JP2004307980A - 金属張り液晶ポリエステル基材の製造方法 - Google Patents

金属張り液晶ポリエステル基材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】液晶ポリエステルフィルムの表面上に導電性金属膜を形成した金属張り液晶ポリエステル基材の製造方法に関し、液晶ポリエステルフィルムと導電性金属膜との密着強度を実用レベル(ピール強度が安定して600g/cm以上)に高めることができる製造方法を提供すること。
【解決手段】液晶ポリエステルフィルムの表面を、アルカリと分子中に水酸基を有する脂肪族アミノアルコール誘導体と水とで成るエッチング液で粗面化し、次いで、前記粗面上にメッキ法によって導電性金属膜を形成した後、それを加熱処理する。その際、100℃から液晶転移温度付近までの範囲内から選択された所定温度に加熱する。
【選択図】 図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶ポリエステルフィルムの表面に導電性金属膜を形成した金属張り液晶ポリエステル基材の製造方法、更に詳しくは、液晶ポリエステルフィルムの表面に、微細な配線パターン等を加工するのに好適なように、導電性金属膜を強固に密着させた状態に形成した金属張り液晶ポリエステル基材を得る為の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、フレキシブルプリント基板やプローブ基板等の基板、或るいはTABやCSP等の電子部品に用いられる回路パターン形成用の基材として、ポリイミド樹脂フィルムの表面に、銅膜等の導電性金属膜を形成した金属張りポリイミド基材が広く実用に供されている。かかるポリイミド樹脂は、耐熱性が高いが、その一方において吸水性が大きいので、高湿度の雰囲気下では寸法精度が低下してしまう。
【0003】
その為、昨今における電子機器の小型化や高精度化等に伴って、上述の金属張りポリイミド基材に代えて、耐熱性が高くて吸水性が小さい液晶ポリエステルフィルムに導電性金属膜を形成した金属張り液晶ポリエステル基材を用いることが注目されつつあるが、液晶ポリエステルと導電性金属膜との十分な密着強度を得るのが困難を極め、未だ実用化されていないのが現状である。
【0004】
しかるに、上述の密着強度を高める為の方法として、諸々の方法が検討されているが、その一方法として、所定厚みの電解金属箔上に液晶ポリエステルフィルムを加熱しながらラミネートする方法が挙げられる。
【0005】
このラミネート式の方法によると、電解金属箔の凹凸表面に対して、かかる凹部に液晶ポリマーを圧入させるようにラミネートするので、高い密着強度が得られるが、その一方において、そのような積層基材(電解金属箔の表面上に液晶ポリマーをラミネートした基材)に、金属配線パターンを加工する場合において、液晶ポリマー中から金属を除去することが難しく、これ等に起因して微細配線の形成が困難であって、しかも、液晶ポリマーに応力が残存し易いといった致命的な欠点を有しており、従って、この方法は、実用に値しない。
【0006】
それに対し、他の一方法であるメッキ式の方法は、液晶ポリエステルフィルムの表面を適当なエッチング液で粗面化し、次いで、前記粗面化されたフィルム表面上にメッキ法により導電性金属膜を形成するものであるから、微細配線の形成が困難である等の上述の欠点を解消することができる。
【0007】
従って、この点においては実用的ではあるが、その一方において、液晶ポリエステルフィルムと導電性金属膜との密着強度が比較的低い為に、この点において十分とは言い切れない。
【0008】
そこで、更に、例えば、アルカリによる粗面化後、無電解メッキ及び電解メッキすることによって、液晶ポリエステルフィルムと導電性金属膜との密着強度を高めること等が提案されている(下記特許文献1,2参照)。
【0009】
しかし、それらによると、液晶ポリエステルフィルムと導電性金属膜との密着強度を、ある程度は高めることができるが、密着強度のバラツキが大きく実用レベルに達していない。実用化の為には、密着強度(ピール強度)が安定し、かつ600g/cm以上であることが必要とされ、従って、更なる改良が要求されている。
【0010】
なお、上述のピール強度は、液晶ポリエステルフィルムの一端側から導電性金属膜を剥がして180度に折り曲げる所謂、180度法によって測定されたものである。以下に記載のピール強度も全て同様である。
【0011】
【特許文献1】
特許第2581543号公報(第2頁〜第3頁の実施例)
【特許文献2】
特開平2−305968号公報(第6頁の実施例1)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述の欠点に鑑みて発明されたものであって、その目的は、液晶ポリエステルフィルムの表面上に導電性金属膜を形成した金属張り液晶ポリエステル基材の製造方法に関し、液晶ポリエステルと導電性金属膜との密着強度を実用レベル(ピール強度が安定して600g/cm以上)に高めることができる製造方法を提供することである。
【0013】
【課題を解決する為の手段】
上述の目的を達成する為に、本発明においては、エッチング液で液晶ポリエステルフィルムの表面を粗面化し、次いで、前記粗面化されたフィルム表面上にメッキ法により導電性金属膜を形成した後、前記導電性金属膜を形成した液晶ポリエステルを、100℃から液晶転移点温度付近までの範囲内から選ばれた所定温度に加熱する加熱処理を行うようにしている。
【0014】
このように、粗面化された表面上に導電性金属膜を形成した後で、100℃から液晶転移点温度付近までの範囲内から選ばれた所定温度といった特定の温度に加熱するようにしているので、液晶ポリエステルフィルムと導電性金属膜との密着強度を実用レベル(ピール強度が安定して600g/cm以上)に高めることができる。
【0015】
なお、液晶ポリエステルフィルムとして、全芳香族系のものが好ましく、また、エッチング液として、アルカリと分子中に水酸基を有する脂肪族アミノアルコール誘導体と水とで成るもので好ましく、更に、メッキ法として、無電解メッキに引き続いて電解メッキを行うものが好ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明においては、液晶ポリエステルフィルムの表面をエッチング液で粗面化し、次いで、粗面化されたフィルム表面上にメッキ法によって導電性金属膜を形成し、更に、それを加熱処理するが、かかる液晶ポリエステルフィルムは、図1に示す分子構造のものが好適である。
【0017】
それらは、分子中に水酸基やカルボキシル基を有する芳香族化合物モノマーの共重合によって得られるポリエステルであって、そのような全芳香属系ポリエステルは、表1に示すように関係各社から市販されている。なお、全芳香属系ポリエステル以外の他の液晶ポリエステルであってもよい。
【0018】
【表1】
Figure 2004307980
また、上述の液晶ポリエステルフィルムの表面を粗面化する為のエッチング液は、アルカリと分子中に水酸基を有する脂肪族アミノアルコール誘導体と水とで成るものが好適である。ここで、アルカリは、無機、有機又はその混合のいずれであってもよい。
【0019】
無機アルカリとして、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物又はその炭酸塩等が挙げられると共に有機アルカリとして、テトラメチルアンモニュウムヒドロキシドやテトラエチルアンモニュウムヒドロキシド等のテトラアルキルアンモニュウムヒドロキシドが挙げられる。
【0020】
これらの無機又は有機アルカリは、粉体又は液体のいずれであってもよいが、一般には水溶液として用いられる。また、それらのアルカリは、単独又は混合のいずれであってもよく、両アルカリの混合は、反応速度を適度に制御する場合などにおいて有効である。
【0021】
なお、有機アルカリは、100℃以下の加熱によってアミン化合物を発生する場合が多い。それに対し、無機アルカリは、加熱してもそのようなことが発生しないので、通常は無機アルカリが好んで用いられる。
【0022】
また、上述のアルカリと混合される脂肪族アミノアルコール誘導体は、分子中に水酸基を有しており、通常、沸点が100℃以上で水溶性である。かかる水酸基の数は、単数又は複数のいずれであってもよい。
【0023】
そのような脂肪族アミノアルコール誘導体の好ましい例として、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、α−アミノイソプロパノール、2−アミノブタノール等のような炭素数が2〜4のものが挙げられる。
【0024】
これらのアミノアルコール誘導体は、無機又は有機のアルカリ水溶液との相溶性がよく、極端に高い濃度でない限りにおいては、任意の割合で均一な混合が可能な特性を有している。
【0025】
それに対し、一般的に広く用いられているエタノールやブトキシエタノール(ブチセロ)は、水との相溶性は非常に高いにも拘わらず、水酸化カリウムなどの無機アルカリ水溶液との相溶性があまりよくない為に両者を混合した場合、液の層分離が起って均一な溶液を調整することができない事態等が発生するので、アミノアルコール誘導体を一組成分とするのが好ましい。
【0026】
なお、上述の全芳香属系ポリエステルフィルムは、熱可塑性であるのにも拘わらず、熱変形温度が200℃以上のものが多く、しかも、寸法安定性及び電気特性が優れている。従って、電子部品の材料としてはポリイミド樹脂フィルム以上に優れた材料であるが、耐薬品性が高く、かつ吸水性が小さい為に、一般のエッチング液では、長い反応時間が必要とされて所望の粗面化が極めて難しい。
【0027】
しかし、アルカリと分子中に水酸基を有する脂肪族アミノアルコール誘導体と水とで成る上述のエッチング液によると、それを容易に、かつ所望に粗面化することができる。
【0028】
無機又は有機アルカリ水溶液は、液晶ポリエステルを加水分解する作用があると考えるが、アルカリと分子中に水酸基を有する脂肪族アミノアルコール誘導体と水とで成る上述のエッチング液以外の他の無機又は有機アルカリ水溶液では、液晶ポリエステルの耐水性が高くて濡れ性がない為にエッチング速度が極めて小さく、エッチングに斑があって不均一になり易い。
【0029】
それに対し、アルカリと分子中に水酸基を有する脂肪族アミノアルコール誘導体と水とで成る上述のエッチング液によると、液晶ポリエステルのエッチング速度が非常に速く、かつ、エッチングが均一になる。
【0030】
これは、分子中に水酸基を有する脂肪族アミノアルコール誘導体が、液晶ポリエステルフィルムの表面における無機又は有機アルカリ成分の濡れ性や浸透性を促進して加水分解反応を加速し、更に、液晶ポリエステルフィルムの加水分解生成物を樹脂表面から溶出・除去する作用がある為と考えられる。
【0031】
かかる脂肪族アミノアルコール誘導体は、選択された1種類を用いるだけでなく、2種類以上を混合してもよい。脂肪族アミノアルコール誘導体は、一般に、炭素数が多くなるに従って水溶性が低下してアルカリ水溶液との相溶性が悪くなるので、炭素数が4程度以下のものが好ましい。
【0032】
そのような脂肪族アミノアルコール誘導体は、エッチング後の湯洗或るいは水洗でアルカリ成分と一緒に簡単に除去することができ、特に、モノエタノールアミンは、水溶性で沸点も150℃以上と高く、しかも、液晶ポリエステルへの浸透性や加水分解生成物の溶解性も高いと共に工業的にも容易に入手することができるので好ましい。
【0033】
エッチング液の組成分である、アルカリ、分子中に水酸基を有する脂肪族アミノアルコール誘導体及び水の混合割合は、重量比でアルカリ1に対して、前記脂肪族アミノアルコール誘導体が1及び水が1程度、すなわち、アルカリ33重量%、前記脂肪族アミノアルコール誘導体33重量%、水33重量%程度が最も好ましい。一般的には、アルカリが20重量%以下になると、エッチング速度が遅くなり、40重量%を越えると、アルカリが溶液から分離してくることが多い。また、上述の脂肪族アミノアルコール誘導体は、エッチング反応に際し、液晶ポリエステルフィルムの表面の親水性を高め、更に、生成する液晶ポリエステルフィルムの加水分解生成物を適度に溶解しながら除去するので、エッチングする表面に適度の凹凸を形成して均一な粗面化を可能にする点において顕著な効果を奏する。
【0034】
なお、上述の脂肪族アミノアルコール誘導体が不足して20重量%以下になると、水の割合が多くなるので、加水分解が不安定になって表面の加水分解生成物の適度な剥離除去が阻害される。その為、液晶ポリエステルフィルムの加水分解が不均一になって、分子量が小さい液晶ポリマーで構成されたエッチング残さが発生し、かつそれによって表面形状が不安定になるだけでなく、ピール強度の低下をもたらす原因になり易い。
【0035】
また、40重量%以上になると、水の割合が少なくなる為に、アルカリ、特に、水酸化カリウムなどの無機アルカリの溶解性が悪くなって沈殿析出の原因になる。従って、各組成成分の好適な濃度は、無機アルカリ及び/又は有機アルカリについては、20重量%〜40%重量、前記脂肪族アミノアルコール誘導体については20重量%〜40重量%、水については20重量%〜60重量%程度である。
【0036】
表2に、液晶ポリエステルを各種組成のエッチング液でエッチングした場合のエッチング速度等を示すが、同表中、「BIAC」はジャパンゴアテックス株式会社製の液晶ポリエステル、「VECSTAR」はクラレ株式会社製の液晶ポリエステル、KOHは水酸化カリウム、MEAはモノエタノールアミン、PGはプロピレングリコール、DEGはジエチルグリコール、EtOHはエタノール、BCはブチセロをそれぞれ示す。
【0037】
それらの12件の各例におけるエッチング処理は、各材料(試料)をビーカー中の80℃に加熱されているエッチング液に浸漬し、液を攪拌しながら行った。表2中の*印の例(i液を使用の例)においては、30分処理する間にエタノールと水が蒸発して終了時のKOHは29%になっていた。また、他の例(j液を使用の例)のエッチング速度(**印箇所の速度)は、分離したBC層が褐色に変化したが、そのまま不均一系で20分間処理した時の膜厚みの変化から求めたものである。
【0038】
【表2】
Figure 2004307980
加えて、表2中のa〜c液及びg液を使用した各例における膜厚変化を図2に示し、更に、表3において、エッチング液の組成分濃度と液晶ポリエステルのエッチング速度との関係を示すが、各エッチング速度は、上述のBAICを、ビーカー中の80℃に加熱されているエッチング液に浸漬し、液を攪拌しながら測定したものである。
【0039】
【表3】
Figure 2004307980
これらからして明らかのように、アルカリと分子中に水酸基を有する脂肪族アミノアルコール誘導体と水とで成るエッチング液は、そのエッチング速度が、他のエッチング液のそれよりも一段と速く、濃度が同一の場合においては、他のエッチング液のそれと比較して約10倍の速度である。
【0040】
エッチング速度だけを比較すると、水溶液をエタノール水溶液にすることにより、エッチング速度は速くなる傾向が見られるが、エタノール水溶液の場合には、水酸化カリウムの溶解度が小さく、かつ液中の無機アルカリ濃度が高いと層分離が起る為にアルカリ濃度を低くしなければならないと共にエッチングにおける加熱反応中に低沸点のエタノールが蒸発して組成が変化することによって反応速度が変化する為に均一なエッチングが困難になる。
【0041】
なお、エッチング液中のアルカリやモノエタノールアミン等の脂肪族アミノアルコール誘導体の量は、規定濃度の塩酸で電位差滴定することによって所定に管理することができる。また、上述のエッチング液は、所定温度に加熱して使用する。60℃〜90℃好ましくは70℃〜80℃の範囲内から選ばれた所定温度である。
【0042】
液温が60℃〜90℃の範囲内から選ばれた所定温度である場合においては、エッチング反応時間が10秒〜3分程度である。温度が低いと反応に時間がかかり、高温にすると、水分の蒸発が激しくてエッチング液の濃度が変化し易く、かつ有機アルカリを使用する場合においては、臭気の発生が強いから作業環境上、好ましくない。
【0043】
液晶ポリエステルフィルムとエッチング液との接触は、攪拌状態の液中に液晶ポリエステルフィルムを浸漬する方法、液晶ポリエステルフィルムに対してエッチング液を噴射する方法、液中の液晶ポリエステルフィルムに対してジェット噴流を衝突させる方法、液中で超音波を照射する方法等いずれであってもよい。液中に浸漬する場合には、液晶ポリエステルフィルムを揺動するのが好ましい。
【0044】
図3,6に、アルカリと分子中に水酸基を有する脂肪族アミノアルコール誘導体と水とで成る上述のエッチング液でエッチングした場合の液晶ポリエステルフィルムの表面姿を示すと共に図4,7に、エッチング前の液晶ポリエステルフィルムの表面姿を示す。これらの図はSEM(Scanning Electron Microscope)写真である。
【0045】
図4,7のフィルム表面に対し、図3,6のエッチング後のフィルム表面は、均一な凹凸が形成されて有効に粗面化されていることが分る。かかる凹凸は、後工程のメッキにおいて、メッキ触媒やメッキ金属の接合のアンカー効果を向上させる役割を果たし、液晶ポリマーと金属との密着強度を高める。
【0046】
引き続いて、上述の粗面化されたフィルム表面上にメッキ法によって導電性金属膜を形成する。かかるメッキ法は、前記粗面化されたフィルム表面上にメッキ触媒の付与下で導電性下層金属膜を形成する無電解メッキと、前記導電性下層金属膜上に導電性上層金属膜を積層する電解メッキとを行う方法が好ましい。しかし、必要に応じて他のメッキ法を選択してもよい。
【0047】
また、上述の無電解メッキにおいて用いられる触媒液等の無電解メッキ用材料は、メルテックス株式会社やシプレー株式会社等の多くのメッキ用材料メーカーから市販されている各種材料の内から所定の材料を選択することができる。
【0048】
上述のメッキ触媒液の代表例として、錫−パラジウム系又はパラジウムコロイド系の触媒液等が挙げられると共に無電解メッキ液の代表例として、無電解ニッケルメッキ液又は無電解銅メッキ液等が挙げられる。
【0049】
なお、上述のように、無電解メッキによって、粗面化されたフィルム表面上に導電性下層金属膜を形成するが、その際、液晶ポリエステルは、他の材であるポリイミドと比較して、耐アルカリ薬品性においても優れている為に、汎用のアルカリ性無電解銅メッキ液を使用することができる。
【0050】
そして、更に、引き続いて、かかる導電性下層金属膜上に、電解メッキによって導電性上層金属膜を積層する。よって、導電性下層金属膜及び導電性上層金属膜で構成された二層構造状の導電性金属膜を液晶ポリエステルフィルム上に形成するができる。
【0051】
上述の電解メッキにおいて、市販されている所定の電解メッキ液を使用、すなわち、市販の電解銅メッキ液、電解ニッケルメッキ液又は電解金メッキ液等を選択して使用することができる。銅やニッケルの硫酸銅やスルファミン酸塩を主体とした電解メッキ液が最も広く実用に供されている。
【0052】
上述のメッキ触媒に関し、市販されている代表例として、メルテック株式会社製の「エンプレートアクチべータ850アディティブ/アクチベータ850」、シップレー株式会社製の「キャタポジット44/アクセレーター19E」等が挙げられる。
【0053】
また、無電解メッキ液に関し、市販されている代表例として、メルテックス株式会社製の無電解銅メッキ液である「キューポジット250」、同社の無電解ニッケルメッキ液である「867Ni」や「426Ni」、シップレー株式会社製の無電解ニッケルメッキ液である「U−55」等が挙げられる。また、電解メッキ液に関し、市販されている代表例として、メルテックス株式会社製の「カパーグリーム」が挙げられる。
【0054】
それらの市販されているメッキ触媒やメッキ液を用いての処理条件は、各メーカが推奨の処理条件であれば特に問題がない。なお、上述のメッキ触媒、無電解銅メッキ液及び電解メッキ液の組み合わせは、上述の導電性下層金属膜及び導電性上層金属膜を形成するのに適した組み合わせが選択され、一般に、導電性下層金属膜をニッケル又は銅で構成すると共に導電性上層金属膜を銅又は金で構成して成る導電性金属膜を形成することができるように、それらを所定に選択すればよい。
【0055】
次いで、上述の諸工程を経て、液晶ポリエステルフィルムの表面上に導電性金属膜を形成した後、それを加熱処理する。すなわち、導電性金属膜を形成した液晶ポリエステルフィルムを、100℃から液晶転移点温度付近までの範囲内から選択された所定温度に加熱する。
【0056】
かかる加熱は、不活性ガス雰囲気中で加熱したり、或るいは、真空プレス上で加圧加熱したり、更には、加熱ロールを用いて連続的に加熱したり等、その方法はいかなる方法であってもよい。そのような加熱処理によって、上述のアンカー効果が一層高められる。
【0057】
ポストキュアの加熱温度を100℃から液晶転移点温度付近(好ましくは液晶転移点温度以下)に限定しているのは、液晶転移点温度以上に加熱すると、液晶ポリエステルフィルム又は金属張り液晶ポリエステルフィルムの寸法安定性が低下すると共に皺等の熱変形が起きるので、好ましくないからである。
【0058】
上述のように、無電解銅メッキ及び電解メッキによって得られた導電性金属膜を構成している導電性下層金属膜は、液晶ポリエステルフィルムの表面の凹凸部分とアンカー状に接合されている。
【0059】
その為、かかる導電性下層金属膜と液晶ポリマーとの密着強度は比較的高いが、上述の加熱処理によって更に高められる。このようなアンカー効果のより一層の向上化によって、液晶ポリエステルフィルムと導電性金属膜との密着強度を実用レベル(ピール強度が600g/cm以上)に高めることができる。
【0060】
よって、後工程において配線パターン等を加工するのに好適なように、液晶ポリエステルフィルムの表面に対して導電性金属膜を強固に密着状態に形成した金属張り液晶ポリエステル基材を製造することができる。
【0061】
図5に、その一実施例に係るピール強度の測定結果を示すが、これからして明らかのように、800g/cm〜900g/cmといった高強度レベルにおいて、強度バラツキが小さくて安定な密着強度を有している。
【0062】
なお、上述の加熱処理の時間は、加熱温度等との関係からして多少の調整をするのが好ましいが、一般には5分前後である。また、液晶ポリエステルフィルムの表面に対する導電性金属膜の形成は、フィルム両面に形成することだけに限定されず、どちらか一方のフィルム面に形成してもよい。
【0063】
【実施例】
[実施例1]
(粗面化工程):ジャパンゴアテックス株式会社製の厚みが125μmの液晶ポリエステルフィルムである「BIAC」(同社の技術資料によると液晶転移温度が335℃)で構成された大きさが5cm×5cmのサンプル片を、水酸化カリウム28重量%、モノエタノールアミン32重量%及び水40重量%から成るエッチング液に1分間浸漬した。その際、エッチング液を80℃に加熱した。次いで、それを80℃の湯浴で1分間、湯洗した後、1%硫酸水溶液に浸漬してから水洗し、かつ風乾した。
【0064】
上述のエッチング処理前(粗面化前)のサンプル片の表面姿を図4に示す。この図は、SEM(Scanning Electron Microscope)写真である。また、エッチング処理後のサンプル片の表面姿を図3に示す。この図もSEM写真である。これからして明らかのように、エッチング処理によって、サンプル片の表面に均一な凹凸が形成され、その凹部の深さ(エッチング深さ)はほぼ均一である。
【0065】
(メッキ触媒付与工程):次いで、上述のサンプル片をメルテック株式会社製の「メルプレートコンデショナー1101」に、室温で5分間浸漬し、水洗後、同社製の「エンプレートアクチベータ850アディティブ」に、室温で4分間処理し、更に、同社製の「エンプレートアクチベータ850」で、室温で2分間処理し、それを水洗した後、同社製の「メルプレートPA−360」に、室温で4分間浸漬した。
【0066】
(無電解メッキ工程):次いで、かかるサンプル片を水洗した後、同社製の無電解ニッケルメッキ液である「メルプレート867」で4分間メッキしてニッケル膜(導電性下層金属膜)を形成した。その際、「メルプレート867」を70℃に加熱した。ニッケル膜の表面は、上述のエッチング処理によって形成された凹凸に対応して半光沢状態であったと共に、この面の電気抵抗は3.3Ωであった。
【0067】
(電気メッキ工程):次いで、かかるサンプル片に、硫酸銅をベースとしたメルテックス株式会社製の電解銅メッキ浴である「カパーグリーム125」を用いて電解銅メッキを行い、前記ニッケル膜の上に厚みが18μmの銅膜(導電性上層金属膜)を形成し、このようにして、導電性下層金属膜である前記ニッケル膜上に、導電性上層金属膜である前記銅膜を積層して成る導電性金属膜を形成した。この導電性金属膜の表面は、平滑で光沢があった。なお、このサンプル片のピール強度は、最大530g/cm、最小390g/cm、平均410g/cmであった。(加熱処理工程):次いで、上述のサンプル片を330℃で5分間、加熱処理した。このようにして、金属張りポリエステル基材の一種である両面金属張り液晶ポリエステル基材を製造したが、これのピール強度は、最大990g/cm、最小810g/cm、平均863g/cmであった。
【0068】
なお、ジャパンゴアテックス株式会社の技術資料(検査表)に記載されている銅張り液晶ポリエステルフィルム基材、すなわち、前記「BIAC」と厚みが18μの電解銅箔とを340℃で融着した基材のピール強度は、最大870g/cm、最小720g/cm、平均770g/cmであった。
【0069】
[実施例2]
(粗面化工程):ジャパンゴアテックス株式会社製の厚みが125μmの液晶ポリエステルフィルムである「BIAC」で構成された大きさが5cm×5cmのサンプル片を、水酸化カリウム28重量%、モノエタノールアミン32重量%及び水40重量%から成るエッチング液に1分間浸漬した。その際、エッチング液を80℃に加熱した。次いで、それを80℃の湯浴で1分間、湯洗した後、1%硫酸水溶液に浸漬してから水洗し、かつ風乾した。
【0070】
(メッキ触媒付与工程):次いで、このサンプル片をメルテック株式会社製の「メルプレートコンデショナー1101」に、室温で5分間浸漬し、水洗後、同社製の「エンプレートアクチベータ850アディティブ」に、室温で4分間処理し、更に、同社製の「エンプレートアクチベータ850」で、室温で2分間処理し、それを水洗した後、同社製の「メルプレートPA−360」に、室温で4分間浸漬した。
【0071】
(無電解メッキ工程):次いで、かかるサンプル片を水洗した後、同社製の無電解銅メッキ液である「メルプレートCu−390」で30分間メッキして銅膜(導電性下層金属膜)を形成した。その際、前記「メルプレートCu−390」を25℃に加熱した。銅膜の表面は、上述のエッチング処理によって形成された凹凸に対応して半光沢状態であったと共に、この面の電気抵抗は0.05Ωであった。
【0072】
(電気メッキ工程):次いで、かかるサンプル片に、硫酸銅をベースとしたメルテックス株式会社製の電解銅メッキ浴である「カパーグリーム125」を用いて電解銅メッキを行い、前記銅膜(導電性下層金属膜)の上に18μmの銅膜(導電性上層金属膜)を積層し、このようにして、導電性下層金属膜である前記銅膜上に、導電性上層金属膜である前記銅膜を積層して成る導電性金属膜を形成した。かかる導電性金属膜の表面は、光沢があった。なお、このサンプル片のピール強度は、最大520g/cm、最小410g/cm、平均460g/cmであった。
【0073】
(加熱処理工程):次いで、上述のサンプル片を310℃で5分間、加熱処理した。このようにして、金属張りポリエステル基材の一種である両面金属張り液晶ポリエステル基材を製造したが、これのピール強度は、最大970g/cm、最小720g/cm、平均850g/cmであった。
【0074】
なお、ジャパンゴアテックス株式会社の技術資料(検査表)に記載されている銅張り液晶ポリエステル基材、すなわち、上記「BIAC」と厚みが18μの電解銅箔とを340℃で融着した基材のピール強度(最大870g/cm)以上であった。
【0075】
[実施例3]
(粗面化工程):クラレ株式会社製のLCPで構成されたサンプル片、すなわち、厚みが50μmの液晶ポリエステルフィルムである「ベクスターFA」(同社の技術資料によると液晶転移温度が335℃)で構成されたサンプル片を、水酸化カリウム28重量%、モノエタノールアミン32重量%及び水40重量%から成るエッチング液に1分間浸漬した。
【0076】
その際、エッチング液を80℃に加熱した。次いで、それを80℃の湯浴で1分間、湯洗した後、1%硫酸水溶液に浸漬してから水洗し、かつ風乾した。サンプル片の表面に凹凸が形成されていた。
【0077】
上述のエチング処理前(粗面化前)のサンプル片の表面姿を図7に示す。この図は、SEM写真である。また、エッチング処理後のサンプル片の表面姿を図6に示す。この図もSEM写真である。これらして明らかのように、エッチング処理によって、サンプル片の表面に均一な凹凸が形成され、その凹部の深さ(エッチング深さ)はほぼ均一である。
【0078】
(メッキ触媒付与工程):次いで、このサンプル片をメルテック株式会社製の「メルプレートコンデショナー1101」に、室温で5分間浸漬し、水洗後、同社製の「エンプレートアクチベータ850アディティブ」に、室温で4分間処理し、更に、同社製の「エンプレートアクチベータ850」で、室温で2分間処理し、それを水洗した後、同社製の「メルプレートPA−360」に、室温で4分間浸漬した。
【0079】
(無電解メッキ工程):次いで、かかるサンプル片を水洗した後、同社製の無電解銅メッキ液である「メルプレートCu−390」で30分間メッキして銅膜(導電性下層金属膜)を形成した。その際、「メルプレートCu−390」を25℃に加熱した。前記銅膜の表面は、上述のエッチング処理によって形成された凹凸に対応して半光沢状態であったと共に、この面の電気抵抗は0.05Ωであった。
【0080】
(電気メッキ工程):次いで、かかるサンプル片に、硫酸銅をベースとしたメルテックス株式会社製の電解銅メッキ浴である「カパーグリーム125」を用いて電解銅メッキを行い、前記銅膜(導電性下層金属膜)の上に、厚みが18μmの銅膜(導電性上層金属膜)を形成し、このようにして、導電性下層金属膜である前記銅膜上に、導電性上層金属膜である前記銅膜を積層して成る導電性金属膜を形成した。かかる導電性金属膜の表面は、光沢があった。
【0081】
なお、このサンプル片を250℃で熱処理した後のピール強度は、870g/cmであり、ジャパンゴアテックス株式会社の技術資料(検査表)に記載されている銅張り液晶ポリエステル基材、すなわち、上記「BIAC」と厚みが18μの電解銅箔とを340℃で融着した基材のピール強度(最大870g/cm)と同等であった。
【0082】
[実施例4〜9]
粗面化工程、メッキ触媒付与工程、無電解メッキ工程及び電気メッキ工程を実施例1と同一の条件で行い、加熱処理工程の温度条件のみを実施例1のそれと変化させた実施4〜9によって得られたピール強度を表4に示す。
【0083】
なお、同表に、加熱処理をしないこと以外の条件は、実施例1と同一の条件で行った比較例1によって得られたピール強度も示すが、それとの対比によって明らかのように、加熱処理をする実施例4〜9のピール強度の方がいずれも大きいから、これらの方が有利であることがわかる。
【0084】
【表4】
Figure 2004307980
【比較例】
[比較例2] エッチング液で粗面化することを省いたこと以外の条件は、実施例1と同一条件で両面金属張り液晶ポリエステル基材を製造した。金属光沢のあるメッキ表面が得られた。しかし、セロハンテープによる剥離試験によって導電性金属膜が容易に剥離し、ピール強度はゼロに近いものであったと共に導電性金属膜の表面電気抵抗は17Ωであった。なお、剥離面は白色の金属光沢があり、ポリマー表面で剥離していた。
【0085】
[比較例3] エッチング液で粗面化することを省いたこと以外の条件は、実施例3と同一条件で両面金属張り液晶ポリエステル基材を製造した。金属光沢のあるメッキ表面が得られた。しかし、セロハンテープによる剥離試験によって導電性金属膜(厚さ15μm)が容易に剥離し、ピール強度はゼロに近いものであったと共に導電性金属膜の表面電気抵抗は21Ωであった。
【0086】
【発明の効果】
上述の如く、本発明に係る金属張り液晶ポリエステル基材の製造方法は、液晶ポリエステルフィルムの表面をエッチング液で粗面化し、次いで、前記粗面化されたフィルム表面上にメッキ法により導電性金属膜を形成することに加えて、前記導電性金属膜を形成した液晶ポリエステルフィルムを、100℃から液晶転移点温度付近までの範囲内から選択された所定温度に加熱する加熱処理を行うようにしているから、液晶ポリエステルフィルムと導電性金属膜との密着強度を、実用レベルの密着強度(ピール強度が安定して600g/cm以上)に高めることができ、従って、後工程で微細な配線パターン等を加工するのに好適なように、導電性金属膜を強固に密着させた状態に形成した金属張り液晶ポリエステル基材を得ることができて金属張り液晶ポリエステル基材の汎用化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は液晶ポリエステルの分子構造を示す図である。
【図2】図2はエッチング速度(膜厚みとエッチング時間との関係)を示す線図である。
【図3】図3は「BIAC」をエッチングして粗面化した状態を示す図(SEM写真)である。
【図4】図4はエッチングする前(粗面化前)の「BIAC」の表面姿を示す図(SEM写真)である。
【図5】図5はピール強度の測定結果を示す図である。
【図6】図6は「ベクスターFA」をエッチングした(粗面化した)状態を示す図(SEM写真)である。
【図7】図7はエッチングする前(粗面化前)の「ベクスターFA」の表面姿を示す図(SEM写真)である。

Claims (8)

  1. 液晶ポリエステルフィルムの表面上に導電性金属膜を形成した金属張り液晶ポリエステル基材の製造方法において、前記フィルム表面をエッチング液で粗面化し、次いで、前記粗面化されたフィルム表面上にメッキ法により導電性金属膜を形成した後、前記導電性金属膜を形成した液晶ポリエステルフィルムを、100℃から液晶転移点温度付近までの範囲内から選択された所定温度に加熱する加熱処理を行うことを特徴とする金属張り液晶ポリエステル基材の製造方法。
  2. 前記液晶ポリエステルフィルムが、全芳香族系のものであることを特徴とする請求項1に記載の金属張り液晶ポリエステル基材の製造方法。
  3. 前記エッチング液が、アルカリと分子中に水酸基を有する脂肪族アミノアルコール誘導体と水とで成るものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属張り液晶ポリエステル基材の製造方法。
  4. 前記エッチング液の組成比率が、前記アルカリが10〜40重量%、前記脂肪族アミノアルコール誘導体が20〜50重量%及び前記水が20〜50重量%であることを特徴とする請求項3に記載の金属張り液晶ポリエステル基材の製造方法。
  5. 前記アルカリが、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム又はテトラアルキルアンモニュウムヒドロキシドのうちから選択された少なくとも一つであると共に脂肪族アミノアルコール誘導体が、エタノールアミンであることを特徴とする請求項4に記載の金属張り液晶ポリエステル基材の製造方法。
  6. 前記エッチング液が、50℃〜90℃までの範囲内から選択された所定温度に加熱されて使用されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の金属張り液晶ポリエステル基材の製造方法。
  7. 前記導電性金属膜が、前記粗面化されたフィルム表面上にメッキ触媒の付与下で導電性下層金属膜を形成する無電解メッキと、前記導電性下層金属膜上に導電性上層金属膜を積層する電解メッキとによって形成されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の金属張り液晶ポリエステル基材の製造方法。
  8. 前記導電性下層金属膜が、ニッケル又は銅で構成されていると共に前記導電性上層金属膜が、銅又は金で構成されていることを特徴とする請求項7に記載の金属張り液晶ポリエステル基材の製造方法。
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