JP2004239639A - Dna鎖切断の効率的検出法 - Google Patents

Dna鎖切断の効率的検出法 Download PDF

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Abstract

【解決課題】本発明は、細胞死や突然変異を誘起するDNA鎖切断の生体内の分布および生成頻度を直接的に測定することを課題とする。
【解決手段】本発明は、デイノコッカス・ラジオデュランス由来のPprAタンパク質をDNA鎖切断部分に結合させ、そしてDNA鎖切断部分に結合したPprAタンパク質を検出することにより、サンプル中のDNA鎖切断を検出できる方法、およびデイノコッカス・ラジオデュランス由来のPprAタンパク質、およびDNA鎖切断部分に結合したPprAタンパク質の検出手段を含む、サンプル中のDNA鎖切断検出するためのキット、を提供することにより、上述した課題を解決できることを示した。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、DNA鎖切断を認識し結合するデイノコッカス・ラジオデュランス(Deinococcus radiodurans)由来のPprAタンパク質を使用するDNA鎖切断の検出法に関するものである。本発明はまた、DNA鎖切断を認識し結合するデイノコッカス・ラジオデュランス由来のPprAタンパク質を含むDNA鎖切断の検出用キットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
遺伝情報の担い手であるDNAを安定に保持し後代に伝えていくことは、生物にとって種を存続させるために必須である。しかしながら、生物は、放射線、紫外線、薬剤あるいは食物や環境中の変異原などの外的要因、また代謝の過程で生じる活性酸素あるいはDNA複製における誤りなどの内的要因などの、DNAに損傷が引き起こされる環境に常に曝されている。この様なDNAの損傷は、DNAの複製や転写を阻害し、その結果、細胞死や老化や癌化の原因ともなる突然変異を引き起こす。
【0003】
DNA損傷の中でも特に致死効果が高いDNA鎖切断の生成頻度、細胞内での分布、およびその修復のされ易さの違いを調べることはリスク評価の見地から重要であると考えられている。しかしながら、生死にかかわるDNA鎖切断を直接測定することができる鋭敏な方法が今まで存在しなかったことが、当該技術分野における技術進展を遅らせている原因の一つとなっていた。そのため、DNA損傷やDNA修復をin situで可視化する技術を開発し、DNA鎖切断の分布や修復過程を直接的に測定することは、高等生物におけるDNA損傷および修復に関する研究関連分野の技術進展に重要であると考えられてきた。
【0004】
現在までに哺乳動物細胞において、DNA結合タンパク質およびこれに特異的な抗体を用いたDNA鎖切断を検出した例として、Bリンパ球においてNbs1タンパク質、Rad51タンパク質、Brca1タンパク質、あるいはγ−H2AXタンパク質およびこれらに特異的な抗体を用いた検出例(Petersen et al., Nature, 414: 660−665, 2001)、ヒト繊維芽細胞においてMre11タンパク質あるいはγ−H2AXタンパク質およびこれらに特異的な抗体を用いた検出例(Limoli et al., Proc. Natl. Acad.Sci. USA, 99: 233−238, 2002)が知られている。
【0005】
しかしながら、これらのDNA鎖切断の検出においては、内在性のDNA結合タンパク質を使用しているため、これらのDNA結合タンパク質を持たない検体においては検出できない点、DNA結合タンパク質がDNA鎖切断に結合するまでに一定の時間が必要であるため、DNAの初期損傷を検出することが困難である点、などの欠点が存在していた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、細胞死や突然変異を誘起するDNA鎖切断の生体内の分布および生成頻度を直接的に測定することを課題とする。より具体的には、デイノコッカス・ラジオデュランス由来のDNA鎖切断認識結合活性を有するPprAタンパク質を用いるDNA鎖切断の検出法を提供し、またPprAタンパク質を含むDNA鎖切断の検出用キットを提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる従来技術の問題点を鑑みて、DNA鎖切断への結合性が強く、結合特異性の高い抗体を用いたDNA鎖切断の検出法を開発すべく鋭意検討した結果、デイノコッカス・ラジオデュランス(Deinococcus radiodurans)由来のPprAタンパク質をDNA鎖切断部分に結合させ、そしてDNA鎖切断部分に結合したPprAタンパク質を検出することにより、サンプル中のDNA鎖切断を特異的に、かつ高感度に検出できることを見いだし、本発明を完成した。
【0008】
したがって、本発明は、デイノコッカス・ラジオデュランス由来のPprAタンパク質またはその断片をDNA鎖切断部分に結合させ、そしてDNA鎖切断部分に結合したPprAタンパク質またはその断片を検出することにより、サンプル中のDNA鎖切断を検出できる方法を提供することにより、上述した課題を解決できることを示した。
【0009】
本発明はまた、デイノコッカス・ラジオデュランス由来のPprAタンパク質またはその断片、およびPprAタンパク質またはその断片の検出手段を含む、サンプル中のDNA鎖切断検出するためのキットを提供することにより、上述した課題を解決できることを示した。
【0010】
【発明の実施の形態】
一態様において、本発明は、デイノコッカス・ラジオデュランス(Deinococcus radiodurans)由来のPprAタンパク質またはその断片をDNA鎖切断部分に結合させ、そしてDNA鎖切断部分に結合したPprAタンパク質またはその断片を検出することにより、サンプル中のDNA鎖切断を検出できる方法を提供する。
【0011】
本発明者らは先に、放射線抵抗性細菌デイノコッカス・ラジオデュランスからDNA修復促進活性を有する新規なタンパク質PprAを見いだし、このタンパク質がニックを有する開環状二本鎖および直鎖上二本鎖DNAを特異的に認識し、これと結合することを見出した(特願2001−246260号)。
【0012】
本発明においては、はじめに、このようなPprAタンパク質が有する特徴を使用して、細胞内でのDNA鎖切断部分を認識する。すなわち、デイノコッカス・ラジオデュランス由来のPprAタンパク質またはDNA鎖切断部分に結合する活性を有するその断片を、サンプルとなる細胞の核内の核酸もしくはその他の細胞内オルガネラ(例えばミトコンドリアなど)内の核酸上に存在するDNA鎖切断部分に対して結合させる。
【0013】
培養細胞中でのDNA鎖切断を調べる場合には、カバーガラス上で培養した細胞を固定化溶液中で固定した後、PprAタンパク質またはその断片を含む溶液中でインキュベートすることにより、PprAタンパク質またはその断片の結合を培養細胞内DNA鎖切断部分に対してin situで結合することができる。組織細胞中でのDNA鎖切断を調べる場合には、パラフィン包埋薄切組織切片を脱パラフィン化し、そして水和化した後にPprAタンパク質またはその断片を含む溶液中でインキュベートすることにより、PprAタンパク質またはその断片の結合を組織細胞内DNA鎖切断部分に対してin situで結合することができる。
【0014】
本発明において、「DNA鎖切断」とは、DNAを構成する糖−リン酸結合(主鎖)の少なくとも一部が破壊・切断されたDNA損傷のことをいう。DNA鎖切断には、2重らせんを形づくる2本の主鎖のうち、1本のみが切断される場合(1本鎖切断)と、2本とも切断される場合(2本鎖切断)が含まれる。このようなDNA鎖切断は、電離放射線、紫外線、薬剤あるいは食物や環境中の変異原などの外的要因、また代謝の過程で生じる活性酸素あるいはDNA複製における誤りなどの内的要因によって引き起こされる。
【0015】
本発明において、DNA鎖切断認識結合活性を有するタンパク質(PprA)とは、無傷のDNAには結合せず、DNA1本鎖切断およびDNA2本鎖切断に特異的に結合するタンパク質である。また、PprAタンパク質の断片という場合、PprAタンパク質の断片であって無傷のDNAには結合せず、DNA1本鎖切断およびDNA2本鎖切断に特異的に結合するものをいう。このような特徴を有するPprAタンパク質は、例えばSEQ ID NO: 1に示されるアミノ酸配列を有するものであることが望ましく、PprAタンパク質の断片はDNA鎖切断部分を特異的に認識し結合する活性を有するSEQ ID NO: 1のアミノ酸配列の一部のことをいう。
【0016】
このようなDNA鎖切断部分を特異的に認識し結合する活性を有するPprAタンパク質またはその断片は、当該技術分野において既知の方法、例えば、一般的にはSimon(Protein Purification Techniques: A Practical Approach, The Practical Approach Series, 244, 2nd edition (2001))、Simon(Protein Purification Applications: A Practical Approach, The Practical Approach Series, 245, 2nd edition (2001))、Hardin(Cloning, Gene Expression and Protein Purification: Experimental Procedures and Process Rationale (2001))などに詳細に記載されている方法などを使用することにより、具体的には特願2001−246260号の明細書に記載した方法により、製造するすることができる。
【0017】
簡単に述べれば、1組のプライマー(例えば、SEQ ID NO: 3およびSEQ ID NO: 4)を使用してPCR法により増幅したPprAタンパク質をコードするヌクレオチド配列(SEQ ID NO: 2)を、pUC19(Takara Shuzo社製)、pBluescript II KS(+)(Stratagene社製)、pET3a(Novagen社製)等の市販のベクターDNAに組み込むことによって組換えベクターを作製し、その組換えベクターをSambrookおよびRussel(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd edition (2001))、Hardin(Cloning, Gene Expression and Protein Purification: Experimental Procedures and Process Rationale (2001))、Brown(Essential Molecular Biology: A Practical Approach, Vol. 1, 2nd edition (2001))などに詳細に記載されている形質転換法により大腸菌、枯草菌、酵母、ほ乳動物細胞等の宿主細胞に導入することにより形質転換体を作製し、そしてこの形質転換体を、PprAタンパク質の生産に適しかつ宿主細胞の生育に適した培養条件で培養することにより、PprAタンパク質(SEQ ID NO: 1)を作製することができる。このように作製したPprAタンパク質は、集めた細胞を超音波処理等で破砕し、遠心分離することにより回収し、さらに、遠心上清を、市販のイオン交換樹脂、ゲル濾過担体、アフィニティー樹脂等を用いて精製することにより調製することができる。
【0018】
本発明においてはさらに、DNA鎖切断部分を特異的に認識し結合する活性を有するPprAタンパク質の断片を使用することができるが、このような断片は、目的とするタンパク質の断片をコードするヌクレオチド配列を用いて上述したような遺伝子工学的な方法により作成するか、または上述したようにして得られたPprAタンパク質を、公知の方法、例えば、該タンパク質をトリプシン、ペプシン等で消化して、得ることができる。
【0019】
本発明においては、次いで、DNA鎖切断部分に結合させたPprAタンパク質またはその断片を検出する。検出は、PprAタンパク質またはその断片に対して特異的に結合することができる分子、例えば抗体またはこれと同様の結合活性を有するそのフラグメント、あるいはペプチドなどを使用することができる。本発明においては、抗体またはこれと同様の結合活性を有するフラグメントを使用することが好ましい。本発明において特異的に結合する、という場合、PprAタンパク質またはその断片に特異的に結合するが、他のタンパク質には結合せず交叉反応を起こさないことをいう。
【0020】
PprAタンパク質またはその断片に対して特異的に結合することができる分子は、その分子を可視化するための手段、例えば蛍光色素、放射性同位元素(例えば35SまたはH)、酵素(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ)、あるいは蛍光色素を結合させた適当な親和性リガンド(例えば、アビジン−ビオチン)など、を結合することにより、またはこれらの分子に対して特異的に結合する抗体であってさらにその抗体を可視化するための上述のような手段を結合させた抗体をさらに使用させることにより、検出することができる。本発明においては、その感度、操作の容易性および安全性などの観点から、蛍光色素、蛍光色素を結合させた親和性リガンドを使用することが好ましい。これらの分子を蛍光標識をする際に使用する蛍光色素としては、Cy2、FITC、Alexa−350、あるいはRhodamine Bなどを使用することができ、市販のキットを使用することで、容易にこれらの分子を上述の色素で蛍光標識することができる。これらの蛍光色素により標識した分子を用いることにより、蛍光顕微鏡下でDNA鎖切断部分を特異的にかつ高感度に可視化し、DNA鎖切断部分の頻度を測定し、細胞などの試料中に微量に含まれるDNA鎖切断部分の検出が、可能になる。
【0021】
PprAタンパク質またはその断片に対して特異的に結合することができる分子を用いてDNA鎖切断部分に結合したPprAタンパク質またはその断片を検出するためには、まずサンプル(例えば、培養細胞または薄切組織切片)上で結合していないPprAタンパク質またはその断片をよく洗浄してサンプルから除去し、ついで抗体を含むバッファー溶液中でサンプルをインキュベーションして、サンプル上のPprAタンパク質またはその断片に対して抗体を結合させる。
【0022】
PprAタンパク質またはその断片に対して特異的に結合することができる分子として抗体を使用する場合、抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のいずれのタイプのものであってもよく、またこれらの抗体と同様の結合活性を有する抗体フラグメント(Fab、F(ab’)、Fab’等)であってもよい。ポリクローナル抗体は、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、モルモット、あるいはマウス等の適当な免疫動物に対して、DNA鎖切断部分認識結合活性を有するタンパク質(PprA)あるいはその断片を免疫し、回収された血清から得ることができる。モノクローナル抗体は、DNA鎖切断部分認識結合活性を有するタンパク質(PprA)あるいはその断片により免疫した動物の抗体産生細胞を回収し、これをミエローマ細胞等の適当な融合パートナーと細胞融合させてハイブリドーマ細胞を得、必要な活性を持った抗体を産生するクローンを生育に適した培地中で培養・クローニングし、そのクローニングされたハイブリドーマ細胞を適した条件下で培養することにより、その培養上清から取得することができる。さらに、このようにして得られたハイブリドーマ細胞を哺乳動物の腹腔内で増殖させることにより抗体を産生することもできる。免疫動物としては、例えば、マウス、ヌードマウス、ラット、またはニワトリなどが好ましい。抗体の精製は、遠心分離、透析、硫酸アンモニウム等による塩析、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過、アフィニティクロマトグラフィーなどの一般的な単離、精製法を用いて行うことができる。
【0023】
可視化するための手段は、当該技術分野において周知の方法により、可視化する。蛍光色素の場合には、その蛍光色素に固有の励起波長を有するレーザー光をサンプルに照射し、蛍光色素から放射される固有の波長を有する放射光を蛍光顕微鏡、CCDなどを単独でまたは組み合わせて使用することにより調べることができる。放射性同位元素の場合には、シンチレーションカウンター、X線フィルム上での感光、イメージングプレート上への露光などの手段を用いて調べることができる。酵素の場合には、発色キットを使用してX線フィルム上での感光などをを使用して測定することができる。
【0024】
本発明の別の一態様において、デイノコッカス・ラジオデュランス由来のPprAタンパク質またはその断片、およびPprAタンパク質またはその断片の検出手段を含む、サンプル中のDNA鎖切断部分を検出するためのキットを提供する。PprAタンパク質またはその断片の検出手段としては、上述したような、蛍光標識したPprAタンパク質またはその断片に特異的に結合することができる抗体またはこれと同様の結合活性を有するフラグメント、などが含まれる。
【0025】
本発明のキットにはさらに、サンプル中のDNA鎖切断部分に対するPprAタンパク質またはその断片の結合のための工程および検出手段を用いてサンプル中のDNA鎖切断部分に結合したPprAタンパク質またはその断片を検出する工程などを記載した使用説明書を含んでいてもよい。また、本発明のキットには、本発明において使用するバッファーなどその他の試薬をさらに含んでいてもよい。
【0026】
【実施例】
本明細書の以下に、実施例を記載するが、以下の実施例は、本発明をさらに具体的に説明するためのみに提供され、そして本発明の範囲をこれらの実施例により限定することを意図するものではない。
【0027】
実施例 1 DNA 鎖切断認識結合活性を有するタンパク質( PprA )を認識するポリクローナル抗体の作製
(1)PprAタンパク質の調製
タンパク質PprAの調製は、特願2001−246260号に記載の通りに行った。具体的な調製方法は、以下の通りである。
【0028】
PprAタンパク質をコードする遺伝子pprAの全長を含むプラスミドに対して、プライマー1:5’−gggcataata aaggccatat ggcaagggct aaagc−3’(SEQ ID NO: 3)およびプライマー2:5’−ttttggatcc tcagctctcg cgcaggccgt gc−3’(SEQ ID NO:4)を使用したPCRを行い、855 bpのオープンリーディングフレーム(SEQ ID NO: 2)を有するpprA遺伝子を増幅し、これを大腸菌発現ベクターpET3a(Novagen社製)に組込み、発現ベクター、pET3pprAwtを作製した。
【0029】
ついで、作製したpET3pprAwtプラスミドを用いて大腸菌BL21(DE3)pLysS(Novagen社製)を形質転換し、個々の形質転換体をアンピシリンおよびクロラムフェニコールを含むLB培地(BD Bioscience社製)で培養し、波長600 nmでの吸光度が0.6に達した時点で、終濃度0.4 mMのIPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド、Takara Shuzo社製)を添加して、タンパク質の誘導を行った。
【0030】
さらに3時間培養を続けたのち、遠心分離により形質転換体の細胞ペレットを得た。細胞ペレットを溶菌緩衝液(20 mM Tris−HCl、pH 8.0、2 mM EDTA、1mM PMSF)に懸濁して、超音波破砕を行った。ついで、8,000 rpmにおいて30分間遠心分離することにより上澄を採取し、タンパク質粗精製物を得た。
【0031】
上記粗精製で得られたタンパク質を、ポリアミン処理、硫酸アンモニウムによる塩析、DEAEセファロースCL−6Bカラムクロマトグラフィー(Amersham Pharmacia Biotech社製)、セファクリルS−300ゲル濾過(Amersham Pharmacia Biotech社製)、およびモノQカラムクロマトグラフィー(Amersham Pharmacia Biotech社製)を用いて精製して、精製野生型PprAタンパク質を調製した。
【0032】
(2)蛍光標識ポリクローナル抗体の調製
上記(1)に示した方法で製造した精製タンパク質を抗原としてフロイントの油性アジュバントとのエマルジョン100μlをウサギ1羽に皮下免疫した。半月に一回、同量の抗原とフロイントの油性アジュバントとのエマルジョンを追加免疫した(計6回)。さらに1ヶ月後に全採血した。血液の遠心分離により血清を得、熱処理により非動化した後、0.05%のNaNを加えて−80℃にて凍結保存した。
【0033】
得られた血清を、硫酸アンモニウムによる塩析、rProtein Aセファロースカラムクロマトグラフィー(Amersham Biosciences社製)、およびモノSカラムクロマトグラフィー(Amersham Biosciences社製)を用いて精製した。その結果として、ウサギ由来の抗血清から、高純度のポリクローナルIgG抗体が精製された(図1)。ここで、レーン1は、血清;レーン2は、硫酸アンモニウム処理;レーン3は、rProteinAカラムクロマトグラフィー;レーン4は、モノSカラムクロマトグラフィーをそれぞれ示す。
【0034】
デイノコッカス・ラジオデュランス細胞内および哺乳動物細胞内(CHO−K1)細胞内に存在するPprAを検出できるかどうかを調べることで、ポリクローナルIgG抗体の特異性を検討した。デイノコッカス・ラジオデュランスの野生株、pprA遺伝子破壊株およびCHO−K1細胞をガラスビーズを用いて破砕し、遠心操作により、タンパク質抽出液を調製した。これをSDS−PAGEに供し、メンブレンフィルター(Millipore社製)にタンパク質を転写後、上述したように調製した精製抗体を用いてウエスタンブロット解析を行った。その結果、デイノコッカス・ラジオデュランスの野生株ではPprAタンパク質が検出されたが、pprA遺伝子破壊株およびCHO−K1細胞ではPprAタンパク質を検出できなかった(図2)。ここで、レーン1は、デイノコッカス・ラジオデュランス野生株;レーン2は、デイノコッカス・ラジオデュランスpprA遺伝子破壊株;そしてレーン3は、CHO−K1細胞を示す。このことから、調製したポリクローナルIgG抗体の、PprAタンパク質に対する特異性が立証された。
【0035】
このようにして調製したポリクローナルIgG抗体中の遊離アミノ酸残基に対して、Amersham Biosciences社製のCy2 Ab Labelling Kitを用いて、Cy2をエステル結合させ、蛍光標識したポリクローナルIgG抗体を得た。
【0036】
実施例 2 DNA 鎖切断認識結合活性を有するタンパク質およびこれに特異的に結合する抗体を用いた哺乳動物細胞核内の DNA 鎖切断検出法
ここでは、実施例1にて作製したDNA結合活性を有するタンパク質、および蛍光標識したポリクローナル抗−PprA IgG抗体を用いて、γ線照射により誘起されるチャイニーズハムスター卵巣由来の繊維芽細胞(CHO−K1)核内のDNA鎖切断の検出例について示す。
【0037】
(1)細胞の調製
CHO−K1細胞は、10%FCSを含むHam’s F12培地中、37℃にてCOインキュベーター(5%CO)で培養した細胞を用いた。培養ディシュ内の培地をアスピレーターで吸引し、培養ディシュに接着している細胞を、2価イオンを含まないリン酸緩衝化塩類溶液(PBS(−))にて2回洗浄した。洗浄後、PBS(−)に0.05%トリプシンおよび0.02%EDTAとなるように調製した溶液を添加し、軽くディシュを撹拌し、細胞と細胞、あるいは細胞と器壁との間の接着を剥がした。その後、トリプシンの活性を失活させるために、さらに10%FCSを含むHam’s F12培地を加え、単一細胞からなる1×10細胞/mlの細胞を含む浮遊液を調製した。
【0038】
直径35 mmシャーレ内に設置した乾熱滅菌カバーガラス(24×24 mm)上に、調製した細胞浮遊液を添加し、37℃にてCOインキュベーター(5%CO)で2時間培養し、カバーガラスに細胞を接着させた。さらにシャーレ内全体に10%FCSを含むHam’s F12培地を加え、37℃にてCOインキュベーター(5%CO)で18時間培養し、カバーガラスに均一に接着した細胞を得た。
【0039】
(2)γ線照射
カバーガラスに接着したCHO−K1細胞のDNAを切断するため、培地中にて、60Coを線源として0、0.5、1、5、30、50、75、および100 Gyのγ線を照射した。照射する線量は、線源と試料の距離を変えることで制御した。
【0040】
(3)細胞の固定
照射後直ちに培地をアスピレーターで吸引して除去し、固定溶液(4%パラホルムアルデヒドおよび50 mM EDTAを含む10 mM Tris−HCl(pH 7.6))を添加し、4℃にて30分間インキュベートした。
【0041】
(4)細胞膜の脆弱化
固定した細胞をバッファー1(10 mM Tris−HCl(pH 7.6)、10 mM MgCl、1 mMDTT)にて軽く撹拌しながら、室温で5分間、2回洗浄した。洗浄後、1μg/ml Protenase Kおよび1%SDSを添加したバッファー1を添加し、室温にて30秒間反応させた。反応後、バッファー1にて軽く撹拌しながら、室温で5分間、3回洗浄した。次いで、1% Nonidet P40(Roche社製)を添加したバッファー1を添加し、37℃にて90分間インキュベートすることにより、細胞膜を脆弱化させた。さらに、バッファー1にて軽く撹拌しながら、室温で5分間、3回洗浄した。
【0042】
(5)DNA鎖切断認識結合活性を有するタンパク質による処理
タンパク質の非特異的吸着が起こらぬように、1%BSAを添加したバッファー1を添加し、37℃にて60分間ブロッキングを行った。その後、細胞に実施例1−(1)と同様にして調製したDNA鎖切断認識結合活性を有するタンパク質(PprA)を250 ng/mlとなるようにバッファー2(10 mM Tris−HCl(pH 7.6)、10 mM MgCl、1 mM DTT、0.1%BSA)に希釈した溶液を添加し、37℃にて60分間インキュベートした。次いで、未反応のPprAタンパク質を除去するために、0.5%Triton X−100を添加したバッファー2にて軽く撹拌しながら、室温で5分間、2回洗浄した。
【0043】
(6)蛍光標識したIgG抗体による処理
細胞に実施例1−(2)と同様にして調製したCy2標識抗PprA IgG抗体を2μg/mlとなるようにバッファー2中で希釈した溶液を添加し、遮光しながら37℃にて60分間インキュベートした。次いで、未反応の抗体を除去するために、0.5%Triton X−100を含むバッファー2にて軽く撹拌しながら、室温で5分間、2回洗浄した。
【0044】
(7)蛍光顕微鏡による観察と蛍光強度の測定
細胞に0.1μg/ml DAPI溶液を添加して核染色を行った後、スライドグラスに褪色防止溶液(0.5%p−フェニレンジアミンを含むグリセロール)を滴下し、気泡が入らないように細胞が接着したカバーガラスを乗せ、水分が飛ばないように封入剤でカバーガラスの周囲を塗った。DAPI(励起波長360 nm)あるいはCy2(励起波長489 nm)に合わせてフィルターを設定し、蛍光顕微鏡を用いて観察を行った。得られた蛍光シグナルはCCDカメラにて、撮影した。その結果、DAPIによる核染色の像とCy2像が一致し、核内のDNA鎖切断を効果的に検出することができた(図3)。
【0045】
図3に示した写真を基に、Cy2の蛍光強度をKinetic Imaging社製の解析ソフトKomet4.0を用いて測定した。その結果、CHO−K1細胞内のDNA鎖切断量のγ線量依存性が確認できた(図4)。
【0046】
実施例 3 DNA 鎖切断認識結合活性を有するタンパク質およびこれに特異的に結合する抗体を用いた哺乳動物細胞ミトコンドリア内の DNA 鎖切断検出法
ここでは、実施例1にて作製したDNA結合活性を有するタンパク質、および蛍光標識したIgG抗体を用いて、γ線照射に誘起されるCHO−K1内ミトンドリアDNAのDNA鎖切断の検出例について示す。
【0047】
実施例2−(1)と同様にして調製したカバーガラスに接着させたCHO−K1細胞に、ミトコンドリアを特異的に染色することができる蛍光色素MitoRed(励起波長560 nm;Dojin kagaku社製)を終濃度100 nMとなるように添加し、37℃にてCOインキュベーター(5%CO)で60分間培養した。培養後、実施例2−(2)と同様にして、60Coを線源として0、5、10、および20 Gyのγ線を照射した。次いで、照射後直ちに実施例2−(3)と同様にして、細胞を固定した。固定した細胞を実施例2−(4)に示すバッファー1にて軽く撹拌しながら、室温で5分間、2回洗浄した。次いで、1%Nonidet P40(Roche社製)を含むバッファー1を添加し、37℃にて90分間インキュベートして細胞膜を脆弱化した。さらに、バッファー1にて軽く撹拌しながら、室温で5分間、3回洗浄した。
【0048】
実施例2−(5)と同様にして、ブロッキングした後、細胞に実施例1−(1)にて調製したDNA鎖切断部分認識・結合活性を有するPprAタンパク質を1μg/mlとなるようにバッファー2に希釈した溶液を添加し、37℃にて60分間インキュベートした。次いで、0.5%Triton X−100を添加したバッファー2にて軽く撹拌しながら、室温で5分間、2回洗浄した。洗浄後、実施例1−(2)にて調製したCy2標識ポリクローナル抗−PprA IgG抗体を3μg/mlとなるようにバッファー2中で希釈した溶液を添加し、遮光しながら37℃にて60分間インキュベートした。次いで、未反応の抗体を除去するために、0.5%Triton X−100を添加したバッファー2にて軽く撹拌しながら、室温で5分間、2回洗浄した。
【0049】
さらに、実施例2−(7)と同様にしてDAPIによる染色後、スライドガラスにマウントし蛍光顕微鏡による観察を行った。蛍光顕微鏡観察は、DAPI、Cy2、あるいはMitoRedに合わせてフィルターを設定し、蛍光顕微鏡による観察を行った。得られた蛍光シグナルはCCDカメラにて撮影した。その結果、MitoRedによるミトコンドリアの染色像とCy2像が一致し、ミトコンドリア内のDNA鎖切断を効果的に検出することができたことが示された(図5)。さらに、γ線量の増加に伴いCy2の蛍光強度の増加が観察され、このことからミトコンドリア内のDNA鎖切断量のγ線量依存性も確認できたことが示された(図6)。
【0050】
【発明の効果】
本発明により、細胞死や突然変異の初期損傷であるDNA鎖切断をデイノコッカス・ラジオデュランスPprAタンパク質またはその断片およびPprAタンパク質に特異的に結合する抗体またはその部分を用いて検出する方法が提供される。この検出法は、培養細胞や動物組織の個々の細胞が受けたDNA初期傷害の検出に有用である。
【0051】
本発明は、生体から分離された培養細胞株を用いた初期DNA損傷を簡便に試験することができるため、DNA鎖切断を引き起こす物質を検出するための遺伝毒性試験を始めとする医学分野において特に有用なものである。遺伝毒性試験とは、直接あるいは間接的に遺伝的な障害を引き起こす物質を検出するために考案された試験のことをいい、遺伝毒性試験を用いると種々の機構により引き起こされる変化をin vitroおよびin vivoで検出することができ、例えば遺伝毒性試験で陽性となった物質はヒトに対する発癌物質の可能性があることを示すなど、試験結果は発癌性試験の解釈にも重要な役割を果たすことができる。
【0052】
本発明はまた、ブレオマイシンなどのDNA鎖切断を引き起こす抗腫瘍性抗生物質の腫瘍細胞に対する効果を評価することにも利用できる。また、ブレオマイシンと同様にDNA鎖切断を引き起こす作用を有する新規抗腫瘍物質を探索するためにも利用できる。
【0053】
さらに、本発明は、放射線照射によりDNAに与えられたダメージを認識し、放射線損傷マーカーを容易に検出することができる方法として有用である。
本発明はまた、放射線量に対するDNA切断の依存性を性格に検出することができることから、DNA鎖切断を引き起こすγ線やX線といった電離放射線に対して、そのリスク評価のための生物線量計としてDNA鎖切断の程度を測定する際にも利用可能である。
【0054】
【配列表】
Figure 2004239639
Figure 2004239639
Figure 2004239639
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【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、IgG抗体の各精製過程におけるSDS−PAGEのクマシー染色像を示す。各レーンは、以下のサンプルに対応する。
レーン1:血清
レーン2:硫酸アンモニウム処理
レーン3:rProteinAカラムクロマトグラフィー
レーン4:モノSカラムクロマトグラフィー
【図2】図2は、デイノコッカス・ラジオデュランス細胞および哺乳動物細胞(CHO−K1)内におけるPprAタンパク質のウエスタンブロット法による分析結果を示す写真を示す。各レーンは、以下のサンプルに対応する。
レーン1:デイノコッカス・ラジオデュランス野生株
レーン2:デイノコッカス・ラジオデュランスpprA遺伝子破壊株
レーン3:CHO−K1細胞
【図3】図3は、γ線照射によるCHO−K1細胞内DNA鎖切断について、DAPIの蛍光により核を検出した像(A)、Cy2の蛍光によりDNA鎖切断を検出した像(B)、およびDAPIとCy2の蛍光を重ね合わせた像(C)を示す。
【図4】図4は、γ線照射によるCHO−K1細胞内DNA鎖切断について、γ線量に対するCy2の蛍光強度を測定した結果のグラフを示す。
【図5】図5は、γ線照射によるCHO−K1細胞ミトコンドリア内DNA鎖切断について、DAPIの蛍光により核を検出した像(A)、Cy2の蛍光によりDNA鎖切断を検出した像(B)、MitoRedの蛍光をによりミトコンドリアを検出した像(C)、およびDAPIとCy2とMitoRedの蛍光を重ね合わせた像(D)を示す。
【図6】図6は、γ線照射によるCHO−K1細胞ミトコンドリア内DNA鎖切断について、非照射の細胞におけるCy2の蛍光によりDNA鎖切断を検出した像(A)、5 Gy照射された細胞におけるCy2の蛍光によりDNA鎖切断を検出した像(B)、10 Gy照射された細胞におけるCy2の蛍光によりDNA鎖切断を検出した像(C)、および20 Gy照射された細胞におけるCy2の蛍光によりDNA鎖切断を検出した像(D)を示す。

Claims (8)

  1. デイノコッカス・ラジオデュランス(Deinococcus radiodurans)由来のPprAタンパク質またはその断片をDNA鎖切断部分に結合させ、そしてDNA鎖切断部分に結合したPprAタンパク質またはその断片を検出することを含む、DNA鎖切断の検出法。
  2. デイノコッカス・ラジオデュランスPprAタンパク質またはその断片が、SEQ ID NO: 1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質またはその断片である、請求項1に記載のDNA鎖切断の検出法。
  3. DNA鎖切断部分に結合したPprAタンパク質またはその断片の検出を、PprAタンパク質またはその断片に特異的に結合する抗体またはこれと同様の結合活性を有する抗体フラグメントを使用して行う、請求項1または2に記載のDNA鎖切断の検出法。
  4. 抗体がポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体である、請求項3に記載のDNA鎖切断の検出法。
  5. デイノコッカス・ラジオデュランス(Deinococcus radiodurans)由来のPprAタンパク質またはその断片、およびPprAタンパク質またはその断片の検出手段、を含む、DNA鎖切断の検出用キット。
  6. デイノコッカス・ラジオデュランスPprAタンパク質またはその断片が、SEQ ID NO: 1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質またはその断片である、請求項5に記載のDNA鎖切断の検出用キット。
  7. DNA鎖切断部分に結合したPprAタンパク質またはその断片の検出手段が、PprAタンパク質またはその断片に特異的に結合する抗体またはこれと同様の結合活性を有する抗体フラグメントを含む、請求項5または6に記載のDNA鎖切断の検出用キット。
  8. 抗体がポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体である、請求項7に記載のDNA鎖切断の検出用キット。
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