JP2004281163A - 正極活物質粉末用の焼成容器,正極活物質粉末およびリチウムイオン二次電池 - Google Patents

正極活物質粉末用の焼成容器,正極活物質粉末およびリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】所定の原料粉末を焼成してリチウム含有複合酸化物からなる正極活物質粉末を得るにあたって、不純物含量を少なくするとともに、焼成粉末の焼成容器への溶着を防止する。
【解決手段】容器基質の内面に珪素含量が5%未満の緻密なセラミックス被覆層を備えている焼成容器を用いて、リチウム含有複合酸化物からなる正極活物質粉末の原料粉末を焼成する。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、所定の原料粉末を焼成してリチウムイオン二次電池の正極活物質粉末を得るための焼成容器および焼成して得られた正極活物質粉末と、同正極活物質粉末を備えるリチウムイオン二次電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、種々の電子機器のポータブル化,コードレス化が進むにつれ、小型,軽量で、かつ、高エネルギー密度を有する非水電解液二次電池に対する需要が増大し、以前にも増して特性の優れた非水電解液二次電池用の開発が望まれている。
【0003】
非水電解液二次電池の正極材料には、LiCoO2,LiNiO2,LiMn2O4などが好ましく使用されており、特にLiCoO2は、その安全性,容量などの面から多く使われている。この材料は充電に伴って、結晶格子内のリチウムがリチウムイオンとなって電解液に脱する一方で、放電に伴ってリチウムイオンが電解液から結晶格子に可逆的に挿入されることで、正極活物質としての機能を発現している。
【0004】
コバルト酸リチウムの製造方法として、炭酸リチウムと種々のコバルト源を混合し、焼成することが工業的に実施されている。この工業的な生産において、コバルト源としては、主に四三酸化コバルトあるいはオキシ水酸化コバルトが多用されている。
【0005】
ところで、本発明者らが、コバルト源として、四三酸化コバルトあるいはオキシ水酸化コバルトの前駆体である水酸化コバルトを用いて少量合成実験を行ったところ、正極材料のコストダウンができる効果があり、また、特定の水酸化コバルトを用いることにより、電池容量や安全性、そしてサイクル特性の向上が図れるとの知見を得た。
【0006】
しかしながら、次の段階として、水酸化コバルトと炭酸リチウムとを混合して焼成容器に充填し、量産規模で焼成する試験を行ったところ、生成コバルト酸リチウム中の副生酸化コバルト量が著しく多くなり、電池容量の低下などの特性低下が起きる難点のあることが判明した。なお、四三酸化コバルトあるいはオキシ水酸化コバルトを原料とした場合には、このような量産上の難点は観察されなかった。
【0007】
また、含フッ素コバルト酸リチウムの製造方法として、炭酸リチウムと種々のコバルト源と含フッ素化合物とを混合し、焼成することが実施されている。コバルト源としては、四三酸化コバルト、オキシ水酸化コバルトあるいは水酸化コバルトが用いられている。
【0008】
しかしながら、コバルト化合物と炭酸リチウムと含フッ素化合物とを混合してムライト製の大型焼成容器に充填し、焼成する試験を行った結果、焼成粉体が容器の器壁面に溶着してしまい、容器から焼成粉体を排出できないという問題があることが判明した。
【0009】
同じく、ニッケル−コバルト共沈水酸化物,ニッケル−コバルト−マンガン共沈水酸化物やそれらの共沈オキシ水酸化物または共沈酸化物粉末とリチウム化合物と含フッ素化合物粉末とを混合焼成する際に、焼成容器としてムライト質焼成容器を用いた場合、その器壁面に活物質粉末が溶着して、容器から排出されなかったり、容器の一部が剥離して活物質粉末に混入する問題があった。
【0010】
なお、上記ムライト質焼成容器に代えて、特許文献1に提案されているMgAl2O4のスピネル容器を用いて上記の各種活物質粉末を焼成したが、焼成時の熱衝撃や機械的衝撃に弱く破損することがあり、また、副生酸化コバルト量が多くなったり、含フッ素化合物が器壁面に溶着するなどの問題がある。それに、MgAl2O4スピネル容器は高価である。
【0011】
【特許文献1】
特開2002−216758号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の課題は、リチウム含有複合酸化物や含フッ素リチウム複合酸化物粉末などを焼成するにあたって、不純物含量が少なく、また、含フッ素化合物が器壁面に溶着することなく、それらの正極活物質粉末を焼成し得る焼成容器を提供することと、同焼成容器での焼成によりリチウムイオン二次電池に好適な正極活物質粉末を得ることにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、所定の原料粉末を焼成してリチウム含有複合酸化物からなる正極活物質粉末を得る際に用いられる正極活物質粉末用の焼成容器において、容器基質の内面に、珪素含量が5%未満の緻密なセラミックス被覆層を備えていることを特徴としている。
【0014】
珪素含量が5%以上であると、珪素とフッ素化合物またはリチウム化合物とが反応しやすくなり、焼成粉体が器壁面に溶着するおそれが出てくるので好ましくない。珪素不含であることがもっとも好ましい。また、セラミックス被覆層が緻密でないと、リチウム源やフッ素化合物が被覆層に吸収されたり、その被覆層を透過して容器基質に吸収されたり、容器基質との化学反応などにより消費されて溶着しやすくなるので好ましくない。
【0015】
含フッ素化合物の容器基質との反応による溶着を抑制するため、上記セラミックス被覆層は、含フッ素化合物との化学反応性が低いスピネル,マクネシア,ジルコニアおよびアルミナの少なくとも1種からなることが好ましい。アルミナとしては、リチウムやフッ素との化学的反応性の乏しいαアルミナが最適である。
【0016】
また、上記セラミックス被覆層の気孔率は15%以下であることが好ましい。気孔率が15%を超えると、含フッ素化合物が器壁面に溶着したり、器壁面と化学反応を起こして消費されるので好ましくない。より好ましい気孔率は10%以下である。
【0017】
上記セラミックス被覆層の厚みは50〜500μmであることが好ましい。厚みが50μm未満であると、被覆層の耐久性が乏しくなったり、含フッ素化合物が被覆層を透過して容器基質に吸収されやすくなるので好ましくない。これに対して、厚みが500μmを超えると、被覆層と容器基質との間で界面剥離が生じやすくなるので好ましくない。
【0018】
上記セラミックス被覆層としてスピネルを採用する場合、スピネルの中でもAl2MgO4が緻密な被覆層を形成でき、かつ、含フッ素化合物との化学反応性が低いことから、原料粉末内の含フッ素化合物が焼成容器に溶着しないので特に好ましい。なお、Al2MgO4層の下層として、例えばプラズマ溶射にてムライト層やアルミナ層を設けることにより、Al2MgO4層と容器基質との密着性をより高めることができる。
【0019】
本発明による焼成容器の容器基質としては、耐熱性,耐熱衝撃性および耐機械的衝撃性の見地からして、多孔質のムライトもしくはコージェライトであることが好ましい。これに対して、純アルミナは耐熱衝撃性,耐機械的衝撃性がともに乏しく、また、高価であるため好ましいとは言えない。
【0020】
本発明には、珪素含量が5%未満の緻密なセラミックス被覆層を備えている上記焼成容器を用いて所定の原料粉末を焼成してなるリチウムイオン二次電池に好適な各種の正極活物質粉末(リチウム含有複合酸化物)が含まれる。
【0021】
リチウム含有複合酸化物に、フッ素を含有させるとリチウムイオン二次電池の安全性が向上することが知られているが、その焼成を上記焼成容器内で行うことにより、器壁面に含フッ素化合物を溶着させることなく、含フッ素コバルト酸リチウムからなる正極活物質粉末を得ることができる。
【0022】
したがって、本発明には、珪素含量が5%未満の緻密なセラミックス被覆層を備えている上記焼成容器内に、コバルト化合物粉末,炭酸リチウム粉末および含フッ素化合物粉末を混合して充填し、600〜1050℃の酸素含有雰囲気下で焼成してなる含フッ素コバルト酸リチウムからなる正極活物質粉末が含まれる。
【0023】
また、本発明には、珪素含量が5%未満の緻密なセラミックス被覆層を備えている上記焼成容器内に、水酸化コバルト粉末と炭酸リチウム粉末とを混合して充填し、600〜1050℃で酸素含有雰囲気下で焼成してなるコバルト酸リチウムからなる正極活物質粉末が含まれる。
【0024】
上記焼成容器は緻密なセラミックス被覆層を備えていることから、リチウム源が被覆層に吸収されたり、被覆層を透過して容器基質と化学反応を起こして消費されることがほとんどなくリチウム量不足にならないため、生成コバルト酸リチウム中の副生四三酸化コバルト量の増大が抑えられる。
【0025】
また、本発明には、珪素含量が5%未満の緻密なセラミックス被覆層を備えている上記焼成容器内に、ニッケル−コバルト共沈体原料粉末,リチウム化合物および含フッ素化合物を混合して充填し、600〜1050℃の酸素含有雰囲気下で焼成してなる含フッ素−ニッケル−コバルト酸リチウムからなる正極活物質粉末が含まれる。
【0026】
ニッケル−コバルト共沈体原料粉末としては、水酸化物,オキシ水酸化物,酸化物が例示される。ニッケルとコバルトの原子比を例示すると、0.8:0.2である。また、ニッケルとコバルトのモル数の10%程度をアルミニウムやマンガンで置換してもよい。リチウム化合物としては、水酸化リチウムが例示される。含フッ素化合物としては、フッ化リチウム粉末が例示される。リチウム含有ニッケルコバルト複合酸化物のフッ素含量は、リチウム含有複合酸化物中の酸素2原子に対してモル比で0.001〜0.07が例示される。
【0027】
また、本発明には、珪素含量が5%未満の緻密なセラミックス被覆層を備えている上記焼成容器内に、ニッケル−コバルト−マンガン共沈体原料粉末,リチウム化合物および含フッ素化合物を混合して充填し、600〜1050℃の酸素含有雰囲気下で焼成してなる含フッ素−ニッケル−コバルト−マンガン酸リチウムからなる正極活物質粉末が含まれる。
【0028】
ニッケル−コバルト−マンガン共沈体原料粉末としては、水酸化物,オキシ水酸化物,酸化物が例示される。ニッケルとコバルトとマンガンの原子比を例示すると1:1:1である。ニッケルとマンガンのモル数は等モルであることが好ましく、その際のコバルトのモル数はニッケルとコバルトとマンガンの合計モル数に対して、0.1〜0.4モルが好適である。
【0029】
また、ニッケルとコバルトとマンガンの合計モル数の10%程度をアルミニウムやジルコニウムで置換してもよい。リチウム化合物としては、炭酸リチウム粉末や水酸化リチウム粉末が例示される。含フッ素化合物としては、フッ化リチウム粉末が例示される。リチウム含有ニッケル−コバルト−マンガン複合酸化物のフッ素含量は、リチウム含有複合酸化物中の酸素2原子に対してモル比で0.001〜0.07が例示される。
【0030】
さらに、本発明には、上記した各種の正極活物質粉末からなる正極を備えているリチウムイオン二次電池も含まれる。
【0031】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0032】
本発明によるリチウムイオン二次電池用の正極活物質は、所定の原料粉末すなわち、
▲1▼コバルト化合物粉末,炭酸リチウム粉末および含フッ素化合物粉末を含む原料粉末、
▲2▼水酸化コバルト粉末と炭酸リチウム粉末とを含む原料粉末、
▲3▼ニッケル−コバルト共沈体原料粉末,リチウム化合物および含フッ素化合物を含む原料粉末、
▲4▼ニッケル−コバルト−マンガン共沈体原料粉末,リチウム化合物および含フッ素化合物を含む原料粉末、
のいずれかを選択して、容器基質の内面に珪素含量が5%未満の緻密なセラミックス被覆層を備えている焼成容器内で、600〜1050℃の酸素含有雰囲気下で焼成することにより得られる。
【0033】
上記正極活物質は、好ましくは球形をした粒子状であり、その平均粒径が好ましくは2〜15μm、特には3〜9μmであることが好ましい。平均粒径が2μmより小さい場合には、緻密な電極層を形成することが困難となり、逆に15μmを超えた場合には、平滑な電極層表面を形成するのが困難となるので好ましくない。
【0034】
本発明では、コバルト酸リチウムの酸素原子をフッ素原子で一部置換して電池の安全性を高めることを特徴とする。フッ素の含有量としては、酸素原子比で0.00001〜0.02(より好ましくは0.0005〜0.005)のフッ素が含有される。含フッ素化合物としては、フッ化リチウム,フッ化アンモニウム,フッ化アルミニウムなど等が例示される。
【0035】
本発明により製造される含フッ素コバルト酸リチウムには、必要に応じてコバルトを0.0001〜1モル%、他の金属元素で置換することにより電池特性を改良できるので好ましい。その置換元素としては、Zr,Mg,Ti,Al,Mn,Snなどが例示される。
【0036】
本発明では、コバルト源として、四三酸化コバルト,オキシ水酸化コバルトあるいは水酸化コバルトが使用される。なかでもプレス密度を高くできるので、コバルト原料として、一次粒子が多数凝集して二次粒子を形成するほぼ球状の水酸化コバルトあるいはオキシ水酸化コバルトを使用するのが好ましい。ここで、プレス密度とは、粉体を0.32t/cm2の圧力でプレスしたときの体積と粉体重量から求めた数値を意味する。
【0037】
また、本発明の粒子状正極活物質の比表面積は0.2〜1m2/gであるのが好ましい。比表面積が0.2m2/gより小さい場合には、初期単位重量当りの放電容量が低下し、逆に1m2/gを超える場合にも、初期単位体積当りの放電容量が低下し、本発明が目的とする優れた正極活物質は得られない。比表面積はなかでも、0.3〜0.7m2/gが好適である。
【0038】
酸素含有雰囲気としては、酸素濃度を好ましくは10容量%以上、特に40容量%以上含む含酸素雰囲気が好ましい。上記各原料の種類,混合組成および焼成条件を変えることにより、本発明が目的とする優れた正極活物質を得ることができる。その一例として、上記焼成にあたって予備焼成することができる。予備焼成は、酸化雰囲気にて好ましくは450〜550℃で、好ましくは4〜20時間で行うのが好適である。
【0039】
本発明の粒子状の正極活物質から、リチウムイオン二次電池用の正極を得る方法は、常法に従って実施できる。例えば、本発明の正極活物質の粉末に、アセチレンブラック,黒鉛,ケッチエンブラックなどのカーボン系導電材と結合材とを混合することにより正極合剤が得られる。結合材には、ポリフッ化ビニリデン,ポリテトラフルオロエチレン,ポリアミド,カルボキシメチルセルロース,アクリル樹脂などが用いられる。
【0040】
上記の正極合剤を、N−メチルピロリドンなどの分散媒に分散させたスラリーをアルミニウム箔などの正極集電体に塗工・乾燥およびプレス圧延せしめて正極活物質層を正極集電体上に形成する。
【0041】
本発明の正極活物質を正極に使用するリチウムイオン二次電池において、電解質溶液の溶媒としては炭酸エステルが好ましい。炭酸エステルは環状,鎖状いずれも使用できる。環状炭酸エステルとしては、プロピレンカーボネート,エチレンカーボネート(EC)等が例示される。鎖状炭酸エステルとしては、ジメチルカーボネート,ジエチルカーボネート(DEC),エチルメチルカーボネート,メチルプロピルカーボネート,メチルイソプロピルカーボネートなどが例示される。
【0042】
上記炭酸エステルは単独でも2種以上を混合して使用してもよい。また、他の溶媒と混合して使用してもよい。また、負極活物質の材料によっては、鎖状炭酸エステルと環状炭酸エステルを併用すると、放電特性,サイクル耐久性,充放電効率が改良できる場合がある。
【0043】
また、これらの有機溶媒にフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(例えばアトケム社製カイナー),フッ化ビニリデン−パーフルオロプロピルビニルエーテル共重合体を添加し、下記の溶質を加えることによりゲルポリマー電解質としても良い。
【0044】
電解質溶液の溶質としては、ClO4−,CF3SO3−,BF4−,PF6−,AsF6−,SbF6−,CF3CO2−,(CF3SO2)2N−などをアニオンとするリチウム塩のいずれか1種以上を使用することが好ましい。上記の電解質溶液またはポリマー電解質は、リチウム塩からなる電解質を上記溶媒または溶媒含有ポリマーに0.2〜2.0mol/Lの濃度で添加するのが好ましい。この範囲を逸脱すると、イオン伝導度が低下し、電解質の電気伝導度が低下する。より好ましくは0.5〜1.5mol/Lが選定される。セパレータには多孔質ポリエチレン、多孔質ポリプロピレンフィルムなどが使用される。
【0045】
本発明の正極活物質を正極に使用するリチウムイオン二次電池の負極活物質には、リチウムイオンを吸蔵,放出可能な材料が用いられる。負極活物質を形成する材料は特に限定されないが、例えばリチウム金属,リチウム合金,炭素材料,周期表14、15族の金属を主体とした酸化物,炭素化合物,炭化ケイ素化合物,酸化ケイ素化合物,硫化チタン,炭化ホウ素化合物などが挙げられる。
【0046】
炭素材料としては、様々な熱分解条件で有機物を熱分解したものや人造黒鉛,天然黒鉛,土壌黒鉛,膨張黒鉛,鱗片状黒鉛などを使用できる。また、酸化物としては、酸化スズを主体とする化合物が使用できる。負極集電体としては、銅箔,ニッケル箔などが用いられる。
【0047】
本発明における正極活物質を使用するリチウムイオン二次電池の形状には、特に制約はない。シート状(いわゆるフイルム状),折り畳み状,巻回型有底円筒形,ボタン形等が用途に応じて選択される。
【0048】
【実施例】
次に、本発明の具体的な実施例と、その比較例について説明する。
【0049】
《実施例1》
0.8μmの一次粒子が50〜200個凝集してなるほぼ球状の平均粒径13μmのオキシ水酸化コバルト粉末,炭酸リチウム粉末およびフッ化リチウムの所定量を乾式混合した後、30cm角,深さ8cmの焼成容器に充填し、大気中において950℃にて14時間焼成した。焼成容器の器壁面に対する焼成粉末の付着は認められなかった。LiCoO2からなる焼成粉末のフッ素含量は0.1重量%であった。
焼成容器として、基質がムライト質からなる成型体で、同成型体の内部表面にまず、ムライトを100μmの厚みにプラズマ溶射により被覆し、さらにAl2MgO4スピネルを100μmの厚みにプラズマ溶射により被覆した焼成容器を用いた。スピネル被覆層の気孔率は8%であった。
焼成後の粉末(正極活物質粉末)について、粉末の窒素吸着法により求めた比表面積は0.45m2/gであり、レーザー散乱式粒度分布系で求めた平均粒径D50は13.8μmであった。
このようにして得た含フッ素LiCoO2粉末とアセチレンブラックとポリテトラフルオロエチレン粉末とを、80/16/4の重量比で混合し、トルエンを添加しつつ混練,乾燥し、厚さ150μmの正極板を作製した。
そして、厚さ20μmのアルミニウム箔を正極集電体とし、セパレータには厚さ25μmの多孔質ポリプロピレンを用い、厚さ500μmの金属リチウム箔を負極に用い、負極集電体にニッケル箔20μmを使用し、電解液には1MLiPF6/EC+DEC(1:1)を用いてステンレス製簡易密閉セルをアルゴングローブボックス内で組立てた。
この2個の電池について、まず、25℃にて正極活物質1gにつき75mAの負荷電流で4.3Vまで充電し、正極活物質1gにつき75mAの負荷電流で2.75Vまで放電して初期放電容量を求めた。
そして、一方の電池については、さらに充放電サイクル試験を30回行なった。また、他方の電池については、4.3Vで10時間充電し、アルゴングローブボックス内で解体し、充電後の正極体シートを取り出し、その正極体シートを洗滌後、径3mmに打ち抜き、ECとともにアルミカプセルに密閉し、5℃/分の速度で昇温して走査型差動熱量計にて発熱開始温度を測定した。
その結果、発熱開始温度は173℃であった。25℃,2.75〜4.3V,放電レート0.5Cにおける初期放電容量は160.4mAh/gであった。50回充放電サイクル後の容量維持率は83.9%であった。
本発明による上記焼成容器を10回反復使用したが焼成粉体の溶着,焼成容器の割れ,クラックおよび被覆層剥離などの異常は認められなかった。
【0050】
《実施例2》
実施例1において、ムライトとスピネルの溶射の代わりにアルミナプラズマ溶射被覆層のみを設けたムライト焼成容器を用いた他は、実施例1と同様に、オキシ水酸化コバルトと炭酸リチウムとフッ化リチウムとを混合し、焼成容器に充填して焼成することにより、含フッ素コバルト酸リチウムを製造した。
焼成粉体の焼成容器への付着は認められなかった。コバルト酸リチウム中のフッ素含量は0.03重量%であった。アルミナ被覆層の厚みは100μm,気孔率は9%であった。焼成後の粉末の窒素吸着法により求めた比表面積は0.32m2/gであり、レーザー散乱式粒度分布計で求めた平均粒径D50は12.5μmであった。25℃,2.75〜4.3V,放電レート0.5Cにおける初期放電容量は160.0mAh/gであった。発熱開始温度は176℃であった。50回充放電サイクル後の容量維持率は82.0%であった。
同じ焼成容器を10回反復使用したところ、6回使用後、焼成容器のアルミナ層にごく一部剥離の兆候が認められたが、10回後において、容器の割れ,クラックは認められなかった。
【0051】
〈比較例1〉
アルミナ,ムライトあるいはスピネルが被覆されていないムライト質成型容器を使用した他は、実施例1と同様な方法で正極活物質を製造し、組成分析と物性測定ならびに電池性能試験を行った。ムライト成型容器の気孔率は25%であり、焼成の結果、焼成粉体が成型容器に溶着して排出できなかった。
【0052】
〈比較例2〉
比較例1のムライト成型容器の代わりに、純アルミナ質成型容器を使用したほかは実施例1と同様な方法で焼成試験を行った結果、アルミナ質成型容器は焼成時に破損した。
【0053】
《実施例3》
0.6μmの一次粒子が50〜200個凝集してなるほぼ球状の平均粒径13μmの水酸化コバルト粉末と、炭酸リチウム粉末とを所定量乾式混合した後、30cm角,深さ8cmの焼成容器に混合粉末を充填し、大気中において950℃にて14時間焼成した。
焼成容器には、実施例1と同じく、基質がムライト質からなる成型体で、同成型体の内部表面にまず、ムライトを100μmの厚みにプラズマ溶射により被覆し、さらにAl2MgO4スピネルを100μmの厚みにプラズマ溶射により被覆したものを用いた(スピネル被覆層の気孔率は8%)。
焼成後の粉末(正極活物質粉末)について、粉末の窒素吸着法により求めた比表面積は0.37m2/gであり、レーザー散乱式粒度分布系で求めた平均粒径D50は11.8μmであった。焼成後の粉末中の四三酸化コバルト含量をCu−Kα線を用いた粉末X線回折法により定量した結果、四三酸化コバルト含量は0.2重量%以下であった。
このようにして得たLiCoO2粉末とアセチレンブラックとポリテトラフルオロエチレン粉末とを80/16/4の重量比で混合し、トルエンを添加しつつ混練し、乾燥させて厚さ150μmの正極板を作製した。
そして、厚さ20μmのアルミニウム箔を正極集電体とし、セパレータには厚さ25μmの多孔質ポリプロピレンを用い、厚さ500μmの金属リチウム箔を負極に用い、負極集電体にニッケル箔20μmを使用し、電解液には1MLiPF6/EC+DEC(1:1)を用いてステンレス製簡易密閉セルをアルゴングローブボックス内で組立てた。
この電池について、まず25℃にて正極活物質1gにつき75mAの負荷電流で4.3Vまで充電し、正極活物質1gにつき75mAの負荷電流で2.75Vまで放電して初期放電容量を求めた。さらに、充放電サイクル試験を50回行った。25℃,2.75〜4.3V,放電レート0.5Cにおける初期放電容量は160.4mAh/gであった。50回充放電サイクル後の容量維持率は86.9%であった。
本発明による上記焼成容器を10回反復使用したが焼成容器の割れ,クラックおよび被覆層剥離などの異常は認められず、また、コバルト酸リチウム中の四三酸化コバルト含量は0.2重量%以下であった。
【0054】
《実施例4》
実施例3において、スピネルの溶射を行わず、アルミナ溶射被覆層のみを設けたムライト焼成容器を用いた他は、実施例3と同様に、水酸化コバルトと炭酸リチウムを混合し、焼成容器に充填して焼成することにより、コバルト酸リチウムを製造した。コバルト酸リチウム中の四三酸化コバルト含量は0.2重量%以下であった。アルミナ被覆層の厚みは100μm,気孔率は9%であった。
焼成後の粉末の窒素吸着法により求めた比表面積は0.32m2/gであり、レーザー散乱式粒度分布計で求めた平均粒径D50は12.5μmであった。25℃,2.75〜4.3V,放電レート0.5Cにおける初期放電容量は160.0mAh/gであった。50回充放電サイクル後の容量維持率は92.0%であった。
同じ焼成容器を10回反復使用したところ、いずれもコバルト酸リチウム中の四三酸化コバルト含量は0.2重量%以下であった。10回使用後、焼成容器のアルミナ層に一部剥離の兆候が認められたが、容器の割れやクラックは認められなかった。
【0055】
〈比較例3〉
アルミナあるいはスピネルが被覆されていないムライト質成型容器を使用した他は、実施例3と同様な方法でLiCoO2からなる正極活物質を製造し、組成分析と物性測定ならびに電池性能試験を行った。ムライト質成型容器の気孔率は25%であった。焼成の結果、生成コバルト酸リチウム中の四三酸化コバルト含量は8.6%であった。
また、焼成後の粉末の窒素吸着法により求めた比表面積は0.46m2/gであり、レーザー散乱式粒度分布計で求めた平均粒径D50は13.3μmであった。25℃,2.75〜4.3V,放電レート0.5Cにおける初期放電容量は140.5mAh/gであった。50回充放電サイクル後の容量維持率は79.4%であった。
【0056】
〈比較例4〉
ムライト質成型容器の代わりに、純アルミナ質成型容器を使用したほかは実施例4と同様な方法で焼成試験を行った結果、アルミナ容器は焼成時に破損した。
【0057】
《実施例5》
硫酸ニッケルと硫酸コバルトと硫酸マンガンの混合水溶液に、アンモニアおよび苛性ソーダ水溶液を添加して共沈水酸化物を合成し、ろ過,乾燥後、500℃で焼成し、ニッケル−コバルト−マンガン共沈酸化物を合成した。
これに炭酸リチウム粉末とフッ化リチウム粉末とを添加,混合し、実施例1で用いたと同じ焼成容器(すなわち、基質がムライト質からなる成型体を用い、同成型体の内部表面にまず、ムライトを100μmの厚みにプラズマ溶射により被覆し、さらにAl2MgO4スピネルを100μmの厚みにプラズマ溶射により被覆した焼成容器で、スピネル被覆層の気孔率が8%のもの。)を使用して、900℃,15時間,40%酸素含有雰囲気中で焼成後、解砕した。焼成容器に対する焼成粉の付着などの異常は認められなかった。
焼成粉を分析した結果、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O1.97F0.03であった。平均粒径は10.2μm,比表面積は0.8m2/gであった。実施例1と同様にして電池性能を評価した結果、放電容量は163mAh/g,50サイクル後の容量維持率は96%,発熱開始温度は255℃であった。
【0058】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、容器基質の内面に珪素含量が5%未満の緻密なセラミックス被覆層を備えている焼成容器を用いて、リチウム含有複合酸化物からなる正極活物質粉末の原料粉末を焼成することにより、不純物含量が少ない正極活物質粉末が得られる。また、フッ素化合物を含む正極活物質粉末にあっては、焼成時にその含フッ素化合物が焼成容器に溶着することがないため、焼成容器から容易に取り出すことができる。

Claims (11)

  1. 所定の原料粉末を焼成してリチウム含有複合酸化物からなる正極活物質粉末を得る際に用いられる正極活物質粉末用の焼成容器において、
    容器基質の内面に、珪素含量が5%未満の緻密なセラミックス被覆層を備えていることを特徴とする正極活物質粉末用の焼成容器。
  2. 上記セラミックス被覆層がスピネルおよびアルミナの少なくとも1種からなる請求項1に記載の正極活物質粉末用の焼成容器。
  3. 上記セラミックス被覆層の気孔率が15%以下である請求項1または2に記載の正極活物質粉末用の焼成容器。
  4. 上記セラミックス被覆層の厚みが50〜500μmである請求項1,2または3に記載の正極活物質粉末用の焼成容器。
  5. 上記セラミックス被覆層を構成するスピネルがAl2MgO4である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の正極活物質粉末用の焼成容器。
  6. 上記容器基質がムライトもしくはコージェライトである請求項1ないし5のいずれか1項に記載の正極活物質粉末用の焼成容器。
  7. 請求項1ないし6のいずれか1項に記載の焼成容器内に、コバルト化合物粉末,炭酸リチウム粉末および含フッ素化合物粉末を混合して充填し、600〜1050℃の酸素含有雰囲気下で焼成してなることを特徴とする含フッ素コバルト酸リチウムからなる正極活物質粉末。
  8. 請求項1ないし6のいずれか1項に記載の焼成容器内に、水酸化コバルト粉末と炭酸リチウム粉末とを混合して充填し、600〜1050℃の酸素含有雰囲気下で焼成してなることを特徴とするコバルト酸リチウムからなる正極活物質粉末。
  9. 請求項1ないし6のいずれか1項に記載の焼成容器内に、ニッケル−コバルト共沈体原料粉末,リチウム化合物および含フッ素化合物を混合して充填し、600〜1050℃の酸素含有雰囲気下で焼成してなることを特徴とする含フッ素−ニッケル−コバルト酸リチウムからなる正極活物質粉末。
  10. 請求項1ないし6のいずれか1項に記載の焼成容器内に、ニッケル−コバルト−マンガン共沈体原料粉末,リチウム化合物および含フッ素化合物を混合して充填し、600〜1050℃の酸素含有雰囲気下で焼成してなることを特徴とする含フッ素−ニッケル−コバルト−マンガン酸リチウムからなる正極活物質粉末。
  11. 請求項7ないし10のいずれか1項に記載の正極活物質粉末からなる正極を備えていることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
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