JP2004236792A - 糖尿病合併症因子吸着体 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、少なくとも1つ以上のメルカプト基を有する吸着リガンドに対してメルカプト基を介して水不溶性担体に固定化させることにより、吸着リガンドの水不溶性担体への固定化反応時の吸着リガンドの失活を最小限に抑えることが可能な糖尿病合併症因子吸着体及び該吸着体の製造方法と、該吸着体を充填した除去容器、並びに、その使用方法の提供を目的とする。
【解決手段】(1)少なくとも1つ以上のメルカプト基を有する吸着リガンドに対してメルカプト基を介して水不溶性担体に固定化させることを特徴とする糖尿病合併症因子吸着体。
(2)上記(1)項に記載の糖尿病合併症因子吸着体が充填されてなる糖尿病合併症因子除去容器内に体液由来の被処理液を接触させることで被処理液中に含まれる糖尿病合併症因子を被吸着物質として選択的に除去することを特徴とする糖尿病合併症因子除去器の使用方法。
【選択図】なし
【解決手段】(1)少なくとも1つ以上のメルカプト基を有する吸着リガンドに対してメルカプト基を介して水不溶性担体に固定化させることを特徴とする糖尿病合併症因子吸着体。
(2)上記(1)項に記載の糖尿病合併症因子吸着体が充填されてなる糖尿病合併症因子除去容器内に体液由来の被処理液を接触させることで被処理液中に含まれる糖尿病合併症因子を被吸着物質として選択的に除去することを特徴とする糖尿病合併症因子除去器の使用方法。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、少なくとも1つ以上のメルカプト基を有する化合物に対してメルカプト基を介して水不溶性担体に固定化させたことを特徴とする糖尿病合併症因子吸着体及び該吸着体の製造方法、該吸着体を充填した吸着器、該吸着器を用いた糖尿病合併症因子の除去方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、糖尿病性腎症が悪化することで、人工透析を受ける患者が急激に増加しており、1998年以降の新規透析導入患者の主原因は糖尿病性腎症となり、以降、透析導入の主原因として位置づけられている。人工透析導入の原疾患としては、糖尿病性腎症と慢性糸球体腎炎で過半数を占めることが知られているが、透析導入後の生存率に大きな違いがある。評価施設において若干の違いがあるものの、糖尿病性腎症患者の透析導入後の50%生存率は3〜4年とされるのに対して、慢性糸球体腎炎患者の50%生存率は10年程度かそれ以上と言われ、明らかに糖尿病性透析患者の予後が悪く、社会的問題となっているが解決の兆しが全く見えてこない。
【0003】
この原因として糖尿病合併症の発症機序が未だ不明瞭であることが挙げられる。ところが最近になって、糖尿病合併症の共通の病変と言える血管病変を発症する病因物質の候補として、AGE(advanced glycation endproducts)に代表される各種変性物質に注目が集まった。
【0004】
AGEとは、主に糖尿病性合併症の原因物質と考えられているものであり、血液中に存在するブドウ糖に代表される還元糖、その代謝産物や反応産物と、タンパク質や脂質などの低分子が酵素の関与なしに、つまり、非酵素的に結合する前進性糖化反応(advanced glycation)の産物であり、総称してカルボニルストレス産物とも呼ばれることもある。
【0005】
当時は、還元糖等とタンパク質等の非酵素的反応体であるカルボニルストレス産物について、蛍光性、褐色性、架橋性、脱水、酸化、縮合、転移など様々な特徴が発見されたが、どれもカルボニルストレス産物が持つ病因性、つまり、糖尿病合併症因子としての証拠を直接説明できるものではなかった。カルボニルストレス産物の一つであるAGEの評価方法についても、以前はその特徴の一つである蛍光特性で血液中の測定を試みている例がよくあり、特開平6−312134号公報(特許文献1)では、ヒト血漿中のAGEを、励起波長390nm、蛍光波長450nmで測定を試みている(例えば、非特許文献1参照。)。しかし、蛍光測定は試験管内の前進性糖化反応の確認には用いられるが、血液中では夾雑物や薬剤の非特異蛍光の影響も多くあることと、また、ペントシジンなど励起波長335nm、蛍光波長385nmといった異なる蛍光特性のものも発見されるなど(例えば、非特許文献2参照。)、上記蛍光特性を持つAGEはほんの一部に過ぎないことが分かりだした。更に、AGEの主構造と考えられているCML(カルボキシメチルリジン)やCEL(カルボキシエチルリジン)には蛍光特性がないことが知られており、現在、ヒト血漿中のAGEを励起波長390nm、蛍光波長450nmで単純に測定することは、信頼性のある測定法ではないと認識されている。以来、蛍光特性による評価も測定手順に分子篩や化学処理を施したり、蛍光がどのAGE構造の蛍光を反映するかを考慮して評価するようになった。また、特異的な免疫学的測定方法で測定を試みる動きもある。これまで同定されたAGE構造はCML、CEL、ペントシジン、ピラリン、クロスリン、フルオロリンク、イミダゾロン、X1、アルグピリミジンなど10種類程度あるが、これら全てのAGE構造がカルボニルストレス産物として病因性を持っているわけではないとも言われている(例えば、非特許文献3参照。)。このためAGEに始まるカルボニルストレス原因説がより一層複雑になっているという問題があり、糖尿病性合併症に代表される各種血管病変を引き起こす糖尿病合併症因子としてのカルボニルストレス産物のみを正確に検出する方法でさえ極めて乏しい状態であった。
【0006】
一方で、糖尿病合併症因子としての性質を持つ非酵素的変性物質は、主に細胞上のある特殊な受容体と結合することで引き起こされることが分かってきた。その多くは一般的にスカベンジャー受容体と呼ばれるものだが、本来別の機能を有する受容体にカルボニルストレス産物などの非酵素的変性物質が相互作用することで病因性を引き起こす場合も報告されている。ガレクチン−3、RAGE(Receptor for AGE)などである。特にRAGEは糖尿病の3大合併症である腎症、網膜症、神経症の発症を引き起こすだけではなく、動脈硬化も助長することがわかってきた。最近になり、動物レベルでRAGEと糖尿病状態で亢進するある特定の物質との相互作用で糖尿病性合併症などの血管障害が引き起こされることが証明されつつある(例えば、非特許文献4参照。)。現在、糖尿病合併症因子の病因性を引き出す経路はRAGEが最も重要であると考えられている。
【0007】
AGEに代表されるRAGE結合物質に対する吸着体は既に幾つかの種類が知られている。例えば、抗AGE抗体をビーズに結合させることで作製した吸着材(例えば、非特許文献5参照。)が知られているが、これら吸着体はリジン等の1級アミノ基と優先的に反応する水不溶性担体を用いており、RAGE結合物質に対する吸着性能が1級アミノ基に強く依存する場合には、担体に固定化した際に吸着性能を大幅に損なう欠点があった。また、上記の固定化方法では、吸着体に固定化させる吸着リガンドの方向性を制御することが困難であり、抗体やペプチド等の結合部位が分子中の特定部位にしか存在しないような化合物では、吸着リガンドの結合部位が担体との固定化反応によって立体障害を起こし、被吸着物質である糖尿病合併症因子の吸着効率を大きく損ねる欠点もあった。吸着効率が損ねられると、糖尿病合併症因子に対する十分な吸着性能を出すために、水不溶性担体への固定化反応に必要な吸着リガンドの量や糖尿病合併症因子を十分除去するために必要な吸着体量が増加するので、吸着体の製造コストの増加や吸着体を充填した吸着容器の容量が増えるなどの問題点も出てくる。従って、担体との固定化反応時に糖尿病合併症因子に対する吸着リガンドの吸着性能を如何に損なわずに効率よく固定化した吸着体やその製造方法が強く求められていた。
【0008】
【特許文献1】
特開平6−312134号公報
【0009】
【非特許文献1】
マキタ(Makita Z),他8名, 「糖尿病性神経障害患者における前進性糖化反応産物(Advanced glycosylation end products in patients with diabetic nephropathy.)」,ザ・ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディスン(The New England Journal of Medicine),1991年,第325巻,p838
【0010】
【非特許文献2】
ミヤタ(Miyata T), 他7名,「末期腎不全尿毒症患者の循環に於けるアルブミン結合性及び遊離性ペントシジンの蓄積:ペントシジンの病態生理学に於ける腎性関与(Accumulation of albumin−linked and free−form pentosidine in the circulation of uremic patients with end−stage renal failure: renal implications in the pathophysiology of pentosidine.)」,ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ソサイエティー・オブ・ネフロロジー(Journal of the American Society Nephrology),1996年,第7巻,8号,p1198−1206
【0011】
【非特許文献3】
ミヤタ(Miyata T), 他8名,「末期腎不全患者での前進性糖化最終産物の形成に於ける増加した酸化ストレスの関与(Implication of an increased oxidative stress in the formation of advanced glycation end products in patients with end−stage renal failure.)」,キドニー・インターナショナル(Kidney International),1997年,第51巻,4号,p1170−1181
【0012】
【非特許文献4】
ヤマモト(山本靖彦), 他8名,「ヒトRAGEをトランスジーンとしたマウスの糖尿病性腎病変」,糖尿病(Journal of the Japan Diabetes Society ),1999年,第42巻,補1,pS−194
【0013】
【非特許文献5】
バスタ(Basta G),「前進性糖化最終産物は信号伝達受容体RAGEを経由して内皮細胞を活性化する:炎症反応の増幅に対する機序(Advanced glycation endproducts activate endothelium through signal−transduction receptor RAGE: a mechanism for amplification of inflammatory responses.)」,サーキュレーション(Circulation),2002年,第105巻,第7号,p816−822
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、少なくとも1つ以上のメルカプト基を有する吸着リガンドに対してメルカプト基を介して水不溶性担体に固定化させることにより、吸着リガンドの水不溶性担体への固定化反応時の吸着リガンドの失活を最小限に抑えることができる糖尿病合併症因子吸着体、該吸着体の製造方法と、該吸着体を充填した除去容器、並びに、その使用方法の提供を目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために主として以下の構成を有する。
「(1)少なくとも1つ以上のメルカプト基を有する吸着リガンドに対してメルカプト基を介して水不溶性担体に固定化させることを特徴とする糖尿病合併症因子吸着体。」
「(2)上記(1)項に記載の糖尿病合併症因子吸着体が充填されてなる糖尿病合併症因子除去容器内に体液由来の被処理液を接触させることで被処理液中に含まれる糖尿病合併症因子を被吸着物質として選択的に除去することを特徴とする糖尿病合併症因子除去容器の使用方法。」
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0017】
本発明で言うところの糖尿病合併症因子とは、糖尿病性合併症を引き起こす病因物質の総称であり、糖尿病患者の体内から検出されるのであれば特に限定されない。好ましくは、RAGEと結合するRAGE結合物質であればよい。RAGE結合物質の例としては、AGEだけではなく、ある種の炎症マーカーの一群であるHMG−1に代表されるハイモビリティータンパク質ファミリー、血清アミロイドA、S100/カルグラニュリンスーパーファミリー、トランスサイレチンと呼ばれる物質でもよく、RAGEと結合が認められるならば、特に限定を受けるものではない。また、これらのRAGE結合物質を総称して、EN−RAGE(extracellular newly identified RAGE−binding protein)とも定義されており(Cell、97巻、889頁、1999年)、今後も新規のRAGE結合物質が分離同定される可能性が高いと考えられる。さらに好ましくは、AGEであるが、AGEにも様々な構造のものがあり、いっそう好ましくは、RAGE結合性のAGEである。AGEはタンパク質、ホルモン、糖類、脂質、ビタミン等に代表される生体物質とグルコースに代表される還元糖との非酵素的反応で生み出されるものであるが、必ずしも、還元糖はグルコースに限定される必要はなく、グリコールアルデヒドやグリセルアルデヒド、メチルグリオキサール、グリオキサール、3−デオキシグルコゾン等のα−ヒドロキシアルデヒド化合物やジカルボニル化合物であってもよい。また、AGEの生成途中でヒドロキシラジカルや一酸化窒素、パーオキシナイトライト等の各種ラジカルによる酸化変性があっても良く、生成経路や反応基質に特に限定を受けるものではなく、酸化性反応の結果に生成した変性物質であれば特に限定を受けものではない。特にRAGE結合物質に重要なことは、RAGEと結合することで病因性が認められるということである。
【0018】
ここで言う糖尿病合併症因子の病因性とは、糖尿病合併症因子と細胞が接触することで、各種サイトカインの誘導、細胞遊走化促進、DNA合成の亢進、接着分子発現亢進や線維化、NF−κBの活性化による酸化ストレスの誘導、細胞や組織の物質透過性亢進などの何れかもしくは複数の現象を引き起こし、結果として、動脈硬化、腎症、網膜症、神経症などの血管病変や持続的炎症を引き起こすことを言う。また、糖尿病合併症因子は必ずしも糖尿病に限定されて見られる増悪因子ではなく、人工透析や各種腎疾患など排泄・代謝機能の低下の場合にも見られることがある。更には、敗血症や癌転移、アルツハイマー病、過炎症等にもRAGEの関与が示唆されているので、RAGEが関与する疾病ならば、如何なるものも限定を受けることなく、該疾病患者に認められるものならば、糖尿病合併症因子と解釈されて良い。便宜上、糖尿病合併症因子と定義しているのは、特に糖尿病患者で検出されて、且つ、該患者で多く見られる、血管病変に関わる病因物質の総称のためである。
【0019】
本発明でいうところの吸着リガンドとは、糖尿病合併症因子吸着体を構成する重要な部分であり、被吸着物質である糖尿病合併症因子に対して親和性のある化合物の総称である。上記化合物の特徴として、少なくとも1つ以上のメルカプト基を有することは言うまでもないが、好ましくは、更に少なくとも1つ以上の塩基性官能基を有することが好ましい。付け加えて、製造工程における環境負荷低減のためには有機溶媒使用を極力回避する必要があるので、親水性の吸着リガンドであることがより好ましい。いっそう好ましくは、廃棄処理環境下で分解が容易なペプチド誘導体である。また、水不溶性担体への固定化反応前に吸着リガンドを溶解することが必要であるが、溶解のためにやむを得ず有機溶媒を用いることも可能である。使用が許される有機溶媒は環境負荷が極力低い溶媒であることが好ましいのは言うまでもないが、例えば、DMSOやメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロパノール等の低分子アルコールが例として挙げられるが、特に限定されない。
【0020】
そして、吸着リガンド中の塩基性官能基とは特に限定されないが、窒素含有官能基であることが好ましい。窒素含有官能基の例としては、脂肪族アミノ基や複素環中の窒素が挙げられるが、特に限定されない。さらに好ましくは、アミノ酸中に見出される窒素含有官能基であり、例えば、主要な物として、リジンやオルニチン、アルギニン、ヒスチジンが挙げられるが、生物中に見出されるアミノ酸であれば、特に問題なく使用可能である。また、吸着リガンド内の塩基性官能基の個数は、1つ以上ならば問題なく用いることが可能であり、好ましくは2つ以上、さらに好ましくは3つ以上であることがよい。更には、上記吸着リガンド内に含まれるメルカプト基は、1つ以上であれば何ら問題なく使用可能であり、2つ以上存在しても受け入れることが出来る。ただし、メルカプト基が3つ以上存在する場合には、奇数個のメルカプト基が存在することが望ましいが、特に記載の内容に限定されるものではない。
【0021】
本発明において、メルカプト基を介して水不溶性担体に固定化させる方法としては、具体的には、吸着リガンドをヨード化アルキル基に代表されるハロゲン化アルキル基と反応させる方法やチオールジスルフィド交換反応を利用して固定化することや、トレシル基との反応を利用して固定化することや、マレイミド基との反応を利用して固定化することが好ましいが、特にこの反応方法にのみ限定されない。また、アミノ基を介した固定化用官能基として用いられるN−ヒドロキシスクシンイミド基やエポキシ基等もメルカプト基を介した固定化反応でも利用可能である。更には、ハロメチル基、ハロアセチル基、ハロアセトアミドメチル基に代表される活性化ハロゲン基でも利用できる。加えて、カルボキシル基、イソシアン酸基、チオイソシアン酸基、酸無水物基なども利用してもよい。そして、例えば、吸着リガンド中のメルカプト基に対して、N−(8−マレイミドカプリロキシ)スルホスクシンイミドを反応させてから、水不溶性担体中のアミノ基と反応させて固定化するような、吸着リガンドと水不溶性担体の間に適宜スペーサーを介して固定化することも可能であるが、メルカプト基を介した固定化反応方法については、特に記載の内容に限定されるものではない。
【0022】
本発明で言うところのペプチド誘導体とは、少なくとも1つ以上の塩基性官能基と少なくとも1つ以上のメルカプト基を有する条件と、ペプチド結合が少なくとも2つ以上存在するアミノ酸重合物であれば全く問題はなく、さらには、アミノ酸以外の化合物が更に含まれていても特に問題はない。アミノ酸以外の化合物は、糖や脂質といった生体由来の化合物でも良く、生体に存在しない芳香族環や脂肪族系化合物であっても良い。また、ペプチド誘導体を構成するアミノ酸は、生体内に存在するアミノ酸であれば全く問題はないし、D体アミノ酸という生体内で支配的に見出されるL体アミノ酸の鏡像体が含まれていても特に問題なく使用できる。好ましくは、ペプチド誘導体内の塩基性官能基が2つ以上含まれていれば良く、その塩基性官能基はアミノ基やアンモニウムイオン基、複素環や環状化合物で構成されていても問題はない。また、塩基性官能基は生理的条件下で該官能基が塩基性を示せばより好ましいものである。更に、上記のペプチド誘導体が直鎖状でも環状ペプチド化合物、或いは、双方の複合体でも良く、特に限定を受ける物ではない。更に好ましくは、RAGEのIgVドメイン由来ペプチドであることが望ましい。また、ペプチド誘導体を構成するアミノ酸数は少なくとも3つ以上ならば特に限定されないが、好ましくは342個以下であり、より好ましくは76個以下であり、さらに好ましくは31個以下であり、いっそう好ましくは20個以下である。
【0023】
本発明で言うところのRAGE部分配列誘導体とは、完全長RAGEのなかのRAGE結合物質が結合できるペプチド領域を含めた部分配列であり、好ましくは、IgVドメイン内の配列の一部を含めたものである。完全長RAGEとは、ヒトの場合、404個のアミノ酸から構成され、そのうちN末端から22個のアミノ酸で構成されるシグナル配列を有するため、結果的に382個のアミノ酸として受容体を形成する。そのうちで、糖尿病合併症因子と吸着できるアミノ酸配列を含む細胞外ドメインは、342個のアミノ酸で構成されている。また、細胞外ドメインは、更に細かいドメインに分類され、即ち、全アミノ酸配列404個の中でN末端側からV型ドメイン(31番目から106番目までの76個のアミノ酸で構成)、C2型ドメイン1(137番目から214番目までの78個のアミノ酸で構成)、C2型ドメイン2(252番目から308番目までの57個のアミノ酸配列で構成)の3つの領域からなる。細胞外ドメインの中でV型ドメインと呼ばれるドメインは、上述のようにIgVドメインとも呼ばれるが、特に重要で、糖尿病合併症因子の一つであるAGEとの結合性能を持つことが確認されている(Journal of Biological Chemistry、274巻、31740頁、1999年)。更には、HMG−1とも結合することも知られている(Journal of Biological Chemistry、270巻、25752頁、1995年)。また、RAGEのアミノ酸配列については、ヒトばかりでなく、ウシ、ラット、マウス、ウサギなどからのクローニングが報告されているが、動物間変異が多少見られる。もともとRAGEはマルチリガンド受容体として同定されており、動物間変異を考慮したアミノ酸配列でも、糖尿病合併症因子との結合活性が維持されるのであれば、問題なく使用できる。
【0024】
本発明で言うところのIgVドメイン誘導体とは、上述のAGE結合性能を持つとされるIgVドメイン、つまり、31番目から106番目までの76個のアミノ酸配列を含むRAGE由来のペプチドであり、該ペプチドの1若しくは数個のアミノ酸を置換・付加・欠失していても良いし、IgVドメイン以外のアミノ酸配列でアミノ酸の置換・付加・欠失があってもよい。さらに、RAGE細胞外ドメインのようにIgVドメイン以外の配列が含まれていても良いし、後述するように、精製を簡便化したり、RAGEとは異なる別の機能を付与する目的で、RAGEとは無関係な何からの人工配列を付加しても良い。最も好ましくは、AGEなどに代表されるRAGE結合物質が結合可能なRAGE誘導体で必要最小限のアミノ酸から構成されたものある。また、39番目から68番目までの領域のアミノ酸配列の全部若しくは一部を含むアミノ酸配列で構成されたペプチド、つまり、IgVドメイン由来ペプチドに少なくとも1つ以上のメルカプト基を付与した誘導体であることも好ましい。そして、IgVドメイン由来ペプチドは、上述の定義の範囲で、ペプチド以外の化合物が結合してもよいし、該ペプチドの1若しくは数個のアミノ酸を置換・付加・欠失していても良いし、該ペプチド以外のアミノ酸配列でアミノ酸の置換・付加・欠失があってもよいし、上述のような人工配列が付加したようなIgVドメイン由来ペプチド誘導体であってもよい。例えば、IgVドメイン由来ペプチドに代表される糖尿病性合併症因子吸着体に用いることができる、本発明で言うところのペプチド誘導体に導入可能なアミノ酸配列の例としては、簡単に単離、精製するためにタグと呼ばれる人工配列を遺伝子上に挿入し、タンパク質として利用することができる。精製法には他に、RAGEに対する抗体カラムで精製する方法がある。人工配列を挿入しても精製は簡便であるので特に制限を受けない。人工配列にはHis−TagやGSTやFc、プロテインA、プロテインGなどが多く用いられる。精製以外の目的でも様々なアミノ酸配列や化合物を導入可能であり、特に限定されない。更には、簡便精製の目的ばかりでなく、固定化時の吸着リガンドの方向制御のためにシステイン等で構成されたアミノ基以外の官能基で固定化可能な人工配列を挿入することも可能である。
【0025】
本発明で言うところの部分配列A及びBは、RAGEのIgVドメイン由来のペプチドであり、具体的には、39番目から54番目のペプチド及び51番目から68番目のペプチドのカルボキシ末端側にシステインを付加したものである。
【0026】
ペプチド誘導体を作成する方法は、生物的方法でも化学的方法でも特に限定を受けることなく用いることができる。生物的方法では、細菌、酵母等の単細胞や植物細胞や昆虫細胞や動物細胞、またはこれらで構成された動物そのものの遺伝子組み替え産物として得ることも可能であるし、特殊な培養条件下での代謝産物として回収することも可能であり、特に限定されない。化学的方法では、固相法や液相法を用いた合成ペプチドの作製手法を用いることも可能であり、更には、上記の生物的手法と化学的手法を融合させて、上記ペプチドに特殊な化学処理をしてもよい。
【0027】
本発明で言うところの、糖尿病合併症因子吸着体は、少なくとも1つ以上のメルカプト基を有する吸着リガンド、好ましくはさらに少なくとも1つ以上の塩基性官能基を有する吸着リガンドをメルカプト基を介して水不溶性担体に固定化させたものであれば良く、特に限定されない。なおここで、メルカプト基を介した固定が実質上優先的に、すなわち、吸着リガンドを水不溶性担体に固定させる固定化反応の際に消費される吸着リガンド内のメルカプト基以外の官能基の使用頻度が50%未満であることが好ましい。吸着体を全血処理する場合には、抗原提示性などの不必要な免疫反応による副作用の可能性があるので、被処理液の宿主と同一、特に医療品であれば、ヒト由来のリガンドが最も好ましいが、吸着体から固定化したペプチド誘導体が遊離しないのであれば、特に限定無く使用が可能である。
【0028】
吸着リガンドの固定化材料である水不溶性担体は、特に限定されない。より好ましくは表面積が多く取れる多孔質体形成可能な材料であり、さらにより好ましくは体液由来の被処理液と非特異的相互作用の少ない素材で構成されていればよく、さらに、被処理液の構成である体液が血液等の血球細胞との副反応によって刺激を低く抑えられる素材であれば最適であるが、これに限定されるものではない。また、担体は有機−有機、有機−無機の複合担体でも良く、無機担体としてはガラスビーズ、シリカゲル、金属ビーズなどがあり、有機担体には架橋ポリビニルアルコール、架橋ポリアクリレート、架橋ポリアクリルアミド、架橋ポリスチレン、架橋ポリスルホン等の合成高分子や結晶性セルロース、架橋アガロース、架橋デキストランなどの多糖類からなる有機担体との組み合わせでも良い。
【0029】
担体の形状は、粒状、膜状、繊維状またはそれらの高次加工品、中空糸状と任意に形状を選ぶことができ、その大きさも特に限定されない。
【0030】
ここでいう体液とは、血液、血漿、血清、腹水、リンパ液、脳脊髄液、尿及びこれらから得られた分画成分をいうが、特に限定されない。より好ましくは、病変が発生する血管に常時接触している体液、すなわち、血液、血漿、血清から得られた希釈成分や分画成分であれば良い。
【0031】
本発明の吸着体を治療に用いる場合には種々の方法がある。最も簡便な方法としては患者の血液等の体液を体外に導出して血液バッグに貯め、これに本発明の吸着体を混合して糖尿病合併症因子を除去後、フィルターを通して吸着体を除去し、体液を患者に戻す方法がある。
【0032】
次の方法は吸着体をカラムに充填し、体外循環回路に組み込み、オンラインで吸着除去をするものである。処理方法には全血を直接還流する方法と血液から血漿を分離してから血漿をカラムに通す方法がある。本発明の吸着体はいずれの方法にも用いることができるが、前述のごとくオンライン処理に最も適している。ただし、必要に応じてはオンライン処理を行わずに、一端、血液等の体液を体外に取り出し、適切な操作の元で試験管内に吸着体と体液を接触させてから体内に戻すという非循環系のアフェレーシス療法にも応用可能である。この場合には、処理後の吸着体を例えば塩濃度のような適切な条件下に曝すことで糖尿病合併症因子を分離除去し、吸着体の吸着性能を再生する電解質溶液で再処理すれば良い。また、吸着体の使用方法は特に記載の内容のみに限定される物ではなく、長期留置に耐えうるような生体適合性に極めて優れた担体に糖尿病合併症因子吸着リガンドであるペプチド誘導体で構成された化合物を固定化出来るならば腹膜透析などにも応用可能であり、適宜その場に応じて使用方法を変えて利用することが出来る。
【0033】
ここでいう体外循環回路では本発明の吸着体を単独で用いることもできるが、他のアフェレーシス治療にも併用可能である。併用例には、人工透析回路などが挙げられ、透析療法との組み合わせに用いることもできる。特に、より効率よく吸着体の除去性能を出すには、2個以上の複数の糖尿病合併症因子除去器を体外循環回路に組み込み、交互に吸着再生を行うことで実現化できる。
【0034】
体外循環治療として用いられる糖尿病合併症因子除去器のプライミング容積は200mL〜500mLが好ましいが、特に、透析療法との組み合わせに用いる場合には、患者の体外循環療法による負担を下げるべく、できるだけプライミング容積の小さな吸着体が好ましい。具体的には、5mL〜300mLのプライミング容積を持つ糖尿病合併症因子除去器が好ましい。また、一般的な人工透析療法では1回の施行時間が4〜5時間と限られた時間であり、この限られた時間内に出来る限り多くの糖尿病合併症因子を患者の負荷を軽減する形で実施するならば、複数回にわたって簡便に、且つ、再現性良く、吸着と脱離が出来る再生可能な糖尿病合併症因子除去器であることが好ましい。
【0035】
以上、従来の糖尿病合併症因子における吸着リガンドの固定化方法では、担体に固定化した際に吸着性能を大幅に損なう欠点があったが、本発明により担体との固定化反応時に糖尿病合併症因子に対する吸着リガンドの吸着性能を損なわずに効率よく固定化することが可能となった。従って、糖尿病合併症因子の製造方法における吸着リガンド固定化工程での吸着効率の減少が防止できるので、糖尿病合併症因子に対する十分な吸着性能を出すために、必要な吸着体量を増加させる必要がなくなるばかりでなく、従来よりも吸着体の大幅な性能向上が期待できるので充填容器の容量を従来以下に抑えることも可能である。
【0036】
更には、吸着体の性能向上や吸着器のコンパクト化が可能となることから、糖尿病合併症因子吸着体及び糖尿病合併症因子除去器の製造コストが安価となり、経済的提供が可能となる。
【0037】
ただし、本発明はこれら記載の内容に限定されるものではない。以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
【0038】
【実施例】
実施例1:メルカプト基を介したRAGE部分配列誘導体固定化担体の作製
以下のRAGE部分配列誘導体の調製を行った(C末端側にシステインを導入してある。)。また、アミノ酸は1文字表記で記載してある。C末端からN末端にかけて記載した。純度は95%以上で調製した。
【0039】
・RAGE部分配列A:CKGAPKKPPQRLEWKLN
(完全長RAGEの39〜54番目の配列のC末端側にシステインを導入)
尚、上記合成ペプチドの物性は次の通りであった。分子量:1993、酸性度:5.88%、塩基性度:29.41、中性度:17.65、疎水性度:47.06、等電点:10.73。
・RAGE部分配列B:CWKLNTGRTEAWKVLSPQG
(完全長RAGEの51〜68番目の配列のC末端側にシステインを導入)
尚、上記合成ペプチドの物性は次の通りであった。分子量:2174、酸性度:5.26%、塩基性度:15.79、中性度:31.58、疎水性度:47.37、等電点:10.29。
【0040】
次に、上記合成ペプチド中のメルカプト基を介して、水不溶性担体に固定化反応させた。先ず、水不溶性担体としてヨードアセチル基導入済みアガロースビーズ(ピアス製)を使用し、オープンカラム容器にゲル体積2mlを注入し、オープンカラムを室温で作製した。次に、カップリング用緩衝液(組成:50mMトリス、5mMEDTAナトリウム、pH8.5)を8ml静かに通液して、カラムを平衡化した。次いで、オープンカラムから溶液が漏れないように密栓状態で上記合成ペプチド溶液(上記カップリング用緩衝液に濃度2mg/mlで懸濁調製した。)3ml分を添加して、15分間、室温でオープンカラムを回転混和し、更に、オープンカラムを30分間、室温で静置状態にして固定化反応を行った。その後に、上記オープンカラムの栓を外して、ゲルを乾燥させないように注意しながら溶液分を通液して排除した。ゲルを洗浄するために、上記カップリング用緩衝液を更に6ml分通液した。通液後に、水不溶性担体中の未反応のヨードアセチル基をブロックするために、オープンカラムを密栓状態にして50mMシステイン溶液を2ml添加して、15分間、室温でオープンカラムを回転混和し、更に、オープンカラムを30分間、室温で静置状態にして水不溶性担体中の未反応基のブロッキング反応を行った。ブロッキング反応後は、同様に、上記オープンカラムの栓を外して、ゲルを乾燥させないように注意しながら溶液分を通液して排除した。最後に、洗浄液(組成:1M塩化ナトリウム)を静かに12ml通液し、更に、脱気したリン酸緩衝液生理食塩水を4ml加えてカラム洗浄を行い、今度は通液出口を栓した状態で脱気したリン酸緩衝液生理食塩水を適宜加えてゲルを懸濁させて、オープンカラム中のゲルをスラリー状にして遠沈管に移して、RAGE部分配列誘導体固定化担体を得た。RAGE部分配列Aを固定化した担体を吸着体1とし、RAGE部分配列Bを固定化した担体を吸着体2とした。
【0041】
実施例2:AGE標品の調製
RAGE結合物質の一例として、グリコールアルデヒド由来AGEを調製した。調製方法は、公知の文献(Molecular Medicine、6巻、2号、114−125頁、2000年)に従い調製した。25mg/mlのBSA(ウシ血清アルブミン)及びRSA(ウサギ血清アルブミン)を0.1Mのグリコールアルデヒドと5mMのDTPA(Diethylenetriamine−N,N,N’,N’’,N’’’−pentaacetic acid)と共に0.2Mリン酸緩衝液(pH7.4)に溶解後、0.2μmのフィルターにより濾過滅菌して、37℃で1週間インキュベートした。低分子量の反応物や未反応のグリコールアルデヒドを、PD−10脱塩カラムとPBSによる透析により取り除き、AGE標品を得た。BSA由来のAGE標品をAGE標品1とし、RSA由来のAGE標品をAGE標品2とした。
【0042】
実施例3:AGE標品に対する抗体の調製
実施例2で得られたAGE標品2について4mgをフロイント完全アジュバント(和光純薬)と1:1の割合で乳化し、ニュージーランド白ウサギ(雌、2.5kg)の背部数カ所に皮下注射した。初回免疫後、1週間おきに5回の追加免疫を抗体価が上昇するまで行った。追加免疫後、経時的にウサギの耳静脈より少量採血し、抗体価の確認を行った。抗体価の上昇の見られた時点からさらに2週間後、最終追加免疫を行い、その10日後に抗血清の精製を行うために全採血を行い、抗血清を得た。ついで以下の精製方法によって、抗血清からAGE特異的な抗体を調製した。まず、AGEアフィニティーカラムを調製した。7.5gのCNBr−activated Sepharose 4B を1mM塩酸で膨潤後、2Lの1mM塩酸で洗浄した。リガンドとして100mgの実施例3で得られたAGE標品1をCoupling buffer(pH8.3)と混合し、25mlのCNBr−activated Sepharose 4Bゲルと室温で1時間振とうしてカップリングさせた。カップリング後、余分なリガンドはCoupling bufferで洗浄した。ゲルの活性残基は、0.1M トリス塩酸緩衝液(pH8.0)とゲルを室温で2時間振とうしてブロッキングした。ブロッキング終了後、Coupling bufferとWashing buffer(pH4.0)とで交互に3回洗浄し、更にPBSで3回洗浄することでアフィニティー樹脂を調製した。本実施例で得られた20mlの抗血清をこのAGE標品1−Sepharose 4Bカラム(2.5cm×5cm)に4℃で一晩吸着させた。PBSで洗浄後、吸着画分を1M チオシアン酸カリウムを含んだ20mM リン酸緩衝液(pH7.4)で溶出した。溶出時は各フラクションを280nmの吸光度でモニターし、ピーク部分を集めてCentriprep−10で濃縮後、PD−10ゲル濾過カラムを用いて緩衝液の置換を行うことで、AGE標品に対する抗体(AGE抗体)を得た。
【0043】
実施例4:AGE吸着実験
実施例1で得られた吸着体を沈降体積で100μlあたり、サンプル(実施例2で得られたAGE標品1を10μg/ml含む0.5%BSA−リン酸緩衝液)を900μl加えた。37℃の孵卵器中で2時間ゆっくり振盪した。この反応液を3000rpmで5分間遠心分離して吸着体を沈降させ、上清中のAGE標品1の吸着量を以下に示す免疫学的測定法(競合法ELISA)で測定した。実施例3で得られたAGE標品1を20μg/mlの濃度に調製し、96穴マイクロタイタープレートに1ウェル当たり100μl入れて、室温で2時間インキュベートすることにより固相化した。0.5%BSAを含むPBSでブロッキングした後、緩衝液25μl、測定サンプル25μl、実施例3で得られたAGE抗体溶液を適宜希釈して50μl入れて、25℃で2時間振盪した。固相化抗原を認識した抗体に対して、抗ウサギペルオキシダーゼ標識抗体(カッペル)を反応させた後、発色させて595nmの吸光度を測定した。各吸着体のAGE吸着率を表1に示す。すべての吸着体について、AGEに対して良好な選択性を示すことが確認できた。
【0044】
表1 各種吸着体のAGE吸着率結果
吸着体1 73.3%
吸着体2 52.2%
【0045】
比較例1:ペプチド非固定化担体の作製及びAGE吸着性能評価
N−ヒドロキシスクシンイミドエステル基を10原子の長さのスペーサーを介して導入したアガロースゲル:アフィゲル10(Bio−Rad)1mLに1Mエタノールアミン−塩酸(pH8.0)0.1mLを加えて、室温で1.5時間反応させ、未反応のN−ヒドロキシスクシンイミドエステル基を不活化した後、それぞれ0.5MのNaClを含む0.1M酢酸−NaOH(pH4.0)1mL及び0.1M炭酸−NaOH(pH9.0)1mLで交互に3回洗浄し、最後にリン酸緩衝液にて平衡化を行うことでペプチド非固定化担体(吸着体3)を得た。吸着体3について、実施例4と同様の手法でAGE吸着実験を行った。結果を表2に示す。実施例1で用いたペプチドを固定化しなかった吸着体では、十分なAGE吸着性能は見られなかった。
【0046】
表2 ペプチド非固定化担体のAGE吸着率結果
吸着体3 7.6%
【0047】
比較例2:アミノ基を介したRAGE部分配列誘導体固定化担体の作製
N−ヒドロキシスクシンイミドエステル基を10原子の長さのスペーサーを介して導入したアガロースゲル:アフィゲル10(Bio−Rad)1mLに実施例1で得られたRAGE部分配列A及びBについてそれぞれ2mgを0.1MHEPES−NaOH緩衝液(pH7.5)1mLに添加した溶液を加え、4℃で一夜ゆっくりと撹拌した。1Mエタノールアミン−塩酸(pH8.0)0.1mLを加えて、室温で1.5時間反応させ、未反応のN−ヒドロキシスクシンイミドエステル基を不活化した後、それぞれ0.5MのNaClを含む0.1M酢酸−NaOH(pH4.0)1mL及び0.1M炭酸−NaOH(pH9.0)1mLで交互に3回洗浄し、最後にリン酸緩衝生理食塩水にて平衡化を行うことでRAGE部分配列誘導体固定化担体を得た。RAGE部分配列誘導体固定化担体のうち、RAGE部分配列A固定化担体を吸着体4とし、RAGE部分配列B固定化担体を吸着体5とした。
【0048】
次いで、実施例4記載の内容に従って、AGE吸着実験を行った。各吸着体のAGE吸着率を表3に示す。吸着体の作製方法がメルカプト基を介した固定化方法とアミノ基を介した固定化方法を比較すると、メルカプト基を介した固定化方法の方が吸着性能が大幅に向上することが示された。
【0049】
表3 各種吸着体のAGE吸着率結果
吸着体4 44.1%
吸着体5 31.8%
【0050】
実施例5:環流式AGE吸着実験
実施例1で得られた吸着体1をゲル体積で1mL分取して、ポリプロピレン製ミニカラム容器(カラム容積1mL、カラムに入出口がそれぞれ1つずつ有り、カラム内の吸着体がミニカラムから流失しないようにフィルターメッシュを入出口の各ヘッダー内に挟み固定している。入出口には充填液が漏れ出さないようにミニキャップをしてある。)に充填してカラムを作製した。充填溶液はリン酸緩衝生理食塩水を使用した。次いで、本ミニカラムが環流中でも吸着性能が保持されているかどうか確認する目的で環流式のAGE吸着実験を行った。カラムあたり、サンプル(実施例3で得られたAGE標品1を10μg/mL含む2%ウシ血清−リン酸緩衝生理食塩水)を7mL処理した。37℃の孵卵器中で8時間環流吸着した。環流はペリスタポンプを用いて行い、流量は0.2mL/分で固定した。適宜、100uLずつサンプリングして、環流溶液中のAGE量を実施例4に記載した免疫学的測定法で測定した。但し、AGE除去率は、2%ウシ血清−リン酸緩衝生理食塩水に実施例3で得られたAGE標品1を10μg/mLの条件で添加した後で、検出されたAGE濃度を基準に算定した。
【0051】
表4 環流式AGE吸着実験結果
【0052】
従って、本カラムは環流式で有意な吸着性能を示すことがわかった。
【0053】
【発明の効果】
本発明で見出された、少なくとも1つ以上のメルカプト基を有する吸着リガンドに対してメルカプト基を介して水不溶性担体に固定化させることを特徴とする糖尿病合併症因子吸着体及び該吸着体の製造方法により、吸着性能が向上した吸着体の設計が可能となった。また、吸着リガンドの固定化方法により吸着体の性能が大きく向上することから、上記吸着体及び吸着体使用製品のコンパクト化が可能となり、製造コストの低減が実現できる。更には、糖尿病性透析患者などに対して、上記吸着体を充填した体外循環医療用具に代表される除去容器を使用する場合には、患者への負担(体外循環回路のプライミング体積)を低減するために出来る限り小さな体積設計の除去容器が要求されるが、本発明により医療用具レベルとしても許諾可能な吸着体及び除去容器の作製技術を見出した。
【0054】
以上により、本発明によって見出された製糖尿病合併症因子吸着体及びその製造方法、該吸着体を充填した除去容器、並びに、糖尿病合併症因子の除去手法は、これまで十分な治療効果が期待できなかった糖尿病性腎症に代表される糖尿病合併症患者や血管障害患者、並びに、透析患者と言った酸化ストレスが亢進する難治性の患者に対して、患者負担がより低減された状態で提供可能な技術となったばかりでなく、RAGEが関与する難治性疾患、例えば、敗血症、アルツハイマー病などのアミロイド症、高脂血漿、腎症全般、癌、過炎症の患者にも有効な治療手段が提供できる技術である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、少なくとも1つ以上のメルカプト基を有する化合物に対してメルカプト基を介して水不溶性担体に固定化させたことを特徴とする糖尿病合併症因子吸着体及び該吸着体の製造方法、該吸着体を充填した吸着器、該吸着器を用いた糖尿病合併症因子の除去方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、糖尿病性腎症が悪化することで、人工透析を受ける患者が急激に増加しており、1998年以降の新規透析導入患者の主原因は糖尿病性腎症となり、以降、透析導入の主原因として位置づけられている。人工透析導入の原疾患としては、糖尿病性腎症と慢性糸球体腎炎で過半数を占めることが知られているが、透析導入後の生存率に大きな違いがある。評価施設において若干の違いがあるものの、糖尿病性腎症患者の透析導入後の50%生存率は3〜4年とされるのに対して、慢性糸球体腎炎患者の50%生存率は10年程度かそれ以上と言われ、明らかに糖尿病性透析患者の予後が悪く、社会的問題となっているが解決の兆しが全く見えてこない。
【0003】
この原因として糖尿病合併症の発症機序が未だ不明瞭であることが挙げられる。ところが最近になって、糖尿病合併症の共通の病変と言える血管病変を発症する病因物質の候補として、AGE(advanced glycation endproducts)に代表される各種変性物質に注目が集まった。
【0004】
AGEとは、主に糖尿病性合併症の原因物質と考えられているものであり、血液中に存在するブドウ糖に代表される還元糖、その代謝産物や反応産物と、タンパク質や脂質などの低分子が酵素の関与なしに、つまり、非酵素的に結合する前進性糖化反応(advanced glycation)の産物であり、総称してカルボニルストレス産物とも呼ばれることもある。
【0005】
当時は、還元糖等とタンパク質等の非酵素的反応体であるカルボニルストレス産物について、蛍光性、褐色性、架橋性、脱水、酸化、縮合、転移など様々な特徴が発見されたが、どれもカルボニルストレス産物が持つ病因性、つまり、糖尿病合併症因子としての証拠を直接説明できるものではなかった。カルボニルストレス産物の一つであるAGEの評価方法についても、以前はその特徴の一つである蛍光特性で血液中の測定を試みている例がよくあり、特開平6−312134号公報(特許文献1)では、ヒト血漿中のAGEを、励起波長390nm、蛍光波長450nmで測定を試みている(例えば、非特許文献1参照。)。しかし、蛍光測定は試験管内の前進性糖化反応の確認には用いられるが、血液中では夾雑物や薬剤の非特異蛍光の影響も多くあることと、また、ペントシジンなど励起波長335nm、蛍光波長385nmといった異なる蛍光特性のものも発見されるなど(例えば、非特許文献2参照。)、上記蛍光特性を持つAGEはほんの一部に過ぎないことが分かりだした。更に、AGEの主構造と考えられているCML(カルボキシメチルリジン)やCEL(カルボキシエチルリジン)には蛍光特性がないことが知られており、現在、ヒト血漿中のAGEを励起波長390nm、蛍光波長450nmで単純に測定することは、信頼性のある測定法ではないと認識されている。以来、蛍光特性による評価も測定手順に分子篩や化学処理を施したり、蛍光がどのAGE構造の蛍光を反映するかを考慮して評価するようになった。また、特異的な免疫学的測定方法で測定を試みる動きもある。これまで同定されたAGE構造はCML、CEL、ペントシジン、ピラリン、クロスリン、フルオロリンク、イミダゾロン、X1、アルグピリミジンなど10種類程度あるが、これら全てのAGE構造がカルボニルストレス産物として病因性を持っているわけではないとも言われている(例えば、非特許文献3参照。)。このためAGEに始まるカルボニルストレス原因説がより一層複雑になっているという問題があり、糖尿病性合併症に代表される各種血管病変を引き起こす糖尿病合併症因子としてのカルボニルストレス産物のみを正確に検出する方法でさえ極めて乏しい状態であった。
【0006】
一方で、糖尿病合併症因子としての性質を持つ非酵素的変性物質は、主に細胞上のある特殊な受容体と結合することで引き起こされることが分かってきた。その多くは一般的にスカベンジャー受容体と呼ばれるものだが、本来別の機能を有する受容体にカルボニルストレス産物などの非酵素的変性物質が相互作用することで病因性を引き起こす場合も報告されている。ガレクチン−3、RAGE(Receptor for AGE)などである。特にRAGEは糖尿病の3大合併症である腎症、網膜症、神経症の発症を引き起こすだけではなく、動脈硬化も助長することがわかってきた。最近になり、動物レベルでRAGEと糖尿病状態で亢進するある特定の物質との相互作用で糖尿病性合併症などの血管障害が引き起こされることが証明されつつある(例えば、非特許文献4参照。)。現在、糖尿病合併症因子の病因性を引き出す経路はRAGEが最も重要であると考えられている。
【0007】
AGEに代表されるRAGE結合物質に対する吸着体は既に幾つかの種類が知られている。例えば、抗AGE抗体をビーズに結合させることで作製した吸着材(例えば、非特許文献5参照。)が知られているが、これら吸着体はリジン等の1級アミノ基と優先的に反応する水不溶性担体を用いており、RAGE結合物質に対する吸着性能が1級アミノ基に強く依存する場合には、担体に固定化した際に吸着性能を大幅に損なう欠点があった。また、上記の固定化方法では、吸着体に固定化させる吸着リガンドの方向性を制御することが困難であり、抗体やペプチド等の結合部位が分子中の特定部位にしか存在しないような化合物では、吸着リガンドの結合部位が担体との固定化反応によって立体障害を起こし、被吸着物質である糖尿病合併症因子の吸着効率を大きく損ねる欠点もあった。吸着効率が損ねられると、糖尿病合併症因子に対する十分な吸着性能を出すために、水不溶性担体への固定化反応に必要な吸着リガンドの量や糖尿病合併症因子を十分除去するために必要な吸着体量が増加するので、吸着体の製造コストの増加や吸着体を充填した吸着容器の容量が増えるなどの問題点も出てくる。従って、担体との固定化反応時に糖尿病合併症因子に対する吸着リガンドの吸着性能を如何に損なわずに効率よく固定化した吸着体やその製造方法が強く求められていた。
【0008】
【特許文献1】
特開平6−312134号公報
【0009】
【非特許文献1】
マキタ(Makita Z),他8名, 「糖尿病性神経障害患者における前進性糖化反応産物(Advanced glycosylation end products in patients with diabetic nephropathy.)」,ザ・ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディスン(The New England Journal of Medicine),1991年,第325巻,p838
【0010】
【非特許文献2】
ミヤタ(Miyata T), 他7名,「末期腎不全尿毒症患者の循環に於けるアルブミン結合性及び遊離性ペントシジンの蓄積:ペントシジンの病態生理学に於ける腎性関与(Accumulation of albumin−linked and free−form pentosidine in the circulation of uremic patients with end−stage renal failure: renal implications in the pathophysiology of pentosidine.)」,ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ソサイエティー・オブ・ネフロロジー(Journal of the American Society Nephrology),1996年,第7巻,8号,p1198−1206
【0011】
【非特許文献3】
ミヤタ(Miyata T), 他8名,「末期腎不全患者での前進性糖化最終産物の形成に於ける増加した酸化ストレスの関与(Implication of an increased oxidative stress in the formation of advanced glycation end products in patients with end−stage renal failure.)」,キドニー・インターナショナル(Kidney International),1997年,第51巻,4号,p1170−1181
【0012】
【非特許文献4】
ヤマモト(山本靖彦), 他8名,「ヒトRAGEをトランスジーンとしたマウスの糖尿病性腎病変」,糖尿病(Journal of the Japan Diabetes Society ),1999年,第42巻,補1,pS−194
【0013】
【非特許文献5】
バスタ(Basta G),「前進性糖化最終産物は信号伝達受容体RAGEを経由して内皮細胞を活性化する:炎症反応の増幅に対する機序(Advanced glycation endproducts activate endothelium through signal−transduction receptor RAGE: a mechanism for amplification of inflammatory responses.)」,サーキュレーション(Circulation),2002年,第105巻,第7号,p816−822
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、少なくとも1つ以上のメルカプト基を有する吸着リガンドに対してメルカプト基を介して水不溶性担体に固定化させることにより、吸着リガンドの水不溶性担体への固定化反応時の吸着リガンドの失活を最小限に抑えることができる糖尿病合併症因子吸着体、該吸着体の製造方法と、該吸着体を充填した除去容器、並びに、その使用方法の提供を目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために主として以下の構成を有する。
「(1)少なくとも1つ以上のメルカプト基を有する吸着リガンドに対してメルカプト基を介して水不溶性担体に固定化させることを特徴とする糖尿病合併症因子吸着体。」
「(2)上記(1)項に記載の糖尿病合併症因子吸着体が充填されてなる糖尿病合併症因子除去容器内に体液由来の被処理液を接触させることで被処理液中に含まれる糖尿病合併症因子を被吸着物質として選択的に除去することを特徴とする糖尿病合併症因子除去容器の使用方法。」
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0017】
本発明で言うところの糖尿病合併症因子とは、糖尿病性合併症を引き起こす病因物質の総称であり、糖尿病患者の体内から検出されるのであれば特に限定されない。好ましくは、RAGEと結合するRAGE結合物質であればよい。RAGE結合物質の例としては、AGEだけではなく、ある種の炎症マーカーの一群であるHMG−1に代表されるハイモビリティータンパク質ファミリー、血清アミロイドA、S100/カルグラニュリンスーパーファミリー、トランスサイレチンと呼ばれる物質でもよく、RAGEと結合が認められるならば、特に限定を受けるものではない。また、これらのRAGE結合物質を総称して、EN−RAGE(extracellular newly identified RAGE−binding protein)とも定義されており(Cell、97巻、889頁、1999年)、今後も新規のRAGE結合物質が分離同定される可能性が高いと考えられる。さらに好ましくは、AGEであるが、AGEにも様々な構造のものがあり、いっそう好ましくは、RAGE結合性のAGEである。AGEはタンパク質、ホルモン、糖類、脂質、ビタミン等に代表される生体物質とグルコースに代表される還元糖との非酵素的反応で生み出されるものであるが、必ずしも、還元糖はグルコースに限定される必要はなく、グリコールアルデヒドやグリセルアルデヒド、メチルグリオキサール、グリオキサール、3−デオキシグルコゾン等のα−ヒドロキシアルデヒド化合物やジカルボニル化合物であってもよい。また、AGEの生成途中でヒドロキシラジカルや一酸化窒素、パーオキシナイトライト等の各種ラジカルによる酸化変性があっても良く、生成経路や反応基質に特に限定を受けるものではなく、酸化性反応の結果に生成した変性物質であれば特に限定を受けものではない。特にRAGE結合物質に重要なことは、RAGEと結合することで病因性が認められるということである。
【0018】
ここで言う糖尿病合併症因子の病因性とは、糖尿病合併症因子と細胞が接触することで、各種サイトカインの誘導、細胞遊走化促進、DNA合成の亢進、接着分子発現亢進や線維化、NF−κBの活性化による酸化ストレスの誘導、細胞や組織の物質透過性亢進などの何れかもしくは複数の現象を引き起こし、結果として、動脈硬化、腎症、網膜症、神経症などの血管病変や持続的炎症を引き起こすことを言う。また、糖尿病合併症因子は必ずしも糖尿病に限定されて見られる増悪因子ではなく、人工透析や各種腎疾患など排泄・代謝機能の低下の場合にも見られることがある。更には、敗血症や癌転移、アルツハイマー病、過炎症等にもRAGEの関与が示唆されているので、RAGEが関与する疾病ならば、如何なるものも限定を受けることなく、該疾病患者に認められるものならば、糖尿病合併症因子と解釈されて良い。便宜上、糖尿病合併症因子と定義しているのは、特に糖尿病患者で検出されて、且つ、該患者で多く見られる、血管病変に関わる病因物質の総称のためである。
【0019】
本発明でいうところの吸着リガンドとは、糖尿病合併症因子吸着体を構成する重要な部分であり、被吸着物質である糖尿病合併症因子に対して親和性のある化合物の総称である。上記化合物の特徴として、少なくとも1つ以上のメルカプト基を有することは言うまでもないが、好ましくは、更に少なくとも1つ以上の塩基性官能基を有することが好ましい。付け加えて、製造工程における環境負荷低減のためには有機溶媒使用を極力回避する必要があるので、親水性の吸着リガンドであることがより好ましい。いっそう好ましくは、廃棄処理環境下で分解が容易なペプチド誘導体である。また、水不溶性担体への固定化反応前に吸着リガンドを溶解することが必要であるが、溶解のためにやむを得ず有機溶媒を用いることも可能である。使用が許される有機溶媒は環境負荷が極力低い溶媒であることが好ましいのは言うまでもないが、例えば、DMSOやメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロパノール等の低分子アルコールが例として挙げられるが、特に限定されない。
【0020】
そして、吸着リガンド中の塩基性官能基とは特に限定されないが、窒素含有官能基であることが好ましい。窒素含有官能基の例としては、脂肪族アミノ基や複素環中の窒素が挙げられるが、特に限定されない。さらに好ましくは、アミノ酸中に見出される窒素含有官能基であり、例えば、主要な物として、リジンやオルニチン、アルギニン、ヒスチジンが挙げられるが、生物中に見出されるアミノ酸であれば、特に問題なく使用可能である。また、吸着リガンド内の塩基性官能基の個数は、1つ以上ならば問題なく用いることが可能であり、好ましくは2つ以上、さらに好ましくは3つ以上であることがよい。更には、上記吸着リガンド内に含まれるメルカプト基は、1つ以上であれば何ら問題なく使用可能であり、2つ以上存在しても受け入れることが出来る。ただし、メルカプト基が3つ以上存在する場合には、奇数個のメルカプト基が存在することが望ましいが、特に記載の内容に限定されるものではない。
【0021】
本発明において、メルカプト基を介して水不溶性担体に固定化させる方法としては、具体的には、吸着リガンドをヨード化アルキル基に代表されるハロゲン化アルキル基と反応させる方法やチオールジスルフィド交換反応を利用して固定化することや、トレシル基との反応を利用して固定化することや、マレイミド基との反応を利用して固定化することが好ましいが、特にこの反応方法にのみ限定されない。また、アミノ基を介した固定化用官能基として用いられるN−ヒドロキシスクシンイミド基やエポキシ基等もメルカプト基を介した固定化反応でも利用可能である。更には、ハロメチル基、ハロアセチル基、ハロアセトアミドメチル基に代表される活性化ハロゲン基でも利用できる。加えて、カルボキシル基、イソシアン酸基、チオイソシアン酸基、酸無水物基なども利用してもよい。そして、例えば、吸着リガンド中のメルカプト基に対して、N−(8−マレイミドカプリロキシ)スルホスクシンイミドを反応させてから、水不溶性担体中のアミノ基と反応させて固定化するような、吸着リガンドと水不溶性担体の間に適宜スペーサーを介して固定化することも可能であるが、メルカプト基を介した固定化反応方法については、特に記載の内容に限定されるものではない。
【0022】
本発明で言うところのペプチド誘導体とは、少なくとも1つ以上の塩基性官能基と少なくとも1つ以上のメルカプト基を有する条件と、ペプチド結合が少なくとも2つ以上存在するアミノ酸重合物であれば全く問題はなく、さらには、アミノ酸以外の化合物が更に含まれていても特に問題はない。アミノ酸以外の化合物は、糖や脂質といった生体由来の化合物でも良く、生体に存在しない芳香族環や脂肪族系化合物であっても良い。また、ペプチド誘導体を構成するアミノ酸は、生体内に存在するアミノ酸であれば全く問題はないし、D体アミノ酸という生体内で支配的に見出されるL体アミノ酸の鏡像体が含まれていても特に問題なく使用できる。好ましくは、ペプチド誘導体内の塩基性官能基が2つ以上含まれていれば良く、その塩基性官能基はアミノ基やアンモニウムイオン基、複素環や環状化合物で構成されていても問題はない。また、塩基性官能基は生理的条件下で該官能基が塩基性を示せばより好ましいものである。更に、上記のペプチド誘導体が直鎖状でも環状ペプチド化合物、或いは、双方の複合体でも良く、特に限定を受ける物ではない。更に好ましくは、RAGEのIgVドメイン由来ペプチドであることが望ましい。また、ペプチド誘導体を構成するアミノ酸数は少なくとも3つ以上ならば特に限定されないが、好ましくは342個以下であり、より好ましくは76個以下であり、さらに好ましくは31個以下であり、いっそう好ましくは20個以下である。
【0023】
本発明で言うところのRAGE部分配列誘導体とは、完全長RAGEのなかのRAGE結合物質が結合できるペプチド領域を含めた部分配列であり、好ましくは、IgVドメイン内の配列の一部を含めたものである。完全長RAGEとは、ヒトの場合、404個のアミノ酸から構成され、そのうちN末端から22個のアミノ酸で構成されるシグナル配列を有するため、結果的に382個のアミノ酸として受容体を形成する。そのうちで、糖尿病合併症因子と吸着できるアミノ酸配列を含む細胞外ドメインは、342個のアミノ酸で構成されている。また、細胞外ドメインは、更に細かいドメインに分類され、即ち、全アミノ酸配列404個の中でN末端側からV型ドメイン(31番目から106番目までの76個のアミノ酸で構成)、C2型ドメイン1(137番目から214番目までの78個のアミノ酸で構成)、C2型ドメイン2(252番目から308番目までの57個のアミノ酸配列で構成)の3つの領域からなる。細胞外ドメインの中でV型ドメインと呼ばれるドメインは、上述のようにIgVドメインとも呼ばれるが、特に重要で、糖尿病合併症因子の一つであるAGEとの結合性能を持つことが確認されている(Journal of Biological Chemistry、274巻、31740頁、1999年)。更には、HMG−1とも結合することも知られている(Journal of Biological Chemistry、270巻、25752頁、1995年)。また、RAGEのアミノ酸配列については、ヒトばかりでなく、ウシ、ラット、マウス、ウサギなどからのクローニングが報告されているが、動物間変異が多少見られる。もともとRAGEはマルチリガンド受容体として同定されており、動物間変異を考慮したアミノ酸配列でも、糖尿病合併症因子との結合活性が維持されるのであれば、問題なく使用できる。
【0024】
本発明で言うところのIgVドメイン誘導体とは、上述のAGE結合性能を持つとされるIgVドメイン、つまり、31番目から106番目までの76個のアミノ酸配列を含むRAGE由来のペプチドであり、該ペプチドの1若しくは数個のアミノ酸を置換・付加・欠失していても良いし、IgVドメイン以外のアミノ酸配列でアミノ酸の置換・付加・欠失があってもよい。さらに、RAGE細胞外ドメインのようにIgVドメイン以外の配列が含まれていても良いし、後述するように、精製を簡便化したり、RAGEとは異なる別の機能を付与する目的で、RAGEとは無関係な何からの人工配列を付加しても良い。最も好ましくは、AGEなどに代表されるRAGE結合物質が結合可能なRAGE誘導体で必要最小限のアミノ酸から構成されたものある。また、39番目から68番目までの領域のアミノ酸配列の全部若しくは一部を含むアミノ酸配列で構成されたペプチド、つまり、IgVドメイン由来ペプチドに少なくとも1つ以上のメルカプト基を付与した誘導体であることも好ましい。そして、IgVドメイン由来ペプチドは、上述の定義の範囲で、ペプチド以外の化合物が結合してもよいし、該ペプチドの1若しくは数個のアミノ酸を置換・付加・欠失していても良いし、該ペプチド以外のアミノ酸配列でアミノ酸の置換・付加・欠失があってもよいし、上述のような人工配列が付加したようなIgVドメイン由来ペプチド誘導体であってもよい。例えば、IgVドメイン由来ペプチドに代表される糖尿病性合併症因子吸着体に用いることができる、本発明で言うところのペプチド誘導体に導入可能なアミノ酸配列の例としては、簡単に単離、精製するためにタグと呼ばれる人工配列を遺伝子上に挿入し、タンパク質として利用することができる。精製法には他に、RAGEに対する抗体カラムで精製する方法がある。人工配列を挿入しても精製は簡便であるので特に制限を受けない。人工配列にはHis−TagやGSTやFc、プロテインA、プロテインGなどが多く用いられる。精製以外の目的でも様々なアミノ酸配列や化合物を導入可能であり、特に限定されない。更には、簡便精製の目的ばかりでなく、固定化時の吸着リガンドの方向制御のためにシステイン等で構成されたアミノ基以外の官能基で固定化可能な人工配列を挿入することも可能である。
【0025】
本発明で言うところの部分配列A及びBは、RAGEのIgVドメイン由来のペプチドであり、具体的には、39番目から54番目のペプチド及び51番目から68番目のペプチドのカルボキシ末端側にシステインを付加したものである。
【0026】
ペプチド誘導体を作成する方法は、生物的方法でも化学的方法でも特に限定を受けることなく用いることができる。生物的方法では、細菌、酵母等の単細胞や植物細胞や昆虫細胞や動物細胞、またはこれらで構成された動物そのものの遺伝子組み替え産物として得ることも可能であるし、特殊な培養条件下での代謝産物として回収することも可能であり、特に限定されない。化学的方法では、固相法や液相法を用いた合成ペプチドの作製手法を用いることも可能であり、更には、上記の生物的手法と化学的手法を融合させて、上記ペプチドに特殊な化学処理をしてもよい。
【0027】
本発明で言うところの、糖尿病合併症因子吸着体は、少なくとも1つ以上のメルカプト基を有する吸着リガンド、好ましくはさらに少なくとも1つ以上の塩基性官能基を有する吸着リガンドをメルカプト基を介して水不溶性担体に固定化させたものであれば良く、特に限定されない。なおここで、メルカプト基を介した固定が実質上優先的に、すなわち、吸着リガンドを水不溶性担体に固定させる固定化反応の際に消費される吸着リガンド内のメルカプト基以外の官能基の使用頻度が50%未満であることが好ましい。吸着体を全血処理する場合には、抗原提示性などの不必要な免疫反応による副作用の可能性があるので、被処理液の宿主と同一、特に医療品であれば、ヒト由来のリガンドが最も好ましいが、吸着体から固定化したペプチド誘導体が遊離しないのであれば、特に限定無く使用が可能である。
【0028】
吸着リガンドの固定化材料である水不溶性担体は、特に限定されない。より好ましくは表面積が多く取れる多孔質体形成可能な材料であり、さらにより好ましくは体液由来の被処理液と非特異的相互作用の少ない素材で構成されていればよく、さらに、被処理液の構成である体液が血液等の血球細胞との副反応によって刺激を低く抑えられる素材であれば最適であるが、これに限定されるものではない。また、担体は有機−有機、有機−無機の複合担体でも良く、無機担体としてはガラスビーズ、シリカゲル、金属ビーズなどがあり、有機担体には架橋ポリビニルアルコール、架橋ポリアクリレート、架橋ポリアクリルアミド、架橋ポリスチレン、架橋ポリスルホン等の合成高分子や結晶性セルロース、架橋アガロース、架橋デキストランなどの多糖類からなる有機担体との組み合わせでも良い。
【0029】
担体の形状は、粒状、膜状、繊維状またはそれらの高次加工品、中空糸状と任意に形状を選ぶことができ、その大きさも特に限定されない。
【0030】
ここでいう体液とは、血液、血漿、血清、腹水、リンパ液、脳脊髄液、尿及びこれらから得られた分画成分をいうが、特に限定されない。より好ましくは、病変が発生する血管に常時接触している体液、すなわち、血液、血漿、血清から得られた希釈成分や分画成分であれば良い。
【0031】
本発明の吸着体を治療に用いる場合には種々の方法がある。最も簡便な方法としては患者の血液等の体液を体外に導出して血液バッグに貯め、これに本発明の吸着体を混合して糖尿病合併症因子を除去後、フィルターを通して吸着体を除去し、体液を患者に戻す方法がある。
【0032】
次の方法は吸着体をカラムに充填し、体外循環回路に組み込み、オンラインで吸着除去をするものである。処理方法には全血を直接還流する方法と血液から血漿を分離してから血漿をカラムに通す方法がある。本発明の吸着体はいずれの方法にも用いることができるが、前述のごとくオンライン処理に最も適している。ただし、必要に応じてはオンライン処理を行わずに、一端、血液等の体液を体外に取り出し、適切な操作の元で試験管内に吸着体と体液を接触させてから体内に戻すという非循環系のアフェレーシス療法にも応用可能である。この場合には、処理後の吸着体を例えば塩濃度のような適切な条件下に曝すことで糖尿病合併症因子を分離除去し、吸着体の吸着性能を再生する電解質溶液で再処理すれば良い。また、吸着体の使用方法は特に記載の内容のみに限定される物ではなく、長期留置に耐えうるような生体適合性に極めて優れた担体に糖尿病合併症因子吸着リガンドであるペプチド誘導体で構成された化合物を固定化出来るならば腹膜透析などにも応用可能であり、適宜その場に応じて使用方法を変えて利用することが出来る。
【0033】
ここでいう体外循環回路では本発明の吸着体を単独で用いることもできるが、他のアフェレーシス治療にも併用可能である。併用例には、人工透析回路などが挙げられ、透析療法との組み合わせに用いることもできる。特に、より効率よく吸着体の除去性能を出すには、2個以上の複数の糖尿病合併症因子除去器を体外循環回路に組み込み、交互に吸着再生を行うことで実現化できる。
【0034】
体外循環治療として用いられる糖尿病合併症因子除去器のプライミング容積は200mL〜500mLが好ましいが、特に、透析療法との組み合わせに用いる場合には、患者の体外循環療法による負担を下げるべく、できるだけプライミング容積の小さな吸着体が好ましい。具体的には、5mL〜300mLのプライミング容積を持つ糖尿病合併症因子除去器が好ましい。また、一般的な人工透析療法では1回の施行時間が4〜5時間と限られた時間であり、この限られた時間内に出来る限り多くの糖尿病合併症因子を患者の負荷を軽減する形で実施するならば、複数回にわたって簡便に、且つ、再現性良く、吸着と脱離が出来る再生可能な糖尿病合併症因子除去器であることが好ましい。
【0035】
以上、従来の糖尿病合併症因子における吸着リガンドの固定化方法では、担体に固定化した際に吸着性能を大幅に損なう欠点があったが、本発明により担体との固定化反応時に糖尿病合併症因子に対する吸着リガンドの吸着性能を損なわずに効率よく固定化することが可能となった。従って、糖尿病合併症因子の製造方法における吸着リガンド固定化工程での吸着効率の減少が防止できるので、糖尿病合併症因子に対する十分な吸着性能を出すために、必要な吸着体量を増加させる必要がなくなるばかりでなく、従来よりも吸着体の大幅な性能向上が期待できるので充填容器の容量を従来以下に抑えることも可能である。
【0036】
更には、吸着体の性能向上や吸着器のコンパクト化が可能となることから、糖尿病合併症因子吸着体及び糖尿病合併症因子除去器の製造コストが安価となり、経済的提供が可能となる。
【0037】
ただし、本発明はこれら記載の内容に限定されるものではない。以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
【0038】
【実施例】
実施例1:メルカプト基を介したRAGE部分配列誘導体固定化担体の作製
以下のRAGE部分配列誘導体の調製を行った(C末端側にシステインを導入してある。)。また、アミノ酸は1文字表記で記載してある。C末端からN末端にかけて記載した。純度は95%以上で調製した。
【0039】
・RAGE部分配列A:CKGAPKKPPQRLEWKLN
(完全長RAGEの39〜54番目の配列のC末端側にシステインを導入)
尚、上記合成ペプチドの物性は次の通りであった。分子量:1993、酸性度:5.88%、塩基性度:29.41、中性度:17.65、疎水性度:47.06、等電点:10.73。
・RAGE部分配列B:CWKLNTGRTEAWKVLSPQG
(完全長RAGEの51〜68番目の配列のC末端側にシステインを導入)
尚、上記合成ペプチドの物性は次の通りであった。分子量:2174、酸性度:5.26%、塩基性度:15.79、中性度:31.58、疎水性度:47.37、等電点:10.29。
【0040】
次に、上記合成ペプチド中のメルカプト基を介して、水不溶性担体に固定化反応させた。先ず、水不溶性担体としてヨードアセチル基導入済みアガロースビーズ(ピアス製)を使用し、オープンカラム容器にゲル体積2mlを注入し、オープンカラムを室温で作製した。次に、カップリング用緩衝液(組成:50mMトリス、5mMEDTAナトリウム、pH8.5)を8ml静かに通液して、カラムを平衡化した。次いで、オープンカラムから溶液が漏れないように密栓状態で上記合成ペプチド溶液(上記カップリング用緩衝液に濃度2mg/mlで懸濁調製した。)3ml分を添加して、15分間、室温でオープンカラムを回転混和し、更に、オープンカラムを30分間、室温で静置状態にして固定化反応を行った。その後に、上記オープンカラムの栓を外して、ゲルを乾燥させないように注意しながら溶液分を通液して排除した。ゲルを洗浄するために、上記カップリング用緩衝液を更に6ml分通液した。通液後に、水不溶性担体中の未反応のヨードアセチル基をブロックするために、オープンカラムを密栓状態にして50mMシステイン溶液を2ml添加して、15分間、室温でオープンカラムを回転混和し、更に、オープンカラムを30分間、室温で静置状態にして水不溶性担体中の未反応基のブロッキング反応を行った。ブロッキング反応後は、同様に、上記オープンカラムの栓を外して、ゲルを乾燥させないように注意しながら溶液分を通液して排除した。最後に、洗浄液(組成:1M塩化ナトリウム)を静かに12ml通液し、更に、脱気したリン酸緩衝液生理食塩水を4ml加えてカラム洗浄を行い、今度は通液出口を栓した状態で脱気したリン酸緩衝液生理食塩水を適宜加えてゲルを懸濁させて、オープンカラム中のゲルをスラリー状にして遠沈管に移して、RAGE部分配列誘導体固定化担体を得た。RAGE部分配列Aを固定化した担体を吸着体1とし、RAGE部分配列Bを固定化した担体を吸着体2とした。
【0041】
実施例2:AGE標品の調製
RAGE結合物質の一例として、グリコールアルデヒド由来AGEを調製した。調製方法は、公知の文献(Molecular Medicine、6巻、2号、114−125頁、2000年)に従い調製した。25mg/mlのBSA(ウシ血清アルブミン)及びRSA(ウサギ血清アルブミン)を0.1Mのグリコールアルデヒドと5mMのDTPA(Diethylenetriamine−N,N,N’,N’’,N’’’−pentaacetic acid)と共に0.2Mリン酸緩衝液(pH7.4)に溶解後、0.2μmのフィルターにより濾過滅菌して、37℃で1週間インキュベートした。低分子量の反応物や未反応のグリコールアルデヒドを、PD−10脱塩カラムとPBSによる透析により取り除き、AGE標品を得た。BSA由来のAGE標品をAGE標品1とし、RSA由来のAGE標品をAGE標品2とした。
【0042】
実施例3:AGE標品に対する抗体の調製
実施例2で得られたAGE標品2について4mgをフロイント完全アジュバント(和光純薬)と1:1の割合で乳化し、ニュージーランド白ウサギ(雌、2.5kg)の背部数カ所に皮下注射した。初回免疫後、1週間おきに5回の追加免疫を抗体価が上昇するまで行った。追加免疫後、経時的にウサギの耳静脈より少量採血し、抗体価の確認を行った。抗体価の上昇の見られた時点からさらに2週間後、最終追加免疫を行い、その10日後に抗血清の精製を行うために全採血を行い、抗血清を得た。ついで以下の精製方法によって、抗血清からAGE特異的な抗体を調製した。まず、AGEアフィニティーカラムを調製した。7.5gのCNBr−activated Sepharose 4B を1mM塩酸で膨潤後、2Lの1mM塩酸で洗浄した。リガンドとして100mgの実施例3で得られたAGE標品1をCoupling buffer(pH8.3)と混合し、25mlのCNBr−activated Sepharose 4Bゲルと室温で1時間振とうしてカップリングさせた。カップリング後、余分なリガンドはCoupling bufferで洗浄した。ゲルの活性残基は、0.1M トリス塩酸緩衝液(pH8.0)とゲルを室温で2時間振とうしてブロッキングした。ブロッキング終了後、Coupling bufferとWashing buffer(pH4.0)とで交互に3回洗浄し、更にPBSで3回洗浄することでアフィニティー樹脂を調製した。本実施例で得られた20mlの抗血清をこのAGE標品1−Sepharose 4Bカラム(2.5cm×5cm)に4℃で一晩吸着させた。PBSで洗浄後、吸着画分を1M チオシアン酸カリウムを含んだ20mM リン酸緩衝液(pH7.4)で溶出した。溶出時は各フラクションを280nmの吸光度でモニターし、ピーク部分を集めてCentriprep−10で濃縮後、PD−10ゲル濾過カラムを用いて緩衝液の置換を行うことで、AGE標品に対する抗体(AGE抗体)を得た。
【0043】
実施例4:AGE吸着実験
実施例1で得られた吸着体を沈降体積で100μlあたり、サンプル(実施例2で得られたAGE標品1を10μg/ml含む0.5%BSA−リン酸緩衝液)を900μl加えた。37℃の孵卵器中で2時間ゆっくり振盪した。この反応液を3000rpmで5分間遠心分離して吸着体を沈降させ、上清中のAGE標品1の吸着量を以下に示す免疫学的測定法(競合法ELISA)で測定した。実施例3で得られたAGE標品1を20μg/mlの濃度に調製し、96穴マイクロタイタープレートに1ウェル当たり100μl入れて、室温で2時間インキュベートすることにより固相化した。0.5%BSAを含むPBSでブロッキングした後、緩衝液25μl、測定サンプル25μl、実施例3で得られたAGE抗体溶液を適宜希釈して50μl入れて、25℃で2時間振盪した。固相化抗原を認識した抗体に対して、抗ウサギペルオキシダーゼ標識抗体(カッペル)を反応させた後、発色させて595nmの吸光度を測定した。各吸着体のAGE吸着率を表1に示す。すべての吸着体について、AGEに対して良好な選択性を示すことが確認できた。
【0044】
表1 各種吸着体のAGE吸着率結果
吸着体1 73.3%
吸着体2 52.2%
【0045】
比較例1:ペプチド非固定化担体の作製及びAGE吸着性能評価
N−ヒドロキシスクシンイミドエステル基を10原子の長さのスペーサーを介して導入したアガロースゲル:アフィゲル10(Bio−Rad)1mLに1Mエタノールアミン−塩酸(pH8.0)0.1mLを加えて、室温で1.5時間反応させ、未反応のN−ヒドロキシスクシンイミドエステル基を不活化した後、それぞれ0.5MのNaClを含む0.1M酢酸−NaOH(pH4.0)1mL及び0.1M炭酸−NaOH(pH9.0)1mLで交互に3回洗浄し、最後にリン酸緩衝液にて平衡化を行うことでペプチド非固定化担体(吸着体3)を得た。吸着体3について、実施例4と同様の手法でAGE吸着実験を行った。結果を表2に示す。実施例1で用いたペプチドを固定化しなかった吸着体では、十分なAGE吸着性能は見られなかった。
【0046】
表2 ペプチド非固定化担体のAGE吸着率結果
吸着体3 7.6%
【0047】
比較例2:アミノ基を介したRAGE部分配列誘導体固定化担体の作製
N−ヒドロキシスクシンイミドエステル基を10原子の長さのスペーサーを介して導入したアガロースゲル:アフィゲル10(Bio−Rad)1mLに実施例1で得られたRAGE部分配列A及びBについてそれぞれ2mgを0.1MHEPES−NaOH緩衝液(pH7.5)1mLに添加した溶液を加え、4℃で一夜ゆっくりと撹拌した。1Mエタノールアミン−塩酸(pH8.0)0.1mLを加えて、室温で1.5時間反応させ、未反応のN−ヒドロキシスクシンイミドエステル基を不活化した後、それぞれ0.5MのNaClを含む0.1M酢酸−NaOH(pH4.0)1mL及び0.1M炭酸−NaOH(pH9.0)1mLで交互に3回洗浄し、最後にリン酸緩衝生理食塩水にて平衡化を行うことでRAGE部分配列誘導体固定化担体を得た。RAGE部分配列誘導体固定化担体のうち、RAGE部分配列A固定化担体を吸着体4とし、RAGE部分配列B固定化担体を吸着体5とした。
【0048】
次いで、実施例4記載の内容に従って、AGE吸着実験を行った。各吸着体のAGE吸着率を表3に示す。吸着体の作製方法がメルカプト基を介した固定化方法とアミノ基を介した固定化方法を比較すると、メルカプト基を介した固定化方法の方が吸着性能が大幅に向上することが示された。
【0049】
表3 各種吸着体のAGE吸着率結果
吸着体4 44.1%
吸着体5 31.8%
【0050】
実施例5:環流式AGE吸着実験
実施例1で得られた吸着体1をゲル体積で1mL分取して、ポリプロピレン製ミニカラム容器(カラム容積1mL、カラムに入出口がそれぞれ1つずつ有り、カラム内の吸着体がミニカラムから流失しないようにフィルターメッシュを入出口の各ヘッダー内に挟み固定している。入出口には充填液が漏れ出さないようにミニキャップをしてある。)に充填してカラムを作製した。充填溶液はリン酸緩衝生理食塩水を使用した。次いで、本ミニカラムが環流中でも吸着性能が保持されているかどうか確認する目的で環流式のAGE吸着実験を行った。カラムあたり、サンプル(実施例3で得られたAGE標品1を10μg/mL含む2%ウシ血清−リン酸緩衝生理食塩水)を7mL処理した。37℃の孵卵器中で8時間環流吸着した。環流はペリスタポンプを用いて行い、流量は0.2mL/分で固定した。適宜、100uLずつサンプリングして、環流溶液中のAGE量を実施例4に記載した免疫学的測定法で測定した。但し、AGE除去率は、2%ウシ血清−リン酸緩衝生理食塩水に実施例3で得られたAGE標品1を10μg/mLの条件で添加した後で、検出されたAGE濃度を基準に算定した。
【0051】
表4 環流式AGE吸着実験結果
【0052】
従って、本カラムは環流式で有意な吸着性能を示すことがわかった。
【0053】
【発明の効果】
本発明で見出された、少なくとも1つ以上のメルカプト基を有する吸着リガンドに対してメルカプト基を介して水不溶性担体に固定化させることを特徴とする糖尿病合併症因子吸着体及び該吸着体の製造方法により、吸着性能が向上した吸着体の設計が可能となった。また、吸着リガンドの固定化方法により吸着体の性能が大きく向上することから、上記吸着体及び吸着体使用製品のコンパクト化が可能となり、製造コストの低減が実現できる。更には、糖尿病性透析患者などに対して、上記吸着体を充填した体外循環医療用具に代表される除去容器を使用する場合には、患者への負担(体外循環回路のプライミング体積)を低減するために出来る限り小さな体積設計の除去容器が要求されるが、本発明により医療用具レベルとしても許諾可能な吸着体及び除去容器の作製技術を見出した。
【0054】
以上により、本発明によって見出された製糖尿病合併症因子吸着体及びその製造方法、該吸着体を充填した除去容器、並びに、糖尿病合併症因子の除去手法は、これまで十分な治療効果が期待できなかった糖尿病性腎症に代表される糖尿病合併症患者や血管障害患者、並びに、透析患者と言った酸化ストレスが亢進する難治性の患者に対して、患者負担がより低減された状態で提供可能な技術となったばかりでなく、RAGEが関与する難治性疾患、例えば、敗血症、アルツハイマー病などのアミロイド症、高脂血漿、腎症全般、癌、過炎症の患者にも有効な治療手段が提供できる技術である。
Claims (12)
- 少なくとも1つ以上のメルカプト基を有する吸着リガンドに対して、メルカプト基を介して水不溶性担体に固定化させたことを特徴とする糖尿病合併症因子吸着体。
- 前記吸着リガンドが、少なくとも1つ以上の塩基性官能基を有することを特徴とする請求項1記載の糖尿病合併症因子吸着体。
- 前記塩基性官能基が窒素含有官能基であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の糖尿病合併症因子吸着体。
- 前記吸着リガンドがペプチド誘導体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の糖尿病合併症因子吸着体。
- 前記ペプチド誘導体がRAGE部分配列誘導体、または、該RAGE部分配列誘導体に少なくとも1つ以上のメルカプト基を付加した化合物から構成されることを特徴とする請求項4に記載の糖尿病合併症因子吸着体。
- 前記RAGE部分配列誘導体が少なくともRAGEのIgVドメイン誘導体、または、該IgVドメイン誘導体に少なくとも1つ以上のメルカプト基を付加した化合物から構成されることを特徴とする請求項5に記載の糖尿病合併症因子吸着体。
- 前記IgVドメイン誘導体が配列Aまたは配列Bの少なくともいずれかで構成されるIgVドメイン由来ペプチド誘導体に少なくとも1つ以上のメルカプト基を付加した化合物であることを特徴とする請求項6に記載の糖尿病合併症因子吸着体。
配列A:(COOH)−KGAPKKPPQRLEWKLN−(NH2)
配列B:(COOH)−WKLNTGRTEAWKVLSPQG−(NH2) - 前記糖尿病合併症因子がRAGE結合物質であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の糖尿病合併症因子吸着体。
- 前記RAGE結合物質がAGEであることを特徴とする請求項8に記載の糖尿病合併症因子吸着体。
- 体液処理用に用いられることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の糖尿病合併症因子吸着体。
- 請求項1〜10のいずれかに記載の糖尿病合併症因子吸着体を充填したことを特徴とする糖尿病合併症因子除去器。
- 請求項11に記載の糖尿病合併症因子除去器内に体液由来の被処理液を接触させることで被処理液中に含まれる糖尿病合併症因子を被吸着物質として選択的に除去することを特徴とする滅菌可能な糖尿病合併症因子の除去方法。
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