JP2004275251A - 体液浄化カラム用繊維素材及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、外循環治療時における体液中への割れ片混入を防止でき、かつ毒素吸着効率が高い体液浄化カラム用の繊維素材を提供する。
【解決手段】本発明の体液浄化カラム用繊維素材は、少なくとも架橋度が20〜80%であるポリオレフィン系高分子を含む繊維からなることを特徴とするものである。
本発明の体液浄化カラム用繊維素材の製造方法は、少なくともポリオレフィン系高分子からなる繊維素材に電子線を照射して架橋させた後、毒素吸着基を導入することを特徴とするものである。
【選択図】なし
【解決手段】本発明の体液浄化カラム用繊維素材は、少なくとも架橋度が20〜80%であるポリオレフィン系高分子を含む繊維からなることを特徴とするものである。
本発明の体液浄化カラム用繊維素材の製造方法は、少なくともポリオレフィン系高分子からなる繊維素材に電子線を照射して架橋させた後、毒素吸着基を導入することを特徴とするものである。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、体液中の毒素を除去する体液浄化カラム用の繊維素材及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
細菌感染は種々の疾患に伴って発生し、その後、敗血症等の重篤な状態に陥ることもある。一般に、細菌感染に対しては抗生剤の投与による治療が行われるが患者の容態や菌の薬剤耐性化等により効果が出ない場合も多い。このような抗菌剤の効果の低い患者に対しては、体液浄化カラム等を用いてエンドトキシン、ペプチドグリカン、リポタイコ酸、スーパー抗原、エンテロトキシン等細菌由来の成分を積極的に体外に除去する療法が治療の一つとして行われている。
【0003】
細菌由来の成分を吸着し体外に除去する物として、ポリスチレン繊維にポリミキシンを固定化した吸着剤を充填したエンドトキシンを除去するカラムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
そして、繊維に直接ポリミキシンのような毒素吸着基を化学的に導入する場合、繊維自体の強度が低下することがあるが、それに対しては毒素吸着基導入反応に不活性なポリマーを島成分に配して補強する海島型複合繊維を用いることが提案されている(例えば、特許文献2〜4参照)。
【0005】
しかし、海島型複合繊維を用いて補強した場合であっても、毒素吸着基導入反応や機械的応力によって繊維表面の割れが発生することがあった。このため毒素吸着基を導入した繊維素材を充填したカラムの出口にフィルターを取り付けても、割れ片が小さい場合にはフィルターをすり抜けてしまい、体外循環による治療時に体液中へ混入する問題が懸念されていた。さらに、繊維表面が割れることによって、せっかく毒素吸着基を導入した海成分が脱落してしまうため毒素吸着効率が低下する問題もあり、反応条件やカラム充填作業の管理が非常に難しかった。
【0006】
【特許文献1】
特開昭60−209525号公報
【0007】
【特許文献2】
特開平9−235263号公報
【0008】
【特許文献3】
特開平10−147518号公報
【0009】
【特許文献4】
特開平10−147541号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑み、毒素吸着基導入反応や機械的応力を受けることによって起こる繊維表面の割れが無く、体外循環治療時における体液中への割れ片混入を防止でき、かつ毒素吸着効率が高い体液浄化カラム用の繊維素材を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するため本発明は、次の通りの構成をとるものである。
【0012】
(1)架橋度が20〜80%であるポリオレフィン系高分子を含む繊維からなることを特徴とする体液浄化カラム用繊維素材。
【0013】
(2)前記繊維が、少なくとも2成分以上のポリマーからなる複合繊維であることを特徴とする(1)記載の体液浄化カラム用繊維素材。
【0014】
(3)前記ポリオレフィン系高分子が、繊維に30wt%以上含まれることを特徴とする(1)または(2)記載の体液浄化カラム用繊維素材。
【0015】
(4)前記複合繊維が海島型複合繊維であり、海成分に少なくともポリオレフィン系高分子を含むことを特徴とする(2)または(3)に記載の体液浄化カラム用繊維素材。
【0016】
(5)前記ポリオレフィン系高分子が芳香族ポリビニル系高分子であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の体液浄化カラム用繊維素材。
【0017】
(6)少なくともポリオレフィン系高分子含む繊維素材に電子線を照射して、ポリオレフィン高分子を架橋させることを特徴とする体液浄化カラム用繊維素材の製造方法。
【0018】
(7)前記電子線の線量が10〜1000kGyであることを特徴とする(6)に記載の体液浄化カラム用繊維素材の製造方法。
【0019】
(8)前記繊維素材が織物、編物、フェルト、不織布から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする(6)に記載の体液浄化カラム用繊維素材の製造方法。
(9)(1)〜(5)のいずれかに記載の体液浄化カラム用繊維素材に毒素吸着基を導入した毒素吸着材。
(10)(9)に記載の毒素吸着材を充填した体液浄化用カラム。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、さらに詳しく本発明について説明をする。
【0021】
本発明は、架橋度が20〜80%であるポリオレフィン系高分子を含む繊維からなることを特徴とする体液浄化カラム用繊維素材である。ポリオレフィン系高分子の架橋度を20〜80%とすることで繊維としたときの繊維表面の割れを防止することができる。すなわち架橋させることによって反応性が抑制され繊維表面は割れ難くなるが、架橋させすぎると毒素吸着基の導入量が少なくなり、吸着率が低下してしまう。また逆に架橋が少なすぎると反応性が高すぎて、前述のとおり繊維表面が割れてしまう。このような観点から適した架橋度は20〜80%であり、より好ましくは30〜70%、さらに好ましくは40〜60%である。すなわち本発明の繊維素材を用いれば、割れを防止できるため体外循環時に割れ片などが体液中に混入する恐れがない安全な体液浄化カラムを達成することができる。
【0022】
なお、本発明において体液とは、血液、血漿、血清、腹水、リンパ液、関節内液及びこれらから得られた分画成分、ならびにその他の生体由来の液性成分をいう。
【0023】
本発明におけるポリオレフィン系高分子の架橋度Kとは、以下の測定方法によって求められる値をいう。
【0024】
予め、単成分該高分子が溶解可能で該高分子ゲル化物は溶解不可能な溶媒を選択し、溶解温度、時間条件を予備検討し、適切に選択する。単成分高分子繊維の架橋度Kは次のような手順で測定する。該高分子繊維を乾燥した試料重量(W0)を秤量し、高分子に適した該溶媒中に投入し攪拌しながら適切な温度と時間条件で処理する。該溶液を200メッシュのフィルターで濾過し、溶媒を除去した残渣を乾燥させた後、乾燥残渣重量Wdを計量し、次式によって求めることができる。
【0025】
K=(Wd/W0)×100(%) (1)
繊維が複合繊維の場合の架橋度も別の測定方法により測定するが、詳細な架橋度の評価法は後述する。
【0026】
本発明の体液浄化カラム用繊維素材に使用するポリオレフィン系高分子は、毒素吸着基を化学的に導入できるものであれば特に制限はないが、特に芳香族ポリビニル系化合物が好ましく用いられる。芳香族ポリビニル系化合物としては、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、ポリビニルトルエン、ポリビニルキシレン、ポリクロロメチルスチレン、ポリスルホンなどのホモ重合体、これら2種以上共重合体もしくは他の不活性モノマーとの共重合体又はブレンドがより好ましく、中でもポリスチレン、ポリスルホンがさらに好ましく用いられる。
【0027】
本発明の体液浄化カラム用繊維素材の形態については、特に限定されるものではないが、毒素吸着基を導入する場合やカラムに充填する場合の扱い易さを考慮すると、織物、編物、フェルト、不織布等のシート状形態であることが好ましい。織物、編物として用いる場合に繊維はモノフィラメントでもマルチフィラメントでも何ら問題なく適用できるが、特にマルチフィラメントを用いることは総繊度に対して多くの毒素吸着基を導入できるため好ましい態様である。このような観点からマルチフィラメントを用いる場合の好ましいフィラメント数は5以上であり、より好ましくは10以上である。繊維の総繊度は製織、製編加工時にある程度の強力を有する必要があるため30dtex以上であることが好ましく、40〜300dtexであることがより好ましい。太くなり過ぎると織り難く、編み難くなるからである。また、製織、製編の際にマルチフィラメントに撚りを掛けることは好ましい様態である。すなわち、撚りを掛けることで単糸の弛みや毛羽を抑えることができ、製織、製編し易くなる。撚り方向としてはS方向でもZ方向でも問題なく、また撚り数は特に限定されないが、好ましい撚り数は10t/m以上であり、より好ましくは15〜500t/m、さらに好ましくは18〜200t/mである。撚り数が多くなると単糸同士がまとまり過ぎて、マルチフィラメントとしての効果が低くなってしまう。撚糸後の撚り止めセットは、必要に応じて、例えば残留撚トルクを除くためなどに好ましく行うことができる。上記態様の他に仮撚加工糸、インターレース糸などさまざまな態様で適用することができる。さらに本発明における繊維は、繊維素材の形態に関わらず、必要に応じて、例えば、強度向上、鮮度調整などの目的で延伸、弛緩処理、熱処理などの加工を行うことができる。
【0028】
本発明の体液浄化カラム用繊維素材の単糸繊度は、特に限定されないが、20dtex以下であることが好ましく、より好ましくは10dtex以下であり、さらに好ましくは0.1dtex〜7dtexである。単糸繊度を細くすると繊維自体がしなやかになるため、反応後のカラムへの充填作業等に対しても扱いやすく、割れ難くなり、さらにカラム充填量(g)あたりの比表面積が向上するため多くの毒素吸着基が導入でき、吸着効率も高くなるからである。但し、単糸繊度が細くなりすぎると、繊維全体として強力が無くなりカラムへの充填作業時などで単糸切れが発生し易くなり好ましくない。なお、本発明の繊維素材は丸型断面だけでなく、三角型、四角型、H型、扁平型、中空型などさまざまな異形断面の繊維が好ましく適用できる。
【0029】
本発明の体液浄化カラム用繊維素材を構成する繊維は、ポリオレフィン系高分子単成分からなるものでも、他成分との複合繊維であってもよいが、複合繊維を用いることは、毒素吸着基を導入するポリオレフィン系高分子を反応に不活性なポリマーで補強し、毒素吸着基導入反応の際の強度低下を防ぐことができるため好ましい態様である。また、複合繊維の中でも海島型複合繊維を用いることは、繊維自体の強度を保ちつつしなやかさを発現させる観点から好ましい。ここで海島型複合繊維形態とは、少なくとも2成分以上からなり、一方の成分(島成分)の周りを他方の成分(海成分)が取り囲んでおり、かつ島の数が2以上である繊維形態を言う。すなわち、毒素吸着基導入後の海成分の強度は大きく低下し、実質島成分の強度が繊維自体の強度となっているため、島成分の比率を高くすることで繊維自体の強度は高くなる一方、島成分の比率を上げることにより繊維の剛性が増し、機械的応力によって繊維表面が剥がれ易くなるが、海島型複合繊維とすれば、実質的に島成分の比率が同じであっても、島の数を増やして島の個々を細くすることで繊維の剛性向上を抑えつつ繊維自体の強度を保つことができる。またさらに島の数が増えると、島成分と海成分とが接触する面積が大きくなるので、海成分が特に剥がれ難くなる。このような観点から、島の数は10以上が好ましく、15〜100であることがさらに好ましい。島の数が多過ぎると、紡糸する際に島成分同士が一つになる、いわゆる合流が起こって太くなるため却って剛性が高くなり割れ易くなる。
【0030】
複合繊維におけるポリオレフィン系高分子は繊維の30wt%以上を占めることが好ましく、40〜80wt%がより好ましく、50〜70wt%がさらに好ましい。ポリオレフィン系高分子に毒素吸着基を導入するため繊維中のポリオレフィン系高分子が占める割合が低すぎると十分に毒素吸着基が導入されず、毒素吸着率が低下してしまう。またポリオレフィン系高分子の割合が高くなりすぎると繊維素材の補強的役割を果たす補強成分の割合が少なくなるため、繊維素材として必要な強度を維持できなくなるからである。
【0031】
補強成分として使用するポリマーは、ポリエステル、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリ−α−オレフィンなどのホモ重合体、又はこれらの共重合体、ブレンド体が用いられ、その中でも耐薬品性に優れたポリ−α−オレフィンが好ましく用いられる。ポリ−α−オレフィンとしてはポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ−3−メチルブテン−1、ポリ−4−メチル−メチルペンテン−1などが好ましく用いられる。
【0032】
本発明の体液浄化カラム用繊維素材は毒素吸着基を導入して毒素吸着材とし、体液浄化カラムとして用いる。本発明の体液浄化カラムで除去する毒素とは、一般に数多く存在する毒素の他、通常無害のものや良い効果を示すものであってもその時々の状況に応じて害を及ぼす場合があるため、特に限定されるものではないが、例えば、黄色ブドウ球菌の腸管毒素、溶血毒素、ロイコシジン、コアグラーゼやプロテインA、コレラ菌のコレラ毒素、出血性大腸菌や赤痢菌の産生するベロ毒素、緑膿菌の産生する外毒素A、連鎖球菌の産生する発熱性外毒素などの分泌性の毒素や、リポポリサッカライド等の細菌自体を構成する化合物や細菌の遺伝子構成成分であるデオキシリボ核酸等、さらにはTNF−αやIL−6などのサイトカインなども毒素として挙げられる。さらに、これらの中でパイロジェンと称される一群の毒素がある。パイロジェンは発熱性を有する一群の物質の総称であり、細菌感染を通じて体内に侵入することにより発熱やショック症状を誘引することが知られている強毒性の物質である。このパイロジェン活性を有する毒素としてはグラム陰性菌の細胞膜構成成分であるリポポリサッカライド(エンドトキシン)、黄色ブドウ球菌の腸管毒素やトクシックショックシンドロームトキシン−1等が挙げられる。
【0033】
また、本発明の体液浄化カラム用繊維素材が効果を発揮できる毒素吸着基は、毒素に対する吸着性能が高いものであれば、特に限定されないが、水素結合可能な官能基を有することが好ましく、水素結合可能な官能基としては、尿素結合、チオ尿素結合、アミド結合、アミノ基及び水酸基から選ばれる置換基を有することが好ましく、より好ましくは更に疎水結合を形成可能な官能基を有するものが用いられる。尿素結合あるいはチオ尿素結合あるいはアミド結合を有する置換基としてはとくに限定はなく、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基などの脂肪族化合物やシクロヘキシル基、シクロペンチル基などの脂肪族化合物、より好ましくはフェニル基、ナフチル基、アントラシル基等の芳香族化合物が用いられる。また、アミノヘキシル基、モノメチルアミノヘキシル基、ジメチルアミノヘキシル基、アミノオクチル基、アミノドデシル基、トリル基、クロロフェニル基、ニトロフェニル基、ジフェニルメチル基、アミンジフェニルメチル基等の誘導体も好適に用いられる。アミノ基を有する化合物としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレントリアミン、ポリエチレンイミン、N−2,2−ジアミノジエチルアミン等が好ましく用いられる。水酸基を有する化合物としては、例えば、ヒドロキシプロパン、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン、ヒドロキシブタン、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシピリジン等の化合物やグルコース、グルコサミン、ガラクトサミン、マルトース、セルビオース、スクロース、アガロース、セルロース、キチン、キトサン等の単糖、オリゴ糖、多糖糖の糖質あるいはそれらの誘導体が置換基として好ましく用いられる。また、エーテル結合を有する化合物としては、例えば、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタンや3,9ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン等を用いることができる。さらに、カルボキシル基、メルカプト基、ウレタン基、グアニジノ基、エステル基等のような水素結合を形成可能な官能基を持つものも官能基として好適に用いられる。
【0034】
毒素吸着率の測定方法としては種々考えられ、測定方法により、例えば吸着体と被吸着液との容積比や被吸着液中の夾雑物濃度や反応時間、撹拌の有無等により除去率が変動すると考えられる。本発明おける吸着率の測定を以下に示す。
【0035】
細菌成分と抗生剤等の医薬品の吸着率の測定は0.15M塩化ナトリウムを含む0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)中に5mg/mlの濃度になるように牛血清アルブミン(フラクションV)を溶解させた溶液を用いる。容積比は吸着体0.1gを被吸着液1ml中に添加して行い、反応温度は37℃、吸着時間は2時間、旋回撹拌の条件において行った。これらの結果より下式(2)を用いて吸着率を計算した。
[(C0−C)/C0]×100・・・・・・(2)
ここで、C0は被吸着物の吸着前の溶液中の初期濃度、Cは被吸着物の吸着後の溶液中の濃度である。
【0036】
本発明の体液浄化カラム用繊維素材の製造方法は特に限定されるものではないが、以下に好ましい例をあげる。
【0037】
本発明の体液浄化カラム用繊維素材は、架橋度が20〜80%であるポリオレフィン系高分子を含む繊維からなるものであればよく、その繊維素材の製造方法の好ましい例としては、電子線照射装置を用いてポリオレフィン系高分子を含む繊維からなる繊維素材に電子線を照射し、ポリオレフィン系高分子を架橋させることにより本発明の繊維素材を得る方法がある。その際の電子線の線量は10〜1000kGyが好ましく、20〜500kGyがより好ましく、30〜100kGyがさらに好ましい。例えば、ポリスチレン(PS)に電子線照射する場合、日本ハイボルテージ(株)製電子線照射装置を使用し、加速電圧300KVで電流37mAの条件で、60g/m2目付で60cm×60cmの大きさの編物を200、20および6.7m/minの速度で処理したところ、PS編物の受ける照射量をそれぞれ5、50および150kGyとすることができ、さらに6.7m/minの処理を10回行うことによって、PS編物の受ける照射量は1500kGyとすることができる。そして、5、50および1500kGyの照射をすることによりPS編物の架橋度を、各々10、50、90%とすることができる。線量が多すぎると架橋度が高くなるため、毒素吸着基の導入量が少なくなり吸着率が低下してしまう。また逆に線量が少なすぎると架橋度が低くなるため、反応性が高すぎて膨潤が起こり繊維表面が割れてしまうため好ましくない。
【0038】
電子線照射時の繊維素材の形態については、特に限定されるものではないが、照射のしやすさ、照射効率の面から、また後述するカラム容器に充填する際の効率等から、織物、編物、フェルト等のシート状形態であることが好ましい。
【0039】
本発明の体液浄化カラム用繊維素材は、毒素吸着基を導入して毒素吸着材として用いられるが、毒素吸着基の導入方法は任意であり、毒素吸着基の種類によって化学反応、コーティング、その他の方法によって、一段階もしくは多段階の操作により好ましく導入できる。また、毒素吸着基を導入する時期も、織物、編物等のシート状の形態にする前でも、後でもよい。電子線照射によってポリオレフィン系高分子の架橋度を20〜80%の場合は、電子線照射後に毒素吸着基を導入する。その一例としては、アミノ基を有する毒素吸着基を導入する場合、まずアミノ基と共有結合で固定化できる反応性官能基を化学反応などによってポリオレフィン系高分子に導入し、続いてその官能基に毒素吸着基のアミノ基を共有結合させて導入する方法が好ましい。また、アミノ基と共有結合する官能基を有する毒素吸着基であれば、導入したアミノ基と反応させて毒素吸着基を導入することも好ましい方法である。さらに、毒素吸着基導入前に本発明の繊維素材を予め熱収縮させて、耐薬品性を向上させる方法も、割れ防止の観点から好ましい方法である。
【0040】
本発明の体液浄化カラムは、本発明の体液浄化カラム用繊維素材に毒素吸着基を導入した毒素吸着材をカラム容器に充填することによって製造することができる。カラムの構成としては、特に限定されないが、なかでも、毒素吸着材を平板状に形成し、これを重ねて容器に充填したカラム、毒素吸着材が円筒形状に巻かれてなる円筒状フィルターが、両端部に体液入口と体液出口とを有する円筒容器に納められているカラム、毒素吸着材が円筒状にまかれてなる中空円筒状フィルターが、その両端部を封止された状態で体液入口と体液出口とを有する円筒状容器に納められており、容器の体液入口は前記中空円筒状フィルターの外周部に通じる部位に、また容器の体液出口は前記中空円筒状フィルターの内周部に通じる部位にそれぞれ設けられているカラムが好ましい。
【0041】
以下、本発明に用いる架橋度の評価方法について詳細に説明する。
(架橋度)
本発明におけるポリオレフィン系高分子の架橋度Kとは、以下の測定方法によって求められる値をいう。
(1)単成分高分子繊維の架橋度
予め、単成分該高分子が溶解可能で該高分子ゲル化物は溶解不可能な溶媒を選択し、溶解温度、時間条件を予備検討し、適切に選択する。
【0042】
単成分高分子繊維の架橋度Kは次のような手順で測定する。該高分子繊維を乾燥した試料重量(W0)を秤量し、高分子に適した該溶媒中に投入し攪拌しながら適切な温度と時間条件で処理する。該溶液を200メッシュのフィルターで濾過し、溶媒を除去した残渣を乾燥させた後、乾燥残渣重量Wdを計量し、次式によって求めることができる。
【0043】
K=(Wd/W0)×100(%) (1)
1試料につき、3回以上のテストを行い平均し、架橋度Kとする。本発明においてはW0を0.3gとした。
【0044】
なお、ここで、溶媒の選択については次の通りである。すなわち、高分子が溶解可能とは、高分子を乾燥した重量を測定し、該高分子を溶媒に入れ、上記で実験した条件で溶解し、200メッシュの金網で濾過した残渣を乾燥し、乾燥した重量が2%以下のこという。また、高分子が溶解不可能とは、高分子を乾燥した重量を測定し、該高分子を溶媒に入れ、上記で呼び実験した条件で溶解し、200メッシュの金網で濾過した残渣を乾燥し、乾燥した重量が98%以上のことをいう。これは、以下(2)〜(4)項における測定法においても同様に定義される。
(2)ポリオレフィン系高分子を海成分とする海島型複合繊維の架橋度測定法
ポリオレフィン系高分子を海成分とする海島型複合繊維の場合、架橋度は海成分のみの架橋度Ksとする。予め、複合繊維海成分の重量成分率(p)を該高分子に適した各種定量分析法で測定する。また、予め、海成分は溶解可能で該高分子ゲル化物及び島成分は溶解不可能な溶媒と溶解温度、時間条件を予備検討し、適切に選択する。
【0045】
該複合繊維を乾燥した試料重量(W0)を秤量し、複合繊維の海成分に適した該溶媒中に投入し攪拌しながら適切な温度、時間条件で処理する。該溶液を200メッシュのフィルターで濾過し該溶液を200メッシュのフィルターで濾過し溶媒を除去した残渣を乾燥させた後、乾燥残渣重量Wdを計量し、次式によって求めることができる。
【0046】
Ks=((Wd−(W0×p))/(W0×p))×100(%) (3)
1試料につき、3回以上のテストを行い平均し、架橋度Ksとする。本発明においてはW0を0.3gとした。
(3)ポリオレフィン系高分子を海成分とする海島型複合繊維の架橋度測定法2上記(2)の方法で複合繊維の場合の架橋度が測定できない場合(繊維の海成分のみを破壊し取り出すことができない場合)は、この方法で測定する。
【0047】
ポリオレフィン系高分子を海成分とする海島型複合繊維の場合、架橋度は海成分のみの架橋度Ksとする。予め、海成分は溶解可能で該高分子ゲル化物は溶解不可能な溶媒と溶解温度、時間条件を予備検討し、適切に選択する。
【0048】
はじめに、複合繊維を30〜100mmに切断し、適切な冷媒中で冷却した後繊維を軽くハンマーで叩いて繊維の海成分のみを破壊し取り出す(島成分が破壊されていないとを確認する)。該繊維の海成分の粒子を乾燥後の重量をW0としする。次に、該試料を海成分に適した該溶媒に投入し攪拌しながら適切な温度、時間条件で処理する。該溶液を200メッシュのフィルターで濾過し、溶媒を除去した残渣を乾燥させた後、乾燥残渣量Wdを計量し、次式によって求めることができる。
【0049】
Ks=(Wd/W0)×100(%) (4)
複合成分の種類、成分比によって、冷媒の種類や冷却温度、試料の量、冷却時間などは適切な条件を選択する。1試料につき、3回以上のテストを行い平均し、架橋度とする。本発明においてはW0を0.3gとした。
【0050】
なお、ポリオレフィン系高分子を鞘成分とする芯鞘型複合繊維も同様にして測定することができる。
(4)ポリオレフィン系高分子を海成分とする海島型複合繊維の架橋度測定法3上記(3)の方法でも複合繊維の場合の架橋度が測定できない場合は、この方法で測定する。
【0051】
予め、海成分は溶解可能で該高分子ゲル化物は溶解不可能な溶媒と溶解温度、時間条件を予備検討し、適切に選択する。
【0052】
はじめに、複合繊維を10〜30mmに切断し、乾燥後の重量をWaとする。次に、該試料を該海成分に適した溶媒中に入れ攪拌しながら海成分に適した温度、時間条件で繊維の表面部分のみを溶解(W0の約1〜5%程度)する。該溶液をまず目の粗いフィルターで繊維のみを濾過し、更に、該溶液を該溶解条件の温度に再加熱した後200メッシュのフィルターで濾過し、溶液中の溶媒を除去した残渣を乾燥させた後、乾燥残渣量Wdを計量する。また、初めに濾過した繊維(複合繊維の海成分の一部は溶解するが芯成分が溶解していないことを確認する)をで乾燥させた後重量Wbを測定する。複合繊維の架橋度は次式で求めることができる。
【0053】
W0=Wa−Wb
Ks=(Wd/W0)×100(%) (4)
複合成分の種類、成分比によって、試料の量、溶解時間は適切な条件を選択することができる。また、芯成分が溶解した場合は、試料を多くし、より短時間で溶解テストを行う。
1試料につき、3回以上のテストを行い平均し、架橋度Ksとする。本発明においてはW0を0.3gとした。
【0054】
なお、複合繊維の架橋度の測定方法は、赤外法、赤外ラマン法、NMR法、GPC法、電子顕微鏡観察・比重補正法などの他の測定法との組み合わせによっても測定可能であり、複合繊維の種類、成分比などによって適切に選択できる。
【0055】
【実施例】
以下、実験例により、本発明をさらに具体的に説明する。
【0056】
<実施例1>
35wt%の島成分(ポリプロピレン:PP)と65wt%の海成分(ポリスチレン:Pst)とからなる海島型複合繊維(島数:16)を2成分紡糸装置を用いて吐出量14.4g/分、引取速度1600m/分で作製した。得られた繊維は単糸繊度4.5dtex、フィラメント数18であった。この繊維を2本合わせて、合撚し(S33t/m、162dtex、フィラメント数36)、筒編地1を作製した。得られた編地に照射線量20kGyの電子線を照射した。この処理において、ポリスチレンの架橋度30%の編地を得た。なお、ポリスチレンの架橋度の測定は前述の測定方法(1)による。
【0057】
ポリスチレンの架橋は、溶媒として、Pstは溶解可能であるがそのゲル化物とPP成分は溶解しないキシレンを溶媒として使用し複合繊維を70℃、10分間処理し測定した。複合繊維の編地を80℃で4時間乾燥し、試料300mgを採取した。キシレン500ccをステンレス容器にいれ、該試料を投入し80℃に保持し攪拌しながら10分処理した。該溶液を200メッシュのステンレスフィルターで濾過した。フィルターで濾過された残渣を80℃で4時間乾燥し計量した結果、253.5mgであった。(2)式によって架橋度は30%になる。
【0058】
この編地を50gのN−メチロール−α−クロロアセトアミド、400gのニトロベンゼン、400gの98%硫酸、0.85gのパラホルムアルデヒドの混合溶液と20℃で1時間反応させた。その後、編地をニトロベンゼンで洗浄し、その後、水により反応を停止させた後、メタノールで再び洗浄することによりα−クロロアセトアミドメチル化架橋ポリスチレン編地(以下AMPSt編地と略す。)を得た。
【0059】
次に、テトラエチレンペンタミン6.3g、n−ブチルアミン7.2gをジメチルスルホキシド(以下DMSOと略す。)500mlに溶解した液に、20gのAMPSt編地を撹拌しつつ加えた。反応は30℃で3時間行い、その後、反応した編地をガラスフィルター上でDMSO500mlを用いて洗浄し、さらにその編地を、2.3gの4−クロロフェニルイソシアネートを溶解したDMSO500mlの溶液に添加し、反応を25℃で1時間行った。その後ガラスフィルター上でDMSO1000mlを用いて洗浄し、尿素結合を導入したAMPSt編地(以下UAMP編地と略す。)を得た。
【0060】
作製したUAMP編地を用いて細菌由来成分の吸着試験を行った。細菌由来成分としては黄色ブドウ球菌の産生する外毒素であるトキシックショックシンドロームトキシン−1(以下TSST−1と略す。トキシンテクノロジー社製)、プロテインA(以下PrAと略す。ザイメット社製)、αヘモリジン(以下aHLと略す。リサーチバイオケミカルインスティテュート社より購入)および蛋白質分解酵素(以下SPEBと略す。トキシンテクノロジー社製)および大腸菌由来のリポポリサッカライド、E.coli0111B4(以下LPSと略す。シグマ社製)を用いた。濃度は、TSST−1、PrA、aHL、SPEBに関しては酵素免疫学的に、LPSに関してはリムルス試薬(和光純薬製)により測定した。
【0061】
TSST−1、PrA、aHL、SPEBを1ng/ml、LPSを10ng/mlとなるように0.15M塩化ナトリウム、5mg/ml牛血清アルブミン(フラクションV)(生化学工業社製)を含む0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)中に溶解させ被吸着液とした。UAMP0.1gをこの被吸着液1ml中に添加し、37℃で2時間旋回撹拌しつつ吸着反応を行った。吸着前後の濃度を測定し前述した式(2)を用いて除去率を算出した結果を表1に示した。細菌由来成分に対して高い除去性能を示した。
【0062】
また、得られたUAMP編地の繊維の表面状態を、任意の5箇所、倍率1000倍の条件で電子顕微鏡により観察した。その結果、繊維表面は凹凸があるものの、島成分の飛び出しや割れは発生していなかった。
【0063】
<実施例2>
実施例1で作製した筒編地1に照射線量50kGyの電子線を照射した。この処理において、ポリスチレンの架橋度50%(実施例1と同様に測定)の編地を得た。この編地から実施例1と同様の方法で、UAMP編地を作製し、吸着試験を行った。その結果、表1に示したように高い除去性能を示した。
【0064】
また、実施例1と同様に表面状態を観察したところ、繊維表面は凹凸があるものの、島成分の飛び出しや割れは発生していなかった。
【0065】
<比較例1>
電子線照射を行なわない以外は実施例1と同様の方法で、UAMP編地を作製した。得られた編地の吸着試験の結果を表1に示した。除去性能は良好であったが、実施例1と同様に表面状態を観察したところ、島成分であるポリプロピレンが数多く露出しており、所々に表面が割れたり、剥がれた跡があった。該複合繊維の海成分の架橋度は0%(実施例1と同様に測定)であった。
【0066】
<比較例2>
実施例1で得られた筒編地1に照射線量5kGyの電子線を照射した。この処理において、ポリスチレンの架橋度10%(実施例1と同様に測定)の編地を得た。この編地から実施例1と同様の方法で、UAMP編地を作製した。得られた編地の吸着試験の結果を表1に示した。比較例1の場合と同様に、除去性能は良好であったが、実施例1と同様に表面状態を観察したところ、島成分であるポリプロピレンが数多く露出しており、所々に表面が割れたり、剥がれた跡があった。
【0067】
<比較例3>
実施例1で得られた筒編地1に照射線量1500kGyの電子線を照射した。この処理において、ポリスチレンの架橋度90%(実施例1と同様に測定)の編地を得た。この編地から実施例1と同様の方法で、UAMP編地を作製した。得られた編地の吸着試験の結果を表1に示した。実施例に比べ、除去性能は低いが、実施例1と同様に表面状態を観察したところ、実施例の場合と同様に島成分の飛び出しや割れは発生していなかった。
【0068】
<実施例3、比較例4>
実施例1及び比較例1で得られたUAMP編地各50gを円筒形状に巻いて円筒状フィルターとし、これを両端部に体液入口と体液出口とを有する円筒容器に入れて、それぞれ体液浄化カラムを作製した。得られたカラムを前述の方法によりそれぞれ微粒子数を測定し、結果を表2に示した。実施例3のカラムでは、微粒子は少なく、通水時間とともに減少していくのに対し、比較例4のカラムは、微粒子が多く、4時間後でもかなり多くの微粒子が発生しており、体外循環治療用には不適当であった。
(流出微粒子量の測定方法)
体外循環治療時に割れ片が体液中の混入するおそれがあるか否かを調べるために、体液浄化カラムに通液した場合に流出する微粒子を測定した。その測定方法は以下の通りである。
【0069】
体液浄化カラムに粒径5μm以上の異物数が5個/ml以下、25μm以上の異物数が0.01個/ml以下のメンブレンフィルター濾過水を体液ポンプを用いて、200ml/分の流速で4時間通し、その流出液を、送液開始後、1時間、2時間、3時間、4時間後に採取した。それぞれの液に含まれる粒径5μm以上及び25μm以上の異物数を測定し、5μm以上の異物が10個/ml以下、25μm以上の異物が0.01個/ml以下の場合を合格レベルと判断した。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
【発明の効果】
補強成分の飛び出しや繊維表面の割れを防ぐことにより体外循環治療時における体液中への割れ片混入を防止でき、かつ毒素吸着効率が高い体液浄化カラム用の繊維素材を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、体液中の毒素を除去する体液浄化カラム用の繊維素材及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
細菌感染は種々の疾患に伴って発生し、その後、敗血症等の重篤な状態に陥ることもある。一般に、細菌感染に対しては抗生剤の投与による治療が行われるが患者の容態や菌の薬剤耐性化等により効果が出ない場合も多い。このような抗菌剤の効果の低い患者に対しては、体液浄化カラム等を用いてエンドトキシン、ペプチドグリカン、リポタイコ酸、スーパー抗原、エンテロトキシン等細菌由来の成分を積極的に体外に除去する療法が治療の一つとして行われている。
【0003】
細菌由来の成分を吸着し体外に除去する物として、ポリスチレン繊維にポリミキシンを固定化した吸着剤を充填したエンドトキシンを除去するカラムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
そして、繊維に直接ポリミキシンのような毒素吸着基を化学的に導入する場合、繊維自体の強度が低下することがあるが、それに対しては毒素吸着基導入反応に不活性なポリマーを島成分に配して補強する海島型複合繊維を用いることが提案されている(例えば、特許文献2〜4参照)。
【0005】
しかし、海島型複合繊維を用いて補強した場合であっても、毒素吸着基導入反応や機械的応力によって繊維表面の割れが発生することがあった。このため毒素吸着基を導入した繊維素材を充填したカラムの出口にフィルターを取り付けても、割れ片が小さい場合にはフィルターをすり抜けてしまい、体外循環による治療時に体液中へ混入する問題が懸念されていた。さらに、繊維表面が割れることによって、せっかく毒素吸着基を導入した海成分が脱落してしまうため毒素吸着効率が低下する問題もあり、反応条件やカラム充填作業の管理が非常に難しかった。
【0006】
【特許文献1】
特開昭60−209525号公報
【0007】
【特許文献2】
特開平9−235263号公報
【0008】
【特許文献3】
特開平10−147518号公報
【0009】
【特許文献4】
特開平10−147541号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑み、毒素吸着基導入反応や機械的応力を受けることによって起こる繊維表面の割れが無く、体外循環治療時における体液中への割れ片混入を防止でき、かつ毒素吸着効率が高い体液浄化カラム用の繊維素材を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するため本発明は、次の通りの構成をとるものである。
【0012】
(1)架橋度が20〜80%であるポリオレフィン系高分子を含む繊維からなることを特徴とする体液浄化カラム用繊維素材。
【0013】
(2)前記繊維が、少なくとも2成分以上のポリマーからなる複合繊維であることを特徴とする(1)記載の体液浄化カラム用繊維素材。
【0014】
(3)前記ポリオレフィン系高分子が、繊維に30wt%以上含まれることを特徴とする(1)または(2)記載の体液浄化カラム用繊維素材。
【0015】
(4)前記複合繊維が海島型複合繊維であり、海成分に少なくともポリオレフィン系高分子を含むことを特徴とする(2)または(3)に記載の体液浄化カラム用繊維素材。
【0016】
(5)前記ポリオレフィン系高分子が芳香族ポリビニル系高分子であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の体液浄化カラム用繊維素材。
【0017】
(6)少なくともポリオレフィン系高分子含む繊維素材に電子線を照射して、ポリオレフィン高分子を架橋させることを特徴とする体液浄化カラム用繊維素材の製造方法。
【0018】
(7)前記電子線の線量が10〜1000kGyであることを特徴とする(6)に記載の体液浄化カラム用繊維素材の製造方法。
【0019】
(8)前記繊維素材が織物、編物、フェルト、不織布から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする(6)に記載の体液浄化カラム用繊維素材の製造方法。
(9)(1)〜(5)のいずれかに記載の体液浄化カラム用繊維素材に毒素吸着基を導入した毒素吸着材。
(10)(9)に記載の毒素吸着材を充填した体液浄化用カラム。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、さらに詳しく本発明について説明をする。
【0021】
本発明は、架橋度が20〜80%であるポリオレフィン系高分子を含む繊維からなることを特徴とする体液浄化カラム用繊維素材である。ポリオレフィン系高分子の架橋度を20〜80%とすることで繊維としたときの繊維表面の割れを防止することができる。すなわち架橋させることによって反応性が抑制され繊維表面は割れ難くなるが、架橋させすぎると毒素吸着基の導入量が少なくなり、吸着率が低下してしまう。また逆に架橋が少なすぎると反応性が高すぎて、前述のとおり繊維表面が割れてしまう。このような観点から適した架橋度は20〜80%であり、より好ましくは30〜70%、さらに好ましくは40〜60%である。すなわち本発明の繊維素材を用いれば、割れを防止できるため体外循環時に割れ片などが体液中に混入する恐れがない安全な体液浄化カラムを達成することができる。
【0022】
なお、本発明において体液とは、血液、血漿、血清、腹水、リンパ液、関節内液及びこれらから得られた分画成分、ならびにその他の生体由来の液性成分をいう。
【0023】
本発明におけるポリオレフィン系高分子の架橋度Kとは、以下の測定方法によって求められる値をいう。
【0024】
予め、単成分該高分子が溶解可能で該高分子ゲル化物は溶解不可能な溶媒を選択し、溶解温度、時間条件を予備検討し、適切に選択する。単成分高分子繊維の架橋度Kは次のような手順で測定する。該高分子繊維を乾燥した試料重量(W0)を秤量し、高分子に適した該溶媒中に投入し攪拌しながら適切な温度と時間条件で処理する。該溶液を200メッシュのフィルターで濾過し、溶媒を除去した残渣を乾燥させた後、乾燥残渣重量Wdを計量し、次式によって求めることができる。
【0025】
K=(Wd/W0)×100(%) (1)
繊維が複合繊維の場合の架橋度も別の測定方法により測定するが、詳細な架橋度の評価法は後述する。
【0026】
本発明の体液浄化カラム用繊維素材に使用するポリオレフィン系高分子は、毒素吸着基を化学的に導入できるものであれば特に制限はないが、特に芳香族ポリビニル系化合物が好ましく用いられる。芳香族ポリビニル系化合物としては、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、ポリビニルトルエン、ポリビニルキシレン、ポリクロロメチルスチレン、ポリスルホンなどのホモ重合体、これら2種以上共重合体もしくは他の不活性モノマーとの共重合体又はブレンドがより好ましく、中でもポリスチレン、ポリスルホンがさらに好ましく用いられる。
【0027】
本発明の体液浄化カラム用繊維素材の形態については、特に限定されるものではないが、毒素吸着基を導入する場合やカラムに充填する場合の扱い易さを考慮すると、織物、編物、フェルト、不織布等のシート状形態であることが好ましい。織物、編物として用いる場合に繊維はモノフィラメントでもマルチフィラメントでも何ら問題なく適用できるが、特にマルチフィラメントを用いることは総繊度に対して多くの毒素吸着基を導入できるため好ましい態様である。このような観点からマルチフィラメントを用いる場合の好ましいフィラメント数は5以上であり、より好ましくは10以上である。繊維の総繊度は製織、製編加工時にある程度の強力を有する必要があるため30dtex以上であることが好ましく、40〜300dtexであることがより好ましい。太くなり過ぎると織り難く、編み難くなるからである。また、製織、製編の際にマルチフィラメントに撚りを掛けることは好ましい様態である。すなわち、撚りを掛けることで単糸の弛みや毛羽を抑えることができ、製織、製編し易くなる。撚り方向としてはS方向でもZ方向でも問題なく、また撚り数は特に限定されないが、好ましい撚り数は10t/m以上であり、より好ましくは15〜500t/m、さらに好ましくは18〜200t/mである。撚り数が多くなると単糸同士がまとまり過ぎて、マルチフィラメントとしての効果が低くなってしまう。撚糸後の撚り止めセットは、必要に応じて、例えば残留撚トルクを除くためなどに好ましく行うことができる。上記態様の他に仮撚加工糸、インターレース糸などさまざまな態様で適用することができる。さらに本発明における繊維は、繊維素材の形態に関わらず、必要に応じて、例えば、強度向上、鮮度調整などの目的で延伸、弛緩処理、熱処理などの加工を行うことができる。
【0028】
本発明の体液浄化カラム用繊維素材の単糸繊度は、特に限定されないが、20dtex以下であることが好ましく、より好ましくは10dtex以下であり、さらに好ましくは0.1dtex〜7dtexである。単糸繊度を細くすると繊維自体がしなやかになるため、反応後のカラムへの充填作業等に対しても扱いやすく、割れ難くなり、さらにカラム充填量(g)あたりの比表面積が向上するため多くの毒素吸着基が導入でき、吸着効率も高くなるからである。但し、単糸繊度が細くなりすぎると、繊維全体として強力が無くなりカラムへの充填作業時などで単糸切れが発生し易くなり好ましくない。なお、本発明の繊維素材は丸型断面だけでなく、三角型、四角型、H型、扁平型、中空型などさまざまな異形断面の繊維が好ましく適用できる。
【0029】
本発明の体液浄化カラム用繊維素材を構成する繊維は、ポリオレフィン系高分子単成分からなるものでも、他成分との複合繊維であってもよいが、複合繊維を用いることは、毒素吸着基を導入するポリオレフィン系高分子を反応に不活性なポリマーで補強し、毒素吸着基導入反応の際の強度低下を防ぐことができるため好ましい態様である。また、複合繊維の中でも海島型複合繊維を用いることは、繊維自体の強度を保ちつつしなやかさを発現させる観点から好ましい。ここで海島型複合繊維形態とは、少なくとも2成分以上からなり、一方の成分(島成分)の周りを他方の成分(海成分)が取り囲んでおり、かつ島の数が2以上である繊維形態を言う。すなわち、毒素吸着基導入後の海成分の強度は大きく低下し、実質島成分の強度が繊維自体の強度となっているため、島成分の比率を高くすることで繊維自体の強度は高くなる一方、島成分の比率を上げることにより繊維の剛性が増し、機械的応力によって繊維表面が剥がれ易くなるが、海島型複合繊維とすれば、実質的に島成分の比率が同じであっても、島の数を増やして島の個々を細くすることで繊維の剛性向上を抑えつつ繊維自体の強度を保つことができる。またさらに島の数が増えると、島成分と海成分とが接触する面積が大きくなるので、海成分が特に剥がれ難くなる。このような観点から、島の数は10以上が好ましく、15〜100であることがさらに好ましい。島の数が多過ぎると、紡糸する際に島成分同士が一つになる、いわゆる合流が起こって太くなるため却って剛性が高くなり割れ易くなる。
【0030】
複合繊維におけるポリオレフィン系高分子は繊維の30wt%以上を占めることが好ましく、40〜80wt%がより好ましく、50〜70wt%がさらに好ましい。ポリオレフィン系高分子に毒素吸着基を導入するため繊維中のポリオレフィン系高分子が占める割合が低すぎると十分に毒素吸着基が導入されず、毒素吸着率が低下してしまう。またポリオレフィン系高分子の割合が高くなりすぎると繊維素材の補強的役割を果たす補強成分の割合が少なくなるため、繊維素材として必要な強度を維持できなくなるからである。
【0031】
補強成分として使用するポリマーは、ポリエステル、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリ−α−オレフィンなどのホモ重合体、又はこれらの共重合体、ブレンド体が用いられ、その中でも耐薬品性に優れたポリ−α−オレフィンが好ましく用いられる。ポリ−α−オレフィンとしてはポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ−3−メチルブテン−1、ポリ−4−メチル−メチルペンテン−1などが好ましく用いられる。
【0032】
本発明の体液浄化カラム用繊維素材は毒素吸着基を導入して毒素吸着材とし、体液浄化カラムとして用いる。本発明の体液浄化カラムで除去する毒素とは、一般に数多く存在する毒素の他、通常無害のものや良い効果を示すものであってもその時々の状況に応じて害を及ぼす場合があるため、特に限定されるものではないが、例えば、黄色ブドウ球菌の腸管毒素、溶血毒素、ロイコシジン、コアグラーゼやプロテインA、コレラ菌のコレラ毒素、出血性大腸菌や赤痢菌の産生するベロ毒素、緑膿菌の産生する外毒素A、連鎖球菌の産生する発熱性外毒素などの分泌性の毒素や、リポポリサッカライド等の細菌自体を構成する化合物や細菌の遺伝子構成成分であるデオキシリボ核酸等、さらにはTNF−αやIL−6などのサイトカインなども毒素として挙げられる。さらに、これらの中でパイロジェンと称される一群の毒素がある。パイロジェンは発熱性を有する一群の物質の総称であり、細菌感染を通じて体内に侵入することにより発熱やショック症状を誘引することが知られている強毒性の物質である。このパイロジェン活性を有する毒素としてはグラム陰性菌の細胞膜構成成分であるリポポリサッカライド(エンドトキシン)、黄色ブドウ球菌の腸管毒素やトクシックショックシンドロームトキシン−1等が挙げられる。
【0033】
また、本発明の体液浄化カラム用繊維素材が効果を発揮できる毒素吸着基は、毒素に対する吸着性能が高いものであれば、特に限定されないが、水素結合可能な官能基を有することが好ましく、水素結合可能な官能基としては、尿素結合、チオ尿素結合、アミド結合、アミノ基及び水酸基から選ばれる置換基を有することが好ましく、より好ましくは更に疎水結合を形成可能な官能基を有するものが用いられる。尿素結合あるいはチオ尿素結合あるいはアミド結合を有する置換基としてはとくに限定はなく、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基などの脂肪族化合物やシクロヘキシル基、シクロペンチル基などの脂肪族化合物、より好ましくはフェニル基、ナフチル基、アントラシル基等の芳香族化合物が用いられる。また、アミノヘキシル基、モノメチルアミノヘキシル基、ジメチルアミノヘキシル基、アミノオクチル基、アミノドデシル基、トリル基、クロロフェニル基、ニトロフェニル基、ジフェニルメチル基、アミンジフェニルメチル基等の誘導体も好適に用いられる。アミノ基を有する化合物としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレントリアミン、ポリエチレンイミン、N−2,2−ジアミノジエチルアミン等が好ましく用いられる。水酸基を有する化合物としては、例えば、ヒドロキシプロパン、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン、ヒドロキシブタン、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシピリジン等の化合物やグルコース、グルコサミン、ガラクトサミン、マルトース、セルビオース、スクロース、アガロース、セルロース、キチン、キトサン等の単糖、オリゴ糖、多糖糖の糖質あるいはそれらの誘導体が置換基として好ましく用いられる。また、エーテル結合を有する化合物としては、例えば、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタンや3,9ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン等を用いることができる。さらに、カルボキシル基、メルカプト基、ウレタン基、グアニジノ基、エステル基等のような水素結合を形成可能な官能基を持つものも官能基として好適に用いられる。
【0034】
毒素吸着率の測定方法としては種々考えられ、測定方法により、例えば吸着体と被吸着液との容積比や被吸着液中の夾雑物濃度や反応時間、撹拌の有無等により除去率が変動すると考えられる。本発明おける吸着率の測定を以下に示す。
【0035】
細菌成分と抗生剤等の医薬品の吸着率の測定は0.15M塩化ナトリウムを含む0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)中に5mg/mlの濃度になるように牛血清アルブミン(フラクションV)を溶解させた溶液を用いる。容積比は吸着体0.1gを被吸着液1ml中に添加して行い、反応温度は37℃、吸着時間は2時間、旋回撹拌の条件において行った。これらの結果より下式(2)を用いて吸着率を計算した。
[(C0−C)/C0]×100・・・・・・(2)
ここで、C0は被吸着物の吸着前の溶液中の初期濃度、Cは被吸着物の吸着後の溶液中の濃度である。
【0036】
本発明の体液浄化カラム用繊維素材の製造方法は特に限定されるものではないが、以下に好ましい例をあげる。
【0037】
本発明の体液浄化カラム用繊維素材は、架橋度が20〜80%であるポリオレフィン系高分子を含む繊維からなるものであればよく、その繊維素材の製造方法の好ましい例としては、電子線照射装置を用いてポリオレフィン系高分子を含む繊維からなる繊維素材に電子線を照射し、ポリオレフィン系高分子を架橋させることにより本発明の繊維素材を得る方法がある。その際の電子線の線量は10〜1000kGyが好ましく、20〜500kGyがより好ましく、30〜100kGyがさらに好ましい。例えば、ポリスチレン(PS)に電子線照射する場合、日本ハイボルテージ(株)製電子線照射装置を使用し、加速電圧300KVで電流37mAの条件で、60g/m2目付で60cm×60cmの大きさの編物を200、20および6.7m/minの速度で処理したところ、PS編物の受ける照射量をそれぞれ5、50および150kGyとすることができ、さらに6.7m/minの処理を10回行うことによって、PS編物の受ける照射量は1500kGyとすることができる。そして、5、50および1500kGyの照射をすることによりPS編物の架橋度を、各々10、50、90%とすることができる。線量が多すぎると架橋度が高くなるため、毒素吸着基の導入量が少なくなり吸着率が低下してしまう。また逆に線量が少なすぎると架橋度が低くなるため、反応性が高すぎて膨潤が起こり繊維表面が割れてしまうため好ましくない。
【0038】
電子線照射時の繊維素材の形態については、特に限定されるものではないが、照射のしやすさ、照射効率の面から、また後述するカラム容器に充填する際の効率等から、織物、編物、フェルト等のシート状形態であることが好ましい。
【0039】
本発明の体液浄化カラム用繊維素材は、毒素吸着基を導入して毒素吸着材として用いられるが、毒素吸着基の導入方法は任意であり、毒素吸着基の種類によって化学反応、コーティング、その他の方法によって、一段階もしくは多段階の操作により好ましく導入できる。また、毒素吸着基を導入する時期も、織物、編物等のシート状の形態にする前でも、後でもよい。電子線照射によってポリオレフィン系高分子の架橋度を20〜80%の場合は、電子線照射後に毒素吸着基を導入する。その一例としては、アミノ基を有する毒素吸着基を導入する場合、まずアミノ基と共有結合で固定化できる反応性官能基を化学反応などによってポリオレフィン系高分子に導入し、続いてその官能基に毒素吸着基のアミノ基を共有結合させて導入する方法が好ましい。また、アミノ基と共有結合する官能基を有する毒素吸着基であれば、導入したアミノ基と反応させて毒素吸着基を導入することも好ましい方法である。さらに、毒素吸着基導入前に本発明の繊維素材を予め熱収縮させて、耐薬品性を向上させる方法も、割れ防止の観点から好ましい方法である。
【0040】
本発明の体液浄化カラムは、本発明の体液浄化カラム用繊維素材に毒素吸着基を導入した毒素吸着材をカラム容器に充填することによって製造することができる。カラムの構成としては、特に限定されないが、なかでも、毒素吸着材を平板状に形成し、これを重ねて容器に充填したカラム、毒素吸着材が円筒形状に巻かれてなる円筒状フィルターが、両端部に体液入口と体液出口とを有する円筒容器に納められているカラム、毒素吸着材が円筒状にまかれてなる中空円筒状フィルターが、その両端部を封止された状態で体液入口と体液出口とを有する円筒状容器に納められており、容器の体液入口は前記中空円筒状フィルターの外周部に通じる部位に、また容器の体液出口は前記中空円筒状フィルターの内周部に通じる部位にそれぞれ設けられているカラムが好ましい。
【0041】
以下、本発明に用いる架橋度の評価方法について詳細に説明する。
(架橋度)
本発明におけるポリオレフィン系高分子の架橋度Kとは、以下の測定方法によって求められる値をいう。
(1)単成分高分子繊維の架橋度
予め、単成分該高分子が溶解可能で該高分子ゲル化物は溶解不可能な溶媒を選択し、溶解温度、時間条件を予備検討し、適切に選択する。
【0042】
単成分高分子繊維の架橋度Kは次のような手順で測定する。該高分子繊維を乾燥した試料重量(W0)を秤量し、高分子に適した該溶媒中に投入し攪拌しながら適切な温度と時間条件で処理する。該溶液を200メッシュのフィルターで濾過し、溶媒を除去した残渣を乾燥させた後、乾燥残渣重量Wdを計量し、次式によって求めることができる。
【0043】
K=(Wd/W0)×100(%) (1)
1試料につき、3回以上のテストを行い平均し、架橋度Kとする。本発明においてはW0を0.3gとした。
【0044】
なお、ここで、溶媒の選択については次の通りである。すなわち、高分子が溶解可能とは、高分子を乾燥した重量を測定し、該高分子を溶媒に入れ、上記で実験した条件で溶解し、200メッシュの金網で濾過した残渣を乾燥し、乾燥した重量が2%以下のこという。また、高分子が溶解不可能とは、高分子を乾燥した重量を測定し、該高分子を溶媒に入れ、上記で呼び実験した条件で溶解し、200メッシュの金網で濾過した残渣を乾燥し、乾燥した重量が98%以上のことをいう。これは、以下(2)〜(4)項における測定法においても同様に定義される。
(2)ポリオレフィン系高分子を海成分とする海島型複合繊維の架橋度測定法
ポリオレフィン系高分子を海成分とする海島型複合繊維の場合、架橋度は海成分のみの架橋度Ksとする。予め、複合繊維海成分の重量成分率(p)を該高分子に適した各種定量分析法で測定する。また、予め、海成分は溶解可能で該高分子ゲル化物及び島成分は溶解不可能な溶媒と溶解温度、時間条件を予備検討し、適切に選択する。
【0045】
該複合繊維を乾燥した試料重量(W0)を秤量し、複合繊維の海成分に適した該溶媒中に投入し攪拌しながら適切な温度、時間条件で処理する。該溶液を200メッシュのフィルターで濾過し該溶液を200メッシュのフィルターで濾過し溶媒を除去した残渣を乾燥させた後、乾燥残渣重量Wdを計量し、次式によって求めることができる。
【0046】
Ks=((Wd−(W0×p))/(W0×p))×100(%) (3)
1試料につき、3回以上のテストを行い平均し、架橋度Ksとする。本発明においてはW0を0.3gとした。
(3)ポリオレフィン系高分子を海成分とする海島型複合繊維の架橋度測定法2上記(2)の方法で複合繊維の場合の架橋度が測定できない場合(繊維の海成分のみを破壊し取り出すことができない場合)は、この方法で測定する。
【0047】
ポリオレフィン系高分子を海成分とする海島型複合繊維の場合、架橋度は海成分のみの架橋度Ksとする。予め、海成分は溶解可能で該高分子ゲル化物は溶解不可能な溶媒と溶解温度、時間条件を予備検討し、適切に選択する。
【0048】
はじめに、複合繊維を30〜100mmに切断し、適切な冷媒中で冷却した後繊維を軽くハンマーで叩いて繊維の海成分のみを破壊し取り出す(島成分が破壊されていないとを確認する)。該繊維の海成分の粒子を乾燥後の重量をW0としする。次に、該試料を海成分に適した該溶媒に投入し攪拌しながら適切な温度、時間条件で処理する。該溶液を200メッシュのフィルターで濾過し、溶媒を除去した残渣を乾燥させた後、乾燥残渣量Wdを計量し、次式によって求めることができる。
【0049】
Ks=(Wd/W0)×100(%) (4)
複合成分の種類、成分比によって、冷媒の種類や冷却温度、試料の量、冷却時間などは適切な条件を選択する。1試料につき、3回以上のテストを行い平均し、架橋度とする。本発明においてはW0を0.3gとした。
【0050】
なお、ポリオレフィン系高分子を鞘成分とする芯鞘型複合繊維も同様にして測定することができる。
(4)ポリオレフィン系高分子を海成分とする海島型複合繊維の架橋度測定法3上記(3)の方法でも複合繊維の場合の架橋度が測定できない場合は、この方法で測定する。
【0051】
予め、海成分は溶解可能で該高分子ゲル化物は溶解不可能な溶媒と溶解温度、時間条件を予備検討し、適切に選択する。
【0052】
はじめに、複合繊維を10〜30mmに切断し、乾燥後の重量をWaとする。次に、該試料を該海成分に適した溶媒中に入れ攪拌しながら海成分に適した温度、時間条件で繊維の表面部分のみを溶解(W0の約1〜5%程度)する。該溶液をまず目の粗いフィルターで繊維のみを濾過し、更に、該溶液を該溶解条件の温度に再加熱した後200メッシュのフィルターで濾過し、溶液中の溶媒を除去した残渣を乾燥させた後、乾燥残渣量Wdを計量する。また、初めに濾過した繊維(複合繊維の海成分の一部は溶解するが芯成分が溶解していないことを確認する)をで乾燥させた後重量Wbを測定する。複合繊維の架橋度は次式で求めることができる。
【0053】
W0=Wa−Wb
Ks=(Wd/W0)×100(%) (4)
複合成分の種類、成分比によって、試料の量、溶解時間は適切な条件を選択することができる。また、芯成分が溶解した場合は、試料を多くし、より短時間で溶解テストを行う。
1試料につき、3回以上のテストを行い平均し、架橋度Ksとする。本発明においてはW0を0.3gとした。
【0054】
なお、複合繊維の架橋度の測定方法は、赤外法、赤外ラマン法、NMR法、GPC法、電子顕微鏡観察・比重補正法などの他の測定法との組み合わせによっても測定可能であり、複合繊維の種類、成分比などによって適切に選択できる。
【0055】
【実施例】
以下、実験例により、本発明をさらに具体的に説明する。
【0056】
<実施例1>
35wt%の島成分(ポリプロピレン:PP)と65wt%の海成分(ポリスチレン:Pst)とからなる海島型複合繊維(島数:16)を2成分紡糸装置を用いて吐出量14.4g/分、引取速度1600m/分で作製した。得られた繊維は単糸繊度4.5dtex、フィラメント数18であった。この繊維を2本合わせて、合撚し(S33t/m、162dtex、フィラメント数36)、筒編地1を作製した。得られた編地に照射線量20kGyの電子線を照射した。この処理において、ポリスチレンの架橋度30%の編地を得た。なお、ポリスチレンの架橋度の測定は前述の測定方法(1)による。
【0057】
ポリスチレンの架橋は、溶媒として、Pstは溶解可能であるがそのゲル化物とPP成分は溶解しないキシレンを溶媒として使用し複合繊維を70℃、10分間処理し測定した。複合繊維の編地を80℃で4時間乾燥し、試料300mgを採取した。キシレン500ccをステンレス容器にいれ、該試料を投入し80℃に保持し攪拌しながら10分処理した。該溶液を200メッシュのステンレスフィルターで濾過した。フィルターで濾過された残渣を80℃で4時間乾燥し計量した結果、253.5mgであった。(2)式によって架橋度は30%になる。
【0058】
この編地を50gのN−メチロール−α−クロロアセトアミド、400gのニトロベンゼン、400gの98%硫酸、0.85gのパラホルムアルデヒドの混合溶液と20℃で1時間反応させた。その後、編地をニトロベンゼンで洗浄し、その後、水により反応を停止させた後、メタノールで再び洗浄することによりα−クロロアセトアミドメチル化架橋ポリスチレン編地(以下AMPSt編地と略す。)を得た。
【0059】
次に、テトラエチレンペンタミン6.3g、n−ブチルアミン7.2gをジメチルスルホキシド(以下DMSOと略す。)500mlに溶解した液に、20gのAMPSt編地を撹拌しつつ加えた。反応は30℃で3時間行い、その後、反応した編地をガラスフィルター上でDMSO500mlを用いて洗浄し、さらにその編地を、2.3gの4−クロロフェニルイソシアネートを溶解したDMSO500mlの溶液に添加し、反応を25℃で1時間行った。その後ガラスフィルター上でDMSO1000mlを用いて洗浄し、尿素結合を導入したAMPSt編地(以下UAMP編地と略す。)を得た。
【0060】
作製したUAMP編地を用いて細菌由来成分の吸着試験を行った。細菌由来成分としては黄色ブドウ球菌の産生する外毒素であるトキシックショックシンドロームトキシン−1(以下TSST−1と略す。トキシンテクノロジー社製)、プロテインA(以下PrAと略す。ザイメット社製)、αヘモリジン(以下aHLと略す。リサーチバイオケミカルインスティテュート社より購入)および蛋白質分解酵素(以下SPEBと略す。トキシンテクノロジー社製)および大腸菌由来のリポポリサッカライド、E.coli0111B4(以下LPSと略す。シグマ社製)を用いた。濃度は、TSST−1、PrA、aHL、SPEBに関しては酵素免疫学的に、LPSに関してはリムルス試薬(和光純薬製)により測定した。
【0061】
TSST−1、PrA、aHL、SPEBを1ng/ml、LPSを10ng/mlとなるように0.15M塩化ナトリウム、5mg/ml牛血清アルブミン(フラクションV)(生化学工業社製)を含む0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)中に溶解させ被吸着液とした。UAMP0.1gをこの被吸着液1ml中に添加し、37℃で2時間旋回撹拌しつつ吸着反応を行った。吸着前後の濃度を測定し前述した式(2)を用いて除去率を算出した結果を表1に示した。細菌由来成分に対して高い除去性能を示した。
【0062】
また、得られたUAMP編地の繊維の表面状態を、任意の5箇所、倍率1000倍の条件で電子顕微鏡により観察した。その結果、繊維表面は凹凸があるものの、島成分の飛び出しや割れは発生していなかった。
【0063】
<実施例2>
実施例1で作製した筒編地1に照射線量50kGyの電子線を照射した。この処理において、ポリスチレンの架橋度50%(実施例1と同様に測定)の編地を得た。この編地から実施例1と同様の方法で、UAMP編地を作製し、吸着試験を行った。その結果、表1に示したように高い除去性能を示した。
【0064】
また、実施例1と同様に表面状態を観察したところ、繊維表面は凹凸があるものの、島成分の飛び出しや割れは発生していなかった。
【0065】
<比較例1>
電子線照射を行なわない以外は実施例1と同様の方法で、UAMP編地を作製した。得られた編地の吸着試験の結果を表1に示した。除去性能は良好であったが、実施例1と同様に表面状態を観察したところ、島成分であるポリプロピレンが数多く露出しており、所々に表面が割れたり、剥がれた跡があった。該複合繊維の海成分の架橋度は0%(実施例1と同様に測定)であった。
【0066】
<比較例2>
実施例1で得られた筒編地1に照射線量5kGyの電子線を照射した。この処理において、ポリスチレンの架橋度10%(実施例1と同様に測定)の編地を得た。この編地から実施例1と同様の方法で、UAMP編地を作製した。得られた編地の吸着試験の結果を表1に示した。比較例1の場合と同様に、除去性能は良好であったが、実施例1と同様に表面状態を観察したところ、島成分であるポリプロピレンが数多く露出しており、所々に表面が割れたり、剥がれた跡があった。
【0067】
<比較例3>
実施例1で得られた筒編地1に照射線量1500kGyの電子線を照射した。この処理において、ポリスチレンの架橋度90%(実施例1と同様に測定)の編地を得た。この編地から実施例1と同様の方法で、UAMP編地を作製した。得られた編地の吸着試験の結果を表1に示した。実施例に比べ、除去性能は低いが、実施例1と同様に表面状態を観察したところ、実施例の場合と同様に島成分の飛び出しや割れは発生していなかった。
【0068】
<実施例3、比較例4>
実施例1及び比較例1で得られたUAMP編地各50gを円筒形状に巻いて円筒状フィルターとし、これを両端部に体液入口と体液出口とを有する円筒容器に入れて、それぞれ体液浄化カラムを作製した。得られたカラムを前述の方法によりそれぞれ微粒子数を測定し、結果を表2に示した。実施例3のカラムでは、微粒子は少なく、通水時間とともに減少していくのに対し、比較例4のカラムは、微粒子が多く、4時間後でもかなり多くの微粒子が発生しており、体外循環治療用には不適当であった。
(流出微粒子量の測定方法)
体外循環治療時に割れ片が体液中の混入するおそれがあるか否かを調べるために、体液浄化カラムに通液した場合に流出する微粒子を測定した。その測定方法は以下の通りである。
【0069】
体液浄化カラムに粒径5μm以上の異物数が5個/ml以下、25μm以上の異物数が0.01個/ml以下のメンブレンフィルター濾過水を体液ポンプを用いて、200ml/分の流速で4時間通し、その流出液を、送液開始後、1時間、2時間、3時間、4時間後に採取した。それぞれの液に含まれる粒径5μm以上及び25μm以上の異物数を測定し、5μm以上の異物が10個/ml以下、25μm以上の異物が0.01個/ml以下の場合を合格レベルと判断した。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
【発明の効果】
補強成分の飛び出しや繊維表面の割れを防ぐことにより体外循環治療時における体液中への割れ片混入を防止でき、かつ毒素吸着効率が高い体液浄化カラム用の繊維素材を提供することができる。
Claims (10)
- 架橋度が20〜80%であるポリオレフィン系高分子を含む繊維からなることを特徴とする体液浄化カラム用繊維素材。
- 前記繊維が、少なくとも2成分以上のポリマーからなる複合繊維であることを特徴とする請求項1に記載の体液浄化カラム用繊維素材。
- 前記ポリオレフィン系高分子が、繊維に30wt%以上含まれることを特徴とする請求項2に記載の体液浄化カラム用繊維素材。
- 前記複合繊維が海島型複合繊維であり、海成分に少なくともポリオレフィン系高分子を含むことを特徴とする請求項2または3に記載の体液浄化カラム用繊維素材。
- 前記ポリオレフィン系高分子が芳香族ポリビニル系高分子であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の体液浄化カラム用繊維素材。
- 少なくともポリオレフィン系高分子を含む繊維素材に電子線を照射して、ポリオレフィン系高分子を架橋させることを特徴とする体液浄化カラム用繊維素材の製造方法。
- 前記電子線の線量が10〜1000kGyであることを特徴とする請求項6に記載の体液浄化カラム用繊維素材の製造方法。
- 前記繊維素材が織物、編物、フェルト、不織布から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項6に記載の体液浄化カラム用繊維素材の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の体液浄化カラム用繊維素材に毒素吸着基を導入した毒素吸着材。
- 請求項9に記載の毒素吸着材を充填した体液浄化用カラム。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP2003067792A JP2004275251A (ja) | 2003-03-13 | 2003-03-13 | 体液浄化カラム用繊維素材及びその製造方法 |
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| JP2003067792A JP2004275251A (ja) | 2003-03-13 | 2003-03-13 | 体液浄化カラム用繊維素材及びその製造方法 |
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|---|---|
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Cited By (2)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP2006305313A (ja) * | 2005-03-31 | 2006-11-09 | Toray Ind Inc | アルブミン非結合かつグルクロン酸非抱合のビリルビンを除去する材料 |
| CN103402378A (zh) * | 2011-02-16 | 2013-11-20 | 辛绍祺 | 高分子聚合物的用途及其组成物 |
-
2003
- 2003-03-13 JP JP2003067792A patent/JP2004275251A/ja active Pending
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