JP2004263095A - シート状物形成用組成物、シート状物およびコート品 - Google Patents

シート状物形成用組成物、シート状物およびコート品 Download PDF

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Abstract

【課題】親水性と耐水性(耐水ラビング性と経時水溶解性を備えた耐水性)を兼ね備えたシート状物を形成し得るシート状物形成用組成物と、および該シート状物形成用組成物によって形成されたコート膜を基材表面に有するコート品を提供することを目的とする。
【解決手段】(a)ポリビニルアミド類と、(b)少なくとも2つのプロトン発生基が1つの芳香族基に直接結合した構造を有する芳香族化合物とを構成要素に含むものであることを特徴とするシート状物形成用組成物である。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂成形体や紙製品などの表面に、親水性と耐水性のバランスに優れたシート状物を形成するための組成物、該シート状物および該組成物によるコート膜を有するコート品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
各種素材から構成されるシートやその他の成形体では、例えば、表面に水溶性インクによる印刷を可能とする目的で、親水性のコート膜を形成することが行われている。また、近年は、インクジェットタイプのプリンターが普及しており、これに合わせて、該プリンターでの印刷に好適な表面コートを施し、高度な画質の印刷を可能としたコート紙も提供されている。こうしたタイプのプリンターのインクは水溶性のものが主流であるため、該インクによる鮮明な印刷を可能とすべく、上記コート紙のコート膜には優れた親水性が要求される一方、良好な耐水性も要求されている。この他、これらの成形体や紙などの表面コート膜には、水溶性インクによる印刷を鮮明とする以外にも、例えば、水などの付着による曇りを抑制し得るレベルの親水性が要求される場合もある。
【0003】
上記のような親水性と耐水性を兼ね備えた表面コート膜としては、例えば、ポリアクリル酸などのポリカルボン酸類の如き親水性樹脂をベースに、各種架橋剤を用いて架橋構造を導入したコート膜が従来から使用されている。上記架橋構造の導入方法としては、多官能性エポキシ化合物を用いたエポキシ架橋、多官能性イソシアネート化合物(ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートなど)を用いたイソシアネート架橋、多価カチオン(Ca、Mg、Al、Zr、Feなどの元素のカチオン)を利用した金属架橋、アルコキシシランやシランカップリング剤を用いたシロキサン架橋、硫黄架橋、などが知られている。
【0004】
これらのコート膜では、一般に、架橋密度が増大するに従って耐水性は向上する一方、親水性は低下する。よって、親水性と耐水性のバランスをとるためには、架橋密度のコントロールが重要となる。しかし、上記コート膜は、架橋剤の添加量や架橋条件の僅かな違いで架橋密度が大きく変化してしまうため、架橋密度のコントロールが難しく、親水性と耐水性のバランスをとることが困難であった。
【0005】
また、最近では、上記成形体や紙などのリサイクル性が重要視されている。通常、表面コート膜を形成した成形体や紙では、リサイクルに当たり、該コート膜を剥離などにより分離して、基材である成形体や紙と、該コート膜とを別々に処理・再生している。しかし、上記の如き共有結合による架橋構造を導入したコート膜では、基材からの分離が困難であり、また分離できたとしても、該コート膜自体は、その架橋構造によって再成形などが極めて困難であるか不可能であるため、廃棄せざるを得ない。
【0006】
一方、特許文献1や非特許文献1には、2以上の異なる種類の親水性樹脂を用い、水素結合による擬似的な架橋を形成させて複合体とする技術が提案されている。これらの文献には、成形体などの表面コートに関する記載はないが、該文献に開示されている上記複合体では、水の存在によって水素結合による擬似架橋が崩壊し得るため、該複合体から上述の如き表面コート膜を形成すれば、共有結合による架橋構造を有する従来のコート膜が抱えていた上記問題を解決できる可能性がある。
【0007】
【特許文献1】
特公昭47−22459号公報
【0008】
【非特許文献1】
高分子加工,株式会社高分子刊行会,平成14年,第51巻,第5号,p.20
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者等は、各種成形体や紙に形成する表面コート膜などのシート状物(基材を有しないものを含む)について、実用性確保の観点から、例えば、水などが付着した際に発生する曇りを抑制し得る程度の親水性と、水が付着した部分を数回から数十回擦っても、該シート状物に実用上問題となるような劣化が生じない程度の耐水性(耐水ラビング性)を、リサイクル性向上の観点から、該シート状物を水に浸漬した場合には、該シート状物が徐々に溶解していき、比較的長時間放置することで完全溶解してしまう程度の水溶性(以下、経時水溶解性という)を、要求特性に設定して検討を重ねた。
【0010】
しかしながら、上記特許文献1や非特許文献2に開示の複合体を用いて上記シート状物を形成した場合では、該シート状物を水に浸漬して比較的長時間おいても、該シート状物が十分に溶解せずに不溶性のゲルとなり、リサイクル性向上の面で、不十分であることが判明した。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、親水性と耐水性(耐水ラビング性と経時水溶解性を備えた耐水性、特に断らない限り以下同じ)を兼ね備えたシート状物を形成し得るシート状物形成用組成物と、該シート状物、および該シート状物形成用組成物によって形成されたコート膜を基材表面に有するコート品を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成し得た本発明のシート状物形成用組成物は、(a)ポリビニルアミド類と、(b)少なくとも2つのプロトン発生基が1つの芳香族基に直接結合した構造を有する芳香族化合物とを構成要素に含むものであるところに要旨を有するものである。
【0013】
また、本発明には、上記の(a)ポリビニルアミド類と(b)芳香族化合物とを構成要素に含むシート状物、および(a)ポリビニルアミド類と(b)芳香族化合物とを構成要素に含むコート膜を、基材表面の少なくとも一部に有するコート品も包含される。なお、本発明の「シート状物」とは、所謂シート、フィルム、板状物を含む概念である。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明者等は、シート状物形成用組成物において、(a)ポリビニルアミド類と、(b)少なくとも2つのプロトン発生基が1つの芳香族基に直接結合した構造を有する芳香族化合物とを組み合わせれば、該組成物から形成されるシート状物(以下、特に断らない限り、シート状物と、コート品が有するコート膜を代表して、「シート状物」という)中に水素結合による擬似的な架橋を導入して、親水性を損なうことなく耐水性も確保し得るのみならず、これら親水性と耐水性のバランスが容易に制御可能であることを見出し、本発明を完成させた。以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明で採用し得る(a)ポリビニルアミド類としては、アミド基および重合性二重結合を分子内に有する単量体(以下、アミド基を有する単量体という)を重合して得られる単独重合体および共重合体が挙げられる。
【0016】
アミド基を有する単量体の具体例としては、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−5−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−6−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−ε−カプロラクタム、N−ビニル−7−メチル−ε−カプロラクタムなどのN−ビニルラクタム類;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ジメチルアクリルアミドなどのアクリルアミド類;ビニルアセトアミド;ビニルホルムアミド;などが挙げられる。
【0017】
さらに、(a)ポリビニルアミド類を得るに当たり、本発明の効果(親水性と耐水性、特に経時水溶解性)を損なわない範囲で、上記例示の単量体と共重合可能な単量体を併用してもよい。使用し得る他の単量体としては、(メタ)アクリル系単量体[(メタ)アクリル酸C1−6アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシC1−6アルキルエステルなどの(メタ)アクリル酸エステル類;不飽和カルボン酸またはその酸無水物[(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸など];ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなど);ビニルエチレンカーボネート類;スチレン類;(メタ)アクリル酸−2−スルホン酸エステル類(エチルエステルなど);ビニルスルホン酸類;ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテルなど);オレフィン類(エチレン、プロピレン、オクテン、ブタジエンなど);ビニルアミン類などが例示できる。
【0018】
なお、本発明で使用する(a)ポリビニルアミド類を合成する際の、上述のアミド基を有する単量体と他の単量体との使用比率は、使用する各単量体の種類に応じて変動し得るが、例えば、アミド基を有する単量体100モル%に対し、他の単量体を100モル%以下、より好ましくは50モル%以下とすることが推奨される。他の単量体の使用量が上記範囲を超える場合には、例えば、他の単量体として疎水性の単量体を選択した場合などに、本発明の効果を十分に確保できなくなることがある。
【0019】
(a)ポリビニルアミド類を重合する際の重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系開始剤;過酸化水素、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなどの無機過酸化物;ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、ラウロイルパーオキサイド(LPO)、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物;銅/過酸化物/塩基併用系などのレドックス系開始剤;などの公知の各種重合開始剤が使用可能である。
【0020】
(a)ポリビニルアミド類の重合の際には、通常、溶媒が使用される。使用し得る重合溶媒としては、水;メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類;ヘキサン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、ジブチルケトンなどのケトン類;酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類;塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化アルキル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類;エチレングリコール、オリゴ(またはポリ)エチレングリコール、およびこれらのモノ(あるいはジ)アルキルエーテルなどのエーテル類;ジメチルスルホキシド;などが挙げられる。
【0021】
(a)ポリビニルアミド類を合成する際の各単量体、重合開始剤および溶媒の使用量や、重合反応の条件などは、特に限定されるものではなく、(a)ポリアミド類の要求性能や使用する単量体の種類、量などに応じて適宜決定すればよい。なお、上記例示の他の単量体を用いて(a)ポリビニルアミド類を共重合体とする場合、該共重合体はランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれであっても構わない。
【0022】
(a)ポリビニルアミド類の分子量は、数平均分子量で1万以上、より好ましくは5万以上、さらに好ましくは10万以上であって、1000万以下であることが推奨される。ポリビニルアミド類の分子量が上記下限値を下回ると、コート膜の形態保持性が低下する傾向にあり、割れなどが生じ易くなる。他方、ポリビニルアミド類の分子量が上記上限値を超えると、溶媒(後述する)へ溶解させるための時間が長くなり、取り扱い上好ましくない。なお、ここでいうポリビニルアミド類の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定される値(ポリスチレン換算値)である。
【0023】
本発明で用い得る(b)芳香族化合物は、少なくとも2つのプロトン発生基が1つの芳香族基に直接結合した構造を有するものである。ここでいう「芳香族基」とは、シクロペンタジエン環などの非ベンゼン系芳香環;ベンゼン環;ナフタレン環、アントラセン環、ピレン環などの縮合芳香環;これら非ベンゼン系芳香環、芳香環あるいは縮合芳香環の1以上の炭素原子が、酸素原子、窒素原子、硫黄原子などのヘテロ原子に置き換えられている複素芳香環(ピロール環、ピリジン環、チオフェン環、フラン環など);などの芳香環から形成されている基を意味する。
【0024】
また、(b)芳香族化合物の有するプロトン発生基としては、水酸基(フェノール性水酸基)、カルボキシル基、およびスルホン酸基よりなる群から選択される少なくとも1種の官能基が好ましい。シート状物形成用組成物に含まれる(b)芳香族化合物がこれらのプロトン発生基を有する場合には、酸性度が高く、上記(a)ポリビニルアミド類の有するアミド基と水素結合し易いため、該シート状物形成用組成物により形成されるシート状物は、親水性と耐水性(耐水ラビング性)のバランスが非常に優れたものとなる。
【0025】
上記の如きプロトン発生基を有する(b)芳香族化合物としては、多価フェノール類、ポリフェノール類、ヒドロキシ安息香酸類、および多価カルボキシ安息香酸類よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物が推奨される。なお、上記「多価フェノール類」とは、フェノール性水酸基を2つ以上有する芳香族化合物を意味し、上記「ポリフェノール類」とは、フェノール構造を2つ以上有する化合物を意味する。なお、ポリフェノール類が含有するフェノール構造の少なくとも1つは、フェノール性水酸基がベンゼン環に2以上直接結合している。
【0026】
上記多価フェノールの具体例としては、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノンといった2価のフェノール類やこれらの誘導体(例えば、ウルシオール、ドーパミン、アドレナリン、ノルアドレナリン、ホモゲンチジン酸、ジヒドロキシフェニルアラニン、オルシン);ピロガロール、フロログルシン、オキシヒドロキノンといった3価のフェノール類やこれらの誘導体;などが挙げられる。
【0027】
上記ポリフェノール類の具体例としては、フラボノイド、クロロゲン酸、没食子酸、エラグ酸、コーヒー酸、キナ酸、リスベラトロール、ケルミトリン、ハイペロイド、イデアリンなどのモノマーポリフェノール;ポリマーポリフェノール;などが挙げられる。
【0028】
上記フラボノイド(配糖体を含む)のうち、本発明に係る(b)芳香族化合物に該当し得るものとしては、例えば、フラボン、アピゲニン、ルテオリンなどのフラボン類;ケンフェロール、ルチン、ケルセチン、ケルセチングルコシド、ケルセチンアラビノシドなどのフラボノール類;ナリジン、ヘスペリジン、リキリチゲニンなどのフラバノン類;アルピノン、タキシフォリンなどのフラバノノール類;ダイゼイン、ダイジン、ゲニスチン、ゲニステイン、グリシテイン、その他の植物エストロゲンなどのイソフラボン類;デルフィニジン系、シアニジン系、ペラルゴニジン系などの各種アントシアニン類(デルフィニジングルコシド、シアニジングルコシド、ペチュニジングルコシド、ペオニジングルコシド、マルビジングルコシドなど);カテキン、エピカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート、カテキン重合体(テアフラビン、テアフラビンガレート)、ロイコアントシアニジンなどのフラバノール類;カルタミン、フロレチン、フロリジンなどのカルコン類;オーロン;が挙げられる。
【0029】
また、上記ポリマーポリフェノールとしては、プロアントシアニジン(プロアントシアニジンB1、プロアントシアニジンB3など)などの縮合型ポリマーポリフェノール;ガロタンニン、エラグタンニンなどの加水分解型ポリマーポリフェノール;などが挙げられる。
【0030】
上記ヒドロキシ安息香酸類の具体例としては、モノヒドロキシ安息香酸(サリチル酸、3−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸);ジヒドロキシ安息香酸[2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸(プロトカテク酸)、3,5−ジヒドロキシ安息香酸];などが挙げられる
上記カルボキシ安息香酸類の具体例としては、カルボキシ安息香酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸);ジカルボキシ安息香酸(トリメリト酸、トリメシン酸);などが挙げられる。
【0031】
なお、上記ヒドロキシ安息香酸類および上記カルボキシ安息香酸類は、ベンゼン環上の1以上の水素原子が他の基で置換されていてもよい。例えば、1,2,3,4−テトラカルボキシベンゼン、1,2,3,5−テトラカルボキシベンゼン、1,2,4,5−テトラカルボキシベンゼン(以上、カルボキシ安息香酸類)、タンニン(酸)(ヒドロキシ安息香酸類)などが挙げられる。この他、尿酸などのヘテロ芳香族化合物も使用できる。
【0032】
上記例示の各芳香族化合物は夫々1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
上記例示の各芳香族化合物の中でも、安息香酸類や食品中に含まれているポリフェノール類は、毒性がないか比較的毒性が低いため、好適に使用できる。また、多価フェノール類およびポリフェノール類においては、例えば、2価、すなわち、フェノール性水酸基を2個有している化合物よりも、3価以上の化合物の方が、コート膜においてより緻密な擬似架橋構造を形成し、良好な耐水ラビング性を確保できる点で好ましい。さらに、ヒドロキシ安息香酸類や多価カルボキシ安息香酸類の有するカルボキシル基は、多価フェノール類やポリフェノール類が有するフェノール性水酸基よりも、活性が高く、水素結合が形成され易い。よって、価数が同じ場合には、ヒドロキシ安息香酸類や多価カルボキシ安息香酸類の方が、より良好な耐水ラビング性を確保し得る。
【0034】
この他、入手のし易さも考慮すると、例えば多価フェノール類では、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノンなどの2価フェノールや、ピロガロールなどの3価フェノールが、ポリフェノール類ではカテキンやタンニン酸などが、ヒドロキシ安息香酸類ではサリチル酸やp−ヒドロキシ安息香酸などが、多価カルボキシ安息香酸類では、フタル酸、テレフタル酸、トリメリト酸、トリメシン酸などが、好適に用いられる。
【0035】
このように、本発明のシート状物形成用組成物では、(b)芳香族化合物として、種々の活性(酸性度)を有する比較的低分子量の化合物を、シート状物に要求される特性(特に耐水性)に応じて適宜選択することが可能であり、該シート状物の親水性と耐水性のバランスを制御することが容易である。
【0036】
この他、本発明のシート状物形成用組成物では、基材への塗布を可能とするなどの理由で、通常、(c)溶媒も構成要素に含まれる。使用し得る(c)溶媒としては、(a)ポリビニルアミド類および(b)芳香族化合物を溶解し得るものであれば特に限定されない。具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコールなどのポリエーテル類;などが挙げられる。
【0037】
さらに、上記シート状物形成用組成物では、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて他の添加剤を構成要素とすることもできる。このような添加剤としては、例えば、(a)ポリビニルアミド類以外の水溶性高分子[ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、セルロース類、ポリアクリル酸(エステル)類など]、無機添加剤(シリカ、アルミナ、チタニアなどのフィラーなど)、酸化防止剤、着色防止剤、蛍光増白剤、ブロッキング防止剤、可塑剤、などが挙げられる。
【0038】
上記シート状物形成用組成物において、(a)ポリビニルアミド類と(b)芳香族化合物との組成比は、(a)ポリビニルアミド類および(b)芳香族化合物の種類(組み合わせ)に応じて変動するが、例えば、(a)ポリビニルアミド類100質量部に対し、10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、さらに好ましくは30質量部以上であって、200質量部以下、より好ましくは150質量部以下、さらに好ましくは120質量部以下、特に好ましくは80質量部以下であることが推奨される。(b)芳香族化合物の含有量が上記下限値以上の場合には、特に耐水ラビング性に優れたものとなり、他方、上記上限値以下の場合には、シート状物の形態保持性が向上し、割れなどが生じ難くなる。すなわち、(b)芳香族化合物の含有量が上記範囲内であれば、耐水ラビング性とシート状物の形態保持性が高いレベルで両立し得る。
【0039】
また、上記シート状物形成用組成物[(c)溶媒を含む溶液]では、(a)ポリビニルアミド類と(b)芳香族化合物を合わせた固形分濃度を、0.1〜50質量%とすることが一般的であり、1〜40質量%とすることがより好ましく、10〜30質量%とすることが特に好ましい。
【0040】
次に、本発明のシート状物形成用組成物を用いてシート状物、およびコート品を製造する方法について説明する。本発明のシート状物形成用組成物からシート状物を形成するに当たっては、基材表面にシート状物形成用組成物を塗布・乾燥などしてシート状とし、これを剥離する方法や、成形枠にシート状物形成用組成物を流し込み、乾燥させるなどしてシート状物とする方法が採用できる。
【0041】
また、コート品を製造する場合には、基材表面にシート状物形成用組成物を塗布・乾燥などする方法が採用可能である。
【0042】
上記シート状物形成用組成物を適用し得る基材を構成する素材としては特に限定されず、例えば、紙類(和紙、合成紙など);有機高分子[ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;ポリ塩化ビニル;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂;ポリカーボネート;など];無機材料(ガラス、セラミックスなど);金属材料(鉄、ステンレス鋼、トタン、銅、真鍮、アルミニウム、チタンなど);複合材料(ガラス・エポキシ樹脂);などが代表的である。また、基材の形態については、シート状(フィルム状、板状)が代表的であるが、これに限定されるものではなく、他の形状に成形されていてもよく、繊維、織布、編布、不織布などであっても構わない。
【0043】
このような基材の表面に上記シート状物形成用組成物を塗布し、必要に応じて乾燥を施して、そのままコート品とすることができるし、基材から剥離してシート状物とすることも可能である。塗布方法は、特に限定されず、ロールコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、ノズルコーティング法、ダイコーティング法、スプレーコーティング法、コンマコーティング法、ドクターブレード法などや、これらを組み合わせた方法など、従来公知の各種塗布方法の中から、基材の形態などに応じた方法を選択して採用すればよい。
【0044】
例えばコート品を得るための上記シート状形成用組成物の塗布量は、乾燥後のコート膜の厚みが0.1μm以上、より好ましくは1μm以上であって、200μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下となるようにすることが推奨される。また、シート状物とする場合には、該シート状物の厚みは特に限定されないが、例えば200μm以上であって、5cm以下、好ましくは1cm以下とすることが一般的である。
【0045】
塗布後の乾燥条件も特に限定されず、シート状形成用組成物の組成などに応じて、(c)溶媒を除去しつつ、良好なシート状物あるいはコート膜を形成し得る条件を適宜選択すればよい。例えば、温度を40〜200℃(より好ましくは60〜150℃)とし、時間を10秒〜30分(より好ましくは30秒〜5分)とすることが一般的である。また、乾燥に用いる装置も特に限定されず、従来公知の各種装置を採用すればよい。
【0046】
なお、本発明のコート品を得るに当たっては、上述のように、上記シート状形成用組成物を基材表面に塗布・乾燥などしてコート膜を形成する方法の他に、シート状物形成用組成物から得られたシート状物を、基材表面に貼り付けるなどする方法を採用してもよい。後者の場合には、基材表面に直接シート状物を貼り付けてもよく、公知の接着剤や粘着剤を介して貼り付けても構わない。さらにこの場合、接着剤として上記シート状物形成用組成物を用いることも可能である。
【0047】
このように、本発明では、共有結合による架橋構造を導入した従来のシート状物(コート膜)とは異なり、比較的温和な条件で形成することが可能である。
【0048】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは、全て本発明の技術的範囲に包含される。
【0049】
実験1
カテコール[(b)芳香族化合物]:5.5gをエタノール[(c)溶媒]:65gに溶解した溶液に、ポリビニルピロリドン[(a)ポリビニルアミド類、株式会社日本触媒製「K−90」、ホモポリマー]:11.1gを徐々に添加して溶解させ、シート状物形成用組成物を調製した。得られたシート状物形成用組成物をPETシート[東レ株式会社製「ルミラー」、厚み:100μm]の片面に、アプリケーターを用いて塗工し、80℃、2分の条件で乾燥させて10μmの厚みのコート膜を形成させ、表面被覆PETシートを得た。得られた表面被覆PETシートについて、下記の評価を行った。結果を表2に示す。
【0050】
<防曇呼気試験>
5℃の環境下で、表面被覆PETシートのコート膜面に呼気を吹きかけた際の曇り具合を目視観察し、下記基準に従って評価した。○以上が合格である。
◎:全く曇らない,
○:薄く曇る(コート膜の裏面側が見え難い程度),
×:完全に曇り、コート膜の裏面側が見えない。
【0051】
<耐水ラビング性>
表面被覆PETシートのコート膜面に水を数滴垂らし、この箇所をティッシュペーパーで20回擦った後の状態を、下記基準に従って評価した。△以上が合格である。
◎:変化なし,
○:僅かに割れまたは溶解が生じている,
△:一部に割れまたは溶解が生じている,
×:ほとんど割れているか、または溶解している。
【0052】
<水溶解性>
表面被覆PETシート全体を水に浸漬し、コート膜の状態を下記基準に従って評価した。○以上が合格である。
◎:20分以上の浸漬で完全に溶解する,
○:10分以上20分未満の浸漬で完全に溶解する,
×:10分未満の浸漬で完全に溶解する。
【0053】
実験2〜26
ポリビニルピロリドンの量、(b)芳香族化合物の種類および量を、表1または表3に示すように変更した他は、実施例1と同様にしてシート状物形成用組成物を調製し、実施例1と同様にして表面被覆PETシートを作製し、実施例1と同様にして上記各評価を行った。結果を表2または表4に示す。
【0054】
実験27
(b)芳香族化合物に代えてフェノールを用いた他は、実施例1と同様にしてシート状物形成用組成物を調製し、実施例1と同様にして表面被覆PETシートを作製し、実施例1と同様にして上記各評価を行った。結果を表6に示す。
【0055】
実験28
ポリビニルピロリドンおよびフェノールの量を表5に示すように変更した他は、実施例1と同様にしてシート状物形成用組成物を調製し、実施例1と同様にして表面被覆PETシートを作製し、実施例1と同様にして上記各評価を行った。結果を表6に示す。
【0056】
実験29
(b)芳香族化合物に代えて安息香酸を用いた他は、実施例1と同様にしてシート状物形成用組成物を調製し、実施例1と同様にして表面被覆PETシートを作製し、実施例1と同様にして上記各評価を行った。結果を表6に示す。
【0057】
実験30
ポリビニルピロリドンおよび安息香酸の量を表5に示すように変更した他は、実施例1と同様にしてシート状物形成用組成物を調製し、実施例1と同様にして表面被覆PETシートを作製し、実施例1と同様にして上記各評価を行った。結果を表6に示す。
【0058】
【表1】
Figure 2004263095
【0059】
【表2】
Figure 2004263095
【0060】
【表3】
Figure 2004263095
【0061】
【表4】
Figure 2004263095
【0062】
【表5】
Figure 2004263095
【0063】
【表6】
Figure 2004263095
【0064】
実験1〜26の表面被覆PETシートでは、(a)ポリビニルアミド類と(b)芳香族化合物を構成要素に含むシート状物形成用組成物からコート膜を形成しており、該コート膜は、良好な親水性と耐水性(耐水ラビング性を有し且つ経時水溶解性も優れている、といった耐水性)を兼ね備えている。中でも、3価以上の多価フェノール類やポリフェノール類を用いた実験7〜12の表面被覆PETシート、およびヒドロキシ安息香酸類や多価カルボキシ安息香酸類を用いた実験13〜26の表面被覆PETシートでは、コート膜の耐水性が2価フェノールを用いた場合に比べて向上しており、より緻密な擬似架橋構造が形成されているものと推察できる。
【0065】
これに対し、実験27〜30の表面被覆PETシートは、(b)芳香族化合物に代えて、フェノールまたは安息香酸(すなわち、プロトン発生基が1つだけ結合した化合物)を用いた例であり、水素結合による擬似架橋構造の形成が不十分であり、耐水ラビング性、経時水溶解性のいずれも不良であった。
【0066】
【発明の効果】
本発明は以上のように構成されており、本発明のシート状物形成用組成物から得られるシート状物およびコート品に係るコート膜は、例えば水蒸気などが付着しても曇りが発生しない程度、さらには水溶性インクの付着が良好な程度の親水性を有すると共に、耐水ラビング性および経時水溶解性を有するといった耐水性をも兼ね備えている。また、これらの親水性と耐水性のバランスを制御することが容易であり、さらには、非常にマイルドな条件でシート状物・コート膜形成が可能である。
【0067】
このような本発明のコート品は、水溶性インクが適用されるインクジェットプリンター用紙やオーバーヘッドプロジェクター(OHP)用シートなどを始めとして、各種成形品に適用しても、実用的な親水性と耐水性を発揮し得るのみならず、コート膜を基材から分離・除去することが容易であるため、リサイクル性にも優れている。

Claims (3)

  1. (a)ポリビニルアミド類と、
    (b)少なくとも2つのプロトン発生基が1つの芳香族基に直接結合した構造を有する芳香族化合物とを構成要素に含むものであることを特徴とするシート状物形成用組成物。
  2. (a)ポリビニルアミド類と、
    (b)少なくとも2つのプロトン発生基が1つの芳香族基に直接結合した構造を有する芳香族化合物とを構成要素に含むものであることを特徴とするシート状物。
  3. (a)ポリビニルアミド類と、
    (b)少なくとも2つのプロトン発生基が1つの芳香族基に直接結合した構造を有する芳香族化合物とを構成要素に含むコート膜を、基材表面の少なくとも一部に有するものであることを特徴とするコート品。
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