JP2004277128A - 糸巻取機 - Google Patents
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Abstract
【課題】紡績機等の糸巻取装置において、リボン巻き及び耳高を防止する。
【解決手段】糸Yをトラバースしつつ巻き取ってパッケージ16を形成するに当たり、パッケージ16を回転ドラム13及び往復トラバース装置のトラバースガイド70に対し、所定スケジュールで離接させる。パッケージ16を離接させる手段としては、パッケージ16のボビンを支持するクレードルアームを揺動させる機構などが考えられる。パッケージ16を回転ドラム13から離隔させると回転駆動力が与えられなくなるため減速する。巻取速度が減速すると糸Yの綾角が変化するので、リボン巻きが抑えられる。またパッケージ16をトラバースガイド70から離隔させると、糸Yのターン位置がパッケージ16の中央側へ変位することにより、糸Yの巻き付き量が局所的に多くなるのが防止され、耳高の問題が回避される
【選択図】 図1
【解決手段】糸Yをトラバースしつつ巻き取ってパッケージ16を形成するに当たり、パッケージ16を回転ドラム13及び往復トラバース装置のトラバースガイド70に対し、所定スケジュールで離接させる。パッケージ16を離接させる手段としては、パッケージ16のボビンを支持するクレードルアームを揺動させる機構などが考えられる。パッケージ16を回転ドラム13から離隔させると回転駆動力が与えられなくなるため減速する。巻取速度が減速すると糸Yの綾角が変化するので、リボン巻きが抑えられる。またパッケージ16をトラバースガイド70から離隔させると、糸Yのターン位置がパッケージ16の中央側へ変位することにより、糸Yの巻き付き量が局所的に多くなるのが防止され、耳高の問題が回避される
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、糸を往復動するトラバースガイドを備えるトラバース装置でトラバースしつつパッケージに巻き取る糸巻取機に関し、リボン巻き及び耳高の防止を目的とする。
【0002】
【従来の技術】
例えば紡績機、撚糸機、仮撚機などに用いられる糸巻取機は、糸送り装置から送られる糸を、トラバース装置でトラバースしながら巻き取ってパッケージに形成するものであるが、通常、複数のパッケージを同時に形成するように構成されている。この場合、特許文献1に記載される如く、各パッケージごとに設けられるトラバースガイドを共通の1つの駆動軸(トラバースロッド)に取り付け、この駆動軸により、全部のトラバースガイドを一体的に駆動するように構成したトラバース装置を利用することができる。
【0003】
糸巻取機において糸をパッケージに巻き取るに際し、往復動するトラバースガイドを備えるトラバース装置を用いると、リボン巻きと耳高の両方の問題が発生することが従来知られている。リボン巻きは、糸がパッケージの同じ箇所に何度か巻き付けられるために発生する現象である。他方、耳高は、パッケージ両端部のトラバース方向を反転させるターン位置において、トラバース速度が低くならざるを得ないために糸の巻き付き量が中央部よりも多くなることに起因する現象である。上記問題を解決する手段として、特許文献2に、カム機構を用いてトラバースガイドの往復動範囲、ターン位置を移動させることにより、トラバース幅を周期的に変化させる技術が記載されている。
【0004】
【特許文献1】
特許第2871595号公報
【特許文献2】
特開昭61−217478号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前記特許文献2に記載の技術は、往復トラバース装置を用いた糸巻取機におけるリボン巻きと耳高の問題を両方解決し得る技術であるが、多数の部材点数を必要とする複雑な機構であるので、製作が困難でありコスト高を招くという欠点がある。また特許文献1に記載されるような、多数のトラバースガイドを共通の駆動軸で駆動する機構のトラバース装置に、前記特許文献1に記載の技術を適用するのはきわめて難しく、従って、パッケージごとにトラバース幅の変化量を個別に設定したり制御したりすることができなかった。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、往復トラバース装置を用いた糸巻取機における前記従来の問題を解決すべく創案したものである。本発明が採用する請求項1に係る糸巻取機の特徴は、往復動するトラバースガイドを備えるトラバース装置を用いて糸をパッケージに巻き取る巻取装置を備える糸巻取機において、前記トラバース装置のトラバースガイドとパッケージとの距離を、糸が前記トラバースガイドから離脱しない範囲で変更する離隔制御手段と、パッケージの回転速度を減速する減速制御手段とを備えているところにある。前記構成を採用して、パッケージとトラバースガイドとの距離を変更することにより、糸がパッケージに巻き取られる際の綾角を変化させるから、リボン巻きを回避できる。また、パッケージをトラバースガイドから離隔させると共に、パッケージの回転速度を減速させることにより、糸のターン位置を変化させるから、耳高を防止することができる。
【0007】
また請求項2に記載する如く、複数の巻取装置を並設し、各巻取装置ごとに設けられたトラバースガイドを共通の駆動軸により駆動して、複数のパッケージを同時に形成可能になされたものにおいて、前記離隔制御手段、減速制御手段は、前記複数のパッケージ各々とそれぞれに対応するトラバースガイドとの距離、パッケージの回転速度を個別に制御可能とすることが望ましい。かかる構成を採用することにより、パッケージごとに綾角とターン位置とを個別に調整できるから、複数のパッケージを同時に形成する場合に、パッケージそれぞれの状態に応じた最適な設定が可能となる。
【0008】
請求項3に記載する如く、前記巻取装置を、パッケージに接触して該パッケージを回転駆動する回転ドラムを備えるものとし、前記離隔手段は、パッケージを、前記トラバース装置のトラバースガイドから離隔させると同時に、回転ドラムからも離隔させることにより、パッケージの回転速度を減速させる機構とすることができる。かかる構成により、パッケージをトラバースガイドから離隔させる離隔制御手段と、パッケージの回転速度を減速させる減速制御手段とを兼用させることが可能であるから、装置の構造を簡単にできる。なお、本構成を適用すれば、前記請求項2の構成を実施するのが容易となる。
【0009】
さらに、請求項4に記載の如く、予め設定された所定速度で糸送りする糸送り装置と、糸をパッケージに巻き取る巻取装置との間に、糸送り速度と巻取速度との差により生じる弛み糸を貯留して巻取張力変動を吸収する糸弛み取り装置を配置してもよい。パッケージをトラバースガイドから離隔させると共に回転速度を減速させると、巻取速度の低下により糸に弛みが生じる。そこで、糸弛み取り装置を設けて、巻取張力の安定化を図ることが望ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に係る糸巻取機は、巻取装置12と、パッケージとトラバースガイドとの距離を変更する離隔制御手段と、パッケージの回転速度を減速する減速制御手段とを備えているところを特徴とするが、これらは例えば、図1に示す如く、糸Yをトラバースする往復トラバース装置のトラバースガイド70と、パッケージ16と接触してこれを回転駆動する回転ドラム13とに対し、パッケージ16を離接させる機構により構成することができる。またパッケージ16を上記のように移動させる手段としては、パッケージ16のボビンを支持するクレードルアーム14を揺動させる機構などが考えられる。
【0011】
前記の如く構成した糸巻取機は、図1(A)に示すパッケージ16が回転ドラム13と接触している状態から、同図(B)に示すパッケージ16を回転ドラム13及びトラバースガイド70から離隔させた状態とする。これによりパッケージ16は、回転ドラム13から回転駆動力が与えられなくなるため、摩擦抵抗などにより回転を減速させ、巻取速度を低下させる。しかるのち、所定スケジュールに基づいて、再び上記図(A)の状態へ戻す。なお、同図(C)に示すように、パッケージ16を回転ドラム13から離隔させたときの離隔距離δは、糸Yがトラバースガイド70との係合から離脱しない範囲で設定する。さらに、パッケージ16の巻径が変化しても離隔距離δが原則として一定値となるように、パッケージ16の離隔動作を制御することが望ましい。
【0012】
本発明に係る糸巻取機は、パッケージ16の前記離接動作により、リボン巻きと耳高の問題を両方解決することができる。以下にその理由を説明する。
【0013】
リボン巻きは、糸Yをトラバースしつつ巻き取ってパッケージ16を形成する際に、糸Yがパッケージ16の同じ箇所に何度か巻き付けられるために発生する現象である。図2(A)に示すように、糸Yは、トラバース装置のトラバースガイド70に係合されて所定範囲をトラバースされることにより、ある角度に傾斜した姿勢でパッケージ16に巻き取られる。この傾斜角度すなわち綾角の大きさは、トラバースガイド70のトラバース速度(移動速度)と、巻取速度(パッケージ16の周速度)とによって決まる。トラバースガイド70のトラバース速度がv1であり、減速前の巻取速度がv2であるときの糸Yの綾角をθ1とする。パッケージ16を回転ドラム13から離隔させることにより、巻取速度がv3まで減速したとすると、同位置のトラバースガイド70のトラバース速度v1は原則として変化しないと考えられるので、そのときの糸Yの綾角θ2は、巻取速度がv3まで減少した分だけ前記綾角θ1より大きくなる。なお、パッケージ16の回転を減速させた結果、糸Yに弛みが生じて糸張力が低下することも、綾角が変化する要因になっていると考えられる。このような機構により、同じ箇所に巻き付けられることなく糸Yの綾角を変化させることができるから、リボン巻きの発生が抑えられる。
【0014】
他方、耳高は、パッケージ16の左右両端のターン部において、トラバースガイド70が減速、反転することによりトラバース速度が中央部よりも低くならざるを得ないために糸Yの巻き付き量が中央部よりも多くなることに起因する現象である。トラバース装置の往復動を伴うトラバースガイド70がトラバース範囲の両端で移動方向を逆向きに反転させることにより、パッケージ16上における糸Yの巻き付き方向がターンする。図2(B)に二点鎖線で示す如く、パッケージ16の回転速度低下に伴う巻取速度減速前における糸Yのターン位置がパッケージ16端部のT1であるとする。同図に実線で示す如く、パッケージ16を回転ドラム13から離隔させると同時に糸Yがトラバースガイド70との係合から離脱しない範囲でトラバースガイド70からも離隔させると、トラバースガイド70からパッケージ16までの距離が延長されることにより、それだけで糸Yのターン位置がパッケージ16の中央側(T2)へ変位する。これと併せて、パッケージ16の回転速度低下に伴い糸Yの巻取速度が減速することにより糸Yの綾角が大きくなるから、実質的なターン位置はより中央側のT3へ変位する。このようにして糸Yのターン位置を定期的に変位させることにより、パッケージ16の両端部において糸Yの巻き付き量が局所的に多くなるのを防止するから、耳高の問題を回避することが可能である。
【0015】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお本明細書において「上流・下流」とは、紡績時における糸の走行方向を基準として上流・下流を指し、具体的には、紡績装置側を上流、巻取装置側を下流とする。
【0016】
図3は本発明に係る糸巻取機の一つである紡績機1の一例を示す正面図、図4は同紡績機1の要部の内部構造を概略的に示す正面図である。なお図面には、当該紡績機1でコーン巻きパッケージを形成している状態を例示してあるが、本発明はチーズ巻きパッケージの形成にも使用可能である。例えば空気紡績機等から成る紡績機1は、制御部1A、多数の紡績ユニット2が並設された紡績部1B、ブロアー部1C、及び、糸継ぎ装置を備え紡績ユニット2間をレールRに沿って走行自在になされた作業台車3を主要構成部材としており、多数のパッケージを同時に形成できるものである。
【0017】
上記制御部1Aは、紡績部1Bを構成している全部の紡績ユニット2に対し駆動シャフト41・42・43を通じ共通して駆動力を与える駆動用モータ31・32・33、紡績ユニット2ごとに設けられているモータ34・35、及び、巻取装置12等の動作を制御するものである。本例では、入力部aに入力される各種設定値(紡績速度、紡績速度と巻取ローラ速度との比率など)に基づき、演算部bが、モータ31〜34に対してインバータc又はドライバ基板30を介し紡績速度情報を出力する。また糸弛み取り装置10のモータ35に対し、ドライバ基板40を介して、弛み取りローラ(後述)の回転速度情報を出力するようになされている。
【0018】
紡績部1Bは、多数の紡績ユニット2を並設して構成したものである。各紡績ユニット2は、個別に運転条件を設定できるように構成され、紡績装置5及び巻取装置12と共に、糸弛み取り装置10が備えられている。紡績ユニット2の構造の詳細については、後述する。
【0019】
ブロアー部1Cは、紡績ユニット2に対し、エアーダクトを通じて、所要箇所に負圧(吸引圧)を付与する負圧供給手段を収納するものであって、例えば、糸吸引装置7等に負圧を作用させる。
【0020】
作業台車3は、糸継ぎを必要とする任意の紡績ユニット2から発信される糸継ぎ要求信号に基づき、レールR上を移動して該当する紡績ユニット2位置に停止し、糸継ぎ作業を実行できるようになっているものであって、紡績部1B部分の構成を側面方向から概略的に表した図5に示す如く、ノッターやスプライサー等の糸継ぎ装置17、紡績装置5で形成された糸の端部を吸引して糸継ぎ装置17へ導くサクションパイプ18、巻取装置12に支持されたパッケージ16の糸端を吸引して糸継ぎ装置17へ導くサクションマウス19等を備えている。なお、糸継ぎ装置17・サクションパイプ18・サクションマウス19を、各紡績ユニット2ごとに設ける構成も可能である。糸継ぎ装置17は、作業実行時に、糸継ぎ装置17近傍の紡績装置5側の糸及び巻取装置12側の糸を、糸継ぎ装置17が備える糸寄せレバー(図示せず)で両糸端をクランプして糸継ぎ作業実行部に取り込み、糸継ぎ作業を実行する。
【0021】
前記紡績部1Bに複数配設される紡績ユニット2は、原料の繊維束Sから糸を製造する機構の一つの単位である。その概略構成を説明すると、図5に示すとおり、糸道Eの上流側から下流側に沿って順に配置された、ドラフト装置4、紡績装置5、予め設定された所定速度(紡出速度)で糸送りする糸送り装置6、糸吸引装置7、カッター8、糸欠陥検出器9、糸弛み取り装置10、ワキシング装置11、巻取装置12から構成されている。
【0022】
ドラフト装置4には、例えば、上流側からバックローラ4a・サードローラ4b・エプロン4cが張設されたセカンドローラ4d・フロントローラ4eからなる4線式のものが適用される。紡績装置5は、旋回気流を利用して繊維束Sから紡績糸Y(以下、単に「糸Y」と言う。)を生成する空気式のもの、例えば、紡績速度が数百m/分の高速紡績が可能なものが採用される。そのほか紡績装置5は、空気紡績ノズルと加撚ローラ対とにより糸Yを生成するものや、ロータ回転により糸Yを生成するオープンエンド紡績機など、他の構造のものに置換することが可能である。糸送り装置6は、ニップローラ6aとデリベリローラ6bとから成り、両ローラ6a,6b間に糸Yを挟持して下流側へ送給するものである。糸吸引装置7は、常時、吸引状態にあり、糸欠陥検出器9が糸Yの欠陥を検出したときにカッター8が切断した糸Yの断片を吸引除去する。
【0023】
巻取装置12は、ボビン15を保持するクレードルアーム14と、ボビン15又はパッケージ16に接触してこれを回転駆動する回転ドラム13と、糸Yをボビン15の軸方向に沿ってトラバースするトラバースガイド70を有するトラバース装置とを備える。またクレードルアーム14は揺動軸14aを中心に揺動可能に構成され、ボビン15又はパッケージ16の回転ドラム13に対する離接動作及び離隔時間を制御する離隔制御手段としての揺動制御機構60が設けられている。本実施例では、この揺動制御機構60が、パッケージ16をトラバースガイドとの距離を変更する手段、及び、パッケージ16の回転速度を減速する手段となっている。
【0024】
前記揺動制御機構60は、例えば、クレードルアーム14の一端にピストンロッド65を連結させたエアーシリンダ64、エアーシリンダ64に接圧用圧空と離隔用圧空とを供給する圧空供給源、エアーシリンダ64に対する圧空の供給経路を切り替えるためのソレノイドバルブ装置63、ソレノイドバルブ装置63の動作を制御するコントローラ62、及び、このコントローラ62に制御信号を出力するユニットコントローラ61等から構成される。エアーシリンダ64は、接圧用圧空が常時供給され、ピストンロッド65を後退方向に常時付勢することにより、パッケージ16を回転ドラム13と接触する方向へ常時付勢している。パッケージ16を回転ドラム13から離隔させる時には、エアーシリンダ64に接圧用圧空を上回る圧力の離隔用圧空を作用させてピストンロッド65を伸張させることにより、パッケージ16を回転ドラム13から引き離すようになされている。このように、パッケージ16の回転ドラム13に対する離接は離隔用圧空の給排によって制御される。そしてパッケージ16を回転ドラム13に離接させる時間の長さやタイミング、つまり離隔用圧空の給排時期は、ユニットコントローラ61により制御される。すなわちユニットコントローラ61が、糸種、番手、紡出速度などのあらかじめ入力された紡績条件データと、タイマー部で計測した紡績機の運転時間とに基づいて演算を行い、ソレノイドバルブ装置63に所要の動作を実行させるのに必要な制御信号を、前記コントローラ62へ出力するようになされている。
【0025】
前記の如く構成された図5に示す如き紡績機1の運転状況を以下に説明する。作業台車3が停止していない状態の紡績ユニット2は、通常の糸巻き取り(紡績)運転を行っているとき、繊維束Sをドラフト装置4で紡績装置5へ送り込み、紡績装置5において生成された糸Yを糸送り装置6で下流側へ送給し、糸吸引装置7、糸欠陥検出器9の直前を通過させ、ワキシング装置11を経て巻取装置12へ送り出す。そして、回転ドラム13により回転駆動されるボビン15に糸Yを巻き付けて、パッケージ16の形成を開始する。
【0026】
前記巻取工程中、前記揺動制御機構60により、パッケージ16を回転ドラム13に対し離接させ、トラバースガイドからの距離を変更すると共に巻取速度を変化させる工程を、予め設定された所定の減速スケジュールに従って行う。すなわち揺動制御機構60は、離隔制御手段のみならず、パッケージ16を回転ドラム13からも離隔させることによるパッケージ16の回転速度=巻取速度を減速する減速制御手段としても機能する。図6に示す如く、クレードルアーム14を揺動させてパッケージ16を回転ドラム13から離隔させたのち、クレードルアーム14を復帰方向へ揺動させて図5に示す如くパッケージ16を回転ドラム13に再び接触させる工程を、所定スケジュールに従って行う。
【0027】
パッケージ16を離隔させるときは、ユニットコントローラ61から出力される制御信号に基づき、コントローラ62がソレノイドバルブ装置63に動作信号を出力する。これにより、エアーシリンダ64に離隔用圧空が供給され、エアーシリンダ64のピストンロッド65が伸張して、クレードルアーム14を揺動させ、パッケージ16を回転ドラム13から離隔させる。パッケージ16を回転ドラム13に接触させるときは、ユニットコントローラ61の制御信号に基づき、コントローラ62が動作信号を出力してソレノイドバルブ装置63を動作させ、離隔用圧空をエアーシリンダ64から除去する。これによりピストンロッド65が後退してクレードルアーム14を復帰方向へ揺動させ、パッケージ16を回転ドラム13に接触させる。このようにしてパッケージ16を回転ドラム13及びトラバースガイドに対し離接させることにより、パッケージ16に巻き取られる糸Yの綾角及びターン位置が所定のスケジュールに従って変化するので、リボン巻き及び耳高の発生を防止することができる。
【0028】
なお本例の如く、複数の紡績ユニット2が設けられ多数のパッケージを同時に形成し得る紡績機1において、例えば共通の駆動軸でトラバースガイドを駆動する構造の往復トラバース装置を用いた場合、トラバースガイドについては個別に動作を制御するのは困難である。しかるに前述の如き揺動制御機構60を各紡績ユニット2ごとに設けることにより、各パッケージ16ごとに回転ドラム13及びトラバースガイドからの離隔動作を制御できるから、パッケージ16の巻取状況に応じて、最適な離隔プログラムを設定することが可能であり、パッケージの品質向上をもたらす。
【0029】
ところで本例の糸巻取機は、クレードルアーム14を揺動させて糸Yの綾角及びターン位置を変化させることを特色とするが、その際、糸Yの巻取張力が変動しやすいという問題がある。そこで、紡績装置5及び糸送り装置6と、巻取装置12との間に、図7及び図8に示す如き糸弛み取り装置10を設け、弛み取りローラ21に貯留される弛み量を増減させることによって、巻取張力の安定化を図ることが望ましい。
【0030】
糸弛み取り装置10は、弛み糸Yを外周面21aに巻き付けて貯留する弛み取りローラ21と、条件に応じて弛み取りローラ21と同期して又は独立に同心回転する糸掛部材22と,弛み取りローラ21のやや上流側に配置される上流側ガイド23と、弛み取りローラ21を回転駆動するステッピングモータ等の駆動手段35と、該駆動手段35を制御するドライバ基板40(図4参照)と、弛み取りローラ21の下流位置に設けられスリット36aを有する下流側ガイド36とを備えており、これらは、ブラケット37などによって紡績ユニット2に固定されている。
【0031】
弛み取りローラ21は、図14に示すように、駆動手段35の駆動軸35aに固着され該駆動軸35aと一体的に回転する。従って、演算部bにより設定される回転速度に忠実に従った弛み取りローラ21の回転制御が可能となっている。また、図12及び13に示す如く、糸掛部材22を有する側を先端P、駆動手段35に接続される側を基端Qとすると、外周面21aには、基端Q側及び先端P側それぞれに端面へ向かって拡径するテーパ部21b、21dが形成され、これらの中間部は同一径の円筒部21cとなっている。そして、紡績装置5から紡出されてくる糸Yを、基端Q側から外周面21aに巻き付けたのち。先端P側から巻取装置12側へ向かって解舒するようになされている(図10,11参照)。基端Q側のテーパ部21bは、紡績装置5から供給され外周面21aに巻き付いた糸Yを、大径部分21b−1から小径部分21b−2へ円滑に移動させて中間の円筒部21cへ到達させることにより、糸Yを円筒部21c表面に規則正しく巻き付かせる機能を有する。先端P側のテーパ部21dは、解舒の際に、巻き付かせた糸Yが一度に抜け出る輪抜け現象を抑止すると同時に、巻き付け糸層を、小径部分21d−2から大径部分21d−1へ順送りに送り出して、糸Yの円滑な引き出しを確保する機能を有している。
【0032】
弛み取りローラ21の先端P側に設けられる解舒張力付与部材22は、図14に示す如く、フライヤー22aを、ローラ21に対し、伝達力調節機構を介して同心回転可能に取り付けて成るものである。上記伝達力調節機構の構成は例えば次の如くである。ローラ21の中央部に突設した軸部21eに、ベアリング等の軸受部材22cを介してホイール部材22bを回転自在に装着し、このホイール部材22bにフライヤー22aの基部を取着する。そして、このホイール部材22bを、上記軸部21e先端のボルト部分に螺合させたナット等から成る伝達力調整部材22dと押さえ部材22eとで抜け止めした伝達力付与部材22fにより、取り付けている。なお本実施形態の如く、上記伝達力調節機構の伝達力調整部材22dを、弛み取りローラ21の先端側に露出させるよう構成した場合は、作業者による伝達力調整作業が容易に行える。
【0033】
前記伝達力調節機構は、フライヤー22aの弛み取りローラ21に対する回転抵抗の大きさを調節可能にするものである。すなわち、上記押さえ部材22eの締め付け度合いを弱くすれば、ホイール部材22bに対する伝達力付与部材22fの押圧力(あるいは摩擦力)が弱まるようになっており、わずかな負荷を与えるだけでフライヤー22aがスリップし、弛み取りローラ21の回転とは独立に回転することができるようになる。反対に、上記押さえ部材22eの締め付け度合いを強くすれば、ホイール部材22bに対する伝達力付与部材22fの押圧力が強まるようになっており、フライヤー22aは非常に大きな負荷が作用しない限りスリップせず、弛み取りローラ21と一体に回転する。
【0034】
従って、本例の糸掛部材22は、押さえ部材22eの締め付け度合いを適当に調節することで、弛み取りローラ21とは独立に回転し得るフライヤー22aの挙動を、弛み取りローラ21から解舒される糸Yの張力に関連させて調節することが可能である。すなわち、糸種や番手等の紡績条件によって異なる弛み取りローラ21からの糸Yの解舒張力を、上記伝達力調節機構により予め調節可能である。フライヤー22aの挙動は、伝達力付与部材22fを介して弛み取りローラ21から伝達される回転力と、弛み取りローラ21から解舒する糸Yの張力との相互作用で決まる。逆に言えば、上記伝達力調節機構によりフライヤー22aの挙動をあらかじめ調節しておけば、フライヤー22aが弛み取りローラ21から解舒される糸Yに与える抵抗力の大きさを、前もって設定できることになる。すなわち、フライヤー22aを含む糸掛部材22は、解舒張力付与部材として作用し、上記伝達力調節機構は、解舒張力調節機構として機能する。
【0035】
フライヤー22aは、糸Yを弛み取りローラ21の外周面21aへ確実に巻き付かせるため、以下に述べるような特徴的な形状が採用されている。すなわち、ホイール部材22bに取着される基部から、弛み取りローラ21の先端Pよりもわずかに基端Qとは反対側の方向へ突出する位置まで徐々に延び、さらに内方から順にm,l,kの3箇所で屈曲して、先端部jが弛み取りローラ21の半径よりも外方に位置するよう設定されている。上記3箇所の屈曲箇所のうち、2箇所の屈曲箇所k,lはローラ半径外に在り、1箇所の屈曲箇所mはローラ21における大径部分21−dの半径内に位置している。そして内方の屈曲箇所mにおいて、フライヤー22aは弛み取りローラ21の糸巻き付け時の回転方向とは反対の半径方向外方へ折れ曲がり、次の屈曲箇所lにおいて弛み取りローラ21の基端Q側へ折れ曲がり、最後に外方の屈曲箇所kにおいて弛み取りローラ21の回転方向へ折れ曲がるよう形成されている。
【0036】
よってフライヤー22aには、先端部j・屈曲箇所k・屈曲箇所lによって、弛み取りローラ21の回転方向外方に向かって開く角度を有する糸係合部Rが形成され、この糸係合部Rは、弛み取りローラ21の先端Pと基端Qとの間において、ローラ外周面21aに対して所定距離を保ちつつ、外周面21aに沿って周回移動することとなる。かかる形態のフライヤー22aは、弛み取り時に係合した糸Yを、弛み取りローラ21と共に回転することによって、弛み取りローラ外周面21a上の所定位置へ安定して巻き付かせるうえで好ましい形状となっている。更に、弛み取りローラ21とフライヤー22aとの間の隙間に糸Yがはまり込むのを確実に防止する、という作用を営む。
【0037】
なおフライヤー22aは、上流側ガイド23と下流側ガイド36とを最短距離で結ぶ糸道上で、糸Yと係合し得るように配置されている。すなわち、弛み取りローラ21と共に回転するフライヤー22aの回転面が、上記糸道と交叉するように設定される。
【0038】
糸弛み取り装置10の上流位置に配置される上流側ガイド23は、糸継ぎ時などに、糸継ぎ装置17による糸継ぎ直前に上流側の糸端が弛み取りローラ21側へ引っ張り込まれて、糸継ぎ装置17への上流側糸端の供給を失敗することがないように、糸Yを解舒張力付与部材22と係合することのない位置(弛み取りローラ21に巻き取られることのない位置)へ移動させたり、糸継ぎ装置17が糸継ぎを実行するために、糸継ぎ装置17の上流側糸端をクランプするときに生じた糸の弛みを吸収すべく、解舒張力付与部材22と糸Yとを係合させ、弛み取りローラ21への糸Yの巻き取りを開始させる際に進退駆動される。
【0039】
作業台車3には、上流側ガイド23を進退駆動するエアーシリンダ等から成る進退手段24と、これを制御するための制御手段(図示せず)とが設けられている。上流側ガイド23は、前進位置にあるとき、糸Yが糸弛み取り装置10と係合することのない位置に糸道を保持し、後退位置にあるときは、糸Yが糸弛み取り装置10のフライヤー22aと係合して弛み取りローラ21に巻き取られる位置まで、糸道を移動させる糸移動手段として機能し、進退手段24は上流側ガイド23の駆動手段となっている。
【0040】
糸の巻取工程を行っているとき、図7及び図8に示す如く、糸弛み取り装置10の上流側ガイド23は、図示しないバネ等の引っ張り部材により強制的に引っ張られて後退位置に在る。糸の巻き取り時、ドライバ基板40(図4参照)を介し、弛み取りローラ21の駆動用モータ35へ回転指令を出力し、図9に示す如く弛み取りローラ21を回転駆動させる。弛み取りローラ21に設けられたフライヤー22aの回転軌道面は、上流側ガイド23と下流側ガイド36とで規定される糸道を交叉するように設定されているから、弛み取りローラ21を回転させることで、フライヤー22aが自然に糸Yと係合して、図10及び図11に示す如く、糸Yを弛み取りローラ21の外周面に確実に巻き付ける。またフライヤー22aはローラ21とフライヤー22aとの隙間に糸Yが嵌り込みにくい形態に形成されている。なお弛み取りローラ21の回転速度は、紡績装置5における糸Yの紡出速度(実質的には糸送り装置6の糸送り速度)に基づき、巻取張力が適切になるよう、入力部aの入力値により演算部bが演算して設定する。
【0041】
糸弛み取り装置10のフライヤー22aは、弛み取りローラ21とは独立に回転可能であり、且つ、伝達力調節機構により、弛み取りローラ21からフライヤー22aへ伝達される回転駆動力が調節されている。すなわち、フライヤー22aに作用する負荷が所定値以下のときは、フライヤー22aが弛み取りローラ21と一体回転して糸Yを弛み取りローラ21に巻き付かせ弛み量を増大させる。反対に負荷が所定値を越えると、フライヤー22aが弛み取りローラ21とは独立に回転又は回動して糸Yを弛み取りローラ21からの解舒を許容する。従って、パッケージ16を回転ドラム13から離隔させて巻取速度が低下したときは、フライヤー22aが弛み取りローラ21と一体回転して貯留する弛み量を増大させ、フライヤー22aが弛み取りローラ21とは独立する回転量又は回動量が小さくなって、糸Yの解舒量を減少させ、巻取速度の減少を許容する。反対にパッケージ16を回転ドラム13に接触させて巻取速度を上昇させた場合は、フライヤー22aが糸Yの解舒量を増やし、貯留する弛み量を減少させて、巻取速度の増大を許容する。なお巻取速度が変動せず一定のときには、弛み取りローラ21に巻き取った糸Yは、ほぼ一定の割合で解舒される。このような機構により本例の糸弛み取り装置10は、糸張力の変動を緩和して、巻取張力を安定化する機能を発揮する。
【0042】
本例の糸弛み取り装置10は、フライヤー22aと弛み取りローラ21とを伝達力調節機構を介し連結する構成を採用するから、フライヤー22aが弛み取りローラに対し独立して回動又は回転する際の負荷の大きさを容易に変更できる。依って、糸種・番手・紡績速度等の様々な紡績条件により変化する巻取張力に対応することが簡単である。
【0043】
また通常巻取時は、巻取速度が紡出速度よりも若干速くなるよう設定される。このため、パッケージ16の回転速度制御を行わなければ、いずれは、弛み取りローラ21に巻き取られている糸Yが全て解舒されきってしまう。これは、紡出速度の方が速いと、弛み取りローラ21への糸Yの供給量が巻き取り装置12に向かって解舒される糸Yの量を常に上回り、その結果、弛み取りローラ21に巻き付く糸量が増大する一方となるからである。そこで前記のように、糸弛み取り装置10を設けて糸Yの弛み取りを行う場合、弛み取りローラ21に貯留する弛み量が皆無になるのを避ける必要がある。しかるに本実施例によれば、所定スケジュールで巻取速度を減速させるから、紡績機運転中に何らかの原因で弛み量が少なくなることがあったとしても、一定時間内には、糸弛み取り装置10に貯留する弛み量の回復が必ず行われる。依って、弛み量が無くなってしまうのを回避できる、という利点が得られる。
【0044】
ところで、前記所定スケジュールでなくても、弛み取りローラ21に貯留される弛み量に基づいて離隔制御を行うようにしてもよい。この場合、所定スケジュールではないので、離隔時間を適宜調整すればよい。パッケージ16の巻径が小さいときは慣性モーメントも小さいから、パッケージ16は回転ドラム13から離れると急速に回転を減速させるので、弛み量が即座に回復する。従って、パッケージ離隔時間は短時間でよい。巻径の増大に従い慣性モーメントも大きくなるから、回転ドラム13から離したときのパッケージ16の回転減速度合いは小さい。従って、弛み量が所定量まで回復するのに要する離隔時間も、それだけ長く設定される。もし仮に、離隔時間の調整を行わず、パッケージ離隔時間を一律に設定したとすれば、巻径の増大に伴い弛み量の回復量が次第に減少することとなるから、場合によっては、パッケージ16の慣性による回転によって、弛み量が回復せずに、弛み取りローラ21に巻き取られている糸Yが全て解舒されきってしまうおそれがある。パッケージ16の回転ドラム13からの離隔時間は、パッケージ16の巻径によって決定される。すなわち、離隔した後の慣性モーメントを考慮するならば、巻径の増大に応じて離隔時間も増やさなくてはならない。そこで、パッケージ16の巻径を算出し、巻径に応じてパッケージ16を回転ドラム13から離隔させる時間の長さを調整する調整手段を設けることが望ましい。
【0045】
かかる調整手段としては、例えばユニットコントローラ61に設けられる、紡出速度記憶部とタイマー部とを備える巻取長さ算出部、糸種・番手記憶部、離隔時間演算部等から構成するものが考えられる。パッケージ16の巻径は、糸種・番手と巻取長さとで決められ、巻取長さは、巻取速度(又は紡出速度)×巻取時間から算出することが可能である。糸種・番手及び巻取速度は、あらかじめ紡績条件によって設定される事項である。それ故、タイマー部で計測した巻取時間からパッケージ16の巻径を算出でき、この巻径から、パッケージ16の回転を所定速度まで減速させるの必要な離隔時間を算出することが可能である。なお実際的には、糸種・番手及び巻取(紡出)速度は既定値であり、巻取時間とパッケージ16の巻径とは連関するから、あらかじめ糸種・番手及び巻取(紡出)速度のデータを入力しておけば、タイマー部で計測した巻取時間に基づき、離隔時間演算部がパッケージ16の巻径に応じた最適な離隔時間を算出するようにプログラムできる。つまり、巻取時間だけで、パッケージ離隔時間の調整が可能である。
【0046】
糸弛み取り装置10を設けた場合、弛み取りローラ21の直ぐ上流側に糸Yの張力を検出する糸張力検出装置50を設け、これによって弛み量を監視し、弛み量が不足するのを予防する態様も可能である。当該糸張力検出装置50は、例えば図13,14に示すように、弛み取りローラ21の基端Q近くにおいて上流側に配置されるほぼL字形のワイヤロッド51と、ワイヤロッド51の途中を回動可能に支持する枢支部52と、ワイヤロッド51の末端部53が当接して所定以上の押圧力が加わるとON動作信号を出力するマイクロスイッチ等のスイッチング部材54とから成る。
【0047】
糸Yが弛み取りローラ21に巻き付いていない状態(図7,8参照)では、ワイヤロッド51は糸Yと接触しないので、当該ワイヤロッド51の末端部53が押圧力を加えないため、スイッチング部材54はON動作しない(図13(B)の実線参照)。図10,11に示す如く、糸Yが弛み取りローラ21に巻き付くと、糸Yの張力によってワイヤロッド51が押圧されるため、図13(B)に二点鎖線で示すように、ワイヤロッド51の末端部53がスイッチング部材54を押圧する。糸張力は、弛み取りローラ21に貯留される糸Yの弛み量が多くなると大きくなり、糸Yの弛み量が少なくなると低下する。所定以上の糸張力がワイヤロッド51に作用して末端部53による押圧力が所定値以上になると、スイッチング部材54がON動作し、動作信号をユニットコントローラ61へ出力する。従って本例の糸張力検出装置50は、スイッチング部材54がON動作する糸張力を適宜設定することにより、弛み取りローラ21に貯留される糸Yの弛み量が所定量を超えているか不足しているかを検出し得る弛み量検出手段として機能する。
【0048】
弛み取りローラ21に貯留する弛み量が少なくなって、糸張力検出装置50が検出する糸張力が所定値を下回ると、スイッチング部材54からのON信号出力が途絶える。するとユニットコントローラ61が出力する制御信に基づき、揺動制御機構60がクレードルアーム14を揺動させ、パッケージ16を回転ドラム13から離隔させて巻取速度を低減させ、弛み量を回復させる。弛み量が所定量まで回復するのに必要な時間の経過後、ユニットコントローラ61の制御信号に基づき揺動制御機構60がクレードルアーム14を復帰方向へ揺動させ、パッケージ16を再び回転ドラム13に接触させる。
【0049】
[その他の実施例]
パッケージ16の回転速度を減速させる手段としては、パッケージ16を回転ドラム13から離隔させて自然減速させる手段以外に、ボビン15の支持軸又はクレードルアーム14のボビン支持部に制動力を与える制動手段を設け、パッケージ16を強制的に減速する手段も考えられる。そのほか、紡績ユニット2ごとに回転ドラム13の回転駆動用モータを設けた場合、このモータの動作を制御して、パッケージ16の減速・復帰処理をすることも可能である。
【0050】
但し、これらの別形態では、別途、新たに各巻取装置ごとにモータ、制御手段を設け、モータの加減速パターンを演算する必要がある。しかるに、パッケージ16の回転ドラム13からの離隔を制御するものについては、回転ドラム13とパッケージ16との離接を制御すればよい。さらに、パッケージ16をトラバースガイド70から離反させる離反手段と、パッケージ16を減速させる減速制御手段とを兼用させることが可能である。以上により装置の構造を簡素化することが出来る。
【0051】
パッケージの巻径を検出する手段としては、巻取時間から演算して算出する手段のほか、パッケージ16を支持しているボビン15の回転速度を計測し、この回転速度からパッケージ16の巻径を算出することが可能である。通常、ボビン15の回転速度は、糸の巻取速度、つまりパッケージ16の周速度が一定となるように制御されるから、パッケージ16の巻径増大に従い、ボビン15の回転速度は徐々に減じることとなる。従って、ボビン回転速度とパッケージ巻径とは密接に相関するから、ボビン15の回転速度に基づいて、パッケージ16の巻径を算出することが可能である。
【0052】
なお、本発明の適用対象は紡績機のほか、撚糸機・仮撚機など、往復動するトラバースガイドを持つトラバース装置を備える糸巻取機であれば、特に限定されない。
【0053】
【発明の効果】
請求項1に記載した本発明は、往復動するトラバースガイドを備える糸巻取機において、トラバースガイドとパッケージとの距離を変更する離隔制御手段と、パッケージの回転速度を減速する減速制御手段とを備えているので、トラバースガイドからパッケージまでの距離を延長させることにより糸のターン位置を変化させて、耳高を防止することができる。またパッケージの回転速度を低下させることにより、糸がパッケージに巻き付けられる際の綾角を変化させて、リボン巻きを回避できる。このように、リボン巻きと耳高の問題を一挙に解決できるから、巻取状態にむらのない良好なパッケージを容易に得ることができる。
【0054】
請求項2に記載する如く、
複数の巻取装置ごとに設けたトラバースガイドを共通の駆動軸により駆動して、複数のパッケージを同時に形成可能になされたものにおいて、前記複数のパッケージ各々とそれぞれに対応するトラバースガイドとの距離、パッケージの回転速度を個別に制御可能とした場合は、パッケージごとに綾角とターン位置とを個別に調整できるので、複数のパッケージを同時に形成する場合に、パッケージそれぞれの状態に応じた最適な設定が可能となる。
【0055】
請求項3に記載した本発明に係る糸巻取機によれば、パッケージをトラバースガイドから離隔させる離隔制御手段が、パッケージの回転速度を減速させる減速制御手段を兼ねることとなる。依って、装置の構造を簡単にすることが可能である。また、本構成を採用することによって、前記請求項2に記載の発明を実施するのが容易になる、という利点が得られる。
【0056】
さらに、請求項4に記載の如く、予め設定された所定速度で糸送りする糸送り装置と、糸をパッケージに巻き取る巻取装置との間に、糸送り速度と巻取速度との差により生じる弛み糸を貯留して巻取張力変動を吸収する糸弛み取り装置を配置した場合は、パッケージの回転速度を減速させたときに生じる糸の弛みを取り除いて、巻取張力の安定化を図ることができる。特に、1トラバース内で巻径が変化するため巻取速度の変動をきたしやすいコーン巻きパッケージの製造に適用した場合に、巻取張力の安定化に目覚ましい効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る糸巻取機の実施形態を示すものであって、図(A)は回転ドラムとパッケージとが接触している状態の側面図、図(B)は回転ドラムからパッケージを離隔させた状態の側面図、図(C)は回転ドラムからパッケージを離隔させた状態の要部を拡大して示す側面図である。
【図2】本発明に係る糸巻取機の実施形態を示すものであって、図(A)はリボン巻きを回避できる理由を説明するためのトラバースガイドとパッケージとを示す要部の正面図、図(B)は耳高を防止できる理由を説明するためのトラバースガイドとパッケージとを示す要部の正面図である。
【図3】本発明に係る糸巻取機が適用される紡績機の実施例を示す正面図である。
【図4】前記紡績機の要部構造を概略的に示す正面図である。
【図5】前記紡績機の紡績ユニットと作業台車の概略構成を示す側面図である。
【図6】前記紡績機の紡績ユニットと作業台車の概略構成を示すものであって、パッケージを回転ドラム13から離隔させた状態の側面図である。
【図7】前記紡績機に関するものであって、糸掛け時における糸弛み取り装置部分の概略構成を示す側面図である。
【図8】前記紡績機に関するものであって、糸掛け時における糸弛み取り装置部分の概略構成を示す正面図である。
【図9】前記紡績機に関するものであって、弛み取り開始時における糸弛み取り装置部分の概略構成を示す側面図である。
【図10】前記紡績機に関するものであって、弛み取り動作中にある糸弛み取り装置部分の概略構成を示す側面図である。
【図11】前記紡績機に関するものであって、弛み取り動作中にある糸弛み取り装置部分の概略構成を示す正面図である。
【図12】前記実施例に用いる糸弛み取り装置の弛み取りローラを示す先端側から見た斜視図である。
【図13】前記実施例に用いる糸弛み取り装置の弛み取りローラ及び糸張力検出装置を示すものであって、図(A)は先端側から見た正面図、図(B)は平面図である。
【図14】前記実施例に用いる糸弛み取り装置の弛み取りローラと糸張力検出装置とを示す側面断面図である。
【符号の説明】
1…紡績機 2…紡績ユニット 3…作業台車 5…紡績装置 10…糸弛み取り装置 12…巻取装置 13…回転ドラム 14…クレードルアーム 15…ボビン 16…パッケージ 17…糸継ぎ装置 21…弛み取りローラ 22…糸掛部材 22a…フライヤー 23…上流側ガイド 24…進退手段 35…駆動用モータ 50…糸張力検出装置 51…ワイヤロッド 54…スイッチング部材 60…揺動制御機構 61…ユニットコントローラ 70…トラバースガイド S…繊維束(スライバ) Y…糸(紡績糸)
【発明の属する技術分野】
本発明は、糸を往復動するトラバースガイドを備えるトラバース装置でトラバースしつつパッケージに巻き取る糸巻取機に関し、リボン巻き及び耳高の防止を目的とする。
【0002】
【従来の技術】
例えば紡績機、撚糸機、仮撚機などに用いられる糸巻取機は、糸送り装置から送られる糸を、トラバース装置でトラバースしながら巻き取ってパッケージに形成するものであるが、通常、複数のパッケージを同時に形成するように構成されている。この場合、特許文献1に記載される如く、各パッケージごとに設けられるトラバースガイドを共通の1つの駆動軸(トラバースロッド)に取り付け、この駆動軸により、全部のトラバースガイドを一体的に駆動するように構成したトラバース装置を利用することができる。
【0003】
糸巻取機において糸をパッケージに巻き取るに際し、往復動するトラバースガイドを備えるトラバース装置を用いると、リボン巻きと耳高の両方の問題が発生することが従来知られている。リボン巻きは、糸がパッケージの同じ箇所に何度か巻き付けられるために発生する現象である。他方、耳高は、パッケージ両端部のトラバース方向を反転させるターン位置において、トラバース速度が低くならざるを得ないために糸の巻き付き量が中央部よりも多くなることに起因する現象である。上記問題を解決する手段として、特許文献2に、カム機構を用いてトラバースガイドの往復動範囲、ターン位置を移動させることにより、トラバース幅を周期的に変化させる技術が記載されている。
【0004】
【特許文献1】
特許第2871595号公報
【特許文献2】
特開昭61−217478号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前記特許文献2に記載の技術は、往復トラバース装置を用いた糸巻取機におけるリボン巻きと耳高の問題を両方解決し得る技術であるが、多数の部材点数を必要とする複雑な機構であるので、製作が困難でありコスト高を招くという欠点がある。また特許文献1に記載されるような、多数のトラバースガイドを共通の駆動軸で駆動する機構のトラバース装置に、前記特許文献1に記載の技術を適用するのはきわめて難しく、従って、パッケージごとにトラバース幅の変化量を個別に設定したり制御したりすることができなかった。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、往復トラバース装置を用いた糸巻取機における前記従来の問題を解決すべく創案したものである。本発明が採用する請求項1に係る糸巻取機の特徴は、往復動するトラバースガイドを備えるトラバース装置を用いて糸をパッケージに巻き取る巻取装置を備える糸巻取機において、前記トラバース装置のトラバースガイドとパッケージとの距離を、糸が前記トラバースガイドから離脱しない範囲で変更する離隔制御手段と、パッケージの回転速度を減速する減速制御手段とを備えているところにある。前記構成を採用して、パッケージとトラバースガイドとの距離を変更することにより、糸がパッケージに巻き取られる際の綾角を変化させるから、リボン巻きを回避できる。また、パッケージをトラバースガイドから離隔させると共に、パッケージの回転速度を減速させることにより、糸のターン位置を変化させるから、耳高を防止することができる。
【0007】
また請求項2に記載する如く、複数の巻取装置を並設し、各巻取装置ごとに設けられたトラバースガイドを共通の駆動軸により駆動して、複数のパッケージを同時に形成可能になされたものにおいて、前記離隔制御手段、減速制御手段は、前記複数のパッケージ各々とそれぞれに対応するトラバースガイドとの距離、パッケージの回転速度を個別に制御可能とすることが望ましい。かかる構成を採用することにより、パッケージごとに綾角とターン位置とを個別に調整できるから、複数のパッケージを同時に形成する場合に、パッケージそれぞれの状態に応じた最適な設定が可能となる。
【0008】
請求項3に記載する如く、前記巻取装置を、パッケージに接触して該パッケージを回転駆動する回転ドラムを備えるものとし、前記離隔手段は、パッケージを、前記トラバース装置のトラバースガイドから離隔させると同時に、回転ドラムからも離隔させることにより、パッケージの回転速度を減速させる機構とすることができる。かかる構成により、パッケージをトラバースガイドから離隔させる離隔制御手段と、パッケージの回転速度を減速させる減速制御手段とを兼用させることが可能であるから、装置の構造を簡単にできる。なお、本構成を適用すれば、前記請求項2の構成を実施するのが容易となる。
【0009】
さらに、請求項4に記載の如く、予め設定された所定速度で糸送りする糸送り装置と、糸をパッケージに巻き取る巻取装置との間に、糸送り速度と巻取速度との差により生じる弛み糸を貯留して巻取張力変動を吸収する糸弛み取り装置を配置してもよい。パッケージをトラバースガイドから離隔させると共に回転速度を減速させると、巻取速度の低下により糸に弛みが生じる。そこで、糸弛み取り装置を設けて、巻取張力の安定化を図ることが望ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に係る糸巻取機は、巻取装置12と、パッケージとトラバースガイドとの距離を変更する離隔制御手段と、パッケージの回転速度を減速する減速制御手段とを備えているところを特徴とするが、これらは例えば、図1に示す如く、糸Yをトラバースする往復トラバース装置のトラバースガイド70と、パッケージ16と接触してこれを回転駆動する回転ドラム13とに対し、パッケージ16を離接させる機構により構成することができる。またパッケージ16を上記のように移動させる手段としては、パッケージ16のボビンを支持するクレードルアーム14を揺動させる機構などが考えられる。
【0011】
前記の如く構成した糸巻取機は、図1(A)に示すパッケージ16が回転ドラム13と接触している状態から、同図(B)に示すパッケージ16を回転ドラム13及びトラバースガイド70から離隔させた状態とする。これによりパッケージ16は、回転ドラム13から回転駆動力が与えられなくなるため、摩擦抵抗などにより回転を減速させ、巻取速度を低下させる。しかるのち、所定スケジュールに基づいて、再び上記図(A)の状態へ戻す。なお、同図(C)に示すように、パッケージ16を回転ドラム13から離隔させたときの離隔距離δは、糸Yがトラバースガイド70との係合から離脱しない範囲で設定する。さらに、パッケージ16の巻径が変化しても離隔距離δが原則として一定値となるように、パッケージ16の離隔動作を制御することが望ましい。
【0012】
本発明に係る糸巻取機は、パッケージ16の前記離接動作により、リボン巻きと耳高の問題を両方解決することができる。以下にその理由を説明する。
【0013】
リボン巻きは、糸Yをトラバースしつつ巻き取ってパッケージ16を形成する際に、糸Yがパッケージ16の同じ箇所に何度か巻き付けられるために発生する現象である。図2(A)に示すように、糸Yは、トラバース装置のトラバースガイド70に係合されて所定範囲をトラバースされることにより、ある角度に傾斜した姿勢でパッケージ16に巻き取られる。この傾斜角度すなわち綾角の大きさは、トラバースガイド70のトラバース速度(移動速度)と、巻取速度(パッケージ16の周速度)とによって決まる。トラバースガイド70のトラバース速度がv1であり、減速前の巻取速度がv2であるときの糸Yの綾角をθ1とする。パッケージ16を回転ドラム13から離隔させることにより、巻取速度がv3まで減速したとすると、同位置のトラバースガイド70のトラバース速度v1は原則として変化しないと考えられるので、そのときの糸Yの綾角θ2は、巻取速度がv3まで減少した分だけ前記綾角θ1より大きくなる。なお、パッケージ16の回転を減速させた結果、糸Yに弛みが生じて糸張力が低下することも、綾角が変化する要因になっていると考えられる。このような機構により、同じ箇所に巻き付けられることなく糸Yの綾角を変化させることができるから、リボン巻きの発生が抑えられる。
【0014】
他方、耳高は、パッケージ16の左右両端のターン部において、トラバースガイド70が減速、反転することによりトラバース速度が中央部よりも低くならざるを得ないために糸Yの巻き付き量が中央部よりも多くなることに起因する現象である。トラバース装置の往復動を伴うトラバースガイド70がトラバース範囲の両端で移動方向を逆向きに反転させることにより、パッケージ16上における糸Yの巻き付き方向がターンする。図2(B)に二点鎖線で示す如く、パッケージ16の回転速度低下に伴う巻取速度減速前における糸Yのターン位置がパッケージ16端部のT1であるとする。同図に実線で示す如く、パッケージ16を回転ドラム13から離隔させると同時に糸Yがトラバースガイド70との係合から離脱しない範囲でトラバースガイド70からも離隔させると、トラバースガイド70からパッケージ16までの距離が延長されることにより、それだけで糸Yのターン位置がパッケージ16の中央側(T2)へ変位する。これと併せて、パッケージ16の回転速度低下に伴い糸Yの巻取速度が減速することにより糸Yの綾角が大きくなるから、実質的なターン位置はより中央側のT3へ変位する。このようにして糸Yのターン位置を定期的に変位させることにより、パッケージ16の両端部において糸Yの巻き付き量が局所的に多くなるのを防止するから、耳高の問題を回避することが可能である。
【0015】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお本明細書において「上流・下流」とは、紡績時における糸の走行方向を基準として上流・下流を指し、具体的には、紡績装置側を上流、巻取装置側を下流とする。
【0016】
図3は本発明に係る糸巻取機の一つである紡績機1の一例を示す正面図、図4は同紡績機1の要部の内部構造を概略的に示す正面図である。なお図面には、当該紡績機1でコーン巻きパッケージを形成している状態を例示してあるが、本発明はチーズ巻きパッケージの形成にも使用可能である。例えば空気紡績機等から成る紡績機1は、制御部1A、多数の紡績ユニット2が並設された紡績部1B、ブロアー部1C、及び、糸継ぎ装置を備え紡績ユニット2間をレールRに沿って走行自在になされた作業台車3を主要構成部材としており、多数のパッケージを同時に形成できるものである。
【0017】
上記制御部1Aは、紡績部1Bを構成している全部の紡績ユニット2に対し駆動シャフト41・42・43を通じ共通して駆動力を与える駆動用モータ31・32・33、紡績ユニット2ごとに設けられているモータ34・35、及び、巻取装置12等の動作を制御するものである。本例では、入力部aに入力される各種設定値(紡績速度、紡績速度と巻取ローラ速度との比率など)に基づき、演算部bが、モータ31〜34に対してインバータc又はドライバ基板30を介し紡績速度情報を出力する。また糸弛み取り装置10のモータ35に対し、ドライバ基板40を介して、弛み取りローラ(後述)の回転速度情報を出力するようになされている。
【0018】
紡績部1Bは、多数の紡績ユニット2を並設して構成したものである。各紡績ユニット2は、個別に運転条件を設定できるように構成され、紡績装置5及び巻取装置12と共に、糸弛み取り装置10が備えられている。紡績ユニット2の構造の詳細については、後述する。
【0019】
ブロアー部1Cは、紡績ユニット2に対し、エアーダクトを通じて、所要箇所に負圧(吸引圧)を付与する負圧供給手段を収納するものであって、例えば、糸吸引装置7等に負圧を作用させる。
【0020】
作業台車3は、糸継ぎを必要とする任意の紡績ユニット2から発信される糸継ぎ要求信号に基づき、レールR上を移動して該当する紡績ユニット2位置に停止し、糸継ぎ作業を実行できるようになっているものであって、紡績部1B部分の構成を側面方向から概略的に表した図5に示す如く、ノッターやスプライサー等の糸継ぎ装置17、紡績装置5で形成された糸の端部を吸引して糸継ぎ装置17へ導くサクションパイプ18、巻取装置12に支持されたパッケージ16の糸端を吸引して糸継ぎ装置17へ導くサクションマウス19等を備えている。なお、糸継ぎ装置17・サクションパイプ18・サクションマウス19を、各紡績ユニット2ごとに設ける構成も可能である。糸継ぎ装置17は、作業実行時に、糸継ぎ装置17近傍の紡績装置5側の糸及び巻取装置12側の糸を、糸継ぎ装置17が備える糸寄せレバー(図示せず)で両糸端をクランプして糸継ぎ作業実行部に取り込み、糸継ぎ作業を実行する。
【0021】
前記紡績部1Bに複数配設される紡績ユニット2は、原料の繊維束Sから糸を製造する機構の一つの単位である。その概略構成を説明すると、図5に示すとおり、糸道Eの上流側から下流側に沿って順に配置された、ドラフト装置4、紡績装置5、予め設定された所定速度(紡出速度)で糸送りする糸送り装置6、糸吸引装置7、カッター8、糸欠陥検出器9、糸弛み取り装置10、ワキシング装置11、巻取装置12から構成されている。
【0022】
ドラフト装置4には、例えば、上流側からバックローラ4a・サードローラ4b・エプロン4cが張設されたセカンドローラ4d・フロントローラ4eからなる4線式のものが適用される。紡績装置5は、旋回気流を利用して繊維束Sから紡績糸Y(以下、単に「糸Y」と言う。)を生成する空気式のもの、例えば、紡績速度が数百m/分の高速紡績が可能なものが採用される。そのほか紡績装置5は、空気紡績ノズルと加撚ローラ対とにより糸Yを生成するものや、ロータ回転により糸Yを生成するオープンエンド紡績機など、他の構造のものに置換することが可能である。糸送り装置6は、ニップローラ6aとデリベリローラ6bとから成り、両ローラ6a,6b間に糸Yを挟持して下流側へ送給するものである。糸吸引装置7は、常時、吸引状態にあり、糸欠陥検出器9が糸Yの欠陥を検出したときにカッター8が切断した糸Yの断片を吸引除去する。
【0023】
巻取装置12は、ボビン15を保持するクレードルアーム14と、ボビン15又はパッケージ16に接触してこれを回転駆動する回転ドラム13と、糸Yをボビン15の軸方向に沿ってトラバースするトラバースガイド70を有するトラバース装置とを備える。またクレードルアーム14は揺動軸14aを中心に揺動可能に構成され、ボビン15又はパッケージ16の回転ドラム13に対する離接動作及び離隔時間を制御する離隔制御手段としての揺動制御機構60が設けられている。本実施例では、この揺動制御機構60が、パッケージ16をトラバースガイドとの距離を変更する手段、及び、パッケージ16の回転速度を減速する手段となっている。
【0024】
前記揺動制御機構60は、例えば、クレードルアーム14の一端にピストンロッド65を連結させたエアーシリンダ64、エアーシリンダ64に接圧用圧空と離隔用圧空とを供給する圧空供給源、エアーシリンダ64に対する圧空の供給経路を切り替えるためのソレノイドバルブ装置63、ソレノイドバルブ装置63の動作を制御するコントローラ62、及び、このコントローラ62に制御信号を出力するユニットコントローラ61等から構成される。エアーシリンダ64は、接圧用圧空が常時供給され、ピストンロッド65を後退方向に常時付勢することにより、パッケージ16を回転ドラム13と接触する方向へ常時付勢している。パッケージ16を回転ドラム13から離隔させる時には、エアーシリンダ64に接圧用圧空を上回る圧力の離隔用圧空を作用させてピストンロッド65を伸張させることにより、パッケージ16を回転ドラム13から引き離すようになされている。このように、パッケージ16の回転ドラム13に対する離接は離隔用圧空の給排によって制御される。そしてパッケージ16を回転ドラム13に離接させる時間の長さやタイミング、つまり離隔用圧空の給排時期は、ユニットコントローラ61により制御される。すなわちユニットコントローラ61が、糸種、番手、紡出速度などのあらかじめ入力された紡績条件データと、タイマー部で計測した紡績機の運転時間とに基づいて演算を行い、ソレノイドバルブ装置63に所要の動作を実行させるのに必要な制御信号を、前記コントローラ62へ出力するようになされている。
【0025】
前記の如く構成された図5に示す如き紡績機1の運転状況を以下に説明する。作業台車3が停止していない状態の紡績ユニット2は、通常の糸巻き取り(紡績)運転を行っているとき、繊維束Sをドラフト装置4で紡績装置5へ送り込み、紡績装置5において生成された糸Yを糸送り装置6で下流側へ送給し、糸吸引装置7、糸欠陥検出器9の直前を通過させ、ワキシング装置11を経て巻取装置12へ送り出す。そして、回転ドラム13により回転駆動されるボビン15に糸Yを巻き付けて、パッケージ16の形成を開始する。
【0026】
前記巻取工程中、前記揺動制御機構60により、パッケージ16を回転ドラム13に対し離接させ、トラバースガイドからの距離を変更すると共に巻取速度を変化させる工程を、予め設定された所定の減速スケジュールに従って行う。すなわち揺動制御機構60は、離隔制御手段のみならず、パッケージ16を回転ドラム13からも離隔させることによるパッケージ16の回転速度=巻取速度を減速する減速制御手段としても機能する。図6に示す如く、クレードルアーム14を揺動させてパッケージ16を回転ドラム13から離隔させたのち、クレードルアーム14を復帰方向へ揺動させて図5に示す如くパッケージ16を回転ドラム13に再び接触させる工程を、所定スケジュールに従って行う。
【0027】
パッケージ16を離隔させるときは、ユニットコントローラ61から出力される制御信号に基づき、コントローラ62がソレノイドバルブ装置63に動作信号を出力する。これにより、エアーシリンダ64に離隔用圧空が供給され、エアーシリンダ64のピストンロッド65が伸張して、クレードルアーム14を揺動させ、パッケージ16を回転ドラム13から離隔させる。パッケージ16を回転ドラム13に接触させるときは、ユニットコントローラ61の制御信号に基づき、コントローラ62が動作信号を出力してソレノイドバルブ装置63を動作させ、離隔用圧空をエアーシリンダ64から除去する。これによりピストンロッド65が後退してクレードルアーム14を復帰方向へ揺動させ、パッケージ16を回転ドラム13に接触させる。このようにしてパッケージ16を回転ドラム13及びトラバースガイドに対し離接させることにより、パッケージ16に巻き取られる糸Yの綾角及びターン位置が所定のスケジュールに従って変化するので、リボン巻き及び耳高の発生を防止することができる。
【0028】
なお本例の如く、複数の紡績ユニット2が設けられ多数のパッケージを同時に形成し得る紡績機1において、例えば共通の駆動軸でトラバースガイドを駆動する構造の往復トラバース装置を用いた場合、トラバースガイドについては個別に動作を制御するのは困難である。しかるに前述の如き揺動制御機構60を各紡績ユニット2ごとに設けることにより、各パッケージ16ごとに回転ドラム13及びトラバースガイドからの離隔動作を制御できるから、パッケージ16の巻取状況に応じて、最適な離隔プログラムを設定することが可能であり、パッケージの品質向上をもたらす。
【0029】
ところで本例の糸巻取機は、クレードルアーム14を揺動させて糸Yの綾角及びターン位置を変化させることを特色とするが、その際、糸Yの巻取張力が変動しやすいという問題がある。そこで、紡績装置5及び糸送り装置6と、巻取装置12との間に、図7及び図8に示す如き糸弛み取り装置10を設け、弛み取りローラ21に貯留される弛み量を増減させることによって、巻取張力の安定化を図ることが望ましい。
【0030】
糸弛み取り装置10は、弛み糸Yを外周面21aに巻き付けて貯留する弛み取りローラ21と、条件に応じて弛み取りローラ21と同期して又は独立に同心回転する糸掛部材22と,弛み取りローラ21のやや上流側に配置される上流側ガイド23と、弛み取りローラ21を回転駆動するステッピングモータ等の駆動手段35と、該駆動手段35を制御するドライバ基板40(図4参照)と、弛み取りローラ21の下流位置に設けられスリット36aを有する下流側ガイド36とを備えており、これらは、ブラケット37などによって紡績ユニット2に固定されている。
【0031】
弛み取りローラ21は、図14に示すように、駆動手段35の駆動軸35aに固着され該駆動軸35aと一体的に回転する。従って、演算部bにより設定される回転速度に忠実に従った弛み取りローラ21の回転制御が可能となっている。また、図12及び13に示す如く、糸掛部材22を有する側を先端P、駆動手段35に接続される側を基端Qとすると、外周面21aには、基端Q側及び先端P側それぞれに端面へ向かって拡径するテーパ部21b、21dが形成され、これらの中間部は同一径の円筒部21cとなっている。そして、紡績装置5から紡出されてくる糸Yを、基端Q側から外周面21aに巻き付けたのち。先端P側から巻取装置12側へ向かって解舒するようになされている(図10,11参照)。基端Q側のテーパ部21bは、紡績装置5から供給され外周面21aに巻き付いた糸Yを、大径部分21b−1から小径部分21b−2へ円滑に移動させて中間の円筒部21cへ到達させることにより、糸Yを円筒部21c表面に規則正しく巻き付かせる機能を有する。先端P側のテーパ部21dは、解舒の際に、巻き付かせた糸Yが一度に抜け出る輪抜け現象を抑止すると同時に、巻き付け糸層を、小径部分21d−2から大径部分21d−1へ順送りに送り出して、糸Yの円滑な引き出しを確保する機能を有している。
【0032】
弛み取りローラ21の先端P側に設けられる解舒張力付与部材22は、図14に示す如く、フライヤー22aを、ローラ21に対し、伝達力調節機構を介して同心回転可能に取り付けて成るものである。上記伝達力調節機構の構成は例えば次の如くである。ローラ21の中央部に突設した軸部21eに、ベアリング等の軸受部材22cを介してホイール部材22bを回転自在に装着し、このホイール部材22bにフライヤー22aの基部を取着する。そして、このホイール部材22bを、上記軸部21e先端のボルト部分に螺合させたナット等から成る伝達力調整部材22dと押さえ部材22eとで抜け止めした伝達力付与部材22fにより、取り付けている。なお本実施形態の如く、上記伝達力調節機構の伝達力調整部材22dを、弛み取りローラ21の先端側に露出させるよう構成した場合は、作業者による伝達力調整作業が容易に行える。
【0033】
前記伝達力調節機構は、フライヤー22aの弛み取りローラ21に対する回転抵抗の大きさを調節可能にするものである。すなわち、上記押さえ部材22eの締め付け度合いを弱くすれば、ホイール部材22bに対する伝達力付与部材22fの押圧力(あるいは摩擦力)が弱まるようになっており、わずかな負荷を与えるだけでフライヤー22aがスリップし、弛み取りローラ21の回転とは独立に回転することができるようになる。反対に、上記押さえ部材22eの締め付け度合いを強くすれば、ホイール部材22bに対する伝達力付与部材22fの押圧力が強まるようになっており、フライヤー22aは非常に大きな負荷が作用しない限りスリップせず、弛み取りローラ21と一体に回転する。
【0034】
従って、本例の糸掛部材22は、押さえ部材22eの締め付け度合いを適当に調節することで、弛み取りローラ21とは独立に回転し得るフライヤー22aの挙動を、弛み取りローラ21から解舒される糸Yの張力に関連させて調節することが可能である。すなわち、糸種や番手等の紡績条件によって異なる弛み取りローラ21からの糸Yの解舒張力を、上記伝達力調節機構により予め調節可能である。フライヤー22aの挙動は、伝達力付与部材22fを介して弛み取りローラ21から伝達される回転力と、弛み取りローラ21から解舒する糸Yの張力との相互作用で決まる。逆に言えば、上記伝達力調節機構によりフライヤー22aの挙動をあらかじめ調節しておけば、フライヤー22aが弛み取りローラ21から解舒される糸Yに与える抵抗力の大きさを、前もって設定できることになる。すなわち、フライヤー22aを含む糸掛部材22は、解舒張力付与部材として作用し、上記伝達力調節機構は、解舒張力調節機構として機能する。
【0035】
フライヤー22aは、糸Yを弛み取りローラ21の外周面21aへ確実に巻き付かせるため、以下に述べるような特徴的な形状が採用されている。すなわち、ホイール部材22bに取着される基部から、弛み取りローラ21の先端Pよりもわずかに基端Qとは反対側の方向へ突出する位置まで徐々に延び、さらに内方から順にm,l,kの3箇所で屈曲して、先端部jが弛み取りローラ21の半径よりも外方に位置するよう設定されている。上記3箇所の屈曲箇所のうち、2箇所の屈曲箇所k,lはローラ半径外に在り、1箇所の屈曲箇所mはローラ21における大径部分21−dの半径内に位置している。そして内方の屈曲箇所mにおいて、フライヤー22aは弛み取りローラ21の糸巻き付け時の回転方向とは反対の半径方向外方へ折れ曲がり、次の屈曲箇所lにおいて弛み取りローラ21の基端Q側へ折れ曲がり、最後に外方の屈曲箇所kにおいて弛み取りローラ21の回転方向へ折れ曲がるよう形成されている。
【0036】
よってフライヤー22aには、先端部j・屈曲箇所k・屈曲箇所lによって、弛み取りローラ21の回転方向外方に向かって開く角度を有する糸係合部Rが形成され、この糸係合部Rは、弛み取りローラ21の先端Pと基端Qとの間において、ローラ外周面21aに対して所定距離を保ちつつ、外周面21aに沿って周回移動することとなる。かかる形態のフライヤー22aは、弛み取り時に係合した糸Yを、弛み取りローラ21と共に回転することによって、弛み取りローラ外周面21a上の所定位置へ安定して巻き付かせるうえで好ましい形状となっている。更に、弛み取りローラ21とフライヤー22aとの間の隙間に糸Yがはまり込むのを確実に防止する、という作用を営む。
【0037】
なおフライヤー22aは、上流側ガイド23と下流側ガイド36とを最短距離で結ぶ糸道上で、糸Yと係合し得るように配置されている。すなわち、弛み取りローラ21と共に回転するフライヤー22aの回転面が、上記糸道と交叉するように設定される。
【0038】
糸弛み取り装置10の上流位置に配置される上流側ガイド23は、糸継ぎ時などに、糸継ぎ装置17による糸継ぎ直前に上流側の糸端が弛み取りローラ21側へ引っ張り込まれて、糸継ぎ装置17への上流側糸端の供給を失敗することがないように、糸Yを解舒張力付与部材22と係合することのない位置(弛み取りローラ21に巻き取られることのない位置)へ移動させたり、糸継ぎ装置17が糸継ぎを実行するために、糸継ぎ装置17の上流側糸端をクランプするときに生じた糸の弛みを吸収すべく、解舒張力付与部材22と糸Yとを係合させ、弛み取りローラ21への糸Yの巻き取りを開始させる際に進退駆動される。
【0039】
作業台車3には、上流側ガイド23を進退駆動するエアーシリンダ等から成る進退手段24と、これを制御するための制御手段(図示せず)とが設けられている。上流側ガイド23は、前進位置にあるとき、糸Yが糸弛み取り装置10と係合することのない位置に糸道を保持し、後退位置にあるときは、糸Yが糸弛み取り装置10のフライヤー22aと係合して弛み取りローラ21に巻き取られる位置まで、糸道を移動させる糸移動手段として機能し、進退手段24は上流側ガイド23の駆動手段となっている。
【0040】
糸の巻取工程を行っているとき、図7及び図8に示す如く、糸弛み取り装置10の上流側ガイド23は、図示しないバネ等の引っ張り部材により強制的に引っ張られて後退位置に在る。糸の巻き取り時、ドライバ基板40(図4参照)を介し、弛み取りローラ21の駆動用モータ35へ回転指令を出力し、図9に示す如く弛み取りローラ21を回転駆動させる。弛み取りローラ21に設けられたフライヤー22aの回転軌道面は、上流側ガイド23と下流側ガイド36とで規定される糸道を交叉するように設定されているから、弛み取りローラ21を回転させることで、フライヤー22aが自然に糸Yと係合して、図10及び図11に示す如く、糸Yを弛み取りローラ21の外周面に確実に巻き付ける。またフライヤー22aはローラ21とフライヤー22aとの隙間に糸Yが嵌り込みにくい形態に形成されている。なお弛み取りローラ21の回転速度は、紡績装置5における糸Yの紡出速度(実質的には糸送り装置6の糸送り速度)に基づき、巻取張力が適切になるよう、入力部aの入力値により演算部bが演算して設定する。
【0041】
糸弛み取り装置10のフライヤー22aは、弛み取りローラ21とは独立に回転可能であり、且つ、伝達力調節機構により、弛み取りローラ21からフライヤー22aへ伝達される回転駆動力が調節されている。すなわち、フライヤー22aに作用する負荷が所定値以下のときは、フライヤー22aが弛み取りローラ21と一体回転して糸Yを弛み取りローラ21に巻き付かせ弛み量を増大させる。反対に負荷が所定値を越えると、フライヤー22aが弛み取りローラ21とは独立に回転又は回動して糸Yを弛み取りローラ21からの解舒を許容する。従って、パッケージ16を回転ドラム13から離隔させて巻取速度が低下したときは、フライヤー22aが弛み取りローラ21と一体回転して貯留する弛み量を増大させ、フライヤー22aが弛み取りローラ21とは独立する回転量又は回動量が小さくなって、糸Yの解舒量を減少させ、巻取速度の減少を許容する。反対にパッケージ16を回転ドラム13に接触させて巻取速度を上昇させた場合は、フライヤー22aが糸Yの解舒量を増やし、貯留する弛み量を減少させて、巻取速度の増大を許容する。なお巻取速度が変動せず一定のときには、弛み取りローラ21に巻き取った糸Yは、ほぼ一定の割合で解舒される。このような機構により本例の糸弛み取り装置10は、糸張力の変動を緩和して、巻取張力を安定化する機能を発揮する。
【0042】
本例の糸弛み取り装置10は、フライヤー22aと弛み取りローラ21とを伝達力調節機構を介し連結する構成を採用するから、フライヤー22aが弛み取りローラに対し独立して回動又は回転する際の負荷の大きさを容易に変更できる。依って、糸種・番手・紡績速度等の様々な紡績条件により変化する巻取張力に対応することが簡単である。
【0043】
また通常巻取時は、巻取速度が紡出速度よりも若干速くなるよう設定される。このため、パッケージ16の回転速度制御を行わなければ、いずれは、弛み取りローラ21に巻き取られている糸Yが全て解舒されきってしまう。これは、紡出速度の方が速いと、弛み取りローラ21への糸Yの供給量が巻き取り装置12に向かって解舒される糸Yの量を常に上回り、その結果、弛み取りローラ21に巻き付く糸量が増大する一方となるからである。そこで前記のように、糸弛み取り装置10を設けて糸Yの弛み取りを行う場合、弛み取りローラ21に貯留する弛み量が皆無になるのを避ける必要がある。しかるに本実施例によれば、所定スケジュールで巻取速度を減速させるから、紡績機運転中に何らかの原因で弛み量が少なくなることがあったとしても、一定時間内には、糸弛み取り装置10に貯留する弛み量の回復が必ず行われる。依って、弛み量が無くなってしまうのを回避できる、という利点が得られる。
【0044】
ところで、前記所定スケジュールでなくても、弛み取りローラ21に貯留される弛み量に基づいて離隔制御を行うようにしてもよい。この場合、所定スケジュールではないので、離隔時間を適宜調整すればよい。パッケージ16の巻径が小さいときは慣性モーメントも小さいから、パッケージ16は回転ドラム13から離れると急速に回転を減速させるので、弛み量が即座に回復する。従って、パッケージ離隔時間は短時間でよい。巻径の増大に従い慣性モーメントも大きくなるから、回転ドラム13から離したときのパッケージ16の回転減速度合いは小さい。従って、弛み量が所定量まで回復するのに要する離隔時間も、それだけ長く設定される。もし仮に、離隔時間の調整を行わず、パッケージ離隔時間を一律に設定したとすれば、巻径の増大に伴い弛み量の回復量が次第に減少することとなるから、場合によっては、パッケージ16の慣性による回転によって、弛み量が回復せずに、弛み取りローラ21に巻き取られている糸Yが全て解舒されきってしまうおそれがある。パッケージ16の回転ドラム13からの離隔時間は、パッケージ16の巻径によって決定される。すなわち、離隔した後の慣性モーメントを考慮するならば、巻径の増大に応じて離隔時間も増やさなくてはならない。そこで、パッケージ16の巻径を算出し、巻径に応じてパッケージ16を回転ドラム13から離隔させる時間の長さを調整する調整手段を設けることが望ましい。
【0045】
かかる調整手段としては、例えばユニットコントローラ61に設けられる、紡出速度記憶部とタイマー部とを備える巻取長さ算出部、糸種・番手記憶部、離隔時間演算部等から構成するものが考えられる。パッケージ16の巻径は、糸種・番手と巻取長さとで決められ、巻取長さは、巻取速度(又は紡出速度)×巻取時間から算出することが可能である。糸種・番手及び巻取速度は、あらかじめ紡績条件によって設定される事項である。それ故、タイマー部で計測した巻取時間からパッケージ16の巻径を算出でき、この巻径から、パッケージ16の回転を所定速度まで減速させるの必要な離隔時間を算出することが可能である。なお実際的には、糸種・番手及び巻取(紡出)速度は既定値であり、巻取時間とパッケージ16の巻径とは連関するから、あらかじめ糸種・番手及び巻取(紡出)速度のデータを入力しておけば、タイマー部で計測した巻取時間に基づき、離隔時間演算部がパッケージ16の巻径に応じた最適な離隔時間を算出するようにプログラムできる。つまり、巻取時間だけで、パッケージ離隔時間の調整が可能である。
【0046】
糸弛み取り装置10を設けた場合、弛み取りローラ21の直ぐ上流側に糸Yの張力を検出する糸張力検出装置50を設け、これによって弛み量を監視し、弛み量が不足するのを予防する態様も可能である。当該糸張力検出装置50は、例えば図13,14に示すように、弛み取りローラ21の基端Q近くにおいて上流側に配置されるほぼL字形のワイヤロッド51と、ワイヤロッド51の途中を回動可能に支持する枢支部52と、ワイヤロッド51の末端部53が当接して所定以上の押圧力が加わるとON動作信号を出力するマイクロスイッチ等のスイッチング部材54とから成る。
【0047】
糸Yが弛み取りローラ21に巻き付いていない状態(図7,8参照)では、ワイヤロッド51は糸Yと接触しないので、当該ワイヤロッド51の末端部53が押圧力を加えないため、スイッチング部材54はON動作しない(図13(B)の実線参照)。図10,11に示す如く、糸Yが弛み取りローラ21に巻き付くと、糸Yの張力によってワイヤロッド51が押圧されるため、図13(B)に二点鎖線で示すように、ワイヤロッド51の末端部53がスイッチング部材54を押圧する。糸張力は、弛み取りローラ21に貯留される糸Yの弛み量が多くなると大きくなり、糸Yの弛み量が少なくなると低下する。所定以上の糸張力がワイヤロッド51に作用して末端部53による押圧力が所定値以上になると、スイッチング部材54がON動作し、動作信号をユニットコントローラ61へ出力する。従って本例の糸張力検出装置50は、スイッチング部材54がON動作する糸張力を適宜設定することにより、弛み取りローラ21に貯留される糸Yの弛み量が所定量を超えているか不足しているかを検出し得る弛み量検出手段として機能する。
【0048】
弛み取りローラ21に貯留する弛み量が少なくなって、糸張力検出装置50が検出する糸張力が所定値を下回ると、スイッチング部材54からのON信号出力が途絶える。するとユニットコントローラ61が出力する制御信に基づき、揺動制御機構60がクレードルアーム14を揺動させ、パッケージ16を回転ドラム13から離隔させて巻取速度を低減させ、弛み量を回復させる。弛み量が所定量まで回復するのに必要な時間の経過後、ユニットコントローラ61の制御信号に基づき揺動制御機構60がクレードルアーム14を復帰方向へ揺動させ、パッケージ16を再び回転ドラム13に接触させる。
【0049】
[その他の実施例]
パッケージ16の回転速度を減速させる手段としては、パッケージ16を回転ドラム13から離隔させて自然減速させる手段以外に、ボビン15の支持軸又はクレードルアーム14のボビン支持部に制動力を与える制動手段を設け、パッケージ16を強制的に減速する手段も考えられる。そのほか、紡績ユニット2ごとに回転ドラム13の回転駆動用モータを設けた場合、このモータの動作を制御して、パッケージ16の減速・復帰処理をすることも可能である。
【0050】
但し、これらの別形態では、別途、新たに各巻取装置ごとにモータ、制御手段を設け、モータの加減速パターンを演算する必要がある。しかるに、パッケージ16の回転ドラム13からの離隔を制御するものについては、回転ドラム13とパッケージ16との離接を制御すればよい。さらに、パッケージ16をトラバースガイド70から離反させる離反手段と、パッケージ16を減速させる減速制御手段とを兼用させることが可能である。以上により装置の構造を簡素化することが出来る。
【0051】
パッケージの巻径を検出する手段としては、巻取時間から演算して算出する手段のほか、パッケージ16を支持しているボビン15の回転速度を計測し、この回転速度からパッケージ16の巻径を算出することが可能である。通常、ボビン15の回転速度は、糸の巻取速度、つまりパッケージ16の周速度が一定となるように制御されるから、パッケージ16の巻径増大に従い、ボビン15の回転速度は徐々に減じることとなる。従って、ボビン回転速度とパッケージ巻径とは密接に相関するから、ボビン15の回転速度に基づいて、パッケージ16の巻径を算出することが可能である。
【0052】
なお、本発明の適用対象は紡績機のほか、撚糸機・仮撚機など、往復動するトラバースガイドを持つトラバース装置を備える糸巻取機であれば、特に限定されない。
【0053】
【発明の効果】
請求項1に記載した本発明は、往復動するトラバースガイドを備える糸巻取機において、トラバースガイドとパッケージとの距離を変更する離隔制御手段と、パッケージの回転速度を減速する減速制御手段とを備えているので、トラバースガイドからパッケージまでの距離を延長させることにより糸のターン位置を変化させて、耳高を防止することができる。またパッケージの回転速度を低下させることにより、糸がパッケージに巻き付けられる際の綾角を変化させて、リボン巻きを回避できる。このように、リボン巻きと耳高の問題を一挙に解決できるから、巻取状態にむらのない良好なパッケージを容易に得ることができる。
【0054】
請求項2に記載する如く、
複数の巻取装置ごとに設けたトラバースガイドを共通の駆動軸により駆動して、複数のパッケージを同時に形成可能になされたものにおいて、前記複数のパッケージ各々とそれぞれに対応するトラバースガイドとの距離、パッケージの回転速度を個別に制御可能とした場合は、パッケージごとに綾角とターン位置とを個別に調整できるので、複数のパッケージを同時に形成する場合に、パッケージそれぞれの状態に応じた最適な設定が可能となる。
【0055】
請求項3に記載した本発明に係る糸巻取機によれば、パッケージをトラバースガイドから離隔させる離隔制御手段が、パッケージの回転速度を減速させる減速制御手段を兼ねることとなる。依って、装置の構造を簡単にすることが可能である。また、本構成を採用することによって、前記請求項2に記載の発明を実施するのが容易になる、という利点が得られる。
【0056】
さらに、請求項4に記載の如く、予め設定された所定速度で糸送りする糸送り装置と、糸をパッケージに巻き取る巻取装置との間に、糸送り速度と巻取速度との差により生じる弛み糸を貯留して巻取張力変動を吸収する糸弛み取り装置を配置した場合は、パッケージの回転速度を減速させたときに生じる糸の弛みを取り除いて、巻取張力の安定化を図ることができる。特に、1トラバース内で巻径が変化するため巻取速度の変動をきたしやすいコーン巻きパッケージの製造に適用した場合に、巻取張力の安定化に目覚ましい効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る糸巻取機の実施形態を示すものであって、図(A)は回転ドラムとパッケージとが接触している状態の側面図、図(B)は回転ドラムからパッケージを離隔させた状態の側面図、図(C)は回転ドラムからパッケージを離隔させた状態の要部を拡大して示す側面図である。
【図2】本発明に係る糸巻取機の実施形態を示すものであって、図(A)はリボン巻きを回避できる理由を説明するためのトラバースガイドとパッケージとを示す要部の正面図、図(B)は耳高を防止できる理由を説明するためのトラバースガイドとパッケージとを示す要部の正面図である。
【図3】本発明に係る糸巻取機が適用される紡績機の実施例を示す正面図である。
【図4】前記紡績機の要部構造を概略的に示す正面図である。
【図5】前記紡績機の紡績ユニットと作業台車の概略構成を示す側面図である。
【図6】前記紡績機の紡績ユニットと作業台車の概略構成を示すものであって、パッケージを回転ドラム13から離隔させた状態の側面図である。
【図7】前記紡績機に関するものであって、糸掛け時における糸弛み取り装置部分の概略構成を示す側面図である。
【図8】前記紡績機に関するものであって、糸掛け時における糸弛み取り装置部分の概略構成を示す正面図である。
【図9】前記紡績機に関するものであって、弛み取り開始時における糸弛み取り装置部分の概略構成を示す側面図である。
【図10】前記紡績機に関するものであって、弛み取り動作中にある糸弛み取り装置部分の概略構成を示す側面図である。
【図11】前記紡績機に関するものであって、弛み取り動作中にある糸弛み取り装置部分の概略構成を示す正面図である。
【図12】前記実施例に用いる糸弛み取り装置の弛み取りローラを示す先端側から見た斜視図である。
【図13】前記実施例に用いる糸弛み取り装置の弛み取りローラ及び糸張力検出装置を示すものであって、図(A)は先端側から見た正面図、図(B)は平面図である。
【図14】前記実施例に用いる糸弛み取り装置の弛み取りローラと糸張力検出装置とを示す側面断面図である。
【符号の説明】
1…紡績機 2…紡績ユニット 3…作業台車 5…紡績装置 10…糸弛み取り装置 12…巻取装置 13…回転ドラム 14…クレードルアーム 15…ボビン 16…パッケージ 17…糸継ぎ装置 21…弛み取りローラ 22…糸掛部材 22a…フライヤー 23…上流側ガイド 24…進退手段 35…駆動用モータ 50…糸張力検出装置 51…ワイヤロッド 54…スイッチング部材 60…揺動制御機構 61…ユニットコントローラ 70…トラバースガイド S…繊維束(スライバ) Y…糸(紡績糸)
Claims (4)
- 往復動するトラバースガイドを備えるトラバース装置を用いて糸をパッケージに巻き取る巻取装置を備える糸巻取機において、前記トラバース装置のトラバースガイドとパッケージとの距離を、糸が前記トラバースガイドから離脱しない範囲で変更する離隔制御手段と、パッケージの回転速度を減速する減速制御手段とを備えていることを特徴とする糸巻取機。
- 複数の巻取装置を並設し、各巻取装置ごとに設けられたトラバースガイドを共通の駆動軸により駆動して、複数のパッケージを同時に形成可能になされたものにおいて、前記離隔制御手段、減速制御手段は、前記複数のパッケージ各々とそれぞれに対応するトラバースガイドとの距離、パッケージの回転速度を個別に制御可能とした請求項1に記載の糸巻取機。
- 前記巻取装置は、パッケージに接触して該パッケージを回転駆動する回転ドラムを備えるものであって、前記離隔制御手段は、パッケージを、前記トラバース装置のトラバースガイドから離隔させると同時に、回転ドラムからも離隔させることにより、パッケージの回転速度を減速させる請求項1又は2に記載の糸巻取機。
- 予め設定された所定速度で糸送りする糸送り装置と、糸をパッケージに巻き取る巻取装置との間に、糸送り速度と巻取速度との差により生じる弛み糸を貯留して巻取張力変動を吸収する糸弛み取り装置が配置された請求項1乃至3のいずれかに記載の糸巻取機。
Priority Applications (4)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP2003072683A JP2004277128A (ja) | 2003-03-17 | 2003-03-17 | 糸巻取機 |
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Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP2003072683A JP2004277128A (ja) | 2003-03-17 | 2003-03-17 | 糸巻取機 |
Publications (1)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JP2004277128A true JP2004277128A (ja) | 2004-10-07 |
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ID=33288816
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP2003072683A Pending JP2004277128A (ja) | 2003-03-17 | 2003-03-17 | 糸巻取機 |
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| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JP2004277128A (ja) |
Cited By (2)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP2015120598A (ja) * | 2013-12-20 | 2015-07-02 | リーター シーゼット エス.アール.オー. | 繊維機械用のドラム中間蓄積デバイス |
| CN112830328A (zh) * | 2021-01-18 | 2021-05-25 | 张朝志 | 一种纺织机械用纱筒装置 |
-
2003
- 2003-03-17 JP JP2003072683A patent/JP2004277128A/ja active Pending
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|---|---|---|---|---|
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