JP2004281676A - 放熱板及び放熱板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】製造段階における放熱板の形状のばらつきを抑制してある一定範囲内とし、塑性変形加工を行う修正工程において、一定の動作により加工を行うことができ、且つ、変形後の形状を安定させることのできる変形量を確実に確保することが可能となる、放熱板の製造方法を提案する。
【解決手段】放熱板10として、基板層22の両側に被板層がクラッドされたクラッド板を採用し、絶縁基板接合面側の被板層の層厚を他側より小さくした。この放熱板10の製造工程を、芯材となる金属板の上下面に、同一材料から成り互いに厚みの異なる金属板を積層し、熱間圧着を行ってクラッド板20を形成する圧延工程(S10)と、クラッド板20を常温まで冷却したのち圧延及び切断して所望の形状に成型する成形工程(S11)と、絶縁基板接合面側と他側に凸に反った形状となるように常温での塑性変形加工を行う修正工程(S12)とで構成した。
【選択図】 図1
【解決手段】放熱板10として、基板層22の両側に被板層がクラッドされたクラッド板を採用し、絶縁基板接合面側の被板層の層厚を他側より小さくした。この放熱板10の製造工程を、芯材となる金属板の上下面に、同一材料から成り互いに厚みの異なる金属板を積層し、熱間圧着を行ってクラッド板20を形成する圧延工程(S10)と、クラッド板20を常温まで冷却したのち圧延及び切断して所望の形状に成型する成形工程(S11)と、絶縁基板接合面側と他側に凸に反った形状となるように常温での塑性変形加工を行う修正工程(S12)とで構成した。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体装置用の放熱板及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、動作時に発熱する電子部品が実装される絶縁基板を搭載したパワーモジュール等の半導体装置では、当該電子部品を使用温度内に維持するための放熱対策が講じられている。例えば、半導体素子を実装した絶縁基板の裏面側に熱伝導率の高い大型金属を放熱板として接着し、絶縁基板上で発生した熱を拡散し放熱する構造が採用されている。
このような構造において、半導体素子が実装された複数の絶縁基板は、放熱板の一側面の適宜位置にはんだ付け等で固定され、この放熱板の一側面は筐体にて覆われ、さらに、該放熱板の他側面は冷却体に接して固定される。
従って、半導体素子の放熱板への確実な接着や、放熱板の冷却体への有効な接触面積の確保のために、完成状態において放熱板は平面状であることが望ましい。
しかし、半導体素子を実装した絶縁基板を放熱板の一側面にはんだ接合する場合、放熱板ははんだが溶融する温度まで加熱されることとなり、加熱温度に応じて熱膨張する。はんだ接合後に放熱板を冷却すると、熱膨張した放熱板の絶縁基板接合側面ははんだが凝固した後は収縮が制限されるが、反対側面は自由に収縮可能である。そして、はんだの凝固温度は常温より遙かに高いため、常温に戻った放熱板の絶縁基板接合側面とその反対側面との収縮量が大きく異なることとなり、図8に示す如く、放熱板10’は絶縁基板11の接着された側に凸となるように湾曲してしまう。
このために、放熱板の冷却体への接触面積を有効に確保することが困難となり、冷却効率を低下させてしまうという不具合が生じる。
【0003】
一方、放熱板の特性として、高い熱伝導率(放熱性)とともに、低い線膨張係数を備えることが要求される。
そのうち、線膨張係数は、半導体素子を実装した絶縁基板との接合の信頼性を向上させるために、放熱板の線膨張係数よりも小さな絶縁基板の線膨張係数に、できるだけ近づけることが望ましい。そこで、熱伝導率性に優れた銅(Cu;線膨脹係数16.5×10−6m/K)に、線膨張係数を抑える目的で線膨張係数の低いモリブデン(Mo;線膨張係数5.1×10−6m/K)を複合した、銅−モリブデン複合材(Cu−Mo複合材)を利用した材料が、放熱板材料として提案されている。例えば、特許文献1に記載の技術である。
【0004】
特許文献1に記載の技術では、モリブデン圧粉体の粉末間の空隙に溶融した銅を含有浸透したモリブデンと銅との複合体を圧延した、Cu−Mo複合材及びその製造方法が提案されている。また、この技術では、Cu−Mo複合材の両面にさらに銅板を圧着したCu/Cu−Mo複合材/Cuクラッド板から成る、銅クラッド型半導体搭載用放熱基板材料が提案されており、高価な金属材料の一つであるMoの性能と採用コストとのバランスを考慮して、Moの含有量を抑制しつつ、線膨張係数を低い数値に維持するようにしている。
【0005】
ところで、特許文献2に記載の技術では、本発明者により、半導体素子を実装する絶縁基板として、放熱板との接合面側に生じる熱応力が、他面側に生じる熱応力よりも大きくなる材料を採用した三層のクラッド板を採用し、放熱板とのはんだ付けによる接着の際に、絶縁基板の放熱板との接合面側が凸となるように反ることを利用して、絶縁基板の放熱板との接合層に存在する気泡の除去を図る構造が提案されている。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−358266号公報
【特許文献2】
特開平10−270612号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前述の、Cu/Mo/Cuクラッド板又はCu/Cu−Mo複合材/Cuクラッド板から成る、銅クラッド型の放熱板を製造しようとする際に、両面にクラッドされたCu層の厚みが均一となるように製造しても、完全に均一にすることは難しく、個々の製品につきばらつきが生じ易い。Cu層の厚みの差により、製造段階の放熱板がいずれか一面側に湾曲し、その反り量(平面度)にばらつきが生じることとなる。そこで、いずれか一面側に湾曲した状態の製造段階の放熱板を、塑性変形させることにより、略平板状となるように修正が加えられる。
しかし、塑性変形加工時の変形量が少ない場合には、熱履歴により応力解放等が生じ、形状が元の状態に戻ってしまうことがある。これに加え、製造段階の放熱板がいずれの一面側に湾曲しているかは、ばらつきがある。これらに起因して、安定した湾曲した状態の放熱板の塑性変形加工による修正工程を構築することが困難となっている。
【0008】
また、銅クラッド型の放熱板の両面にクラッドされたCu層に発生する熱応力に起因する放熱板の形状変化量には限度があるため、放熱板の低温時における反り量が大きいと、熱応力に起因する放熱板の形状変化量によって、高温時に冷却部との密着性を確保することができる程度まで変形させることが困難となり、冷却部との密着性を確保できなくなって冷却効率の低下を招くのである。
【0009】
これらの理由により、絶縁基板接合状態或いは単体での放熱板の反り量(形状)をある一定範囲内とすることが必要となる。
そこで、本発明では、銅クラッド型の放熱板の両面にクラッドされたCu層に起因して発生する熱応力を利用することにより、製造段階での放熱板の形状のばらつきを抑制してある一定範囲内とし、湾曲した状態の放熱板に対して確実で安定した修正工程を施すことの可能な放熱板の製造方法を提案する。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0011】
即ち、請求項1においては、素子を実装した絶縁基板が一側面に接合され、他側面が冷却体に接触固定される放熱板であって、放熱板を、芯材となる基板層の両面が金属層でクラッドされた少なくとも三層から成るクラッド板で構成し、絶縁基板接合面側にクラッドされた金属層と基板層との間で発生する熱応力より、他面側にクラッドされた金属層と基板層との間で発生する熱応力が大きくなるようにしたものである。
【0012】
請求項2においては、前記基板層の一側面にクラッドされた金属層と、他側面にクラッドされた金属層との、厚みを異ならせたものである。
【0013】
請求項3においては、前記基板層の一側面にクラッドされた金属層と、他側面にクラッドされた金属層との、線膨張係数を異ならせたものである。
【0014】
請求項4においては、素子を実装した絶縁基板が一側面に接合され、他側面が冷却体に接触固定される放熱板の製造方法であって、芯材となる金属板の上下面に、同一材料から成り互いに厚みの異なる金属板をそれぞれ積層して、熱間圧着を行う圧延工程と、常温まで冷却したのち、所望の形状に成形する成形工程と、常温において塑性変形加工で反り量を修正する修正工程とで構成されるものである。
【0015】
請求項5においては、素子を実装した絶縁基板が一側面に接合され、他側面が冷却体に接触固定される放熱板の製造方法であって、芯材となる金属板の上下面に、互いに膨張係数の異なる材料から成る金属板をそれぞれ積層して、熱間圧着を行う圧延工程と、常温まで冷却したのち、所望の形状に成形する成形工程と、常温において塑性変形加工で反り量を修正する修正工程とで構成されるものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明に係る放熱板製造工程を示す流れ図、図2は重ね合わせた放熱板構成材料の状態を示す側断面図、図3は圧延してクラッド板を形成する様子を示す側面図、図4は冷却後のクラッド板を示す側面図、図5は塑性変形加工後の放熱板を示す側面図である。
図6は(a)放熱板に絶縁基板を接合する様子を示す側面図、(b)常温における絶縁基板を接合した放熱板を示す側断面図、(c)高温における絶縁基板を接合した放熱板を示す側面図である。
図7は(a)常温における冷却体に固定した放熱板を示す側面図、(b)素子発熱時における冷却体に固定した放熱板を示す側面図である。
図8は(a)放熱板に半導体素子を実装した絶縁基板をはんだ接合する様子を示す側面図、(b)半導体素子を実装した絶縁基板をはんだ層を介して接合した放熱板を示す側面図である。
【0017】
まず、本発明に係る放熱板10について説明する。
図5に示す如く、放熱板10は、少なくとも三層から成るクラッド板であって、比較的線膨張係数が小さい材料から成り芯材となる基板層22の両面が、それぞれ比較的熱伝導率の高い材料から成る被板層21・23でクラッドされたものである。この放熱板10の構造により、基板層22と被板層21との間で発生する熱応力と、基板層22と被板層23との間で発生する熱応力とが、互いに異なることを特徴としている。
【0018】
放熱板10の一側面(以降「上面」と示す)には、半導体素子18が実装された絶縁基板11がはんだ接合され、該放熱板10の他側面(以降「下面」と示す)は、放熱板10が冷却体16にボルト等の締結部材により固定されたときに、グリス層を介して冷却体16に接する。
そして、同様の状態で昇温・加熱又は冷却したときに、放熱板10の上面側にクラッドされた被板層21(以降「上被板層21」と示す)と基板層22との間で発生する熱応力より、放熱板10の下面側にクラッドされた被板層23(以降「下被板層23」と示す)と基板層22との間で発生する熱応力が、相対的に大きくなるように設定して、膨張時には放熱板10に下面側に凸に曲げようとする力を作用させ、収縮時には放熱板10に上面側に凸に曲げようとする力を作用させるようにしている。
【0019】
なお、本実施例では、基板層22と上被板層21との間で発生する熱応力と、基板層22と下被板層23との間で発生する熱応力とを互いに違えるようにするために、被板層21・23としていずれも同じ材料が採用され、下被板層23の層厚が大きくなるように形成されている。
これにより、上被板層21と基板層22との間で発生する熱応力に対して、下被板層23と基板層22との間で発生する熱応力が大きくなり、膨脹時の放熱板10に下面側に凸となるような曲げ荷重を、また、収縮時の放熱板10に上面側に凸となるような曲げ荷重を、作用させるようにしている。
この場合、被板層21・23の層厚は、発生する熱応力の差により必ず放熱板10(クラッド板20)が一側に湾曲するように、決定する必要がある。
【0020】
但し、放熱板10の形態は本実施例に限定されるものではなく、放熱板10に熱応力を発生させるために、上被板層21と下被板層23とで線膨張係数の異なる材料を採用し、上被板層21に対して下被板層23の方が線膨張係数が大きいものを選定することができる。このように、材質ごとの線膨張係数の違いによって上被板層21と基板層22の間で発生する熱応力と、下被板層23と基板層22の間で発生する熱応力とを違えることができる。
この場合、被板層21・23の材料は、発生する熱応力の差により必ず放熱板10(クラッド板20)が一側に湾曲するように、選定する必要がある。
【0021】
次に、前述の放熱板10の製造方法について、図1の流れ図を用いて説明する。
製造工程は、大概して、圧延工程(S10)と、成形工程(S11)と、修正工程(S12)とで構成される。
【0022】
まず、圧延工程(S10)より説明する。
図2に示す如く、放熱板10の芯材となり、比較的低い熱膨張係数の材料から成る基板層22を構成するための金属板22’と、該基板層22の上面側にクラッドされる上被板層21を構成するための金属板21’と、該基板層22の下面側にクラッドされる下被板層23を構成するための金属板23’とを、積層し、リベット24等を貫設することにより固定する(S10a)。
このようにして固定された状態の三枚の金属板21’・22’・23’を、圧着温度まで昇温された水素雰囲気の電気炉で保持して、各金属板21’・22’・23’が圧着温度となるまで加熱する(S10b)。
そして、図3に示す如く、加熱された三板の金属板21’・22’・23’を圧延機に通して熱間圧着し(S10c)、金属板21’と金属板22’とを圧着接合するとともに、金属板23’と金属板22’とを圧着接合し、三層のクラッド板20を形成する。
【0023】
次に、成形工程(S11)について説明する。
上述の如く形成されたクラッド板20を、自然冷却する(S11a)。このとき、クラッド板20の上下面側にクラッドされた被板層21・23よりも、基板層22の線膨張係数は小さく、上被板層21と基板層22との間と、下被板層23と基板層22との間に、それぞれ熱応力が発生する。しかし、被板層21・23の層厚がそれぞれ異なるため、基板層22の上面と下面とで作用する熱応力に差が生じており、これにより、放熱板10に上面側に凸に曲げようとする力が作用する。従って、常温まで冷却されたクラッド板20は、図4に示す如く、上被板層21側に凸となるように湾曲し、円筒曲面を形成している。
【0024】
このときのクラッド板20の反り量をD0とし、反り量D0の値はクラッド板20が上面側(絶縁基板11接合面側)に凸であるときを正とし、クラッド板20が下面側(冷却体16に面する側)に凸であるときを負とする。
本実施例のクラッド板20は、上被板層21と下被板層23の層厚が異なるため、必ず、一側に湾曲し、しかも、下被板層23の方が層厚が大きいため、クラッド板20は必ず、上面側に凸に反った形状となる。すなわち、クラッド板20の反り方向(湾曲方向)のばらつきをなくすことができる。
【0025】
さらに、膨脹時又は収縮時に、クラッド板20と上被板層21の間で発生する熱応力と、クラッド板20と下被板層23の間で発生する熱応力との差は、被板層21・23の層厚によりある程度制御することが可能である。従って、膨脹時又は収縮時に、クラッド板20に作用する曲げ荷重をある程度制御することが可能となり、クラッド板20の反り量D0をある一定範囲内に制御することが可能となる。
反り量D0は、後述する常温での塑性変形加工時に、熱履歴により元の状態に戻ることがなく、且つ、変形後の形態を安定して維持させることのできる変形量(「保証変形量」とする)を加えることができる範囲内となるように制御する。
すなわち、反り量D0を、正の値であって、ある一定範囲内(αmax≧D0≧αmin>0)となるように制御することが好ましい。なお、αmax及びαminの値は、基板層22及び被板層21・23の材料や厚み等により、異なるため、採用する材料に応じて設定する。
【0026】
続いて、クラッド板20の表面の酸化物等を除去するために表面処理を行ったあと、繰り返し圧延し(S11b)、所定の厚みのクラッド板20とする。そして、クラッド板20を切断して(S11c)、所定の放熱板10の大きさとなるように成形する。
【0027】
次に、修正工程(S12)について説明する。
修正工程(S12)では、成形工程(S11)にて放熱板10の大きさに成形されたクラッド板20に常温で塑性変形加工を施し、クラッド板20の反り量(平面度)を修正し、放熱板10とする(S12a)。
塑性変形加工では、上面側に凸であるクラッド板20を、略平面状若しくは下面側に凸となるように変形する。従って、製造された放熱板10は、図5に示す如く、略平面もしくは下面側に凸に反った状態となる。
このときの放熱板の反り量をDとし、上面側(絶縁基板11接合側)に凸である時を正、下面側に凸である時を負とする。すなわち、反り量D0のクラッド板20は、塑性変形加工を経て反り量Dの放熱板10とされ、このときの反り量Dはゼロ若しくは負の値となるように形成されている。
【0028】
この塑性変形加工において、クラッド板20の反り方向が一定であるため、加える変形方向は統一されている。すなわち、クラッド板20の反り量D0は必ず正の値となるようにされており、このクラッド板20を上面側から押圧する荷重を加えることにより、反り量Dがゼロ若しくは負の値である放熱板10とするのである。
また、放熱板10の反り量Dは、素子の発熱時に熱応力に起因して放熱板が形状変化したときに、冷却体との密着性を確保することができる程度の形状となるように、値が定められており、従って、この塑性変形加工における、反り量D0から反り量Dとする形状変化量は略一定となる。
さらに、前述の如く、クラッド板20の反り量D0は、保証変形量を与えることのできる範囲内の値とされているため、塑性変形加工により変形された後のクラッド板20(すなわち放熱板10)の形状は安定したものとなる。
【0029】
このように、塑性変形加工を、製品を通して略一定の加工とすることが可能であり、しかも、変形後の形状を安定させることのできる変形量を確実に確保することが可能であるので、確実な修正工程(S12)を構築することができ、この修正工程(S12)を経ることにより、常温において安定して略平面状若しくは下面側に凸に反った状態の放熱板10を形成することができる。
【0030】
上述の製造工程により製造された放熱板10の上面には、半導体素子18が実装された絶縁基板11が接合される。
図6(a)に示す如く、半導体素子18を実装した絶縁基板11をはんだ箔12’を介して放熱板10の上面に載置する。そして、公知のはんだ付け接合工程にて、放熱板10と絶縁基板11とがはんだ接合される。
【0031】
上述の放熱板10と絶縁基板11との接合工程において、絶縁基板11と放熱板10とが加熱されている間は、放熱板10は膨張する。
このとき、放熱基板11接合前はその反り量Dがゼロ若しくは負の値であった放熱板10は、下方へ凸となる方向に湾曲させようとする力が作用することによって、図6(b)に示す如く、下面側に凸に反った状態であり、反り量Dは負の値となる。
【0032】
そして、放熱板10と絶縁基板11との接合工程が終了すれば、放熱板10は常温まで冷却される。
この放熱板10の冷却過程において、熱膨張した放熱板10の上面のはんだ接合部は、はんだ12が凝固した後は収縮が制限されるが、下面は自由に収縮可能である。そして、はんだ12の凝固温度は常温より遙かに高いため、常温に戻った放熱板10の上面と下面との収縮量が大きく異なることとなり、放熱板10は絶縁基板11の接着された側に凸となるように湾曲する。従って、図6(c)に示す如く、基板11が接合された常温の放熱板10は、上面側に凸に反った状態であり、反り量Dは正の値となる。
【0033】
なお、放熱板10として、絶縁基板11接合前に常温で下面側に凸であるもの(反り量Dが負の値であるもの)を採用とすると、平面状であるもの(反り量Dがゼロであるもの)と比較して、絶縁基板11が接合された常温の放熱板10が上面側に凸となる反り量を抑制させることができる。
【0034】
上述の如く基板11が接合された常温の放熱板10を、図7(a)に示す如く、冷却体16に対してボルト等の締結部材で固定する。放熱板10と冷却体16との間には放熱グリス15が介装される。このときの放熱板10は、上面側に凸に反った状態で反り量Dは正の値であり、放熱板10の下面は冷却体16と面している。
そして、半導体素子18が動作して発熱し、高温となっているときには、熱応力により放熱板10を下面側に凸となるように湾曲させようとする力が発生し、図7(b)に示す如く、放熱板10はやや下方に凸に反った状態となり、反り量Dは負の値となる。
【0035】
このように、半導体素子18が動作して発熱したときには、放熱板10は冷却体16側へ凸に反った状態となり、冷却体16と放熱板10との間隙が狭くなっている。従って、この部分の放熱グリス15の層は薄く、熱抵抗が小さくなっている。また、放熱板10を冷却体16に押しつけるようにするだけで、放熱板10と冷却体16の間の放熱グリス15の層を薄くすることができ、さらに、放熱グリス15内の空気を容易に押し出すことができるので、放熱グリス15内の気泡の残存が防止され、放熱グリス15や気泡による熱抵抗の増加を防止することができる。以上より、冷却体16による半導体素子18の冷却性能の向上が期待される。
【0036】
次に、本発明の放熱板の製造方法を適応するために好適な材料の例を示す。
【0037】
放熱板10を構成するクラッド板20として、モリブデン(Mo)又は銅−モリブデン複合材(Cu−Mo複合材)の両面を銅(Cu)でクラッドした、Cu/Mo/Cuクラッド板又はCu/Cu−Mo複合体/Cuクラッド板を採用する。この場合、クラッド板20の基板層22となる金属板22’はMo又はCu−Mo複合材であり、被板層21・23となる金属板21’・23’はCuである。
なお、クラッド板20をCu/Cu−Mo複合体/Cuクラッド板とするときには、前記圧延工程(S10)における圧着温度は約800℃であり、また、クラッド板20をCu/Mo/Cuクラッド板とするときには、前記圧延工程(S10)における圧着温度は850℃以上とする
【0038】
Cuは熱伝導率が高く、放熱板の材料として適している。また、Mo又はCu−Mo複合材は、Moの存在によってCuよりも小さな線膨張係数を有し、これに加え、Cu−Mo複合材ではCuとの複合材とすることでMo単体よりも高い熱伝導率を有している。
これらの理由により、クラッド板20としてCu/Mo/Cuクラッド板又はCu/Cu−Mo複合体/Cuクラッド板を採用することにより、良好な放熱板10を形成することができる。
【0039】
なお、Cu−Mo複合材は、平均粒径2〜5×10−6mのモリブデン粉末を100〜200MPaの圧力で加圧整形してモリブデン圧粉体とし、このモリブデン圧粉体の粉末間に、溶融した銅を非酸化性雰囲気において、1200℃〜1300℃で含浸することによって得られる。さらに、Cu−Mo複合体を、一次圧延して板状とし、放熱板10の製造に供する芯金属板22’とする。Cu−Mo複合材の組成は、Moの割合が70〜60重量%であり、残りがCuとされている。
【0040】
【発明の効果】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示すような効果を奏する。
【0041】
即ち、請求項1に示す如く、素子を実装した絶縁基板が一側面に接合され、他側面が冷却体に接触固定される放熱板であって、放熱板を、芯材となる基板層の両面が金属層でクラッドされた少なくとも三層から成るクラッド板で構成し、絶縁基板接合面側にクラッドされた金属層と基板層との間で発生する熱応力より、他面側にクラッドされた金属層と基板層との間で発生する熱応力が大きくなるようにしたので、放熱板の膨脹時又は収縮時に放熱板に作用する曲げ荷重の方向を制御することが可能となる。
【0042】
請求項2に示す如く、前記基板層の一側面にクラッドされた金属層と、他側面にクラッドされた金属層との、厚みを異ならせたので、放熱板の膨脹時又は収縮時に放熱板に作用する曲げ荷重の方向を制御することが可能となる。
【0043】
請求項3に示す如く、前記基板層の一側面にクラッドされた金属層と、他側面にクラッドされた金属層との、線膨張係数を異ならせたので、放熱板の膨脹時又は収縮時に放熱板に作用する曲げ荷重の方向を制御することが可能となる。
【0044】
請求項4に示す如く、素子を実装した絶縁基板が一側面に接合され、他側面が冷却体に接触固定される放熱板の製造方法であって、芯材となる金属板の上下面に、同一材料から成り互いに厚みの異なる金属板をそれぞれ積層して、熱間圧着を行う圧延工程と、常温まで冷却したのち、所望の形状に成形する成形工程と、常温において塑性変形加工で反り量を修正する修正工程とで構成されるので、成形工程前の放熱板は必ず一方向に反った状態となり、確実で安定した塑性変形加工を施すことができる。
【0045】
請求項5に示す如く、素子を実装した絶縁基板が一側面に接合され、他側面が冷却体に接触固定される放熱板の製造方法であって、芯材となる金属板の上下面に、互いに膨張係数の異なる材料から成る金属板をそれぞれ積層して、熱間圧着を行う圧延工程と、常温まで冷却したのち、所望の形状に成形する成形工程と、常温において塑性変形加工で反り量を修正する修正工程とで構成されるので、成形工程前の放熱板は必ず一方向に反った状態となり、確実で安定した塑性変形加工を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る放熱板製造工程を示す流れ図。
【図2】重ね合わせた放熱板構成材料の状態を示す側断面図。
【図3】圧延してクラッド板を形成する様子を示す側面図。
【図4】冷却後のクラッド板を示す側面図。
【図5】塑性変形加工後の放熱板を示す側面図。
【図6】(a)放熱板に絶縁基板を接合する様子を示す側面図、(b)常温における絶縁基板を接合した放熱板を示す側断面図、(c)高温における絶縁基板を接合した放熱板を示す側面図。
【図7】(a)常温における冷却体に固定した放熱板を示す側面図、(b)素子発熱時における冷却体に固定した放熱板を示す側面図。
【図8】(a)放熱板に半導体素子を実装した絶縁基板をはんだ接合する様子を示す側面図、(b)半導体素子を実装した絶縁基板をはんだ層を介して接合した放熱板を示す側面図。
【符号の説明】
S10 圧延工程
S11 成形工程
S12 修正工程
10 放熱板
11 絶縁基板
20 クラッド板
21 被板層
21’金属板
22 基板層
22’金属板
23 被板層
23’金属板
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体装置用の放熱板及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、動作時に発熱する電子部品が実装される絶縁基板を搭載したパワーモジュール等の半導体装置では、当該電子部品を使用温度内に維持するための放熱対策が講じられている。例えば、半導体素子を実装した絶縁基板の裏面側に熱伝導率の高い大型金属を放熱板として接着し、絶縁基板上で発生した熱を拡散し放熱する構造が採用されている。
このような構造において、半導体素子が実装された複数の絶縁基板は、放熱板の一側面の適宜位置にはんだ付け等で固定され、この放熱板の一側面は筐体にて覆われ、さらに、該放熱板の他側面は冷却体に接して固定される。
従って、半導体素子の放熱板への確実な接着や、放熱板の冷却体への有効な接触面積の確保のために、完成状態において放熱板は平面状であることが望ましい。
しかし、半導体素子を実装した絶縁基板を放熱板の一側面にはんだ接合する場合、放熱板ははんだが溶融する温度まで加熱されることとなり、加熱温度に応じて熱膨張する。はんだ接合後に放熱板を冷却すると、熱膨張した放熱板の絶縁基板接合側面ははんだが凝固した後は収縮が制限されるが、反対側面は自由に収縮可能である。そして、はんだの凝固温度は常温より遙かに高いため、常温に戻った放熱板の絶縁基板接合側面とその反対側面との収縮量が大きく異なることとなり、図8に示す如く、放熱板10’は絶縁基板11の接着された側に凸となるように湾曲してしまう。
このために、放熱板の冷却体への接触面積を有効に確保することが困難となり、冷却効率を低下させてしまうという不具合が生じる。
【0003】
一方、放熱板の特性として、高い熱伝導率(放熱性)とともに、低い線膨張係数を備えることが要求される。
そのうち、線膨張係数は、半導体素子を実装した絶縁基板との接合の信頼性を向上させるために、放熱板の線膨張係数よりも小さな絶縁基板の線膨張係数に、できるだけ近づけることが望ましい。そこで、熱伝導率性に優れた銅(Cu;線膨脹係数16.5×10−6m/K)に、線膨張係数を抑える目的で線膨張係数の低いモリブデン(Mo;線膨張係数5.1×10−6m/K)を複合した、銅−モリブデン複合材(Cu−Mo複合材)を利用した材料が、放熱板材料として提案されている。例えば、特許文献1に記載の技術である。
【0004】
特許文献1に記載の技術では、モリブデン圧粉体の粉末間の空隙に溶融した銅を含有浸透したモリブデンと銅との複合体を圧延した、Cu−Mo複合材及びその製造方法が提案されている。また、この技術では、Cu−Mo複合材の両面にさらに銅板を圧着したCu/Cu−Mo複合材/Cuクラッド板から成る、銅クラッド型半導体搭載用放熱基板材料が提案されており、高価な金属材料の一つであるMoの性能と採用コストとのバランスを考慮して、Moの含有量を抑制しつつ、線膨張係数を低い数値に維持するようにしている。
【0005】
ところで、特許文献2に記載の技術では、本発明者により、半導体素子を実装する絶縁基板として、放熱板との接合面側に生じる熱応力が、他面側に生じる熱応力よりも大きくなる材料を採用した三層のクラッド板を採用し、放熱板とのはんだ付けによる接着の際に、絶縁基板の放熱板との接合面側が凸となるように反ることを利用して、絶縁基板の放熱板との接合層に存在する気泡の除去を図る構造が提案されている。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−358266号公報
【特許文献2】
特開平10−270612号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前述の、Cu/Mo/Cuクラッド板又はCu/Cu−Mo複合材/Cuクラッド板から成る、銅クラッド型の放熱板を製造しようとする際に、両面にクラッドされたCu層の厚みが均一となるように製造しても、完全に均一にすることは難しく、個々の製品につきばらつきが生じ易い。Cu層の厚みの差により、製造段階の放熱板がいずれか一面側に湾曲し、その反り量(平面度)にばらつきが生じることとなる。そこで、いずれか一面側に湾曲した状態の製造段階の放熱板を、塑性変形させることにより、略平板状となるように修正が加えられる。
しかし、塑性変形加工時の変形量が少ない場合には、熱履歴により応力解放等が生じ、形状が元の状態に戻ってしまうことがある。これに加え、製造段階の放熱板がいずれの一面側に湾曲しているかは、ばらつきがある。これらに起因して、安定した湾曲した状態の放熱板の塑性変形加工による修正工程を構築することが困難となっている。
【0008】
また、銅クラッド型の放熱板の両面にクラッドされたCu層に発生する熱応力に起因する放熱板の形状変化量には限度があるため、放熱板の低温時における反り量が大きいと、熱応力に起因する放熱板の形状変化量によって、高温時に冷却部との密着性を確保することができる程度まで変形させることが困難となり、冷却部との密着性を確保できなくなって冷却効率の低下を招くのである。
【0009】
これらの理由により、絶縁基板接合状態或いは単体での放熱板の反り量(形状)をある一定範囲内とすることが必要となる。
そこで、本発明では、銅クラッド型の放熱板の両面にクラッドされたCu層に起因して発生する熱応力を利用することにより、製造段階での放熱板の形状のばらつきを抑制してある一定範囲内とし、湾曲した状態の放熱板に対して確実で安定した修正工程を施すことの可能な放熱板の製造方法を提案する。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0011】
即ち、請求項1においては、素子を実装した絶縁基板が一側面に接合され、他側面が冷却体に接触固定される放熱板であって、放熱板を、芯材となる基板層の両面が金属層でクラッドされた少なくとも三層から成るクラッド板で構成し、絶縁基板接合面側にクラッドされた金属層と基板層との間で発生する熱応力より、他面側にクラッドされた金属層と基板層との間で発生する熱応力が大きくなるようにしたものである。
【0012】
請求項2においては、前記基板層の一側面にクラッドされた金属層と、他側面にクラッドされた金属層との、厚みを異ならせたものである。
【0013】
請求項3においては、前記基板層の一側面にクラッドされた金属層と、他側面にクラッドされた金属層との、線膨張係数を異ならせたものである。
【0014】
請求項4においては、素子を実装した絶縁基板が一側面に接合され、他側面が冷却体に接触固定される放熱板の製造方法であって、芯材となる金属板の上下面に、同一材料から成り互いに厚みの異なる金属板をそれぞれ積層して、熱間圧着を行う圧延工程と、常温まで冷却したのち、所望の形状に成形する成形工程と、常温において塑性変形加工で反り量を修正する修正工程とで構成されるものである。
【0015】
請求項5においては、素子を実装した絶縁基板が一側面に接合され、他側面が冷却体に接触固定される放熱板の製造方法であって、芯材となる金属板の上下面に、互いに膨張係数の異なる材料から成る金属板をそれぞれ積層して、熱間圧着を行う圧延工程と、常温まで冷却したのち、所望の形状に成形する成形工程と、常温において塑性変形加工で反り量を修正する修正工程とで構成されるものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明に係る放熱板製造工程を示す流れ図、図2は重ね合わせた放熱板構成材料の状態を示す側断面図、図3は圧延してクラッド板を形成する様子を示す側面図、図4は冷却後のクラッド板を示す側面図、図5は塑性変形加工後の放熱板を示す側面図である。
図6は(a)放熱板に絶縁基板を接合する様子を示す側面図、(b)常温における絶縁基板を接合した放熱板を示す側断面図、(c)高温における絶縁基板を接合した放熱板を示す側面図である。
図7は(a)常温における冷却体に固定した放熱板を示す側面図、(b)素子発熱時における冷却体に固定した放熱板を示す側面図である。
図8は(a)放熱板に半導体素子を実装した絶縁基板をはんだ接合する様子を示す側面図、(b)半導体素子を実装した絶縁基板をはんだ層を介して接合した放熱板を示す側面図である。
【0017】
まず、本発明に係る放熱板10について説明する。
図5に示す如く、放熱板10は、少なくとも三層から成るクラッド板であって、比較的線膨張係数が小さい材料から成り芯材となる基板層22の両面が、それぞれ比較的熱伝導率の高い材料から成る被板層21・23でクラッドされたものである。この放熱板10の構造により、基板層22と被板層21との間で発生する熱応力と、基板層22と被板層23との間で発生する熱応力とが、互いに異なることを特徴としている。
【0018】
放熱板10の一側面(以降「上面」と示す)には、半導体素子18が実装された絶縁基板11がはんだ接合され、該放熱板10の他側面(以降「下面」と示す)は、放熱板10が冷却体16にボルト等の締結部材により固定されたときに、グリス層を介して冷却体16に接する。
そして、同様の状態で昇温・加熱又は冷却したときに、放熱板10の上面側にクラッドされた被板層21(以降「上被板層21」と示す)と基板層22との間で発生する熱応力より、放熱板10の下面側にクラッドされた被板層23(以降「下被板層23」と示す)と基板層22との間で発生する熱応力が、相対的に大きくなるように設定して、膨張時には放熱板10に下面側に凸に曲げようとする力を作用させ、収縮時には放熱板10に上面側に凸に曲げようとする力を作用させるようにしている。
【0019】
なお、本実施例では、基板層22と上被板層21との間で発生する熱応力と、基板層22と下被板層23との間で発生する熱応力とを互いに違えるようにするために、被板層21・23としていずれも同じ材料が採用され、下被板層23の層厚が大きくなるように形成されている。
これにより、上被板層21と基板層22との間で発生する熱応力に対して、下被板層23と基板層22との間で発生する熱応力が大きくなり、膨脹時の放熱板10に下面側に凸となるような曲げ荷重を、また、収縮時の放熱板10に上面側に凸となるような曲げ荷重を、作用させるようにしている。
この場合、被板層21・23の層厚は、発生する熱応力の差により必ず放熱板10(クラッド板20)が一側に湾曲するように、決定する必要がある。
【0020】
但し、放熱板10の形態は本実施例に限定されるものではなく、放熱板10に熱応力を発生させるために、上被板層21と下被板層23とで線膨張係数の異なる材料を採用し、上被板層21に対して下被板層23の方が線膨張係数が大きいものを選定することができる。このように、材質ごとの線膨張係数の違いによって上被板層21と基板層22の間で発生する熱応力と、下被板層23と基板層22の間で発生する熱応力とを違えることができる。
この場合、被板層21・23の材料は、発生する熱応力の差により必ず放熱板10(クラッド板20)が一側に湾曲するように、選定する必要がある。
【0021】
次に、前述の放熱板10の製造方法について、図1の流れ図を用いて説明する。
製造工程は、大概して、圧延工程(S10)と、成形工程(S11)と、修正工程(S12)とで構成される。
【0022】
まず、圧延工程(S10)より説明する。
図2に示す如く、放熱板10の芯材となり、比較的低い熱膨張係数の材料から成る基板層22を構成するための金属板22’と、該基板層22の上面側にクラッドされる上被板層21を構成するための金属板21’と、該基板層22の下面側にクラッドされる下被板層23を構成するための金属板23’とを、積層し、リベット24等を貫設することにより固定する(S10a)。
このようにして固定された状態の三枚の金属板21’・22’・23’を、圧着温度まで昇温された水素雰囲気の電気炉で保持して、各金属板21’・22’・23’が圧着温度となるまで加熱する(S10b)。
そして、図3に示す如く、加熱された三板の金属板21’・22’・23’を圧延機に通して熱間圧着し(S10c)、金属板21’と金属板22’とを圧着接合するとともに、金属板23’と金属板22’とを圧着接合し、三層のクラッド板20を形成する。
【0023】
次に、成形工程(S11)について説明する。
上述の如く形成されたクラッド板20を、自然冷却する(S11a)。このとき、クラッド板20の上下面側にクラッドされた被板層21・23よりも、基板層22の線膨張係数は小さく、上被板層21と基板層22との間と、下被板層23と基板層22との間に、それぞれ熱応力が発生する。しかし、被板層21・23の層厚がそれぞれ異なるため、基板層22の上面と下面とで作用する熱応力に差が生じており、これにより、放熱板10に上面側に凸に曲げようとする力が作用する。従って、常温まで冷却されたクラッド板20は、図4に示す如く、上被板層21側に凸となるように湾曲し、円筒曲面を形成している。
【0024】
このときのクラッド板20の反り量をD0とし、反り量D0の値はクラッド板20が上面側(絶縁基板11接合面側)に凸であるときを正とし、クラッド板20が下面側(冷却体16に面する側)に凸であるときを負とする。
本実施例のクラッド板20は、上被板層21と下被板層23の層厚が異なるため、必ず、一側に湾曲し、しかも、下被板層23の方が層厚が大きいため、クラッド板20は必ず、上面側に凸に反った形状となる。すなわち、クラッド板20の反り方向(湾曲方向)のばらつきをなくすことができる。
【0025】
さらに、膨脹時又は収縮時に、クラッド板20と上被板層21の間で発生する熱応力と、クラッド板20と下被板層23の間で発生する熱応力との差は、被板層21・23の層厚によりある程度制御することが可能である。従って、膨脹時又は収縮時に、クラッド板20に作用する曲げ荷重をある程度制御することが可能となり、クラッド板20の反り量D0をある一定範囲内に制御することが可能となる。
反り量D0は、後述する常温での塑性変形加工時に、熱履歴により元の状態に戻ることがなく、且つ、変形後の形態を安定して維持させることのできる変形量(「保証変形量」とする)を加えることができる範囲内となるように制御する。
すなわち、反り量D0を、正の値であって、ある一定範囲内(αmax≧D0≧αmin>0)となるように制御することが好ましい。なお、αmax及びαminの値は、基板層22及び被板層21・23の材料や厚み等により、異なるため、採用する材料に応じて設定する。
【0026】
続いて、クラッド板20の表面の酸化物等を除去するために表面処理を行ったあと、繰り返し圧延し(S11b)、所定の厚みのクラッド板20とする。そして、クラッド板20を切断して(S11c)、所定の放熱板10の大きさとなるように成形する。
【0027】
次に、修正工程(S12)について説明する。
修正工程(S12)では、成形工程(S11)にて放熱板10の大きさに成形されたクラッド板20に常温で塑性変形加工を施し、クラッド板20の反り量(平面度)を修正し、放熱板10とする(S12a)。
塑性変形加工では、上面側に凸であるクラッド板20を、略平面状若しくは下面側に凸となるように変形する。従って、製造された放熱板10は、図5に示す如く、略平面もしくは下面側に凸に反った状態となる。
このときの放熱板の反り量をDとし、上面側(絶縁基板11接合側)に凸である時を正、下面側に凸である時を負とする。すなわち、反り量D0のクラッド板20は、塑性変形加工を経て反り量Dの放熱板10とされ、このときの反り量Dはゼロ若しくは負の値となるように形成されている。
【0028】
この塑性変形加工において、クラッド板20の反り方向が一定であるため、加える変形方向は統一されている。すなわち、クラッド板20の反り量D0は必ず正の値となるようにされており、このクラッド板20を上面側から押圧する荷重を加えることにより、反り量Dがゼロ若しくは負の値である放熱板10とするのである。
また、放熱板10の反り量Dは、素子の発熱時に熱応力に起因して放熱板が形状変化したときに、冷却体との密着性を確保することができる程度の形状となるように、値が定められており、従って、この塑性変形加工における、反り量D0から反り量Dとする形状変化量は略一定となる。
さらに、前述の如く、クラッド板20の反り量D0は、保証変形量を与えることのできる範囲内の値とされているため、塑性変形加工により変形された後のクラッド板20(すなわち放熱板10)の形状は安定したものとなる。
【0029】
このように、塑性変形加工を、製品を通して略一定の加工とすることが可能であり、しかも、変形後の形状を安定させることのできる変形量を確実に確保することが可能であるので、確実な修正工程(S12)を構築することができ、この修正工程(S12)を経ることにより、常温において安定して略平面状若しくは下面側に凸に反った状態の放熱板10を形成することができる。
【0030】
上述の製造工程により製造された放熱板10の上面には、半導体素子18が実装された絶縁基板11が接合される。
図6(a)に示す如く、半導体素子18を実装した絶縁基板11をはんだ箔12’を介して放熱板10の上面に載置する。そして、公知のはんだ付け接合工程にて、放熱板10と絶縁基板11とがはんだ接合される。
【0031】
上述の放熱板10と絶縁基板11との接合工程において、絶縁基板11と放熱板10とが加熱されている間は、放熱板10は膨張する。
このとき、放熱基板11接合前はその反り量Dがゼロ若しくは負の値であった放熱板10は、下方へ凸となる方向に湾曲させようとする力が作用することによって、図6(b)に示す如く、下面側に凸に反った状態であり、反り量Dは負の値となる。
【0032】
そして、放熱板10と絶縁基板11との接合工程が終了すれば、放熱板10は常温まで冷却される。
この放熱板10の冷却過程において、熱膨張した放熱板10の上面のはんだ接合部は、はんだ12が凝固した後は収縮が制限されるが、下面は自由に収縮可能である。そして、はんだ12の凝固温度は常温より遙かに高いため、常温に戻った放熱板10の上面と下面との収縮量が大きく異なることとなり、放熱板10は絶縁基板11の接着された側に凸となるように湾曲する。従って、図6(c)に示す如く、基板11が接合された常温の放熱板10は、上面側に凸に反った状態であり、反り量Dは正の値となる。
【0033】
なお、放熱板10として、絶縁基板11接合前に常温で下面側に凸であるもの(反り量Dが負の値であるもの)を採用とすると、平面状であるもの(反り量Dがゼロであるもの)と比較して、絶縁基板11が接合された常温の放熱板10が上面側に凸となる反り量を抑制させることができる。
【0034】
上述の如く基板11が接合された常温の放熱板10を、図7(a)に示す如く、冷却体16に対してボルト等の締結部材で固定する。放熱板10と冷却体16との間には放熱グリス15が介装される。このときの放熱板10は、上面側に凸に反った状態で反り量Dは正の値であり、放熱板10の下面は冷却体16と面している。
そして、半導体素子18が動作して発熱し、高温となっているときには、熱応力により放熱板10を下面側に凸となるように湾曲させようとする力が発生し、図7(b)に示す如く、放熱板10はやや下方に凸に反った状態となり、反り量Dは負の値となる。
【0035】
このように、半導体素子18が動作して発熱したときには、放熱板10は冷却体16側へ凸に反った状態となり、冷却体16と放熱板10との間隙が狭くなっている。従って、この部分の放熱グリス15の層は薄く、熱抵抗が小さくなっている。また、放熱板10を冷却体16に押しつけるようにするだけで、放熱板10と冷却体16の間の放熱グリス15の層を薄くすることができ、さらに、放熱グリス15内の空気を容易に押し出すことができるので、放熱グリス15内の気泡の残存が防止され、放熱グリス15や気泡による熱抵抗の増加を防止することができる。以上より、冷却体16による半導体素子18の冷却性能の向上が期待される。
【0036】
次に、本発明の放熱板の製造方法を適応するために好適な材料の例を示す。
【0037】
放熱板10を構成するクラッド板20として、モリブデン(Mo)又は銅−モリブデン複合材(Cu−Mo複合材)の両面を銅(Cu)でクラッドした、Cu/Mo/Cuクラッド板又はCu/Cu−Mo複合体/Cuクラッド板を採用する。この場合、クラッド板20の基板層22となる金属板22’はMo又はCu−Mo複合材であり、被板層21・23となる金属板21’・23’はCuである。
なお、クラッド板20をCu/Cu−Mo複合体/Cuクラッド板とするときには、前記圧延工程(S10)における圧着温度は約800℃であり、また、クラッド板20をCu/Mo/Cuクラッド板とするときには、前記圧延工程(S10)における圧着温度は850℃以上とする
【0038】
Cuは熱伝導率が高く、放熱板の材料として適している。また、Mo又はCu−Mo複合材は、Moの存在によってCuよりも小さな線膨張係数を有し、これに加え、Cu−Mo複合材ではCuとの複合材とすることでMo単体よりも高い熱伝導率を有している。
これらの理由により、クラッド板20としてCu/Mo/Cuクラッド板又はCu/Cu−Mo複合体/Cuクラッド板を採用することにより、良好な放熱板10を形成することができる。
【0039】
なお、Cu−Mo複合材は、平均粒径2〜5×10−6mのモリブデン粉末を100〜200MPaの圧力で加圧整形してモリブデン圧粉体とし、このモリブデン圧粉体の粉末間に、溶融した銅を非酸化性雰囲気において、1200℃〜1300℃で含浸することによって得られる。さらに、Cu−Mo複合体を、一次圧延して板状とし、放熱板10の製造に供する芯金属板22’とする。Cu−Mo複合材の組成は、Moの割合が70〜60重量%であり、残りがCuとされている。
【0040】
【発明の効果】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示すような効果を奏する。
【0041】
即ち、請求項1に示す如く、素子を実装した絶縁基板が一側面に接合され、他側面が冷却体に接触固定される放熱板であって、放熱板を、芯材となる基板層の両面が金属層でクラッドされた少なくとも三層から成るクラッド板で構成し、絶縁基板接合面側にクラッドされた金属層と基板層との間で発生する熱応力より、他面側にクラッドされた金属層と基板層との間で発生する熱応力が大きくなるようにしたので、放熱板の膨脹時又は収縮時に放熱板に作用する曲げ荷重の方向を制御することが可能となる。
【0042】
請求項2に示す如く、前記基板層の一側面にクラッドされた金属層と、他側面にクラッドされた金属層との、厚みを異ならせたので、放熱板の膨脹時又は収縮時に放熱板に作用する曲げ荷重の方向を制御することが可能となる。
【0043】
請求項3に示す如く、前記基板層の一側面にクラッドされた金属層と、他側面にクラッドされた金属層との、線膨張係数を異ならせたので、放熱板の膨脹時又は収縮時に放熱板に作用する曲げ荷重の方向を制御することが可能となる。
【0044】
請求項4に示す如く、素子を実装した絶縁基板が一側面に接合され、他側面が冷却体に接触固定される放熱板の製造方法であって、芯材となる金属板の上下面に、同一材料から成り互いに厚みの異なる金属板をそれぞれ積層して、熱間圧着を行う圧延工程と、常温まで冷却したのち、所望の形状に成形する成形工程と、常温において塑性変形加工で反り量を修正する修正工程とで構成されるので、成形工程前の放熱板は必ず一方向に反った状態となり、確実で安定した塑性変形加工を施すことができる。
【0045】
請求項5に示す如く、素子を実装した絶縁基板が一側面に接合され、他側面が冷却体に接触固定される放熱板の製造方法であって、芯材となる金属板の上下面に、互いに膨張係数の異なる材料から成る金属板をそれぞれ積層して、熱間圧着を行う圧延工程と、常温まで冷却したのち、所望の形状に成形する成形工程と、常温において塑性変形加工で反り量を修正する修正工程とで構成されるので、成形工程前の放熱板は必ず一方向に反った状態となり、確実で安定した塑性変形加工を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る放熱板製造工程を示す流れ図。
【図2】重ね合わせた放熱板構成材料の状態を示す側断面図。
【図3】圧延してクラッド板を形成する様子を示す側面図。
【図4】冷却後のクラッド板を示す側面図。
【図5】塑性変形加工後の放熱板を示す側面図。
【図6】(a)放熱板に絶縁基板を接合する様子を示す側面図、(b)常温における絶縁基板を接合した放熱板を示す側断面図、(c)高温における絶縁基板を接合した放熱板を示す側面図。
【図7】(a)常温における冷却体に固定した放熱板を示す側面図、(b)素子発熱時における冷却体に固定した放熱板を示す側面図。
【図8】(a)放熱板に半導体素子を実装した絶縁基板をはんだ接合する様子を示す側面図、(b)半導体素子を実装した絶縁基板をはんだ層を介して接合した放熱板を示す側面図。
【符号の説明】
S10 圧延工程
S11 成形工程
S12 修正工程
10 放熱板
11 絶縁基板
20 クラッド板
21 被板層
21’金属板
22 基板層
22’金属板
23 被板層
23’金属板
Claims (5)
- 素子を実装した絶縁基板が一側面に接合され、他側面が冷却体に接触固定される放熱板であって、
放熱板を、芯材となる基板層の両面が金属層でクラッドされた少なくとも三層から成るクラッド板で構成し、絶縁基板接合面側にクラッドされた金属層と基板層との間で発生する熱応力より、他面側にクラッドされた金属層と基板層との間で発生する熱応力が大きくなるようにしたことを特徴とする放熱板。 - 前記基板層の一側面にクラッドされた金属層と、他側面にクラッドされた金属層との、厚みを異ならせた、請求項1に記載の放熱板。
- 前記基板層の一側面にクラッドされた金属層と、他側面にクラッドされた金属層との、線膨張係数を異ならせた、請求項1に記載の放熱板。
- 素子を実装した絶縁基板が一側面に接合され、他側面が冷却体に接触固定される放熱板の製造方法であって、
芯材となる金属板の上下面に、同一材料から成り互いに厚みの異なる金属板をそれぞれ積層して、熱間圧着を行う圧延工程と、
常温まで冷却したのち、所望の形状に成形する成形工程と、
常温において塑性変形加工で反り量を修正する修正工程とで構成されることを特徴とする放熱板の製造方法。 - 素子を実装した絶縁基板が一側面に接合され、他側面が冷却体に接触固定される放熱板の製造方法であって、
芯材となる金属板の上下面に、互いに膨張係数の異なる材料から成る金属板をそれぞれ積層して、熱間圧着を行う圧延工程と、
常温まで冷却したのち、所望の形状に成形する成形工程と、
常温において塑性変形加工で反り量を修正する修正工程とで構成されることを特徴とする放熱板の製造方法。
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