JP2004236545A - 水中又は水浜の環境改善方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】養浜、浅場・アマモ場・干潟の造成、磯焼け防止、赤潮の防止、青潮の防止などに優れた効果が得られるとともに、低コストに実施可能であり、しかも敷設材によって生物や人が傷などを負うおそれがない水中又は水浜の環境改善方法を提供する。
【解決手段】水中又は水浜に、環境改善材として高炉風砕スラグを設置することを特徴とするもので、高炉風砕スラグは球状に近い形状を有し、表面が滑らかであるため、水中又は水浜に敷設した際に人や生物を傷つける恐れがほとんどなく、またCaOによる底質・水質の浄化機能やケイ酸塩イオンの放出源としての機能も有しているため、水底や水浜に敷設する敷設材として優れた性能を有するとともに、砂地などに棲息する底棲生物をはじめとする多種多様な生物に好適な棲息環境を提供できる。
【選択図】 なし
【解決手段】水中又は水浜に、環境改善材として高炉風砕スラグを設置することを特徴とするもので、高炉風砕スラグは球状に近い形状を有し、表面が滑らかであるため、水中又は水浜に敷設した際に人や生物を傷つける恐れがほとんどなく、またCaOによる底質・水質の浄化機能やケイ酸塩イオンの放出源としての機能も有しているため、水底や水浜に敷設する敷設材として優れた性能を有するとともに、砂地などに棲息する底棲生物をはじめとする多種多様な生物に好適な棲息環境を提供できる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水中又は水浜の環境改善方法に関するもので、具体的には、養浜、覆砂及び浅場・アマモ場・干潟・人工海浜等の造成(修復を含む)等において人や生物に好ましい環境を形成することができる水中又は水浜の環境改善方法、さらには、沿岸海域等における水中の珪藻類や海藻類の増殖、主に内海や湾などで発生する赤潮の防止、所謂磯焼けが生じている海域の藻場造成或いは磯焼けの防止、消失浅場の回復、水底における水の停滞(例えば、水底の凹部における水の停滞)に起因する青潮の発生や棲息生物減少の抑制などに有効な水中又は水浜の環境改善方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、水浜や沿岸海域における環境保全並びに水産資源の保護などの観点から、多様な生物(動植物)の棲息領域を形成する干潟、浅場、アマモ場等の環境保護・修復、沿岸海域の海底部に成育する海藻類の保護・育成、所謂磯焼けの防止或いは磯焼けが生じている海域の藻場回復、赤潮の発生防止、青潮の発生防止などが大きな課題となっており、これらを解決できる水中や水浜の環境改善技術の開発が望まれている。以下、これら水中や水浜の環境改善に関する課題とこれに対する従来の対策について述べる。
【0003】
(1) 養浜及び干潟・浅場等の修復又は造成
近年、海岸の浸食等によって消失した砂浜の回復を目的とし、或いは海洋レクリエーションの場である人工ビーチの造成を目的として、海浜に大量の砂を投入する、所謂養浜が行われている。さらに、最近では干潟や浅場の優れた水質浄化機能が認識されつつあり、失われた干潟や浅場を人工的に復元したり、新たに造成する試みがなされているが、この場合にも覆砂や造成のために大量の砂等が投入される。
【0004】
(2) 磯焼け及びその防止対策
岩礁や人工魚礁などの海藻着生基盤の表面が石灰藻に覆われる所謂“磯焼け”状態となった海域は、魚介類の餌となる有用海藻(例えば、コンブ、ワカメ、アラメなど)が繁殖せず、その海域の漁業生産量が著しく低下するという問題がある。
【0005】
従来、磯焼けが生じた海域に対しては鋼製の藻礁を設置するなどの対策が試みられてきたが、鋼製藻礁を設置すると2年間程度は石灰藻以外の海藻が藻礁に繁殖して藻礁部分は磯焼け状態が解消されるものの、3年程度経過すると鋼製藻礁も石灰藻に覆われてしまい、その効果が無くなってしまう。このため再度鋼製藻礁を設置するなどの対策が必要となり、磯焼け防止の抜本的な解決策とはなり得ていない。また最近では、磯焼けが生じた海域のウニを駆除することによって藻場を復活させた例もあるが、ウニの駆除は人力で行う必要があるため効率が悪く、コストも多くかかる上、一度に適用できる海域が狭いなど、磯焼け解消の切り札とはなり得ていない。
【0006】
一方、海水中のケイ酸塩濃度を高めることにより珪藻類が増殖し、その結果として石灰藻の増殖が抑制されることが知られており、このようなメカニズムを利用した磯焼けの改善方法として、高炉水砕スラグをケイ酸塩イオン放出源として水中に設置する方法が特許文献1で提案されている。高炉水砕スラグはSiO2成分とCaO成分とを多量に含むガラス質材料であるため、海水中にケイ酸塩イオンを継続的に溶出させることができ、このケイ酸塩イオンが珪藻類を増殖させ、その結果、磯焼海域における石灰藻の増殖が抑制され、磯焼けの発生が抑えられる。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−238401号公報
【0008】
(3) 赤潮及びその防止対策
赤潮とは水中の微生物、とりわけ植物プランクトンが異常増殖して海水が着色する現象であり、近年、養殖魚類(例えば、ハマチやタイなど)を大量斃死させるなど、特に養殖漁業に大きな被害を及ぼしていることから、その防止対策が切望されている。
赤潮を起こす生物の種類は多岐にわたると考えられるが、その中でもシャットネラなどの特定の鞭毛藻類の大増殖が養殖魚類の大量斃死を招く赤潮の主要な原因であると考えられている。赤潮は富栄養化の進行した海域において発生することから、赤潮の防止には覆砂や浚渫、下水道整備による河川流入栄養塩の低減化が有効であるとされている。
【0009】
しかしながら、浚渫は工事完了後に新たに堆積する有機物によってその効果が失われてしまい、また、工事可能な海域が比較的浅い海域に限られるため、赤潮の大発生が問題となる瀬戸内海中心部などへの適用は困難である。また、これらの工事には多大な費用がかかり、このことも適用範囲が限られる要因となる。また、下水道整備による河川流入栄養塩の低減化は、海域全体の栄養塩量を減らすには有効であるが、これも瀬戸内海中心部のような海岸から離れた場所では、夏期の海水停滞期に表層海水の貧栄養化の原因となり、この貧栄養化によって表層海水中の珪藻類が減少することが、赤潮の原因となるシャットネラなどの鞭毛藻類の増殖要因の一つとなる。
【0010】
最近、赤潮防止対策の一つとして、可溶性のケイ素(ケイ酸塩イオン)の海水中への付与により珪藻類を繁殖させ、赤潮の原因となるシャットネラなどの鞭毛藻類の増殖を抑制する方法が検討され、このような赤潮防止対策に関しても、特許文献1においてケイ酸塩イオン放出源である高炉水砕スラグを水中に設置する方法が提案されている。ケイ酸塩イオンの海水中への付与は貧栄養状態となった表層海水中の珪藻類を繁殖させる効果があり、珪藻類は赤潮の原因となるシャットネラなどの鞭毛藻類の競合種であり、しかも鞭毛藻類よりも増殖力が高いため、珪藻類が表層海水中で安定に繁殖するとシャットネラなどの鞭毛藻類の異常増殖が抑制され、その結果、赤潮の発生が防止されることになる。
【0011】
(4) 磯焼け以外の海藻成育環境の衰退・消失及びその対策
沿岸海域では、先に述べた磯焼け以外にも、例えば、底質のヘドロ化や海砂の流失等による浅場の消失、底質・水質の汚染等の原因により海藻成育環境(特に、藻場)の衰退、消失が生じることがある。このような海底での海藻成育環境の衰退、消失に対しては、先に磯焼け防止に関して述べた対策が適用可能であると考えられる。
【0012】
(5) 沿岸海域でのその他の問題及びその防止対策
内湾等において水底で海水の停滞が生じると硫化水素が発生し、所謂青潮の発生原因となる。特に、土砂採取等によって水底が部分的に掘られ、比較的深さのある凹部が形成されると、この凹部内の水が停滞する結果、特に夏期において著しい無酸素状態となり、有機物の腐敗やバクテリア(硫酸還元菌)の作用によって大量の硫化水素が発生するという問題がある。このように凹部内で硫化水素が大量発生すると、凹部内やその周囲の棲息生物が減少するだけでなく、硫化水素を含んだ水塊(青潮)が周辺水域に流出することによって周辺水域の生物の棲息環境にも多大な影響を与える。
【0013】
このような問題に対して、高炉水砕スラグを青潮発生を引き起こす硫化水素の発生や海水の富栄養化を生じている海域の水底に敷設する方法が、特許文献2において提案されている。この方法では、高炉水砕スラグから水中に溶出したCaOが水中のpHを高めること、スラグ中に含まれるCaOに水中の硫化水素、燐などが固定されることなどによって、硫化水素の発生が抑制されるとともに水の富栄養化も抑制されるため、青潮の発生も抑えられる。
【0014】
【特許文献2】
特開2002−370092号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
上記(1)に記載した養浜、浅場・アマモ場・干潟・人工海浜等の造成や修復には砂などの多量の敷設材が必要であるが、多くの場合、敷設材としては他の場所で採取された天然砂(海砂、山砂)や天然石が用いられる。しかし、この場合には天然砂や天然石の採取場所で新たな環境破壊を生じるおそれがある。
【0016】
また、上記(2)〜(5)に記載した磯焼けの防止対策、赤潮の防止対策、磯焼けや他の原因で海藻成育環境が衰退・消失した海域での藻場造成や環境修復、青潮の防止対策に関しては、対象海域での高炉水砕スラグの設置はそれぞれ有効なものであると考えられる。しかし、高炉水砕スラグのスラグ粒子は、その製法上の理由から角張った形状を有し、しかも針状のスラグ(針状物)が比較的多く含まれており、特にこの針状物は、人や生物が触れると刺さって傷を負わせるような鋭いものである。このため高炉水砕スラグを水中に設置した場合、生物(動植物)に傷などを負わせるおそれがあり、また、人が出入りするような場所(干潟、浅場、水浜など)では、人の手足に刺さるなどの問題を生じる可能性もある。
【0017】
したがって本発明の目的は、養浜、浅場・アマモ場・干潟・人工海浜等の造成・修復、磯焼け防止や磯焼けなどにより海藻成育環境が衰退・消失した海域での藻場造成・修復、赤潮の防止、青潮の防止などに優れた効果が得られるとともに、低コストに実施可能であり、しかも敷設材によって生物や人が傷などを負うおそれがない水中又は水浜の環境改善方法を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するため、高炉水砕スラグと同様のケイ酸塩イオンの溶出性や硫化水素の発生抑制作用を有し、しかも水中に敷設した場合に生物や人に傷などを負わせるおそれがない敷設材について検討を行い、その結果、鉄鋼製造プロセスにおいて得られる高炉風砕スラグがその条件に極めてよく合致することを見出した。
本発明はこのような知見に基づきなされたもので、その特徴は以下の通りである。
【0019】
[1] 水中又は水浜に、環境改善材として高炉風砕スラグを設置することを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
[2] 水底又は水浜に、養浜材、浅場造成材、アマモ場造成材、干潟造成材、人工海浜造成材又は覆砂材として高炉風砕スラグを敷設することを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
[3] 水底又は水浜に敷設される養浜材、浅場造成材、アマモ場造成材、干潟造成材、人工海浜造成材又は覆砂材であって、高炉風砕スラグからなることを特徴とする水中又は水浜の環境改善用資材。
【0020】
[4] 水中又は水浜にケイ酸塩イオン放出源として、高炉風砕スラグを設置することを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
[5] 上記[4]の環境改善方法において、磯焼けが生じている海底部に、磯焼け防止材として高炉風砕スラグを設置することにより、磯焼け海域での藻場造成を行うことを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
[6] 上記[5]の環境改善方法において、天然又は人工の海藻着生基盤の周囲又は近傍に高炉風砕スラグを設置することにより、磯焼け海域での藻場造成を行うことを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
[7] 上記[6]の環境改善方法において、高炉風砕スラグを設置した後、人工の海藻着生基盤を設置することにより、磯焼け海域での藻場造成を行うことを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
【0021】
[8] 上記[4]の環境改善方法において、磯焼けが生じるおそれがある海底部に、磯焼け防止材として高炉風砕スラグを設置することにより、磯焼けを防止することを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
[9] 上記[8]の環境改善方法において、天然又は人工の海藻着生基盤の周囲又は近傍に高炉風砕スラグを設置することにより、磯焼けを防止することを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
[10] 上記[9]の環境改善方法において、高炉風砕スラグを設置した後、人工の海藻着生基盤を設置することにより、磯焼けを防止することを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
[11] 磯焼けが発生している海底部又は磯焼けの発生を予防すべき海底部に設置される磯焼け防止材であって、高炉風砕スラグからなることを特徴とする水中又は水浜の環境改善用資材。
【0022】
[12] 上記[4]の環境改善方法において、海水域、汽水域又淡水域において、水中に赤潮防止材として高炉風砕スラグを設置することにより赤潮発生を防止することを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
[13] 上記[12]の環境改善方法において、水深15m以内の水中に高炉風砕スラグを設置することにより、赤潮発生を防止することを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
[14] 上記[12]又は[13]の環境改善方法において、高炉風砕スラグを水底に直接敷設することにより、赤潮発生を防止することを特徴とする水中又は水底の環境改善方法。
[15] 上記[12]又は[13]の環境改善方法において、高炉風砕スラグを通水性を有する袋又は容器に入れ、該袋又は容器を水底に設置することにより赤潮発生を防止することを特徴とする水中又は水底の環境改善方法。
【0023】
[16] 上記[12]又は[13]の環境改善方法において、高炉風砕スラグを通水性を有する袋又は容器に入れ、該袋又は容器を水面又は水面下に浮設した浮体に保持させることにより赤潮発生を防止することを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
[17] 赤潮が発生している海域又は赤潮の発生を予防すべき海域に設置される赤潮防止材であって、高炉風砕スラグからなることを特徴とする水中又は水浜の環境改善用資材。
[18] 上記[4]の環境改善方法において、海岸に面した海底に高炉風砕スラグを敷設するとともに、該高炉風砕スラグの敷設領域の周囲にスラグ流失防止用の潜堤を設置し、且つ該高炉風砕スラグの敷設領域には人工の海藻着生基盤及び/又は漁礁を設置したことを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
【0024】
[19] 上記[18]の環境改善方法において、潜堤の少なくとも一部を、鉄鋼製造プロセスで発生した塊状のスラグ、鉄鋼製造プロセスで発生したスラグを主原料とする粉粒状原料を炭酸反応で生成させたCaCO3を主たるバインダーとして固結させて得られたブロック、鉄鋼製造プロセスで発生したスラグを主原料とする水和硬化体ブロックの中から選ばれる1種以上で構成したことを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
[20] 上記[18]又は[19]の環境改善方法において、人工の海藻着生基盤及び/又は漁礁の少なくとも一部を、鉄鋼製造プロセスで発生した塊状のスラグ、鉄鋼製造プロセスで発生したスラグを主原料とする粉粒状原料を炭酸反応で生成させたCaCO3を主たるバインダーとして固結させて得られたブロック、鉄鋼製造プロセスで発生したスラグを主原料とする水和硬化体ブロックの中から選ばれる1種以上で構成したことを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
【0025】
[21] 硫化水素発生源である水底に、高炉風砕スラグを敷設することを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
[22] 水底に形成された凹部内に、全部又は一部が高炉風砕スラグからなる敷設材を敷設することを特徴とする水中又は水浜の環境改善法。
[23] 底層水中で硫化水素が検出された水域又は底層水中の溶存酸素濃度が所定値以下の水域の水底に、全部又は一部が高炉風砕スラグからなる敷設材を敷設することを特徴とする水中又は水浜の環境改善法。
[24] 底層水の流速が所定値以下の水域の水底に、全部又は一部が高炉風砕スラグからなる敷設材を敷設することを特徴とする水中又は水浜の環境改善法。
[25] 水中に水温又は/及び塩分濃度による密度躍層が形成された水域の水底に、全部又は一部が高炉風砕スラグからなる敷設材を敷設することを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
【0026】
[26] 水底に形成された凹部内に、全部又は一部が高炉風砕スラグからなる敷設材を敷設し、該敷設材により形成される水底面の平均水深d1と凹部周囲の水底面の平均水深d0との差[d1−d0]を2m以下(但し、[d1−d0]がマイナス値の場合を含む)とすることを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
[27] 上記[22]〜[26]のいずれかの環境改善方法において、敷設材が高炉風砕スラグと高炉風砕スラグ以外の素材とからなり、該敷設材は、前記高炉風砕スラグとそれ以外の素材が混合された状態であるか、又は前記高炉風砕スラグが上層側、それ以外の素材が下層側になるようにして凹部内に敷設されることを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
[28] 上記[22]〜[27]のいずれかの環境改善方法において、凹部内に敷設された敷設材の50mass%以上が高炉風砕スラグからなることを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
【0027】
[29] 上記[22]〜[28]のいずれかの環境改善方法において、凹部に敷設された敷設材の上層が高炉風砕スラグを60mass%以上含むことを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
[30] 硫化水素の発生源となる水底に敷設される青潮防止材であって、高炉風砕スラグからなることを特徴とする水中又は水浜の環境改善用資材。
[31] 上記[1]、[2]、[4]〜[10]、[12]〜[16]、[18]〜[29]のいずれかの環境改善方法において、高炉風砕スラグが、粒径0.5mm以上のスラグ粒子の割合が90mass%以上の高炉風砕スラグであることを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
【0028】
[32] 上記[1]、[2]、[4]〜[10]、[12]〜[16]、[18]〜[29]のいずれかの環境改善方法において、高炉風砕スラグが、粒径1.0mm以上のスラグ粒子の割合が70mass%以上の高炉風砕スラグであることを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
[33] 上記[1]、[2]、[4]〜[10]、[12]〜[16]、[18]〜[29]、[31]、[32]のいずれかの環境改善方法において、高炉風砕スラグが、酸素含有ガスの吹き込み又は酸素含有ガスと水蒸気の吹き込みによるエージング処理を施したスラグであることを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
【0029】
[34] 上記[3]、[11]、[17]、[30]のいずれかの環境改善用資材において、高炉風砕スラグが、粒径0.5mm以上のスラグ粒子の割合が90mass%以上の高炉風砕スラグであることを特徴とする水中又は水浜の環境改善用資材。
[35] 上記[3]、[11]、[17]、[30]のいずれかの環境改善用資材において、高炉風砕スラグが、粒径1.0mm以上のスラグ粒子の割合が70mass%以上の高炉風砕スラグであることを特徴とする水中又は水浜の環境改善用資材。
[36] 上記[3]、[11]、[17]、[30]、[34]、[35]のいずれかの環境改善用資材において、高炉風砕スラグが、酸素含有ガスの吹き込み又は酸素含有ガスと水蒸気の吹き込みによるエージング処理を施したスラグであることを特徴とする水中又は水浜の環境改善用資材。
【0030】
本発明において、浅場、干潟、アマモ場とは、以下に述べるような場所(水域又は水浜)を指す。すなわち、浅場とは干潮面〜水深15m程度の海域若しくは灘落ちより浅い海域を指す。干潟とは、満潮時には海面下に沈み、干潮時には海面上に現れる主として砂、砂泥又は粘土質からなる平坦な場所を指す。アマモ場とは、アマモ類が繁茂している場所を指す。また、本発明が適用される磯焼けが生じている海底部とは、岩礁や人工魚礁などの海藻着生基盤の表面が石灰藻に覆われることにより、コンブ、ワカメ、アラメなどの有用海藻が消失し又は消失しつつある海底部を指す。
【0031】
【発明の実施の形態】
本発明法では、水中又は水浜に環境改善材として高炉風砕スラグを設置する。
高炉風砕スラグは、一般に、鉄鋼製造プロセスにおいて高炉から取り出された溶融状態の高炉スラグにガス流(例えば、高圧空気、高圧ミストなど)を吹き付けて粒状化し、凝固させることにより得られる。この高炉風砕スラグは、高炉水砕スラグと同じ高炉スラグから得られるものであるため、化学成分自体は高炉水砕スラグと基本的に同じであり、したがって、後述するように磯焼け防止、衰退・消失した海域での藻場造成・修復、赤潮の防止、青潮の防止などに優れた効果が得られる。
【0032】
一方、この高炉風砕スラグのスラグ粒子は、球状に近い形状を有し、表面が滑らかであるため、水中又は水浜に敷設した際に高炉水砕スラグのように人や生物を傷つける恐れがほとんどない。特に、高炉風砕スラグの粒子形状は海砂などのような天然砂よりも球形に近いため、水底や水浜への敷設材料として非常に好適な素材である。また、人が手足で触れた感触(手触りなど)はむしろ海砂よりも良く、このため人工海浜や人工干潟などの敷設材としても好適である。
【0033】
また、高炉風砕スラグは、その製造上の理由から、球状のスラグ粒子に混じって繊維状のもの(繊維状スラグ)が生じることがある。この繊維状スラグ(スラグウール)は、製造条件を選択することによって生成量を調整することができる。本発明では、この繊維状スラグを含んだ高炉風砕スラグをそのまま用いてもよいし、含まないものを用いてもよい。また、別に繊維状スラグを添加した高炉風砕スラグを用いてもよい。
【0034】
本発明において、繊維状スラグを含んだ高炉風砕スラグ(好ましくは、繊維状スラグを全体の5〜50mass%程度含んだ高炉風砕スラグ)を水底や水浜に敷設すると、敷設層内で繊維状スラグどうしが絡み合うことにより、敷設層を構成するスラグ粒子(繊維状スラグを含むスラグ粒子全体)間に結合性が与えられ、この結果、敷設されたスラグの波浪、潮流などによる流出が抑制される効果が得られる。さらに、繊維状スラグは比表面積が大きく、しかも、上記の理由から波浪等に対する安定性が高いため、粒状のスラグに較べて微細な生物の付着基盤としての適性が高く、いわゆる生物膜ができ易い。このため繊維状スラグを含む高炉風砕スラグによる敷設層は、水中生物(動植物)の着生基盤として非常に有効に機能するとともに、優れた水質浄化作用を得ることができる。
【0035】
本発明の第一の形態では、高炉風砕スラグを、養浜材、浅場造成材、アマモ場造成材、干潟造成材、人工海浜造成材又は覆砂材として水底又は水浜に敷設するものであり、高炉風砕スラグは上述したような特有の性状、外観及び作用を有しているため、人や生物を傷つける恐れがほとんどない、繊維状スラグが混在することによって波浪、潮流などによる流出が抑制される、同じく水中生物(動植物)の着生基盤として高い機能を有し且つ優れた水質浄化作用も得られる、などの有用な効果が得られる。またこのため、砂地に棲息する底棲生物(例えば、貝類やゴカイ類)にも好適な棲息環境が提供される。
【0036】
本発明の他の形態では、水中にケイ酸塩イオン放出源として高炉風砕スラグを設置するものであり、この高炉風砕スラグから水中に放出されるケイ酸塩イオンが珪藻類を増殖させ、その結果、磯焼けが現に生じ又は生じる恐れがある海域においては石灰藻の増殖が抑制されて磯焼けの発生が抑えられ或いは磯焼け海域に藻場を造成することができ、また、磯焼け以外の原因で海藻成育環境が現に衰退・消失し又は衰退・消失する恐れがある海域においては、海藻類を効果的に成育・増殖させることができる。また、同じく赤潮が現に生じ又は生じる恐れがある海域においては、赤潮の原因となる鞭毛類の増殖が抑制されて赤潮の発生が抑えられる。また、この形態においても、高炉風砕スラグの特有の性状、外観及び作用によって、上述した各種の効果が得られる。
【0037】
さらに、本発明の他の形態では、高炉風砕スラグを、青潮発生を引き起こす硫化水素の発生や海水の富栄養化を生じている海域の水底に敷設するものであり、これにより高炉風砕スラグから水中に溶出したCaOが水中のpHを高めること、さらにはスラグ中に含まれるCaOに水中の硫化水素、燐などが固定されることなどによって、硫化水素の発生が抑制されるとともに水の富栄養化も抑制されるため、青潮の発生も抑えられる。また、この形態においても、高炉風砕スラグの特有の性状、外観及び作用によって、上述した各種の効果が得られる。
【0038】
先に述べたように、高炉風砕スラグは溶融状態の高炉スラグにガス流(例えば、高圧空気、高圧ミストなど)を吹き付けて粒状化し、凝固させることにより得られる。高炉スラグは鉄鋼製造プロセスにおいて副生成物として大量に生産され、しかも非常に安価な材料であるため海中への大量投入が可能であり、例えば、1つの海域や水浜に百万トンオーダーで投入することが可能である。
高炉風砕スラグとしては、鉄鋼製造プロセスにおいて副生成物として得られたスラグのままのものを用いてもよいし、分級などにより粒度調整したものを用いてもよい。
また、高炉風砕スラグは他の材料(例えば、製鋼スラグ、他の高炉系スラグ、フライアッシュ、けい砂、山砂、海砂、粘土など)と混合した状態で用いることができる。
【0039】
高炉風砕スラグはSiO2成分とCaO成分とを多量に含むガラス質材料(一般に、SiO2:30mass%以上、CaO:35mass%以上)であり、このため海水中に設置(沈設)された高炉風砕スラグは、これに含まれるCaOの溶解により生じたCaイオンのケイ酸塩網目構造へのアタックによりケイ酸塩網目構造が分断され、この結果、海水中にケイ酸塩イオンを溶出させる。すなわち、高炉風砕スラグは、水分子によるケイ酸塩網目構造の切断により徐々にケイ酸塩イオンが海水中に溶解する作用に加えて、スラグから溶解したCaイオンによるケイ酸塩網目構造の分断によりケイ酸塩イオンが海水中に溶解する作用が得られ、したがって、このような高炉風砕スラグのケイ酸塩イオンの溶出機構は、人工のガラス質材料と同様の水分子によるケイ酸塩イオンの溶出作用と、Caイオンのアタックによるケイ酸塩イオンの溶出作用とが組み合わされたものとなり、人工のガラスよりもはるかにケイ酸塩が溶出しやすい。
【0040】
また、高炉風砕スラグはCaイオンを溶出するため、海中に設置された場合に硫化水素の発生抑制効果を有し、このため高炉風砕スラグの積層物内では硫酸還元が起こりにくく、天然の砂やガラスの積層物内に較べて硫化水素が少なく溶存酸素の多い状態となる。この状態は着生する生物にとって棲息しやすい状態であると言え、したがって、海中に設置された高炉風砕スラグはケイ酸塩イオンの供給源であるとともに、生物の着生基盤としても機能し、この点からも磯焼けの改善などに有効である。
【0041】
なお、高炉風砕スラグの塩基度は四成分塩基度(CaO+Al2O3+MgO)/SiO2で1.6〜2.5、望ましくは1.6〜2.0であることが好ましい。高炉風砕スラグの上記塩基度が1.6未満ではスラグ中でのSiO2の安定度が高まるためケイ酸塩イオンの海水中への溶出性が低下する傾向がある。一方、上記塩基度が2.0を超え、特に2.5を超えるとスラグ中の結晶質の量が増加し、ケイ酸塩の溶出と同時にCaの溶出も増加するため、ケイ酸塩がCaと沈殿物を生成してケイ酸塩の海水中への供給量が低下する場合がある。
【0042】
浅場、海浜、干潟等の砂地に棲息する貝類やゴカイ類等の底棲生物の棲息量は、砂地を構成する砂の大きさと大きく関係し、比較的粗めの砂の方が棲息量が多い。これは、砂地に棲息する生物の多くは砂の中に潜り込んで棲息するため、砂が或る程度粗く、砂粒子間の隙間が大きい方がそれら生物が棲息しやすい環境となるからである。しかし、隙間が大き過ぎると、小さな生物にとっては逆に棲息しにくい環境となるため、隙間の大きさも適度なものである必要がある。
【0043】
本発明者らは、ヘドロの堆積した浅場の海底に種々の粒度構成を有する高炉風砕スラグを敷設し、一定期間経過後における底棲生物(貝類やゴカイ類)の棲息量を確認する実験を行った。その結果、高炉風砕スラグを敷設した浅場の海底は、その粒度構成に拘りなくヘドロの堆積した海底に較べて底棲生物の棲息量の増加が認められたが、特に粒径0.5mm以上のスラグ粒子の割合が90mass%以上の粒度構成、とりわけ粒径1.0mm以上のスラグ粒子の割合が70mass%以上の粒度構成を有する高炉風砕スラグを敷設した場合に、底棲生物の棲息量の顕著な増加が認められた。したがって、高炉風砕スラグは、その粒度構成を粒径0.5mm以上のスラグ粒子の割合が90mass%以上、好ましくは粒径1.0mm以上のスラグ粒子の割合が70mass%以上とすることが好ましい。
【0044】
このような粒度構成とするために、製造されたままの高炉風砕スラグの粒度構成が上記範囲にない場合には、高炉風砕スラグの篩い分けを行う。篩い分け法は、乾式篩い、湿式篩い、気流分離などのいずれでもよい。
また、細粒分を多く含んだ高炉風砕スラグを水中や水浜に敷設すると、敷設層中で細粒部分が次第に偏在し、この偏在した細粒部分が固結してしまうことがあるが、上述したような比較的粗い粒度構成とすることにより、そのような細粒部分の固結も生じることはない。
【0045】
以下、本発明の水中又は水浜の環境改善方法の一実施形態である、養浜、浅場造成、アマモ場造成、干潟造成(これらの修復を含む)、覆砂等を行う方法について説明する。
この形態では、水底又は水浜に、養浜材、浅場造成材、アマモ場造成材、干潟造成材、人工海浜造成材又は覆砂材として高炉風砕スラグを敷設する。
ここで、浅場とは干潮面〜水深15m程度の海域若しくは灘落ちより浅い海域を指し、この浅場は数多くの生物資源の産卵、繁殖場や雑魚の生育場であり、また好適な漁場も存在する。また、干潟とは、満潮時には海面下に沈み、干潮時には海面上に現れる主として砂、砂泥又は粘土質からなる平坦な場所を指し、一般に、外海から隔てられている内海の沿岸域や内湾奥域などの前海岸(前浜)の部分に発達する。干潟は生物活動が活発で、海域の浄化、生物資源の培養に果たしている役割が大きいことが知られている。さらに、アマモ場とは、アマモ類が繁茂している場所を指し、通常は、水深が2〜5m程度で底質が砂泥質のところ多い。
また、覆砂とは水底の泥層をきれいな砂で覆うことを指す。また、養浜とは、海岸の浸食等により砂浜が消失した海岸や人工海浜を造成する海岸に外部から砂を供給することを指す。
【0046】
上述したように高炉風砕スラグは、スラグ粒子が球状に近い形状を有し、表面が滑らかであるため、水中又は水浜に敷設した際に高炉水砕スラグのように人や生物を傷つける恐れがほとんどなく、また、繊維状スラグが混在することによって波浪、潮流などによる流出が抑制され、さらに、水中生物(動植物)の着生基盤として高い機能を有するとともに、優れた水質浄化作用も有する。また、高炉風砕スラグは、後述するようなCaOによる底質・水質の浄化機能やケイ酸塩イオンの放出源としての機能も有している。このため養浜、浅場造成、アマモ場造成、干潟造成、人工海浜造成、覆砂などのために水底や水浜に敷設する敷設材として優れた性能を有し、また、砂地などに棲息する底棲生物(例えば、貝類やゴカイ類)をはじめとする多種多様な生物に好適な棲息環境を提供できる。
また、高炉風砕スラグをアマモ場造成材として使用した場合には、スラグ粒子が球形に近いため、アマモの地下茎を傷つけないという利点もある。
【0047】
さらに、粒径0.5mm以上のスラグ粒子の割合が90mass%以上、好ましくは粒径1.0mm以上のスラグ粒子の割合が70mass%以上(特に好ましくは80mass%以上)の高炉風砕スラグを敷設した場合には、先に述べたような理由により、底棲生物の棲息に特に適した環境を形成することができ、底棲生物の棲息量を顕著に増大させることができる。
本実施形態が適用される水浜又は水域としては、港湾を含む海、河川、河口、湖沼等のいずれでもよい。
【0048】
次に、本発明の他の実施形態である、磯焼け海域の藻場造成法及び磯焼け防止法について説明する。
本発明の水中又は水浜の環境改善法に基づく磯焼け海域の藻場造成法では、磯焼けが生じている海底部に磯焼け防止材(ケイ塩イオン放出源)として、上述した高炉風砕スラグを設置(沈設)するものである。この藻場造成法では、基本的には磯焼け海域の海中(海底)に高炉風砕スラグをそのまま沈設すればよい。
【0049】
珪藻類の増殖に必要な海水中のケイ酸塩イオンの濃度は10μmol/L以上とされているが、このようなケイ酸塩イオン濃度は高炉風砕スラグからなる磯焼け防止材の設置によって容易に達成される。これにより海底の海藻着生基盤表面に珪藻類が安定的に繁殖し、この結果、石灰藻の増殖が抑えられるとともに、昆布やアラメなどの大型の海藻類が繁殖する。また、海藻着生基盤表面に繁殖した珪藻類は、石灰藻とは異なり魚介類の餌となるため、珪藻類が繁殖すれば磯焼け海域において水産資源が増加する。また、高炉風砕スラグからのケイ酸塩イオンの溶出は長期間継続するため、珪藻類の増殖及びこれに伴う磯焼け防止効果も長期間に亘って継続することになる。また、高炉風砕スラグは上述したような特有の性状、外観及び作用を有しているため、水底に敷設されたスラグが人や生物を傷つける恐れがほとんどなく、また、繊維状スラグが混在することによって波浪、潮流などによる流出が抑制されるとともに、水中生物(動植物)の着生基盤として特に有効に機能し且つ優れた水質浄化作用も得られる。
【0050】
次に、本発明法に基づく磯焼け海域の藻場造成法の特に好ましい実施形態について説明する。
この藻場造成法では、磯焼けが生じている海底部において海藻着生基盤の周囲又は近傍に高炉風砕スラグを設置するのが好ましい。これにより高炉風砕スラグから溶出したケイ酸塩イオンにより海藻着生基盤周囲の海水が高ケイ酸塩濃度化し、海藻着生基盤に珪藻類を効果的に繁殖させることができる。
海藻着生基盤は天然又は人工のいずれでもよく、前者の場合は岩礁などであり、後者の場合には鋼製ブロック、コンクリートブロック、天然石、スラグ塊などである。また、この後者の場合には、磯焼け防止材を設置した後に海藻着生基盤を設置してもよい。人工の海藻着生基盤を設置する海底は、岩礁帯、砂地などを問わない。
【0051】
磯焼けが生じるのは外海に面した海域が多く、一般にこのような海域は海流が速いので、高炉風砕スラグをそのまま海底に設置すると海流により流失してしまうおそれがある。したがって、このような海域では高炉風砕スラグを通水性の容器又は袋に入れて設置することが好ましく、この場合も上記と同様の形態で海底に設置すればよい。
また、磯焼け防止材は、現に磯焼けを生じている海域だけでなく、磯焼けが生じる恐れのある海底部に設置することができる。すなわち、本発明の水中の環境改善方法の他の実施形態である磯焼け防止方法では、磯焼けが生じる恐れがある海底部に、磯焼け防止材として高炉風砕スラグを設置することにより、当該海域での磯焼けを予防する。この場合も高炉風砕スラグは、先に述べたものと同様の形態で設置される。
なお、上述したように本発明法に基づく磯焼け海域の藻場造成法や磯焼け防止法が適用される主たる海域(磯焼けを現に生じ又は生じる恐れのある海域)は主として外海に面した海域であり、したがって所謂赤潮が生じるような河川流入栄養塩などにより富栄養化した海域とは対照をなすような海域である。
【0052】
次に、本発明の水中又は水浜の環境改善方法の他の実施形態である、赤潮防止法について説明する。
この赤潮防止方法では、海水域などの水中(以下、海水中に適用する場合について説明する)に赤潮防止材として高炉風砕スラグを設置(沈設)する。一般に、赤潮が発生する海域は富栄養化が進んだ内海や湾に多く、基本的にはそのような海域の海中(海底)に高炉風砕スラグをそのまま沈設すればよい。
また、本発明法に基づく赤潮防止法において高炉風砕スラグを海中に設置する場合の特に好ましい実施形態は以下の通りである。
この赤潮防止方法において、高炉風砕スラグは水深15m以内(以浅)、好ましくは10m以内(但し、いずれも干潮時の水深)に設置するのが望ましい。これは、高炉風砕スラグの設置深度があまり大きいと溶出したケイ酸塩イオンが表層海水に到達しにくくなり、表層海水のケイ酸塩濃度を高める上で効率が悪いからである。
【0053】
また、赤潮発生海域が沿岸に近い場合(例えば、沿岸から数km以内の場合)には、図1に示すように水深15m以内、好ましくは10m以内の海底を覆うように高炉風砕スラグAを敷設すればよく、この高炉風砕スラグAから溶出したケイ酸塩イオンにより沿岸海域の海水が高ケイ酸塩濃度化し、この海水が海流によって沖合に流されるため、その海域一帯の表層海水のケイ酸塩濃度が高まり、珪藻類を効果的に増殖させることができる。
高炉風砕スラグを海底に設置するには、図1(a)に示すように高炉風砕スラグAをそのまま海底に設置する以外に、図1(b)に示すように高炉風砕スラグAを通水性の容器又は袋に入れて設置することも可能である。この方法は設置する海域の海流が速い場合に、高炉風砕スラグの流出を防止するのに有効である。また、図1(a)のように高炉風砕スラグをそのまま海底に設置する場合には、後述する図4に示すような潜堤(例えば、製鋼スラグ塊を積み上げることにより構築される潜堤)を高炉風砕スラグAの周囲に設置することで、高炉風砕スラグの流出を防止するようにしてもよい。
【0054】
一方、赤潮発生海域が沿岸から離れた沖合の場合(例えば、沿岸から数km以上離れた沖合の場合)には、図1のように沿岸に高炉風砕スラグを設置する方法でもよいが、この方法の場合には、高炉風砕スラグの設置により高ケイ酸塩濃度化した海水が海流によって赤潮発生海域に安定的に流れ込まなければならなず、事前に海流などの調査が必要となる。したがって、赤潮発生海域が沿岸から離れた沖合の場合は、図2(a)〜(c)に示すように沖合の赤潮発生海域にブイや筏等の浮体Bを浮かべ、この浮体Bに高炉風砕スラグAを入れた通水性の袋又は容器を保持させるようにすることが好ましい。また、この場合にも袋又は容器は水深15m以内、望ましくは10m以内に設置することが好ましい。
【0055】
このような方法によれば、赤潮発生海域に対して高炉風砕スラグから直接ケイ酸塩イオンを供給することができ、赤潮発生海域の表層海水が容易に高ケイ酸塩濃度化し、珪藻類を効果的に増殖させることができる。また、この方法によれば浮体Bはアンカーで水底などに固定されるので、高炉風砕スラグの流出の恐れもない。
また、浮体Bとしては海面上に浮設されるもののほかに、海面下に浮設されるものでもよい。
【0056】
図2(a)は、海面に浮設されたブイB1を利用したもので、ブイB1を海底に係留するロープCに適当な間隔で高炉風砕スラグAを入れた通水性の袋又は容器を固定したものである。また、図2(b)は、海面に浮設された筏B2を利用したもので、筏B2を海底に係留するロープCに適当な間隔で高炉風砕スラグAを入れた通水性の袋又は容器を固定したものである。さらに、図2(c)は海面に浮設されたブイB1を海底に係留するロープCに適当な間隔で板状又は箱状などの支持基盤Dを取付け、この支持基盤Dに高炉風砕スラグAそのもの又はこれを入れた通水性の袋又は容器を載せたものである。
【0057】
高炉風砕スラグAを入れた通水性の袋又は容器を浮体Bに保持させる構造は図2の形態に限定されるものではなく、例えば、上記袋又は容器を適当な固定手段により浮体Bの下部に直接取り付けるようにしてもよい。
また、高炉風砕スラグを沿岸又は沖合に設置する場合においては、高炉風砕スラグを入れた通水性の袋又は容器を水底または陸上に支持基盤を持つ構造物(例えば、海洋構造物)に保持させること、例えば構造物から吊り下げるようにすることもできる。
【0058】
珪藻類の増殖に必要な海水中でのケイ酸塩イオンの濃度は10μmol/L以上とされているが、このようなケイ酸塩イオン濃度は本発明法により高炉風砕スラグを海中に設置すること、好ましくは水深15m以内(より好ましくは水深10m以内)の海中に設置することによって容易に達成される。これにより表層海水中に珪藻類(シャットネラなどの鞭毛藻類の競合種)が安定的に繁殖し、赤潮の原因となるシャットネラなどの鞭毛藻類の異常増殖が防止される。また、珪藻類の安定的な繁殖は、これを食料とする魚介類の増殖にも効果があり、水産資源の増加にも効果がある。また、高炉風砕スラグからのケイ酸塩イオンの溶出は長期間継続するため、珪藻類の増殖及びこれに伴う赤潮防止効果も長期間に亘って継続することになる。また、高炉風砕スラグは上述したような特有の性状、外観及び作用を有しているため、水底に敷設されたスラグが人や生物を傷つける恐れがほとんどなく、また、繊維状スラグが混在することによって波浪、潮流などによる流出が抑制されるとともに、水中生物(動植物)の着生基盤として特に有効に機能し且つ優れた水質浄化作用も得られる。
【0059】
本発明法に基づく赤潮防止法が適用される主たる海域(旧来の赤潮多発海域)は主として内海や湾などにおいて河川流入栄養塩などにより富栄養化した海域であり、したがって所謂“磯焼け”が生じるような海域とは対照をなすような海域である。
また、以上の実施形態では本発明を海水域に適用する場合について説明したが、赤潮は汽水域や淡水域でも発生するものであり、したがって、本発明に基づく赤潮防止方法はこれらの水域に対しても適用することができる。
【0060】
本発明の水中又は水浜の環境改善方法の具体的な実施形態としては、以上説明した形態、すなわち磯焼け海域の藻場造成法、磯焼け防止法、赤潮防止法以外にも、例えば、磯焼け以外の原因で海藻成育環境が衰退・消失した海域の環境改善法(修復)等などがある。このような環境改善法においても、高炉風砕スラグの敷設形態などは先に磯焼け海域の藻場造成法や磯焼け防止法に関して述べたものと同様である。
【0061】
次に、本発明の水中又は水浜の環境改善方法の他の形態について説明する。
この形態では、高炉風砕スラグを硫化水素の発生源となる水底に青潮防材として敷設し、硫化水素の発生(さらには、海水の富栄養化)とこれにより引き起こされる青潮の発生を抑制する。
本発明により敷設材を敷設する対象となる水底とは、硫化水素の発生源である又は発生源となるおそれのある水底であり、具体的には、(1)水底に形成された凹部、(2)底層水中で硫化水素が検出された水域又は底層水中の溶存酸素濃度が所定値以下の水域の水底、(3)底層水の流速が所定値以下の水域の水底、(4)水中に水温又は/及び塩分濃度による密度躍層が形成された水域の水底、などが対象となる。
本発明法が適用される水域としては、港湾を含む海、河川、河口、湖沼等のいずれでもよい。
【0062】
硫化水素の主要な発生源は水が停滞しやすく、且つ有機物が堆積し、酸素消費量が多いヘドロ状の水底部であり、特に土砂採取等によって水底が部分的に掘られ、比較的深さのある凹部が形成された水底部において硫化水素が発生しやすい。すなわち、このような凹部内では水が停滞する結果、特に夏期において著しい無酸素状態となり、有機物の腐敗やバクテリア(硫酸還元菌)の作用によって大量の硫化水素が発生し、硫化水素を含んだ大量の無酸素水塊が生じる。このように凹部内で硫化水素が大量発生すると、凹部内やその周囲の棲息生物が減少するだけでなく、硫化水素を含んだ上記水塊が周辺水域に流出し、所謂青潮の発生に至る。また、凹部以外の水底部であっても、水が停滞しやすく且つ有機物が堆積して酸素消費量が多いヘドロ状の水底部では、同様に硫化水素が発生して硫化水素を含んだ無酸素水塊が生じ、底棲生物のへい死を招いたり、無酸素水塊が周辺水域に流出して青潮を発生させたりする。したがって、このような硫化水素発生源となる有機物が堆積した水底部に高炉風砕スラグを敷設し、或いは同じく有機物が堆積した凹部内に当該凹部を埋めるようにして高炉風砕スラグを敷設することにより、硫化水素の発生とこれにより引き起こされる青潮の発生を抑えることができる。また、高炉風砕スラグは上述したような特有の性状、外観及び作用を有しているため、水底に敷設されたスラグが人や生物を傷つける恐れがほとんどなく、また、繊維状スラグが混在することによって波浪、潮流などによる流出が抑制されるとともに、水中生物(動植物)の着生基盤として特に有効に機能し且つ優れた水質浄化作用も得られる。
【0063】
高炉風砕スラグを敷設する対象となる水底の凹部とは、通常は土砂採取や浚渫等によって水底に人為的に形成された穴状または溝状の凹部であるが、これに限定されるものではなく、例えば、自然に形成された水底の凹部や、土砂採取や元々の地形により傾斜面や浅い凹部が形成されている水底にケーソン等を設置することで人工的に形成された凹部等も対象となる。一般に凹部が形成される水底は泥質又は砂質である。
なお、凹部の定義としては、水の停滞等を考慮した場合、一般には周囲の水底面よりも2m以上深くなっている水底部を凹部としてよい。また、場合によっては、周囲の水底面よりも1m以上深くなっている水底部、或いは0.5m以上深くなっている水底部を凹部としてよい。
【0064】
ここで、本発明法が適用される凹部の種類や規模には特別な制約はないが、典型的な形態として以下のようものがある。
(a) 自然に存在する水底の凹部:このような水底の凹部は比較的面積が大きい。一般にこの種のもので本発明法の対象となる凹部は、平面的でみて最も幅が狭い部分の幅が50m以上、深さが2m以上あるような規模の凹部である。
(b) 土砂採取や浚渫等によって水底に人為的に形成された凹部:このような水底の凹部は比較的面積が小さい。一般にこの種のもので本発明法の対象となる凹部は、平面的でみて最も幅が狭い部分の幅が10m以上、深さが5m以上あるような規模の凹部である。
(c) 水底にケーソン等の構造物を設置した場所において、この構造物と水底(例えば、自然に存在する水底の凹部や、土砂採取や元々の地形により傾斜面や浅い凹部が形成されている水底)とより結果的に形成された凹部:このような水底の凹部も比較的面積が小さい。一般にこの種のもので本発明法の対象となる凹部は、平面的でみて最も幅が狭い部分の幅が10m以上、深さが2m以上あるような規模の凹部である。
【0065】
高炉風砕スラグを水底の凹部内に敷設する場合、敷設した敷設材(高炉風砕スラグ)上面により形成される水底面は、その周囲の水底面と略同等かそれ以上の高さを有することが好ましい。また、少なくとも、敷設された敷設材により形成される水底面Aの平均水深d1と凹部周囲(凹部近傍の周囲)の水底面Bの平均水深d0との差[d1−d0]が2m以下、好ましくは1m以下、より好ましくは0.5m以下、特に好ましくは0.3m以下(但し、いずれも[d1−d0]がマイナス値の場合を含む)となるようにすることが特に望ましい。この差[d1−d0]が2m以下、好ましくは1m以下、より好ましくは0.5m以下、特に好ましくは0.3m以下であれば、凹部が十分に浅くなるため凹部内外での水の流出入が円滑に行われるようになり(すなわち、凹部内での水の停滞がなくなる)、夏期等に凹部内の水が無酸素状態になるような現象が適切に防止できる。
【0066】
ここで、敷設材上面により形成される水底面Aの平均水深d1とは、敷設材により形成される水底面Aに起伏や凹凸があるために水深にバラツキがある場合に、その水底面を平らに均した際の水深であり、また、凹部周囲(凹部近傍の周囲)の水底面Bの平均水深d0とは、凹部周囲の水底面Bに起伏や凹凸があるために水深にバラツキがある場合に、その水底面を平らに均した際の水深である。
本発明法は、上述のように水底の形態(凹部)に基づいて敷設材の敷設場所を選定する以外に、底層水中の硫化水素又は溶存酸素濃度を測定し、底層水中で硫化水素が検出された水域又は底層水中の溶存酸素濃度が所定値以下の水域の水底に高炉水砕スラグを敷設するようにしてもよい。
【0067】
ここで、底層水とは水底の近くに存在する水のことであり、一般には水の深さ方向で水底から2m以内、好ましくは1m以内の水であればよい。本発明法では、このような底層水で硫化水素が検出され、或いは測定された溶存酸素濃度が所定値以下である水域の水底に敷設材を敷設する。硫化水素の場合は、それが底層水から検出されれば、その水域の水底に敷設材を敷設する。また、溶存酸素濃度の場合は、一般に底層水の溶存酸素濃度が飽和溶存酸素濃度の10%以下であると硫酸還元菌の作用によって硫化水素が発生するおそれがあるため、溶存酸素濃度が飽和溶存酸素濃度の10%以下の水域の水底に敷設材を敷設することが好ましい。また、一般に底層水の溶存酸素濃度が飽和溶存酸素濃度の60%以下であると底棲生物の棲息に問題を生じるため、溶存酸素濃度が飽和溶存酸素濃度の60%以下の水域の水底に敷設材を敷設するようにしてもよい。
【0068】
また、本発明法では、底層水の流速を測定し、その流速が所定値以下である水域の水底に、高炉風砕スラグを敷設するようにしてもよい。底層水の流速が小さく、水の停滞が生じやすい水底が硫化水素の発生源となりやすいからである。なお、底層水とは先に述べた通り水底の近くに存在する水のことであり、一般には水の深さ方向で水底から2m以内、好ましくは1m以内の水であればよい。
一般に底層水の流速が20cm/秒以下の水域は底層水の溶存酸素濃度や硫化水素濃度が水底の影響を強く受けるため、そのような流速の水域の水底に敷設材を敷設することが好ましい。
【0069】
さらに、本発明法では、水中に水温や塩分濃度による密度躍層が形成された水域の水底に高炉風砕スラグを敷設するようにしてもよい。水中に密度躍層が形成されると、大気から水中に供給される酸素が底層水まで拡散しにくくなり、硫化水素が発生しやすくなる。
密度躍層が形成されたことは水中の塩分濃度及び/又は水温等を測定することにより判定することができ、密度躍層が形成されたと判定されたときは、その水域の水底に敷設材を敷設する。
【0070】
以上のように本発明法において、(a)底層水中で硫化水素が検出された水域又は底層水中の溶存酸素濃度が所定値以下の水域の水底、(b)底層水の流速が所定値以下の水域の水底、(c)水中に水温又は/及び塩分濃度による密度躍層が形成された水域の水底、のいずれかを敷設材の敷設場所とする場合は、例えば、閉鎖性の高い港や湾(例えば、リアス式海岸等にある湾)等を対象とすることができる。
【0071】
上述したような高炉風砕スラグの作用からして、敷設材としては高炉風砕スラグ100%が最も好ましいと言えるが、高炉風砕スラグとそれ以外の素材、例えば、高炉風砕スラグ以外の高炉系スラグ、製鋼スラグなどの高炉系スラグ以外のスラグ、スラグ以外の素材を併用してもよい。高炉風砕スラグ以外の鉄鋼製造プロセスで発生するスラグとしては、高炉系スラグである高炉水砕スラグ、高炉徐冷スラグ;予備処理、転炉、鋳造等の工程で発生する脱炭スラグ、脱燐スラグ、脱硫スラグ、脱珪スラグ、鋳造スラグ等の製鋼スラグ;鉱石還元スラグ;電気炉スラグ等を挙げることができるが、これらに限定されるものではなく、また2種以上のスラグを混合して用いることもできる。
【0072】
また、これらのスラグは、水和処理、炭酸化処理、エージング、水和硬化、炭酸化硬化等を経たものを用いてもよい。また、スラグ以外の素材としては、資源のリサイクルという観点からは浚渫土、浚渫砂、都市ゴミスラグ、廃コンクリート、モルタルや耐火物の廃材等を用いることができるが、特に浚渫土や浚渫砂は海域への親和性の面から好ましい。また、それ以外に例えば建設発生残土、フライアッシュ、天然砂、天然石等を用いてもよい。
また、都市ゴミスラグや廃コンクリート等は、水和処理、炭酸化処理、エージング、水和硬化、炭酸化硬化等を経たものを用いてもよい。
【0073】
敷設材として高炉風砕スラグとそれ以外の素材とからなるものを用いる場合、上述したような高炉風砕スラグによる作用を適切に得るために、水底部(凹部を含む)に敷設された敷設材の50mass%以上、好ましくは80mass%以上が高炉風砕スラグで構成されることが望ましい。また、その場合には高炉風砕スラグとそれ以外の素材が混合されるか、又は高炉風砕スラグが上層側、それ以外の素材が下層側になるようにして水底部に敷設されることが好ましい。
【0074】
また、上層を高炉風砕スラグを含む敷設材で構成し、下層をそれ以外の素材からなる敷設材で構成する場合、上述したような高炉風砕スラグによる作用を適切に得るために、上層中の高炉風砕スラグの含有率は60mass%以上、好ましくは80mass%以上とすることが望ましい。
また、このように水底部の敷設材の上層を高炉風砕スラグ又は高炉風砕スラグを60mass%以上(好ましくは80mass%以上)含む敷設材で構成する場合、この上層の厚みは0.1m以上、好ましくは0.5m以上とすることが望ましい。この上層の厚みが0.1m未満では、その下方の硫化水素を含んだ水が簡単に通過してしまい、上述したような作用が十分に得られなくなる恐れがある。また、厚みが0.1m未満では施工の際の厚み管理自体も難しくなる。また、特にこの上層の厚みが1m以上あれば、当該上層部は底泥と混合しなくなるため、スラグが固結するようなことがなく、このため生物の棲息環境として好適な砂質水底を提供できる。
【0075】
なお、高炉風砕スラグとともに他のスラグを使用する場合において、脱珪スラグ、脱炭スラグ等の製鋼スラグを用いた場合、これらのスラグは酸化鉄の含有量が高いため高炉風砕スラグ等に較べて硫化水素や燐を固定化する作用が大きいという特徴がある。このため、例えば凹部内の敷設材の下層を製鋼スラグ又は製鋼スラグを含む敷設材で構成することにより、底泥中の硫化水素や燐を効果的に固定することができる。下層を製鋼スラグを含む敷設材で構成する場合、下層中の製鋼スラグの含有率は60mass%以上、好ましくは80mass%以上とすることが望ましい。下層中の製鋼スラグの含有率が60mass%未満では、上述した製鋼スラグに特有の作用が十分に得られない。
【0076】
また、このように敷設された敷設材の下層を製鋼スラグ又は製鋼スラグを60mass%以上(好ましくは80mass%以上)含む敷設材で構成する場合、この下層の厚みは0.1m以上、好ましくは0.3m以上とすることが望ましい。この下層の厚みが0.1m未満では、製鋼スラグによる泥質中の硫化水素や燐の固定が十分に行われる前に、硫化水素や燐を含んだ水がこの下層を通過してしまい、硫化水素や燐の固定化作用が十分に得られなくなるおそれがある。また、厚みが0.1m未満では、施工の際の厚み管理自体も難しくなる。
【0077】
以上述べたような各スラグの特性からして、凹部内やその他の水底部への敷設材の敷設形態としては、例えば、以下のようなものが考えられる。
▲1▼ 敷設材の全部:高炉風砕スラグ
▲2▼ 敷設材の上層:高炉風砕スラグ、敷設材の下層:高炉風砕スラグ以外のスラグ及び/又はスラグ以外の素材
▲3▼ 敷設材の上層:高炉風砕スラグ、敷設材の下層:製鋼スラグ
▲4▼ 敷設材の上層:高炉風砕スラグ、敷設材の中層:スラグ以外の素材又はスラグとスラグ以外の素材との混合物、敷設材の下層:製鋼スラグ
【0078】
図3(a)〜(d)は、それぞれ水底の凹部30に敷設材31(高炉風砕スラグ又は高炉風砕スラグを含む敷設材)を敷設した状態を示しており、図3(a)に示すように、敷設材31はこれにより形成される水底面Aの平均水深d1と凹部周囲の水底面Bの平均水深d0との差[d1−d0]が2m以下、好ましくは1m以下となるように(特に好ましくは、敷設材31により形成される水底面Aが凹部周囲の水底面Bと略同等かそれ以上の高さとなるように)敷設される。
【0079】
図3(a)は、高炉風砕スラグ100%の敷設材31又は高炉風砕スラグとそれ以外の素材(例えば、廃コンクリート)とを混合した敷設材31を凹部30内に敷設した実施形態を示している。また、図3(b)は、敷設材31として高炉風砕スラグとそれ以外の素材を用いたもので、高炉風砕スラグ以外の素材311(例えば、廃コンクリート)を下層側に、高炉風砕スラグ310を上層側にそれぞれ敷設した実施形態を示している。また、図3(c)は、敷設材31として高炉風砕スラグ310aとその他のスラグ310b(例えば、製鋼スラグ)を用いたもので、高炉風砕スラグ310aを上層側に、それ以外のスラグ310bを下層側にそれぞれ敷設した実施形態を示している。さらに、図3(d)は、浅い凹部が形成されている水底にケーソン32を設置することで人工的に形成された凹部30内に敷設材31(例えば、上記(a)〜(c)のような形態の敷設材)を敷設した実施形態を示している。
【0080】
また、凹部以外の水底に敷設材を敷設する場合も、敷設材中の高炉風砕スラグの含有率は60mass%以上、好ましくは80mass%以上とすることが望ましく、特に高炉風砕スラグのみからなる敷設材が最も好ましい。高炉風砕スラグ以外の敷設材としては、上述した各種スラグや都市ゴミスラグ、廃コンクリート等を用いることができる。また、敷設材の厚みは、上述したと同様の理由から0.1m以上、好ましくは0.5m以上とすることが望ましい。
【0081】
以上のようにして水底に敷設された高炉風砕スラグは、以下のような機構により青潮の発生原因である硫化水素の発生や水の富栄養化を抑制する。高炉風砕スラグは多量のCaOを含んでいるが、この高炉風砕スラグ中に含まれるCaOがCaイオンとして水中に溶出し、このようなCaイオンの溶出によって水中のpHが適度に高められ、この結果、硫化水素を発生させる硫酸還元菌の活動が抑制される。また、高炉風砕スラグに含まれるCaO、Fe2O3によって水中の硫化水素を固定化することにより、水中の硫化水素の低減化が図られる。さらに、高炉風砕スラグ中に含まれるCaOによって水中の燐が吸着・固定され、青潮発生等の要因の一つである水の富栄養化が抑制される。このため高炉風砕スラグを水底、特に水の停滞を生じ易い水底の凹部に敷設した場合、凹部内の底泥からの硫化水素の発生が抑制されるとともに、敷設材上部層の間隙水中での硫化水素の発生も抑制され、さらに、スラグ粒子への硫化水素や燐の固定化作用による水質浄化作用も得られる。また、敷設材の上部層は硫化水素が少なく溶存酸素の多い状態となるため着生する生物にとって棲息しやすい環境となり、生物の着生基盤としても高い機能を有することになる。
【0082】
また、高炉風砕スラグは上述したようにガラス質であることから、製鋼スラグなどに較べて含有成分の溶出や水中又は底泥中の成分との反応が非常にゆっくりと進行する。このため水中のpHを急激に上昇させたり、底質・水質の改善効果が短期間で消失することがない。また、水底に敷設された高炉風砕スラグはケイ酸塩イオンの放出源としても機能し、先に述べたような機構により水中にケイ酸塩イオンを溶出して珪藻類の増殖に寄与する。
【0083】
以上述べた本発明の各実施形態は、海岸に面した所謂浅場の造成又は修復を兼ねて行ってもよい。すなわち、主に海岸に面した海域において海藻類や魚介類の成育・棲息に適した所謂浅場が海砂の流失や浚渫などにより衰退・消失する場合があり、このような海底部を本来の浅場としての環境に造成又は修復することを兼ねて、その海底部に覆砂材等として高炉風砕スラグを敷設することができる。このようにして敷設された高炉風砕スラグは、生物の棲息に適した底質を提供する。
またこの場合、海流等による高炉風砕スラグの流失を防止するため、敷設された高炉風砕スラグの周囲に潜堤を設置することが好ましい。また、高炉風砕スラグの敷設領域には人工の海藻着生基盤や漁礁を設置し、海藻類や魚介類の成育・棲息環境を整えることが好ましい。
【0084】
高炉風砕スラグの流失を防止するための潜堤は任意の材料で構成することができるが、塊状スラグ(鉄鋼製造プロセスで発生した塊状スラグ)を積み上げて潜堤を構築することにより、例えばコンクリート製品を用いたり、コンクリート構造物を構築したりすることなく、簡易且つ安価に潜堤を形成することができる。高炉風砕スラグが元々粒状の形態であるのに対して、製鋼スラグ等は塊状のものが得られやすく且つ比重も大きいため、これを所定の高さに積み上げることにより堅牢な潜堤を構築することができ、しかもスラグが塊状であるため海流等により消失する恐れもない。また、先に述べたように製鋼スラグには底質や水質を浄化する作用もあるため、水中の環境改善にも寄与できるという利点がある。
【0085】
使用する塊状スラグとしては、高炉で発生する高炉徐冷スラグ(但し、この高炉徐冷スラグは水中でSが溶出しないようにするため、十分にエージング処理したものが好ましい)、予備処理、転炉、鋳造等の工程で発生する脱炭スラグ、脱燐スラグ、脱硫スラグ、脱珪スラグ、鋳造スラグ等の製鋼スラグ、鉱石還元スラグ、電気炉スラグ等が挙げられ、これらの2種以上を用いてもよい。またこれらのスラグのなかでも、高比重であるという点では脱炭スラグ、鋳造スラグが特に好ましい。またスラグの大きさとしては、一般に塊径が30mm程度以上のものが好ましい。
【0086】
また、上記潜堤は後述するようなスラグを主原料とするブロック、すなわち、鉄鋼製造プロセスで発生したスラグを主原料とする粉粒状原料を炭酸反応で生成させたCaCO3を主たるバインダーとして固結させて得られたブロック、鉄鋼製造プロセスで発生したスラグを主原料とする水和硬化体ブロックなどで構成することもできる。これらのブロックを適当に積み上げることにより、堅牢な潜堤を構築することができる。これらと上記塊状スラグを併用してもよい。
高炉風砕スラグの敷設領域に設置される人工の海藻着生基盤や漁礁は、自然石、ブロック、鋼製構造体等の任意のもので構成することができるが、特に、上述したような鉄鋼製造プロセスで発生した塊状スラグ、鉄鋼製造プロセスで発生したスラグ(鉄鋼スラグ)を主原料とする粉粒状の原料を炭酸固化させて得られたブロック、或いは同じく鉄鋼スラグを主原料とする水和硬化体ブロックなどを用いるのが好ましい。
【0087】
これらのうち鉄鋼製造プロセスで発生した塊状スラグについては、先に述べた通りである。
また、主原料である鉄鋼スラグを炭酸固化させて得られたブロックとしては、例えば特許第3175694号で提案されている、鉄鋼スラグを主原料とする粉粒状原料を炭酸化反応で生成させたCaCO3(場合によっては、さらにMgCO3)を主たるバインダーとして固結させ、塊状させたものを用いることができる。また、鉄鋼スラグとしては、先に挙げたような各種スラグ、すなわち高炉で発生する高炉水砕スラグ、高炉徐冷スラグ、高炉風砕スラグ;予備処理、転炉、鋳造等の工程で発生する脱炭スラグ、脱燐スラグ、脱硫スラグ、脱珪スラグ、鋳造スラグ等の製鋼スラグ;鉱石還元スラグ;電気炉スラグ等を用いることができる。
【0088】
このような鉄鋼スラグを炭酸固化させて得られたブロック(石材)は、▲1▼スラグ中に含まれるCaO(またはCaOから生成したCa(OH)2)の大部分がCaCO3に変化するため、CaOによる海水のpH上昇を防止できる、▲2▼スラグに適量の鉄分(特に、金属鉄、含金属鉄材)が含まれることにより、この鉄分が海水中に溶出することで海水中に栄養塩として鉄分が補給され、これが海藻類の育成に有効に作用する、▲3▼スラグを炭酸固化して得られたブロックは全体(表面及び内部)がポーラスな性状を有しており、このため石材表面に海藻類が付着し易く、しかも石材内部もポーラス状であるため、石材中に含まれている海藻類の成育促進に有効な成分(例えば、ケイ酸塩イオンや鉄分)が海水中に溶出しやすい、などにより海藻の着生基盤や漁礁として有効に機能する。また、主原料であるスラグの一部又は全部として高炉系スラグを用いることにより、上述したようなケイ酸塩イオンの溶出を特に促進することができるため、海藻成育環境の改善や磯焼け防止、赤潮防止などに特に有効である。このためブロックの全原料又は主原料を高炉水砕スラグや高炉風砕スラグなどの高炉系スラグとすることが最も好ましい。
【0089】
また、鉄鋼スラグを主原料とする水和硬化ブロックは、鉄鋼スラグを主原料(骨材及び/又は結合材)として含む原料を水和硬化させて得られるものであり、鉄鋼スラグとしては、先に挙げたような各種スラグ、すなわち高炉で発生する高炉水砕スラグ、高炉徐冷スラグ、高炉風砕スラグ;予備処理、転炉、鋳造等の工程で発生する脱炭スラグ、脱燐スラグ、脱硫スラグ、脱珪スラグ、鋳造スラグ等の製鋼スラグ;鉱石還元スラグ;電気炉スラグ等を用いることができる。水和硬化によるブロックの製造では、原料を水と混練後、型枠に入れ、通常1〜4週間養生することによってブロックが製造される。
【0090】
また、主原料(骨材及び/又は結合材)であるスラグの一部又は全部として高炉系スラグを用いることにより、上述したようなケイ酸塩イオンの溶出を特に促進することができるため、海藻成育環境の改善や磯焼け防止、赤潮防止などに特に有効である。このためブロックの全原料又は主原料を高炉水砕スラグや高炉風砕スラグなどの高炉系スラグとすることが最も好ましい。
なお、ブロックに用いる結合材としては、上述した高炉水砕スラグの微粉末などの他にシリカ含有物質(例えば、粘土、フライアッシュ、ケイ砂、シリカゲル、シリカシューム)、セメント、消石灰、NaOHなどを適宜組み合わせて使用することもできる。
【0091】
以上のようなブロックを高炉風砕スラグの敷設領域に設置する場合には、個々のブロックを高炉風砕スラグ層上に設置してもよいし、複数のブロックを積み上げ或いは組み付けてもよい。特に、ブロックに漁礁としての機能を持たせる場合には、複数のブロックを積み上げ或いは組み付けることにより、複数のブロック間に魚介類が棲息できるような空間部を形成することが好ましい。
また、塊状スラグを高炉風砕スラグの敷設領域に設置する場合には、例えばスラグを山状に積み上げたり、或いはスラグを金網籠など入れて設置するなど、任意の設置形態を採ることができる。
【0092】
以上述べたような高炉風砕スラグを敷設材とする浅場の造成又は修復において、高炉風砕スラグの流出防止用の潜堤として塊状スラグ及び/又はスラグを主原料とするブロックを用い、且つ高炉風砕スラグの敷設領域に設置する海藻着生基盤や漁礁としても、塊状スラグ及び/又はスラグを主原料とするブロックを用いることにより、先に述べたようなスラグによる水中の環境改善作用(すなわち、珪藻類の増殖による海藻類成育環境の改善作用や磯焼け・赤潮の発生抑制作用、硫化水素の発生防止による青潮の発生抑制作用、底質・水質の浄化作用など)が最も効果的に得られ、しかも浅場・干潟・アマモ場などの造成又は修復用の資材として天然資源を用いることなく、100%リサイクル材(鉄鋼スラグ)を用いることができ、リサイクル材の有効利用、施工の低コスト化、天然資源の利用による環境破壊の防止などの面からも極めて有利である。
【0093】
図4は、高炉風砕スラグを敷設材とする浅場の造成又は修復の一実施形態を示したもので、33は水底に適当な厚さに敷設された高炉風砕スラグ、34は敷設された高炉風砕スラグの流失を防止するために高炉風砕スラグ33の周囲に設置された潜堤であり、この潜堤34は塊状スラグ(製鋼スラグ)を積み上げることにより構築されている。さらに、35は敷設された高炉風砕スラグ層上に積み上げられることにより海藻着生基盤及び/又は漁礁を構成するブロックであり、このブロック35としては、鉄鋼スラグを主原料とする粉粒状原料を炭酸固化させて得られたブロック、或いは同じく鉄鋼スラグを主原料とする水和硬化体ブロックなどを用いる。
【0094】
このように高炉風砕スラグ33を海底に敷設するとともに、その流失防止用の潜堤34として塊状スラグを用い、さらに高炉風砕スラグ33の敷設領域に鉄鋼スラグで構成されたブロック35を海藻着生基盤及び/又は漁礁として設置することにより、海藻類や魚介類の成育・棲息環境に最も適した浅場が造成又は修復されることになる。なお、以上述べた浅場の造成又は修復においても、高炉風砕スラグの敷設形態などは先に磯焼け海域の藻場造成法や磯焼け防止法に関して述べたものと同様である。
【0095】
次に、本発明で使用する特に好ましい高炉風砕スラグについて説明する。
高炉風砕スラグを海底などに沈設すると、沈設状況や海域の状況によって沈設初期に表面からカルシウムイオンが溶解し、これによりスラグ粒子周囲の水のpHが高くなる結果、スラグのケイ酸塩ネットワークが腐食切断され、さらに周囲の水のpHが上昇するとともに、スラグ中のS(硫黄)が水中に溶出する場合がある。このようにスラグ沈設直後にスラグ粒子周囲の水のpHが高くなったり、スラグからSが溶出したりすることは、海底や水中に棲息する生物にとって望ましいことではない。この現象はスラグ沈設から数週間で解消し、その後の高炉水砕スラグはケイ酸塩イオンの供給や硫化水素の発生抑制等を通じた環境改善効果を発揮する。また、pHの上昇中はケイ酸塩イオンがカルシウムイオンと反応して水和物を形成するため、水へのケイ酸塩イオン供給効果も低下する。また、スラグ敷設厚みが厚くなると、pH上昇により溶解したケイ酸塩イオン、アルミネートイオン、カルシウムイオンの濃度が高まり、スラグ粒子どうしが固結することもある。このようなスラグの固結が生じても問題のない環境もあるが、海底に敷設した高炉風砕スラグ内に多数の底棲生物が棲息する環境を作ることは好ましいことであり、この意味で沈設したスラグ粒子どうしが固結しないことが好ましい。
【0096】
以上のような沈設初期におけるスラグ粒子からのS溶出やスラグ粒子周囲の水のpH上昇といった問題は、予め高炉風砕スラグに対して酸素含有ガス(例えば、空気)の吹き込み又は酸素含有ガスと水蒸気の吹き込みによるエージング処理を施しておくことにより適切に回避することができる。
すなわち、高炉風砕スラグに酸素含有ガスの吹き込み又は酸素含有ガスと水蒸気の吹き込みによるエージング処理を施することにより、高炉風砕スラグのスラグ粒子表面のSが酸化(S→SO4 2−)され、さらには水蒸気の吹き込みにより生成した水分によりSが洗い流される。そして、エージング処理によりスラグ粒子表面には水和物皮膜が生成され、この水和物皮膜がSの酸化物を安定に取り込み、且つこの水和物皮膜は中性化されることから、水中への沈設初期におけるスラグ粒子周囲の水のpH上昇が抑えられるととともに、スラグからのSの溶出が抑制され或いはSの溶出速度を非常に小さくすることができる。
【0097】
エージング処理していない高炉風砕スラグの場合には、沈設初期においてスラグ周囲の水が高pH化し、このような高pH下ではカルシウムイオンとの反応によるC−S−Hの生成によってケイ酸塩イオンが固定化されてしまうため、ある期間が経過し、水のpHが低下してC−S−Hが生成しない環境になってはじめてケイ酸塩イオンの周囲への溶出が本格化する。これに対してエージング処理した高炉風砕スラグは、沈設初期において周囲の水を高pH化させないため、沈設初期の段階から水中へのケイ酸塩イオンの供給が始まり、沈設初期においてケイ酸塩イオンの供給能力が低下するといった問題を生じない。
【0098】
したがって、高炉風砕スラグの沈設初期においても、底棲生物などの棲息に適した環境が形成されるとともに、高炉風砕スラグの沈設初期からケイ酸塩イオンが水中に供給され、先に述べたようなケイ酸塩イオンによる水中の環境改善効果が表れる。また、スラグ粒子表面に形成された中性化した水和物皮膜によって水中でのスラグ粒子どうしの固結も生じにくく、この面でも底棲生物が棲息しやすい環境を形成できる。さらに、高炉風砕スラグの輸送や貯蔵中の固結による塊状化もなくなり、所望の粒度の高炉風砕スラグを沈設できるなど、スラグの品質管理も容易となる。エージング処理により水和物皮膜が形成された高炉風砕スラグは、スラグからのCaイオンの過剰な溶出は抑えられるが、それでも微量のCaイオンが水中に溶出する。そして、このような微量のCaイオンの溶出によって水中のpHが適度に高められ、この結果、硫化水素を発生させる硫酸還元菌の活動が抑制される。
【0099】
次に、高炉風砕スラグのエージング処理の具体的な方法について説明する。
高炉風砕スラグのエージング処理は、高炉風砕スラグの堆積物又は充填層に対して所定の時間、酸素含有ガス又は酸素含有ガスと水蒸気を吹き込むことにより行う。ここで、上記酸素含有ガスとしては一般には空気が用いられるが、これに限定されるものではない。特に、空気に酸素を富化したガス(酸素富化空気)を用いることにより処理効率を高めることができる。なお、以下の説明では酸素含有ガスとして“空気”を用いる場合を例にエージング処理の好ましい形態を示す。
【0100】
例えば、空気の吹き込みによりエージング処理を行う場合、例えば、露天にて高炉風砕スラグの堆積物の下部から空気の吹き込みを行うか、或いは高炉風砕スラグを容器内に充填し、このスラグが充填された容器内を閉鎖空間にしてスラグの充填層の下部から空気の吹き込みを行う。空気の吹き込みは連続的又は間欠的に1日(24時間)以上、好ましくは4日以上、特に好ましくは1週間以上行う。空気の吹き込みを間欠的に行う場合、例えば、空気の連続吹き込み:数時間〜数十時間、空気吹き込み休止:数時間〜数十時間を交互に行う。このように空気の吹き込みを間欠的に行うことにより、少ない吹き込み空気量により低コストでエージング処理を行うことができる。また、スラグからのSの溶出速度が小さいため、間欠的な吹き込みによって空気の供給を一時的に停止しても、次に空気を吹き込んだ時点でSが酸化されるので効率的である。
【0101】
また、空気と水蒸気の吹き込みによりエージング処理を行う場合、例えば、露天にて高炉風砕スラグの堆積物の下部から空気と水蒸気の吹き込みを行うか、或いは高炉風砕スラグを容器内に充填し、このスラグが充填された容器内を閉鎖空間にしてスラグの充填層の下部から空気と水蒸気の吹き込みを行う。空気と水蒸気の吹き込みは連続的又は間欠的に1日(24時間)以上、好ましくは2日(48時間)以上、特に好ましくは1週間以上行う。空気や水蒸気の吹き込みを間欠的に行う場合、例えば、空気又は水蒸気の連続吹き込み:数時間〜数十時間、空気又は水蒸気吹き込み休止:数時間〜数十時間を交互に行う。空気とともに水蒸気を吹き込むことにより、エージングの効果をより高めることができる。これは、水蒸気によってSが溶出するための反応速度と水和物生成の反応速度が高まるためである。
【0102】
空気の吹き込みによりエージング処理を行う場合、空気の吹き込み量は、100〜5000NL/slag−ton・hr程度とすることが好ましい。空気の吹き込み量が100NL/slag−ton・hr未満ではスラグ層内を十分な酸化雰囲気とすることができず、酸化されないSが残留してしまう。一方、空気の吹き込み量が5000NL/slag−ton・hrを超えると効果が飽和し、却って経済性を損う。
また、空気と水蒸気の吹き込みによりエージング処理を行う場合、空気及び水蒸気の吹き込み量は、空気:100〜5000NL/slag−ton・hr、水蒸気:1〜20kg/slag−ton・hr程度とすることが好ましい。このうち空気の吹き込み量の理由は先に述べた通りである。また、水蒸気の吹き込み量が1kg/slag−ton・hr未満では、スラグ層が十分に加温されないため水蒸気を吹き込むことによる効果が十分に得られない。一方、水蒸気の吹き込み量が20kg/slag−ton・hrを超えると効果が飽和し、却って経済性を損う。
【0103】
高炉風砕スラグの堆積物の下部から空気又は空気と水蒸気の吹き込みを行う場合、例えば、スラグ堆積物の下部に穴あきホースを敷設し、この穴あきホースからスラグ堆積物内に空気又は空気と水蒸気を吹き込む等の方法が採られる。また、高炉風砕スラグの堆積物や容器内のスラグ充填層などに空気と水蒸気を吹き込む場合、空気と水蒸気は混合した状態で共通の吹き込み手段からで吹き込んでもよいし、別個の吹き込み手段で吹き込んでもよい。また、空気と水蒸気は常に同時期に吹き込む必要はなく、例えば、空気の吹き込みを連続して実施している期間の一部において蒸気の吹き込みを連続的又は間欠的に実施してもよい。
【0104】
次に、高炉風砕スラグの製造方法について説明する。
高炉風砕スラグは、溶融状態の高炉スラグに高圧空気や高圧ミスト等を吹き付けして粒状化・急冷することにより製造される。本発明で使用される高炉風砕スラグの製造方法に特に特別な制限はなく、従来公知の任意の方法で得られた高炉風砕スラグを用いることができるが、特に形状性に優れているという点で、以下のような製造方法で得られた高炉風砕スラグが好ましい。すなわち、この製造方法は、溶融状態の高炉スラグにガス流を吹き付けて粒状化し、その粒状化されたスラグを冷却器に導き、この冷却器内で前記粒状化されたスラグを旋回させながら下方に移動させつつ、前記冷却器内に霧状または蒸気状の水を供給して前記粒状化されたスラグを冷却し、前記冷却器の底部から高炉風砕スラグとして排出・回収するものである。
【0105】
この製造方法によれば、最初に水を用いずガス流により溶融状態の高炉スラグを粒状化するので、スラグ形状を良好に保つことができ、その後、冷却器で粒状化後のスラグを旋回させ、かつ霧状または蒸気状の水を供給して粒状化されたスラグを冷却するので、風砕スラグの融着が防止され、このため溶融状態のスラグを高速で吹き飛ばすことが可能となり、コンパクトな装置により細粒で形状性の良い高炉風砕スラグを得ることができる。
【0106】
以下、上記製造方法の一実施形態について具体的に説明する。
図5は、上記製造方法を実施するための設備の一例を示す断面図である。この高炉風砕スラグ(以下、単に「風砕スラグ」という)の製造設備は、容器20から注入された溶融状態のスラグL(以下、溶融スラグという)を一旦貯留し、その流出口1aから溶融スラグを流下させるタンディッシュ1と、このタンディッシュ1から流下した溶融スラグLに圧力ガス、典型的には圧力空気を吹き付けるノズル2と、圧力ガスが吹き付けられることにより風砕されて粒状化したスラグS(風砕スラグ)を冷却するとともに固気分離のためのコーン形状を有する冷却器3とを備えている。
【0107】
前記冷却器3は、コーン型を有する本体部3aと、この本体部3aの上部に設けられた風砕スラグSを導入する導入部3bと、本体部3aの底部に設けられた筒状をなす排出部3cとを有している。冷却器3の導入部3bには、水を噴霧する噴霧ノズル4が複数設置されている。また、本体部3aの側壁には水およびガスの混合体を噴霧する水/ガス噴霧ノズル5が複数設置されている。そして、導入部3bから圧力ガスのガス流とともに本体部3aに達した風砕スラグSはその中で旋回しながら落下可能となっている。
また、冷却器3内には、その中で生じた高温水蒸気またはその他の高温ガスを排出するための排気管6が冷却器3内の下部中央から垂直上方にその外側まで延出するように挿入されている。
【0108】
前記冷却器3の下方には冷却器3と離隔した位置に、風砕スラグSを回収するとともに回収した風砕スラグSを二次冷却する回収容器7が設けられている。この回収容器7の風砕スラグ入口部には、開閉扉8が設けられており、また回収容器7の側面下部には風砕スラグ排出用の開閉ゲート9が設けられている。また、回収容器7の上面には、回収容器7内で発生した高温水蒸気およびその他の高温ガスを排出する排気管10が接続されている。この回収容器7の底部の全面には多数の孔が設けられており、これらの孔には回収容器7内の風砕スラグSを冷却するためのガス、例えば空気を吐出するガス吐出配管11が接続されている。また、回収容器7には開閉ゲート9から風砕スラグSを掻き出すための掻き出し棒13が備え付けられている。冷却器3から排出された風砕スラグSはベルトコンベア14により回収容器7の上方に搬送され、その上部に設けられた装入口から回収容器7の中に装入される。なお、符号15は保温カバーである。
前記排気管6および10は熱回収設備12に接続されており、冷却器3および回収容器7から排出された高温水蒸気およびその他の高温ガスが熱源として回収され、熱が取り出されるようになっている。
【0109】
このように構成される風砕スラグの製造設備においては、まず、容器20からタンディッシュ1に溶融スラグLを注入し、タンディッシュ1に貯留された溶融スラグSをその流出口1aから流下させ、流下した溶融スラグLにノズル2から圧力ガス、典型的には圧力空気を吹き付け、粒状化した風砕スラグとするとともに、冷却器3に導入する。
冷却器3の導入部3bにおいては、風砕スラグSに噴霧ノズル4から水を噴霧する。これにより風砕スラグは1000〜1200℃程度に冷却される。冷却器3の導入部3bから本体3aに入った風砕スラグは、水/ガス噴霧ノズル5から噴霧された水およびガスの混合体が供給されながら、ノズル2からのガス流や水/ガス噴霧ノズル5からの噴出流等によりコーン型の本体3aの内壁に沿ってサイクロン状に旋回しつつ落下し、排出部3cから排出され、ベルトコンベア14により回収容器7に搬送される。この場合に風砕スラグは、水/ガス噴霧ノズル5から噴霧された水およびガスの混合体により冷却されるとともにサイクロン状に旋回するため、冷却器3の内壁に内で風砕スラグが融着することが回避される。
【0110】
この場合に、冷却器3から排出される風砕スラグの温度は900℃以下が好ましい。900℃以下であれば回収容器7内での風砕スラグの融着が防止され、所望の細粒を得ることができる。その際の温度は低くてもよいが、あまり低すぎると熱回収の効率が低下するため、冷却器3から排出される風砕スラグの温度は700〜900℃の範囲が好ましい。一方、冷却器3内で発生した高温水蒸気およびその他の高温ガス(高温空気等)は排気管6を通って熱回収設備12に導かれ、有効利用が図られる。
回収容器7に所定量の風砕スラグSが貯留された段階で、開閉扉8を閉め、回収容器7内で発生した高温水蒸気およびその他の高温ガス(高温空気等)を配管10から熱回収設備12へ導く。そして、回収容器7内の風砕スラグSをガス配管11から吐出したガスにより輸送可能な温度まで冷却した後、掻き出し棒13により開閉ゲート9を開にした状態で回収容器7から排出し、適宜の手段で輸送する。
【0111】
この実施形態の風砕スラグの製造方法によれば、最初に水を用いずガス流により溶融スラグを風砕して粒状化するので、風砕スラグは角張った形状とならず、ほぼ球径の形状性の良好な風砕スラグとすることができ、その後、冷却器3で粒状化後のスラグを旋回させ、かつ水および気体を噴霧して風砕スラグを冷却するので、冷却中に風砕スラグの融着が生じず、そのため溶融スラグを高速で吹き飛ばすことができる。したがって、コンパクトであるにもかかわらず細粒の風砕スラグを得ることができる。
また、冷却器3内および回収容器7内で生成した高温水蒸気およびその他の高温ガスを熱源として直接回収するので効率良く熱回収を行うことができる。また、冷却器3から排出される風砕スラグSの温度を700〜900℃とすることにより、スラグ粒子の融着が生じない範囲で高効率で熱回収を行うことができる。なお、上記設備においては、冷却器3から排出された風砕スラグSをベルトコンベア14により回収容器7に搬送し、そこで熱回収用の高温水蒸気等の供給・排気および二次冷却を行うようにしたが、冷却器3から回収容器7に直接に風砕スラグSを落下させるようにしてもよい。
【0112】
[高炉風砕スラグの製造例]
図5に示す設備により、高炉風砕スラグを製造した。タンディッシュ1からの溶融スラグの流下速度を0.4t/minとし、ノズルから240Nm3/minの速度で圧力空気を流下している溶融スラグ(高炉スラグ)に吹き付けた。冷却器3として高さ9m、最大直径3mのものを用い、噴霧ノズル4から水を噴霧して本体部3aの入口部での風砕スラグ温度を1150℃とした。また、水/ガス噴霧ノズル5から水およびガスの混合体を噴霧することにより、冷却器3の出口では風砕スラグの温度が850℃であった。また、排気管6から排気される高温水蒸気および高温空気の温度は約400℃であった。回収容器7では、空気を100Nm3/minの流量で回収された風砕スラグSに供給して風砕スラグSを約200℃まで冷却し開閉ゲート9から排出した。このとき排気管10から排出される高温水蒸気および高温空気の温度は200〜700℃であった。得られた風砕スラグは、平均粒径が0.5〜1.5mmの細粒であり、粒子形状はほぼ球形であった。
【0113】
【実施例】
[実施例1]
・発明例(1)
図6に示すように磯焼けした岩礁性の海底の凹部に高炉風砕スラグを20cm厚さで10m×10mの範囲に設置した。その後、この付近の海底部での珪藻類及び大型海藻類の着生の調査を継続して行った。その結果、スラグ設置1週後には、スラグ設置場所近傍の岩礁に付着珪藻が観察され、スラグ設置1ヶ月後にはスラグ設置場所から海流の下流側30mまで付着珪藻が観察された。また、大型の海藻類は、スラグ設置1ヶ月後にスラグ設置場所の近傍に観察され、スラグ設置6ヶ月後には海流の下流側25mの範囲で観察された。また、長期の観察では、5年経過した後も6ヶ月後と同様に珪藻類と大型の海藻類が観察された。特に大型の海藻類はその種類も増加した。
【0114】
・発明例(2)
砂質の海底で、その周囲20mの岩礁性海底部が磯焼け状態となっている海域において、図7示すように砂質部に高炉風砕スラグを50cmの厚さで30m×30mの範囲に設置した。さらに、その上に製鋼スラグ硬化体及び製鋼スラグを設置し、人工の岩礁を作った。その後、この付近の海底部での付着珪藻及び大型海藻類の着生の調査を継続して行った。その結果、スラグ設置1週間後には、スラグ設置場所の人工岩礁に付着珪藻が観察され、スラグ設置1ヶ月後にはスラグ設置場所から20m離れた岩礁においても付着珪藻が観察された。また、大型の海藻類については、スラグ設置1ヶ月後にスラグ設置場所の人工岩礁に観察され、スラグ設置6ヶ月後には設置場所から20m離れた岩礁においても観察された。長期の観察では、5年経過した後も6ヶ月後と同様に人工岩礁と天然岩礁の双方に珪藻類と大型海藻類が観察された。特に大型の海藻類はその種類も増加した。
【0115】
[実施例2]
・発明例(1)
沿岸から沖合500m〜1kmの赤潮多発海域(湾内)において、海岸近くの海底に高炉風砕スラグを略30cmの厚さに敷設した。その敷設範囲は海岸線から沖合に40m(水深2〜7m)までの範囲であって、海岸線の総延長200mの範囲とした。
高炉風砕スラグの設置後(設置時期は夏期)、その設置場所と旧来の赤潮発生ポイント(海域)の表層海水中のケイ酸塩濃度と珪藻量とを継続的に調査した。その結果を表1に示す。これによれば、高炉風砕スラグの設置2週間後には、その設置場所と旧来の赤潮発生ポイントでの表層海水中のケイ酸塩濃度が増加しており、元々ケイ酸塩濃度の低かった赤潮発生ポイントでも珪藻量が増加していた。また、高炉風砕スラグの設置後3年間調査を継続したが、この間赤潮の発生は全く認められず、また高炉風砕スラグの設置場所では海藻や魚介類も多数観察された。
【0116】
【表1】
【0117】
・発明例(2)
沿岸から沖合5kmの水深約40mの赤潮多発海域(内海)にブイを浮かべ、高炉風砕スラグを入れた通水性の袋を前記ブイから吊した。通水性の袋としては土嚢袋を用い、1つの土嚢袋には高炉風砕スラグを10kg入れ、これをロープに50cm間隔で水深10m位置まで複数個に取り付け、ロープの上部をブイに固定するとともに、ロープ下部にアンカーを取り付けてブイを海底に係留した。そして、このような高炉風砕スラグ入りの土嚢袋を取り付けたロープを上記赤潮多発海域の500m四方に100m間隔で設置した。
【0118】
高炉風砕スラグの設置後(設置時期は夏期)、高炉風砕スラグ設置海域とその外側海域(高炉風砕スラグ設置場所から3km離れた海域)の表層海水中のケイ酸塩濃度と珪藻量とを継続的に調査した。その結果を表2に示す。これによれば高炉風砕スラグの設置1週間後には高炉風砕スラグ設置海域における表層海水中のケイ酸塩濃度と珪藻量はその外側海域よりも増加していた。また、赤潮が高炉風砕スラグ設置海域の外側海域で発生した場合にも、高炉風砕スラグ設置海域には赤潮は流入せず、顕著な赤潮防止効果が確認された。
【0119】
【表2】
【0120】
[実施例3]
・発明例(1)
湾内の平坦な水底(砂質上に泥質が堆積した水底)に形成された直径が約30mの凹部(深掘り部分)に、高炉風砕スラグを凹部周囲の水底面との平均高低差が1m以下([d1−d0]≦1m)となるように敷設した。敷設厚みは約15mであった。
敷設材の敷設後、3年にわたって半年毎に敷設部水底面の直上、敷設部から50m離れた地点での水底面の直上及び敷設部から100m離れた地点での水底面の直上の各位置で水の硫化水素濃度を測定した。また、敷設してから3年後の敷設材上面レベル(水底面)の沈下量(平均値)を測定した。それらの結果を表3に示す。
【0121】
・発明例(2)
湾内の平坦な水底(砂質上に泥質が堆積した水底)に形成された直径が約20mの凹部(深掘り部分)に、高炉風砕スラグ60mass%、高炉徐冷スラグ10mass%、製鋼スラグ20mass%、都市ゴミスラグ10mass%の混合物を凹部周囲の水底面との平均高低差が1m以下([d1−d0]≦1m)となるように敷設した。敷設厚みは約10mであった。
敷設材の敷設後、3年にわたって半年毎に敷設部水底面の直上、敷設部から50m離れた地点での水底面の直上及び敷設部から100m離れた地点での水底面の直上の各位置で水の硫化水素濃度を測定した。それらの結果を表3に示す。
【0122】
・発明例(3)
湾内の平坦な水底であって、砂質上に泥質が堆積した水底の50m×50mの範囲に、高炉風砕スラグ90mass%、製鋼スラグ10mass%の混合物を厚さ50cmに敷設した。
敷設材の敷設後、3年にわたって半年毎に敷設部水底面の直上、敷設部から50m離れた地点での水底面の直上及び敷設部から100m離れた地点での水底面の直上の各位置で水の硫化水素濃度を測定した。それらの結果を表3に示す。
【0123】
・比較例(1)
湾内の平坦な水底(砂質上に泥質が堆積した水底)に形成された直径が約40mの凹部(深掘り部分)に、海砂を凹部周囲の水底面との平均高低差が1m以下([d1−d0]≦1m)となるように敷設した。敷設厚みは約8mであった。
敷設材の敷設後、3年にわたって半年毎に敷設部水底面の直上、敷設部から50m離れた地点での水底面の直上及び敷設部から100m離れた地点での水底面の直上の各位置で水の硫化水素濃度を測定した。それらの結果を表3に示す。
【0124】
・比較例(2)
湾内の平坦な水底(砂質上に泥質が堆積した水底)に形成された直径が約30m、深さ10mの凹部(深掘り部分)について、発明例1における敷設材の敷設時とほぼ同時期から3年にわたって半年毎に深掘部水底面の直上、深掘部から50m離れた地点での水底面の直上及び深掘部から100m離れた地点での水底面の直上の各位置で水の硫化水素濃度を測定した。その結果を表3に示す。
【0125】
【表3】
【0126】
[実施例4]
底層水の溶存酸素濃度が約2ppm(飽和溶解度:約7ppm)となっている水域(約400m四方の水域)の海底に高炉風砕スラグを厚さ約20cmに敷設した。1ヶ月経過後に、スラグ敷設水域の底層水の溶存酸素濃度を測定したところ約4ppmに上昇していた。
[実施例5]
底層水の硫化水素濃度が0.6〜1.4ppmとなっている水域(約1ha)の海底に高炉風砕スラグを厚さ約35cmに敷設した。1ヶ月経過後、6ヶ月経過後、1年経過後にそれぞれスラグ敷設水域の底層水の硫化水素濃度を測定(測定方法:検知管式、検出限界:0.01ppm)したが、硫化水素は検出されなかった。
【0127】
[実施例6]
底層水の流速が3cm/秒の水域(約1.5ha)の海底に高炉風砕スラグを厚さ約3mに敷設した。このスラグ敷設前とスラグを敷設してから3ヶ月経過後の底層水の水質を比較したところ、スラグ敷設前は硫化水素濃度が1.7ppm、溶存酸素濃度が0.1ppmであったのに対し、スラグを敷設してから3ヶ月経過後では硫化水素濃度が検出限界以下に、溶存酸素濃度が4.8ppmにそれぞれ改善された。
【0128】
[実施例7]
海水塩分濃度による密度躍層(表層水の塩分濃度:1.3%、底層水の塩分濃度:2.5%)が形成された水域(約10ha)の海底に高炉風砕スラグを厚さ約0.2mに敷設した。このスラグ敷設前とスラグを敷設してから3ヶ月経過後の底層水の水質を比較したところ、スラグ敷設前は硫化水素濃度が3.5ppm、溶存酸素濃度が0.1ppmであったのに対し、スラグを敷設してから3ヶ月経過後では硫化水素濃度が検出限界以下に、溶存酸素濃度が3.1ppmにそれぞれ改善され、また、高炉風砕スラグの敷設により水底が浅くなったため、底層水の塩分濃度も2.2%まで低下した。
【0129】
[実施例8]
海水温による密度躍層(表層水の水温:26℃、底層水の水温:15℃)が形成された水域(約0.5ha)の海底に高炉風砕スラグを厚さ約3mに敷設した。このスラグ敷設前とスラグを敷設してから6ヶ月経過後の底層水の水質を比較したところ、スラグ敷設前は硫化水素濃度が1.1ppm、溶存酸素濃度が0.2ppmであったのに対し、スラグを敷設してから6ヶ月経過後では硫化水素濃度が検出限界以下に、溶存酸素濃度が3.8ppmにそれぞれ改善され、また、高炉風砕スラグの敷設により水底が浅くなったため、底層水の水温も16℃まで上昇した。
【0130】
[実施例9]
高炉風砕スラグを露天で高さ5mに積み上げ、このスラグ堆積物の下部に敷設した穴あきホースからスラグ堆積層内に空気を所定時間を吹き込むことによりエージング処理を行った。このエージング処理を施した高炉風砕スラグをスラグの10倍の量の海水に2週間浸漬し、2週間後の海水のpHと硫化水素濃度を測定した。なお、海水はスラグを浸漬してから1週間後に1回交換した。
また、参考例として高炉風砕スラグを露天で高さ5mに積み上げて放置しただけのエージング処理を実施し、この高炉風砕スラグについても同様の試験を行った。
それらの結果を表4に示す。同表によれば、空気の吹き込みによるエージング処理を所定時間施した高炉風砕スラグを用いた本発明例では、空気の吹き込みを行うことなくエージング処理を施した高炉風砕スラグを用いた参考例に較べて、海水のpH上昇が抑えられるとともに、硫化水素の発生も効果的に抑えられていることが判る。
【0131】
【表4】
【0132】
[実施例10]
本実施例では、高炉風砕スラグを露天で積み上げ、このスラグ堆積物の下部から空気を1日おきに間欠的(1日吹き込み−1日吹き込み休止)吹き込むエージング処理(空気吹き込み量:100NL/slag−ton・hr)を14日間実施した高炉風砕スラグを用いた。
沿岸から沖合500m〜1kmの赤潮多発海域(湾内)において、海岸近くの海底に上記高炉風砕スラグを略30cmの厚さに敷設した。その敷設範囲は海岸線から沖合に40m(水深2〜7m)までの範囲であって、海岸線の総延長200mの範囲とした。
【0133】
高炉風砕スラグの設置後(設置時期は夏期)、その設置場所と旧来の赤潮発生ポイント(海域)の表層海水中のケイ酸塩濃度と珪藻量とを継続的に調査した。その結果を表5に示す。これによれば、高炉風砕スラグの設置2週間後には、その設置場所と旧来の赤潮発生ポイントでの表層海水中のケイ酸塩濃度が増加しており、元々ケイ酸塩濃度の低かった赤潮発生ポイントでも珪藻量が増加していた。また、高炉風砕スラグの設置後3年間調査を継続したが、この間赤潮の発生は全く認められず、また高炉風砕スラグの設置場所では海藻や魚介類も多数観察された。
【0134】
【表5】
【0135】
[実施例11]
・発明例
アサリの生息基盤としての効果を確認するため、水深2mの平坦な海域の10m四方の領域に高炉風砕スラグを約50cmの厚さに敷設し、中央付近の2m四方の領域上に平均重量0.6gのアサリを1000個体/m2の密度(重量600g/m2)で散布した。1年後にアサリの個体数(殻長15mm以上の個体)及びその全重量を計測した結果では、アサリの個体数は850個体に減少していたが、1個体当たりのアサリの重量は平均7.4g(全重量6290g/m2)で、全重量は約10倍に増加していた。
・比較例
水深2mの平坦な海域(上記本発明例の場所に隣接した場所)の10m四方の領域に海砂を約50cmの厚さに敷設し、中央付近の2m四方の領域上に平均重量0.6gのアサリを1000個体/m2の密度(重量600g/m2)で散布した。1年後にアサリの個体数(殻長15mm以上の個体)及びその全重量を計測した結果では、アサリの個体数は780個体に減少しており、1個体当たりのアサリの重量は平均5.8g(全重量4524g/m2)で、全重量は約7.5倍の増加であった。
【0136】
[実施例12]
・発明例
アマモの生息基盤としての効果を確認するため、水深2mの平坦な海域の10m四方の領域に高炉風砕スラグを約50cmの厚さに敷設し、中央付近の2m四方の領域上にアマモを40株/m2の密度で移植した。1年後の生息株数を計測した結果では、アマモは株数が48株/m2に増加していた。
・比較例
水深2mの平坦な海域(上記本発明例の場所に隣接した場所)の10m四方の領域に海砂を約50cmの厚さに敷設し、中央付近の2m四方の領域上にアマモを40株/m2の密度で移植した。1年後の生息株数を計測した結果では、アマモは株数が35株/m2に減少していた。
【0137】
【発明の効果】
以上述べたように本発明の水中又は水浜の環境改善方法は、養浜、浅場・アマモ場・干潟・人工海浜等の造成・修復、磯焼け防止や磯焼けなどにより海藻成育環境が衰退・消失した海域での藻場造成・修復、赤潮の防止、青潮の防止などに優れた効果が得られるとともに、低コストに実施可能であり、しかも敷設材によって生物や人が傷などを負うおそれがない、水中生物や人に好ましい水中又は水浜環境を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による水中又は水浜の環境改善方法の一実施形態である赤潮防止法において、赤潮防止材を水底に直接敷設した実施形態を示す説明図
【図2】本発明による水中又は水浜の環境改善方法の一実施形態である赤潮防止法において、赤潮防止材を浮体から吊すことにより水中に設置した実施形態を示す説明図
【図3】本発明による水中又は水浜の環境改善方法の他の実施形態を示す説明図
【図4】本発明による水中又は水浜の環境改善方法の他の実施形態において、造成された浅場を示す説明図
【図5】高炉風砕スラグの製造設備の一例を示す断面図
【図6】本発明の実施例1における磯焼け海域の藻場造成の実施状況を示す説明図
【図7】本発明の実施例2における磯焼け海域の藻場造成の実施状況を示す説明図
【符号の説明】
1…タンディッシュ、2…ノズル、3…冷却器、4…噴霧ノズル、5…水/ガス噴霧ノズル、6,10…排気管、7…回収容器、12…熱回収設備、30…凹部、31…敷設材、32…ケーソン、33…高炉風砕スラグ、34…潜堤、35…ブロック、310…スラグ、310a…高炉風砕スラグ、310b…高炉風砕スラグ以外のスラグ、311…スラグ以外の素材、A…高炉風砕スラグ、B1…ブイ、B2…筏、C…ロープ、D…支持基盤、L…溶融スラグ、S…風砕スラグ、X,Y…水底面、
【発明の属する技術分野】
本発明は、水中又は水浜の環境改善方法に関するもので、具体的には、養浜、覆砂及び浅場・アマモ場・干潟・人工海浜等の造成(修復を含む)等において人や生物に好ましい環境を形成することができる水中又は水浜の環境改善方法、さらには、沿岸海域等における水中の珪藻類や海藻類の増殖、主に内海や湾などで発生する赤潮の防止、所謂磯焼けが生じている海域の藻場造成或いは磯焼けの防止、消失浅場の回復、水底における水の停滞(例えば、水底の凹部における水の停滞)に起因する青潮の発生や棲息生物減少の抑制などに有効な水中又は水浜の環境改善方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、水浜や沿岸海域における環境保全並びに水産資源の保護などの観点から、多様な生物(動植物)の棲息領域を形成する干潟、浅場、アマモ場等の環境保護・修復、沿岸海域の海底部に成育する海藻類の保護・育成、所謂磯焼けの防止或いは磯焼けが生じている海域の藻場回復、赤潮の発生防止、青潮の発生防止などが大きな課題となっており、これらを解決できる水中や水浜の環境改善技術の開発が望まれている。以下、これら水中や水浜の環境改善に関する課題とこれに対する従来の対策について述べる。
【0003】
(1) 養浜及び干潟・浅場等の修復又は造成
近年、海岸の浸食等によって消失した砂浜の回復を目的とし、或いは海洋レクリエーションの場である人工ビーチの造成を目的として、海浜に大量の砂を投入する、所謂養浜が行われている。さらに、最近では干潟や浅場の優れた水質浄化機能が認識されつつあり、失われた干潟や浅場を人工的に復元したり、新たに造成する試みがなされているが、この場合にも覆砂や造成のために大量の砂等が投入される。
【0004】
(2) 磯焼け及びその防止対策
岩礁や人工魚礁などの海藻着生基盤の表面が石灰藻に覆われる所謂“磯焼け”状態となった海域は、魚介類の餌となる有用海藻(例えば、コンブ、ワカメ、アラメなど)が繁殖せず、その海域の漁業生産量が著しく低下するという問題がある。
【0005】
従来、磯焼けが生じた海域に対しては鋼製の藻礁を設置するなどの対策が試みられてきたが、鋼製藻礁を設置すると2年間程度は石灰藻以外の海藻が藻礁に繁殖して藻礁部分は磯焼け状態が解消されるものの、3年程度経過すると鋼製藻礁も石灰藻に覆われてしまい、その効果が無くなってしまう。このため再度鋼製藻礁を設置するなどの対策が必要となり、磯焼け防止の抜本的な解決策とはなり得ていない。また最近では、磯焼けが生じた海域のウニを駆除することによって藻場を復活させた例もあるが、ウニの駆除は人力で行う必要があるため効率が悪く、コストも多くかかる上、一度に適用できる海域が狭いなど、磯焼け解消の切り札とはなり得ていない。
【0006】
一方、海水中のケイ酸塩濃度を高めることにより珪藻類が増殖し、その結果として石灰藻の増殖が抑制されることが知られており、このようなメカニズムを利用した磯焼けの改善方法として、高炉水砕スラグをケイ酸塩イオン放出源として水中に設置する方法が特許文献1で提案されている。高炉水砕スラグはSiO2成分とCaO成分とを多量に含むガラス質材料であるため、海水中にケイ酸塩イオンを継続的に溶出させることができ、このケイ酸塩イオンが珪藻類を増殖させ、その結果、磯焼海域における石灰藻の増殖が抑制され、磯焼けの発生が抑えられる。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−238401号公報
【0008】
(3) 赤潮及びその防止対策
赤潮とは水中の微生物、とりわけ植物プランクトンが異常増殖して海水が着色する現象であり、近年、養殖魚類(例えば、ハマチやタイなど)を大量斃死させるなど、特に養殖漁業に大きな被害を及ぼしていることから、その防止対策が切望されている。
赤潮を起こす生物の種類は多岐にわたると考えられるが、その中でもシャットネラなどの特定の鞭毛藻類の大増殖が養殖魚類の大量斃死を招く赤潮の主要な原因であると考えられている。赤潮は富栄養化の進行した海域において発生することから、赤潮の防止には覆砂や浚渫、下水道整備による河川流入栄養塩の低減化が有効であるとされている。
【0009】
しかしながら、浚渫は工事完了後に新たに堆積する有機物によってその効果が失われてしまい、また、工事可能な海域が比較的浅い海域に限られるため、赤潮の大発生が問題となる瀬戸内海中心部などへの適用は困難である。また、これらの工事には多大な費用がかかり、このことも適用範囲が限られる要因となる。また、下水道整備による河川流入栄養塩の低減化は、海域全体の栄養塩量を減らすには有効であるが、これも瀬戸内海中心部のような海岸から離れた場所では、夏期の海水停滞期に表層海水の貧栄養化の原因となり、この貧栄養化によって表層海水中の珪藻類が減少することが、赤潮の原因となるシャットネラなどの鞭毛藻類の増殖要因の一つとなる。
【0010】
最近、赤潮防止対策の一つとして、可溶性のケイ素(ケイ酸塩イオン)の海水中への付与により珪藻類を繁殖させ、赤潮の原因となるシャットネラなどの鞭毛藻類の増殖を抑制する方法が検討され、このような赤潮防止対策に関しても、特許文献1においてケイ酸塩イオン放出源である高炉水砕スラグを水中に設置する方法が提案されている。ケイ酸塩イオンの海水中への付与は貧栄養状態となった表層海水中の珪藻類を繁殖させる効果があり、珪藻類は赤潮の原因となるシャットネラなどの鞭毛藻類の競合種であり、しかも鞭毛藻類よりも増殖力が高いため、珪藻類が表層海水中で安定に繁殖するとシャットネラなどの鞭毛藻類の異常増殖が抑制され、その結果、赤潮の発生が防止されることになる。
【0011】
(4) 磯焼け以外の海藻成育環境の衰退・消失及びその対策
沿岸海域では、先に述べた磯焼け以外にも、例えば、底質のヘドロ化や海砂の流失等による浅場の消失、底質・水質の汚染等の原因により海藻成育環境(特に、藻場)の衰退、消失が生じることがある。このような海底での海藻成育環境の衰退、消失に対しては、先に磯焼け防止に関して述べた対策が適用可能であると考えられる。
【0012】
(5) 沿岸海域でのその他の問題及びその防止対策
内湾等において水底で海水の停滞が生じると硫化水素が発生し、所謂青潮の発生原因となる。特に、土砂採取等によって水底が部分的に掘られ、比較的深さのある凹部が形成されると、この凹部内の水が停滞する結果、特に夏期において著しい無酸素状態となり、有機物の腐敗やバクテリア(硫酸還元菌)の作用によって大量の硫化水素が発生するという問題がある。このように凹部内で硫化水素が大量発生すると、凹部内やその周囲の棲息生物が減少するだけでなく、硫化水素を含んだ水塊(青潮)が周辺水域に流出することによって周辺水域の生物の棲息環境にも多大な影響を与える。
【0013】
このような問題に対して、高炉水砕スラグを青潮発生を引き起こす硫化水素の発生や海水の富栄養化を生じている海域の水底に敷設する方法が、特許文献2において提案されている。この方法では、高炉水砕スラグから水中に溶出したCaOが水中のpHを高めること、スラグ中に含まれるCaOに水中の硫化水素、燐などが固定されることなどによって、硫化水素の発生が抑制されるとともに水の富栄養化も抑制されるため、青潮の発生も抑えられる。
【0014】
【特許文献2】
特開2002−370092号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
上記(1)に記載した養浜、浅場・アマモ場・干潟・人工海浜等の造成や修復には砂などの多量の敷設材が必要であるが、多くの場合、敷設材としては他の場所で採取された天然砂(海砂、山砂)や天然石が用いられる。しかし、この場合には天然砂や天然石の採取場所で新たな環境破壊を生じるおそれがある。
【0016】
また、上記(2)〜(5)に記載した磯焼けの防止対策、赤潮の防止対策、磯焼けや他の原因で海藻成育環境が衰退・消失した海域での藻場造成や環境修復、青潮の防止対策に関しては、対象海域での高炉水砕スラグの設置はそれぞれ有効なものであると考えられる。しかし、高炉水砕スラグのスラグ粒子は、その製法上の理由から角張った形状を有し、しかも針状のスラグ(針状物)が比較的多く含まれており、特にこの針状物は、人や生物が触れると刺さって傷を負わせるような鋭いものである。このため高炉水砕スラグを水中に設置した場合、生物(動植物)に傷などを負わせるおそれがあり、また、人が出入りするような場所(干潟、浅場、水浜など)では、人の手足に刺さるなどの問題を生じる可能性もある。
【0017】
したがって本発明の目的は、養浜、浅場・アマモ場・干潟・人工海浜等の造成・修復、磯焼け防止や磯焼けなどにより海藻成育環境が衰退・消失した海域での藻場造成・修復、赤潮の防止、青潮の防止などに優れた効果が得られるとともに、低コストに実施可能であり、しかも敷設材によって生物や人が傷などを負うおそれがない水中又は水浜の環境改善方法を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するため、高炉水砕スラグと同様のケイ酸塩イオンの溶出性や硫化水素の発生抑制作用を有し、しかも水中に敷設した場合に生物や人に傷などを負わせるおそれがない敷設材について検討を行い、その結果、鉄鋼製造プロセスにおいて得られる高炉風砕スラグがその条件に極めてよく合致することを見出した。
本発明はこのような知見に基づきなされたもので、その特徴は以下の通りである。
【0019】
[1] 水中又は水浜に、環境改善材として高炉風砕スラグを設置することを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
[2] 水底又は水浜に、養浜材、浅場造成材、アマモ場造成材、干潟造成材、人工海浜造成材又は覆砂材として高炉風砕スラグを敷設することを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
[3] 水底又は水浜に敷設される養浜材、浅場造成材、アマモ場造成材、干潟造成材、人工海浜造成材又は覆砂材であって、高炉風砕スラグからなることを特徴とする水中又は水浜の環境改善用資材。
【0020】
[4] 水中又は水浜にケイ酸塩イオン放出源として、高炉風砕スラグを設置することを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
[5] 上記[4]の環境改善方法において、磯焼けが生じている海底部に、磯焼け防止材として高炉風砕スラグを設置することにより、磯焼け海域での藻場造成を行うことを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
[6] 上記[5]の環境改善方法において、天然又は人工の海藻着生基盤の周囲又は近傍に高炉風砕スラグを設置することにより、磯焼け海域での藻場造成を行うことを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
[7] 上記[6]の環境改善方法において、高炉風砕スラグを設置した後、人工の海藻着生基盤を設置することにより、磯焼け海域での藻場造成を行うことを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
【0021】
[8] 上記[4]の環境改善方法において、磯焼けが生じるおそれがある海底部に、磯焼け防止材として高炉風砕スラグを設置することにより、磯焼けを防止することを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
[9] 上記[8]の環境改善方法において、天然又は人工の海藻着生基盤の周囲又は近傍に高炉風砕スラグを設置することにより、磯焼けを防止することを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
[10] 上記[9]の環境改善方法において、高炉風砕スラグを設置した後、人工の海藻着生基盤を設置することにより、磯焼けを防止することを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
[11] 磯焼けが発生している海底部又は磯焼けの発生を予防すべき海底部に設置される磯焼け防止材であって、高炉風砕スラグからなることを特徴とする水中又は水浜の環境改善用資材。
【0022】
[12] 上記[4]の環境改善方法において、海水域、汽水域又淡水域において、水中に赤潮防止材として高炉風砕スラグを設置することにより赤潮発生を防止することを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
[13] 上記[12]の環境改善方法において、水深15m以内の水中に高炉風砕スラグを設置することにより、赤潮発生を防止することを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
[14] 上記[12]又は[13]の環境改善方法において、高炉風砕スラグを水底に直接敷設することにより、赤潮発生を防止することを特徴とする水中又は水底の環境改善方法。
[15] 上記[12]又は[13]の環境改善方法において、高炉風砕スラグを通水性を有する袋又は容器に入れ、該袋又は容器を水底に設置することにより赤潮発生を防止することを特徴とする水中又は水底の環境改善方法。
【0023】
[16] 上記[12]又は[13]の環境改善方法において、高炉風砕スラグを通水性を有する袋又は容器に入れ、該袋又は容器を水面又は水面下に浮設した浮体に保持させることにより赤潮発生を防止することを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
[17] 赤潮が発生している海域又は赤潮の発生を予防すべき海域に設置される赤潮防止材であって、高炉風砕スラグからなることを特徴とする水中又は水浜の環境改善用資材。
[18] 上記[4]の環境改善方法において、海岸に面した海底に高炉風砕スラグを敷設するとともに、該高炉風砕スラグの敷設領域の周囲にスラグ流失防止用の潜堤を設置し、且つ該高炉風砕スラグの敷設領域には人工の海藻着生基盤及び/又は漁礁を設置したことを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
【0024】
[19] 上記[18]の環境改善方法において、潜堤の少なくとも一部を、鉄鋼製造プロセスで発生した塊状のスラグ、鉄鋼製造プロセスで発生したスラグを主原料とする粉粒状原料を炭酸反応で生成させたCaCO3を主たるバインダーとして固結させて得られたブロック、鉄鋼製造プロセスで発生したスラグを主原料とする水和硬化体ブロックの中から選ばれる1種以上で構成したことを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
[20] 上記[18]又は[19]の環境改善方法において、人工の海藻着生基盤及び/又は漁礁の少なくとも一部を、鉄鋼製造プロセスで発生した塊状のスラグ、鉄鋼製造プロセスで発生したスラグを主原料とする粉粒状原料を炭酸反応で生成させたCaCO3を主たるバインダーとして固結させて得られたブロック、鉄鋼製造プロセスで発生したスラグを主原料とする水和硬化体ブロックの中から選ばれる1種以上で構成したことを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
【0025】
[21] 硫化水素発生源である水底に、高炉風砕スラグを敷設することを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
[22] 水底に形成された凹部内に、全部又は一部が高炉風砕スラグからなる敷設材を敷設することを特徴とする水中又は水浜の環境改善法。
[23] 底層水中で硫化水素が検出された水域又は底層水中の溶存酸素濃度が所定値以下の水域の水底に、全部又は一部が高炉風砕スラグからなる敷設材を敷設することを特徴とする水中又は水浜の環境改善法。
[24] 底層水の流速が所定値以下の水域の水底に、全部又は一部が高炉風砕スラグからなる敷設材を敷設することを特徴とする水中又は水浜の環境改善法。
[25] 水中に水温又は/及び塩分濃度による密度躍層が形成された水域の水底に、全部又は一部が高炉風砕スラグからなる敷設材を敷設することを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
【0026】
[26] 水底に形成された凹部内に、全部又は一部が高炉風砕スラグからなる敷設材を敷設し、該敷設材により形成される水底面の平均水深d1と凹部周囲の水底面の平均水深d0との差[d1−d0]を2m以下(但し、[d1−d0]がマイナス値の場合を含む)とすることを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
[27] 上記[22]〜[26]のいずれかの環境改善方法において、敷設材が高炉風砕スラグと高炉風砕スラグ以外の素材とからなり、該敷設材は、前記高炉風砕スラグとそれ以外の素材が混合された状態であるか、又は前記高炉風砕スラグが上層側、それ以外の素材が下層側になるようにして凹部内に敷設されることを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
[28] 上記[22]〜[27]のいずれかの環境改善方法において、凹部内に敷設された敷設材の50mass%以上が高炉風砕スラグからなることを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
【0027】
[29] 上記[22]〜[28]のいずれかの環境改善方法において、凹部に敷設された敷設材の上層が高炉風砕スラグを60mass%以上含むことを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
[30] 硫化水素の発生源となる水底に敷設される青潮防止材であって、高炉風砕スラグからなることを特徴とする水中又は水浜の環境改善用資材。
[31] 上記[1]、[2]、[4]〜[10]、[12]〜[16]、[18]〜[29]のいずれかの環境改善方法において、高炉風砕スラグが、粒径0.5mm以上のスラグ粒子の割合が90mass%以上の高炉風砕スラグであることを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
【0028】
[32] 上記[1]、[2]、[4]〜[10]、[12]〜[16]、[18]〜[29]のいずれかの環境改善方法において、高炉風砕スラグが、粒径1.0mm以上のスラグ粒子の割合が70mass%以上の高炉風砕スラグであることを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
[33] 上記[1]、[2]、[4]〜[10]、[12]〜[16]、[18]〜[29]、[31]、[32]のいずれかの環境改善方法において、高炉風砕スラグが、酸素含有ガスの吹き込み又は酸素含有ガスと水蒸気の吹き込みによるエージング処理を施したスラグであることを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
【0029】
[34] 上記[3]、[11]、[17]、[30]のいずれかの環境改善用資材において、高炉風砕スラグが、粒径0.5mm以上のスラグ粒子の割合が90mass%以上の高炉風砕スラグであることを特徴とする水中又は水浜の環境改善用資材。
[35] 上記[3]、[11]、[17]、[30]のいずれかの環境改善用資材において、高炉風砕スラグが、粒径1.0mm以上のスラグ粒子の割合が70mass%以上の高炉風砕スラグであることを特徴とする水中又は水浜の環境改善用資材。
[36] 上記[3]、[11]、[17]、[30]、[34]、[35]のいずれかの環境改善用資材において、高炉風砕スラグが、酸素含有ガスの吹き込み又は酸素含有ガスと水蒸気の吹き込みによるエージング処理を施したスラグであることを特徴とする水中又は水浜の環境改善用資材。
【0030】
本発明において、浅場、干潟、アマモ場とは、以下に述べるような場所(水域又は水浜)を指す。すなわち、浅場とは干潮面〜水深15m程度の海域若しくは灘落ちより浅い海域を指す。干潟とは、満潮時には海面下に沈み、干潮時には海面上に現れる主として砂、砂泥又は粘土質からなる平坦な場所を指す。アマモ場とは、アマモ類が繁茂している場所を指す。また、本発明が適用される磯焼けが生じている海底部とは、岩礁や人工魚礁などの海藻着生基盤の表面が石灰藻に覆われることにより、コンブ、ワカメ、アラメなどの有用海藻が消失し又は消失しつつある海底部を指す。
【0031】
【発明の実施の形態】
本発明法では、水中又は水浜に環境改善材として高炉風砕スラグを設置する。
高炉風砕スラグは、一般に、鉄鋼製造プロセスにおいて高炉から取り出された溶融状態の高炉スラグにガス流(例えば、高圧空気、高圧ミストなど)を吹き付けて粒状化し、凝固させることにより得られる。この高炉風砕スラグは、高炉水砕スラグと同じ高炉スラグから得られるものであるため、化学成分自体は高炉水砕スラグと基本的に同じであり、したがって、後述するように磯焼け防止、衰退・消失した海域での藻場造成・修復、赤潮の防止、青潮の防止などに優れた効果が得られる。
【0032】
一方、この高炉風砕スラグのスラグ粒子は、球状に近い形状を有し、表面が滑らかであるため、水中又は水浜に敷設した際に高炉水砕スラグのように人や生物を傷つける恐れがほとんどない。特に、高炉風砕スラグの粒子形状は海砂などのような天然砂よりも球形に近いため、水底や水浜への敷設材料として非常に好適な素材である。また、人が手足で触れた感触(手触りなど)はむしろ海砂よりも良く、このため人工海浜や人工干潟などの敷設材としても好適である。
【0033】
また、高炉風砕スラグは、その製造上の理由から、球状のスラグ粒子に混じって繊維状のもの(繊維状スラグ)が生じることがある。この繊維状スラグ(スラグウール)は、製造条件を選択することによって生成量を調整することができる。本発明では、この繊維状スラグを含んだ高炉風砕スラグをそのまま用いてもよいし、含まないものを用いてもよい。また、別に繊維状スラグを添加した高炉風砕スラグを用いてもよい。
【0034】
本発明において、繊維状スラグを含んだ高炉風砕スラグ(好ましくは、繊維状スラグを全体の5〜50mass%程度含んだ高炉風砕スラグ)を水底や水浜に敷設すると、敷設層内で繊維状スラグどうしが絡み合うことにより、敷設層を構成するスラグ粒子(繊維状スラグを含むスラグ粒子全体)間に結合性が与えられ、この結果、敷設されたスラグの波浪、潮流などによる流出が抑制される効果が得られる。さらに、繊維状スラグは比表面積が大きく、しかも、上記の理由から波浪等に対する安定性が高いため、粒状のスラグに較べて微細な生物の付着基盤としての適性が高く、いわゆる生物膜ができ易い。このため繊維状スラグを含む高炉風砕スラグによる敷設層は、水中生物(動植物)の着生基盤として非常に有効に機能するとともに、優れた水質浄化作用を得ることができる。
【0035】
本発明の第一の形態では、高炉風砕スラグを、養浜材、浅場造成材、アマモ場造成材、干潟造成材、人工海浜造成材又は覆砂材として水底又は水浜に敷設するものであり、高炉風砕スラグは上述したような特有の性状、外観及び作用を有しているため、人や生物を傷つける恐れがほとんどない、繊維状スラグが混在することによって波浪、潮流などによる流出が抑制される、同じく水中生物(動植物)の着生基盤として高い機能を有し且つ優れた水質浄化作用も得られる、などの有用な効果が得られる。またこのため、砂地に棲息する底棲生物(例えば、貝類やゴカイ類)にも好適な棲息環境が提供される。
【0036】
本発明の他の形態では、水中にケイ酸塩イオン放出源として高炉風砕スラグを設置するものであり、この高炉風砕スラグから水中に放出されるケイ酸塩イオンが珪藻類を増殖させ、その結果、磯焼けが現に生じ又は生じる恐れがある海域においては石灰藻の増殖が抑制されて磯焼けの発生が抑えられ或いは磯焼け海域に藻場を造成することができ、また、磯焼け以外の原因で海藻成育環境が現に衰退・消失し又は衰退・消失する恐れがある海域においては、海藻類を効果的に成育・増殖させることができる。また、同じく赤潮が現に生じ又は生じる恐れがある海域においては、赤潮の原因となる鞭毛類の増殖が抑制されて赤潮の発生が抑えられる。また、この形態においても、高炉風砕スラグの特有の性状、外観及び作用によって、上述した各種の効果が得られる。
【0037】
さらに、本発明の他の形態では、高炉風砕スラグを、青潮発生を引き起こす硫化水素の発生や海水の富栄養化を生じている海域の水底に敷設するものであり、これにより高炉風砕スラグから水中に溶出したCaOが水中のpHを高めること、さらにはスラグ中に含まれるCaOに水中の硫化水素、燐などが固定されることなどによって、硫化水素の発生が抑制されるとともに水の富栄養化も抑制されるため、青潮の発生も抑えられる。また、この形態においても、高炉風砕スラグの特有の性状、外観及び作用によって、上述した各種の効果が得られる。
【0038】
先に述べたように、高炉風砕スラグは溶融状態の高炉スラグにガス流(例えば、高圧空気、高圧ミストなど)を吹き付けて粒状化し、凝固させることにより得られる。高炉スラグは鉄鋼製造プロセスにおいて副生成物として大量に生産され、しかも非常に安価な材料であるため海中への大量投入が可能であり、例えば、1つの海域や水浜に百万トンオーダーで投入することが可能である。
高炉風砕スラグとしては、鉄鋼製造プロセスにおいて副生成物として得られたスラグのままのものを用いてもよいし、分級などにより粒度調整したものを用いてもよい。
また、高炉風砕スラグは他の材料(例えば、製鋼スラグ、他の高炉系スラグ、フライアッシュ、けい砂、山砂、海砂、粘土など)と混合した状態で用いることができる。
【0039】
高炉風砕スラグはSiO2成分とCaO成分とを多量に含むガラス質材料(一般に、SiO2:30mass%以上、CaO:35mass%以上)であり、このため海水中に設置(沈設)された高炉風砕スラグは、これに含まれるCaOの溶解により生じたCaイオンのケイ酸塩網目構造へのアタックによりケイ酸塩網目構造が分断され、この結果、海水中にケイ酸塩イオンを溶出させる。すなわち、高炉風砕スラグは、水分子によるケイ酸塩網目構造の切断により徐々にケイ酸塩イオンが海水中に溶解する作用に加えて、スラグから溶解したCaイオンによるケイ酸塩網目構造の分断によりケイ酸塩イオンが海水中に溶解する作用が得られ、したがって、このような高炉風砕スラグのケイ酸塩イオンの溶出機構は、人工のガラス質材料と同様の水分子によるケイ酸塩イオンの溶出作用と、Caイオンのアタックによるケイ酸塩イオンの溶出作用とが組み合わされたものとなり、人工のガラスよりもはるかにケイ酸塩が溶出しやすい。
【0040】
また、高炉風砕スラグはCaイオンを溶出するため、海中に設置された場合に硫化水素の発生抑制効果を有し、このため高炉風砕スラグの積層物内では硫酸還元が起こりにくく、天然の砂やガラスの積層物内に較べて硫化水素が少なく溶存酸素の多い状態となる。この状態は着生する生物にとって棲息しやすい状態であると言え、したがって、海中に設置された高炉風砕スラグはケイ酸塩イオンの供給源であるとともに、生物の着生基盤としても機能し、この点からも磯焼けの改善などに有効である。
【0041】
なお、高炉風砕スラグの塩基度は四成分塩基度(CaO+Al2O3+MgO)/SiO2で1.6〜2.5、望ましくは1.6〜2.0であることが好ましい。高炉風砕スラグの上記塩基度が1.6未満ではスラグ中でのSiO2の安定度が高まるためケイ酸塩イオンの海水中への溶出性が低下する傾向がある。一方、上記塩基度が2.0を超え、特に2.5を超えるとスラグ中の結晶質の量が増加し、ケイ酸塩の溶出と同時にCaの溶出も増加するため、ケイ酸塩がCaと沈殿物を生成してケイ酸塩の海水中への供給量が低下する場合がある。
【0042】
浅場、海浜、干潟等の砂地に棲息する貝類やゴカイ類等の底棲生物の棲息量は、砂地を構成する砂の大きさと大きく関係し、比較的粗めの砂の方が棲息量が多い。これは、砂地に棲息する生物の多くは砂の中に潜り込んで棲息するため、砂が或る程度粗く、砂粒子間の隙間が大きい方がそれら生物が棲息しやすい環境となるからである。しかし、隙間が大き過ぎると、小さな生物にとっては逆に棲息しにくい環境となるため、隙間の大きさも適度なものである必要がある。
【0043】
本発明者らは、ヘドロの堆積した浅場の海底に種々の粒度構成を有する高炉風砕スラグを敷設し、一定期間経過後における底棲生物(貝類やゴカイ類)の棲息量を確認する実験を行った。その結果、高炉風砕スラグを敷設した浅場の海底は、その粒度構成に拘りなくヘドロの堆積した海底に較べて底棲生物の棲息量の増加が認められたが、特に粒径0.5mm以上のスラグ粒子の割合が90mass%以上の粒度構成、とりわけ粒径1.0mm以上のスラグ粒子の割合が70mass%以上の粒度構成を有する高炉風砕スラグを敷設した場合に、底棲生物の棲息量の顕著な増加が認められた。したがって、高炉風砕スラグは、その粒度構成を粒径0.5mm以上のスラグ粒子の割合が90mass%以上、好ましくは粒径1.0mm以上のスラグ粒子の割合が70mass%以上とすることが好ましい。
【0044】
このような粒度構成とするために、製造されたままの高炉風砕スラグの粒度構成が上記範囲にない場合には、高炉風砕スラグの篩い分けを行う。篩い分け法は、乾式篩い、湿式篩い、気流分離などのいずれでもよい。
また、細粒分を多く含んだ高炉風砕スラグを水中や水浜に敷設すると、敷設層中で細粒部分が次第に偏在し、この偏在した細粒部分が固結してしまうことがあるが、上述したような比較的粗い粒度構成とすることにより、そのような細粒部分の固結も生じることはない。
【0045】
以下、本発明の水中又は水浜の環境改善方法の一実施形態である、養浜、浅場造成、アマモ場造成、干潟造成(これらの修復を含む)、覆砂等を行う方法について説明する。
この形態では、水底又は水浜に、養浜材、浅場造成材、アマモ場造成材、干潟造成材、人工海浜造成材又は覆砂材として高炉風砕スラグを敷設する。
ここで、浅場とは干潮面〜水深15m程度の海域若しくは灘落ちより浅い海域を指し、この浅場は数多くの生物資源の産卵、繁殖場や雑魚の生育場であり、また好適な漁場も存在する。また、干潟とは、満潮時には海面下に沈み、干潮時には海面上に現れる主として砂、砂泥又は粘土質からなる平坦な場所を指し、一般に、外海から隔てられている内海の沿岸域や内湾奥域などの前海岸(前浜)の部分に発達する。干潟は生物活動が活発で、海域の浄化、生物資源の培養に果たしている役割が大きいことが知られている。さらに、アマモ場とは、アマモ類が繁茂している場所を指し、通常は、水深が2〜5m程度で底質が砂泥質のところ多い。
また、覆砂とは水底の泥層をきれいな砂で覆うことを指す。また、養浜とは、海岸の浸食等により砂浜が消失した海岸や人工海浜を造成する海岸に外部から砂を供給することを指す。
【0046】
上述したように高炉風砕スラグは、スラグ粒子が球状に近い形状を有し、表面が滑らかであるため、水中又は水浜に敷設した際に高炉水砕スラグのように人や生物を傷つける恐れがほとんどなく、また、繊維状スラグが混在することによって波浪、潮流などによる流出が抑制され、さらに、水中生物(動植物)の着生基盤として高い機能を有するとともに、優れた水質浄化作用も有する。また、高炉風砕スラグは、後述するようなCaOによる底質・水質の浄化機能やケイ酸塩イオンの放出源としての機能も有している。このため養浜、浅場造成、アマモ場造成、干潟造成、人工海浜造成、覆砂などのために水底や水浜に敷設する敷設材として優れた性能を有し、また、砂地などに棲息する底棲生物(例えば、貝類やゴカイ類)をはじめとする多種多様な生物に好適な棲息環境を提供できる。
また、高炉風砕スラグをアマモ場造成材として使用した場合には、スラグ粒子が球形に近いため、アマモの地下茎を傷つけないという利点もある。
【0047】
さらに、粒径0.5mm以上のスラグ粒子の割合が90mass%以上、好ましくは粒径1.0mm以上のスラグ粒子の割合が70mass%以上(特に好ましくは80mass%以上)の高炉風砕スラグを敷設した場合には、先に述べたような理由により、底棲生物の棲息に特に適した環境を形成することができ、底棲生物の棲息量を顕著に増大させることができる。
本実施形態が適用される水浜又は水域としては、港湾を含む海、河川、河口、湖沼等のいずれでもよい。
【0048】
次に、本発明の他の実施形態である、磯焼け海域の藻場造成法及び磯焼け防止法について説明する。
本発明の水中又は水浜の環境改善法に基づく磯焼け海域の藻場造成法では、磯焼けが生じている海底部に磯焼け防止材(ケイ塩イオン放出源)として、上述した高炉風砕スラグを設置(沈設)するものである。この藻場造成法では、基本的には磯焼け海域の海中(海底)に高炉風砕スラグをそのまま沈設すればよい。
【0049】
珪藻類の増殖に必要な海水中のケイ酸塩イオンの濃度は10μmol/L以上とされているが、このようなケイ酸塩イオン濃度は高炉風砕スラグからなる磯焼け防止材の設置によって容易に達成される。これにより海底の海藻着生基盤表面に珪藻類が安定的に繁殖し、この結果、石灰藻の増殖が抑えられるとともに、昆布やアラメなどの大型の海藻類が繁殖する。また、海藻着生基盤表面に繁殖した珪藻類は、石灰藻とは異なり魚介類の餌となるため、珪藻類が繁殖すれば磯焼け海域において水産資源が増加する。また、高炉風砕スラグからのケイ酸塩イオンの溶出は長期間継続するため、珪藻類の増殖及びこれに伴う磯焼け防止効果も長期間に亘って継続することになる。また、高炉風砕スラグは上述したような特有の性状、外観及び作用を有しているため、水底に敷設されたスラグが人や生物を傷つける恐れがほとんどなく、また、繊維状スラグが混在することによって波浪、潮流などによる流出が抑制されるとともに、水中生物(動植物)の着生基盤として特に有効に機能し且つ優れた水質浄化作用も得られる。
【0050】
次に、本発明法に基づく磯焼け海域の藻場造成法の特に好ましい実施形態について説明する。
この藻場造成法では、磯焼けが生じている海底部において海藻着生基盤の周囲又は近傍に高炉風砕スラグを設置するのが好ましい。これにより高炉風砕スラグから溶出したケイ酸塩イオンにより海藻着生基盤周囲の海水が高ケイ酸塩濃度化し、海藻着生基盤に珪藻類を効果的に繁殖させることができる。
海藻着生基盤は天然又は人工のいずれでもよく、前者の場合は岩礁などであり、後者の場合には鋼製ブロック、コンクリートブロック、天然石、スラグ塊などである。また、この後者の場合には、磯焼け防止材を設置した後に海藻着生基盤を設置してもよい。人工の海藻着生基盤を設置する海底は、岩礁帯、砂地などを問わない。
【0051】
磯焼けが生じるのは外海に面した海域が多く、一般にこのような海域は海流が速いので、高炉風砕スラグをそのまま海底に設置すると海流により流失してしまうおそれがある。したがって、このような海域では高炉風砕スラグを通水性の容器又は袋に入れて設置することが好ましく、この場合も上記と同様の形態で海底に設置すればよい。
また、磯焼け防止材は、現に磯焼けを生じている海域だけでなく、磯焼けが生じる恐れのある海底部に設置することができる。すなわち、本発明の水中の環境改善方法の他の実施形態である磯焼け防止方法では、磯焼けが生じる恐れがある海底部に、磯焼け防止材として高炉風砕スラグを設置することにより、当該海域での磯焼けを予防する。この場合も高炉風砕スラグは、先に述べたものと同様の形態で設置される。
なお、上述したように本発明法に基づく磯焼け海域の藻場造成法や磯焼け防止法が適用される主たる海域(磯焼けを現に生じ又は生じる恐れのある海域)は主として外海に面した海域であり、したがって所謂赤潮が生じるような河川流入栄養塩などにより富栄養化した海域とは対照をなすような海域である。
【0052】
次に、本発明の水中又は水浜の環境改善方法の他の実施形態である、赤潮防止法について説明する。
この赤潮防止方法では、海水域などの水中(以下、海水中に適用する場合について説明する)に赤潮防止材として高炉風砕スラグを設置(沈設)する。一般に、赤潮が発生する海域は富栄養化が進んだ内海や湾に多く、基本的にはそのような海域の海中(海底)に高炉風砕スラグをそのまま沈設すればよい。
また、本発明法に基づく赤潮防止法において高炉風砕スラグを海中に設置する場合の特に好ましい実施形態は以下の通りである。
この赤潮防止方法において、高炉風砕スラグは水深15m以内(以浅)、好ましくは10m以内(但し、いずれも干潮時の水深)に設置するのが望ましい。これは、高炉風砕スラグの設置深度があまり大きいと溶出したケイ酸塩イオンが表層海水に到達しにくくなり、表層海水のケイ酸塩濃度を高める上で効率が悪いからである。
【0053】
また、赤潮発生海域が沿岸に近い場合(例えば、沿岸から数km以内の場合)には、図1に示すように水深15m以内、好ましくは10m以内の海底を覆うように高炉風砕スラグAを敷設すればよく、この高炉風砕スラグAから溶出したケイ酸塩イオンにより沿岸海域の海水が高ケイ酸塩濃度化し、この海水が海流によって沖合に流されるため、その海域一帯の表層海水のケイ酸塩濃度が高まり、珪藻類を効果的に増殖させることができる。
高炉風砕スラグを海底に設置するには、図1(a)に示すように高炉風砕スラグAをそのまま海底に設置する以外に、図1(b)に示すように高炉風砕スラグAを通水性の容器又は袋に入れて設置することも可能である。この方法は設置する海域の海流が速い場合に、高炉風砕スラグの流出を防止するのに有効である。また、図1(a)のように高炉風砕スラグをそのまま海底に設置する場合には、後述する図4に示すような潜堤(例えば、製鋼スラグ塊を積み上げることにより構築される潜堤)を高炉風砕スラグAの周囲に設置することで、高炉風砕スラグの流出を防止するようにしてもよい。
【0054】
一方、赤潮発生海域が沿岸から離れた沖合の場合(例えば、沿岸から数km以上離れた沖合の場合)には、図1のように沿岸に高炉風砕スラグを設置する方法でもよいが、この方法の場合には、高炉風砕スラグの設置により高ケイ酸塩濃度化した海水が海流によって赤潮発生海域に安定的に流れ込まなければならなず、事前に海流などの調査が必要となる。したがって、赤潮発生海域が沿岸から離れた沖合の場合は、図2(a)〜(c)に示すように沖合の赤潮発生海域にブイや筏等の浮体Bを浮かべ、この浮体Bに高炉風砕スラグAを入れた通水性の袋又は容器を保持させるようにすることが好ましい。また、この場合にも袋又は容器は水深15m以内、望ましくは10m以内に設置することが好ましい。
【0055】
このような方法によれば、赤潮発生海域に対して高炉風砕スラグから直接ケイ酸塩イオンを供給することができ、赤潮発生海域の表層海水が容易に高ケイ酸塩濃度化し、珪藻類を効果的に増殖させることができる。また、この方法によれば浮体Bはアンカーで水底などに固定されるので、高炉風砕スラグの流出の恐れもない。
また、浮体Bとしては海面上に浮設されるもののほかに、海面下に浮設されるものでもよい。
【0056】
図2(a)は、海面に浮設されたブイB1を利用したもので、ブイB1を海底に係留するロープCに適当な間隔で高炉風砕スラグAを入れた通水性の袋又は容器を固定したものである。また、図2(b)は、海面に浮設された筏B2を利用したもので、筏B2を海底に係留するロープCに適当な間隔で高炉風砕スラグAを入れた通水性の袋又は容器を固定したものである。さらに、図2(c)は海面に浮設されたブイB1を海底に係留するロープCに適当な間隔で板状又は箱状などの支持基盤Dを取付け、この支持基盤Dに高炉風砕スラグAそのもの又はこれを入れた通水性の袋又は容器を載せたものである。
【0057】
高炉風砕スラグAを入れた通水性の袋又は容器を浮体Bに保持させる構造は図2の形態に限定されるものではなく、例えば、上記袋又は容器を適当な固定手段により浮体Bの下部に直接取り付けるようにしてもよい。
また、高炉風砕スラグを沿岸又は沖合に設置する場合においては、高炉風砕スラグを入れた通水性の袋又は容器を水底または陸上に支持基盤を持つ構造物(例えば、海洋構造物)に保持させること、例えば構造物から吊り下げるようにすることもできる。
【0058】
珪藻類の増殖に必要な海水中でのケイ酸塩イオンの濃度は10μmol/L以上とされているが、このようなケイ酸塩イオン濃度は本発明法により高炉風砕スラグを海中に設置すること、好ましくは水深15m以内(より好ましくは水深10m以内)の海中に設置することによって容易に達成される。これにより表層海水中に珪藻類(シャットネラなどの鞭毛藻類の競合種)が安定的に繁殖し、赤潮の原因となるシャットネラなどの鞭毛藻類の異常増殖が防止される。また、珪藻類の安定的な繁殖は、これを食料とする魚介類の増殖にも効果があり、水産資源の増加にも効果がある。また、高炉風砕スラグからのケイ酸塩イオンの溶出は長期間継続するため、珪藻類の増殖及びこれに伴う赤潮防止効果も長期間に亘って継続することになる。また、高炉風砕スラグは上述したような特有の性状、外観及び作用を有しているため、水底に敷設されたスラグが人や生物を傷つける恐れがほとんどなく、また、繊維状スラグが混在することによって波浪、潮流などによる流出が抑制されるとともに、水中生物(動植物)の着生基盤として特に有効に機能し且つ優れた水質浄化作用も得られる。
【0059】
本発明法に基づく赤潮防止法が適用される主たる海域(旧来の赤潮多発海域)は主として内海や湾などにおいて河川流入栄養塩などにより富栄養化した海域であり、したがって所謂“磯焼け”が生じるような海域とは対照をなすような海域である。
また、以上の実施形態では本発明を海水域に適用する場合について説明したが、赤潮は汽水域や淡水域でも発生するものであり、したがって、本発明に基づく赤潮防止方法はこれらの水域に対しても適用することができる。
【0060】
本発明の水中又は水浜の環境改善方法の具体的な実施形態としては、以上説明した形態、すなわち磯焼け海域の藻場造成法、磯焼け防止法、赤潮防止法以外にも、例えば、磯焼け以外の原因で海藻成育環境が衰退・消失した海域の環境改善法(修復)等などがある。このような環境改善法においても、高炉風砕スラグの敷設形態などは先に磯焼け海域の藻場造成法や磯焼け防止法に関して述べたものと同様である。
【0061】
次に、本発明の水中又は水浜の環境改善方法の他の形態について説明する。
この形態では、高炉風砕スラグを硫化水素の発生源となる水底に青潮防材として敷設し、硫化水素の発生(さらには、海水の富栄養化)とこれにより引き起こされる青潮の発生を抑制する。
本発明により敷設材を敷設する対象となる水底とは、硫化水素の発生源である又は発生源となるおそれのある水底であり、具体的には、(1)水底に形成された凹部、(2)底層水中で硫化水素が検出された水域又は底層水中の溶存酸素濃度が所定値以下の水域の水底、(3)底層水の流速が所定値以下の水域の水底、(4)水中に水温又は/及び塩分濃度による密度躍層が形成された水域の水底、などが対象となる。
本発明法が適用される水域としては、港湾を含む海、河川、河口、湖沼等のいずれでもよい。
【0062】
硫化水素の主要な発生源は水が停滞しやすく、且つ有機物が堆積し、酸素消費量が多いヘドロ状の水底部であり、特に土砂採取等によって水底が部分的に掘られ、比較的深さのある凹部が形成された水底部において硫化水素が発生しやすい。すなわち、このような凹部内では水が停滞する結果、特に夏期において著しい無酸素状態となり、有機物の腐敗やバクテリア(硫酸還元菌)の作用によって大量の硫化水素が発生し、硫化水素を含んだ大量の無酸素水塊が生じる。このように凹部内で硫化水素が大量発生すると、凹部内やその周囲の棲息生物が減少するだけでなく、硫化水素を含んだ上記水塊が周辺水域に流出し、所謂青潮の発生に至る。また、凹部以外の水底部であっても、水が停滞しやすく且つ有機物が堆積して酸素消費量が多いヘドロ状の水底部では、同様に硫化水素が発生して硫化水素を含んだ無酸素水塊が生じ、底棲生物のへい死を招いたり、無酸素水塊が周辺水域に流出して青潮を発生させたりする。したがって、このような硫化水素発生源となる有機物が堆積した水底部に高炉風砕スラグを敷設し、或いは同じく有機物が堆積した凹部内に当該凹部を埋めるようにして高炉風砕スラグを敷設することにより、硫化水素の発生とこれにより引き起こされる青潮の発生を抑えることができる。また、高炉風砕スラグは上述したような特有の性状、外観及び作用を有しているため、水底に敷設されたスラグが人や生物を傷つける恐れがほとんどなく、また、繊維状スラグが混在することによって波浪、潮流などによる流出が抑制されるとともに、水中生物(動植物)の着生基盤として特に有効に機能し且つ優れた水質浄化作用も得られる。
【0063】
高炉風砕スラグを敷設する対象となる水底の凹部とは、通常は土砂採取や浚渫等によって水底に人為的に形成された穴状または溝状の凹部であるが、これに限定されるものではなく、例えば、自然に形成された水底の凹部や、土砂採取や元々の地形により傾斜面や浅い凹部が形成されている水底にケーソン等を設置することで人工的に形成された凹部等も対象となる。一般に凹部が形成される水底は泥質又は砂質である。
なお、凹部の定義としては、水の停滞等を考慮した場合、一般には周囲の水底面よりも2m以上深くなっている水底部を凹部としてよい。また、場合によっては、周囲の水底面よりも1m以上深くなっている水底部、或いは0.5m以上深くなっている水底部を凹部としてよい。
【0064】
ここで、本発明法が適用される凹部の種類や規模には特別な制約はないが、典型的な形態として以下のようものがある。
(a) 自然に存在する水底の凹部:このような水底の凹部は比較的面積が大きい。一般にこの種のもので本発明法の対象となる凹部は、平面的でみて最も幅が狭い部分の幅が50m以上、深さが2m以上あるような規模の凹部である。
(b) 土砂採取や浚渫等によって水底に人為的に形成された凹部:このような水底の凹部は比較的面積が小さい。一般にこの種のもので本発明法の対象となる凹部は、平面的でみて最も幅が狭い部分の幅が10m以上、深さが5m以上あるような規模の凹部である。
(c) 水底にケーソン等の構造物を設置した場所において、この構造物と水底(例えば、自然に存在する水底の凹部や、土砂採取や元々の地形により傾斜面や浅い凹部が形成されている水底)とより結果的に形成された凹部:このような水底の凹部も比較的面積が小さい。一般にこの種のもので本発明法の対象となる凹部は、平面的でみて最も幅が狭い部分の幅が10m以上、深さが2m以上あるような規模の凹部である。
【0065】
高炉風砕スラグを水底の凹部内に敷設する場合、敷設した敷設材(高炉風砕スラグ)上面により形成される水底面は、その周囲の水底面と略同等かそれ以上の高さを有することが好ましい。また、少なくとも、敷設された敷設材により形成される水底面Aの平均水深d1と凹部周囲(凹部近傍の周囲)の水底面Bの平均水深d0との差[d1−d0]が2m以下、好ましくは1m以下、より好ましくは0.5m以下、特に好ましくは0.3m以下(但し、いずれも[d1−d0]がマイナス値の場合を含む)となるようにすることが特に望ましい。この差[d1−d0]が2m以下、好ましくは1m以下、より好ましくは0.5m以下、特に好ましくは0.3m以下であれば、凹部が十分に浅くなるため凹部内外での水の流出入が円滑に行われるようになり(すなわち、凹部内での水の停滞がなくなる)、夏期等に凹部内の水が無酸素状態になるような現象が適切に防止できる。
【0066】
ここで、敷設材上面により形成される水底面Aの平均水深d1とは、敷設材により形成される水底面Aに起伏や凹凸があるために水深にバラツキがある場合に、その水底面を平らに均した際の水深であり、また、凹部周囲(凹部近傍の周囲)の水底面Bの平均水深d0とは、凹部周囲の水底面Bに起伏や凹凸があるために水深にバラツキがある場合に、その水底面を平らに均した際の水深である。
本発明法は、上述のように水底の形態(凹部)に基づいて敷設材の敷設場所を選定する以外に、底層水中の硫化水素又は溶存酸素濃度を測定し、底層水中で硫化水素が検出された水域又は底層水中の溶存酸素濃度が所定値以下の水域の水底に高炉水砕スラグを敷設するようにしてもよい。
【0067】
ここで、底層水とは水底の近くに存在する水のことであり、一般には水の深さ方向で水底から2m以内、好ましくは1m以内の水であればよい。本発明法では、このような底層水で硫化水素が検出され、或いは測定された溶存酸素濃度が所定値以下である水域の水底に敷設材を敷設する。硫化水素の場合は、それが底層水から検出されれば、その水域の水底に敷設材を敷設する。また、溶存酸素濃度の場合は、一般に底層水の溶存酸素濃度が飽和溶存酸素濃度の10%以下であると硫酸還元菌の作用によって硫化水素が発生するおそれがあるため、溶存酸素濃度が飽和溶存酸素濃度の10%以下の水域の水底に敷設材を敷設することが好ましい。また、一般に底層水の溶存酸素濃度が飽和溶存酸素濃度の60%以下であると底棲生物の棲息に問題を生じるため、溶存酸素濃度が飽和溶存酸素濃度の60%以下の水域の水底に敷設材を敷設するようにしてもよい。
【0068】
また、本発明法では、底層水の流速を測定し、その流速が所定値以下である水域の水底に、高炉風砕スラグを敷設するようにしてもよい。底層水の流速が小さく、水の停滞が生じやすい水底が硫化水素の発生源となりやすいからである。なお、底層水とは先に述べた通り水底の近くに存在する水のことであり、一般には水の深さ方向で水底から2m以内、好ましくは1m以内の水であればよい。
一般に底層水の流速が20cm/秒以下の水域は底層水の溶存酸素濃度や硫化水素濃度が水底の影響を強く受けるため、そのような流速の水域の水底に敷設材を敷設することが好ましい。
【0069】
さらに、本発明法では、水中に水温や塩分濃度による密度躍層が形成された水域の水底に高炉風砕スラグを敷設するようにしてもよい。水中に密度躍層が形成されると、大気から水中に供給される酸素が底層水まで拡散しにくくなり、硫化水素が発生しやすくなる。
密度躍層が形成されたことは水中の塩分濃度及び/又は水温等を測定することにより判定することができ、密度躍層が形成されたと判定されたときは、その水域の水底に敷設材を敷設する。
【0070】
以上のように本発明法において、(a)底層水中で硫化水素が検出された水域又は底層水中の溶存酸素濃度が所定値以下の水域の水底、(b)底層水の流速が所定値以下の水域の水底、(c)水中に水温又は/及び塩分濃度による密度躍層が形成された水域の水底、のいずれかを敷設材の敷設場所とする場合は、例えば、閉鎖性の高い港や湾(例えば、リアス式海岸等にある湾)等を対象とすることができる。
【0071】
上述したような高炉風砕スラグの作用からして、敷設材としては高炉風砕スラグ100%が最も好ましいと言えるが、高炉風砕スラグとそれ以外の素材、例えば、高炉風砕スラグ以外の高炉系スラグ、製鋼スラグなどの高炉系スラグ以外のスラグ、スラグ以外の素材を併用してもよい。高炉風砕スラグ以外の鉄鋼製造プロセスで発生するスラグとしては、高炉系スラグである高炉水砕スラグ、高炉徐冷スラグ;予備処理、転炉、鋳造等の工程で発生する脱炭スラグ、脱燐スラグ、脱硫スラグ、脱珪スラグ、鋳造スラグ等の製鋼スラグ;鉱石還元スラグ;電気炉スラグ等を挙げることができるが、これらに限定されるものではなく、また2種以上のスラグを混合して用いることもできる。
【0072】
また、これらのスラグは、水和処理、炭酸化処理、エージング、水和硬化、炭酸化硬化等を経たものを用いてもよい。また、スラグ以外の素材としては、資源のリサイクルという観点からは浚渫土、浚渫砂、都市ゴミスラグ、廃コンクリート、モルタルや耐火物の廃材等を用いることができるが、特に浚渫土や浚渫砂は海域への親和性の面から好ましい。また、それ以外に例えば建設発生残土、フライアッシュ、天然砂、天然石等を用いてもよい。
また、都市ゴミスラグや廃コンクリート等は、水和処理、炭酸化処理、エージング、水和硬化、炭酸化硬化等を経たものを用いてもよい。
【0073】
敷設材として高炉風砕スラグとそれ以外の素材とからなるものを用いる場合、上述したような高炉風砕スラグによる作用を適切に得るために、水底部(凹部を含む)に敷設された敷設材の50mass%以上、好ましくは80mass%以上が高炉風砕スラグで構成されることが望ましい。また、その場合には高炉風砕スラグとそれ以外の素材が混合されるか、又は高炉風砕スラグが上層側、それ以外の素材が下層側になるようにして水底部に敷設されることが好ましい。
【0074】
また、上層を高炉風砕スラグを含む敷設材で構成し、下層をそれ以外の素材からなる敷設材で構成する場合、上述したような高炉風砕スラグによる作用を適切に得るために、上層中の高炉風砕スラグの含有率は60mass%以上、好ましくは80mass%以上とすることが望ましい。
また、このように水底部の敷設材の上層を高炉風砕スラグ又は高炉風砕スラグを60mass%以上(好ましくは80mass%以上)含む敷設材で構成する場合、この上層の厚みは0.1m以上、好ましくは0.5m以上とすることが望ましい。この上層の厚みが0.1m未満では、その下方の硫化水素を含んだ水が簡単に通過してしまい、上述したような作用が十分に得られなくなる恐れがある。また、厚みが0.1m未満では施工の際の厚み管理自体も難しくなる。また、特にこの上層の厚みが1m以上あれば、当該上層部は底泥と混合しなくなるため、スラグが固結するようなことがなく、このため生物の棲息環境として好適な砂質水底を提供できる。
【0075】
なお、高炉風砕スラグとともに他のスラグを使用する場合において、脱珪スラグ、脱炭スラグ等の製鋼スラグを用いた場合、これらのスラグは酸化鉄の含有量が高いため高炉風砕スラグ等に較べて硫化水素や燐を固定化する作用が大きいという特徴がある。このため、例えば凹部内の敷設材の下層を製鋼スラグ又は製鋼スラグを含む敷設材で構成することにより、底泥中の硫化水素や燐を効果的に固定することができる。下層を製鋼スラグを含む敷設材で構成する場合、下層中の製鋼スラグの含有率は60mass%以上、好ましくは80mass%以上とすることが望ましい。下層中の製鋼スラグの含有率が60mass%未満では、上述した製鋼スラグに特有の作用が十分に得られない。
【0076】
また、このように敷設された敷設材の下層を製鋼スラグ又は製鋼スラグを60mass%以上(好ましくは80mass%以上)含む敷設材で構成する場合、この下層の厚みは0.1m以上、好ましくは0.3m以上とすることが望ましい。この下層の厚みが0.1m未満では、製鋼スラグによる泥質中の硫化水素や燐の固定が十分に行われる前に、硫化水素や燐を含んだ水がこの下層を通過してしまい、硫化水素や燐の固定化作用が十分に得られなくなるおそれがある。また、厚みが0.1m未満では、施工の際の厚み管理自体も難しくなる。
【0077】
以上述べたような各スラグの特性からして、凹部内やその他の水底部への敷設材の敷設形態としては、例えば、以下のようなものが考えられる。
▲1▼ 敷設材の全部:高炉風砕スラグ
▲2▼ 敷設材の上層:高炉風砕スラグ、敷設材の下層:高炉風砕スラグ以外のスラグ及び/又はスラグ以外の素材
▲3▼ 敷設材の上層:高炉風砕スラグ、敷設材の下層:製鋼スラグ
▲4▼ 敷設材の上層:高炉風砕スラグ、敷設材の中層:スラグ以外の素材又はスラグとスラグ以外の素材との混合物、敷設材の下層:製鋼スラグ
【0078】
図3(a)〜(d)は、それぞれ水底の凹部30に敷設材31(高炉風砕スラグ又は高炉風砕スラグを含む敷設材)を敷設した状態を示しており、図3(a)に示すように、敷設材31はこれにより形成される水底面Aの平均水深d1と凹部周囲の水底面Bの平均水深d0との差[d1−d0]が2m以下、好ましくは1m以下となるように(特に好ましくは、敷設材31により形成される水底面Aが凹部周囲の水底面Bと略同等かそれ以上の高さとなるように)敷設される。
【0079】
図3(a)は、高炉風砕スラグ100%の敷設材31又は高炉風砕スラグとそれ以外の素材(例えば、廃コンクリート)とを混合した敷設材31を凹部30内に敷設した実施形態を示している。また、図3(b)は、敷設材31として高炉風砕スラグとそれ以外の素材を用いたもので、高炉風砕スラグ以外の素材311(例えば、廃コンクリート)を下層側に、高炉風砕スラグ310を上層側にそれぞれ敷設した実施形態を示している。また、図3(c)は、敷設材31として高炉風砕スラグ310aとその他のスラグ310b(例えば、製鋼スラグ)を用いたもので、高炉風砕スラグ310aを上層側に、それ以外のスラグ310bを下層側にそれぞれ敷設した実施形態を示している。さらに、図3(d)は、浅い凹部が形成されている水底にケーソン32を設置することで人工的に形成された凹部30内に敷設材31(例えば、上記(a)〜(c)のような形態の敷設材)を敷設した実施形態を示している。
【0080】
また、凹部以外の水底に敷設材を敷設する場合も、敷設材中の高炉風砕スラグの含有率は60mass%以上、好ましくは80mass%以上とすることが望ましく、特に高炉風砕スラグのみからなる敷設材が最も好ましい。高炉風砕スラグ以外の敷設材としては、上述した各種スラグや都市ゴミスラグ、廃コンクリート等を用いることができる。また、敷設材の厚みは、上述したと同様の理由から0.1m以上、好ましくは0.5m以上とすることが望ましい。
【0081】
以上のようにして水底に敷設された高炉風砕スラグは、以下のような機構により青潮の発生原因である硫化水素の発生や水の富栄養化を抑制する。高炉風砕スラグは多量のCaOを含んでいるが、この高炉風砕スラグ中に含まれるCaOがCaイオンとして水中に溶出し、このようなCaイオンの溶出によって水中のpHが適度に高められ、この結果、硫化水素を発生させる硫酸還元菌の活動が抑制される。また、高炉風砕スラグに含まれるCaO、Fe2O3によって水中の硫化水素を固定化することにより、水中の硫化水素の低減化が図られる。さらに、高炉風砕スラグ中に含まれるCaOによって水中の燐が吸着・固定され、青潮発生等の要因の一つである水の富栄養化が抑制される。このため高炉風砕スラグを水底、特に水の停滞を生じ易い水底の凹部に敷設した場合、凹部内の底泥からの硫化水素の発生が抑制されるとともに、敷設材上部層の間隙水中での硫化水素の発生も抑制され、さらに、スラグ粒子への硫化水素や燐の固定化作用による水質浄化作用も得られる。また、敷設材の上部層は硫化水素が少なく溶存酸素の多い状態となるため着生する生物にとって棲息しやすい環境となり、生物の着生基盤としても高い機能を有することになる。
【0082】
また、高炉風砕スラグは上述したようにガラス質であることから、製鋼スラグなどに較べて含有成分の溶出や水中又は底泥中の成分との反応が非常にゆっくりと進行する。このため水中のpHを急激に上昇させたり、底質・水質の改善効果が短期間で消失することがない。また、水底に敷設された高炉風砕スラグはケイ酸塩イオンの放出源としても機能し、先に述べたような機構により水中にケイ酸塩イオンを溶出して珪藻類の増殖に寄与する。
【0083】
以上述べた本発明の各実施形態は、海岸に面した所謂浅場の造成又は修復を兼ねて行ってもよい。すなわち、主に海岸に面した海域において海藻類や魚介類の成育・棲息に適した所謂浅場が海砂の流失や浚渫などにより衰退・消失する場合があり、このような海底部を本来の浅場としての環境に造成又は修復することを兼ねて、その海底部に覆砂材等として高炉風砕スラグを敷設することができる。このようにして敷設された高炉風砕スラグは、生物の棲息に適した底質を提供する。
またこの場合、海流等による高炉風砕スラグの流失を防止するため、敷設された高炉風砕スラグの周囲に潜堤を設置することが好ましい。また、高炉風砕スラグの敷設領域には人工の海藻着生基盤や漁礁を設置し、海藻類や魚介類の成育・棲息環境を整えることが好ましい。
【0084】
高炉風砕スラグの流失を防止するための潜堤は任意の材料で構成することができるが、塊状スラグ(鉄鋼製造プロセスで発生した塊状スラグ)を積み上げて潜堤を構築することにより、例えばコンクリート製品を用いたり、コンクリート構造物を構築したりすることなく、簡易且つ安価に潜堤を形成することができる。高炉風砕スラグが元々粒状の形態であるのに対して、製鋼スラグ等は塊状のものが得られやすく且つ比重も大きいため、これを所定の高さに積み上げることにより堅牢な潜堤を構築することができ、しかもスラグが塊状であるため海流等により消失する恐れもない。また、先に述べたように製鋼スラグには底質や水質を浄化する作用もあるため、水中の環境改善にも寄与できるという利点がある。
【0085】
使用する塊状スラグとしては、高炉で発生する高炉徐冷スラグ(但し、この高炉徐冷スラグは水中でSが溶出しないようにするため、十分にエージング処理したものが好ましい)、予備処理、転炉、鋳造等の工程で発生する脱炭スラグ、脱燐スラグ、脱硫スラグ、脱珪スラグ、鋳造スラグ等の製鋼スラグ、鉱石還元スラグ、電気炉スラグ等が挙げられ、これらの2種以上を用いてもよい。またこれらのスラグのなかでも、高比重であるという点では脱炭スラグ、鋳造スラグが特に好ましい。またスラグの大きさとしては、一般に塊径が30mm程度以上のものが好ましい。
【0086】
また、上記潜堤は後述するようなスラグを主原料とするブロック、すなわち、鉄鋼製造プロセスで発生したスラグを主原料とする粉粒状原料を炭酸反応で生成させたCaCO3を主たるバインダーとして固結させて得られたブロック、鉄鋼製造プロセスで発生したスラグを主原料とする水和硬化体ブロックなどで構成することもできる。これらのブロックを適当に積み上げることにより、堅牢な潜堤を構築することができる。これらと上記塊状スラグを併用してもよい。
高炉風砕スラグの敷設領域に設置される人工の海藻着生基盤や漁礁は、自然石、ブロック、鋼製構造体等の任意のもので構成することができるが、特に、上述したような鉄鋼製造プロセスで発生した塊状スラグ、鉄鋼製造プロセスで発生したスラグ(鉄鋼スラグ)を主原料とする粉粒状の原料を炭酸固化させて得られたブロック、或いは同じく鉄鋼スラグを主原料とする水和硬化体ブロックなどを用いるのが好ましい。
【0087】
これらのうち鉄鋼製造プロセスで発生した塊状スラグについては、先に述べた通りである。
また、主原料である鉄鋼スラグを炭酸固化させて得られたブロックとしては、例えば特許第3175694号で提案されている、鉄鋼スラグを主原料とする粉粒状原料を炭酸化反応で生成させたCaCO3(場合によっては、さらにMgCO3)を主たるバインダーとして固結させ、塊状させたものを用いることができる。また、鉄鋼スラグとしては、先に挙げたような各種スラグ、すなわち高炉で発生する高炉水砕スラグ、高炉徐冷スラグ、高炉風砕スラグ;予備処理、転炉、鋳造等の工程で発生する脱炭スラグ、脱燐スラグ、脱硫スラグ、脱珪スラグ、鋳造スラグ等の製鋼スラグ;鉱石還元スラグ;電気炉スラグ等を用いることができる。
【0088】
このような鉄鋼スラグを炭酸固化させて得られたブロック(石材)は、▲1▼スラグ中に含まれるCaO(またはCaOから生成したCa(OH)2)の大部分がCaCO3に変化するため、CaOによる海水のpH上昇を防止できる、▲2▼スラグに適量の鉄分(特に、金属鉄、含金属鉄材)が含まれることにより、この鉄分が海水中に溶出することで海水中に栄養塩として鉄分が補給され、これが海藻類の育成に有効に作用する、▲3▼スラグを炭酸固化して得られたブロックは全体(表面及び内部)がポーラスな性状を有しており、このため石材表面に海藻類が付着し易く、しかも石材内部もポーラス状であるため、石材中に含まれている海藻類の成育促進に有効な成分(例えば、ケイ酸塩イオンや鉄分)が海水中に溶出しやすい、などにより海藻の着生基盤や漁礁として有効に機能する。また、主原料であるスラグの一部又は全部として高炉系スラグを用いることにより、上述したようなケイ酸塩イオンの溶出を特に促進することができるため、海藻成育環境の改善や磯焼け防止、赤潮防止などに特に有効である。このためブロックの全原料又は主原料を高炉水砕スラグや高炉風砕スラグなどの高炉系スラグとすることが最も好ましい。
【0089】
また、鉄鋼スラグを主原料とする水和硬化ブロックは、鉄鋼スラグを主原料(骨材及び/又は結合材)として含む原料を水和硬化させて得られるものであり、鉄鋼スラグとしては、先に挙げたような各種スラグ、すなわち高炉で発生する高炉水砕スラグ、高炉徐冷スラグ、高炉風砕スラグ;予備処理、転炉、鋳造等の工程で発生する脱炭スラグ、脱燐スラグ、脱硫スラグ、脱珪スラグ、鋳造スラグ等の製鋼スラグ;鉱石還元スラグ;電気炉スラグ等を用いることができる。水和硬化によるブロックの製造では、原料を水と混練後、型枠に入れ、通常1〜4週間養生することによってブロックが製造される。
【0090】
また、主原料(骨材及び/又は結合材)であるスラグの一部又は全部として高炉系スラグを用いることにより、上述したようなケイ酸塩イオンの溶出を特に促進することができるため、海藻成育環境の改善や磯焼け防止、赤潮防止などに特に有効である。このためブロックの全原料又は主原料を高炉水砕スラグや高炉風砕スラグなどの高炉系スラグとすることが最も好ましい。
なお、ブロックに用いる結合材としては、上述した高炉水砕スラグの微粉末などの他にシリカ含有物質(例えば、粘土、フライアッシュ、ケイ砂、シリカゲル、シリカシューム)、セメント、消石灰、NaOHなどを適宜組み合わせて使用することもできる。
【0091】
以上のようなブロックを高炉風砕スラグの敷設領域に設置する場合には、個々のブロックを高炉風砕スラグ層上に設置してもよいし、複数のブロックを積み上げ或いは組み付けてもよい。特に、ブロックに漁礁としての機能を持たせる場合には、複数のブロックを積み上げ或いは組み付けることにより、複数のブロック間に魚介類が棲息できるような空間部を形成することが好ましい。
また、塊状スラグを高炉風砕スラグの敷設領域に設置する場合には、例えばスラグを山状に積み上げたり、或いはスラグを金網籠など入れて設置するなど、任意の設置形態を採ることができる。
【0092】
以上述べたような高炉風砕スラグを敷設材とする浅場の造成又は修復において、高炉風砕スラグの流出防止用の潜堤として塊状スラグ及び/又はスラグを主原料とするブロックを用い、且つ高炉風砕スラグの敷設領域に設置する海藻着生基盤や漁礁としても、塊状スラグ及び/又はスラグを主原料とするブロックを用いることにより、先に述べたようなスラグによる水中の環境改善作用(すなわち、珪藻類の増殖による海藻類成育環境の改善作用や磯焼け・赤潮の発生抑制作用、硫化水素の発生防止による青潮の発生抑制作用、底質・水質の浄化作用など)が最も効果的に得られ、しかも浅場・干潟・アマモ場などの造成又は修復用の資材として天然資源を用いることなく、100%リサイクル材(鉄鋼スラグ)を用いることができ、リサイクル材の有効利用、施工の低コスト化、天然資源の利用による環境破壊の防止などの面からも極めて有利である。
【0093】
図4は、高炉風砕スラグを敷設材とする浅場の造成又は修復の一実施形態を示したもので、33は水底に適当な厚さに敷設された高炉風砕スラグ、34は敷設された高炉風砕スラグの流失を防止するために高炉風砕スラグ33の周囲に設置された潜堤であり、この潜堤34は塊状スラグ(製鋼スラグ)を積み上げることにより構築されている。さらに、35は敷設された高炉風砕スラグ層上に積み上げられることにより海藻着生基盤及び/又は漁礁を構成するブロックであり、このブロック35としては、鉄鋼スラグを主原料とする粉粒状原料を炭酸固化させて得られたブロック、或いは同じく鉄鋼スラグを主原料とする水和硬化体ブロックなどを用いる。
【0094】
このように高炉風砕スラグ33を海底に敷設するとともに、その流失防止用の潜堤34として塊状スラグを用い、さらに高炉風砕スラグ33の敷設領域に鉄鋼スラグで構成されたブロック35を海藻着生基盤及び/又は漁礁として設置することにより、海藻類や魚介類の成育・棲息環境に最も適した浅場が造成又は修復されることになる。なお、以上述べた浅場の造成又は修復においても、高炉風砕スラグの敷設形態などは先に磯焼け海域の藻場造成法や磯焼け防止法に関して述べたものと同様である。
【0095】
次に、本発明で使用する特に好ましい高炉風砕スラグについて説明する。
高炉風砕スラグを海底などに沈設すると、沈設状況や海域の状況によって沈設初期に表面からカルシウムイオンが溶解し、これによりスラグ粒子周囲の水のpHが高くなる結果、スラグのケイ酸塩ネットワークが腐食切断され、さらに周囲の水のpHが上昇するとともに、スラグ中のS(硫黄)が水中に溶出する場合がある。このようにスラグ沈設直後にスラグ粒子周囲の水のpHが高くなったり、スラグからSが溶出したりすることは、海底や水中に棲息する生物にとって望ましいことではない。この現象はスラグ沈設から数週間で解消し、その後の高炉水砕スラグはケイ酸塩イオンの供給や硫化水素の発生抑制等を通じた環境改善効果を発揮する。また、pHの上昇中はケイ酸塩イオンがカルシウムイオンと反応して水和物を形成するため、水へのケイ酸塩イオン供給効果も低下する。また、スラグ敷設厚みが厚くなると、pH上昇により溶解したケイ酸塩イオン、アルミネートイオン、カルシウムイオンの濃度が高まり、スラグ粒子どうしが固結することもある。このようなスラグの固結が生じても問題のない環境もあるが、海底に敷設した高炉風砕スラグ内に多数の底棲生物が棲息する環境を作ることは好ましいことであり、この意味で沈設したスラグ粒子どうしが固結しないことが好ましい。
【0096】
以上のような沈設初期におけるスラグ粒子からのS溶出やスラグ粒子周囲の水のpH上昇といった問題は、予め高炉風砕スラグに対して酸素含有ガス(例えば、空気)の吹き込み又は酸素含有ガスと水蒸気の吹き込みによるエージング処理を施しておくことにより適切に回避することができる。
すなわち、高炉風砕スラグに酸素含有ガスの吹き込み又は酸素含有ガスと水蒸気の吹き込みによるエージング処理を施することにより、高炉風砕スラグのスラグ粒子表面のSが酸化(S→SO4 2−)され、さらには水蒸気の吹き込みにより生成した水分によりSが洗い流される。そして、エージング処理によりスラグ粒子表面には水和物皮膜が生成され、この水和物皮膜がSの酸化物を安定に取り込み、且つこの水和物皮膜は中性化されることから、水中への沈設初期におけるスラグ粒子周囲の水のpH上昇が抑えられるととともに、スラグからのSの溶出が抑制され或いはSの溶出速度を非常に小さくすることができる。
【0097】
エージング処理していない高炉風砕スラグの場合には、沈設初期においてスラグ周囲の水が高pH化し、このような高pH下ではカルシウムイオンとの反応によるC−S−Hの生成によってケイ酸塩イオンが固定化されてしまうため、ある期間が経過し、水のpHが低下してC−S−Hが生成しない環境になってはじめてケイ酸塩イオンの周囲への溶出が本格化する。これに対してエージング処理した高炉風砕スラグは、沈設初期において周囲の水を高pH化させないため、沈設初期の段階から水中へのケイ酸塩イオンの供給が始まり、沈設初期においてケイ酸塩イオンの供給能力が低下するといった問題を生じない。
【0098】
したがって、高炉風砕スラグの沈設初期においても、底棲生物などの棲息に適した環境が形成されるとともに、高炉風砕スラグの沈設初期からケイ酸塩イオンが水中に供給され、先に述べたようなケイ酸塩イオンによる水中の環境改善効果が表れる。また、スラグ粒子表面に形成された中性化した水和物皮膜によって水中でのスラグ粒子どうしの固結も生じにくく、この面でも底棲生物が棲息しやすい環境を形成できる。さらに、高炉風砕スラグの輸送や貯蔵中の固結による塊状化もなくなり、所望の粒度の高炉風砕スラグを沈設できるなど、スラグの品質管理も容易となる。エージング処理により水和物皮膜が形成された高炉風砕スラグは、スラグからのCaイオンの過剰な溶出は抑えられるが、それでも微量のCaイオンが水中に溶出する。そして、このような微量のCaイオンの溶出によって水中のpHが適度に高められ、この結果、硫化水素を発生させる硫酸還元菌の活動が抑制される。
【0099】
次に、高炉風砕スラグのエージング処理の具体的な方法について説明する。
高炉風砕スラグのエージング処理は、高炉風砕スラグの堆積物又は充填層に対して所定の時間、酸素含有ガス又は酸素含有ガスと水蒸気を吹き込むことにより行う。ここで、上記酸素含有ガスとしては一般には空気が用いられるが、これに限定されるものではない。特に、空気に酸素を富化したガス(酸素富化空気)を用いることにより処理効率を高めることができる。なお、以下の説明では酸素含有ガスとして“空気”を用いる場合を例にエージング処理の好ましい形態を示す。
【0100】
例えば、空気の吹き込みによりエージング処理を行う場合、例えば、露天にて高炉風砕スラグの堆積物の下部から空気の吹き込みを行うか、或いは高炉風砕スラグを容器内に充填し、このスラグが充填された容器内を閉鎖空間にしてスラグの充填層の下部から空気の吹き込みを行う。空気の吹き込みは連続的又は間欠的に1日(24時間)以上、好ましくは4日以上、特に好ましくは1週間以上行う。空気の吹き込みを間欠的に行う場合、例えば、空気の連続吹き込み:数時間〜数十時間、空気吹き込み休止:数時間〜数十時間を交互に行う。このように空気の吹き込みを間欠的に行うことにより、少ない吹き込み空気量により低コストでエージング処理を行うことができる。また、スラグからのSの溶出速度が小さいため、間欠的な吹き込みによって空気の供給を一時的に停止しても、次に空気を吹き込んだ時点でSが酸化されるので効率的である。
【0101】
また、空気と水蒸気の吹き込みによりエージング処理を行う場合、例えば、露天にて高炉風砕スラグの堆積物の下部から空気と水蒸気の吹き込みを行うか、或いは高炉風砕スラグを容器内に充填し、このスラグが充填された容器内を閉鎖空間にしてスラグの充填層の下部から空気と水蒸気の吹き込みを行う。空気と水蒸気の吹き込みは連続的又は間欠的に1日(24時間)以上、好ましくは2日(48時間)以上、特に好ましくは1週間以上行う。空気や水蒸気の吹き込みを間欠的に行う場合、例えば、空気又は水蒸気の連続吹き込み:数時間〜数十時間、空気又は水蒸気吹き込み休止:数時間〜数十時間を交互に行う。空気とともに水蒸気を吹き込むことにより、エージングの効果をより高めることができる。これは、水蒸気によってSが溶出するための反応速度と水和物生成の反応速度が高まるためである。
【0102】
空気の吹き込みによりエージング処理を行う場合、空気の吹き込み量は、100〜5000NL/slag−ton・hr程度とすることが好ましい。空気の吹き込み量が100NL/slag−ton・hr未満ではスラグ層内を十分な酸化雰囲気とすることができず、酸化されないSが残留してしまう。一方、空気の吹き込み量が5000NL/slag−ton・hrを超えると効果が飽和し、却って経済性を損う。
また、空気と水蒸気の吹き込みによりエージング処理を行う場合、空気及び水蒸気の吹き込み量は、空気:100〜5000NL/slag−ton・hr、水蒸気:1〜20kg/slag−ton・hr程度とすることが好ましい。このうち空気の吹き込み量の理由は先に述べた通りである。また、水蒸気の吹き込み量が1kg/slag−ton・hr未満では、スラグ層が十分に加温されないため水蒸気を吹き込むことによる効果が十分に得られない。一方、水蒸気の吹き込み量が20kg/slag−ton・hrを超えると効果が飽和し、却って経済性を損う。
【0103】
高炉風砕スラグの堆積物の下部から空気又は空気と水蒸気の吹き込みを行う場合、例えば、スラグ堆積物の下部に穴あきホースを敷設し、この穴あきホースからスラグ堆積物内に空気又は空気と水蒸気を吹き込む等の方法が採られる。また、高炉風砕スラグの堆積物や容器内のスラグ充填層などに空気と水蒸気を吹き込む場合、空気と水蒸気は混合した状態で共通の吹き込み手段からで吹き込んでもよいし、別個の吹き込み手段で吹き込んでもよい。また、空気と水蒸気は常に同時期に吹き込む必要はなく、例えば、空気の吹き込みを連続して実施している期間の一部において蒸気の吹き込みを連続的又は間欠的に実施してもよい。
【0104】
次に、高炉風砕スラグの製造方法について説明する。
高炉風砕スラグは、溶融状態の高炉スラグに高圧空気や高圧ミスト等を吹き付けして粒状化・急冷することにより製造される。本発明で使用される高炉風砕スラグの製造方法に特に特別な制限はなく、従来公知の任意の方法で得られた高炉風砕スラグを用いることができるが、特に形状性に優れているという点で、以下のような製造方法で得られた高炉風砕スラグが好ましい。すなわち、この製造方法は、溶融状態の高炉スラグにガス流を吹き付けて粒状化し、その粒状化されたスラグを冷却器に導き、この冷却器内で前記粒状化されたスラグを旋回させながら下方に移動させつつ、前記冷却器内に霧状または蒸気状の水を供給して前記粒状化されたスラグを冷却し、前記冷却器の底部から高炉風砕スラグとして排出・回収するものである。
【0105】
この製造方法によれば、最初に水を用いずガス流により溶融状態の高炉スラグを粒状化するので、スラグ形状を良好に保つことができ、その後、冷却器で粒状化後のスラグを旋回させ、かつ霧状または蒸気状の水を供給して粒状化されたスラグを冷却するので、風砕スラグの融着が防止され、このため溶融状態のスラグを高速で吹き飛ばすことが可能となり、コンパクトな装置により細粒で形状性の良い高炉風砕スラグを得ることができる。
【0106】
以下、上記製造方法の一実施形態について具体的に説明する。
図5は、上記製造方法を実施するための設備の一例を示す断面図である。この高炉風砕スラグ(以下、単に「風砕スラグ」という)の製造設備は、容器20から注入された溶融状態のスラグL(以下、溶融スラグという)を一旦貯留し、その流出口1aから溶融スラグを流下させるタンディッシュ1と、このタンディッシュ1から流下した溶融スラグLに圧力ガス、典型的には圧力空気を吹き付けるノズル2と、圧力ガスが吹き付けられることにより風砕されて粒状化したスラグS(風砕スラグ)を冷却するとともに固気分離のためのコーン形状を有する冷却器3とを備えている。
【0107】
前記冷却器3は、コーン型を有する本体部3aと、この本体部3aの上部に設けられた風砕スラグSを導入する導入部3bと、本体部3aの底部に設けられた筒状をなす排出部3cとを有している。冷却器3の導入部3bには、水を噴霧する噴霧ノズル4が複数設置されている。また、本体部3aの側壁には水およびガスの混合体を噴霧する水/ガス噴霧ノズル5が複数設置されている。そして、導入部3bから圧力ガスのガス流とともに本体部3aに達した風砕スラグSはその中で旋回しながら落下可能となっている。
また、冷却器3内には、その中で生じた高温水蒸気またはその他の高温ガスを排出するための排気管6が冷却器3内の下部中央から垂直上方にその外側まで延出するように挿入されている。
【0108】
前記冷却器3の下方には冷却器3と離隔した位置に、風砕スラグSを回収するとともに回収した風砕スラグSを二次冷却する回収容器7が設けられている。この回収容器7の風砕スラグ入口部には、開閉扉8が設けられており、また回収容器7の側面下部には風砕スラグ排出用の開閉ゲート9が設けられている。また、回収容器7の上面には、回収容器7内で発生した高温水蒸気およびその他の高温ガスを排出する排気管10が接続されている。この回収容器7の底部の全面には多数の孔が設けられており、これらの孔には回収容器7内の風砕スラグSを冷却するためのガス、例えば空気を吐出するガス吐出配管11が接続されている。また、回収容器7には開閉ゲート9から風砕スラグSを掻き出すための掻き出し棒13が備え付けられている。冷却器3から排出された風砕スラグSはベルトコンベア14により回収容器7の上方に搬送され、その上部に設けられた装入口から回収容器7の中に装入される。なお、符号15は保温カバーである。
前記排気管6および10は熱回収設備12に接続されており、冷却器3および回収容器7から排出された高温水蒸気およびその他の高温ガスが熱源として回収され、熱が取り出されるようになっている。
【0109】
このように構成される風砕スラグの製造設備においては、まず、容器20からタンディッシュ1に溶融スラグLを注入し、タンディッシュ1に貯留された溶融スラグSをその流出口1aから流下させ、流下した溶融スラグLにノズル2から圧力ガス、典型的には圧力空気を吹き付け、粒状化した風砕スラグとするとともに、冷却器3に導入する。
冷却器3の導入部3bにおいては、風砕スラグSに噴霧ノズル4から水を噴霧する。これにより風砕スラグは1000〜1200℃程度に冷却される。冷却器3の導入部3bから本体3aに入った風砕スラグは、水/ガス噴霧ノズル5から噴霧された水およびガスの混合体が供給されながら、ノズル2からのガス流や水/ガス噴霧ノズル5からの噴出流等によりコーン型の本体3aの内壁に沿ってサイクロン状に旋回しつつ落下し、排出部3cから排出され、ベルトコンベア14により回収容器7に搬送される。この場合に風砕スラグは、水/ガス噴霧ノズル5から噴霧された水およびガスの混合体により冷却されるとともにサイクロン状に旋回するため、冷却器3の内壁に内で風砕スラグが融着することが回避される。
【0110】
この場合に、冷却器3から排出される風砕スラグの温度は900℃以下が好ましい。900℃以下であれば回収容器7内での風砕スラグの融着が防止され、所望の細粒を得ることができる。その際の温度は低くてもよいが、あまり低すぎると熱回収の効率が低下するため、冷却器3から排出される風砕スラグの温度は700〜900℃の範囲が好ましい。一方、冷却器3内で発生した高温水蒸気およびその他の高温ガス(高温空気等)は排気管6を通って熱回収設備12に導かれ、有効利用が図られる。
回収容器7に所定量の風砕スラグSが貯留された段階で、開閉扉8を閉め、回収容器7内で発生した高温水蒸気およびその他の高温ガス(高温空気等)を配管10から熱回収設備12へ導く。そして、回収容器7内の風砕スラグSをガス配管11から吐出したガスにより輸送可能な温度まで冷却した後、掻き出し棒13により開閉ゲート9を開にした状態で回収容器7から排出し、適宜の手段で輸送する。
【0111】
この実施形態の風砕スラグの製造方法によれば、最初に水を用いずガス流により溶融スラグを風砕して粒状化するので、風砕スラグは角張った形状とならず、ほぼ球径の形状性の良好な風砕スラグとすることができ、その後、冷却器3で粒状化後のスラグを旋回させ、かつ水および気体を噴霧して風砕スラグを冷却するので、冷却中に風砕スラグの融着が生じず、そのため溶融スラグを高速で吹き飛ばすことができる。したがって、コンパクトであるにもかかわらず細粒の風砕スラグを得ることができる。
また、冷却器3内および回収容器7内で生成した高温水蒸気およびその他の高温ガスを熱源として直接回収するので効率良く熱回収を行うことができる。また、冷却器3から排出される風砕スラグSの温度を700〜900℃とすることにより、スラグ粒子の融着が生じない範囲で高効率で熱回収を行うことができる。なお、上記設備においては、冷却器3から排出された風砕スラグSをベルトコンベア14により回収容器7に搬送し、そこで熱回収用の高温水蒸気等の供給・排気および二次冷却を行うようにしたが、冷却器3から回収容器7に直接に風砕スラグSを落下させるようにしてもよい。
【0112】
[高炉風砕スラグの製造例]
図5に示す設備により、高炉風砕スラグを製造した。タンディッシュ1からの溶融スラグの流下速度を0.4t/minとし、ノズルから240Nm3/minの速度で圧力空気を流下している溶融スラグ(高炉スラグ)に吹き付けた。冷却器3として高さ9m、最大直径3mのものを用い、噴霧ノズル4から水を噴霧して本体部3aの入口部での風砕スラグ温度を1150℃とした。また、水/ガス噴霧ノズル5から水およびガスの混合体を噴霧することにより、冷却器3の出口では風砕スラグの温度が850℃であった。また、排気管6から排気される高温水蒸気および高温空気の温度は約400℃であった。回収容器7では、空気を100Nm3/minの流量で回収された風砕スラグSに供給して風砕スラグSを約200℃まで冷却し開閉ゲート9から排出した。このとき排気管10から排出される高温水蒸気および高温空気の温度は200〜700℃であった。得られた風砕スラグは、平均粒径が0.5〜1.5mmの細粒であり、粒子形状はほぼ球形であった。
【0113】
【実施例】
[実施例1]
・発明例(1)
図6に示すように磯焼けした岩礁性の海底の凹部に高炉風砕スラグを20cm厚さで10m×10mの範囲に設置した。その後、この付近の海底部での珪藻類及び大型海藻類の着生の調査を継続して行った。その結果、スラグ設置1週後には、スラグ設置場所近傍の岩礁に付着珪藻が観察され、スラグ設置1ヶ月後にはスラグ設置場所から海流の下流側30mまで付着珪藻が観察された。また、大型の海藻類は、スラグ設置1ヶ月後にスラグ設置場所の近傍に観察され、スラグ設置6ヶ月後には海流の下流側25mの範囲で観察された。また、長期の観察では、5年経過した後も6ヶ月後と同様に珪藻類と大型の海藻類が観察された。特に大型の海藻類はその種類も増加した。
【0114】
・発明例(2)
砂質の海底で、その周囲20mの岩礁性海底部が磯焼け状態となっている海域において、図7示すように砂質部に高炉風砕スラグを50cmの厚さで30m×30mの範囲に設置した。さらに、その上に製鋼スラグ硬化体及び製鋼スラグを設置し、人工の岩礁を作った。その後、この付近の海底部での付着珪藻及び大型海藻類の着生の調査を継続して行った。その結果、スラグ設置1週間後には、スラグ設置場所の人工岩礁に付着珪藻が観察され、スラグ設置1ヶ月後にはスラグ設置場所から20m離れた岩礁においても付着珪藻が観察された。また、大型の海藻類については、スラグ設置1ヶ月後にスラグ設置場所の人工岩礁に観察され、スラグ設置6ヶ月後には設置場所から20m離れた岩礁においても観察された。長期の観察では、5年経過した後も6ヶ月後と同様に人工岩礁と天然岩礁の双方に珪藻類と大型海藻類が観察された。特に大型の海藻類はその種類も増加した。
【0115】
[実施例2]
・発明例(1)
沿岸から沖合500m〜1kmの赤潮多発海域(湾内)において、海岸近くの海底に高炉風砕スラグを略30cmの厚さに敷設した。その敷設範囲は海岸線から沖合に40m(水深2〜7m)までの範囲であって、海岸線の総延長200mの範囲とした。
高炉風砕スラグの設置後(設置時期は夏期)、その設置場所と旧来の赤潮発生ポイント(海域)の表層海水中のケイ酸塩濃度と珪藻量とを継続的に調査した。その結果を表1に示す。これによれば、高炉風砕スラグの設置2週間後には、その設置場所と旧来の赤潮発生ポイントでの表層海水中のケイ酸塩濃度が増加しており、元々ケイ酸塩濃度の低かった赤潮発生ポイントでも珪藻量が増加していた。また、高炉風砕スラグの設置後3年間調査を継続したが、この間赤潮の発生は全く認められず、また高炉風砕スラグの設置場所では海藻や魚介類も多数観察された。
【0116】
【表1】
【0117】
・発明例(2)
沿岸から沖合5kmの水深約40mの赤潮多発海域(内海)にブイを浮かべ、高炉風砕スラグを入れた通水性の袋を前記ブイから吊した。通水性の袋としては土嚢袋を用い、1つの土嚢袋には高炉風砕スラグを10kg入れ、これをロープに50cm間隔で水深10m位置まで複数個に取り付け、ロープの上部をブイに固定するとともに、ロープ下部にアンカーを取り付けてブイを海底に係留した。そして、このような高炉風砕スラグ入りの土嚢袋を取り付けたロープを上記赤潮多発海域の500m四方に100m間隔で設置した。
【0118】
高炉風砕スラグの設置後(設置時期は夏期)、高炉風砕スラグ設置海域とその外側海域(高炉風砕スラグ設置場所から3km離れた海域)の表層海水中のケイ酸塩濃度と珪藻量とを継続的に調査した。その結果を表2に示す。これによれば高炉風砕スラグの設置1週間後には高炉風砕スラグ設置海域における表層海水中のケイ酸塩濃度と珪藻量はその外側海域よりも増加していた。また、赤潮が高炉風砕スラグ設置海域の外側海域で発生した場合にも、高炉風砕スラグ設置海域には赤潮は流入せず、顕著な赤潮防止効果が確認された。
【0119】
【表2】
【0120】
[実施例3]
・発明例(1)
湾内の平坦な水底(砂質上に泥質が堆積した水底)に形成された直径が約30mの凹部(深掘り部分)に、高炉風砕スラグを凹部周囲の水底面との平均高低差が1m以下([d1−d0]≦1m)となるように敷設した。敷設厚みは約15mであった。
敷設材の敷設後、3年にわたって半年毎に敷設部水底面の直上、敷設部から50m離れた地点での水底面の直上及び敷設部から100m離れた地点での水底面の直上の各位置で水の硫化水素濃度を測定した。また、敷設してから3年後の敷設材上面レベル(水底面)の沈下量(平均値)を測定した。それらの結果を表3に示す。
【0121】
・発明例(2)
湾内の平坦な水底(砂質上に泥質が堆積した水底)に形成された直径が約20mの凹部(深掘り部分)に、高炉風砕スラグ60mass%、高炉徐冷スラグ10mass%、製鋼スラグ20mass%、都市ゴミスラグ10mass%の混合物を凹部周囲の水底面との平均高低差が1m以下([d1−d0]≦1m)となるように敷設した。敷設厚みは約10mであった。
敷設材の敷設後、3年にわたって半年毎に敷設部水底面の直上、敷設部から50m離れた地点での水底面の直上及び敷設部から100m離れた地点での水底面の直上の各位置で水の硫化水素濃度を測定した。それらの結果を表3に示す。
【0122】
・発明例(3)
湾内の平坦な水底であって、砂質上に泥質が堆積した水底の50m×50mの範囲に、高炉風砕スラグ90mass%、製鋼スラグ10mass%の混合物を厚さ50cmに敷設した。
敷設材の敷設後、3年にわたって半年毎に敷設部水底面の直上、敷設部から50m離れた地点での水底面の直上及び敷設部から100m離れた地点での水底面の直上の各位置で水の硫化水素濃度を測定した。それらの結果を表3に示す。
【0123】
・比較例(1)
湾内の平坦な水底(砂質上に泥質が堆積した水底)に形成された直径が約40mの凹部(深掘り部分)に、海砂を凹部周囲の水底面との平均高低差が1m以下([d1−d0]≦1m)となるように敷設した。敷設厚みは約8mであった。
敷設材の敷設後、3年にわたって半年毎に敷設部水底面の直上、敷設部から50m離れた地点での水底面の直上及び敷設部から100m離れた地点での水底面の直上の各位置で水の硫化水素濃度を測定した。それらの結果を表3に示す。
【0124】
・比較例(2)
湾内の平坦な水底(砂質上に泥質が堆積した水底)に形成された直径が約30m、深さ10mの凹部(深掘り部分)について、発明例1における敷設材の敷設時とほぼ同時期から3年にわたって半年毎に深掘部水底面の直上、深掘部から50m離れた地点での水底面の直上及び深掘部から100m離れた地点での水底面の直上の各位置で水の硫化水素濃度を測定した。その結果を表3に示す。
【0125】
【表3】
【0126】
[実施例4]
底層水の溶存酸素濃度が約2ppm(飽和溶解度:約7ppm)となっている水域(約400m四方の水域)の海底に高炉風砕スラグを厚さ約20cmに敷設した。1ヶ月経過後に、スラグ敷設水域の底層水の溶存酸素濃度を測定したところ約4ppmに上昇していた。
[実施例5]
底層水の硫化水素濃度が0.6〜1.4ppmとなっている水域(約1ha)の海底に高炉風砕スラグを厚さ約35cmに敷設した。1ヶ月経過後、6ヶ月経過後、1年経過後にそれぞれスラグ敷設水域の底層水の硫化水素濃度を測定(測定方法:検知管式、検出限界:0.01ppm)したが、硫化水素は検出されなかった。
【0127】
[実施例6]
底層水の流速が3cm/秒の水域(約1.5ha)の海底に高炉風砕スラグを厚さ約3mに敷設した。このスラグ敷設前とスラグを敷設してから3ヶ月経過後の底層水の水質を比較したところ、スラグ敷設前は硫化水素濃度が1.7ppm、溶存酸素濃度が0.1ppmであったのに対し、スラグを敷設してから3ヶ月経過後では硫化水素濃度が検出限界以下に、溶存酸素濃度が4.8ppmにそれぞれ改善された。
【0128】
[実施例7]
海水塩分濃度による密度躍層(表層水の塩分濃度:1.3%、底層水の塩分濃度:2.5%)が形成された水域(約10ha)の海底に高炉風砕スラグを厚さ約0.2mに敷設した。このスラグ敷設前とスラグを敷設してから3ヶ月経過後の底層水の水質を比較したところ、スラグ敷設前は硫化水素濃度が3.5ppm、溶存酸素濃度が0.1ppmであったのに対し、スラグを敷設してから3ヶ月経過後では硫化水素濃度が検出限界以下に、溶存酸素濃度が3.1ppmにそれぞれ改善され、また、高炉風砕スラグの敷設により水底が浅くなったため、底層水の塩分濃度も2.2%まで低下した。
【0129】
[実施例8]
海水温による密度躍層(表層水の水温:26℃、底層水の水温:15℃)が形成された水域(約0.5ha)の海底に高炉風砕スラグを厚さ約3mに敷設した。このスラグ敷設前とスラグを敷設してから6ヶ月経過後の底層水の水質を比較したところ、スラグ敷設前は硫化水素濃度が1.1ppm、溶存酸素濃度が0.2ppmであったのに対し、スラグを敷設してから6ヶ月経過後では硫化水素濃度が検出限界以下に、溶存酸素濃度が3.8ppmにそれぞれ改善され、また、高炉風砕スラグの敷設により水底が浅くなったため、底層水の水温も16℃まで上昇した。
【0130】
[実施例9]
高炉風砕スラグを露天で高さ5mに積み上げ、このスラグ堆積物の下部に敷設した穴あきホースからスラグ堆積層内に空気を所定時間を吹き込むことによりエージング処理を行った。このエージング処理を施した高炉風砕スラグをスラグの10倍の量の海水に2週間浸漬し、2週間後の海水のpHと硫化水素濃度を測定した。なお、海水はスラグを浸漬してから1週間後に1回交換した。
また、参考例として高炉風砕スラグを露天で高さ5mに積み上げて放置しただけのエージング処理を実施し、この高炉風砕スラグについても同様の試験を行った。
それらの結果を表4に示す。同表によれば、空気の吹き込みによるエージング処理を所定時間施した高炉風砕スラグを用いた本発明例では、空気の吹き込みを行うことなくエージング処理を施した高炉風砕スラグを用いた参考例に較べて、海水のpH上昇が抑えられるとともに、硫化水素の発生も効果的に抑えられていることが判る。
【0131】
【表4】
【0132】
[実施例10]
本実施例では、高炉風砕スラグを露天で積み上げ、このスラグ堆積物の下部から空気を1日おきに間欠的(1日吹き込み−1日吹き込み休止)吹き込むエージング処理(空気吹き込み量:100NL/slag−ton・hr)を14日間実施した高炉風砕スラグを用いた。
沿岸から沖合500m〜1kmの赤潮多発海域(湾内)において、海岸近くの海底に上記高炉風砕スラグを略30cmの厚さに敷設した。その敷設範囲は海岸線から沖合に40m(水深2〜7m)までの範囲であって、海岸線の総延長200mの範囲とした。
【0133】
高炉風砕スラグの設置後(設置時期は夏期)、その設置場所と旧来の赤潮発生ポイント(海域)の表層海水中のケイ酸塩濃度と珪藻量とを継続的に調査した。その結果を表5に示す。これによれば、高炉風砕スラグの設置2週間後には、その設置場所と旧来の赤潮発生ポイントでの表層海水中のケイ酸塩濃度が増加しており、元々ケイ酸塩濃度の低かった赤潮発生ポイントでも珪藻量が増加していた。また、高炉風砕スラグの設置後3年間調査を継続したが、この間赤潮の発生は全く認められず、また高炉風砕スラグの設置場所では海藻や魚介類も多数観察された。
【0134】
【表5】
【0135】
[実施例11]
・発明例
アサリの生息基盤としての効果を確認するため、水深2mの平坦な海域の10m四方の領域に高炉風砕スラグを約50cmの厚さに敷設し、中央付近の2m四方の領域上に平均重量0.6gのアサリを1000個体/m2の密度(重量600g/m2)で散布した。1年後にアサリの個体数(殻長15mm以上の個体)及びその全重量を計測した結果では、アサリの個体数は850個体に減少していたが、1個体当たりのアサリの重量は平均7.4g(全重量6290g/m2)で、全重量は約10倍に増加していた。
・比較例
水深2mの平坦な海域(上記本発明例の場所に隣接した場所)の10m四方の領域に海砂を約50cmの厚さに敷設し、中央付近の2m四方の領域上に平均重量0.6gのアサリを1000個体/m2の密度(重量600g/m2)で散布した。1年後にアサリの個体数(殻長15mm以上の個体)及びその全重量を計測した結果では、アサリの個体数は780個体に減少しており、1個体当たりのアサリの重量は平均5.8g(全重量4524g/m2)で、全重量は約7.5倍の増加であった。
【0136】
[実施例12]
・発明例
アマモの生息基盤としての効果を確認するため、水深2mの平坦な海域の10m四方の領域に高炉風砕スラグを約50cmの厚さに敷設し、中央付近の2m四方の領域上にアマモを40株/m2の密度で移植した。1年後の生息株数を計測した結果では、アマモは株数が48株/m2に増加していた。
・比較例
水深2mの平坦な海域(上記本発明例の場所に隣接した場所)の10m四方の領域に海砂を約50cmの厚さに敷設し、中央付近の2m四方の領域上にアマモを40株/m2の密度で移植した。1年後の生息株数を計測した結果では、アマモは株数が35株/m2に減少していた。
【0137】
【発明の効果】
以上述べたように本発明の水中又は水浜の環境改善方法は、養浜、浅場・アマモ場・干潟・人工海浜等の造成・修復、磯焼け防止や磯焼けなどにより海藻成育環境が衰退・消失した海域での藻場造成・修復、赤潮の防止、青潮の防止などに優れた効果が得られるとともに、低コストに実施可能であり、しかも敷設材によって生物や人が傷などを負うおそれがない、水中生物や人に好ましい水中又は水浜環境を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による水中又は水浜の環境改善方法の一実施形態である赤潮防止法において、赤潮防止材を水底に直接敷設した実施形態を示す説明図
【図2】本発明による水中又は水浜の環境改善方法の一実施形態である赤潮防止法において、赤潮防止材を浮体から吊すことにより水中に設置した実施形態を示す説明図
【図3】本発明による水中又は水浜の環境改善方法の他の実施形態を示す説明図
【図4】本発明による水中又は水浜の環境改善方法の他の実施形態において、造成された浅場を示す説明図
【図5】高炉風砕スラグの製造設備の一例を示す断面図
【図6】本発明の実施例1における磯焼け海域の藻場造成の実施状況を示す説明図
【図7】本発明の実施例2における磯焼け海域の藻場造成の実施状況を示す説明図
【符号の説明】
1…タンディッシュ、2…ノズル、3…冷却器、4…噴霧ノズル、5…水/ガス噴霧ノズル、6,10…排気管、7…回収容器、12…熱回収設備、30…凹部、31…敷設材、32…ケーソン、33…高炉風砕スラグ、34…潜堤、35…ブロック、310…スラグ、310a…高炉風砕スラグ、310b…高炉風砕スラグ以外のスラグ、311…スラグ以外の素材、A…高炉風砕スラグ、B1…ブイ、B2…筏、C…ロープ、D…支持基盤、L…溶融スラグ、S…風砕スラグ、X,Y…水底面、
Claims (36)
- 水中又は水浜に、環境改善材として高炉風砕スラグを設置することを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
- 水底又は水浜に、養浜材、浅場造成材、アマモ場造成材、干潟造成材、人工海浜造成材又は覆砂材として高炉風砕スラグを敷設することを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
- 水底又は水浜に敷設される養浜材、浅場造成材、アマモ場造成材、干潟造成材、人工海浜造成材又は覆砂材であって、高炉風砕スラグからなることを特徴とする水中又は水浜の環境改善用資材。
- 水中又は水浜にケイ酸塩イオン放出源として、高炉風砕スラグを設置することを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
- 磯焼けが生じている海底部に、磯焼け防止材として高炉風砕スラグを設置することにより、磯焼け海域での藻場造成を行うことを特徴とする請求項4に記載の水中又は水浜の環境改善方法。
- 天然又は人工の海藻着生基盤の周囲又は近傍に高炉風砕スラグを設置することにより、磯焼け海域での藻場造成を行うことを特徴とする請求項5に記載の水中又は水浜の環境改善方法。
- 高炉風砕スラグを設置した後、人工の海藻着生基盤を設置することにより、磯焼け海域での藻場造成を行うことを特徴とする請求項6に記載の水中又は水浜の環境改善方法。
- 磯焼けが生じるおそれがある海底部に、磯焼け防止材として高炉風砕スラグを設置することにより、磯焼けを防止することを特徴とする請求項4に記載の水中又は水浜の環境改善方法。
- 天然又は人工の海藻着生基盤の周囲又は近傍に高炉風砕スラグを設置することにより、磯焼けを防止することを特徴とする請求項8に記載の水中又は水浜の環境改善方法。
- 高炉風砕スラグを設置した後、人工の海藻着生基盤を設置することにより、磯焼けを防止することを特徴とする請求項9に記載の水中又は水浜の環境改善方法。
- 磯焼けが発生している海底部又は磯焼けの発生を予防すべき海底部に設置される磯焼け防止材であって、高炉風砕スラグからなることを特徴とする水中又は水浜の環境改善用資材。
- 海水域、汽水域又淡水域において、水中に赤潮防止材として高炉風砕スラグを設置することにより赤潮発生を防止することを特徴とする請求項4に記載の水中又は水浜の環境改善方法。
- 水深15m以内の水中に高炉風砕スラグを設置することにより、赤潮発生を防止することを特徴とする請求項12に記載の水中又は水浜の環境改善方法。
- 高炉風砕スラグを水底に直接敷設することにより、赤潮発生を防止することを特徴とする請求項12又は13に記載の水中又は水底の環境改善方法。
- 高炉風砕スラグを通水性を有する袋又は容器に入れ、該袋又は容器を水底に設置することにより赤潮発生を防止することを特徴とする請求項12又は13に記載の水中又は水底の環境改善方法。
- 高炉風砕スラグを通水性を有する袋又は容器に入れ、該袋又は容器を水面又は水面下に浮設した浮体に保持させることにより赤潮発生を防止することを特徴とする請求項12又は13に記載の水中又は水浜の環境改善方法。
- 赤潮が発生している海域又は赤潮の発生を予防すべき海域に設置される赤潮防止材であって、高炉風砕スラグからなることを特徴とする水中又は水浜の環境改善用資材。
- 海岸に面した海底に高炉風砕スラグを敷設するとともに、該高炉風砕スラグの敷設領域の周囲にスラグ流失防止用の潜堤を設置し、且つ該高炉風砕スラグの敷設領域には人工の海藻着生基盤及び/又は漁礁を設置したことを特徴とする請求項4に記載の水中又は水浜の環境改善方法。
- 潜堤の少なくとも一部を、鉄鋼製造プロセスで発生した塊状のスラグ、鉄鋼製造プロセスで発生したスラグを主原料とする粉粒状原料を炭酸反応で生成させたCaCO3を主たるバインダーとして固結させて得られたブロック、鉄鋼製造プロセスで発生したスラグを主原料とする水和硬化体ブロックの中から選ばれる1種以上で構成したことを特徴とする請求項18に記載の水中又は水浜の環境改善方法。
- 人工の海藻着生基盤及び/又は漁礁の少なくとも一部を、鉄鋼製造プロセスで発生した塊状のスラグ、鉄鋼製造プロセスで発生したスラグを主原料とする粉粒状原料を炭酸反応で生成させたCaCO3を主たるバインダーとして固結させて得られたブロック、鉄鋼製造プロセスで発生したスラグを主原料とする水和硬化体ブロックの中から選ばれる1種以上で構成したことを特徴とする請求項18又は19に記載の水中又は水浜の環境改善方法。
- 硫化水素発生源である水底に、高炉風砕スラグを敷設することを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
- 水底に形成された凹部内に、全部又は一部が高炉風砕スラグからなる敷設材を敷設することを特徴とする水中又は水浜の環境改善法。
- 底層水中で硫化水素が検出された水域又は底層水中の溶存酸素濃度が所定値以下の水域の水底に、全部又は一部が高炉風砕スラグからなる敷設材を敷設することを特徴とする水中又は水浜の環境改善法。
- 底層水の流速が所定値以下の水域の水底に、全部又は一部が高炉風砕スラグからなる敷設材を敷設することを特徴とする水中又は水浜の環境改善法。
- 水中に水温又は/及び塩分濃度による密度躍層が形成された水域の水底に、全部又は一部が高炉風砕スラグからなる敷設材を敷設することを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
- 水底に形成された凹部内に、全部又は一部が高炉風砕スラグからなる敷設材を敷設し、該敷設材により形成される水底面の平均水深d1と凹部周囲の水底面の平均水深d0との差[d1−d0]を2m以下(但し、[d1−d0]がマイナス値の場合を含む)とすることを特徴とする水中又は水浜の環境改善方法。
- 敷設材が高炉風砕スラグと高炉風砕スラグ以外の素材とからなり、該敷設材は、前記高炉風砕スラグとそれ以外の素材が混合された状態であるか、又は前記高炉風砕スラグが上層側、それ以外の素材が下層側になるようにして凹部内に敷設されることを特徴とする請求項22、23、24、25は26に記載の水中又は水浜の環境改善方法。
- 凹部内に敷設された敷設材の50mass%以上が高炉風砕スラグからなることを特徴とする請求項22、23、24、25、26又は27に記載の水中又は水浜の環境改善方法。
- 凹部に敷設された敷設材の上層が高炉風砕スラグを60mass%以上含むことを特徴とする請求項22、23、24、25、26、27又は28に記載の水中又は水浜の環境改善方法。
- 硫化水素の発生源となる水底に敷設される青潮防止材であって、高炉風砕スラグからなることを特徴とする水中又は水浜の環境改善用資材。
- 高炉風砕スラグが、粒径0.5mm以上のスラグ粒子の割合が90mass%以上の高炉風砕スラグであることを特徴とする請求項1、2、4、5、6、7、8、9、10、12、13、14、15、16、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28又は29に記載の水中又は水浜の環境改善方法。
- 高炉風砕スラグが、粒径1.0mm以上のスラグ粒子の割合が70mass%以上の高炉風砕スラグであることを特徴とする請求項1、2、4、5、6、7、8、9、10、12、13、14、15、16、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28又は29に記載の水中又は水浜の環境改善方法。
- 高炉風砕スラグが、酸素含有ガスの吹き込み又は酸素含有ガスと水蒸気の吹き込みによるエージング処理を施したスラグであることを特徴とする請求項1、2、4、5、6、7、8、9、10、12、13、14、15、16、18、19、20、21、22、23、23、24、25、26、27、28、29、31又は32に記載の水中又は水浜の環境改善方法。
- 高炉風砕スラグが、粒径0.5mm以上のスラグ粒子の割合が90mass%以上の高炉風砕スラグであることを特徴とする請求項3、11、17又は30に記載の水中又は水浜の環境改善用資材。
- 高炉風砕スラグが、粒径1.0mm以上のスラグ粒子の割合が70mass%以上の高炉風砕スラグであることを特徴とする請求項3、11、17又は30に記載の水中又は水浜の環境改善用資材。
- 高炉風砕スラグが、酸素含有ガスの吹き込み又は酸素含有ガスと水蒸気の吹き込みによるエージング処理を施したスラグであることを特徴とする請求項3、11、17、30、34又は35に記載の水中又は水浜の環境改善用資材。
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Cited By (5)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP2006068732A (ja) * | 2004-08-06 | 2006-03-16 | Hiroshima Univ | 水域環境改善材およびそれを用いる水域環境改善方法 |
| JP2006141299A (ja) * | 2004-11-19 | 2006-06-08 | Jfe Steel Kk | 海草類の着生基盤の改質又は造成方法 |
| JP2014008050A (ja) * | 2012-07-03 | 2014-01-20 | Nippon Steel & Sumitomo Metal | 水圏環境修復材料 |
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| CN117617167A (zh) * | 2023-12-15 | 2024-03-01 | 中交第二航务工程局有限公司 | 适用于潮间带与近岸浅海的组合式人工生态礁及其构建方法 |
-
2003
- 2003-02-04 JP JP2003027684A patent/JP2004236545A/ja active Pending
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