JP2004278663A - 無段変速機の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】無段変速機の劣化を防止もしくは軽減すること。
【解決手段】トルクを伝達する部材同士の間の滑りに基づいて無段変速機を制御する無段変速機の制御装置において、入出力回転速度の相関関数、変速比の変化率の内少なくとも一つに基づいて滑りを検出し、前記滑りが発生したときの変速比を前記滑りが発生した後に制限する変速比制限手段(ステップS4,S5,S7)を備えている。したがって、滑りが生じた箇所に更に荷重がかかることが抑制されるので、無段変速機の損傷を防止もしくは軽減することができる。
【選択図】 図1
【解決手段】トルクを伝達する部材同士の間の滑りに基づいて無段変速機を制御する無段変速機の制御装置において、入出力回転速度の相関関数、変速比の変化率の内少なくとも一つに基づいて滑りを検出し、前記滑りが発生したときの変速比を前記滑りが発生した後に制限する変速比制限手段(ステップS4,S5,S7)を備えている。したがって、滑りが生じた箇所に更に荷重がかかることが抑制されるので、無段変速機の損傷を防止もしくは軽減することができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、ベルト式無段変速機やトラクション式無段変速機などの無段変速機を制御する無段変速機の制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、無段変速機の滑り(スリップ)の発生を検出し、その滑りの発生を判断した回数に応じて警報を発する装置が知られている。このような装置の一例が、下記の特許文献1に記載されている。
【0003】
この特許文献1に記載されているベルト式無段変速機の故障診断装置は、低速からの急加速時や高速段での空走時など駆動ベルトに滑りが発生し易い状況下で変速比を算出し、その変速比を設計上の最大変速比以上または最小変速比以下の値とし、あるいは過度的な加減速域で変速比変化速度を算出し、その変速比変化速度の絶対値が所定の基準値になると、駆動ベルトのスリップ発生を判断し、そのスリップ発生の判断回数に応じて、警報を発する構成となっている。このベルト式無段変速機は、前後進の切換部と、プーリ比変換部と、終減速部と、油圧制御部とを備えている。そして、この故障診断装置は、カウンタ、コンパレータを有する制御ユニットと、警報ランプとを備えている。このカウンタの計測回数が基準値以上となると、コンパレータがHレベルの信号を出力することにより、警報ランプが点灯して、駆動ベルトのスリップ発生を早期に警報する。
【0004】
【特許文献1】
特公平7−58110号公報(特許請求の範囲、第2頁右欄の上から第12行目〜第4頁右欄の下から第6行目まで、第1図、第2図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の特許文献1に記載された発明では、スリップの発生回数に基づいて警報を発するように構成されているから、警報を発するためには、複数回のスリップが不可避である。
【0006】
したがって、複数回のスリップによってベルトもしくはプーリの劣化が進行する可能性があるが、上記特許文献1の発明ではその種の劣化に対処する手段がなく、無段変速機の保護や耐久性の向上などの点で改善すべき余地があった。
【0007】
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、無段変速機の劣化を防止もしくは軽減できる制御装置を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段およびその作用】
上記目的を達成するため請求項1の発明は、トルクを伝達する部材同士の間の滑りに基づいて無段変速機を制御する無段変速機の制御装置において、前記滑りが発生したときの変速比を前記滑りの発生後に制限する変速比制限手段を備えていることを特徴とするものである。
【0009】
したがって、請求項1の発明によれば、無段変速機がトルクを伝達する部材同士の間の滑りに基づいて制御される。その滑りの発生時の変速比が前記滑りの発生後に制限される。その結果、滑りの発生した箇所に、更に荷重がかかったり、滑りが生じたりすることが抑制される。
【0010】
また、請求項2の発明は、請求項1の構成に加えて、前記滑りに起因する凝着による劣化状態を検出する劣化状態検出手段を更に備えていることを特徴とするものである。
【0011】
したがって、請求項2の発明によれば、請求項1の発明と同様の作用が生じる他に、上記滑りに起因する凝着による劣化状態が検出される。その結果、凝着による劣化が抑制される。
【0012】
さらに、請求項3の発明は、請求項1の構成に加えて、前記無段変速機の入出力回転速度の相関係数、変速比の変化率のうち少なくとも一つに基づいて前記滑りを検出する滑り検出手段と、その滑りの検出された状態で劣化状態を検出する滑り劣化状態検出手段を更に備えていることを特徴とするものである。
【0013】
したがって、請求項3の発明によれば、請求項1の発明と同様の作用が生じる他に、無段変速機の入出力回転速度の相関係数、変速比の変化率のうち少なくとも一つに基づいて滑りが検出され、その滑りの検出された状態で劣化状態が検出される。その結果、劣化状態が正確に検出される。
【0014】
そして、請求項4の発明は、請求項3の構成に加えて、正入力による前記滑りの終了を判定する終了判定手段と、その滑りの終了時の変速比の状況に基づいて前記滑りに起因する凝着を判定する劣化状態判定手段とを更に備えていることを特徴とするものである。
【0015】
したがって、請求項4の発明によれば、請求項3の発明と同様の作用が生じる他に、正入力による上記滑りの終了が判定され、その滑りの終了時の変速比の状況に基づいて滑りに起因する凝着が判定される。その結果、滑り期間が正確に検出される。
【0016】
【発明の実施の形態】
つぎにこの発明を具体例に基づいて説明する。先ず、この発明で対象とする無段変速機を含む駆動機構について説明すると、この発明は、車両に搭載される駆動機構を対象とすることができ、その駆動機構に含まれる無段変速機は、ベルトを伝動部材としたベルト式の無段変速機や、パワーローラを伝動部材とするとともにオイル(トラクション油)のせん断力を利用してトルクを伝達するトロイダル型(トラクション式)無段変速機である。図6には、ベルト式無段変速機を含む車両用駆動機構の一例を模式的に示しており、この無段変速機1は、前後進切換機構2およびトルクコンバータ3を介して動力源4に連結されている。
【0017】
その動力源4は、一般の車両に搭載されている動力源と同様のものであって、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンあるいは天然ガスエンジンなどの内燃機関や、電動機、あるいは内燃機関と電動機とを組み合わせた機構などを採用することができる。なお、以下の説明では、動力源4をエンジン4と記す。
【0018】
エンジン4の出力軸に連結されたトルクコンバータ3は、従来一般の車両で採用しているトルクコンバータと同様の構造であって、エンジン4の出力軸が連結されたフロントカバー5にポンプインペラー6が一体化されており、そのポンプインペラー6に対向するタービンランナー7が、フロントカバー5の内面に隣接して配置されている。これらのポンプインペラー6とタービンランナー7とには、多数のブレード(図示せず)が設けられており、ポンプインペラー6が回転することによりフルードの螺旋流を生じさせ、その螺旋流をタービンランナー7に送ることによりタービンランナー7にトルクを与えて回転させるようになっている。
【0019】
また、ポンプインペラー6とタービンランナー7との内周側の部分には、タービンランナー7から送り出されたフルードの流動方向を選択的に変化させてポンプインペラー6に流入させるステータ8が配置されている。このステータ8は、一方向クラッチ9を介して所定の固定部10に連結されている。
【0020】
このトルクコンバータ3は、ロックアップクラッチ11を備えている。ロックアップクラッチ11は、ポンプインペラー6とタービンランナー7とステータ8とからなる実質的なトルクコンバータに対して並列に配置されたものであって、フロントカバー5の内面に対向した状態で前記タービンランナー7に保持されており、油圧によってフロントカバー5の内面に押し付けられることにより、入力部材であるフロントカバー5から出力部材であるタービンランナー7に直接、トルクを伝達するようになっている。なお、その油圧を制御することによりロックアップクラッチ11のトルク容量を制御できる。
【0021】
前後進切換機構2は、エンジン4の回転方向が一方向に限られていることに伴って採用されている機構であって、入力されたトルクをそのまま出力し、また反転して出力するように構成されている。図6に示す例では、前後進切換機構2としてダブルピニオン型の遊星歯車機構が採用されている。
【0022】
すなわち、サンギヤ12と同心円上にリングギヤ13が配置され、これらのサンギヤ12とリングギヤ13との間に、サンギヤ12に噛合したピニオンギヤ14とそのピニオンギヤ14およびリングギヤ13に噛合した他のピニオンギヤ15とが配置され、これらのピニオンギヤ14,15がキャリヤ16によって自転かつ公転自在に保持されている。そして、二つの回転要素(具体的にはサンギヤ12とキャリヤ16と)を一体的に連結する前進用クラッチ17が設けられ、またリングギヤ13を選択的に固定することにより、出力されるトルクの方向を反転する後進用ブレーキ18が設けられている。
【0023】
無段変速機1は、従来知られているベルト式無段変速機と同じ構成であって、互いに平行に配置された駆動プーリ19と従動プーリ20とのそれぞれが、固定シーブと、油圧式のアクチュエータ21,22によって軸線方向に前後動させられる可動シーブとによって構成されている。したがって各プーリ19,20の溝幅が、可動シーブを軸線方向に移動させることにより変化し、それに伴って各プーリ19,20に巻掛けたベルト23の巻掛け半径(プーリ19,20の有効径)、言い換えればトルク伝達位置が連続的に変化し、変速比が無段階に変化するようになっている。そして、上記の駆動プーリ19が前後進切換機構2における出力要素であるキャリヤ16に連結されている。
【0024】
なお、従動プーリ20における油圧アクチュエータ22には、無段変速機1に入力されるトルクに応じた油圧(ライン圧もしくはその補正圧)が、図示しない油圧ポンプおよび油圧制御装置を介して供給されている。したがって、従動プーリ20における各シーブがベルト23を挟み付けることにより、ベルト23に張力が付与され、各プーリ19,20とベルト23との挟圧力(接触圧力)が確保されるようになっている。言い換えれば、挟圧力に応じたトルク容量が設定される。これに対して駆動プーリ19における油圧アクチュエータ21には、設定するべき変速比に応じた圧油が供給され、目標とする変速比に応じた溝幅(有効径)に設定するようになっている。
【0025】
無段変速機1の出力部材である従動プーリ20がギヤ対24およびディファレンシャル25に連結され、さらにそのディファレンシャル25が左右の駆動輪26に連結されている。
【0026】
上記の無段変速機1およびエンジン4を搭載した車両の動作状態(走行状態)を検出するために各種のセンサーが設けられている。すなわち、エンジン4の回転数(ロックアップクラッチ11の入力回転数)Ne を検出して信号を出力するエンジン回転数センサー27、タービンランナー7の回転数(ロックアップクラッチ11の出力回転数)を検出して信号を出力するタービン回転数センサー28、駆動プーリ19の入力回転速度Ninを検出して信号を出力する入力回転速度センサー29、従動プーリ20の出力回転速度Nout を検出して信号を出力する出力回転速度センサー30などが設けられている。
【0027】
上記の前進用クラッチ17および後進用ブレーキ18の係合・解放の制御、および前記ベルト23の挟圧力の制御、ならびにロックアップクラッチ11の係合・解放を含むトルク容量の制御、さらには変速比の制限をおこなうために、変速機用電子制御装置(CVT−ECU)31が設けられている。この電子制御装置31は、一例としてマイクロコンピュータを主体として構成され、入力されたデータおよび予め記憶しているデータに基づいて所定のプログラムに従って演算をおこない、前進や後進あるいはニュートラルなどの各種の状態、および要求される挟圧力の設定、ならびに変速比の設定などの制限を実行するように構成されている。また、エンジン4を制御するエンジン用電子制御装置(E−ECU)32が設けられ、これらの電子制御装置31,32の間で相互にデータを通信するようになっている。
【0028】
上記の無段変速機1を対象としたこの発明の装置は、無段変速機1での滑りを検出するとともに、その検出結果に応じた制御を実行するように構成されている。図1はその制御例を示しており、この図1にフローチャートで示すルーチンは、所定の短い時間毎に繰り返し実行される。
【0029】
図1において、先ず、所定制御を実行する(ステップS1)。この所定制御については後述する。このステップS1についで、ベルトダメージ(ベルト23およびプーリ19,20間の滑りに起因する凝着による劣化)があるか否かが判断される(ステップS2)。この判断は後述する所定制御の結果に基づいて行われる。このステップS2で否定的に判断された場合には、リターンする。これに対して、ステップS2で肯定的に判断された場合には、ベルトダメージが発生した時の変速比γdmg が算出される(ステップS3)。これはベルトダメージの判定の成立時点もしくはその直前の入出力回転速度Nin(i) ,Nout(i)に基づいて算出される。
【0030】
つぎに、変速比γdmg について判断される。すなわち、算出された変速比γdmg が所定のしきい値γmid より大きいか否か(γdmg >γmid )が判断される(ステップS4)。なお、変速比γは、その最小値が変速比γmin 、その最大値が変速比γmax である。また、しきい値γmid は、“1”または“1”に近い値、もしくは最小変速比γmin と最大変速比γmax との中間値((γmin +γmax )/2)である。
【0031】
このステップS4で否定的に判断された場合には、変速比γが所定の範囲内に制御される。すなわち、変速比γが上記変速比γdmg と変速比の変化量Δγdmg との和より大きく、かつ最大変速比γmax 以下の範囲(γmax ≧γ>γdmg +Δγdmg )で制御される(ステップS5)。そして、ベルトダメージが発生していることが運転者に対して伝えられ、かつ早期に交換するように促し(ステップS6)、リターンする。
【0032】
したがって、変速比γdmg が最小変速比γmin 以上で、かつしきい値(中間値)γmid 以下の範囲にある場合には、変速比γが上記範囲で制御されるので、変速比γdmg がしきい値γmid より大きく、かつ最大変速比γmax 以下の範囲にある場合に比べて、変速比γが制御される範囲(γmax ≧γ>γdmg +Δγdmg )をより広くとることができ、またベルトダメージ発生時の変速比(γdmg +Δγdmg )を使用しないので、ベルトダメージの進行を抑制することができ、結果的にベルトダメージによる悪影響を少なくすることができる。
【0033】
また反対に、このステップS4で肯定的に判断された場合には、変速比γについて所定の範囲内で制御される。すなわち、制御された変速比γが最小変速比γmin 以上で、かつ上記変速比γdmg と変速比γdmg の変化量Δγdmg との差より小さい範囲(γdmg ーΔγdmg >γ≧γmin)に制御され(ステップS7)、ステップS6を経由してリターンする。なお、変速比の変化量Δγdmg は、車速、変速比等の運転条件に応じて変更してもよい。
【0034】
したがって、変速比γdmg がしきい値γmid より大きく、かつ最大変速比γmax 以下の範囲にある場合には、変速比γが上記範囲に制御されるので、変速比γdmg がしきい値γmid 以下の範囲にある場合に比べて、変速比γが制御される範囲(γdmg ーΔγdmg >γ≧γmin )をより広くとることができ、またベルトダメージ発生時の変速比(γdmg ーΔγdmg )を使用しないので、そのベルトダメージの進行を抑制することができ、結果的にベルトダメージによる悪影響を少なくすることができる。
【0035】
つぎに、ステップS1の所定制御の例を、図2に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0036】
先ず、無段変速機1の入力回転速度Nin(i) と出力回転速度Nout(i)とが計測される(ステップS21)。また、その計測された入出力回転速度Nin(i) ,Nout(i)を使用してその変化率ΔNin(i) ,ΔNout(i)が算出される(ステップS22)。なお、これらの入出力回転速度Nin(i) ,Nout(i)は、前記入力回転速度センサー29および出力回転速度センサー30によって検出された回転速度である。
【0037】
このステップS22についで、正入力、すなわちエンジン4側からの入力によるベルト23の滑り中であるか否かが判断される(ステップS23)。このステップS23で否定的に判断された場合には、その後、図2に示すルーチンを終了する。この正入力によるベルト23の滑り中となるのは、例えば、アクセルペダルが踏まれてエンジンからのトルクが急激に増大した状態が想定される。
【0038】
このようにベルト23の滑りが生じているときの相関係数は、“1”よりも小さくなっており、その値に基づいて「正入力によるベルト23の滑り中」であると判定される。
【0039】
このステップS23で肯定的に判断された場合には、算出された入力回転速度Nin(i) の変化率ΔNin(i) がしきい値ΔNin_dmgより小さく、かつ算出された出力回転速度Nout(i)の変化率ΔNout(i)がしきい値ΔNout _dmgより大きいか否か(ΔNin(i) <ΔNin_dmg、かつΔNout(i)>ΔNout _dmg)が判断される(ステップS24)。すなわち、入力回転速度Ninが急激もしくは大きく低下し、かつ出力回転速度が急激もしくは大きく上昇したか否かが判断される。このステップS24で否定的に判断された場合には、その後、図2に示すルーチンを終了する。
【0040】
このステップS24で肯定的に判断された場合には、アクセル急OFFもしくは変速レンジがニュートラルであるか否かが判断される(ステップS25)。すなわち、アクセルペダルが急に戻されたか否か、あるいは無段変速機1がニュートラル状態に切換えられたか否かが判断される。このステップS25で否定的に判断された場合には、ベルトダメージがあると判定され(ステップS26)、その後、図2に示すルーチンを終了する。このステップS25で肯定的に判断された場合には、そのまま図2に示すルーチンを終了する。
【0041】
正入力によるベルト23の滑り中において、入出力回転速度Nin,Nout の変化率ΔNin,ΔNout は、正もしくは負の値をもち、ベルト23の滑りによって発生した凝着による劣化状態において、入力回転速度Ninが低下した場合には負の値として現れるとともに、出力回転速度Nout が増大した場合には正の値として現れる。また、入力回転速度Ninの変化率ΔNinが低下する、すなわち負の値として大きくなるとともに、出力回転速度Nout の変化率ΔNout が増大する、すなわち正の値として大きくなるのは、図3に示すように、入力回転速度Ninの低下と出力回転速度Nout の増大との変化により生じる場合であり、これがベルトダメージ発生時の挙動として現れる。
【0042】
したがって、ステップS23で肯定的に判断された場合には、何らかの要因で入出力回転速度Nin,Nout の挙動変化が生じていることになる。このような挙動変化の要因としては、アクセルペダルが急激に戻された場合(アクセル急OFF)や無段変速機1の走行レンジがニュートラルレンジに切換えられて無段変速機1に入力されるトルクが遮断された場合と、上述した凝着によるベルトダメージが生じた場合とのいずれかである。
【0043】
ステップS25で無段変速機1の制御状態の変更あるいは入力トルク状態の変化、人為的変化であるアクセル急OFFもしくはNレンジへの切換か否かの判断が行われ、このステップS25で否定的に判断された場合、すなわち人為的操作に基づく入力トルクの変化が生じていない場合には、ベルトダメージありと判定される(ステップS26)。したがって、ステップS25で肯定的に判断された場合には、ベルトダメージがないと判断されるので、特に制御が行われることなくルーチンを終了する。
【0044】
このように図2に示す制御例では、入力回転速度Nin(i) の変化率ΔNin(i) がしきい値ΔNin_dmgよりも小さくなるとともに、出力回転速度Nout(i)の変化率ΔNout(i)がしきい値ΔNout _dmgよりも大きくなると、ベルトダメージの判定が行われることになる。
【0045】
各回転速度や相関係数などの変化とベルトダメージの判定の時期の一例をタイムチャートで示せば、図3のとおりである。正入力によるベルト23の滑りが開始(t1 時点)して、入力回転速度Nin が上昇し、それに伴って変速比γが増大する。つぎに、凝着現象が発生すると、出力回転速度Nout が上昇し、入力回転速度Nin が下降し、それに伴って変速比γが下降するので、ベルトダメージの判定が行われる。このベルトダメージの判定において、入力回転速度の変化率ΔNin がしきい値ΔNin_dmgより小さく、かつ出力回転速度の変化率ΔNout が所定のしきい値ΔNout _dmgより大きい場合であり、アクセルON(またはLレンジもしくはHレンジ)の場合には、ベルトダメージありと判定され、上述したように変速比γが所定の範囲で制御されるので、ベルト23の滑りの開始前の状態に出力回転速度Nout が復帰するとともに正入力によるベルト23の滑りが終了する。なお、図3に示す相関係数の変化とそのしきい値k_dmgとの関係および変速速度Δγの変化とそのしきい値Δγslp_min との関係については、後述する。なお、上述した凝着現象は、例えば駆動プーリ19(または従動プーリ20)とベルト23との接触面がかじられて荒れることにより、双方の摩擦係数μが急激に大きくなることで発生する。
【0046】
図4に示すフローチャートは、前述したステップS1での制御内容の他の例を示すものである。すなわち図2に示す例では入出力回転速度の変化率を使用してベルトダメージを判定したのに対して、図4に示す例では相関係数を使用してベルトダメージを判定するように構成したものである。
【0047】
したがって、図4に示す例では、ステップS21についで相関係数が算出され、あるいはステップS21における入出力回転速度の計測結果に基づいてその相関係数が算出される。すなわち、ステップS21についで、変速比γ(i) と、駆動シャフト21における最新のN個の入力回転速度Nin(i) と、最新のN個の出力回転速度Nout(i)との相関係数k(i) が算出される(ステップS31)。
【0048】
つぎに、相関係数k(i) について判断される。すなわち、算出された相関係数k(i) が所定のしきい値k_dmgより小さいか否か(k(i) <k_dmg)が判断される(ステップS32)。
【0049】
この相関係数k(i) は、下記の式によって求められる係数であり、最新のN個の入出力回転速度Nin(i) ,Nout(i)との相互の関係を表す。
【式1】
【0050】
ステップS32では、相関係数k(i) がしきい値k_dmgより小さく、かつ正入力によるベルト23の滑り中であるか否かが判断される。このステップS32で否定的に判断された場合には、その後、図4に示すルーチンを終了する。このステップS23で肯定的に判断された場合には、ステップS23に進む。
【0051】
上述したように、最新のN個の入出力回転速度Nin(i) ,Nout(i)を用いた相関係数k(i) がしきい値kdmg より小さいことにより、ステップS32で否定的に判断されれば、その時点で正入力によるベルト23の滑り中か、もしくは正入力によるベルト23の滑りが終了したことになる。
【0052】
したがって、ステップS23で肯定的に判断された場合には、これらいずれかの正入力によるベルト23の滑り中か、もしくは正入力によるベルト23の滑りの終了が判定される。
【0053】
図3では、正入力によるベルト23の滑りが開始(t1 時点)して、相関係数が湾曲状の波形で示されている。この挙動は、入出力回転速度Nin,Nout の変化により発生している。相関係数は、負の値をもち、上述した凝着による劣化状態において、相関係数が低下した場合には負の値として現れる。また、相関係数が低下する、すなわち負の値として大きくなるのは、図3に示すように、相関係数の低下の変化により生じる場合であり、これがベルトダメージ発生時の挙動として現れる。
【0054】
したがって、ステップS23で肯定的に判断された場合には、何らかの要因で相関係数の挙動変化が生じていることになる。このような挙動変化の要因としては、上述したとおりであり、上述した凝着によるベルトダメージが生じた場合などがある。結果として、図2に示すように、ステップS25で肯定的に判断された場合には、ベルトダメージがないと判断されるので、特に制御が行われることなくルーチンを終了する。
【0055】
このように図4に示す制御例では、相関係数k(i) がしきい値kdmg よりも小さくなると、ベルトダメージの判定が行われることになる。なお、しきい値kdmg は、予めベルトダメージが発生していると判定されたときの値である。
【0056】
したがって、正入力によるベルト23の滑り中に発生したベルトダメージの有無を適切に判定することができる。
【0057】
図5に示すフローチャートは、前述したステップS1(所定制御の実行)での内容の他の例を示すものである。すなわち、図2に示す例では入出力回転速度の変化率を使用してベルトダメージを判定したのに対して、図5に示す例では変速比と相関係数とを使用してベルトダメージを判定するように構成したものである。
【0058】
したがって、図5に示す例では、ステップS21についで変速比と相関係数とが算出され、あるいはステップS21における入出力回転速度の計測結果に基づいてその変速比と相関係数とが算出される。
【0059】
すなわち、ステップS21についで、入出力回転速度Nin(i) ,Nout(i)が使用されて変速比γ(i) が算出される(ステップS41)。このステップS41についで、その最新のN個の変速比γ(i) が使用されて相関係数k(i) が算出される(ステップS42)。このステップS42についで、その相関係数k(i) がしきい値k_dmgより小さいか否かが判断される(ステップS43)。このステップS43で否定的に判断された場合には、その後、図5に示すルーチンを終了する。このステップS43で肯定的に判断された場合には、変速比γ(i) から変速比γ(i−M) までの平均変速速度Δγslp(i)が算出される(ステップS44)。すなわち、直前のM個の変速比γ(i) について、平均変速速度Δγslp(i)が求められる。
【0060】
つぎに、平均変速速度Δγslp(i)について判断される。すなわち、算出された平均変速速度Δγslp(i)が所定のしきい値Δγslp_min より小さいか否か(Δγslp(i)<Δγslp_min )が判断される(ステップS45)。
【0061】
なお、しきい値Δγslp_min は、車速、変速比等の運転条件に応じて変更してもよい。このステップS45で否定的に判断された場合には、その後、図5に示すルーチンを終了する。このステップS45で肯定的に判断された場合には、ステップS25に進む。
【0062】
上述したように、最新のN個の変速比γ(i) を用いた相関係数k(i) がしきい値k_dmgより小さいことにより、ステップS43で否定的に判断されれば、その時点で正入力によるベルト23の滑りが終了したか、もしくは無段変速機1の出力側から入力されるトルクによるベルト23の滑りが開始したことになる。
【0063】
したがって、ステップS43で肯定的に判断された場合には、これらいずれかの正入力によるベルト23の滑りの終了もしくは逆入力によるベルト23の滑りの開始が判断される。
【0064】
一方、上述した凝着などのベルトダメージは、ベルト23の滑りが或程度の時間、継続することによって生じる。すなわち、車輪26の空転およびその直後の再グリップのように極めて短時間に生じるトルクの変動がある場合にはたとえベルト23の滑りが生じたとしてもそのトルク変動の時間が短いことによりベルトダメージが生じることが極めて希である。
【0065】
つまり、相関係数k(i) がしきい値k_dmgより小さいことによりベルト23の滑りが判定された場合には、その判定が正入力によるベルト23の滑りの終了か、あるいは逆入力によるベルト23の滑りの開始を選別する必要があり、そのために、変速速度Δγが利用される。
【0066】
したがって、ステップS44で算出された平均変速速度Δγslp(i)が所定のしきい値Δγslp_min より小さいか否かが判断される。
【0067】
図3では、正入力によるベルト23の滑りが開始(t1 時点)して、変速速度Δγが正のパルス波形で示されており、変速速度Δγは、正もしくは負の値をもち、変速速度Δγが低下した場合には負の値として現れる。また、変速速度Δγが低下する、すなわち負の値として大きくなるのは、図3に示すように、入力回転速度Ninの低下と出力回転速度Nout の増大との変化により生じ、これがベルトダメージ発生時の挙動として現れる。
【0068】
したがって、ステップS45で肯定的に判断された場合には、何らかの要因で入出力回転速度Nin,Nout の挙動変化が生じていることになる。このような挙動変化の要因としては、アクセルペダルが急激に戻された場合(アクセル急OFF)や無段変速機1の走行レンジがニュートラルレンジに切換えられて無段変速機1に入力されるトルクが遮断された場合と、上述した凝着によるベルトダメージが生じた場合とのいずれかである。
【0069】
ステップS25およびステップS26は、前述した図2もしくは図4に示す所定制御の場合と同様である。結局、正入力によるベルト23の滑りの終了が相関係数により判断され、その場合の平均変速速度Δγが大きく低下した場合には、これをベルトダメージの判定が行われることになる。
【0070】
ここで、上記の具体例とこの発明との関係を簡単に説明すると、上述したステップS4,S5,S7の各機能的手段が、この発明の変速比制限手段に相当する。また、ステップS24の各機能的手段が、この発明の劣化状態検出手段に相当する。さらに、ステップS22,S31,S42の各機能的手段が、この発明の滑り検出手段に相当する。そして、ステップS45の機能的手段が、この発明の滑り劣化状態検出手段に相当する。また、ステップS32,S43の各機能的手段が、この発明の終了判定手段に相当する。さらに、ステップS25,S26の各機能的手段が、この発明の劣化状態判定手段に相当する。
【0071】
上記ステップS4において、しきい値γmid は、ベルトダメージの回数(整数値)が1回以上の場合には、その時の変速比の値とし、またベルトダメージの回数がゼロの場合には1とする。また、上記ステップS7において、技術的な意味で使用可能な変速比は、加速度がさほど良くないが発進は確実に行うことができるような車両にするために、領域の大きい方がとられている。上記ステップS22において、逆入力(駆動輪26の運動エネルギーに対応するトルクが、無段変速機1の出力側の負のトルクの増大)によるベルト23の滑り中の場合、極端なベルトダメージが発生しないことは、明らかとなっている。
【0072】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、トルクを伝達する部材同士の間の滑りに基づいて無段変速機を制御する無段変速機の制御装置において、滑りが発生したときの変速比を滑りが発生した後に制限することにより、滑りの発生した箇所に、更に荷重がかかったり、滑りが生じたりすることを抑制することができる。そのため、無段変速機の劣化を防止もしくは軽減することができる。
【0073】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果を得られる他に、上記滑りに起因する凝着による劣化状態を検出することにより、凝着による劣化を抑制することができる。
【0074】
請求項3の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果を得ることができるほかに、無段変速機の入出力回転速度の相関係数、変速比の変化率のうち少なくとも一つに基づいて滑りを検出するとともに、その滑りの検出された状態で劣化状態を検出することにより、劣化状態を正確に検出することができる。
【0075】
請求項4の発明によれば、請求項3の発明と同様の効果を得ることができるほかに、正入力による滑りの終了を判定するとともに、その滑りの終了時の変速比の状況に基づいて滑りに起因する凝着を判定することにより、滑り期間を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の制御装置による制御の一例を説明するためのフローチャートである。
【図2】図1に示すフローチャートの処理の一部の具体例を示すフローチャートである。
【図3】図1および図2に示すフローチャートに対応するタイムチャートの一例である。
【図4】図2に替わる他のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図5】図2に替わる他のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図6】この発明で対象とする駆動系統の一例を模式的に示す図である。
【符号の説明】
1…無段変速機、 19…駆動プーリ、 20…従動プーリ、 23…ベルト、 26…駆動輪、 36…変速機用電子制御装置(CVT−ECU)。
【発明の属する技術分野】
この発明は、ベルト式無段変速機やトラクション式無段変速機などの無段変速機を制御する無段変速機の制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、無段変速機の滑り(スリップ)の発生を検出し、その滑りの発生を判断した回数に応じて警報を発する装置が知られている。このような装置の一例が、下記の特許文献1に記載されている。
【0003】
この特許文献1に記載されているベルト式無段変速機の故障診断装置は、低速からの急加速時や高速段での空走時など駆動ベルトに滑りが発生し易い状況下で変速比を算出し、その変速比を設計上の最大変速比以上または最小変速比以下の値とし、あるいは過度的な加減速域で変速比変化速度を算出し、その変速比変化速度の絶対値が所定の基準値になると、駆動ベルトのスリップ発生を判断し、そのスリップ発生の判断回数に応じて、警報を発する構成となっている。このベルト式無段変速機は、前後進の切換部と、プーリ比変換部と、終減速部と、油圧制御部とを備えている。そして、この故障診断装置は、カウンタ、コンパレータを有する制御ユニットと、警報ランプとを備えている。このカウンタの計測回数が基準値以上となると、コンパレータがHレベルの信号を出力することにより、警報ランプが点灯して、駆動ベルトのスリップ発生を早期に警報する。
【0004】
【特許文献1】
特公平7−58110号公報(特許請求の範囲、第2頁右欄の上から第12行目〜第4頁右欄の下から第6行目まで、第1図、第2図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の特許文献1に記載された発明では、スリップの発生回数に基づいて警報を発するように構成されているから、警報を発するためには、複数回のスリップが不可避である。
【0006】
したがって、複数回のスリップによってベルトもしくはプーリの劣化が進行する可能性があるが、上記特許文献1の発明ではその種の劣化に対処する手段がなく、無段変速機の保護や耐久性の向上などの点で改善すべき余地があった。
【0007】
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、無段変速機の劣化を防止もしくは軽減できる制御装置を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段およびその作用】
上記目的を達成するため請求項1の発明は、トルクを伝達する部材同士の間の滑りに基づいて無段変速機を制御する無段変速機の制御装置において、前記滑りが発生したときの変速比を前記滑りの発生後に制限する変速比制限手段を備えていることを特徴とするものである。
【0009】
したがって、請求項1の発明によれば、無段変速機がトルクを伝達する部材同士の間の滑りに基づいて制御される。その滑りの発生時の変速比が前記滑りの発生後に制限される。その結果、滑りの発生した箇所に、更に荷重がかかったり、滑りが生じたりすることが抑制される。
【0010】
また、請求項2の発明は、請求項1の構成に加えて、前記滑りに起因する凝着による劣化状態を検出する劣化状態検出手段を更に備えていることを特徴とするものである。
【0011】
したがって、請求項2の発明によれば、請求項1の発明と同様の作用が生じる他に、上記滑りに起因する凝着による劣化状態が検出される。その結果、凝着による劣化が抑制される。
【0012】
さらに、請求項3の発明は、請求項1の構成に加えて、前記無段変速機の入出力回転速度の相関係数、変速比の変化率のうち少なくとも一つに基づいて前記滑りを検出する滑り検出手段と、その滑りの検出された状態で劣化状態を検出する滑り劣化状態検出手段を更に備えていることを特徴とするものである。
【0013】
したがって、請求項3の発明によれば、請求項1の発明と同様の作用が生じる他に、無段変速機の入出力回転速度の相関係数、変速比の変化率のうち少なくとも一つに基づいて滑りが検出され、その滑りの検出された状態で劣化状態が検出される。その結果、劣化状態が正確に検出される。
【0014】
そして、請求項4の発明は、請求項3の構成に加えて、正入力による前記滑りの終了を判定する終了判定手段と、その滑りの終了時の変速比の状況に基づいて前記滑りに起因する凝着を判定する劣化状態判定手段とを更に備えていることを特徴とするものである。
【0015】
したがって、請求項4の発明によれば、請求項3の発明と同様の作用が生じる他に、正入力による上記滑りの終了が判定され、その滑りの終了時の変速比の状況に基づいて滑りに起因する凝着が判定される。その結果、滑り期間が正確に検出される。
【0016】
【発明の実施の形態】
つぎにこの発明を具体例に基づいて説明する。先ず、この発明で対象とする無段変速機を含む駆動機構について説明すると、この発明は、車両に搭載される駆動機構を対象とすることができ、その駆動機構に含まれる無段変速機は、ベルトを伝動部材としたベルト式の無段変速機や、パワーローラを伝動部材とするとともにオイル(トラクション油)のせん断力を利用してトルクを伝達するトロイダル型(トラクション式)無段変速機である。図6には、ベルト式無段変速機を含む車両用駆動機構の一例を模式的に示しており、この無段変速機1は、前後進切換機構2およびトルクコンバータ3を介して動力源4に連結されている。
【0017】
その動力源4は、一般の車両に搭載されている動力源と同様のものであって、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンあるいは天然ガスエンジンなどの内燃機関や、電動機、あるいは内燃機関と電動機とを組み合わせた機構などを採用することができる。なお、以下の説明では、動力源4をエンジン4と記す。
【0018】
エンジン4の出力軸に連結されたトルクコンバータ3は、従来一般の車両で採用しているトルクコンバータと同様の構造であって、エンジン4の出力軸が連結されたフロントカバー5にポンプインペラー6が一体化されており、そのポンプインペラー6に対向するタービンランナー7が、フロントカバー5の内面に隣接して配置されている。これらのポンプインペラー6とタービンランナー7とには、多数のブレード(図示せず)が設けられており、ポンプインペラー6が回転することによりフルードの螺旋流を生じさせ、その螺旋流をタービンランナー7に送ることによりタービンランナー7にトルクを与えて回転させるようになっている。
【0019】
また、ポンプインペラー6とタービンランナー7との内周側の部分には、タービンランナー7から送り出されたフルードの流動方向を選択的に変化させてポンプインペラー6に流入させるステータ8が配置されている。このステータ8は、一方向クラッチ9を介して所定の固定部10に連結されている。
【0020】
このトルクコンバータ3は、ロックアップクラッチ11を備えている。ロックアップクラッチ11は、ポンプインペラー6とタービンランナー7とステータ8とからなる実質的なトルクコンバータに対して並列に配置されたものであって、フロントカバー5の内面に対向した状態で前記タービンランナー7に保持されており、油圧によってフロントカバー5の内面に押し付けられることにより、入力部材であるフロントカバー5から出力部材であるタービンランナー7に直接、トルクを伝達するようになっている。なお、その油圧を制御することによりロックアップクラッチ11のトルク容量を制御できる。
【0021】
前後進切換機構2は、エンジン4の回転方向が一方向に限られていることに伴って採用されている機構であって、入力されたトルクをそのまま出力し、また反転して出力するように構成されている。図6に示す例では、前後進切換機構2としてダブルピニオン型の遊星歯車機構が採用されている。
【0022】
すなわち、サンギヤ12と同心円上にリングギヤ13が配置され、これらのサンギヤ12とリングギヤ13との間に、サンギヤ12に噛合したピニオンギヤ14とそのピニオンギヤ14およびリングギヤ13に噛合した他のピニオンギヤ15とが配置され、これらのピニオンギヤ14,15がキャリヤ16によって自転かつ公転自在に保持されている。そして、二つの回転要素(具体的にはサンギヤ12とキャリヤ16と)を一体的に連結する前進用クラッチ17が設けられ、またリングギヤ13を選択的に固定することにより、出力されるトルクの方向を反転する後進用ブレーキ18が設けられている。
【0023】
無段変速機1は、従来知られているベルト式無段変速機と同じ構成であって、互いに平行に配置された駆動プーリ19と従動プーリ20とのそれぞれが、固定シーブと、油圧式のアクチュエータ21,22によって軸線方向に前後動させられる可動シーブとによって構成されている。したがって各プーリ19,20の溝幅が、可動シーブを軸線方向に移動させることにより変化し、それに伴って各プーリ19,20に巻掛けたベルト23の巻掛け半径(プーリ19,20の有効径)、言い換えればトルク伝達位置が連続的に変化し、変速比が無段階に変化するようになっている。そして、上記の駆動プーリ19が前後進切換機構2における出力要素であるキャリヤ16に連結されている。
【0024】
なお、従動プーリ20における油圧アクチュエータ22には、無段変速機1に入力されるトルクに応じた油圧(ライン圧もしくはその補正圧)が、図示しない油圧ポンプおよび油圧制御装置を介して供給されている。したがって、従動プーリ20における各シーブがベルト23を挟み付けることにより、ベルト23に張力が付与され、各プーリ19,20とベルト23との挟圧力(接触圧力)が確保されるようになっている。言い換えれば、挟圧力に応じたトルク容量が設定される。これに対して駆動プーリ19における油圧アクチュエータ21には、設定するべき変速比に応じた圧油が供給され、目標とする変速比に応じた溝幅(有効径)に設定するようになっている。
【0025】
無段変速機1の出力部材である従動プーリ20がギヤ対24およびディファレンシャル25に連結され、さらにそのディファレンシャル25が左右の駆動輪26に連結されている。
【0026】
上記の無段変速機1およびエンジン4を搭載した車両の動作状態(走行状態)を検出するために各種のセンサーが設けられている。すなわち、エンジン4の回転数(ロックアップクラッチ11の入力回転数)Ne を検出して信号を出力するエンジン回転数センサー27、タービンランナー7の回転数(ロックアップクラッチ11の出力回転数)を検出して信号を出力するタービン回転数センサー28、駆動プーリ19の入力回転速度Ninを検出して信号を出力する入力回転速度センサー29、従動プーリ20の出力回転速度Nout を検出して信号を出力する出力回転速度センサー30などが設けられている。
【0027】
上記の前進用クラッチ17および後進用ブレーキ18の係合・解放の制御、および前記ベルト23の挟圧力の制御、ならびにロックアップクラッチ11の係合・解放を含むトルク容量の制御、さらには変速比の制限をおこなうために、変速機用電子制御装置(CVT−ECU)31が設けられている。この電子制御装置31は、一例としてマイクロコンピュータを主体として構成され、入力されたデータおよび予め記憶しているデータに基づいて所定のプログラムに従って演算をおこない、前進や後進あるいはニュートラルなどの各種の状態、および要求される挟圧力の設定、ならびに変速比の設定などの制限を実行するように構成されている。また、エンジン4を制御するエンジン用電子制御装置(E−ECU)32が設けられ、これらの電子制御装置31,32の間で相互にデータを通信するようになっている。
【0028】
上記の無段変速機1を対象としたこの発明の装置は、無段変速機1での滑りを検出するとともに、その検出結果に応じた制御を実行するように構成されている。図1はその制御例を示しており、この図1にフローチャートで示すルーチンは、所定の短い時間毎に繰り返し実行される。
【0029】
図1において、先ず、所定制御を実行する(ステップS1)。この所定制御については後述する。このステップS1についで、ベルトダメージ(ベルト23およびプーリ19,20間の滑りに起因する凝着による劣化)があるか否かが判断される(ステップS2)。この判断は後述する所定制御の結果に基づいて行われる。このステップS2で否定的に判断された場合には、リターンする。これに対して、ステップS2で肯定的に判断された場合には、ベルトダメージが発生した時の変速比γdmg が算出される(ステップS3)。これはベルトダメージの判定の成立時点もしくはその直前の入出力回転速度Nin(i) ,Nout(i)に基づいて算出される。
【0030】
つぎに、変速比γdmg について判断される。すなわち、算出された変速比γdmg が所定のしきい値γmid より大きいか否か(γdmg >γmid )が判断される(ステップS4)。なお、変速比γは、その最小値が変速比γmin 、その最大値が変速比γmax である。また、しきい値γmid は、“1”または“1”に近い値、もしくは最小変速比γmin と最大変速比γmax との中間値((γmin +γmax )/2)である。
【0031】
このステップS4で否定的に判断された場合には、変速比γが所定の範囲内に制御される。すなわち、変速比γが上記変速比γdmg と変速比の変化量Δγdmg との和より大きく、かつ最大変速比γmax 以下の範囲(γmax ≧γ>γdmg +Δγdmg )で制御される(ステップS5)。そして、ベルトダメージが発生していることが運転者に対して伝えられ、かつ早期に交換するように促し(ステップS6)、リターンする。
【0032】
したがって、変速比γdmg が最小変速比γmin 以上で、かつしきい値(中間値)γmid 以下の範囲にある場合には、変速比γが上記範囲で制御されるので、変速比γdmg がしきい値γmid より大きく、かつ最大変速比γmax 以下の範囲にある場合に比べて、変速比γが制御される範囲(γmax ≧γ>γdmg +Δγdmg )をより広くとることができ、またベルトダメージ発生時の変速比(γdmg +Δγdmg )を使用しないので、ベルトダメージの進行を抑制することができ、結果的にベルトダメージによる悪影響を少なくすることができる。
【0033】
また反対に、このステップS4で肯定的に判断された場合には、変速比γについて所定の範囲内で制御される。すなわち、制御された変速比γが最小変速比γmin 以上で、かつ上記変速比γdmg と変速比γdmg の変化量Δγdmg との差より小さい範囲(γdmg ーΔγdmg >γ≧γmin)に制御され(ステップS7)、ステップS6を経由してリターンする。なお、変速比の変化量Δγdmg は、車速、変速比等の運転条件に応じて変更してもよい。
【0034】
したがって、変速比γdmg がしきい値γmid より大きく、かつ最大変速比γmax 以下の範囲にある場合には、変速比γが上記範囲に制御されるので、変速比γdmg がしきい値γmid 以下の範囲にある場合に比べて、変速比γが制御される範囲(γdmg ーΔγdmg >γ≧γmin )をより広くとることができ、またベルトダメージ発生時の変速比(γdmg ーΔγdmg )を使用しないので、そのベルトダメージの進行を抑制することができ、結果的にベルトダメージによる悪影響を少なくすることができる。
【0035】
つぎに、ステップS1の所定制御の例を、図2に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0036】
先ず、無段変速機1の入力回転速度Nin(i) と出力回転速度Nout(i)とが計測される(ステップS21)。また、その計測された入出力回転速度Nin(i) ,Nout(i)を使用してその変化率ΔNin(i) ,ΔNout(i)が算出される(ステップS22)。なお、これらの入出力回転速度Nin(i) ,Nout(i)は、前記入力回転速度センサー29および出力回転速度センサー30によって検出された回転速度である。
【0037】
このステップS22についで、正入力、すなわちエンジン4側からの入力によるベルト23の滑り中であるか否かが判断される(ステップS23)。このステップS23で否定的に判断された場合には、その後、図2に示すルーチンを終了する。この正入力によるベルト23の滑り中となるのは、例えば、アクセルペダルが踏まれてエンジンからのトルクが急激に増大した状態が想定される。
【0038】
このようにベルト23の滑りが生じているときの相関係数は、“1”よりも小さくなっており、その値に基づいて「正入力によるベルト23の滑り中」であると判定される。
【0039】
このステップS23で肯定的に判断された場合には、算出された入力回転速度Nin(i) の変化率ΔNin(i) がしきい値ΔNin_dmgより小さく、かつ算出された出力回転速度Nout(i)の変化率ΔNout(i)がしきい値ΔNout _dmgより大きいか否か(ΔNin(i) <ΔNin_dmg、かつΔNout(i)>ΔNout _dmg)が判断される(ステップS24)。すなわち、入力回転速度Ninが急激もしくは大きく低下し、かつ出力回転速度が急激もしくは大きく上昇したか否かが判断される。このステップS24で否定的に判断された場合には、その後、図2に示すルーチンを終了する。
【0040】
このステップS24で肯定的に判断された場合には、アクセル急OFFもしくは変速レンジがニュートラルであるか否かが判断される(ステップS25)。すなわち、アクセルペダルが急に戻されたか否か、あるいは無段変速機1がニュートラル状態に切換えられたか否かが判断される。このステップS25で否定的に判断された場合には、ベルトダメージがあると判定され(ステップS26)、その後、図2に示すルーチンを終了する。このステップS25で肯定的に判断された場合には、そのまま図2に示すルーチンを終了する。
【0041】
正入力によるベルト23の滑り中において、入出力回転速度Nin,Nout の変化率ΔNin,ΔNout は、正もしくは負の値をもち、ベルト23の滑りによって発生した凝着による劣化状態において、入力回転速度Ninが低下した場合には負の値として現れるとともに、出力回転速度Nout が増大した場合には正の値として現れる。また、入力回転速度Ninの変化率ΔNinが低下する、すなわち負の値として大きくなるとともに、出力回転速度Nout の変化率ΔNout が増大する、すなわち正の値として大きくなるのは、図3に示すように、入力回転速度Ninの低下と出力回転速度Nout の増大との変化により生じる場合であり、これがベルトダメージ発生時の挙動として現れる。
【0042】
したがって、ステップS23で肯定的に判断された場合には、何らかの要因で入出力回転速度Nin,Nout の挙動変化が生じていることになる。このような挙動変化の要因としては、アクセルペダルが急激に戻された場合(アクセル急OFF)や無段変速機1の走行レンジがニュートラルレンジに切換えられて無段変速機1に入力されるトルクが遮断された場合と、上述した凝着によるベルトダメージが生じた場合とのいずれかである。
【0043】
ステップS25で無段変速機1の制御状態の変更あるいは入力トルク状態の変化、人為的変化であるアクセル急OFFもしくはNレンジへの切換か否かの判断が行われ、このステップS25で否定的に判断された場合、すなわち人為的操作に基づく入力トルクの変化が生じていない場合には、ベルトダメージありと判定される(ステップS26)。したがって、ステップS25で肯定的に判断された場合には、ベルトダメージがないと判断されるので、特に制御が行われることなくルーチンを終了する。
【0044】
このように図2に示す制御例では、入力回転速度Nin(i) の変化率ΔNin(i) がしきい値ΔNin_dmgよりも小さくなるとともに、出力回転速度Nout(i)の変化率ΔNout(i)がしきい値ΔNout _dmgよりも大きくなると、ベルトダメージの判定が行われることになる。
【0045】
各回転速度や相関係数などの変化とベルトダメージの判定の時期の一例をタイムチャートで示せば、図3のとおりである。正入力によるベルト23の滑りが開始(t1 時点)して、入力回転速度Nin が上昇し、それに伴って変速比γが増大する。つぎに、凝着現象が発生すると、出力回転速度Nout が上昇し、入力回転速度Nin が下降し、それに伴って変速比γが下降するので、ベルトダメージの判定が行われる。このベルトダメージの判定において、入力回転速度の変化率ΔNin がしきい値ΔNin_dmgより小さく、かつ出力回転速度の変化率ΔNout が所定のしきい値ΔNout _dmgより大きい場合であり、アクセルON(またはLレンジもしくはHレンジ)の場合には、ベルトダメージありと判定され、上述したように変速比γが所定の範囲で制御されるので、ベルト23の滑りの開始前の状態に出力回転速度Nout が復帰するとともに正入力によるベルト23の滑りが終了する。なお、図3に示す相関係数の変化とそのしきい値k_dmgとの関係および変速速度Δγの変化とそのしきい値Δγslp_min との関係については、後述する。なお、上述した凝着現象は、例えば駆動プーリ19(または従動プーリ20)とベルト23との接触面がかじられて荒れることにより、双方の摩擦係数μが急激に大きくなることで発生する。
【0046】
図4に示すフローチャートは、前述したステップS1での制御内容の他の例を示すものである。すなわち図2に示す例では入出力回転速度の変化率を使用してベルトダメージを判定したのに対して、図4に示す例では相関係数を使用してベルトダメージを判定するように構成したものである。
【0047】
したがって、図4に示す例では、ステップS21についで相関係数が算出され、あるいはステップS21における入出力回転速度の計測結果に基づいてその相関係数が算出される。すなわち、ステップS21についで、変速比γ(i) と、駆動シャフト21における最新のN個の入力回転速度Nin(i) と、最新のN個の出力回転速度Nout(i)との相関係数k(i) が算出される(ステップS31)。
【0048】
つぎに、相関係数k(i) について判断される。すなわち、算出された相関係数k(i) が所定のしきい値k_dmgより小さいか否か(k(i) <k_dmg)が判断される(ステップS32)。
【0049】
この相関係数k(i) は、下記の式によって求められる係数であり、最新のN個の入出力回転速度Nin(i) ,Nout(i)との相互の関係を表す。
【式1】
【0050】
ステップS32では、相関係数k(i) がしきい値k_dmgより小さく、かつ正入力によるベルト23の滑り中であるか否かが判断される。このステップS32で否定的に判断された場合には、その後、図4に示すルーチンを終了する。このステップS23で肯定的に判断された場合には、ステップS23に進む。
【0051】
上述したように、最新のN個の入出力回転速度Nin(i) ,Nout(i)を用いた相関係数k(i) がしきい値kdmg より小さいことにより、ステップS32で否定的に判断されれば、その時点で正入力によるベルト23の滑り中か、もしくは正入力によるベルト23の滑りが終了したことになる。
【0052】
したがって、ステップS23で肯定的に判断された場合には、これらいずれかの正入力によるベルト23の滑り中か、もしくは正入力によるベルト23の滑りの終了が判定される。
【0053】
図3では、正入力によるベルト23の滑りが開始(t1 時点)して、相関係数が湾曲状の波形で示されている。この挙動は、入出力回転速度Nin,Nout の変化により発生している。相関係数は、負の値をもち、上述した凝着による劣化状態において、相関係数が低下した場合には負の値として現れる。また、相関係数が低下する、すなわち負の値として大きくなるのは、図3に示すように、相関係数の低下の変化により生じる場合であり、これがベルトダメージ発生時の挙動として現れる。
【0054】
したがって、ステップS23で肯定的に判断された場合には、何らかの要因で相関係数の挙動変化が生じていることになる。このような挙動変化の要因としては、上述したとおりであり、上述した凝着によるベルトダメージが生じた場合などがある。結果として、図2に示すように、ステップS25で肯定的に判断された場合には、ベルトダメージがないと判断されるので、特に制御が行われることなくルーチンを終了する。
【0055】
このように図4に示す制御例では、相関係数k(i) がしきい値kdmg よりも小さくなると、ベルトダメージの判定が行われることになる。なお、しきい値kdmg は、予めベルトダメージが発生していると判定されたときの値である。
【0056】
したがって、正入力によるベルト23の滑り中に発生したベルトダメージの有無を適切に判定することができる。
【0057】
図5に示すフローチャートは、前述したステップS1(所定制御の実行)での内容の他の例を示すものである。すなわち、図2に示す例では入出力回転速度の変化率を使用してベルトダメージを判定したのに対して、図5に示す例では変速比と相関係数とを使用してベルトダメージを判定するように構成したものである。
【0058】
したがって、図5に示す例では、ステップS21についで変速比と相関係数とが算出され、あるいはステップS21における入出力回転速度の計測結果に基づいてその変速比と相関係数とが算出される。
【0059】
すなわち、ステップS21についで、入出力回転速度Nin(i) ,Nout(i)が使用されて変速比γ(i) が算出される(ステップS41)。このステップS41についで、その最新のN個の変速比γ(i) が使用されて相関係数k(i) が算出される(ステップS42)。このステップS42についで、その相関係数k(i) がしきい値k_dmgより小さいか否かが判断される(ステップS43)。このステップS43で否定的に判断された場合には、その後、図5に示すルーチンを終了する。このステップS43で肯定的に判断された場合には、変速比γ(i) から変速比γ(i−M) までの平均変速速度Δγslp(i)が算出される(ステップS44)。すなわち、直前のM個の変速比γ(i) について、平均変速速度Δγslp(i)が求められる。
【0060】
つぎに、平均変速速度Δγslp(i)について判断される。すなわち、算出された平均変速速度Δγslp(i)が所定のしきい値Δγslp_min より小さいか否か(Δγslp(i)<Δγslp_min )が判断される(ステップS45)。
【0061】
なお、しきい値Δγslp_min は、車速、変速比等の運転条件に応じて変更してもよい。このステップS45で否定的に判断された場合には、その後、図5に示すルーチンを終了する。このステップS45で肯定的に判断された場合には、ステップS25に進む。
【0062】
上述したように、最新のN個の変速比γ(i) を用いた相関係数k(i) がしきい値k_dmgより小さいことにより、ステップS43で否定的に判断されれば、その時点で正入力によるベルト23の滑りが終了したか、もしくは無段変速機1の出力側から入力されるトルクによるベルト23の滑りが開始したことになる。
【0063】
したがって、ステップS43で肯定的に判断された場合には、これらいずれかの正入力によるベルト23の滑りの終了もしくは逆入力によるベルト23の滑りの開始が判断される。
【0064】
一方、上述した凝着などのベルトダメージは、ベルト23の滑りが或程度の時間、継続することによって生じる。すなわち、車輪26の空転およびその直後の再グリップのように極めて短時間に生じるトルクの変動がある場合にはたとえベルト23の滑りが生じたとしてもそのトルク変動の時間が短いことによりベルトダメージが生じることが極めて希である。
【0065】
つまり、相関係数k(i) がしきい値k_dmgより小さいことによりベルト23の滑りが判定された場合には、その判定が正入力によるベルト23の滑りの終了か、あるいは逆入力によるベルト23の滑りの開始を選別する必要があり、そのために、変速速度Δγが利用される。
【0066】
したがって、ステップS44で算出された平均変速速度Δγslp(i)が所定のしきい値Δγslp_min より小さいか否かが判断される。
【0067】
図3では、正入力によるベルト23の滑りが開始(t1 時点)して、変速速度Δγが正のパルス波形で示されており、変速速度Δγは、正もしくは負の値をもち、変速速度Δγが低下した場合には負の値として現れる。また、変速速度Δγが低下する、すなわち負の値として大きくなるのは、図3に示すように、入力回転速度Ninの低下と出力回転速度Nout の増大との変化により生じ、これがベルトダメージ発生時の挙動として現れる。
【0068】
したがって、ステップS45で肯定的に判断された場合には、何らかの要因で入出力回転速度Nin,Nout の挙動変化が生じていることになる。このような挙動変化の要因としては、アクセルペダルが急激に戻された場合(アクセル急OFF)や無段変速機1の走行レンジがニュートラルレンジに切換えられて無段変速機1に入力されるトルクが遮断された場合と、上述した凝着によるベルトダメージが生じた場合とのいずれかである。
【0069】
ステップS25およびステップS26は、前述した図2もしくは図4に示す所定制御の場合と同様である。結局、正入力によるベルト23の滑りの終了が相関係数により判断され、その場合の平均変速速度Δγが大きく低下した場合には、これをベルトダメージの判定が行われることになる。
【0070】
ここで、上記の具体例とこの発明との関係を簡単に説明すると、上述したステップS4,S5,S7の各機能的手段が、この発明の変速比制限手段に相当する。また、ステップS24の各機能的手段が、この発明の劣化状態検出手段に相当する。さらに、ステップS22,S31,S42の各機能的手段が、この発明の滑り検出手段に相当する。そして、ステップS45の機能的手段が、この発明の滑り劣化状態検出手段に相当する。また、ステップS32,S43の各機能的手段が、この発明の終了判定手段に相当する。さらに、ステップS25,S26の各機能的手段が、この発明の劣化状態判定手段に相当する。
【0071】
上記ステップS4において、しきい値γmid は、ベルトダメージの回数(整数値)が1回以上の場合には、その時の変速比の値とし、またベルトダメージの回数がゼロの場合には1とする。また、上記ステップS7において、技術的な意味で使用可能な変速比は、加速度がさほど良くないが発進は確実に行うことができるような車両にするために、領域の大きい方がとられている。上記ステップS22において、逆入力(駆動輪26の運動エネルギーに対応するトルクが、無段変速機1の出力側の負のトルクの増大)によるベルト23の滑り中の場合、極端なベルトダメージが発生しないことは、明らかとなっている。
【0072】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、トルクを伝達する部材同士の間の滑りに基づいて無段変速機を制御する無段変速機の制御装置において、滑りが発生したときの変速比を滑りが発生した後に制限することにより、滑りの発生した箇所に、更に荷重がかかったり、滑りが生じたりすることを抑制することができる。そのため、無段変速機の劣化を防止もしくは軽減することができる。
【0073】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果を得られる他に、上記滑りに起因する凝着による劣化状態を検出することにより、凝着による劣化を抑制することができる。
【0074】
請求項3の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果を得ることができるほかに、無段変速機の入出力回転速度の相関係数、変速比の変化率のうち少なくとも一つに基づいて滑りを検出するとともに、その滑りの検出された状態で劣化状態を検出することにより、劣化状態を正確に検出することができる。
【0075】
請求項4の発明によれば、請求項3の発明と同様の効果を得ることができるほかに、正入力による滑りの終了を判定するとともに、その滑りの終了時の変速比の状況に基づいて滑りに起因する凝着を判定することにより、滑り期間を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の制御装置による制御の一例を説明するためのフローチャートである。
【図2】図1に示すフローチャートの処理の一部の具体例を示すフローチャートである。
【図3】図1および図2に示すフローチャートに対応するタイムチャートの一例である。
【図4】図2に替わる他のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図5】図2に替わる他のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図6】この発明で対象とする駆動系統の一例を模式的に示す図である。
【符号の説明】
1…無段変速機、 19…駆動プーリ、 20…従動プーリ、 23…ベルト、 26…駆動輪、 36…変速機用電子制御装置(CVT−ECU)。
Claims (4)
- トルクを伝達する部材同士の間の滑りに基づいて無段変速機を制御する無段変速機の制御装置において、
前記滑りが発生したときの変速比を前記滑りが発生した後に制限する変速比制限手段を備えていることを特徴とする無段変速機の制御装置。 - 前記滑りに起因する凝着による劣化状態を検出する劣化状態検出手段を更に備えていることを特徴とする請求項1に記載の無段変速機の制御装置。
- 前記無段変速機の入出力回転速度の相関係数、変速比の変化率のうち少なくとも一つに基づいて前記滑りを検出する滑り検出手段と、その滑りの検出された状態で劣化状態を検出する滑り劣化状態検出手段を更に備えていることを特徴とする請求項1に記載の無段変速機の制御装置。
- 正入力による前記滑りの終了を判定する終了判定手段と、その滑りの終了時の変速比の状況に基づいて前記滑りに起因する凝着を判定する劣化状態判定手段とを更に備えていることを特徴とする請求項3に記載の無段変速機の制御装置。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP2003070883A JP2004278663A (ja) | 2003-03-14 | 2003-03-14 | 無段変速機の制御装置 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP2003070883A JP2004278663A (ja) | 2003-03-14 | 2003-03-14 | 無段変速機の制御装置 |
Publications (1)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JP2004278663A true JP2004278663A (ja) | 2004-10-07 |
Family
ID=33287515
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP2003070883A Pending JP2004278663A (ja) | 2003-03-14 | 2003-03-14 | 無段変速機の制御装置 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JP2004278663A (ja) |
Cited By (2)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP2013148110A (ja) * | 2012-01-17 | 2013-08-01 | Toyota Motor Corp | 変速機の異常判定装置 |
| WO2020162148A1 (ja) * | 2019-02-06 | 2020-08-13 | ジヤトコ株式会社 | ベルト式無段変速機 |
-
2003
- 2003-03-14 JP JP2003070883A patent/JP2004278663A/ja active Pending
Cited By (4)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
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| WO2020162148A1 (ja) * | 2019-02-06 | 2020-08-13 | ジヤトコ株式会社 | ベルト式無段変速機 |
| JPWO2020162148A1 (ja) * | 2019-02-06 | 2021-10-21 | ジヤトコ株式会社 | ベルト式無段変速機 |
| JP7082693B2 (ja) | 2019-02-06 | 2022-06-08 | ジヤトコ株式会社 | ベルト式無段変速機 |
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