JP2004282913A - ディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータ及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータ10における薄膜圧電体素子30の薄膜圧電体層33の圧電定数が圧縮応力により低下するのを抑制するとともに、信頼性の高いアクチュエータ10を低コストで製造できるようにする。
【解決手段】線膨張係数が薄膜圧電体層33よりも小さい基板を用いて、該基板上に、第1の電極層31、配向制御層32、薄膜圧電体層33及び第2の電極層34をこの順に形成して薄膜圧電体素子30を作製することで、該薄膜圧電体素子30の薄膜圧電体層33において厚み方向と垂直な方向に作用している残留応力が、0ないし引張応力となるようにする。
【選択図】 図10
【解決手段】線膨張係数が薄膜圧電体層33よりも小さい基板を用いて、該基板上に、第1の電極層31、配向制御層32、薄膜圧電体層33及び第2の電極層34をこの順に形成して薄膜圧電体素子30を作製することで、該薄膜圧電体素子30の薄膜圧電体層33において厚み方向と垂直な方向に作用している残留応力が、0ないし引張応力となるようにする。
【選択図】 図10
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンピュータの記憶装置等として用いられる磁気ディスク装置等に設けられるヘッド支持機構に好適に用いられるディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータ及びその製造方法に関する技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、この種のディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータとしては、第1の電極層と、この第1の電極層上に形成された薄膜圧電体層と、この薄膜圧電体層上に形成された第2の電極層とからなる2つの薄膜圧電体素子を有し、該2つの薄膜圧電体素子における第2の電極層側の面同士が接着されているとともに、該接着された2つの薄膜圧電体素子において一方の薄膜圧電体素子の第1の電極層側の面を除く表面全体が被覆材で覆われてなるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記のようなディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータを製造する場合には、特許文献1に示されているように、基板上に、第1の電極層、薄膜圧電体層及び第2の電極層をこの順に形成して薄膜圧電体素子を作製し、この薄膜圧電体素子を2つ用いて該2つの薄膜圧電体素子における第2の電極層側の面同士を接着し、この接着した2つの薄膜圧電体素子のうちの一方の側に位置する基板を除去し、この加工した2つの薄膜圧電体素子において他方の側に位置する基板との接合面を除く表面全体を被覆材で覆い、その後に上記他方の側に位置する基板を除去するようにしている。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−134807号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記アクチュエータを製造する際の基板としては、正方晶系ペロブスカイト型の圧電材料からなる薄膜圧電体層における該圧電材料の結晶のc軸を基板表面に対して垂直方向に揃えるために、通常は、結晶方位(100)面が表面に出るように切り出したNaCl型結晶構造の酸化マグネシウム(MgO)からなる単結晶の基板を用い、この基板上に、(100)面に配向した第1の電極層を形成し、この第1の電極層上に薄膜圧電体層を形成する。この場合、MgO単結晶基板の線膨張係数が薄膜圧電体層よりも大きいため、薄膜圧電体層は、成膜後の冷却過程で基板から厚み方向と垂直な方向に圧縮応力を受けて、この圧縮応力とエピタキシャル成長とに起因して(001)面配向(c軸配向)となる。この正方晶系ペロブスカイト型の圧電材料の分極軸は、<001>方向であって電圧印加方向に揃っているので、分極処理を必要としない。
【0006】
しかしながら、上記のように薄膜圧電体層が基板から圧縮応力を受けると、薄膜圧電体層の圧電定数が低下してしまうという問題がある。この圧縮応力は、2つの薄膜圧電体素子同士を接着しても完全には抜けきれず、各薄膜圧電体層において厚み方向と垂直な方向に作用する圧縮残留応力が存在したままとなり、圧電定数の低下は避けられない。
【0007】
また、MgO単結晶基板は非常に高価であり、このため、ディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータの製造コストが高くなってしまうという問題もある。
【0008】
さらに、MgO単結晶基板は、80℃に加熱した熱リン酸等のような酸によるウエットエッチングでしか除去できず、この酸が薄膜圧電体層にダメージを与えるため、エッチング時には、エッチング液に対する薄膜圧電体層の保護膜が必要となる。また、このような保護膜を設けても、その保護膜やエッチングストッパーである第1の電極層(Pt膜等)にピンホールが存在すると、薄膜圧電体層にダメージを与えるため、信頼性に欠けるという問題がある。
【0009】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータにおける薄膜圧電体素子の薄膜圧電体層の圧電定数が圧縮応力により低下するのを抑制するとともに、信頼性の高いアクチュエータを低コストで製造できるようにすることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、この発明では、線膨張係数が薄膜圧電体層よりも小さい基板を用いて薄膜圧電体素子を作製することで、該薄膜圧電体素子の薄膜圧電体層において厚み方向と垂直な方向に作用している残留応力が、0ないし引張応力となるようにした。
【0011】
具体的には、請求項1の発明では、第1の電極層と、該第1の電極層上に形成された配向制御層と、該配向制御層上に形成された薄膜圧電体層と、該薄膜圧電体層上に形成された第2の電極層とからなる2つの薄膜圧電体素子を有し、該2つの薄膜圧電体素子における第2の電極層側の面同士が接着されているとともに、該接着された2つの薄膜圧電体素子において一方の薄膜圧電体素子の第1の電極層側の面を除く表面全体が被覆材で覆われてなるディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータを対象とする。
【0012】
そして、上記2つの薄膜圧電体素子の各薄膜圧電体層において厚み方向と垂直な方向に作用している残留応力が、0ないし引張応力であるものとする。
【0013】
上記の構成により、ディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータにおける薄膜圧電体素子の薄膜圧電体層の圧電定数が圧縮応力により低下するのを抑制することができる。すなわち、ディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータを製造する際に、線膨張係数が薄膜圧電体層よりも小さい基板、例えばシリコン、石英、バリウムホウ珪酸ガラス等からなる基板を用いて、該基板上に、第1の電極層、配向制御層、薄膜圧電体層及び第2の電極層をこの順にスパッタ法等により形成して薄膜圧電体素子を作製する。こうすると、薄膜圧電体層は、成膜後の冷却過程で基板から厚み方向と垂直な方向に引張応力を受け圧縮応力を受けることはない。この結果、2つの薄膜圧電体素子の各薄膜圧電体層において厚み方向と垂直な方向に作用している残留応力が引張応力となる(2つの薄膜圧電体素子同士を接着したり被覆材で覆ったりしたとき等において応力が緩和されて0になってもよい)。これにより、薄膜圧電体層の圧電定数が低下するのを抑制することができる。ところで、このような引張残留応力が作用したままであると、アクチュエータの電圧印加による作動時に引張応力がより増大して、引張力に弱い薄膜圧電体層にクラックが生じ易くなる。しかし、ディスク装置用のアクチュエータでは、印加電圧が小さい(10V/μm未満)ので、引張応力がそれ程大きくならずに済み、長時間使用しても問題はない。
【0014】
一方、上記のようにシリコン基板等を用いると、MgO単結晶基板とは異なり、第1の電極層が(111)面配向となって、そのままでは薄膜圧電体層の結晶配向性が問題となるが、第1の電極層に、例えばチタンや酸化チタンを含有しておけば、このチタンや酸化チタンが第1の電極層の表面部に島状に点在することになり、第1の電極層上に形成される配向制御層は、この島状に点在するチタン又は酸化チタンを核にしてその上側に結晶成長し、これにより、チタン又は酸化チタン上において(100)面又は(001)面(立方晶系の場合は(100)面と(001)面とは同じである)に配向し易くなり、この(100)面又は(001)面配向の領域がその結晶成長に連れて広がって、配向制御層の厚みが20nm程度となった段階では表面の略全体が(100)面又は(001)面配向の領域となる(必ずしも表面全体が(100)面又は(001)面配向の領域とならなくてもよい)。こうして形成した配向制御層上に薄膜圧電体層を形成すれば、薄膜圧電体層は、エピタキシャル成長と上記の如く基板から引張応力を受けることとに起因して、(100)面配向となる(菱面体晶系の場合には、(100)面と(001)面とは同じあるので、(001)面に優先配向しているといえる)。この薄膜圧電体層が菱面体晶系のペロブスカイト型酸化物からなる場合には、分極軸は<111>方向であって、電界方向と分極軸方向との間に約54°の角度が生じ、正方晶系の場合には、分極軸は電界方向に対して90°横を向いてしまうため、いずれの場合でも分極軸が<001>方向となるように分極処理を施せばよい。但し、菱面体晶系の場合には、配向性を向上させることにより、電界印加に対して分極は常に一定の角度を保つことができるため、電界印加による分極の回転が起きず、分極処理を行わなくても、圧電特性を安定させることができる。
【0015】
したがって、MgO単結晶基板を用いずに、安価なシリコン基板やガラス基板等を用いても、薄膜圧電体層の結晶配向性を高く維持することができる。特にシリコン基板は、ドライエッチングにより除去することができ、これにより、エッチング液に対する薄膜圧電体層の保護膜を設ける必要はなく、薄膜圧電体層にダメージを与えることもない。よって、薄膜圧電体層の圧電定数が圧縮応力により低下するのを抑制することができるとともに、信頼性の高いアクチュエータを低コストで製造することできる。
【0016】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、第1の電極層は、チタン又は酸化チタンを含有する貴金属からなるものとする。
【0017】
このことにより、MgO単結晶基板を用いずにシリコン基板等を用いて薄膜圧電体素子を作製しても、チタン又は酸化チタンの含有により薄膜圧電体層の結晶配向性を容易に高くすることができる。
【0018】
請求項3の発明では、請求項2の発明において、第1電極層は、白金、イリジウム、パラジウム及びルテニウムの群から選ばれた少なくとも1種の貴金属からなり、該貴金属に含有されたチタン又は酸化チタンの含有量が0を越え20モル%以下であるものとする。
【0019】
このことにより、薄膜圧電体素子の各層をスパッタ法等に形成する際の温度に十分に耐えられるとともに、電極として適切な材料とすることができる。また、チタン又は酸化チタンの含有量は、20モル%を越えると配向制御層(延いては薄膜圧電体層)の結晶性及び配向性が低下するので、このように20モル%以下とするのがよい。
【0020】
請求項4の発明では、請求項1〜3のいずれか1つの発明において、配向制御層は、立方晶系又は正方晶系の(100)面又は(001)面に優先配向したペロブスカイト型酸化物からなるものとする。
【0021】
こうすることで、薄膜圧電体層の材料としては、通常、PZT等のペロブスカイト型酸化物を用いるので、この薄膜圧電体層の結晶配向制御が容易となる。
【0022】
請求項5の発明では、請求項4の発明において、配向制御層は、ジルコニウムの含有量が0以上20モル%以下でありかつランタンの含有量が0を越え30モル%以下であるチタン酸ランタンジルコン酸鉛からなるものとする。
【0023】
このようなチタン酸ランタンジルコン酸鉛(PLZT)(ジルコニウムの含有量が0である場合のチタン酸ランタン鉛(PLT)を含む)を配向制御層に用いれば、配向制御層が(100)面又は(001)面により一層配向し易くなり、延いては薄膜圧電体層の配向性を向上させることができる。しかも、このようにジルコニウムの含有量を20モル%以下とし、ランタンの含有量を0を越え30モル%以下とすれば、配向制御層の結晶性や配向性が格段に向上する。特にジルコニウムの含有量が少ないほど、結晶成長初期にZr酸化物からなる結晶性の低い層が形成され難くなり、結晶性の低下が確実に抑制される。
【0024】
請求項6の発明では、請求項1〜5のいずれか1つの発明において、薄膜圧電体層は、菱面体晶系の(001)面に優先配向したペロブスカイト型酸化物からなるものとする。
【0025】
このことにより、上述の如く、分極処理を行わなくても、圧電特性を安定させることができるとともに、分極処理を行う場合であっても、室温で比較的容易に行うことができる(例えば15V/μmの電圧を30分間印加するだけでよい)。この結果、高温(100℃程度)で分極処理を行わなければならない正方晶系とは異なり、分極処理による体積変化が小さく、分極処理を行うとクラックが生じるというような問題は全くない。
【0026】
請求項7の発明では、請求項6の発明において、薄膜圧電体層は、チタン酸ジルコン酸鉛を主成分とする圧電材料からなるものとする。
【0027】
こうすることで、圧電特性が良好な圧電材料とすることができ、高性能のアクチュエータが容易に得られる。
【0028】
請求項8の発明は、ディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータの製造方法の発明であり、この発明では、基板上に、第1の電極層、配向制御層、薄膜圧電体層及び第2の電極層をこの順に形成して薄膜圧電体素子を作製する素子作製工程と、上記素子作製工程で作製した薄膜圧電体素子を2つ用いて、該2つの薄膜圧電体素子における第2の電極層側の面同士を接着する接着工程と、上記接着工程で接着した2つの薄膜圧電体素子のうちの一方の側に位置する基板を除去する第1の基板除去工程と、上記第1の基板除去工程後に、上記接着した2つの薄膜圧電体素子を所定の形状に加工する加工工程と、上記加工した2つの薄膜圧電体素子において他方の側に位置する基板との接合面を除く表面全体を被覆材で覆う被覆工程と、上記被覆工程後に、上記他方の側に位置する基板を除去する第2の基板除去工程とを含み、上記素子作製工程において、線膨張係数が薄膜圧電体層よりも小さい基板を用いて、該基板上に上記各層を形成するようにする。
【0029】
この発明により、線膨張係数が薄膜圧電体層よりも小さい基板を用いて薄膜圧電体素子を作製するので、薄膜圧電体層は、成膜後の冷却過程で基板から厚み方向と垂直な方向に引張応力を受け圧縮応力を受けることはなく、請求項1の発明と同様に、薄膜圧電体層において厚み方向と垂直な方向に作用している残留応力が、0ないし引張応力となる。よって、請求項1の発明と同様の作用効果が得られる。
【0030】
請求項9の発明では、請求項8の発明において、基板はシリコンからなるものとする。
【0031】
このことにより、安価で入手し易く、しかもドライエッチングにより除去が可能であるので、アクチュエータの製造コストを格段に低減することができる。
【0032】
請求項10の発明では、請求項9の発明において、第1及び第2の基板除去工程において、基板をドライエッチング法により除去するようにする。
【0033】
こうすることで、エッチング液に対する薄膜圧電体層の保護膜を設けなくても済み、また、たとえ第1の電極層にピンホールが存在していたとしても、薄膜圧電体層にダメージを与えることもなく、よって、信頼性の高いアクチュエータが得られる。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1及び図2は、本発明の実施形態に係るディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータ10を備えたディスク装置のヘッド支持機構を示す。
【0035】
このヘッド支持機構100は、ヘッド1が取り付けられたスライダ2を先端部に支持するロードビーム4を有している。このロードビーム4は、ヘッドアクチュエータアーム(図示しない)に取り付けられる正方形状をなす基端部4Aを有し、この基端部4Aは、ビーム溶接等によってベースプレート5に固定されている。このベースプレート5も、上記ヘッドアクチュエータアームに取り付けられている。また、上記ロードビーム4には、上記基端部4Aから先細状に延出するネック部4Bに連続して、ビーム部4Cが直線状に延出するように設けられている。上記ネック部4Bの中央部には、開口部4Dが設けられており、ネック部4Bにおける開口部4Dの両側部分が、それぞれ板バネ部4Eになっている。
【0036】
図3に示すように、上記スライダ2には、MR素子を含むヘッド1が設けられている。また、このヘッド1が設けられた端面の下部には、4つの端子2A〜2Dが横方向に並んだ状態で設けられている。さらに、スライダ2の上面には、回転駆動される磁気ディスクにより生じる空気流が該スライダ2のピッチ方向(磁気ディスクの接線方向)に沿って通流することによって磁気ディスクとの間にエア潤滑膜を形成するエアベアリング面2Eが設けられている。
【0037】
図2に示すように、上記ロードビーム4のビーム部4C上には、ヘッド配線パターン6を有するフレクシャ7が該ロードビーム4の長さ方向に延びるように設けられている。このフレクシャ7は、ステンレス材をベースとしている。このフレクシャ7の一端部に位置するスライダ取付部7X上に、上記ヘッド1が搭載されたスライダ2が配置される。
【0038】
図4に示すように、上記フレクシャ7のスライダ取付部7Xには、ステンレス等のフレクシャ基板3上においてパターン化されて上記端子2A〜2Dにそれぞれ接続されるヘッド配線6A,6B,6C,6Dが形成されている。このスライダ取付部7Xにおけるスライダ取付面と反対側の面には、スライダ保持基板3Aが貼り付けられている。このスライダ保持基板3Aは、上記フレクシャ基板3と同時にエッチング加工により外形が形成されるものである。また、スライダ保持基板3Aには、突起部3Bが形成され、この突起部3Bは、上記ロードビーム4の先端近傍に形成されたディンプル4G(図2参照)に当接している。この突起部4Bがディンプル4Gによって押圧されることにより、スライダ保持基板3Aは、ディンプル4Gを中心として全方位に亘って回動可能に保持されている。そして、上記スライダ2は、上記エアベアリング面2Eの中心位置が上記ロードビーム4のディンプル4Gに一致するように、スライダ保持板3A上に接着される。
【0039】
上記ロードビーム4のビーム部4Cの先端部における両側縁部には、スライダ保持板3Aの回動を若干の隙間をもって規制する規制部4Fがそれぞれ設けられている。この各規制部4Fは、ビーム部4Cの先端から基端部4A側に向かって直線状に延出している。
【0040】
上記フレクシャ7の他端部には、図2に示すように、外部接続用端子保持部7Yが形成されている。この端子保持部7Yは、ロードビーム4の基端部4Aにおける一方の側縁部に配置されている。また、フレクシャ7におけるスライダ取付部7Xの端子保持部7Y側には、左右に並んで配設された一対の薄膜圧電体アクチュエータ10(図5及び図6では、それぞれ10A及び10Bの符号を付している)が、それぞれ接着により取り付けられるアクチュエータ保持部8A,8Bが設けられている。
【0041】
図5は、上記薄膜圧電体アクチュエータ10の平面図を、図6はその断面図をそれぞれ示す。この各薄膜圧電体アクチュエータ10は、図6に示すように、第1の電極層31と、この第1の電極層31上に形成された配向制御層32と、この配向制御層32上に形成された薄膜圧電体層33と、この薄膜圧電体層33上に形成された第2の電極層34とからなる2つの薄膜圧電体素子30を有している。これら2つの薄膜圧電体素子30は、第2の電極層34側の面同士が対向するように上下にそれぞれ配設されていて、その第2の電極層34側の面同士が接着剤41により接着されることで一体化されている。この接着剤41は導電性のものであり、このことで、2つの第2の電極層34は電気的に短絡されている。また、これら接着された2つの薄膜圧電体素子において一方(下側)の薄膜圧電体素子30の第1の電極層31側の面を除く表面全体が、柔軟性のある絶縁樹脂からなる被覆材42で覆われている。
【0042】
上記2つの薄膜圧電体素子30の各薄膜圧電体層33において厚み方向と垂直な方向に作用している残留応力は、後述の製造方法により、0ないし引張応力となっている。つまり、各薄膜圧電体層33には、厚み方向と垂直な方向に作用している圧縮残留応力は存在していない。
【0043】
上記第1の電極層31は、チタン又は酸化チタンを含有する貴金属で構成するのがよい。この貴金属としては、白金、イリジウム、パラジウム及びルテニウムの群から選ばれた少なくとも1種であることが望ましい。また、チタン又は酸化チタンの含有量は0を越え20モル%以下であることが好ましい。この第1の電極層31の厚みは0.05〜2μmの範囲であればよい。尚、チタン又は酸化チタンの代わりに、Mg、Ca、Sr及びBa並びにこれらの酸化物の群から選ばれた少なくとも1種の添加物を貴金属に添加するようにしてもよい。また、Co、Ni、Fe、Mn及びCu並びにこれらの酸化物の群から選ばれた少なくとも1種の金属を貴金属に添加するようにしてもよい。
【0044】
上記配向制御層32は、立方晶系又は正方晶系のペロブスカイト型酸化物、特にジルコニウムの含有量が0以上20モル%以下でありかつランタンの含有量が0を越え30モル%以下であるチタン酸ランタンジルコン酸鉛(PLZT)(ジルコニウムの含有量が0である場合のチタン酸ランタン鉛(PLT)を含む)で構成することが望ましい。この配向制御層32は、(100)面又は(001)面(立方晶系の場合は(100)面と(001)面とは同じである)に優先配向している。また、この配向制御層32の厚みは0.01〜0.2μmの範囲であればよい。
【0045】
上記薄膜圧電体層33は、菱面体晶系又は正方晶系のペロブスカイト型酸化物、特にチタン酸ジルコン酸鉛(Zr/Ti=53/47)を主成分とする圧電材料で構成することが望ましい。また、正方晶系よりも菱面体晶系の方が、分極処理を必ずしも行う必要がなく分極処理を行うとしても容易にできる点で好ましい。この薄膜圧電体層33は、(100)面に優先配向している(菱面体晶系の場合には、(100)面と(001)面とは同じあるので、(001)面に優先配向しているといえる)。また、この薄膜圧電体層33の厚みは0.5〜5.0μmの範囲であればよい。
【0046】
上記第2の電極層34は、Pt等の導電性材料からなっている。この第2の電極層34の厚みは0.1〜0.4μmの範囲であればよい。
【0047】
ここで、上記薄膜圧電体アクチュエータ10の製造方法について図11及び図12を用いて説明する。
【0048】
先ず最初に、線膨張係数が上記薄膜圧電体層33よりも小さい基板51を用意する。すなわち、上記薄膜圧電体層33の線膨張係数は50×10−7/℃程度であるので、基板51の材料として、シリコン(28×10−7/℃)、石英(5×10−7/℃)、バリウムホウ珪酸ガラス(46×10−7/℃)等を用いる。中でもシリコンは、安価で入手し易く、しかも後述のドライエッチングにより除去が可能であるので、非常に好ましい。
【0049】
そして、図11(a)に示すように、上記基板51上に第1の電極層31をスパッタ法により形成する。例えば、多元スパッタ装置を使用して、Tiターゲット及びIrターゲットを用い、基板51を600℃に加熱しながら1Paのアルゴンガス中において160W及び200Wの高周波電力で12分間形成する。こうして形成された第1の電極層の表面部には、チタン(アルゴンと酸素との混合雰囲気中でスパッタリングすれば、酸化チタンとなる)が島状に点在する。この第1の電極層31は、通常、(111)面配向となる。
【0050】
尚、基板51と第1の電極層31との間に、該基板51と第1の電極層31との密着性を高める密着層を形成するようにしてもよい。この場合、この密着層は、Ti、タンタル、鉄、コバルト、ニッケル若しくはクロム又はそれらの化合物で構成すればよく、その厚みは0.005〜1μmの範囲であればよい。そして、後述の如く基板51を除去する際には、この密着層も除去する。
【0051】
続いて、図11(b)に示すように、上記第1の電極層31上に配向制御層32をスパッタ法により形成する。例えば、ランタンを14モル%含有するPLTに酸化鉛(PbO)を12モル%過剰に加えて調合した焼結ターゲットを用い、基板51の温度600℃で、アルゴンと酸素との混合雰囲気中(ガス体積比Ar:O2=19:1)において、真空度0.8Pa、高周波電力300Wの条件で12分間スパッタリングすることで形成する。このとき、配向制御層32は、上記島状に点在するチタン又は酸化チタンを核にしてその上側に結晶成長し、これにより、チタン又は酸化チタン上において(100)面又は(001)面に配向し易くなる。尚、第1の電極層31に、Mg、Ca、Sr、Ba、Co、Ni、Fe、Mn又はCuを添加した場合には、酸化物の形態で添加しなくても、配向制御層32を形成する際において酸素が存在すれば、その表面部に点在する添加物は酸化物となり、その酸化物はMgO単結晶基板と同じ結晶構造であるNacl型酸化物であるため、配向制御層32は、上記添加物(酸化物)を核にしてその上側に結晶成長し、これにより、添加物上において(100)面又は(001)面に配向し易くなる。
【0052】
一方、配向制御層32において第1の電極層31の表面部におけるチタン又は酸化チタンが存在しない部分の上側領域では、(100)面や(001)面配向とはならず、(111)面配向やアモルファスになる。しかし、結晶成長に連れて、上記(100)面又は(001)面配向の領域が広がるため、配向制御層32の厚みが20nm程度となった段階では表面の略全体が(100)面又は(001)面配向の領域となる(必ずしも表面全体が(100)面又は(001)面配向の領域とならなくてもよく、配向制御層32の厚みを0.01μm程度としてもよい)。
【0053】
その後、図11(c)に示すように、上記配向制御層32上に薄膜圧電体層33をスパッタ法により形成する。例えば、PZT(Zr/Ti=53/47)の焼結体ターゲットを用い、基板51の温度610℃で、アルゴンと酸素との混合雰囲気中(ガス体積比Ar:O2=19:1)において、真空度0.3Pa、高周波電力250Wの条件で2時間スパッタリングすることで形成する。この薄膜圧電体層33は、成膜後の冷却過程で基板51から厚み方向と垂直な方向に引張応力を受け圧縮応力を受けることはない。すなわち、基板51の線膨張係数が薄膜圧電体層33よりも小さいので、基板51を所定温度に加熱した状態で成膜した後に冷却すると、薄膜圧電体層33の方が基板51よりも収縮量が大きくてより収縮しようとするが、その収縮が基板51によって制限されるため、薄膜圧電体層33は基板51から厚み方向と垂直な方向に引張応力を受けることになる。この引張応力を受けることとエピタキシャル成長とに起因して、薄膜圧電体層33は(100)面配向(菱面体晶系の場合には、(001)面配向)となる。この薄膜圧電体層33が菱面体晶系のペロブスカイト型酸化物からなる場合には、分極軸は<111>方向であって、電界方向と分極軸方向との間に約54°の角度が生じ、正方晶系の場合には、分極軸は電界方向に対して90°横を向いてしまうため、いずれの場合でも分極軸が<001>方向となるように分極処理を施す。但し、菱面体晶系の場合には、配向性を向上させることにより、電界印加に対して分極は常に一定の角度を保つことができるため、電界印加による分極の回転が起きず、分極処理を行わなくても、圧電特性を安定させることができる。また、分極処理を行う場合であっても、室温で比較的容易に行うことができ(例えば15V/μmの電圧を30分間印加するだけでよい)、高温(100℃程度)で分極処理を行わなければならない正方晶系とは異なり、分極処理による体積変化が小さく、分極処理を行うとクラックが生じるというような問題は全くない。
【0054】
次いで、図11(d)に示すように、上記薄膜圧電体層33上に第2の電極層34をスパッタ法により形成する。例えば、Ptターゲットを用いて、室温において1Paのアルゴンガス中200Wの高周波電力で10分間形成する。こうして、薄膜圧電体素子30が完成する。
【0055】
尚、上記薄膜圧電体素子30の各層の形成は、スパッタ法に限らず、CVD法やゾル・ゲル法等であってもよい。
【0056】
次に、図12(a)に示すように、上記のようにして作製した薄膜圧電体素子30を2つ用意して、該2つの薄膜圧電体素子30における第2の電極層34側の面同士を対向させ、その後、図12(b)に示すように、その第2の電極層34側の面同士を接着剤41により接着する。尚、この第2の電極層34側の面同士を、超音波振動を用いた熱溶着により接着するようにしてもよい。
【0057】
続いて、図12(c)に示すように、上記接着した2つの薄膜圧電体素子30のうちの一方の側に位置する基板51を除去する。この基板51の除去は、該基板51がシリコンからなる場合には、ドライエッチング法で行うことが望ましい。こうすれば、エッチング液に対する薄膜圧電体層の保護膜を設けなくても済み、また、たとえ第1の電極層にピンホールが存在していたとしても、薄膜圧電体層にダメージを与えることもない。
【0058】
次いで、図12(d)に示すように、上記接着した2つの薄膜圧電体素子30の第1の電極層31、配向制御層32、薄膜圧電体層33及び第2の電極層34を、ドライエッチング法により所定の形状に加工し、その後、その加工した2つの薄膜圧電体素子30において他方の側に位置する基板51との接合面を除く表面全体を被覆材42で覆う。
【0059】
続いて、上記他方の側に位置する基板51をドライエッチング法により除去することで、薄膜圧電体アクチュエータ10が完成する。尚、ここでは省略したが、後述するように、グランド取出部20及び電極取出部22,23(図5及び図13参照)の形成を行う必要がある。
【0060】
上記のようにして作製した薄膜圧電体アクチュエータ10における2つの薄膜圧電体素子30の各薄膜圧電体層33において厚み方向と垂直な方向に作用している残留応力は、薄膜圧電体素子30を作製したときに薄膜圧電体層33が基板51から受ける引張応力が残留するために、引張応力となっている(2つの薄膜圧電体素子30同士を接着したり被覆材42で覆ったりしたとき等において応力が緩和されて0になってもよい)。
【0061】
図7は、フレクシャ7をスライダ2側から見た平面図であり、図8は、図7のX−X線断面図であり、図9は、フレクシャ7をスライダ保持基板3A側から見た底面図である。図8に示すように、上記アクチュエータ保持部8A,8Bにおける基板15A,15Bは、配線6をエッチング加工等でパターン形成するときに同時に形成するため、材質及び厚みは配線6と同一でかつ同一平面に形成される。この基板15A,15Bは、配線6と共にポリイミド樹脂等の絶縁材料16でコーティングされている。尚、基板15A,15Bにおいて薄膜圧電体アクチュエータ10A,10Bをそれぞれ接着する面には、絶縁材料16はなくて基板15A,15Bが露出して、薄膜圧電体アクチュエータ10A,10Bと基板15A,15Bとの接着強度を確保している。図10は、フレクシャ7のアクチュエータ保持部8A,8Bに薄膜圧電体アクチュエータ10A,10Bをそれぞれ接着剤17により接着した状態を示す。
【0062】
上記フレクシャ7におけるアクチュエータ保持部8A,8Bの端子保持部7Y側には、アクチュエータ用端子9A,9B,9C,9Dが設けられており、この端子9A,9B,9C,9Dは、端子保持部7Yに一方の端部が設けられて外部の駆動回路に接続されている。
【0063】
上記フレクシャ7におけるアクチュエータ保持部8A,8Bとスライダ取付部7Xとの間のつなぎ部分は、局部的に狭い幅で形成された弾性ヒンジ部19A,19Bとされている。
【0064】
ここで、図13を参照して、薄膜圧電体アクチュエータ10(10A,10B)の電極の取り方について説明する。図13は、図5及び図7のY−Y線に相当する位置における薄膜圧電体アクチュエータ10A、10Bとアクチュエータ用端子9との接合状態を示す断面図である。
【0065】
各薄膜圧電体アクチュエータ10において2つの薄膜圧電体素子30の各第1の電極層31には、電極取出部22,23を介してプラス電圧がそれぞれ印加され、2つの第2の電極層34はグランド取出部20を介してグランドレベルになるように設定される。
【0066】
上記薄膜圧電体アクチュエータ10のグランド取出部20の加工方法を説明する。図13に示すように、グランド取出部20において上側の薄膜圧電体素子30の第1の電極層31、配向制御層32及び薄膜圧電体層33を第1のエッチング加工で第2の電極層34上面まで加工する。その後、第1のエッチング加工範囲の内側で上記第2の電極層34を一部残した状態で、該第2の電極層34、接着剤13及び下側の薄膜圧電体素子30の第2の電極層34を第2のエッチング加工で取り除く。次いで、グランド取出部20における上側の薄膜圧電体素子30の第1の電極層31、配向制御層32及び薄膜圧電体層33を、被覆材42で覆う。最後に2つの薄膜圧電体素子30の第2の電極層34同士を短絡するグランド金属端子膜21を形成してグランド電極を構成する。このグランド金属端子膜21(2箇所)は、ボンディングワイヤ24で上記アクチュエータ用端子9B,9Cに接続されている。
【0067】
上記電極取出部22では、被覆材42が一部取り除かれて、上側の薄膜圧電体素子30の第1の電極層31が露出している。一方、電極取出部23では、被覆材42が一部取り除かれており、この取り除かれた部分から下側の薄膜圧電体素子30の第1の電極層31が側方に突出している。そして、電極取出部22,23における2つの第1の電極層31がボンディングワイヤ34により上記アクチュエータ用端子9A,9Dに接続されている。
【0068】
このような構成のヘッド支持機構100の動作について、図14〜図16を用いて説明する。図14はヘッド支持機構100を横方向から見た側面図であり、図15(a)は、図14中の薄膜圧電体アクチュエータ10A(10B)の一部を拡大して示す、フレクシャ7の長さ方向に沿って切断した断面図であり、図15(b)及び(c)は、アクチュエータ用端子9A,9Dに印加する電圧の波形を示す。
【0069】
アクチュエータ用端子9B,9Cはグランドレベルに設定され、アクチュエータ用端子9A,9Dには、図15(b)及び(c)に示すように、バイアス電圧V0を中心として互いに逆位相のプラスの駆動電圧が印加される。この駆動電圧が印加されると、図15(a)に示すように、各薄膜圧電体アクチュエータ10において2つの薄膜圧電体素子30の薄膜圧電体層33は矢印Bの方向に収縮したり矢印Cの方向に伸長したりするが、基板15A(15B)があるために、薄膜圧電体アクチュエータ10A(10B)は反りを持った状態になる(図15(a)は、薄膜圧電体層33が収縮した状態を示す)。
【0070】
上記の薄膜圧電体層33の伸縮によりフレクシャ7のアクチュエータ保持部8A(8B)も伸縮して、フレクシャ基板3のアクチュエータ保持部8A(8B)との境界部3X(図9参照)とフレクシャ7の弾性ヒンジ部19A(19B)との間の平面距離L(図9参照)が変化する。また、これと同時にアクチュエータ保持部8A(8B)の反り状態も変化し、この反りに起因してアクチュエータ保持部8A(8B)の曲率が変化する。この曲率変化によっても上記平面距離Lが変化する。したがって、上記平面距離Lの変化には、反りに起因する曲率変化による効果が加算されることになる。
【0071】
図16(a)は、薄膜圧電体アクチュエータ10Aが矢印C方向に伸長しかつアクチュエータ10Bが矢印B方向に収縮したときのスライダ2の回転動作を説明する図であり、図16(b)は、その模式図である。アクチュエータ保持部8Aと薄膜圧電体アクチュエータ10Aとからなる第1のビーム161と、アクチュエータ保持部8Bと薄膜圧電体アクチュエータ10Bとからなる第2のビーム162とが、ディンプル4Gを中心として回動するスライダ保持基板3Aに回動自在に連結され、ヘッド1はディンプル4Gから距離Dを置いて、スライダ保持基板3Aに固定されたスライダ2上に設けられていることになる。このことより、薄膜圧電体アクチュエータ10Aが矢印C方向に伸長しかつ薄膜圧電体アクチュエータ10Bが矢印B方向に収縮すると、スライダ2及びスライダ保持基板3Aは、突起部3Bに当接するディンプル4Gを中心に矢印E方向に回動する。したがって、スライダ2に設けられたヘッド1は、磁気ディスクに同心状態で設けられた各トラックの幅方向に移動することになる。これにより、ヘッド1をトラックに追従させるオントラック性を高精度で実施することができる。
【0072】
尚、弾性ヒンジ部19A,19Bの幅寸法は、ヘッド配線6A,6B,6C,6Dが配置されるために必要な最小限の幅寸法としておけば、スライダ保持基板3Aの回動時における負荷が低減されて、スライダ保持基板3Aが確実に回動する。また、弾性ヒンジ部19A,19Bは、スライダ2のロール方向及びピッチ方向に柔軟な構成となっているため、ディスクに対するスライダ2の良好な浮上特性を与える。
【0073】
上記スライダ2には、ロードビーム4の板バネ部4Eによりロード荷重(20〜30mN)が加えられており、スライダ保持基板3Aが回動するときに、このロード荷重が、スライダ保持基板3Aの突出部3Bとディンプル4Gとの間に作用する。したがって、スライダ保持基板3Aには、スライダ保持基板3Aの突出部3Bとディンプル4Gとの間の摩擦係数にて決定される摩擦力が作用し、この摩擦力により、スライダ保持基板3Aの突出部3Bとディンプル4Gとの間に位置ずれが生じることはない。
【0074】
したがって、上記実施形態では、線膨張係数が薄膜圧電体層33よりも小さい基板51を用いて、該基板51上に、第1の電極層31、配向制御層32、薄膜圧電体層33及び第2の電極層34をこの順に形成して薄膜圧電体素子30を作製することで、該薄膜圧電体素子30の薄膜圧電体層33において厚み方向と垂直な方向に作用している残留応力が、0ないし引張応力となるようにしたことにより、薄膜圧電体層33の圧電定数が圧縮応力により低下するのを抑制することができるとともに、シリコン基板やガラス基板等のような安価な基板を使用することができる。そして、このような基板51を用いても、第1の電極層31へのチタン、酸化チタン等の添加と、この第1の電極層31上に形成した配向制御層32とにより、薄膜圧電体層33の結晶配向性を高く維持することができる。よって、圧電定数の低下がなく信頼性の高いアクチュエータを低コストで製造することできる。
【0075】
次に、具体的に実施した実施例について説明する。
【0076】
先ず、上記実施形態と同様にして本発明のアクチュエータを作製した。すなわち、厚みが0.2mmであって線膨張係数が28×10−7/℃であるシリコンからなる基板を用意し、この基板上に、第1の電極層、配向制御層、薄膜圧電体層及び第2の電極層をこの順にスパッタ法により形成して薄膜圧電体素子を作製した。
【0077】
上記第1の電極層は、厚みが0.2μmであり、多元スパッタ装置を使用して、Tiターゲット及びIrターゲットを用い、基板を600℃に加熱しながら1Paのアルゴンガス中において160W及び200Wの高周波電力で12分間スパッタリングすることにより形成した。
【0078】
上記配向制御層は、厚みが0.03μmであり、ランタンを14モル%含有するPLTに酸化鉛(PbO)を12モル%過剰に加えて調合した焼結ターゲットを用い、基板の温度600℃で、アルゴンと酸素との混合雰囲気中(ガス体積比Ar:O2=19:1)において、真空度0.8Pa、高周波電力300Wの条件で12分間スパッタリングすることにより形成した。
【0079】
上記薄膜圧電体層は、厚みが2.5μmであり、PZT(Zr/Ti=53/47)の焼結体ターゲットを用い、基板の温度610℃で、アルゴンと酸素との混合雰囲気中(ガス体積比Ar:O2=19:1)において、真空度0.3Pa、高周波電力250Wの条件で2時間スパッタリングすることにより形成した。この薄膜圧電体層は、線膨張係数が56×10−7/℃である菱面体晶系のペロブスカイト型酸化物(PbZr0.53Ti0.47O3)からなり、その(001)面配向度をX線回折法で測定したところ、90%以上であった。尚、この(001)面配向度は、(001)面、(110)面及び(111)面の回折強度の和を100としたときの(001)面の回折強度の割合である。
【0080】
上記第2の電極層は、厚みが0.2μmであり、室温において1Paのアルゴンガス中200Wの高周波電力で10分間スパッタリングすることにより形成した。
【0081】
次いで、上記のようにして作製した薄膜圧電体素子を2つ用意して、該2つの薄膜圧電体素子における第2の電極層側の面同士を導電性接着剤により接着し、その後、2つの薄膜圧電体素子のうちの一方の側に位置する基板をドライエッチング法により除去した。そして、2つの薄膜圧電体素子を、ドライエッチング法により所定の形状に加工し、その後、その加工した2つの薄膜圧電体素子において他方の側に位置する基板との接合面を除く表面全体を、ポリイミドからなる厚み3μmの被覆材で被覆し、最後に、他方の側に位置する基板をドライエッチング法により除去することで、アクチュエータを得た。このアクチュエータにおける薄膜圧電体素子の薄膜圧電体層の圧電定数d31を調べたところ、−150pC/Nであった。
【0082】
一方、比較のために、線膨張係数が120×10−7/℃であるMgO単結晶基板を用いてアクチュエータを作製した。この作製方法は、上記本発明のアクチュエータと同様であるが、第1の電極層はPtで構成し、配向制御層は形成しないで該第1の電極層上に薄膜圧電体を直接形成した点が異なる。また、基板はドライエッチング法ではなくりん酸水溶液で除去した。このアクチュエータにおける薄膜圧電体素子の薄膜圧電体層の圧電定数d31を調べたところ、−80pC/Nであった。
【0083】
したがって、本発明のように線膨張係数が薄膜圧電体層よりも小さい基板を用いて薄膜圧電体素子を作製することで、この薄膜圧電体素子の薄膜圧電体層の圧電定数を高レベルに維持できることが判る。
【0084】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータによると、薄膜圧電体層において厚み方向と垂直な方向に作用している残留応力を、0ないし引張応力となるようにした。また、本発明のディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータの製造方法によると、線膨張係数が薄膜圧電体層よりも小さい基板を用いて、該基板上に、第1の電極層、配向制御層、薄膜圧電体層及び第2の電極層をこの順に形成して薄膜圧電体素子を作製するようにした。したがって、これらの発明により、ディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータの薄膜圧電体層の圧電定数が圧縮応力により低下するのを抑制するとともに、信頼性の高いアクチュエータを低コストで製造できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータを備えたディスク装置のヘッド支持機構を示す斜視図である。
【図2】ヘッド支持機構の分解斜視図である。
【図3】ヘッド支持機構に使用されるスライダの斜視図である。
【図4】ヘッド支持機構に使用されるフレクシャの要部を示す斜視図である。
【図5】薄膜圧電体アクチュエータの平面図である。
【図6】図5のX−X線断面図である。
【図7】フレクシャの要部の平面図である。
【図8】図7のX−X線断面図である。
【図9】フレクシャの要部の底面図である。
【図10】フレクシャに薄膜圧電体アクチュエータを接着したときの図5及び図7のX−X線に相当する位置における断面図である。
【図11】薄膜圧電体素子の製造方法を示す概略図である。
【図12】薄膜圧電体アクチュエータの製造方法を示す概略図である。
【図13】フレクシャに薄膜圧電体アクチュエータを接着したときの図5及び図7のY−Y線に相当する位置における断面図である。
【図14】ヘッド支持機構の側面図である。
【図15】(a)は、ヘッド支持機構の動作を説明するための薄膜圧電体アクチュエータの一部を拡大した断面図であり、(b)及び(c)は、アクチュエータ用端子に印加する電圧の波形を示す図である。
【図16】(a)は、ヘッド支持機構の動作を説明するための要部平面図であり、(b)は、その模式図である。
【符号の説明】
1 ヘッド
2 スライダ
7 フレクシャ
10 ディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータ
30 薄膜圧電体素子
31 第1の電極層
32 配向制御層
33 薄膜圧電体層
34 第2の電極層
41 接着剤
42 被覆材
51 基板
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンピュータの記憶装置等として用いられる磁気ディスク装置等に設けられるヘッド支持機構に好適に用いられるディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータ及びその製造方法に関する技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、この種のディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータとしては、第1の電極層と、この第1の電極層上に形成された薄膜圧電体層と、この薄膜圧電体層上に形成された第2の電極層とからなる2つの薄膜圧電体素子を有し、該2つの薄膜圧電体素子における第2の電極層側の面同士が接着されているとともに、該接着された2つの薄膜圧電体素子において一方の薄膜圧電体素子の第1の電極層側の面を除く表面全体が被覆材で覆われてなるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記のようなディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータを製造する場合には、特許文献1に示されているように、基板上に、第1の電極層、薄膜圧電体層及び第2の電極層をこの順に形成して薄膜圧電体素子を作製し、この薄膜圧電体素子を2つ用いて該2つの薄膜圧電体素子における第2の電極層側の面同士を接着し、この接着した2つの薄膜圧電体素子のうちの一方の側に位置する基板を除去し、この加工した2つの薄膜圧電体素子において他方の側に位置する基板との接合面を除く表面全体を被覆材で覆い、その後に上記他方の側に位置する基板を除去するようにしている。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−134807号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記アクチュエータを製造する際の基板としては、正方晶系ペロブスカイト型の圧電材料からなる薄膜圧電体層における該圧電材料の結晶のc軸を基板表面に対して垂直方向に揃えるために、通常は、結晶方位(100)面が表面に出るように切り出したNaCl型結晶構造の酸化マグネシウム(MgO)からなる単結晶の基板を用い、この基板上に、(100)面に配向した第1の電極層を形成し、この第1の電極層上に薄膜圧電体層を形成する。この場合、MgO単結晶基板の線膨張係数が薄膜圧電体層よりも大きいため、薄膜圧電体層は、成膜後の冷却過程で基板から厚み方向と垂直な方向に圧縮応力を受けて、この圧縮応力とエピタキシャル成長とに起因して(001)面配向(c軸配向)となる。この正方晶系ペロブスカイト型の圧電材料の分極軸は、<001>方向であって電圧印加方向に揃っているので、分極処理を必要としない。
【0006】
しかしながら、上記のように薄膜圧電体層が基板から圧縮応力を受けると、薄膜圧電体層の圧電定数が低下してしまうという問題がある。この圧縮応力は、2つの薄膜圧電体素子同士を接着しても完全には抜けきれず、各薄膜圧電体層において厚み方向と垂直な方向に作用する圧縮残留応力が存在したままとなり、圧電定数の低下は避けられない。
【0007】
また、MgO単結晶基板は非常に高価であり、このため、ディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータの製造コストが高くなってしまうという問題もある。
【0008】
さらに、MgO単結晶基板は、80℃に加熱した熱リン酸等のような酸によるウエットエッチングでしか除去できず、この酸が薄膜圧電体層にダメージを与えるため、エッチング時には、エッチング液に対する薄膜圧電体層の保護膜が必要となる。また、このような保護膜を設けても、その保護膜やエッチングストッパーである第1の電極層(Pt膜等)にピンホールが存在すると、薄膜圧電体層にダメージを与えるため、信頼性に欠けるという問題がある。
【0009】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータにおける薄膜圧電体素子の薄膜圧電体層の圧電定数が圧縮応力により低下するのを抑制するとともに、信頼性の高いアクチュエータを低コストで製造できるようにすることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、この発明では、線膨張係数が薄膜圧電体層よりも小さい基板を用いて薄膜圧電体素子を作製することで、該薄膜圧電体素子の薄膜圧電体層において厚み方向と垂直な方向に作用している残留応力が、0ないし引張応力となるようにした。
【0011】
具体的には、請求項1の発明では、第1の電極層と、該第1の電極層上に形成された配向制御層と、該配向制御層上に形成された薄膜圧電体層と、該薄膜圧電体層上に形成された第2の電極層とからなる2つの薄膜圧電体素子を有し、該2つの薄膜圧電体素子における第2の電極層側の面同士が接着されているとともに、該接着された2つの薄膜圧電体素子において一方の薄膜圧電体素子の第1の電極層側の面を除く表面全体が被覆材で覆われてなるディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータを対象とする。
【0012】
そして、上記2つの薄膜圧電体素子の各薄膜圧電体層において厚み方向と垂直な方向に作用している残留応力が、0ないし引張応力であるものとする。
【0013】
上記の構成により、ディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータにおける薄膜圧電体素子の薄膜圧電体層の圧電定数が圧縮応力により低下するのを抑制することができる。すなわち、ディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータを製造する際に、線膨張係数が薄膜圧電体層よりも小さい基板、例えばシリコン、石英、バリウムホウ珪酸ガラス等からなる基板を用いて、該基板上に、第1の電極層、配向制御層、薄膜圧電体層及び第2の電極層をこの順にスパッタ法等により形成して薄膜圧電体素子を作製する。こうすると、薄膜圧電体層は、成膜後の冷却過程で基板から厚み方向と垂直な方向に引張応力を受け圧縮応力を受けることはない。この結果、2つの薄膜圧電体素子の各薄膜圧電体層において厚み方向と垂直な方向に作用している残留応力が引張応力となる(2つの薄膜圧電体素子同士を接着したり被覆材で覆ったりしたとき等において応力が緩和されて0になってもよい)。これにより、薄膜圧電体層の圧電定数が低下するのを抑制することができる。ところで、このような引張残留応力が作用したままであると、アクチュエータの電圧印加による作動時に引張応力がより増大して、引張力に弱い薄膜圧電体層にクラックが生じ易くなる。しかし、ディスク装置用のアクチュエータでは、印加電圧が小さい(10V/μm未満)ので、引張応力がそれ程大きくならずに済み、長時間使用しても問題はない。
【0014】
一方、上記のようにシリコン基板等を用いると、MgO単結晶基板とは異なり、第1の電極層が(111)面配向となって、そのままでは薄膜圧電体層の結晶配向性が問題となるが、第1の電極層に、例えばチタンや酸化チタンを含有しておけば、このチタンや酸化チタンが第1の電極層の表面部に島状に点在することになり、第1の電極層上に形成される配向制御層は、この島状に点在するチタン又は酸化チタンを核にしてその上側に結晶成長し、これにより、チタン又は酸化チタン上において(100)面又は(001)面(立方晶系の場合は(100)面と(001)面とは同じである)に配向し易くなり、この(100)面又は(001)面配向の領域がその結晶成長に連れて広がって、配向制御層の厚みが20nm程度となった段階では表面の略全体が(100)面又は(001)面配向の領域となる(必ずしも表面全体が(100)面又は(001)面配向の領域とならなくてもよい)。こうして形成した配向制御層上に薄膜圧電体層を形成すれば、薄膜圧電体層は、エピタキシャル成長と上記の如く基板から引張応力を受けることとに起因して、(100)面配向となる(菱面体晶系の場合には、(100)面と(001)面とは同じあるので、(001)面に優先配向しているといえる)。この薄膜圧電体層が菱面体晶系のペロブスカイト型酸化物からなる場合には、分極軸は<111>方向であって、電界方向と分極軸方向との間に約54°の角度が生じ、正方晶系の場合には、分極軸は電界方向に対して90°横を向いてしまうため、いずれの場合でも分極軸が<001>方向となるように分極処理を施せばよい。但し、菱面体晶系の場合には、配向性を向上させることにより、電界印加に対して分極は常に一定の角度を保つことができるため、電界印加による分極の回転が起きず、分極処理を行わなくても、圧電特性を安定させることができる。
【0015】
したがって、MgO単結晶基板を用いずに、安価なシリコン基板やガラス基板等を用いても、薄膜圧電体層の結晶配向性を高く維持することができる。特にシリコン基板は、ドライエッチングにより除去することができ、これにより、エッチング液に対する薄膜圧電体層の保護膜を設ける必要はなく、薄膜圧電体層にダメージを与えることもない。よって、薄膜圧電体層の圧電定数が圧縮応力により低下するのを抑制することができるとともに、信頼性の高いアクチュエータを低コストで製造することできる。
【0016】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、第1の電極層は、チタン又は酸化チタンを含有する貴金属からなるものとする。
【0017】
このことにより、MgO単結晶基板を用いずにシリコン基板等を用いて薄膜圧電体素子を作製しても、チタン又は酸化チタンの含有により薄膜圧電体層の結晶配向性を容易に高くすることができる。
【0018】
請求項3の発明では、請求項2の発明において、第1電極層は、白金、イリジウム、パラジウム及びルテニウムの群から選ばれた少なくとも1種の貴金属からなり、該貴金属に含有されたチタン又は酸化チタンの含有量が0を越え20モル%以下であるものとする。
【0019】
このことにより、薄膜圧電体素子の各層をスパッタ法等に形成する際の温度に十分に耐えられるとともに、電極として適切な材料とすることができる。また、チタン又は酸化チタンの含有量は、20モル%を越えると配向制御層(延いては薄膜圧電体層)の結晶性及び配向性が低下するので、このように20モル%以下とするのがよい。
【0020】
請求項4の発明では、請求項1〜3のいずれか1つの発明において、配向制御層は、立方晶系又は正方晶系の(100)面又は(001)面に優先配向したペロブスカイト型酸化物からなるものとする。
【0021】
こうすることで、薄膜圧電体層の材料としては、通常、PZT等のペロブスカイト型酸化物を用いるので、この薄膜圧電体層の結晶配向制御が容易となる。
【0022】
請求項5の発明では、請求項4の発明において、配向制御層は、ジルコニウムの含有量が0以上20モル%以下でありかつランタンの含有量が0を越え30モル%以下であるチタン酸ランタンジルコン酸鉛からなるものとする。
【0023】
このようなチタン酸ランタンジルコン酸鉛(PLZT)(ジルコニウムの含有量が0である場合のチタン酸ランタン鉛(PLT)を含む)を配向制御層に用いれば、配向制御層が(100)面又は(001)面により一層配向し易くなり、延いては薄膜圧電体層の配向性を向上させることができる。しかも、このようにジルコニウムの含有量を20モル%以下とし、ランタンの含有量を0を越え30モル%以下とすれば、配向制御層の結晶性や配向性が格段に向上する。特にジルコニウムの含有量が少ないほど、結晶成長初期にZr酸化物からなる結晶性の低い層が形成され難くなり、結晶性の低下が確実に抑制される。
【0024】
請求項6の発明では、請求項1〜5のいずれか1つの発明において、薄膜圧電体層は、菱面体晶系の(001)面に優先配向したペロブスカイト型酸化物からなるものとする。
【0025】
このことにより、上述の如く、分極処理を行わなくても、圧電特性を安定させることができるとともに、分極処理を行う場合であっても、室温で比較的容易に行うことができる(例えば15V/μmの電圧を30分間印加するだけでよい)。この結果、高温(100℃程度)で分極処理を行わなければならない正方晶系とは異なり、分極処理による体積変化が小さく、分極処理を行うとクラックが生じるというような問題は全くない。
【0026】
請求項7の発明では、請求項6の発明において、薄膜圧電体層は、チタン酸ジルコン酸鉛を主成分とする圧電材料からなるものとする。
【0027】
こうすることで、圧電特性が良好な圧電材料とすることができ、高性能のアクチュエータが容易に得られる。
【0028】
請求項8の発明は、ディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータの製造方法の発明であり、この発明では、基板上に、第1の電極層、配向制御層、薄膜圧電体層及び第2の電極層をこの順に形成して薄膜圧電体素子を作製する素子作製工程と、上記素子作製工程で作製した薄膜圧電体素子を2つ用いて、該2つの薄膜圧電体素子における第2の電極層側の面同士を接着する接着工程と、上記接着工程で接着した2つの薄膜圧電体素子のうちの一方の側に位置する基板を除去する第1の基板除去工程と、上記第1の基板除去工程後に、上記接着した2つの薄膜圧電体素子を所定の形状に加工する加工工程と、上記加工した2つの薄膜圧電体素子において他方の側に位置する基板との接合面を除く表面全体を被覆材で覆う被覆工程と、上記被覆工程後に、上記他方の側に位置する基板を除去する第2の基板除去工程とを含み、上記素子作製工程において、線膨張係数が薄膜圧電体層よりも小さい基板を用いて、該基板上に上記各層を形成するようにする。
【0029】
この発明により、線膨張係数が薄膜圧電体層よりも小さい基板を用いて薄膜圧電体素子を作製するので、薄膜圧電体層は、成膜後の冷却過程で基板から厚み方向と垂直な方向に引張応力を受け圧縮応力を受けることはなく、請求項1の発明と同様に、薄膜圧電体層において厚み方向と垂直な方向に作用している残留応力が、0ないし引張応力となる。よって、請求項1の発明と同様の作用効果が得られる。
【0030】
請求項9の発明では、請求項8の発明において、基板はシリコンからなるものとする。
【0031】
このことにより、安価で入手し易く、しかもドライエッチングにより除去が可能であるので、アクチュエータの製造コストを格段に低減することができる。
【0032】
請求項10の発明では、請求項9の発明において、第1及び第2の基板除去工程において、基板をドライエッチング法により除去するようにする。
【0033】
こうすることで、エッチング液に対する薄膜圧電体層の保護膜を設けなくても済み、また、たとえ第1の電極層にピンホールが存在していたとしても、薄膜圧電体層にダメージを与えることもなく、よって、信頼性の高いアクチュエータが得られる。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1及び図2は、本発明の実施形態に係るディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータ10を備えたディスク装置のヘッド支持機構を示す。
【0035】
このヘッド支持機構100は、ヘッド1が取り付けられたスライダ2を先端部に支持するロードビーム4を有している。このロードビーム4は、ヘッドアクチュエータアーム(図示しない)に取り付けられる正方形状をなす基端部4Aを有し、この基端部4Aは、ビーム溶接等によってベースプレート5に固定されている。このベースプレート5も、上記ヘッドアクチュエータアームに取り付けられている。また、上記ロードビーム4には、上記基端部4Aから先細状に延出するネック部4Bに連続して、ビーム部4Cが直線状に延出するように設けられている。上記ネック部4Bの中央部には、開口部4Dが設けられており、ネック部4Bにおける開口部4Dの両側部分が、それぞれ板バネ部4Eになっている。
【0036】
図3に示すように、上記スライダ2には、MR素子を含むヘッド1が設けられている。また、このヘッド1が設けられた端面の下部には、4つの端子2A〜2Dが横方向に並んだ状態で設けられている。さらに、スライダ2の上面には、回転駆動される磁気ディスクにより生じる空気流が該スライダ2のピッチ方向(磁気ディスクの接線方向)に沿って通流することによって磁気ディスクとの間にエア潤滑膜を形成するエアベアリング面2Eが設けられている。
【0037】
図2に示すように、上記ロードビーム4のビーム部4C上には、ヘッド配線パターン6を有するフレクシャ7が該ロードビーム4の長さ方向に延びるように設けられている。このフレクシャ7は、ステンレス材をベースとしている。このフレクシャ7の一端部に位置するスライダ取付部7X上に、上記ヘッド1が搭載されたスライダ2が配置される。
【0038】
図4に示すように、上記フレクシャ7のスライダ取付部7Xには、ステンレス等のフレクシャ基板3上においてパターン化されて上記端子2A〜2Dにそれぞれ接続されるヘッド配線6A,6B,6C,6Dが形成されている。このスライダ取付部7Xにおけるスライダ取付面と反対側の面には、スライダ保持基板3Aが貼り付けられている。このスライダ保持基板3Aは、上記フレクシャ基板3と同時にエッチング加工により外形が形成されるものである。また、スライダ保持基板3Aには、突起部3Bが形成され、この突起部3Bは、上記ロードビーム4の先端近傍に形成されたディンプル4G(図2参照)に当接している。この突起部4Bがディンプル4Gによって押圧されることにより、スライダ保持基板3Aは、ディンプル4Gを中心として全方位に亘って回動可能に保持されている。そして、上記スライダ2は、上記エアベアリング面2Eの中心位置が上記ロードビーム4のディンプル4Gに一致するように、スライダ保持板3A上に接着される。
【0039】
上記ロードビーム4のビーム部4Cの先端部における両側縁部には、スライダ保持板3Aの回動を若干の隙間をもって規制する規制部4Fがそれぞれ設けられている。この各規制部4Fは、ビーム部4Cの先端から基端部4A側に向かって直線状に延出している。
【0040】
上記フレクシャ7の他端部には、図2に示すように、外部接続用端子保持部7Yが形成されている。この端子保持部7Yは、ロードビーム4の基端部4Aにおける一方の側縁部に配置されている。また、フレクシャ7におけるスライダ取付部7Xの端子保持部7Y側には、左右に並んで配設された一対の薄膜圧電体アクチュエータ10(図5及び図6では、それぞれ10A及び10Bの符号を付している)が、それぞれ接着により取り付けられるアクチュエータ保持部8A,8Bが設けられている。
【0041】
図5は、上記薄膜圧電体アクチュエータ10の平面図を、図6はその断面図をそれぞれ示す。この各薄膜圧電体アクチュエータ10は、図6に示すように、第1の電極層31と、この第1の電極層31上に形成された配向制御層32と、この配向制御層32上に形成された薄膜圧電体層33と、この薄膜圧電体層33上に形成された第2の電極層34とからなる2つの薄膜圧電体素子30を有している。これら2つの薄膜圧電体素子30は、第2の電極層34側の面同士が対向するように上下にそれぞれ配設されていて、その第2の電極層34側の面同士が接着剤41により接着されることで一体化されている。この接着剤41は導電性のものであり、このことで、2つの第2の電極層34は電気的に短絡されている。また、これら接着された2つの薄膜圧電体素子において一方(下側)の薄膜圧電体素子30の第1の電極層31側の面を除く表面全体が、柔軟性のある絶縁樹脂からなる被覆材42で覆われている。
【0042】
上記2つの薄膜圧電体素子30の各薄膜圧電体層33において厚み方向と垂直な方向に作用している残留応力は、後述の製造方法により、0ないし引張応力となっている。つまり、各薄膜圧電体層33には、厚み方向と垂直な方向に作用している圧縮残留応力は存在していない。
【0043】
上記第1の電極層31は、チタン又は酸化チタンを含有する貴金属で構成するのがよい。この貴金属としては、白金、イリジウム、パラジウム及びルテニウムの群から選ばれた少なくとも1種であることが望ましい。また、チタン又は酸化チタンの含有量は0を越え20モル%以下であることが好ましい。この第1の電極層31の厚みは0.05〜2μmの範囲であればよい。尚、チタン又は酸化チタンの代わりに、Mg、Ca、Sr及びBa並びにこれらの酸化物の群から選ばれた少なくとも1種の添加物を貴金属に添加するようにしてもよい。また、Co、Ni、Fe、Mn及びCu並びにこれらの酸化物の群から選ばれた少なくとも1種の金属を貴金属に添加するようにしてもよい。
【0044】
上記配向制御層32は、立方晶系又は正方晶系のペロブスカイト型酸化物、特にジルコニウムの含有量が0以上20モル%以下でありかつランタンの含有量が0を越え30モル%以下であるチタン酸ランタンジルコン酸鉛(PLZT)(ジルコニウムの含有量が0である場合のチタン酸ランタン鉛(PLT)を含む)で構成することが望ましい。この配向制御層32は、(100)面又は(001)面(立方晶系の場合は(100)面と(001)面とは同じである)に優先配向している。また、この配向制御層32の厚みは0.01〜0.2μmの範囲であればよい。
【0045】
上記薄膜圧電体層33は、菱面体晶系又は正方晶系のペロブスカイト型酸化物、特にチタン酸ジルコン酸鉛(Zr/Ti=53/47)を主成分とする圧電材料で構成することが望ましい。また、正方晶系よりも菱面体晶系の方が、分極処理を必ずしも行う必要がなく分極処理を行うとしても容易にできる点で好ましい。この薄膜圧電体層33は、(100)面に優先配向している(菱面体晶系の場合には、(100)面と(001)面とは同じあるので、(001)面に優先配向しているといえる)。また、この薄膜圧電体層33の厚みは0.5〜5.0μmの範囲であればよい。
【0046】
上記第2の電極層34は、Pt等の導電性材料からなっている。この第2の電極層34の厚みは0.1〜0.4μmの範囲であればよい。
【0047】
ここで、上記薄膜圧電体アクチュエータ10の製造方法について図11及び図12を用いて説明する。
【0048】
先ず最初に、線膨張係数が上記薄膜圧電体層33よりも小さい基板51を用意する。すなわち、上記薄膜圧電体層33の線膨張係数は50×10−7/℃程度であるので、基板51の材料として、シリコン(28×10−7/℃)、石英(5×10−7/℃)、バリウムホウ珪酸ガラス(46×10−7/℃)等を用いる。中でもシリコンは、安価で入手し易く、しかも後述のドライエッチングにより除去が可能であるので、非常に好ましい。
【0049】
そして、図11(a)に示すように、上記基板51上に第1の電極層31をスパッタ法により形成する。例えば、多元スパッタ装置を使用して、Tiターゲット及びIrターゲットを用い、基板51を600℃に加熱しながら1Paのアルゴンガス中において160W及び200Wの高周波電力で12分間形成する。こうして形成された第1の電極層の表面部には、チタン(アルゴンと酸素との混合雰囲気中でスパッタリングすれば、酸化チタンとなる)が島状に点在する。この第1の電極層31は、通常、(111)面配向となる。
【0050】
尚、基板51と第1の電極層31との間に、該基板51と第1の電極層31との密着性を高める密着層を形成するようにしてもよい。この場合、この密着層は、Ti、タンタル、鉄、コバルト、ニッケル若しくはクロム又はそれらの化合物で構成すればよく、その厚みは0.005〜1μmの範囲であればよい。そして、後述の如く基板51を除去する際には、この密着層も除去する。
【0051】
続いて、図11(b)に示すように、上記第1の電極層31上に配向制御層32をスパッタ法により形成する。例えば、ランタンを14モル%含有するPLTに酸化鉛(PbO)を12モル%過剰に加えて調合した焼結ターゲットを用い、基板51の温度600℃で、アルゴンと酸素との混合雰囲気中(ガス体積比Ar:O2=19:1)において、真空度0.8Pa、高周波電力300Wの条件で12分間スパッタリングすることで形成する。このとき、配向制御層32は、上記島状に点在するチタン又は酸化チタンを核にしてその上側に結晶成長し、これにより、チタン又は酸化チタン上において(100)面又は(001)面に配向し易くなる。尚、第1の電極層31に、Mg、Ca、Sr、Ba、Co、Ni、Fe、Mn又はCuを添加した場合には、酸化物の形態で添加しなくても、配向制御層32を形成する際において酸素が存在すれば、その表面部に点在する添加物は酸化物となり、その酸化物はMgO単結晶基板と同じ結晶構造であるNacl型酸化物であるため、配向制御層32は、上記添加物(酸化物)を核にしてその上側に結晶成長し、これにより、添加物上において(100)面又は(001)面に配向し易くなる。
【0052】
一方、配向制御層32において第1の電極層31の表面部におけるチタン又は酸化チタンが存在しない部分の上側領域では、(100)面や(001)面配向とはならず、(111)面配向やアモルファスになる。しかし、結晶成長に連れて、上記(100)面又は(001)面配向の領域が広がるため、配向制御層32の厚みが20nm程度となった段階では表面の略全体が(100)面又は(001)面配向の領域となる(必ずしも表面全体が(100)面又は(001)面配向の領域とならなくてもよく、配向制御層32の厚みを0.01μm程度としてもよい)。
【0053】
その後、図11(c)に示すように、上記配向制御層32上に薄膜圧電体層33をスパッタ法により形成する。例えば、PZT(Zr/Ti=53/47)の焼結体ターゲットを用い、基板51の温度610℃で、アルゴンと酸素との混合雰囲気中(ガス体積比Ar:O2=19:1)において、真空度0.3Pa、高周波電力250Wの条件で2時間スパッタリングすることで形成する。この薄膜圧電体層33は、成膜後の冷却過程で基板51から厚み方向と垂直な方向に引張応力を受け圧縮応力を受けることはない。すなわち、基板51の線膨張係数が薄膜圧電体層33よりも小さいので、基板51を所定温度に加熱した状態で成膜した後に冷却すると、薄膜圧電体層33の方が基板51よりも収縮量が大きくてより収縮しようとするが、その収縮が基板51によって制限されるため、薄膜圧電体層33は基板51から厚み方向と垂直な方向に引張応力を受けることになる。この引張応力を受けることとエピタキシャル成長とに起因して、薄膜圧電体層33は(100)面配向(菱面体晶系の場合には、(001)面配向)となる。この薄膜圧電体層33が菱面体晶系のペロブスカイト型酸化物からなる場合には、分極軸は<111>方向であって、電界方向と分極軸方向との間に約54°の角度が生じ、正方晶系の場合には、分極軸は電界方向に対して90°横を向いてしまうため、いずれの場合でも分極軸が<001>方向となるように分極処理を施す。但し、菱面体晶系の場合には、配向性を向上させることにより、電界印加に対して分極は常に一定の角度を保つことができるため、電界印加による分極の回転が起きず、分極処理を行わなくても、圧電特性を安定させることができる。また、分極処理を行う場合であっても、室温で比較的容易に行うことができ(例えば15V/μmの電圧を30分間印加するだけでよい)、高温(100℃程度)で分極処理を行わなければならない正方晶系とは異なり、分極処理による体積変化が小さく、分極処理を行うとクラックが生じるというような問題は全くない。
【0054】
次いで、図11(d)に示すように、上記薄膜圧電体層33上に第2の電極層34をスパッタ法により形成する。例えば、Ptターゲットを用いて、室温において1Paのアルゴンガス中200Wの高周波電力で10分間形成する。こうして、薄膜圧電体素子30が完成する。
【0055】
尚、上記薄膜圧電体素子30の各層の形成は、スパッタ法に限らず、CVD法やゾル・ゲル法等であってもよい。
【0056】
次に、図12(a)に示すように、上記のようにして作製した薄膜圧電体素子30を2つ用意して、該2つの薄膜圧電体素子30における第2の電極層34側の面同士を対向させ、その後、図12(b)に示すように、その第2の電極層34側の面同士を接着剤41により接着する。尚、この第2の電極層34側の面同士を、超音波振動を用いた熱溶着により接着するようにしてもよい。
【0057】
続いて、図12(c)に示すように、上記接着した2つの薄膜圧電体素子30のうちの一方の側に位置する基板51を除去する。この基板51の除去は、該基板51がシリコンからなる場合には、ドライエッチング法で行うことが望ましい。こうすれば、エッチング液に対する薄膜圧電体層の保護膜を設けなくても済み、また、たとえ第1の電極層にピンホールが存在していたとしても、薄膜圧電体層にダメージを与えることもない。
【0058】
次いで、図12(d)に示すように、上記接着した2つの薄膜圧電体素子30の第1の電極層31、配向制御層32、薄膜圧電体層33及び第2の電極層34を、ドライエッチング法により所定の形状に加工し、その後、その加工した2つの薄膜圧電体素子30において他方の側に位置する基板51との接合面を除く表面全体を被覆材42で覆う。
【0059】
続いて、上記他方の側に位置する基板51をドライエッチング法により除去することで、薄膜圧電体アクチュエータ10が完成する。尚、ここでは省略したが、後述するように、グランド取出部20及び電極取出部22,23(図5及び図13参照)の形成を行う必要がある。
【0060】
上記のようにして作製した薄膜圧電体アクチュエータ10における2つの薄膜圧電体素子30の各薄膜圧電体層33において厚み方向と垂直な方向に作用している残留応力は、薄膜圧電体素子30を作製したときに薄膜圧電体層33が基板51から受ける引張応力が残留するために、引張応力となっている(2つの薄膜圧電体素子30同士を接着したり被覆材42で覆ったりしたとき等において応力が緩和されて0になってもよい)。
【0061】
図7は、フレクシャ7をスライダ2側から見た平面図であり、図8は、図7のX−X線断面図であり、図9は、フレクシャ7をスライダ保持基板3A側から見た底面図である。図8に示すように、上記アクチュエータ保持部8A,8Bにおける基板15A,15Bは、配線6をエッチング加工等でパターン形成するときに同時に形成するため、材質及び厚みは配線6と同一でかつ同一平面に形成される。この基板15A,15Bは、配線6と共にポリイミド樹脂等の絶縁材料16でコーティングされている。尚、基板15A,15Bにおいて薄膜圧電体アクチュエータ10A,10Bをそれぞれ接着する面には、絶縁材料16はなくて基板15A,15Bが露出して、薄膜圧電体アクチュエータ10A,10Bと基板15A,15Bとの接着強度を確保している。図10は、フレクシャ7のアクチュエータ保持部8A,8Bに薄膜圧電体アクチュエータ10A,10Bをそれぞれ接着剤17により接着した状態を示す。
【0062】
上記フレクシャ7におけるアクチュエータ保持部8A,8Bの端子保持部7Y側には、アクチュエータ用端子9A,9B,9C,9Dが設けられており、この端子9A,9B,9C,9Dは、端子保持部7Yに一方の端部が設けられて外部の駆動回路に接続されている。
【0063】
上記フレクシャ7におけるアクチュエータ保持部8A,8Bとスライダ取付部7Xとの間のつなぎ部分は、局部的に狭い幅で形成された弾性ヒンジ部19A,19Bとされている。
【0064】
ここで、図13を参照して、薄膜圧電体アクチュエータ10(10A,10B)の電極の取り方について説明する。図13は、図5及び図7のY−Y線に相当する位置における薄膜圧電体アクチュエータ10A、10Bとアクチュエータ用端子9との接合状態を示す断面図である。
【0065】
各薄膜圧電体アクチュエータ10において2つの薄膜圧電体素子30の各第1の電極層31には、電極取出部22,23を介してプラス電圧がそれぞれ印加され、2つの第2の電極層34はグランド取出部20を介してグランドレベルになるように設定される。
【0066】
上記薄膜圧電体アクチュエータ10のグランド取出部20の加工方法を説明する。図13に示すように、グランド取出部20において上側の薄膜圧電体素子30の第1の電極層31、配向制御層32及び薄膜圧電体層33を第1のエッチング加工で第2の電極層34上面まで加工する。その後、第1のエッチング加工範囲の内側で上記第2の電極層34を一部残した状態で、該第2の電極層34、接着剤13及び下側の薄膜圧電体素子30の第2の電極層34を第2のエッチング加工で取り除く。次いで、グランド取出部20における上側の薄膜圧電体素子30の第1の電極層31、配向制御層32及び薄膜圧電体層33を、被覆材42で覆う。最後に2つの薄膜圧電体素子30の第2の電極層34同士を短絡するグランド金属端子膜21を形成してグランド電極を構成する。このグランド金属端子膜21(2箇所)は、ボンディングワイヤ24で上記アクチュエータ用端子9B,9Cに接続されている。
【0067】
上記電極取出部22では、被覆材42が一部取り除かれて、上側の薄膜圧電体素子30の第1の電極層31が露出している。一方、電極取出部23では、被覆材42が一部取り除かれており、この取り除かれた部分から下側の薄膜圧電体素子30の第1の電極層31が側方に突出している。そして、電極取出部22,23における2つの第1の電極層31がボンディングワイヤ34により上記アクチュエータ用端子9A,9Dに接続されている。
【0068】
このような構成のヘッド支持機構100の動作について、図14〜図16を用いて説明する。図14はヘッド支持機構100を横方向から見た側面図であり、図15(a)は、図14中の薄膜圧電体アクチュエータ10A(10B)の一部を拡大して示す、フレクシャ7の長さ方向に沿って切断した断面図であり、図15(b)及び(c)は、アクチュエータ用端子9A,9Dに印加する電圧の波形を示す。
【0069】
アクチュエータ用端子9B,9Cはグランドレベルに設定され、アクチュエータ用端子9A,9Dには、図15(b)及び(c)に示すように、バイアス電圧V0を中心として互いに逆位相のプラスの駆動電圧が印加される。この駆動電圧が印加されると、図15(a)に示すように、各薄膜圧電体アクチュエータ10において2つの薄膜圧電体素子30の薄膜圧電体層33は矢印Bの方向に収縮したり矢印Cの方向に伸長したりするが、基板15A(15B)があるために、薄膜圧電体アクチュエータ10A(10B)は反りを持った状態になる(図15(a)は、薄膜圧電体層33が収縮した状態を示す)。
【0070】
上記の薄膜圧電体層33の伸縮によりフレクシャ7のアクチュエータ保持部8A(8B)も伸縮して、フレクシャ基板3のアクチュエータ保持部8A(8B)との境界部3X(図9参照)とフレクシャ7の弾性ヒンジ部19A(19B)との間の平面距離L(図9参照)が変化する。また、これと同時にアクチュエータ保持部8A(8B)の反り状態も変化し、この反りに起因してアクチュエータ保持部8A(8B)の曲率が変化する。この曲率変化によっても上記平面距離Lが変化する。したがって、上記平面距離Lの変化には、反りに起因する曲率変化による効果が加算されることになる。
【0071】
図16(a)は、薄膜圧電体アクチュエータ10Aが矢印C方向に伸長しかつアクチュエータ10Bが矢印B方向に収縮したときのスライダ2の回転動作を説明する図であり、図16(b)は、その模式図である。アクチュエータ保持部8Aと薄膜圧電体アクチュエータ10Aとからなる第1のビーム161と、アクチュエータ保持部8Bと薄膜圧電体アクチュエータ10Bとからなる第2のビーム162とが、ディンプル4Gを中心として回動するスライダ保持基板3Aに回動自在に連結され、ヘッド1はディンプル4Gから距離Dを置いて、スライダ保持基板3Aに固定されたスライダ2上に設けられていることになる。このことより、薄膜圧電体アクチュエータ10Aが矢印C方向に伸長しかつ薄膜圧電体アクチュエータ10Bが矢印B方向に収縮すると、スライダ2及びスライダ保持基板3Aは、突起部3Bに当接するディンプル4Gを中心に矢印E方向に回動する。したがって、スライダ2に設けられたヘッド1は、磁気ディスクに同心状態で設けられた各トラックの幅方向に移動することになる。これにより、ヘッド1をトラックに追従させるオントラック性を高精度で実施することができる。
【0072】
尚、弾性ヒンジ部19A,19Bの幅寸法は、ヘッド配線6A,6B,6C,6Dが配置されるために必要な最小限の幅寸法としておけば、スライダ保持基板3Aの回動時における負荷が低減されて、スライダ保持基板3Aが確実に回動する。また、弾性ヒンジ部19A,19Bは、スライダ2のロール方向及びピッチ方向に柔軟な構成となっているため、ディスクに対するスライダ2の良好な浮上特性を与える。
【0073】
上記スライダ2には、ロードビーム4の板バネ部4Eによりロード荷重(20〜30mN)が加えられており、スライダ保持基板3Aが回動するときに、このロード荷重が、スライダ保持基板3Aの突出部3Bとディンプル4Gとの間に作用する。したがって、スライダ保持基板3Aには、スライダ保持基板3Aの突出部3Bとディンプル4Gとの間の摩擦係数にて決定される摩擦力が作用し、この摩擦力により、スライダ保持基板3Aの突出部3Bとディンプル4Gとの間に位置ずれが生じることはない。
【0074】
したがって、上記実施形態では、線膨張係数が薄膜圧電体層33よりも小さい基板51を用いて、該基板51上に、第1の電極層31、配向制御層32、薄膜圧電体層33及び第2の電極層34をこの順に形成して薄膜圧電体素子30を作製することで、該薄膜圧電体素子30の薄膜圧電体層33において厚み方向と垂直な方向に作用している残留応力が、0ないし引張応力となるようにしたことにより、薄膜圧電体層33の圧電定数が圧縮応力により低下するのを抑制することができるとともに、シリコン基板やガラス基板等のような安価な基板を使用することができる。そして、このような基板51を用いても、第1の電極層31へのチタン、酸化チタン等の添加と、この第1の電極層31上に形成した配向制御層32とにより、薄膜圧電体層33の結晶配向性を高く維持することができる。よって、圧電定数の低下がなく信頼性の高いアクチュエータを低コストで製造することできる。
【0075】
次に、具体的に実施した実施例について説明する。
【0076】
先ず、上記実施形態と同様にして本発明のアクチュエータを作製した。すなわち、厚みが0.2mmであって線膨張係数が28×10−7/℃であるシリコンからなる基板を用意し、この基板上に、第1の電極層、配向制御層、薄膜圧電体層及び第2の電極層をこの順にスパッタ法により形成して薄膜圧電体素子を作製した。
【0077】
上記第1の電極層は、厚みが0.2μmであり、多元スパッタ装置を使用して、Tiターゲット及びIrターゲットを用い、基板を600℃に加熱しながら1Paのアルゴンガス中において160W及び200Wの高周波電力で12分間スパッタリングすることにより形成した。
【0078】
上記配向制御層は、厚みが0.03μmであり、ランタンを14モル%含有するPLTに酸化鉛(PbO)を12モル%過剰に加えて調合した焼結ターゲットを用い、基板の温度600℃で、アルゴンと酸素との混合雰囲気中(ガス体積比Ar:O2=19:1)において、真空度0.8Pa、高周波電力300Wの条件で12分間スパッタリングすることにより形成した。
【0079】
上記薄膜圧電体層は、厚みが2.5μmであり、PZT(Zr/Ti=53/47)の焼結体ターゲットを用い、基板の温度610℃で、アルゴンと酸素との混合雰囲気中(ガス体積比Ar:O2=19:1)において、真空度0.3Pa、高周波電力250Wの条件で2時間スパッタリングすることにより形成した。この薄膜圧電体層は、線膨張係数が56×10−7/℃である菱面体晶系のペロブスカイト型酸化物(PbZr0.53Ti0.47O3)からなり、その(001)面配向度をX線回折法で測定したところ、90%以上であった。尚、この(001)面配向度は、(001)面、(110)面及び(111)面の回折強度の和を100としたときの(001)面の回折強度の割合である。
【0080】
上記第2の電極層は、厚みが0.2μmであり、室温において1Paのアルゴンガス中200Wの高周波電力で10分間スパッタリングすることにより形成した。
【0081】
次いで、上記のようにして作製した薄膜圧電体素子を2つ用意して、該2つの薄膜圧電体素子における第2の電極層側の面同士を導電性接着剤により接着し、その後、2つの薄膜圧電体素子のうちの一方の側に位置する基板をドライエッチング法により除去した。そして、2つの薄膜圧電体素子を、ドライエッチング法により所定の形状に加工し、その後、その加工した2つの薄膜圧電体素子において他方の側に位置する基板との接合面を除く表面全体を、ポリイミドからなる厚み3μmの被覆材で被覆し、最後に、他方の側に位置する基板をドライエッチング法により除去することで、アクチュエータを得た。このアクチュエータにおける薄膜圧電体素子の薄膜圧電体層の圧電定数d31を調べたところ、−150pC/Nであった。
【0082】
一方、比較のために、線膨張係数が120×10−7/℃であるMgO単結晶基板を用いてアクチュエータを作製した。この作製方法は、上記本発明のアクチュエータと同様であるが、第1の電極層はPtで構成し、配向制御層は形成しないで該第1の電極層上に薄膜圧電体を直接形成した点が異なる。また、基板はドライエッチング法ではなくりん酸水溶液で除去した。このアクチュエータにおける薄膜圧電体素子の薄膜圧電体層の圧電定数d31を調べたところ、−80pC/Nであった。
【0083】
したがって、本発明のように線膨張係数が薄膜圧電体層よりも小さい基板を用いて薄膜圧電体素子を作製することで、この薄膜圧電体素子の薄膜圧電体層の圧電定数を高レベルに維持できることが判る。
【0084】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータによると、薄膜圧電体層において厚み方向と垂直な方向に作用している残留応力を、0ないし引張応力となるようにした。また、本発明のディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータの製造方法によると、線膨張係数が薄膜圧電体層よりも小さい基板を用いて、該基板上に、第1の電極層、配向制御層、薄膜圧電体層及び第2の電極層をこの順に形成して薄膜圧電体素子を作製するようにした。したがって、これらの発明により、ディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータの薄膜圧電体層の圧電定数が圧縮応力により低下するのを抑制するとともに、信頼性の高いアクチュエータを低コストで製造できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータを備えたディスク装置のヘッド支持機構を示す斜視図である。
【図2】ヘッド支持機構の分解斜視図である。
【図3】ヘッド支持機構に使用されるスライダの斜視図である。
【図4】ヘッド支持機構に使用されるフレクシャの要部を示す斜視図である。
【図5】薄膜圧電体アクチュエータの平面図である。
【図6】図5のX−X線断面図である。
【図7】フレクシャの要部の平面図である。
【図8】図7のX−X線断面図である。
【図9】フレクシャの要部の底面図である。
【図10】フレクシャに薄膜圧電体アクチュエータを接着したときの図5及び図7のX−X線に相当する位置における断面図である。
【図11】薄膜圧電体素子の製造方法を示す概略図である。
【図12】薄膜圧電体アクチュエータの製造方法を示す概略図である。
【図13】フレクシャに薄膜圧電体アクチュエータを接着したときの図5及び図7のY−Y線に相当する位置における断面図である。
【図14】ヘッド支持機構の側面図である。
【図15】(a)は、ヘッド支持機構の動作を説明するための薄膜圧電体アクチュエータの一部を拡大した断面図であり、(b)及び(c)は、アクチュエータ用端子に印加する電圧の波形を示す図である。
【図16】(a)は、ヘッド支持機構の動作を説明するための要部平面図であり、(b)は、その模式図である。
【符号の説明】
1 ヘッド
2 スライダ
7 フレクシャ
10 ディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータ
30 薄膜圧電体素子
31 第1の電極層
32 配向制御層
33 薄膜圧電体層
34 第2の電極層
41 接着剤
42 被覆材
51 基板
Claims (10)
- 第1の電極層と、該第1の電極層上に形成された配向制御層と、該配向制御層上に形成された薄膜圧電体層と、該薄膜圧電体層上に形成された第2の電極層とからなる2つの薄膜圧電体素子を有し、該2つの薄膜圧電体素子における第2の電極層側の面同士が接着されているとともに、該接着された2つの薄膜圧電体素子において一方の薄膜圧電体素子の第1の電極層側の面を除く表面全体が被覆材で覆われてなるディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータであって、
上記2つの薄膜圧電体素子の各薄膜圧電体層において厚み方向と垂直な方向に作用している残留応力が、0ないし引張応力であることを特徴とするディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータ。 - 請求項1記載のディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータにおいて、
第1の電極層は、チタン又は酸化チタンを含有する貴金属からなることを特徴とするディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータ。 - 請求項2記載のディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータにおいて、
第1電極層は、白金、イリジウム、パラジウム及びルテニウムの群から選ばれた少なくとも1種の貴金属からなり、該貴金属に含有されたチタン又は酸化チタンの含有量が0を越え20モル%以下であることを特徴とするディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータ。 - 請求項1〜3のいずれか1つに記載のディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータにおいて、
配向制御層は、立方晶系又は正方晶系の(100)面又は(001)面に優先配向したペロブスカイト型酸化物からなることを特徴とするディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータ。 - 請求項4記載のディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータにおいて、
配向制御層は、ジルコニウムの含有量が0以上20モル%以下でありかつランタンの含有量が0を越え30モル%以下であるチタン酸ランタンジルコン酸鉛からなることを特徴とするディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータ。 - 請求項1〜5のいずれか1つに記載のディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータにおいて、
薄膜圧電体層は、菱面体晶系の(001)面に優先配向したペロブスカイト型酸化物からなることを特徴とするディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータ。 - 請求項6記載のディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータにおいて、
薄膜圧電体層は、チタン酸ジルコン酸鉛を主成分とする圧電材料からなることを特徴とするディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータ。 - 基板上に、第1の電極層、配向制御層、薄膜圧電体層及び第2の電極層をこの順に形成して薄膜圧電体素子を作製する素子作製工程と、
上記素子作製工程で作製した薄膜圧電体素子を2つ用いて、該2つの薄膜圧電体素子における第2の電極層側の面同士を接着する接着工程と、
上記接着工程で接着した2つの薄膜圧電体素子のうちの一方の側に位置する基板を除去する第1の基板除去工程と、
上記第1の基板除去工程後に、上記接着した2つの薄膜圧電体素子を所定の形状に加工する加工工程と、
上記加工した2つの薄膜圧電体素子において他方の側に位置する基板との接合面を除く表面全体を被覆材で覆う被覆工程と、
上記被覆工程後に、上記他方の側に位置する基板を除去する第2の基板除去工程とを含むディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータの製造方法であって、
上記素子作製工程において、線膨張係数が薄膜圧電体層よりも小さい基板を用いて、該基板上に上記各層を形成することを特徴とするディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータの製造方法。 - 請求項8記載のディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータの製造方法において、
基板はシリコンからなることを特徴とするディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータの製造方法。 - 請求項9記載のディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータの製造方法において、
第1及び第2の基板除去工程において、基板をドライエッチング法により除去することを特徴とするディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータの製造方法。
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