JP2004332007A - α型結晶構造のアルミナ皮膜 - Google Patents

α型結晶構造のアルミナ皮膜 Download PDF

Info

Publication number
JP2004332007A
JP2004332007A JP2003125549A JP2003125549A JP2004332007A JP 2004332007 A JP2004332007 A JP 2004332007A JP 2003125549 A JP2003125549 A JP 2003125549A JP 2003125549 A JP2003125549 A JP 2003125549A JP 2004332007 A JP2004332007 A JP 2004332007A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
alumina
film
crystal structure
type crystal
alumina film
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2003125549A
Other languages
English (en)
Inventor
Hiroshi Tamagaki
浩 玉垣
Toshimitsu Obara
利光 小原
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kobe Steel Ltd
Original Assignee
Kobe Steel Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kobe Steel Ltd filed Critical Kobe Steel Ltd
Priority to JP2003125549A priority Critical patent/JP2004332007A/ja
Priority to EP14169851.4A priority patent/EP2848712B1/en
Priority to EP03784598.9A priority patent/EP1553210B1/en
Priority to EP20140169853 priority patent/EP2865784A1/en
Priority to US10/523,931 priority patent/US7531212B2/en
Priority to AU2003254888A priority patent/AU2003254888A1/en
Priority to PCT/JP2003/010114 priority patent/WO2004015170A1/ja
Priority to CNB038189275A priority patent/CN100413998C/zh
Publication of JP2004332007A publication Critical patent/JP2004332007A/ja
Priority to IL166622A priority patent/IL166622A/en
Priority to US12/402,755 priority patent/US8323807B2/en
Priority to US12/402,763 priority patent/US20090173625A1/en
Priority to IL218369A priority patent/IL218369A0/en
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Cutting Tools, Boring Holders, And Turrets (AREA)
  • Physical Vapour Deposition (AREA)

Abstract

【課題】切削工具等に適用して高温で使用したときにクラックの発生原因なるγアルミナを実質的に含まないα型結晶構造を有するアルミナ皮膜を提供する。
【解決手段】基材(基材上に予め下地皮膜が形成されたものを含む)上に物理蒸着法によって形成したアルミナ皮膜であって、該アルミナ皮膜の結晶構造を断面透過型電子顕微鏡で観察したときに(倍率:20000倍)、少なくとも皮膜成長開始部は微細構造のアルミナ結晶で構成されており、当該微細結晶領域においてはα型結晶構造以外の結晶構造が実質的に観察されないものである。
【選択図】 図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、切削工具、摺動部材、金型の如き耐摩耗部材に適用されるアルミナ皮膜に関するものであり、殊に熱的に最も安定といわれ耐摩耗性および耐熱性に優れたα型結晶構造を有するアルミナ皮膜に関するものである。尚、本発明の対象となるアルミナ皮膜は、上記した様々な用途に適用できるが、以下では代表例として切削工具に適用する場合を中心に説明を進める。
【0002】
【従来の技術】
一般に、優れた耐摩耗性や摺動特性が求められる切削工具や摺動部材等においては、高速度鋼や超硬合金等の基材表面に、物理蒸着法(以下、PVD法という)や化学蒸着法(以下、CVD法という)等の気相成長法で、チタン窒化物やチタンアルミニウム窒化物等の硬質皮膜を形成する方法が採用されている。
【0003】
特に切削工具として使用する場合、前記硬質皮膜には耐摩耗性と耐熱性(高温での耐酸化性)が特性として要求されるので、該両特性を有するものとして、特にチタンアルミニウム窒化物(TiAlN)が、切削時の刃先温度が高温となる超硬工具等への被覆材料として近年多く使用されている。このようにTiAlNが優れた特性を発揮するのは、皮膜に含まれたアルミニウムの作用により耐熱性が向上し、800℃程度の高温までは安定的した耐摩耗性と耐熱性を維持できるからである。こうしたTiAlNとしては、TiとAlの組成比が異なる様々なものが使用されているが、その大半は、上記両特性を備えたTi:Alの原子比が50:50〜25:75のものである。
【0004】
ところで、切削工具等の刃先は、切削時に1000℃以上の高温となる場合がある。このような条件下では、TiAlNのみでは十分な耐熱性が確保できないため、TiAlN膜を形成した上に、更に酸化アルミニウム(アルミナ)膜を形成して耐熱性を確保することが行われている(例えば、特許文献1)。
【0005】
アルミナは、温度によって様々な結晶構造をとるが、α型以外はいずれも熱的に準安定状態にある。しかし、切削工具の如く切削時における刃先の温度が、常温から1000℃以上に亘る広範囲で著しく変動する場合には、アルミナの結晶構造が変化し、皮膜に亀裂が生じたり剥離する等の問題を生じる。ところが、CVD法を採用して基材温度を1000℃以上に高めることによって生成されるコランダム構造(α型結晶構造)のアルミナだけは、一旦形成されると、以後の温度に関係なく熱的に安定な構造を維持する。従って、切削工具等に耐熱性を付与するには、α型結晶構造主体のアルミナ皮膜を被覆することが有効な手段とされている。
【0006】
しかしながら、上述した通りα型結晶構造のアルミナ(以下、「αアルミナ」と呼ぶことがある)を形成するには、基材を1000℃以上にまで加熱しなければならないため、適用できる基材が限られる。基材の種類によっては、1000℃以上の高温に曝されると軟質化し、耐摩耗部材用基材としての適性が失われる可能性が生じることになる。また、超硬合金のような高温用基材を用いた場合であっても、この様な高温に曝されると変形等の問題が生じる。しかも、耐摩耗性を発揮する膜として基材上に形成されたTiAlN膜等の硬質皮膜の実用温度域は一般に最高で800℃程度であり、1000℃以上の高温に曝されると、皮膜が変質し、耐摩耗性が劣化する恐れがある。
【0007】
このような状況の下で、CVD法よりも低温で皮膜形成が可能なPVD法によるαアルミナの形成が試みられてきた。O.Zywitzki,G.Hoetzschらは、非特許文献1で、高出力(11〜17kW)のパルス電源を用いた反応性スパッタリングにより、700〜760℃の基材温度で鉄基材上にX線回折による観察でαアルミナを含む皮膜が形成できること、および750〜770℃の基材温度で実質的にα皮膜が形成できたことを報告している。更に、O.Zywitzkiらは、上記と同様の成膜によって形成したアルミナ皮膜を透過型電子顕微鏡(TEM)によって詳細に観察し、αアルミナの成長過程を報告している(非特許文献2)。
【0008】
一方、Y.Yamada−Takamuraらは、フィルター型真空アーク法による反応性成膜によって、780℃の基材温度でαアルミナ皮膜が形成できること、およびRF(ラジオ周波数)バイアスを印加することによって、460℃でもαアルミナの生成が可能であることを報告している(非特許文献3)。
【0009】
この報告においても、TEMによるアルミナ皮膜断面観察を実施しているが、上記O.Zywitzkiらの報告と同様に皮膜成長の初期(即ち、皮膜における基材との界面)付近にはγアルミナが形成されており、この中からαアルミナ結晶が成長しているとの詳細な観察結果が報告されている。
【0010】
これまで報告された技術では、いずれも皮膜の成長初期にγアルミナを含むものであるが、この様にγアルミナを部分的に含む皮膜であっても、その皮膜を被覆した被覆部材が1000℃以上の高温に曝された場合には、その部分のγアルミナがαアルミナに相変態を起こす可能性がある。そして、この相変態は体積変化を伴って起こるので、皮膜のクラック発生の原因となる可能性が懸念される。また、このような体積変化を伴う相変態が皮膜と基材との界面で発生すると、皮膜の密着性に悪影響を及ぼすことが十分に予想される。
【0011】
別の技術として、αアルミナと同一の結晶構造を持つα−Crをαアルミナ(α−Al)の結晶核発生のテンプレートとして用いることによって、αアルミナの低温成膜を可能にする方法も提案されている(例えば、特許文献2、非特許文献4)。このうち特許文献2によれば、Siウエハ上にα−Cr下地層を形成することによって、2×10−6Pa程度の真空雰囲気と、1nm/minの低成膜割合にて成膜することを要件として、400℃の基材温度でαアルミナが0.18μmの厚みで形成されたことが示されている。
【0012】
更に、上記の様な処理温度の問題を解決することを目的にして、例えば特許文献3には、格子定数が4.779Å以上5.000Å以下で、膜厚が少なくとも0.005μmであるコランダム構造の酸化物皮膜を下地層として、該下地層上にα型結晶構造のアルミナ皮膜を形成する方法が開示されている。また、硬質皮膜としてTi、CrおよびVよりなる群から選択される1種以上の元素とAlとの複合窒化皮膜を形成した上に、中間層として(Al,Cr(1−z))N(但し、zは0≦z≦0.90)からなる皮膜を形成し、更にこの皮膜を酸化処理することによってコランダム構造の酸化物皮膜を形成した後、該酸化皮膜上にα型結晶構造のアルミナを形成することが有用である旨も示されている。この方法では、比較的低温の基板温度で結晶性のαアルミナが形成できるとされている。
【0013】
しかしながら、これら特許文献2、3および非特許文献4の技術においても、形成されるアルミナ皮膜についてのミクロな結晶相の検出は行われているとは言えず、界面付近におけるアルミナの結晶構造については全く不明の状態である。こうしたことから、これまでPVD法によって形成されたアルミナ皮膜では、少なくとも皮膜形成初期の結晶が微細な領域では、γアルミナが存在しており、α型結晶構造のアルミナはこうしたγアルミナの中から成長しているものと考えられる。
【0014】
【特許文献1】
特許第2742049号公報 特許請求の範囲等
【特許文献2】
特開2001−335917号公報 特許請求の範囲、実施例等
【特許文献3】
特開2002−53946号公報 特許請求の範囲等
【非特許文献1】
Surf.Coat.Technol.,86−87 (1996)p.640−647
【非特許文献2】
Surf.Coat.Technol.,94−95 (1997)p.303−308
【非特許文献3】
Surf.Coat.Technol.,142−144 (2001)p.260−264
【非特許文献4】
J.Vac.Sci.Technol.A20(6),Nov/Dec (2002)p.2134−2136
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、こうした状況の下でなされたものであって、その目的は、切削工具等に適用して高温で使用したときにクラックの発生原因なるγアルミナを実質的に含まないα型結晶構造を有するアルミナ皮膜を提供することにある。
【0016】
【課題を解決する為の手段】
本発明に係るα型結晶構造のアルミナ皮膜とは、基材(基材上に予め下地皮膜が形成されたものを含む)上に物理蒸着法によって形成したアルミナ皮膜であって、該アルミナ皮膜の結晶構造を断面透過型電子顕微鏡で観察したときに(倍率:20000倍)、少なくとも皮膜成長開始部は微細構造のアルミナ結晶で構成されており、当該微細結晶領域においてはα型結晶構造以外の結晶構造が実質的に観察されないものである点に要旨を有するものである。
【0017】
尚、ここで「実質的に」とは、本発明が、α結晶構造が100%であることに限定されるものではなく、成膜プロセス上不可避的に含まれてしまった不純物や極めて微量の他結晶構造のものが含まれていることを許容するという意味である。
【0018】
本発明のアルミナ皮膜においては、(1)微細構造のアルミナ結晶は、その結晶粒が成長初期から厚さ方向0.5μmまでの範囲内において0.3μm以下のもの、(2)アルミナ皮膜全体に亘ってα型結晶構造以外の結晶構造が実質的に観察されないもの、(3)α型結晶構造のアルミナは、皮膜表面側において柱状に成長したもの、等の構造を呈するものとなる。また、本発明のアルミナ皮膜の膜厚は、0.5〜20μmであることが好ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、実質的にα結晶構造からなるアルミナ皮膜を製造するための手段について、特にアルミナ皮膜の結晶成長開始部分となる基材(若しくは基材表面に形成された下地皮膜)の表面性状について検討した。
【0020】
その結果、イオンボンバード処理やコランダム構造を有する酸化物粉末による表面傷つけ処理等の前処理を基材表面に施して、基材表面に微細な傷や凹みを多数形成してから、該被処理表面を所定の温度で酸化処理し、その後アルミナ皮膜の形成を行えば、少なくとも皮膜の成長開始部(即ち、酸化物含有層とアルミナ皮膜の界面)が微細な構造のαアルミナ結晶の集合体で形成されており、その結晶微細部においてはαアルミナ以外の結晶相が観察されないことが判明したのである。また、上記のような前処理を行わずとも、酸化処理条件(処理温度)をより厳密に設定してやれば、その後に形成されるアルミナ皮膜は上記と同様の結晶形態になることも分かった。
【0021】
このようなアルミナ皮膜は、1000℃以上の高温雰囲気下で用いても、既に最も熱的に安定な構造のαアルミナのみで構成されているので、これ以上結晶形の変態を起こすことなく、結晶の体積変化などによる皮膜界面付近でのクラックや剥離等が発生することがなくなるのである。
【0022】
本発明のアルミナ皮膜では、微細構造を有する皮膜成長開始部だけでなく、皮膜のあらゆる箇所においてαアルミナ以外の結晶が観察されることがないことが好ましいが、上記処理条件を適切に設定することによって、こうしたアルミナ皮膜が形成できるのである。
【0023】
α型結晶構造のアルミナ皮膜の膜厚は、0.5〜20μmとすることが好ましく、より好ましくは1〜5μm程度である。0.5μmは、本発明における「皮膜成長開始部」に相当する厚みであると共に、耐熱性の皮膜としての性能が発揮される最小限の厚みである。また皮膜厚みを20μm以下とすることで、皮膜内部応力による悪影響(亀裂の発生)を避けることができる。また、成長する結晶が極端に粗大化するのを防止するという観点からすれば、5μm以下とするのがよい。
【0024】
本発明に係るα型結晶構造を有するアルミナ皮膜の形成手段については、CVD法では1000℃以上の高温で行う必要があるので好ましくなく、比較的低温域で成膜することのできるPVD法を採用する。こうしたPVDのうち、スパッタリング法特に反応性スパッタリング法では、アルミナのような高絶縁性皮膜を妥当な成膜速度で形成するのに適しており、生産性の点からしても好ましい。このときの成膜速度は、少なくとも0.1μm/hr以上確保でき、より好ましくは0.5μm/hr以上とすることができる。
【0025】
またアルミナ皮膜を形成するときの温度については、前処理の有無、基材や下地皮膜の種類等によって最適な基材温度が異なるが、前処理を施す場合には、少なくとも700℃以上を確保する必要があり、これよりも低い温度になるとα結晶構造のアルミナ皮膜を形成することが難しくなる。一方、また、αアルミナをPVD法で形成する目的の一つであるプロセスの低温化という観点からして、例えば下地皮膜として形成されることのあるTiAlN等のPVD皮膜が耐え得る温度である800℃以下であることが好ましい。従って、上記「基材温度」とは、超硬合金製や炭素鋼製、工具鋼製等の基材および該基材上に形成された下地皮膜の温度の意味である。
【0026】
本発明では、アルミナ皮膜の形成に先立ち、基材表面若しくは基材上に予め形成された下地皮膜の表面を酸化(酸化処理工程)して酸化物含有層を形成するものである。この酸化処理工程は、処理の効率の観点から、或は形成した酸化物含有層表面への大気中の水蒸気の吸着を防止する観点から、次の工程で成膜するアルミナ膜を形成する装置(真空チャンバ)内で行うことが望ましく、酸化性ガスの雰囲気下で基材温度を高めて行う熱酸化が好ましい方法である。このときの酸化性ガス雰囲気としては、例えば酸素、オゾン、H等の酸化性ガスを含有する雰囲気が挙げられ、その中には大気雰囲気も勿論含まれる。
【0027】
また前記酸化は、前処理の有無、基材や下地皮膜の種類等によって最適な基材温度が異なるが、例えば下地皮膜がCrNでガスイオンボンバードや傷つけの前処理を施す場合には少なくとも700℃以上に保持して熱酸化を行う必要がある。これに対して、例えば下地皮膜がCrNで前処理を施さない場合や、下地皮膜がTiAlNでガスイオンボンバードや傷つけの前処理を施した場合、或は基材や下地を限定しないがCrによるメタルイオンボンバードによる前処理を施した場合には、基材温度を750℃以上にして酸化処理を行う必要がある。基材温度が上記各温度よりも低過ぎると十分に酸化が行われず、アルミナ皮膜形成条件を適切にしても希望するαアルミナが形成されない。
【0028】
基材温度を高めるにつれて酸化は促進されるが、基材温度の上限は、本発明の目的に照らして1000℃未満に抑えることが必要である。800℃以下でも本発明のアルミナ皮膜の形成に有用な酸化物含有層を形成することができる。従って、本発明のαアルミナ皮膜を得るためには、酸化処理工程およびアルミナ皮膜形成工程における基材温度を、前処理の有無に応じて適切な基材温度範囲を設定して連続的に(好ましくは同一装置内で同一の基材温度で)行うようにすれば良い。
【0029】
本発明のアルミナ皮膜を形成するためには、上記酸化処理における基材温度以外の他の条件について格別の制限はなく、具体的な酸化方法として、上記熱酸化の他、例えば酸素、オゾン、H等の酸化性ガスをプラズマ化して照射する方法を採用することも勿論有効である。上記のような酸化物含有層を形成すれば、その表面にα型結晶構造のアルミナの皮膜膜を確実に形成することができるのである。
【0030】
本発明のアルミナ皮膜を製造するに際して、必要によってガスイオンボンバード処理やコランダム構造の酸化物粉末による表面傷つけ処理等の前処理を基材表面に施すものであり、こうした前処理を施すことによって、その後の酸化処理工程およびアルミナ皮膜形成工程において比較的低い温度(700℃以上)によってもα結晶構造のアルミナ皮膜が得られるのであるが、これらの前処理による作用は次の通りである。
【0031】
上記イオンボンバード処理は、Ar等の不活性ガスを真空チャンバー内に導入した状態で、基材に負のバイアス電圧(直流電圧若しくは高周波の交流電圧)を印加してグロー放電を発生させ、該グロー放電により生じたプラズマ中のAr等のガスイオンを基材に高速で衝突させることによって、基材表面をエッチングさせる方法である。この処理により次工程の酸化処理で形成されるα型結晶構造のアルミナ結晶核の生成ポイント(酸化物ポイント)がより多数且つ均一に形成されることになる。
【0032】
一方、コランダム構造の酸化物粉末による表面傷つけ処理とは、例えばα型結晶構造(コランダム構造)のアルミナ粉末を用いて、基材表面を研磨するか、或は該粉末を分散させた液体中に基材を浸漬して超音波印加を行うことによって、て、粉末の形状を反映した形状の微細な傷や凹みを基材表面に形成するものである。また、この処理によって、α型結晶構造のアルミナ粉末が基材表面に極微量残存する可能性もある。これらの傷や凹み或は極微量のアルミナ粉末の残存によって、上記と同様に次工程の酸化処理で形成されるα型結晶構造のアルミナ結晶核の生成ポイント(酸化物ポイント)がより多数且つ均一に形成されることになる。尚、こうした処理で用いる粉末としては、α型結晶構造のアルミナ粉末に限らず、CrやFe等のコランダム構造を有する粉末も適用できるが、最表面に形成されるアルミナ皮膜と同じα型結晶構造のアルミナ粉末を用いることが好ましい。また、こうした粉末は、微細なアルミナ皮膜を形成するという観点からして、より小さいものを用いることが好ましく、平均粒子径が50μm以下のもの、より好ましくは1μm以下のものを用いるのが良い。
【0033】
また、別の前処理の手法としてメタルイオンボンバード処理もある。メタルイオンボンバード処理は、例えば真空アーク蒸発源を用い、真空アーク放電により金属ターゲット材を蒸発させ、生成した金属イオンにバイアス電圧でエネルギーを与えて基材に高温で衝突させ、最表面においては前記メタルの含有量が多い基材(或は下地層)と前記メタルとの混合層を形成するものである。
【0034】
尚、下地皮膜の膜厚は、硬質皮膜として期待される耐摩耗性を十分に発揮させるため、0.5μm以上とするのがよく、より好ましくは1μm以上である。しかし下地皮膜の膜厚が厚すぎると、切削時に該下地皮膜に亀裂が生じ易くなり長寿命化が図れなくなるので、硬質皮膜の膜厚は20μm以下、より好ましくは10μm以下に抑えるのがよい。
【0035】
また、別の種類の下地皮膜としては、酸化物セラミックス(例えばYttrium Stabilized Zirconia)等のいわゆるサーマルバリアコーティングを用いることも出来る。この場合は、特に膜厚に制約は無い。
【0036】
上記下地皮膜の形成方法は特に限定されないが、耐摩耗性の良好な硬質皮膜を形成するには、PVD法で形成することが好ましく、該PVD法としてAIP法や反応性スパッタリング法を採用することがより好ましい。また、PVD法で下地皮膜を形成する方法を採用すれば、下地皮膜の形成とαアルミナ皮膜の形成を同一装置内で成膜を行うことができる可能性もあるので、生産性向上の観点からも好ましい。
【0037】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0038】
【実施例】
図1に示すPVD装置(真空成膜装置)を用いて、本発明のアルミナ皮膜の形成を行った。まず、超硬合金基材上に予めAIP法によってCrN皮膜(下地皮膜)を形成した試験片を、装置1内の遊星回転治具4にセットし、装置1内がほぼ真空状態となるまで排気した後、装置内部の側面と中央に配置したヒータ5で試料を750℃まで加熱した。試験片が750℃になった時点で、装置1内に酸素ガスを流量300sccm、圧力約0.75Paで導入し、20分間表面の酸化処理を行った。尚、図1中7は、AIP法によって下地皮膜を形成するときのAIP用蒸発源を示している。
【0039】
次に、2台のアルミターゲットを装着したスパッタリングカソード6を、アルゴンと酸素の雰囲気中で、約2.5kWのパルスDC電力を投入してスパッタを行い、前記酸化温度とほぼ同じ温度条件(750℃)で、酸化アルミ(アルミナ)の形成を行った。アルミナの形成にあたっては、放電電圧制御とプラズマ発光分光を利用して、放電状態をいわゆる遷移モードに保ち、約2μmのアルミナ皮膜を形成した。尚、これらの皮膜形成では、前記図1に示した回転テーブル3を回転(公転)させるとともに、その上に設置した遊星回転治具4も回転させながら行った。
【0040】
成膜処理後のアルミナ皮膜は、薄膜X線回折によって結晶性を分析し、アルミナ皮膜の結晶構造を特定した。その結果、アルミナ皮膜からは、α結晶構造のアルミナを示す回折ピークのみが観察できることが確認できた。
【0041】
上記アルミナ皮膜を透過型電子顕微鏡(TEM)によって観察した結果を、図2(図面代用写真)に示す(倍率:20000倍)。このTEM像および同時に実施したEDX分析(エネルギー分散形X線分析)によると、この皮膜は基材に近い方から、CrN皮膜、CrNの表面に酸化処理工程によって形成された厚み:30〜40nmのクロム酸化物(Cr)層、およびアルミナ層の3層構造となっていることが分かった。また、アルミナおよびクロム酸化物層については、電子線回折によって分析したところ、いずれもコランダム構造を有しており、夫々α−A、α−Crであることが確認できた。
【0042】
図2の一部を拡大して図3(図面代用写真)に示す。この図3から明らかなように、皮膜成長が進み膜厚が大きくなるにつれて結晶粒が大きくなり、表面近傍では結晶の幅が最大で0.5μm、柱状結晶の長さで1.5μmに達していることが分かる。これに対して、皮膜の成長初期では、最大でも0.3μm程度の大きさであることが分かる。
【0043】
このように皮膜の成長初期には、微細な結晶が形成され、皮膜成長と共に結晶粒が成長するのは一般的な傾向であるが、これまでPVD法によって形成したアルミナ皮膜に関する皮膜断面観察によれば(前記非特許文献2〜4)、αアルミナが形成できた試料においても皮膜形成初期における結晶が微細なγアルミナ層が観察されており、α型の結晶はこの中から成長すると報告されている。こうしたことから、PVD法によってαアルミナ皮膜を形成した場合には、皮膜成長初期の結晶微細領域ではγアルミナの含有が避けられないものと考えられているのである。
【0044】
しかしながら、上記の手順で形成したアミナ皮膜について、TEM観察時にαCrとの界面近傍のアルミナ皮膜を電子線回折によって分析したところ、あらゆる領域においてαアルミナからの回折結果が得られ、γアルミナは検出されないことが判明した。こうしたことから、下地皮膜の種類も含めて、適切な条件下でアルミナ皮膜を形成することによって、皮膜成長初期の段階の結晶が微細な領域においても、αアルミナが形成できることが明らかになった。
【0045】
また、この皮膜では、結晶が微細な構造を有する皮膜成長初期から、膜厚が増大するにつれて、結晶粒が柱状に大きく成長していくが、いずれの結晶成長においても電子線回折ではαアルミナのみが観察されていたのである。
【0046】
上記実施例では、本発明のαアルミナは、CrNを下地皮膜として形成してその上に、750℃の基材温度でその表面層を酸化処理し、引き続き下地皮膜上にアルミナ皮膜を形成することで得られたものであるが、本発明者らが、実質的にα結晶構造だけからなるアルミナ皮膜を形成するための最適な条件について検討したところ、次のような製造条件によってもαアルミナが形成できることが判明した。即ち、下地皮膜の酸化処理工程に先立って、下地皮膜の表面をArイオン等によるイオンボンバード処理を施すか、或はコランダム構造の酸化物粉末(好ましくはαアルミナの粉末)により下地皮膜表面を傷つけ処理を施せば、700℃程度で基材表面の酸化処理を行っても同様のαアルミナ皮膜が形成できることが確認できた。
【0047】
これらのことから、本発明のαアルミナ皮膜は、下地皮膜をCrNとして上記のような前処理(イオンボンバード処理や酸化物粉末による傷付け処理)を組み合わせて製造する場合には、酸化処理および皮膜形成のときの基材温度を700℃以上として処理を行い、前処理を行わない場合には、酸化処理および皮膜形成のときの基材温度を750℃以上として処理を行えば、PVD法によるアルミナ皮膜形成によって、α型結晶構造のアルミナ皮膜が形成できることが分かる。
【0048】
尚、イオンボンバード処理を施す場合には、図1に示した装置構成において、ガスイオンプラズマ若しくは金属イオンプラズマを形成するための熱電子放出用途フラメントを装置内に配置すると共に(図示せず)、基材にバイアス電圧が印加できるような電源を設置し、適切な値(例えば、−400V以上)のバイアス電圧を印加してイオンボンバード処理ができるような装置構成にすれば良い。
【0049】
【発明の効果】
本発明は以上の様に構成されており、切削工具等に適用して高温で使用したときにクラックの発生原因なるγアルミナを実質的に含まないα型結晶構造を有するアルミナ皮膜が実現できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施に用いる装置例を示す概略説明図(上面図)である。
【図2】実施例で得られたアルミナ皮膜の結晶構想を透過型電子顕微鏡(TEM)によって観察した結果を示す図面代用写真である。
【図3】図2の一部を拡大して示した図面代用写真である。
【符号の説明】
1 装置
2 試料(基板)
3 回転テーブル
4 遊星回転治具
5 ヒータ
6 スパッタリングカソード
7 AIP用蒸発源

Claims (5)

  1. 基材(基材上に予め下地皮膜が形成されたものを含む)上に物理蒸着法によって形成したアルミナ皮膜であって、該アルミナ皮膜の結晶構造を断面透過型電子顕微鏡で観察したときに(倍率:20000倍)、少なくとも皮膜成長開始部は微細構造のアルミナ結晶で構成されており、当該微細結晶領域においてはα型結晶構造以外の結晶構造が実質的に観察されないものであることを特徴とするα型結晶構造のアルミナ皮膜。
  2. 前記微細構造のアルミナ結晶は、その結晶粒が成長初期から厚さ方向0.5μmまでの範囲内において0.3μm以下のものである請求項1に記載のアルミナ皮膜。
  3. アルミナ皮膜全体に亘ってα型結晶構造以外の結晶構造が実質的に観察されないものである請求項1または2に記載のアルミナ皮膜。
  4. α型結晶構造のアルミナは、皮膜表面側において柱状に成長したものである請求項1〜3のいずれかに記載のアルミナ皮膜。
  5. アルミナ皮膜の膜厚が0.5〜20μmである請求項1〜4のいずれかに記載のアルミナ皮膜。
JP2003125549A 2002-08-08 2003-04-30 α型結晶構造のアルミナ皮膜 Withdrawn JP2004332007A (ja)

Priority Applications (12)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003125549A JP2004332007A (ja) 2003-04-30 2003-04-30 α型結晶構造のアルミナ皮膜
AU2003254888A AU2003254888A1 (en) 2002-08-08 2003-08-08 PROCESS FOR PRODUCING ALUMINA COATING COMPOSED MAINLY OF Alpha-TYPE CRYSTAL STRUCTURE, ALUMINA COATING COMPOSED MAINLY OF Alpha-TYPE CRYSTAL STRUCTURE, LAMINATE COATING INCLUDING THE ALUMINA COATING, MEMBER CLAD WITH THE ALUMINA COATING OR LAMINATE COATING, PROCESS FOR PRODUCING THE MEMBER, AND PHYSICAL EVAPORATION APPARATU
EP03784598.9A EP1553210B1 (en) 2002-08-08 2003-08-08 PROCESS FOR PRODUCING ALUMINA COATING COMPOSED MAINLY OF a-TYPE CRYSTAL STRUCTURE
EP20140169853 EP2865784A1 (en) 2002-08-08 2003-08-08 Process for producing alumina coating composed mainly of alpha-type crystal structure
US10/523,931 US7531212B2 (en) 2002-08-08 2003-08-08 Process for producing an alumina coating comprised mainly of α crystal structure
EP14169851.4A EP2848712B1 (en) 2002-08-08 2003-08-08 Process for producing alumina coating composed mainly of alpha-type crystal structure, alumina coating composed mainly of alpha-type crystal structure, laminate coating including the alumina coating , member clad with the alumina coating or laminate coating, process for producing the member, and physical vapor deposition apparatus
PCT/JP2003/010114 WO2004015170A1 (ja) 2002-08-08 2003-08-08 α型結晶構造主体のアルミナ皮膜の製造方法、α型結晶構造主体のアルミナ皮膜と該アルミナ皮膜を含む積層皮膜、該アルミナ皮膜または該積層皮膜で被覆された部材とその製造方法、および物理的蒸着装置
CNB038189275A CN100413998C (zh) 2002-08-08 2003-08-08 α型晶体结构为主体的氧化铝被膜相关技术
IL166622A IL166622A (en) 2002-08-08 2005-02-01 Process for making alumina and layered coatings containing them
US12/402,755 US8323807B2 (en) 2002-08-08 2009-03-12 Process for producing alumina coating composed mainly of α-type crystal structure
US12/402,763 US20090173625A1 (en) 2002-08-08 2009-03-12 Process for producing an alumina coating comprised mainly of alpha crystal structure
IL218369A IL218369A0 (en) 2002-08-08 2012-02-28 A process for producing an alumina coating and laminate coatings including the same

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003125549A JP2004332007A (ja) 2003-04-30 2003-04-30 α型結晶構造のアルミナ皮膜

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2004332007A true JP2004332007A (ja) 2004-11-25

Family

ID=33502779

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003125549A Withdrawn JP2004332007A (ja) 2002-08-08 2003-04-30 α型結晶構造のアルミナ皮膜

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2004332007A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006307318A (ja) * 2005-03-31 2006-11-09 Kobe Steel Ltd αアルミナ層形成部材の製法および表面処理法

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006307318A (ja) * 2005-03-31 2006-11-09 Kobe Steel Ltd αアルミナ層形成部材の製法および表面処理法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CN100413998C (zh) α型晶体结构为主体的氧化铝被膜相关技术
JP6000233B2 (ja) 少なくとも1つの複酸化物混合結晶皮膜を有する皮膜システム
JP4427271B2 (ja) アルミナ保護膜およびその製造方法
JP4205546B2 (ja) 耐摩耗性、耐熱性および基材との密着性に優れた積層皮膜の製造方法
JP2006152424A (ja) 硬質被膜および硬質被膜被覆加工工具
Ferreira et al. Hard and dense diamond like carbon coatings deposited by deep oscillations magnetron sputtering
JP4975906B2 (ja) Pvd酸化アルミニウムで被覆された切削工具の製造方法
US20060219325A1 (en) Method for producing alpha-alumina layer-formed member and surface treatment
JP5234357B2 (ja) 潤滑性に優れる耐摩耗性工具部材
JP3971293B2 (ja) 耐摩耗性および耐熱性に優れた積層皮膜およびその製造方法、並びに耐摩耗性および耐熱性に優れた積層皮膜被覆工具
JP4173762B2 (ja) α型結晶構造主体のアルミナ皮膜の製造方法および積層皮膜被覆部材の製造方法
JP3971336B2 (ja) α型結晶構造主体のアルミナ皮膜の製造方法およびα型結晶構造主体のアルミナ皮膜で被覆された部材の製造方法
JP3971337B2 (ja) α型結晶構造主体のアルミナ皮膜の製造方法、α型結晶構造主体のアルミナ皮膜で被覆された部材およびその製造方法
KR100682416B1 (ko) α형 결정 구조 주체의 알루미나 피막의 제조 방법, α형결정 구조 주체의 알루미나 피막과 그 알루미나 피막을포함하는 적층 피막, 그 알루미나 피막 또는 그 적층피막으로 피복된 부재와 그 제조 방법, 및 물리적 증착 장치
JP4025267B2 (ja) α型結晶構造主体のアルミナ皮膜の製造方法
CN115522169B (zh) 氧化物硬质涂层的复合沉积方法及涂层刀具
JP2006307318A (ja) αアルミナ層形成部材の製法および表面処理法
JP2004332007A (ja) α型結晶構造のアルミナ皮膜
CN118979228A (zh) CrmN/TixAlyN/AlaCrbSicVdNe纳米复合涂层及其制备方法和包含其的工具
JP2004332006A (ja) α型結晶構造主体のアルミナ皮膜の製造方法、α型結晶構造主体のアルミナ皮膜で被覆された部材およびその製造方法
JP2020151774A (ja) 耐熱亀裂性および耐欠損性にすぐれた表面被覆切削工具
CN111471973B (zh) 一种还原性气氛中制备Zr-B-N纳米复合涂层的工艺
CN116641022B (zh) 一种抗氧化高熵氮化物涂层的制备方法和应用
RU2780078C1 (ru) Способ получения многослойного нанокомпозитного покрытия
JP2004076029A (ja) α型結晶構造主体のアルミナ膜の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Written amendment

Effective date: 20041007

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20050922

A761 Written withdrawal of application

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A761

Effective date: 20070302