JP2004241012A - 光記録媒体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】光記録媒体において、光記録媒体の情報記録層等の組成変動を抑え、光記録媒体の品質の安定化及び歩留まりの向上を図ることができる光記録媒体の製造方法、及び形成する膜の組成変動を抑えることができるスパッタリング方法を提供する。
【解決手段】基板上に少なくとも一の情報記録層を有する光記録媒体を製造する方法であって、2種以上の元素で構成されるターゲットを複数、同時に用いてスパッタリングすることにより情報記録層を成膜する工程を含み、用いる複数のターゲットが、少なくとも1種の同一元素を異なる含有率で含むことを特徴とする光記録媒体の製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】基板上に少なくとも一の情報記録層を有する光記録媒体を製造する方法であって、2種以上の元素で構成されるターゲットを複数、同時に用いてスパッタリングすることにより情報記録層を成膜する工程を含み、用いる複数のターゲットが、少なくとも1種の同一元素を異なる含有率で含むことを特徴とする光記録媒体の製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数のターゲットを用いてスパッタリングにより成膜を行う光記録媒体の製造方法及びスパッタリング方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、レーザー光を用いて情報の記録読み出しを行う大容量の光記録媒体が広く利用されている。そして、この様な光記録媒体の代表として、光磁気記録媒体や相変化型光記録媒体などがある。
通常、光磁気記録媒体は基板上に情報記録層を有し、情報記録層は誘電体層、磁性記録層、反射層等により構成されている。この光磁気記録媒体に形成されている磁性記録層は、一般に希土類金属と遷移金属との合金からなる単層により構成されている。さらに、最近では記録密度の高密度化、高転送レート化の要求が高まっており、磁気超解像(MSR)や光変調ダイレクトオーバーライト(LIM−DOW)機能等を付加した光磁気記録媒体が開発されている。高密度化され、高機能化されたこれらの光磁気記録媒体は、従来とは異なり、多層からなる磁性層を有している。
【0003】
また、通常、相変化型光記録媒体は基板上に誘電体層/相変化記録層/誘電体層/反射層等により構成される情報記録層を有している。この相変化型光記録媒体に形成される相変化記録層は、一般に、カルコゲン系合金からなる単層により構成されている。
これらの光記録媒体の情報記録層は、一般にスパッタリングにより成膜されている。光変調ダイレクトオーバーライト機能を付加した光磁気記録媒体や磁気超解像機能を有する光磁気記録媒体等も同様である。
【0004】
しかし、多元素からなる情報記録層を情報記録層と同じ組成のターゲットを用いて形成した場合、形成する情報記録層に組成変動が生じてしまう場合があった。
スパッタリングの方式としては様々な方式がとられているが、近年ではマグネトロンスパッタリング方式が主流となっている。マグネトロンスパッタリングは、スパッタリング対象である光記録媒体に対する面の反対側の面であるターゲットの裏に磁石を配した状態で、ターゲットに電力を供給してスパッタリングを行う方式のことをいい、高速で成膜することができるという利点がある。
【0005】
マグネトロンスパッタリングでは、ターゲットの裏に配置された磁石が発生する磁界により、成膜チャンバー内に封入されているArなどのスパッタガスの電子が活性化し、スパッタガスが電離し易くなるため、磁石の配置に対応した磁界発生部分のターゲットの表面に安定してプラズマ状態を発生させることができる。これにより、プラズマ中のスパッタガスの陽イオンをターゲットに衝突させやすくなるため、ターゲットから放出(スパッタリング)される原子(分子)の量が増加し、成膜速度を向上させることができる。
【0006】
しかし、マグネトロンスパッタリングでは、ターゲットの磁石の配置に対応した磁界発生部分で原子(分子)が多く放出されるため、その磁石の配置に対応した部分に凹部状にエロージョンが発生する。
一般に、スパッタリングされる原子(分子)のターゲットからの放出角度は、その元素の種類によって異なる。
【0007】
例えば、元素Aの原子の放出角度がθ1、元素Bの原子の放出角度がθ2であるとする。
図1のように、ターゲット使用初期のターゲット表面が平面状態の場合、元素Aの原子と元素Bの原子はターゲットに邪魔されることなく、ターゲットから成膜チャンバー内に放出され、スパッタリング対象である基板上に堆積させることができる。
【0008】
しかし、図2のようにスパッタリングを連続して行い、ターゲットの表面にエロージョンが発生した状態の場合、元素Aの原子はターゲットから放出されるが、元素Bの原子はターゲットから放出されても、すぐにターゲットのエロージョン部の壁面に衝突してしまい、成膜チャンバー内には放出されず、スパッタリング対象である基板上に堆積させることができない。
【0009】
この結果、ある原子(分子)は基板上に堆積されるが、ある元素は成膜チャンバー内に放出されないため基板上に堆積されず、形成する情報記録層の組成が変動するという現象が起きてしまう。
つまり、複数の元素を含むターゲットを使用して連続して成膜を行った場合、ターゲット使用初期とターゲット表面のエロージョンが進んだターゲットの寿命直前では、形成される情報記録層にかなりの組成変動が生じてしまう場合があった。
【0010】
この問題を解決する一つの方法として、形成する膜の組成に応じた、異なる元素からなる複数のターゲットを使用し、これらのターゲットを同一成膜チャンバー内で、同時にスパッタリングして、所望の組成の膜を形成する方法(コスパッタリング法)がある。
コスパッタリング法とは、例えば元素Aからなるターゲットと元素Bからなるターゲットを同時にスパッタリングしてAとBからなる膜を形成する方法のことを言う。このコスパッタリング法によれば、それぞれのターゲットに供給する電力を各々独立に制御することにより、それぞれのターゲットから放出される原子(分子)の量を各々独立に調整できるので、形成される膜の組成を所望通りに調整できる。
【0011】
つまり、コスパッタリング法においても、ターゲットのエロージョンに伴い、ターゲットから放出される原子(分子)の量は変化していくものの、その変化に応じて各ターゲットの電力量を調整することで常に同じ組成の膜を形成することができる。
従って、コスパッタリング法によれば、情報記録層と同じ組成のターゲットを使用し続けることが原因として発生する、情報記録層中の組成変動を補正することが可能である(例えば、特許文献1参照)。
【0012】
【特許文献1】
特開2000−123432号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、コスパッタリング法を行った場合であっても、形成する情報記録層に組成変動が発生する場合があった。
上記のように、コスパッタリング法を行う際、それぞれのターゲットに別々に電力を供給し、放電を起こすことによってスパッタリングを行うが、それぞれのターゲットに所望の電力を安定して供給できる場合には、情報記録層に組成変動は発生しにくい。しかし、それぞれのターゲットに供給する電力が何らかの影響で意図せず変動した場合には、それぞれのターゲットでのスパッタリング状態が変化してしまうこととなる。
【0014】
例えば、Gd等の希土類ターゲットとFeCo等の遷移金属ターゲットを用いてコスパッタリングを行っている際に、Gdターゲットに供給する電力が急に低下した場合、Gdターゲットから放出されるGdの量が減少するので、成膜される膜中のGdの含有率が低下し組成変動が発生することとなるのである。
また、ガス圧やその他の成膜条件が変動したときも、その変動がいずれかのターゲットのスパッタリング状態を特に変動させる様な場合は、形成する情報記録層の組成変動が発生するおそれがある。
【0015】
この様な、ターゲットに供給する電力や、その他の成膜条件の予期せぬ変動により発生する光記録媒体の情報記録層の組成変動は、品質の安定した製品を大量に作る必要がある生産ラインで問題となっていた。また、情報記録層の組成変動が大きすぎると、作製した製品は不良品となってしまうため、歩留まりの低下という面でも問題となっていた。
【0016】
そこで、本発明は光記録媒体の製造方法において、光記録媒体の情報記録層中の組成変動を抑え、光記録媒体の品質安定化及び歩留まりの向上を図ることができる光記録媒体の製造方法、及び形成する膜の組成変動を抑えることができるスパッタリング方法を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、基板上に少なくとも一の情報記録層を有する光記録媒体を製造する方法であって、2種以上の元素で構成されるターゲットを複数、同時に用いてスパッタリングすることにより該情報記録層を成膜する工程を含み、用いる複数のターゲットが、少なくとも1種の同一元素を異なる含有率で含むことを特徴とする光記録媒体の製造方法に存する。
【0018】
また本発明の別の要旨は、基板上に少なくとも一の膜を形成するスパッタリング方法であって、2種以上の元素で構成されるターゲットを複数、同時に用いてスパッタリングを行い、用いる複数のターゲットが、少なくとも1種の同一元素を異なる含有率で含むことを特徴とするスパッタリング方法に存する。
本発明によれば、ターゲットに供給する電力等の予期せぬ変動によりスパッタリング条件が変化したとしても、その変化による影響を抑えることができるため、品質の安定した製品を作ることができ、さらに歩留まりの向上を図ることができる。
【0019】
なお、本発明における情報記録層とは、記録光の照射により、光学的又は電気的性質が変化し、それにより情報が記録され得る層をいう。
また、本発明により形成する膜は、光記録媒体の情報記録層が多層からなる場合は、全層であっても良いし、その情報記録層の一部の層であっても良い。
さらに、本発明のスパッタリング方法は、光記録媒体の分野だけに限らず、その本発明の趣旨から明らかなように、スパッタリングにより安定した組成の膜を作ることが必要な様々な分野に広く用いることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明にかかる光記録媒体は、複数の工程を経て製造される。まず最初に樹脂成形工程において射出成形等により基板が形成され、続いて成膜工程において、単層及び多層膜からなる情報記録層がスパッタリング法により基板上に成膜される。次に、保護膜形成工程において、スピンコート法等により基板上に保護膜が形成される。
【0021】
本発明では、基板上に少なくとも一の情報記録層を有する光記録媒体を製造する方法であって、2種以上の元素で構成されるターゲットを複数、同時に用いてスパッタリングすることにより該情報記録層を成膜する工程を含み、用いる複数のターゲットが、少なくとも1種の同一元素を異なる含有率で含むターゲットを用いて成膜することを特徴とする。つまり、同一の元素を含み、かつその含有率の異なる複数のターゲットを用いてスパッタリングを行う。これにより、組成変動の少ない、品質の安定した製品を作ることが可能となる。
【0022】
なお、本発明において2種以上の元素で構成されるターゲットとは、2種以上の元素で構成される化合物のターゲット、或いは2種以上の元素で構成される合金ターゲットのことを言う。
本願発明を説明するために、その一例として、2つのターゲットを用いた場合について説明する。なお、ターゲットから元素Xの原子(以下、原子Xと称する。)と元素Yの原子(以下、原子Yと称する。)を放出するのに必要なスパッタガスの陽イオンの運動エネルギーは同じであり、原子Xと原子Yの放出量は印加する電力に比例して定まるものとして説明する。
【0023】
従来の方法である、同一の元素を含まない、異なる元素からなるターゲットを2つ用いた場合の光記録媒体の製造方法について説明する。
ターゲットAは元素Xのみ、ターゲットBは元素Yのみからなるターゲットである。
ターゲットAとBにそれぞれ100Wの電力をかけると、スパッタリングはターゲットに印加される電力に比例して行われるため、ターゲットAから放出される原子XとターゲットBから放出される原子Yの放出量は同じとなり、基板上に形成される膜は元素Xが50原子%、元素Yが50原子%の組成となる。次に、ターゲットAに印加する電力が50Wに変動したとする。この場合形成される膜は、ターゲットに印加する電圧に比例した元素がターゲットから放出され膜を形成することとなるため、形成される膜の組成比は元素Xが約33原子%、元素Yが約67原子%となる。つまり、電力が変動をすると形成する膜の組成比が大きく変動することとなる。
【0024】
次に、本願発明の方法である、2つのターゲットを用い、さらにその2つのターゲットが同一の元素を含有し、その含有する元素の含有率が異なるターゲットを用いる光記録媒体の製造方法について説明する。
ターゲットCは元素X:60原子%、元素Y:40原子%の2種の元素からなるターゲット、ターゲットDは元素X:40原子%、元素Y:60原子%の2種の元素からなるターゲットである。
【0025】
ターゲットCとDにそれぞれ100Wの電力をかけると、スパッタリングはターゲットに印加される電力に比例して行われるため、ターゲットCとDはそれぞれの組成比に応じた量の原子Xと原子Yを放出するため、形成される膜はターゲットC、Dから放出される原子Xと原子Yのそれぞれの放出量の比率に応じた、元素Xが50原子%、元素Yが50原子%の組成となる。次に、ターゲットCに印加する電力が50Wに変動したとする。この場合、形成される膜はそれぞれのターゲットに印加する電圧に比例した元素がターゲットから放出され膜を形成することとなるため、形成される膜の組成比は元素Xが約47原子%、元素Yが約53原子%となる。
【0026】
つまり、本願発明によれば、従来の方法に比べ、スパッタリング中に電力等のスパッタリング条件が変動したとしても、形成する膜の組成比に与える影響を抑えること可能となる。
ここでは、例として2種の同一元素からなる2つのターゲットについて説明したが、この例に限定されるものではなく、例えば3種の同一元素からなる3つのターゲットであっても良い。つまり、少なくとも1種の同一の元素を異なる含有率で含む複数のターゲットを用いるのであれば、本発明の効果を期待することができる。
【0027】
本発明においては、少なくとも1種の同一元素を5原子%以上異なる含有率で含む複数のターゲットを用いるのが好ましく、さらに好ましくは10原子%以上異なる含有率で含むターゲットを用いることである。上述したように、一般に同じターゲットを使用し続けると、ターゲット表面にエロージョンが生じ、スパッタリングにより形成される膜中の元素に組成変動が生じる。そして、この形成される膜の組成変動は最大でも5原子%程度と考えられる。よって、ターゲットより放出する原子の放出量の変動を補正し、精度良くスパッタリングを行うためには、少なくとも1種の同一元素を5原子%以上異なる含有率で含むターゲットを用いるのが効果的である。ただし、ターゲット中の同一元素の含有率の差があまり大きいと、電力の変動の影響を受けやすくなり、本願発明の効果を十分に発揮しにくくなるため、その差は30原子%以下に抑えておく方が好ましい。
【0028】
本発明においては、複数のターゲットが、いずれも同じ2種以上の同一元素で構成されるターゲットを用いるのが好ましい。用いる複数のターゲットがいずれも同じ2種以上の同一元素で構成されるターゲットであれば、ターゲットに含まれる全元素に対して、電力の変動等を原因として起きるターゲットからの原子の放出量の変動を抑えることができるからである。
【0029】
本発明においては、複数のターゲット及び該情報記録層が、いずれも同じ2種以上の同一元素で構成されていることが好ましい。複数のターゲット及び該情報記録層が同じ元素で構成されていれば、2種以上の同一元素ターゲットのみで情報記録層を形成することが可能となるため、スパッタリングに必要なターゲットの数を減らすことができ、スパッタリング装置を簡素化することができるからである。
【0030】
スパッタガスとしては一般的な不活性ガスを用いることが可能であり、例えばNe、Ar、Kr、Xeなどを用いることができる。スパッタ効率の観点から分子量の重い元素が好ましい。また、コスト面を考慮した場合、Arを用いるのが好ましい。さらに、不活性ガス中に酸素、窒素、水素等を混合させてターゲットから放出される元素とこれらのガスを反応させる、いわゆる反応性スパッタリングを行っても良い。
【0031】
スパッタリングを行う際の投入パワーは、スパッタリングの対象物とターゲットの間隔、製造タクト等により決定されるが、通常0.1kW以上、8kW以下程度である。また、スパッタリングを行う際の真空度は通常 0.05Pa以上、1.0Pa以下程度である。この範囲であれば、ターゲット表面に安定的にプラズマ放電を発生させることができるからである。
【0032】
スパッタリング電力の印加方法としては特に限定されず、直流スパッタリング法及び高周波スパッタリング法などの一般的な印加方法を用いて行うことができる。ただし、導電性のあるターゲットを用いる場合は、成膜レートが速く、効率的にスパッタリングを行うことができる直流スパッタリング法を採用することが好ましい。
【0033】
本発明の光記録媒体に用いる基板としては、通常トラッキングサーボのために凹凸を設けたポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂等の樹脂基板、ガラス、セラミックス基板、アルミニウム合金等の金属基板、またはこれらの積層基板等を用いる。基板の厚さは特に限定されるものではないが、通常0.1mm以上、2mm以下程度である。
【0034】
本発明においては、情報記録層として、これらの基板の上に、通常の光磁気記録媒体であれば、例えば誘電体層/磁性記録層/誘電体層/反射層を設ける。光磁気記録媒体が磁気超解像(MSR)媒体、光変調ダイレクトオーバーライト(LIM−DOW)媒体であれば、通常の光磁気記録媒体における磁性記録層の部分が多層構成となる。例えば、磁性記録層、膜が再生層/切断層/記録層の様な3層構成となったり、再生層/マスク層/切断層/記録層/記録補助層などの5層構成となる。ただし、磁気超解像(MSR)媒体においては、切断層は非磁性層でも良い。また、相変化型記録媒体であれば、例えば誘電体層/相変化記録層/誘電体層/反射層などを設ける。
【0035】
本発明は、組成比の安定した膜を形成することができるため、安定して高い組成精度が要求される磁気超解像(MSR)媒体や光変調ダイレクトオーバーライト(LIM−DOW)媒体の多層構成からなる磁性記録層を形成する際に用いるのが好ましく、さらに多層構成からなる磁性層の中でも特に高い組成精度が要求される再生層、記録層などの磁性層を形成する際に用いるのが好ましい。
【0036】
光磁気記録媒体の各層について説明する。
光磁気記録媒体の誘電体層としては、窒化珪素、窒化アルミニウム等の金属窒化物、酸化珪素、酸化アルミニウム等の金属酸化物及び硫化亜鉛等の金属硫化物が採用可能である。磁性記録層の材質としては、一般に希土類系金属(Gd、Tb、Dy、Ho等)及び遷移金属(Fe、Co等)を主成分とした合金が用いられる。また、磁気超解像(MSR)媒体や光変調ダイレクトオーバーライト(LIM−DOW)媒体の多層構成からなる磁性記録層も希土類系金属及び遷移金属を主成分とした合金が用いられる。反射層の材質としては、再生光の波長において十分高い反射率を有する材料、例えばAu、Al、Ag、Cu、Ti、Cr、Ni、Pt、Ta、Pd等の金属を、単独あるいは合金にして用いることができる。これらの中でもAu、Al、Agは反射率が高く、反射層の材料として適している。また、これらの金属を主成分とした上で、加えて他の材料を含有させても良い。
【0037】
相変化型記録媒体の各層について説明する。
相変化型記録媒体における誘電体層の材質としては光磁気記録媒体と同様のものを用いることができる。相変化型記録層の材質としては、例えば、Ge−Te合金、Ge−Sb−Te合金、Pd−Ge−Sb−Te合金、Nb−Ge−Sb−Te合金、Pd−Nb−Ge−Sb−Te合金、Pt−Ge−Sb−Te合金、Co−Ge−Sb−Te合金、In−Sb−Te合金、Ag−In−Sb−Te合金、Ag−V−In−Sb−Te合金、In−Se合金などが挙げられる。多数回の記録の書換が可能であることから、Ge−Sb−Te合金、Pd−Ge−Sb−Te合金、Nb−Ge−Sb−Te合金、Pd−Nb−Ge−Sb−Te合金、Pt−Ge−Sb−Te合金が好ましい。特に、Pd−Ge−Sb−Te合金、Nb−Ge−Sb−Te合金、Pd−Nb−Ge−Sb−Te合金、Pt−Ge−Sb−Te合金は、消去時間が短く、かつ多数回の記録に優れることから好ましい。反射層の材質としては、光磁気記録媒体と同様の材質のものを用いることができる。
【0038】
また、基板上に積層されたこれらの情報記録層を機械的、化学的に保護する目的で、さらに樹脂保護膜を設けることも好ましい。樹脂保護膜を形成する場合に用いられる材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化型樹脂等が挙げられ、特に紫外線硬化型樹脂が好ましく用いられる。これらの樹脂保護膜の形成方法としては、スピンコート法、ロールコート法、などが用いられる。形成する保護膜の厚さは、一般的には5μm以上20μm以下である。
【0039】
【実施例】
以下に実施例を示すが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例)
直径130mm、厚さ1.2mmのポリカーボネート基板を200枚用意し、鏡面部に、磁気超解像(MSR)方式の光磁気記録媒体の再生層として一般に知られるGdFeCo層を真空を破ることなく形成し、再生層を有するポリカーボネート基板を連続して200枚作製した。
【0040】
上記の再生層は、スパッタリング装置に同一の元素を含有する組成比がGd27(Fe80Co20)73のターゲットaと組成比がGd38(Fe80Co20)62からなるターゲットbの2つのターゲットを用いて形成した。a,bいずれもターゲット厚さは 5mm、直径は8インチである。スパッタリング電力の印加は、直流スパッタリング法により行った。再生層形成時のスパッタリングは、チャンバー内を1.0×10―5Paになるまで真空排気した後、Arガスを導入し、Arガスの圧力を0.2Pa、ターゲットa、b共に1.5kWの電力を一定供給することにより行った。
【0041】
この時、ある基板の成膜中における成膜電圧の時間変動(40秒間)を測定したものが表―1である。電圧変動の最大値と最小値の差は、ターゲットa 1.67V、ターゲットb 1.75Vあった。これにより、一定の入力値に対して電圧が、ある割合の変動を持っていることがわかる。
またスパッタリング状態の経時変化を測定するため、連続して形成した再生層のみを有するポリカーボネート基板を10枚ごとに取り出し、全部で20枚分の再生層におけるGdの組成比を走査型蛍光X線分析装置(株式会社リガク製 System3270)により測定した。各元素定量のため、同装置は標準試料により校正実施し、検量線法により組成を求めた。測定結果を表―2に示す。なお、表―2はサンプル1から20まで時系列に並んでいる。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
(比較例)
再生層膜を形成する際に用いたターゲットをGdのみからなる厚さ5mmのターゲットcと、その組成比がFe80Co20である厚さ2mmのターゲットdとし、ターゲットcに1.0kW、ターゲットdに1.6kWの一定電力を供給した。
【0044】
この時、ある基板の成膜中における成膜電圧の時間変動(40秒間)を測定したものが表―3である。電圧変動の最大値と最小値の差は、ターゲットc 1.77V、ターゲットd1.63Vであった。これにより、一定の入力値に対して電圧が、ある割合の変動を持っていることがわかる。
ターゲットdの厚さを薄くしたのはFeCoターゲットが強磁性であるため、同じ厚さでは漏れ磁束が小く、その結果プラズマ密度が不足し、放電しないためである。これ以外は実施例と同様にして再生層膜のみを有する基板を連続して200枚作製し、実施例と同様にして再生層膜のGdの組成比を測定した。測定結果を表―4に示す。
なお、表4はサンプル21から40まで時系列に並んでいる。
【0045】
【表3】
【0046】
【表4】
表―2及び表―4より明らかなように、本発明によれば組成変動の少ない膜を形成できるため、連続して光記録媒体を製造したとしても、組成比の安定した高品質の製品を作ることができ、さらに歩留まりの向上を図ることができると考えられる。また、本発明によれば、形成する膜の組成変動を抑えることができることが確認できる。
【0047】
【発明の効果】
本発明の光記録媒体の製造方法によれば、光記録媒体の製造中に、ターゲットに供給する電力等の予期せぬ変動によりスパッタリング条件が変化したとしても、その変化による影響を極力抑えることができるため、安定して製造することができる。さらに、生産ラインにおける歩留まりの向上を図ることができる。また、本発明のスパッタリング方法によれば、スパッタリング条件が変化したとしても、形成する膜の組成変動を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ターゲット表面が平面時の原子の放出角を表す概略的な図である。
【図2】ターゲット表面にエロージョンが発生した時の原子の放出角を表す概略的な図である。
【符号の説明】
1 元素Aの原子の軌跡
2 元素Bの原子の軌跡
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数のターゲットを用いてスパッタリングにより成膜を行う光記録媒体の製造方法及びスパッタリング方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、レーザー光を用いて情報の記録読み出しを行う大容量の光記録媒体が広く利用されている。そして、この様な光記録媒体の代表として、光磁気記録媒体や相変化型光記録媒体などがある。
通常、光磁気記録媒体は基板上に情報記録層を有し、情報記録層は誘電体層、磁性記録層、反射層等により構成されている。この光磁気記録媒体に形成されている磁性記録層は、一般に希土類金属と遷移金属との合金からなる単層により構成されている。さらに、最近では記録密度の高密度化、高転送レート化の要求が高まっており、磁気超解像(MSR)や光変調ダイレクトオーバーライト(LIM−DOW)機能等を付加した光磁気記録媒体が開発されている。高密度化され、高機能化されたこれらの光磁気記録媒体は、従来とは異なり、多層からなる磁性層を有している。
【0003】
また、通常、相変化型光記録媒体は基板上に誘電体層/相変化記録層/誘電体層/反射層等により構成される情報記録層を有している。この相変化型光記録媒体に形成される相変化記録層は、一般に、カルコゲン系合金からなる単層により構成されている。
これらの光記録媒体の情報記録層は、一般にスパッタリングにより成膜されている。光変調ダイレクトオーバーライト機能を付加した光磁気記録媒体や磁気超解像機能を有する光磁気記録媒体等も同様である。
【0004】
しかし、多元素からなる情報記録層を情報記録層と同じ組成のターゲットを用いて形成した場合、形成する情報記録層に組成変動が生じてしまう場合があった。
スパッタリングの方式としては様々な方式がとられているが、近年ではマグネトロンスパッタリング方式が主流となっている。マグネトロンスパッタリングは、スパッタリング対象である光記録媒体に対する面の反対側の面であるターゲットの裏に磁石を配した状態で、ターゲットに電力を供給してスパッタリングを行う方式のことをいい、高速で成膜することができるという利点がある。
【0005】
マグネトロンスパッタリングでは、ターゲットの裏に配置された磁石が発生する磁界により、成膜チャンバー内に封入されているArなどのスパッタガスの電子が活性化し、スパッタガスが電離し易くなるため、磁石の配置に対応した磁界発生部分のターゲットの表面に安定してプラズマ状態を発生させることができる。これにより、プラズマ中のスパッタガスの陽イオンをターゲットに衝突させやすくなるため、ターゲットから放出(スパッタリング)される原子(分子)の量が増加し、成膜速度を向上させることができる。
【0006】
しかし、マグネトロンスパッタリングでは、ターゲットの磁石の配置に対応した磁界発生部分で原子(分子)が多く放出されるため、その磁石の配置に対応した部分に凹部状にエロージョンが発生する。
一般に、スパッタリングされる原子(分子)のターゲットからの放出角度は、その元素の種類によって異なる。
【0007】
例えば、元素Aの原子の放出角度がθ1、元素Bの原子の放出角度がθ2であるとする。
図1のように、ターゲット使用初期のターゲット表面が平面状態の場合、元素Aの原子と元素Bの原子はターゲットに邪魔されることなく、ターゲットから成膜チャンバー内に放出され、スパッタリング対象である基板上に堆積させることができる。
【0008】
しかし、図2のようにスパッタリングを連続して行い、ターゲットの表面にエロージョンが発生した状態の場合、元素Aの原子はターゲットから放出されるが、元素Bの原子はターゲットから放出されても、すぐにターゲットのエロージョン部の壁面に衝突してしまい、成膜チャンバー内には放出されず、スパッタリング対象である基板上に堆積させることができない。
【0009】
この結果、ある原子(分子)は基板上に堆積されるが、ある元素は成膜チャンバー内に放出されないため基板上に堆積されず、形成する情報記録層の組成が変動するという現象が起きてしまう。
つまり、複数の元素を含むターゲットを使用して連続して成膜を行った場合、ターゲット使用初期とターゲット表面のエロージョンが進んだターゲットの寿命直前では、形成される情報記録層にかなりの組成変動が生じてしまう場合があった。
【0010】
この問題を解決する一つの方法として、形成する膜の組成に応じた、異なる元素からなる複数のターゲットを使用し、これらのターゲットを同一成膜チャンバー内で、同時にスパッタリングして、所望の組成の膜を形成する方法(コスパッタリング法)がある。
コスパッタリング法とは、例えば元素Aからなるターゲットと元素Bからなるターゲットを同時にスパッタリングしてAとBからなる膜を形成する方法のことを言う。このコスパッタリング法によれば、それぞれのターゲットに供給する電力を各々独立に制御することにより、それぞれのターゲットから放出される原子(分子)の量を各々独立に調整できるので、形成される膜の組成を所望通りに調整できる。
【0011】
つまり、コスパッタリング法においても、ターゲットのエロージョンに伴い、ターゲットから放出される原子(分子)の量は変化していくものの、その変化に応じて各ターゲットの電力量を調整することで常に同じ組成の膜を形成することができる。
従って、コスパッタリング法によれば、情報記録層と同じ組成のターゲットを使用し続けることが原因として発生する、情報記録層中の組成変動を補正することが可能である(例えば、特許文献1参照)。
【0012】
【特許文献1】
特開2000−123432号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、コスパッタリング法を行った場合であっても、形成する情報記録層に組成変動が発生する場合があった。
上記のように、コスパッタリング法を行う際、それぞれのターゲットに別々に電力を供給し、放電を起こすことによってスパッタリングを行うが、それぞれのターゲットに所望の電力を安定して供給できる場合には、情報記録層に組成変動は発生しにくい。しかし、それぞれのターゲットに供給する電力が何らかの影響で意図せず変動した場合には、それぞれのターゲットでのスパッタリング状態が変化してしまうこととなる。
【0014】
例えば、Gd等の希土類ターゲットとFeCo等の遷移金属ターゲットを用いてコスパッタリングを行っている際に、Gdターゲットに供給する電力が急に低下した場合、Gdターゲットから放出されるGdの量が減少するので、成膜される膜中のGdの含有率が低下し組成変動が発生することとなるのである。
また、ガス圧やその他の成膜条件が変動したときも、その変動がいずれかのターゲットのスパッタリング状態を特に変動させる様な場合は、形成する情報記録層の組成変動が発生するおそれがある。
【0015】
この様な、ターゲットに供給する電力や、その他の成膜条件の予期せぬ変動により発生する光記録媒体の情報記録層の組成変動は、品質の安定した製品を大量に作る必要がある生産ラインで問題となっていた。また、情報記録層の組成変動が大きすぎると、作製した製品は不良品となってしまうため、歩留まりの低下という面でも問題となっていた。
【0016】
そこで、本発明は光記録媒体の製造方法において、光記録媒体の情報記録層中の組成変動を抑え、光記録媒体の品質安定化及び歩留まりの向上を図ることができる光記録媒体の製造方法、及び形成する膜の組成変動を抑えることができるスパッタリング方法を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、基板上に少なくとも一の情報記録層を有する光記録媒体を製造する方法であって、2種以上の元素で構成されるターゲットを複数、同時に用いてスパッタリングすることにより該情報記録層を成膜する工程を含み、用いる複数のターゲットが、少なくとも1種の同一元素を異なる含有率で含むことを特徴とする光記録媒体の製造方法に存する。
【0018】
また本発明の別の要旨は、基板上に少なくとも一の膜を形成するスパッタリング方法であって、2種以上の元素で構成されるターゲットを複数、同時に用いてスパッタリングを行い、用いる複数のターゲットが、少なくとも1種の同一元素を異なる含有率で含むことを特徴とするスパッタリング方法に存する。
本発明によれば、ターゲットに供給する電力等の予期せぬ変動によりスパッタリング条件が変化したとしても、その変化による影響を抑えることができるため、品質の安定した製品を作ることができ、さらに歩留まりの向上を図ることができる。
【0019】
なお、本発明における情報記録層とは、記録光の照射により、光学的又は電気的性質が変化し、それにより情報が記録され得る層をいう。
また、本発明により形成する膜は、光記録媒体の情報記録層が多層からなる場合は、全層であっても良いし、その情報記録層の一部の層であっても良い。
さらに、本発明のスパッタリング方法は、光記録媒体の分野だけに限らず、その本発明の趣旨から明らかなように、スパッタリングにより安定した組成の膜を作ることが必要な様々な分野に広く用いることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明にかかる光記録媒体は、複数の工程を経て製造される。まず最初に樹脂成形工程において射出成形等により基板が形成され、続いて成膜工程において、単層及び多層膜からなる情報記録層がスパッタリング法により基板上に成膜される。次に、保護膜形成工程において、スピンコート法等により基板上に保護膜が形成される。
【0021】
本発明では、基板上に少なくとも一の情報記録層を有する光記録媒体を製造する方法であって、2種以上の元素で構成されるターゲットを複数、同時に用いてスパッタリングすることにより該情報記録層を成膜する工程を含み、用いる複数のターゲットが、少なくとも1種の同一元素を異なる含有率で含むターゲットを用いて成膜することを特徴とする。つまり、同一の元素を含み、かつその含有率の異なる複数のターゲットを用いてスパッタリングを行う。これにより、組成変動の少ない、品質の安定した製品を作ることが可能となる。
【0022】
なお、本発明において2種以上の元素で構成されるターゲットとは、2種以上の元素で構成される化合物のターゲット、或いは2種以上の元素で構成される合金ターゲットのことを言う。
本願発明を説明するために、その一例として、2つのターゲットを用いた場合について説明する。なお、ターゲットから元素Xの原子(以下、原子Xと称する。)と元素Yの原子(以下、原子Yと称する。)を放出するのに必要なスパッタガスの陽イオンの運動エネルギーは同じであり、原子Xと原子Yの放出量は印加する電力に比例して定まるものとして説明する。
【0023】
従来の方法である、同一の元素を含まない、異なる元素からなるターゲットを2つ用いた場合の光記録媒体の製造方法について説明する。
ターゲットAは元素Xのみ、ターゲットBは元素Yのみからなるターゲットである。
ターゲットAとBにそれぞれ100Wの電力をかけると、スパッタリングはターゲットに印加される電力に比例して行われるため、ターゲットAから放出される原子XとターゲットBから放出される原子Yの放出量は同じとなり、基板上に形成される膜は元素Xが50原子%、元素Yが50原子%の組成となる。次に、ターゲットAに印加する電力が50Wに変動したとする。この場合形成される膜は、ターゲットに印加する電圧に比例した元素がターゲットから放出され膜を形成することとなるため、形成される膜の組成比は元素Xが約33原子%、元素Yが約67原子%となる。つまり、電力が変動をすると形成する膜の組成比が大きく変動することとなる。
【0024】
次に、本願発明の方法である、2つのターゲットを用い、さらにその2つのターゲットが同一の元素を含有し、その含有する元素の含有率が異なるターゲットを用いる光記録媒体の製造方法について説明する。
ターゲットCは元素X:60原子%、元素Y:40原子%の2種の元素からなるターゲット、ターゲットDは元素X:40原子%、元素Y:60原子%の2種の元素からなるターゲットである。
【0025】
ターゲットCとDにそれぞれ100Wの電力をかけると、スパッタリングはターゲットに印加される電力に比例して行われるため、ターゲットCとDはそれぞれの組成比に応じた量の原子Xと原子Yを放出するため、形成される膜はターゲットC、Dから放出される原子Xと原子Yのそれぞれの放出量の比率に応じた、元素Xが50原子%、元素Yが50原子%の組成となる。次に、ターゲットCに印加する電力が50Wに変動したとする。この場合、形成される膜はそれぞれのターゲットに印加する電圧に比例した元素がターゲットから放出され膜を形成することとなるため、形成される膜の組成比は元素Xが約47原子%、元素Yが約53原子%となる。
【0026】
つまり、本願発明によれば、従来の方法に比べ、スパッタリング中に電力等のスパッタリング条件が変動したとしても、形成する膜の組成比に与える影響を抑えること可能となる。
ここでは、例として2種の同一元素からなる2つのターゲットについて説明したが、この例に限定されるものではなく、例えば3種の同一元素からなる3つのターゲットであっても良い。つまり、少なくとも1種の同一の元素を異なる含有率で含む複数のターゲットを用いるのであれば、本発明の効果を期待することができる。
【0027】
本発明においては、少なくとも1種の同一元素を5原子%以上異なる含有率で含む複数のターゲットを用いるのが好ましく、さらに好ましくは10原子%以上異なる含有率で含むターゲットを用いることである。上述したように、一般に同じターゲットを使用し続けると、ターゲット表面にエロージョンが生じ、スパッタリングにより形成される膜中の元素に組成変動が生じる。そして、この形成される膜の組成変動は最大でも5原子%程度と考えられる。よって、ターゲットより放出する原子の放出量の変動を補正し、精度良くスパッタリングを行うためには、少なくとも1種の同一元素を5原子%以上異なる含有率で含むターゲットを用いるのが効果的である。ただし、ターゲット中の同一元素の含有率の差があまり大きいと、電力の変動の影響を受けやすくなり、本願発明の効果を十分に発揮しにくくなるため、その差は30原子%以下に抑えておく方が好ましい。
【0028】
本発明においては、複数のターゲットが、いずれも同じ2種以上の同一元素で構成されるターゲットを用いるのが好ましい。用いる複数のターゲットがいずれも同じ2種以上の同一元素で構成されるターゲットであれば、ターゲットに含まれる全元素に対して、電力の変動等を原因として起きるターゲットからの原子の放出量の変動を抑えることができるからである。
【0029】
本発明においては、複数のターゲット及び該情報記録層が、いずれも同じ2種以上の同一元素で構成されていることが好ましい。複数のターゲット及び該情報記録層が同じ元素で構成されていれば、2種以上の同一元素ターゲットのみで情報記録層を形成することが可能となるため、スパッタリングに必要なターゲットの数を減らすことができ、スパッタリング装置を簡素化することができるからである。
【0030】
スパッタガスとしては一般的な不活性ガスを用いることが可能であり、例えばNe、Ar、Kr、Xeなどを用いることができる。スパッタ効率の観点から分子量の重い元素が好ましい。また、コスト面を考慮した場合、Arを用いるのが好ましい。さらに、不活性ガス中に酸素、窒素、水素等を混合させてターゲットから放出される元素とこれらのガスを反応させる、いわゆる反応性スパッタリングを行っても良い。
【0031】
スパッタリングを行う際の投入パワーは、スパッタリングの対象物とターゲットの間隔、製造タクト等により決定されるが、通常0.1kW以上、8kW以下程度である。また、スパッタリングを行う際の真空度は通常 0.05Pa以上、1.0Pa以下程度である。この範囲であれば、ターゲット表面に安定的にプラズマ放電を発生させることができるからである。
【0032】
スパッタリング電力の印加方法としては特に限定されず、直流スパッタリング法及び高周波スパッタリング法などの一般的な印加方法を用いて行うことができる。ただし、導電性のあるターゲットを用いる場合は、成膜レートが速く、効率的にスパッタリングを行うことができる直流スパッタリング法を採用することが好ましい。
【0033】
本発明の光記録媒体に用いる基板としては、通常トラッキングサーボのために凹凸を設けたポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂等の樹脂基板、ガラス、セラミックス基板、アルミニウム合金等の金属基板、またはこれらの積層基板等を用いる。基板の厚さは特に限定されるものではないが、通常0.1mm以上、2mm以下程度である。
【0034】
本発明においては、情報記録層として、これらの基板の上に、通常の光磁気記録媒体であれば、例えば誘電体層/磁性記録層/誘電体層/反射層を設ける。光磁気記録媒体が磁気超解像(MSR)媒体、光変調ダイレクトオーバーライト(LIM−DOW)媒体であれば、通常の光磁気記録媒体における磁性記録層の部分が多層構成となる。例えば、磁性記録層、膜が再生層/切断層/記録層の様な3層構成となったり、再生層/マスク層/切断層/記録層/記録補助層などの5層構成となる。ただし、磁気超解像(MSR)媒体においては、切断層は非磁性層でも良い。また、相変化型記録媒体であれば、例えば誘電体層/相変化記録層/誘電体層/反射層などを設ける。
【0035】
本発明は、組成比の安定した膜を形成することができるため、安定して高い組成精度が要求される磁気超解像(MSR)媒体や光変調ダイレクトオーバーライト(LIM−DOW)媒体の多層構成からなる磁性記録層を形成する際に用いるのが好ましく、さらに多層構成からなる磁性層の中でも特に高い組成精度が要求される再生層、記録層などの磁性層を形成する際に用いるのが好ましい。
【0036】
光磁気記録媒体の各層について説明する。
光磁気記録媒体の誘電体層としては、窒化珪素、窒化アルミニウム等の金属窒化物、酸化珪素、酸化アルミニウム等の金属酸化物及び硫化亜鉛等の金属硫化物が採用可能である。磁性記録層の材質としては、一般に希土類系金属(Gd、Tb、Dy、Ho等)及び遷移金属(Fe、Co等)を主成分とした合金が用いられる。また、磁気超解像(MSR)媒体や光変調ダイレクトオーバーライト(LIM−DOW)媒体の多層構成からなる磁性記録層も希土類系金属及び遷移金属を主成分とした合金が用いられる。反射層の材質としては、再生光の波長において十分高い反射率を有する材料、例えばAu、Al、Ag、Cu、Ti、Cr、Ni、Pt、Ta、Pd等の金属を、単独あるいは合金にして用いることができる。これらの中でもAu、Al、Agは反射率が高く、反射層の材料として適している。また、これらの金属を主成分とした上で、加えて他の材料を含有させても良い。
【0037】
相変化型記録媒体の各層について説明する。
相変化型記録媒体における誘電体層の材質としては光磁気記録媒体と同様のものを用いることができる。相変化型記録層の材質としては、例えば、Ge−Te合金、Ge−Sb−Te合金、Pd−Ge−Sb−Te合金、Nb−Ge−Sb−Te合金、Pd−Nb−Ge−Sb−Te合金、Pt−Ge−Sb−Te合金、Co−Ge−Sb−Te合金、In−Sb−Te合金、Ag−In−Sb−Te合金、Ag−V−In−Sb−Te合金、In−Se合金などが挙げられる。多数回の記録の書換が可能であることから、Ge−Sb−Te合金、Pd−Ge−Sb−Te合金、Nb−Ge−Sb−Te合金、Pd−Nb−Ge−Sb−Te合金、Pt−Ge−Sb−Te合金が好ましい。特に、Pd−Ge−Sb−Te合金、Nb−Ge−Sb−Te合金、Pd−Nb−Ge−Sb−Te合金、Pt−Ge−Sb−Te合金は、消去時間が短く、かつ多数回の記録に優れることから好ましい。反射層の材質としては、光磁気記録媒体と同様の材質のものを用いることができる。
【0038】
また、基板上に積層されたこれらの情報記録層を機械的、化学的に保護する目的で、さらに樹脂保護膜を設けることも好ましい。樹脂保護膜を形成する場合に用いられる材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化型樹脂等が挙げられ、特に紫外線硬化型樹脂が好ましく用いられる。これらの樹脂保護膜の形成方法としては、スピンコート法、ロールコート法、などが用いられる。形成する保護膜の厚さは、一般的には5μm以上20μm以下である。
【0039】
【実施例】
以下に実施例を示すが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例)
直径130mm、厚さ1.2mmのポリカーボネート基板を200枚用意し、鏡面部に、磁気超解像(MSR)方式の光磁気記録媒体の再生層として一般に知られるGdFeCo層を真空を破ることなく形成し、再生層を有するポリカーボネート基板を連続して200枚作製した。
【0040】
上記の再生層は、スパッタリング装置に同一の元素を含有する組成比がGd27(Fe80Co20)73のターゲットaと組成比がGd38(Fe80Co20)62からなるターゲットbの2つのターゲットを用いて形成した。a,bいずれもターゲット厚さは 5mm、直径は8インチである。スパッタリング電力の印加は、直流スパッタリング法により行った。再生層形成時のスパッタリングは、チャンバー内を1.0×10―5Paになるまで真空排気した後、Arガスを導入し、Arガスの圧力を0.2Pa、ターゲットa、b共に1.5kWの電力を一定供給することにより行った。
【0041】
この時、ある基板の成膜中における成膜電圧の時間変動(40秒間)を測定したものが表―1である。電圧変動の最大値と最小値の差は、ターゲットa 1.67V、ターゲットb 1.75Vあった。これにより、一定の入力値に対して電圧が、ある割合の変動を持っていることがわかる。
またスパッタリング状態の経時変化を測定するため、連続して形成した再生層のみを有するポリカーボネート基板を10枚ごとに取り出し、全部で20枚分の再生層におけるGdの組成比を走査型蛍光X線分析装置(株式会社リガク製 System3270)により測定した。各元素定量のため、同装置は標準試料により校正実施し、検量線法により組成を求めた。測定結果を表―2に示す。なお、表―2はサンプル1から20まで時系列に並んでいる。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
(比較例)
再生層膜を形成する際に用いたターゲットをGdのみからなる厚さ5mmのターゲットcと、その組成比がFe80Co20である厚さ2mmのターゲットdとし、ターゲットcに1.0kW、ターゲットdに1.6kWの一定電力を供給した。
【0044】
この時、ある基板の成膜中における成膜電圧の時間変動(40秒間)を測定したものが表―3である。電圧変動の最大値と最小値の差は、ターゲットc 1.77V、ターゲットd1.63Vであった。これにより、一定の入力値に対して電圧が、ある割合の変動を持っていることがわかる。
ターゲットdの厚さを薄くしたのはFeCoターゲットが強磁性であるため、同じ厚さでは漏れ磁束が小く、その結果プラズマ密度が不足し、放電しないためである。これ以外は実施例と同様にして再生層膜のみを有する基板を連続して200枚作製し、実施例と同様にして再生層膜のGdの組成比を測定した。測定結果を表―4に示す。
なお、表4はサンプル21から40まで時系列に並んでいる。
【0045】
【表3】
【0046】
【表4】
表―2及び表―4より明らかなように、本発明によれば組成変動の少ない膜を形成できるため、連続して光記録媒体を製造したとしても、組成比の安定した高品質の製品を作ることができ、さらに歩留まりの向上を図ることができると考えられる。また、本発明によれば、形成する膜の組成変動を抑えることができることが確認できる。
【0047】
【発明の効果】
本発明の光記録媒体の製造方法によれば、光記録媒体の製造中に、ターゲットに供給する電力等の予期せぬ変動によりスパッタリング条件が変化したとしても、その変化による影響を極力抑えることができるため、安定して製造することができる。さらに、生産ラインにおける歩留まりの向上を図ることができる。また、本発明のスパッタリング方法によれば、スパッタリング条件が変化したとしても、形成する膜の組成変動を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ターゲット表面が平面時の原子の放出角を表す概略的な図である。
【図2】ターゲット表面にエロージョンが発生した時の原子の放出角を表す概略的な図である。
【符号の説明】
1 元素Aの原子の軌跡
2 元素Bの原子の軌跡
Claims (5)
- 基板上に少なくとも一の情報記録層を有する光記録媒体を製造する方法であって、
2種以上の元素で構成されるターゲットを複数、同時に用いてスパッタリングすることにより該情報記録層を成膜する工程を含み、
用いる複数のターゲットが、少なくとも1種の同一元素を異なる含有率で含むことを特徴とする光記録媒体の製造方法。 - 該複数のターゲットが、少なくとも1種の同一元素を5原子%以上異なる含有率で含む、請求項1に記載の光記録媒体の製造方法。
- 該複数のターゲットが、いずれも同じ2種以上の同一元素で構成される、請求項1又は2に記載の光記録媒体の製造方法。
- 該複数のターゲット及び該情報記録層が、いずれも同じ2種以上の同一元素で構成される請求項3に記載の光記録媒体の製造方法。
- 基板上に少なくとも一の膜を形成するスパッタリング方法であって、2種以上の元素で構成されるターゲットを複数、同時に用いてスパッタリングを行い、用いる複数のターゲットが、少なくとも1種の同一元素を異なる含有率で含むことを特徴とするスパッタリング方法。
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