JP2004232544A - エンジンの燃料噴射制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】排気浄化手段の高温化のために膨張行程期間中に燃焼室内に対し追加の燃料噴射を行うに当たり、シリンダ壁面への噴射された燃料の付着を防止する。
【解決手段】ECU40は、追加の燃料噴射として膨張行程初期噴射F1と、膨張行程中期噴射F2と、排気行程後期噴射F3とを実行するようインジェクタ5を制御する。膨張行程初期噴射F1は、主燃焼期間A中で主燃焼の熱発生率が0となる直前に噴射され、これにより排気ガス温度の高温化が図られる。膨張行程中期噴射F2、排気行程後期噴射F3は、酸化触媒28aやフィルタ28bに対して未燃燃料が増量するように噴射されるもので、特に排気行程噴射は、噴射された燃料のシリンダ壁面付着が抑制されるよう制御される。
【選択図】 図2
【解決手段】ECU40は、追加の燃料噴射として膨張行程初期噴射F1と、膨張行程中期噴射F2と、排気行程後期噴射F3とを実行するようインジェクタ5を制御する。膨張行程初期噴射F1は、主燃焼期間A中で主燃焼の熱発生率が0となる直前に噴射され、これにより排気ガス温度の高温化が図られる。膨張行程中期噴射F2、排気行程後期噴射F3は、酸化触媒28aやフィルタ28bに対して未燃燃料が増量するように噴射されるもので、特に排気行程噴射は、噴射された燃料のシリンダ壁面付着が抑制されるよう制御される。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンの燃料噴射制御装置に関するものである。特に、燃焼室内に直接燃料を噴射する直噴エンジンの排気通路に配置された排気浄化装置の温度を昇温させる技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
エンジンの排気通路に配置された排気浄化装置の温度を昇温させて、浄化性能を向上させる技術は周知である。
例えば、従来、エンジン、例えばディーゼルエンジンやリーンバーンを実行可能な直噴ガソリンエンジンの排気通路に、排気ガスを通過させながら微粒子を捕集するセラミック製のフィルタを配置することで、エンジンから排出され排気ガス中に含まれるカーボン粒子等の主とする微粒子を捕集して、捕集した微粒子を焼却してフィルタの捕集能力を再生する技術は知られている。
また、エンジンの燃焼室内に燃料噴射弁を臨むように配置させ、燃料噴射弁から燃焼室内に直接燃料を噴射する直噴エンジンにおいては、フィルタに捕集された微粒子を焼却してフィルタを再生するために、気筒が圧縮行程上死点付近の時に発生する主燃焼を起因させるための主燃料噴射(通常の燃料噴射)後の膨張行程あるいは排気工程の特定期間に、噴射弁から追加の燃料噴射を行ってフィルタの温度を昇温させて微粒子を焼却させる技術も知られている。
【0003】
また、例えば、下記特許文献1には、フィルタに触媒を担持させるとともに、フィルタ再生時に、この担持触媒が不活性状態にある時には追加噴射を膨張行程のみの噴射とし、触媒が活性状態にある時には、追加噴射を膨張行程と排気行程との2回の噴射とする技術が提案されている。
【0004】
これによれば、触媒の温度が低い時でも最適の時期に最適量の燃料を噴射できるので追加供給された燃料が触媒によって十分な昇温効果を得られなかったり、あるいは酸化されずにそのまま大気放出されてエミッションを悪化させたりすることが防止できることが記載されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平7−259533号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、排気通路に配置された酸化触媒やフィルタなどの排気浄化装置の温度を昇温させるために、圧縮行程上死点近傍での主燃焼を発現させるための主噴射の実行後、膨張行程の所定の時期に燃料を追加噴射させる直噴エンジンにおいては、多様なエンジンの運転状況の基でも排気ガスを昇温させるために、追加噴射する際の燃料噴射量が大幅増大して噴射する場合もある。
【0007】
このような場合、追加噴射はかなりな噴射量であるため、噴射圧を変えずに1回の噴射で実行しようとすれば噴射終了時期が大幅に遅角されることになる。このように遅角された状態では、シリンダは膨張行程期間中でピストンはある程度下降した状態に位置し同時に燃焼室内の圧力が減少しているため、噴射された一部の燃料が例えばシリンダ壁面に付着する虞がある。このように壁面に付着した燃料は、不完全燃焼して煤や炭化水素などを増大させ、エミッションを悪化させる。
【0008】
一方、上記提案例の特許文献1は、追加噴射を膨張行程と排気行程とに分けて噴射する点を開示しているが、排気行程における追加噴射はどの時期に実行してもよい訳ではなく排気行程初期から中期にかけて噴射すると、この状態ではピストンはある程度下降した状態であり、同時に燃焼室内の圧力も低下しているため、噴射された一部の燃料がシリンダ壁面に付着するといった不具合を解消できず、やはりエミッションが悪化してしまう。
【0009】
本発明は、以上のような課題に勘案してなされたもので、その目的は、膨張行程の所定時期に追加噴射を行う直噴エンジンにおいて、追加噴射における噴射量増大により、追加噴射された燃料の一部がシリンダ壁面や燃焼室内に多量に付着するのを防止することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本発明の請求項1記載の発明においては、エンジンの排気通路に設けられた排気浄化部材により高温の状態で排気ガス中に含有される特定成分を浄化するととももに、
エンジンの運転状態に基づいて、エンジンの燃焼室に直接燃料を噴射する燃料噴射弁により噴射される燃料の噴射量及び噴射時期を設定可能な噴射制御手段によって、少なくとも圧縮行程上死点近傍で主燃焼を行うための主噴射の噴射量及び噴射時期と、排気浄化部材による特定成分の浄化を実行するための該主噴射とは異なる追加噴射の噴射量及び噴射時期とを設定するエンジンの燃料噴射制御装置において、
該噴射制御手段は、上記追加噴射として、上記主噴射を実行した後の膨張行程初期及び中期の少なくとも一方に膨張行程噴射を実行し、噴射された燃料のシリンダ壁面への付着が抑制されるよう排気行程後期において排気行程後期噴射を実行することを特徴としている。
このような構成により、排気浄化部材による排気浄化を向上させるために多量の追加噴射を行う場合、膨張行程の初期から中期の燃焼室内温度が高くしかもピストンが上昇した位置にあって、噴射された燃料がシリンダ壁面に付着し難い状態で膨張行程噴射による追加噴射されるとともに、噴射された燃料がシリンダ壁面に多量に付着しないよう排気行程後期噴射により燃料噴射されることとなる。また、このように膨張行程初期あるいは中期と、排気行程後期とに分けて噴射するので、それぞれの噴射燃料量を少なくすることができ、より燃焼室内温度が高くピストンが上昇した位置で噴射できるので、効果的に燃料のシリンダへの壁面付着を防止できる。
これにより、多量の追加噴射を、追加噴射の一部がシリンダ壁面に多く付着するのを抑制するよう噴射でき、エミッションの悪化の防止を図りつつ、排気浄化部材の高温化が図れる。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1において、上記排気浄化部材は、排気ガス中に含有する微粒子を捕集するフィルタと、該フィルタの上流側に配置された酸化触媒とであって、該フィルタに捕集された微粒子の堆積量を検出する検出手段と、該堆積量に基づきフィルタの温度を昇温させて微粒子の焼却によるフィルタの再生を実行する再生時期であるか否かを判断する再生時期判断手段とを備え、
上記噴射制御手段は、該再生時期判断手段により、フィルタの再生時期を判断した時、上記膨張行程噴射及び排気行程後期噴射を実行することを特徴としている。
このような構成により、フィルタに堆積した微粒子を焼却するため温度上昇に必要な多量の追加噴射を行う場合であっても、噴射された多量の追加噴射の一部がシリンダ壁面に付着するのを抑制でき、エミッションの悪化防止が図れる。
【0012】
また、フィルタの上流に配置された酸化触媒は、排気行程後期噴射により噴射された未燃燃料が供給されて、酸化触媒における酸化反応が強力に促進されることとなるため、酸化触媒の下流に配置されたフィルタの昇温を図ることができる。
【0013】
請求項3記載の発明は、エンジンの排気通路に排気ガス中に含有する微粒子を捕集するフィルタと、該フィルタの上流に酸化触媒とを設けるとともに、
エンジンの運転状態に基づいて、エンジンの燃焼室に直接燃料を噴射する燃料噴射弁により噴射される燃料の噴射量及び噴射時期を設定可能な噴射制御手段によって、圧縮行程上死点近傍で主燃焼を行うための主噴射の噴射量及び噴射時期と、該主噴射実行後に実行されるフィルタに捕集された微粒子を浄化させるための主噴射とは異なる追加噴射の噴射量及び噴射時期とを設定するエンジンの燃料噴射制御装置において、
該噴射制御手段は、上記追加噴射として、上記主噴射を実行した後の膨張行程初期に、上記酸化触媒に流入する排気ガス温度を高温状態とするための膨張行程初期噴射と、該膨張行程初期噴射実行後の膨張行程中期に上記酸化触媒に未燃燃料を供給するための膨張行程中期噴射と、更に排気行程後期における排気行程後期噴射とを実行することを特徴としている。
【0014】
本請求項において、膨張行程初期噴射は、圧縮行程上死点近傍における主燃焼の実行期間中に、主燃焼に継続して燃焼が行われるような時期に噴射されるもので、主燃焼による熱発生を促進させて排気ガス温度の高温化を図るためのものである。
【0015】
このような構成により、フィルタに堆積された微粒子を浄化するために多量の噴射量の追加噴射を行う場合、膨張行程初期噴射と膨張行程中期噴射とにより、膨張行程初期及び膨張行程中期の燃焼室内温度が高くしかもピストンが上昇した位置にあって、噴射された燃料がシリンダ壁面に付着し難い状態で、燃料が追加噴射されるとともに、排気行程後期噴射により、噴射された燃料がシリンダ壁面に多量に付着しないよう噴射されることとなる。また、このように追加噴射を分割して噴射するので、それぞれの噴射燃料量を少なくすることができ、より燃焼室内温度が高くピストンが上昇した位置で噴射でき、効果的に燃料のシリンダへの壁面付着を防止できる。
従って、多量の追加噴射を、追加噴射の一部がシリンダ壁面に多く付着するのを抑制するよう噴射でき、エミッションの悪化の防止しつつ、フィルタの高温化が図れる。
また、膨張行程初期噴射により噴射された燃料は比較的高温の燃焼室内に供給されることとなるためその殆どが燃焼して排気ガスが昇温されることとなり、これにより酸化触媒やフィルタの温度を高温化できる。また膨張行程中期噴射及び排気行程後期噴射された燃料は殆どが未燃状態のまま主に酸化触媒に供給されることとなり、酸化触媒における反応熱によるフィルタの高温化を最適な追加噴射量で図ることができる。
【0016】
また、多量の噴射量の追加噴射実行に際し、膨張行程中期噴射量を増量するだけではこれにより噴射終了時期が遅角して、シリンダ壁面に付着する燃料を抑制できない。そこで、膨張行程中期噴射量の増量だけでなく膨張行程初期噴射の噴射量も大幅増量を行うことが考えらるが、この場合膨張行程上死点付近で発生する主燃焼に対して、膨張行程初期噴射による大幅増量された燃料が供給されることとなり、この追加噴射に伴って必要以上トルクが増大するといった不具合が発生する。また、このトルク増大に対して、主燃焼用の噴射量(要求トルクの発生に略相当する噴射量)を減量して主燃料による発生するトルクを減少させることが考えられるが、このような方法では、主燃焼自体の熱発生が小さくなり主燃焼中に膨張行程初期噴射を実行しても、膨張行程初期噴射の目的である排気ガス温度の十分な高温化を図ることはできない。
これに対し請求項3に係る本発明においては、多量の噴射量の追加噴射実行に際し、排気行程後期噴射を実行して対応するため、膨張行程初期噴射や膨張行程中期噴射における噴射量の大幅増量を図ることなく、つまり必要以上のトルク増大や、膨張行程中期噴射の噴射量増量によるシリンダ壁面への燃料付着といった不具合を発生することなく、フィルタ温度の高温化を図ることができる。
【0017】
また、膨張行程中期噴射と排気行程後期噴射とにより未燃燃料の酸化触媒への供給を行う。これにより、排気行程後期噴射だけでは、排気弁開度が低い状態で燃焼室内から未燃燃料を噴射供給するために未燃燃料を十分供給できないといった不具合や、排気弁が少しでも開成しているために燃焼室内の圧力や温度は低下しておりこのような燃焼室内に燃料を噴射しても燃料の霧化が促進されず、やはり未燃燃料を十分に供給できないといった不具合が発生するが、燃焼室内圧力や温度の高い状態で燃料噴射する膨張行程中期噴射も実行することで大量の未燃燃料の供給を図ることができる。
【0018】
請求項4記載の発明は、請求項3の発明において、上記酸化触媒の活性状態を判断する活性状態判断手段を備え、
上記噴射制御手段は、該酸化触媒が不活性状態であると判断した時は、活性状態であると判断した時よりも上記膨張行程中期噴射の噴射量あるいは上記排気行程後期噴射の噴射量のうち少なくとも一方を減量することを特徴としている。
【0019】
フィルタ上流の酸化触媒が不活性状態の時は、酸化触媒での反応熱を促進させるための未燃燃料を供給しても、不活性であることから殆ど酸化反応せず反応熱も発生しない。従って、反って燃料を無駄に噴射することとなり燃費の悪化を招く虞がある。また、未燃燃料を多量に供給するとその一部が燃焼されることなく排気通路から大気放出される虞もある。そこで、請求項4に係る本発明では、酸化触媒が不活性の時は、酸化触媒に未燃燃料を供給するために噴射される膨張行程中期噴射あるいは排気行程後期噴射の噴射量の内、少なくとも一方を減量することで、燃費向上を図り、場合によっては未燃燃料の大気放出によるエミッション悪化をも防止する。
【0020】
【発明の実施の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(全体構成)
図1は本発明の実施形態に係るエンジンの燃料噴射制御装置Aの一例を示し、1は車両に搭載されたディーゼルエンジンである。このエンジン1は複数の気筒(シリンダ)2,2,…(1つのみ図示する)を有し、その各気筒2内に往復動可能にピストン3が嵌挿されていて、このピストン3により気筒2内に燃焼室4が区画されている。また、燃焼室4の天井部にはインジェクタ5(燃料噴射弁)が配設されていて、その先端部の噴口から高圧の燃料を燃焼室4に直接、噴射するようになっている。
【0022】
一方、各気筒2毎のインジェクタ5の基端部は、それぞれ分岐管6a,6a,…(1つのみ図示する)により共通の燃料分配管6(コモンレール)に接続されている。このコモンレール6は、燃料供給管8により高圧供給ポンプ9に接続されていて、該高圧供給ポンプ9から供給される燃料を前記インジェクタ5,5,…に任意のタイミングで供給できるように高圧の状態で蓄えるものであり、その内部の燃圧(コモンレール圧力)を検出するための燃圧センサ7が配設されている。
【0023】
前記高圧供給ポンプ9は、図示しない燃料供給系に接続されるとともに、歯付ベルト等によりクランク軸10に駆動連結されていて、燃料をコモンレール6に圧送するとともに、その燃料の一部を電磁弁を介して燃料供給系に戻すことにより、コモンレール6への燃料の供給量を調節するようになっている。この電磁弁の開度が前記燃圧センサ7による検出値に応じてECU40(後述)により制御されることによって、燃圧がエンジン1の運転状態に対応する所定値に制御される。
また、エンジン1の上部には、図示しないが、吸気弁及び排気弁をそれぞれ開閉させる動弁機構が配設されており、一方、エンジン1の下部には、クランク軸10の回転角度を検出するクランク角センサ11と、冷却水の温度を検出するエンジン水温センサ13とが設けられている。前記クランク角センサ11は、詳細は図示しないが、クランク軸端に設けた被検出用プレートとその外周に相対向するように配置した電磁ピックアップとからなり、前記被検出用プレートの外周部全周に亘って等間隔に形成された突起部が通過する度に、パルス信号を出力するものである。
【0024】
エンジン1の一側(図の右側)の側面には、各気筒2の燃焼室4に対しエアクリーナ15で濾過した空気(新気)を供給するための吸気通路16が接続されている。この吸気通路16の下流端部にはサージタンク17が設けられ、このサージタンク17から分岐した各通路がそれぞれ吸気ポートにより各気筒2の燃焼室4に連通しているとともに、サージタンク17には吸気の圧力状態を検出する吸気圧センサ18が設けられている。
【0025】
また、前記吸気通路16には、上流側から下流側に向かって順に、外部からエンジン1に吸入される空気の流量を検出するホットフィルム式エアフローセンサ19と、後述のタービン27により駆動されて吸気を圧縮するコンプレッサ20と、このコンプレッサ20により圧縮した吸気を冷却するインタークーラ21と、バタフライバルブからなる吸気絞り弁22とが設けられている。この吸気絞り弁22は、弁軸がステッピングモータ23により回動されて、全閉から全開までの間の任意の状態とされるものであり、全閉状態でも吸気絞り弁22と吸気通路16の周壁との間には空気が流入するだけの間隙が残るように構成されている。
【0026】
一方、エンジン1の反対側(図の左側)の側面には、各気筒2の燃焼室4からそれぞれ燃焼ガス(排気)を排出するように、排気通路26が接続されている。この排気通路26の上流端部は各気筒2毎に分岐して、それぞれ排気ポートにより燃焼室4に連通する排気マニホルドであり、該排気マニホルドよりも下流の排気通路26には上流側から下流側に向かって順に、排気中の酸素濃度を検出するリニアO2センサ29と、排気流を受けて回転されるタービン27と、排気中の有害成分(HC、CO等)を酸化可能な酸化触媒28aと、その下流には燃焼室から排出されるカーボンなどの微粒子を捕集可能なフィルタ28bが配設されている。
【0027】
酸化触媒28aは、多孔質のセラミック製ハニカム担体のセル表面にPtなどの貴金属を担持する触媒層をコートした一般的なものであるが、特に酸化性能が優れるよう触媒成分が調整されている。また、フィルタ28bは多孔質のセラミックス製の一般的なディーゼル・パティキュレート・フィルタで、そのセル表面にはPtなどの貴金属を担持した触媒層をコートさせている。この触媒金属の反応熱により昇温性能の向上を図っている。
尚、フィルタ28bには、触媒金属を担持させなくても良いし、一方、触媒層に貴金属に加えて更にNOx吸収能力を併合させるためアルカリ金属やアルカリ土類金属などを含有させてもよい。
また、これらの酸化触媒28aとフィルタ28bとは離間してそれぞれ上流下流に配置されるが、その距離は酸化触媒28a内で主に酸化反応により発生する温度が流通する排気ガスを介してフィルタ28bに伝達することが可能な程度に維持される。
【0028】
前記タービン27と吸気通路16のコンプレッサ20とからなるターボ過給機30は、可動式のフラップ31,31,…によりタービン27への排気の通路断面積を変化させるようにした可変ターボ(以下VGTという)であり、前記フラップ31,31,…は各々、図示しないリンク機構を介してダイヤフラム32に駆動連結されていて、そのダイヤフラム32に作用する負圧の大きさが負圧制御用の電磁弁33により調節されることで、該フラップ31,31,…の回動位置が調節されるようになっている。
【0029】
前記排気通路26には、タービン27よりも排気上流側の部位に臨んで開口するように、排気の一部を吸気側に還流させるための排気還流通路(以下EGR通路という)34の上流端が接続されている。このEGR通路34の下流端は吸気絞り弁22及びサージタンク17の間の吸気通路16に接続されていて、排気通路26から取り出された排気の一部を吸気通路16に還流させるようになっている。また、EGR通路34の途中には、その内部を流通する排気を冷却するためのEGRクーラ37と、開度調節可能な排気還流量調節弁(以下EGR弁という)35とが配置されている。このEGR弁35は負圧応動式のものであり、前記VGT30のフラップ31,31,…と同様に、ダイヤフラムへの負圧の大きさが電磁弁36によって調節されることにより、EGR通路34の断面積をリニアに調節して、吸気通路16に還流される排気の流量を調節するものである。尚、前記EGRクーラ37はなくてもよい。
【0030】
そして、前記各インジェクタ5、高圧供給ポンプ9、吸気絞り弁22、VGT30、EGR弁35等は、いずれもコントロールユニット(Electronic ControlUnit:以下ECUという)40からの制御信号を受けて作動する。一方、このECU40には、前記燃圧センサ7、クランク角センサ11、エンジン水温センサ13、吸気圧センサ18、エアフローセンサ19、リニアO2センサ29等からの出力信号がそれぞれ入力され、さらに、図示しないアクセルペダルの踏み操作量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ39からの出力信号が入力される。
【0031】
なお、酸化触媒28aの上流には、酸化触媒28aの温度や、あるいはフィルタ28bの温度を推定するための排気ガス温度センサ41が配置されている。一方フィルタ28bの上流側の排気通路26内、好ましくはフィルタ28bと酸化触媒28aとの間には、フィルタ28bの上流側排気圧力を検出するためのフィルタ上流圧力センサ42が配置され、フィルタ28bの下流側の排気通路26にはフィルタ下流圧力センサ43が配置されている。そして、ECU40には、更にこれら排気ガス温度センサ41の出力信号、フィルタ上流圧力センサ42の出力信号、及びフィルタ下流圧力センサ43の出力信号が入力される。
【0032】
(燃料噴射制御)
次に、本実施形態の燃料噴射制御について説明する。
ECU40は、入力されたアクセル開度センサ39から入力された信号からアクセル開度量(エンジン負荷)を算出し、クランク角センサ11から入力された信号からエンジン回転数を算出し、これらを噴射制御部(図示せず)に出力して、基本的にこれらエンジン負荷及びエンジン回転数に基づいて主噴射Mおよびフィルタ28b再生用の追加噴射としての膨張行程初期噴射F1、膨張行程中期噴射F2、排気行程後期噴射F3が制御される。
なお、フィルタ28bの再生時には、EGR弁35はECU40により閉成され、追加噴射による排気浄化制御が的確に実行できるようにしている。
【0033】
図2のS1、S2に示すように主噴射Mとは、圧縮行程上死点付近でインジェクタ5により行われる燃料噴射で、この噴射により噴射された燃料は、ピストン位置が上昇して燃焼室内の圧力が極めて高圧の状態で噴射されるので、自己着火して主燃焼が行われることとなる。また、この主噴射Mによる噴射量は、乗員等による要求出力が得られるように、この出力に相当するトルク(要求トルク)に基づいて予め設定されている。なお、図2のS1、S2は、インジェクタ5の針弁(図示せず)の作動状態を示すタイミングチャート図である。
具体的には、ECU40には、エンジン回転数が高回転である程、且つアクセル開度量が大きい程、主噴射量が増量されるよう設定された主噴射量マップ(図示せず)、及びエンジン回転数とアクセル開度量に基づいて主噴射Mの実行時期を設定した主噴射時期マップ(図示せず)が記憶されており、エンジン回転数及びアクセル開度量に基づいて、主噴射量、及び噴射時期が設定される。
この主噴射Mにより起因して、噴射開始から微少な着火遅れ時間の後に主燃焼が発生し、主燃焼期間中に追加に燃料が供給されない場合には、主燃焼は膨張初期の所定時期Atまで継続して行われる。(図2のS1の期間A)なお、主燃焼中に追加噴射されるとその期間Aは膨張行程後期側に向けて遅角され、燃焼が継続する期間が延長されることになる。
【0034】
なお、主噴射Mの形態は、このような1回の噴射に限らず、圧縮行程上死点より少し前に一時的に行う所謂パイロット噴射と圧縮行程上死点付近での主噴射との組み合わせや、圧縮行程上死点付近で実行される主噴射M自体を微少な休止間隔(略1ms以下)を挟んで多段に分割噴射するものであってもよい。
【0035】
次に追加噴射について説明する。
ディーゼルエンジンの運転中は、排気ガス中に煤が含まれるため、これを捕集するためにフィルタ28bが配置される。ところで、通常のディーゼル燃焼では150℃から300℃までの比較的低温であり、このような低温では捕集された煤は燃焼して焼却されない。一般に煤の焼却除去の際には500℃以上の高温を数分間維持する必要があるためフィルタ28bの排気上流の近接した位置に酸化触媒28aを配置するとともにフィルタ28b自体に酸化触媒金属を塗布し、インジェクタ5からこれら酸化触媒28aやフィルタ28bに主噴射とは別の追加噴射して、燃料供給による高温維持を図っている。
【0036】
追加噴射としては、図2のS1に示すように、膨張行程期間中で主噴射Mの噴射完了後に実行される膨張行程初期噴射F1、膨張行程中期噴射F2と、排気行程後期で実行される排気行程後期噴射F3とがある。
【0037】
膨張行程初期噴射F1は、主燃焼期間A中であって、主燃焼が終了し熱発生率が0となる時期At直前に噴射される。具体的には、膨張行程初期噴射F1の噴射開始時期は、圧縮行程上死点後(ATDC)20°から35°の間、より好ましくはATDC22°から30°ぐらいで、運転状態により影響を受けるために運転状態に応じた所定の許容範囲時期TF1(図示せず)の特定時期に設定される。例えば、所定の許容範囲時期TF1とは、エンジン回転数が低回転でエンジン負荷が低負荷の場合、ATDC20°から25°の間、より好ましくはATDC22°から24°の間で設定されるものである。
【0038】
このような膨張行程初期噴射F1により噴射された燃料は主燃焼中に供給されることとなるため、その殆どが燃焼されて熱発生を生じ燃焼室4内のガス温度を高め、結果的に燃焼室4から排気されるガスの温度を高温化させ、更にこうした高温の排気ガスとの接触により排気通路26に配置された酸化触媒28aやフィルタ28bの温度も高温化することとなる。
【0039】
ところで、膨張行程初期噴射F1の噴射時期を上記の所定許容範囲時期TF1より進角側に設定すると、主燃焼期間中に発生トルクに大きく影響を及ぼすこととなり、不必要なエンジン出力増大を招くのため望ましくない。また噴射時期を所定許容範囲時期TF1より遅角側に設定すると、主燃焼中に噴射された燃料が主燃焼により燃焼されないので、積極的に燃焼されず、排気ガス温度を高温化することはできない。
【0040】
なお、膨張行程初期噴射F1の噴射開始時期を熱発生率が0となる時期Atよりも若干早めに設定するのは、噴射された燃料が燃焼室4内の主燃焼が行われている領域に到達し該燃料が着火するために若干の遅れ時間があるためである。
【0041】
膨張行程初期噴射F1の噴射時期、及び噴射量は、それぞれECU40に記憶されたマップ(図示せず)により制御される。具体的には、噴射時期マップは、膨張行程初期噴射が設定される領域内において、エンジン回転数が高回転及びエンジン負荷が高負荷程、主燃焼の収束度合が増し始める時期、及び主燃焼期間Aの完了時期(つまりAt)が遅くなるので、これに対応して、高回転及び高負荷程、噴射開始時期を遅角するよう設定している。また、噴射量マップは、定常運転状態において排気ガス温度が低い、低回転及び低負荷ほど噴射量を増量するよう設定しており、一方、高回転及び高負荷領域では、膨張行程初期噴射F1を実行しなくても主燃焼による排気ガス温度の高温化を十分図ることができるので、膨張行程初期噴射の噴射量を0に設定している。
【0042】
膨張行程中期噴射F2は、膨張行程初期噴射の実行後の主燃焼期間A以降で噴射されるものであり、膨張行程中期噴射F2の噴射開始時期は、圧縮行程上死点後(ATDC)50°から120°の間、より好ましくはATDC60°から110°ぐらいで、運転状態により影響を受けるために運転状態に応じた所定の許容範囲時期TF2内の特定時期に設定される。このような膨張行程中期噴射F2により噴射された燃料は、膨張行程初期噴射F1による主燃焼の影響を大きく受けることがないよう、好ましくは膨張行程初期噴射F1による燃焼の熱発生率が略0となった後に、膨張行程中期噴射F2により噴射された燃料が燃焼室内4に拡散するよう噴射開始されるので、その殆どが未燃燃料となり排気通路26に排出される。こうして排出された未燃燃料の多くは酸化触媒28aのセル内に付着することとなるが、この時酸化触媒28aが不活性状態であれば、付着した未燃燃料が堆積することこととなる。その後主噴射Mや膨張行程初期噴射F1により酸化触媒温度が昇温し活性状態に移行すると、堆積した未燃燃料が急激に燃焼し、この反応熱によって酸化触媒28a下流のフィルタ28bの温度上昇が図られることとなる。フィルタ28bでは、この温度上昇によりフィルタ前の排気ガス温度が500°C以上となると、それまでに堆積された微粒子つまり煤が排気ガス中の酸素と反応して燃焼して焼却され、例えばこのような高温状態を数分間継続させることによりフィルタが再生することとなる。
【0043】
ところで、膨張行程中期噴射F2の噴射時期を上述の所定許容範囲時期TF2よりも早くすると、噴射された燃料の内、膨張行程初期噴射F1の燃焼の影響を受けて燃焼される燃料量が増量し、酸化触媒28aに供給すべき未燃燃料が減少することとなる。また、噴射時期を所定許容範囲時期TF2より遅角側に設定すると、この状態ではピストン位置がかなり低下し且つ燃焼室内圧力も温度も低下した状態であるので、噴射された燃料がシリンダ壁面に付着することとなり、次回にこの気筒で燃焼が行われる際のエミッションが悪化してしまう。
【0044】
膨張行程中期噴射F2の噴射時期、及び噴射量は、それぞれECU40に記憶されたマップ(図示せず)により制御される。具体的には、噴射時期マップは、膨張行程中期噴射F2が設定される領域内において、エンジン回転数が高回転及びエンジン負荷が高負荷程、膨張行程初期噴射F1による燃焼燃焼期間の終了が遅くなるので、これに対応して、高回転及び高負荷程、噴射開始時期を遅角するよう設定している。また、噴射量マップは、定常運転状態において排気ガス温度が低いことに起因して酸化触媒28a温度も低い、低回転及び低負荷ほど噴射量を増量するよう設定しており、一方、高回転及び高負荷領域では、膨張行程中期噴射F2を実行しなくても主燃焼による排気ガス温度の高温化及びこれに伴うフィルタの高温維持が十分図れるので、膨張行程中期噴射の噴射量を0に設定している。なお、膨張行程中期噴射F2の噴射時期マップ、噴射量マップは、後述するように酸化触媒28aの活性時用と、不活性時用との2つが準備されている。
【0045】
ところで、フィルタの高温化には、膨大な量の未燃燃料の供給が必要であり(例えば主噴射による噴射量の2倍以上)、そのためエンジン回転数が低くエンジン負荷も低い状態では、フィルタ28b昇温のため噴射実行期間(インジェクタ5の針弁の開弁期間)を長期間に設定する必要がある。一方、上述のように膨張行程中期噴射は上記所定許容範囲時期TF2内で実行しなければならず、仮に噴射開始時期を所定許容範囲時期TF2よりも進角側に設定すると上述のように酸化触媒28aに供給すべき未燃燃料が減少してフィルタ28bの高温化が不十分となり、噴射時期を所定許容範囲時期TF2よりも遅角側に設定するとシリンダ壁面への燃料付着が発生する。
一方、膨張行程初期噴射F1を増量すると主燃焼中に噴射されるために未燃燃料を増量することはできず、反って不要なトルク増量が発生する。
【0046】
そこで、本実施形態では、排気行程後期噴射F3を実行する。
排気行程後期噴射F3は、排気行程の後期において実行されるもので、排気行程後期噴射F3の噴射開始時期は、圧縮行程上死点後(ATDC)300°から350°の間(つまり排気行程上死点前60°から0°の間)、より好ましくはATDC310°から320°(つまり排気行程上死点前50°から40°の間)ぐらいで、運転状態により影響を受けるために運転状態に応じた所定の許容範囲時期TF3内の特定時期に設定される。この状態ではピストンは上昇した位置にあるため、このような排気行程後期噴射F3により噴射された燃料は、シリンダ壁面に付着することがなく、この時開弁している排気弁から排気通路に排出されて酸化触媒28aに到達し、フィルタ28bの再生に寄与されることとなる。
【0047】
ところで、排気行程後期噴射F3の噴射時期を上記の所定許容範囲時期TF3より進角側に設定すると、ピストン位置が下がった状態で噴射されることになるのでシリンダ壁面への付着燃料の増大を招き、また噴射時期を所定許容範囲時期TF3より遅角側に設定すると、排気弁が低開度状態となるため、排気通路に供給される未燃燃料量が減少する。そればかりか、排気されなかった燃料はこの気筒内に残留し、次回のサイクルの燃焼に寄与することとなり、不必要なトルク増大を招くこととなる。
【0048】
排気行程後期噴射F3の噴射時期、及び噴射量は、それぞれECU40に記憶されたマップ(図示せず)により制御される。噴射時期マップは、排気行程噴射F3が設定されている領域内において、エンジン回転数が高回転及びエンジン負荷が高負荷程、噴射開始時期を遅角するよう設定している。なお、排気行程後期噴射F3は、噴射された燃料が燃焼されることがないので、運転状態に依らず一定に設定してもよい。また、噴射量マップは、定常運転状態において排気ガス温度が低いことに起因して酸化触媒28a温度も低い、低回転及び低負荷ほど噴射量を増量するよう設定しており、一方、高回転及び高負荷領域では、膨張行程中期噴射F2を実行しなくても主燃焼による排気ガス温度の高温化及びこれに伴うフィルタの高温維持が十分図れるので、膨張行程中期噴射の噴射量を0に設定している。
なお、排気行程後期噴射F3の噴射量は、膨張行程中期噴射F2の噴射量よりも少なくなるように設定しており、これにより膨張行程中期噴射F2による未燃燃料の大量供給が確実に行われることとなる。
また、排気行程後期噴射F3の噴射時期マップ、噴射量マップは、後述するように酸化触媒28aの活性時用と、不活性時用との2つが準備されている。
【0049】
次に、酸化触媒28aの活性状態と噴射制御との関係について説明する。
図2のS1は、酸化触媒28aが活性状態にある時のインジェクタ5の針弁の動作状態を示したものである。これに対し、酸化触媒28aが不活性状態の時は、同図のS2で実線にて示すように、膨張行程中期噴射F2の噴射量と排気行程後期噴射F3との噴射量とは減量される。なお、同図の破線は、S1の膨張行程中期噴射、排気行程後期噴射の作動形態を開示している。
【0050】
酸化触媒28aが不活性の時は、酸化触媒28aに未燃燃料を供給しても、酸化触媒における反応熱の急激な上昇が起らないので、燃費向上のために未燃燃料供給を抑制させるためである。この時、膨張行程初期噴射F1の噴射量は実質的に減量しないため、酸化触媒28aの昇温が図られて酸化触媒28aの早期活性が行われる。また、このように膨張行程初期噴射F1による酸化触媒28aの早期活性が図られることで、その後の触媒活性による急激な反応熱の発生促進のために、膨張行程中期噴射F2と排気行程後期噴射F3とによる少量の燃料供給が行われる。
なお、この時は、膨張行程中期噴射F2と排気行程後期噴射F3は中止しても構わない。
【0051】
酸化触媒28aが不活性の時における膨張行程中期噴射F2と排気行程後期噴射F3との噴射時期、及び噴射量は、それぞれECU40に記憶されたマップ(図示せず)により制御される。噴射時期マップは、膨張行程中期噴射F2、排気行程後期噴射F3とがそれぞれ設定されている領域内で、それぞれエンジン回転数が高回転及びエンジン負荷が高負荷程、噴射開始時期を遅角するよう設定している。また噴射量マップは、それぞれ活性時と同一運転状態における噴射量が活性時の噴射量よりも減量されて設定されている。
【0052】
次に、本実施形態における追加噴射制御の制御フローチャートについて図3を参照しながら説明する。
図3の追加噴射制御の制御フローチャートにおいて、例えばクランク角の所定角度毎にスタートした後、ステップSA1にてエンジン回転数ne、エンジン負荷を検出してステップSA2に進み、ステップSA2では温度センサ41により酸化触媒28a上流の排気ガス温度を検出する。その後進んだステップSA3にて、上流圧力センサ42と下流圧力センサ43とにより検出された圧力の差圧からフィルタ28bに堆積した煤の量を推定する。これは、差圧が大きい程煤の堆積量が大と推定するもので、次のステップSA4では、推定した煤の堆積量が所定値以上の時は、堆積した煤を焼却してフィルタ28bを再生する必要があると判断しステップSA5に進む。一方ステップSA4で堆積量が所定値以下の時は、フィルタ28bを再生するほど煤が溜まっていないとしてステップSA1に戻る。ステップSA5では、酸化触媒28a上流の排気ガス温度などに基づいて判断した酸化触媒28aの活性状態に応じて、酸化触媒28aが活性化していれば(例えば酸化触媒28aの排気入口側のHC、CO、NOxなど所定排気ガス成分の量に対する排気下流側の所定排気ガス成分の量の比が、50%以上の時)ステップSA6に進み、酸化触媒28aが不活性であれば(上述の比が50%未満の時)ステップSA7に進む。ステップSA6では、上述の膨張行程初期噴射F1の噴射時期マップ、噴射量マップと、上述の膨張行程中期噴射F2、排気行程後期噴射F3との酸化触媒28aの活性時に対応したそれぞれ噴射時期マップ、噴射量マップとにより、それぞれの噴射F1A、F2A、F3Aを設定し、ステップSA8に進む。またステップSA7では、上述の膨張行程初期噴射F1の噴射時期マップ、噴射量マップと、上述の膨張行程中期噴射F2、排気行程後期噴射F3との酸化触媒28aの不活性時に対応したそれぞれ噴射時期マップ、噴射量マップとにより、それぞれの噴射F1B(=F1A)、F2B、F3Bを設定し、ステップSA8に進む。ステップSA8では、ステップSA6またはステップSA7とにおいて設定された噴射F1A、F2A、F3A、F1B、F2B、F3Bを、検出されたクランク角が夫々設定された噴射時期となった時に実行して、ステップSA1に戻る。
【0053】
このような実施形態により、膨張行程初期噴射F1による排気ガス温度の高温化ととともに、膨張行程中期噴射F2及び排気行程後期噴射F3による未燃燃料の酸化触媒28aやフィルタ28bへの供給によるフィルタ28bの高温化を図ることができ、フィルタ28bの再生性能の向上、延いては煤の高い浄化性能の維持を図ることが可能となる。さらにこのような追加噴射を、シリンダ壁面への燃料付着によるエミッションの悪化や、トルク増大といった不具合を発生することなく実行できる。
また、膨張行程中期噴射F2と排気行程後期噴射F3とにより未燃燃料の酸化触媒28aへの供給を行うので、排気弁開度が低いことやまた排気弁が少しでも開成することで燃焼室内圧力や温度が低くこの時噴射した燃料の霧化が促進され難い排気行程後期噴射F3だけでは未燃燃料を十分供給できないが、膨張行程中期噴射F2も実行することで、大量の未燃燃料供給が可能となる。
なお、本実施形態においては、膨張行程初期噴射F1と膨張行程中期噴射F2とを実行するものとしたが、この2つの内、膨張行程初期噴射F1は実行せず膨張行程中期噴射F2のみ実行しても良い。
【0054】
(他の実施形態)
なお、本発明の実施形態においては、フィルタ28bの再生時において、上述のような追加噴射の制御を行ったが、高温化する排気浄化装置は、フィルタ28bに限定されるものではなく、三元触媒やHCトラップ触媒、NOxトラップ触媒などの通常の触媒装置であってもよい。この場合、エンジン1は、リーンバーンを実行可能な直噴ガソリンエンジンであっても構わない。
また、本発明の実施形態においては、主噴射は圧縮行程上死点付近で実行したが、これに限らず、主噴射は、圧縮行程上死点付近とそれより進角側の吸気行程から圧縮行程に架けて複数回燃料噴射するものであってもよいし、圧縮行程上死点付近では噴射せずに、それより進角側の吸気行程から圧縮行程に架けて噴射するものであっても良い。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る例えばフィルタなどの排気浄化部材による排気浄化を向上させるために追加噴射を行う場合、追加噴射される燃料が多量であっても、噴射された燃料がシリンダ壁面(気筒内壁面)に多量に付着してエミッション悪化を起因しないように排気浄化部材の高温化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るエンジンの燃料噴射制御装置を示す全体構成図。
【図2】インジェクタ5による噴射作動の様子を模式的に示す説明図。
【図3】実施形態における制御手順を示すフローチャート図。
【符号の説明】
2:気筒(シリンダ)
4:燃焼室
5:インジェクタ(燃料噴射弁)
28a:酸化触媒(排気浄化部材)
28b:フィルタ (排気浄化部材)
F1:膨張行程初期噴射
F2:膨張行程中期噴射
F3:排気行程後期噴射
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンの燃料噴射制御装置に関するものである。特に、燃焼室内に直接燃料を噴射する直噴エンジンの排気通路に配置された排気浄化装置の温度を昇温させる技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
エンジンの排気通路に配置された排気浄化装置の温度を昇温させて、浄化性能を向上させる技術は周知である。
例えば、従来、エンジン、例えばディーゼルエンジンやリーンバーンを実行可能な直噴ガソリンエンジンの排気通路に、排気ガスを通過させながら微粒子を捕集するセラミック製のフィルタを配置することで、エンジンから排出され排気ガス中に含まれるカーボン粒子等の主とする微粒子を捕集して、捕集した微粒子を焼却してフィルタの捕集能力を再生する技術は知られている。
また、エンジンの燃焼室内に燃料噴射弁を臨むように配置させ、燃料噴射弁から燃焼室内に直接燃料を噴射する直噴エンジンにおいては、フィルタに捕集された微粒子を焼却してフィルタを再生するために、気筒が圧縮行程上死点付近の時に発生する主燃焼を起因させるための主燃料噴射(通常の燃料噴射)後の膨張行程あるいは排気工程の特定期間に、噴射弁から追加の燃料噴射を行ってフィルタの温度を昇温させて微粒子を焼却させる技術も知られている。
【0003】
また、例えば、下記特許文献1には、フィルタに触媒を担持させるとともに、フィルタ再生時に、この担持触媒が不活性状態にある時には追加噴射を膨張行程のみの噴射とし、触媒が活性状態にある時には、追加噴射を膨張行程と排気行程との2回の噴射とする技術が提案されている。
【0004】
これによれば、触媒の温度が低い時でも最適の時期に最適量の燃料を噴射できるので追加供給された燃料が触媒によって十分な昇温効果を得られなかったり、あるいは酸化されずにそのまま大気放出されてエミッションを悪化させたりすることが防止できることが記載されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平7−259533号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、排気通路に配置された酸化触媒やフィルタなどの排気浄化装置の温度を昇温させるために、圧縮行程上死点近傍での主燃焼を発現させるための主噴射の実行後、膨張行程の所定の時期に燃料を追加噴射させる直噴エンジンにおいては、多様なエンジンの運転状況の基でも排気ガスを昇温させるために、追加噴射する際の燃料噴射量が大幅増大して噴射する場合もある。
【0007】
このような場合、追加噴射はかなりな噴射量であるため、噴射圧を変えずに1回の噴射で実行しようとすれば噴射終了時期が大幅に遅角されることになる。このように遅角された状態では、シリンダは膨張行程期間中でピストンはある程度下降した状態に位置し同時に燃焼室内の圧力が減少しているため、噴射された一部の燃料が例えばシリンダ壁面に付着する虞がある。このように壁面に付着した燃料は、不完全燃焼して煤や炭化水素などを増大させ、エミッションを悪化させる。
【0008】
一方、上記提案例の特許文献1は、追加噴射を膨張行程と排気行程とに分けて噴射する点を開示しているが、排気行程における追加噴射はどの時期に実行してもよい訳ではなく排気行程初期から中期にかけて噴射すると、この状態ではピストンはある程度下降した状態であり、同時に燃焼室内の圧力も低下しているため、噴射された一部の燃料がシリンダ壁面に付着するといった不具合を解消できず、やはりエミッションが悪化してしまう。
【0009】
本発明は、以上のような課題に勘案してなされたもので、その目的は、膨張行程の所定時期に追加噴射を行う直噴エンジンにおいて、追加噴射における噴射量増大により、追加噴射された燃料の一部がシリンダ壁面や燃焼室内に多量に付着するのを防止することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本発明の請求項1記載の発明においては、エンジンの排気通路に設けられた排気浄化部材により高温の状態で排気ガス中に含有される特定成分を浄化するととももに、
エンジンの運転状態に基づいて、エンジンの燃焼室に直接燃料を噴射する燃料噴射弁により噴射される燃料の噴射量及び噴射時期を設定可能な噴射制御手段によって、少なくとも圧縮行程上死点近傍で主燃焼を行うための主噴射の噴射量及び噴射時期と、排気浄化部材による特定成分の浄化を実行するための該主噴射とは異なる追加噴射の噴射量及び噴射時期とを設定するエンジンの燃料噴射制御装置において、
該噴射制御手段は、上記追加噴射として、上記主噴射を実行した後の膨張行程初期及び中期の少なくとも一方に膨張行程噴射を実行し、噴射された燃料のシリンダ壁面への付着が抑制されるよう排気行程後期において排気行程後期噴射を実行することを特徴としている。
このような構成により、排気浄化部材による排気浄化を向上させるために多量の追加噴射を行う場合、膨張行程の初期から中期の燃焼室内温度が高くしかもピストンが上昇した位置にあって、噴射された燃料がシリンダ壁面に付着し難い状態で膨張行程噴射による追加噴射されるとともに、噴射された燃料がシリンダ壁面に多量に付着しないよう排気行程後期噴射により燃料噴射されることとなる。また、このように膨張行程初期あるいは中期と、排気行程後期とに分けて噴射するので、それぞれの噴射燃料量を少なくすることができ、より燃焼室内温度が高くピストンが上昇した位置で噴射できるので、効果的に燃料のシリンダへの壁面付着を防止できる。
これにより、多量の追加噴射を、追加噴射の一部がシリンダ壁面に多く付着するのを抑制するよう噴射でき、エミッションの悪化の防止を図りつつ、排気浄化部材の高温化が図れる。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1において、上記排気浄化部材は、排気ガス中に含有する微粒子を捕集するフィルタと、該フィルタの上流側に配置された酸化触媒とであって、該フィルタに捕集された微粒子の堆積量を検出する検出手段と、該堆積量に基づきフィルタの温度を昇温させて微粒子の焼却によるフィルタの再生を実行する再生時期であるか否かを判断する再生時期判断手段とを備え、
上記噴射制御手段は、該再生時期判断手段により、フィルタの再生時期を判断した時、上記膨張行程噴射及び排気行程後期噴射を実行することを特徴としている。
このような構成により、フィルタに堆積した微粒子を焼却するため温度上昇に必要な多量の追加噴射を行う場合であっても、噴射された多量の追加噴射の一部がシリンダ壁面に付着するのを抑制でき、エミッションの悪化防止が図れる。
【0012】
また、フィルタの上流に配置された酸化触媒は、排気行程後期噴射により噴射された未燃燃料が供給されて、酸化触媒における酸化反応が強力に促進されることとなるため、酸化触媒の下流に配置されたフィルタの昇温を図ることができる。
【0013】
請求項3記載の発明は、エンジンの排気通路に排気ガス中に含有する微粒子を捕集するフィルタと、該フィルタの上流に酸化触媒とを設けるとともに、
エンジンの運転状態に基づいて、エンジンの燃焼室に直接燃料を噴射する燃料噴射弁により噴射される燃料の噴射量及び噴射時期を設定可能な噴射制御手段によって、圧縮行程上死点近傍で主燃焼を行うための主噴射の噴射量及び噴射時期と、該主噴射実行後に実行されるフィルタに捕集された微粒子を浄化させるための主噴射とは異なる追加噴射の噴射量及び噴射時期とを設定するエンジンの燃料噴射制御装置において、
該噴射制御手段は、上記追加噴射として、上記主噴射を実行した後の膨張行程初期に、上記酸化触媒に流入する排気ガス温度を高温状態とするための膨張行程初期噴射と、該膨張行程初期噴射実行後の膨張行程中期に上記酸化触媒に未燃燃料を供給するための膨張行程中期噴射と、更に排気行程後期における排気行程後期噴射とを実行することを特徴としている。
【0014】
本請求項において、膨張行程初期噴射は、圧縮行程上死点近傍における主燃焼の実行期間中に、主燃焼に継続して燃焼が行われるような時期に噴射されるもので、主燃焼による熱発生を促進させて排気ガス温度の高温化を図るためのものである。
【0015】
このような構成により、フィルタに堆積された微粒子を浄化するために多量の噴射量の追加噴射を行う場合、膨張行程初期噴射と膨張行程中期噴射とにより、膨張行程初期及び膨張行程中期の燃焼室内温度が高くしかもピストンが上昇した位置にあって、噴射された燃料がシリンダ壁面に付着し難い状態で、燃料が追加噴射されるとともに、排気行程後期噴射により、噴射された燃料がシリンダ壁面に多量に付着しないよう噴射されることとなる。また、このように追加噴射を分割して噴射するので、それぞれの噴射燃料量を少なくすることができ、より燃焼室内温度が高くピストンが上昇した位置で噴射でき、効果的に燃料のシリンダへの壁面付着を防止できる。
従って、多量の追加噴射を、追加噴射の一部がシリンダ壁面に多く付着するのを抑制するよう噴射でき、エミッションの悪化の防止しつつ、フィルタの高温化が図れる。
また、膨張行程初期噴射により噴射された燃料は比較的高温の燃焼室内に供給されることとなるためその殆どが燃焼して排気ガスが昇温されることとなり、これにより酸化触媒やフィルタの温度を高温化できる。また膨張行程中期噴射及び排気行程後期噴射された燃料は殆どが未燃状態のまま主に酸化触媒に供給されることとなり、酸化触媒における反応熱によるフィルタの高温化を最適な追加噴射量で図ることができる。
【0016】
また、多量の噴射量の追加噴射実行に際し、膨張行程中期噴射量を増量するだけではこれにより噴射終了時期が遅角して、シリンダ壁面に付着する燃料を抑制できない。そこで、膨張行程中期噴射量の増量だけでなく膨張行程初期噴射の噴射量も大幅増量を行うことが考えらるが、この場合膨張行程上死点付近で発生する主燃焼に対して、膨張行程初期噴射による大幅増量された燃料が供給されることとなり、この追加噴射に伴って必要以上トルクが増大するといった不具合が発生する。また、このトルク増大に対して、主燃焼用の噴射量(要求トルクの発生に略相当する噴射量)を減量して主燃料による発生するトルクを減少させることが考えられるが、このような方法では、主燃焼自体の熱発生が小さくなり主燃焼中に膨張行程初期噴射を実行しても、膨張行程初期噴射の目的である排気ガス温度の十分な高温化を図ることはできない。
これに対し請求項3に係る本発明においては、多量の噴射量の追加噴射実行に際し、排気行程後期噴射を実行して対応するため、膨張行程初期噴射や膨張行程中期噴射における噴射量の大幅増量を図ることなく、つまり必要以上のトルク増大や、膨張行程中期噴射の噴射量増量によるシリンダ壁面への燃料付着といった不具合を発生することなく、フィルタ温度の高温化を図ることができる。
【0017】
また、膨張行程中期噴射と排気行程後期噴射とにより未燃燃料の酸化触媒への供給を行う。これにより、排気行程後期噴射だけでは、排気弁開度が低い状態で燃焼室内から未燃燃料を噴射供給するために未燃燃料を十分供給できないといった不具合や、排気弁が少しでも開成しているために燃焼室内の圧力や温度は低下しておりこのような燃焼室内に燃料を噴射しても燃料の霧化が促進されず、やはり未燃燃料を十分に供給できないといった不具合が発生するが、燃焼室内圧力や温度の高い状態で燃料噴射する膨張行程中期噴射も実行することで大量の未燃燃料の供給を図ることができる。
【0018】
請求項4記載の発明は、請求項3の発明において、上記酸化触媒の活性状態を判断する活性状態判断手段を備え、
上記噴射制御手段は、該酸化触媒が不活性状態であると判断した時は、活性状態であると判断した時よりも上記膨張行程中期噴射の噴射量あるいは上記排気行程後期噴射の噴射量のうち少なくとも一方を減量することを特徴としている。
【0019】
フィルタ上流の酸化触媒が不活性状態の時は、酸化触媒での反応熱を促進させるための未燃燃料を供給しても、不活性であることから殆ど酸化反応せず反応熱も発生しない。従って、反って燃料を無駄に噴射することとなり燃費の悪化を招く虞がある。また、未燃燃料を多量に供給するとその一部が燃焼されることなく排気通路から大気放出される虞もある。そこで、請求項4に係る本発明では、酸化触媒が不活性の時は、酸化触媒に未燃燃料を供給するために噴射される膨張行程中期噴射あるいは排気行程後期噴射の噴射量の内、少なくとも一方を減量することで、燃費向上を図り、場合によっては未燃燃料の大気放出によるエミッション悪化をも防止する。
【0020】
【発明の実施の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(全体構成)
図1は本発明の実施形態に係るエンジンの燃料噴射制御装置Aの一例を示し、1は車両に搭載されたディーゼルエンジンである。このエンジン1は複数の気筒(シリンダ)2,2,…(1つのみ図示する)を有し、その各気筒2内に往復動可能にピストン3が嵌挿されていて、このピストン3により気筒2内に燃焼室4が区画されている。また、燃焼室4の天井部にはインジェクタ5(燃料噴射弁)が配設されていて、その先端部の噴口から高圧の燃料を燃焼室4に直接、噴射するようになっている。
【0022】
一方、各気筒2毎のインジェクタ5の基端部は、それぞれ分岐管6a,6a,…(1つのみ図示する)により共通の燃料分配管6(コモンレール)に接続されている。このコモンレール6は、燃料供給管8により高圧供給ポンプ9に接続されていて、該高圧供給ポンプ9から供給される燃料を前記インジェクタ5,5,…に任意のタイミングで供給できるように高圧の状態で蓄えるものであり、その内部の燃圧(コモンレール圧力)を検出するための燃圧センサ7が配設されている。
【0023】
前記高圧供給ポンプ9は、図示しない燃料供給系に接続されるとともに、歯付ベルト等によりクランク軸10に駆動連結されていて、燃料をコモンレール6に圧送するとともに、その燃料の一部を電磁弁を介して燃料供給系に戻すことにより、コモンレール6への燃料の供給量を調節するようになっている。この電磁弁の開度が前記燃圧センサ7による検出値に応じてECU40(後述)により制御されることによって、燃圧がエンジン1の運転状態に対応する所定値に制御される。
また、エンジン1の上部には、図示しないが、吸気弁及び排気弁をそれぞれ開閉させる動弁機構が配設されており、一方、エンジン1の下部には、クランク軸10の回転角度を検出するクランク角センサ11と、冷却水の温度を検出するエンジン水温センサ13とが設けられている。前記クランク角センサ11は、詳細は図示しないが、クランク軸端に設けた被検出用プレートとその外周に相対向するように配置した電磁ピックアップとからなり、前記被検出用プレートの外周部全周に亘って等間隔に形成された突起部が通過する度に、パルス信号を出力するものである。
【0024】
エンジン1の一側(図の右側)の側面には、各気筒2の燃焼室4に対しエアクリーナ15で濾過した空気(新気)を供給するための吸気通路16が接続されている。この吸気通路16の下流端部にはサージタンク17が設けられ、このサージタンク17から分岐した各通路がそれぞれ吸気ポートにより各気筒2の燃焼室4に連通しているとともに、サージタンク17には吸気の圧力状態を検出する吸気圧センサ18が設けられている。
【0025】
また、前記吸気通路16には、上流側から下流側に向かって順に、外部からエンジン1に吸入される空気の流量を検出するホットフィルム式エアフローセンサ19と、後述のタービン27により駆動されて吸気を圧縮するコンプレッサ20と、このコンプレッサ20により圧縮した吸気を冷却するインタークーラ21と、バタフライバルブからなる吸気絞り弁22とが設けられている。この吸気絞り弁22は、弁軸がステッピングモータ23により回動されて、全閉から全開までの間の任意の状態とされるものであり、全閉状態でも吸気絞り弁22と吸気通路16の周壁との間には空気が流入するだけの間隙が残るように構成されている。
【0026】
一方、エンジン1の反対側(図の左側)の側面には、各気筒2の燃焼室4からそれぞれ燃焼ガス(排気)を排出するように、排気通路26が接続されている。この排気通路26の上流端部は各気筒2毎に分岐して、それぞれ排気ポートにより燃焼室4に連通する排気マニホルドであり、該排気マニホルドよりも下流の排気通路26には上流側から下流側に向かって順に、排気中の酸素濃度を検出するリニアO2センサ29と、排気流を受けて回転されるタービン27と、排気中の有害成分(HC、CO等)を酸化可能な酸化触媒28aと、その下流には燃焼室から排出されるカーボンなどの微粒子を捕集可能なフィルタ28bが配設されている。
【0027】
酸化触媒28aは、多孔質のセラミック製ハニカム担体のセル表面にPtなどの貴金属を担持する触媒層をコートした一般的なものであるが、特に酸化性能が優れるよう触媒成分が調整されている。また、フィルタ28bは多孔質のセラミックス製の一般的なディーゼル・パティキュレート・フィルタで、そのセル表面にはPtなどの貴金属を担持した触媒層をコートさせている。この触媒金属の反応熱により昇温性能の向上を図っている。
尚、フィルタ28bには、触媒金属を担持させなくても良いし、一方、触媒層に貴金属に加えて更にNOx吸収能力を併合させるためアルカリ金属やアルカリ土類金属などを含有させてもよい。
また、これらの酸化触媒28aとフィルタ28bとは離間してそれぞれ上流下流に配置されるが、その距離は酸化触媒28a内で主に酸化反応により発生する温度が流通する排気ガスを介してフィルタ28bに伝達することが可能な程度に維持される。
【0028】
前記タービン27と吸気通路16のコンプレッサ20とからなるターボ過給機30は、可動式のフラップ31,31,…によりタービン27への排気の通路断面積を変化させるようにした可変ターボ(以下VGTという)であり、前記フラップ31,31,…は各々、図示しないリンク機構を介してダイヤフラム32に駆動連結されていて、そのダイヤフラム32に作用する負圧の大きさが負圧制御用の電磁弁33により調節されることで、該フラップ31,31,…の回動位置が調節されるようになっている。
【0029】
前記排気通路26には、タービン27よりも排気上流側の部位に臨んで開口するように、排気の一部を吸気側に還流させるための排気還流通路(以下EGR通路という)34の上流端が接続されている。このEGR通路34の下流端は吸気絞り弁22及びサージタンク17の間の吸気通路16に接続されていて、排気通路26から取り出された排気の一部を吸気通路16に還流させるようになっている。また、EGR通路34の途中には、その内部を流通する排気を冷却するためのEGRクーラ37と、開度調節可能な排気還流量調節弁(以下EGR弁という)35とが配置されている。このEGR弁35は負圧応動式のものであり、前記VGT30のフラップ31,31,…と同様に、ダイヤフラムへの負圧の大きさが電磁弁36によって調節されることにより、EGR通路34の断面積をリニアに調節して、吸気通路16に還流される排気の流量を調節するものである。尚、前記EGRクーラ37はなくてもよい。
【0030】
そして、前記各インジェクタ5、高圧供給ポンプ9、吸気絞り弁22、VGT30、EGR弁35等は、いずれもコントロールユニット(Electronic ControlUnit:以下ECUという)40からの制御信号を受けて作動する。一方、このECU40には、前記燃圧センサ7、クランク角センサ11、エンジン水温センサ13、吸気圧センサ18、エアフローセンサ19、リニアO2センサ29等からの出力信号がそれぞれ入力され、さらに、図示しないアクセルペダルの踏み操作量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ39からの出力信号が入力される。
【0031】
なお、酸化触媒28aの上流には、酸化触媒28aの温度や、あるいはフィルタ28bの温度を推定するための排気ガス温度センサ41が配置されている。一方フィルタ28bの上流側の排気通路26内、好ましくはフィルタ28bと酸化触媒28aとの間には、フィルタ28bの上流側排気圧力を検出するためのフィルタ上流圧力センサ42が配置され、フィルタ28bの下流側の排気通路26にはフィルタ下流圧力センサ43が配置されている。そして、ECU40には、更にこれら排気ガス温度センサ41の出力信号、フィルタ上流圧力センサ42の出力信号、及びフィルタ下流圧力センサ43の出力信号が入力される。
【0032】
(燃料噴射制御)
次に、本実施形態の燃料噴射制御について説明する。
ECU40は、入力されたアクセル開度センサ39から入力された信号からアクセル開度量(エンジン負荷)を算出し、クランク角センサ11から入力された信号からエンジン回転数を算出し、これらを噴射制御部(図示せず)に出力して、基本的にこれらエンジン負荷及びエンジン回転数に基づいて主噴射Mおよびフィルタ28b再生用の追加噴射としての膨張行程初期噴射F1、膨張行程中期噴射F2、排気行程後期噴射F3が制御される。
なお、フィルタ28bの再生時には、EGR弁35はECU40により閉成され、追加噴射による排気浄化制御が的確に実行できるようにしている。
【0033】
図2のS1、S2に示すように主噴射Mとは、圧縮行程上死点付近でインジェクタ5により行われる燃料噴射で、この噴射により噴射された燃料は、ピストン位置が上昇して燃焼室内の圧力が極めて高圧の状態で噴射されるので、自己着火して主燃焼が行われることとなる。また、この主噴射Mによる噴射量は、乗員等による要求出力が得られるように、この出力に相当するトルク(要求トルク)に基づいて予め設定されている。なお、図2のS1、S2は、インジェクタ5の針弁(図示せず)の作動状態を示すタイミングチャート図である。
具体的には、ECU40には、エンジン回転数が高回転である程、且つアクセル開度量が大きい程、主噴射量が増量されるよう設定された主噴射量マップ(図示せず)、及びエンジン回転数とアクセル開度量に基づいて主噴射Mの実行時期を設定した主噴射時期マップ(図示せず)が記憶されており、エンジン回転数及びアクセル開度量に基づいて、主噴射量、及び噴射時期が設定される。
この主噴射Mにより起因して、噴射開始から微少な着火遅れ時間の後に主燃焼が発生し、主燃焼期間中に追加に燃料が供給されない場合には、主燃焼は膨張初期の所定時期Atまで継続して行われる。(図2のS1の期間A)なお、主燃焼中に追加噴射されるとその期間Aは膨張行程後期側に向けて遅角され、燃焼が継続する期間が延長されることになる。
【0034】
なお、主噴射Mの形態は、このような1回の噴射に限らず、圧縮行程上死点より少し前に一時的に行う所謂パイロット噴射と圧縮行程上死点付近での主噴射との組み合わせや、圧縮行程上死点付近で実行される主噴射M自体を微少な休止間隔(略1ms以下)を挟んで多段に分割噴射するものであってもよい。
【0035】
次に追加噴射について説明する。
ディーゼルエンジンの運転中は、排気ガス中に煤が含まれるため、これを捕集するためにフィルタ28bが配置される。ところで、通常のディーゼル燃焼では150℃から300℃までの比較的低温であり、このような低温では捕集された煤は燃焼して焼却されない。一般に煤の焼却除去の際には500℃以上の高温を数分間維持する必要があるためフィルタ28bの排気上流の近接した位置に酸化触媒28aを配置するとともにフィルタ28b自体に酸化触媒金属を塗布し、インジェクタ5からこれら酸化触媒28aやフィルタ28bに主噴射とは別の追加噴射して、燃料供給による高温維持を図っている。
【0036】
追加噴射としては、図2のS1に示すように、膨張行程期間中で主噴射Mの噴射完了後に実行される膨張行程初期噴射F1、膨張行程中期噴射F2と、排気行程後期で実行される排気行程後期噴射F3とがある。
【0037】
膨張行程初期噴射F1は、主燃焼期間A中であって、主燃焼が終了し熱発生率が0となる時期At直前に噴射される。具体的には、膨張行程初期噴射F1の噴射開始時期は、圧縮行程上死点後(ATDC)20°から35°の間、より好ましくはATDC22°から30°ぐらいで、運転状態により影響を受けるために運転状態に応じた所定の許容範囲時期TF1(図示せず)の特定時期に設定される。例えば、所定の許容範囲時期TF1とは、エンジン回転数が低回転でエンジン負荷が低負荷の場合、ATDC20°から25°の間、より好ましくはATDC22°から24°の間で設定されるものである。
【0038】
このような膨張行程初期噴射F1により噴射された燃料は主燃焼中に供給されることとなるため、その殆どが燃焼されて熱発生を生じ燃焼室4内のガス温度を高め、結果的に燃焼室4から排気されるガスの温度を高温化させ、更にこうした高温の排気ガスとの接触により排気通路26に配置された酸化触媒28aやフィルタ28bの温度も高温化することとなる。
【0039】
ところで、膨張行程初期噴射F1の噴射時期を上記の所定許容範囲時期TF1より進角側に設定すると、主燃焼期間中に発生トルクに大きく影響を及ぼすこととなり、不必要なエンジン出力増大を招くのため望ましくない。また噴射時期を所定許容範囲時期TF1より遅角側に設定すると、主燃焼中に噴射された燃料が主燃焼により燃焼されないので、積極的に燃焼されず、排気ガス温度を高温化することはできない。
【0040】
なお、膨張行程初期噴射F1の噴射開始時期を熱発生率が0となる時期Atよりも若干早めに設定するのは、噴射された燃料が燃焼室4内の主燃焼が行われている領域に到達し該燃料が着火するために若干の遅れ時間があるためである。
【0041】
膨張行程初期噴射F1の噴射時期、及び噴射量は、それぞれECU40に記憶されたマップ(図示せず)により制御される。具体的には、噴射時期マップは、膨張行程初期噴射が設定される領域内において、エンジン回転数が高回転及びエンジン負荷が高負荷程、主燃焼の収束度合が増し始める時期、及び主燃焼期間Aの完了時期(つまりAt)が遅くなるので、これに対応して、高回転及び高負荷程、噴射開始時期を遅角するよう設定している。また、噴射量マップは、定常運転状態において排気ガス温度が低い、低回転及び低負荷ほど噴射量を増量するよう設定しており、一方、高回転及び高負荷領域では、膨張行程初期噴射F1を実行しなくても主燃焼による排気ガス温度の高温化を十分図ることができるので、膨張行程初期噴射の噴射量を0に設定している。
【0042】
膨張行程中期噴射F2は、膨張行程初期噴射の実行後の主燃焼期間A以降で噴射されるものであり、膨張行程中期噴射F2の噴射開始時期は、圧縮行程上死点後(ATDC)50°から120°の間、より好ましくはATDC60°から110°ぐらいで、運転状態により影響を受けるために運転状態に応じた所定の許容範囲時期TF2内の特定時期に設定される。このような膨張行程中期噴射F2により噴射された燃料は、膨張行程初期噴射F1による主燃焼の影響を大きく受けることがないよう、好ましくは膨張行程初期噴射F1による燃焼の熱発生率が略0となった後に、膨張行程中期噴射F2により噴射された燃料が燃焼室内4に拡散するよう噴射開始されるので、その殆どが未燃燃料となり排気通路26に排出される。こうして排出された未燃燃料の多くは酸化触媒28aのセル内に付着することとなるが、この時酸化触媒28aが不活性状態であれば、付着した未燃燃料が堆積することこととなる。その後主噴射Mや膨張行程初期噴射F1により酸化触媒温度が昇温し活性状態に移行すると、堆積した未燃燃料が急激に燃焼し、この反応熱によって酸化触媒28a下流のフィルタ28bの温度上昇が図られることとなる。フィルタ28bでは、この温度上昇によりフィルタ前の排気ガス温度が500°C以上となると、それまでに堆積された微粒子つまり煤が排気ガス中の酸素と反応して燃焼して焼却され、例えばこのような高温状態を数分間継続させることによりフィルタが再生することとなる。
【0043】
ところで、膨張行程中期噴射F2の噴射時期を上述の所定許容範囲時期TF2よりも早くすると、噴射された燃料の内、膨張行程初期噴射F1の燃焼の影響を受けて燃焼される燃料量が増量し、酸化触媒28aに供給すべき未燃燃料が減少することとなる。また、噴射時期を所定許容範囲時期TF2より遅角側に設定すると、この状態ではピストン位置がかなり低下し且つ燃焼室内圧力も温度も低下した状態であるので、噴射された燃料がシリンダ壁面に付着することとなり、次回にこの気筒で燃焼が行われる際のエミッションが悪化してしまう。
【0044】
膨張行程中期噴射F2の噴射時期、及び噴射量は、それぞれECU40に記憶されたマップ(図示せず)により制御される。具体的には、噴射時期マップは、膨張行程中期噴射F2が設定される領域内において、エンジン回転数が高回転及びエンジン負荷が高負荷程、膨張行程初期噴射F1による燃焼燃焼期間の終了が遅くなるので、これに対応して、高回転及び高負荷程、噴射開始時期を遅角するよう設定している。また、噴射量マップは、定常運転状態において排気ガス温度が低いことに起因して酸化触媒28a温度も低い、低回転及び低負荷ほど噴射量を増量するよう設定しており、一方、高回転及び高負荷領域では、膨張行程中期噴射F2を実行しなくても主燃焼による排気ガス温度の高温化及びこれに伴うフィルタの高温維持が十分図れるので、膨張行程中期噴射の噴射量を0に設定している。なお、膨張行程中期噴射F2の噴射時期マップ、噴射量マップは、後述するように酸化触媒28aの活性時用と、不活性時用との2つが準備されている。
【0045】
ところで、フィルタの高温化には、膨大な量の未燃燃料の供給が必要であり(例えば主噴射による噴射量の2倍以上)、そのためエンジン回転数が低くエンジン負荷も低い状態では、フィルタ28b昇温のため噴射実行期間(インジェクタ5の針弁の開弁期間)を長期間に設定する必要がある。一方、上述のように膨張行程中期噴射は上記所定許容範囲時期TF2内で実行しなければならず、仮に噴射開始時期を所定許容範囲時期TF2よりも進角側に設定すると上述のように酸化触媒28aに供給すべき未燃燃料が減少してフィルタ28bの高温化が不十分となり、噴射時期を所定許容範囲時期TF2よりも遅角側に設定するとシリンダ壁面への燃料付着が発生する。
一方、膨張行程初期噴射F1を増量すると主燃焼中に噴射されるために未燃燃料を増量することはできず、反って不要なトルク増量が発生する。
【0046】
そこで、本実施形態では、排気行程後期噴射F3を実行する。
排気行程後期噴射F3は、排気行程の後期において実行されるもので、排気行程後期噴射F3の噴射開始時期は、圧縮行程上死点後(ATDC)300°から350°の間(つまり排気行程上死点前60°から0°の間)、より好ましくはATDC310°から320°(つまり排気行程上死点前50°から40°の間)ぐらいで、運転状態により影響を受けるために運転状態に応じた所定の許容範囲時期TF3内の特定時期に設定される。この状態ではピストンは上昇した位置にあるため、このような排気行程後期噴射F3により噴射された燃料は、シリンダ壁面に付着することがなく、この時開弁している排気弁から排気通路に排出されて酸化触媒28aに到達し、フィルタ28bの再生に寄与されることとなる。
【0047】
ところで、排気行程後期噴射F3の噴射時期を上記の所定許容範囲時期TF3より進角側に設定すると、ピストン位置が下がった状態で噴射されることになるのでシリンダ壁面への付着燃料の増大を招き、また噴射時期を所定許容範囲時期TF3より遅角側に設定すると、排気弁が低開度状態となるため、排気通路に供給される未燃燃料量が減少する。そればかりか、排気されなかった燃料はこの気筒内に残留し、次回のサイクルの燃焼に寄与することとなり、不必要なトルク増大を招くこととなる。
【0048】
排気行程後期噴射F3の噴射時期、及び噴射量は、それぞれECU40に記憶されたマップ(図示せず)により制御される。噴射時期マップは、排気行程噴射F3が設定されている領域内において、エンジン回転数が高回転及びエンジン負荷が高負荷程、噴射開始時期を遅角するよう設定している。なお、排気行程後期噴射F3は、噴射された燃料が燃焼されることがないので、運転状態に依らず一定に設定してもよい。また、噴射量マップは、定常運転状態において排気ガス温度が低いことに起因して酸化触媒28a温度も低い、低回転及び低負荷ほど噴射量を増量するよう設定しており、一方、高回転及び高負荷領域では、膨張行程中期噴射F2を実行しなくても主燃焼による排気ガス温度の高温化及びこれに伴うフィルタの高温維持が十分図れるので、膨張行程中期噴射の噴射量を0に設定している。
なお、排気行程後期噴射F3の噴射量は、膨張行程中期噴射F2の噴射量よりも少なくなるように設定しており、これにより膨張行程中期噴射F2による未燃燃料の大量供給が確実に行われることとなる。
また、排気行程後期噴射F3の噴射時期マップ、噴射量マップは、後述するように酸化触媒28aの活性時用と、不活性時用との2つが準備されている。
【0049】
次に、酸化触媒28aの活性状態と噴射制御との関係について説明する。
図2のS1は、酸化触媒28aが活性状態にある時のインジェクタ5の針弁の動作状態を示したものである。これに対し、酸化触媒28aが不活性状態の時は、同図のS2で実線にて示すように、膨張行程中期噴射F2の噴射量と排気行程後期噴射F3との噴射量とは減量される。なお、同図の破線は、S1の膨張行程中期噴射、排気行程後期噴射の作動形態を開示している。
【0050】
酸化触媒28aが不活性の時は、酸化触媒28aに未燃燃料を供給しても、酸化触媒における反応熱の急激な上昇が起らないので、燃費向上のために未燃燃料供給を抑制させるためである。この時、膨張行程初期噴射F1の噴射量は実質的に減量しないため、酸化触媒28aの昇温が図られて酸化触媒28aの早期活性が行われる。また、このように膨張行程初期噴射F1による酸化触媒28aの早期活性が図られることで、その後の触媒活性による急激な反応熱の発生促進のために、膨張行程中期噴射F2と排気行程後期噴射F3とによる少量の燃料供給が行われる。
なお、この時は、膨張行程中期噴射F2と排気行程後期噴射F3は中止しても構わない。
【0051】
酸化触媒28aが不活性の時における膨張行程中期噴射F2と排気行程後期噴射F3との噴射時期、及び噴射量は、それぞれECU40に記憶されたマップ(図示せず)により制御される。噴射時期マップは、膨張行程中期噴射F2、排気行程後期噴射F3とがそれぞれ設定されている領域内で、それぞれエンジン回転数が高回転及びエンジン負荷が高負荷程、噴射開始時期を遅角するよう設定している。また噴射量マップは、それぞれ活性時と同一運転状態における噴射量が活性時の噴射量よりも減量されて設定されている。
【0052】
次に、本実施形態における追加噴射制御の制御フローチャートについて図3を参照しながら説明する。
図3の追加噴射制御の制御フローチャートにおいて、例えばクランク角の所定角度毎にスタートした後、ステップSA1にてエンジン回転数ne、エンジン負荷を検出してステップSA2に進み、ステップSA2では温度センサ41により酸化触媒28a上流の排気ガス温度を検出する。その後進んだステップSA3にて、上流圧力センサ42と下流圧力センサ43とにより検出された圧力の差圧からフィルタ28bに堆積した煤の量を推定する。これは、差圧が大きい程煤の堆積量が大と推定するもので、次のステップSA4では、推定した煤の堆積量が所定値以上の時は、堆積した煤を焼却してフィルタ28bを再生する必要があると判断しステップSA5に進む。一方ステップSA4で堆積量が所定値以下の時は、フィルタ28bを再生するほど煤が溜まっていないとしてステップSA1に戻る。ステップSA5では、酸化触媒28a上流の排気ガス温度などに基づいて判断した酸化触媒28aの活性状態に応じて、酸化触媒28aが活性化していれば(例えば酸化触媒28aの排気入口側のHC、CO、NOxなど所定排気ガス成分の量に対する排気下流側の所定排気ガス成分の量の比が、50%以上の時)ステップSA6に進み、酸化触媒28aが不活性であれば(上述の比が50%未満の時)ステップSA7に進む。ステップSA6では、上述の膨張行程初期噴射F1の噴射時期マップ、噴射量マップと、上述の膨張行程中期噴射F2、排気行程後期噴射F3との酸化触媒28aの活性時に対応したそれぞれ噴射時期マップ、噴射量マップとにより、それぞれの噴射F1A、F2A、F3Aを設定し、ステップSA8に進む。またステップSA7では、上述の膨張行程初期噴射F1の噴射時期マップ、噴射量マップと、上述の膨張行程中期噴射F2、排気行程後期噴射F3との酸化触媒28aの不活性時に対応したそれぞれ噴射時期マップ、噴射量マップとにより、それぞれの噴射F1B(=F1A)、F2B、F3Bを設定し、ステップSA8に進む。ステップSA8では、ステップSA6またはステップSA7とにおいて設定された噴射F1A、F2A、F3A、F1B、F2B、F3Bを、検出されたクランク角が夫々設定された噴射時期となった時に実行して、ステップSA1に戻る。
【0053】
このような実施形態により、膨張行程初期噴射F1による排気ガス温度の高温化ととともに、膨張行程中期噴射F2及び排気行程後期噴射F3による未燃燃料の酸化触媒28aやフィルタ28bへの供給によるフィルタ28bの高温化を図ることができ、フィルタ28bの再生性能の向上、延いては煤の高い浄化性能の維持を図ることが可能となる。さらにこのような追加噴射を、シリンダ壁面への燃料付着によるエミッションの悪化や、トルク増大といった不具合を発生することなく実行できる。
また、膨張行程中期噴射F2と排気行程後期噴射F3とにより未燃燃料の酸化触媒28aへの供給を行うので、排気弁開度が低いことやまた排気弁が少しでも開成することで燃焼室内圧力や温度が低くこの時噴射した燃料の霧化が促進され難い排気行程後期噴射F3だけでは未燃燃料を十分供給できないが、膨張行程中期噴射F2も実行することで、大量の未燃燃料供給が可能となる。
なお、本実施形態においては、膨張行程初期噴射F1と膨張行程中期噴射F2とを実行するものとしたが、この2つの内、膨張行程初期噴射F1は実行せず膨張行程中期噴射F2のみ実行しても良い。
【0054】
(他の実施形態)
なお、本発明の実施形態においては、フィルタ28bの再生時において、上述のような追加噴射の制御を行ったが、高温化する排気浄化装置は、フィルタ28bに限定されるものではなく、三元触媒やHCトラップ触媒、NOxトラップ触媒などの通常の触媒装置であってもよい。この場合、エンジン1は、リーンバーンを実行可能な直噴ガソリンエンジンであっても構わない。
また、本発明の実施形態においては、主噴射は圧縮行程上死点付近で実行したが、これに限らず、主噴射は、圧縮行程上死点付近とそれより進角側の吸気行程から圧縮行程に架けて複数回燃料噴射するものであってもよいし、圧縮行程上死点付近では噴射せずに、それより進角側の吸気行程から圧縮行程に架けて噴射するものであっても良い。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る例えばフィルタなどの排気浄化部材による排気浄化を向上させるために追加噴射を行う場合、追加噴射される燃料が多量であっても、噴射された燃料がシリンダ壁面(気筒内壁面)に多量に付着してエミッション悪化を起因しないように排気浄化部材の高温化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るエンジンの燃料噴射制御装置を示す全体構成図。
【図2】インジェクタ5による噴射作動の様子を模式的に示す説明図。
【図3】実施形態における制御手順を示すフローチャート図。
【符号の説明】
2:気筒(シリンダ)
4:燃焼室
5:インジェクタ(燃料噴射弁)
28a:酸化触媒(排気浄化部材)
28b:フィルタ (排気浄化部材)
F1:膨張行程初期噴射
F2:膨張行程中期噴射
F3:排気行程後期噴射
Claims (4)
- エンジンの排気通路に設けられた排気浄化部材により高温の状態で排気ガス中に含有される特定成分を浄化するととももに、
エンジンの運転状態に基づいて、エンジンの燃焼室に直接燃料を噴射する燃料噴射弁により噴射される燃料の噴射量及び噴射時期を設定可能な噴射制御手段によって、少なくとも圧縮行程上死点近傍で主燃焼を行うための主噴射の噴射量及び噴射時期と、排気浄化部材による特定成分の浄化を実行するための該主噴射とは異なる追加噴射の噴射量及び噴射時期とを設定するエンジンの燃料噴射制御装置において、
該噴射制御手段は、上記追加噴射として、上記主噴射を実行した後の膨張行程初期及び中期の少なくとも一方に膨張行程噴射を実行し、噴射された燃料のシリンダ壁面への付着が抑制されるような排気行程後期において排気行程後期噴射を実行することを特徴とするエンジンの燃料噴射制御装置。 - 上記排気浄化部材は、排気ガス中に含有する微粒子を捕集するフィルタと、該フィルタの上流側に配置された酸化触媒とであって、該フィルタに捕集された微粒子の堆積量を検出する検出手段と、該堆積量に基づきフィルタの温度を昇温させて微粒子の焼却によるフィルタの再生を実行する再生時期であるか否かを判断する再生時期判断手段とを備え、
上記噴射制御手段は、該再生時期判断手段により、フィルタの再生時期を判断した時、上記膨張行程噴射及び排気行程後期噴射を実行することを特徴とする請求項1記載のエンジンの燃料噴射制御装置。 - エンジンの排気通路に排気ガス中に含有する微粒子を捕集するフィルタと、該フィルタの上流に酸化触媒とを設けるとともに、
エンジンの運転状態に基づいて、エンジンの燃焼室に直接燃料を噴射する燃料噴射弁により噴射される燃料の噴射量及び噴射時期を設定可能な噴射制御手段によって、圧縮行程上死点近傍で主燃焼を行うための主噴射の噴射量及び噴射時期と、該主噴射実行後に実行されるフィルタに捕集された微粒子を浄化させるための主噴射とは異なる追加噴射の噴射量及び噴射時期とを設定するエンジンの燃料噴射制御装置において、
該噴射制御手段は、上記追加噴射として、上記主噴射を実行した後の膨張行程初期に、上記酸化触媒に流入する排気ガス温度を高温状態とするための膨張行程初期噴射と、該膨張行程初期噴射実行後の膨張行程中期に上記酸化触媒に未燃燃料を供給するための膨張行程中期噴射と、更に排気行程後期における排気行程後期噴射とを実行することを特徴とするエンジンの燃料噴射制御装置。 - 上記酸化触媒の活性状態を判断する活性状態判断手段を備え、
上記噴射制御手段は、該酸化触媒が不活性状態であると判断した時は、活性状態であると判断した時よりも上記膨張行程中期噴射の噴射量あるいは上記排気行程後期噴射の噴射量のうち少なくとも一方を減量することを特徴とする請求項3記載のエンジンの燃料噴射制御装置。
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