JP2004262696A - 低反射ガラス板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】可視光線の波長全域に渡って低反射率で、耐摩耗性や耐薬品性などに優れた低反射ガラス板を生産性よく製造する方法を提供すること。
【解決手段】樹脂B1および有機溶剤を含む処理液(1)と、膜形成用化合物、樹脂B2および有機溶剤を含む処理液(2)とを用い、かつ処理液(1)と処理液(2)の少なくとも一方が、処理液100質量部に対して黒色系の複合金属酸化物顔料0.2〜4質量部を含有するものであって、上記処理液(1)を透明ガラス基板の表面に塗布し、その後、50〜200℃で乾燥して有機溶剤を除去し、次いで、さらにその上に処理液(2)を塗布し、その後、50〜200℃で乾燥して有機溶剤を除去し、次いで、処理された透明ガラス基板を400〜800℃で焼成することを特徴とする低反射ガラス板の製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】樹脂B1および有機溶剤を含む処理液(1)と、膜形成用化合物、樹脂B2および有機溶剤を含む処理液(2)とを用い、かつ処理液(1)と処理液(2)の少なくとも一方が、処理液100質量部に対して黒色系の複合金属酸化物顔料0.2〜4質量部を含有するものであって、上記処理液(1)を透明ガラス基板の表面に塗布し、その後、50〜200℃で乾燥して有機溶剤を除去し、次いで、さらにその上に処理液(2)を塗布し、その後、50〜200℃で乾燥して有機溶剤を除去し、次いで、処理された透明ガラス基板を400〜800℃で焼成することを特徴とする低反射ガラス板の製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、低反射ガラス板(低反射膜付きガラス板)の製造方法に係り、さらに詳しくは可視光線の全域にわたって低反射率で、耐摩耗性や耐薬品性などに優れた低反射ガラス板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、低反射ガラス板の作製方法としては、次の如き方法が一般に行なわれている(例えば、特許文献1参照。)。すなわち、
(1)真空製膜法やスパッタリングなどの気相法により、酸化チタンなどの高屈折率材料と酸化珪素などの低屈折率材料とを、屈折率や膜厚を制御してガラス基板に膜同士の界面を明確になるよう積層し、光学干渉を利用した多層膜を積層して低反射ガラス板を作製する方法、
【0003】
(2)スパッタリングなどの気相法により、チタンの窒化物などの光吸収性材料と酸化珪素などの低屈折率材料とを、屈折率や膜厚を制御してガラス基板に2層以上を膜同士の界面を明確になるよう積層することにより、光学干渉を利用した低反射ガラス板を作製する方法、
【0004】
(3)金属アルコキシドなどを用いてゾル−ゲル法などにより、酸化チタンなどの高屈折率材料と酸化珪素などの低屈折率材料とを、屈折率や膜厚を制御してガラス基板に2層以上を膜同士の界面を明確になるよう積層することにより、光学干渉を利用した低反射ガラス板を作製する方法、および
【0005】
(4)金属イオン含有水溶液や金属アルコキシドなどを用いてゾル−ゲル法により、酸化チタンなどの高屈折率材料と酸化珪素などの低屈折率材料とを、屈折率や膜厚を制御してガラス基板に2層以上を膜同士の界面を明確になるよう積層することにより、光学干渉を利用した低反射ガラス板を作製する方法、
が挙げられる。
【0006】
また、上記従来技術は後述するように種々の課題を有しており、本発明者らはこれらの課題を解決する方法として、塗布液の塗布、乾燥および焼成という工程的に有利な方法で、低反射率で耐摩耗性や耐薬品性などに優れた低反射ガラス板の製造方法を提案している(特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−194295公報
【特許文献2】
特願2002−359976明細書
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記の真空製膜法やスパッタリング法を使用する方法は、大掛かりな設備が必要となるため、コストが嵩むという問題がある。また、金属アルコキシドなどを使用したゾル−ゲル法などにより膜同士の界面を明確にし、光学干渉を利用した低反射ガラス板は、膜同士の界面が明確となるため、各層への処理液塗布後に高温で乾燥する必要があり、生産性が悪くなる問題点がある。
【0009】
また、本発明者らが提案した前記方法では、低反射率で耐摩耗性や耐薬品性などに優れた低反射ガラス板が得られるが、その低反射特性はある特定波長においては優れるものの、波長によっては反射特性のばらつきを有するといった問題があった。
従って本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、可視光線の波長全域に渡って低反射率で、耐摩耗性や耐薬品性などに優れた低反射ガラス板を生産性よく製造する方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、樹脂B1および有機溶剤を含む処理液(1)と、膜形成用化合物、樹脂B2および有機溶剤を含む処理液(2)とを用い、かつ処理液(1)と処理液(2)の少なくとも一方が、処理液100質量部に対して黒色系の複合金属酸化物顔料(以下「複合金属酸化物顔料」と称する。)0.2〜4質量部を含有するものであって、上記処理液(1)を透明ガラス基板の表面に塗布し、その後、50〜200℃で乾燥して有機溶剤を除去し、次いで、さらにその上に処理液(2)を塗布し、その後、50〜200℃で乾燥して有機溶剤を除去し、次いで、処理された透明ガラス基板を400〜800℃で焼成することを特徴とする低反射ガラス板の製造方法を提供する。
【0011】
上記本発明の方法では、複合金属酸化物顔料が、Mn−Fe−Cu複合酸化物顔料であること;処理液(1)が複合金属酸化物顔料を含有し、処理液(2)が、膜形成用化合物として有機珪素化合物を含有し、かつ複合金属酸化物顔料を含有しないこと;処理液(2)の樹脂B2の分解温度が、処理液(1)の樹脂B1の分解温度よりも高いこと;処理液(1)の樹脂B1がニトロセルロースであり、処理液(2)の樹脂B2がエチルセルロースであること;処理液(1)の樹脂B1が、エチルセルロースおよびエチルセルロースよりも低温で熱分解を開始する樹脂との混合物であって、処理液(2)の樹脂B2がエチルセルロースであること;およびエチルセルロースよりも低温で熱分解を開始する上記樹脂がポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0012】
上記本発明によれば、低反射膜に複合金属酸化物顔料を低濃度で含有させることで、可視光線の全波長領域に渡って反射率を低下させることができる。また、処理液(1)および/または処理液(2)を塗布した後の透明ガラス基板を高温で乾燥することなしに、それぞれ50〜200℃という低い温度で乾燥を実施するため、膜の構成成分が膜の深さ方向に連続的に変化し、2種の膜の間に明確な界面がなく、膜厚方向に成分が変化する、すなわち、膜厚方向に屈折率が変化し、良好な反射特性を有する。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。
本発明で使用し、本発明の1つの特徴である複合金属酸化物顔料とは、その製造に際して顔料という点を鑑みれば、高温を経ることから耐熱性が高いという特徴を有する。本発明において使用する複合金属酸化物顔料は、低反射ガラス板の製造における膜焼成温度、具体的には400〜800℃で変色または退色しないことが重要あって、従来公知の黒色の複合金属酸化物顔料はいずれも使用可能であるが、好ましい具体的な複合金属酸化物顔料としては、Mn−Fe−Cu系の複合金属酸化物顔料が挙げられる。これらの複合金属酸化物顔料の粒径としては1〜100nmのものが、処理液中における分散性および最終的に得られる低反射ガラス板の透明性のうえで好ましく用いられる。
【0014】
上記複合金属酸化物顔料の使用量は、使用する複合金属酸化物顔料の種類や、所望する低反射ガラス板の透過率、反射率、色調、処理液の塗布方法により適宜決定されるが、処理液100質量部に対して0.2〜4質量部の範囲で配合使用される。複合金属酸化物顔料の使用量が0.2質量部未満では、十分な反射率低下および着色ができず、一方、4質量部を超えると得られる低反射ガラス板の透過率が低下し、また、複合金属酸化物顔料が低反射膜の表層部にも存在することになり、膜の耐酸性が十分ではなくなる。このような複合金属酸化物顔料は処理液(1)または処理液(2)の何れか一方、または両方に添加することができるが、最終的に得られる低反射膜の耐薬品性などを考慮すると処理液(1)にのみ添加することが好ましい。このような構成にすることにより複合金属酸化物顔料を含む層は、複合金属酸化物顔料を含まない膜により被覆されるので膜の耐久性が損なわれない。
【0015】
本発明で使用する樹脂B1は、有機溶剤に可溶で、処理液の粘度を適度に維持して透明ガラス基板への塗布、および塗布物の乾燥後の取扱を良好にし、かつ焼成時に比較的低温で熱分解することが必要である。樹脂B1の熱分解温度としては、150〜400℃の範囲が好ましい。分解温度が150℃未満では、塗布膜の乾燥工程で、樹脂B1が熱分解する場合があるためである。一方、分解温度が400℃を超えると、焼成後の酸化物膜強度が充分でなくなる場合があるためである。
【0016】
具体的な樹脂B1としては、例えば、ニトロセルロースなどの熱分解性のセルロース類、ポリ塩化ビニル類、ポリメチルメタクリレートなどのポリアクリル類、ポリエステル樹脂などの樹脂が挙げられる。より好ましい樹脂B1はニトロセルロース、またはエチルセルロースとエチルセルロースよりも低温で熱分解を開始する樹脂との混合物、特にポリエステル樹脂との混合物である。混合物として使用する場合の、例えば、ポリエステル樹脂は、エチルセルロース100質量部当たり50〜300質量部の割合で使用することが好ましい。
【0017】
上記ニ卜ロセルロースは、好ましくは重量平均分子量が2,000〜200,000の範囲であり、より好ましくは重量平均分子量が3,000〜150,000の範囲である。このニトロセルロースの添加量は、処理液(1)の粘度と所望する膜厚によって決定され、特に制限はないが、例えば、処理液(1)に配合するニトロセルロースは、分子量や処理液の塗布方法によっても異なるが、処理液(1)100質量部中で好ましくは1.0〜30.0質量部の範囲で添加する。
【0018】
好ましくは処理液(2)に含有され、場合によっては処理液(1)にも含有されることが好ましい膜形成用化合物としては、例えば、エトキシド、プロポキシド、ブトキシドなどの珪素のアルコキシド類、ポリシロキサン骨格を持つ各種シリコンオイル、シリコンワニスなどの低屈折率膜を形成する有機珪素化合物、および、チタン、ジルコニウム、セリウムおよびコバルトのエトキシド、プロポキシド、ブトキシドなどのアルコキシド類、アセチルアセトナート、アミナートなどのキレート類、ステアレート、オクチレート、ナフテネート、グリコレートなどの有機酸金属塩、前記アルコキシドが重縮合化したオリゴマーなどの有機金属化合物などが挙げられる。
【0019】
本発明で使用する、樹脂B1よりも分解温度が高い樹脂B2は、後述の有機溶剤に可溶で、処理液の粘度を適度に維持して処理液のガラス基板への塗布、および処理液の乾燥後の取扱を良好にし、かつ焼成時に比較的高温で熱分解することが必要である。樹脂B2の熱分解温度としては、250〜500℃の範囲が好ましい。分解温度が250℃未満では、膜の低反射化が不充分となる場合があり、一方、分解温度が500℃を超えると、焼成後の酸化物膜強度が充分でなくなる場合があるためである。
【0020】
具体的な樹脂B2としては、例えば、エチルセルロースなどの熱分解性のセルロース類、ポリ塩化ビニル類、ポリメチルメタクリレートなどのポリアクリル類などの樹脂が挙げられる。より好ましい樹脂B2はエチルセルロースである。このエチルセルロースは、重量平均分子量が好ましくは8,000〜150,000であり、より好ましくは重量平均分子量が10,000〜120,000のものである。このエチルセルロースの添加量は、処理液(2)の粘度と所望する膜厚によって決定され、制限はないが、例えば、処理液(2)に配合するエチルセルロースは、分子量や処理液の塗布方法によっても異なるが、処理液(2)100質量部中で好ましくは1.0〜30.0質量部の範囲で添加する。
【0021】
以上の樹脂B2と樹脂B1とは、樹脂B2の分解温度(T2)と樹脂B1の分解温度(T1)とが、T2−T1≧100℃であるように組み合わせて使用することが好ましい。上記熱分解温度の関係がT2−T1<100℃であると、低反射ガラス板の可視光線反射率が高くなりすぎる場合があるためである。なお、ここで樹脂の分解温度とは、樹脂の90質量%以上が焼失する温度(℃)をいう。
【0022】
本発明で使用する有機溶剤は、複合金属酸化物顔料を凝集させずに安定に分散でき、膜形成用化合物、樹脂B1および樹脂B2を溶解できるものであれば特に制限はなく、前記処理液の塗布方法などにより適宜選択される。具体的には、メタクレゾール、ジメチルホルムアミド、ブチルカルビトール、α−テルピネオール、ジアセトンアルコール、トリエチレングリコール、パラキシレン、トルエンなどの高沸点溶剤が、前記処理液をガラス板表面に塗布するうえで好ましい。
【0023】
上記の処理液(1)および処理液(2)は、溶剤と樹脂を所定量はかりとり、60〜100℃(好ましくは70〜80℃)の温度のもとで、20〜40分間攪拌することが好ましい。この溶液に複合金属酸化物顔料および膜形成用化合物から選ばれる必要成分を配合して、60〜100℃(好ましくは70〜80℃)の温度のもとで20〜40分間攪拌混合することが好ましい。得られた溶液を保管容器に移して自然冷却させることにより調製できる。
【0024】
また、処理液(1)および処理液(2)には、一方または両方の処理液に膜形成用化合物を添加することもできるが、形成される低反射膜は最外層の方が屈折率が低い方が好ましい。特に処理液(2)の方が有機珪素化合物を含有することが好ましい。
【0025】
前記処理液(1)または処理液(2)に配合される膜形成用化合物の添加量は、膜形成用化合物種、有機溶剤、樹脂B2および樹脂B1などの添加量および塗布方法によって異なるが、前記処理液(1)に配合する場合は、焼成後膜厚が5〜50nmになるように設定することが望ましい。具体的には、膜形成用化合物の配合量は、処理液100質量部中において0.5〜20質量部であることが好ましい。
【0026】
前記処理液(2)に配合される膜形成用化合物の添加量は、樹脂B2や有機溶剤の種類、使用量および塗布方法によって異なるが、前記処理液(2)からなる焼成後膜厚が、150〜350nmになるように設定することが望ましい。焼成後膜厚が150nm未満になる膜形成用化合物の添加量では、優れた低反射性の膜が得られない場合がある。一方で、350nmを超える膜形成用化合物の添加量では、低反射膜中に配合されている膜形成用化合物の配合量が多くなりすぎ、膜強度の低い膜しか得られなくなる場合があるからである。従って、本発明では優れた製膜性と優れた低反射膜を得るためにも、前記処理液(2)からなる焼成後膜厚が150〜350nmになるように設定することが好ましい。
【0027】
本発明に使用する透明ガラス基板は、特に限定されないが、熱線吸収ガラスまたはさらに熱線カット効果を高めた高熱線吸収ガラスを使用することが好ましい。また、無色のフロートガラスも用いることができる。例えば、自動車用窓ガラスなどの如く、熱線カット効果が要求される用途には、グリーンガラス基板を用いることによって、低反射性とともに熱線遮断効果を有する着色ガラス板が得られるので好ましい。グリーンガラス板としては、グリーン色を呈しているものであればいずれでもよく、例えば、ソーダ石灰シリカ系ガラス成分を基礎成分とし、Fe2O3、NiO、TiO2などを適宜配合したグリーンガラス板、ガラス成分中にFe2O3、CoO、Seなどを配合したグリーンガラス板などが挙げられ、フロートガラス、アルカリガラスなどがある。
【0028】
前記処理液をガラス基板に塗布する方法としては、スプレー、ディップ、ロールコート、スピンコート、フレキソ印刷、スクリーン印刷などの方法が挙げられる。処理液(1)をガラス基板に塗布し、50〜200℃で乾燥して有機溶剤を除去した後、さらに処理液(2)を塗布し、50〜200℃で乾燥して有機溶剤を除去した後、400〜800℃の炉中で1〜10分間焼成し、冷却を経て本発明の低反射ガラス板が得られる。
【0029】
上記塗布膜の焼成条件は、400〜800℃の範囲で焼成することが好ましい。400℃未満で焼成を行うと、膜の製膜性が悪くなり、一方、800℃を超える焼成を行うと複合金属酸化物顔料の凝集が発生するので好ましくない。
【0030】
以上のような本発明の方法で得られる低反射ガラス板は、そのガラス基材が熱線吸収または高熱線吸収ガラスである場合には、低反射性であるとともに、熱線遮断効果を有することから、車輌用、例えば、自動車用窓ガラスなどとして有用である。
【0031】
また、本発明の低反射ガラス板は、JIS−R3106(1999年)に規定される可視光線透過率が30〜85%であることが好ましい。自動車用窓ガラス(特に、自動車用ウインドシールドまたは自動車用フロントドアガラス)に使用する場合には、70〜85%であることが好ましい。また、自動車用窓ガラスとして使用する場合、ガラス面の反射率が高いとぎらぎらした印象を与え、高級感が損われることから、JIS−R3106(1999年)に規定されるガラス面の5°入射の可視光線反射率は5.5%以下であることが好ましく、特に5.0%以下であることが好ましい。また、可視光線の波長(380〜780nm)の全域にわたって反射率が7%以下であることが好ましい。
【0032】
さらに本発明により形成される低反射ガラス板は、積層体を構成する基板として使用することもできる。積層体は第一および第二の基板の間に中間膜または断熱層を挟み込んだ構造であり、本発明の低反射ガラス板を第一および/または第二の基板として用いることができる。また、ガラス板の積層に際しては、ガラス板の低反射率膜が形成された面を内側に配することが、低反射率膜の耐久性の面から好ましい。前記中間膜としては、例えば、透明または着色されたポリビニルブチラール、エチレンビニルアセテート共重合体などが挙げられる。前記断熱層としては、例えば、不活性ガス、空気あるいは窒素などを充填してなる層または真空層などが挙げられる。
【0033】
前記積層体としては、例えば、第一および第二の基板として低反射熱線吸収ガラス、高熱線吸収ガラスおよび紫外線吸収ガラスのいずれかを用い、中間膜としてポリビニルブチラールを用いた合わせガラスが挙げられる。第一および第二の基板として低反射高熱線吸収ガラスを用い、中間膜としてポリビニルブチラールを用いた合わせガラスにおいては、前記高熱線吸収ガラスの透過率が低いため、膜面から入射する光の非膜面側における反射率を低下させることができ、特に好ましい。前記合わせガラスは、輸送機器用窓(例えば、車輌用窓)やメータ機器のカバーガラスに好適に用いられる。
【0034】
【実施例】
次に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、文中「%」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。また、後記各実施例および比較例で得られた各低反射ガラス板の評価方法は以下の通りである。
【0035】
1.光学特性
色差計NDH−300A(日本電色(株)製)および濁度計ZE2000(日本電色(株)製)を使用して、各試料のHz率(JIS K6714(1994年))、透過率および透過色調(JIS Z8729(1999年))の測定を行い、分光光度計UV3100Ps(SIMADZU製)により各試料の透過率および反射率を測定し、各試料の可視光線透過率および5°入射の可視光線反射率(JIS−R3106(1999年))を算出した。
【0036】
2.耐アルカリ性
各試料を3%の水酸化ナトリウム水溶液に2時間浸漬し、浸漬の前後の透過率および反射率を分光光度計で測定し、各試料の可視光線透過率変化および可視光線反射率変化を算出した。実用上1.0%以下であることが好ましい。
3.耐酸性
各試料を3%の硫酸水溶液に2時間浸漬し、浸漬の前後の透過率および反射率を分光光度計で測定し、各試料の可視光線透過率変化および可視光線反射率変化を算出した。実用上1.0%以下であることが好ましい。
【0037】
4.製膜性
ラビング試験機(ラビングテスター、大平理化工業社製)の支持棒接点部にウエスを取付け、適宜水を滴下しながら、荷重1.0kgで移動台を支持棒に対して3,000回前後に動かし摩耗試験を実施した。その試験後における膜面の状態を目視観察した。なお、表1〜2における「○」は摩耗試験後においても膜面の変化がない場合であり、「×」は摩耗試験後において膜が剥離した場合を示す。
【0038】
実施例1〜5、比較例1〜5
表1〜2に、実施例および比較例で使用した処理液(1)および処理液(2)の組成を示す。各処理液は前記の方法に準じて調製した。実施例および比較例においては、厚み3.5mmのグリーン熱線吸収ガラス(旭硝子社製、商品名:UVカットガラス)板上に、処理液(1)をスクリーン印刷法で塗布した後、150℃の熱風循環式オーブンで大気雰囲気下で5分間乾燥した。次いで、処理液(1)と同じ質量の処理液(2)を塗布後、150℃の熱風循環式オーブンで大気雰囲気下で5分間乾燥した後、600℃のマッフル炉中で5分間焼成し、実施例および比較例の低反射ガラス板の試料を得た。なお、表1におけるSolsperse 3850はAvicia社製のポリエステル樹脂である。図4にエチルセルロースおよびSolsperse 3850の分解温度のグラフを示す。図4からSolsperse 3850の分解開始温度はエチルセルロースの分解開始温度よりも低いことが判る。
【0039】
比較例1および2は、複合金属酸化物顔料を用いず、カーボンブラック顔料またはフタロシアニン顔料を用いた例であり、比較例3および4は複合金属酸化物顔料を過少に、または過剰に使用した例であり、比較例5は黒色以外の無機顔料を用いた例である。なお、用いたニトロセルロースおよびエチルセルロースの分解温度は、それぞれ190℃および330℃であった。また、表1〜2における黒色無機顔料の平均粒径は20nmであり、カーボンブラックの平均粒径は30nmであり、フタロシアニン顔料の平均粒径は20nmであり、ニトロセルロースの分子量は105,000〜126,500であり、エチルセルロースの分子量は20,000〜30,000である。
【0040】
表1〜2に、実施例および比較例で得られた低反射ガラス板の前記試験項目の結果を示す。なお、上記実施例および比較例の低反射膜の1層目および2層目はその界面が明確ではなく、焼成して膜形成後には各層の膜厚の測定が困難である。表中の膜厚は、図1に示すようにガラス基板の上に処理液(1)と処理液(2)との一部が重複するように塗布し、前記と同一の条件で乾燥および焼成し、処理液が重複していない部分の膜厚を測定して1層目および2層目の膜厚とした。
【0041】
また、実施例4の低反射膜について膜断面方向の元素分析を光電子スペクトルにより測定した(測定装置は、X線光電子分光装置 型番:ESCA−3400、島津製作所製である)。その結果を図2に示す。この分析結果から低反射膜の1層目および2層目はその界面が明確ではないことが分かる。
【0042】
さらに実施例1の低反射ガラス板(サンプルa)、実施例1で用いた未処理のガラス基板(グリーンガラス)(サンプルb)および特願2003−24774明細書の実施例1に記載の低反射ガラス板(サンプルc)について、下記条件で可視光線全波長領域における反射率を測定した結果を図3に示す。
測定サンプル:サンプル裏面に黒塗りなし
分光光度計: UV3100、島津製作所製
測定波長:λ=380〜780nm
入射角:5°(ガラスへの入射角・・・垂直入射は0°)
【0043】
なお、サンプルcの調製に用いた塗布液(1)および塗布液(2)の組成は下記の通りである。
<塗布液(1)>
・ブチルカルビトール 90.48g
・金コロイド分散液(固形分7%) 0.12g
・ニトロセルロース 8.4g
・オクテン酸鉄 1.0g
(ウエット膜厚=13μm)
<塗布液(2)>
・テルピネオール 85.50g
・エチルセルロース 7.0g
・シリコンワニス(固形分50%) 5.5g
(ウエット膜厚=12μm)
【0044】
図3から明らかであるように、本発明の低反射ガラス板は、未処理のグリーンガラスに比べて可視光線全波長領域にわたって反射率が低下しており、また、前記サンプルcの低反射ガラス板に比べると、該低反射ガラス板は、波長によっては高い反射率を有するのに対して、本発明の低反射ガラス板は可視光線全波長領域にわたって反射率が低下していることが明らかである。
【0045】
【0046】
【0047】
表1〜2より、比較例1〜4については、可視光線反射率が高く、本発明の目的を達成することができない。また、過剰の複合金属酸化物顔料を用いた比較例4では製膜性が悪く、耐酸性試験では退色するといった問題がある。また、複合金属酸化物顔料であっても青色顔料である比較例5では膜の強度が弱く、実使用が不可能である。これに対して実施例1〜5では高い反射特性を有し、耐アルカリ性および耐酸性も良好な膜が得られる。サンプルbは波長全域にわたって反射率が高く、低反射特性を有するとはいえない。また、サンプルcは比較的高波長領域では優れた低反射特性を有するものの、比較的低波長領域では低反射特性が見られず、波長により反射率のばらつきがあることが判る。サンプルaは波長全域にわたって低反射特性を有し反射率のばらつきが少ない。
【0048】
【発明の効果】
以上の如き本発明によれば、低反射膜に複合金属酸化物顔料を低濃度で含有させることで、可視光線の全波長領域に渡って反射率を低下させることができる。また、処理液(1)および/または処理液(2)を塗布した後の透明ガラス基板を高温で乾燥することなしに、それぞれ50〜200℃という低い温度で乾燥を実施するため、膜の構成成分が膜の深さ方向に連続的に変化し、2種の膜の間に明確な界面がなく、膜厚方向に成分が変化する、すなわち、膜厚方向に屈折率が変化し、良好な反射特性を有する低反射ガラス板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明において形成される1層目および2層目の膜厚を説明する図。
【図2】実施例4の低反射膜の膜断面方向の元素分析を示す光電子スペクトル。
【図3】実施例1の低反射膜(サンプルa)、未処理グリーンガラス(サンプルb)、および従来技術の低反射ガラス板(サンプルc)の可視光線波長全域にわたる反射率を示す図。
【図4】エチルセルロースおよびSolsperse 3850の分解温度を表わす図。
【発明の属する技術分野】
本発明は、低反射ガラス板(低反射膜付きガラス板)の製造方法に係り、さらに詳しくは可視光線の全域にわたって低反射率で、耐摩耗性や耐薬品性などに優れた低反射ガラス板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、低反射ガラス板の作製方法としては、次の如き方法が一般に行なわれている(例えば、特許文献1参照。)。すなわち、
(1)真空製膜法やスパッタリングなどの気相法により、酸化チタンなどの高屈折率材料と酸化珪素などの低屈折率材料とを、屈折率や膜厚を制御してガラス基板に膜同士の界面を明確になるよう積層し、光学干渉を利用した多層膜を積層して低反射ガラス板を作製する方法、
【0003】
(2)スパッタリングなどの気相法により、チタンの窒化物などの光吸収性材料と酸化珪素などの低屈折率材料とを、屈折率や膜厚を制御してガラス基板に2層以上を膜同士の界面を明確になるよう積層することにより、光学干渉を利用した低反射ガラス板を作製する方法、
【0004】
(3)金属アルコキシドなどを用いてゾル−ゲル法などにより、酸化チタンなどの高屈折率材料と酸化珪素などの低屈折率材料とを、屈折率や膜厚を制御してガラス基板に2層以上を膜同士の界面を明確になるよう積層することにより、光学干渉を利用した低反射ガラス板を作製する方法、および
【0005】
(4)金属イオン含有水溶液や金属アルコキシドなどを用いてゾル−ゲル法により、酸化チタンなどの高屈折率材料と酸化珪素などの低屈折率材料とを、屈折率や膜厚を制御してガラス基板に2層以上を膜同士の界面を明確になるよう積層することにより、光学干渉を利用した低反射ガラス板を作製する方法、
が挙げられる。
【0006】
また、上記従来技術は後述するように種々の課題を有しており、本発明者らはこれらの課題を解決する方法として、塗布液の塗布、乾燥および焼成という工程的に有利な方法で、低反射率で耐摩耗性や耐薬品性などに優れた低反射ガラス板の製造方法を提案している(特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−194295公報
【特許文献2】
特願2002−359976明細書
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記の真空製膜法やスパッタリング法を使用する方法は、大掛かりな設備が必要となるため、コストが嵩むという問題がある。また、金属アルコキシドなどを使用したゾル−ゲル法などにより膜同士の界面を明確にし、光学干渉を利用した低反射ガラス板は、膜同士の界面が明確となるため、各層への処理液塗布後に高温で乾燥する必要があり、生産性が悪くなる問題点がある。
【0009】
また、本発明者らが提案した前記方法では、低反射率で耐摩耗性や耐薬品性などに優れた低反射ガラス板が得られるが、その低反射特性はある特定波長においては優れるものの、波長によっては反射特性のばらつきを有するといった問題があった。
従って本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、可視光線の波長全域に渡って低反射率で、耐摩耗性や耐薬品性などに優れた低反射ガラス板を生産性よく製造する方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、樹脂B1および有機溶剤を含む処理液(1)と、膜形成用化合物、樹脂B2および有機溶剤を含む処理液(2)とを用い、かつ処理液(1)と処理液(2)の少なくとも一方が、処理液100質量部に対して黒色系の複合金属酸化物顔料(以下「複合金属酸化物顔料」と称する。)0.2〜4質量部を含有するものであって、上記処理液(1)を透明ガラス基板の表面に塗布し、その後、50〜200℃で乾燥して有機溶剤を除去し、次いで、さらにその上に処理液(2)を塗布し、その後、50〜200℃で乾燥して有機溶剤を除去し、次いで、処理された透明ガラス基板を400〜800℃で焼成することを特徴とする低反射ガラス板の製造方法を提供する。
【0011】
上記本発明の方法では、複合金属酸化物顔料が、Mn−Fe−Cu複合酸化物顔料であること;処理液(1)が複合金属酸化物顔料を含有し、処理液(2)が、膜形成用化合物として有機珪素化合物を含有し、かつ複合金属酸化物顔料を含有しないこと;処理液(2)の樹脂B2の分解温度が、処理液(1)の樹脂B1の分解温度よりも高いこと;処理液(1)の樹脂B1がニトロセルロースであり、処理液(2)の樹脂B2がエチルセルロースであること;処理液(1)の樹脂B1が、エチルセルロースおよびエチルセルロースよりも低温で熱分解を開始する樹脂との混合物であって、処理液(2)の樹脂B2がエチルセルロースであること;およびエチルセルロースよりも低温で熱分解を開始する上記樹脂がポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0012】
上記本発明によれば、低反射膜に複合金属酸化物顔料を低濃度で含有させることで、可視光線の全波長領域に渡って反射率を低下させることができる。また、処理液(1)および/または処理液(2)を塗布した後の透明ガラス基板を高温で乾燥することなしに、それぞれ50〜200℃という低い温度で乾燥を実施するため、膜の構成成分が膜の深さ方向に連続的に変化し、2種の膜の間に明確な界面がなく、膜厚方向に成分が変化する、すなわち、膜厚方向に屈折率が変化し、良好な反射特性を有する。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。
本発明で使用し、本発明の1つの特徴である複合金属酸化物顔料とは、その製造に際して顔料という点を鑑みれば、高温を経ることから耐熱性が高いという特徴を有する。本発明において使用する複合金属酸化物顔料は、低反射ガラス板の製造における膜焼成温度、具体的には400〜800℃で変色または退色しないことが重要あって、従来公知の黒色の複合金属酸化物顔料はいずれも使用可能であるが、好ましい具体的な複合金属酸化物顔料としては、Mn−Fe−Cu系の複合金属酸化物顔料が挙げられる。これらの複合金属酸化物顔料の粒径としては1〜100nmのものが、処理液中における分散性および最終的に得られる低反射ガラス板の透明性のうえで好ましく用いられる。
【0014】
上記複合金属酸化物顔料の使用量は、使用する複合金属酸化物顔料の種類や、所望する低反射ガラス板の透過率、反射率、色調、処理液の塗布方法により適宜決定されるが、処理液100質量部に対して0.2〜4質量部の範囲で配合使用される。複合金属酸化物顔料の使用量が0.2質量部未満では、十分な反射率低下および着色ができず、一方、4質量部を超えると得られる低反射ガラス板の透過率が低下し、また、複合金属酸化物顔料が低反射膜の表層部にも存在することになり、膜の耐酸性が十分ではなくなる。このような複合金属酸化物顔料は処理液(1)または処理液(2)の何れか一方、または両方に添加することができるが、最終的に得られる低反射膜の耐薬品性などを考慮すると処理液(1)にのみ添加することが好ましい。このような構成にすることにより複合金属酸化物顔料を含む層は、複合金属酸化物顔料を含まない膜により被覆されるので膜の耐久性が損なわれない。
【0015】
本発明で使用する樹脂B1は、有機溶剤に可溶で、処理液の粘度を適度に維持して透明ガラス基板への塗布、および塗布物の乾燥後の取扱を良好にし、かつ焼成時に比較的低温で熱分解することが必要である。樹脂B1の熱分解温度としては、150〜400℃の範囲が好ましい。分解温度が150℃未満では、塗布膜の乾燥工程で、樹脂B1が熱分解する場合があるためである。一方、分解温度が400℃を超えると、焼成後の酸化物膜強度が充分でなくなる場合があるためである。
【0016】
具体的な樹脂B1としては、例えば、ニトロセルロースなどの熱分解性のセルロース類、ポリ塩化ビニル類、ポリメチルメタクリレートなどのポリアクリル類、ポリエステル樹脂などの樹脂が挙げられる。より好ましい樹脂B1はニトロセルロース、またはエチルセルロースとエチルセルロースよりも低温で熱分解を開始する樹脂との混合物、特にポリエステル樹脂との混合物である。混合物として使用する場合の、例えば、ポリエステル樹脂は、エチルセルロース100質量部当たり50〜300質量部の割合で使用することが好ましい。
【0017】
上記ニ卜ロセルロースは、好ましくは重量平均分子量が2,000〜200,000の範囲であり、より好ましくは重量平均分子量が3,000〜150,000の範囲である。このニトロセルロースの添加量は、処理液(1)の粘度と所望する膜厚によって決定され、特に制限はないが、例えば、処理液(1)に配合するニトロセルロースは、分子量や処理液の塗布方法によっても異なるが、処理液(1)100質量部中で好ましくは1.0〜30.0質量部の範囲で添加する。
【0018】
好ましくは処理液(2)に含有され、場合によっては処理液(1)にも含有されることが好ましい膜形成用化合物としては、例えば、エトキシド、プロポキシド、ブトキシドなどの珪素のアルコキシド類、ポリシロキサン骨格を持つ各種シリコンオイル、シリコンワニスなどの低屈折率膜を形成する有機珪素化合物、および、チタン、ジルコニウム、セリウムおよびコバルトのエトキシド、プロポキシド、ブトキシドなどのアルコキシド類、アセチルアセトナート、アミナートなどのキレート類、ステアレート、オクチレート、ナフテネート、グリコレートなどの有機酸金属塩、前記アルコキシドが重縮合化したオリゴマーなどの有機金属化合物などが挙げられる。
【0019】
本発明で使用する、樹脂B1よりも分解温度が高い樹脂B2は、後述の有機溶剤に可溶で、処理液の粘度を適度に維持して処理液のガラス基板への塗布、および処理液の乾燥後の取扱を良好にし、かつ焼成時に比較的高温で熱分解することが必要である。樹脂B2の熱分解温度としては、250〜500℃の範囲が好ましい。分解温度が250℃未満では、膜の低反射化が不充分となる場合があり、一方、分解温度が500℃を超えると、焼成後の酸化物膜強度が充分でなくなる場合があるためである。
【0020】
具体的な樹脂B2としては、例えば、エチルセルロースなどの熱分解性のセルロース類、ポリ塩化ビニル類、ポリメチルメタクリレートなどのポリアクリル類などの樹脂が挙げられる。より好ましい樹脂B2はエチルセルロースである。このエチルセルロースは、重量平均分子量が好ましくは8,000〜150,000であり、より好ましくは重量平均分子量が10,000〜120,000のものである。このエチルセルロースの添加量は、処理液(2)の粘度と所望する膜厚によって決定され、制限はないが、例えば、処理液(2)に配合するエチルセルロースは、分子量や処理液の塗布方法によっても異なるが、処理液(2)100質量部中で好ましくは1.0〜30.0質量部の範囲で添加する。
【0021】
以上の樹脂B2と樹脂B1とは、樹脂B2の分解温度(T2)と樹脂B1の分解温度(T1)とが、T2−T1≧100℃であるように組み合わせて使用することが好ましい。上記熱分解温度の関係がT2−T1<100℃であると、低反射ガラス板の可視光線反射率が高くなりすぎる場合があるためである。なお、ここで樹脂の分解温度とは、樹脂の90質量%以上が焼失する温度(℃)をいう。
【0022】
本発明で使用する有機溶剤は、複合金属酸化物顔料を凝集させずに安定に分散でき、膜形成用化合物、樹脂B1および樹脂B2を溶解できるものであれば特に制限はなく、前記処理液の塗布方法などにより適宜選択される。具体的には、メタクレゾール、ジメチルホルムアミド、ブチルカルビトール、α−テルピネオール、ジアセトンアルコール、トリエチレングリコール、パラキシレン、トルエンなどの高沸点溶剤が、前記処理液をガラス板表面に塗布するうえで好ましい。
【0023】
上記の処理液(1)および処理液(2)は、溶剤と樹脂を所定量はかりとり、60〜100℃(好ましくは70〜80℃)の温度のもとで、20〜40分間攪拌することが好ましい。この溶液に複合金属酸化物顔料および膜形成用化合物から選ばれる必要成分を配合して、60〜100℃(好ましくは70〜80℃)の温度のもとで20〜40分間攪拌混合することが好ましい。得られた溶液を保管容器に移して自然冷却させることにより調製できる。
【0024】
また、処理液(1)および処理液(2)には、一方または両方の処理液に膜形成用化合物を添加することもできるが、形成される低反射膜は最外層の方が屈折率が低い方が好ましい。特に処理液(2)の方が有機珪素化合物を含有することが好ましい。
【0025】
前記処理液(1)または処理液(2)に配合される膜形成用化合物の添加量は、膜形成用化合物種、有機溶剤、樹脂B2および樹脂B1などの添加量および塗布方法によって異なるが、前記処理液(1)に配合する場合は、焼成後膜厚が5〜50nmになるように設定することが望ましい。具体的には、膜形成用化合物の配合量は、処理液100質量部中において0.5〜20質量部であることが好ましい。
【0026】
前記処理液(2)に配合される膜形成用化合物の添加量は、樹脂B2や有機溶剤の種類、使用量および塗布方法によって異なるが、前記処理液(2)からなる焼成後膜厚が、150〜350nmになるように設定することが望ましい。焼成後膜厚が150nm未満になる膜形成用化合物の添加量では、優れた低反射性の膜が得られない場合がある。一方で、350nmを超える膜形成用化合物の添加量では、低反射膜中に配合されている膜形成用化合物の配合量が多くなりすぎ、膜強度の低い膜しか得られなくなる場合があるからである。従って、本発明では優れた製膜性と優れた低反射膜を得るためにも、前記処理液(2)からなる焼成後膜厚が150〜350nmになるように設定することが好ましい。
【0027】
本発明に使用する透明ガラス基板は、特に限定されないが、熱線吸収ガラスまたはさらに熱線カット効果を高めた高熱線吸収ガラスを使用することが好ましい。また、無色のフロートガラスも用いることができる。例えば、自動車用窓ガラスなどの如く、熱線カット効果が要求される用途には、グリーンガラス基板を用いることによって、低反射性とともに熱線遮断効果を有する着色ガラス板が得られるので好ましい。グリーンガラス板としては、グリーン色を呈しているものであればいずれでもよく、例えば、ソーダ石灰シリカ系ガラス成分を基礎成分とし、Fe2O3、NiO、TiO2などを適宜配合したグリーンガラス板、ガラス成分中にFe2O3、CoO、Seなどを配合したグリーンガラス板などが挙げられ、フロートガラス、アルカリガラスなどがある。
【0028】
前記処理液をガラス基板に塗布する方法としては、スプレー、ディップ、ロールコート、スピンコート、フレキソ印刷、スクリーン印刷などの方法が挙げられる。処理液(1)をガラス基板に塗布し、50〜200℃で乾燥して有機溶剤を除去した後、さらに処理液(2)を塗布し、50〜200℃で乾燥して有機溶剤を除去した後、400〜800℃の炉中で1〜10分間焼成し、冷却を経て本発明の低反射ガラス板が得られる。
【0029】
上記塗布膜の焼成条件は、400〜800℃の範囲で焼成することが好ましい。400℃未満で焼成を行うと、膜の製膜性が悪くなり、一方、800℃を超える焼成を行うと複合金属酸化物顔料の凝集が発生するので好ましくない。
【0030】
以上のような本発明の方法で得られる低反射ガラス板は、そのガラス基材が熱線吸収または高熱線吸収ガラスである場合には、低反射性であるとともに、熱線遮断効果を有することから、車輌用、例えば、自動車用窓ガラスなどとして有用である。
【0031】
また、本発明の低反射ガラス板は、JIS−R3106(1999年)に規定される可視光線透過率が30〜85%であることが好ましい。自動車用窓ガラス(特に、自動車用ウインドシールドまたは自動車用フロントドアガラス)に使用する場合には、70〜85%であることが好ましい。また、自動車用窓ガラスとして使用する場合、ガラス面の反射率が高いとぎらぎらした印象を与え、高級感が損われることから、JIS−R3106(1999年)に規定されるガラス面の5°入射の可視光線反射率は5.5%以下であることが好ましく、特に5.0%以下であることが好ましい。また、可視光線の波長(380〜780nm)の全域にわたって反射率が7%以下であることが好ましい。
【0032】
さらに本発明により形成される低反射ガラス板は、積層体を構成する基板として使用することもできる。積層体は第一および第二の基板の間に中間膜または断熱層を挟み込んだ構造であり、本発明の低反射ガラス板を第一および/または第二の基板として用いることができる。また、ガラス板の積層に際しては、ガラス板の低反射率膜が形成された面を内側に配することが、低反射率膜の耐久性の面から好ましい。前記中間膜としては、例えば、透明または着色されたポリビニルブチラール、エチレンビニルアセテート共重合体などが挙げられる。前記断熱層としては、例えば、不活性ガス、空気あるいは窒素などを充填してなる層または真空層などが挙げられる。
【0033】
前記積層体としては、例えば、第一および第二の基板として低反射熱線吸収ガラス、高熱線吸収ガラスおよび紫外線吸収ガラスのいずれかを用い、中間膜としてポリビニルブチラールを用いた合わせガラスが挙げられる。第一および第二の基板として低反射高熱線吸収ガラスを用い、中間膜としてポリビニルブチラールを用いた合わせガラスにおいては、前記高熱線吸収ガラスの透過率が低いため、膜面から入射する光の非膜面側における反射率を低下させることができ、特に好ましい。前記合わせガラスは、輸送機器用窓(例えば、車輌用窓)やメータ機器のカバーガラスに好適に用いられる。
【0034】
【実施例】
次に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、文中「%」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。また、後記各実施例および比較例で得られた各低反射ガラス板の評価方法は以下の通りである。
【0035】
1.光学特性
色差計NDH−300A(日本電色(株)製)および濁度計ZE2000(日本電色(株)製)を使用して、各試料のHz率(JIS K6714(1994年))、透過率および透過色調(JIS Z8729(1999年))の測定を行い、分光光度計UV3100Ps(SIMADZU製)により各試料の透過率および反射率を測定し、各試料の可視光線透過率および5°入射の可視光線反射率(JIS−R3106(1999年))を算出した。
【0036】
2.耐アルカリ性
各試料を3%の水酸化ナトリウム水溶液に2時間浸漬し、浸漬の前後の透過率および反射率を分光光度計で測定し、各試料の可視光線透過率変化および可視光線反射率変化を算出した。実用上1.0%以下であることが好ましい。
3.耐酸性
各試料を3%の硫酸水溶液に2時間浸漬し、浸漬の前後の透過率および反射率を分光光度計で測定し、各試料の可視光線透過率変化および可視光線反射率変化を算出した。実用上1.0%以下であることが好ましい。
【0037】
4.製膜性
ラビング試験機(ラビングテスター、大平理化工業社製)の支持棒接点部にウエスを取付け、適宜水を滴下しながら、荷重1.0kgで移動台を支持棒に対して3,000回前後に動かし摩耗試験を実施した。その試験後における膜面の状態を目視観察した。なお、表1〜2における「○」は摩耗試験後においても膜面の変化がない場合であり、「×」は摩耗試験後において膜が剥離した場合を示す。
【0038】
実施例1〜5、比較例1〜5
表1〜2に、実施例および比較例で使用した処理液(1)および処理液(2)の組成を示す。各処理液は前記の方法に準じて調製した。実施例および比較例においては、厚み3.5mmのグリーン熱線吸収ガラス(旭硝子社製、商品名:UVカットガラス)板上に、処理液(1)をスクリーン印刷法で塗布した後、150℃の熱風循環式オーブンで大気雰囲気下で5分間乾燥した。次いで、処理液(1)と同じ質量の処理液(2)を塗布後、150℃の熱風循環式オーブンで大気雰囲気下で5分間乾燥した後、600℃のマッフル炉中で5分間焼成し、実施例および比較例の低反射ガラス板の試料を得た。なお、表1におけるSolsperse 3850はAvicia社製のポリエステル樹脂である。図4にエチルセルロースおよびSolsperse 3850の分解温度のグラフを示す。図4からSolsperse 3850の分解開始温度はエチルセルロースの分解開始温度よりも低いことが判る。
【0039】
比較例1および2は、複合金属酸化物顔料を用いず、カーボンブラック顔料またはフタロシアニン顔料を用いた例であり、比較例3および4は複合金属酸化物顔料を過少に、または過剰に使用した例であり、比較例5は黒色以外の無機顔料を用いた例である。なお、用いたニトロセルロースおよびエチルセルロースの分解温度は、それぞれ190℃および330℃であった。また、表1〜2における黒色無機顔料の平均粒径は20nmであり、カーボンブラックの平均粒径は30nmであり、フタロシアニン顔料の平均粒径は20nmであり、ニトロセルロースの分子量は105,000〜126,500であり、エチルセルロースの分子量は20,000〜30,000である。
【0040】
表1〜2に、実施例および比較例で得られた低反射ガラス板の前記試験項目の結果を示す。なお、上記実施例および比較例の低反射膜の1層目および2層目はその界面が明確ではなく、焼成して膜形成後には各層の膜厚の測定が困難である。表中の膜厚は、図1に示すようにガラス基板の上に処理液(1)と処理液(2)との一部が重複するように塗布し、前記と同一の条件で乾燥および焼成し、処理液が重複していない部分の膜厚を測定して1層目および2層目の膜厚とした。
【0041】
また、実施例4の低反射膜について膜断面方向の元素分析を光電子スペクトルにより測定した(測定装置は、X線光電子分光装置 型番:ESCA−3400、島津製作所製である)。その結果を図2に示す。この分析結果から低反射膜の1層目および2層目はその界面が明確ではないことが分かる。
【0042】
さらに実施例1の低反射ガラス板(サンプルa)、実施例1で用いた未処理のガラス基板(グリーンガラス)(サンプルb)および特願2003−24774明細書の実施例1に記載の低反射ガラス板(サンプルc)について、下記条件で可視光線全波長領域における反射率を測定した結果を図3に示す。
測定サンプル:サンプル裏面に黒塗りなし
分光光度計: UV3100、島津製作所製
測定波長:λ=380〜780nm
入射角:5°(ガラスへの入射角・・・垂直入射は0°)
【0043】
なお、サンプルcの調製に用いた塗布液(1)および塗布液(2)の組成は下記の通りである。
<塗布液(1)>
・ブチルカルビトール 90.48g
・金コロイド分散液(固形分7%) 0.12g
・ニトロセルロース 8.4g
・オクテン酸鉄 1.0g
(ウエット膜厚=13μm)
<塗布液(2)>
・テルピネオール 85.50g
・エチルセルロース 7.0g
・シリコンワニス(固形分50%) 5.5g
(ウエット膜厚=12μm)
【0044】
図3から明らかであるように、本発明の低反射ガラス板は、未処理のグリーンガラスに比べて可視光線全波長領域にわたって反射率が低下しており、また、前記サンプルcの低反射ガラス板に比べると、該低反射ガラス板は、波長によっては高い反射率を有するのに対して、本発明の低反射ガラス板は可視光線全波長領域にわたって反射率が低下していることが明らかである。
【0045】
【0046】
【0047】
表1〜2より、比較例1〜4については、可視光線反射率が高く、本発明の目的を達成することができない。また、過剰の複合金属酸化物顔料を用いた比較例4では製膜性が悪く、耐酸性試験では退色するといった問題がある。また、複合金属酸化物顔料であっても青色顔料である比較例5では膜の強度が弱く、実使用が不可能である。これに対して実施例1〜5では高い反射特性を有し、耐アルカリ性および耐酸性も良好な膜が得られる。サンプルbは波長全域にわたって反射率が高く、低反射特性を有するとはいえない。また、サンプルcは比較的高波長領域では優れた低反射特性を有するものの、比較的低波長領域では低反射特性が見られず、波長により反射率のばらつきがあることが判る。サンプルaは波長全域にわたって低反射特性を有し反射率のばらつきが少ない。
【0048】
【発明の効果】
以上の如き本発明によれば、低反射膜に複合金属酸化物顔料を低濃度で含有させることで、可視光線の全波長領域に渡って反射率を低下させることができる。また、処理液(1)および/または処理液(2)を塗布した後の透明ガラス基板を高温で乾燥することなしに、それぞれ50〜200℃という低い温度で乾燥を実施するため、膜の構成成分が膜の深さ方向に連続的に変化し、2種の膜の間に明確な界面がなく、膜厚方向に成分が変化する、すなわち、膜厚方向に屈折率が変化し、良好な反射特性を有する低反射ガラス板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明において形成される1層目および2層目の膜厚を説明する図。
【図2】実施例4の低反射膜の膜断面方向の元素分析を示す光電子スペクトル。
【図3】実施例1の低反射膜(サンプルa)、未処理グリーンガラス(サンプルb)、および従来技術の低反射ガラス板(サンプルc)の可視光線波長全域にわたる反射率を示す図。
【図4】エチルセルロースおよびSolsperse 3850の分解温度を表わす図。
Claims (7)
- 樹脂B1および有機溶剤を含む処理液(1)と、膜形成用化合物、樹脂B2および有機溶剤を含む処理液(2)とを用い、かつ処理液(1)と処理液(2)の少なくとも一方が、処理液100質量部に対して黒色系の複合金属酸化物顔料0.2〜4質量部を含有するものであって、上記処理液(1)を透明ガラス基板の表面に塗布し、その後、50〜200℃で乾燥して有機溶剤を除去し、次いで、さらにその上に処理液(2)を塗布し、その後、50〜200℃で乾燥して有機溶剤を除去し、次いで、処理された透明ガラス基板を400〜800℃で焼成することを特徴とする低反射ガラス板の製造方法。
- 黒色系の複合金属酸化物顔料が、Mn−Fe−Cu複合酸化物顔料である請求項1に記載の低反射ガラス板の製造方法。
- 処理液(1)が黒色系の複合金属酸化物顔料を含有し、処理液(2)が、膜形成用化合物として有機珪素化合物を含有し、かつ複合金属酸化物顔料を含有しない請求項1または2に記載の低反射ガラス板の製造方法。
- 処理液(2)の樹脂B2の分解温度が、処理液(1)の樹脂B1の分解温度よりも高い請求項1〜3の何れか1項に記載の低反射ガラス板の製造方法。
- 処理液(1)の樹脂B1が、ニトロセルロースであり、処理液(2)の樹脂B2が、エチルセルロースである請求項4に記載の低反射ガラス板の製造方法。
- 処理液(1)の樹脂B1が、エチルセルロースおよびエチルセルロースよりも低温で熱分解を開始する樹脂との混合物であって、処理液(2)の樹脂B2がエチルセルロースである請求項1〜3の何れか1項に記載の低反射ガラス板の製造方法。
- エチルセルロースよりも低温で熱分解を開始する樹脂が、ポリエステル樹脂である請求項6に記載の低反射ガラス板の製造方法。
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| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP2003053370A JP2004262696A (ja) | 2003-02-28 | 2003-02-28 | 低反射ガラス板の製造方法 |
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| JP (1) | JP2004262696A (ja) |
Cited By (1)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP2007128053A (ja) * | 2005-10-05 | 2007-05-24 | Asahi Glass Co Ltd | 電子印刷用カラートナー及びセラミックカラープリント付きガラス板の製造方法 |
-
2003
- 2003-02-28 JP JP2003053370A patent/JP2004262696A/ja active Pending
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