JP2004234931A - ポリフェニレンサルファイドフィルムおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的は、固体高分子型燃料電池および直接アルコール型燃料電池の高分子電解質膜として有用な、プロトン伝導性、優れた機械的特性、高いメタノール遮断性を有するスルホン酸基含有高分子膜を提供することである。
【解決手段】結晶化度が25%以上であるPPSフィルムを、スルホン化してスルホン酸基含有結晶性高分子膜を得ることで、高いプロトン伝導度を発現しつつ、優れた機械的特性や高いメタノール遮断性を有する固体高分子型燃料電池および直接メタノール型燃料電池の高分子電解質膜を得ることができる。また、PPSフィルムを再結晶温度〜融点の温度で熱処理することにより、結晶化度が25%以上のPPSフィルムを製造することができる。
【選択図】 図10
【解決手段】結晶化度が25%以上であるPPSフィルムを、スルホン化してスルホン酸基含有結晶性高分子膜を得ることで、高いプロトン伝導度を発現しつつ、優れた機械的特性や高いメタノール遮断性を有する固体高分子型燃料電池および直接メタノール型燃料電池の高分子電解質膜を得ることができる。また、PPSフィルムを再結晶温度〜融点の温度で熱処理することにより、結晶化度が25%以上のPPSフィルムを製造することができる。
【選択図】 図10
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体高分子型燃料電池あるいは直接メタノール型燃料電池の高分子電解質膜に使用可能なスルホン酸基含有結晶性高分子膜を得るのに有用なポリフェニレンサルファイドフィルムおよびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリフェニレンサルファイドフィルム(例えば、特許文献1参照)は、優れた耐熱性、電気特性を持つことから、高性能フィルムコンデンサの誘導体として好適なことが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
また、ポリフェニレンサルファイドフィルムは、優れた化学的安定性を持つことから、固体高分子型燃料電池の高分子電解質膜として使用することが提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、携帯電話やノート型パソコンなどの民生用小型携帯機器に好適とされる直接メタノール型燃料電池への使用を想定した場合、従来技術で作成した膜では、メタノールのクロスオーバーの抑制が不充分であり、高分子電解質膜としての使用が制限されていた。また、注意深く膜の作成条件を設定しないと、得られる膜が脆くなり、引張伸びなどの機械的特性が著しく低下し、膜のハンドリング性が悪い場合があった。
【0004】
【特許文献1】
特開昭54−142275号公報
【0005】
【特許文献2】
特開平02−185535号公報
【0006】
【特許文献3】
国際公開第02/062896号パンフレット
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、固体高分子型燃料電池および直接メタノール型燃料電池の高分子電解質膜に好適なスルホン酸基含有結晶性高分子膜プロトン伝導性膜に使用するポリフェニレンサルファイドフィルムを提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、燃料電池用スルホン酸基含有結晶性高分子膜に使用するポリフェニレンサルファイドフィルムであって、結晶化度が25%以上であるポリフェニレンサルファイドフィルムに関する。
【0009】
前記ポリフェニレンサルファイドフィルムの分子量分布のピークトップが、25,000以上であることが好ましい。
【0010】
本発明はまた、燃料電池用スルホン酸基含有結晶性高分子膜に使用するポリフェニレンサルファイドフィルムの製造方法でって、前記ポリフェニレンサルファイドフィルムの再結晶温度〜融点の温度で熱処理して、結晶化度を25%以上にせしめるポリフェニレンサルファイドフィルムの製造方法に関する。
【0011】
前記熱処理温度が130〜270℃であることが好ましい。
【0012】
本発明はまた、上記ポリフェニレンサルファイドフィルムあるいは上記製造方法で得られるポリフェニレンサルファイドフィルムからなるスルホン酸基含有結晶性高分子膜に関する。
【0013】
本発明はまた、上記スルホン酸基含有結晶性高分子膜からなる固体高分子型燃料電池に関する。
【0014】
前記固体高分子型燃料電池が、直接メタノール型燃料電池であることが好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明のポリフェニレンサルファイドフィルム(以下、PPSフィルム)は、燃料電池用スルホン酸基含有結晶性高分子膜に使用するPPSフィルムであって、結晶化度が25%以上であることが好ましい。
【0016】
ここで本発明における燃料電池とは、高分子電解質膜をプロトン伝導材料として使用する固体高分子型燃料電池を指す。使用する燃料としては、水素ガス、または、ガソリン、天然ガス、プロパンガス、メタノールなどの含水素化合物の改質水素ガス、または、メタノールなどのアルコール、ジメチルエーテルなどの含水素化合物などが例示でき、酸化剤としては、酸素、空気などが例示できる。特に、メタノールを改質せずに直接燃料とする燃料電池を、直接メタノール型燃料電池という。
【0017】
本発明におけるスルホン酸基含有結晶性高分子膜とは、プロトン伝導性置換基として、スルホン酸基を含有し、膜形状において、結晶相を有するものである。本発明におけるスルホン酸基とは、下記(化1)で表されるスルホン酸基や
【0018】
【化1】
【0019】
下記(化2)の一般式で表されるスルホン酸基を含む置換基をいう。
【0020】
【化2】
【0021】
式中、Rはアルキレン、ハロゲン化アルキレン、アリーレン、ハロゲン化アリーレンからなる群から選択される2価の有機基、またはエーテル結合を含んでいてもよい。
【0022】
スルホン酸基含有結晶性高分子膜が結晶相を有するかどうかは、公知の結晶化度の測定方法が適用できる。例えば、非容法(密度法)、X線回折、赤外吸収スペクトル法、核磁気共鳴法(NMR)、熱量測定法などが例示できる。本発明においては、X線回折において、結晶性ピークを有するものであればよい。また、示差走査熱量測定(DSC)や示差熱分析(DTA)で測定可能な融解吸熱量や再結晶発熱量から、結晶化度を測定し、結晶相の有無を確認してもよい。たとえば、厚さ20〜150μm程度のスルホン酸基含有結晶性高分子膜のX線回折において、使用した結晶性高分子化合物の結晶相に由来するピークが判別できればよい。また、他の方法で結晶相の有無が判別できれば、それで代用してもかまわない。
【0023】
本発明において、PPSフィルムの結晶化度が前記範囲よりも小さい場合、このPPSフィルムを使用して燃料電池用スルホン酸基含有結晶性高分子膜を調製した場合、結晶相の残存が不充分となり、所望の特性を発現しない恐れがある。具体的には、引張伸びに代表される機械的特性や、メタノール遮断性が所望の値よりも低下する恐れがある。一方、PPSフィルムの結晶化度は特に上限はないが、実質的にはPPSフィルムの飽和結晶化度で制限されることとなる。PPSの飽和結晶化度は、PPSフィルムの形態(厚み、分子の配向度など)によって、多少上下する可能性があるが、一般的には60%とされている。
【0024】
本発明において、PPSフィルムの分子量分布のピークトップは、25,000以上であることが好ましい。PPSフィルムの分子量分布の測定方法としては、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定可能である。しかしながら、PPSは常温・常圧下で溶解する有機溶媒がないため、200℃以上で1−クロロナフタレンなどの特定の有機溶媒に溶解せしめた後、超高温GPCにより測定する必要がある。PPSフィルムの分子量分布のピークトップが前記範囲よりも低いと、自己支持性のあるPPSフィルムの取得が困難となる恐れがある。また、PPSフィルムが得られた場合でも、機械的特性が不充分となり、ハンドリング性などが低下する恐れがある。さらに、スルホン酸基含有結晶性高分子膜を調製するのが困難となる恐れがある。また、これから調製したスルホン酸基含有結晶性高分子膜の機械的特性が不充分となり、ハンドリング性が著しく低下する恐れがある。
【0025】
次に本発明のPPSフィルムの製造方法について説明する。本発明のPPSフィルムの製造方法は、燃料電池用スルホン酸基含有結晶性高分子膜に使用するPPSフィルムの製造方法であって、PPSフィルムの再結晶温度〜融点の温度で熱処理して、結晶化度を25%以上にせしめるものである。また、その際の熱処理温度は130〜270℃であることが好ましい。熱処理温度が再結晶温度未満であると、PPSが再結晶化せず、結晶化度が25%以上とならない恐れがある。また、融点よりも高い温度で熱処理すると、PPSが溶融し、フィルム形状を維持することができない。熱処理する前のPPSフィルムの形態(未延伸または延伸、無配向または配向、添加剤の種類および添加量、結晶化度など)によって、再結晶温度および融点は多少上下するが、再結晶温度は約120〜130℃、融点は約270〜290℃程度であるため、熱処理温度は130〜270℃であることが好ましい。熱処理の時間は、PPSフィルムの厚みや生産性、処理雰囲気などを考慮して適宜設定する必要があるが、おおよそ1〜600秒の範囲で設定するのが好ましい。この範囲よりも短い場合は、PPSフィルム温度が不均一になり結晶化度にばらつきが生じるなど、熱処理の効果が不充分となる恐れがある。またこの範囲よりも長い場合は、PPSフィルムの熱劣化や酸化劣化が生じ、特性が低下する恐れがある。
【0026】
本発明において、熱処理する前のPPSフィルムの加工方法としては、熱可塑性樹脂組成物で使用される溶融プレス法や溶融押し出し方などの公知方法が適用できる。このような方法で得られたPPSフィルムの形態は特に限定されず、未延伸、二軸延伸、無配向、配向などいずれの形態も使用可能である。PPSフィルムの製造方法の一例をあげると、公知の方法で重合したPPSに、必要に応じて滑剤などの添加剤を添加してヘンシェルミキサーなどでブレンドし、290〜360℃の温度で溶融混練して任意の口金から押し出して所定のPPS樹脂組成物を得る。
【0027】
このPPS樹脂組成物を溶融押し出し機に供給し、融点以上、好ましくは290〜360℃の温度で溶融して、Tダイなどのスリット状のダイから押し出しし、回転する金属ドラム上でキャストするなどの方法で急冷して、未延伸、無配向のフィルムを得る。
【0028】
本発明においては、二軸延伸することは必須ではないが、必要に応じて得られた未延伸フィルムから二軸延伸フィルムとしてもよい。上記方法で得られた未延伸、無配向フィルムを、公知の逐次二軸延伸法、同時二軸延伸法などの方法を用いて二軸延伸フィルムとすることができる。延伸条件としては、85〜105℃の温度で両軸1.5〜4.5倍の範囲の倍率で行うことが一例としてあげられる。
【0029】
本発明のPPSフィルムを得るためのPPS樹脂組成物は、必要に応じて、可塑剤、酸化防止剤、滑剤、フィラーなどの各種添加剤が混合されていてもよい。
【0030】
また本発明のPPSフィルムの厚みは、これらから得られるスルホン酸基含有結晶性高分子化合物の特性やハンドリング性などを考慮すると1.2〜350μm、さらには20〜100μmであることが好ましい。PPSフィルムの厚さが前記範囲よりも薄いと、製造が困難であるとともに、加工時にシワになったり、破損が生じるなどハンドリング性が悪くなる傾向を示す。また、前記範囲を超えると、内部まで均一にスルホン酸基を導入するのが困難になるとともに、得られたスルホン酸基含有結晶性高分子膜の内部抵抗も大きくなることがある。
【0031】
次に本発明のPPSフィルムまたは本発明の製造方法で得られたPPSフィルムを使用した燃料電池用スルホン酸基含有結晶性高分子膜について説明する。PPSフィルムへのスルホン酸基の導入は、PPSフィルムとスルホン化剤とを接触させ、PPSフィルムの結晶相が残存するように非晶質相にスルホン酸基を導入する方法である。ここで、非晶質相へのスルホン酸基の導入は、PPSフィルムの結晶相にスルホン酸基がまったく導入されないということではなく、スルホン酸基導入後もPPSフィルムの結晶相が残存していることを意味するものである。
【0032】
スルホン化剤としては、クロロスルホン酸、発煙硫酸、三酸化硫黄、三酸化硫黄−トリエチルフォスフェート、濃硫酸、トリメチルクロロサルフェートなどの公知のスルホン化剤が挙げられる。工業的入手の容易さやスルホン酸基の導入のし易さや得られるスルホン酸基含有結晶性高分子膜の特性を考慮すると、これらのスルホン化剤の使用が好ましい。とくに本発明においては、スルホン酸基の導入の容易さや得られた膜の特性、工業的入手の容易さから、クロロスルホン酸を使用するのが好ましい。
【0033】
また、反応系を適正化することによって、フリーデル−クラフツ反応にしたがって、塩化アルミニウムなどの触媒存在下で、プロパンサルトンや1,4−ブタンサルトンなどの環状含硫黄化合物とPPSフィルムの芳香族単位を接触させて、スルホプロピル基やスルホブチル基などのスルホン酸基を含む置換基を導入する方法、なども使用することができる。
【0034】
さらに、本発明のPPSフィルムを使用するスルホン酸基含有結晶性高分子膜は、PPSフィルムとスルホン化剤とを溶媒存在下で接触させて製造することが好ましい。溶媒は使用するスルホン化剤と反応せず、PPSフィルムとスルホン化剤との反応を阻害しないものであれば種々のものが使用可能である。しかしながら、スルホン酸基含有結晶性高分子膜を得るにはPPSフィルムの結晶相を残存させつつ、非晶相にスルホン酸基を導入することが必要となる。このようなスルホン酸基含有高分子膜の製造条件を設定するには、スルホン化剤の種類、濃度、添加量、使用する溶媒種、反応時間、反応温度、PPSフィルムの厚みなどを考慮して、適宜設定する必要がある。具体的には、スルホン酸基の導入のし易さを考慮すると、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1−クロロプロパン、1−クロロブタンなどのハロゲン化物が好ましい。また、炭素数が少ないほど、PPSフィルムの結晶相へも溶媒(スルホン化剤も含む)が浸透しやすくなる傾向を生じるため、結晶相が残存したスルホン酸基含有結晶性高分子膜を得るためには、1−クロロプロパン、1−クロロブタンなど炭素数3以上のハロゲン化物であることが好ましい。
【0035】
また、上記のように溶液状態のスルホン化剤とPPSフィルムを液相で接触させるのではなく、例えば、スルホン化剤に三酸化硫黄を使用して、三酸化硫黄を含むガスとPPSフィルムを気相接触させてもよい。
【0036】
本発明のスルホン酸基含有結晶性高分子膜の製造方法は、連続的に実施しても良い。即ち、被処理物であるPPSフィルムを連続的にスルホン化剤との反応槽に供給し、さらに必要に応じて、洗浄槽や乾燥工程を連続的に実施しても良い。これによって、生産性が向上する。
【0037】
本発明のPPSフィルムを使用して得られるスルホン酸基含有結晶性高分子膜は、膜中に結晶相が残存しているため、その部分を物理的な架橋点として、優れた機械的特性や高い化学的安定性を発現するものと推定している。特に、一般的なスルホン酸基含有高分子膜に見られるような水やメタノールに対する膨潤が、結晶相で抑制されるため、高いメタノール遮断性を発現し好ましい。
【0038】
本発明のスルホン酸基含有結晶性高分子膜において、イオン交換容量は0.3〜3ミリ当量/gであることが好ましい。イオン交換容量が、この範囲よりも低い場合には、所望のプロトン伝導度を発現しない恐れがあり、好ましくない。また、イオン交換料がこの範囲よりも高い場合には、スルホン酸基含有結晶性高分子膜が、水で膨潤しやすくなりハンドリング性が低下したり、水溶性になったりする恐れがあり好ましくない。
【0039】
さらに本発明のスルホン酸基含有結晶性高分子膜は、室温におけるプロトン伝導度が、1.0×10−3S/cm以上であることが好ましい。さらに、1.0×10−2S/cm以上であることが好ましい。プロトン伝導度がこの範囲よりも低い場合には、固体高分子型燃料電池や直接メタノール型燃料電池の高分子電解質膜として使用した場合に、プロトン伝導性が低く、充分な発電特性を発現しない恐れがある。一般的に、プロトン伝導度が高く設定するに伴って、メタノール遮断性が低下する傾向を生じるため、使用する目的に応じて適宜設定すればよい。
【0040】
次に、本発明のPPSフィルムを使用したスルホン酸基含有結晶性高分子膜からなる固体高分子型燃料電池について、一例として、図面を引用して説明する。
【0041】
図1は、本発明のスルホン酸基含有結晶性高分子膜を使用した燃料電池の要部断面図である。
【0042】
これは、スルホン酸基含有結晶性高分子膜1と、1の膜に接触する触媒担持電極2、セパレーター4に形成された燃料ガスまたは液体、並びに、酸化剤を送り込む流路3、の構成よりなるものである。
【0043】
スルホン酸基含有結晶性高分子膜1に、触媒担持電極2を接合する方法は、従来検討されている、パーフルオロカーボンスルホン酸膜からなる高分子電解質膜やスルホン酸基を含有した炭化水素系高分子化合物からなる高分子電解質膜で行われる公知の方法が適用可能である。
【0044】
具体的には、市販のガス拡散電極(米国E−TEK社製、など)を用いる方法が例示できるが、これに限定されるものではない。
【0045】
実際の方法としては、パーフルオロカーボンスルホン酸高分子のアルコール溶液(アルドリッチ社製ナフィオン溶液など)や本発明のスルホン酸基含有結晶性高分子膜を構成するスルホン酸基含有結晶性高分子化合物、あるいは、公知のスルホン酸基含有高分子化合物の有機溶媒溶液などをバインダーとして、本発明のスルホン酸基含有結晶性高分子膜1の両面に、触媒担持電極2の触媒層側の面を合わせ、ホットプレス機やロールプレス機などのプレス機を使用して、一般的には120〜250℃程度のプレス温度で接合できる。また必要に応じて、バインダーを使用しなくても構わない。さらに、下記に示すような材料を使用して触媒担持電極2を調製し、スルホン酸基含有結晶性高分子膜1に接合させて使用しても構わない。
【0046】
ここで、触媒担持電極2を調製するのに使用する材料としては、触媒として燃料の酸化反応および酸素の還元反応を促進する、白金、ルテニウムなどの金属あるいはそれらの合金、触媒の担体・導電材として、微粒子の炭素材料(例えば、カーボンナノホーン、フラーレン、活性炭、カーボンナノチューブなど)などの導電性物質など、結着剤として、撥水性を有する含フッ素樹脂など、必要に応じて、上記材料の支持体として、カーボンクロスやカーボンペーパーなど、更に、含浸・被覆材として、パーフルオロカーボンスルホン酸高分子が例示できるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0047】
上記のような方法で得られたスルホン酸基含有結晶性高分子膜1と、触媒担持電極2の接合体を、燃料ガスまたは液体、並びに、酸化剤を送り込む流路3が形成された一対のグラファイト製などのガスセパレーター4などの間に挿入することにより、本発明のスルホン酸基含有結晶性高分子膜からなる固体高分子型燃料電池が得られる。これにガスまたは液体の形態の燃料として、水素を主たる成分とするガスや、メタノールを主たる成分とするガスまたは液体を、酸化剤として、酸素を含むガス(酸素あるいは空気)を、それぞれ別個の流路3より、スルホン酸基含有結晶性高分子膜1の両面の触媒担持電極2に供給することにより、該燃料電池は作動する。
【0048】
本発明の固体高分子型燃料電池を単独で、あるいは複数積層して、スタックを形成し、使用することや、それらを組み込んだ燃料電池システムとすることもできる。
【0049】
さらに、本発明のスルホン酸基含有結晶性高分子膜を使用した直接メタノール型燃料電池について、一例として、図面を引用して説明する。
【0050】
図2は、本発明のPPSフィルムを使用したスルホン酸基含有結晶性高分子膜からなる直接メタノール型燃料電池の要部断面図である。これは、スルホン酸基含有結晶性高分子膜1と、1の膜の両側には触媒担持電極2が接合され、膜−電極接合体が構成される。この膜−電極接合体は、燃料(メタノールあるいはメタノール水溶液)充填部や供給部を有する燃料(メタノールあるいはメタノール水溶液)タンク8の両側に必要数が平面状に配置される。さらにその外側には、酸化剤流路11が形成された支持体10が配置され、これらに狭持されることによって、直接メタノール型燃料電池のセル、スタックが構成される。
【0051】
上記一例以外にも、本発明のPPSフィルムを使用したスルホン酸基含有結晶性高分子膜は、公知になっている直接メタノール型燃料電池の高分子電解質膜として、使用可能である。
【0052】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更実施可能である。
【0053】
比較例1及び実施例1〜3のPPSフィルムを以下に述べる方法で形成し、結晶化度、分子量分布、破断強度・伸び、及びX線回折を測定した。測定結果を表2及び図3〜6に示す。
【0054】
次に、比較例1及び実施例1〜3のPPSフィルムを以下に述べる方法でスルホン化し、得られたスルホン化処理したPPSフィルムのイオン交換容量、プロトン伝導度、メタノール透過係数、破断強度・伸び、及びX線回折を測定した。測定結果を表3及び図7〜10に示す。
【0055】
(比較例1)
PPS樹脂組成物(大日本インキ化学工業製DIC−PPS ML320)のペレットを、スクリュー温度290℃、Tダイ温度280℃の条件で溶融押し出しし、幅120mmのPPSフィルムを得た。
【0056】
この比較例1のフィルムの結晶化度を、以下の方法で測定した。
【0057】
(結晶化度の測定)
(株)島津製作所製示唆走査熱量測定装置を使用して、昇温速度10℃/分、窒素ガス気流気化(30mL/分)の条件で示唆走査熱量測定を行った。再結晶発熱量、融解吸熱量およびPPSの飽和結晶化度(60%)から下記式(数1)に従って結晶化度を算出した。
【0058】
【数1】
【0059】
また、比較例1のフィルムの分子量分布を、以下の方法で測定した。
【0060】
(分子量分布の測定)
試料を1−クロロナフタレンに溶解させ、1−クロロナフタレンを移動層として、GPCで210℃において保持時間を測定し、標準ポリスチレンを用いユニバーサルキャリブレーション法により換算した。
【0061】
また、比較例1のフィルムの破断強度及び破断伸びを、以下の方法で測定した。
【0062】
(破断強度および破断伸びの測定)
JIS K 7127の方法に準じて、試験体の破断強度および破断伸びを測定した。測定はn=5で実施し、破断伸びについては、平均値と最大値を記録した。
【0063】
また、比較例1のフィルムのX線回折を、以下の方法で測定した。X線回折パターンを図3に示す。
【0064】
(X線回折の測定)
(株)島津製作所製X線回折装置を使用して、使用X線がCu・Kα線、X線強度が30kV、100mA、角度域が2θ=5〜50゜、走査速度が2゜/分の条件で、膜形状の試験体を、X線回折測定を実施した
次に、比較例1のフィルムを、以下の方法でスルホン化処理し、スルホン化処理した比較例1のフィルムを作成した。
【0065】
(スルホン化処理)
スルホン化前の比較例1のPPSフィルムを、スルホン化剤としてクロロスルホン酸、溶媒として1−クロロブタンを使用した混合溶液(クロロスルホン酸のPPSフェニル単位に対する添加量は2当量、混合溶液のクロロスルホン酸濃度は0.5重量%)に室温で20時間浸漬して、スルホン酸基含有結晶性高分子膜を得た。
【0066】
スルホン化処理した比較例1のフィルムのイオン交換容量を、以下の方法で測定した。
【0067】
(イオン交換容量の測定)
試験体を塩化ナトリウム飽和水溶液に浸漬し、ウォーターバス中で60℃、3時間反応させる。室温まで冷却した後、サンプルをイオン交換水で充分に洗浄し、フェノールフタレイン溶液を指示薬として、0.01Nの水酸化ナトリウム水溶液で滴定し、イオン交換容量を算出した。
【0068】
また、スルホン化処理した比較例1のフィルムのプロトン伝導度を、以下の方法で測定した。
【0069】
(プロトン伝導度の測定)
イオン交換水中に保管した試験体(10mm×40mm)を取り出し、試験体表面の水をろ紙で拭き取る。電極間距離30mmの白金電極間に試験体面を装着し、2極非密閉系のセルに設置した後、室温下で電圧0.2Vの条件で、交流インピーダンス法(周波数:42Hz〜5MHz)により、試験体の面内の膜抵抗を測定し、プロトン伝導度を算出した。
【0070】
また、スルホン化処理した比較例1のフィルムのメタノール透過係数を、以下の方法で測定しメタノール遮断性を評価した。
【0071】
(メタノール透過係数の測定)
ビードレックス社製膜透過実験装置を使用して、イオン交換水と64重量%メタノール水溶液を試験体膜で隔離し、所定時間経過後にイオン交換水側に透過したメタノール量をガスクロマトグラフで定量した。これからメタノール透過速度を算出後、メタノール透過係数を求めた。
【0072】
また、スルホン化処理した比較例1のフィルムの破断強度・伸び、及びX線回折を、スルホン化処理前の比較例1のフィルムで用いた方法と同様の方法で測定した。X線回折パターンを図7に示す。
【0073】
(実施例1)
比較例1で得られたPPSフィルムをピン枠に固定し、通風オーブン内で130℃、3分熱処理を行い、本発明に係る実施例1のPPSフィルムを得た。スルホン化前の実施例1のPPSフィルムについて比較例1と同様の方法で各測定を実施した。測定結果を表2に、X線回折パターンを図4に示す。
【0074】
次に、実施例1のフィルムを、比較例1のフィルムで用いた方法と同様の方法でスルホン化処理し、スルホン化処理した実施例1のフィルムを得た。
【0075】
スルホン化処理した実施例1のフィルムのイオン交換容量、プロトン伝導度、及びメタノール透過係数を、スルホン化処理した比較例1のフィルムで用いた方法と同様の方法で測定した。また、スルホン化処理した実施例1のフィルムの破断強度・伸び、及びX線回折を、スルホン化処理前の比較例1のフィルムで用いた方法と同様の方法で測定した。測定結果を表3に、X線回折パターンを図8に示す。
【0076】
(実施例2)
熱処理条件を150℃、3分とした以外は、実施例1と同様にして、本発明に係る実施例2のPPSフィルムを得た。スルホン化前の実施例2のPPSフィルムについて比較例1と同様の方法で各測定を実施した。測定結果を表2に、X線回折パターンを図5に示す。
【0077】
次に、実施例2のフィルムを、比較例1のフィルムで用いた方法と同様の方法でスルホン化処理し、スルホン化処理した実施例2のフィルムを得た。
【0078】
スルホン化処理した実施例2のフィルムのイオン交換容量、プロトン伝導度、及びメタノール透過係数を、スルホン化処理した比較例1のフィルムで用いた方法と同様の方法で測定した。また、スルホン化処理した実施例2のフィルムの破断強度・伸び、及びX線回折を、スルホン化処理前の比較例1のフィルムで用いた方法と同様の方法で測定した。測定結果を表3に、X線回折パターンを図9に示す。
【0079】
(実施例3)
本発明に係る実施例3のPPSフィルムとして、東レ製トレリナ#3000、50μmを用い、スルホン化前の実施例3のPPSフィルムについて比較例1と同様の方法で各測定を実施した。測定結果を表2に、X線回折パターンを図6に示す。
【0080】
次に、実施例3のフィルムを、比較例1のフィルムで用いた方法と同様の方法でスルホン化処理し、スルホン化処理した実施例3のフィルムを得た。
【0081】
スルホン化処理した実施例3のフィルムのイオン交換容量、プロトン伝導度、及びメタノール透過係数を、スルホン化処理した比較例1のフィルムで用いた方法と同様の方法で測定した。また、スルホン化処理した実施例3のフィルムの破断強度・伸び、及びX線回折を、スルホン化処理前の比較例1のフィルムで用いた方法と同様の方法で測定した。測定結果を表3に、X線回折パターンを図10に示す。
【0082】
表1は各PPSフィルムの特性評価結果であり、図3〜6は各PPSフィルムのX線回折パターンである。
【0083】
【表1】
【0084】
表1から明らかなように、熱処理していない比較例1のPPSフィルムの結晶化度は21%と低い値であるのに対し、熱処理を行った実施例1、2のPPSフィルムの結晶化度は25%以上となった。また、実施例3のPPSフィルムも結晶化度が25%以上であることがわかった。さらに、図5〜8に示したX線回折パターンから、比較例1のPPSフィルムでは、結晶性ピークは見られないものの、結晶化度が25%以上である本発明のPPSフィルムは、2θ=20.5゜付近にPPSの結晶相に由来するピークが存在することがわかった。
【0085】
表2は各PPSフィルムをスルホン化処理し得られたスルホン酸基含有結晶性高分子膜の特性評価結果であり、図7〜10はそれらの各スルホン酸基含有結晶性高分子膜のX線回折パターンである。
【0086】
【表2】
【0087】
(比較例2)
比較例2の高分子電解質膜としてナフィオン115(デュポン社製)を用い、比較例2のフィルムのイオン交換容量、プロトン伝導度、及びメタノール透過係数を、スルホン化処理した比較例1のフィルムで用いた方法と同様の方法で測定した。また、比較例2のフィルムの破断強度・伸びを、スルホン化処理前の比較例1のフィルムで用いた方法と同様の方法で測定した。測定結果を表2に示す。
【0088】
図7〜図10に示すように、結晶化度が25%以上であるPPSフィルムをスルホン化処理することにより得られるスルホン酸基含有結晶性高分子膜では、X線回折パターンで2θ=20.5゜付近にPPSの結晶相に由来するピークが残存している。
【0089】
スルホン化処理では、PPSの結晶相に由来するX線回折のピーク強度は低下するか、結晶化度が25%未満である比較例1のフィルムのスルホン化前後X線回折パターンである図4及び図7に示すようにピークが生じない。従ってこれらの結果は、結晶化度が25%以上であるPPSフィルムをスルホン化処理した場合には、PPSフィルムの結晶相が残存することを意味する。
【0090】
また、表2に示すように、スルホン化処理後の比較例1、実施例1〜3、及び比較例2のフィルムで、固体高分子型燃料電池の高分子電解質膜の必要特性であるプロトン伝導度は概ね同等であるが、しかし、直接メタノール型燃料電池の高分子電解質膜の必要特性であるメタノール遮断性は、スルホン化処理後の比較例1及び比較例2のフィルムと比較して、スルホン化処理後の実施例1〜3のフィルムではメタノール透過係数が著しく低くなっており、大きく向上している。さらに、スルホン化処理後の比較例1と実施例1〜3とのフィルムの比較から、破断強度および破断伸びは、結晶化度が低いPPSフィルムをスルホン化処理した比較例1のスルホン酸基含有高分子膜より、結晶化度が高いPPSフィルムをスルホン化処理した実施例1〜3のスルホン酸基含有高分子膜の方が大きな値を示し、結晶化度が高い程向上する傾向を示し、より高いハンドリング性が期待できる。
【0091】
上記より、本発明のPPSフィルムおよび本発明の製造方法により得られるPPSフィルムは、固体高分子型燃料電池および直接メタノール型燃料電池の高分子電解質膜として使用可能なスルホン酸基含有結晶性高分子膜を得るのに有効であることが示された。
【0092】
【発明の効果】
以上述べてきたように、本発明によれば、結晶化度が25%以上であるPPSフィルムを、スルホン化してスルホン酸基含有結晶性高分子膜を得ることで、高いプロトン伝導度を発現しつつ、優れた機械的特性や高いメタノール遮断性を有する固体高分子型燃料電池および直接メタノール型燃料電池の高分子電解質膜を得ることができる。また、結晶化度が25%以上であるPPSフィルムは、再結晶温度〜融点の温度でPPSフィルムを熱処理することにより得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の固体高分子型燃料電池の要部断面図
【図2】本発明の直接アルコール型燃料電池の要部断面図
【図3】比較例1のPPSフィルムのX線回折パターン
【図4】実施例1のPPSフィルムのX線回折パターン
【図5】実施例2のPPSフィルムのX線回折パターン
【図6】実施例3のPPSフィルムのX線回折パターン
【図7】比較例1のPPSフィルムから得られたスルホン酸基含有高分子膜のX線回折パターン
【図8】実施例1のPPSフィルムから得られたスルホン酸基含有結晶性高分子膜のX線回折パターン
【図9】実施例2のPPSフィルムから得られたスルホン酸基含有結晶性高分子膜のX線回折パターン
【図10】実施例3のPPSフィルムから得られたスルホン酸基含有結晶性高分子膜のX線回折パターン
【符号の説明】
1 スルホン酸基含有結晶性高分子膜
2 触媒担持電極
3 流路
4 セパレーター
5 ガスケット
8 燃料タンク
10 支持体
11 酸化剤流路
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体高分子型燃料電池あるいは直接メタノール型燃料電池の高分子電解質膜に使用可能なスルホン酸基含有結晶性高分子膜を得るのに有用なポリフェニレンサルファイドフィルムおよびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリフェニレンサルファイドフィルム(例えば、特許文献1参照)は、優れた耐熱性、電気特性を持つことから、高性能フィルムコンデンサの誘導体として好適なことが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
また、ポリフェニレンサルファイドフィルムは、優れた化学的安定性を持つことから、固体高分子型燃料電池の高分子電解質膜として使用することが提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、携帯電話やノート型パソコンなどの民生用小型携帯機器に好適とされる直接メタノール型燃料電池への使用を想定した場合、従来技術で作成した膜では、メタノールのクロスオーバーの抑制が不充分であり、高分子電解質膜としての使用が制限されていた。また、注意深く膜の作成条件を設定しないと、得られる膜が脆くなり、引張伸びなどの機械的特性が著しく低下し、膜のハンドリング性が悪い場合があった。
【0004】
【特許文献1】
特開昭54−142275号公報
【0005】
【特許文献2】
特開平02−185535号公報
【0006】
【特許文献3】
国際公開第02/062896号パンフレット
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、固体高分子型燃料電池および直接メタノール型燃料電池の高分子電解質膜に好適なスルホン酸基含有結晶性高分子膜プロトン伝導性膜に使用するポリフェニレンサルファイドフィルムを提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、燃料電池用スルホン酸基含有結晶性高分子膜に使用するポリフェニレンサルファイドフィルムであって、結晶化度が25%以上であるポリフェニレンサルファイドフィルムに関する。
【0009】
前記ポリフェニレンサルファイドフィルムの分子量分布のピークトップが、25,000以上であることが好ましい。
【0010】
本発明はまた、燃料電池用スルホン酸基含有結晶性高分子膜に使用するポリフェニレンサルファイドフィルムの製造方法でって、前記ポリフェニレンサルファイドフィルムの再結晶温度〜融点の温度で熱処理して、結晶化度を25%以上にせしめるポリフェニレンサルファイドフィルムの製造方法に関する。
【0011】
前記熱処理温度が130〜270℃であることが好ましい。
【0012】
本発明はまた、上記ポリフェニレンサルファイドフィルムあるいは上記製造方法で得られるポリフェニレンサルファイドフィルムからなるスルホン酸基含有結晶性高分子膜に関する。
【0013】
本発明はまた、上記スルホン酸基含有結晶性高分子膜からなる固体高分子型燃料電池に関する。
【0014】
前記固体高分子型燃料電池が、直接メタノール型燃料電池であることが好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明のポリフェニレンサルファイドフィルム(以下、PPSフィルム)は、燃料電池用スルホン酸基含有結晶性高分子膜に使用するPPSフィルムであって、結晶化度が25%以上であることが好ましい。
【0016】
ここで本発明における燃料電池とは、高分子電解質膜をプロトン伝導材料として使用する固体高分子型燃料電池を指す。使用する燃料としては、水素ガス、または、ガソリン、天然ガス、プロパンガス、メタノールなどの含水素化合物の改質水素ガス、または、メタノールなどのアルコール、ジメチルエーテルなどの含水素化合物などが例示でき、酸化剤としては、酸素、空気などが例示できる。特に、メタノールを改質せずに直接燃料とする燃料電池を、直接メタノール型燃料電池という。
【0017】
本発明におけるスルホン酸基含有結晶性高分子膜とは、プロトン伝導性置換基として、スルホン酸基を含有し、膜形状において、結晶相を有するものである。本発明におけるスルホン酸基とは、下記(化1)で表されるスルホン酸基や
【0018】
【化1】
【0019】
下記(化2)の一般式で表されるスルホン酸基を含む置換基をいう。
【0020】
【化2】
【0021】
式中、Rはアルキレン、ハロゲン化アルキレン、アリーレン、ハロゲン化アリーレンからなる群から選択される2価の有機基、またはエーテル結合を含んでいてもよい。
【0022】
スルホン酸基含有結晶性高分子膜が結晶相を有するかどうかは、公知の結晶化度の測定方法が適用できる。例えば、非容法(密度法)、X線回折、赤外吸収スペクトル法、核磁気共鳴法(NMR)、熱量測定法などが例示できる。本発明においては、X線回折において、結晶性ピークを有するものであればよい。また、示差走査熱量測定(DSC)や示差熱分析(DTA)で測定可能な融解吸熱量や再結晶発熱量から、結晶化度を測定し、結晶相の有無を確認してもよい。たとえば、厚さ20〜150μm程度のスルホン酸基含有結晶性高分子膜のX線回折において、使用した結晶性高分子化合物の結晶相に由来するピークが判別できればよい。また、他の方法で結晶相の有無が判別できれば、それで代用してもかまわない。
【0023】
本発明において、PPSフィルムの結晶化度が前記範囲よりも小さい場合、このPPSフィルムを使用して燃料電池用スルホン酸基含有結晶性高分子膜を調製した場合、結晶相の残存が不充分となり、所望の特性を発現しない恐れがある。具体的には、引張伸びに代表される機械的特性や、メタノール遮断性が所望の値よりも低下する恐れがある。一方、PPSフィルムの結晶化度は特に上限はないが、実質的にはPPSフィルムの飽和結晶化度で制限されることとなる。PPSの飽和結晶化度は、PPSフィルムの形態(厚み、分子の配向度など)によって、多少上下する可能性があるが、一般的には60%とされている。
【0024】
本発明において、PPSフィルムの分子量分布のピークトップは、25,000以上であることが好ましい。PPSフィルムの分子量分布の測定方法としては、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定可能である。しかしながら、PPSは常温・常圧下で溶解する有機溶媒がないため、200℃以上で1−クロロナフタレンなどの特定の有機溶媒に溶解せしめた後、超高温GPCにより測定する必要がある。PPSフィルムの分子量分布のピークトップが前記範囲よりも低いと、自己支持性のあるPPSフィルムの取得が困難となる恐れがある。また、PPSフィルムが得られた場合でも、機械的特性が不充分となり、ハンドリング性などが低下する恐れがある。さらに、スルホン酸基含有結晶性高分子膜を調製するのが困難となる恐れがある。また、これから調製したスルホン酸基含有結晶性高分子膜の機械的特性が不充分となり、ハンドリング性が著しく低下する恐れがある。
【0025】
次に本発明のPPSフィルムの製造方法について説明する。本発明のPPSフィルムの製造方法は、燃料電池用スルホン酸基含有結晶性高分子膜に使用するPPSフィルムの製造方法であって、PPSフィルムの再結晶温度〜融点の温度で熱処理して、結晶化度を25%以上にせしめるものである。また、その際の熱処理温度は130〜270℃であることが好ましい。熱処理温度が再結晶温度未満であると、PPSが再結晶化せず、結晶化度が25%以上とならない恐れがある。また、融点よりも高い温度で熱処理すると、PPSが溶融し、フィルム形状を維持することができない。熱処理する前のPPSフィルムの形態(未延伸または延伸、無配向または配向、添加剤の種類および添加量、結晶化度など)によって、再結晶温度および融点は多少上下するが、再結晶温度は約120〜130℃、融点は約270〜290℃程度であるため、熱処理温度は130〜270℃であることが好ましい。熱処理の時間は、PPSフィルムの厚みや生産性、処理雰囲気などを考慮して適宜設定する必要があるが、おおよそ1〜600秒の範囲で設定するのが好ましい。この範囲よりも短い場合は、PPSフィルム温度が不均一になり結晶化度にばらつきが生じるなど、熱処理の効果が不充分となる恐れがある。またこの範囲よりも長い場合は、PPSフィルムの熱劣化や酸化劣化が生じ、特性が低下する恐れがある。
【0026】
本発明において、熱処理する前のPPSフィルムの加工方法としては、熱可塑性樹脂組成物で使用される溶融プレス法や溶融押し出し方などの公知方法が適用できる。このような方法で得られたPPSフィルムの形態は特に限定されず、未延伸、二軸延伸、無配向、配向などいずれの形態も使用可能である。PPSフィルムの製造方法の一例をあげると、公知の方法で重合したPPSに、必要に応じて滑剤などの添加剤を添加してヘンシェルミキサーなどでブレンドし、290〜360℃の温度で溶融混練して任意の口金から押し出して所定のPPS樹脂組成物を得る。
【0027】
このPPS樹脂組成物を溶融押し出し機に供給し、融点以上、好ましくは290〜360℃の温度で溶融して、Tダイなどのスリット状のダイから押し出しし、回転する金属ドラム上でキャストするなどの方法で急冷して、未延伸、無配向のフィルムを得る。
【0028】
本発明においては、二軸延伸することは必須ではないが、必要に応じて得られた未延伸フィルムから二軸延伸フィルムとしてもよい。上記方法で得られた未延伸、無配向フィルムを、公知の逐次二軸延伸法、同時二軸延伸法などの方法を用いて二軸延伸フィルムとすることができる。延伸条件としては、85〜105℃の温度で両軸1.5〜4.5倍の範囲の倍率で行うことが一例としてあげられる。
【0029】
本発明のPPSフィルムを得るためのPPS樹脂組成物は、必要に応じて、可塑剤、酸化防止剤、滑剤、フィラーなどの各種添加剤が混合されていてもよい。
【0030】
また本発明のPPSフィルムの厚みは、これらから得られるスルホン酸基含有結晶性高分子化合物の特性やハンドリング性などを考慮すると1.2〜350μm、さらには20〜100μmであることが好ましい。PPSフィルムの厚さが前記範囲よりも薄いと、製造が困難であるとともに、加工時にシワになったり、破損が生じるなどハンドリング性が悪くなる傾向を示す。また、前記範囲を超えると、内部まで均一にスルホン酸基を導入するのが困難になるとともに、得られたスルホン酸基含有結晶性高分子膜の内部抵抗も大きくなることがある。
【0031】
次に本発明のPPSフィルムまたは本発明の製造方法で得られたPPSフィルムを使用した燃料電池用スルホン酸基含有結晶性高分子膜について説明する。PPSフィルムへのスルホン酸基の導入は、PPSフィルムとスルホン化剤とを接触させ、PPSフィルムの結晶相が残存するように非晶質相にスルホン酸基を導入する方法である。ここで、非晶質相へのスルホン酸基の導入は、PPSフィルムの結晶相にスルホン酸基がまったく導入されないということではなく、スルホン酸基導入後もPPSフィルムの結晶相が残存していることを意味するものである。
【0032】
スルホン化剤としては、クロロスルホン酸、発煙硫酸、三酸化硫黄、三酸化硫黄−トリエチルフォスフェート、濃硫酸、トリメチルクロロサルフェートなどの公知のスルホン化剤が挙げられる。工業的入手の容易さやスルホン酸基の導入のし易さや得られるスルホン酸基含有結晶性高分子膜の特性を考慮すると、これらのスルホン化剤の使用が好ましい。とくに本発明においては、スルホン酸基の導入の容易さや得られた膜の特性、工業的入手の容易さから、クロロスルホン酸を使用するのが好ましい。
【0033】
また、反応系を適正化することによって、フリーデル−クラフツ反応にしたがって、塩化アルミニウムなどの触媒存在下で、プロパンサルトンや1,4−ブタンサルトンなどの環状含硫黄化合物とPPSフィルムの芳香族単位を接触させて、スルホプロピル基やスルホブチル基などのスルホン酸基を含む置換基を導入する方法、なども使用することができる。
【0034】
さらに、本発明のPPSフィルムを使用するスルホン酸基含有結晶性高分子膜は、PPSフィルムとスルホン化剤とを溶媒存在下で接触させて製造することが好ましい。溶媒は使用するスルホン化剤と反応せず、PPSフィルムとスルホン化剤との反応を阻害しないものであれば種々のものが使用可能である。しかしながら、スルホン酸基含有結晶性高分子膜を得るにはPPSフィルムの結晶相を残存させつつ、非晶相にスルホン酸基を導入することが必要となる。このようなスルホン酸基含有高分子膜の製造条件を設定するには、スルホン化剤の種類、濃度、添加量、使用する溶媒種、反応時間、反応温度、PPSフィルムの厚みなどを考慮して、適宜設定する必要がある。具体的には、スルホン酸基の導入のし易さを考慮すると、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1−クロロプロパン、1−クロロブタンなどのハロゲン化物が好ましい。また、炭素数が少ないほど、PPSフィルムの結晶相へも溶媒(スルホン化剤も含む)が浸透しやすくなる傾向を生じるため、結晶相が残存したスルホン酸基含有結晶性高分子膜を得るためには、1−クロロプロパン、1−クロロブタンなど炭素数3以上のハロゲン化物であることが好ましい。
【0035】
また、上記のように溶液状態のスルホン化剤とPPSフィルムを液相で接触させるのではなく、例えば、スルホン化剤に三酸化硫黄を使用して、三酸化硫黄を含むガスとPPSフィルムを気相接触させてもよい。
【0036】
本発明のスルホン酸基含有結晶性高分子膜の製造方法は、連続的に実施しても良い。即ち、被処理物であるPPSフィルムを連続的にスルホン化剤との反応槽に供給し、さらに必要に応じて、洗浄槽や乾燥工程を連続的に実施しても良い。これによって、生産性が向上する。
【0037】
本発明のPPSフィルムを使用して得られるスルホン酸基含有結晶性高分子膜は、膜中に結晶相が残存しているため、その部分を物理的な架橋点として、優れた機械的特性や高い化学的安定性を発現するものと推定している。特に、一般的なスルホン酸基含有高分子膜に見られるような水やメタノールに対する膨潤が、結晶相で抑制されるため、高いメタノール遮断性を発現し好ましい。
【0038】
本発明のスルホン酸基含有結晶性高分子膜において、イオン交換容量は0.3〜3ミリ当量/gであることが好ましい。イオン交換容量が、この範囲よりも低い場合には、所望のプロトン伝導度を発現しない恐れがあり、好ましくない。また、イオン交換料がこの範囲よりも高い場合には、スルホン酸基含有結晶性高分子膜が、水で膨潤しやすくなりハンドリング性が低下したり、水溶性になったりする恐れがあり好ましくない。
【0039】
さらに本発明のスルホン酸基含有結晶性高分子膜は、室温におけるプロトン伝導度が、1.0×10−3S/cm以上であることが好ましい。さらに、1.0×10−2S/cm以上であることが好ましい。プロトン伝導度がこの範囲よりも低い場合には、固体高分子型燃料電池や直接メタノール型燃料電池の高分子電解質膜として使用した場合に、プロトン伝導性が低く、充分な発電特性を発現しない恐れがある。一般的に、プロトン伝導度が高く設定するに伴って、メタノール遮断性が低下する傾向を生じるため、使用する目的に応じて適宜設定すればよい。
【0040】
次に、本発明のPPSフィルムを使用したスルホン酸基含有結晶性高分子膜からなる固体高分子型燃料電池について、一例として、図面を引用して説明する。
【0041】
図1は、本発明のスルホン酸基含有結晶性高分子膜を使用した燃料電池の要部断面図である。
【0042】
これは、スルホン酸基含有結晶性高分子膜1と、1の膜に接触する触媒担持電極2、セパレーター4に形成された燃料ガスまたは液体、並びに、酸化剤を送り込む流路3、の構成よりなるものである。
【0043】
スルホン酸基含有結晶性高分子膜1に、触媒担持電極2を接合する方法は、従来検討されている、パーフルオロカーボンスルホン酸膜からなる高分子電解質膜やスルホン酸基を含有した炭化水素系高分子化合物からなる高分子電解質膜で行われる公知の方法が適用可能である。
【0044】
具体的には、市販のガス拡散電極(米国E−TEK社製、など)を用いる方法が例示できるが、これに限定されるものではない。
【0045】
実際の方法としては、パーフルオロカーボンスルホン酸高分子のアルコール溶液(アルドリッチ社製ナフィオン溶液など)や本発明のスルホン酸基含有結晶性高分子膜を構成するスルホン酸基含有結晶性高分子化合物、あるいは、公知のスルホン酸基含有高分子化合物の有機溶媒溶液などをバインダーとして、本発明のスルホン酸基含有結晶性高分子膜1の両面に、触媒担持電極2の触媒層側の面を合わせ、ホットプレス機やロールプレス機などのプレス機を使用して、一般的には120〜250℃程度のプレス温度で接合できる。また必要に応じて、バインダーを使用しなくても構わない。さらに、下記に示すような材料を使用して触媒担持電極2を調製し、スルホン酸基含有結晶性高分子膜1に接合させて使用しても構わない。
【0046】
ここで、触媒担持電極2を調製するのに使用する材料としては、触媒として燃料の酸化反応および酸素の還元反応を促進する、白金、ルテニウムなどの金属あるいはそれらの合金、触媒の担体・導電材として、微粒子の炭素材料(例えば、カーボンナノホーン、フラーレン、活性炭、カーボンナノチューブなど)などの導電性物質など、結着剤として、撥水性を有する含フッ素樹脂など、必要に応じて、上記材料の支持体として、カーボンクロスやカーボンペーパーなど、更に、含浸・被覆材として、パーフルオロカーボンスルホン酸高分子が例示できるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0047】
上記のような方法で得られたスルホン酸基含有結晶性高分子膜1と、触媒担持電極2の接合体を、燃料ガスまたは液体、並びに、酸化剤を送り込む流路3が形成された一対のグラファイト製などのガスセパレーター4などの間に挿入することにより、本発明のスルホン酸基含有結晶性高分子膜からなる固体高分子型燃料電池が得られる。これにガスまたは液体の形態の燃料として、水素を主たる成分とするガスや、メタノールを主たる成分とするガスまたは液体を、酸化剤として、酸素を含むガス(酸素あるいは空気)を、それぞれ別個の流路3より、スルホン酸基含有結晶性高分子膜1の両面の触媒担持電極2に供給することにより、該燃料電池は作動する。
【0048】
本発明の固体高分子型燃料電池を単独で、あるいは複数積層して、スタックを形成し、使用することや、それらを組み込んだ燃料電池システムとすることもできる。
【0049】
さらに、本発明のスルホン酸基含有結晶性高分子膜を使用した直接メタノール型燃料電池について、一例として、図面を引用して説明する。
【0050】
図2は、本発明のPPSフィルムを使用したスルホン酸基含有結晶性高分子膜からなる直接メタノール型燃料電池の要部断面図である。これは、スルホン酸基含有結晶性高分子膜1と、1の膜の両側には触媒担持電極2が接合され、膜−電極接合体が構成される。この膜−電極接合体は、燃料(メタノールあるいはメタノール水溶液)充填部や供給部を有する燃料(メタノールあるいはメタノール水溶液)タンク8の両側に必要数が平面状に配置される。さらにその外側には、酸化剤流路11が形成された支持体10が配置され、これらに狭持されることによって、直接メタノール型燃料電池のセル、スタックが構成される。
【0051】
上記一例以外にも、本発明のPPSフィルムを使用したスルホン酸基含有結晶性高分子膜は、公知になっている直接メタノール型燃料電池の高分子電解質膜として、使用可能である。
【0052】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更実施可能である。
【0053】
比較例1及び実施例1〜3のPPSフィルムを以下に述べる方法で形成し、結晶化度、分子量分布、破断強度・伸び、及びX線回折を測定した。測定結果を表2及び図3〜6に示す。
【0054】
次に、比較例1及び実施例1〜3のPPSフィルムを以下に述べる方法でスルホン化し、得られたスルホン化処理したPPSフィルムのイオン交換容量、プロトン伝導度、メタノール透過係数、破断強度・伸び、及びX線回折を測定した。測定結果を表3及び図7〜10に示す。
【0055】
(比較例1)
PPS樹脂組成物(大日本インキ化学工業製DIC−PPS ML320)のペレットを、スクリュー温度290℃、Tダイ温度280℃の条件で溶融押し出しし、幅120mmのPPSフィルムを得た。
【0056】
この比較例1のフィルムの結晶化度を、以下の方法で測定した。
【0057】
(結晶化度の測定)
(株)島津製作所製示唆走査熱量測定装置を使用して、昇温速度10℃/分、窒素ガス気流気化(30mL/分)の条件で示唆走査熱量測定を行った。再結晶発熱量、融解吸熱量およびPPSの飽和結晶化度(60%)から下記式(数1)に従って結晶化度を算出した。
【0058】
【数1】
【0059】
また、比較例1のフィルムの分子量分布を、以下の方法で測定した。
【0060】
(分子量分布の測定)
試料を1−クロロナフタレンに溶解させ、1−クロロナフタレンを移動層として、GPCで210℃において保持時間を測定し、標準ポリスチレンを用いユニバーサルキャリブレーション法により換算した。
【0061】
また、比較例1のフィルムの破断強度及び破断伸びを、以下の方法で測定した。
【0062】
(破断強度および破断伸びの測定)
JIS K 7127の方法に準じて、試験体の破断強度および破断伸びを測定した。測定はn=5で実施し、破断伸びについては、平均値と最大値を記録した。
【0063】
また、比較例1のフィルムのX線回折を、以下の方法で測定した。X線回折パターンを図3に示す。
【0064】
(X線回折の測定)
(株)島津製作所製X線回折装置を使用して、使用X線がCu・Kα線、X線強度が30kV、100mA、角度域が2θ=5〜50゜、走査速度が2゜/分の条件で、膜形状の試験体を、X線回折測定を実施した
次に、比較例1のフィルムを、以下の方法でスルホン化処理し、スルホン化処理した比較例1のフィルムを作成した。
【0065】
(スルホン化処理)
スルホン化前の比較例1のPPSフィルムを、スルホン化剤としてクロロスルホン酸、溶媒として1−クロロブタンを使用した混合溶液(クロロスルホン酸のPPSフェニル単位に対する添加量は2当量、混合溶液のクロロスルホン酸濃度は0.5重量%)に室温で20時間浸漬して、スルホン酸基含有結晶性高分子膜を得た。
【0066】
スルホン化処理した比較例1のフィルムのイオン交換容量を、以下の方法で測定した。
【0067】
(イオン交換容量の測定)
試験体を塩化ナトリウム飽和水溶液に浸漬し、ウォーターバス中で60℃、3時間反応させる。室温まで冷却した後、サンプルをイオン交換水で充分に洗浄し、フェノールフタレイン溶液を指示薬として、0.01Nの水酸化ナトリウム水溶液で滴定し、イオン交換容量を算出した。
【0068】
また、スルホン化処理した比較例1のフィルムのプロトン伝導度を、以下の方法で測定した。
【0069】
(プロトン伝導度の測定)
イオン交換水中に保管した試験体(10mm×40mm)を取り出し、試験体表面の水をろ紙で拭き取る。電極間距離30mmの白金電極間に試験体面を装着し、2極非密閉系のセルに設置した後、室温下で電圧0.2Vの条件で、交流インピーダンス法(周波数:42Hz〜5MHz)により、試験体の面内の膜抵抗を測定し、プロトン伝導度を算出した。
【0070】
また、スルホン化処理した比較例1のフィルムのメタノール透過係数を、以下の方法で測定しメタノール遮断性を評価した。
【0071】
(メタノール透過係数の測定)
ビードレックス社製膜透過実験装置を使用して、イオン交換水と64重量%メタノール水溶液を試験体膜で隔離し、所定時間経過後にイオン交換水側に透過したメタノール量をガスクロマトグラフで定量した。これからメタノール透過速度を算出後、メタノール透過係数を求めた。
【0072】
また、スルホン化処理した比較例1のフィルムの破断強度・伸び、及びX線回折を、スルホン化処理前の比較例1のフィルムで用いた方法と同様の方法で測定した。X線回折パターンを図7に示す。
【0073】
(実施例1)
比較例1で得られたPPSフィルムをピン枠に固定し、通風オーブン内で130℃、3分熱処理を行い、本発明に係る実施例1のPPSフィルムを得た。スルホン化前の実施例1のPPSフィルムについて比較例1と同様の方法で各測定を実施した。測定結果を表2に、X線回折パターンを図4に示す。
【0074】
次に、実施例1のフィルムを、比較例1のフィルムで用いた方法と同様の方法でスルホン化処理し、スルホン化処理した実施例1のフィルムを得た。
【0075】
スルホン化処理した実施例1のフィルムのイオン交換容量、プロトン伝導度、及びメタノール透過係数を、スルホン化処理した比較例1のフィルムで用いた方法と同様の方法で測定した。また、スルホン化処理した実施例1のフィルムの破断強度・伸び、及びX線回折を、スルホン化処理前の比較例1のフィルムで用いた方法と同様の方法で測定した。測定結果を表3に、X線回折パターンを図8に示す。
【0076】
(実施例2)
熱処理条件を150℃、3分とした以外は、実施例1と同様にして、本発明に係る実施例2のPPSフィルムを得た。スルホン化前の実施例2のPPSフィルムについて比較例1と同様の方法で各測定を実施した。測定結果を表2に、X線回折パターンを図5に示す。
【0077】
次に、実施例2のフィルムを、比較例1のフィルムで用いた方法と同様の方法でスルホン化処理し、スルホン化処理した実施例2のフィルムを得た。
【0078】
スルホン化処理した実施例2のフィルムのイオン交換容量、プロトン伝導度、及びメタノール透過係数を、スルホン化処理した比較例1のフィルムで用いた方法と同様の方法で測定した。また、スルホン化処理した実施例2のフィルムの破断強度・伸び、及びX線回折を、スルホン化処理前の比較例1のフィルムで用いた方法と同様の方法で測定した。測定結果を表3に、X線回折パターンを図9に示す。
【0079】
(実施例3)
本発明に係る実施例3のPPSフィルムとして、東レ製トレリナ#3000、50μmを用い、スルホン化前の実施例3のPPSフィルムについて比較例1と同様の方法で各測定を実施した。測定結果を表2に、X線回折パターンを図6に示す。
【0080】
次に、実施例3のフィルムを、比較例1のフィルムで用いた方法と同様の方法でスルホン化処理し、スルホン化処理した実施例3のフィルムを得た。
【0081】
スルホン化処理した実施例3のフィルムのイオン交換容量、プロトン伝導度、及びメタノール透過係数を、スルホン化処理した比較例1のフィルムで用いた方法と同様の方法で測定した。また、スルホン化処理した実施例3のフィルムの破断強度・伸び、及びX線回折を、スルホン化処理前の比較例1のフィルムで用いた方法と同様の方法で測定した。測定結果を表3に、X線回折パターンを図10に示す。
【0082】
表1は各PPSフィルムの特性評価結果であり、図3〜6は各PPSフィルムのX線回折パターンである。
【0083】
【表1】
【0084】
表1から明らかなように、熱処理していない比較例1のPPSフィルムの結晶化度は21%と低い値であるのに対し、熱処理を行った実施例1、2のPPSフィルムの結晶化度は25%以上となった。また、実施例3のPPSフィルムも結晶化度が25%以上であることがわかった。さらに、図5〜8に示したX線回折パターンから、比較例1のPPSフィルムでは、結晶性ピークは見られないものの、結晶化度が25%以上である本発明のPPSフィルムは、2θ=20.5゜付近にPPSの結晶相に由来するピークが存在することがわかった。
【0085】
表2は各PPSフィルムをスルホン化処理し得られたスルホン酸基含有結晶性高分子膜の特性評価結果であり、図7〜10はそれらの各スルホン酸基含有結晶性高分子膜のX線回折パターンである。
【0086】
【表2】
【0087】
(比較例2)
比較例2の高分子電解質膜としてナフィオン115(デュポン社製)を用い、比較例2のフィルムのイオン交換容量、プロトン伝導度、及びメタノール透過係数を、スルホン化処理した比較例1のフィルムで用いた方法と同様の方法で測定した。また、比較例2のフィルムの破断強度・伸びを、スルホン化処理前の比較例1のフィルムで用いた方法と同様の方法で測定した。測定結果を表2に示す。
【0088】
図7〜図10に示すように、結晶化度が25%以上であるPPSフィルムをスルホン化処理することにより得られるスルホン酸基含有結晶性高分子膜では、X線回折パターンで2θ=20.5゜付近にPPSの結晶相に由来するピークが残存している。
【0089】
スルホン化処理では、PPSの結晶相に由来するX線回折のピーク強度は低下するか、結晶化度が25%未満である比較例1のフィルムのスルホン化前後X線回折パターンである図4及び図7に示すようにピークが生じない。従ってこれらの結果は、結晶化度が25%以上であるPPSフィルムをスルホン化処理した場合には、PPSフィルムの結晶相が残存することを意味する。
【0090】
また、表2に示すように、スルホン化処理後の比較例1、実施例1〜3、及び比較例2のフィルムで、固体高分子型燃料電池の高分子電解質膜の必要特性であるプロトン伝導度は概ね同等であるが、しかし、直接メタノール型燃料電池の高分子電解質膜の必要特性であるメタノール遮断性は、スルホン化処理後の比較例1及び比較例2のフィルムと比較して、スルホン化処理後の実施例1〜3のフィルムではメタノール透過係数が著しく低くなっており、大きく向上している。さらに、スルホン化処理後の比較例1と実施例1〜3とのフィルムの比較から、破断強度および破断伸びは、結晶化度が低いPPSフィルムをスルホン化処理した比較例1のスルホン酸基含有高分子膜より、結晶化度が高いPPSフィルムをスルホン化処理した実施例1〜3のスルホン酸基含有高分子膜の方が大きな値を示し、結晶化度が高い程向上する傾向を示し、より高いハンドリング性が期待できる。
【0091】
上記より、本発明のPPSフィルムおよび本発明の製造方法により得られるPPSフィルムは、固体高分子型燃料電池および直接メタノール型燃料電池の高分子電解質膜として使用可能なスルホン酸基含有結晶性高分子膜を得るのに有効であることが示された。
【0092】
【発明の効果】
以上述べてきたように、本発明によれば、結晶化度が25%以上であるPPSフィルムを、スルホン化してスルホン酸基含有結晶性高分子膜を得ることで、高いプロトン伝導度を発現しつつ、優れた機械的特性や高いメタノール遮断性を有する固体高分子型燃料電池および直接メタノール型燃料電池の高分子電解質膜を得ることができる。また、結晶化度が25%以上であるPPSフィルムは、再結晶温度〜融点の温度でPPSフィルムを熱処理することにより得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の固体高分子型燃料電池の要部断面図
【図2】本発明の直接アルコール型燃料電池の要部断面図
【図3】比較例1のPPSフィルムのX線回折パターン
【図4】実施例1のPPSフィルムのX線回折パターン
【図5】実施例2のPPSフィルムのX線回折パターン
【図6】実施例3のPPSフィルムのX線回折パターン
【図7】比較例1のPPSフィルムから得られたスルホン酸基含有高分子膜のX線回折パターン
【図8】実施例1のPPSフィルムから得られたスルホン酸基含有結晶性高分子膜のX線回折パターン
【図9】実施例2のPPSフィルムから得られたスルホン酸基含有結晶性高分子膜のX線回折パターン
【図10】実施例3のPPSフィルムから得られたスルホン酸基含有結晶性高分子膜のX線回折パターン
【符号の説明】
1 スルホン酸基含有結晶性高分子膜
2 触媒担持電極
3 流路
4 セパレーター
5 ガスケット
8 燃料タンク
10 支持体
11 酸化剤流路
Claims (7)
- 燃料電池用スルホン酸基含有結晶性高分子膜に使用するポリフェニレンサルファイドフィルムであって、結晶化度が25%以上であるポリフェニレンサルファイドフィルム。
- 前記ポリフェニレンサルファイドフィルムの分子量分布のピークトップが、25,000以上である請求項1記載のポリフェニレンサルファイドフィルム。
- 燃料電池用スルホン酸基含有結晶性高分子膜に使用するポリフェニレンサルファイドフィルムの製造方法であって、前記ポリフェニレンサルファイドフィルムの再結晶温度〜融点の温度で熱処理して、結晶化度を25%以上にせしめるポリフェニレンサルファイドフィルムの製造方法。
- 前記熱処理温度が130〜270℃である請求項3記載のポリフェニレンサルファイドフィルムの製造方法。
- 請求項1または2のいずれかに記載のポリフェニレンサルファイドフィルムあるいは請求項3または4のいずれかに記載の製造方法で得られるポリフェニレンサルファイドフィルムからなるスルホン酸基含有結晶性高分子膜。
- 請求項5記載のスルホン酸基含有結晶性高分子膜からなる固体高分子型燃料電池。
- 前記固体高分子型燃料電池が、直接メタノール型燃料電池である請求項6記載の固体高分子型燃料電池。
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