JP2004268128A - 圧延用ロールの軸受シール装置および軸受シール方法並びに金属材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ロール本体のネック弧状部とリティーナーとの間にシールが設置される圧延用ロールの軸受シール装置において、前記ネック弧状部と前記リティーナーとの間に複数のシールを設置するとともに、前記複数のシール間に漏洩した潤滑油を吸引して排出する吸引排出手段を備える圧延用ロールの軸受シール装置。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼帯、形鋼、線材、条鋼などの鋼材およびその他の金属材を圧延する圧延用ロールのロールネック部の軸受シール装置およびシール方法並びに前記金属材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
圧延機のワークロール、バックアップロール等の圧延ロールの軸受装置の潤滑形態には、グリース潤滑方式、強制循環給油方式等が採用される。例えば、鋼帯の調質圧延機では、ロール交換頻度の少ないバックアップロールは、圧延作業中の軸受の昇温を抑えるために、潤滑油を強制循環給油する潤滑方式や潤滑油をミスト化して強制給油するオイルミスト給油方式等の潤滑方式が採用されている。
【0003】
一方、鋼帯の圧延には、圧延油を使用して圧延する所謂ウエット圧延と、圧延油を使用せずに圧延する所謂ドライ圧延がある。冷間圧延、連続焼鈍を行った鋼帯の調質圧延、例えば容器用素材となる薄鋼帯の調質圧延では、鋼帯表面の粗度調整、光沢向上、その他の品質向上のためにドライ圧延を行うものが多い。
【0004】
ドライ圧延では、圧延用ロールの軸受潤滑に使用する潤滑油が圧延ロールや鋼帯表面に付着すると、圧延後の鋼帯表面の外観品質を著しく低下させて歩留低下させたり、圧延ロールの交換が必要になり生産性を低下させるという問題がある。又、連続焼鈍ライン出側に配置される調質圧延機では、圧延ロール交換の間、通板材料は調質圧延されないため、この調質圧延されなかった材料を、別のバッチ式調質圧延機で調質圧延を行うことによるコストアップの問題や当該バッチ式調質圧延機の能力不足をもたらすという問題もある。
【0005】
したがって、圧延用ロールの軸受のロールネック部の軸受構造に組み込まれるシール装置では、軸受潤滑油の外部漏洩を防止する必要がある。図7に示すように、オイルシール15および16を配置して、軸受潤滑油の外部漏洩を防止している。しかし、オイルシールには、制作時の寸法の狂い(初期寸法のくるい)があり、また圧延作業を継続することでオイルシールが摩耗して寸法のくるい(経時的な寸法のくるい)が大きくなることで、軸受潤滑油がスラストカラー12表面を伝ってオイルシール15および16を越えてロール本体側に漏れ出る。従って、オイルシール15及び16を設けただけでは、軸受潤滑油がオイルシール15および16を越えてロール本体側に漏れ出ることを確実に防止することができないため、軸受潤滑油の外部漏洩を防止するための種々の提案がなされている。
【0006】
例えば、特許文献1では、ドライ圧延におけるロールネック部のオイルミスト軸受シール装置として、図8に示すように、ロール本体41のネック弧状部に嵌接されるフィレットリング44の内側水平周面部と軸受押さえカバー48の水平周面部間にオイルシール45を精嵌し、当該オイルシール45の外側でフィレットリング44にラビリンス状突起物46を設け、またラビリンスに相対する軸受押さえカバー部には油溜め用のポケット50を擁したオイルシール押さえ49を備え、且つ軸受押さえカバー48外側の垂直周面には繊維質の帯状体51をフィレットリング44の外周に対し微小間隙54を形成するよう取り付けた軸受シール装置が開示されている。本シール装置では、オイルシール45から漏れ出てロールネックを伝わる油漏れは回転するラビリンス状突起物46で遠心力方向に飛ばし、相対するチョック側のポケット50に回収する。オイルミストは、ミスト状または液状で漏れ、チョック表面53で液化し滴下するものがある。繊維質の帯状体51でこの液状化したオイルミストをスタンド内に滴下させずに吸収させる。
【0007】
特許文献2には、図9に示すように、ロールネック62に設けられる軸受63と、この軸受に潤滑油を強制循環させるための循環通路69と、ロール本体側61から前記軸受側への水侵入を防止する接触型シール68とを備えたロールネックの軸受装置において、前記軸受63と接触型シール68との間にシール部材74が取り付けられているとともに、このシール部材74と接触型シール68との間にそれらから漏洩する油水を排出する排出孔73を設けることが開示されている。
【0008】
特許文献3には、図10に示すように、圧延用ロール81の軸受82をシールする圧延用ロールの軸受シール装置において、該軸受82の位置決めをする第一のカラー83を備え、該第一のカラー83のロール半径方向で反中心側にシール機構のための第二のカラー84を設け、且つ該第二のカラー84と該第一のカラー83とを着脱自在に連結し、該第二のカラー84と該第二のカラー84と相対する軸受カバー86との間に複数のシール部材89を設置し、該第二のカラー84にロール半径方向で反中心側に延在する凸部84bと該凸部84bのロール半径方向で反中心側位置に潤滑油を回収する回収ポケット86cとを設け、更に、該複数のシール部材89間及び回収ポケット86c部分に個々のドレン93、94、95を設置することが開示されている。
【0009】
以下に、先行技術文献情報について記載する。
【0010】
【特許文献1】
実開平5−96542号公報
【0011】
【特許文献2】
実開平5−70705号公報
【0012】
【特許文献3】
特開2001−50399号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1では、オイルミスト路47からオイルシール45、45間にエアミストを供給することで、オイルシール45の長寿命化を図っている。しかし、オイルシールには、制作時の寸法の狂いに加えてシール摩耗による経時的な寸法のくるいが起こり、これらによって、オイルシール45を越えてポケット50に漏洩するミストまたは液状化したミスト量は却って増大する。ポケット50に漏洩した液状化したミストやポケット50で液状化したミストは最初のうちはポケット50内に溜まるが、やがてオイルシール抑え49をオーバーフローして微小間隙54に流れる。微小間隙54に流れる液状化したミスト量が増大すると、繊維質の帯状体51では吸収しきれなくなり、ロール本体41側に液状化したミストが漏れ出る。また、ミストには、液状化しないで微小間隙54の外部に漏れ出るものもあり、このミストは、ロール本体41側で液状化する。
【0014】
また、被圧延材料は、通常コイル状態で供給され、コイル切り替え時に圧延ロールは停止されることがある。また圧延中でも低速で駆動されることがある。特許文献1では、圧延ロール41が停止または低速になったときに、オイルシール45から漏れ出た液状化したミストはラビリンス状突起物46で遠心力方向に飛ばされないで外部に漏れ出る。
【0015】
前述の外部に漏れ出た液状化したミストは圧延ロール回転の遠心力で飛散する。すなわち、特許文献1では、液状化したミストの軸受外部への漏洩の問題を確実に防止することは困難である。この問題はオイルシール45の摩耗が大きくなることでより顕在化する。
【0016】
オイルシールには、制作時の寸法の狂いやシール摩耗により経時的な寸法のくるいがあるので、特許文献2においても、シール部材74を超えた潤滑油の一部がさらに接触型シール68及び外側シール67、66を超えてロール本体61側に漏れ出ることは不可避である。また、シール部材74が摩耗すると、摩耗物と潤滑油が混ざって粘性の高いヘドロ状態になり、排出孔73を詰まらせるため、シール部材74を超えて漏れ出た潤滑油を排出孔73から外部に排出できなくなる。そのため、シール部材74を超えて漏れ出た潤滑油は接触型シール68を超えて外側シール67近傍の凹部に流れ、さらに外側シール67を超えて外側シール67と外側シール66間に流れ、さらに外側シール66をロール本体61側に漏れ出るようになる。前述の問題点は圧延作業の継続によってシール部材74、接触型シール68及び外側シール67、66の摩耗が大きくなることでより顕在化する。
【0017】
特許文献3では、特許文献2と同様の理由で、潤滑油がシール部材89を超えてポケット部86cに漏れ出ることは不可避であり、さらに、シール部材89が摩耗すると、シール部材89の摩耗物と潤滑油が混ざって粘性の高いヘドロ状態になってドレン93、94、95の詰まり発生の問題がある。そのため、シール部材89間に漏れた潤滑油は、ドレン93、94から排出されずに回収ポケット86cに流れ、さらにドレン95の詰まりによって回収ポケット86cをオーバーフローしてダストシール92a側に流れ、その一部は、第一のカラー83表面や軸受カバー86表面を伝ってダストシール92aの凹部に流れる。
【0018】
また、特許文献3でも、特許文献1と同様の理由で、圧延ロール81が停止または低速になったときに、シール部材89から漏れ出た潤滑油はラビリンス状突起物(凸部)84bで遠心力方向に飛ばされないでダストスケール92a側の凹部に流れ、さらにダストシール92a、ダストシール92bを超えて圧延ロール81側に漏れ出る。前記問題は圧延作業の継続によってオイルシール89の摩耗が大きくなることで一層顕在化する。
【0019】
前記のように、特許文献1〜3に開示される装置では、オイルシールから漏れでた軸受潤滑油が圧延ロール側に漏れ出て、ロールまたは鋼帯表面に付着するという問題を確実に解消することができない。
【0020】
本発明は、前記問題点を考慮し、軸受潤滑油が圧延ロール側に漏れ出てロールまたは鋼帯表面に付着するという問題を確実に解消できる圧延用ロールのロールネック部の軸受シール装置およびシール方法並びに金属帯の製造方法を提供することを目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の手段は次のとおりである。
(1) ロール本体のネック弧状部とリティーナーとの間にシールが設置される圧延用ロールの軸受シール装置において、前記ネック弧状部と前記リティーナーとの間に複数のシールを設置するとともに、前記複数のシール間に漏洩した潤滑油を吸引して排出する吸引排出手段を備えることを特徴とする圧延用ロールの軸受シール装置。
【0022】
(2)ロール本体のネック弧状部のスラストカラーとリティーナーとの間にシールが設置される圧延用ロールの軸受シール装置において、前記スラストカラーと前記リティーナーとの間に複数のシールを設置するとともに、前記複数のシール間に漏洩した潤滑油を吸引して排出する吸引排出手段を備えることを特徴とする圧延用ロールの軸受シール装置。
【0023】
(3)前記吸引排出手段は、前記複数のシールのシール間(設置されたシール数が3以上の場合は、少なくとも1のシール間)のリティーナー部分に該シール間に漏洩した潤滑油を排出する排油孔と、該排油孔に排出される潤滑油を吸引する吸引手段を備えることを特徴とする(1)または(2)に記載の圧延用ロールの軸受シール装置。
【0024】
(4)前記排油孔は、該排油孔が設けられるシール間のリティーナー内周面下部に設けられることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の圧延用ロールの軸受シール装置。
【0025】
(5)設置されたシール数が3以上の場合、前記排油孔は、前記複数のシール間の各々に設けらることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の圧延用ロールの軸受シール装置。
【0026】
(6)ロール本体のネック弧状部とリティーナーとの間にシールを設置して潤滑油をシールする圧延用ロールの軸受シール方法において、前記ネック弧状部と前記リティーナーとの間に複数のシールを設置し、前記複数のシール間に漏洩した潤滑油を吸引して排出することを特徴とする圧延用ロールの軸受シール方法。
【0027】
(7)ロール本体のネック弧状部のスラストカラーとリティーナーとの間にシールを設置して潤滑油をシールする圧延用ロールの軸受シール方法において、前記スラストカラーと前記リティーナーとの間に複数のシールを設置し、前記複数のシール間に漏洩した潤滑油を吸引して排出することを特徴とする圧延用ロールの軸受シール方法。
【0028】
(8)前記複数のシールのシール間(設置されたシール数が3以上の場合は、少なくとも1のシール間)のリティーナー部分に排油孔を設けて、該排油孔から該シール間に漏洩した潤滑油を吸引して排出することを特徴とする(6)または(7)に記載の圧延用ロールの軸受シール方法。
【0029】
(9)前記排油孔は、該排油孔が設けられるシール間のリティーナー内周面下部に設けられることを特徴とする(6)〜(8)のいずれかに記載の圧延用ロールの軸受シール方法。
【0030】
(10)前記排油孔は複数のシール間の各々に設けられることを特徴とする(6)〜(9)のいずれかに記載の圧延用ロールの軸受シール方法。
【0031】
(11) (6)〜(10)のいずれかに記載の方法で圧延ロールの軸受をシールしながら金属材を圧延することを特徴とする金属材の製造方法。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る軸受のシール装置が配置された圧延機と軸受潤滑系統を説明する概略図、図2は、図1の圧延機のバックアップロールとロールチョックの配置を説明する概略図である。図3は、本発明の第1の実施の形態に係る圧延用ロールの軸受シール装置の要部を説明する概略断面図で、図2の破線部Aに対応する部分を拡大して示している。
【0033】
図1の圧延機は、2基の圧延スタンドを備え、バックアップロールの軸受潤滑には、オイルミスト給油方式が採用されている例である。図1及び図2において、1は圧延スタンド、2はワークロール、3はバックアップロール、4はワークロールチョック、5はバックアップロールチョックである。6はミスト発生装置、7はミストコレクター、8は排油吸引装置、Sは鋼帯である。図3において、3はバックアップロール、10は軸受箱、11は軸受、12はロール本体のネック弧状部に取り付けられ、ロール本体のネック弧状部を補強するスラストカラー、13はリティーナー、14はダストカバーである。ダストカバー14はパッキング19を介してリティーナー13にボルト(図示なし)で固定されている。ダストカバー14は、その端部がバックアップロール3の胴部側面に接触して配置されるとともに、そのロール胴部側部分はロール胴部から離れると次第に小径化する形状に構成されている。
【0034】
15、16、18はオイルシールである。オイルシール15および16はスラストカラー12とリティーナー13の対向する水平部分に設けられ、オイルシール15および16の間に、オイルシール15と16の間隔を所定の間隔にするスペーサー20が配置されている。オイルシール16の一方の側部はリティーナー13にボルト(図示なし)で固定されたシール押さえ17で位置決めされている。オイルシール18の一方の側部は、L型に形成されたリティーナー13で位置決めされ、他方の側部はダストカバー14で押しつけられて位置決めされている。オイルシール15、16及び18は、いずれもその内周面及び外周面が、それぞれスラストカラー12及びリティーナー13と接触するように設けられる。
【0035】
軸受11とオイルシール15間のリティーナー4部分に油孔22が設けられ、ミスト化された潤滑油を循環させるための循環通路21に連通している。循環通路21はロール軸方向に形成され、その端部はミスト配管32に接続され、ミスト配管32はミストコレクター7に接続されている。
【0036】
オイルシール15と16間に排油孔24、オイルシール16と18間に排油孔25が設けられている。排油孔24と排油孔25は排油通路23に連通している。排油通路23はロール軸方向に形成され、その端部は排油配管33に接続され、排油配管33は排油吸引装置8に接続されている。排油吸引装置8は、吸引ブロアと油分分離装置(いずれも図示されていない)を内臓する。すなわち、本装置では、オイルシールを越えて漏れ出たミストまたは液状化した潤滑油を吸引、排出する専用の排油孔と排油吸引装置8を備えている。
【0037】
排油孔24は、オイルシール15と16間の領域においてリティーナー13内周面の下部に設け、排油孔25の開口部は、オイルシール16と18間の領域においてリティーナー13内周面の下部、すなわち内周面の最も低くなる部分またはその近傍部分に設けることが好ましい。本装置では、排油孔24は、オイルシール15と16間の領域においてリティーナー13内周面の最も低くなる部分に設けられ、排油口25は、オイルシール16と18間の領域においてリティーナー13内周面の最も低くなる部分に設けられている。排油孔24に対応するスペーサー20部分に排油孔20aが設けられている。
【0038】
図1〜図3の装置において、潤滑油はミスト発生装置6でミスト化され、ミスト化された潤滑油はミスト配管31を経て、各々の圧延機1のバックアップロール3の軸受11に供給される。軸受11に供給された潤滑油は、軸受11とオイルシール15間の油孔22及び軸受内に設けられた油孔(図示なし)から、ミストのままで又は液状化して循環通路21及び循環通路21に接続されたミスト配管32を経てミストコレクター7に戻る。ミストコレクター7では、液状化した潤滑油及びミストから潤滑油を分離・回収する。回収した潤滑油は、別途、再生処理を行った後、潤滑油として再使用される。
【0039】
軸受11とオイルシール15間に流れ出たミストや液状化した潤滑油の一部はスラストカラー12表面を伝ってオイルシール15及び16間に漏れる。単に排油孔24および25を設けただけでは、スラストカラー12とオイルシール16間及びスラストカラー12とオイルシール18間から、またはスラストカラー12表面を伝って、ミストや液状化した潤滑油がオイルシール16を越え、さらにオイルシール18を越えて漏れ出ることは不可避である。この現象は、オイルシールを制作時の寸法のくるいが大きいことやオイルシールが摩耗することでより顕在化する。これらはバックアップロール3側に漏れ出て、圧延ロールや鋼帯表面に付着することになる。また、オイルシールが摩耗すると、オイルシールの摩耗物と漏れ出たミストや液状化した潤滑油が混ざって粘性の高いヘドロ状態になって排油孔24や25を塞ぐため、前記問題点が一層顕在化することになる。
【0040】
図1〜3の装置では、リティーナー13に排油孔24及び25が設けられ、さらに排油吸引装置8を備える。排油吸引装置8に内臓される油分吸引ブロアで吸引されることで、ミストや液状化した潤滑油がスラストカラー12とオイルシール16間及びスラストカラー12とオイルシール18間から、またはスラストカラー12表面を伝って、オイルシール16を越えてオイルシール16と18間に漏れ出ることがなくなる。オイルシール15及び16間に漏れたミストや液状化した潤滑油は、スペーサー20の排油孔20aを経て排油孔24から排出される。
【0041】
オイルシール16を越えてオイルシール16と18間に極少量のミストや液状化した潤滑油が漏れ出ることがあったとしても、スラストカラー12とオイルシール18間及びリティーナー13とオイルシール18間でのミストや潤滑油の流れはロール本体3側からオイルシール16と18間側への流れとなるため、漏れ出たミストや液状化した潤滑油は、オイルシール18を越えて漏れ出ることがなく、確実に排油孔25から吸引排出される。
【0042】
排油孔24、25から排出されたミストや液状化した潤滑油は、排油通路23及び排油配管33を経て排油吸引装置8に内蔵される油分分離装置で油分が分離回収される。
【0043】
本装置では、オイルシールの摩耗物とオイルシール15と16間あるいは16と18間に漏れ出たミストや液状化した潤滑油が混ざって粘性の高いヘドロ状態になる前に、両者は排油孔24や25から速やかに排出されるので、排油孔24や25をふさぐことがない。従って、オイルシールが多少摩耗しても前述の作用効果は損なわれない。圧延ロールが停止し、または低速になっても、スラストカラー12表面やリティーナー13表面を伝ってオイルシール15と16間、あるいは16と18間に漏れでたミストや液状化した潤滑油は排油孔24、25から確実に吸引排出される。したがって、オイルシール15、16及び18が摩耗しても、該オイルシール18を越えてロール胴部側にミストや液状化した潤滑油が漏れ出ることを確実に防止できる。
【0044】
また、本発明では、オイルシール15と16間に排油孔24を設けて、そこからミストや液状化した潤滑油を吸引排出するだけでも、ミストや液状化した潤滑油がオイルシール16を越えてオイルシール16と18間に漏れ出ることを防止する効果は従来技術に比べて格段に優れる。本装置では、さらにオイルシール16と18間に排油孔25が設けられている。オイルシール16を越えてオイルシール16と18間に極少量のミストや液状化した潤滑油が漏れ出ることがあっても、漏れ出たミストや液状化した潤滑油は、排油孔25から吸引排出され、排油通路23及び排油配管33を経て排油吸引装置8で油分が分離回収され、ミストや液状化した潤滑油がオイルシール18を越えて漏れ出ることがなくなる。
【0045】
本装置では、ダストカバー14を備えることで、圧延時に生成するダストやクーラントがオイルシール16と18間に持ち込まれることが防止される。万一、ダストやクーラントがオイルシール18を越えてシール16と18間に持ち込まれても、持ち込まれたダストやクーラントは排油孔25から吸引排出される。したがって、ダストやクーラントが軸受内に持ち込まれることがない。したがって、本装置は、ウエット圧延、ドライ圧延の何れにも適用可能である。
【0046】
図3の装置では、オイルシールが3個配置され、排油孔は各々のオイルシール間に設けられていたが、配置するオイルシールは3個に限定されず、2個または4個以上であってもよい。またオイルシールが3個以上配置される場合、少なくとも1つのシール間に排油孔を設け、そこから該シール間に漏れ出たミストや液状化した潤滑油を吸引すればよい。
【0047】
図4はオイルシールが2個配置された例である。本装置では、オイルシール15および16はスラストカラー12とリティーナー13の対向する水平部分に設けられている。オイルシール15と16間に排油孔24が設けられ、排油孔24は排油通路23に連通している。軸受11とオイルシール15間に流れ出たミストや液状化した潤滑油の一部はスラストカラー12表面を伝ってオイルシール15及び16間に漏れる。スラストカラー12とオイルミスト16間及びリティーナー13とオイルミスト16間でのミストや液状化した潤滑油の流れはロール本体3側からオイルシール15と16間側への流れとなるため、オイルシール15及び16間に漏れたミストや液状化した潤滑油は、排油孔24及び排油通路23を経て吸引排出され、オイルシール16を越えてロール本体側に排出されることがなくなる。
【0048】
図5は、オイルシールが3個配置され、一方のオイルシール間に排油孔が設けられている例である。すなわち、3個のオイルシール15、16および18があるが、オイルシール16と18間にのみ排油孔25が設けられ、排油孔25は排油通路23に連通している。軸受11とオイルシール15間に流れ出たミストや液状化した潤滑油の一部はスラストカラー12表面を伝ってオイルシール15及び16間に漏れ、さらにオイルシール16を越えてオイルシール16及び18間に漏れる。スラストカラー12とオイルミスト18間及びリティーナー13とオイルミスト18間でのミストや液状化した潤滑油の流れはロール本体3側からオイルシール16と18間側への流れとなるため、オイルシール16及び18間に漏れたミストや液状化した潤滑油は、オイルシール18を越えてロール本体側に排出されることがなくなる。
【0049】
図4及び図5のような構造であっても、圧延ロールや鋼帯表面への圧延油付着の問題は従来技術に比べて顕著に低減される。
【0050】
オイルシールが3個以上の場合、排油孔を少なくとも何れか一のシール間に設けることで、本発明の効果が奏されるが、複数のシール間の各々に排油孔を設けることで、本発明の効果をさらに向上できる。排油孔を複数設ける場合、各排油孔を同一の排油通路に連通させてもよいが、各排油孔を各々別個の排油通路に連通させて各々から吸引排出させるようにしてもよい。
【0051】
前述の各装置では、ロール本体のネック弧状部に、ロール本体のネック弧状部を補強するためのスラストカラーが取りつけられていた。ロール構造によっては、スラストカラーが取りつけられていないものもある。圧延ロールがスラストカラーが取りつけられていないロールであっても前記で説明した本発明の作用効果は奏される。図6は、圧延ロールにスラストカラーが取りつけられていない場合の本発明の実施に形態に係る軸受シール装置の構成例を示す。本装置では、オイルシール15および16は圧延ロール3の軸部とリティーナー13の対向する水平部分に設けられている。この点を除くと、既に説明した図4の装置と同様の構成である。本装置においても、図4の装置の同様の作用効果が奏される。
【0052】
オイルミスト給油方式は、設備費が安価であるが、ミストや液状化した潤滑油が圧延ロール側に漏れ出やすい。ドライ圧延では、漏れ出たミストや液状化した潤滑油が圧延ロールや圧延前後の金属材に付着すると、金属材の外観品質が低下することで歩留まり低下の問題や圧延ロール交換が必要となることで生産性低下の問題がある。本発明によれば、前記問題点を確実に解消できる。
【0053】
前述の装置では、専用の排油吸引装置8を設け、オイルシールを越えてもれ出たミストまたは液状化した潤滑油を排油吸引装置8で吸引した。ミストコレクター7は排油吸引装置8と同様の機能を有するので、ミストコレクター7の吸引能力に余裕があるときや、オイルシールを越えてもれ出たミストまたは液状化した潤滑油の品質劣化が少ない場合等では、排油配管33をミストコレクター7に接続し、オイルシールを越えてもれ出たミストまたは液状化した潤滑油をミストコレクター7で吸引するようにしてもよい。排油吸引装置8が不要になり、より簡易な装置にできる。
【0054】
以上の説明は、潤滑形態がオイルミスト給油方式の場合であるが、潤滑形態はこれに限定されず、強制循環給油方式の潤滑形態に対して適用できる。
【0055】
前述のシール装置を備える圧延装置を用いて、例えば鋼帯を製造する場合、第6発明〜第10発明の何れかに記載の方法で圧延ロールの軸受をシールする以外は、常法にしたがって鋼帯を圧延すればよい。軸受の給油方法も常法にしたがって行えばよい。
【0056】
前記で圧延された鋼帯は、軸受潤滑油の外部漏洩が確実に防止され、軸受潤滑油の圧延ロールや鋼帯表面に付着することに起因する圧延後の鋼帯表面の外観品質の低下を防止できる。
【0057】
また、本発明は、被圧延材が鋼帯である場合だけでなく、形鋼、線材、条鋼などの鋼材やアルミニウム材等の金属材の圧延に広く適用できる。
【0058】
【実施例】
本発明法では、鋼帯の連続焼鈍ラインにおいて、その出側に配置される圧延機として、図1及び図2に示した装置に、図3に示した本発明の実施の形態に係るシール装置を備える圧延機を配置して、シール間に漏洩したミスト及び液状化した潤滑油を吸引排出しながらドライ圧延で種々のサイズの鋼帯を製造し、軸受潤滑油の圧延ロールや鋼帯表面への付着に起因する未調圧材の発生量及び格落ち材の発生量を調査した。調査結果を表1に示す。
【0059】
比較のために、前記と同じ鋼帯の連続焼鈍ラインにおいて、その出側に配置される圧延機として、図5に示した本発明の実施の形態に係るシール装置に代えて、図9に示したシール装置を備える圧延機を配置した場合(従来法)における軸受潤滑油の圧延ロールや鋼帯表面への付着に起因する未調圧材の発生量及び格落ち材の発生量を表1に併せて示した。
【0060】
ここで、格落ち量とは、圧延ロールまたは圧延鋼帯に潤滑油が付着して外観品質が低下したことによる歩留低下量、未調圧材とは、圧延ロールに潤滑油が付着したため、使用中の圧延ロールを取り外し別の圧延ロールを組み込む迄の間、調質圧延されなかった通板材料の量である。未調圧材は、別のバッチ式調質圧延設備で調質圧延を施すことで救済されるが、製造コスト増、歩留まり低下の弊害があり、別のバッチ式調質圧延設備の生産余力を低下させることにもなる。
【0061】
なお、バックアップロールは30日ピッチで定期的に取り換えられ、従来法では、軸受潤滑油のシール装置外部への漏れ出しを防止するために、バックアップロール交換にに合わせてバックアップロールのオイルシールが交換されていた。本発明例では、軸受潤滑油のシール装置外部への漏れ出しの問題が解消されたので、バックアップロールのオイルシールは、バックアップロール交換時にも取り換えることなく6箇月間継続使用されている。本実施例では、オイルシールの交換頻度を6箇月以上にできることが確認された。
【0062】
【表1】
【0063】
本発明法では、軸受潤滑油の圧延ロールや鋼帯表面への付着の問題は発生しておらず、軸受潤滑油がオイルシール外に漏れて圧延ロールまたは鋼帯表面に付着することを確実に防止できることがわかる。また、本発明法では、オイルシールを長期間わたって使用しても軸受潤滑油のシール装置外部への漏れ出しの問題が起こらないので、該オイルシール費用を低減できる効果もある。
【0064】
【発明の効果】
本発明によれば、軸受潤滑油がオイルシール外に漏れて圧延ロールまたは金属材表面に付着するという問題を確実に解消できる。
【0065】
本発明は、ウエット圧延,ドライ圧延を行う圧延機の何れにも適用可能であり、特に、シール装置外に漏れ出た受潤滑油の圧延ロールや被圧延材表面への付着による表面の外観品質低下の問題が発生しやすい鋼帯のドライ圧延への適用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る軸受のシール装置が配置された圧延機と軸受潤滑系統を説明する概略図である。
【図2】図1の圧延機のバックアップロールとロールチョックの配置を説明する概略図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る圧延用ロールの軸受シール装置の要部を説明する断面図で、図2の破線部分を拡大して示している。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る圧延用ロールの軸受シール装置の要部を説明する断面図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係る圧延用ロールの軸受シール装置の要部を説明する断面図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態に係る圧延用ロールの軸受シール装置の要部を説明する断面図である。
【図7】従来技術の圧延用ロールの軸受シール装置を説明する図である。
【図8】特許文献1に開示されるロールネック部のオイルミスト軸受シール装置を説明する図である。
【図9】特許文献2に開示されるロールネックの軸受装置を説明する図である。
【図10】特許文献3に開示される圧延用ロールの軸受シール装置を説明する図である。
【符号の説明】
S 鋼帯
1 圧延スタンド
2 ワークロール
3 バックアップロール
4 ワークロールチョック
5 バックアップロールチョック
6 ミスト発生装置
7 ミストコレクター
8 排油吸引装置
10 軸受箱
11 軸受
12 スラストカラー
13 リティーナー
14 ダストカバー
15、16、18 オイルシール
19 パッキング
20 スペーサー
21 循環通路
22 油孔
23 排油通路
24、25 排油孔
31、32 ミスト配管
33 排油配管
41 ロール本体
44 フィレットリング
45 オイルシール
46 ラビリンス状突起物
47 オイルミスト路
48 軸受押さえカバー
49 オイルシール押さえ
50 ポケット
51 繊維質の帯状体
54 微小間隙
53 チョック表面
61 ロール本体
62 ロールネック
63 軸受
64 軸受ケース
65 カラー
66、67 外側シール
68 接触型シール
69 循環通路
70 給油孔
71 排油孔
73 排出孔
74 シール部材
81 圧延用ロール
82 軸受
83 第一のカラー
84 第二のカラー
84b 凸部
86 軸受カバー
86c 回収ポケット
89 シール部材
93、94、95 ドレン
92a、92b ダストシール
98 軸受箱
Claims (11)
- ロール本体のネック弧状部とリティーナーとの間にシールが設置される圧延用ロールの軸受シール装置において、前記ネック弧状部と前記リティーナーとの間に複数のシールを設置するとともに、前記複数のシール間に漏洩した潤滑油を吸引して排出する吸引排出手段を備えることを特徴とする圧延用ロールの軸受シール装置。
- ロール本体のネック弧状部のスラストカラーとリティーナーとの間にシールが設置される圧延用ロールの軸受シール装置において、前記スラストカラーと前記リティーナーとの間に複数のシールを設置するとともに、前記複数のシール間に漏洩した潤滑油を吸引して排出する吸引排出手段を備えることを特徴とする圧延用ロールの軸受シール装置。
- 前記吸引排出手段は、前記複数のシールのシール間(設置されたシール数が3以上の場合は、少なくとも1のシール間)のリティーナー部分に該シール間に漏洩した潤滑油を排出する排油孔と、該排油孔に排出される潤滑油を吸引する吸引手段を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の圧延用ロールの軸受シール装置。
- 前記排油孔は、該排油孔が設けられるシール間のリティーナー内周面下部に設けられることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載の圧延用ロールの軸受シール装置。
- 設置されたシール数が3以上の場合、前記排油孔は、前記複数のシール間の各々に設けらることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の圧延用ロールの軸受シール装置。
- ロール本体のネック弧状部とリティーナーとの間にシールを設置して潤滑油をシールする圧延用ロールの軸受シール方法において、前記ネック弧状部と前記リティーナーとの間に複数のシールを設置し、前記複数のシール間に漏洩した潤滑油を吸引して排出することを特徴とする圧延用ロールの軸受シール方法。
- ロール本体のネック弧状部のスラストカラーとリティーナーとの間にシールを設置して潤滑油をシールする圧延用ロールの軸受シール方法において、前記スラストカラーと前記リティーナーとの間に複数のシールを設置し、前記複数のシール間に漏洩した潤滑油を吸引して排出することを特徴とする圧延用ロールの軸受シール方法。
- 前記複数のシールのシール間(設置されたシール数が3以上の場合は、少なくとも1のシール間)のリティーナー部分に排油孔を設けて、該排油孔から該シール間に漏洩した潤滑油を吸引して排出することを特徴とする請求項6または7に記載の圧延用ロールの軸受シール方法。
- 前記排油孔は、該排油孔が設けられるシール間のリティーナー内周面下部に設けられることを特徴とする請求項6〜8のいずれかの項に記載の圧延用ロールの軸受シール方法。
- 前記排油孔は複数のシール間の各々に設けられることを特徴とする請求項6〜9のいずれかの項に記載の圧延用ロールの軸受シール方法。
- 請求項6〜10のいずれかの項に記載の方法で圧延ロールの軸受をシールしながら金属材を圧延することを特徴とする金属材の製造方法。
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|---|---|---|---|
| JP2003066076A JP2004268128A (ja) | 2003-03-12 | 2003-03-12 | 圧延用ロールの軸受シール装置および軸受シール方法並びに金属材の製造方法 |
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Cited By (3)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP2009056500A (ja) * | 2007-09-03 | 2009-03-19 | Jfe Steel Kk | ピンチロールユニットおよびピンチロールユニット用ロール |
| CN107588104A (zh) * | 2017-09-01 | 2018-01-16 | 德阳市禹政科技有限公司 | 轧机轴承独立润滑结构及其轧机 |
| CN113894160A (zh) * | 2021-11-09 | 2022-01-07 | 北京京诚之星科技开发有限公司 | 板带冷轧机支撑辊装置 |
-
2003
- 2003-03-12 JP JP2003066076A patent/JP2004268128A/ja active Pending
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