JP2004303825A - 積層軟磁性部材、電子機器 - Google Patents

積層軟磁性部材、電子機器 Download PDF

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Tsutomu Cho
勤 長
Akira Kakinuma
朗 柿沼
Yasuo Hashimoto
康雄 橋本
Katsuhiko Wakayama
勝彦 若山
Yasushi Iijima
康 飯島
Kazunori Tazaki
和則 田崎
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Abstract

【課題】広帯域に対応できる積層軟磁性部材、およびそれを用いた電子機器を提供することを目的とする。
【解決手段】携帯電話機等の電子機器に組み込む積層軟磁性部材5において、絶縁層6と軟磁性層7を積層し、絶縁層6や軟磁性層7の厚さを異ならせたり、厚さ分布を不均一とする構成とした。
【選択図】 図6

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、携帯電話等の電子機器、およびこの電子機器に取り付けて使用することのできる積層軟磁性部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
パーソナルコンピュータ、携帯電話機等の電子機器の高速動作処理化、デジタル化の発展に従って、電磁波障害(EMI:Electromagnetic Interference)が増加している。特に、デジタル機器はノイズにより誤動作を起こすこともあることから、デジタル機器から発生するノイズの低減が重要である。
現在も普及率が伸び続けているパーソナルコンピュータについてみると、CPUのクロック周波数の高周波化により、発生するノイズの周波数も一段と高くなってきている。クロック周波数が1GHzを超えるCPUが実用化されており、ノイズ対策の対象周波数は、5GHz程度の高周波帯域まで広がってきた。
従来、ノイズ対策の1つの手段として磁性材料で構成したノイズフィルタによりノイズを吸収することが行われている。ノイズフィルタを構成する代表的な磁性材料としてスピネル型の結晶構造をもつフェライト材料がある。高周波帯域では電気抵抗の大きい材料ほど渦電流損失が小さくなりノイズ吸収に有利となるから高周波帯域に関してはフェライト材料の中でも電気抵抗の大きいNi系フェライト材料が用いられてきた。しかし、ノイズがギガヘルツの帯域となると、「Snoekeの限界」が問題となる。つまり、フェライト材料のノイズ吸収帯域の上限は1GHzであり、近時の高周波ノイズに対応することは難しい。しかもフェライト材料は脆性材料であることから、落下、衝撃等で破壊されることがあった。
【0003】
1GHzを超える高周波領域でのノイズ吸収特性の優れた材料として、軟磁性金属粉末を樹脂、ゴム中に分散させた複合軟磁性部材が提案されている。例えば、扁平状のFe−Si系軟磁性合金粉末をゴム、樹脂中に配向・配列した複合磁性材料が提案されている(例えば特許文献1、非特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−35927号公報
【非特許文献1】
“工業材料”、平成10年(1998年)10月号、p.31〜35、p.36〜40
【0005】
この複合磁性材料は、高周波、かつ広帯域において優れたノイズ吸収特性を有している。しかも、ベースが可撓性のあるゴム、樹脂から構成されているため、フェライト材料のような落下、衝撃による破損の心配はない。したがって、この複合磁性材料は、極めて実用的なノイズ吸収体であるといえる。
【0006】
ところで、携帯電話機等において、ケーブルから放射される不要電磁波はノイズ吸収シートで低減できるが、アンテナから放射される電磁波の制御に対しては、電磁波のエネルギー低減を避けるため、前記のシートでは、電磁波を吸収するよりも反射するほうが好ましい。このとき、電磁波を制御するシートへ高周波電流が流れるのを抑制しつつ、磁性による放射効率改善を図ることが推奨される。アンテナと人体の間に置かれたシートに高周波電流が流れると、人体への電磁波の局所吸収量(SAR:Specific Absorption Rate)が増大するからである。
【0007】
そのため、携帯電話機から放射された電磁波の実効的な利用率、つまりSARの増大を抑制しつつ放射効率を向上する方法として、低損失磁性板をアンテナ近傍に配置する方法が提案されている。ところが、磁性微粉と樹脂からなる複合材料を用いた磁性板を使用する方法では、板厚を5mmとしても放射効率改善効果が0.6dBと小さい。携帯電話機の小型、軽量化に対応するため、板厚を0.2mm以下、さらには0.1mm以下にすることが望ましい。したがって、低損失磁性板を携帯電話機へ適用することは困難である。
【0008】
このためSARの増大を抑制して放射効率を増大させる部材として、上記の複合軟磁性部材を携帯電話機の筐体内部または外部に貼り付けることができる。このようなケースでは、携帯電話機の小型、軽量化に対応するため、積層軟磁性部材も薄型化する必要がある。具体的には、0.2mm以下の厚さにすることが望ましい。ところが、前述した複合軟磁性部材は、例えば、800MHz〜3GHzといった高周波数帯域における透磁率が低いため、厚さを0.2mm以下にしたのでは、所望の特性を得ることが困難である。
【0009】
従来の複合軟磁性部材は、前述のように、軟磁性金属粉末をゴム、プラスチック等の絶縁体マトリックスに混合分散させた構造を有している。ここで、マトリックス中に分散された軟磁性金属粉末間には反磁界が生じることになる。また、軟磁性金属粉末は、主に水アトマイズ法によって製造されるため、その後に熱処理を施しても、応力が残留してしまう。そのために、複合軟磁性部材は、800MHzを超える高周波数帯域における透磁率が劣る。
【0010】
そこで本出願人は、従来の複合軟磁性部材のように軟磁性金属粉末を分散させるのではなく、軟磁性金属からなる複数の層を絶縁層が介在した形態で積層することを検討した。そして、樹脂製のフィルム上にめっき等の手段により軟磁性金属膜を形成したシートを作成し、そのシートを積層することにより、厚さが0.2mm以下の積層軟磁性部材を得ることができ、この積層軟磁性部材は800MHzを超える高周波数帯域において従来の複合軟磁性部材に比べて優れた透磁率を示すことを確認するに到り、既に、「複数の軟磁性金属層と、前記複数の軟磁性金属層の間に介在する絶縁層と、が積層する積層体である積層軟磁性部材」等についての出願を為している(例えば特許文献2参照。)。
【0011】
【特許文献2】
特開2002−359113号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上記したような特許文献2等に示された積層軟磁性部材を用いることで、携帯電話機の筐体内部に収めたり外部に貼り付けたりすることで、SARの増大を抑制しつつ、高周波帯域における電磁波の放射効率を向上させることが可能となっている。
ところで、このような積層軟磁性部材をはじめとする電磁波制御部材を不要電磁波の減衰に用いる場合は、ノイズや電磁波を吸収できる周波数の帯域が広帯域であることが望まれている。携帯電話機等に組み込まれた各種の素子等から、様々な帯域のノイズが発生することが考えられるため、より少ない吸収体でこれに対応をするためである。また、吸収体のメーカ側にとっても、広帯域に対応できる吸収体があれば、狭帯域にしか対応できない吸収体を数多くラインナップするより、効率が良く、また狭帯域にしか対応できない吸収体よりも製品の魅力が高まるという利点があるからである。
【0013】
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、広帯域に対応できる積層軟磁性部材、およびそれを用いた電子機器を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
かかる目的のもと、本発明の積層軟磁性部材は、軟磁性金属によって形成された複数の磁性層と、絶縁材料によって形成された絶縁層とを含む複数の層が積層された積層軟磁性部材であって、複素透磁率が互いに異なる磁性層を少なくとも2以上備えることを特徴とする。そして、複素透磁率を互いに異ならせるには、例えば同一材料を用いる場合、磁性層の厚さを異なったものとすれば良い。また、複素透磁率が異なる材料、すなわち組成の異なる材料で複数の磁性層を形成しても良い。この他、異方性の大きさが異なる材料で複数の磁性層を形成することも可能である。
ここで、本発明は、磁性層を3以上備えている場合、複素透磁率が互いに異なる磁性層を少なくとも2以上備えていれば良く、複素透磁率が同一の磁性層の存在を許容するものである。
また、絶縁層についても、層の厚さが互いに異なる複数の絶縁層を備えることができる。
さらに、磁性層および/または絶縁層は、同一の層内における厚さの分布が不均一であってもよい。
このような積層軟磁性部材は、用途を限定するものではないが、特に携帯電話機等、コンパクトであるものが求められる電子機器に組み込む場合、全体の厚さが0.5mm以下であることが好ましい。また、積層軟磁性部材全体に対し、全ての磁性層を合計した占積率が1〜90%であるのが好ましい。さらに、それぞれの磁性層は、その最大厚さが5μm以下であるのが良い。絶縁層は、それぞれの厚さが0.1μm以上であるのが良い。
【0015】
本発明の電子機器は、その外殻をなす筐体内に積層軟磁性部材を配設した構成を有し、この積層軟磁性部材は、軟磁性金属によって形成された複数の磁性層と、絶縁材料によって形成された複数の絶縁層とを含んで形成される。そして、複数の磁性層および/または複数の絶縁層は、層の厚さが2種類以上に設定されていることを特徴とする。磁性層の厚さを2種類以上に設定することで、磁性層の複素透磁率の周波数特性を磁性層によって異ならせることができる。
また、電子機器が、素子を実装した回路基板を備える場合、筐体内で回路基板に対向するよう配設される積層軟磁性部材は、素子に対向する側の絶縁層を他の絶縁層より厚くすることができる。
このような電子機器としては、例えば、携帯電話機を初め、PC(Personal Computer)、PDA(Personal Digital Assistants)、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)端末等がある。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
<軟磁性シート>
図1および図2は、本発明の積層軟磁性部材に用いられる軟磁性シートの例を示している。
図1に示す軟磁性シート1は、樹脂フィルム2と、樹脂フィルム2上に形成された下地金属層3と、下地金属層3上に形成された軟磁性金属層4とから構成される。
樹脂フィルム2は、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、ポリアミドイミド樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂等の耐熱性を有する樹脂材料、または、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等の樹脂材料を用いることができる。
軟磁性金属層4は、軟磁性を示す遷移金属元素のいずれか、あるいは遷移金属元素と他の金属元素とからなる合金により構成することができる。具体的な例としては、Fe、CoおよびNiの一種以上を主成分とする合金であり、Fe−Ni系合金、Fe−Co系合金、Co−Ni系合金が該当する。これらの中で、飽和磁束密度が1.0T以上の合金が望ましい。またこの中で、Feを20〜80wt%含有するFe−Ni系合金が本発明にとって望ましい。特に、Feを30〜70wt%、さらにはFeを40〜65wt%含有するFe−Ni系合金が望ましい。また、Fe−Co系合金、Co−Ni−Fe系合金が本発明にとって望ましい。また、Coを20〜60at%含有するFe−Co系合金であって、飽和磁束密度が2.0T以上の合金を用いるのが望ましい。これら合金において、15at%以下のNb、Mo、Ta、W、Zr、Mn、Ti、Cr、Cu、Coの一種以上を含有することができる。また、軟磁性金属層4をめっきで形成する場合にはCおよびS等の元素を不可避的に含むが、本発明の軟磁性金属層4は、そのような元素の含有を許容する。
軟磁性金属層4は、結晶質合金および非晶質合金のいずれの態様であっても構わない。非晶質合金としては、Co系およびFe系の非晶質合金を用いることができる。また、Fe系の微結晶合金を用いることも本発明は許容する。微結晶合金は、一般的に、結晶粒径が10nm以下の微細な結晶が主体をなす合金として知られている。
【0017】
軟磁性金属層4は、樹脂フィルム2上に直接または間接的に形成される軟磁性金属膜であり、めっき(電解または無電解)、真空蒸着法、スパッタリング法等の各種の膜形成プロセスによって作成することができる。これらの膜形成プロセスは、単独で行うことができる。したがって、めっきのみで軟磁性金属層4を形成することもできるし、蒸着のみで軟磁性金属層4を形成することもできる。もちろん、複数の膜形成プロセスを組み合わせることもできる。めっきは、真空蒸着法、スパッタリング法に比べて低温で膜を形成することができる点で好適である。本発明において、軟磁性金属層4は樹脂フィルム2上に形成するため、樹脂フィルム2に熱的な影響を与えないことが望ましいからである。また、めっきは、スパッタリング法に比べて、短時間で所定の厚さの膜を得ることができるメリットがある。なお、めっきにより軟磁性金属層4を得る場合、めっき浴中に含まれているS等の元素が軟磁性金属層4に混入することから、他のプロセスによる軟磁性金属層4との区別ができる。
【0018】
下地金属層3は、軟磁性金属層4を電解めっきによって樹脂フィルム2上に形成する場合に必要となる導電層としての役割を果たす。下地金属層3は、例えば、真空蒸着法によって形成することができる。また、無電解めっきにより下地金属層3を形成した後に、電解めっきにより軟磁性金属層4を形成することもできる。電解めっき以外の方法で軟磁性金属層4を形成する場合には、下地金属層3を形成する必要はない。つまり、下地金属層3は本発明において選択的な要素である。もっとも、下地金属層3に軟磁性金属を用いる場合には、下地金属層3が軟磁性金属層4の一部を構成することになる。
【0019】
次に、軟磁性シート1において、樹脂フィルム2の厚さは、50μm以下とする。樹脂フィルム2は、本発明の積層軟磁性部材において、軟磁性金属層4同士を絶縁する機能を果たす。しかし、この絶縁層が厚くなるとの占有率が低下し、ひいては積層軟磁性部材としての透磁率が低下するためである。望ましい樹脂フィルム2の厚さは10μm以下である。もっとも、極端に薄い樹脂フィルム2は製造が困難であるとともに、軟磁性金属層4を形成するための所定の強度を持つことができなくなる。したがって、0.2μm以上あるいは、2μm以上の厚さとすることが推奨される。
【0020】
図2に示す軟磁性シート11は、図1に示した軟磁性シート1の軟磁性金属層4が樹脂フィルム2の片面に形成されているのに対して、両面に形成されている点で相違する。つまり、軟磁性シート11は、樹脂フィルム12と、樹脂フィルム12の表裏両面に形成された下地金属層13a、13bと、下地金属層13a、13b上に形成された軟磁性金属層14a、14bとから構成される。樹脂フィルム12、下地金属層13a、13bおよび軟磁性金属層14a、14bの材質、寸法および作成プロセスは、軟磁性シート1と同様にすればよい。
また、本発明の軟磁性シート11において、軟磁性金属層14aの上に樹脂層を形成することもできる。
【0021】
<積層軟磁性部材>
図3、図4は本実施の形態による積層軟磁性部材5の例を示す断面図である。図3および図4に示すように、積層軟磁性部材5は、絶縁層6と軟磁性層7とが交互に積層された断面構造を有している。このような積層軟磁性部材5は、図1および図2で示した軟磁性シート1、11を積層することにより得ることができる。図4に示した構成の場合、軟磁性シート11は、表裏両面に軟磁性金属層14a、14bが露出した構造をなしているので、そのままで積層することはできない。そこで、樹脂フィルム15を別途用意し、この樹脂フィルム15を介在させて軟磁性シート11を積層することにより、積層軟磁性部材5を得る。
ここで、積層軟磁性部材5全体としての厚さは、0.5mm以下とすることが重要である。前述のように、携帯電話機に積層軟磁性部材5を貼り付ける場合には、携帯電話機の小型化に対応する必要があり、厚さを0.5mm以上とすると、携帯電話機内に積層軟磁性部材5を収めるのが困難になるからである。
【0022】
そして、得られた積層軟磁性部材5において、軟磁性シート1、11の樹脂フィルム2、12、15が絶縁層6を構成することになる。
また、軟磁性層7は、軟磁性シート1、11における軟磁性金属層4、14a、14bによって構成されることになる。また、下地金属層3、13a、13bが、軟磁性金属によって形成される場合、この下地金属層3、13a、13bも、軟磁性金属層4、14a、14bとともに軟磁性層7を構成する。
【0023】
上記のような構成の積層軟磁性部材5は、携帯電話機内に配設することができる。なお、ここでは電子機器として携帯電話機を例にするが、これはあくまで本発明の適用事例にすぎない。
積層軟磁性部材5を携帯電話機内に配設する様子を図5に模式的に示している。携帯電話機(電子機器)30は、その外殻をなす筐体としてフロント・カバー31とケース34とを備え、その間に必要に応じてホイップ・アンテナが取り付けられる回路基板32が配設される。ケース34内には内蔵アンテナ36が収容されており、積層軟磁性部材5は、内蔵アンテナ36とその一部が重なるように、回路基板32とケース34との間に配設される。なお、積層軟磁性部材5の固定は、粘着剤、両面粘着テープ等を用いて行うことができる。
【0024】
さて、上記したような積層軟磁性部材5において、それぞれ複数層の絶縁層6、軟磁性層7は、その厚さを異ならせることができる。
例えば、絶縁層6、軟磁性層7の双方を、それぞれ複数種の厚さとすることができる。また、絶縁層6は一定の厚さとし、軟磁性層7を複数種の厚さとしてもよいし、逆に軟磁性層7は一定の厚さとし、絶縁層6を複数種の厚さとしてもよい。
図6、図7は、絶縁層6、軟磁性層7の双方を、それぞれ複数種の厚さとした例である。このうち図6は、積層軟磁性部材5全体における絶縁層6の占積率を軟磁性層7の占積率よりも高めた例、図7は、図6の例よりも、積層軟磁性部材5全体における軟磁性層7の占積率を高めた例である。
ここで、積層軟磁性部材5全体に対する軟磁性層7の占積率は、1〜90%の範囲とするのが好ましい。軟磁性層7の占める割合が少ないと磁性体としての効果が得られない。一方、軟磁性層7の占める割合が大きすぎると、絶縁抵抗が著しく低減して損失が大きくなる。
【0025】
積層軟磁性部材5において、軟磁性層7の厚さを複数種とする場合、それぞれの軟磁性層7の最大厚さは5μm以下とすることが好ましい。5μmより大きいと高周波での損失が大きすぎ、磁性体としての性質が著しく損なわれるからである。
図8に示すように、軟磁性層7は、その厚さT1〜T5により、周波数―透磁率(μ’)の特性が異なる。ここで、図8中、T1が最も厚さの小さい軟磁性層7であり、T5が最も厚さの大きな軟磁性層7である。
このような複数種の厚さの軟磁性層7を適宜組み合わせて積層軟磁性部材5に備えると、積層軟磁性部材5全体としては、図8中(1)や(2)に示したような周波数―透磁率(μ”)の特性を有することになり、一種類の厚さのみの場合に比較し、μ”が大きくなる範囲を広帯域化することができる。
【0026】
また、積層軟磁性部材5において、絶縁層6の厚さを複数種とする場合、それぞれの絶縁層6の最小厚さは0.1μm以上であることが好ましい。絶縁層6の厚さが0.1μmより薄いと、軟磁性層7間の絶縁が不充分となり、高周波での透磁率が著しく低下するからである。また、絶縁層6の最大厚さは50μm以下とするのが好ましい。もっとも、軟磁性シート1、11を積層する場合に接着剤を層間に介在させると、絶縁層6が樹脂フィルム2、12の厚さより厚くなる場合がある。したがって、接着剤を用いる場合には、絶縁層6の厚さが50μm以下となるように樹脂フィルム2、12の厚さを定める必要がある。このとき、接着剤が樹脂で形成されていると、接着剤層も絶縁層6を構成することになる。
高周波で高透磁率を実現するには、絶縁層6の厚さは0.1μm程度でも良いが、特に高い耐電圧が要求される場所では、絶縁層6を厚くする必要がある。図9は、回路基板32上に実装された素子32a、32bに対向する位置に積層軟磁性部材5を設ける場合の例であり、素子32a、32b側の絶縁層6Aには高い耐電圧が要求されるため、この絶縁層6Aを他より厚くした構成としている。
【0027】
また、絶縁層6や軟磁性層7は、同一の層内において、均一な厚さではなく、厚さに分布を有するような構成とすることもできる。図10は、そのような厚さ分布を有した積層軟磁性部材5の例である。
このように、同一の層内で絶縁層6や軟磁性層7の厚さの分布を不均一とすると、特に軟磁性層7においては、一つの層でμ”が大きくなる範囲を広帯域化することができる。
また、凹凸のある面に軟磁性層7を形成することにより、磁気特性の異方性を制御することも可能となる。これは、軟磁性層7を形成する面に一定方向に凹凸を付けることにより、軟磁性層7に一定方向の応力が生成しやすく、それによる誘導異方性が付与されるからである。また、凹凸部分で軟磁性層7の厚さが著しく変化する場合は形状異方性も附与することが可能となるからである。
【0028】
上述したように、絶縁層6と軟磁性層7を積層することで構成した積層軟磁性部材5において、絶縁層6や軟磁性層7の厚さを異ならせたり、厚さ分布を不均一とする構成とした。複数の軟磁性層7において厚さを異ならせたり、同一の軟磁性層7において厚さ分布を不均一とすれば、積層軟磁性部材5全体の厚さdを変えることなく、高周波における磁気損失の制御が容易となり、μ”が大きくなる範囲を広げることができるので、一つの積層軟磁性部材5においてノイズや電磁波を吸収できる周波数の広帯域化を図ることができる。これにより、携帯電話機30に組み込まれた各種の素子から、様々な帯域のノイズが発生している場合にも、一つの積層軟磁性部材5でこれに対応することが可能となる。
また、積層軟磁性部材5を生産、提供する側にとっても、一つの積層軟磁性部材5で広帯域に対応できるので、狭帯域にしか対応できない吸収体を数多くラインナップするより、生産等の効率が良く、また製品の魅力が高まるという利点がある。
また、絶縁層6の厚さを異ならせることで、特に高い耐電圧が要求される場所のみ絶縁層6を厚くすることができる。また、その分、他の絶縁層6を薄くすれば、積層軟磁性部材5の全体の厚さdを保ったまま、高い耐電圧性を有した積層軟磁性部材5を形成することができる。
【0029】
ところで、上記したように、積層軟磁性部材5において、絶縁層6や軟磁性層7の厚さを異ならせたり、厚さ分布を不均一とするのは、もちろん上記したような効果を狙って意図的に行うこともできるが、積層軟磁性部材5の製造時における誤差により、絶縁層6や軟磁性層7の厚さが異なってしまったり、厚さ分布が不均一になってしまった場合、それによる影響は、前記したような好ましい厚さの範囲を外れない限り、広帯域化等、積層軟磁性部材5の特性を向上させる方向のものとなる。したがって、製造工程において、絶縁層6や軟磁性層7の厚さや厚さ分布を厳密に制御する必要も薄れ、設計や製造を容易に行うことができ、また厚さや厚さ分布を厳密に制御するために必要なコストや手間をその分だけ削減することができる。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、絶縁層や軟磁性層の厚さを異ならせたり、厚さ分布を不均一とすることで、ノイズや電磁波の吸収特性、耐電圧性を向上させることが可能となる。しかも、製造工程において、設計や製造を容易に行うことが可能となり、コストや手間を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態における軟磁性シートの構成を示す断面図である。
【図2】本実施の形態における別の軟磁性シートの構成を示す断面図である。
【図3】図1に示した軟磁性シートを用いた積層軟磁性部材の構成を示す断面図である。
【図4】図2に示した軟磁性シートを用いた積層軟磁性部材の構成を示す断面図である。
【図5】積層軟磁性部材を組み込む電子機器の概略構成を示す図である。
【図6】軟磁性層と絶縁層の厚さを異ならせた積層軟磁性部材の例を示す図である。
【図7】軟磁性層と絶縁層の厚さを異ならせた積層軟磁性部材の他の例を示す図である。
【図8】軟磁性層の厚さと、複素透磁率の周波数特性との関係を示す図である。
【図9】素子に面する側の絶縁層を厚くした積層軟磁性部材の例を示す図である。
【図10】同一層内で軟磁性層と絶縁層の厚さを異ならせた積層軟磁性部材の例を示す図である。
【符号の説明】
1、11…軟磁性シート、2、12、15…樹脂フィルム、3、13a、13b…下地金属層、4、14a、14b…軟磁性金属層、5…積層軟磁性部材、6…絶縁層、7…軟磁性層、30…携帯電話機(電子機器)、31…フロント・カバー(筐体)、32…回路基板、32a、32b…素子、34…ケース(筐体)、36…内蔵アンテナ

Claims (10)

  1. 軟磁性金属によって形成された複数の磁性層と、絶縁材料によって形成された絶縁層とを含む複数の層が積層された積層軟磁性部材であって、
    複素透磁率が互いに異なる前記磁性層を少なくとも2以上備えることを特徴とする積層軟磁性部材。
  2. 複素透磁率が互いに異なる前記磁性層は、層の厚さが異なることを特徴とする請求項1に記載の積層軟磁性部材。
  3. 前記絶縁層は、厚さが互いに異なる複数の層を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の積層軟磁性部材。
  4. 前記磁性層および/または前記絶縁層は、同一の層内における厚さの分布が不均一であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の積層軟磁性部材。
  5. 全体の厚さが0.5mm以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の積層軟磁性部材。
  6. 前記積層軟磁性部材全体に対する全ての前記磁性層による占積率が1〜90%であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の積層軟磁性部材。
  7. それぞれの前記磁性層の最大厚さが5μm以下であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の積層軟磁性部材。
  8. それぞれの前記絶縁層の厚さが0.1μm以上であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の積層軟磁性部材。
  9. 電子機器の外殻をなす筐体と、
    前記筐体内に配設された積層軟磁性部材と、を備え、
    前記積層軟磁性部材は、軟磁性金属によって形成された複数の磁性層と、絶縁材料によって形成された複数の絶縁層とを含んで形成され、
    複数の前記磁性層および/または複数の前記絶縁層は、層の厚さが2種類以上に設定されていることを特徴とする電子機器。
  10. 前記積層軟磁性部材は前記筐体内で素子が実装された回路基板に対向するよう配設され、かつ前記素子に対向する側の前記絶縁層が他の前記絶縁層より厚いことを特徴とする請求項9に記載の電子機器。
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