JP2004232853A - ストッパ付き転がり支承装置及び構造物のアンカー構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明に係るストッパ付き転がり支承装置1は、上下の硬質板3、4の転動面の周縁部にそれぞれ硬球体2の転動を規制するストッパ部材7、8を突設するとともに、ストッパ部材7、8の内周面に弾性緩衝材9、10を配設したものである。弾性緩衝材9、10により、硬球体がストッパに衝突したときの衝撃を吸収することができる。また、弾性緩衝材9、10により、ストッパ部材7、8の組み付け誤差を吸収することができるので、地震が収まったときに、硬球体2を元の位置(地震前の位置)に復帰させることができる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、構造物の上部構造と下部構造との間に装着され、下部構造の上に上部構造を固定する構造物のアンカー構造に用いる転がり支承装置に関するものである。また、本発明に係る転がり支承装置は、嵩張らず、住宅の基礎部の通気用の基礎パッキン材としての機能を兼ね備えさせることが可能である。
【0002】
【従来の技術】
地震等による振動から構造物を保護する免震支承装置として、転がり支承装置を備えたものが知られている。転がり支承装置は、上下の硬質板の間に硬球体を挟んだ構造をしており、地震時は、硬球体が上下の硬質板の中央部に形成した転動面を転がり、構造物の上部構造と下部構造の水平方向の相対移動を許容する構造になっている。
【0003】
また、設計時の想定以上の揺れが生じ、転がり支承装置の硬球体が下側の硬質板から脱落するのを防止するストッパを設けたものが特許文献1に記載されている。また、転がり支承装置の上下の硬質板の周囲にストッパとなる壁を設けたものが下記特許文献2、3に記載されている。
【0004】
また、ストッパに硬球体が衝突したときには、構造物の上部構造と下部構造の水平方向の相対移動が規制されるため、衝突の衝撃が生じる。この衝撃を回避するため、ストッパに衝突した後で、滑りを生じさせて、衝突の衝撃が生じないようにしたものが下記特許文献4、5に記載されている。
【0005】
特許文献4では、上側の硬質板の転動面の直径を下側の硬質板のものより大きくし、ストッパに硬球体が衝突した後、下側の硬質板に設けたストッパにより転動が規制されたボールに対して、上側の硬質板が滑るようになっている。特許文献5では、ストッパに硬球体が衝突した後、下側の硬質板が構造物の土台上を滑るようになっている。
【0006】
【特許文献1】特開平11−303928号公報
【特許文献2】特開平10−317718号公報
【特許文献3】特開平11−36658号公報
【特許文献4】特開平10−292671号公報
【特許文献5】特開平11−182618号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述した特許文献4に記載されている転がり支承装置は、ストッパに硬球体が衝突した後、下側の硬質板に設けたストッパにより転動が規制された硬球体に対して、上側の硬質板が滑るようになっているため、地震後に硬球体が元の位置(地震前の位置)に復帰することができない。また、上下の硬質板の直径を変える必要があり、上下の硬質板を別々に作る必要がありコストが嵩む、また、上側の硬質板と硬球体には大きな鉛直荷重が掛かっているため、上側の硬質板が硬球体に対して滑る場合には、大きな摩擦力が生じ、上側の硬質板又は硬球体に摩耗や損傷が生じるなどの問題がある。
【0008】
また、特許文献5に記載されている転がり支承装置は、ストッパに硬球体が衝突した後、下側の硬質板が構造物の土台上を滑るようになっているため、地震後に下側の硬質板が元の位置(地震前の位置)に復帰することができない。
【0009】
そこで、本発明は、ストッパで硬球体の転動が規制されたときの衝撃を緩和することができ、かつ、地震後に、硬球体と上下の硬質板の相対的な位置が元の状態(地震前の状態)に戻るストッパ付きの転がり支承装置を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るストッパ付き転がり支承装置は、向かい合う面にそれぞれ転動面を有する上下一対の硬質板と、前記上下の硬質板の間に挟まれ、かつ、上下の硬質板の転動面の中央部に位置決めした状態で配設した硬球体とを備えた転がり支承装置において、前記上下の硬質板の転動面の周縁部に、それぞれ硬球体の転動を規制するストッパ部材を突設するとともに、ストッパ部材の内周面に弾性緩衝材を配設したことを特徴としている。この場合、ストッパ部材の内周側の頂部に切欠き部を設けることが望ましい。
【0011】
本発明に係るストッパ付き転がり支承装置は、前記上下の硬質板の転動面を平らにし、かつ、前記上下の硬質板の間に軟質弾性体からなる筒状体を配設し、前記筒状体に前記硬球体を内接させることにより、前記硬球体を上下の硬質板の転動面の中央部に位置決めするとよい。
【0012】
また、上下の硬質板の少なくとも転動面の硬さを、HRC25以上にすることにより、硬球体の転動面が凹むのを抑えることができ、ヒステリシスループでの負勾配の発生を抑制して効果的な制振機能を持たせることができる。上下の硬質板は、冷間圧延加工により加工硬化させることにより、HRC25以上の硬さを安価に確保することができる。また、上下の硬質板を冷間圧延加工により加工硬化させたものは、熱処理により硬度を向上させた場合に比べて上下の硬質板に歪が生じないのでより平坦な転動面が得られ、硬球体のより滑らかな転動を確保することができる。
【0013】
また、硬球体の硬さをHRC25以上にすることにより、硬球体が凹むのを抑えることができ、ヒステリシスループでの負勾配の発生を抑制して、効果的な制振機能を持たせることができる。硬球体は、転動加工により加工硬化させることにより、HRC25以上の硬さと所要の真球度を安価に確保することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態に係るストッパ付き転がり支承装置を図面に基づいて説明する。
【0015】
ストッパ付き転がり支承装置1は、図1、図2に示すように、硬球体2と、円筒形状の収容部材3、4と、硬球体2及び収容部材3、4を上下に挟む硬質板5、6と、ストッパ部材7、8と弾性緩衝材9、10とを備えており、住宅の土台11(構造物の上部構造)と基礎コンクリート12(構造物の下部構造)との間の制振層13に配設される。
【0016】
硬球体2は、所要の硬さと真球度を備えた球体であり、略球形に粗加工した鋼材を転動加工し、表面にニッケルメッキを施して製造したものである。転動加工は、略球形に粗加工した鋼材を研磨板で上下に挟み、研磨板間で転動させて鋼材の表面の歪を除去しながら、球形に整形するものである。硬球体2は、転動加工により加工硬化が生じて硬さが増す。この転動加工によれば、例えばS15Cなどの安価な鋼材を用いて、HRC25以上の硬さと、高度な真球度を備えた硬球体を得ることができ、硬球体2の部品コストを安くすることができる。
【0017】
収容部材3、4は、合成ゴムの発泡体、軟質ウレタンフォーム、ポリスチレン発泡体やポリエチレン発泡体などの軟質弾性材料からなるスポンジ状の円筒形状の部材である。収容部材3、4の内径は、硬球体2の直径と同じか、硬球体2の直径よりも少し小さくなっている。収容部材3は上側の硬質板5の下面に取り付けられ、収容部材4は下側の硬質板6の上面に取り付けられている。
【0018】
硬質板5、6は、図2に示すように、所要の硬さと平面度を備えており、例えば5mm厚の略ひし形の板状部材である。上下の硬質板5、6の両側には、アンカーボルト15を締結するボルト締結部16を設けている。この硬質板5、6は、板状素材に冷間圧延加工を施して製造している。冷間圧延加工は、板状素材を圧延ローラで挟みながら引き抜くものであり、熱処理を施すことがないので、加工後に歪が生じることがなく、これにより所要の平面度を確保することができる。また、この冷間圧延加工によれば、加工硬化により所要の硬さを得ることができ、例えば、SUS304などの鋼材を用いて、HRC25以上の硬質板5、6を得ることができる。
【0019】
このストッパ付き転がり支承装置1は、この硬質板5、6の中央部に収容部材3、4を接着し、収容部材3、4に硬球体2を収容することにより硬球体2を位置決めしている。硬質板5、6には、硬球体2を位置決めする位置を中心として、硬球体2の転動を規制する円形のストッパ17、18を配設することにより、硬球体2に転動を許容する円形の転動面を形成している。
【0020】
ストッパ17、18は、ストッパ部材7、8と弾性緩衝材9、10からなる。
【0021】
ストッパ部材7、8は、硬球体2の転動を規制するための所要の硬度を有する円筒状部材である。この実施形態では、一端にフランジ7a、8aを備えており、フランジ7a、8aを設けた端部を上下の硬質板5、6に取り付け、溶接やボルト締結などにより剛接合している。また、ストッパ部材7、8は、弾性緩衝材9、10を装着するフランジ7b、8bを内周面に備えている。
【0022】
弾性緩衝材9、10は、ストッパ部材7、8の内周面に装着されたリング状のゴム弾性体である。この弾性緩衝材9、10は内周側の頂部に円弧状に切欠き部9b、10bを有している。弾性緩衝材9、10は、例えば、ストッパ部材7、8の内周面に設けたフランジ7b、8bに嵌まり合う係合凹部9a、10aを外周面に備えており、この係合凹部9a、10aをストッパ部材7、8のフランジ7b、8bに嵌め合わせて、ストッパ部材7、8の内周面に装着している。なお、弾性緩衝材9、10の装着の仕方は上記に限定されない。また、弾性緩衝材9、10は、ゴム弾性体に限定されず、例えば、空気を封入したエアバッグのようなエアダンパーや、例えば粘性流体を封入した液体ダンパーを用いてもよい。
【0023】
このストッパ付き転がり支承装置1は、図1に示すように、住宅の土台11(構造物の上部構造)と基礎コンクリート12(下部構造)との間の制振層13に、制振装置(図示省略)と一緒に配設されている。
【0024】
ストッパ付き転がり支承装置1の硬球体2と硬質板5、6との間には上部構造の鉛直荷重が掛かっているので、硬球体2と硬質板5、6との間には大きな摩擦力が作用し、地震時には、硬球体2は硬質板5、6の間を滑ることなく転動する。また、硬球体2は硬質板5、6に点接触で支持されているが、硬質板5、6が所要の硬さと平面度を備えており、かつ、硬球体2も所要の硬さと真球度を備えているので、上下の硬質板5、6間に上部構造の鉛直方向の圧縮荷重が掛かった状態でも、硬球体2および硬質板5、6に凹みがほとんど生じない。このため、地震時に硬球体2が転動する場合に、水平変位と水平反力との関係において描かれるヒステリシスループに負勾配が生じない。
【0025】
また、ストッパ付き転がり支承装置1を設置する前は、硬球体2は収容部材3、4によって位置決めされているが、ストッパ付き転がり支承装置1を設置した後は、硬球体2と上下の硬質板5、6の間には上部構造の鉛直荷重が掛かっているので、硬球体2が上下の硬質板5、6に対して滑ることはない。
【0026】
また、収容部材3、4は、地震時に硬球体2が転動するときには、硬球体2に大きい力が掛かっているので、硬球体2によって収容部材3、4は簡単に変形し又は壊される。収容部材3、4は、地震時の硬球体2の転動に対しては大きな抵抗にならない。図3、図4は、地震時において硬質板5、6がせん断方向(水平方向)に相対移動し、硬球体2が転動した状態を示しているが、収容部材3、4は、地震時の硬球体2の転動に対して大きな抵抗にならないので、収容部材3、4を無視している。
【0027】
このストッパ付き転がり支承装置1は、ストッパ部材7、8の内周面に弾性緩衝材9、10を装着しているので、図3、4に示すように、硬球体2がストッパ17、18に衝突したときに、硬球体2がストッパ17、18に衝突してから硬球体2に押されて弾性緩衝材9、10が徐々に変形する。このため、硬球体2の水平変位に対する水平反力は、図5に示すように垂直に立ち上がらない。これに対し、仮に、ストッパ部材7、8に弾性緩衝材9、10を装着していないと、図6に示すように、硬球体2がストッパ部材7、8に衝突するときに、硬球体2の転動が突然規制されるので、硬球体2の水平変位に対する水平反力が垂直に立ち上がる。このように、このストッパ付き転がり支承装置1は、弾性緩衝材9、10をストッパ部材7、8の内周面に装着したので、硬球体2がストッパ17、18に衝突したときの衝撃を吸収することができる。
【0028】
また、ストッパ部材7、8の内周面に弾性緩衝材9、10を設けているので、ストッパ部材7、8の配設位置についての組み付け誤差を弾性緩衝材9、10で吸収することができる。
【0029】
すなわち、ストッパ17、18が、弾性緩衝材9、10を装着せずに、ストッパ部材7、8のみで構成されており、かつ、ストッパ部材7、8に組み付け誤差がある場合には、硬球体2が転動したときに、上下の硬質板5、6の一方のストッパ(17、18)に当たっているが、他方のストッパ(18、17)には当たっていない状態が生じる。この場合、他方のストッパ(18、17)に硬球体2が当たるまで、硬球体2と硬質板5、6との間に滑りが生じ、硬球体2と硬質板5、6に顕著な摩耗痕が生じたり、地震終息後に硬球体2が元の位置(地震前の位置)に復帰できなかったりする不具合が生じる。
【0030】
しかし、このストッパ付き転がり支承装置1によれば、硬球体2が弾性緩衝材9、10に当たってから、弾性緩衝材9、10が変形するので、ストッパ17、18に組み付け誤差がある場合でも、弾性緩衝材9、10の変形により組み付け誤差が吸収され、硬球体2が必ず上下の硬質板5、6の両方のストッパ17、18に当たるようになる。このため、硬球体2と硬質板5、6との間に滑りが生じることがなく、地震が収まったときには、制振装置22の作用により、硬球体2を元の位置(地震前の位置)に復帰させることができる。
【0031】
本発明者らは、図7に示すように、住宅(構造物の上部構造)の土台11と基礎コンクリート12(下部構造)との間の制振層13に、複数の転がり支承装置21と複数の制振装置22を一緒に配設することにより、地震の振動を吸収する機能と、住宅の床下の換気を行う基礎パッキンの機能を兼ね備えた構造を備えた住宅(構造物の上部構造)のアンカー構造20を提案している。
【0032】
本発明者らは、各転がり支承装置21を均等に住宅(構造物の上部構造)の鉛直荷重を支承するように配設し、各制振装置22を住宅(構造物の上部構造)の捩じれ振動を抑制するように配設することにより、より高度な制振機能を得ることを提案している。
【0033】
転がり支承装置21は、例えば図8に示すように、硬球体31と、円筒形状の収容部材32と、硬球体31及び収容部材32を上下に挟む硬質板33、34を備え、収容部材32の中に硬球体31を入れ、収容部材32の上端及び下端に、上下の硬質板33、34をそれぞれ接着したものである。この転がり支承装置21の硬球体31、収容部材32、硬質板33、34は、上述したストッパ付き転がり支承装置1の硬球体2、収容部材3、4、硬質板5、6と同様の構成、作用、効果を備えているので、その説明は省略する。なお、収容部材32については、収容部材32の下端のみ下側の硬質板33に接着し、上端は上側の硬質板34に接着しないようにしてもよい。
【0034】
また、転がり支承装置21と一緒に配設する制振装置22は、例えば図9に示すように、高減衰ゴム製のゴム状弾性体からなる円柱形状の制振部材41と、制振部材41を上下に挟む硬質板42、43と、ゴム製の被覆材44を備え、制振部材41の上端及び下端にそれぞれ硬質板42、43を加硫接着し、制振部材41の外周面をゴム製の被覆材44で被覆したものである。後記表1に、制振部材41に用いるゴム材料の好適な配合例を示す。なお、表1中、phrは、配合剤の質量をゴム100部に対する部数で示すときに用いる記号である。制振装置22は、構造物の上部構造の捩じれ振動を抑制するように配設する。具体的には、構造物の上部構造と下部構造との間の制振層の偏心率が3%以内になるように配設する。なお、構造物の上部構造と下部構造との間の制振層の偏心率は、後記式1により算出する。
【0035】
この転がり支承装置21と制振装置22は、嵩張らないので、基礎パッキンの機能を兼ね備えたものとして好適である。
【0036】
本発明に係るストッパ付き転がり支承装置1は、図10に示すように、このアンカー構造20に適用可能であり、上記の複数の転がり支承装置21の全て又は幾つか(少なくとも1つ)をストッパ付き転がり支承装置1に置き換えることにより、このアンカー構造20の転がり支承装置21の機能とストッパとしての機能を奏する。なお、ストッパ付き転がり支承装置1は、ストッパ17、18のない転がり支承装置21に比べて、製造コストが割高になるので、ストッパ付き転がり支承装置1の数を抑えると、アンカー構造20全体のコストを抑えることができる。住宅の重さ、地震時に作用する慣性力、ストッパ17、18の耐力を考慮して、ストッパ17、18が壊れない程度に、ストッパ付き転がり支承装置1の数を抑えればよい。
【0037】
また、このアンカー構造20に用いる場合のストッパ17、18については、制振装置22の破損を防止することも考慮するとよい。制振装置22の制振部材41に用いる高減衰ゴムは、高さの約4倍の水平方向のせん断変形量によって、破断限界又は降伏限界に達することが知られている。このため、制振装置22の上下の硬質板42、43のせん断方向(水平方向)の変位を制振装置22の制振部材41の高さの4倍以下にするとよい。ストッパ付き転がり支承装置1では、硬質板5、6のせん断方向(水平方向)の変位は、硬球体2の転動距離の2倍になる。このため、ストッパ付き転がり支承装置1のストッパ17、18により、硬球体2の転動を、制振装置22の制振部材41の高さの2倍以下に規制することにより、制振装置22の破断を防止することができる。
【0038】
以上、本発明に係るストッパ付き転がり支承装置1の実施の形態、および、本発明者らの提案する構造物のアンカー構造20への適用を説明したが、本発明に係るストッパ付き転がり支承装置1は上記に限定されるものではない。
【0039】
例えば、ストッパ付き転がり支承装置の弾性緩衝材9、10は、上述した形態にゴムの材質を変えたり、縦断面形状を変更したりして、弾性特性を適当に選択することにより、ストッパ接触時の衝撃力の吸収過程における不具合を防止することができる。
【0040】
図11に示すストッパ付き転がり支承装置の弾性緩衝材10は、図1に記載したものと同様、内周側の頂部に切欠き部10bを設けたものである。以下、このストッパ付き転がり支承装置の弾性緩衝材9、10について、さらに詳しく説明する。
【0041】
ストッパ付き転がり支承装置の弾性緩衝材9、10は、例えば、図12に示すように、縦断面形状を単純な矩形断面にすると、硬球体2が接触したときに、硬球体2を受ける受圧面積(硬球体2に接触する面積)が非常に小さく、略点接触で接触する。そして、その後も受圧面積はすぐには増えない。このため、弾性緩衝材9、10に局部的に大きな力が加わり、これが弾性緩衝材9、10が破損する原因になる。また、この場合、弾性緩衝材9、10は、硬球体2が接触した後すぐに上側の弾性緩衝材9が下方に変形し、下側の弾性緩衝材10が上方に変形を始める。そして、最終的にストッパ部材7、8によって、硬球体2の転動を規制したときには、図13に示すように、上側の弾性緩衝材9の下方への変形及び下側の弾性緩衝材10の上方への変形がそれぞれ大きくなるため、ストッパ部材7、8の下端又は上端と、弾性緩衝材9、10が当たる部分Xに局部的に大きな力が加わり、弾性緩衝材9、10が破損する原因になる。また、この場合には、上側の弾性緩衝材9の下方への変形及び下側の弾性緩衝材10の上方への変形がそれぞれ大きいため、上側の弾性緩衝材9と下側の弾性緩衝材10が相互に干渉する不具合も生じる。
【0042】
これに対し、図1や図11に示すように、弾性緩衝材9、10の縦断面形状において、内周側の頂部に切欠き部9b、10bを設けたものは、図14に示すように、硬球体2が切欠き部9b、10bに接触し、接触してからすぐに受圧面積が増えるようになっており、硬球体2を受ける受圧面積を接触当初から広く確保することができる。このため、弾性緩衝材9、10に局部的に大きな力が加わるのを防止することができ、弾性緩衝材9、10の破損を防止することができる。
【0043】
また、この場合、予め、弾性緩衝材の縦断面形状において、内周側の頂部に切欠き部9b、10bを設けているので、上側の弾性緩衝材9が下方に変形する量、及び、下側の弾性緩衝材10が上方に変形する量を共に、小さくすることができる。このため、ストッパ部材7、8の下端又は上端と、弾性緩衝材9、10が当たる部分X(図13参照)に局部的に発生する力を緩和することができるので、弾性緩衝材9、10の破損を防止できる。また、上下の弾性緩衝材9、10が相互に干渉して不具合が生じるのを防止することができる。また、硬球体2は弾性緩衝材9、10の切欠き部9b、10bに接触して、弾性緩衝材9、10に斜め方向に力を作用させて弾性緩衝材9、10を圧縮する。このため、弾性緩衝材9、10に大きな弾性反力が蓄えられ、硬球体2の転動エネルギを効率良く吸収しながら、硬球体2の変位を抑制することができ、硬球体2とストッパ部材7、8の衝突を確実に防ぐことができる。
【0044】
このように、弾性緩衝材9、10の内周側の頂部には、切欠き部9b、10bを設けるとよい。なお、図15に示すように、内周側の底部から傾きが一様な傾斜面9c、10cを設けた場合には、硬球体2に接触してからすぐに受圧面積が増えるので、硬球体2を受ける受圧面積を接触当初から広く確保するという面においては効果があるが、硬球体2を規制したときに、弾性緩衝材9、10の内周側の底部9d、10dに硬球体2が乗りあがる可能性があり、弾性緩衝材9、10が破損する原因になる。また、この場合、弾性緩衝材9、10の底部が硬球体2にすぐに接触してしまうので、弾性緩衝材9、10の底部が内周側に変形できず、上側の弾性緩衝材9の下方への変形、及び、下側の弾性緩衝材10の上方への変形が早期に進む。このため、ストッパ部材7、8の下端又は上端と、弾性緩衝材9、10が当たる部分X(図13参照)に局部的に大きな力が加わり、弾性緩衝材9、10が破損するという問題もある。
【0045】
これに対し、図1や図11に示すように、弾性緩衝材9、10の縦断面形状において、弾性緩衝材9、10の内周側の底部9d、10dから(硬質板5、6から)少し高い位置において、内周側の頂部に切欠き部9b、10bを設けると、弾性緩衝材9、10の内周側の底部9d、10dが内周方向へ弾性変形するのを許容することができるので、弾性緩衝材9、10の内周側の底部9d、10dが硬球体2と干渉する不具合を防止することができる。また、この場合、弾性緩衝材9、10の底部9d、10dが早期に硬球体2に接触しないので、弾性緩衝材9、10の底部9d、10dは内周側に変形することができ、上側の弾性緩衝材9の下方への変形、及び、下側の弾性緩衝材10の上方への変形が、変形初期にあまり進まない、このためストッパ部材7、8の下端又は上端と、弾性緩衝材9、10が当たる部分X(図13参照)に局部的に大きな力が加わり、弾性緩衝材9、10が破損することを防止することができる。
【0046】
弾性緩衝材9、10の内周側の頂部に形成する切欠き部9b、10bは、図1に示すように、円弧状にしてもよいし、図11や図16(a)に示すように、直線的な形状にしてもよい。また、弾性緩衝材9、10の内周側の底部については、図16(b)に示すように、切欠き部9e、10eを設けてもよい。これにより、弾性緩衝材9、10の底部が内周側へのより大きい弾性変形を許容することができるので、硬球体2が弾性緩衝材9、10に乗り上げることを防止でき、上側の弾性緩衝材9の下方への変形、及び、下側の弾性緩衝材10の上方への変形を小さくすることができ、これらに起因する不具合を防止することができる。
【0047】
これら、弾性緩衝材9、10の断面形状の違いによる効果に関し、図12に示すように弾性緩衝材9、10の縦断面形状が単純な矩形の場合には、硬球体2が弾性緩衝材9、10に接触した後、すぐに弾性緩衝材9、10が上方に変形するため、水平変位−水平反力の関係は、図17に2点鎖線で示すように、硬球体2と弾性緩衝材9、10が接触した後も水平反力はあまり大きくならず、ストッパ部材7、8により硬球体2の変位が規制される直前に水平反力が急激に大きくなる。
【0048】
これに対し、図1や図11に示すように、弾性緩衝材9、10の内周側の頂部に切欠き部9b、10bがある形状では、弾性緩衝材9、10が硬球体2から斜め方向に力を受けて変形するため、水平変位−水平反力の関係は、図17に実線で示すように、硬球体2と弾性緩衝材9、10が接触すると、その後の水平変位に対して比較的早期に水平反力が大きくなる。このことからも、弾性緩衝材9、10が単純な矩形状の場合に比べて、弾性緩衝材9、10に蓄えられる水平方向の反力が大きいことが解かる。
【0049】
また、弾性緩衝材9、10に起因する他の不具合の発現要因として、弾性緩衝材9、10をストッパ部材7、8の内周面にのみ取り付け、上下の硬質板5、6には接着していない場合がある。この場合には、図18に示すように、硬球体2の転動を規制するときに、弾性緩衝材9、10がめくれ上がり、弾性緩衝材9、10が破損したり、ストッパ部材7、8から脱落したりする。このため、弾性緩衝材9、10を取り付けるときは、外周面をストッパ部材7、8に取り付けるとともに、底部を上下の硬質板5、6に接着すると良く、これにより、斯かる不具合の原因を防止することができる。
【0050】
次に、ストッパ付き転がり支承装置、及び、構造物のアンカー構造の転がり支承装置における硬球体の位置決めする手段について説明する。硬球体の位置決め手段は、上述した収容部材に限定されず、例えば、図19に示すように、硬球体2を位置決めする収容部材51の上端52及び下端53の内径を硬球体2の直径よりも大きくし、かつ、収容部材51の内周面の高さ方向の中央部を内径側に突出させ、その頂部54を硬球体2に接触させて硬球体2を収容部材51の内部の中央に位置決めするようにしてもよい。この場合、地震時に、振幅の小さい範囲では収容部材51が完全に硬球体2に緩衝しないので、硬球体2の転動がよりスムーズになる。
なお、図19において、同一の構成部材・部位には、図1と同一の符号を付している。
【0051】
また、他の位置決め手段としては、下側の硬質板の中央部にお碗形の湾曲形状を有する窪みを形成することにより、設置時に重力の作用により硬球体が硬質板の中央部に位置するようにしてもよい。また、接着剤などで簡易接着して硬球体を固定してもよい。すなわち、この場合には、ストッパ付き転がり支承装置を設置した後は、硬球体には構造物の上部構造を支承することにより大きな鉛直荷重が掛かっており、地震時の振動により、硬球体の接着が容易に外れる。従って、接着により硬球体を位置決めしても地震時の硬球体の転動の妨げにはならない。
【0052】
また、ストッパ付き転がり支承装置1、転がり支承装置21、制振装置22の各硬質板のボルト締結部は、取付作業の便宜を図るため、図20に示すように、片側の第1ボルト締結部61に両側のボルト締結部61、62を結ぶ直線Lに沿って切欠き63を形成し、反対側の第2ボルト締結部62に両側のボルト締結部61、62を結ぶ直線に直交する方向に沿って切欠き64を形成するとよい。第2ボルト締結部62の切欠き64は、詳しくは、第1ボルト締結部61の所定の締結位置(例えば、設計上のボルト締結位置O)を中心とし、所定のボルトピッチ(例えば、設計上のボルトピッチP)を半径とする円弧Cに沿って形成するとよい。各ボルト締結部61、62の切欠き63、64の幅は、アンカーボルト65、66の直径よりも少し大きくなっており、切欠き63、64に沿ってアンカーボルト65、66を装着・離脱させることができるようになっている。また、切欠き63、64は、施工時の誤差を許容できるように、設計上のボルト締結位置よりも深く形成している。
【0053】
このようにボルト締結部を形成すると、図21に示すように、切欠き63に沿って第1ボルト締結部61に片側のアンカーボルト65に装着し、ストッパ付き転がり支承装置1等を回動させて切欠き64に沿って反対側のアンカーボルト66を第2ボルト締結部62に装着することができるので、取り付け作業が容易になる。
【0054】
【表1】
【0055】
【式1】
【0056】
【発明の効果】
本発明に係るストッパ付き転がり支承装置は、上下の硬質板の転動面の周縁部に、それぞれ硬球体の転動を規制するストッパ部材を突設するとともに、ストッパ部材の内周面に弾性緩衝材を配設したので、硬球体がストッパに衝突したときの衝撃を吸収することができる。また、ストッパ部材の配設位置についての組み付け誤差を弾性緩衝材で吸収することができるので、地震が収まったときには、制振装置の作用により、硬球体を元の位置(地震前の位置)に復帰させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るストッパ付き転がり支承装置を示す縦断面図。
【図2】本発明の一実施形態に係るストッパ付き転がり支承装置の平面図。
【図3】本発明の一実施形態に係るストッパ付き転がり支承装置の地震時の状態を示す縦断面図。
【図4】本発明の一実施形態に係るストッパ付き転がり支承装置の地震時の状態を示す平面図。
【図5】ストッパ付き転がり支承装置の硬球体の水平変位と水平反力との関係を示す図。
【図6】弾性緩衝材が装着されていない場合におけるストッパ付き転がり支承装置の硬球体の水平変位と水平反力との関係を示す図。
【図7】本発明者らが提案する構造物のアンカー構造を示す平面図。
【図8】本発明者らが提案する構造物のアンカー構造に用いる転がり支承装置を示す縦断面図。
【図9】本発明者らが提案する構造物のアンカー構造に用いる制振装置を示す縦断面図。
【図10】本発明者らが提案する構造物のアンカー構造に本発明に係るストッパ付き転がり支承装置を装備したものを示す平面図。
【図11】弾性緩衝材の変形例を示す弾性緩衝材の部分縦断面図。
【図12】略矩形の断面形状を有する弾性緩衝材を備えたストッパ付き転がり支承装置の縦断面図。
【図13】略矩形の断面形状を有する弾性緩衝材を備えたストッパ付き転がり支承装置において、硬球体の転動を規制した状態を示すストッパ付き転がり支承装置の縦断面図。
【図14】内周側の頂部に切欠き部を有する弾性緩衝材を備えたストッパ付き転がり支承装置の縦断面図。
【図15】内周側に一様な傾斜面を有する弾性緩衝材を備えたストッパ付き転がり支承装置の縦断面図。
【図16】(a)は内周側の頂部に切欠き部を有する弾性緩衝材の変形例を示すストッパ付き転がり支承装置の縦断面図であり、(b)はさらに内周側の底部に切欠き部を有する弾性緩衝材の変形例を示すストッパ付き転がり支承装置の縦断面図である。
【図17】ストッパ付き転がり支承装置の水平変位と水平反力との関係を示す図。
【図18】弾性緩衝材がめくれ上がる不具合を示す縦断面図。
【図19】ストッパ付き転がり支承装置の収容部材の変形例を示す縦断面図。
【図20】ストッパ付き転がり支承装置のボルト締結孔の変形例を示す図。
【図21】図20に示すストッパ付き転がり支承装置の変形例の取り付け作業を示す図。
【符号の説明】
1 ストッパ付き転がり支承装置
2 硬球体
3、4 収容部材
5、6 硬質板
7、8 ストッパ部材
7a、8a フランジ
7b、8b 係合突起
9、10 弾性緩衝材
9a、10a 係合凹部
9b、10b 弾性緩衝材の内周側の頂部の切欠き部
9e、10e 弾性緩衝材の内周側の底部の切欠き部
Claims (9)
- 向かい合う面にそれぞれ転動面を有する上下一対の硬質板と、
前記上下の硬質板の間に挟まれ、かつ、上下の硬質板の転動面の中央部に位置決めした状態で配設した硬球体とを備えた転がり支承装置において、
前記上下の硬質板の転動面の周縁部にそれぞれ硬球体の転動を規制するストッパ部材を突設するとともに、ストッパ部材の内周面に弾性緩衝材を配設したことを特徴とするストッパ付き転がり支承装置。 - 前記上下の硬質板の転動面を平らにし、かつ、前記上下の硬質板の間に配設した軟質弾性体からなる筒状体の内周面に前記硬球体を内接させることにより、前記硬球体を上下の硬質板の転動面の中央部に位置決めしたことを特徴とする請求項1に記載のストッパ付き転がり支承装置。
- 前記上下の硬質板の少なくとも転動面の硬さが、HRC25以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のストッパ付き転がり支承装置。
- 前記上下の硬質板が冷間圧延加工により加工硬化させたものであることを特徴とする請求項3に記載のストッパ付き転がり支承装置。
- 前記硬球体の硬さが、HRC25以上であることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載のストッパ付き転がり支承装置。
- 前記硬球体が転動加工により加工硬化させたものであることを特徴とする請求項5に記載のストッパ付き転がり支承装置。
- 前記ストッパ部材の内周側の頂部に切欠き部を設けたことを特徴とする請求項1から6の何れかに記載のストッパ付き転がり支承装置。
- 前記請求項1から7の何れかに記載のストッパ付き転がり支承装置を、構造物の上部構造の鉛直荷重を支持するように、構造物の下部構造と上部構造との間に分散させて配設するとともに、
高減衰ゴムの上下端面に硬質板をそれぞれ取り付けた複数の制振装置を、前記構造物の上部構造の捩じれ振動を抑制するように、構造物の下部構造と上部構造との間に分散させて配設したことを特徴とする構造物のアンカー構造。 - 転がり支承装置又は滑り支承装置と、前記請求項1から7の何れかに記載のストッパ付き転がり支承装置とを、構造物の上部構造の鉛直荷重を支持するように、構造物の下部構造と上部構造との間に分散させて配設するとともに、
高減衰ゴムの上下端面に硬質板をそれぞれ取り付けた複数の制振装置を、前記構造物の上部構造の捩じれ振動を抑制するように、構造物の下部構造と上部構造との間に分散させて配設したことを特徴とする構造物のアンカー構造。
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|---|---|---|---|
| JP2003100498A JP2004232853A (ja) | 2002-12-05 | 2003-04-03 | ストッパ付き転がり支承装置及び構造物のアンカー構造 |
Applications Claiming Priority (2)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP2002353934 | 2002-12-05 | ||
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| Publication Number | Publication Date |
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| JP2003100498A Pending JP2004232853A (ja) | 2002-12-05 | 2003-04-03 | ストッパ付き転がり支承装置及び構造物のアンカー構造 |
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| Country | Link |
|---|---|
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Cited By (4)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP2008014346A (ja) * | 2006-07-03 | 2008-01-24 | Daiwa House Ind Co Ltd | 緩衝機能付き免震装置 |
| JP2019039533A (ja) * | 2017-08-28 | 2019-03-14 | オイレス工業株式会社 | 滑り振子型免震装置 |
| CN110616811A (zh) * | 2019-10-23 | 2019-12-27 | 武汉桥之恒桥梁工程技术有限公司 | 一种具有抗拉拔功能的双向导轨摩擦摆式隔震支座 |
| KR102461643B1 (ko) * | 2021-08-30 | 2022-11-01 | 주식회사 참솔테크 | 볼 이탈방지기구가 구비된 볼타입 면진장치 |
-
2003
- 2003-04-03 JP JP2003100498A patent/JP2004232853A/ja active Pending
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| CN110616811A (zh) * | 2019-10-23 | 2019-12-27 | 武汉桥之恒桥梁工程技术有限公司 | 一种具有抗拉拔功能的双向导轨摩擦摆式隔震支座 |
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