JP2004274841A - モータの制御装置、その制御装置を用いた空気調和機および冷蔵庫 - Google Patents
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Abstract
【課題】変動が大きい負荷に接続されたモータを最高の効率で制御する。
【解決手段】駆動装置100は、IPMモータ51を制御する装置である。この制御装置は、電流を検出する電流センサ55および電流アンプ56と、機械角を検出する機械角判定部70と、電圧データを作成する正弦波データ作成部67と、制御データに基づいて各コイルに通電するインバータ回路52と、機械角に対応し、第1の補正値を記憶するトルク記憶部72と、インバータ回路52を制御するマイクロコンピュータ57とを含む。マイクロコンピュータ57は、電流の積算値同士の比率を算出する検出部60と、検出部60により算出された比率を目標の比率に制御するように第2の補正値を算出するPI演算部63と、制御データを算出するPWM作成部68とを含む。
【選択図】 図1
【解決手段】駆動装置100は、IPMモータ51を制御する装置である。この制御装置は、電流を検出する電流センサ55および電流アンプ56と、機械角を検出する機械角判定部70と、電圧データを作成する正弦波データ作成部67と、制御データに基づいて各コイルに通電するインバータ回路52と、機械角に対応し、第1の補正値を記憶するトルク記憶部72と、インバータ回路52を制御するマイクロコンピュータ57とを含む。マイクロコンピュータ57は、電流の積算値同士の比率を算出する検出部60と、検出部60により算出された比率を目標の比率に制御するように第2の補正値を算出するPI演算部63と、制御データを算出するPWM作成部68とを含む。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は同期モータの駆動を制御する技術に関し、特に、トルク変動が大きい負荷に接続された同期モータの通電タイミングを制御できる制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
モータの駆動方法において180°通電駆動方法とは、巻線電流波形に通電休止期間を設けずに同期モータの駆動を制御する方法をいう。この方法においては、モータ駆動電圧と巻線電流との位相差を制御する。
【0003】
特開2001−112287公報(特許文献1)は、180°通電駆動方法によりモータを制御および駆動する場合において、巻線電流の変動による位相差の検出精度の低下を抑制する技術を開示する。この公報に開示されたモータ制御装置は、複数相のモータコイルを備えた同期モータの駆動を制御するモータ制御装置である。
【0004】
このモータ制御装置は、回転速度の設定のための指令が与えられたことに応じて、同期モータを駆動するための駆動波データを複数相の各相ごとに作成する駆動波データ作成回路と、複数相のうちのいずれかの特定相のモータ電流を検出してモータ電流信号を出力するモータ電流検出回路と、駆動波データ作成回路によって作成された駆動波データから特定相のモータ駆動電圧の位相を検出し、モータ電流検出回路から出力されたモータ電流信号との位相差を検出して位相差情報を出力する位相差検出回路と、位相差検出回路から出力される位相差情報を目標の値に制御するためのデューティ基準値を算出する位相差制御回路と、駆動波データ作成回路から出力される各相の駆動波データと位相差制御回路から出力されるデューティ基準値とを乗算して、各相ごとの出力デューティを算出するデューティ算出回路と、複数のスイッチング素子を含み、デューティ算出回路によって算出された各相ごとの出力デューティにしたがって駆動信号を生成して各スイッチング素子の導通を制御し、各モータコイルに通電を行なうインバータとを含む。位相差検出回路は、特定相のモータ駆動電圧の位相を基準とした2個所の位相期間中のモータ電流信号面積をそれぞれの位相期間で求め、2個所の位相期間中のモータ電流信号面積の面積比を算出して、これを位相差情報とすることを特徴とする。
【0005】
このモータ制御装置によると、インバータはモータ駆動電圧の位相とモータ電流との位相差を2個所の位相期間のモータ電流の積算値同士の比として検出し、この位相差情報が目標値となるように制御する。ロータとステータとの相対位置は、モータ駆動電圧の位相とモータ電流との位相差によって決まる。これにより、位相差検出回路がロータ位置センサを用いることなく間接的にロータとステータとの相対位置を検知できるので、インバータは通電タイミングを制御できる。通電タイミングが間接的に制御されるので、インバータは、180°通電駆動方法を用いて高い効率が得られる通電タイミングでモータを駆動することができる。その結果、モータ効率の向上、低騒音および低振動を実現できるモータの制御装置を提供することができる。
【0006】
特開平8−322275号公報(特許文献2)は、負荷トルク変動の大きい負荷に接続した際の、負荷トルクとモータの出力トルクとの差に起因して生じていた振動を小さくする技術を開示する。負荷トルク変動の大きい負荷の例には、たとえば空気調和機や冷蔵庫などの商品の圧縮機として広く使用されているシングルロータリ型圧縮機やレシプロ型圧縮機など(以下、これらを「シングルロータリ型圧縮機」と呼ぶ)などがある。
【0007】
この公報に開示されたモータ制御装置は、負荷トルクの大きさが1回転中で時々刻々変動する機器に接続されたモータを制御するモータ制御装置である。このモータ制御装置は、モータのロータの1回転中の回転位置を検出する検出装置と、検出装置から出力された位置情報に基づいてロータの1回転中における機器の負荷トルクの大きさを算出する算出回路と、算出回路の出力に基づいてモータに供給される電流および電圧のうち少なくとも一方を、負荷トルクの大きさが1回転中で時々刻々変動する機器の負荷トルクとモータの出力トルクとが等しくなるように時々刻々制御する制御回路とを含む。
【0008】
このモータ制御装置によると、制御回路は位置情報に基づいて演算したロータの1回転中における機器の負荷トルクに応じたモータトルクを出力させる。これにより、モータ制御装置はモータの負荷トルク変動の影響を低減させることができる。その結果、低振動化できるモータ制御装置を提供することができる。
【0009】
【特許文献1】
特開2001−112287公報(第5−7頁)
【0010】
【特許文献2】
特開平8−322275号公報(第3頁)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前述の公報に開示された装置には、以下のような問題がある。
【0012】
特開2001−112287公報で開示されたモータ制御装置は、同一回転条件下において、制御が可能となる装置である。特別な制御がない場合、モータを同一の回転速度で駆動するためには、同期モータに接続される負荷が一定(負荷トルク変動小)であることを必要とする。敢えて負荷トルク変動が大きい負荷に接続された同期モータを制御させた場合、負荷トルクの影響によりロータの回転速度は変動する。回転速度が変動するので、位相差情報は想定される値から大きく変動する。位相差情報が変動するので、モータ制御装置は負荷トルク変動に対応して同期モータを制御することができない。同期モータを制御できないので、同期モータの発生トルクは低下する。最終的には位相差情報がモータ駆動可能な範囲から外れ、モータ駆動自体が不可能になり、同期モータが停止する(以下、「モータ脱調」と称する)。
【0013】
特開平8−322275号公報で開示されたモータ制御装置は、負荷トルク変動が大きい負荷に接続されたモータであっても駆動できるが、ロータ位置を検知するセンサを必要とする。しかし負荷トルク変動が大きい負荷に接続されたモータは、一般に特別な雰囲気下で駆動されることが多い。そのような雰囲気でセンサを使用するためには、そのセンサに特別な対策を施す必要がある。このため、コストが増加する。
【0014】
本発明は、上述の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、ロータ位置を検知するセンサを用いずに、負荷トルクの変動が大きい負荷に接続されたモータを高い効率で制御するモータの制御装置、その制御装置を用いた空気調和機および冷蔵庫を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
第1の発明に係るモータの制御装置は、複数相のコイルを備えた、同期モータを制御するための制御装置である。このモータの制御装置は、複数相のうちのいずれかの特定相の電流を検出するための第1の検出手段と、電流の脈動に基づいて同期モータの回転子の機械角を検出するための第2の検出手段と、各相における、補正前の電圧データを各相ごとに作成するための作成手段と、複数のスイッチング素子を含み、制御データに基づいて、各スイッチング素子の導通を制御し、各コイルに通電するための通電手段と、機械角に対応し、電圧データを補正する第1の補正値を記憶するための第1の記憶手段と、通電手段を制御するための制御手段とを含む。制御手段は、特定相の電圧において、予め定められた位相を基準とした、同じ長さの期間における、特定相の電流の積算値同士の比率を算出するための第1の算出手段と、第1の算出手段により算出された比率を目標の比率に制御するように、電圧データを補正する第2の補正値を算出するための第2の算出手段と、各相の電圧データと第1の補正値と第2の補正値とに基づいて、各相ごとの制御データを算出するための第3の算出手段とを含む。
【0016】
第1の発明によると、第1の算出手段は特定相の電圧のたとえば90°といった予め定められた位相を基準とした、長さが等しい2個所の期間における、特定相の電流の積算値同士の比率すなわち位相差情報を算出する。第3の算出手段は、電圧データ、電流の脈動により検出された機械角に対応する第1の補正値、および位相差情報を目標の値に制御するように算出された第2の補正値に基づいて、各相ごとの制御データを算出する。これにより、第3の算出手段は、電圧データと第1の補正値と第2の補正値とに基づいて、同期モータの回転子の機械角に対応し、かつ位相差情報が目標値となるように各相ごとの制御データを算出することができる。同期モータにかかる負荷の変動が回転子の機械角の変動に対応する場合、第3の算出手段が回転子の機械角に対応するように制御データを算出することは、同期モータにかかる負荷に対応するように制御データを算出することに等しい。同期モータの回転子の機械角に対応するように制御データが作成されると、通電手段は、その制御データにより、同期モータにかかる負荷に対応し、かつ位相差情報が目標値となるように各スイッチング素子を制御できる。位相差情報が変化すると、同期モータの効率は変化する。同期モータの効率が変化するので、位相差情報が目標値となるように各スイッチング素子が制御されると、同期モータは目標値に対応する効率で駆動される。目標値に対応する効率で駆動されるので、同期モータが最高の効率となるように目標値が設定されると、同期モータは最高の効率で駆動される。その結果、ロータ位置を検知するセンサを用いずに、負荷トルクの変動が大きい負荷に接続されたモータを最高の効率で制御するモータの制御装置を提供できる。
【0017】
第2の発明に係るモータの制御装置は、複数相のコイルを備えた、同期モータを制御するための制御装置である。このモータの制御装置は、複数のスイッチング素子を含み、制御データに基づいて、各スイッチング素子の導通を制御し、各コイルに通電するための通電手段と、複数相のうちのいずれかの特定相の電流を検出するための第1の検出手段と、通電手段に供給される直流電流の脈動に基づいて同期モータの回転子の機械角を検出するための第2の検出手段と、直流電流を検出するための第3の検出手段と、各相における、補正前の電圧データを各相ごとに作成するための作成手段と、機械角に対応し、電圧データを補正する第1の補正値を記憶するための第1の記憶手段と、通電手段を制御するための制御手段とを含む。制御手段は、特定相の電圧において、予め定められた位相を基準とした、同じ長さの期間における、特定相の電流の積算値同士の比率を算出するための第1の算出手段と、第1の算出手段により算出された比率を目標の比率に制御するように、電圧データを補正する第2の補正値を算出するための第2の算出手段と、各相の電圧データと第1の補正値と第2の補正値とに基づいて、各相ごとの制御データを算出するための第3の算出手段とを含む。
【0018】
第2の発明によると、第1の算出手段は特定相の電圧のたとえば90°といった予め定められた位相を基準とした、長さが等しい2個所の期間における、特定相の電流の積算値同士の比率すなわち位相差情報を算出する。第2の検出手段は、通電手段に供給される直流電流の脈動を用いて機械角を検出する。第3の算出手段は、電圧データ、電流の脈動により検出された機械角に対応する第1の補正値、および位相差情報を目標の値に制御するように算出された第2の補正値に基づいて、各相ごとの制御データを算出する。これにより、交流電流とは異なり、電流値の規則的な変動がない直流電流の脈動に基づいて機械角が検出されるので、第2の検出手段は脈動を容易に検出できる。脈動が容易に検出されるので、第2の検出手段は精度よく機械角を検出できる。精度よく機械角が検出されるので、第3の算出手段は、電圧データを基に、同期モータの回転子の機械角に精度よく対応し、かつ位相差情報が目標値となるように制御データを算出することができる。同期モータにかかる負荷の変動が回転子の機械角の変動に対応する場合、第3の算出手段が回転子の機械角に対応するように制御データを算出することは、同期モータにかかる負荷に対応するように制御データを算出することに等しい。同期モータの回転子の機械角に精度よく対応するように制御データが作成されると、通電手段は、その制御データにより、同期モータにかかる負荷に精度よく対応し、かつ位相差情報が目標値となるように各スイッチング素子を制御できる。位相差情報が変化すると、同期モータの効率は変化する。同期モータの効率が変化するので、位相差情報が目標値となるように各スイッチング素子が制御されると、同期モータは目標値に対応する効率で駆動される。目標値に対応する効率で駆動されるので、同期モータが最高の効率となるように目標値が設定されると、同期モータは最高の効率で駆動される。その結果、ロータ位置を検知するセンサを用いずに、負荷トルクの変動が大きい負荷に接続されたモータを最高の効率で精度よく制御するモータの制御装置を提供できる。
【0019】
第3の発明に係るモータの制御装置は、第1または第2の発明の構成に加え、第1の記憶手段は、回転子1回転分の機械角を同期モータの固定子の配置に基づいて特定する範囲ごとに第1の補正値を記憶するための手段を含む。
【0020】
第3の発明によると、記憶手段は、機械角を同期モータの固定子の配置に基づいて特定する範囲ごとに第1の補正値を記憶する。同期モータのトルクは電力と磁力との相互作用により発生する。電力と磁力との相互作用によりトルクが発生するので、トルクは電力と磁力とが変化する範囲ごとに変動する。電力と磁力とが変化する範囲は同期モータの固定子の配置に基づいて特定できる。これにより、記憶手段が同期モータの固定子の配置に基づいて特定する範囲ごとに第1の補正値を記憶すると、第3の算出手段はより負荷に対応した制御データを算出できる。より負荷に対応した制御データが算出されると、通電手段はより確実に各スイッチング素子を制御できる。より確実に各スイッチング素子が制御されると、同期モータはより確実に目標値に対応する効率で駆動される。その結果、ロータ位置を検知するセンサを用いずに、負荷トルクの変動が大きい負荷に接続されたモータをより確実に最高の効率で制御するモータの制御装置を提供できる。
【0021】
第4の発明に係るモータの制御装置は、第3の発明の構成に加え、固定子の配置に基づいて特定する範囲の数は、同期モータの相数と極数との積に等しい数である。
【0022】
第4の発明によると、記憶手段は、同期モータの相数と極数との積に等しい数で分割された、固定値の配置に基づいて特定される範囲ごとに第1の補正値を記憶する。同期モータのトルクは電力と磁力との相互作用により発生する。電力と磁力との相互作用によりトルクが発生するので、トルクは電力と磁力とが変化する範囲ごとに変動する。電力と磁力との変化はモータの相数と極数とから相乗効果を受けるので、電力と磁力とが変化する範囲の数はモータの相数と極数との積に等しくなる。これにより、モータの相数と極数との積に等しい数に分割された、同期モータの固定子の配置に基づいて特定される範囲に対応して補正値が記憶されると、第3の算出手段は一層確実に負荷に対応した制御データを算出できる。一層確実に負荷に対応した制御データが算出されると、通電手段は一層確実に各スイッチング素子を制御できる。一層確実に各スイッチング素子が制御されると、同期モータは一層確実に目標値に対応する効率で駆動される。その結果、ロータ位置を検知するセンサを用いずに、負荷トルクの変動が大きい負荷に接続されたモータを一層確実に最高の効率で制御するモータの制御装置を提供できる。
【0023】
第5の発明に係るモータの制御装置は、第1から第4のいずれかの発明の構成に加え、第3の算出手段は、電圧データと第1の補正値と第2の補正値とを演算して、制御データを算出するための手段を含む。
【0024】
第5の発明によると、第3の算出手段は、電圧データと、第1の補正値と、第2の補正値とを演算して、制御データを算出する。これにより、たとえばデータテーブルを参照し、補正値同士の関係により係数を特定し、電圧データに加算して制御データが算出されるといった場合に比べ、制御データの算出に必要な構成が簡略化される。その結果、簡略化された構成で、ロータ位置を検知するセンサを用いずに、負荷トルクの変動が大きい負荷に接続されたモータを最高の効率で制御するモータの制御装置を提供できる。
【0025】
第6の発明に係るモータの制御装置は、第5の発明の構成に加え、第3の算出手段は、電圧データに、第1の補正値と第2の補正値とを乗算して、制御データを算出するための手段を含む。
【0026】
第6の発明によると、第3の算出手段は、電圧データに、第1の補正値と第2の補正値とを乗算して制御データを算出する。補正値を乗算して電圧データが求められると、補正値の変動幅は補正前の電圧データの値に応じて変化し、たとえば補正前の電圧データの値がゼロの場合、補正後の電圧データの値もゼロになる。これにより、第3の算出手段は、電圧がゼロになるタイミングを変えずに電圧値を変えることができる。電圧値がゼロになるタイミングが変えられないと、通電手段が同期モータの各相に通電するタイミングは変化しない。通電手段が同期モータの各相に通電するタイミングが変化しないので、第3の算出手段は通電手段が同期モータに通電するタイミングに悪影響を与えないように制御データを算出できる。同期モータに通電するタイミングに悪影響を与えないように制御データが算出されると、そのような悪影響が与えられる場合に比べ、第1の記憶手段が記憶すべき補正値の種類は少なくなる。そのような悪影響を打消すために補正値を詳細に使い分ける必要性がなくなるからである。補正値の種類が少なくなると、第1の記憶手段の構成はより簡略化される。その結果、より簡略化された構成で、ロータ位置を検知するセンサを用いずに、負荷トルクの変動が大きい負荷に接続されたモータを最高の効率で制御するモータの制御装置を提供できる。
【0027】
第7の発明に係るモータの制御装置は、第1から第6の発明の構成に加え、第2の検出手段は、電流の脈動の複数のピークを比較して、ピークに対応する機械角を検出するための手段を含む。
【0028】
第7の発明によると、第2の検出手段は、電流の脈動のピークを比較する。同期モータには回転子の機械角に対応する負荷がかかるので、特定相の電流は負荷に応じて脈動する。特定相の電流が負荷に応じて脈動すると、第2の検出手段は脈動から機械角を検出できる。これにより、第2の検出手段は第1の検出手段を利用して機械角を検出するので、機械角を検出するための専用の装置を必要としなくなる。機械角を検出するための専用の装置が必要とされないので、制御装置全体の構成は簡略化する。その結果、ロータ位置を検知するセンサを用いずに、簡単な構成で負荷トルクの変動が大きい負荷に接続されたモータを最高の効率で制御するモータの制御装置を提供できる。
【0029】
第8の発明に係るモータの制御装置は、第7の発明の構成に加え、第2の検出手段は、ピークの最大値とその他のピークの値とを比較して、機械角を検出するための手段を含む。
【0030】
第8の発明によると、第2の検出手段は、脈動のピークの最大値とその他の値とを比較して、機械角を検出する。脈動が最大値となるピークは、それ以外のピークに比べて脈動による変動が大きいので、誤検出される可能性が少ない。これにより、最大値を含まないピーク同士を比較した場合に比べ、相対的に特定の機械角を検出できる確率が高まる。その結果、ロータ位置を検知するセンサを用いずに、簡単な構成で負荷トルクの変動が大きい負荷に接続されたモータを最高の効率で確実に制御するモータの制御装置を提供できる。
【0031】
第9の発明に係るモータの制御装置は、第8の発明の構成に加え、その他のピークは、値が最小となるピークである。
【0032】
第9の発明によると、第2の検出手段は、脈動のピークの最大値と最小値とを比較して、機械角を検出する。これにより、第2の検出手段は、最大値と最小値とではないピーク同士を比較する場合に比べ、少ない誤差で機械角を検出できる。その結果、ロータ位置を検知するセンサを用いずに、簡単な構成で負荷トルクの変動が大きい負荷に接続されたモータを最高の効率でさらに確実に制御するモータの制御装置を提供できる。
【0033】
第10の発明に係るモータの制御装置は、第1から第9のいずれかの発明の構成に加え、第1の記憶手段は、機械角の範囲の1つに対して複数の第1の補正値を記憶するための手段を含む。制御手段は、複数の第1の補正値のうち、同期モータの駆動に関する条件に基づいて第3の算出手段が用いる第1の補正値の1つを選択するための第1の選択手段をさらに含む。
【0034】
第10の発明によると、第1の選択手段は、第1の記憶手段に記憶された複数の第1の補正値のうち、たとえば負荷トルクの平均値の大小といった同期モータの駆動に関する条件に基づいて1つを選択する。これにより、第1の選択手段は、同期モータの駆動に関する条件に応じて、的確な第1の補正値を選択することができる。第3の算出手段は、的確な第1の補正値を用いて制御値を算出することができる。その結果、ロータ位置を検知するセンサを用いずに、負荷トルクの変動が大きい負荷に接続されたモータを高い効率で的確に制御するモータの制御装置を提供できる。
【0035】
第11の発明に係るモータの制御装置は、第10の発明の構成に加え、制御装置は、回転子の回転速度を特定するための手段をさらに含む。第1の記憶手段は、回転速度に応じて定められた複数の第1の補正値を記憶するための手段を含む。第1の選択手段は、回転速度の大小を駆動に関する条件として、第1の補正値の1つを選択するための手段を含む。
【0036】
第11の発明によると、第1の選択手段は、特定された回転速度の大小に基づいて第1の補正値を選択する。同期モータの制御において、位相差情報は同期モータの回転速度の影響を受ける。回転速度に基づいて第1の補正値が選択されると、制御データの算出において回転速度の影響が打消される。これにより、第3の算出手段は、より適切な制御データを算出できる。その結果、ロータ位置を検知するセンサを用いずに、負荷トルクの変動が大きい負荷に接続されたモータを最高の効率でより適切に制御するモータの制御装置を提供できる。
【0037】
第12の発明に係るモータの制御装置は、第1から第11のいずれかの発明の構成に加え、制御装置は、機械角に対応して、回転子の回転速度の変動を抑制するように回転速度を補正する抑制データを記憶するための第2の記憶手段をさらに含む。作成手段は、機械角に対応する抑制データに基づいて、電圧データを作成するための手段を含む。
【0038】
第12の発明によると、作成手段は、抑制データに基づいて電圧データを作成する。これにより、位相差情報のみを制御する場合に比べ、通電手段は回転速度の変動をより効果的に抑制することができる。回転速度の変動がより効果的に抑制されるので、回転速度の変動による振動や騒音はより効果的に抑制される。その結果、ロータ位置を検知するセンサを用いずに、負荷トルクの変動が大きい負荷に接続されたモータを最高の効率で制御することに加え、同期モータの振動や騒音をより効果的に抑制できる制御装置を提供できる。
【0039】
第13の発明に係るモータの制御装置は、第12の発明の構成に加え、第2の記憶手段は、機械角の1つの値に対して複数の抑制データを記憶するための手段を含む。制御手段は、複数の抑制データのうち、同期モータの駆動に関する条件に基づいて作成手段が用いる1つの抑制データを選択するための第2の選択手段をさらに含む。
【0040】
第13の発明によると、第2の選択手段は、第2の記憶手段に記憶された複数の抑制データのうち、たとえば負荷トルクの平均値の大小といった同期モータの駆動に関する条件に基づいて1つを選択する。これにより、第2の選択手段は、同期モータの駆動に関する条件に応じて、的確な抑制データを選択することができる。作成手段は、的確な抑制データを用いて電圧データを作成することができる。その結果、ロータ位置を検知するセンサを用いずに、負荷トルクの変動が大きい負荷に接続されたモータを最高の効率で制御することに加え、振動や騒音をさらに効果的に抑制できる制御装置を提供できる。
【0041】
第14の発明に係るモータの制御装置は、第13の発明の構成に加え、制御手段は、回転子の回転速度を特定するための手段をさらに含む。第2の記憶手段は、回転速度に応じて定められた複数の抑制データを記憶するための手段を含む。第2の選択手段は、回転速度の大小を駆動に関する条件として、抑制データの1つを選択するための手段を含む。
【0042】
第14の発明によると、第2の選択手段は、特定された回転速度の大小に基づいて抑制データの1つを選択する。同期モータの制御において、最適な抑制データは同期モータの回転速度ごとに異なる。回転速度に基づいて抑制データが選択されると、作成手段による電圧データの作成において回転速度の影響が的確に打消される。これにより、作成手段は、より適切な電圧データを作成できる。その結果、ロータ位置を検知するセンサを用いずに、負荷トルクの変動が大きい負荷に接続されたモータを最高の効率で制御することに加え、振動や騒音を一層効果的に抑制できる制御装置を提供できる。
【0043】
第15の発明に係るモータの制御装置は、第1から第14のいずれかの発明の構成に加え、制御装置は、同期モータの、回転速度に関する条件が満足されたことに応答して、制御手段に制御を開始させるための手段をさらに含む。
【0044】
第15の発明によると、同期モータの回転速度に関する条件が満足されたことに応答して、第1の制御手段による位相差情報についての制御が開始される。これにより、制御装置は特に位相差情報についての制御を必要としない時は制御せず、真に必要なときだけ制御することができる。その結果、真に必要なときだけ同期モータにかかる負荷に対応し、ロータ位置を検知するセンサを用いずに、簡単な構成で負荷トルクの変動が大きい負荷に接続されたモータを最高の効率で制御するモータの制御装置を提供できる。
【0045】
第16の発明に係るモータの制御装置は、第1から第15のいずれかの発明の構成に加え、同期モータは、埋込み磁石型同期モータである。
【0046】
第16の発明によると、同期モータは、埋込み磁石型同期モータである。埋込み磁石型同期モータは、位相差情報を的確に制御することにより、通常の同期モータに比べてより大きなトルクを得ることができる。これにより、通電手段は、他の種類の同期モータを使用する場合に比べより高い効率で同期モータを制御できる。その結果、ロータ位置を検知するセンサを用いずに、簡単な構成で負荷トルクの変動が大きい負荷に接続されたモータをより高い効率で制御するモータの制御装置を提供できる。
【0047】
第17の発明に係るモータの制御装置は、第1から第16のいずれかの発明の構成に加え、コイルのいずれかへの通電を休止するように通電手段を制御するための手段と、コイルへの通電が休止されている期間に、コイルに生じた誘起電圧を検出するための第4の検出手段とをさらに含む。第2の検出手段は、誘起電圧を用いて特定された、機械角と電流の脈動との関係に基づいて、機械角を検出するための手段を含む。
【0048】
第17の発明によると、第2の検出手段は、機械角と電流の脈動との関係に基づいて、機械角を検出する。機械角と電流の脈動との関係は、第4の検出手段によって検出される。これにより、第2の検出手段は、高い精度で機械角を検出できる。機械角の精度が高くなると、第3の算出手段は、モータの効率が高くなるように制御データを算出できる。その結果、ロータ位置を検知するセンサを用いずに、簡単な構成で負荷トルクの変動が大きい負荷に接続されたモータを高い効率で制御するモータの制御装置を提供できる。
【0049】
第18の発明に係る空気調和機は、第1から第17のいずれかの発明に係るモータの制御装置を含む。
【0050】
第18の発明によると、モータの制御装置は、同期モータの電圧や電流を制御する。これにより、同期モータの駆動が最適なタイミングで制御され、モータの効率が向上するので、空気調和機の効率も向上する。その結果、より高い効率で稼動する空気調和機を提供することができる。
【0051】
第19の発明に係る冷蔵庫は、第1から第17のいずれかの発明に係るモータの制御装置を含む。
【0052】
第19の発明によると、モータの制御装置は、同期モータの電圧や電流を制御する。これにより、同期モータの駆動がより的確なタイミングで制御されるので、冷蔵庫に内蔵された圧縮機の効率が向上する。圧縮機の効率が向上されると、冷蔵庫の効率が向上する。その結果、より高い効率で稼動する冷蔵庫を提供することができる。
【0053】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0054】
<第1の実施の形態>
図1を参照して、本実施の形態に係る駆動装置100は、IPM(Interior Permanent Magnet)モータ51と、IPMモータ51に接続され、IPMモータ51を駆動するインバータ回路52と、インバータ回路52に接続され、交流電力を直流電力に変換して供給するコンバータ回路53と、コンバータ回路53に接続され、交流電力を供給する交流電源54と、IPMモータ51の巻線端子U、V、Wの各相のうち特定の相(図1ではU相)に流れる巻線電流を検出し、信号を出力する電流センサ55と、電流センサ55に接続され、電流センサ55が出力した信号に対して所定量の増幅およびオフセット加算を行ない、巻線電流信号を出力する電流アンプ56と、電流アンプ56に接続されるマイクロコンピュータ57とを含む。
【0055】
IPMモータ51は、逆起電圧パルスなどを検出して速度を制御する方式とは異なり、いわゆる強制励磁駆動により制御される。強制励磁駆動とは、モータの回転速度をモータ巻線に通電するPWM(Pulse−Width Modulation)波からなる正弦波電圧の周波数で決定する駆動方式をいう。IPMモータ51を駆動する電流の波形は特に特定されないが、ロータの磁束分布に合わせた巻線電流が得られるような波形であれば、より高効率に駆動される。本実施の形態において、IPMモータ51は、変化が滑らかなため、電流を供給することにより振動や騒音を少なくできる正弦波を用いて駆動される。
【0056】
IPMモータ51は、同期モータの一種で、ロータ内部に永久磁石を埋め込んで配置した埋込み磁石型ブラシレスモータである。本実施の形態において、IPMモータ51は、3相4極ブラシレスモータである。これにより、駆動の際、磁石磁束および巻線電流によって発生するフレミングトルクと、ロータ形状によってモータ巻線のインダクタンスが変化することを利用したリラクタンストルクとが合成される。その結果、IPMモータは他の同期モータに比べて大きなトルクが得られるため、モータの高効率化が可能である。フレミングトルクとリラクタンストルクとはそれぞれロータとステータとの相対位置の関数となっている。フレミングトルクとリラクタンストルクとの和を最大とするには、ロータとステータとの相対位置が適当な時にモータ巻線へ通電することが必要である。
【0057】
IPMモータ51には、シングルロータリ型圧縮機(図示せず)が負荷として接続される。シングルロータリ型圧縮機は、冷蔵庫(図示せず)の冷媒または空気調和機(図示せず)の空気を圧縮する圧縮機である。図2を参照して、シングルロータリ型圧縮機とスクロール型圧縮機との負荷トルク特性を説明する。シングルロータリ型圧縮機の特徴は、構造が簡単で製造コストが安価である反面、負荷トルク変動が非常に大きいことである。シングルロータリ型圧縮機は、モータ1回転の間に冷媒の吸入、圧縮、吐出というサイクルを順次繰返す。吐出の直前は冷媒が圧縮されているので負荷トルクは大きくなる。吐出の直後は冷媒が抜けているので負荷トルクは小さくなる。その結果、ロータの機械角に対応して負荷トルクが変動する。冷媒の吸入、圧縮、吐出を連続的に行なうスクロール型圧縮機はこのような負荷トルク変動を生じない。
【0058】
インバータ回路52は、複数のスイッチング素子を含む。このスイッチング素子の導通を制御することで、IPMモータ51の複数のモータ巻線に通電される。
【0059】
電流センサ55は、カレントトランスでもよいが、本実施の形態においては巻線とホール素子で構成されたいわゆる電流センサとする。
【0060】
マイクロコンピュータ57は、検出部60と、位相差記憶部61と、加算器62と、PI(Proportion Integral)演算部63と、設定部65と、正弦波記憶部66と、正弦波データ作成部67と、PWM作成部68と、機械角判定部70と、トルク記憶部72と、第1乗算器75と、周波数記憶部80と、第2乗算器85とを含む。
【0061】
検出部60は、位相差情報を算出する。位相差記憶部61は、位相差情報の目標値を記憶する。加算器62は位相差情報の目標値と検出部60から出力された位相差情報との誤差を表わす誤差データを算出し、PI演算部63に出力する。PI演算部63は、出力された誤差データに基づいて比例データ(P)および積分データ(I)を算出し、PWM波形信号の基となるPI制御信号を第1乗算器75に出力する。
【0062】
設定部65は、IPMモータ51の回転速度の指令値を設定する。正弦波記憶部66は、連続してグラフ上にプロットすると正弦波が表れるデータ列を記憶する。正弦波データ作成部67は、モータ巻線端子U、V、Wの各相に対応する、正弦波記憶部66に記憶された正弦波データをPWM作成部68に出力するとともに、U相のモータの駆動電圧の位相を表わす情報を検出部60に出力する。正弦波データは、正弦波記憶部66に記憶されたデータ列から、IPMモータ51の回転速度に応じて定められる間隔ごとに読出される。正弦波データは、モータ巻線端子U、V、Wの各相の電圧と位相との標準的な設定を特定するデータである。IPMモータ51の回転速度を高くする場合はこの間隔を大きくする。IPMモータ51の回転速度を低くする場合はこの間隔を小さくする。すなわち、モータ回転速度は、IPMモータ51の構造的なものを除外すると、PWMキャリア周波数とこの間隔とで決まる。正弦波記憶部66から巻線の各相ごとにデータを読出す際、読出されるデータの順番の差は、各相間の位相差に相当する。たとえば3相であれば、それぞれの相のデータの順番の差は、電気角で120°のずれに相当する。U相のモータの駆動電圧の位相を表わす情報は、U相の正弦波データに基づいて作成される。
【0063】
PWM作成部68はいわゆるPWM波形発生器を含む。本実施の形態においてPWM作成部68は、各相ごとの正弦波データおよび後述するデューティ基準値を乗算した結果に基づいてPWM波形信号を出力する。
【0064】
機械角判定部70は、巻線電流におけるIPMモータ51の1回転中の脈動を表わす脈動データからロータの機械角を検出し、ロータの機械角を表わすロータ情報をトルク記憶部72に出力する。
【0065】
トルク記憶部72は、メモリ(図示せず)とメモリに記憶された情報から適切なものを選択して出力する回路(図示せず)とを含む。トルク記憶部72は、予めロータの機械角に対応したステート毎のトルク補正量を記憶し、ロータの回転速度やロータ情報に応じたトルク補正量を第1乗算器75に出力する。ステートとは、ロータ1回転をたとえば電気角60°(=機械角30°)といった一定の範囲毎に分割したものをいう。ステートの範囲は、IPMモータ51のステータの配置に基づいて特定できる。図3を参照して、本実施の形態におけるトルク補正量のデータを説明する。本実施の形態の場合、モータトルクをPWMデューティにより制御するので、トルク記憶部72に記憶するトルク補正量とは、PWMデューティの補正量を表わす。振動の低減に適したトルクパターンは回転速度や負荷トルクにより変化するため、トルク記憶部72は複数の区分に分けられた回転速度や負荷トルク(本実施の形態では回転速度のみ)に応じて、複数のトルクパターンを記憶する。トルク記憶部72が回転速度に応じたトルクパターンを出力すると、制御性能は向上する。トルクパターンは相数と極数との積である12に分割された第0ステート〜第11ステートまでの12ステートを有する。ただし、第Sステートと第(S+6)ステート(S:0〜5の整数)のインバータ駆動電圧位相は同一である。図4に3相4極ブラシレスモータの場合の各ステートの機械角と電気角との関係を示す。トルク記憶部72がロータの回転速度を検知する方法は特に限定されないが、本実施の形態においては、機械角判定部70が検出するIPMモータ51のロータの機械角の時間的な変化に基づいて回転速度を検知するものとする。
【0066】
第1乗算器75は、PI演算部63から出力されたPI制御信号と、トルク記憶部72から出力された、ロータの機械角に対応するステートのトルク補正量とを乗算し、デューティ基準値をPWM作成部68に出力する。最終的にPWM作成部68に出力されるデューティ基準値は、図3のトルク補正量を用いて式(1)にしたがって算出される。
【0067】
デューティ基準値=トルク補正量×PI制御信号 ・・・・・(1)
図5および図6を参照して、PI制御信号にトルク補正量を乗じてデューティ基準値を算出する理由について説明する。図5はモータ効率と位相差情報およびモータ駆動電圧との特性を示す図である。図5(A)はシングルロータリーコンプレッサの負荷トルクが小さい場合を示し、図5(B)は負荷トルクが大きい場合を示す。モータに脱調を起こさせず、かつ高効率でモータを駆動させるためには、ロータへの通電タイミングが、ロータとステータとの相対位置に基づき、適切な値に制御される必要がある。通電タイミングが適切な値に制御されるためには、マイクロコンピュータ57は位相差情報を適切な値に制御する必要がある。本実施の形態でいう適切な値とは、図5に示す位相差範囲に含まれる値をいう。位相差情報が過小であると、IPMモータ51は負荷トルクを駆動するモータ発生トルクを出力できない。その結果モータ脱調が発生する。たとえば、図5(A)の位相差情報と図5(B)の位相差情報とが同じ値とすると、負荷トルクが小さい場合、IPMモータ51は高い効率で駆動するが、負荷トルクが大きい場合、モータ脱調を起こす。これは位相差情報の値が位相差範囲に含まれなくなるためである。
【0068】
図6は本実施の形態における位相差情報とモータの駆動電圧との関係を表わす図である。駆動電圧と位相差情報とには線形な関係があることが知られているので、位相差情報は、位相差情報=K(1)×駆動電圧+K(2)(K(1)、K(2)は相関係数)という式によって表わすことができる。相関係数K(1)、K(2)は負荷トルクなどの条件によって異なる。図6によると、位相差情報の値が一定の場合、負荷トルクが大きいと駆動電圧V(2)はV(1)より大きくなる。これに基づき、駆動電圧として適切な値が出力されると、マイクロコンピュータ57は位相差情報を適切な値に制御することができる。駆動電圧として適切な値が出力されるためには、マイクロコンピュータ57は駆動電圧の値を負荷トルクに基づいて定める必要がある。駆動電圧の値は、デューティ基準値によって定められる。これが、PI制御信号にトルク補正量を乗じてデューティ基準値を算出する理由である。
【0069】
周波数記憶部80は、メモリ(図示せず)とメモリに記憶された情報から適切なものを選択して出力する回路(図示せず)とを含む。周波数記憶部80は、予め記憶した駆動電圧の周波数を補正する補正量のうち、機械角判定部70から出力されたロータ情報およびロータ情報の単位時間あたりの変化率(回転速度)に対応する補正量を第2乗算器85に出力する。図7を参照して、周波数記憶部80が記憶する補正量について説明する。補正量の平均値は「1」となるように設定されている。これは、モータの回転速度の目標値から決定される、所定周期当たりの駆動電圧の周波数の平均値を一定とするためである。複数の領域に区分された回転速度に対応する複数の補正量パターンが記憶されているのは、高効率運転などに適した補正量パターンが回転速度や負荷トルクにより変化するためである。周波数記憶部80が回転速度に応じた補正量を出力することにより、制御性能は向上する。ただしモータの起動直後の場合、周波数記憶部80は補正量を出力しない。圧縮機の凝縮圧力と蒸発圧力の差圧が小さいため、シングルロータリ型圧縮機に接続されたIPMモータ51の回転中の負荷変動も小さくなる結果、IPMモータ51は駆動周波数の補正を必要としないからである。第2乗算器85は、設定部65からの出力値と周波数記憶部80から出力された補正量とを乗算し、正弦波データ作成部67に電圧の位相を表わす情報を出力する。
【0070】
このマイクロコンピュータ57は、コンピュータハードウェアと図示しない制御部により実行されるソフトウェアとにより実現される。一般的にこうしたソフトウェアは、FD(Flexible Disk)またはCD−ROM(Compact Disk−Read Only Memory)などの記録媒体に格納されて流通し、記録媒体として入力部(図示せず)により読込まれる。制御部は入力部に読込まれたソフトウェアを実行する。図1に示したハードウェア自体は一般的なものである。したがって、本発明の最も本質的な部分はFDやCD−ROMなどの記録媒体に記録されたソフトウェアである。
【0071】
図8および図9を参照して、マイクロコンピュータ57で実行されるプログラムは、IPMモータ51の制御に関し、以下のような制御構造を有する。
【0072】
ステップ(以下、ステップをSと略す。)100にて、検出部60は、設定部65が設定したIPMモータ51の回転速度の指令値を検出する。この回転速度の指令値は、正弦波データ作成部67を介して検出される。S102にて、検出部60は、IPMモータ51の回転速度の指令値が圧縮機の凝縮圧力と蒸発圧力の差圧が大きくなっているとして設計時に定められた回転速度まで上昇したか否かを判断する。IPMモータ51は、設定部65が設定した回転速度で回転する。設定部65が当初設定する回転速度は、最終的な回転速度より小さい。これは、IPMモータ51を安定して回転させるためである。IPMモータ51が回転を開始した後、設定部65は次第に回転速度の指令値を増加させる。設計時に定められた回転速度まで上昇したと判断した場合には(S102にてYES)、処理はS104へと移される。もしそうでないと(S102にてNO)、処理はS100へと移される。S104にて、検出部60は、ステートをいったん任意の方法で仮設定し、仮設定した第4ステートの巻線電流値IP(4)と第10ステートの巻線電流値IP(10)とを測定する。
【0073】
S106にて、検出部60は、巻線電流値IP(4)とIP(10)との差が、モータ回転速度に応じて予め定められるしきい値以上か否かを判断する。これは、比較する巻線電流値の差が小さい場合、巻線電流値の検出誤差が大きくなるので、ロータの機械角の判定が間違われる可能性が高いからである。しきい値以上と判断した場合には(S106にてYES)、処理はS108へと移される。もしそうでないと(S106にてNO)、処理はS104へと移される。
【0074】
S108にて、検出部60は、巻線電流値を測定し、巻線電流値IP(4)がIP(10)より大きいか否かを判断する。巻線電流値IP(4)がIP(10)より大きいと判断した場合には(S108にてYES)、処理はS110へと移される。もしそうでないと(S108にてNO)、処理はS112へと移される。
【0075】
S110にて、検出部60は、内部の第1レジスタ(図示せず)の値に「1」を加算するとともに、内部の第2レジスタ(図示せず)の値を「0」とする。S112にて、PWM作成部68は、内部の第2レジスタの値に「1」を加算するとともに、内部の第1レジスタの値を「0」とする。
【0076】
S114にて、検出部60は、S108〜S112の処理が数回繰返された結果、第1レジスタおよび第2レジスタのいずれかの値が、たとえば「3」といった予め定められた値以上となったか否かを判断する。予め定められた値以上と判断した場合には(S114にてYES)、処理はS116へと移される。もしそうでないと(S114にてNO)、処理はS118へと移される。
【0077】
S116にて、検出部60は、現在のステートの設定を正規の設定と決定する。S118にて、検出部60は、現在第10ステートに該当するロータの機械角が第4ステートとなるように、ステートの設定を機械角180°分シフトさせ、正規のステートの設定とする。
【0078】
S120にて、検出部60は、サンプリングタイミングTSを、正弦波データ作成部67から出力された情報に基づいて設定する。あわせて、サンプリング回数Nなどの各変数を初期化する。本実施の形態においては、サンプリングタイミングTSは、モータ駆動電圧の位相が90°を中心とする一定かつ対称なタイミングとなるように設定される。目標位相差の設定などの制御設計を容易にするためである。図10を参照して、位相期間について説明する。モータ駆動電圧がピークとなる位相を90°とする。この場合、第1の位相期間θ(0)はモータ駆動電圧の位相が0°〜90°となる期間である。第2の位相期間θ(1)はモータ駆動電圧の位相が90°〜180°となる期間である。本実施の形態においては位相期間の幅を90°としたが、その他の値であってもよく、特に限定されない。
【0079】
S122にて、検出部60は、内蔵するタイマのカウント周期に基づき、サンプリングするタイミングを待つ。S124にて、検出部60は、電流アンプ56を介し、電流センサ55を用いてIPMモータ51のU相の電流値を測定する。
【0080】
S126にて、検出部60は、サンプリング回数Nの値に「1」を加算する。S128にて、検出部60は、サンプリング回数Nの値に基づき、現在の位相期間がθ(0)か否かを判断する。現在の位相期間がθ(0)と判断した場合には(S128にてYES)、処理はS130へと移される。もしそうでないと(S128にてNO)、処理はS134へと移される。
【0081】
S130にて、検出部60は、サンプリング回数Nが予め定められた値(本実施の形態の場合3回)以上か否かを判断する。サンプリング回数Nが予め定められた値以上と判断した場合には(S130にてYES)、処理はS132へと移される。もしそうでないと(S130にてNO)、処理はS124へと移される。
【0082】
S132にて、検出部60は、位相期間θ(0)でのサンプリングが終了したものとして、電流サンプリングデータの積算を行ない、モータ電流信号面積S(0)(=I(0)+I(1)+I(2))を計算する。
【0083】
S134にて、検出部60は、サンプリング回数Nが予め定められた値(本実施の形態の場合6回)以上か否かを判断する。サンプリング回数Nが予め定められた値以上と判断した場合には(S134にてYES)、処理はS136へと移される。もしそうでないと(S134にてNO)、処理はS124へと移される。
【0084】
S136にて、検出部60は、位相期間θ(1)でのサンプリングが終了したものとして、電流サンプリングデータの積算を行ない、モータ電流信号面積S(1)(=I(3)+I(4)+I(5))を計算する。
【0085】
S138にて、検出部60は、モータ電流信号面積S(0)およびS(1)の計算が終了したか否かを判断する。計算が終了したと判断した場合には(S138にてYES)、処理はS140へと移される。もしそうでないと(S138にてNO)、処理はS124へと移される。
【0086】
S140にて、検出部60は、モータ電流信号面積S(0)およびS(1)の比(S(0)/S(1))を計算して位相差情報とし、加算器62に出力する。S142にて、機械角判定部70は、電流アンプ56を介し、電流センサ55を用いてIPMモータ51のU相におけるIPMモータ51回転中の脈動を表わす脈動データを読込む。
【0087】
S144にて、機械角判定部70は、脈動データに基づいてロータの機械角を検出し、ロータの機械角を表わすロータ情報をトルク記憶部72に出力する。S146にて、トルク記憶部72は、ロータの回転速度およびロータ情報に応じたトルク補正量を第1乗算器75に出力する。ロータの機械角を検出するのは、たとえば4極ブラシレスモータの場合、機械角180°および360°の場合に電気角が360°となるなど、ロータの電気角ではロータの位置を明確に検出できないからである。
【0088】
図11を参照して、3相4極ブラシレスモータにおいてロータの機械角を判別する方法を説明する。図11は、1回転中のステートと負荷トルクと巻線電流(1相分)との関係を示す図である。1回転中に大きく3つの過程(吸入、圧縮、吐出)の行程があるため、負荷トルクが大きく変動する。吸入状態から冷媒が圧縮されていくにしたがい負荷トルクは急激に増加し、吐出弁が開き冷媒が吐出されると、負荷トルクは減少する。この負荷トルク変動の影響で、巻線電流値も図11のIP(1)、IP(4)、IP(7)、IP(10)のように変動する。この現象から、機械角判定部70は、予め実験するなどして定められたステートの巻線電流値の大小とロータの機械角との関係を基に、ロータの機械角を判定する。比較対象とする巻線電流値の差が小さいと、その判定に誤りが生じる可能性が高まるので、機械角判定部70は、比較する巻線電流値の組合せを、インバータ駆動電圧位相が同一となる区間において最も差が大きくなる組合せとする。本実施の形態においては、第4ステートの巻線電流値IP(4)と第10ステートの巻線電流値IP(10)との差が最も大きくなるので、機械角判定部70は第4ステートと第10ステートとを比較する。
【0089】
図12および図13を参照して、3相6極ブラシレスモータにおいてロータの機械角を判定する方法を参考として説明する。図12は、3相6極ブラシレスモータのロータ1回転中のステートと負荷トルクと巻線電流(1相分)との関係を示す図である。図13は3相6極ブラシレスモータの場合の各ステートの機械角と電気角との関係を示す図である。図13に示すように3相6極ブラシレスモータの場合、トルクパターンは相数と極数との積である18に分割された第0ステート〜第17ステートまでの18ステートを有する。ただし、第Sステートと第(S+6)ステートと第(S+12)ステート(S:0〜5の整数)のインバータ駆動電圧位相は同一である。
【0090】
4極ブラシレスモータの場合と同様、6極ブラシレスモータにおいても負荷トルクは大きく変動する。吸入状態から冷媒が圧縮されていくにしたがい負荷トルクは急激に増加し、吐出弁が開き冷媒が吐出されると、負荷トルクは減少する。この負荷トルク変動の影響で、巻線電流値も図12のIP(1)、IP(4)、IP(7)、IP(10)、IP(13)、IP(16)のように変動する。この現象を用いて、機械角判定部70は、これらの巻線電流値の大小を比較し、ロータの機械角を判定する。この場合、機械角判定部70は、第1ステート、第7ステートおよび第13ステートの大小を比較する。たとえば、機械角判定部70は、ステートを一旦仮設定し、第1ステート、第7ステートおよび第13ステートの巻線の電流値を測定する。巻線の電流値が測定されると、機械角判定部70は、測定された巻線の電流値の比較により最小のステートを判定する。第7ステートが最小の場合、機械角判定部70は、現在のステートの定義を維持する。第1ステートが最小の場合、機械角判定部70は、現在の第1ステートが第7ステートとなるようにステートの設定を機械角120°分シフトさせる。第13ステートが最小の場合、機械角判定部70は、現在の第13ステート13が第7ステートとなるように機械角240°分シフトさせる。これにより、ロータの機械角とトルクパターンの位相との対応をとることができるので、トルク制御を許可しトルク制御を行なうとともに、駆動周波数の補正を許可し、駆動周波数を制御する。
【0091】
S148にて、加算器62は検出部60が求めた位相差情報と位相差記憶部61が出力した位相差情報の目標値との差を求め誤差データとし、PI演算部63に出力する。
【0092】
S150にて、PI演算部63は、加算器62が出力した誤差データに基づき比例データ(P)および積分データ(I)を算出し、これらのデータを含むPI制御値を第1乗算器75に出力する。S152にて、第1乗算器75は、PI制御値とトルク記憶部72が出力したトルク補正量とを乗算し、デューティ基準値をPWM作成部68に出力する。
【0093】
S154にて、設定部65は、IPMモータ51の回転速度の設定値を第2乗算器85に出力する。S156にて、周波数記憶部80は、ロータのステートと回転速度とに対応する補正量を、第2乗算器85に出力する。
【0094】
S158にて、第2乗算器85は、周波数記憶部80が出力した補正量に基づいて、各ステートごとの駆動電圧の周波数を補正し、かつ電圧位相を表わす位相データを作成して正弦波データ作成部67に出力する。本実施の形態において第2乗算器85は、図7の補正量を用いて位相データを式(2)のように計算する。
【0095】
位相データ=補正量×IPMモータ51の回転速度の指令値 ・・・・・(2)
S160にて、正弦波データ作成部67は、位相データと正弦波データとに基づいて正弦波データをPWM作成部68に出力するとともに、U相の正弦波データからU相のモータの駆動電圧の位相を表わす情報を検出部60に出力する。正弦波データは、演算によって作成しても構わないが、本実施の形態においては、正弦波記憶部66からモータ巻線端子U、V、Wの各相に対応した正弦波データを読み出す。
【0096】
S162にて、PWM作成部68は正弦波データとデューティ基準値とを乗算して、各相ごとにインバータ回路52の各駆動素子にモータ駆動電圧であるPWM波形信号をインバータ回路52に出力する。
【0097】
S164にて、PWM作成部68は、トルクパターンまたは周波数補正パターンの切換があったか否かを判断する。トルクパターンまたは周波数補正パターンの切換があったと判断した場合には(S164にてYES)、処理はS166へと移される。もしそうでないと(S164にてNO)、処理はS120へと移される。
【0098】
S166にて、PWM作成部68は、モータの回転が安定するために必要として予め定めた時間が経過するまで待つ。予め定めた時間は、トルクパターンなどの切換後にモータの回転が安定するために必要として予め定めた時間をT(1)とし、モータの目標回転速度の変更後にモータの回転が安定するために必要として予め定めた時間をT(2)とする。
【0099】
S168にて、PWM作成部68は、正弦波データに基づき、IPMモータ51の回転速度を推定する。S170にて、PWM作成部68は、回転速度の推定値が駆動周波数を補正する必要がないとして予め定められた所定の回転速度以上となったか否かを判断する。所定の回転速度以上となったと判断した場合には(S168にてYES)、処理を終了する。もしそうでないと(S168にてNO)、処理はS122へと移される。このように判断するのは、シングルロータリ型圧縮機の場合、IPMモータ51の回転速度が高くなると、IPMモータ51回転中の負荷変動が小さくなり、それにともない回転速度変動も小さくなるためである。
【0100】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、駆動装置100の動作について説明する。
【0101】
検出部60は、IPMモータ51の回転速度の指令値を検出し(S100)、IPMモータ51の回転速度が圧縮機の凝縮圧力と蒸発圧力の差圧が大きくなったとして予め定められた回転速度に上昇するまで待つ(S102)。
【0102】
予め定められた回転速度まで上昇したと判断されると、検出部60は、ステートをいったん任意に設定し、仮設定した第4ステートの巻線電流値IP(4)と第10ステートの巻線電流値IP(10)とを測定する(S104)。巻線電流値が測定されると検出部60は、測定された巻線電流値の差が、モータ回転速度に応じて予め定められるしきい値を上回るまで待つ(S106)。しきい値を上回ったと判断されると、検出部60は、巻線電流値を測定し、巻線電流値IP(4)とIP(10)との大小を比較する(S108)。巻線電流値の測定と比較とが数回繰返されると(S108〜S114)、検出部60は、ステートの設定を正式に決定する(S116、S118)。これにより、ロータの機械角とトルクパターンの位相との対応をとることができたので、トルクを制御するとともに、駆動周波数を制御する。
【0103】
検出部60は、サンプリングタイミングTSを、正弦波データ作成部67から出力された情報に基づいて設定する。あわせて検出部60は、サンプリング回数Nなどの各変数を初期化する(S120)。サンプリングタイミングTSの設定と各変数の初期化とがなされると、検出部60は、位相差情報を算出する。
【0104】
図10を参照して、位相差情報の算出方法について説明する。検出部60は、モータ駆動電圧を基準とする2箇所の位相期間において、両位相期間におけるサンプリングタイミングが対称となるような所定のサンプリングタイミングSP(0)〜SP(5)を待つ(S122)。タイミングが到来すると検出部60は、IPMモータ51のU相の電流値を測定する(S124)。電流値が測定されると、検出部60は、各位相期間での巻線電流値I(0)〜I(2)を積算しモータ電流信号面積S(0)(=I(0)+I(1)+I(2))を計算する(S126〜S132)。モータ電流信号面積S(0)が計算されると、検出部60は、ふたたびIPMモータ51のU相の電流値を測定して、位相期間θ(1)についてモータ電流信号面積S(1)(=I(3)+I(4)+I(5))を計算する(S122〜S136)。モータ電流信号面積S(0)およびS(1)が計算されると(S138にてYES)、検出部60はそれぞれの値の比(S(0)/S(1))を計算し、加算器62に出力する(S140)。この計算結果が位相差情報である。本実施の形態においては、この位相差情報が所定の値になるように制御する。図10の場合、検出部60は2箇所の位相期間で対称となるタイミングでA/Dサンプリングするので、図10に示すように電圧と電流の位相差が0°のときには、S(0)=S(1)となる。その結果、位相差情報は「1」となる。このことは、位相差0°で制御するには位相差情報を「1」になるように制御すればよいことを表わす。
【0105】
位相差情報が出力されると、機械角判定部70は、IPMモータ51のU相におけるIPMモータ51回転中の脈動を表わす脈動データを読込む(S142)。脈動データが読込まれると、機械角判定部70は、脈動データに基づいてロータの機械角を検出し、ロータの機械角を表わすロータ情報をトルク記憶部72に出力する(S144)。ロータ情報が出力されると、トルク記憶部72は、ロータの回転速度およびロータ情報に応じたトルク補正量を第1乗算器75に出力する(S146)。
【0106】
トルク補正量が出力されると、加算器62は位相差情報と位相差記憶部61から出力された位相差情報の目標値との差を求め誤差データとし、PI演算部63に出力する。加算器62は位相差情報の目標値と検出部60から出力された位相差情報とをPI演算部63に出力する(S148)。位相差情報などが出力されると、PI演算部63は、加算器62が出力した誤差データに基づき比例データ(P)および積分データ(I)を算出し、PI制御値を第1乗算器75に出力する(S150)。PI制御値が出力されると、第1乗算器75は、PI制御値とトルク記憶部72が出力したトルク補正量とを乗算し、デューティ基準値をPWM作成部68に出力する(S152)。
【0107】
シングルロータリ型圧縮機の振動は以上のようにしてトルクを制御しても完全には消滅せず、ある程度の振動が残存する。モータの角速度の変動もトルクを制御しない場合よりは小さくなるが、ある程度残るので、ステータへの通電タイミングを適切な値に制御するため、強制励磁を行なっている駆動周波数をモータの角速度の変動に応じて補正する。これにより、IPMモータ51の駆動電力の周波数が補正量パターンにしたがって増減され、回転速度の変動に応じた通電が行われる。回転速度の変動に応じた通電が行われるので、マイクロコンピュータ57は、IPMモータ51の脱調を防止し、さらには高効率で運転することができる。
【0108】
デューティ基準値が出力されると、設定部65は、IPMモータ51の回転速度の設定値を第2乗算器85に出力する(S154)。設定値が出力されると、周波数記憶部80は、ロータのステートと回転速度とに対応する補正量を、第2乗算器85に出力する(S156)。補正量が出力されると、第2乗算器85は、周波数記憶部80が出力した補正量に基づいて、各ステートの駆動電圧の周波数を補正し、かつ電圧位相を表わす位相データを作成して正弦波データ作成部67に出力する(S158)。
【0109】
図14を参照して位相データに補正量を乗算する理由を説明する。図14は、シングルロータリ型圧縮機の負荷トルク変動を負荷トルクの大きいときと小さいときとに分けてパラメータ化した位相差情報−効率特性である。ここで、注意すべき事実は、モータ駆動電圧が同一であっても、負荷トルクが変化すると位相差情報も変化することである。たとえば図14においてモータ駆動電圧VJでモータが駆動されている場合、負荷トルクの大きいときと小さいときとでは異なる位相差情報でモータが駆動される。これは負荷トルクが大きいときには大きなモータ駆動電圧が必要なためである。このことを前述したシングルロータリ型圧縮機にあてはめると、モータ1回転に同期した急激で大きな負荷トルク変動に位相差を制御して追従することは困難なことを意味する。位相差を制御して追従することが困難になると、モータ駆動電圧の制御や変更はできない。
【0110】
位相データが出力されると、正弦波データ作成部67は、位相データと正弦波データとに基づいて正弦波データをPWM作成部68に出力する。正弦波データ作成部67は、正弦波データを出力するとともに、U相の正弦波データからU相のモータの駆動電圧の位相を表わす情報を検出部60に出力する(S160)。
【0111】
正弦波データなどが出力されると、PWM作成部68は正弦波データとデューティ基準値とを乗算して、各相ごとにインバータ回路52の各駆動素子にモータ駆動電圧であるPWM波形信号をインバータ回路52に出力する(S162)。これにより、インバータ回路52を介してモータ巻線に電流が印加されるのでIPMモータ51が駆動される。その結果、IPMモータ51の出力トルクがトルクパターンにしたがって増減され、負荷トルクに応じたトルク制御が行われるため、マイクロコンピュータ57は、モータ脱調を防止し、かつIPMモータ51の回転速度の変動を抑制できる。
【0112】
PWM波形信号が出力されると、PWM作成部68は、トルクパターンまたは周波数補正パターンの切換があるまで(S164にてNO)、駆動電圧の大きさ(PWMデューティのデューティ幅)を決定する。駆動電圧の大きさは、モータ駆動電圧(出力デューティ)に対する巻線電流位相差を一定に制御するための位相差制御フィードバックループによって決定される(S120〜S162)。駆動電圧の大きさを決定する際、所望の周波数で出力される正弦波データによってIPMモータ51の回転速度が決定される。これによって所望の位相差、所望の回転速度でIPMモータ51が駆動・制御される。
【0113】
トルクパターンまたは周波数補正パターンの切換があると(S164にてYES)、PWM作成部68は、モータの回転が安定するために必要として予め定めた時間が経過するまで待つ(S166)。予め定めた時間は、トルクパターンなどの切換後にモータの回転が安定するために必要として予め定めた時間をT(1)とし、モータの目標回転速度の変更後にモータの回転が安定するために必要として予め定めた時間をT(2)とする。予め定めた時間が経過すると、PWM作成部68は、正弦波データに基づき、IPMモータ51の回転速度を推定し(S168)、所定の回転速度以上になると(S168にてYES)処理を終了する。このように判断するのは、シングルロータリ型圧縮機の場合、IPMモータ51の回転速度が高くなると、IPMモータ51回転中の負荷変動が小さくなり、それにともない回転速度変動も小さくなるためである。
【0114】
図15および図16を参照して、1回転中の負荷変動の大きいシングルロータリ型圧縮機モータを駆動した場合の負荷トルクとモータ駆動電圧(1相分)と角速度との関係を示す。図15が従来例の場合であり、図16が本実施の形態のトルク制御を行なった場合である。従来例では、角速度の変動が大きく、ひいては圧縮機の振動も大きくなる。本実施の形態の場合、トルクパターンによりデューティ基準値が補正され、モータ駆動電圧が補正されることにより、巻線電流が負荷トルクと一致するモータトルクを発生すべく補正される。これにより、角速度変動が小さくなり、圧縮機の振動も小さくなる。
【0115】
図17および図18を参照して、1回転中の負荷変動の大きいシングルロータリ型圧縮機モータを駆動した場合の負荷トルクとモータ駆動電圧(1相分)と位相差情報との関係を説明する。図17が従来例の場合である。図18が本実施の形態において駆動電力の周波数を補正した場合である。図17に示す従来例の場合、位相差情報の変動が大きく、ひいては位相差情報が高効率点から離れてしまい、効率の悪い運転となる。最悪の場合は前述した位相差範囲以上に位相差情報が変動し、脱調が発生する。図18に示す本実施の形態の場合、補正量パターンによりIPMモータ51回転中の負荷変動に応じて位相データを補正することにより、マイクロコンピュータ57は、位相差情報を常に高効率点に制御することが可能となる。
【0116】
以上のようにして、本実施の形態に係る駆動装置は、予め記憶部に記憶されたトルクパターンに応じて駆動電圧を制御する。トルクパターンに応じて駆動電圧が制御されるので、電流の位相は制御可能な範囲にとどまる。電流の位相が制御可能な範囲にとどめられるので、シングルロータリ型圧縮機をはじめとする急激で大きな負荷トルク変動を持つ負荷に対してもモータ脱調などを生じずに駆動させることができる。さらにロータの機械角をコイルの誘起電流から検出するのではなく、巻線電流のピークに基づいて検出するので、180°通電による制御が可能である。あわせて、回転速度の補正も行なうので、回転速度の変動により位相差情報が影響を受けることを防ぐことができる。その結果、低騒音、低振動、高効率である180°通電による制御をより幅広い分野に適用できる制御装置を提供できる。
【0117】
なお、S154にて設定部65は、位相差情報の変動量が任意に定められた第1の変動量以上となった後、駆動周波数補正を開始してもよい。
【0118】
また、S154にて設定部65は、位相差情報の変動量が任意に定められた第2の変動量以下となった場合は、駆動周波数の補正を停止して直ちにS158の処理を行なってもよい。
【0119】
さらに、比較する巻線電流値は、4極ブラシレスモータの場合でロータの機械角が180度離れたステート同士であってよい。
【0120】
その他、比較する巻線電流値は、3相6極ブラシレスモータの場合にはモータ駆動電圧の位相が等しくなるステート同士であってもよい。
【0121】
<第2の実施の形態>
以下、本発明の第2の実施の形態に係る駆動装置200について説明する。
【0122】
図19を参照して、本実施の形態に係る駆動装置200は、DC(Direct Current)電流を検出するためにインバータ回路52に直列に接続された抵抗90と、抵抗90と並列に接続され、DC電流を検出するDC電流アンプ91とをさらに含む。なお、その他のハードウェア構成については前述の第1の実施の形態と同じである。それらについての機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰返さない。
【0123】
図20を参照して、マイクロコンピュータ57で実行されるプログラムは、IPMモータ51の制御に関し、以下のような制御構造を有する。なお、図20に示すフローチャートの中で、前述の図8に示した処理は同じステップ番号を付してある。それらの処理も同じである。また、S146以降の処理も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰返さない。
【0124】
S180にて、機械角判定部70は、抵抗90とDC電流アンプ91とを用いてDC電流の脈動を検出する。S182にて、機械角判定部70は、検出されたDC電流の脈動とロータの機械角との関係からロータの機械角を検出し、ロータの機械角を表わすロータ情報をトルク記憶部72に出力する。ロータの機械角の検出は、巻線電流に基づいて機械角を検出する場合と同様の方法により行なう。
【0125】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、駆動装置200の動作について説明する。
【0126】
S100〜S140の動作を経て位相差情報が出力されると、機械角判定部70は、DC電流の脈動を検出する(S180)。DC電流の脈動が検出されると、機械角判定部70は、ロータの機械角を検出し、ロータの機械角を表わすロータ情報をトルク記憶部72に出力する(S182)。ロータ情報が出力されると、S146〜S170の動作を経て、IPMモータ51が制御される。
【0127】
以上のようにして、本実施の形態に係る駆動装置は、インバータに供給される電力の脈動に基づいてロータの機械角を検出する。インバータに供給される電力は直流のため、インバータによって変調された後の電力に比べてトルク変動による脈動の影響が現れやすい。トルク変動による脈動の影響が現れやすいので、より高い精度でロータの機械角を検出できる。その結果、より高い精度で180°通電駆動により制御できる制御装置を提供できる。
【0128】
なお、本実施の形態において、インバータ回路52に入力されるDC電流を用いてIPMモータ51の巻線電流値を推定してもよい。電流センサ55および電流アンプ56はこの場合不要である。この場合、検出部60はPWM作成部68およびDC電流アンプ91に接続されている。検出部60はインバータ回路52に入力されるDC電流の値を測定する。そのDC電流がIPMモータ51のどのコイルに流れるかは、どのコイルに通電するかを表わすデータに基づいて特定される。そのデータは、PWM作成部68が検出部60に出力する。これにより、検出部68はIPMモータ51の特定のコイルに流れる電流を推定できる。
【0129】
もしくは、本実施の形態において、検出部60は、インバータ回路52の入力部に取付けられた電流センサ(図示せず)が検知したDC電流値を用いて巻線電流値を推定してもよい。
【0130】
<第3の実施の形態>
以下、本発明の第3の実施の形態に係る駆動装置300について説明する。
【0131】
図21を参照して、本実施の形態に係る駆動装置300は、第1の実施の形態のマイクロコンピュータ57に代えて、マイクロコンピュータ93を含む。マイクロコンピュータ93は、180°駆動部95と、間欠駆動部96と、選択部97と、検出部98とを含む。
【0132】
180°駆動部95は、IPMモータ51の回転速度がモータ巻線に通電するモータの駆動電圧の周波数によって決定される強制励磁駆動をする。180°駆動部95は、検出部と、位相差記憶部と、加算器と、PI演算部と、設定部と、正弦波記憶部と、正弦波データ作成部と、機械角判定部と、トルク記憶部と、第1乗算器と、周波数記憶部と、第2乗算器とを含む。これらの関係および役割は機械角判定部を除き第1の実施の形態と同様である。機械角判定部は、間欠駆動部96の出力と、電流センサ55および電流アンプ56の出力とを用いてIPMモータ51の機械角を判定する。間欠駆動部96は、検出されたロータ位置に応じて通電の切換を行なうことにより、IPMモータ51に、通電休止期間が設けられた通電角180°未満の間欠通電駆動をさせる。選択部97は、IPMモータ51の駆動方式を選択する。検出部98は、IPMモータ51の巻線のモータ端子に発生する誘起電圧を検出することでロータ位置すなわちロータの機械角を検出する。検出部98によって判定されたロータの機械角を表わす情報は、間欠通電駆動から180°通電駆動に切換わった後も保持される。この情報は、間欠駆動部96および選択部97を通じて180°駆動部95に出力される。マイクロコンピュータ93は、この情報に応じて180°通電駆動時に本実施の形態に係るトルク制御と駆動電圧の周波数補正とを行なう。なお、その他のハードウェア構成については前述の第1の実施の形態と同じである。それらについての機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰返さない。
【0133】
図22を参照して、マイクロコンピュータ57で実行されるプログラムは、IPMモータ51の制御に関し、以下のような制御構造を有する。
【0134】
S200にて、間欠駆動部96は、PWM作成部68に、IPMモータ51の各相の電圧と位相との指令値を表わすデータを出力する。PWM作成部68は、間欠駆動部96から出力されたデータに基づき、PWM波形信号をインバータ回路52に出力する。
【0135】
S202にて、間欠駆動部96は、ロータの回転が定常状態になるまで待つ。S204にて、検出部98は、ロータの機械角を検出する。本実施の形態において、検出部98が誘起電圧を検出する巻線は、間欠駆動部96が通電を休止させている巻線である。検出部98は、ロータの機械角が変化する速度から、ロータが回転する速度も算出する。検出部98は、ロータの機械角と時間とに基づいてロータがその機械角に到達したタイミングも検出する。検出部98は、IPMモータ51のロータの機械角とロータがその機械角に到達したタイミングとを180°駆動部95の機械角判定部に出力する。
【0136】
S206にて、選択部97は、IPMモータ51の制御を180°駆動部95による180°通電駆動に切替える。
【0137】
S208にて、180°駆動部95は、IPMモータ51を強制励磁駆動するように制御する。その制御の方法は、ロータの機械角の算出方法を除いて第1の実施の形態と同様である。本実施の形態におけるロータの機械角の算出方法は以下の通りである。180°駆動部95の機械角判定部は、ロータの機械角の変動量を算出する。変動量は、ロータの電気角をIPMモータ51の極数の半分で除算した値である。たとえば3相4極モータの場合、電気角が2度変化するたびに機械角は1度変化する。変動量は、検出部98がロータの機械角を特定したタイミング以降について算出される。変動量が算出されると、機械角判定部は、間欠駆動部96が機械角判定部に出力したロータの機械角に、その変動量を加減して、ロータの機械角を判定する。
【0138】
S210にて、選択部97は、IPMモータ51の回転速度を切替える指示を受けたか否かを判断する。回転速度を切替える指示を受けたと判断した場合には(S210にてYES)、処理はS212へと移される。もしそうでないと(S210にてNO)、処理はS208へと移される。S212にて、180°駆動部95は、IPMモータ51の回転速度を切替える。
【0139】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、駆動装置300の動作について説明する。
【0140】
間欠駆動部96は、PWM作成部68に、IPMモータ51の各相の電圧と位相との指令値を表わすデータを出力する(S200)。データが出力されると、間欠駆動部96は、ロータの回転が定常状態になるまで待つ(S202)。
【0141】
ロータの回転が定常状態になると、検出部98は、IPMモータ51のロータの機械角とロータがその機械角に到達したタイミングとを180°駆動部95の機械角判定部に出力する。(S204)。機械角とタイミングとが出力されると、選択部97は、IPMモータ51の制御を180°駆動部95による180°通電駆動に切替える(S206)。切替えられると、180°駆動部95は、IPMモータ51を制御する(S208)。
【0142】
IPMモータ51が制御されると、選択部97は、IPMモータ51の回転速度を切替える指示を受けたか否かを判断し(S210)、回転速度を切替える指示を受けると(S210にてYES)、IPMモータ51の回転速度を切替える(S212)。
【0143】
以上のようにして、本実施の形態に係る駆動装置300は、間欠通電駆動によって得られたロータの機械角に基づいてIPMモータ51を制御することができる。間欠通電駆動によって得られたデータを用いるので、IPMモータの巻線電流の位相などに基づいてロータの機械角を検出する場合よりもノイズの影響が小さい。ノイズの影響が小さいので精度が高くなる。その結果、高精度でIPMモータの駆動を制御できる制御装置を提供できる。
【0144】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る駆動装置の全体構成図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るシングルロータリ型圧縮機とスクロール型圧縮機との負荷トルク特性を表わす図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るトルク補正量のデータの例を説明する図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における、3相4極ブラシレスモータの場合の各ステートの機械角と電気角との関係を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る、モータ効率と位相差情報およびモータ駆動電圧との特性を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る位相差情報とモータの駆動電圧との関係を表わす図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る周波数記憶部が記憶する補正量について説明する図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係るIPMモータ51の駆動処理の制御の手順を示す第1のフローチャートである。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係るIPMモータ51の駆動処理の制御の手順を示す第2のフローチャートである。
【図10】本発明の第1の実施の形態に係る位相期間を表わす概念図である。
【図11】本発明の第1の実施の形態に係る3相4極ブラシレスモータのロータ1回転中のステートと負荷トルクと1相分の巻線電流との関係を示す図である。
【図12】本発明の第1の実施の形態に係る3相6極ブラシレスモータのロータ1回転中のステートと負荷トルクと1相分の巻線電流との関係を示す図である。
【図13】本発明の第1の実施の形態における、3相6極ブラシレスモータの場合の各ステートの機械角と電気角との関係を示す図である。
【図14】本発明の第1の実施の形態に係るシングルロータリ型圧縮機の位相差情報−効率特性を表わす図である。
【図15】従来例に係るトルク制御を行なった場合の、1回転中の負荷変動の大きいシングルロータリ型圧縮機モータの負荷トルクと1相分のモータ駆動電圧と角速度との関係を示す図である。
【図16】本発明の第1の実施の形態に係るトルク制御を行なった場合の、1回転中の負荷変動の大きいシングルロータリ型圧縮機モータの負荷トルクと1相分のモータ駆動電圧と角速度との関係を示す図である。
【図17】従来例に係るトルク制御を行なった場合の、1回転中の負荷変動の大きいシングルロータリ型圧縮機モータの負荷トルクと1相分のモータ駆動電圧と位相差情報との関係を示す図である。
【図18】本発明の第1の実施の形態に係るトルク制御を行なった場合の、1回転中の負荷変動の大きいシングルロータリ型圧縮機モータの負荷トルクと1相分のモータ駆動電圧と位相差情報との関係を示す図である。
【図19】本発明の第2の実施の形態に係る駆動装置の全体構成図である。
【図20】本発明の第2の実施の形態に係るIPMモータ51の駆動処理の制御の手順を示すフローチャートである。
【図21】本発明の第3の実施の形態に係る駆動装置の全体構成図である。
【図22】本発明の第3の実施の形態に係るIPMモータ51の駆動処理の制御の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
51 IPMモータ、52 インバータ回路、53 コンバータ回路、54 交流電源、55 電流センサ、56 電流アンプ、57,93 マイクロコンピュータ、60,98 検出部、61 位相差記憶部、62 加算器、63 PI演算部、65 設定部、66 正弦波記憶部、67 正弦波データ作成部、68PWM作成部、70 機械角判定部、72 トルク記憶部、75 第1乗算器、80 周波数記憶部、85 第2乗算器、90 抵抗、91 DC電流アンプ、95 180°駆動部、96 間欠駆動部、97 選択部、100,200,300 駆動装置。
【発明の属する技術分野】
この発明は同期モータの駆動を制御する技術に関し、特に、トルク変動が大きい負荷に接続された同期モータの通電タイミングを制御できる制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
モータの駆動方法において180°通電駆動方法とは、巻線電流波形に通電休止期間を設けずに同期モータの駆動を制御する方法をいう。この方法においては、モータ駆動電圧と巻線電流との位相差を制御する。
【0003】
特開2001−112287公報(特許文献1)は、180°通電駆動方法によりモータを制御および駆動する場合において、巻線電流の変動による位相差の検出精度の低下を抑制する技術を開示する。この公報に開示されたモータ制御装置は、複数相のモータコイルを備えた同期モータの駆動を制御するモータ制御装置である。
【0004】
このモータ制御装置は、回転速度の設定のための指令が与えられたことに応じて、同期モータを駆動するための駆動波データを複数相の各相ごとに作成する駆動波データ作成回路と、複数相のうちのいずれかの特定相のモータ電流を検出してモータ電流信号を出力するモータ電流検出回路と、駆動波データ作成回路によって作成された駆動波データから特定相のモータ駆動電圧の位相を検出し、モータ電流検出回路から出力されたモータ電流信号との位相差を検出して位相差情報を出力する位相差検出回路と、位相差検出回路から出力される位相差情報を目標の値に制御するためのデューティ基準値を算出する位相差制御回路と、駆動波データ作成回路から出力される各相の駆動波データと位相差制御回路から出力されるデューティ基準値とを乗算して、各相ごとの出力デューティを算出するデューティ算出回路と、複数のスイッチング素子を含み、デューティ算出回路によって算出された各相ごとの出力デューティにしたがって駆動信号を生成して各スイッチング素子の導通を制御し、各モータコイルに通電を行なうインバータとを含む。位相差検出回路は、特定相のモータ駆動電圧の位相を基準とした2個所の位相期間中のモータ電流信号面積をそれぞれの位相期間で求め、2個所の位相期間中のモータ電流信号面積の面積比を算出して、これを位相差情報とすることを特徴とする。
【0005】
このモータ制御装置によると、インバータはモータ駆動電圧の位相とモータ電流との位相差を2個所の位相期間のモータ電流の積算値同士の比として検出し、この位相差情報が目標値となるように制御する。ロータとステータとの相対位置は、モータ駆動電圧の位相とモータ電流との位相差によって決まる。これにより、位相差検出回路がロータ位置センサを用いることなく間接的にロータとステータとの相対位置を検知できるので、インバータは通電タイミングを制御できる。通電タイミングが間接的に制御されるので、インバータは、180°通電駆動方法を用いて高い効率が得られる通電タイミングでモータを駆動することができる。その結果、モータ効率の向上、低騒音および低振動を実現できるモータの制御装置を提供することができる。
【0006】
特開平8−322275号公報(特許文献2)は、負荷トルク変動の大きい負荷に接続した際の、負荷トルクとモータの出力トルクとの差に起因して生じていた振動を小さくする技術を開示する。負荷トルク変動の大きい負荷の例には、たとえば空気調和機や冷蔵庫などの商品の圧縮機として広く使用されているシングルロータリ型圧縮機やレシプロ型圧縮機など(以下、これらを「シングルロータリ型圧縮機」と呼ぶ)などがある。
【0007】
この公報に開示されたモータ制御装置は、負荷トルクの大きさが1回転中で時々刻々変動する機器に接続されたモータを制御するモータ制御装置である。このモータ制御装置は、モータのロータの1回転中の回転位置を検出する検出装置と、検出装置から出力された位置情報に基づいてロータの1回転中における機器の負荷トルクの大きさを算出する算出回路と、算出回路の出力に基づいてモータに供給される電流および電圧のうち少なくとも一方を、負荷トルクの大きさが1回転中で時々刻々変動する機器の負荷トルクとモータの出力トルクとが等しくなるように時々刻々制御する制御回路とを含む。
【0008】
このモータ制御装置によると、制御回路は位置情報に基づいて演算したロータの1回転中における機器の負荷トルクに応じたモータトルクを出力させる。これにより、モータ制御装置はモータの負荷トルク変動の影響を低減させることができる。その結果、低振動化できるモータ制御装置を提供することができる。
【0009】
【特許文献1】
特開2001−112287公報(第5−7頁)
【0010】
【特許文献2】
特開平8−322275号公報(第3頁)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前述の公報に開示された装置には、以下のような問題がある。
【0012】
特開2001−112287公報で開示されたモータ制御装置は、同一回転条件下において、制御が可能となる装置である。特別な制御がない場合、モータを同一の回転速度で駆動するためには、同期モータに接続される負荷が一定(負荷トルク変動小)であることを必要とする。敢えて負荷トルク変動が大きい負荷に接続された同期モータを制御させた場合、負荷トルクの影響によりロータの回転速度は変動する。回転速度が変動するので、位相差情報は想定される値から大きく変動する。位相差情報が変動するので、モータ制御装置は負荷トルク変動に対応して同期モータを制御することができない。同期モータを制御できないので、同期モータの発生トルクは低下する。最終的には位相差情報がモータ駆動可能な範囲から外れ、モータ駆動自体が不可能になり、同期モータが停止する(以下、「モータ脱調」と称する)。
【0013】
特開平8−322275号公報で開示されたモータ制御装置は、負荷トルク変動が大きい負荷に接続されたモータであっても駆動できるが、ロータ位置を検知するセンサを必要とする。しかし負荷トルク変動が大きい負荷に接続されたモータは、一般に特別な雰囲気下で駆動されることが多い。そのような雰囲気でセンサを使用するためには、そのセンサに特別な対策を施す必要がある。このため、コストが増加する。
【0014】
本発明は、上述の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、ロータ位置を検知するセンサを用いずに、負荷トルクの変動が大きい負荷に接続されたモータを高い効率で制御するモータの制御装置、その制御装置を用いた空気調和機および冷蔵庫を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
第1の発明に係るモータの制御装置は、複数相のコイルを備えた、同期モータを制御するための制御装置である。このモータの制御装置は、複数相のうちのいずれかの特定相の電流を検出するための第1の検出手段と、電流の脈動に基づいて同期モータの回転子の機械角を検出するための第2の検出手段と、各相における、補正前の電圧データを各相ごとに作成するための作成手段と、複数のスイッチング素子を含み、制御データに基づいて、各スイッチング素子の導通を制御し、各コイルに通電するための通電手段と、機械角に対応し、電圧データを補正する第1の補正値を記憶するための第1の記憶手段と、通電手段を制御するための制御手段とを含む。制御手段は、特定相の電圧において、予め定められた位相を基準とした、同じ長さの期間における、特定相の電流の積算値同士の比率を算出するための第1の算出手段と、第1の算出手段により算出された比率を目標の比率に制御するように、電圧データを補正する第2の補正値を算出するための第2の算出手段と、各相の電圧データと第1の補正値と第2の補正値とに基づいて、各相ごとの制御データを算出するための第3の算出手段とを含む。
【0016】
第1の発明によると、第1の算出手段は特定相の電圧のたとえば90°といった予め定められた位相を基準とした、長さが等しい2個所の期間における、特定相の電流の積算値同士の比率すなわち位相差情報を算出する。第3の算出手段は、電圧データ、電流の脈動により検出された機械角に対応する第1の補正値、および位相差情報を目標の値に制御するように算出された第2の補正値に基づいて、各相ごとの制御データを算出する。これにより、第3の算出手段は、電圧データと第1の補正値と第2の補正値とに基づいて、同期モータの回転子の機械角に対応し、かつ位相差情報が目標値となるように各相ごとの制御データを算出することができる。同期モータにかかる負荷の変動が回転子の機械角の変動に対応する場合、第3の算出手段が回転子の機械角に対応するように制御データを算出することは、同期モータにかかる負荷に対応するように制御データを算出することに等しい。同期モータの回転子の機械角に対応するように制御データが作成されると、通電手段は、その制御データにより、同期モータにかかる負荷に対応し、かつ位相差情報が目標値となるように各スイッチング素子を制御できる。位相差情報が変化すると、同期モータの効率は変化する。同期モータの効率が変化するので、位相差情報が目標値となるように各スイッチング素子が制御されると、同期モータは目標値に対応する効率で駆動される。目標値に対応する効率で駆動されるので、同期モータが最高の効率となるように目標値が設定されると、同期モータは最高の効率で駆動される。その結果、ロータ位置を検知するセンサを用いずに、負荷トルクの変動が大きい負荷に接続されたモータを最高の効率で制御するモータの制御装置を提供できる。
【0017】
第2の発明に係るモータの制御装置は、複数相のコイルを備えた、同期モータを制御するための制御装置である。このモータの制御装置は、複数のスイッチング素子を含み、制御データに基づいて、各スイッチング素子の導通を制御し、各コイルに通電するための通電手段と、複数相のうちのいずれかの特定相の電流を検出するための第1の検出手段と、通電手段に供給される直流電流の脈動に基づいて同期モータの回転子の機械角を検出するための第2の検出手段と、直流電流を検出するための第3の検出手段と、各相における、補正前の電圧データを各相ごとに作成するための作成手段と、機械角に対応し、電圧データを補正する第1の補正値を記憶するための第1の記憶手段と、通電手段を制御するための制御手段とを含む。制御手段は、特定相の電圧において、予め定められた位相を基準とした、同じ長さの期間における、特定相の電流の積算値同士の比率を算出するための第1の算出手段と、第1の算出手段により算出された比率を目標の比率に制御するように、電圧データを補正する第2の補正値を算出するための第2の算出手段と、各相の電圧データと第1の補正値と第2の補正値とに基づいて、各相ごとの制御データを算出するための第3の算出手段とを含む。
【0018】
第2の発明によると、第1の算出手段は特定相の電圧のたとえば90°といった予め定められた位相を基準とした、長さが等しい2個所の期間における、特定相の電流の積算値同士の比率すなわち位相差情報を算出する。第2の検出手段は、通電手段に供給される直流電流の脈動を用いて機械角を検出する。第3の算出手段は、電圧データ、電流の脈動により検出された機械角に対応する第1の補正値、および位相差情報を目標の値に制御するように算出された第2の補正値に基づいて、各相ごとの制御データを算出する。これにより、交流電流とは異なり、電流値の規則的な変動がない直流電流の脈動に基づいて機械角が検出されるので、第2の検出手段は脈動を容易に検出できる。脈動が容易に検出されるので、第2の検出手段は精度よく機械角を検出できる。精度よく機械角が検出されるので、第3の算出手段は、電圧データを基に、同期モータの回転子の機械角に精度よく対応し、かつ位相差情報が目標値となるように制御データを算出することができる。同期モータにかかる負荷の変動が回転子の機械角の変動に対応する場合、第3の算出手段が回転子の機械角に対応するように制御データを算出することは、同期モータにかかる負荷に対応するように制御データを算出することに等しい。同期モータの回転子の機械角に精度よく対応するように制御データが作成されると、通電手段は、その制御データにより、同期モータにかかる負荷に精度よく対応し、かつ位相差情報が目標値となるように各スイッチング素子を制御できる。位相差情報が変化すると、同期モータの効率は変化する。同期モータの効率が変化するので、位相差情報が目標値となるように各スイッチング素子が制御されると、同期モータは目標値に対応する効率で駆動される。目標値に対応する効率で駆動されるので、同期モータが最高の効率となるように目標値が設定されると、同期モータは最高の効率で駆動される。その結果、ロータ位置を検知するセンサを用いずに、負荷トルクの変動が大きい負荷に接続されたモータを最高の効率で精度よく制御するモータの制御装置を提供できる。
【0019】
第3の発明に係るモータの制御装置は、第1または第2の発明の構成に加え、第1の記憶手段は、回転子1回転分の機械角を同期モータの固定子の配置に基づいて特定する範囲ごとに第1の補正値を記憶するための手段を含む。
【0020】
第3の発明によると、記憶手段は、機械角を同期モータの固定子の配置に基づいて特定する範囲ごとに第1の補正値を記憶する。同期モータのトルクは電力と磁力との相互作用により発生する。電力と磁力との相互作用によりトルクが発生するので、トルクは電力と磁力とが変化する範囲ごとに変動する。電力と磁力とが変化する範囲は同期モータの固定子の配置に基づいて特定できる。これにより、記憶手段が同期モータの固定子の配置に基づいて特定する範囲ごとに第1の補正値を記憶すると、第3の算出手段はより負荷に対応した制御データを算出できる。より負荷に対応した制御データが算出されると、通電手段はより確実に各スイッチング素子を制御できる。より確実に各スイッチング素子が制御されると、同期モータはより確実に目標値に対応する効率で駆動される。その結果、ロータ位置を検知するセンサを用いずに、負荷トルクの変動が大きい負荷に接続されたモータをより確実に最高の効率で制御するモータの制御装置を提供できる。
【0021】
第4の発明に係るモータの制御装置は、第3の発明の構成に加え、固定子の配置に基づいて特定する範囲の数は、同期モータの相数と極数との積に等しい数である。
【0022】
第4の発明によると、記憶手段は、同期モータの相数と極数との積に等しい数で分割された、固定値の配置に基づいて特定される範囲ごとに第1の補正値を記憶する。同期モータのトルクは電力と磁力との相互作用により発生する。電力と磁力との相互作用によりトルクが発生するので、トルクは電力と磁力とが変化する範囲ごとに変動する。電力と磁力との変化はモータの相数と極数とから相乗効果を受けるので、電力と磁力とが変化する範囲の数はモータの相数と極数との積に等しくなる。これにより、モータの相数と極数との積に等しい数に分割された、同期モータの固定子の配置に基づいて特定される範囲に対応して補正値が記憶されると、第3の算出手段は一層確実に負荷に対応した制御データを算出できる。一層確実に負荷に対応した制御データが算出されると、通電手段は一層確実に各スイッチング素子を制御できる。一層確実に各スイッチング素子が制御されると、同期モータは一層確実に目標値に対応する効率で駆動される。その結果、ロータ位置を検知するセンサを用いずに、負荷トルクの変動が大きい負荷に接続されたモータを一層確実に最高の効率で制御するモータの制御装置を提供できる。
【0023】
第5の発明に係るモータの制御装置は、第1から第4のいずれかの発明の構成に加え、第3の算出手段は、電圧データと第1の補正値と第2の補正値とを演算して、制御データを算出するための手段を含む。
【0024】
第5の発明によると、第3の算出手段は、電圧データと、第1の補正値と、第2の補正値とを演算して、制御データを算出する。これにより、たとえばデータテーブルを参照し、補正値同士の関係により係数を特定し、電圧データに加算して制御データが算出されるといった場合に比べ、制御データの算出に必要な構成が簡略化される。その結果、簡略化された構成で、ロータ位置を検知するセンサを用いずに、負荷トルクの変動が大きい負荷に接続されたモータを最高の効率で制御するモータの制御装置を提供できる。
【0025】
第6の発明に係るモータの制御装置は、第5の発明の構成に加え、第3の算出手段は、電圧データに、第1の補正値と第2の補正値とを乗算して、制御データを算出するための手段を含む。
【0026】
第6の発明によると、第3の算出手段は、電圧データに、第1の補正値と第2の補正値とを乗算して制御データを算出する。補正値を乗算して電圧データが求められると、補正値の変動幅は補正前の電圧データの値に応じて変化し、たとえば補正前の電圧データの値がゼロの場合、補正後の電圧データの値もゼロになる。これにより、第3の算出手段は、電圧がゼロになるタイミングを変えずに電圧値を変えることができる。電圧値がゼロになるタイミングが変えられないと、通電手段が同期モータの各相に通電するタイミングは変化しない。通電手段が同期モータの各相に通電するタイミングが変化しないので、第3の算出手段は通電手段が同期モータに通電するタイミングに悪影響を与えないように制御データを算出できる。同期モータに通電するタイミングに悪影響を与えないように制御データが算出されると、そのような悪影響が与えられる場合に比べ、第1の記憶手段が記憶すべき補正値の種類は少なくなる。そのような悪影響を打消すために補正値を詳細に使い分ける必要性がなくなるからである。補正値の種類が少なくなると、第1の記憶手段の構成はより簡略化される。その結果、より簡略化された構成で、ロータ位置を検知するセンサを用いずに、負荷トルクの変動が大きい負荷に接続されたモータを最高の効率で制御するモータの制御装置を提供できる。
【0027】
第7の発明に係るモータの制御装置は、第1から第6の発明の構成に加え、第2の検出手段は、電流の脈動の複数のピークを比較して、ピークに対応する機械角を検出するための手段を含む。
【0028】
第7の発明によると、第2の検出手段は、電流の脈動のピークを比較する。同期モータには回転子の機械角に対応する負荷がかかるので、特定相の電流は負荷に応じて脈動する。特定相の電流が負荷に応じて脈動すると、第2の検出手段は脈動から機械角を検出できる。これにより、第2の検出手段は第1の検出手段を利用して機械角を検出するので、機械角を検出するための専用の装置を必要としなくなる。機械角を検出するための専用の装置が必要とされないので、制御装置全体の構成は簡略化する。その結果、ロータ位置を検知するセンサを用いずに、簡単な構成で負荷トルクの変動が大きい負荷に接続されたモータを最高の効率で制御するモータの制御装置を提供できる。
【0029】
第8の発明に係るモータの制御装置は、第7の発明の構成に加え、第2の検出手段は、ピークの最大値とその他のピークの値とを比較して、機械角を検出するための手段を含む。
【0030】
第8の発明によると、第2の検出手段は、脈動のピークの最大値とその他の値とを比較して、機械角を検出する。脈動が最大値となるピークは、それ以外のピークに比べて脈動による変動が大きいので、誤検出される可能性が少ない。これにより、最大値を含まないピーク同士を比較した場合に比べ、相対的に特定の機械角を検出できる確率が高まる。その結果、ロータ位置を検知するセンサを用いずに、簡単な構成で負荷トルクの変動が大きい負荷に接続されたモータを最高の効率で確実に制御するモータの制御装置を提供できる。
【0031】
第9の発明に係るモータの制御装置は、第8の発明の構成に加え、その他のピークは、値が最小となるピークである。
【0032】
第9の発明によると、第2の検出手段は、脈動のピークの最大値と最小値とを比較して、機械角を検出する。これにより、第2の検出手段は、最大値と最小値とではないピーク同士を比較する場合に比べ、少ない誤差で機械角を検出できる。その結果、ロータ位置を検知するセンサを用いずに、簡単な構成で負荷トルクの変動が大きい負荷に接続されたモータを最高の効率でさらに確実に制御するモータの制御装置を提供できる。
【0033】
第10の発明に係るモータの制御装置は、第1から第9のいずれかの発明の構成に加え、第1の記憶手段は、機械角の範囲の1つに対して複数の第1の補正値を記憶するための手段を含む。制御手段は、複数の第1の補正値のうち、同期モータの駆動に関する条件に基づいて第3の算出手段が用いる第1の補正値の1つを選択するための第1の選択手段をさらに含む。
【0034】
第10の発明によると、第1の選択手段は、第1の記憶手段に記憶された複数の第1の補正値のうち、たとえば負荷トルクの平均値の大小といった同期モータの駆動に関する条件に基づいて1つを選択する。これにより、第1の選択手段は、同期モータの駆動に関する条件に応じて、的確な第1の補正値を選択することができる。第3の算出手段は、的確な第1の補正値を用いて制御値を算出することができる。その結果、ロータ位置を検知するセンサを用いずに、負荷トルクの変動が大きい負荷に接続されたモータを高い効率で的確に制御するモータの制御装置を提供できる。
【0035】
第11の発明に係るモータの制御装置は、第10の発明の構成に加え、制御装置は、回転子の回転速度を特定するための手段をさらに含む。第1の記憶手段は、回転速度に応じて定められた複数の第1の補正値を記憶するための手段を含む。第1の選択手段は、回転速度の大小を駆動に関する条件として、第1の補正値の1つを選択するための手段を含む。
【0036】
第11の発明によると、第1の選択手段は、特定された回転速度の大小に基づいて第1の補正値を選択する。同期モータの制御において、位相差情報は同期モータの回転速度の影響を受ける。回転速度に基づいて第1の補正値が選択されると、制御データの算出において回転速度の影響が打消される。これにより、第3の算出手段は、より適切な制御データを算出できる。その結果、ロータ位置を検知するセンサを用いずに、負荷トルクの変動が大きい負荷に接続されたモータを最高の効率でより適切に制御するモータの制御装置を提供できる。
【0037】
第12の発明に係るモータの制御装置は、第1から第11のいずれかの発明の構成に加え、制御装置は、機械角に対応して、回転子の回転速度の変動を抑制するように回転速度を補正する抑制データを記憶するための第2の記憶手段をさらに含む。作成手段は、機械角に対応する抑制データに基づいて、電圧データを作成するための手段を含む。
【0038】
第12の発明によると、作成手段は、抑制データに基づいて電圧データを作成する。これにより、位相差情報のみを制御する場合に比べ、通電手段は回転速度の変動をより効果的に抑制することができる。回転速度の変動がより効果的に抑制されるので、回転速度の変動による振動や騒音はより効果的に抑制される。その結果、ロータ位置を検知するセンサを用いずに、負荷トルクの変動が大きい負荷に接続されたモータを最高の効率で制御することに加え、同期モータの振動や騒音をより効果的に抑制できる制御装置を提供できる。
【0039】
第13の発明に係るモータの制御装置は、第12の発明の構成に加え、第2の記憶手段は、機械角の1つの値に対して複数の抑制データを記憶するための手段を含む。制御手段は、複数の抑制データのうち、同期モータの駆動に関する条件に基づいて作成手段が用いる1つの抑制データを選択するための第2の選択手段をさらに含む。
【0040】
第13の発明によると、第2の選択手段は、第2の記憶手段に記憶された複数の抑制データのうち、たとえば負荷トルクの平均値の大小といった同期モータの駆動に関する条件に基づいて1つを選択する。これにより、第2の選択手段は、同期モータの駆動に関する条件に応じて、的確な抑制データを選択することができる。作成手段は、的確な抑制データを用いて電圧データを作成することができる。その結果、ロータ位置を検知するセンサを用いずに、負荷トルクの変動が大きい負荷に接続されたモータを最高の効率で制御することに加え、振動や騒音をさらに効果的に抑制できる制御装置を提供できる。
【0041】
第14の発明に係るモータの制御装置は、第13の発明の構成に加え、制御手段は、回転子の回転速度を特定するための手段をさらに含む。第2の記憶手段は、回転速度に応じて定められた複数の抑制データを記憶するための手段を含む。第2の選択手段は、回転速度の大小を駆動に関する条件として、抑制データの1つを選択するための手段を含む。
【0042】
第14の発明によると、第2の選択手段は、特定された回転速度の大小に基づいて抑制データの1つを選択する。同期モータの制御において、最適な抑制データは同期モータの回転速度ごとに異なる。回転速度に基づいて抑制データが選択されると、作成手段による電圧データの作成において回転速度の影響が的確に打消される。これにより、作成手段は、より適切な電圧データを作成できる。その結果、ロータ位置を検知するセンサを用いずに、負荷トルクの変動が大きい負荷に接続されたモータを最高の効率で制御することに加え、振動や騒音を一層効果的に抑制できる制御装置を提供できる。
【0043】
第15の発明に係るモータの制御装置は、第1から第14のいずれかの発明の構成に加え、制御装置は、同期モータの、回転速度に関する条件が満足されたことに応答して、制御手段に制御を開始させるための手段をさらに含む。
【0044】
第15の発明によると、同期モータの回転速度に関する条件が満足されたことに応答して、第1の制御手段による位相差情報についての制御が開始される。これにより、制御装置は特に位相差情報についての制御を必要としない時は制御せず、真に必要なときだけ制御することができる。その結果、真に必要なときだけ同期モータにかかる負荷に対応し、ロータ位置を検知するセンサを用いずに、簡単な構成で負荷トルクの変動が大きい負荷に接続されたモータを最高の効率で制御するモータの制御装置を提供できる。
【0045】
第16の発明に係るモータの制御装置は、第1から第15のいずれかの発明の構成に加え、同期モータは、埋込み磁石型同期モータである。
【0046】
第16の発明によると、同期モータは、埋込み磁石型同期モータである。埋込み磁石型同期モータは、位相差情報を的確に制御することにより、通常の同期モータに比べてより大きなトルクを得ることができる。これにより、通電手段は、他の種類の同期モータを使用する場合に比べより高い効率で同期モータを制御できる。その結果、ロータ位置を検知するセンサを用いずに、簡単な構成で負荷トルクの変動が大きい負荷に接続されたモータをより高い効率で制御するモータの制御装置を提供できる。
【0047】
第17の発明に係るモータの制御装置は、第1から第16のいずれかの発明の構成に加え、コイルのいずれかへの通電を休止するように通電手段を制御するための手段と、コイルへの通電が休止されている期間に、コイルに生じた誘起電圧を検出するための第4の検出手段とをさらに含む。第2の検出手段は、誘起電圧を用いて特定された、機械角と電流の脈動との関係に基づいて、機械角を検出するための手段を含む。
【0048】
第17の発明によると、第2の検出手段は、機械角と電流の脈動との関係に基づいて、機械角を検出する。機械角と電流の脈動との関係は、第4の検出手段によって検出される。これにより、第2の検出手段は、高い精度で機械角を検出できる。機械角の精度が高くなると、第3の算出手段は、モータの効率が高くなるように制御データを算出できる。その結果、ロータ位置を検知するセンサを用いずに、簡単な構成で負荷トルクの変動が大きい負荷に接続されたモータを高い効率で制御するモータの制御装置を提供できる。
【0049】
第18の発明に係る空気調和機は、第1から第17のいずれかの発明に係るモータの制御装置を含む。
【0050】
第18の発明によると、モータの制御装置は、同期モータの電圧や電流を制御する。これにより、同期モータの駆動が最適なタイミングで制御され、モータの効率が向上するので、空気調和機の効率も向上する。その結果、より高い効率で稼動する空気調和機を提供することができる。
【0051】
第19の発明に係る冷蔵庫は、第1から第17のいずれかの発明に係るモータの制御装置を含む。
【0052】
第19の発明によると、モータの制御装置は、同期モータの電圧や電流を制御する。これにより、同期モータの駆動がより的確なタイミングで制御されるので、冷蔵庫に内蔵された圧縮機の効率が向上する。圧縮機の効率が向上されると、冷蔵庫の効率が向上する。その結果、より高い効率で稼動する冷蔵庫を提供することができる。
【0053】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0054】
<第1の実施の形態>
図1を参照して、本実施の形態に係る駆動装置100は、IPM(Interior Permanent Magnet)モータ51と、IPMモータ51に接続され、IPMモータ51を駆動するインバータ回路52と、インバータ回路52に接続され、交流電力を直流電力に変換して供給するコンバータ回路53と、コンバータ回路53に接続され、交流電力を供給する交流電源54と、IPMモータ51の巻線端子U、V、Wの各相のうち特定の相(図1ではU相)に流れる巻線電流を検出し、信号を出力する電流センサ55と、電流センサ55に接続され、電流センサ55が出力した信号に対して所定量の増幅およびオフセット加算を行ない、巻線電流信号を出力する電流アンプ56と、電流アンプ56に接続されるマイクロコンピュータ57とを含む。
【0055】
IPMモータ51は、逆起電圧パルスなどを検出して速度を制御する方式とは異なり、いわゆる強制励磁駆動により制御される。強制励磁駆動とは、モータの回転速度をモータ巻線に通電するPWM(Pulse−Width Modulation)波からなる正弦波電圧の周波数で決定する駆動方式をいう。IPMモータ51を駆動する電流の波形は特に特定されないが、ロータの磁束分布に合わせた巻線電流が得られるような波形であれば、より高効率に駆動される。本実施の形態において、IPMモータ51は、変化が滑らかなため、電流を供給することにより振動や騒音を少なくできる正弦波を用いて駆動される。
【0056】
IPMモータ51は、同期モータの一種で、ロータ内部に永久磁石を埋め込んで配置した埋込み磁石型ブラシレスモータである。本実施の形態において、IPMモータ51は、3相4極ブラシレスモータである。これにより、駆動の際、磁石磁束および巻線電流によって発生するフレミングトルクと、ロータ形状によってモータ巻線のインダクタンスが変化することを利用したリラクタンストルクとが合成される。その結果、IPMモータは他の同期モータに比べて大きなトルクが得られるため、モータの高効率化が可能である。フレミングトルクとリラクタンストルクとはそれぞれロータとステータとの相対位置の関数となっている。フレミングトルクとリラクタンストルクとの和を最大とするには、ロータとステータとの相対位置が適当な時にモータ巻線へ通電することが必要である。
【0057】
IPMモータ51には、シングルロータリ型圧縮機(図示せず)が負荷として接続される。シングルロータリ型圧縮機は、冷蔵庫(図示せず)の冷媒または空気調和機(図示せず)の空気を圧縮する圧縮機である。図2を参照して、シングルロータリ型圧縮機とスクロール型圧縮機との負荷トルク特性を説明する。シングルロータリ型圧縮機の特徴は、構造が簡単で製造コストが安価である反面、負荷トルク変動が非常に大きいことである。シングルロータリ型圧縮機は、モータ1回転の間に冷媒の吸入、圧縮、吐出というサイクルを順次繰返す。吐出の直前は冷媒が圧縮されているので負荷トルクは大きくなる。吐出の直後は冷媒が抜けているので負荷トルクは小さくなる。その結果、ロータの機械角に対応して負荷トルクが変動する。冷媒の吸入、圧縮、吐出を連続的に行なうスクロール型圧縮機はこのような負荷トルク変動を生じない。
【0058】
インバータ回路52は、複数のスイッチング素子を含む。このスイッチング素子の導通を制御することで、IPMモータ51の複数のモータ巻線に通電される。
【0059】
電流センサ55は、カレントトランスでもよいが、本実施の形態においては巻線とホール素子で構成されたいわゆる電流センサとする。
【0060】
マイクロコンピュータ57は、検出部60と、位相差記憶部61と、加算器62と、PI(Proportion Integral)演算部63と、設定部65と、正弦波記憶部66と、正弦波データ作成部67と、PWM作成部68と、機械角判定部70と、トルク記憶部72と、第1乗算器75と、周波数記憶部80と、第2乗算器85とを含む。
【0061】
検出部60は、位相差情報を算出する。位相差記憶部61は、位相差情報の目標値を記憶する。加算器62は位相差情報の目標値と検出部60から出力された位相差情報との誤差を表わす誤差データを算出し、PI演算部63に出力する。PI演算部63は、出力された誤差データに基づいて比例データ(P)および積分データ(I)を算出し、PWM波形信号の基となるPI制御信号を第1乗算器75に出力する。
【0062】
設定部65は、IPMモータ51の回転速度の指令値を設定する。正弦波記憶部66は、連続してグラフ上にプロットすると正弦波が表れるデータ列を記憶する。正弦波データ作成部67は、モータ巻線端子U、V、Wの各相に対応する、正弦波記憶部66に記憶された正弦波データをPWM作成部68に出力するとともに、U相のモータの駆動電圧の位相を表わす情報を検出部60に出力する。正弦波データは、正弦波記憶部66に記憶されたデータ列から、IPMモータ51の回転速度に応じて定められる間隔ごとに読出される。正弦波データは、モータ巻線端子U、V、Wの各相の電圧と位相との標準的な設定を特定するデータである。IPMモータ51の回転速度を高くする場合はこの間隔を大きくする。IPMモータ51の回転速度を低くする場合はこの間隔を小さくする。すなわち、モータ回転速度は、IPMモータ51の構造的なものを除外すると、PWMキャリア周波数とこの間隔とで決まる。正弦波記憶部66から巻線の各相ごとにデータを読出す際、読出されるデータの順番の差は、各相間の位相差に相当する。たとえば3相であれば、それぞれの相のデータの順番の差は、電気角で120°のずれに相当する。U相のモータの駆動電圧の位相を表わす情報は、U相の正弦波データに基づいて作成される。
【0063】
PWM作成部68はいわゆるPWM波形発生器を含む。本実施の形態においてPWM作成部68は、各相ごとの正弦波データおよび後述するデューティ基準値を乗算した結果に基づいてPWM波形信号を出力する。
【0064】
機械角判定部70は、巻線電流におけるIPMモータ51の1回転中の脈動を表わす脈動データからロータの機械角を検出し、ロータの機械角を表わすロータ情報をトルク記憶部72に出力する。
【0065】
トルク記憶部72は、メモリ(図示せず)とメモリに記憶された情報から適切なものを選択して出力する回路(図示せず)とを含む。トルク記憶部72は、予めロータの機械角に対応したステート毎のトルク補正量を記憶し、ロータの回転速度やロータ情報に応じたトルク補正量を第1乗算器75に出力する。ステートとは、ロータ1回転をたとえば電気角60°(=機械角30°)といった一定の範囲毎に分割したものをいう。ステートの範囲は、IPMモータ51のステータの配置に基づいて特定できる。図3を参照して、本実施の形態におけるトルク補正量のデータを説明する。本実施の形態の場合、モータトルクをPWMデューティにより制御するので、トルク記憶部72に記憶するトルク補正量とは、PWMデューティの補正量を表わす。振動の低減に適したトルクパターンは回転速度や負荷トルクにより変化するため、トルク記憶部72は複数の区分に分けられた回転速度や負荷トルク(本実施の形態では回転速度のみ)に応じて、複数のトルクパターンを記憶する。トルク記憶部72が回転速度に応じたトルクパターンを出力すると、制御性能は向上する。トルクパターンは相数と極数との積である12に分割された第0ステート〜第11ステートまでの12ステートを有する。ただし、第Sステートと第(S+6)ステート(S:0〜5の整数)のインバータ駆動電圧位相は同一である。図4に3相4極ブラシレスモータの場合の各ステートの機械角と電気角との関係を示す。トルク記憶部72がロータの回転速度を検知する方法は特に限定されないが、本実施の形態においては、機械角判定部70が検出するIPMモータ51のロータの機械角の時間的な変化に基づいて回転速度を検知するものとする。
【0066】
第1乗算器75は、PI演算部63から出力されたPI制御信号と、トルク記憶部72から出力された、ロータの機械角に対応するステートのトルク補正量とを乗算し、デューティ基準値をPWM作成部68に出力する。最終的にPWM作成部68に出力されるデューティ基準値は、図3のトルク補正量を用いて式(1)にしたがって算出される。
【0067】
デューティ基準値=トルク補正量×PI制御信号 ・・・・・(1)
図5および図6を参照して、PI制御信号にトルク補正量を乗じてデューティ基準値を算出する理由について説明する。図5はモータ効率と位相差情報およびモータ駆動電圧との特性を示す図である。図5(A)はシングルロータリーコンプレッサの負荷トルクが小さい場合を示し、図5(B)は負荷トルクが大きい場合を示す。モータに脱調を起こさせず、かつ高効率でモータを駆動させるためには、ロータへの通電タイミングが、ロータとステータとの相対位置に基づき、適切な値に制御される必要がある。通電タイミングが適切な値に制御されるためには、マイクロコンピュータ57は位相差情報を適切な値に制御する必要がある。本実施の形態でいう適切な値とは、図5に示す位相差範囲に含まれる値をいう。位相差情報が過小であると、IPMモータ51は負荷トルクを駆動するモータ発生トルクを出力できない。その結果モータ脱調が発生する。たとえば、図5(A)の位相差情報と図5(B)の位相差情報とが同じ値とすると、負荷トルクが小さい場合、IPMモータ51は高い効率で駆動するが、負荷トルクが大きい場合、モータ脱調を起こす。これは位相差情報の値が位相差範囲に含まれなくなるためである。
【0068】
図6は本実施の形態における位相差情報とモータの駆動電圧との関係を表わす図である。駆動電圧と位相差情報とには線形な関係があることが知られているので、位相差情報は、位相差情報=K(1)×駆動電圧+K(2)(K(1)、K(2)は相関係数)という式によって表わすことができる。相関係数K(1)、K(2)は負荷トルクなどの条件によって異なる。図6によると、位相差情報の値が一定の場合、負荷トルクが大きいと駆動電圧V(2)はV(1)より大きくなる。これに基づき、駆動電圧として適切な値が出力されると、マイクロコンピュータ57は位相差情報を適切な値に制御することができる。駆動電圧として適切な値が出力されるためには、マイクロコンピュータ57は駆動電圧の値を負荷トルクに基づいて定める必要がある。駆動電圧の値は、デューティ基準値によって定められる。これが、PI制御信号にトルク補正量を乗じてデューティ基準値を算出する理由である。
【0069】
周波数記憶部80は、メモリ(図示せず)とメモリに記憶された情報から適切なものを選択して出力する回路(図示せず)とを含む。周波数記憶部80は、予め記憶した駆動電圧の周波数を補正する補正量のうち、機械角判定部70から出力されたロータ情報およびロータ情報の単位時間あたりの変化率(回転速度)に対応する補正量を第2乗算器85に出力する。図7を参照して、周波数記憶部80が記憶する補正量について説明する。補正量の平均値は「1」となるように設定されている。これは、モータの回転速度の目標値から決定される、所定周期当たりの駆動電圧の周波数の平均値を一定とするためである。複数の領域に区分された回転速度に対応する複数の補正量パターンが記憶されているのは、高効率運転などに適した補正量パターンが回転速度や負荷トルクにより変化するためである。周波数記憶部80が回転速度に応じた補正量を出力することにより、制御性能は向上する。ただしモータの起動直後の場合、周波数記憶部80は補正量を出力しない。圧縮機の凝縮圧力と蒸発圧力の差圧が小さいため、シングルロータリ型圧縮機に接続されたIPMモータ51の回転中の負荷変動も小さくなる結果、IPMモータ51は駆動周波数の補正を必要としないからである。第2乗算器85は、設定部65からの出力値と周波数記憶部80から出力された補正量とを乗算し、正弦波データ作成部67に電圧の位相を表わす情報を出力する。
【0070】
このマイクロコンピュータ57は、コンピュータハードウェアと図示しない制御部により実行されるソフトウェアとにより実現される。一般的にこうしたソフトウェアは、FD(Flexible Disk)またはCD−ROM(Compact Disk−Read Only Memory)などの記録媒体に格納されて流通し、記録媒体として入力部(図示せず)により読込まれる。制御部は入力部に読込まれたソフトウェアを実行する。図1に示したハードウェア自体は一般的なものである。したがって、本発明の最も本質的な部分はFDやCD−ROMなどの記録媒体に記録されたソフトウェアである。
【0071】
図8および図9を参照して、マイクロコンピュータ57で実行されるプログラムは、IPMモータ51の制御に関し、以下のような制御構造を有する。
【0072】
ステップ(以下、ステップをSと略す。)100にて、検出部60は、設定部65が設定したIPMモータ51の回転速度の指令値を検出する。この回転速度の指令値は、正弦波データ作成部67を介して検出される。S102にて、検出部60は、IPMモータ51の回転速度の指令値が圧縮機の凝縮圧力と蒸発圧力の差圧が大きくなっているとして設計時に定められた回転速度まで上昇したか否かを判断する。IPMモータ51は、設定部65が設定した回転速度で回転する。設定部65が当初設定する回転速度は、最終的な回転速度より小さい。これは、IPMモータ51を安定して回転させるためである。IPMモータ51が回転を開始した後、設定部65は次第に回転速度の指令値を増加させる。設計時に定められた回転速度まで上昇したと判断した場合には(S102にてYES)、処理はS104へと移される。もしそうでないと(S102にてNO)、処理はS100へと移される。S104にて、検出部60は、ステートをいったん任意の方法で仮設定し、仮設定した第4ステートの巻線電流値IP(4)と第10ステートの巻線電流値IP(10)とを測定する。
【0073】
S106にて、検出部60は、巻線電流値IP(4)とIP(10)との差が、モータ回転速度に応じて予め定められるしきい値以上か否かを判断する。これは、比較する巻線電流値の差が小さい場合、巻線電流値の検出誤差が大きくなるので、ロータの機械角の判定が間違われる可能性が高いからである。しきい値以上と判断した場合には(S106にてYES)、処理はS108へと移される。もしそうでないと(S106にてNO)、処理はS104へと移される。
【0074】
S108にて、検出部60は、巻線電流値を測定し、巻線電流値IP(4)がIP(10)より大きいか否かを判断する。巻線電流値IP(4)がIP(10)より大きいと判断した場合には(S108にてYES)、処理はS110へと移される。もしそうでないと(S108にてNO)、処理はS112へと移される。
【0075】
S110にて、検出部60は、内部の第1レジスタ(図示せず)の値に「1」を加算するとともに、内部の第2レジスタ(図示せず)の値を「0」とする。S112にて、PWM作成部68は、内部の第2レジスタの値に「1」を加算するとともに、内部の第1レジスタの値を「0」とする。
【0076】
S114にて、検出部60は、S108〜S112の処理が数回繰返された結果、第1レジスタおよび第2レジスタのいずれかの値が、たとえば「3」といった予め定められた値以上となったか否かを判断する。予め定められた値以上と判断した場合には(S114にてYES)、処理はS116へと移される。もしそうでないと(S114にてNO)、処理はS118へと移される。
【0077】
S116にて、検出部60は、現在のステートの設定を正規の設定と決定する。S118にて、検出部60は、現在第10ステートに該当するロータの機械角が第4ステートとなるように、ステートの設定を機械角180°分シフトさせ、正規のステートの設定とする。
【0078】
S120にて、検出部60は、サンプリングタイミングTSを、正弦波データ作成部67から出力された情報に基づいて設定する。あわせて、サンプリング回数Nなどの各変数を初期化する。本実施の形態においては、サンプリングタイミングTSは、モータ駆動電圧の位相が90°を中心とする一定かつ対称なタイミングとなるように設定される。目標位相差の設定などの制御設計を容易にするためである。図10を参照して、位相期間について説明する。モータ駆動電圧がピークとなる位相を90°とする。この場合、第1の位相期間θ(0)はモータ駆動電圧の位相が0°〜90°となる期間である。第2の位相期間θ(1)はモータ駆動電圧の位相が90°〜180°となる期間である。本実施の形態においては位相期間の幅を90°としたが、その他の値であってもよく、特に限定されない。
【0079】
S122にて、検出部60は、内蔵するタイマのカウント周期に基づき、サンプリングするタイミングを待つ。S124にて、検出部60は、電流アンプ56を介し、電流センサ55を用いてIPMモータ51のU相の電流値を測定する。
【0080】
S126にて、検出部60は、サンプリング回数Nの値に「1」を加算する。S128にて、検出部60は、サンプリング回数Nの値に基づき、現在の位相期間がθ(0)か否かを判断する。現在の位相期間がθ(0)と判断した場合には(S128にてYES)、処理はS130へと移される。もしそうでないと(S128にてNO)、処理はS134へと移される。
【0081】
S130にて、検出部60は、サンプリング回数Nが予め定められた値(本実施の形態の場合3回)以上か否かを判断する。サンプリング回数Nが予め定められた値以上と判断した場合には(S130にてYES)、処理はS132へと移される。もしそうでないと(S130にてNO)、処理はS124へと移される。
【0082】
S132にて、検出部60は、位相期間θ(0)でのサンプリングが終了したものとして、電流サンプリングデータの積算を行ない、モータ電流信号面積S(0)(=I(0)+I(1)+I(2))を計算する。
【0083】
S134にて、検出部60は、サンプリング回数Nが予め定められた値(本実施の形態の場合6回)以上か否かを判断する。サンプリング回数Nが予め定められた値以上と判断した場合には(S134にてYES)、処理はS136へと移される。もしそうでないと(S134にてNO)、処理はS124へと移される。
【0084】
S136にて、検出部60は、位相期間θ(1)でのサンプリングが終了したものとして、電流サンプリングデータの積算を行ない、モータ電流信号面積S(1)(=I(3)+I(4)+I(5))を計算する。
【0085】
S138にて、検出部60は、モータ電流信号面積S(0)およびS(1)の計算が終了したか否かを判断する。計算が終了したと判断した場合には(S138にてYES)、処理はS140へと移される。もしそうでないと(S138にてNO)、処理はS124へと移される。
【0086】
S140にて、検出部60は、モータ電流信号面積S(0)およびS(1)の比(S(0)/S(1))を計算して位相差情報とし、加算器62に出力する。S142にて、機械角判定部70は、電流アンプ56を介し、電流センサ55を用いてIPMモータ51のU相におけるIPMモータ51回転中の脈動を表わす脈動データを読込む。
【0087】
S144にて、機械角判定部70は、脈動データに基づいてロータの機械角を検出し、ロータの機械角を表わすロータ情報をトルク記憶部72に出力する。S146にて、トルク記憶部72は、ロータの回転速度およびロータ情報に応じたトルク補正量を第1乗算器75に出力する。ロータの機械角を検出するのは、たとえば4極ブラシレスモータの場合、機械角180°および360°の場合に電気角が360°となるなど、ロータの電気角ではロータの位置を明確に検出できないからである。
【0088】
図11を参照して、3相4極ブラシレスモータにおいてロータの機械角を判別する方法を説明する。図11は、1回転中のステートと負荷トルクと巻線電流(1相分)との関係を示す図である。1回転中に大きく3つの過程(吸入、圧縮、吐出)の行程があるため、負荷トルクが大きく変動する。吸入状態から冷媒が圧縮されていくにしたがい負荷トルクは急激に増加し、吐出弁が開き冷媒が吐出されると、負荷トルクは減少する。この負荷トルク変動の影響で、巻線電流値も図11のIP(1)、IP(4)、IP(7)、IP(10)のように変動する。この現象から、機械角判定部70は、予め実験するなどして定められたステートの巻線電流値の大小とロータの機械角との関係を基に、ロータの機械角を判定する。比較対象とする巻線電流値の差が小さいと、その判定に誤りが生じる可能性が高まるので、機械角判定部70は、比較する巻線電流値の組合せを、インバータ駆動電圧位相が同一となる区間において最も差が大きくなる組合せとする。本実施の形態においては、第4ステートの巻線電流値IP(4)と第10ステートの巻線電流値IP(10)との差が最も大きくなるので、機械角判定部70は第4ステートと第10ステートとを比較する。
【0089】
図12および図13を参照して、3相6極ブラシレスモータにおいてロータの機械角を判定する方法を参考として説明する。図12は、3相6極ブラシレスモータのロータ1回転中のステートと負荷トルクと巻線電流(1相分)との関係を示す図である。図13は3相6極ブラシレスモータの場合の各ステートの機械角と電気角との関係を示す図である。図13に示すように3相6極ブラシレスモータの場合、トルクパターンは相数と極数との積である18に分割された第0ステート〜第17ステートまでの18ステートを有する。ただし、第Sステートと第(S+6)ステートと第(S+12)ステート(S:0〜5の整数)のインバータ駆動電圧位相は同一である。
【0090】
4極ブラシレスモータの場合と同様、6極ブラシレスモータにおいても負荷トルクは大きく変動する。吸入状態から冷媒が圧縮されていくにしたがい負荷トルクは急激に増加し、吐出弁が開き冷媒が吐出されると、負荷トルクは減少する。この負荷トルク変動の影響で、巻線電流値も図12のIP(1)、IP(4)、IP(7)、IP(10)、IP(13)、IP(16)のように変動する。この現象を用いて、機械角判定部70は、これらの巻線電流値の大小を比較し、ロータの機械角を判定する。この場合、機械角判定部70は、第1ステート、第7ステートおよび第13ステートの大小を比較する。たとえば、機械角判定部70は、ステートを一旦仮設定し、第1ステート、第7ステートおよび第13ステートの巻線の電流値を測定する。巻線の電流値が測定されると、機械角判定部70は、測定された巻線の電流値の比較により最小のステートを判定する。第7ステートが最小の場合、機械角判定部70は、現在のステートの定義を維持する。第1ステートが最小の場合、機械角判定部70は、現在の第1ステートが第7ステートとなるようにステートの設定を機械角120°分シフトさせる。第13ステートが最小の場合、機械角判定部70は、現在の第13ステート13が第7ステートとなるように機械角240°分シフトさせる。これにより、ロータの機械角とトルクパターンの位相との対応をとることができるので、トルク制御を許可しトルク制御を行なうとともに、駆動周波数の補正を許可し、駆動周波数を制御する。
【0091】
S148にて、加算器62は検出部60が求めた位相差情報と位相差記憶部61が出力した位相差情報の目標値との差を求め誤差データとし、PI演算部63に出力する。
【0092】
S150にて、PI演算部63は、加算器62が出力した誤差データに基づき比例データ(P)および積分データ(I)を算出し、これらのデータを含むPI制御値を第1乗算器75に出力する。S152にて、第1乗算器75は、PI制御値とトルク記憶部72が出力したトルク補正量とを乗算し、デューティ基準値をPWM作成部68に出力する。
【0093】
S154にて、設定部65は、IPMモータ51の回転速度の設定値を第2乗算器85に出力する。S156にて、周波数記憶部80は、ロータのステートと回転速度とに対応する補正量を、第2乗算器85に出力する。
【0094】
S158にて、第2乗算器85は、周波数記憶部80が出力した補正量に基づいて、各ステートごとの駆動電圧の周波数を補正し、かつ電圧位相を表わす位相データを作成して正弦波データ作成部67に出力する。本実施の形態において第2乗算器85は、図7の補正量を用いて位相データを式(2)のように計算する。
【0095】
位相データ=補正量×IPMモータ51の回転速度の指令値 ・・・・・(2)
S160にて、正弦波データ作成部67は、位相データと正弦波データとに基づいて正弦波データをPWM作成部68に出力するとともに、U相の正弦波データからU相のモータの駆動電圧の位相を表わす情報を検出部60に出力する。正弦波データは、演算によって作成しても構わないが、本実施の形態においては、正弦波記憶部66からモータ巻線端子U、V、Wの各相に対応した正弦波データを読み出す。
【0096】
S162にて、PWM作成部68は正弦波データとデューティ基準値とを乗算して、各相ごとにインバータ回路52の各駆動素子にモータ駆動電圧であるPWM波形信号をインバータ回路52に出力する。
【0097】
S164にて、PWM作成部68は、トルクパターンまたは周波数補正パターンの切換があったか否かを判断する。トルクパターンまたは周波数補正パターンの切換があったと判断した場合には(S164にてYES)、処理はS166へと移される。もしそうでないと(S164にてNO)、処理はS120へと移される。
【0098】
S166にて、PWM作成部68は、モータの回転が安定するために必要として予め定めた時間が経過するまで待つ。予め定めた時間は、トルクパターンなどの切換後にモータの回転が安定するために必要として予め定めた時間をT(1)とし、モータの目標回転速度の変更後にモータの回転が安定するために必要として予め定めた時間をT(2)とする。
【0099】
S168にて、PWM作成部68は、正弦波データに基づき、IPMモータ51の回転速度を推定する。S170にて、PWM作成部68は、回転速度の推定値が駆動周波数を補正する必要がないとして予め定められた所定の回転速度以上となったか否かを判断する。所定の回転速度以上となったと判断した場合には(S168にてYES)、処理を終了する。もしそうでないと(S168にてNO)、処理はS122へと移される。このように判断するのは、シングルロータリ型圧縮機の場合、IPMモータ51の回転速度が高くなると、IPMモータ51回転中の負荷変動が小さくなり、それにともない回転速度変動も小さくなるためである。
【0100】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、駆動装置100の動作について説明する。
【0101】
検出部60は、IPMモータ51の回転速度の指令値を検出し(S100)、IPMモータ51の回転速度が圧縮機の凝縮圧力と蒸発圧力の差圧が大きくなったとして予め定められた回転速度に上昇するまで待つ(S102)。
【0102】
予め定められた回転速度まで上昇したと判断されると、検出部60は、ステートをいったん任意に設定し、仮設定した第4ステートの巻線電流値IP(4)と第10ステートの巻線電流値IP(10)とを測定する(S104)。巻線電流値が測定されると検出部60は、測定された巻線電流値の差が、モータ回転速度に応じて予め定められるしきい値を上回るまで待つ(S106)。しきい値を上回ったと判断されると、検出部60は、巻線電流値を測定し、巻線電流値IP(4)とIP(10)との大小を比較する(S108)。巻線電流値の測定と比較とが数回繰返されると(S108〜S114)、検出部60は、ステートの設定を正式に決定する(S116、S118)。これにより、ロータの機械角とトルクパターンの位相との対応をとることができたので、トルクを制御するとともに、駆動周波数を制御する。
【0103】
検出部60は、サンプリングタイミングTSを、正弦波データ作成部67から出力された情報に基づいて設定する。あわせて検出部60は、サンプリング回数Nなどの各変数を初期化する(S120)。サンプリングタイミングTSの設定と各変数の初期化とがなされると、検出部60は、位相差情報を算出する。
【0104】
図10を参照して、位相差情報の算出方法について説明する。検出部60は、モータ駆動電圧を基準とする2箇所の位相期間において、両位相期間におけるサンプリングタイミングが対称となるような所定のサンプリングタイミングSP(0)〜SP(5)を待つ(S122)。タイミングが到来すると検出部60は、IPMモータ51のU相の電流値を測定する(S124)。電流値が測定されると、検出部60は、各位相期間での巻線電流値I(0)〜I(2)を積算しモータ電流信号面積S(0)(=I(0)+I(1)+I(2))を計算する(S126〜S132)。モータ電流信号面積S(0)が計算されると、検出部60は、ふたたびIPMモータ51のU相の電流値を測定して、位相期間θ(1)についてモータ電流信号面積S(1)(=I(3)+I(4)+I(5))を計算する(S122〜S136)。モータ電流信号面積S(0)およびS(1)が計算されると(S138にてYES)、検出部60はそれぞれの値の比(S(0)/S(1))を計算し、加算器62に出力する(S140)。この計算結果が位相差情報である。本実施の形態においては、この位相差情報が所定の値になるように制御する。図10の場合、検出部60は2箇所の位相期間で対称となるタイミングでA/Dサンプリングするので、図10に示すように電圧と電流の位相差が0°のときには、S(0)=S(1)となる。その結果、位相差情報は「1」となる。このことは、位相差0°で制御するには位相差情報を「1」になるように制御すればよいことを表わす。
【0105】
位相差情報が出力されると、機械角判定部70は、IPMモータ51のU相におけるIPMモータ51回転中の脈動を表わす脈動データを読込む(S142)。脈動データが読込まれると、機械角判定部70は、脈動データに基づいてロータの機械角を検出し、ロータの機械角を表わすロータ情報をトルク記憶部72に出力する(S144)。ロータ情報が出力されると、トルク記憶部72は、ロータの回転速度およびロータ情報に応じたトルク補正量を第1乗算器75に出力する(S146)。
【0106】
トルク補正量が出力されると、加算器62は位相差情報と位相差記憶部61から出力された位相差情報の目標値との差を求め誤差データとし、PI演算部63に出力する。加算器62は位相差情報の目標値と検出部60から出力された位相差情報とをPI演算部63に出力する(S148)。位相差情報などが出力されると、PI演算部63は、加算器62が出力した誤差データに基づき比例データ(P)および積分データ(I)を算出し、PI制御値を第1乗算器75に出力する(S150)。PI制御値が出力されると、第1乗算器75は、PI制御値とトルク記憶部72が出力したトルク補正量とを乗算し、デューティ基準値をPWM作成部68に出力する(S152)。
【0107】
シングルロータリ型圧縮機の振動は以上のようにしてトルクを制御しても完全には消滅せず、ある程度の振動が残存する。モータの角速度の変動もトルクを制御しない場合よりは小さくなるが、ある程度残るので、ステータへの通電タイミングを適切な値に制御するため、強制励磁を行なっている駆動周波数をモータの角速度の変動に応じて補正する。これにより、IPMモータ51の駆動電力の周波数が補正量パターンにしたがって増減され、回転速度の変動に応じた通電が行われる。回転速度の変動に応じた通電が行われるので、マイクロコンピュータ57は、IPMモータ51の脱調を防止し、さらには高効率で運転することができる。
【0108】
デューティ基準値が出力されると、設定部65は、IPMモータ51の回転速度の設定値を第2乗算器85に出力する(S154)。設定値が出力されると、周波数記憶部80は、ロータのステートと回転速度とに対応する補正量を、第2乗算器85に出力する(S156)。補正量が出力されると、第2乗算器85は、周波数記憶部80が出力した補正量に基づいて、各ステートの駆動電圧の周波数を補正し、かつ電圧位相を表わす位相データを作成して正弦波データ作成部67に出力する(S158)。
【0109】
図14を参照して位相データに補正量を乗算する理由を説明する。図14は、シングルロータリ型圧縮機の負荷トルク変動を負荷トルクの大きいときと小さいときとに分けてパラメータ化した位相差情報−効率特性である。ここで、注意すべき事実は、モータ駆動電圧が同一であっても、負荷トルクが変化すると位相差情報も変化することである。たとえば図14においてモータ駆動電圧VJでモータが駆動されている場合、負荷トルクの大きいときと小さいときとでは異なる位相差情報でモータが駆動される。これは負荷トルクが大きいときには大きなモータ駆動電圧が必要なためである。このことを前述したシングルロータリ型圧縮機にあてはめると、モータ1回転に同期した急激で大きな負荷トルク変動に位相差を制御して追従することは困難なことを意味する。位相差を制御して追従することが困難になると、モータ駆動電圧の制御や変更はできない。
【0110】
位相データが出力されると、正弦波データ作成部67は、位相データと正弦波データとに基づいて正弦波データをPWM作成部68に出力する。正弦波データ作成部67は、正弦波データを出力するとともに、U相の正弦波データからU相のモータの駆動電圧の位相を表わす情報を検出部60に出力する(S160)。
【0111】
正弦波データなどが出力されると、PWM作成部68は正弦波データとデューティ基準値とを乗算して、各相ごとにインバータ回路52の各駆動素子にモータ駆動電圧であるPWM波形信号をインバータ回路52に出力する(S162)。これにより、インバータ回路52を介してモータ巻線に電流が印加されるのでIPMモータ51が駆動される。その結果、IPMモータ51の出力トルクがトルクパターンにしたがって増減され、負荷トルクに応じたトルク制御が行われるため、マイクロコンピュータ57は、モータ脱調を防止し、かつIPMモータ51の回転速度の変動を抑制できる。
【0112】
PWM波形信号が出力されると、PWM作成部68は、トルクパターンまたは周波数補正パターンの切換があるまで(S164にてNO)、駆動電圧の大きさ(PWMデューティのデューティ幅)を決定する。駆動電圧の大きさは、モータ駆動電圧(出力デューティ)に対する巻線電流位相差を一定に制御するための位相差制御フィードバックループによって決定される(S120〜S162)。駆動電圧の大きさを決定する際、所望の周波数で出力される正弦波データによってIPMモータ51の回転速度が決定される。これによって所望の位相差、所望の回転速度でIPMモータ51が駆動・制御される。
【0113】
トルクパターンまたは周波数補正パターンの切換があると(S164にてYES)、PWM作成部68は、モータの回転が安定するために必要として予め定めた時間が経過するまで待つ(S166)。予め定めた時間は、トルクパターンなどの切換後にモータの回転が安定するために必要として予め定めた時間をT(1)とし、モータの目標回転速度の変更後にモータの回転が安定するために必要として予め定めた時間をT(2)とする。予め定めた時間が経過すると、PWM作成部68は、正弦波データに基づき、IPMモータ51の回転速度を推定し(S168)、所定の回転速度以上になると(S168にてYES)処理を終了する。このように判断するのは、シングルロータリ型圧縮機の場合、IPMモータ51の回転速度が高くなると、IPMモータ51回転中の負荷変動が小さくなり、それにともない回転速度変動も小さくなるためである。
【0114】
図15および図16を参照して、1回転中の負荷変動の大きいシングルロータリ型圧縮機モータを駆動した場合の負荷トルクとモータ駆動電圧(1相分)と角速度との関係を示す。図15が従来例の場合であり、図16が本実施の形態のトルク制御を行なった場合である。従来例では、角速度の変動が大きく、ひいては圧縮機の振動も大きくなる。本実施の形態の場合、トルクパターンによりデューティ基準値が補正され、モータ駆動電圧が補正されることにより、巻線電流が負荷トルクと一致するモータトルクを発生すべく補正される。これにより、角速度変動が小さくなり、圧縮機の振動も小さくなる。
【0115】
図17および図18を参照して、1回転中の負荷変動の大きいシングルロータリ型圧縮機モータを駆動した場合の負荷トルクとモータ駆動電圧(1相分)と位相差情報との関係を説明する。図17が従来例の場合である。図18が本実施の形態において駆動電力の周波数を補正した場合である。図17に示す従来例の場合、位相差情報の変動が大きく、ひいては位相差情報が高効率点から離れてしまい、効率の悪い運転となる。最悪の場合は前述した位相差範囲以上に位相差情報が変動し、脱調が発生する。図18に示す本実施の形態の場合、補正量パターンによりIPMモータ51回転中の負荷変動に応じて位相データを補正することにより、マイクロコンピュータ57は、位相差情報を常に高効率点に制御することが可能となる。
【0116】
以上のようにして、本実施の形態に係る駆動装置は、予め記憶部に記憶されたトルクパターンに応じて駆動電圧を制御する。トルクパターンに応じて駆動電圧が制御されるので、電流の位相は制御可能な範囲にとどまる。電流の位相が制御可能な範囲にとどめられるので、シングルロータリ型圧縮機をはじめとする急激で大きな負荷トルク変動を持つ負荷に対してもモータ脱調などを生じずに駆動させることができる。さらにロータの機械角をコイルの誘起電流から検出するのではなく、巻線電流のピークに基づいて検出するので、180°通電による制御が可能である。あわせて、回転速度の補正も行なうので、回転速度の変動により位相差情報が影響を受けることを防ぐことができる。その結果、低騒音、低振動、高効率である180°通電による制御をより幅広い分野に適用できる制御装置を提供できる。
【0117】
なお、S154にて設定部65は、位相差情報の変動量が任意に定められた第1の変動量以上となった後、駆動周波数補正を開始してもよい。
【0118】
また、S154にて設定部65は、位相差情報の変動量が任意に定められた第2の変動量以下となった場合は、駆動周波数の補正を停止して直ちにS158の処理を行なってもよい。
【0119】
さらに、比較する巻線電流値は、4極ブラシレスモータの場合でロータの機械角が180度離れたステート同士であってよい。
【0120】
その他、比較する巻線電流値は、3相6極ブラシレスモータの場合にはモータ駆動電圧の位相が等しくなるステート同士であってもよい。
【0121】
<第2の実施の形態>
以下、本発明の第2の実施の形態に係る駆動装置200について説明する。
【0122】
図19を参照して、本実施の形態に係る駆動装置200は、DC(Direct Current)電流を検出するためにインバータ回路52に直列に接続された抵抗90と、抵抗90と並列に接続され、DC電流を検出するDC電流アンプ91とをさらに含む。なお、その他のハードウェア構成については前述の第1の実施の形態と同じである。それらについての機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰返さない。
【0123】
図20を参照して、マイクロコンピュータ57で実行されるプログラムは、IPMモータ51の制御に関し、以下のような制御構造を有する。なお、図20に示すフローチャートの中で、前述の図8に示した処理は同じステップ番号を付してある。それらの処理も同じである。また、S146以降の処理も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰返さない。
【0124】
S180にて、機械角判定部70は、抵抗90とDC電流アンプ91とを用いてDC電流の脈動を検出する。S182にて、機械角判定部70は、検出されたDC電流の脈動とロータの機械角との関係からロータの機械角を検出し、ロータの機械角を表わすロータ情報をトルク記憶部72に出力する。ロータの機械角の検出は、巻線電流に基づいて機械角を検出する場合と同様の方法により行なう。
【0125】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、駆動装置200の動作について説明する。
【0126】
S100〜S140の動作を経て位相差情報が出力されると、機械角判定部70は、DC電流の脈動を検出する(S180)。DC電流の脈動が検出されると、機械角判定部70は、ロータの機械角を検出し、ロータの機械角を表わすロータ情報をトルク記憶部72に出力する(S182)。ロータ情報が出力されると、S146〜S170の動作を経て、IPMモータ51が制御される。
【0127】
以上のようにして、本実施の形態に係る駆動装置は、インバータに供給される電力の脈動に基づいてロータの機械角を検出する。インバータに供給される電力は直流のため、インバータによって変調された後の電力に比べてトルク変動による脈動の影響が現れやすい。トルク変動による脈動の影響が現れやすいので、より高い精度でロータの機械角を検出できる。その結果、より高い精度で180°通電駆動により制御できる制御装置を提供できる。
【0128】
なお、本実施の形態において、インバータ回路52に入力されるDC電流を用いてIPMモータ51の巻線電流値を推定してもよい。電流センサ55および電流アンプ56はこの場合不要である。この場合、検出部60はPWM作成部68およびDC電流アンプ91に接続されている。検出部60はインバータ回路52に入力されるDC電流の値を測定する。そのDC電流がIPMモータ51のどのコイルに流れるかは、どのコイルに通電するかを表わすデータに基づいて特定される。そのデータは、PWM作成部68が検出部60に出力する。これにより、検出部68はIPMモータ51の特定のコイルに流れる電流を推定できる。
【0129】
もしくは、本実施の形態において、検出部60は、インバータ回路52の入力部に取付けられた電流センサ(図示せず)が検知したDC電流値を用いて巻線電流値を推定してもよい。
【0130】
<第3の実施の形態>
以下、本発明の第3の実施の形態に係る駆動装置300について説明する。
【0131】
図21を参照して、本実施の形態に係る駆動装置300は、第1の実施の形態のマイクロコンピュータ57に代えて、マイクロコンピュータ93を含む。マイクロコンピュータ93は、180°駆動部95と、間欠駆動部96と、選択部97と、検出部98とを含む。
【0132】
180°駆動部95は、IPMモータ51の回転速度がモータ巻線に通電するモータの駆動電圧の周波数によって決定される強制励磁駆動をする。180°駆動部95は、検出部と、位相差記憶部と、加算器と、PI演算部と、設定部と、正弦波記憶部と、正弦波データ作成部と、機械角判定部と、トルク記憶部と、第1乗算器と、周波数記憶部と、第2乗算器とを含む。これらの関係および役割は機械角判定部を除き第1の実施の形態と同様である。機械角判定部は、間欠駆動部96の出力と、電流センサ55および電流アンプ56の出力とを用いてIPMモータ51の機械角を判定する。間欠駆動部96は、検出されたロータ位置に応じて通電の切換を行なうことにより、IPMモータ51に、通電休止期間が設けられた通電角180°未満の間欠通電駆動をさせる。選択部97は、IPMモータ51の駆動方式を選択する。検出部98は、IPMモータ51の巻線のモータ端子に発生する誘起電圧を検出することでロータ位置すなわちロータの機械角を検出する。検出部98によって判定されたロータの機械角を表わす情報は、間欠通電駆動から180°通電駆動に切換わった後も保持される。この情報は、間欠駆動部96および選択部97を通じて180°駆動部95に出力される。マイクロコンピュータ93は、この情報に応じて180°通電駆動時に本実施の形態に係るトルク制御と駆動電圧の周波数補正とを行なう。なお、その他のハードウェア構成については前述の第1の実施の形態と同じである。それらについての機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰返さない。
【0133】
図22を参照して、マイクロコンピュータ57で実行されるプログラムは、IPMモータ51の制御に関し、以下のような制御構造を有する。
【0134】
S200にて、間欠駆動部96は、PWM作成部68に、IPMモータ51の各相の電圧と位相との指令値を表わすデータを出力する。PWM作成部68は、間欠駆動部96から出力されたデータに基づき、PWM波形信号をインバータ回路52に出力する。
【0135】
S202にて、間欠駆動部96は、ロータの回転が定常状態になるまで待つ。S204にて、検出部98は、ロータの機械角を検出する。本実施の形態において、検出部98が誘起電圧を検出する巻線は、間欠駆動部96が通電を休止させている巻線である。検出部98は、ロータの機械角が変化する速度から、ロータが回転する速度も算出する。検出部98は、ロータの機械角と時間とに基づいてロータがその機械角に到達したタイミングも検出する。検出部98は、IPMモータ51のロータの機械角とロータがその機械角に到達したタイミングとを180°駆動部95の機械角判定部に出力する。
【0136】
S206にて、選択部97は、IPMモータ51の制御を180°駆動部95による180°通電駆動に切替える。
【0137】
S208にて、180°駆動部95は、IPMモータ51を強制励磁駆動するように制御する。その制御の方法は、ロータの機械角の算出方法を除いて第1の実施の形態と同様である。本実施の形態におけるロータの機械角の算出方法は以下の通りである。180°駆動部95の機械角判定部は、ロータの機械角の変動量を算出する。変動量は、ロータの電気角をIPMモータ51の極数の半分で除算した値である。たとえば3相4極モータの場合、電気角が2度変化するたびに機械角は1度変化する。変動量は、検出部98がロータの機械角を特定したタイミング以降について算出される。変動量が算出されると、機械角判定部は、間欠駆動部96が機械角判定部に出力したロータの機械角に、その変動量を加減して、ロータの機械角を判定する。
【0138】
S210にて、選択部97は、IPMモータ51の回転速度を切替える指示を受けたか否かを判断する。回転速度を切替える指示を受けたと判断した場合には(S210にてYES)、処理はS212へと移される。もしそうでないと(S210にてNO)、処理はS208へと移される。S212にて、180°駆動部95は、IPMモータ51の回転速度を切替える。
【0139】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、駆動装置300の動作について説明する。
【0140】
間欠駆動部96は、PWM作成部68に、IPMモータ51の各相の電圧と位相との指令値を表わすデータを出力する(S200)。データが出力されると、間欠駆動部96は、ロータの回転が定常状態になるまで待つ(S202)。
【0141】
ロータの回転が定常状態になると、検出部98は、IPMモータ51のロータの機械角とロータがその機械角に到達したタイミングとを180°駆動部95の機械角判定部に出力する。(S204)。機械角とタイミングとが出力されると、選択部97は、IPMモータ51の制御を180°駆動部95による180°通電駆動に切替える(S206)。切替えられると、180°駆動部95は、IPMモータ51を制御する(S208)。
【0142】
IPMモータ51が制御されると、選択部97は、IPMモータ51の回転速度を切替える指示を受けたか否かを判断し(S210)、回転速度を切替える指示を受けると(S210にてYES)、IPMモータ51の回転速度を切替える(S212)。
【0143】
以上のようにして、本実施の形態に係る駆動装置300は、間欠通電駆動によって得られたロータの機械角に基づいてIPMモータ51を制御することができる。間欠通電駆動によって得られたデータを用いるので、IPMモータの巻線電流の位相などに基づいてロータの機械角を検出する場合よりもノイズの影響が小さい。ノイズの影響が小さいので精度が高くなる。その結果、高精度でIPMモータの駆動を制御できる制御装置を提供できる。
【0144】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る駆動装置の全体構成図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るシングルロータリ型圧縮機とスクロール型圧縮機との負荷トルク特性を表わす図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るトルク補正量のデータの例を説明する図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における、3相4極ブラシレスモータの場合の各ステートの機械角と電気角との関係を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る、モータ効率と位相差情報およびモータ駆動電圧との特性を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る位相差情報とモータの駆動電圧との関係を表わす図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る周波数記憶部が記憶する補正量について説明する図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係るIPMモータ51の駆動処理の制御の手順を示す第1のフローチャートである。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係るIPMモータ51の駆動処理の制御の手順を示す第2のフローチャートである。
【図10】本発明の第1の実施の形態に係る位相期間を表わす概念図である。
【図11】本発明の第1の実施の形態に係る3相4極ブラシレスモータのロータ1回転中のステートと負荷トルクと1相分の巻線電流との関係を示す図である。
【図12】本発明の第1の実施の形態に係る3相6極ブラシレスモータのロータ1回転中のステートと負荷トルクと1相分の巻線電流との関係を示す図である。
【図13】本発明の第1の実施の形態における、3相6極ブラシレスモータの場合の各ステートの機械角と電気角との関係を示す図である。
【図14】本発明の第1の実施の形態に係るシングルロータリ型圧縮機の位相差情報−効率特性を表わす図である。
【図15】従来例に係るトルク制御を行なった場合の、1回転中の負荷変動の大きいシングルロータリ型圧縮機モータの負荷トルクと1相分のモータ駆動電圧と角速度との関係を示す図である。
【図16】本発明の第1の実施の形態に係るトルク制御を行なった場合の、1回転中の負荷変動の大きいシングルロータリ型圧縮機モータの負荷トルクと1相分のモータ駆動電圧と角速度との関係を示す図である。
【図17】従来例に係るトルク制御を行なった場合の、1回転中の負荷変動の大きいシングルロータリ型圧縮機モータの負荷トルクと1相分のモータ駆動電圧と位相差情報との関係を示す図である。
【図18】本発明の第1の実施の形態に係るトルク制御を行なった場合の、1回転中の負荷変動の大きいシングルロータリ型圧縮機モータの負荷トルクと1相分のモータ駆動電圧と位相差情報との関係を示す図である。
【図19】本発明の第2の実施の形態に係る駆動装置の全体構成図である。
【図20】本発明の第2の実施の形態に係るIPMモータ51の駆動処理の制御の手順を示すフローチャートである。
【図21】本発明の第3の実施の形態に係る駆動装置の全体構成図である。
【図22】本発明の第3の実施の形態に係るIPMモータ51の駆動処理の制御の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
51 IPMモータ、52 インバータ回路、53 コンバータ回路、54 交流電源、55 電流センサ、56 電流アンプ、57,93 マイクロコンピュータ、60,98 検出部、61 位相差記憶部、62 加算器、63 PI演算部、65 設定部、66 正弦波記憶部、67 正弦波データ作成部、68PWM作成部、70 機械角判定部、72 トルク記憶部、75 第1乗算器、80 周波数記憶部、85 第2乗算器、90 抵抗、91 DC電流アンプ、95 180°駆動部、96 間欠駆動部、97 選択部、100,200,300 駆動装置。
Claims (19)
- 複数相のコイルを備えた、同期モータを制御するための制御装置であって、
前記複数相のうちのいずれかの特定相の電流を検出するための第1の検出手段と、
前記電流の脈動に基づいて前記同期モータの回転子の機械角を検出するための第2の検出手段と、
各相における、補正前の電圧データを前記各相ごとに作成するための作成手段と、
複数のスイッチング素子を含み、制御データに基づいて、各前記スイッチング素子の導通を制御し、各前記コイルに通電するための通電手段と、
前記機械角に対応し、前記電圧データを補正する第1の補正値を記憶するための第1の記憶手段と、
前記通電手段を制御するための制御手段とを含み、
前記制御手段は、
前記特定相の電圧において、予め定められた位相を基準とした、同じ長さの期間における、前記特定相の電流の積算値同士の比率を算出するための第1の算出手段と、
前記第1の算出手段により算出された前記比率を目標の比率に制御するように、前記電圧データを補正する第2の補正値を算出するための第2の算出手段と、
前記各相の電圧データと前記第1の補正値と前記第2の補正値とに基づいて、各相ごとの前記制御データを算出するための第3の算出手段とを含む、モータの制御装置。 - 複数相のコイルを備えた、同期モータを制御するための制御装置であって、
複数のスイッチング素子を含み、制御データに基づいて、各前記スイッチング素子の導通を制御し、各前記コイルに通電するための通電手段と、
前記複数相のうちのいずれかの特定相の電流を検出するための第1の検出手段と、
前記通電手段に供給される直流電流の脈動に基づいて前記同期モータの回転子の機械角を検出するための第2の検出手段と、
前記直流電流を検出するための第3の検出手段と、
各相における、補正前の電圧データを前記各相ごとに作成するための作成手段と、
前記機械角に対応し、前記電圧データを補正する第1の補正値を記憶するための第1の記憶手段と、
前記通電手段を制御するための制御手段とを含み、
前記制御手段は、
前記特定相の電圧において、予め定められた位相を基準とした、同じ長さの期間における、前記特定相の電流の積算値同士の比率を算出するための第1の算出手段と、
前記第1の算出手段により算出された前記比率を目標の比率に制御するように、前記電圧データを補正する第2の補正値を算出するための第2の算出手段と、
前記各相の電圧データと前記第1の補正値と前記第2の補正値とに基づいて、各相ごとの前記制御データを算出するための第3の算出手段とを含む、モータの制御装置。 - 前記第1の記憶手段は、前記回転子1回転分の機械角を前記同期モータの固定子の配置に基づいて特定する範囲ごとに前記第1の補正値を記憶するための手段を含む、請求項1または2に記載のモータの制御装置。
- 前記固定子の配置に基づいて特定する範囲の数は、前記同期モータの相数と極数との積に等しい数である、請求項3に記載のモータの制御装置。
- 前記第3の算出手段は、前記電圧データと前記第1の補正値と前記第2の補正値とを演算して、前記制御データを算出するための手段を含む、請求項1から4のいずれかに記載のモータの制御装置。
- 前記第3の算出手段は、前記電圧データに、前記第1の補正値と第2の補正値とを乗算して、前記制御データを算出するための手段を含む、請求項5に記載のモータの制御装置。
- 前記第2の検出手段は、前記電流の脈動の複数のピークを比較して、前記ピークに対応する前記機械角を検出するための手段を含む、請求項1から6のいずれかに記載のモータの制御装置。
- 前記第2の検出手段は、前記ピークの最大値とその他のピークの値とを比較して、前記機械角を検出するための手段を含む、請求項7に記載のモータの制御装置。
- 前記その他のピークは、値が最小となるピークである、請求項8に記載のモータの制御装置。
- 前記第1の記憶手段は、前記機械角の範囲の1つに対して複数の前記第1の補正値を記憶するための手段を含み、
前記制御手段は、前記複数の第1の補正値のうち、前記同期モータの駆動に関する条件に基づいて前記第3の算出手段が用いる第1の補正値の1つを選択するための第1の選択手段をさらに含む、請求項1から9のいずれかに記載のモータの制御装置。 - 前記制御装置は、前記回転子の回転速度を特定するための手段をさらに含み、
前記第1の記憶手段は、前記回転速度に応じて定められた前記複数の第1の補正値を記憶するための手段を含み、
前記第1の選択手段は、前記回転速度の大小を前記駆動に関する条件として、前記第1の補正値の1つを選択するための手段を含む、請求項10に記載のモータの制御装置。 - 前記制御装置は、前記機械角に対応して、前記回転子の回転速度の変動を抑制するように前記回転速度を補正する抑制データを記憶するための第2の記憶手段をさらに含み、
前記作成手段は、前記機械角に対応する前記抑制データに基づいて、前記電圧データを作成するための手段を含む、請求項1から11のいずれかに記載のモータの制御装置。 - 前記第2の記憶手段は、前記機械角の1つの値に対して複数の前記抑制データを記憶するための手段を含み、
前記制御手段は、前記複数の抑制データのうち、前記同期モータの駆動に関する条件に基づいて前記作成手段が用いる1つの抑制データを選択するための第2の選択手段をさらに含む、請求項12に記載のモータの制御装置。 - 前記制御手段は、前記回転子の回転速度を特定するための手段をさらに含み、
前記第2の記憶手段は、前記回転速度に応じて定められた前記複数の抑制データを記憶するための手段を含み、
前記第2の選択手段は、前記回転速度の大小を前記駆動に関する条件として、前記抑制データの1つを選択するための手段を含む、請求項13に記載のモータの制御装置。 - 前記制御装置は、前記同期モータの、回転速度に関する条件が満足されたことに応答して、前記制御手段に制御を開始させるための手段をさらに含む、請求項1から14のいずれかに記載のモータの制御装置。
- 前記同期モータは、埋込み磁石型同期モータである、請求項1から15のいずれかに記載のモータの制御装置。
- 前記モータの制御装置は、
前記コイルのいずれかへの通電を休止するように前記通電手段を制御するための手段と、
前記コイルへの通電が休止されている期間に、前記コイルに生じた誘起電圧を検出するための第4の検出手段とをさらに含み、
前記第2の検出手段は、前記誘起電圧を用いて特定された、前記機械角と前記電流の脈動との関係に基づいて、前記機械角を検出するための手段を含む、請求項1から16のいずれかに記載のモータの制御装置。 - 請求項1から17のいずれかに記載のモータの制御装置を含む、空気調和機。
- 請求項1から17のいずれかに記載のモータの制御装置を含む、冷蔵庫。
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