低い温度まで冷却し、そしてその撹拌されている溶液にNaOH(380g、3.04モル)の32重量/重量%水溶液を滴下漏斗によりゆっくり加えた。得られた生成物をろ過し、次いでエチレングリコール(504g、80モル)と混合し、そして真空下で加熱してイソプロパノール/水を除去し、わずかに曇った淡黄色の生成物(Ti含有量3.85重量%)を得た。この混合溶液に対し、フェニルホスホン酸(158g、1.00モル)及びリン酸の85重量/重量%水溶液(39.9g、0.35モル)を加えることで、リン化合物を含有するチタン化合物を得た(P含有量3.36重量%)。なお、重縮合反応の開始時点ではリン化合物を追加添加しなかった。
【0086】
触媒D.乳酸キレートチタン化合物の合成方法
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた2Lのフラスコ中に撹拌されているチタンテトライソプロポキシド(285g、1.00モル)に滴下漏斗からエチレングリコール(218g、3.51モル)を加えた。添加速度は、反応熱がフラスコ内容物を約50℃に加温するように調節された。その反応混合物を15分間撹拌し、そしてその反応フラスコに乳酸アンモニウム(252g、2.00モル)の85重量/重量%水溶液を加えると、透明な淡黄色の生成物(Ti含有量6.54重量%)を得た。得られたチタン化合物は実施例1と同様、チタン化合物の2重量%エチレングリコール溶液を得られるポリマーに対してチタン原子換算で10ppmとなるように添加し、5分後、フェニルホスホン酸ジメチルエステルの10重量%エチレングリコール溶液を得られるポリマーに対してリン原子換算で6ppmとなるように添加し、重合を行った。
【0087】
触媒E.乳酸キレートチタン化合物(フェニルホスホン酸混合)の合成方法
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた2Lのフラスコ中に撹拌されているチタンテトライソプロポキシド(285g、1.00モル)に滴下漏斗からエチレングリコール(218g、3.51モル)を加えた。添加速度は、反応熱がフラスコ内容物を約50℃に加温するように調節された。その反応混合物を15分間撹拌し、そしてその反応フラスコに乳酸アンモニウム(252g、2.00モル)の85重量/重量%水溶液を加えると、透明な淡黄色の生成物(Ti含有量6.54重量%)を得た。この混合溶液に対し、フェニルホスホン酸(158g、1.00モル)を加えることで、リン化合物を含有するチタン化合物を得た(P含有量4.23重量%)。なお、重縮合反応の開始時点ではリン化合物を追加添加しなかった。
【0088】
触媒F.乳酸キレートチタン化合物(フェニルホスホン酸、リン酸混合)の合成方法
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた2Lのフラスコ中に撹拌されているチタンテトライソプロポキシド(285g、1.00モル)に滴下漏斗からエチレングリコール(218g、3.51モル)を加えた。添加速度は、反応熱がフラスコ内容物を約50℃に加温するように調節された。その反応混合物を15分間撹拌し、そしてその反応フラスコに乳酸アンモニウム(252g、2.00モル)の85重量/重量%水溶液を加えると、透明な淡黄色の生成物(Ti含有量6.54重量%)を得た。この混合溶液に対し、フェニルホスホン酸(158g、1.00モル)及びリン酸の85重量/重量%水溶液(39.9g、0.35モル)を加えることで、リン化合物を含有するチタン化合物を得た(P含有量5.71重量%)。なお、重縮合反応の開始時点ではリン化合物を追加添加しなかった。実施例1
高純度テレフタル酸(三井化学社製)100kgとエチレングリコール(日本触媒社製)45kgのスラリーを予めビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート約123kgが仕込まれ、温度250℃、圧力1.2×105Paに保持されたエステル化反応槽に4時間かけて順次供給し、供給終了後もさらに1時間かけてエステル化反応を行い、このエステル化反応生成物の123kgを重縮合槽に移送した。引き続いて、エステル化反応生成物が移送された前記重縮合反応槽に、
エステル結合可能な官能基を有するリン化合物として、式7のリン化合物(ヘキスト社製)50wt%エチレングリコール溶液を得られるポリマーに対してリン原子換算で10,000ppmとなるように反応系へ添加し、10分間撹拌した後、重縮合触媒として、触媒A(クエン酸キレートチタン化合物)の2重量%エチレングリコール溶液を得られるポリマーに対してチタン原子換算で10ppmとなるように添加した。その後、低重合体を30rpmで攪拌しながら、反応系を250℃から290℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を40Paまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。所定の攪拌トルクとなった時点で反応系を窒素パージし常圧に戻し重縮合反応を停止し、冷水にストランド状に吐出、直ちにカッティングしてポリマーのペレットを得た。なお、減圧開始から所定の撹拌トルク到達までの時間は2時間45分であった。
【0089】
得られたポリマーの極限粘度は0.73、色調L値は57.4、b値は9.3であり、不溶性異物は認められなかった。また、ポリマーから測定したリン元素含有量は10,000ppm、また、チタン触媒由来のチタン原子の含有量は10ppmであることを確認した。
【0090】
このポリエステルを乾燥した後、210℃で固相重合を行い、極限粘度1.04のチップを得た。この固相重合チップをエクストルーダー型紡糸機に供給し、紡糸温度300℃にて溶融紡糸した。この際、フィルターとして絶対ろ過径15μmの金属不織布を用い、口金は0.6mmφの丸孔を用いた。引き続き250℃の温度で延伸熱処理した後、リラックス処理して巻取り、1100dtex144フィラメントの延伸糸を得た。紡糸時に口金汚れ、糸切れ、およびろ圧上昇はなく、延伸時の糸切れもなかった。この延伸糸の強度は7.4cN/dtex、伸度18%であり、良好な物性を有していた。また、この延伸糸の平均点火回数は5.3回であり、良好な難燃性能を有していた。
実施例2〜4
実施例2〜4はリン化合物の種類を変更した以外は、いずれも実施例1と同様にして重合を行い、固相重合後のチップを用いて紡糸・延伸した。表1から明らかなとおり、本発明の範囲を満たす実施例2〜4は、紡糸時に口金汚れや糸切れ、ろ圧上昇はなく、延伸時の糸切れもなかった。この延伸糸は強度、タフネスともに良好な物性を有しており、難燃性能は良好であった。
実施例5〜7および比較例1〜4
重縮合触媒としての本発明のチタン化合物の種類を変更した以外は、いずれも実施例2と同様にして重合を行い、固相重合後のチップを用いて紡糸・延伸した。表1から明らかなとおり、本発明の範囲を満たす実施例5〜7は、紡糸時に口金汚れ、ろ圧上昇、および糸切れはなく、延伸時の糸切れもなかった。この延伸糸は強度、タフネスともに良好な物性を有しており、難燃性能は良好であった。
【0091】
一方、比較例1(リン化合物はMCEPAを使用)および比較例2(リン化合物は式27を使用)は、いずれも重縮合触媒として三酸化アンチモン(住友金属鉱山社製)を得られるポリマーに対してアンチモン原子換算で420ppm添加したこと以外は実施例2と同様にして重合を行った。いずれも重合反応性は良好に推移したが、得られるポリマー中には不溶性の異物が多数認められた。また、紡糸時に口金汚れ、ろ圧上昇が発生し、糸切れもあり、操業性に劣っていた。表2に示したように延伸糸の難燃性能は良好であったものの、強度、タフネスが劣っていた。
【0092】
また、比較例3および比較例4は重縮合触媒として本発明以外のチタン化合物であるテトラブチルチタネート、およびシュウ酸チタン酸を、得られるポリマーに対してチタン原子換算で10ppm添加したこと以外は実施例2と同様にして重合を行った。いずれも重合反応性は良好に推移したが、得られたポリマーの色調は黄味が強いものであった。また、表2に示したように紡糸時のIV低下が大きく、延伸糸の難燃性能は十分であったものの、強度、タフネスが劣っていた。実施例8〜11および比較例5〜9
リン化合物式7の添加量を変更した以外は、いずれも実施例1と同様にして重合を行い、固相重合したチップを用いて紡糸・延伸した。表1から明らかなとおり、本発明の範囲を満たす実施例8〜11は、紡糸時に口金汚れ、ろ圧上昇、および糸切れはなく、延伸時の糸切れもなかった。この延伸糸の強度、タフネスともに良好な物性を有していた。また、この延伸糸の難燃性能は良好であった。
【0093】
一方、リン化合物を全く添加しない比較例5、リン化合物量が少ない比較例6および比較例8は、表2に示したように延伸糸の強度、タフネスともに良好であったが、難燃性能は劣っていた。また、リン化合物量の多い比較例7および比較例9はいずれも難燃性能は十分であるものの、紡糸時にやや糸切れや紡糸時のIV低下がみられ、延伸糸の強度、タフネスともに劣っていた。
実施例12〜14および比較例10、11
重縮合触媒としてのチタン化合物の添加量を変更した以外は、いずれも実施例6と同様にして重合を行い、固相重合したチップを用いて紡糸・延伸した。表1から明らかなとおり、本発明の範囲を満たす実施例12〜14は、紡糸時に口金汚れ、ろ圧上昇、および糸切れはなく、延伸時の糸切れもなかった。この延伸糸の強度、タフネスともに良好な物性を有していた。また、この延伸糸の難燃性能は良好であった。
【0094】
一方、チタン化合物の添加量が少ない比較例10は重合反応性が劣るため重合時間が極めて長く、途中で中止した。さらに、比較例11は得られたポリマーの色調は黄味が強く、不溶性の異物がみられた。また、紡糸時に糸切れが発生し、IV低下も大きかった。なお、表2に示したように延伸糸の難燃性能は十分であったものの、強度、タフネスが劣っていた。
実施例15
固相重合後のチップのIVを変更し、実施例2と同様にして紡糸し、IVの異なる延伸糸を得た。表2に結果を示したが、本発明の範囲を満たす実施例15は、紡糸時に口金汚れ、ろ圧上昇、および糸切れはなく、延伸時の糸切れもなかった。また、延伸糸の強度、タフネス、さらに難燃性能についても良好であった。実施例16
実施例2と同様にして重合し、固相重合後のチップを用いて紡糸温度、滞留時間を変えて紡糸し、COOH量の異なる延伸糸を得た。表2に結果を示したが、本発明の範囲を満たす実施例16は、紡糸時に口金汚れ、ろ圧上昇、および糸切れはなく、延伸時の糸切れもなかった。また、延伸糸の強度、タフネスは良好であり、難燃性能についても良好であった。
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
【0097】
【発明の効果】
ろ圧上昇がなく、製糸性が良好であり、優れた難燃性を有すると共に、従来品に比べて強度、タフネスに優れ、かつ、チタン触媒使いであっても色調が著しく改良された難燃性ポリエステル繊維を得ることができる。
Claims (7)
- チタン化合物の置換基における式1〜式3のR1 〜R3のうち少なくとも1つが、水酸基またはカルボニル基またはアセチル基またはカルボキシル基またはエステル基を有する炭素数1〜30の炭化水素基であることを特徴とする請求項1記載の難燃性ポリエステル繊維。
- チタン化合物の置換基における式1のR1 〜R3のうち少なくとも1つが、カルボキシル基又はエステル基を有する炭素数1〜30の炭化水素基であることを特徴とする請求項2記載の難燃性ポリエステル繊維。
- 極限粘度0.70以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の難燃性ポリエステル繊維。
- カルボキシル末端基量が45eq/ton以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の難燃性ポリエステル繊維。
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