JP2004281113A - 固体高分子形燃料電池用セル及びそれを備えた固体高分子形燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、電解質膜30の一方の面にアノード側電極層31を配置すると共に他方の面にカソード側電極層32を配置してなる電極膜接合体(MEA)3と、電極膜接合体3の外周部に露出した電解質膜30の外周部30a,30bを挟持する状態で配置された一対の環状ガスシール体2と、電極膜接合体3の両側に環状ガスシール体2を挟持する状態で配置された一対のセパレータ1とで構成されたセルCを有する固体高分子形燃料電池において、セパレータ1の挟持力による電極膜接合体3の破壊を良好に抑制し、性能及び耐久性を良好なものに確保することを目的とする。
【解決手段】環状ガスシール体2の環状内側且つ電解質膜と接する側のエッジ部20を面取構造としてある。
【選択図】 図2
【解決手段】環状ガスシール体2の環状内側且つ電解質膜と接する側のエッジ部20を面取構造としてある。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電解質膜の一方の面にアノード側電極層を配置すると共に他方の面にカソード側電極層を配置してなる電極膜接合体と、前記電極膜接合体の外周部に露出した電解質膜の外周部を挟持する状態で配置された一対の環状ガスシール体と、前記電極膜接合体の両側に前記環状ガスシール体を挟持する状態で配置された一対のセパレータとで構成された固体高分子形燃料電池用セル、及び、その固体高分子形燃料電池用セルの少なくとも1つを積層してなるセルスタックを備えた固体高分子形燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
かかる固体高分子型燃料電池用セル(以下、単に「セル」と呼ぶ場合がある。)においては、固体高分子電解質膜(以下、単に「電解質膜」と呼ぶ場合がある。)の一方の面に、電解質膜側に接する電極触媒層とその外側のガス拡散層とを保持したアノード側電極層を配置すると共に、電解質膜の他方の面に、電解質膜側に接する電極触媒層とその外側のガス拡散層とを保持したカソード側電極層を配置してなるフィルム状の電極膜接合体(以下、「MEA」と呼ぶ。)を有する。
【0003】
更に、固体高分子形燃料電池用のセルは、上述のMEAと、そのMEAの外周部に露出した電解質膜の外周部を挟持する状態で配置された一対の環状ガスシール体と、MEAの両側に環状ガスシール体を挟持する状態で配置されガスが流通する流路が形成された一対のセパレータとを備えて構成されている。
【0004】
即ち、一対のセパレータにより、MEAを環状ガスシール体を介して厚さ方向に挟み込むことで、環状ガスシール体とMEAの外周部、及び、環状ガスシール体とセパレータとが密着されて、アノード側電極層とセパレータと間に気密性が確保されたアノード側流路が形成され、カソード側電極層とセパレータと間に気密性が確保されたカソード側流路が形成され、上記アノード側流路に燃料ガスとしての水素含有ガスが供給され、上記カソード側流路に酸素含有ガスとしての空気が供給される。
【0005】
上記のような固体高分子形燃料電池用セルにおいては、上記のように一対のセパレータによりMEAを厚さ方向に挟持力を印加して挟持するため、MEAの電解質膜又はそれを備えたMEAは、圧縮応力によるクリープ現象、又はせん断応力によるせん断破壊等により、局所的な破壊が起こりやすくなり、セルの耐久性及び信頼性の低下が懸念されていた。例えば、電解質膜等が破壊されてしまうと、アノード側の燃料ガスがカソード側に流入したり、逆に、カソード側の酸素ガスがアノード側に流入するなどの反応ガスのクロスリークが生じることにより、電極触媒層上で燃焼が発生して、電気化学反応に用いることができるガス量が減少し、セルの性能が低下する。
【0006】
そこで、このような状況を鑑みて、MEAのガス拡散層の外周部の電解質膜側のエッジ部を面取加工して、ガス拡散層が電解質膜に与える局所的な応力を低減し、電解質膜の破壊を抑制することができるセルが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−243963号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、近年においては、固体高分子形燃料電池の小型化に伴って、セルの更なる薄型化が図られることにより、セルの一層の耐久性の向上が求められている。
また、アノード側電極層及びカソード側電極層が、電解質膜に接する電極触媒層と、その外側に配置されたガス拡散層からなり、ガス拡散層としてカーボンクロス等のように厚さ方向において比較的軟らかい材料を用いる場合において、上記のように軟らかいガス拡散層のエッジ部は面取り加工しなくても電解質膜を傷つけ難いので、上記特許文献1に記載のようなガス拡散層のエッジ部の面取り加工は、電解質膜の破壊を抑制するための手法として有効なものではなくなる。
【0009】
従って、本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、セパレータの挟持力によるMEAの破壊を良好に抑制してセルの耐久性を向上し、更なる薄型化を図っても性能を良好なものに確保することができる固体高分子形燃料電池用セルを提供する点にある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するための本発明に係る固体高分子形燃料電池用セルは、電解質膜の一方の面にアノード側電極層を配置すると共に他方の面にカソード側電極層を配置してなるMEAと、前記MEAの外周部に露出した電解質膜の外周部を挟持する状態で配置された一対の環状ガスシール体と、前記MEAの両側に前記環状ガスシール体を挟持する状態で配置された一対のセパレータとで構成された固体高分子形燃料電池用セルであって、その第一特徴構成は、前記環状ガスシール体の環状内側且つ前記電解質膜と接する側のエッジ部を面取構造としてある点にある。
【0011】
本願発明者らは、特に近年におけるセルの薄型化により、従来技術のようにガス拡散層のエッジ部を面取加工しただけでは、MEAの電解質膜の破壊を充分に抑制することができず、更に電解質膜の破壊を進行させる別の要因として、上記環状ガスシール体が電解質膜に対して加える応力について研究し、本発明を完成した。
【0012】
即ち、上記第一特徴構成によれば、電解質膜の外周部の形状に合わせて環状に形成され電解質膜の外周部の比較的内側(中心側)と接触する環状ガスシール体の上記エッジ部が、曲面状の面取構造又は平面状の面取構造等の面取構造を有するので、環状ガスシール体のエッジ部が電解質膜に対して90°未満の接触角で接触した状態で、一対のセパレータにより挟持されることになり、環状ガスシール体が電解質膜に与える局所的な応力を良好に低減して、電解質膜の破壊を良好に抑制することができ、耐久性を向上することができる。よって、セルの薄型化を図っても、セルの性能を良好なものに確保することができる。
【0013】
また、前記アノード側電極層及び前記カソード側電極層が、前記電解質膜に接する電極触媒層と、その外側に配置されたガス拡散層からなる場合において、前記ガス拡散層として厚さ方向において比較的軟らかいカーボンクロス等を用いた場合には、ガス拡散層が電解質膜を傷つけ難いので、ガス拡散層のエッジの面取加工を省略することができ、さらに、このような軟らかいガス拡散層を用いる場合においては、電解質膜の破壊を進行させる主な要因は上記環状ガスシール体が電解質膜に対して加える応力となり、本特徴構成を採用して、有効に電解質膜の破壊を抑制することができる。
【0014】
本発明に係る固体高分子形燃料電池用セルの第二特徴構成は、上記第一特徴構成に加えて、前記環状ガスシール体が、前記セパレータの挟持力により前記電解質膜に沈み込むと共に、前記面取構造において、厚さ方向における面取幅が前記沈み込み幅よりも大きく設定されている点にある。
【0015】
即ち、上記第二特徴構成によれば、前記環状ガスシール体が前記セパレータの挟持力により前記電解質膜に沈み込むことによりアノード側流路及びカソード側流路の気密性を確保する場合において、環状ガスシール体のエッジ部に施された面取構造において、上記面取幅を上記沈み込み幅よりも大きく設定することで、環状ガスシール体が電解質膜に沈み込んだ後でもそのエッジ部の電解質膜に対する接触角が90°未満に保たれるので、環状ガスシール体がセパレータの挟持力により電解質膜に与える局所的な応力を良好に低減することができる。
【0016】
この目的を達成するための本発明に係る固体高分子形燃料電池は、電解質膜の一方の面にアノード側電極層を配置すると共に他方の面にカソード側電極層を配置してなるMEAと、前記MEAの外周部に露出した電解質膜の外周部を挟持する状態で配置された一対の環状ガスシール体と、前記MEAの両側に前記環状ガスシール体を挟持する状態で配置された一対のセパレータとで構成された固体高分子形燃料電池用セルの少なくとも1つを積層してなるセルスタックを備えた固体高分子形燃料電池であって、その特徴構成は、前記固体高分子形燃料電池用セルとして、上記特徴構成を有する固体高分子形燃料電池用セルを備えた点にある。
【0017】
即ち、本特徴構成によれば、固体高分子形燃料電池において、これまで説明してきたように特に薄型の電解質膜の破壊を良好に抑制することができるセルを備えるので、性能低下を良好に抑制すると共に、更なる小型化を図ることができる固体高分子形燃料電池を実現することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
【0019】
先ず、固体高分子型燃料電池に設けられるセルスタックCSについて説明する。尚、図面においては、電解質膜30の厚さ方向に沿う方向での各部の形状を分かり易いようにするために、電解質膜30の厚さ方向に直交する方向に沿う方向での各部の寸法に対する、電解質膜30の厚さ方向に沿う方向での各部の寸法の比率を実際よりも大きくしてある。
【0020】
セルスタックCSは、図1に示すように、セルCの複数を積層して配置し、その積層した複数のセルCを複数のボルト及びナットにより積層方向に押圧力を与えて挟持して構成されている。
【0021】
このセルスタックCSに設けられるセルCは、図2乃至図5にも示すように、電解質膜30の一方の面に、電解質膜30側に接する電極触媒層31aとその外側のガス拡散層31bとを保持したアノード側電極層31を配置すると共に、電解質膜30の他方の面に、電解質膜30側に接する電極触媒層32aとその外側のガス拡散層32bとを保持したカソード側電極層32を配置してなるフィルム状のMEA3を備える。
尚、図2乃至図5の夫々の図面は、本発明に係るセルCの夫々の実施形態を示す図面である。
【0022】
更に、セルCは、MEA3の外周部に露出した電解質膜30の外周部30a,30bを挟持する状態で配置された一対の環状ガスシール体2と、MEA3の両側に環状ガスシール体2を挟持する状態で配置され、上記アノード側電極層31及び上記カソード側電極層32に供給されるガスが流通する流路が形成された一対のセパレータ1とで構成されている。
【0023】
即ち、一対のセパレータ1により、MEA3を、電解質膜30の外周部30a,30bに合わせ夫々の電極層31,32の全周部を覆う状態で形成された環状ガスシール体2を介して厚さ方向に挟み込むことで、アノード側電極層31側においては、環状ガスシール体2aとMEA3の一方の外周部30a、及び、環状ガスシール体2aとセパレータ1aとが密着されて、アノード側電極層31とセパレータ1aと間に気密性が確保され燃料ガスとしての水素が供給されるアノード側流路が形成され、一方、カソード側電極層32側においては、環状ガスシール体2bとMEA3の一方の外周部30b、及び、環状ガスシール体2bとセパレータ1bとが密着されて、カソード側電極層32とセパレータ1bと間に気密性が確保され酸素ガスとしての空気が供給されるカソード流路が形成される。
【0024】
また、セルスタックSCにおいて、積層方向の両端部に配置されたセパレータ1a,1bは、アノード流路又はカソード流路の一方のみが形成されるものであればよく、その他の中間に配置されたセパレータ1は、一方の面にアノード流路が形成され他方の面にカソード流路が形成されるものを利用することができる。
【0025】
このようなMEA3は、アノード側電極層31及びカソード側電極層32の夫々と電解質膜30との接触面積を大きくして、電気的接触抵抗を低下させることにより、発電性能を高くする必要があることから、以下のようにして製作することができる。
【0026】
即ち、電解質膜30の一方の面にその外周部31aを露出する状態でアノード側電極層31aを配置すると共に、他方の面にその外周部31bを露出する状態でカソード側電極層32aを配置し、電解質膜30と各電極層31a,32aの重ね方向にホットプレスしてそれらを接合したり、電解質膜30と各電極層31a,32aの重ね方向に押圧してそれらを接着剤にて接合したりして、アノード側電極層31a、電解質膜30、カソード側電極層32aとを積層したMEA3を製作することができる。
また、上術と同様の方法により、電解質膜30の両面に電極触媒層31a,32aを接合したものを、一対のガス拡散層31b,32bにより挟み込んでMEA3を製作しても構わない。
【0027】
また、上記ガス拡散層31b,32bとしては、厚さ方向において比較的軟らかいカーボンクロスが用いられているので、ガス拡散層31b,32bの外周部の電解質膜30側のエッジ部が殆ど面取加工されていない状態であるにも関わらず、ガス拡散層31b,32bが電解質膜30を傷つけ難くなる。
【0028】
更に、セルCに設けられる環状ガスシール体2においては、図2乃至図5に示すように、前記環状ガスシール体2の環状の内側(中心側)且つ電解質膜30の外周部30a,30bと接する側のエッジ部20が面取構造とされている。
【0029】
即ち、図2及び図4においては、環状ガスシール体2のエッジ部20が、所謂R面取加工が施されて曲面状の面取構造とされ、一方、図3及び図5においては、環状ガスシール体2のエッジ部20が、所謂C面取加工が施されて平面状の面取構造とされている。
【0030】
そして、何れのエッジ部20の面取構造においても、エッジ部20の電解質膜30の外周部30a,30b表面に対する接触角が90°未満となり、環状ガスシール体2が電解質膜30に与える局所的な応力を良好に低減して、電解質膜30の破壊を良好に抑制することができる。
尚、上記面取構造は、例えば、図3及び図5に示す平面状の面取構造において、傾斜平面に若干の膨らみを持たせるなどのように、上記平面状と上記曲面状とを組み合わせたような構造でも構わない。
【0031】
尚、エッジ部20の上記曲面状の面取構造(図2及び図4)における厚さ方向(積層方向)に沿った半径R1(面取幅)と積層方向と直交する横断方向に沿った半径R2(面取幅)との比(=R1/R2)、エッジ部20の上記平面状の面取り構造(図3及び図5)における厚さ方向(積層方向)に沿った長さL1(面取幅)と積層方向と直交する横断方向に沿った長さL2(面取幅)との比(=L1/L2)は、1以外の値としても構わない。
【0032】
また、図2及び図3に示すように、弾性体で成形された環状ガスシール体2が電解質30よりも軟らかく、積層配置されたセルCを積層方向に押圧力を与えることにより、環状ガスシール体2が厚さ方向に圧縮変形して厚さがTからT’となる場合には、エッジ部20の面取構造において、圧縮変形後においても厚さ方向における面取幅R1,L1が確保されているように、エッジ部20の面取構造の形状を決定することが好ましく、このように構成することで、環状ガスシール体2が圧縮変形した後においても、エッジ部20の電解質膜30に対する接触角θが90°未満に保たれ、環状ガスシール体20による電解質膜30に付与する局所的な応力が良好に低減されている。尚、上記図2においては、エッジ部20の電解質膜30に対する接触角θが極めて0°に近い値を示すので、図面におけるθの記載を省略している。
【0033】
また、図4及び図5に示すように、積層配置されたセルCを積層方向に押圧力を与えることにより、環状ガスシール体2が平板状であった電解質膜30に沈み込ませてセルスタックCSが構成されている場合には、エッジ部20の面取構造において、厚さ方向における面取幅R1,L1が上記沈み込み幅tよりも大きく設定することが好ましく、このように構成することで、エッジ部20の電解質膜30に対する接触角θが90°未満に保たれ、環状ガスシール体20による電解質膜30に付与する局所的な応力が良好に低減されている。
【0034】
更に、図5に示すように、環状ガスシール体2の平面状のエッジ部20が電解質膜30に沈みこむ場合において、そのエッジ部2の電解質側30の端部20aは鈍角状又は曲面状であることが好ましく、このことにより、その端部20a付近の電解質膜30に対する応力集中を抑制して、電解質膜30の破壊を抑制することができる。
【0035】
尚、上記実施の形態では、環状ガスシール体2の環状内側且つ電解質膜30側のエッジ部20のみを面取構造としたが、製造上の都合等により、それに加えて他のエッジ部を面取構造としても構わない。
【0036】
また、本発明に係るセルCは、環状ガスシール体2の面取構造に特徴を有するものであり、その面取構造以外の構成については、これまで説明してきた構成に限定されることなく、適宜改変可能である。
【0037】
〔実施例〕
以下、本発明に係る固体高分子形燃料電池の実施例を説明する。
【0038】
本発明の実施例として、上記の実施の形態と同様に、環状ガスシール体のエッジ部が曲面状の面取構造に加工されたセルを備えてなる固体高分子形燃料電池(以下、「本実施例燃料電池」と呼ぶ。)を作成し、一方、比較例として、上記実施例とは異なり、環状ガスシール体のエッジ部が面取加工されていないセルを備えてなる固体高分子形燃料電池(以下、「比較例燃料電池」と呼ぶ。)を作成し、上記本実施例燃料電池と上記比較例燃料電池との発電試験を行った。
【0039】
尚、上記本実施例燃料電池と上記比較例燃料電池においては、電解質膜としてパーフルオロカーボン膜であるNafion112(米国デュポン社の商標)を用い、その電解質膜の両面にカーボン粒子に白金を担持した電極触媒層を接合した。更に、カーボンペーパであるガス拡散層を、上記の電極触媒層を両面に接合した電解質膜の両面に積層し、中央を切り抜いて環状にしたテフロンシートを環状ガスシール体として、ガス拡散層と重ならないように積層した。また、上記ガス拡散層として用いたカーボンペーパは、厚さ方向において比較的硬いので、そのカーボンペーパのエッジ部が電解質膜を傷つけることを抑制するために、カーボンペーパの電解質側のエッジ部は面取り加工してある。
【0040】
尚、電解質膜は、75mm×75mmの正方形で厚みが約50μmであり、電極触媒層は、50mm×50mmの正方形であり、ガス拡散層は、54mm×54mmの正方形で厚みが約350μmであり、環状ガスシール体は、厚みは約300μmで外周部の電解質膜側のエッジ部が曲面状に面取加工されている。
【0041】
また、上記本実施例燃料電池と上記比較例燃料電池は、夫々1つのMEAを一対のセパレータで挟み込んだものであり、更に、その両面にセパレータとMEAとの接触を良好にするために押え付け板を設けて、ボルトで締め込まれている。
【0042】
発電試験において、セルに供給するガスの加湿は外部加湿方式であり、温度制御されている水槽をバブリングさせて燃料電池へガスを供給している。セルからの排出ガスは大気開放させており、常圧下での評価を行った。発電負荷については電子負荷装置を用い、定電流での発電試験を行った。
供給ガスについて、燃料ガスとしてはボンベガスからの水素を用い、酸素ガスとしては精製したコンプレッサー空気を用いた。
発電条件は、運転温度が70℃、燃料利用率は60%、空気利用率が40%、電流密度が300mAcm−2である。
【0043】
セルの締め付け力調整については、やや締め付け力の弱い状態で発電を開始し、安定した電圧が確認された後、最も接触抵抗が小さくなるようにねじの締め込みを調整する。最も高い電圧が得られる最小の締め付け圧力とした。
またねじの締め付けトルクはすべてのねじで等しくなるように調整した。上記本実施例燃料電池と上記比較例燃料電池とのセルの締め付け圧力は等しくなるように調整し、MEAの破壊性を比較して、環状ガスシール体のエッジ部の面取り構造による効果を検証した。尚、上記セル締め付け圧力は10kgf/cm2以下である。
【0044】
上記のような発電試験の結果、図6の電圧の経時変化に示すように、本実施例燃料電池及び比較例燃料電池の何れも初期電圧は700mV強の電圧を示したが、初期の1000時間で顕著な電圧低下が示された。しかし、1000時間を超えたあたりから劣化速度は小さくなった。
【0045】
面取構造を有する環状ガスシール体を備えた本実施例燃料電池では、その後ほぼ一定の劣化速度で電圧が推移したのに対して、面取構造を有さない環状ガスシール体を備えた比較例燃料電池は、3000時間を経過した後から突然電圧が低下し、550mV前後で不安定な電圧を示すようになった。
【0046】
何れの燃料電池も初期の開回路電圧は950mV以上を示していたが、比較例燃料電池については、5000時間後の開回路電圧が850mV程度まで低下しており、ガスのクロスリークによる現象が観測された。
また、5000時間の運転を終了した両燃料電池のセルを解体したところ、比較例燃料電池の電解質膜は、電極触媒層を接合してある部分と、電極触媒層を接合していない部分との境界で、一部が裂けており、そこからガスのクロスリークが起こっていたものと考えられる。
電圧の経時変化から、比較例燃料電池においては、この様な電解質膜の破断が、発電開始してから3000時間経過以降且つ3500時間経過までに起こっていたものと推測される。
【0047】
一方、本実施例燃料電池では、上記電解質膜の境界部分に破断は見られず、環状ガスシール体の面取構造による膜の耐久性への効果が確認された。
【0048】
本実施例燃料電池と比較例燃料電池とを夫々5個ずつ用意し、同様な発電試験を行った。
比較例燃料電池においては、3個が、5000時間以内にガスのクロスリークによる急激な電圧の低下、若しくは不安定な電圧の出現が観測された。
また、この3個の比較例燃料電池では、クロスリークが起こり初めてからの電圧は亀裂の部位や大きさなどによってガスのリーク量、リークするガスの組成が異なるため、必ずしも同じ様な電圧まで低下することがなかったが、不安定な電圧を呈する共通点が確認された。
【0049】
一方、本実施例燃料電池においては、全てが、5000時間以内に電解質膜の破断によるガスのクロスリークが起こることはなく、環状ガスシール体の面取構造による膜の耐久性への効果が確認された。
【0050】
また、上記実施の形態において、環状ガスシール体MEAと接する側のエッジ処理についてのみ、その効果を説明したが、製造上の都合によりMEA側のみでなく、反対側のセパレーターと接する側にもエッジ処理を施してあってもその効果は変わらない。
【図面の簡単な説明】
【図1】固体高分子形燃料電池用セルスタックの展開図
【図2】固体高分子形燃料電池用セルの部分拡大図
【図3】固体高分子形燃料電池用セルの部分拡大図
【図4】固体高分子形燃料電池用セルの部分拡大図
【図5】固体高分子形燃料電池用セルの部分拡大図
【図6】固体高分子形燃料電池の発電試験における電圧の経時変化を示すグラフ図
【符号の説明】
CS:セルスタック
C:セル
30:電解質膜
31a,32a:電極触媒層
31b,32b:ガス拡散層
3:MEA(電極膜接合体)
2,2a,2b:環状ガスシール体
31:アノード側電極層
32:カソード側電極層
1,1a,1b:セパレータ
30a,30b:電解質膜の外周部
20:環状ガスシール体のエッジ部
【発明の属する技術分野】
本発明は、電解質膜の一方の面にアノード側電極層を配置すると共に他方の面にカソード側電極層を配置してなる電極膜接合体と、前記電極膜接合体の外周部に露出した電解質膜の外周部を挟持する状態で配置された一対の環状ガスシール体と、前記電極膜接合体の両側に前記環状ガスシール体を挟持する状態で配置された一対のセパレータとで構成された固体高分子形燃料電池用セル、及び、その固体高分子形燃料電池用セルの少なくとも1つを積層してなるセルスタックを備えた固体高分子形燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
かかる固体高分子型燃料電池用セル(以下、単に「セル」と呼ぶ場合がある。)においては、固体高分子電解質膜(以下、単に「電解質膜」と呼ぶ場合がある。)の一方の面に、電解質膜側に接する電極触媒層とその外側のガス拡散層とを保持したアノード側電極層を配置すると共に、電解質膜の他方の面に、電解質膜側に接する電極触媒層とその外側のガス拡散層とを保持したカソード側電極層を配置してなるフィルム状の電極膜接合体(以下、「MEA」と呼ぶ。)を有する。
【0003】
更に、固体高分子形燃料電池用のセルは、上述のMEAと、そのMEAの外周部に露出した電解質膜の外周部を挟持する状態で配置された一対の環状ガスシール体と、MEAの両側に環状ガスシール体を挟持する状態で配置されガスが流通する流路が形成された一対のセパレータとを備えて構成されている。
【0004】
即ち、一対のセパレータにより、MEAを環状ガスシール体を介して厚さ方向に挟み込むことで、環状ガスシール体とMEAの外周部、及び、環状ガスシール体とセパレータとが密着されて、アノード側電極層とセパレータと間に気密性が確保されたアノード側流路が形成され、カソード側電極層とセパレータと間に気密性が確保されたカソード側流路が形成され、上記アノード側流路に燃料ガスとしての水素含有ガスが供給され、上記カソード側流路に酸素含有ガスとしての空気が供給される。
【0005】
上記のような固体高分子形燃料電池用セルにおいては、上記のように一対のセパレータによりMEAを厚さ方向に挟持力を印加して挟持するため、MEAの電解質膜又はそれを備えたMEAは、圧縮応力によるクリープ現象、又はせん断応力によるせん断破壊等により、局所的な破壊が起こりやすくなり、セルの耐久性及び信頼性の低下が懸念されていた。例えば、電解質膜等が破壊されてしまうと、アノード側の燃料ガスがカソード側に流入したり、逆に、カソード側の酸素ガスがアノード側に流入するなどの反応ガスのクロスリークが生じることにより、電極触媒層上で燃焼が発生して、電気化学反応に用いることができるガス量が減少し、セルの性能が低下する。
【0006】
そこで、このような状況を鑑みて、MEAのガス拡散層の外周部の電解質膜側のエッジ部を面取加工して、ガス拡散層が電解質膜に与える局所的な応力を低減し、電解質膜の破壊を抑制することができるセルが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−243963号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、近年においては、固体高分子形燃料電池の小型化に伴って、セルの更なる薄型化が図られることにより、セルの一層の耐久性の向上が求められている。
また、アノード側電極層及びカソード側電極層が、電解質膜に接する電極触媒層と、その外側に配置されたガス拡散層からなり、ガス拡散層としてカーボンクロス等のように厚さ方向において比較的軟らかい材料を用いる場合において、上記のように軟らかいガス拡散層のエッジ部は面取り加工しなくても電解質膜を傷つけ難いので、上記特許文献1に記載のようなガス拡散層のエッジ部の面取り加工は、電解質膜の破壊を抑制するための手法として有効なものではなくなる。
【0009】
従って、本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、セパレータの挟持力によるMEAの破壊を良好に抑制してセルの耐久性を向上し、更なる薄型化を図っても性能を良好なものに確保することができる固体高分子形燃料電池用セルを提供する点にある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するための本発明に係る固体高分子形燃料電池用セルは、電解質膜の一方の面にアノード側電極層を配置すると共に他方の面にカソード側電極層を配置してなるMEAと、前記MEAの外周部に露出した電解質膜の外周部を挟持する状態で配置された一対の環状ガスシール体と、前記MEAの両側に前記環状ガスシール体を挟持する状態で配置された一対のセパレータとで構成された固体高分子形燃料電池用セルであって、その第一特徴構成は、前記環状ガスシール体の環状内側且つ前記電解質膜と接する側のエッジ部を面取構造としてある点にある。
【0011】
本願発明者らは、特に近年におけるセルの薄型化により、従来技術のようにガス拡散層のエッジ部を面取加工しただけでは、MEAの電解質膜の破壊を充分に抑制することができず、更に電解質膜の破壊を進行させる別の要因として、上記環状ガスシール体が電解質膜に対して加える応力について研究し、本発明を完成した。
【0012】
即ち、上記第一特徴構成によれば、電解質膜の外周部の形状に合わせて環状に形成され電解質膜の外周部の比較的内側(中心側)と接触する環状ガスシール体の上記エッジ部が、曲面状の面取構造又は平面状の面取構造等の面取構造を有するので、環状ガスシール体のエッジ部が電解質膜に対して90°未満の接触角で接触した状態で、一対のセパレータにより挟持されることになり、環状ガスシール体が電解質膜に与える局所的な応力を良好に低減して、電解質膜の破壊を良好に抑制することができ、耐久性を向上することができる。よって、セルの薄型化を図っても、セルの性能を良好なものに確保することができる。
【0013】
また、前記アノード側電極層及び前記カソード側電極層が、前記電解質膜に接する電極触媒層と、その外側に配置されたガス拡散層からなる場合において、前記ガス拡散層として厚さ方向において比較的軟らかいカーボンクロス等を用いた場合には、ガス拡散層が電解質膜を傷つけ難いので、ガス拡散層のエッジの面取加工を省略することができ、さらに、このような軟らかいガス拡散層を用いる場合においては、電解質膜の破壊を進行させる主な要因は上記環状ガスシール体が電解質膜に対して加える応力となり、本特徴構成を採用して、有効に電解質膜の破壊を抑制することができる。
【0014】
本発明に係る固体高分子形燃料電池用セルの第二特徴構成は、上記第一特徴構成に加えて、前記環状ガスシール体が、前記セパレータの挟持力により前記電解質膜に沈み込むと共に、前記面取構造において、厚さ方向における面取幅が前記沈み込み幅よりも大きく設定されている点にある。
【0015】
即ち、上記第二特徴構成によれば、前記環状ガスシール体が前記セパレータの挟持力により前記電解質膜に沈み込むことによりアノード側流路及びカソード側流路の気密性を確保する場合において、環状ガスシール体のエッジ部に施された面取構造において、上記面取幅を上記沈み込み幅よりも大きく設定することで、環状ガスシール体が電解質膜に沈み込んだ後でもそのエッジ部の電解質膜に対する接触角が90°未満に保たれるので、環状ガスシール体がセパレータの挟持力により電解質膜に与える局所的な応力を良好に低減することができる。
【0016】
この目的を達成するための本発明に係る固体高分子形燃料電池は、電解質膜の一方の面にアノード側電極層を配置すると共に他方の面にカソード側電極層を配置してなるMEAと、前記MEAの外周部に露出した電解質膜の外周部を挟持する状態で配置された一対の環状ガスシール体と、前記MEAの両側に前記環状ガスシール体を挟持する状態で配置された一対のセパレータとで構成された固体高分子形燃料電池用セルの少なくとも1つを積層してなるセルスタックを備えた固体高分子形燃料電池であって、その特徴構成は、前記固体高分子形燃料電池用セルとして、上記特徴構成を有する固体高分子形燃料電池用セルを備えた点にある。
【0017】
即ち、本特徴構成によれば、固体高分子形燃料電池において、これまで説明してきたように特に薄型の電解質膜の破壊を良好に抑制することができるセルを備えるので、性能低下を良好に抑制すると共に、更なる小型化を図ることができる固体高分子形燃料電池を実現することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
【0019】
先ず、固体高分子型燃料電池に設けられるセルスタックCSについて説明する。尚、図面においては、電解質膜30の厚さ方向に沿う方向での各部の形状を分かり易いようにするために、電解質膜30の厚さ方向に直交する方向に沿う方向での各部の寸法に対する、電解質膜30の厚さ方向に沿う方向での各部の寸法の比率を実際よりも大きくしてある。
【0020】
セルスタックCSは、図1に示すように、セルCの複数を積層して配置し、その積層した複数のセルCを複数のボルト及びナットにより積層方向に押圧力を与えて挟持して構成されている。
【0021】
このセルスタックCSに設けられるセルCは、図2乃至図5にも示すように、電解質膜30の一方の面に、電解質膜30側に接する電極触媒層31aとその外側のガス拡散層31bとを保持したアノード側電極層31を配置すると共に、電解質膜30の他方の面に、電解質膜30側に接する電極触媒層32aとその外側のガス拡散層32bとを保持したカソード側電極層32を配置してなるフィルム状のMEA3を備える。
尚、図2乃至図5の夫々の図面は、本発明に係るセルCの夫々の実施形態を示す図面である。
【0022】
更に、セルCは、MEA3の外周部に露出した電解質膜30の外周部30a,30bを挟持する状態で配置された一対の環状ガスシール体2と、MEA3の両側に環状ガスシール体2を挟持する状態で配置され、上記アノード側電極層31及び上記カソード側電極層32に供給されるガスが流通する流路が形成された一対のセパレータ1とで構成されている。
【0023】
即ち、一対のセパレータ1により、MEA3を、電解質膜30の外周部30a,30bに合わせ夫々の電極層31,32の全周部を覆う状態で形成された環状ガスシール体2を介して厚さ方向に挟み込むことで、アノード側電極層31側においては、環状ガスシール体2aとMEA3の一方の外周部30a、及び、環状ガスシール体2aとセパレータ1aとが密着されて、アノード側電極層31とセパレータ1aと間に気密性が確保され燃料ガスとしての水素が供給されるアノード側流路が形成され、一方、カソード側電極層32側においては、環状ガスシール体2bとMEA3の一方の外周部30b、及び、環状ガスシール体2bとセパレータ1bとが密着されて、カソード側電極層32とセパレータ1bと間に気密性が確保され酸素ガスとしての空気が供給されるカソード流路が形成される。
【0024】
また、セルスタックSCにおいて、積層方向の両端部に配置されたセパレータ1a,1bは、アノード流路又はカソード流路の一方のみが形成されるものであればよく、その他の中間に配置されたセパレータ1は、一方の面にアノード流路が形成され他方の面にカソード流路が形成されるものを利用することができる。
【0025】
このようなMEA3は、アノード側電極層31及びカソード側電極層32の夫々と電解質膜30との接触面積を大きくして、電気的接触抵抗を低下させることにより、発電性能を高くする必要があることから、以下のようにして製作することができる。
【0026】
即ち、電解質膜30の一方の面にその外周部31aを露出する状態でアノード側電極層31aを配置すると共に、他方の面にその外周部31bを露出する状態でカソード側電極層32aを配置し、電解質膜30と各電極層31a,32aの重ね方向にホットプレスしてそれらを接合したり、電解質膜30と各電極層31a,32aの重ね方向に押圧してそれらを接着剤にて接合したりして、アノード側電極層31a、電解質膜30、カソード側電極層32aとを積層したMEA3を製作することができる。
また、上術と同様の方法により、電解質膜30の両面に電極触媒層31a,32aを接合したものを、一対のガス拡散層31b,32bにより挟み込んでMEA3を製作しても構わない。
【0027】
また、上記ガス拡散層31b,32bとしては、厚さ方向において比較的軟らかいカーボンクロスが用いられているので、ガス拡散層31b,32bの外周部の電解質膜30側のエッジ部が殆ど面取加工されていない状態であるにも関わらず、ガス拡散層31b,32bが電解質膜30を傷つけ難くなる。
【0028】
更に、セルCに設けられる環状ガスシール体2においては、図2乃至図5に示すように、前記環状ガスシール体2の環状の内側(中心側)且つ電解質膜30の外周部30a,30bと接する側のエッジ部20が面取構造とされている。
【0029】
即ち、図2及び図4においては、環状ガスシール体2のエッジ部20が、所謂R面取加工が施されて曲面状の面取構造とされ、一方、図3及び図5においては、環状ガスシール体2のエッジ部20が、所謂C面取加工が施されて平面状の面取構造とされている。
【0030】
そして、何れのエッジ部20の面取構造においても、エッジ部20の電解質膜30の外周部30a,30b表面に対する接触角が90°未満となり、環状ガスシール体2が電解質膜30に与える局所的な応力を良好に低減して、電解質膜30の破壊を良好に抑制することができる。
尚、上記面取構造は、例えば、図3及び図5に示す平面状の面取構造において、傾斜平面に若干の膨らみを持たせるなどのように、上記平面状と上記曲面状とを組み合わせたような構造でも構わない。
【0031】
尚、エッジ部20の上記曲面状の面取構造(図2及び図4)における厚さ方向(積層方向)に沿った半径R1(面取幅)と積層方向と直交する横断方向に沿った半径R2(面取幅)との比(=R1/R2)、エッジ部20の上記平面状の面取り構造(図3及び図5)における厚さ方向(積層方向)に沿った長さL1(面取幅)と積層方向と直交する横断方向に沿った長さL2(面取幅)との比(=L1/L2)は、1以外の値としても構わない。
【0032】
また、図2及び図3に示すように、弾性体で成形された環状ガスシール体2が電解質30よりも軟らかく、積層配置されたセルCを積層方向に押圧力を与えることにより、環状ガスシール体2が厚さ方向に圧縮変形して厚さがTからT’となる場合には、エッジ部20の面取構造において、圧縮変形後においても厚さ方向における面取幅R1,L1が確保されているように、エッジ部20の面取構造の形状を決定することが好ましく、このように構成することで、環状ガスシール体2が圧縮変形した後においても、エッジ部20の電解質膜30に対する接触角θが90°未満に保たれ、環状ガスシール体20による電解質膜30に付与する局所的な応力が良好に低減されている。尚、上記図2においては、エッジ部20の電解質膜30に対する接触角θが極めて0°に近い値を示すので、図面におけるθの記載を省略している。
【0033】
また、図4及び図5に示すように、積層配置されたセルCを積層方向に押圧力を与えることにより、環状ガスシール体2が平板状であった電解質膜30に沈み込ませてセルスタックCSが構成されている場合には、エッジ部20の面取構造において、厚さ方向における面取幅R1,L1が上記沈み込み幅tよりも大きく設定することが好ましく、このように構成することで、エッジ部20の電解質膜30に対する接触角θが90°未満に保たれ、環状ガスシール体20による電解質膜30に付与する局所的な応力が良好に低減されている。
【0034】
更に、図5に示すように、環状ガスシール体2の平面状のエッジ部20が電解質膜30に沈みこむ場合において、そのエッジ部2の電解質側30の端部20aは鈍角状又は曲面状であることが好ましく、このことにより、その端部20a付近の電解質膜30に対する応力集中を抑制して、電解質膜30の破壊を抑制することができる。
【0035】
尚、上記実施の形態では、環状ガスシール体2の環状内側且つ電解質膜30側のエッジ部20のみを面取構造としたが、製造上の都合等により、それに加えて他のエッジ部を面取構造としても構わない。
【0036】
また、本発明に係るセルCは、環状ガスシール体2の面取構造に特徴を有するものであり、その面取構造以外の構成については、これまで説明してきた構成に限定されることなく、適宜改変可能である。
【0037】
〔実施例〕
以下、本発明に係る固体高分子形燃料電池の実施例を説明する。
【0038】
本発明の実施例として、上記の実施の形態と同様に、環状ガスシール体のエッジ部が曲面状の面取構造に加工されたセルを備えてなる固体高分子形燃料電池(以下、「本実施例燃料電池」と呼ぶ。)を作成し、一方、比較例として、上記実施例とは異なり、環状ガスシール体のエッジ部が面取加工されていないセルを備えてなる固体高分子形燃料電池(以下、「比較例燃料電池」と呼ぶ。)を作成し、上記本実施例燃料電池と上記比較例燃料電池との発電試験を行った。
【0039】
尚、上記本実施例燃料電池と上記比較例燃料電池においては、電解質膜としてパーフルオロカーボン膜であるNafion112(米国デュポン社の商標)を用い、その電解質膜の両面にカーボン粒子に白金を担持した電極触媒層を接合した。更に、カーボンペーパであるガス拡散層を、上記の電極触媒層を両面に接合した電解質膜の両面に積層し、中央を切り抜いて環状にしたテフロンシートを環状ガスシール体として、ガス拡散層と重ならないように積層した。また、上記ガス拡散層として用いたカーボンペーパは、厚さ方向において比較的硬いので、そのカーボンペーパのエッジ部が電解質膜を傷つけることを抑制するために、カーボンペーパの電解質側のエッジ部は面取り加工してある。
【0040】
尚、電解質膜は、75mm×75mmの正方形で厚みが約50μmであり、電極触媒層は、50mm×50mmの正方形であり、ガス拡散層は、54mm×54mmの正方形で厚みが約350μmであり、環状ガスシール体は、厚みは約300μmで外周部の電解質膜側のエッジ部が曲面状に面取加工されている。
【0041】
また、上記本実施例燃料電池と上記比較例燃料電池は、夫々1つのMEAを一対のセパレータで挟み込んだものであり、更に、その両面にセパレータとMEAとの接触を良好にするために押え付け板を設けて、ボルトで締め込まれている。
【0042】
発電試験において、セルに供給するガスの加湿は外部加湿方式であり、温度制御されている水槽をバブリングさせて燃料電池へガスを供給している。セルからの排出ガスは大気開放させており、常圧下での評価を行った。発電負荷については電子負荷装置を用い、定電流での発電試験を行った。
供給ガスについて、燃料ガスとしてはボンベガスからの水素を用い、酸素ガスとしては精製したコンプレッサー空気を用いた。
発電条件は、運転温度が70℃、燃料利用率は60%、空気利用率が40%、電流密度が300mAcm−2である。
【0043】
セルの締め付け力調整については、やや締め付け力の弱い状態で発電を開始し、安定した電圧が確認された後、最も接触抵抗が小さくなるようにねじの締め込みを調整する。最も高い電圧が得られる最小の締め付け圧力とした。
またねじの締め付けトルクはすべてのねじで等しくなるように調整した。上記本実施例燃料電池と上記比較例燃料電池とのセルの締め付け圧力は等しくなるように調整し、MEAの破壊性を比較して、環状ガスシール体のエッジ部の面取り構造による効果を検証した。尚、上記セル締め付け圧力は10kgf/cm2以下である。
【0044】
上記のような発電試験の結果、図6の電圧の経時変化に示すように、本実施例燃料電池及び比較例燃料電池の何れも初期電圧は700mV強の電圧を示したが、初期の1000時間で顕著な電圧低下が示された。しかし、1000時間を超えたあたりから劣化速度は小さくなった。
【0045】
面取構造を有する環状ガスシール体を備えた本実施例燃料電池では、その後ほぼ一定の劣化速度で電圧が推移したのに対して、面取構造を有さない環状ガスシール体を備えた比較例燃料電池は、3000時間を経過した後から突然電圧が低下し、550mV前後で不安定な電圧を示すようになった。
【0046】
何れの燃料電池も初期の開回路電圧は950mV以上を示していたが、比較例燃料電池については、5000時間後の開回路電圧が850mV程度まで低下しており、ガスのクロスリークによる現象が観測された。
また、5000時間の運転を終了した両燃料電池のセルを解体したところ、比較例燃料電池の電解質膜は、電極触媒層を接合してある部分と、電極触媒層を接合していない部分との境界で、一部が裂けており、そこからガスのクロスリークが起こっていたものと考えられる。
電圧の経時変化から、比較例燃料電池においては、この様な電解質膜の破断が、発電開始してから3000時間経過以降且つ3500時間経過までに起こっていたものと推測される。
【0047】
一方、本実施例燃料電池では、上記電解質膜の境界部分に破断は見られず、環状ガスシール体の面取構造による膜の耐久性への効果が確認された。
【0048】
本実施例燃料電池と比較例燃料電池とを夫々5個ずつ用意し、同様な発電試験を行った。
比較例燃料電池においては、3個が、5000時間以内にガスのクロスリークによる急激な電圧の低下、若しくは不安定な電圧の出現が観測された。
また、この3個の比較例燃料電池では、クロスリークが起こり初めてからの電圧は亀裂の部位や大きさなどによってガスのリーク量、リークするガスの組成が異なるため、必ずしも同じ様な電圧まで低下することがなかったが、不安定な電圧を呈する共通点が確認された。
【0049】
一方、本実施例燃料電池においては、全てが、5000時間以内に電解質膜の破断によるガスのクロスリークが起こることはなく、環状ガスシール体の面取構造による膜の耐久性への効果が確認された。
【0050】
また、上記実施の形態において、環状ガスシール体MEAと接する側のエッジ処理についてのみ、その効果を説明したが、製造上の都合によりMEA側のみでなく、反対側のセパレーターと接する側にもエッジ処理を施してあってもその効果は変わらない。
【図面の簡単な説明】
【図1】固体高分子形燃料電池用セルスタックの展開図
【図2】固体高分子形燃料電池用セルの部分拡大図
【図3】固体高分子形燃料電池用セルの部分拡大図
【図4】固体高分子形燃料電池用セルの部分拡大図
【図5】固体高分子形燃料電池用セルの部分拡大図
【図6】固体高分子形燃料電池の発電試験における電圧の経時変化を示すグラフ図
【符号の説明】
CS:セルスタック
C:セル
30:電解質膜
31a,32a:電極触媒層
31b,32b:ガス拡散層
3:MEA(電極膜接合体)
2,2a,2b:環状ガスシール体
31:アノード側電極層
32:カソード側電極層
1,1a,1b:セパレータ
30a,30b:電解質膜の外周部
20:環状ガスシール体のエッジ部
Claims (5)
- 電解質膜の一方の面にアノード側電極層を配置すると共に他方の面にカソード側電極層を配置してなる電極膜接合体と、前記電極膜接合体の外周部に露出した電解質膜の外周部を挟持する状態で配置された一対の環状ガスシール体と、前記電極膜接合体の両側に前記環状ガスシール体を挟持する状態で配置された一対のセパレータとで構成された固体高分子形燃料電池用セルであって、
前記環状ガスシール体の環状内側且つ前記電解質膜と接する側のエッジ部を面取構造としてある固体高分子形燃料電池用セル。 - 前記面取構造が、曲面状の面取構造である請求項1に記載の固体高分子形燃料電池用セル。
- 前記面取構造が、平面状の面取構造である請求項1に記載の固体高分子形燃料電池用セル。
- 前記環状ガスシール体が、前記セパレータの挟持力により前記電解質膜に沈み込むと共に、前記面取構造において、厚さ方向における面取幅が前記沈み込み幅よりも大きく設定されている請求項1から3の何れか1項に記載の固体高分子形燃料電池用セル。
- 電解質膜の一方の面にアノード側電極層を配置すると共に他方の面にカソード側電極層を配置してなる電極膜接合体と、前記電極膜接合体の外周部に露出した電解質膜の外周部を挟持する状態で配置された一対の環状ガスシール体と、前記電極膜接合体の両側に前記環状ガスシール体を挟持する状態で配置された一対のセパレータとで構成された固体高分子形燃料電池用セルの少なくとも1つを積層してなるセルスタックを備えた固体高分子形燃料電池であって、
前記固体高分子形燃料電池用セルとして、請求項1から4の何れか1項に記載の固体高分子形燃料電池用セルを備えた固体高分子形燃料電池。
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