JP2004254591A - 抗酸菌鑑別方法及び鑑別用プローブ - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の課題は、非定型抗酸菌に含まれるMycobacterium avium complex(MAC)のうち、従来検出できなかった変異株を検出可能とすることであり、さらには非定型抗酸菌症としてヒトから分離され、検出されたMycobacterium kansasiiのグループ分けを可能とする抗酸菌の鑑別方法を提供することである。
【解決手段】非定型抗酸菌に関し、MAC又はM.kansasiiに存在する16S rRNA遺伝子をコードする塩基配列のうち、特定の位置に生じる変異した塩基と相補的な塩基を含むプローブ機能を有するオリゴヌクレオチドを用いることによる。
【解決手段】非定型抗酸菌に関し、MAC又はM.kansasiiに存在する16S rRNA遺伝子をコードする塩基配列のうち、特定の位置に生じる変異した塩基と相補的な塩基を含むプローブ機能を有するオリゴヌクレオチドを用いることによる。
Description
【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、非定型抗酸菌の鑑別方法に関する。具体的には、Mycobacterium avium complex(以下「MAC」という。)の変異株の検出、あるいはMycobacterium kansasii(以下、「M.kansasii」という。)のグループ分けを可能とする鑑別方法に関し、さらには該鑑別方法に使用するプローブ機能を有するオリゴヌクレオチドに関する。
【0002】
【従来の技術】
我が国において長年「国民病」と呼ばれてきた結核は、生活環境衛生の改善や化学療法の進展の進展により患者数の激減をみたが、現在も全世界で年間800万人の患者が発生し、毎年約300万人が死亡している。また、最近では若年層における集団感染や外国人労働者の激増による流行も懸念されている。
【0003】
一方、結核菌以外の非定型抗酸菌と一括呼称されている菌による感染症は増加傾向にあり、なかでもMAC感染症は極めて難治性であり米国ではAIDS患者の主要な日和見感染として問題視されている。非定型抗酸菌は、現在のところ培養可能73菌種・培養不能1菌種(M.leprae)が知られている。培養可能73菌種のうち38菌種がヒトに対して病原性を持つ。非定型抗酸菌症の病像には特異性が無く、また菌種により化学療法剤の効果が異なるため、早期診断・治療を行う為には菌種同定が必要である。そのために迅速・確実な非定型抗酸菌の菌種同定法が求められている。
【0004】
一般に肺結核の鑑別は、臨床症状、病理組織学的所見からは極めて困難であるため、菌の検出・同定によってなされなければならない。
従来、結核菌・非定型抗酸菌の同定は培養法で行わなければならなかった。一般的には小川培地で分離培養し、培地上の性状(増殖速度・温度、コロニーの形状や色素産生など)、ナイアシンテスト、硝酸還元試験、耐熱性カタラーゼ試験、ツイーン80水解試験、光発光試験などの生化学的性状で菌種の同定を行っていた。しかし抗酸菌は増殖が遅く、菌種同定までに約1ヶ月以上を要することが多いのが問題であった。
近年、分子生物学的手法を用いた迅速同定法が開発されてきており、結核菌をはじめとする抗酸菌の検出・同定にも、これらの技術が応用されている。
分離菌株の同定キットとしては、「アキュプローブ(商標名)」(極東製薬)、「DDHマイコバクテリウム極東(商標名)」が開発されているが、これらは菌の培養が必要なため検査までに2〜3週間が必要である。
【0005】
一方、核酸増幅法を用いて喀痰等の臨床検体から培養操作を経ることなく結核菌等を検出・同定するキットとしては、「DNAプローブ『中外』−MTD(商標名)」(中外製薬)、「アンプリコア マイコバクテリウム(商標名)」(ロシュ・ダイアグノスティックス社)などが開発されている。これらは、臨床検体から1〜2日で結核菌を検出・同定することができる。
【0006】
「アンプリコア マイコバクテリウム」キットに含まれるプライマー(配列番号4、5)を使用すると、ヒトに病原性をもつ38菌種のうち31菌種の増幅が確認されており、非定型抗酸菌をPCRで増幅するプライマーとして優れている。
KY18(Forward) 5’−CACATGCAAGTCGAACGGAAAGG−3’(配列番号4)
KY75(Reverse) 5’−GCCCGTATCGCCCGCACGCTCACA−3’(配列番号5)
【0007】
また、本キットは菌種同定には菌種特異プローブ(配列番号6〜8)を用いたマイクロプレートハイブリダイゼーション法を用いており、結核菌(M.tuberculosis)および非定型抗酸菌のM.avium、M.intracellulareの3菌種を同定することができる(非特許文献1)。
M.tuberculosis検出用プローブ:
5’−GGTGGAAAGCGCTTTAGCGGT−3’(配列番号6)
M.avium検出用プローブ:
5’−CAAGACGCATGTCTTCTGGTG−3’(配列番号7)
M.intracellulare検出用プローブ:
5’−TTAGGCGCATGTCTTTAGGT−3(配列番号8)
【0008】
しかし、生化学的性状試験でMACと判定されている菌株でも、菌種特異プローブ領域に遺伝子変異を起こし、プローブとのハイブリダイゼーションが行われず検出することができないMACが存在する。
一方、非定型抗酸菌症としてヒトから分離されるM.kansasii の存在も無視することはできない。「アンプリコア マイコバクテリウム」では検出することができない菌種であるため、迅速な同定法が求められている。
【0009】
【非特許文献1】
アンプリコア(登録商標)マイコバクテリウム(ロッシュ・ダイアグノスティクス株式会社)添付文書(2001年6月改訂)。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、非定型抗酸菌に含まれるMACのうち、従来検出できなかった変異株を検出可能とすることであり、さらには非定型抗酸菌症としてヒトから分離され、検出されたM.kansasiiのグループ分けを可能とする抗酸菌の鑑別方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、非定型抗酸菌に関し、MAC又はM.kansasiiに存在する16S rRNA遺伝子をコードする塩基配列のうち、特定の位置に変異が生じることに着目し、該変異位置の塩基と相補的な塩基を含むプローブ機能を有するオリゴヌクレオチドを用いることにより、上記課題を解決しうることを見出し、鋭意研究を重ねた結果本発明を完成した。
【0012】
すなわち本発明は、
1.抗酸菌が保有する16S rRNA遺伝子をコードする塩基配列の変異を検出することを特徴する抗酸菌鑑別方法、
2.上記抗酸菌が、Mycobacterium avium complex又はMycobacterium kansasiiである前項1に記載の抗酸菌鑑別方法、
3.16S rRNAをコードする塩基配列が配列番号1〜3のいずれかに表される塩基配列である前項1又は2に記載の抗酸菌鑑別方法、
4.塩基配列の変異を次の1)〜3)のいずれかに示す位置から検出する前項3に記載の抗酸菌鑑別方法;
1)配列番号1(Mycobacterium avium)で表される塩基配列の塩基の変異位置が154〜174位の間のいずれかである。
2)配列番号2(Mycobacterium intracellulare)で表される塩基配列の塩基の変異位置が132〜152位の間のいずれかである。
3)配列番号3(Mycobacterium kansasii)で表される塩基配列の塩基の変異位置が430位を含む、
5.塩基配列の変異を次の1)〜3)のいずれかに示す位置から検出する前項3又は4に記載の抗酸菌鑑別方法;
1)配列番号1で表される塩基配列の塩基の変異位置が塩基位置154位、155位及び169位で示される塩基のうち、いずれか少なくとも1以上の塩基の変異を検出する。
2)配列番号2で表される塩基配列の塩基の変異位置が塩基位置133位、136位及び148位で示される塩基のうち、いずれか少なくとも1以上の塩基の変異を検出する。
3)配列番号3で表される塩基配列の塩基の変異位置が塩基位置430位で示される塩基の変異を検出する、
6.プローブ機能を有し、前項1〜5のいずれか1に記載する抗酸菌鑑別方法に使用する抗酸菌鑑別用オリゴヌクレオチド、
7.生化学的性状試験により抗酸菌に属すると判定された菌株について、該菌が保有する16S rRNA遺伝子の一部にハイブリッド形成しうるオリゴヌクレオチドであって、以下の1)〜4)に表される配列からなるオリゴヌクレオチドの群より選択され、プローブ機能を有するオリゴヌクレオチド;
1)16S rRNA遺伝子の変異位置に相補的な塩基を含んでなるオリゴヌクレオチド。
2)16S rRNAをコードする塩基配列が配列番号1〜3のいずれかに表され、該塩基配列の変異の位置に相補的な塩基を含んでなるオリゴヌクレオチド。
3)上記2)の変異位置が請求項4で示される位置に存在する場合に、該変異の位置に相補的な塩基を含んでなるオリゴヌクレオチド。
4)上記2)の塩基配列が請求項5で示される位置に存在する場合に、該変異の位置に相補的な塩基を含んでなるオリゴヌクレオチド。
5)上記1)〜4)のいずれか1に記載のオリゴヌクレオチドの塩基数が、5〜50のいずれかであるオリゴヌクレオチド。
6)配列番号9〜12のいずれかで表される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド。
7)上記1)〜6)のいずれか1に記載のオリゴヌクレオチドの相補鎖。
8)上記1)〜7)のいずれか1に記載のオリゴヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズしうるオリゴヌクレオチド。
9)上記1)〜8)のいずれか1に記載のオリゴヌクレオチドのうち、1ないし数個の塩基が置換、欠失、挿入若しくは付加といった変異された塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、
8.前項6又は7に記載のオリゴヌクレオチドから選択される少なくとも1のオリゴヌクレオチドを固相に固定化し、該オリゴヌクレオチドと被検物質をハイブリダイズさせることにより行う抗酸菌鑑別方法、
9.前項1〜5又は8に記載の鑑別方法を使用することによるMycobacterium avium complexの変異株の検出方法、Mycobacterium kansasiiのグルーピング方法又はこれらの菌株の系統樹解析方法、
10.前項1〜5、8又は9に記載の鑑別方法に使用する試薬及び/又は試薬キット、
11.前項6又は7に記載のオリゴヌクレオチドから選択されるいずれかのオリゴヌクレオチドを含む試薬及び/又は試薬キット、からなる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の抗酸菌鑑別方法は、非定型抗酸菌に適用することができる。具体的には、市販の測定キット(非特許文献1)で検出可能であった結核菌(M.tuberculosis)および非定型抗酸菌のM.avium、M.intracellulareを除くMAC変異株の検出をすることができ、M.kansasiiについては他の測定キットでM.kansasiiと判定された菌株を2つにグループ分けすることができる。さらに、本発明の抗酸菌鑑別方法を使用することにより、これらの菌株の系統解析を容易かつ迅速に行うことができる。
【0014】
本発明において、抗酸菌に属する各菌種の標準株が有する16S rRNA遺伝子をコードする塩基配列は、M.aviumについてはGenBank Acc. No.AJ536037(配列番号1)、M.intracellulareについては同Acc. No.X52927(配列番号2)、M.kansasiiについては同Acc. No.AF480601(配列番号3)に示される配列を意味する。
M.tuberculosisを鑑別同定しうるプローブは、配列番号6に表される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを使用することができる(非特許文献1)。また、M.aviumを鑑別同定しうるプローブは配列番号7に、及びM.intracellulareを鑑別同定しうるプローブは配列番号8に表される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを使用することができる(非特許文献1)。
【0015】
本発明の鑑別方法により、喀痰等の臨床試料からMACの変異株を検出することができる。この方法によると、生化学的性状試験により抗酸菌に属すると判定された菌株であっても、従来同定が不可能であったMACの変異株を検出することができる。また、他の公知の方法により判別されたM.kansasiiについて、これらの菌株が保有する変異の箇所を検出することで、MAC変異株の検出およびM.kansasiiのグループ分けをすることが可能となる。
【0016】
さらに、これら変異株の塩基配列を特許出願中(特願2001−333704)に示した通り、抗酸菌各種の16S rRNA遺伝子について属間、種間、個体間等に存在し得る塩基配列の相違を考慮して、特定された領域に相当する領域で作製したデータベースと共に臨床株の塩基配列を解析することにより、変異株の検出およびグループ分けが可能となる。具体的には、抗酸菌が保有する16S rRNA遺伝子のうち約500塩基対の部分をPCR等の増幅手段により増幅し、その塩基配列を解読して遺伝子系統解析を行い、系統樹を作成する。系統樹は、好ましくは2−パラメーター法を用いたN−J法にて作成し、作成された系統樹はブースストラップ法を用いて評価することができる。
【0017】
(鑑別方法)
本発明の抗酸菌の鑑別方法とは、抗酸菌が保有する16S rRNA遺伝子をコードする塩基配列の変異、好適には該16S rRNA遺伝子のうち、約500塩基対の部分に存在する変異を検出することによるものである。具体的には、配列番号1〜3のいずれかに記載の塩基配列から変異を検出することによる。
【0018】
たとえば、MACでは少なくとも12以上の変異株の存在が確認された。これらの変異株の16S rRNA遺伝子をコードする塩基配列は、M.avium標準株の16S rRNA遺伝子をコードする塩基配列(配列番号1)又はM.intracellulare標準株の16S rRNA遺伝子をコードする塩基配列(配列番号2)に表される配列とは複数箇所において相違が認められた。本発明の鑑別方法は、これらの変異を検出することにより行うことができる。該変異の検出は、変異された塩基を含む配列を検出することにより行うことができ、より具体的には、該配列とハイブリダイズするプローブを使用することにより行うことができる。
【0019】
より確実に変異株を鑑別するには、配列番号1に記載の配列のうち、塩基位置が154〜174位に存在する変異を含む配列を検出することにより行うことができる。配列番号1に記載された配列と変異株の配列は、154位、155位及び169位のいずれかの塩基が少なくとも1以上変異している傾向が認められる。同様に、配列番号2に記載の配列のうち、塩基位置が132〜152位に存在する変異を含む配列を検出することによっても行うことができる。配列番号2に記載された配列と変異株の配列は、133位、136位及び148位のいずれかの塩基が少なくとも1以上変異している傾向が認められる。
【0020】
一方、M.kansasii標準株の16S rRNA遺伝子をコードする塩基配列(配列番号3)の配列について430番目にあたる塩基CがGに変異している株が存在するということが確認された。この1塩基の違いを見極めることでM.kansasiiを2つのグループに分けることが可能であると考えられた。本発明の鑑別は、この変異を検出する方法により行うことができる。
【0021】
該変異の検出は、MAC変異株の検出と同様に変異された塩基を含む配列を検出すること、例えば該変異された塩基を含む配列とハイブリダイズしうるプローブを用いて行うことができる。
本発明の鑑別は、目的とする菌の16S rRNA遺伝子領域のDNAとプローブとハイブリダイゼーションさせる前に該対象DNAを増幅させておくことが好ましい。
遺伝子領域の増幅方法は、公知の方法、例えばポリメラーゼ・チェイン・リアクション法(PCR法、Science, 230:1350−1354,1985)やNASBA法(Nucleic Acid Sequence Based Amplification 法、Nature, 350,91−92,1991)及びLAMP法(特開2001−242169号公報)等により行うことができ、好適には、非特許文献1に記載する方法により行うことができる。
【0022】
(プローブの作成)
プローブ機能を有するオリゴヌクレオチドは、自体公知の方法により製造することができ、例えば化学的に合成することができる。あるいは、天然の核酸を制限酵素などによって切断し、上記のような塩基配列で構成されるように改変し、あるいは連結することも可能である。具体的には、オリゴヌクレオチド合成装置(アプライドバイオシステムズ社製 Expedite Model 8909 DNA合成機)等を用いて合成することができる。
本発明のプローブ機能を有するオリゴヌクレオチドの塩基数は、5〜50であり、好ましくは8〜30であり、より好ましくは15〜25である。
【0023】
また、1ないし数個の塩基が置換、欠失、挿入もしくは付加といった変異させたオリゴヌクレオチドの合成法も、自体公知の製法を使用することができる。例えば、部位特異的変異導入法、遺伝子相同組換え法、プライマー伸長法またはPCR法を単独または適宜組み合わせて、例えば、Molecular Cloning;A Laboratory Manual、2版、Sambrookら編、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス、コールド・スプリング・ハーバー、ニューヨーク、1989年;[ラボマニュアル遺伝子工学]、村松正實編、丸善株式会社、1988年;[PCRテクノロジー、DNA増幅の原理と応用]、Ehrlich, HE.編、ストックトンプレス、1989年等に記載の方法に準じて、あるいはそれらの方法を改変して実施することができ、例えばUlmerの技術(Science(1983)219:666)を利用することができる。
【0024】
ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は一般に知られたものを選択することができる。その一例としては、50%ホルムアミド、5×SSC(150mM NaCl、15mM クエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム,pH7.6、5×デンハーツ溶液、10%デキストラン硫酸、および20μg/mlのDNAを含む溶液中、42℃で一晩ハイブリダイゼーションした後、室温で2×SSC・0.1%SDS中で一次洗浄し、次いで、約65℃において0.1×SSC・0.1%SDSで二次洗浄といった条件があげられる。
【0025】
(ハイブリダイゼーション)
ハイブリダイゼーションは、ドットブロットハイブリダイゼーション、マイクロプレートハイブリダイゼーション、DNAチップ等の公知の方法あるいは今後開発される方法を適用して行うことができる。
例えば、該対象DNAの5’末端をビオチン等で標識し、マイクロウェルに固相化された各菌株に特異的なプローブ機能を有するオリゴヌクレオチドと、該該対象DNAとをハイブリダイズさせて該該対象DNAを固相に固定化し、ビオチンを発色させることにより、プローブ特異的な菌種を検出することができる。
【0026】
本発明は、抗酸菌鑑別方法、プローブ機能を有するオリゴヌクレオチドの他、該オリゴヌクレオチドを含む試薬及び/又は試薬キットにも及ぶものである。
【0027】
【実施例】
本発明の理解を深めるために、以下に実施例を示して本発明を説明するが、本件特許発明はこれら実施例の内容に何ら限定されるものではない。
【0028】
(実施例1)結核菌(M.tuberculosis)、M.avium、M.intracellulareの検出
【0029】
抗酸菌遺伝子の増幅
(ア)検体からのDNA抽出
「アンプリコア マイコバクテリウム」(ロシュ・ダイアグノスティックス社)の添付文書(非特許文献1)に従って行った。
1)喀痰等の体液は、等量のNALC溶解液(0.05M Na3citrate,2%NaOH)を加え撹拌し、室温にて可溶化する。
2)PBSを適当量加え、3,000g以上で20分以上遠心、上清を除去する。
3)沈渣にPBS1mlを加える。
4)検体洗浄液*1500μlに上記前処理済み検体100μlを加える。
5)13,000gで10分間遠心し、上清を除去する。
6)沈渣に溶菌試薬*1100μlを加えて良く撹拌し、60℃で45分間インキュベートする。
7)中和試薬*1100μlを加えてDNA抽出液とする。
8)菌株の場合は、コロニーを適当量のPBSに懸濁し、前処理済み検体として、上述4)の操作から実施する。
*1:アンプリコアマイコバクテリウム用検体前処理用試薬セットII
【0030】
(イ)DNAの増幅
非特許文献1に従って行った。増幅は配列番号4及び5に記載するプライマーを用いた。
【0031】
上記キットに含まれるアンプリミックス50μlにDNA抽出液50μlを加え、GeneAmp PCR System9600(PRKIN ELMER製)を用いて、50℃、10分保温後、98℃20秒で変性、62℃20秒でアニーリング、72℃45秒で伸長を2サイクル実施後、94℃20秒で変性、62℃20秒でアニーリング、72℃45秒で伸長を41サイクル行い、抗酸菌16s rRNA遺伝子領域を増幅した。
【0032】
(ウ)増幅産物の検出
非特許文献1に従って行った。検出用に、配列番号6〜8に記載の塩基配列を有するプローブを用いた。
1)PCR増幅産物100μlに変性試薬100μlを加え、室温で10分間インキュベートする。
2)M.tuberculosisマイクロプレートウェル、M.aviumマイクロプレートウェル、M.intracellulareマイクロプレートウェルの各ウェルにマイコバクテリウムハイブリダイゼーション緩衝液100μlを加える。
3)変性試薬を加えたPCR増幅産物を25μl加える。
4)37℃で90分間インキュベートする。
5)洗浄液350−450μlで4回、各ウェルを洗浄する。
6)各ウェルにアビジン−HRPコンジュゲート100μlを加え、37℃で15分間インキュベートする。
7)洗浄液350−450μlで4回、各ウェルを洗浄する。
8)各ウェルに基質試薬100μlを加え、室温、暗所で10分間インキュベートする。
9)各ウェルに停止試薬100μlを加え、波長450nmでの吸光度を測定する。
【0033】
(エ)「アンプリコア マイコバクテリウム」キットによる判定
1)吸光度が0.35以上の場合を陽性とする。
2)吸光度が0.35未満の場合を陰性とする。
【0034】
(実施例2)増幅された抗酸菌の16S rRNA遺伝子の同定方法
実施例1に記載の方法によるPCR増幅産物は、変性試薬を加えた状態で200μlである。そのうちプレートハイブリダイゼーションには、100μl使用する。残りの100μlをプローブとのハイブリダイゼーションに使用する。
【0035】
(ア)PCR増幅産物の確認
上記増幅産物を、実施例1に記載の方法で検査したときに陰性と判定された菌種について、特異プローブを用いて検出を試みた。
1)変性試薬を加えたPCR増幅産物10μlに1N−HClを2〜5μl加え、室温にて10〜20分間インキュベートし、中和した。
2)中和したPCR増幅産物を3%アガロースゲル電気泳動で分離し、エチジウムブロマイド染色後、紫外線照射し目的とする約580bpのバンドを検出する。
【0036】
(イ)特異プローブによる検出
1)MACの変異株の検出用プローブの構築
変異株MACの検出のために、配列番号6〜8に記載の検出用プローブ領域(M.avium DSM 44156検出用プローブnt154−174、M.intracellulare ATCC 15985検出用プローブnt133−152)に認められた塩基配列に基づき、15〜25mer程度の長さでプローブを設計した。
MACX1(5’−TTAGACGCATGTCTTTTGGT−3’)(配列番号9)
MACX2(5’−TAAGACGCATGTCTTTTGGT−3’)(配列番号10)
【0037】
2)M.kansasii のグループ分けにはM.kansasii ATCC 12478の16S rRNA遺伝子領域(配列番号3)の430番目の塩基がGであるかCであるか見分けることが可能なように15〜25mer程度の長さでプローブを設計した。
KAN1(5’−GTCCGGGTTCTCTCGGATTG−3’)(配列番号11)
KAN2(5’−GTCCGGGTTGTCTCGGATTG−3’)(配列番号12)
上記プローブを使用して、実施例1で得たPCR増幅産物とハイブリダイゼーションを行い該当する菌種を検出した。
【0038】
(実施例3) 臨床分離株を用いた結果
(ア)生化学的性状試験でMACと判定され、非特許文献1に記載の方法でM.tuberculosis、M.avium、M.intracellulareの3菌種の結果が陰性となった臨床分離株10株について、配列番号9及び10に記載のプローブを使用して本発明の鑑別方法により同定した。
その結果、次の1)及び2)の結果が得られた。
1)9株はMACX1プローブと特異的にハイブリダイズし、MAC変異株として同定することが可能であった。
2)1株はMACX2プローブと特異的にハイブリダイズし、MAC変異株として同定することが可能であった。
【0039】
(イ)生化学的性状試験でM.kansasiiと判定された臨床分離株4株について、配列番号11及び12に記載のプローブを使用して本発明の鑑別方法によりM.kansasii のグループ分けを実施した。
その結果、次の1)及び2)の結果が得られた。
1)1株はKAN1プローブと特異的にハイブリダイズし、M.kansasii ATCC 12478株と同一のグループであると確認した。
2)3株はKAN2プローブと特異的にハイブリダイズし、M.kansasii ATCC 12478株とは異なるグループであると確認した。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の鑑別方法により、生化学的性状試験ではMACと判定されたものの、非特許文献1に記載の方法で検出することができなかったMACの同定が可能となった。これにより、非定型抗酸菌症の大半を占めるMACの検出がより正確で確実に行うことが期待できる。また、同様に本発明の鑑別方法によりM.kansasiiを2グループに分類することができ、臨床的に新しい知見が得られる可能性が期待できる。さらに、本発明の鑑別方法により、非定型抗酸菌の系統樹解析を行うことも可能となる。
【0041】
【配列表】
【発明が属する技術分野】
本発明は、非定型抗酸菌の鑑別方法に関する。具体的には、Mycobacterium avium complex(以下「MAC」という。)の変異株の検出、あるいはMycobacterium kansasii(以下、「M.kansasii」という。)のグループ分けを可能とする鑑別方法に関し、さらには該鑑別方法に使用するプローブ機能を有するオリゴヌクレオチドに関する。
【0002】
【従来の技術】
我が国において長年「国民病」と呼ばれてきた結核は、生活環境衛生の改善や化学療法の進展の進展により患者数の激減をみたが、現在も全世界で年間800万人の患者が発生し、毎年約300万人が死亡している。また、最近では若年層における集団感染や外国人労働者の激増による流行も懸念されている。
【0003】
一方、結核菌以外の非定型抗酸菌と一括呼称されている菌による感染症は増加傾向にあり、なかでもMAC感染症は極めて難治性であり米国ではAIDS患者の主要な日和見感染として問題視されている。非定型抗酸菌は、現在のところ培養可能73菌種・培養不能1菌種(M.leprae)が知られている。培養可能73菌種のうち38菌種がヒトに対して病原性を持つ。非定型抗酸菌症の病像には特異性が無く、また菌種により化学療法剤の効果が異なるため、早期診断・治療を行う為には菌種同定が必要である。そのために迅速・確実な非定型抗酸菌の菌種同定法が求められている。
【0004】
一般に肺結核の鑑別は、臨床症状、病理組織学的所見からは極めて困難であるため、菌の検出・同定によってなされなければならない。
従来、結核菌・非定型抗酸菌の同定は培養法で行わなければならなかった。一般的には小川培地で分離培養し、培地上の性状(増殖速度・温度、コロニーの形状や色素産生など)、ナイアシンテスト、硝酸還元試験、耐熱性カタラーゼ試験、ツイーン80水解試験、光発光試験などの生化学的性状で菌種の同定を行っていた。しかし抗酸菌は増殖が遅く、菌種同定までに約1ヶ月以上を要することが多いのが問題であった。
近年、分子生物学的手法を用いた迅速同定法が開発されてきており、結核菌をはじめとする抗酸菌の検出・同定にも、これらの技術が応用されている。
分離菌株の同定キットとしては、「アキュプローブ(商標名)」(極東製薬)、「DDHマイコバクテリウム極東(商標名)」が開発されているが、これらは菌の培養が必要なため検査までに2〜3週間が必要である。
【0005】
一方、核酸増幅法を用いて喀痰等の臨床検体から培養操作を経ることなく結核菌等を検出・同定するキットとしては、「DNAプローブ『中外』−MTD(商標名)」(中外製薬)、「アンプリコア マイコバクテリウム(商標名)」(ロシュ・ダイアグノスティックス社)などが開発されている。これらは、臨床検体から1〜2日で結核菌を検出・同定することができる。
【0006】
「アンプリコア マイコバクテリウム」キットに含まれるプライマー(配列番号4、5)を使用すると、ヒトに病原性をもつ38菌種のうち31菌種の増幅が確認されており、非定型抗酸菌をPCRで増幅するプライマーとして優れている。
KY18(Forward) 5’−CACATGCAAGTCGAACGGAAAGG−3’(配列番号4)
KY75(Reverse) 5’−GCCCGTATCGCCCGCACGCTCACA−3’(配列番号5)
【0007】
また、本キットは菌種同定には菌種特異プローブ(配列番号6〜8)を用いたマイクロプレートハイブリダイゼーション法を用いており、結核菌(M.tuberculosis)および非定型抗酸菌のM.avium、M.intracellulareの3菌種を同定することができる(非特許文献1)。
M.tuberculosis検出用プローブ:
5’−GGTGGAAAGCGCTTTAGCGGT−3’(配列番号6)
M.avium検出用プローブ:
5’−CAAGACGCATGTCTTCTGGTG−3’(配列番号7)
M.intracellulare検出用プローブ:
5’−TTAGGCGCATGTCTTTAGGT−3(配列番号8)
【0008】
しかし、生化学的性状試験でMACと判定されている菌株でも、菌種特異プローブ領域に遺伝子変異を起こし、プローブとのハイブリダイゼーションが行われず検出することができないMACが存在する。
一方、非定型抗酸菌症としてヒトから分離されるM.kansasii の存在も無視することはできない。「アンプリコア マイコバクテリウム」では検出することができない菌種であるため、迅速な同定法が求められている。
【0009】
【非特許文献1】
アンプリコア(登録商標)マイコバクテリウム(ロッシュ・ダイアグノスティクス株式会社)添付文書(2001年6月改訂)。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、非定型抗酸菌に含まれるMACのうち、従来検出できなかった変異株を検出可能とすることであり、さらには非定型抗酸菌症としてヒトから分離され、検出されたM.kansasiiのグループ分けを可能とする抗酸菌の鑑別方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、非定型抗酸菌に関し、MAC又はM.kansasiiに存在する16S rRNA遺伝子をコードする塩基配列のうち、特定の位置に変異が生じることに着目し、該変異位置の塩基と相補的な塩基を含むプローブ機能を有するオリゴヌクレオチドを用いることにより、上記課題を解決しうることを見出し、鋭意研究を重ねた結果本発明を完成した。
【0012】
すなわち本発明は、
1.抗酸菌が保有する16S rRNA遺伝子をコードする塩基配列の変異を検出することを特徴する抗酸菌鑑別方法、
2.上記抗酸菌が、Mycobacterium avium complex又はMycobacterium kansasiiである前項1に記載の抗酸菌鑑別方法、
3.16S rRNAをコードする塩基配列が配列番号1〜3のいずれかに表される塩基配列である前項1又は2に記載の抗酸菌鑑別方法、
4.塩基配列の変異を次の1)〜3)のいずれかに示す位置から検出する前項3に記載の抗酸菌鑑別方法;
1)配列番号1(Mycobacterium avium)で表される塩基配列の塩基の変異位置が154〜174位の間のいずれかである。
2)配列番号2(Mycobacterium intracellulare)で表される塩基配列の塩基の変異位置が132〜152位の間のいずれかである。
3)配列番号3(Mycobacterium kansasii)で表される塩基配列の塩基の変異位置が430位を含む、
5.塩基配列の変異を次の1)〜3)のいずれかに示す位置から検出する前項3又は4に記載の抗酸菌鑑別方法;
1)配列番号1で表される塩基配列の塩基の変異位置が塩基位置154位、155位及び169位で示される塩基のうち、いずれか少なくとも1以上の塩基の変異を検出する。
2)配列番号2で表される塩基配列の塩基の変異位置が塩基位置133位、136位及び148位で示される塩基のうち、いずれか少なくとも1以上の塩基の変異を検出する。
3)配列番号3で表される塩基配列の塩基の変異位置が塩基位置430位で示される塩基の変異を検出する、
6.プローブ機能を有し、前項1〜5のいずれか1に記載する抗酸菌鑑別方法に使用する抗酸菌鑑別用オリゴヌクレオチド、
7.生化学的性状試験により抗酸菌に属すると判定された菌株について、該菌が保有する16S rRNA遺伝子の一部にハイブリッド形成しうるオリゴヌクレオチドであって、以下の1)〜4)に表される配列からなるオリゴヌクレオチドの群より選択され、プローブ機能を有するオリゴヌクレオチド;
1)16S rRNA遺伝子の変異位置に相補的な塩基を含んでなるオリゴヌクレオチド。
2)16S rRNAをコードする塩基配列が配列番号1〜3のいずれかに表され、該塩基配列の変異の位置に相補的な塩基を含んでなるオリゴヌクレオチド。
3)上記2)の変異位置が請求項4で示される位置に存在する場合に、該変異の位置に相補的な塩基を含んでなるオリゴヌクレオチド。
4)上記2)の塩基配列が請求項5で示される位置に存在する場合に、該変異の位置に相補的な塩基を含んでなるオリゴヌクレオチド。
5)上記1)〜4)のいずれか1に記載のオリゴヌクレオチドの塩基数が、5〜50のいずれかであるオリゴヌクレオチド。
6)配列番号9〜12のいずれかで表される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド。
7)上記1)〜6)のいずれか1に記載のオリゴヌクレオチドの相補鎖。
8)上記1)〜7)のいずれか1に記載のオリゴヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズしうるオリゴヌクレオチド。
9)上記1)〜8)のいずれか1に記載のオリゴヌクレオチドのうち、1ないし数個の塩基が置換、欠失、挿入若しくは付加といった変異された塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、
8.前項6又は7に記載のオリゴヌクレオチドから選択される少なくとも1のオリゴヌクレオチドを固相に固定化し、該オリゴヌクレオチドと被検物質をハイブリダイズさせることにより行う抗酸菌鑑別方法、
9.前項1〜5又は8に記載の鑑別方法を使用することによるMycobacterium avium complexの変異株の検出方法、Mycobacterium kansasiiのグルーピング方法又はこれらの菌株の系統樹解析方法、
10.前項1〜5、8又は9に記載の鑑別方法に使用する試薬及び/又は試薬キット、
11.前項6又は7に記載のオリゴヌクレオチドから選択されるいずれかのオリゴヌクレオチドを含む試薬及び/又は試薬キット、からなる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の抗酸菌鑑別方法は、非定型抗酸菌に適用することができる。具体的には、市販の測定キット(非特許文献1)で検出可能であった結核菌(M.tuberculosis)および非定型抗酸菌のM.avium、M.intracellulareを除くMAC変異株の検出をすることができ、M.kansasiiについては他の測定キットでM.kansasiiと判定された菌株を2つにグループ分けすることができる。さらに、本発明の抗酸菌鑑別方法を使用することにより、これらの菌株の系統解析を容易かつ迅速に行うことができる。
【0014】
本発明において、抗酸菌に属する各菌種の標準株が有する16S rRNA遺伝子をコードする塩基配列は、M.aviumについてはGenBank Acc. No.AJ536037(配列番号1)、M.intracellulareについては同Acc. No.X52927(配列番号2)、M.kansasiiについては同Acc. No.AF480601(配列番号3)に示される配列を意味する。
M.tuberculosisを鑑別同定しうるプローブは、配列番号6に表される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを使用することができる(非特許文献1)。また、M.aviumを鑑別同定しうるプローブは配列番号7に、及びM.intracellulareを鑑別同定しうるプローブは配列番号8に表される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを使用することができる(非特許文献1)。
【0015】
本発明の鑑別方法により、喀痰等の臨床試料からMACの変異株を検出することができる。この方法によると、生化学的性状試験により抗酸菌に属すると判定された菌株であっても、従来同定が不可能であったMACの変異株を検出することができる。また、他の公知の方法により判別されたM.kansasiiについて、これらの菌株が保有する変異の箇所を検出することで、MAC変異株の検出およびM.kansasiiのグループ分けをすることが可能となる。
【0016】
さらに、これら変異株の塩基配列を特許出願中(特願2001−333704)に示した通り、抗酸菌各種の16S rRNA遺伝子について属間、種間、個体間等に存在し得る塩基配列の相違を考慮して、特定された領域に相当する領域で作製したデータベースと共に臨床株の塩基配列を解析することにより、変異株の検出およびグループ分けが可能となる。具体的には、抗酸菌が保有する16S rRNA遺伝子のうち約500塩基対の部分をPCR等の増幅手段により増幅し、その塩基配列を解読して遺伝子系統解析を行い、系統樹を作成する。系統樹は、好ましくは2−パラメーター法を用いたN−J法にて作成し、作成された系統樹はブースストラップ法を用いて評価することができる。
【0017】
(鑑別方法)
本発明の抗酸菌の鑑別方法とは、抗酸菌が保有する16S rRNA遺伝子をコードする塩基配列の変異、好適には該16S rRNA遺伝子のうち、約500塩基対の部分に存在する変異を検出することによるものである。具体的には、配列番号1〜3のいずれかに記載の塩基配列から変異を検出することによる。
【0018】
たとえば、MACでは少なくとも12以上の変異株の存在が確認された。これらの変異株の16S rRNA遺伝子をコードする塩基配列は、M.avium標準株の16S rRNA遺伝子をコードする塩基配列(配列番号1)又はM.intracellulare標準株の16S rRNA遺伝子をコードする塩基配列(配列番号2)に表される配列とは複数箇所において相違が認められた。本発明の鑑別方法は、これらの変異を検出することにより行うことができる。該変異の検出は、変異された塩基を含む配列を検出することにより行うことができ、より具体的には、該配列とハイブリダイズするプローブを使用することにより行うことができる。
【0019】
より確実に変異株を鑑別するには、配列番号1に記載の配列のうち、塩基位置が154〜174位に存在する変異を含む配列を検出することにより行うことができる。配列番号1に記載された配列と変異株の配列は、154位、155位及び169位のいずれかの塩基が少なくとも1以上変異している傾向が認められる。同様に、配列番号2に記載の配列のうち、塩基位置が132〜152位に存在する変異を含む配列を検出することによっても行うことができる。配列番号2に記載された配列と変異株の配列は、133位、136位及び148位のいずれかの塩基が少なくとも1以上変異している傾向が認められる。
【0020】
一方、M.kansasii標準株の16S rRNA遺伝子をコードする塩基配列(配列番号3)の配列について430番目にあたる塩基CがGに変異している株が存在するということが確認された。この1塩基の違いを見極めることでM.kansasiiを2つのグループに分けることが可能であると考えられた。本発明の鑑別は、この変異を検出する方法により行うことができる。
【0021】
該変異の検出は、MAC変異株の検出と同様に変異された塩基を含む配列を検出すること、例えば該変異された塩基を含む配列とハイブリダイズしうるプローブを用いて行うことができる。
本発明の鑑別は、目的とする菌の16S rRNA遺伝子領域のDNAとプローブとハイブリダイゼーションさせる前に該対象DNAを増幅させておくことが好ましい。
遺伝子領域の増幅方法は、公知の方法、例えばポリメラーゼ・チェイン・リアクション法(PCR法、Science, 230:1350−1354,1985)やNASBA法(Nucleic Acid Sequence Based Amplification 法、Nature, 350,91−92,1991)及びLAMP法(特開2001−242169号公報)等により行うことができ、好適には、非特許文献1に記載する方法により行うことができる。
【0022】
(プローブの作成)
プローブ機能を有するオリゴヌクレオチドは、自体公知の方法により製造することができ、例えば化学的に合成することができる。あるいは、天然の核酸を制限酵素などによって切断し、上記のような塩基配列で構成されるように改変し、あるいは連結することも可能である。具体的には、オリゴヌクレオチド合成装置(アプライドバイオシステムズ社製 Expedite Model 8909 DNA合成機)等を用いて合成することができる。
本発明のプローブ機能を有するオリゴヌクレオチドの塩基数は、5〜50であり、好ましくは8〜30であり、より好ましくは15〜25である。
【0023】
また、1ないし数個の塩基が置換、欠失、挿入もしくは付加といった変異させたオリゴヌクレオチドの合成法も、自体公知の製法を使用することができる。例えば、部位特異的変異導入法、遺伝子相同組換え法、プライマー伸長法またはPCR法を単独または適宜組み合わせて、例えば、Molecular Cloning;A Laboratory Manual、2版、Sambrookら編、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス、コールド・スプリング・ハーバー、ニューヨーク、1989年;[ラボマニュアル遺伝子工学]、村松正實編、丸善株式会社、1988年;[PCRテクノロジー、DNA増幅の原理と応用]、Ehrlich, HE.編、ストックトンプレス、1989年等に記載の方法に準じて、あるいはそれらの方法を改変して実施することができ、例えばUlmerの技術(Science(1983)219:666)を利用することができる。
【0024】
ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は一般に知られたものを選択することができる。その一例としては、50%ホルムアミド、5×SSC(150mM NaCl、15mM クエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム,pH7.6、5×デンハーツ溶液、10%デキストラン硫酸、および20μg/mlのDNAを含む溶液中、42℃で一晩ハイブリダイゼーションした後、室温で2×SSC・0.1%SDS中で一次洗浄し、次いで、約65℃において0.1×SSC・0.1%SDSで二次洗浄といった条件があげられる。
【0025】
(ハイブリダイゼーション)
ハイブリダイゼーションは、ドットブロットハイブリダイゼーション、マイクロプレートハイブリダイゼーション、DNAチップ等の公知の方法あるいは今後開発される方法を適用して行うことができる。
例えば、該対象DNAの5’末端をビオチン等で標識し、マイクロウェルに固相化された各菌株に特異的なプローブ機能を有するオリゴヌクレオチドと、該該対象DNAとをハイブリダイズさせて該該対象DNAを固相に固定化し、ビオチンを発色させることにより、プローブ特異的な菌種を検出することができる。
【0026】
本発明は、抗酸菌鑑別方法、プローブ機能を有するオリゴヌクレオチドの他、該オリゴヌクレオチドを含む試薬及び/又は試薬キットにも及ぶものである。
【0027】
【実施例】
本発明の理解を深めるために、以下に実施例を示して本発明を説明するが、本件特許発明はこれら実施例の内容に何ら限定されるものではない。
【0028】
(実施例1)結核菌(M.tuberculosis)、M.avium、M.intracellulareの検出
【0029】
抗酸菌遺伝子の増幅
(ア)検体からのDNA抽出
「アンプリコア マイコバクテリウム」(ロシュ・ダイアグノスティックス社)の添付文書(非特許文献1)に従って行った。
1)喀痰等の体液は、等量のNALC溶解液(0.05M Na3citrate,2%NaOH)を加え撹拌し、室温にて可溶化する。
2)PBSを適当量加え、3,000g以上で20分以上遠心、上清を除去する。
3)沈渣にPBS1mlを加える。
4)検体洗浄液*1500μlに上記前処理済み検体100μlを加える。
5)13,000gで10分間遠心し、上清を除去する。
6)沈渣に溶菌試薬*1100μlを加えて良く撹拌し、60℃で45分間インキュベートする。
7)中和試薬*1100μlを加えてDNA抽出液とする。
8)菌株の場合は、コロニーを適当量のPBSに懸濁し、前処理済み検体として、上述4)の操作から実施する。
*1:アンプリコアマイコバクテリウム用検体前処理用試薬セットII
【0030】
(イ)DNAの増幅
非特許文献1に従って行った。増幅は配列番号4及び5に記載するプライマーを用いた。
【0031】
上記キットに含まれるアンプリミックス50μlにDNA抽出液50μlを加え、GeneAmp PCR System9600(PRKIN ELMER製)を用いて、50℃、10分保温後、98℃20秒で変性、62℃20秒でアニーリング、72℃45秒で伸長を2サイクル実施後、94℃20秒で変性、62℃20秒でアニーリング、72℃45秒で伸長を41サイクル行い、抗酸菌16s rRNA遺伝子領域を増幅した。
【0032】
(ウ)増幅産物の検出
非特許文献1に従って行った。検出用に、配列番号6〜8に記載の塩基配列を有するプローブを用いた。
1)PCR増幅産物100μlに変性試薬100μlを加え、室温で10分間インキュベートする。
2)M.tuberculosisマイクロプレートウェル、M.aviumマイクロプレートウェル、M.intracellulareマイクロプレートウェルの各ウェルにマイコバクテリウムハイブリダイゼーション緩衝液100μlを加える。
3)変性試薬を加えたPCR増幅産物を25μl加える。
4)37℃で90分間インキュベートする。
5)洗浄液350−450μlで4回、各ウェルを洗浄する。
6)各ウェルにアビジン−HRPコンジュゲート100μlを加え、37℃で15分間インキュベートする。
7)洗浄液350−450μlで4回、各ウェルを洗浄する。
8)各ウェルに基質試薬100μlを加え、室温、暗所で10分間インキュベートする。
9)各ウェルに停止試薬100μlを加え、波長450nmでの吸光度を測定する。
【0033】
(エ)「アンプリコア マイコバクテリウム」キットによる判定
1)吸光度が0.35以上の場合を陽性とする。
2)吸光度が0.35未満の場合を陰性とする。
【0034】
(実施例2)増幅された抗酸菌の16S rRNA遺伝子の同定方法
実施例1に記載の方法によるPCR増幅産物は、変性試薬を加えた状態で200μlである。そのうちプレートハイブリダイゼーションには、100μl使用する。残りの100μlをプローブとのハイブリダイゼーションに使用する。
【0035】
(ア)PCR増幅産物の確認
上記増幅産物を、実施例1に記載の方法で検査したときに陰性と判定された菌種について、特異プローブを用いて検出を試みた。
1)変性試薬を加えたPCR増幅産物10μlに1N−HClを2〜5μl加え、室温にて10〜20分間インキュベートし、中和した。
2)中和したPCR増幅産物を3%アガロースゲル電気泳動で分離し、エチジウムブロマイド染色後、紫外線照射し目的とする約580bpのバンドを検出する。
【0036】
(イ)特異プローブによる検出
1)MACの変異株の検出用プローブの構築
変異株MACの検出のために、配列番号6〜8に記載の検出用プローブ領域(M.avium DSM 44156検出用プローブnt154−174、M.intracellulare ATCC 15985検出用プローブnt133−152)に認められた塩基配列に基づき、15〜25mer程度の長さでプローブを設計した。
MACX1(5’−TTAGACGCATGTCTTTTGGT−3’)(配列番号9)
MACX2(5’−TAAGACGCATGTCTTTTGGT−3’)(配列番号10)
【0037】
2)M.kansasii のグループ分けにはM.kansasii ATCC 12478の16S rRNA遺伝子領域(配列番号3)の430番目の塩基がGであるかCであるか見分けることが可能なように15〜25mer程度の長さでプローブを設計した。
KAN1(5’−GTCCGGGTTCTCTCGGATTG−3’)(配列番号11)
KAN2(5’−GTCCGGGTTGTCTCGGATTG−3’)(配列番号12)
上記プローブを使用して、実施例1で得たPCR増幅産物とハイブリダイゼーションを行い該当する菌種を検出した。
【0038】
(実施例3) 臨床分離株を用いた結果
(ア)生化学的性状試験でMACと判定され、非特許文献1に記載の方法でM.tuberculosis、M.avium、M.intracellulareの3菌種の結果が陰性となった臨床分離株10株について、配列番号9及び10に記載のプローブを使用して本発明の鑑別方法により同定した。
その結果、次の1)及び2)の結果が得られた。
1)9株はMACX1プローブと特異的にハイブリダイズし、MAC変異株として同定することが可能であった。
2)1株はMACX2プローブと特異的にハイブリダイズし、MAC変異株として同定することが可能であった。
【0039】
(イ)生化学的性状試験でM.kansasiiと判定された臨床分離株4株について、配列番号11及び12に記載のプローブを使用して本発明の鑑別方法によりM.kansasii のグループ分けを実施した。
その結果、次の1)及び2)の結果が得られた。
1)1株はKAN1プローブと特異的にハイブリダイズし、M.kansasii ATCC 12478株と同一のグループであると確認した。
2)3株はKAN2プローブと特異的にハイブリダイズし、M.kansasii ATCC 12478株とは異なるグループであると確認した。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の鑑別方法により、生化学的性状試験ではMACと判定されたものの、非特許文献1に記載の方法で検出することができなかったMACの同定が可能となった。これにより、非定型抗酸菌症の大半を占めるMACの検出がより正確で確実に行うことが期待できる。また、同様に本発明の鑑別方法によりM.kansasiiを2グループに分類することができ、臨床的に新しい知見が得られる可能性が期待できる。さらに、本発明の鑑別方法により、非定型抗酸菌の系統樹解析を行うことも可能となる。
【0041】
【配列表】
Claims (11)
- 抗酸菌が保有する16S rRNA遺伝子をコードする塩基配列の変異を検出することを特徴とする抗酸菌鑑別方法。
- 上記抗酸菌が、Mycobacterium avium complex又はMycobacterium kansasiiである請求項1に記載の抗酸菌鑑別方法。
- 16S rRNAをコードする塩基配列が配列番号1〜3のいずれかに表される塩基配列である請求項1又は2に記載の抗酸菌鑑別方法。
- 塩基配列の変異を次の1)〜3)のいずれかに示す位置から検出する請求項3に記載の抗酸菌鑑別方法;
1)配列番号1(Mycobacterium avium)で表される塩基配列の塩基の変異位置が154〜174位の間のいずれかである。
2)配列番号2(Mycobacterium intracellulare)で表される塩基配列の塩基の変異位置が132〜152位の間のいずれかである。
3)配列番号3(Mycobacterium kansasii)で表される塩基配列の塩基の変異位置が430位を含む。 - 塩基配列の変異を次の1)〜3)のいずれかに示す位置から検出する請求項3又は4に記載の抗酸菌鑑別方法;
1)配列番号1で表される塩基配列の塩基の変異位置が塩基位置154位、155位及び169位で示される塩基のうち、いずれか少なくとも1以上の塩基の変異を検出する。
2)配列番号2で表される塩基配列の塩基の変異位置が塩基位置133位、136位及び148位で示される塩基のうち、いずれか少なくとも1以上の塩基の変異を検出する。
3)配列番号3で表される塩基配列の塩基の変異位置が塩基位置430位で示される塩基の変異を検出する。 - プローブ機能を有し、請求項1〜5のいずれか1に記載する抗酸菌鑑別方法に使用する抗酸菌鑑別用オリゴヌクレオチド。
- 生化学的性状試験により抗酸菌に属すると判定された菌株について、該菌が保有する16S rRNA遺伝子の一部にハイブリッド形成しうるオリゴヌクレオチドであって、以下の1)〜4)に表される配列からなるオリゴヌクレオチドの群より選択され、プローブ機能を有するオリゴヌクレオチド;
1)16S rRNA遺伝子の変異位置に相補的な塩基を含んでなるオリゴヌクレオチド。
2)16S rRNAをコードする塩基配列が配列番号1〜3のいずれかに表され、該塩基配列の変異の位置に相補的な塩基を含んでなるオリゴヌクレオチド。
3)上記2)の変異位置が請求項4で示される位置に存在する場合に、該変異の位置に相補的な塩基を含んでなるオリゴヌクレオチド。
4)上記2)の塩基配列が請求項5で示される位置に存在する場合に、該変異の位置に相補的な塩基を含んでなるオリゴヌクレオチド。
5)上記1)〜4)のいずれか1に記載のオリゴヌクレオチドの塩基数が、5〜50のいずれかであるオリゴヌクレオチド。
6)配列番号9〜12のいずれかで表される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド。
7)上記1)〜6)のいずれか1に記載のオリゴヌクレオチドの相補鎖。
8)上記1)〜7)のいずれか1に記載のオリゴヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズしうるオリゴヌクレオチド。
9)上記1)〜8)のいずれか1に記載のオリゴヌクレオチドのうち、1ないし数個の塩基が置換、欠失、挿入若しくは付加といった変異された塩基配列を含むオリゴヌクレオチド。 - 請求項6又は7に記載のオリゴヌクレオチドから選択される少なくとも1のオリゴヌクレオチドを固相に固定化し、該オリゴヌクレオチドと被検物質をハイブリダイズさせることにより行う抗酸菌鑑別方法。
- 請求項1〜5又は8に記載の鑑別方法を使用することによるMycobacterium avium complexの変異株の検出方法、Mycobacterium kansasiiのグルーピング方法又はこれらの菌株の系統解析方法。
- 請求項1〜5、8又は9に記載の鑑別方法に使用する試薬及び/又は試薬キット。
- 請求項6又は7に記載のオリゴヌクレオチドから選択されるいずれかのオリゴヌクレオチドを含む試薬及び/又は試薬キット。
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| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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