JP2004237516A - アルミ支持体の洗浄方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】サーマルデジタルプレートに用いるアルミウエブを、2段階以上の工程からなる水洗工程を行って水洗する。この水洗工程は、第1水洗槽12には井水L1を貯留し、第2水洗槽14には純水L2を貯留した洗浄システム10を用いる。そして、第2水洗槽14での純水L2による洗浄後にアルミウエブWの表面に残留するカルシウムイオン濃度を、井水L1に含まれるカルシウムイオン濃度に影響されることなく好ましい範囲内になるように、アルミウエブWの搬送速度等を予め設定しておく。これにより、洗浄後、アルミウエブWに様々な種類の感光層を形成することにより多品種のサーマルデジタルプレートを製造しても、品種にかかわらず良好な品質のサーマルデジタルプレートを製造できる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、平版印刷版に用いるアルミ支持体の洗浄方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、サーマルデジタルプレートがPS版として多用されている。このサーマルデジタルプレートを製造するには、脱脂、研磨、陽極酸化、親水化等の処理を行った後、感光層を形成しており、各処理後、次の処理を行う前に、アルミ支持体を洗浄水で洗浄している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この洗浄では洗浄水を大量に用いるため、製造コストを下げるために、従来からこの洗浄水として井水を用いている。
【0004】
【特許文献1】
特開平5−305785号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、製造されるサーマルデジタルプレートの品種によっては、アルミ支持体の洗浄による影響によりサーマルデジタルプレートの品質に悪影響が及ぼされる場合があり、良好な品質のサーマルデジタルプレートを安定して供給し難いという問題があった。
【0006】
なお、この問題は、サーマルデジタルプレートの場合に限らず、一般的なPS版であっても、更には一般的な平版印刷版であっても、同様に生じていた。
【0007】
本発明は、上記事実を考慮して、平版印刷版の品種にかかわらず良好な品質の平版印刷版を安定して製造することを可能にするアルミ支持体の洗浄方法を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、どのような洗浄を行った場合にサーマルデジタルプレートの品質劣化が生じるかを検討した。
【0009】
その結果、洗浄中のカルシウムイオン濃度が比較的高いと、アルミ支持体の表面にネガ型の感光層を形成した場合に、感光層が剥れ易くなってしまう傾向があることを見い出した。これは、アルミ支持体表面のOH基とカルシウムイオンとが結合するため感光層が剥れ易くなるため、と推定される。
【0010】
そこで、本発明者は、ネガ型のサーマルデジタルプレートを製造する際、アルミ支持体に用いる洗浄水のカルシウムイオン濃度がどの程度以下であると、感光層に剥れ等の品質不良が生じることを防止できるかを、洗浄の最終段階で用いる洗浄水のカルシウムイオン濃度をパラメータとして変化させて実験により調べた。サーマルデジタルプレートとしては、ネガ型であって、カルシウムイオンと結合し易いOH基を有する層がアルミ支持体に設けられているプレートを製造した。感光層の評価結果を表1に示す。
【0011】
【表1】
表1から判るように、最終段階で用いる洗浄水のカルシウムイオン濃度が15ppm以下であると、製造されたネガ型のサーマルデジタルプレートの感光層の品質は全て良好であった。
【0012】
また、本発明者は、カルシウムイオン濃度が低すぎると(極端な例としては、全て純水による洗浄)、アルミ支持体の表面にポジ型の感光層を形成した場合に、感光層の品質に悪影響が出る傾向があることも見い出した。
【0013】
そこで、本発明者は、ネガ型、ポジ型の何れであっても感光層の品質が良好となるには、アルミ支持体をどのように洗浄すれば良いかを鋭意検討した。そして、カルシウムイオン濃度が比較的高い井水で予め洗浄し、その後、カルシウムイオン濃度が比較的低い洗浄水で洗浄することにより、何れの型であってもアルミ支持体の表面に残留するカルシウムイオン濃度を許容範囲内にできることを考え付き、更に検討を重ね、本発明を完成するに至った。
【0014】
請求項1に記載の発明では、平版印刷版に用いるアルミ支持体の洗浄方法において、井水で洗浄した後に、カルシウムイオン濃度が一定値以下の低濃度に調整された洗浄水で洗浄することを特徴とする。
【0015】
アルミ支持体は、長尺状であっても短尺状であってもよく、長さは特に限定しない。なお、洗浄工程が多段階にわたる場合、カルシウムイオン濃度が一定値以下の低濃度に調整された洗浄水で洗浄することは、洗浄水のコストの関係上、洗浄の最終工程で行うことが望ましい。
【0016】
請求項1に記載の発明により、アルミ支持体の表面に残留するカルシウムイオン濃度が調整されているので、このアルミ支持体の表面に感光層を形成して平版印刷版を製造すると、平版印刷版の品種にかかわらず良好な品質の平版印刷版を製造することができる。このことは、多品種のサーマルデジタルプレートを製造する場合に特に大きな効果を奏する。
【0017】
また、洗浄を充分に行うために必要となる大量の洗浄水(井水)は安価に大量に入手し易いので、洗浄にかかるコストを大幅に低減することができる。
【0018】
請求項2に記載の発明では、前記洗浄水として純水を用いることを特徴とする。
【0019】
カルシウムイオン濃度が一定値以下の低濃度に調整された洗浄水として純水で洗浄するので、これにより、水洗工程でのアルミ支持体の表面の安定性が高まり、このアルミ支持体を用いた平版印刷版の品質保証をし易い。
【0020】
ところで、アルミ支持体の表面に洗浄水が多量に残ったままアルミ支持体が搬送されると、搬送中に洗浄水の水分が蒸発し、搬送用のロール面やアルミ支持体の表面が汚れるという事態が発生し易い。そこで、請求項3に記載の発明では、前記洗浄水で洗浄した後、前記アルミ支持体の表面に残留している残留水をエアーナイフで掻き落とすことを特徴とする。
【0021】
これにより、アルミ支持体の表面に付着している残留水を非接触で容易に除去することができ、上記の事態が生じることを回避できる。
【0022】
請求項4に記載の発明では、前記アルミ支持体がアルミウエブであって、前記洗浄水で洗浄された前記アルミウエブをニップするニップローラが、前記エアーナイフの上流側に設けられていることを特徴とする。
【0023】
これにより、エアーナイフで掻き落とす水量が大幅に低減するので、エアーナイフの設備を小型化でき、しかも省エネを実現できる。
【0024】
請求項5に記載の発明では、前記アルミ支持体がサーマルデジタルプレートに用いるアルミ支持体であることを特徴とする。
【0025】
これにより、このアルミ支持体の表面に感光層を形成してサーマルデジタルプレートを製造した場合、製造されるサーマルデジタルプレートの品種にかかわらず良好な品質のサーマルデジタルプレートを製造することができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、実施形態を挙げ、本発明の実施の形態について説明する。
【0027】
[第1形態]
まず、第1形態について説明する。アルミウエブは、脱脂、研磨、陽極酸化、親水化等の処理がされた後、バー塗布法などにより感光層が表面に形成される。これらの処理を行う際、処理前に洗浄水でアルミウエブを洗浄する洗浄工程を行っている。本実施形態では、この洗浄工程として、図1、図2に示すように、井水L1が貯留された第1水洗槽12と、純水L2が貯留された第2水洗槽14と、が設けられた洗浄システム10を用いて、サーマルデジタルプレート用のアルミウエブ(長尺のアルミ支持体)Wを2段階にわたって水洗する。
【0028】
アルミウエブWは、第1水洗槽12では井水L1で洗浄され、表面の汚れ等が落とされる。そして、第2水洗槽14では純水(精製水)L2で洗浄される。
【0029】
本実施形態では、第2水洗槽14で洗浄されて送り出されたアルミウエブWの表面に残留するカルシウムイオン濃度が、好ましい範囲内になるように、すなわち、井水L1に含まれるカルシウムイオン濃度が高くても、最終段階での純水L2による洗浄後にアルミウエブWの表面に残留するカルシウムイオン濃度を好ましい範囲内になるように、アルミウエブWの搬送速度や、洗浄水中の走行距離等を予め設定しておく。
【0030】
これにより、洗浄後、アルミウエブWに様々な種類の感光層(ネガ型、ポジ型の何れであっても)を形成することにより多品種のサーマルデジタルプレートを製造しても、品種にかかわらず良好な品質のサーマルデジタルプレートを製造できる。
【0031】
例えば、洗浄後のアルミウエブWを用いて、▲1▼洗浄水にカルシウムイオンが含まれていなくてもサーマルデジタルプレートの品質に支障が生じず、アルミウエブの表面に残留するカルシウムイオン濃度が許容上限値以上になると支障が生じる品種(以下、品種Aという)のサーマルデジタルプレート、▲2▼洗浄水に適度な濃度のカルシウムイオンが含まれている必要があり、アルミウエブの表面に残留しているカルシウムイオン濃度が許容下限値以下になると支障が生じる品種(以下、品種Bという)のサーマルデジタルプレート、の何れのタイプのサーマルデジタルプレートを製造しても、感光層が剥離したりするという品質不良が生じることがない。
【0032】
なお、品種Aは、通常、ネガ型であり、例えば、カルシウムイオンと結合し易いOH基を有する層がアルミ支持体に設けられているサーマルデジタルプレートである。代表的なものとしては、水素結合するフェノール樹脂を含む感光層、或いは、水素結合する下塗り層、を有するサーマルデジタルプレートである。また、品種Bは、通常、ポジ型のサーマルデジタルプレートである。
【0033】
また、洗浄システム10には、第2水洗槽14の洗浄水(純水)から送り出されたアルミウエブWに空気を吹き付けて洗浄水を掻き落とすエアーナイフ20が設けられている。
【0034】
これにより、アルミウエブWの表面に付着している洗浄水を非接触で容易に除去することができるので、搬送用のロール面やアルミ支持体の表面が汚れるという事態が発生することを回避できる。
【0035】
なお、本実施形態では井水で洗浄する工程が1段であるが、複数段にわたって井水で洗浄し、最終段(最終工程)で純水で洗浄する場合であっても、同様に、ウエブ表面のカルシウムイオン濃度を調整することが可能である。
【0036】
[第2形態]
次に、第2形態について説明する。第2形態では、第1形態と同じ構成要素には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0037】
図3に示すように、第2形態では、第1形態に比べ、第2水洗槽14の洗浄水(純水)から送り出されたアルミウエブWに付着している洗浄水を絞り落とすニップローラ24を、エアーナイフ20よりも上流側に設けておく。
【0038】
これにより、エアーナイフ20で掻き落とす水量が大幅に低減するので、エアーナイフ20の設備を小型化でき、しかも省エネを実現できる。
【0039】
[実験例1]
アルミウエブを洗浄水で洗浄した後に感光層を形成し、第1形態で説明した品種Aのサーマルデジタルプレートを製造する実験を行った。このサーマルデジタルプレートとしては、ネガ型であって、カルシウムイオンと結合し易いOH基を有する層がアルミ支持体に設けられているプレートを製造した。
【0040】
本実験例では、洗浄時のウエブ搬送速度20m/sとし、第1水洗槽12及び第2水洗槽14での水中の走行距離を、それぞれ、5m及び2mとした。
【0041】
感光層を形成した後、感光層に剥れ等の品質不良が生じているかどうか、評価した。評価結果を表2に示す。表2では、品質不良が生じなかった場合を○、生じていた場合を×、でそれぞれ評価して示している。
【0042】
【表2】
表2に示すように、井水のみで2段階にわたってアルミウエブを洗浄した場合、アルミウエブの表面に形成した感光層に品質不良が観測された。この原因は、井水に含まれるカルシウムイオン濃度が、実験例1で用いたアルミウエブに対して高すぎ、このため、アルミウエブの表面に残留したカルシウムイオン濃度が許容範囲の上限値を超えてしまったため、と推定される。
【0043】
純水でのみ2段階にわたってアルミウエブを洗浄した場合、アルミウエブの表面に形成した感光層に品質不良は観測されなかった。これは、アルミウエブの表面に残留したカルシウムイオン濃度が著しく低く、許容範囲内であったため、と推定される。
【0044】
また、第1段階で井水、第2段階で純水、でそれぞれ洗浄した場合、同様に、アルミウエブの表面に形成した感光層に品質不良は観測されなかった。これは、第2段階で純水で洗浄することにより、アルミウエブの表面に残留したカルシウムイオン濃度が許容範囲内に調整されたため、と推定される。
【0045】
[実験例2]
アルミウエブを洗浄した後、感光層を形成し、第1形態で説明した品種Bのサーマルデジタルプレートを製造する実験を行った。このサーマルデジタルプレートとしては、ポジ型のものを製造した。
【0046】
本実験例では、洗浄時でのウエブ搬送速度や、第1水洗槽12及び第2水洗槽14での洗浄水中の走行距離は、実験例1と同じにした。
【0047】
感光層を形成した後、感光層に剥れ等の品質不良が生じているかどうか、評価した。評価結果を、実験例1で示した表2に対比させて示す。
【0048】
表2に示すように、井水のみで2段階にわたってアルミウエブを洗浄した場合、アルミウエブの表面に形成した感光層に品質不良は観測されなかった。これは、井水に含まれるカルシウムイオン濃度が、本実験例のサーマルデジタルプレートを製造する上で好ましい程度に高く、この結果、アルミウエブの表面に残留したカルシウムイオン濃度が許容範囲内であっためと考えられる。
【0049】
純水でのみ2段階にわたって洗浄した場合、感光層に品質不良が観測された。これは、洗浄水(純水)中のカルシウムイオン濃度が著しく低く、この結果、アルミウエブの表面に残留したカルシウムイオン濃度が許容範囲の下限値以下になってしまったため、と推定される。
【0050】
また、第1段階で井水、第2段階で純水、でそれぞれアルミウエブを洗浄した場合、感光層の品質不良は観測されなかった。これは、第1段階で井水で洗浄していたので、第2段階で純水で洗浄しても、アルミウエブの表面に残留したカルシウムイオン濃度が許容範囲内になっていたため、と推定される。
【0051】
このように、実験例1、実験例2により、第1段階で井水、第2段階で純水、でそれぞれアルミウエブを洗浄した場合、品種A及び品種Bの何れのサーマルデジタルプレートに用いても、アルミウエブの表面に形成した感光層に悪影響が出ないことが判った。
【0052】
以上、実施形態及び実験例を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、上記実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことは言うまでもない
【0053】
【発明の効果】
本発明は上記構成としたので、以下の効果を奏することができる。
【0054】
請求項1に記載の発明によれば、アルミ支持体の表面に残留するカルシウムイオン濃度が調整されているので、このアルミ支持体の表面に感光層を形成して平版印刷版を製造すると、平版印刷版の品種にかかわらず良好な品質の平版印刷版を製造することができる。
【0055】
請求項2に記載の発明によれば、水洗工程でのアルミ支持体の表面の安定性が高まり、このアルミ支持体を用いた平版印刷版の品質保証をし易い。
【0056】
請求項3に記載の発明によれば、アルミ支持体の表面に付着している残留水を非接触で容易に除去することができるので、搬送用のロール面やアルミ支持体の表面が汚れるという事態が発生することを回避できる。
【0057】
請求項4に記載の発明によれば、エアーナイフで掻き落とす水量が大幅に低減するので、エアーナイフの設備を小型化でき、しかも省エネを実現できる。
【0058】
請求項5に記載の発明によれば、このアルミ支持体の表面に感光層を形成してサーマルデジタルプレートを製造した場合、製造されるサーマルデジタルプレートの品種にかかわらず良好な品質のサーマルデジタルプレートを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1形態で、アルミウエブを2段階で洗浄していることを示す側面断面図である。
【図2】第1形態で、アルミウエブを最終段で洗浄後、アルミウエブに付着した洗浄水をエアーナイフで掻き落とすことを示す斜視図である。
【図3】第2形態で、アルミウエブを最終段で洗浄後、アルミウエブに付着した洗浄水をニップローラで絞り落としていることを示す側面断面図である。
【符号の説明】
20 エアーナイフ
24 ニップローラ
W アルミウエブ
L1 井水
L2 純水
Claims (5)
- 平版印刷版に用いるアルミ支持体の洗浄方法において、
井水で洗浄した後に、
カルシウムイオン濃度が一定値以下の低濃度に調整された洗浄水で洗浄することを特徴とするアルミ支持体の洗浄方法。 - 前記洗浄水として純水を用いることを特徴とする請求項1に記載のアルミ支持体の洗浄方法。
- 前記洗浄水で洗浄した後、前記アルミ支持体の表面に残留している残留水をエアーナイフで掻き落とすことを特徴とする請求項1又は2に記載のアルミ支持体の洗浄方法。
- 前記アルミ支持体がアルミウエブであって、前記洗浄水で洗浄された前記アルミウエブをニップするニップローラが、前記エアーナイフの上流側に設けられていることを特徴とする請求項3に記載のアルミ支持体の洗浄方法。
- 前記アルミ支持体がサーマルデジタルプレートに用いるアルミ支持体であることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1項に記載のアルミ支持体の洗浄方法。
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