JP2004308700A - 繊維強化プラスチック製プロペラシャフト - Google Patents
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Abstract
【課題】捩り強度を確保することができるとともに、衝突時において衝突荷重の吸収能力を向上することができる繊維強化プラスチック製プロペラシャフトを提供する。
【解決手段】FRP製プロペラシャフト10はFRP製筒体11の端部14に金属製ヨーク12の圧入軸部12bを接合して構成されている。FRP製筒体11と金属製ヨーク12の金属製ヨーク12の圧入軸部12bとの間には中間円筒部材13が配設されている。中間円筒部材13の外面には軸方向に延びかつFRP製筒体11の内周面に食い込むセレーション13aが形成され、中間円筒部材13の内面には軸方向に延びる内側スプライン13bが形成されている。金属製ヨーク12の圧入軸部12bの外周面には中間円筒部材13の内側スプライン13bに嵌合する外側スプライン12cが形成されている。
【選択図】 図1
【解決手段】FRP製プロペラシャフト10はFRP製筒体11の端部14に金属製ヨーク12の圧入軸部12bを接合して構成されている。FRP製筒体11と金属製ヨーク12の金属製ヨーク12の圧入軸部12bとの間には中間円筒部材13が配設されている。中間円筒部材13の外面には軸方向に延びかつFRP製筒体11の内周面に食い込むセレーション13aが形成され、中間円筒部材13の内面には軸方向に延びる内側スプライン13bが形成されている。金属製ヨーク12の圧入軸部12bの外周面には中間円筒部材13の内側スプライン13bに嵌合する外側スプライン12cが形成されている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、繊維強化プラスチック製プロペラシャフトに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、プロペラシャフトとして繊維強化プラスチック(FRP)製プロペラシャフトを使用することにより車両を軽量化して燃費の向上を図るようにした技術が提案されている。このFRP製プロペラシャフトは、FRP製筒体の両端部に対して、駆動軸や従動軸に連結される金属製ヨークを接合する方法が一般的である。このようなFRP製筒体は、一般的なフィラメントワインディング法によって形成されたものである。そして、FRP製筒体と金属製ヨークとは、通常、セレーション接合によって接合される。
【0003】
金属製ヨークの接合部の外周面には軸方向に延びるセレーションが形成されており、FRP製筒体の端部の内周面に金属製ヨークの接合部を圧入する。金属製ヨークの圧入時において、接合部のセレーションにより繊維強化プラスチック製筒体の端部内周面に刻み目を刻設して食い込ませることによって、繊維強化プラスチック製筒体と金属製ヨークとは相対回転しないように一体に接合される。
【0004】
このような繊維強化プラスチック製プロペラシャフトは、車載内燃機関が発生するトルクを捩りトルクとして駆動輪に伝達することができるように、金属製ヨークと繊維強化プラスチック製筒体との間の捩り強度が必要とされる。
【0005】
また、最近の自動車設計においては、衝突時において過大な衝撃を与えず、しかもエアバック等の安全装置の作動に時間的余裕を与えるため、衝突時にプロペラシャフトの軸方向に作用する衝突荷重を吸収する技術が、特許文献1にて提案されている。この特許文献1に記載されたプロペラシャフトは、繊維強化プラスチック製筒体の内径を金属製ヨークの最大外形の外径よりも大きく設定している。そして、プロペラシャフトの軸方向に衝突荷重を受けた際、金属製ヨークのセレーションが繊維強化プラスチック製筒体の内周面に刻み目を刻設しながら金属製ヨークは繊維強化プラスチック製筒体内に更に圧入されることにより、衝突荷重を吸収するようになっている。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−337344号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、特許文献1に記載されたプロペラシャフトは、金属製ヨークのセレーションによって繊維強化プラスチック製筒体の内周面に刻み目を刻設しながら金属製ヨークを圧入する方法である。従って、プロペラシャフトの捩り強度を増加させるために、繊維強化プラスチック製筒体に対するセレーションの圧入代を大きく設定すると、衝突時においてセレーションによる繊維強化プラスチック製筒体の削り量が大きくなって圧入荷重が大きくなり、衝突荷重の吸収能力が低下する。逆に、衝突時においてセレーションによる繊維強化プラスチック製筒体の削り量を小さくして圧入荷重を低下させて衝突荷重の吸収能力を増加させるために、繊維強化プラスチック製筒体に対するセレーションの圧入代を小さく設定すると、プロペラシャフトの捩り強度が低下する。このように、特許文献1に記載されたプロペラシャフトは、捩り強度を確保しつつ衝突時の衝突荷重の吸収能力を向上することは困難であった。
【0008】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、捩り強度を確保することができるとともに、衝突時において衝突荷重の吸収能力を向上することができる繊維強化プラスチック製プロペラシャフトを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、繊維強化プラスチック製筒体の端部に金属部品の接合部を接合した繊維強化プラスチック製プロペラシャフトにおいて、前記繊維強化プラスチック製筒体と前記金属部品の接合部との間には中間円筒部材を配設し、該中間円筒部材の外面には軸方向に延びかつ前記繊維強化プラスチック製筒体の内周面に食い込むセレーションを形成し、該中間円筒部材の内面には軸方向に延びる内側スプラインを形成し、前記金属部品の接合部の外周面には前記中間円筒部材の内側スプラインに嵌合する外側スプラインを形成した。
【0010】
上記構成によれば、繊維強化プラスチック製筒体に対する中間円筒部材のセレーションの食い込み及び中間円筒部材の内側スプラインと金属部品の外側スプラインとの嵌合によって繊維強化プラスチック製プロペラシャフトの捩り強度が確保される。また、中間円筒部材と金属部品の接合部とはスプライン嵌合しているので、金属部品の繊維強化プラスチック製筒体内への圧入荷重は小さくなる。そのため、衝突時においてプロペラシャフトの軸方向に作用する衝突荷重によって金属部品は繊維強化プラスチック製筒体内に圧入されやすくなり、衝突荷重の吸収能力を向上することができるようになる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の繊維強化プラスチック製プロペラシャフトにおいて、前記中間円筒部材の内径は、前記金属部品の最大外形の外径よりも大きく設定されている。
【0012】
上記構成によれば、衝突時においてプロペラシャフトの軸方向に作用する衝突荷重によって金属部品が繊維強化プラスチック製筒体内に圧入されるとき、金属部品は繊維強化プラスチック製筒体に衝突することなく圧入される。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の繊維強化プラスチック製プロペラシャフトにおいて、前記中間円筒部材の内側スプライン又は前記金属部品の外側スプラインの一方にはリード角が付与されている。
【0014】
上記構成によれば、中間円筒部材の内側スプライン又は金属部品の外側スプラインの一方にリード角を付与したことによって、金属部品の圧入荷重を適宜調整することができ、衝突荷重の吸収能力を調節することができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の繊維強化プラスチック製プロペラシャフトにおいて、前記中間円筒部材には前記繊維強化プラスチック製筒体に係合して該中間円筒部材の軸方向への移動を規制する規制手段が設けられている。
【0016】
上記構成によれば、衝突時の衝突荷重によって金属部品が繊維強化プラスチック製筒体内に圧入されるとき、中間円筒部材は規制手段によって軸方向への移動が規制されるので、金属部品は容易に繊維強化プラスチック製筒体内に進入する。
【0017】
請求項5に記載の発明のように、規制手段を中間円筒部材の外端部に形成され、かつ繊維強化プラスチック製筒体の端部に当接するフランジとすることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態における繊維強化プラスチック(FRP)製プロペラシャフト10はFRP製筒体11と、該FRP製筒体11の両端部に接合された金属部品としての金属製ヨーク(継手)12と、中間円筒部材13とを有する。FRP製筒体11と中間円筒部材13とはセレーション結合されており、中間円筒部材13と金属製ヨーク12とはスプライン嵌合されている。なお、金属製ヨーク12及び中間円筒部材13は、FRP製筒体11の両端部に結合されるが、両端部におけるFRP製筒体11の構造とその両端部に結合されている金属製ヨーク12及び中間円筒部材13の構成は同じである。従って、本実施形態では、説明の便宜上、エンジン駆動軸側の金属製ヨーク12及び中間円筒部材13とFRP製筒体11の結合について述べ、従動軸側の金属製ヨーク12及び中間円筒部材13とFRP製筒体11の結合についてはエンジン駆動軸側と同一として説明を省略する。
【0019】
FRP製筒体11は、ほぼ一定の肉厚の円筒からなり、例えばフィラメントワインディング法によって成形されている。すなわち、FRP製筒体11は、エポキシ樹脂等のマトリックス樹脂を含浸させたカーボン繊維などの強化繊維を層状に巻き付けて筒状体を成形し、その筒状体を加熱硬化させたものである。
【0020】
FRP製筒体11は、強化繊維を所定の等ピッチで斜めに巻き付けられたヘリカル巻層11aと、各端部14においてヘリカル巻層11aの外側に設けられたフープ巻層11bとを備えている。このヘリカル巻層11aの強化繊維は、車両に組付けて使用される際に要求される曲げ、捩り、振動等の特性を満足するため、45度未満の角度に規定された値に設定される。ここでは、例えば±10度に設定されている。フープ巻層11bは、ヘリカル巻層11aと異なり、強化繊維をFRP製筒体11の軸線に対する配向角が45度以上90度未満の角度に設定される。ここでは、フープ巻層11bは例えばほぼ90度で巻き付けられたものである。
【0021】
中間円筒部材13は金属板により形成され、FRP製筒体11の端部14に圧入されている。図4に示されるように、中間円筒部材13の外面には軸方向に延びかつFRP製筒体11の内周面に食い込むセレーション13aが形成され、中間円筒部材13の内面には軸方向に延びる内側スプライン13bが形成されている。セレーション13aの歯先円の直径D13aは、FRP製筒体11の端部14の内径D11よりも大径になっている。
【0022】
また、中間円筒部材13の外端部にはFRP製筒体11の端部14に当接するフランジ13cが形成されており、フランジ13cはFRP製筒体11の端部14に係合して中間円筒部材13の軸方向への移動を規制するようにしている。
【0023】
金属製ヨーク12は十字軸と接続する部材であり、十字軸を取り付けるための孔部12aが形成されている。図3に示されるように、金属製ヨーク12の接合部としての圧入軸部12bは円柱状に形成されて、その外周面には前記中間円筒部材13の内側スプライン13bに嵌合する外側スプライン12cが形成されている。この外側スプライン12cは中間円筒部材13の内側スプライン13bに対してリード角が付与されており、金属製ヨーク12の圧入荷重を調整できるようになっている。
【0024】
また、中間円筒部材13の内径D13bは、金属製ヨーク12の圧入軸部12bを除く最大外形の外径D12よりも大きく設定されている。
図3に示されるように、上記したFRP製筒体11の端部14から中間円筒部材13を圧入すると、セレーション13aによってFRP製筒体11の端部14の内周面に刻み目を刻設しながらセレーション13aがFRP製筒体11の内周面に食い込む。フランジ13cがFRP製筒体11の端部14に当接すると、中間円筒部材13の軸方向への移動は規制される。そのため、中間円筒部材13とFRP製筒体11とは相対回転しないように一体に接合される。
【0025】
この後、中間円筒部材13内に金属製ヨーク12の圧入軸部12bを圧入すると、中間円筒部材13の内側スプライン13bと金属製ヨーク12の外側スプライン12cとが嵌合する。そのため、金属製ヨーク12とFRP製筒体11とは相対回転しないように一体に接合され、本実施形態のFRP製プロペラシャフト10が製造される。
【0026】
上記のように構成されたFRP製プロペラシャフト10の作用について説明する。
通常の車両運転時には、FRP製筒体11に対する中間円筒部材13のセレーション13aの食い込み及び中間円筒部材13の内側スプライン13bと金属製ヨーク12の外側スプライン12cとの嵌合によってFRP製プロペラシャフト10の捩り強度が確保される。
【0027】
また、中間円筒部材13と金属製ヨーク12の圧入軸部12bとは内側スプライン13bと外側スプライン12cとの嵌合により、金属製ヨーク12のFRP製筒体11内への圧入荷重は小さくなる。そのため、図2に示されるように、衝突時においてFRP製プロペラシャフト10の軸方向に衝突荷重が作用すると、金属製ヨーク12はFRP製筒体11内に圧入されやすくなり、衝突荷重の吸収能力を向上することができる。
【0028】
また、中間円筒部材13の内径D13bは、金属製ヨーク12の圧入軸部12bを除く最大外形の外径D12よりも大きく設定されている。そのため、衝突時においてFRP製プロペラシャフト10の軸方向に作用する衝突荷重によって金属製ヨーク12がFRP製筒体11内に圧入されるとき、圧入軸部12bを除く金属製ヨーク12は中間円筒部材13及びFRP製筒体11に衝突することなく圧入される。
【0029】
上記のように構成されたFRP製プロペラシャフト10によれば、以下の効果が得られる。
・ 本実施形態では、FRP製筒体11に対する中間円筒部材13のセレーション13aの食い込み及び中間円筒部材13の内側スプライン13bと金属製ヨーク12の外側スプライン12cとの嵌合によってFRP製プロペラシャフト10の捩り強度を確保することができる。また、中間円筒部材13と金属製ヨーク12の圧入軸部12bとは内側スプライン13bと外側スプライン12cとの嵌合により、金属製ヨーク12のFRP製筒体11内への圧入荷重は小さくなる。そのため、衝突時においてFRP製プロペラシャフト10の軸方向に作用する衝突荷重によって金属製ヨーク12はFRP製筒体11内に圧入されやすくなり、衝突荷重の吸収能力を向上することができる。
【0030】
・ また、中間円筒部材13の内径D13bは、金属製ヨーク12の圧入軸部12bを除く最大外形の外径D12よりも大きく設定されている。そのため、衝突時においてFRP製プロペラシャフト10の軸方向に作用する衝突荷重によって金属製ヨーク12がFRP製筒体11内に圧入されるとき、圧入軸部12bを除く金属製ヨーク12をFRP製筒体11に衝突することなく圧入することができる。
【0031】
・ さらに、金属製ヨーク12の外側スプライン12cには中間円筒部材13の内側スプライン13bに対してリード角が付与されているため、金属製ヨーク12の圧入荷重を適宜調整することができ、衝突荷重の吸収能力を調節することができる。
【0032】
・ また、中間円筒部材13にはFRP製筒体11に係合して中間円筒部材13の軸方向への移動を規制するフランジ13cが設けられている。そのため、衝突時の衝突荷重によって金属製ヨーク12がFRP製筒体11内に圧入されるとき、中間円筒部材13はフランジ13cによって軸方向への移動が規制されるので、金属製ヨーク12は容易にFRP製筒体11内に進入することができる。
【0033】
なお、実施の形態は、次のように変更してもよい。
・ 図5に示すように、中間円筒部材13には断面矩形状の内側スプライン13dを形成するとともに、金属製ヨーク12には断面矩形状の外側スプライン12dを形成してもよい。
【0034】
・ 上記実施形態では、金属製ヨーク12の圧入軸部12bの長さと中間円筒部材13の軸方向の長さを等しく設定したが、いずれか一方を長く設定するようにしてもよい。このように構成すれば、両者の一定の嵌合力によってFRP製プロペラシャフト10の軸方向に作用する衝突荷重を、両者が嵌合している期間において漸次吸収することができる。
【0035】
・ 上記実施形態において、FRP製筒体11の強化繊維として、アラミド繊維、ガラス繊維等の高弾性・高強度を有する繊維を採用したり、マトリックス樹脂として、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂を採用したりしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施形態におけるFRP製プロペラシャフトの端部構成を示す断面図。
【図2】衝突時におけるFRP製プロペラシャフトの変形状態を示す断面図。
【図3】一実施形態のFRP製プロペラシャフトの一部を示す分解断面図。
【図4】図1のA−A線における拡大断面図。
【図5】別の実施形態の中間円筒部材を示す部分断面図。
【符号の説明】
10…繊維強化プラスチック製プロペラシャフト、11…FRP(繊維強化プラスチック)製筒体、11a…ヘリカル巻層、11b…フープ巻層、12…金属部品としての金属製ヨーク、12b…圧入軸部、12c,12d…外側スプライン、13…中間円筒部材、13a…セレーション、13b,13d…内側スプライン、13c…規制手段としてのフランジ、14…端部、D11,D13b…内径、D12…外径。
【発明の属する技術分野】
本発明は、繊維強化プラスチック製プロペラシャフトに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、プロペラシャフトとして繊維強化プラスチック(FRP)製プロペラシャフトを使用することにより車両を軽量化して燃費の向上を図るようにした技術が提案されている。このFRP製プロペラシャフトは、FRP製筒体の両端部に対して、駆動軸や従動軸に連結される金属製ヨークを接合する方法が一般的である。このようなFRP製筒体は、一般的なフィラメントワインディング法によって形成されたものである。そして、FRP製筒体と金属製ヨークとは、通常、セレーション接合によって接合される。
【0003】
金属製ヨークの接合部の外周面には軸方向に延びるセレーションが形成されており、FRP製筒体の端部の内周面に金属製ヨークの接合部を圧入する。金属製ヨークの圧入時において、接合部のセレーションにより繊維強化プラスチック製筒体の端部内周面に刻み目を刻設して食い込ませることによって、繊維強化プラスチック製筒体と金属製ヨークとは相対回転しないように一体に接合される。
【0004】
このような繊維強化プラスチック製プロペラシャフトは、車載内燃機関が発生するトルクを捩りトルクとして駆動輪に伝達することができるように、金属製ヨークと繊維強化プラスチック製筒体との間の捩り強度が必要とされる。
【0005】
また、最近の自動車設計においては、衝突時において過大な衝撃を与えず、しかもエアバック等の安全装置の作動に時間的余裕を与えるため、衝突時にプロペラシャフトの軸方向に作用する衝突荷重を吸収する技術が、特許文献1にて提案されている。この特許文献1に記載されたプロペラシャフトは、繊維強化プラスチック製筒体の内径を金属製ヨークの最大外形の外径よりも大きく設定している。そして、プロペラシャフトの軸方向に衝突荷重を受けた際、金属製ヨークのセレーションが繊維強化プラスチック製筒体の内周面に刻み目を刻設しながら金属製ヨークは繊維強化プラスチック製筒体内に更に圧入されることにより、衝突荷重を吸収するようになっている。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−337344号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、特許文献1に記載されたプロペラシャフトは、金属製ヨークのセレーションによって繊維強化プラスチック製筒体の内周面に刻み目を刻設しながら金属製ヨークを圧入する方法である。従って、プロペラシャフトの捩り強度を増加させるために、繊維強化プラスチック製筒体に対するセレーションの圧入代を大きく設定すると、衝突時においてセレーションによる繊維強化プラスチック製筒体の削り量が大きくなって圧入荷重が大きくなり、衝突荷重の吸収能力が低下する。逆に、衝突時においてセレーションによる繊維強化プラスチック製筒体の削り量を小さくして圧入荷重を低下させて衝突荷重の吸収能力を増加させるために、繊維強化プラスチック製筒体に対するセレーションの圧入代を小さく設定すると、プロペラシャフトの捩り強度が低下する。このように、特許文献1に記載されたプロペラシャフトは、捩り強度を確保しつつ衝突時の衝突荷重の吸収能力を向上することは困難であった。
【0008】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、捩り強度を確保することができるとともに、衝突時において衝突荷重の吸収能力を向上することができる繊維強化プラスチック製プロペラシャフトを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、繊維強化プラスチック製筒体の端部に金属部品の接合部を接合した繊維強化プラスチック製プロペラシャフトにおいて、前記繊維強化プラスチック製筒体と前記金属部品の接合部との間には中間円筒部材を配設し、該中間円筒部材の外面には軸方向に延びかつ前記繊維強化プラスチック製筒体の内周面に食い込むセレーションを形成し、該中間円筒部材の内面には軸方向に延びる内側スプラインを形成し、前記金属部品の接合部の外周面には前記中間円筒部材の内側スプラインに嵌合する外側スプラインを形成した。
【0010】
上記構成によれば、繊維強化プラスチック製筒体に対する中間円筒部材のセレーションの食い込み及び中間円筒部材の内側スプラインと金属部品の外側スプラインとの嵌合によって繊維強化プラスチック製プロペラシャフトの捩り強度が確保される。また、中間円筒部材と金属部品の接合部とはスプライン嵌合しているので、金属部品の繊維強化プラスチック製筒体内への圧入荷重は小さくなる。そのため、衝突時においてプロペラシャフトの軸方向に作用する衝突荷重によって金属部品は繊維強化プラスチック製筒体内に圧入されやすくなり、衝突荷重の吸収能力を向上することができるようになる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の繊維強化プラスチック製プロペラシャフトにおいて、前記中間円筒部材の内径は、前記金属部品の最大外形の外径よりも大きく設定されている。
【0012】
上記構成によれば、衝突時においてプロペラシャフトの軸方向に作用する衝突荷重によって金属部品が繊維強化プラスチック製筒体内に圧入されるとき、金属部品は繊維強化プラスチック製筒体に衝突することなく圧入される。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の繊維強化プラスチック製プロペラシャフトにおいて、前記中間円筒部材の内側スプライン又は前記金属部品の外側スプラインの一方にはリード角が付与されている。
【0014】
上記構成によれば、中間円筒部材の内側スプライン又は金属部品の外側スプラインの一方にリード角を付与したことによって、金属部品の圧入荷重を適宜調整することができ、衝突荷重の吸収能力を調節することができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の繊維強化プラスチック製プロペラシャフトにおいて、前記中間円筒部材には前記繊維強化プラスチック製筒体に係合して該中間円筒部材の軸方向への移動を規制する規制手段が設けられている。
【0016】
上記構成によれば、衝突時の衝突荷重によって金属部品が繊維強化プラスチック製筒体内に圧入されるとき、中間円筒部材は規制手段によって軸方向への移動が規制されるので、金属部品は容易に繊維強化プラスチック製筒体内に進入する。
【0017】
請求項5に記載の発明のように、規制手段を中間円筒部材の外端部に形成され、かつ繊維強化プラスチック製筒体の端部に当接するフランジとすることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態における繊維強化プラスチック(FRP)製プロペラシャフト10はFRP製筒体11と、該FRP製筒体11の両端部に接合された金属部品としての金属製ヨーク(継手)12と、中間円筒部材13とを有する。FRP製筒体11と中間円筒部材13とはセレーション結合されており、中間円筒部材13と金属製ヨーク12とはスプライン嵌合されている。なお、金属製ヨーク12及び中間円筒部材13は、FRP製筒体11の両端部に結合されるが、両端部におけるFRP製筒体11の構造とその両端部に結合されている金属製ヨーク12及び中間円筒部材13の構成は同じである。従って、本実施形態では、説明の便宜上、エンジン駆動軸側の金属製ヨーク12及び中間円筒部材13とFRP製筒体11の結合について述べ、従動軸側の金属製ヨーク12及び中間円筒部材13とFRP製筒体11の結合についてはエンジン駆動軸側と同一として説明を省略する。
【0019】
FRP製筒体11は、ほぼ一定の肉厚の円筒からなり、例えばフィラメントワインディング法によって成形されている。すなわち、FRP製筒体11は、エポキシ樹脂等のマトリックス樹脂を含浸させたカーボン繊維などの強化繊維を層状に巻き付けて筒状体を成形し、その筒状体を加熱硬化させたものである。
【0020】
FRP製筒体11は、強化繊維を所定の等ピッチで斜めに巻き付けられたヘリカル巻層11aと、各端部14においてヘリカル巻層11aの外側に設けられたフープ巻層11bとを備えている。このヘリカル巻層11aの強化繊維は、車両に組付けて使用される際に要求される曲げ、捩り、振動等の特性を満足するため、45度未満の角度に規定された値に設定される。ここでは、例えば±10度に設定されている。フープ巻層11bは、ヘリカル巻層11aと異なり、強化繊維をFRP製筒体11の軸線に対する配向角が45度以上90度未満の角度に設定される。ここでは、フープ巻層11bは例えばほぼ90度で巻き付けられたものである。
【0021】
中間円筒部材13は金属板により形成され、FRP製筒体11の端部14に圧入されている。図4に示されるように、中間円筒部材13の外面には軸方向に延びかつFRP製筒体11の内周面に食い込むセレーション13aが形成され、中間円筒部材13の内面には軸方向に延びる内側スプライン13bが形成されている。セレーション13aの歯先円の直径D13aは、FRP製筒体11の端部14の内径D11よりも大径になっている。
【0022】
また、中間円筒部材13の外端部にはFRP製筒体11の端部14に当接するフランジ13cが形成されており、フランジ13cはFRP製筒体11の端部14に係合して中間円筒部材13の軸方向への移動を規制するようにしている。
【0023】
金属製ヨーク12は十字軸と接続する部材であり、十字軸を取り付けるための孔部12aが形成されている。図3に示されるように、金属製ヨーク12の接合部としての圧入軸部12bは円柱状に形成されて、その外周面には前記中間円筒部材13の内側スプライン13bに嵌合する外側スプライン12cが形成されている。この外側スプライン12cは中間円筒部材13の内側スプライン13bに対してリード角が付与されており、金属製ヨーク12の圧入荷重を調整できるようになっている。
【0024】
また、中間円筒部材13の内径D13bは、金属製ヨーク12の圧入軸部12bを除く最大外形の外径D12よりも大きく設定されている。
図3に示されるように、上記したFRP製筒体11の端部14から中間円筒部材13を圧入すると、セレーション13aによってFRP製筒体11の端部14の内周面に刻み目を刻設しながらセレーション13aがFRP製筒体11の内周面に食い込む。フランジ13cがFRP製筒体11の端部14に当接すると、中間円筒部材13の軸方向への移動は規制される。そのため、中間円筒部材13とFRP製筒体11とは相対回転しないように一体に接合される。
【0025】
この後、中間円筒部材13内に金属製ヨーク12の圧入軸部12bを圧入すると、中間円筒部材13の内側スプライン13bと金属製ヨーク12の外側スプライン12cとが嵌合する。そのため、金属製ヨーク12とFRP製筒体11とは相対回転しないように一体に接合され、本実施形態のFRP製プロペラシャフト10が製造される。
【0026】
上記のように構成されたFRP製プロペラシャフト10の作用について説明する。
通常の車両運転時には、FRP製筒体11に対する中間円筒部材13のセレーション13aの食い込み及び中間円筒部材13の内側スプライン13bと金属製ヨーク12の外側スプライン12cとの嵌合によってFRP製プロペラシャフト10の捩り強度が確保される。
【0027】
また、中間円筒部材13と金属製ヨーク12の圧入軸部12bとは内側スプライン13bと外側スプライン12cとの嵌合により、金属製ヨーク12のFRP製筒体11内への圧入荷重は小さくなる。そのため、図2に示されるように、衝突時においてFRP製プロペラシャフト10の軸方向に衝突荷重が作用すると、金属製ヨーク12はFRP製筒体11内に圧入されやすくなり、衝突荷重の吸収能力を向上することができる。
【0028】
また、中間円筒部材13の内径D13bは、金属製ヨーク12の圧入軸部12bを除く最大外形の外径D12よりも大きく設定されている。そのため、衝突時においてFRP製プロペラシャフト10の軸方向に作用する衝突荷重によって金属製ヨーク12がFRP製筒体11内に圧入されるとき、圧入軸部12bを除く金属製ヨーク12は中間円筒部材13及びFRP製筒体11に衝突することなく圧入される。
【0029】
上記のように構成されたFRP製プロペラシャフト10によれば、以下の効果が得られる。
・ 本実施形態では、FRP製筒体11に対する中間円筒部材13のセレーション13aの食い込み及び中間円筒部材13の内側スプライン13bと金属製ヨーク12の外側スプライン12cとの嵌合によってFRP製プロペラシャフト10の捩り強度を確保することができる。また、中間円筒部材13と金属製ヨーク12の圧入軸部12bとは内側スプライン13bと外側スプライン12cとの嵌合により、金属製ヨーク12のFRP製筒体11内への圧入荷重は小さくなる。そのため、衝突時においてFRP製プロペラシャフト10の軸方向に作用する衝突荷重によって金属製ヨーク12はFRP製筒体11内に圧入されやすくなり、衝突荷重の吸収能力を向上することができる。
【0030】
・ また、中間円筒部材13の内径D13bは、金属製ヨーク12の圧入軸部12bを除く最大外形の外径D12よりも大きく設定されている。そのため、衝突時においてFRP製プロペラシャフト10の軸方向に作用する衝突荷重によって金属製ヨーク12がFRP製筒体11内に圧入されるとき、圧入軸部12bを除く金属製ヨーク12をFRP製筒体11に衝突することなく圧入することができる。
【0031】
・ さらに、金属製ヨーク12の外側スプライン12cには中間円筒部材13の内側スプライン13bに対してリード角が付与されているため、金属製ヨーク12の圧入荷重を適宜調整することができ、衝突荷重の吸収能力を調節することができる。
【0032】
・ また、中間円筒部材13にはFRP製筒体11に係合して中間円筒部材13の軸方向への移動を規制するフランジ13cが設けられている。そのため、衝突時の衝突荷重によって金属製ヨーク12がFRP製筒体11内に圧入されるとき、中間円筒部材13はフランジ13cによって軸方向への移動が規制されるので、金属製ヨーク12は容易にFRP製筒体11内に進入することができる。
【0033】
なお、実施の形態は、次のように変更してもよい。
・ 図5に示すように、中間円筒部材13には断面矩形状の内側スプライン13dを形成するとともに、金属製ヨーク12には断面矩形状の外側スプライン12dを形成してもよい。
【0034】
・ 上記実施形態では、金属製ヨーク12の圧入軸部12bの長さと中間円筒部材13の軸方向の長さを等しく設定したが、いずれか一方を長く設定するようにしてもよい。このように構成すれば、両者の一定の嵌合力によってFRP製プロペラシャフト10の軸方向に作用する衝突荷重を、両者が嵌合している期間において漸次吸収することができる。
【0035】
・ 上記実施形態において、FRP製筒体11の強化繊維として、アラミド繊維、ガラス繊維等の高弾性・高強度を有する繊維を採用したり、マトリックス樹脂として、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂を採用したりしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施形態におけるFRP製プロペラシャフトの端部構成を示す断面図。
【図2】衝突時におけるFRP製プロペラシャフトの変形状態を示す断面図。
【図3】一実施形態のFRP製プロペラシャフトの一部を示す分解断面図。
【図4】図1のA−A線における拡大断面図。
【図5】別の実施形態の中間円筒部材を示す部分断面図。
【符号の説明】
10…繊維強化プラスチック製プロペラシャフト、11…FRP(繊維強化プラスチック)製筒体、11a…ヘリカル巻層、11b…フープ巻層、12…金属部品としての金属製ヨーク、12b…圧入軸部、12c,12d…外側スプライン、13…中間円筒部材、13a…セレーション、13b,13d…内側スプライン、13c…規制手段としてのフランジ、14…端部、D11,D13b…内径、D12…外径。
Claims (5)
- 繊維強化プラスチック製筒体の端部に金属部品の接合部を接合した繊維強化プラスチック製プロペラシャフトにおいて、
前記繊維強化プラスチック製筒体と前記金属部品の接合部との間には中間円筒部材を配設し、該中間円筒部材の外面には軸方向に延びかつ前記繊維強化プラスチック製筒体の内周面に食い込むセレーションを形成し、該中間円筒部材の内面には軸方向に延びる内側スプラインを形成し、
前記金属部品の接合部の外周面には前記中間円筒部材の内側スプラインに嵌合する外側スプラインを形成した
ことを特徴とする繊維強化プラスチック製プロペラシャフト。 - 請求項1に記載の繊維強化プラスチック製プロペラシャフトにおいて、
前記中間円筒部材の内径は、前記金属部品の最大外形の外径よりも大きく設定されている
ことを特徴とする繊維強化プラスチック製プロペラシャフト。 - 請求項1又は2に記載の繊維強化プラスチック製プロペラシャフトにおいて、
前記中間円筒部材の内側スプライン又は前記金属部品の外側スプラインの一方にはリード角が付与されている
ことを特徴とする繊維強化プラスチック製プロペラシャフト。 - 請求項1〜3のいずれかに記載の繊維強化プラスチック製プロペラシャフトにおいて、
前記中間円筒部材には前記繊維強化プラスチック製筒体に係合して該中間円筒部材の軸方向への移動を規制する規制手段が設けられている
ことを特徴とする繊維強化プラスチック製プロペラシャフト。 - 請求項4に記載の繊維強化プラスチック製プロペラシャフトにおいて、
前記規制手段は、前記中間円筒部材の外端部に形成され、かつ前記繊維強化プラスチック製筒体の端部に当接するフランジである
ことを特徴とする繊維強化プラスチック製プロペラシャフト。
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